(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】充電式リチウムイオン電池用の正極活物質としてのリチウムニッケル系複合酸化物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240514BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240514BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572900
(86)(22)【出願日】2022-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064453
(87)【国際公開番号】W WO2022248689
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】キョンスブ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジウ・アン
(72)【発明者】
【氏名】ウン-ヒョン・リュ
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AA04
4G048AA07
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA08
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、電動車両及びハイブリッド電動車両用途に好適な、ジルコニウムを含むリチウム遷移金属系酸化物粒子を含む、リチウムイオン二次電池用のリチウムニッケル系酸化物正極活物質、並びにこの正極材料のための調製方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン充電式電池用の正極活物質粉末であって、前記正極活物質がLi、M’及びOを含み、M’が、
M’に対して60.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0≦y≦40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0≦z≦70.0mol%の含有量zのMn、
M’に対して0≦a≦4.0mol%の含有量aのW、
M’に対して0.01mol%~0.20mol%の含有量bのZr、
M’に対して0≦c≦2.0mol%の含有量cの、Li、O、Ni、Co、Mn、Al、W、S及びZr以外の元素、並びに
M’に対して0.01≦d≦3.0mol%の含有量dのS、
M’に対して0≦e≦2.0mol%の含有量eのAl
からなり、
x、y、z、a、b、c、d及びeが、ICPによって測定され、
x+y+z+a+b+c+d+eが、100.0mol%であり、
前記正極活物質が、
【数1】
として定義されるSの含有量S
Aを有し、
前記正極活物質が、XPS分析によって決定されるSの含有量S
Bを有し、S
Bが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比S
B/S
A>1.0である、
正極活物質粉末。
【請求項2】
0.01mol%≦a≦4.0mol%であり、
【数2】
として定義されるWの含有量W
Aを有し、
XPS分析によって決定されるWの含有量W
Bを有し、W
Bが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比W
B/W
A>1.0である、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記正極活物質が、
【数3】
として定義されるWの含有量W
Aを有し、
前記正極活物質が、XPS分析によって決定されるWの含有量W
Bを有し、W
Bが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比W
B/W
A>1.0である、
請求項1に記載の正極活物質粉末。
【請求項4】
0.01mol%≦d≦3.0mol%であり、
【数4】
として定義されるSの含有量S
Aを有し、
XPS分析によって決定されるSの含有量S
Bを有し、S
Bが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比S
B/S
A>1.0である、
請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
M’に対して、x≧65.0mol%、好ましくはx≧70.0mol%、より好ましくはx≧75.0mol%、よりいっそう好ましくはx≧80.0mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
含有量yにおけるCoが、M’に対して1mol%~20mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
含有量zにおけるMnが、M’に対して1mol%~50mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
含有量dにおけるSが、M’に対して0.10mol%~2.00mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
含有量aにおけるWが、M’に対して0.10mol%~3.00mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
含有量bにおけるZrが、M’に対して0.10mol%~0.19mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項11】
含有量eにおけるAlが、M’に対して0.10mol%~1.00mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の正極活物質の製造のためのプロセスであって、
リチウム遷移金属系酸化物化合物を調製する工程、
前記リチウム遷移金属系酸化物化合物を、硫黄の供給源及び水と混合して、混合物を得る工程、並びに
前記混合物を、酸化性雰囲気において、350℃~500℃未満の温度の炉内で加熱することによって、前記正極活物質を得る工程
を含む、プロセス。
【請求項13】
タングステンの供給源を、前記混合する工程中に前記硫黄の供給源と一緒に加える、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~8のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、電池。
【請求項15】
電動車両における、又はハイブリッド電動車両における、請求項14に記載の電池の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両(electric vehicle、EV)及びハイブリッド電動車両(hybrid electric vehicle、HEV)用途に好適な、ジルコニウムを含むリチウム遷移金属系酸化物粒子を含む、リチウムイオン二次電池(lithium-ion secondary battery、LIB)用のリチウムニッケル系酸化物正極活物質、並びにこの正極材料のための調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
正極活物質は、正極において電気化学的に活性である物質として定義される。活物質とは、所定の期間にわたって電圧変化にさらされたときに、Liイオンを捕捉及び放出することができる物質であると理解されたい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そのため、フルセルに使用した場合に、膨張(すなわち、フルセルの厚さの増加)がないこと又は膨張の低減、並びにサイクル寿命の増加、及びライフサイクルの増加など、1つ以上の特性が改善された正極活物質を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、リチウムイオン電池用の正極活物質であって、Li、M’及びOを含み、M’が、
M’に対して60.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0≦y≦40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0≦z≦70.0mol%の含有量zのMn、
M’に対して0≦a≦4.0mol%の含有量aのW、
M’に対して0.01mol%~0.20mol%の含有量bのZr、
M’に対して0≦c≦2.0mol%の含有量cの、Li、O、Ni、Co、Mn、W、Al、S及びZr以外の元素、並びに
M’に対して0.01≦d≦3.0mol%の含有量dのS、
M’に対して0≦e≦2.0mol%の含有量eのAl
からなり、
x、y、z、a、b、c、d及びeが、ICPによって測定され、
x+y+z+a+b+c+d+eが、100.0mol%であり、
正極活物質が、
【0005】
【0006】
として定義されるSの含有量SAを有し、
正極活物質が、XPS分析によって決定されるSの含有量SBを有し、SBが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比SB/SA>1.0である、
正極活物質を提供することによって達成される。
【0007】
本発明の枠組みにおいて、ppmは、濃度の単位についての百万分率を意味し、1ppm=0.0001重量%を表す。
【0008】
別の態様は、リチウムイオン充電式電池用の正極活物質粉末であって、正極活物質がLi、M’及びOを含み、M’が、
M’に対して60.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0≦y≦40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0≦z≦70.0mol%の含有量zのMn、
M’に対して0.01mol%~4.0mol%の含有量aのW、
M’に対して0.01mol%~0.20mol%の含有量bのZr、
M’に対して0≦c≦2.0mol%の含有量cの、Li、O、Ni、Co、Mn、W、Al、S及びZr以外の元素、並びに
M’に対して0.00≦d≦3.0mol%の含有量dのS、
M’に対して0≦e≦2.0mol%の含有量eのAl
からなり、
x、y、z、a、b、c、d及びeが、ICPによって測定され、
x+y+z+a+b+c+d+eが、100.0mol%であり、
正極活物質が、a/((x+y+z+a+d))として定義されるWの含有量WAを有し、
正極活物質が、XPS分析によって決定されるWの含有量WBを有し、WBが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比WB/WA>1.0である、
正極活物質粉末である。
【0009】
本発明は、以下の実施形態に関する。
【0010】
実施形態1
第1の態様では、本発明は、Li、M’及びOを含み、M’が、
M’に対して60.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0≦y≦40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0≦z≦70.0mol%の含有量zのMn、
M’に対して0≦a≦4.0mol%の含有量aのW、
M’に対して0.01mol%~0.20mol%の含有量bのZr、
M’に対して0≦c≦2.0mol%の含有量cの、Li、O、Ni、Co、Mn、W、Al、S及びZr以外の元素、並びに
M’に対して0.01≦d≦3.0mol%の含有量dのS、
M’に対して0≦e≦2.0mol%の含有量eのAl
からなり、
x、y、z、a、b、c、d及びeが、ICPによって測定され、
x+y+z+a+b+c+d+eが、100.0mol%であり、
正極活物質が、
【0011】
【0012】
として定義されるSの含有量SAを有し、
正極活物質が、XPS分析によって決定されるSの含有量SBを有し、SBが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比SB/SA>1.0である、
リチウムイオン電池用の正極活物質に関する。
【0013】
好ましくは、SB/SA>2.0である。
【0014】
好ましくは、本発明の正極材料は、0.01mol%≦a≦4.0mol%を含み、正極活物質は、
【0015】
【0016】
として定義されるWの含有量WAを有し、
正極活物質は、XPS分析によって決定されるWの含有量WBを有し、WBは、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比WB/WA>1.0である。
【0017】
好ましくは、Niは、M’に対して、x≧65.0mol%、より好ましくはx≧70.0mol%、よりいっそう好ましくはx≧75.0mol%、最も好ましくはx≧80.0mol%の含有量である。
【0018】
好ましくは、Niは、M’に対して、x≦93.0mol%、より好ましくはx≦91.0mol%、最も好ましくはx≦90.0mol% %の含有量である。
【0019】
好ましくは、Coは、M’に対して、y>0mol%、より好ましくはy≧1.0mol%、よりいっそう好ましくはy≧5.0mol%の含有量である。
【0020】
好ましくは、Coは、M’に対して、y≦35mol%、より好ましくはy≦30.0mol%、最も好ましくはy≦20.0mol% %の含有量である。
【0021】
好ましくは、Mnは、M’に対して、z>0mol%、より好ましくはz≧1.0mol、よりいっそう好ましくはz≧5.0mol%の含有量である。
【0022】
好ましくは、Mnは、M’に対して、z≦65mol%、より好ましくはz≦60.0mol%、最も好ましくはz≦50.0mol% %の含有量である。
【0023】
別の実施形態では、含有量xのNiは、M’に対して70mol%~91mol%であり、含有量yのCoは、M’に対して0.0mol%~30.0mol%であり、含有量zのMnは、M’に対して0.0mol%~50.0mol%である。
【0024】
別の実施形態では、含有量aのWは、M’に対して0.10mol%~3.00mol%である。
【0025】
実施形態2
第2の態様では、好ましくは実施形態1に従い、本発明は、リチウムイオン充電式電池用の正極活物質粉末であって、正極活物質がLi、M’及びOを含み、M’が、
M’に対して60.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0≦y≦40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0≦z≦70.0mol%の含有量zのMn、
M’に対して0.01mol%~4.0mol%の含有量aのW、
M’に対して0.01mol%~0.20mol%の含有量bのZr、
M’に対して0≦c≦2.0mol%の含有量cの、Li、O、Ni、Co、Mn、W、Al、S及びZr以外の元素、並びに
M’に対して0.00≦d≦3.0mol%の含有量dのS、
M’に対して0≦e≦2.0mol%の含有量eのAl
からなり、
x、y、z、a、b、c、d及びeが、ICPによって測定され、
x+y+z+a+b+c+d+eが、100.0mol%であり、
正極活物質が、
【0026】
【0027】
として定義されるWの含有量WAを有し、
正極活物質が、XPS分析によって決定されるWの含有量WBを有し、WBが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比WB/WA>1.0である、
正極活物質粉末に関する。
【0028】
好ましくは、正極活物質は、0.01mol%≦d≦3.0mol%を含み、正極活物質は、
【0029】
【0030】
として定義されるSの含有量SAを有し、
正極活物質は、XPS分析によって決定されるSの含有量SBを有し、SBが、XPS分析によって測定されるCo、Mn、Ni、W及びSのモル分率の合計と比較したモル分率として表され、
比SB/SA>1.0である。
【0031】
好ましくは、Niは、M’に対して、x≧65.0mol%、より好ましくはx≧70.0mol%、よりいっそう好ましくはx≧75.0mol%、最も好ましくはx≧80.0mol%の含有量である。
【0032】
好ましくは、Niは、M’に対して、x≦93.0mol%、より好ましくはx≦91.0mol%、最も好ましくはx≦90.0mol% %の含有量である。
【0033】
好ましくは、Coは、M’に対して、y>0mol%、より好ましくはy≧1.0mol%、よりいっそう好ましくはy≧5.0mol%の含有量である。
【0034】
好ましくは、Coは、M’に対して、y≦35mol%、より好ましくはy≦30.0mol%、最も好ましくはy≦20.0mol% %の含有量である。
【0035】
好ましくは、Mnは、M’に対して、z>0mol%、より好ましくはz≧1.0mol、よりいっそう好ましくはz≧5.0mol%の含有量である。
【0036】
好ましくは、Mnは、M’に対して、z≦65mol%、より好ましくはz≦60.0mol%、最も好ましくはz≦50.0mol% %の含有量である。
【0037】
別の実施形態では、含有量xのNiは、M’に対して70mol%~91mol%であり、含有量yのCoは、M’に対して0.0mol%~30.0mol%であり、含有量zのMnは、M’に対して0.0mol%~50.0mol%である。
【0038】
別の実施形態では、含有量aのWは、M’に対して0.10mol%~3.00mol%である。
【0039】
実施形態3
第3の実施形態では、好ましくは実施形態1~2に従い、この正極活物質は、M’に対して0.10mol%~0.2mol%の含有量bのZrを含む。
【0040】
実施形態4
第4の実施形態では、好ましくは実施形態1~3に従い、この正極活物質は、M’に対して0.10mol%~2.00mol%の含有量eのAlを含む。
【0041】
実施形態5
第5の実施形態では、好ましくは実施形態1~4に従い、この正極活物質は、Li、O、Ni、Co、Mn、W、Al及びS以外の元素を含み、B、Ba、Ca、Cr、F、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、Y、V及びZnからなる群のうちの少なくとも1つの元素を含む。
【0042】
別の実施形態では、好ましくは、Li、O、Ni、Co、Mn、W、Al及びS以外の元素が、B、Ba、Ca、Cr、F、Fe、Mg、Mo、Nb、Si、Sr、Ti、Y、V及びZnからなる群のうちの少なくとも1つの元素である、先行する請求項のいずれかに記載の正極活物質。
【0043】
実施形態6
第6の態様では、本発明はまた、実施形態1~5のいずれかに記載の正極活物質の製造のためのプロセスであって、
リチウム遷移金属系酸化物化合物を調製する工程、
リチウム遷移金属系酸化物化合物を、硫黄の供給源及び水と混合することによって、混合物を得る工程、並びに
混合物を、酸化性雰囲気において、350℃~500℃未満の温度の炉内で加熱することによって、
正極活物質を得る工程
を含む、プロセスを含む。
【0044】
一実施形態では、好ましくは、本発明によるプロセスにおいて、タングステンの供給源を、混合する工程中に硫黄の供給源と一緒に加える。
【0045】
好ましくは、タングステンの供給源は、酸化タングステン及びタングステン酸リチウムから選択することができるが、これらに限定されない。
【0046】
好ましくは、Wの含有量は、正極活物質の総重量に対して100ppm~10000ppmである。より好ましくは、タングステン含有量は1000ppm~8000ppmである。
【0047】
好ましくは、硫黄の供給源は、Al2(SO4)3、硫酸塩及び/又はH2SO4から選択され、より好ましくはAl2(SO4)3であるが、これらに限定されない。
【0048】
好ましくは、Sの含有量は、正極活物質の総重量に対して350ppm~3500ppmである。より好ましくは、S含有量は400ppm~3000ppmである。
【0049】
好ましくは、加熱温度は最高450℃である。
【0050】
好ましくは、加熱時間は1時間~20時間の時間にわたる。
【0051】
好ましくは、リチウム遷移金属酸化物指示材料は、リチウム化プロセス、すなわち、含遷移金属前駆体とリチウム供給源との混合物を、少なくとも500℃の温度で加熱するプロセスから調製される。
【0052】
好ましくは、含遷移金属前駆体は、ニッケル、コバルト及び/又はマンガンを含む。典型的には、含遷移金属前駆体は、当技術分野において公知の方法による沈殿によって調製される。
【0053】
好ましくは、この実施形態では、リチウム遷移金属酸化物はZrを含み、Zrの供給源は、リチウム化中にLi供給源と一緒に混合される。
【0054】
好ましくは、ジルコニウムの供給源は、酸化ジルコニウム及びジルコニウム酸リチウムから選択することができるが、これらに限定されない。
【0055】
好ましくは、Zrの含有量は、正極活物質の総重量に対して100ppm~2500ppmである。より好ましくは、Zr含有量は200ppm~2200ppmである。
【0056】
実施形態7
第7の態様では、本発明は、先行する実施形態1~6のいずれかに記載の正極活物質の、電池中での使用に関する。
【0057】
この電池は、カソード、アノード、セパレータ及び電解質を含む、充電式リチウムイオン電池である。好ましくは、電解質は非水性液体電解質である。この発明における正極活物質は、正極に使用される。
【0058】
本発明はまた、電動車両における、又はハイブリッド電動車両における、本発明による電池の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下の発明を実施するための形態では、本発明の実施を可能にするために、好ましい実施形態を記載する。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態を参照して記載されているが、本発明は、これらの好ましい実施形態に限定されないことが理解されよう。本発明は、以下の発明を実施するための形態及び添付図面の考察から明らかである、多くの代替、改変及び均等物を含む。
【0060】
A)ICP分析
正極活物質粉末のLi、Ni、Mn、Co、S、W、Al及びZr含有量は、Agillent ICP 720-ESを使用することにより、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)法を用いて測定する。三角フラスコ中で、2グラムの生成物粉末サンプルを10mLの高純度塩酸に溶解させる。前駆体が完全に溶解するまで、フラスコをガラスでカバーし、380℃のホットプレート上で加熱する。室温まで冷却した後、三角フラスコの溶液を250mLメスフラスコに注ぐ。その後、メスフラスコを250mLの標線まで脱イオン水で満たし、続いて、完全に均一化させる。ピペットで適切な量の溶液を取り出し、2回目の希釈のために250mLメスフラスコに移し、メスフラスコを250mLの標線まで内部標準物質及び10%塩酸で満たし、次いで均一化させる。最後に、50mLのこの溶液をICP測定に使用する。
【0061】
B)粒径分布
正極活物質粉末の粒径分布(particle size distribution、PSD)は、粉末サンプルの各々を水性媒体中に分散させた後、Hydro MV湿式分散アクセサリを備えたMalvern Mastersizer 3000を使用して、レーザー回折粒径分析によって測定する。粉末の分散を改善するために、十分な超音波照射及び撹拌を適用し、適切な界面活性剤を導入する。D50は、Hydro MV測定によって、Malvern Mastersizer 3000から得られる累積体積%分布の50%における粒径として定義される。
【0062】
C)フルセル試験
C1)フルセルの調製
2000mAhのパウチ型セルを次のように調製する:正極活物質粉末、正極導電剤としてのSuper-P(Super-P、Timcal、(Imerys Graphite & Carbon))、及び正極バインダとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF S5130、Solvay)を、分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)に加え、その結果、正極活物質粉末、正極導電剤:super P:正極バインダの質量比が95/3/2となる。その後、混合物を混練して正極混合物スラリーを調製する。次いで、得られた正極混合物スラリーを、厚さ20μmのアルミニウム箔から作製された正極集電体の両面に塗布する。塗布領域の幅は88.5mmであり、長さは425mmである。正極活物質の典型的な担持重量は、約15.3±1mg/cm2である。次いで、電極を乾燥させて、4.5MPaの圧力を使用してカレンダー加工する。加えて、正極集電体タブとしての役割を果たすアルミニウム板を、正極の端部にアーク溶接する。
【0063】
市販の負極を使用する。要するに、95.5/1/1.5/2の質量比における、天然黒鉛、炭素、カルボキシメチルセルロースナトリウム(carboxy-methyl-cellulose-sodium、CMC)、及びスチレンブタジエンゴム(styrene-butadiene-rubber、SBR)の混合物を、銅箔の両面に塗布する。負極集電体タブとしての役割を果たすニッケル板を、負極の端部にアーク溶接する。負極活物質の典型的な担持重量は、約10±1mg/cm2である。
【0064】
1:1:1の体積比における、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)とエチルメチルカーボネート(ethyl methyl carbonate、EMC)と炭酸ジエチル(diethyl carbonate、DEC)との混合溶媒中に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)塩を1.2mol/Lの濃度で溶解させることによって、非水性電解質を得る。非水性電解質は、添加剤として、1.0重量%のジフルオロリン酸リチウム(LiPO2F2)及び1.0重量%のビニレンカーボネート(vinylene carbonate、VC)を含有する。
【0065】
螺旋状に巻かれた電極アセンブリを得るために、正極のシート、負極のシート、及びこれらの間に差し込まれた微孔質ポリマーセパレータのシート(13μm)を、巻線コアロッドを使用して螺旋状に巻く。次いで、アセンブリ及び電解質を、-50℃の露点の風乾室内でアルミニウム積層パウチに入れ、平坦なパウチ型のリチウム二次電池を調製する。二次電池の設計容量は、4.20Vまで充電したときに2000mAhである。フルセル試験手順では、2000mA/gの1C電流定義を使用する。
【0066】
C2)膨張試験
上記の調製方法によって調製した2000mAhのパウチ型電池を、4.2Vまで満充電し、90℃まで加熱したオーブンに入れ、そこで、20時間とどめておく。充電された正極は、90℃で電解質と反応し、ガスを生じさせる。発生したガスによって、膨張が生じる。20時間後に、厚さの増加((保管後の厚さ-保管前の厚さ)/保管前の厚さ×100%)を測定する。
【0067】
C3)サイクル寿命試験
A.予備充電及び形成
非水性電解質溶液に、調製した乾電池を、室温で8時間含浸させる。電池を0.25Cの電流で、理論容量の15%まで予備充電し、室温で1日エージングする。次いで、-760mmHgの圧力を使用して、電池を30秒間脱ガスし、アルミニウムパウチを封止する。
【0068】
CCモード(定電流)において、0.2Cの電流で4.2V又は4.3Vまで電池を充電し、CVモード(定電圧)において、C/20のカットオフ電流に達するまで充電する。CCモードにおいて、0.2Cの電流で2.7Vに下がるまで電池を放電する。次いで、CCモードにおいて、0.50Cの電流で4.2V又は4.3Vまで、及びCVモードにおいて、C/20のカットオフ電流に達するまで満充電する。
【0069】
その後、CCモードにおいて、0.50Cの電流で2.7Vに下がるまでセルを放電する。再び、CCモードにおいて、0.5Cの電流で4.2V又は4.3Vまで、及びCVモードにおいて、C/20のカットオフ電流に達するまで充電する。最終的な充電工程は、25℃で行う。
【0070】
B.サイクル寿命試験
リチウム二次フルセル電池を、いずれも45℃で、以下の条件下で連続して充電及び放電し、その充電-放電サイクル性能を決定する。
【0071】
CCモードにおいて1Cレートで4.2Vまで、次いでCVモードにおいてC/20に達するまで、充電を行う。
【0072】
次いで、セルを10分間休止させる。
【0073】
CCモードにおいて、1Cレートで2.7Vに下がるまで放電を行う。
【0074】
次いで、セルを10分間休止させる。
【0075】
充電-放電サイクルを、800サイクル又は1000サイクルまで続行する。100サイクル毎に、CCモードにおいて、0.1Cレートで2.7Vに下がるまで放電を行う。
【0076】
n回目のサイクルにおける保持容量を、n回目のサイクルで得られた放電容量と、1回目のサイクルとの比として算出する。
【0077】
サイクル寿命は、容量が80%に低下した時点の充電-放電サイクルの回数として定義される。
【0078】
D)X線光電子分光(XPS)分析
本発明では、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy、XPS)を使用して、正極活物質粉末粒子の表面を分析する。XPS測定では、シグナルは、サンプルの最上部、すなわち、表面層の最初の数ナノメートル(例えば、1nm~10nm)から取得される。そのため、XPSによって測定されるすべての元素は、表面層に含有されている。
【0079】
正極活物質粉末粒子の表面分析について、XPS測定は、ThermoK-α+分光計(Thermo Scientific、https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/IQLAADGAAFFACVMAHV)を使用して行われる。単色Al Kα放射線(hv=1486.6eV)は、400μmのスポットサイズ及び45°の測定角度で使用される。表面に存在する元素を同定するための広範な調査スキャンを、200eVのパスエネルギーで実施する。284.8eVの結合エネルギーに最大強度を有する(に集中する)C1sピークは、データ収集後のキャリブレーションピーク位置として使用される。その後、同定された各元素に対して、50eVにて正確なナロースキャンが少なくとも10回スキャンされ、正確な表面組成が決定される。
【0080】
曲線のフィッティングは、CasaXPSバージョン2.3.19PR1.0(Casa Software、http://www.casaxps.com/)により、シャーリー型バックグラウンド処理及びスコフィールド感度係数を使用して行う。フィッティングパラメータは表1aによる。線形状GL(30)は、70%ガウス線及び30%ローレンツ線におけるガウス/ローレンツ積公式である。LA(α、β、m)は非対称な線形状であり、式中、α及びβはピークのテール広がりを定義し、mは幅を定義する。
【0081】
【0082】
Co、W及びSピークについては、表1bに従って、各定義されたピークに関する拘束が設定される。W5p3は定量されない。
【0083】
【0084】
XPSによって決定されるS及びWの表面含有量は、粒子の表面におけるS及びWを、当該表面におけるNi、Mn、Co及びWの総含有量で除算した、モル分率として表される。これらは以下のように計算される。
【0085】
【0086】
本発明を以下の(非限定的な)実施例によって更に説明する。
【0087】
比較例1.1(CEX1.1)
CEX1.1を、以下のように行われる、リチウム供給源と遷移金属系供給源前駆体との間の固相反応を通じて得た。
1.前駆体の調製:前駆体の沈殿プロセスを、10Lの液体容積を有する反応器内で、オーバーフロー管及び400Wのインペラモータを使用して行った。直径10cmのインペラを800RPMで撹拌した。反応器は、激しい撹拌を可能にする4つのバッフルを有していた。50L/時の窒素ガスの流れを液面の上に適用して、激しい撹拌に起因する酸化を回避した。110g/Lの金属の総濃度を有する、硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルト(NiSO4、MnSO4、CoSO4)を含有する3つの溶液を調製して、混合MeSO4溶液を得た(式中、Meは、Ni、Mn及びCoからなる)。第1の溶液は、87:5:8のNi:Mn:Coのモル比を有しており、第2の溶液は、0:5:95のモル比を有していた。400g/LのNaOHの溶液と、25%の非希釈アンモニア溶液とを使用した。前駆体の全金属組成はNi0.85Mn0.05Co0.10であり、プロセスS1~S3において調製した。
a.S1-シードの調製:Ni0.87Mn0.05Co0.08(OH)2シード前駆体を、6時間の特定の滞留時間を有する連続撹拌槽反応器(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)内で、典型的な共沈殿を使用して調製した。開始時に、反応器を水及びアンモニアで満たして、内部に15g/Lのアンモニア溶液を得た。反応器内の温度は60℃であった。反応器を出発溶液で満たした後、アンモニアと金属との比を1:1に保ち、pHを11.7前後に保って、種々の試薬(MeSO4溶液、NaOH溶液、NH3溶液)を、異なる注入点で同時に反応器内にポンプ注入した。沈殿反応中、溶液中の各金属イオンに対して2個超のOH-イオンがあるべきである。24時間後、反応器は定常状態にあり、D50は5μm~20μmであり、オーバーフローからのスラリーを収集した。沈殿した金属水酸化物を洗浄し、保護雰囲気下で濾過して、溶解した塩及びアンモニアを除去した。200グラムの湿潤ケーキを1Lの水中で再パルプ化し、ボールミルによる機械的粉砕で処理した。この処理により、D50のサイズが2μm未満まで減少した。
b.S2-コア粒子の調製:Ni0.87Mn0.05Co0.08(OH)2コア前駆体を、3時間の特定又は平均滞留時間を有する連続撹拌槽反応器(CSTR)内で、変形共沈殿を使用して調製した。MeSO4第1溶液組成物を使用した。開始時に、反応器を水及びアンモニアで満たして、内部に15g/Lのアンモニア溶液を得た。反応器内の温度は60℃であった。反応器を出発溶液で満たした後、アンモニアと金属との比を1:1に保ち、NaOH溶液によってpHを11.7前後に保って、種々の試薬(MeSO4溶液、NaOH溶液、NH3溶液)を、異なる注入点で同時に反応器内にポンプ注入した。典型的には、溶液中の各金属イオンに対して2個超のOH-イオンがあるべきである。6時間後、S1から100グラムのシードを反応器に加える。反応器内の粒径スパンは、直ちに大きくなり、D50は小さくなった。少なくとも6時間後、スパンは、0.9を下回る値まで着実に縮小した。この時点で、粒子は6μm~11μm前後まで成長している。ここで、オーバーフロー中のスラリーを3Lのビーカーに収集し、粒子をビーカー内で沈降させた。ビーカーを30分毎にデカンテーションし、スラリーを反応器に戻した。粒子が十分なサイズ(11μm前後)に達した時点で、試薬の投入を停止した。
c.S3-シェルの沈殿:S2において反応器に投入した金属硫酸塩溶液(MeSO4)を、第2のMeSO4溶液に切り替えた。すべての化学物質の投入を再開し、オーバーフローを3Lビーカーに収集した。30分毎にビーカーをデカンテーションして濾液を除去し、スラリーを反応器に戻した。所望の厚さを有するシェルが成長するまで、この手順を使用して、この実施を継続した。沈殿した金属(オキシ)水酸化物を洗浄し、保護雰囲気下で濾過して、溶解した塩及びアンモニアを除去した。湿潤ケーキを、150℃の炉内で窒素下で乾燥させた。最終的なコア-シェル沈殿金属(オキシ)水酸化物前駆体は、87:5:8のNi:Mn:Coコア組成、及び0:5:95のNi:Mn:Coシェル組成を有していた。ICP分析によって決定した前駆体の平均金属組成は、Ni:Mn:Co=85:5:10(mol%)であった。最終生成物の組成を一定に維持するために、沈殿プロセス中、pH、撹拌速度、化学物質濃度及び温度等の重要な因子を精緻に制御した。シェルの厚さは、プロセス条件に基づいて計算することができるが、XPS深さプロファイリング又は更にはTEM等の高度な分析機器を使用して、事後に測定することもできる。
2.混合:工程1)で調製した前駆体を、工業用ブレンダーにおいてLiOHと、前駆体の総重量に対して1.02のLi対金属モル比(Li/Me)で混合した。
3.加熱:工程2)で得た混合物を、酸素雰囲気下、765℃で12時間加熱し、続いて、粉砕及び篩い分けして、ICP分析によって決定してNi:Mn:Co=87:5:8(mol%)の組成、及びPSD分析によって決定して11.5μm前後のD50を有する加熱粉末を得た。
4.混合:加熱粉末の重量に対して3.5重量%の脱イオン水に、6300ppmのAl2(SO4)3粉末を溶解することによって調製した硫酸アルミニウム溶液と、加熱粉末を混合した。
5.加熱:工程4)で得た混合物を、酸素雰囲気下、385℃で8時間加熱し、続いて、粉砕及び篩い分けすることにより、CEX1.1を得た。
【0088】
比較例1.2(CEX1.2)
CEX1.2は、工程4において、4000ppmのWO3を6300ppmのAl2(SO4)3と一緒に加えたことを除いて、CEX1.1と同じ方法によって調製した。
【0089】
実施例1.1(EX1.1)
EX1.1は、工程2において、ZrO2由来の1000ppmのZrをLiOHと一緒に加え、工程4において、WO3由来の4000ppmのWを、6300ppmのAl2(SO4)3と一緒に加えたことを除いて、CEX1.1と同じ方法によって調製した。
【0090】
実施例1.2(EX1.2)
EX1.2は、工程2において、ZrO2由来の2000ppmのZrをLiOHと一緒に加え、工程4において、WO3由来の4000ppmのWを、6300ppmのAl2(SO4)3と一緒に加えたことを除いて、CEX1.1と同じ方法によって調製した。
【0091】
比較例2(CEX2)
EX1.2は、工程2において、ZrO2由来の3000ppmのZrをLiOHと一緒に加え、工程4において、WO3由来の4000ppmのWを、6300ppmのAl2(SO4)3と一緒に加えたことを除いて、CEX1.1と同じ方法によって調製した。
【0092】
【0093】
*Ni、Mn、Co、S、W及びZrのモル含有量に対して
**Ni、Mn、Co、S、W、Al及びZrのモル含有量に対して
***45℃における80%容量時点のサイクル数
【0094】
本発明による実施例EX1.1及びEX1.2、並びに比較例CEX1.1、CEX1.2及びCEX2におけるNi、Mn、Co、Al、W、Zr及びSの組成と、対応する電気化学的特性を、表2にまとめる。EX1.1及びEX1.2は、フルセルの厚さの増加(すなわち、膨張)を最小化すること、及びサイクル寿命の増加を含む、フルセルに使用した場合に改善された特性を有する正極活物質を提供するという、本発明の目的を達成することができる。
【0095】
EX1.1及びEX1.2における、WO3及びAl2(SO4)3化合物を混合する工程と、続いて熱処理する工程とは、それぞれ、SB/SA>1.0及びWB/WA>1.0に関連し、ここで、SB及びWBはXPS測定によって得られ、SA及びWAはICP測定によって得られる。SB及びWBが0より大きいことは、XPS測定では、シグナルがサンプルの最上部、すなわち表面層の最初の数ナノメートル(例えば1nm~10nm)から取得されることと関連して、これらの元素が正極活物質の表面に存在することを指す。他方、ICP測定から得られるSA及びWAの比は、粒子全体からのものである。XPSとICPとの比(SB/SA及びWB/WA)が1よりも大きいことは、S及びWが、主として正極活物質の表面に存在することを指す。
【国際調査報告】