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特表2024-520035細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物
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  • 特表-細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物 図1
  • 特表-細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物 図2
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  • 特表-細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240514BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240514BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12N5/07
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572938
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 KR2022014551
(87)【国際公開番号】W WO2023055068
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0128333
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0112921
(32)【優先日】2022-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ミンチェ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ユンソプ・キム
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA21
4B029AA27
4B029BB11
4B029BB12
4B029DG08
4B029DG10
4B029GA08
4B029GB09
4B029GB10
4B065AA90X
4B065AB10
4B065AC20
4B065BB40
4B065BC41
4B065CA44
4B065CA60
(57)【要約】
本発明は、炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;を含むポリスチレン系粒子を含む、細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;を含むポリスチレン系粒子を含む、細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項2】
前記磁性粒子は、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を含む、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項3】
前記磁性粒子は磁性粒子表面に疎水性官能基を含む疎水性リガンドを含み、
前記疎水性リガンドは炭素数2~20の脂肪酸またはその誘導体、および炭素数2~20の脂肪酸アミンまたはその誘導体からなる群より選択された1種以上のリガンドを含む、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項4】
前記磁性粒子は、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)およびスズ(Sn)からなる群より選択される1種以上の金属またはその酸化物を含む、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項5】
前記炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上の内部に磁性粒子が分散した状態で存在する、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項6】
前記マイクロキャリアの見掛け密度が0.95g/cm以上1.05g/cm以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項7】
前記マイクロキャリアの平均直径が50μm以上400μm以下であり、
マイクロキャリアの比表面積が200cm/g以上1000cm/g以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項8】
前記空隙の直径が0.1μm以上5μm以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項9】
前記炭化水素オイルの密度が0.75g/cm以上0.80g/cm以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項10】
前記磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下である、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項11】
前記炭化水素オイルは、炭素数12以上50以下である直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物を含む、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項12】
前記ポリスチレン系粒子は、
炭素数12以上である炭化水素オイル、磁性粒子およびスチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応結果物を含む、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項13】
前記単量体組成物は炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、
磁性粒子を0.01重量部以上5重量部以下で含む、請求項12に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項14】
前記単量体組成物は、スチレン単量体1重量部に対して、
エチレン系不飽和架橋剤を0.033重量部超3重量部未満で含む、請求項12に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項15】
前記ポリスチレン系粒子表面に、プライマー高分子層、細胞付着誘導層、またはこれらの組み合わせ層がさらに含まれる、請求項1に記載の細胞培養用マイクロキャリア。
【請求項16】
炭素数12以上である炭化水素オイルの存在下で、磁性粒子およびスチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応を行う段階を含む、細胞培養用マイクロキャリアの製造方法。
【請求項17】
前記磁性粒子は、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を含む、請求項16に記載の細胞培養用マイクロキャリアの製造方法。
【請求項18】
細胞および請求項1から15のいずれか一項に記載の細胞培養用マイクロキャリアを含む、細胞培養組成物。
【請求項19】
前記細胞は、線維芽細胞、軟骨細胞、間葉系幹細胞、CHO、HEK 293、ベロ細胞(vero cell)、BHK21、MDCKからなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項18に記載の細胞培養組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2021年9月28日付韓国特許出願第10-2021-0128333号、および2022年9月6日付韓国特許出願第10-2022-0112921号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
バイオ医薬品および再生医療分野が拡張されるにつれて、細胞、組織、微生物などを効率的に生産することができる細胞大量培養技術に対する要求が増大している。
【0004】
付着性を有する細胞は、3Dバイオリアクター(bioreactor)内でマイクロキャリアを用いて培養される。バイオリアクター内に細胞、培養液、およびマイクロキャリアを入れ、培養液を攪拌して細胞およびマイクロキャリアを接触させることによって、細胞をマイクロキャリアの表面に付着させて培養することになる。この時使用するマイクロキャリアは細胞が付着して増殖できる高い表面積比率(surface area/volume)を提供するため、細胞の大量培養に適合する。
【0005】
現在商業的に用いられるマイクロキャリアは密度が約1.1~1.3g/cmであり、細胞の密度は約1.2g/cm程度である。この場合、バイオリアクター内で培養初期の細胞を付着するのには有利であるが、培養後細胞分離回収時、遠心分離が難しく、マイクロキャリアと細胞の大きさに基づいたフィルタリング方法を使用しなければならない。しかし、このような場合、フィルターが詰まるか工程時間が長くかかり、細胞の物理的損傷および汚染が発生しやすく、細胞の損失が発生することがある問題がある。
【0006】
したがって、細胞培養が可能なように低密度を有しながら、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時より容易に分離できる新たなマイクロキャリアの開発が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、細胞培養が可能なように低密度を有しながら、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時より容易に分離できる細胞培養用マイクロキャリアを提供するためのものである。
【0008】
また、本発明は、前記細胞培養用マイクロキャリアの製造方法を提供するためのものである。
【0009】
また、本発明は、前記細胞培養用マイクロキャリアを用いた細胞培養組成物に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本明細書では、炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;を含むポリスチレン系粒子を含む、細胞培養用マイクロキャリアを提供する。
【0011】
本明細書ではまた、炭素数12以上である炭化水素オイルの存在下で、磁性粒子およびスチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応を行う段階を含む、細胞培養用マイクロキャリアの製造方法が提供される。
【0012】
本明細書ではまた、細胞および前記細胞培養用マイクロキャリアを含む、細胞培養組成物が提供される。
【0013】
以下、発明の具体的な実施形態による細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いた細胞培養組成物についてより詳細に説明する。
【0014】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0015】
本明細書で使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0016】
本明細書で使用される「含む」の意味は特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0017】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数によって限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素にも命名することができ、同様に第2構成要素は第1構成要素に命名することができる。
【0018】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0019】
発明の一実施形態によれば、炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;を含むポリスチレン系粒子を含む、細胞培養用マイクロキャリアが提供できる。
【0020】
本発明者らは、前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアの場合、ポリスチレン系粒子内部に炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上が含まれて、細胞培養用マイクロキャリアの密度を下げることができるだけでなく、均質な球形形状のマイクロキャリアを高い収率で確保することができるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0021】
また、本発明者らは、前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアの場合、磁性粒子が含まれて、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時、磁性を用いてより容易に分離精製することができるという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0022】
具体的に、前記細胞培養用マイクロキャリアは、炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;を含むポリスチレン系粒子を含むことができる。即ち、前記ポリスチレン系粒子は、炭素数12以上である炭化水素オイル1種、炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導された空隙1種、あるいはこれら2種の混合物を含むことができる。
【0023】
前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導された空隙1種を含むか、あるいは炭素数12以上である炭化水素オイルおよび炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導された空隙を全て含む場合、前記ポリスチレン系粒子は多孔性ポリスチレン系粒子に該当し得る。
【0024】
前記ポリスチレン系粒子は、後述する他の実施形態の製造方法のように炭化水素オイル存在下で懸濁重合によってポリスチレン粒子合成を行って炭化水素オイルがポリスチレン粒子内部に閉じ込められた状態で残留し続けるか、高速の懸濁重合攪拌条件によって閉じ込められていた炭化水素オイルの一部あるいは全体が抜け出てポリスチレン粒子内部に空隙が形成され得る。
【0025】
前記空隙とはポリスチレン系粒子内部の空の空間を意味し、気孔、ハロー(hollow)、孔、ボイド(void)などの意味として使用できる。
【0026】
前記空隙は、炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導されたものであってもよい。具体的に、前記空隙は、炭素数12以上である炭化水素オイルが懸濁重合の途中にポリスチレンと相分離されながら形成された空間に該当する。
【0027】
したがって、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上である炭化水素オイル1種のみを含むことは、重合過程で炭化水素オイルが完全に相分離されたが、重合および洗浄工程中に粒子外部に消失していないことを意味し、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導された空隙1種のみを含むことは、重合過程で炭化水素オイルが完全に相分離されたが、重合および洗浄工程中に粒子外部に消失した状態を意味する。また、前記ポリスチレン系粒子が炭素数12以上である炭化水素オイルおよび炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導された空隙を全て含むことは、炭化水素オイルが重合過程で一部相分離されて消失し、一部は残留する状態を意味する。
【0028】
具体的に、前記空隙の直径は0.1μm以上5μm以下であってもよい。より具体的に、前記空隙の直径は0.1μm以上、0.5μm以上、1μm以上であってもよく、5μm以下、4μm以下、3μm以下であってもよく、0.1μm以上5μm以下、0.5μm以上5μm以下、1μm以上5μm以下、0.1μm以上4μm以下、0.5μm以上4μm以下、1μm以上4μm以下、0.1μm以上3μm以下、0.5μm以上3μm以下、1μm以上3μm以下であってもよい。
【0029】
前記空隙の直径を測定する方法は大きく制限されないが、例えば、細胞培養用マイクロキャリアをエポキシに組み込み(embedding)した後、イオンミリング(ion milling)を通じて断面を製造した後、粒子断面の形状をSEMで確認して粒子内部空隙の直径を測定することができる。
【0030】
前述のように、前記空隙は炭素数12以上である炭化水素オイルから誘導されたものであることにより、前記空隙の直径は0.1μm以上5μm以下で小さな大きさの空隙を実現することができ、これにより、マイクロキャリアの密度を容易に調節することができる。
【0031】
従来はポリスチレン粒子の密度を下げるためにポリスチレン重合過程中に低沸点の発泡剤を投入した後、追加発泡工程を通じて発泡スチレンを製造してきたが、このような場合、数十μmの大きさの大きな空隙が形成されて、マイクロキャリアの密度調節が難しい。
【0032】
前記炭化水素オイルの炭素数は、12以上、または12以上50以下、または12以上16以下であってもよい。前記炭化水素オイルの炭素数が12未満に過度に減少するようになれば、懸濁重合中に炭化水素オイルとポリスチレンの相分離速度の減少によって粒子表面が均一でなく凹んだ形状の粒子が複数製造される限界がある。
【0033】
具体的に、前記炭化水素オイルは、炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物を含むことができる。前記炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物は単独または混合して使用することができ、前記炭素数12以上50以下の直鎖または分枝鎖の飽和炭化水素化合物の例としては炭素数12以上16以下のノルマルアルカン、炭素数12以上16以下のイソアルカン、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
より具体的に、前記炭化水素オイルとしては炭素数12のドデカン、炭素数16のヘキサデカン、またはIsopar M(炭素数12以上14以下のイソアルカンと炭素数13以上16以下のイソアルカンの混合物)を使用することができる。
【0035】
前記炭化水素オイルは、スチレンモノマーを含む分散相組成物全体重量(100%重量)を基準にして30重量%以下、または10重量%以上30重量%以下で含むことができる。具体的に、前記炭化水素オイルの含量下限は10重量%以上、または11重量%以上、または12重量%以上、または13重量%以上、または14重量%以上であり、その上限は例えば、30重量%以下、または25重量%以下、または21重量%以下であってもよい。
【0036】
より具体的に、前記炭化水素オイルはスチレンモノマーを含む分散相組成物全体重量(100%重量)を基準にして、10重量%以上30重量%以下、11重量%以上30重量%以下、12重量%以上30重量%以下、13重量%以上30重量%以下、14重量%以上30重量%以下、10重量%以上25重量%以下、11重量%以上25重量%以下、12重量%以上25重量%以下、13重量%以上25重量%以下、14重量%以上25重量%以下、10重量%以上20重量%以下、11重量%以上20重量%以下、12重量%以上20重量%以下、13重量%以上20重量%以下、14重量%以上20重量%以下で含まれてもよい。
【0037】
前記炭化水素オイルの含量が前記含量範囲未満で使用される場合、低密度特性のキャリア粒子を確保しにくく、前記含量範囲を過度に超過する場合、ポリスチレン系粒子の形状が球形を有しにくくなって製造される粒子の均一性が減少するようになる。
【0038】
前記炭化水素オイルの密度は0.75g/cm以上0.80g/cm以下、0.75g/cm以上0.795g/cm以下、または0.75g/cm以上0.791g/cm以下であってもよい。前記炭化水素オイルの密度が前述の範囲であって非常に低いため、これによってポリスチレン系粒子の密度を顕著に下げることができる。
【0039】
但し、前記炭化水素オイルの密度が0.75g/cm未満に過度に減少するようになれば、懸濁重合中に炭化水素オイルとポリスチレンの相分離速度の減少によって粒子表面が均一でなく凹んだ形状の粒子が多数製造される限界がある。
【0040】
前記マイクロキャリアの見かけ密度は0.95g/cm以上1.05g/cm未満であってもよい。具体的に、前記マイクロキャリアの見掛け密度は0.95g/cm以上、0.99g/cm以上、0.995g/cm以上、0.996g/cm以上であってもよく、1.05g/cm未満、1.049g/cm以下、1.04g/cm以下、1.03g/cm以下であってもよく、0.95g/cm以上1.05g/cm未満、0.99g/cm以上1.05g/cm未満、0.995g/cm以上1.05g/cm未満、0.996g/cm以上1.05g/cm未満、0.95g/cm以上1.049g/cm以下、0.99g/cm以上1.049g/cm以下、0.995g/cm以上1.049g/cm以下、0.996g/cm以上1.049g/cm以下、0.95g/cm以上1.04g/cm以下、0.99g/cm以上1.04g/cm以下、0.995g/cm以上1.04g/cm以下、0.996g/cm以上1.04g/cm以下、0.95g/cm以上1.03g/cm以下、0.99g/cm以上1.03g/cm以下、0.995g/cm以上1.03g/cm以下、0.996g/cm以上1.03g/cm以下であってもよい。
【0041】
上述の低密度範囲を有することによって、細胞培養後マイクロキャリアと細胞を分離回収時、重力による沈降速度差を通じて細胞とマイクロキャリアを容易に分離することができる。
【0042】
前記マイクロキャリアの見掛け密度を測定する方法は大きく制限されないが、例えば、乾燥過程が完了した条件のマイクロキャリア試料を密度を調節したエタノール水溶液と蒸留水にそれぞれ添加して粒子が浮遊または沈降するか確認して見掛け密度を測定することができる。
【0043】
より具体的に、常温(25℃)および常圧(1atm)条件で乾燥過程が完了した条件のマイクロキャリア試料を、密度が0.95g/cm、0.97g/cm、0.98g/cmまたは0.995g/cmであるエタノール水溶液と、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)にそれぞれ添加して、粒子が浮遊または沈降するか確認して見掛け密度を評価することができる。
【0044】
例えば、密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で浮遊する場合、マイクロキャリアの見掛け密度が0.95g/cm未満であり、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)で沈降する場合、マイクロキャリアの見掛け密度が1g/cm超過であり、密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)で浮遊する場合、マイクロキャリアの見掛け密度が0.95g/cm以上1g/cm未満であり、密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が0.97g/cmであるエタノール水溶液で浮遊する場合、マイクロキャリアの見掛け密度が0.95g/cm以上0.97g/cm未満であり、密度が0.98g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が0.995g/cmであるエタノール水溶液で浮遊する場合、マイクロキャリアの見掛け密度が0.98g/cm以上0.995g/cm未満であると評価することができる。
【0045】
前記マイクロキャリアの密度が1.05g/cmを超過する場合、細胞とマイクロキャリアの密度差が少なくて培養後細胞分離回収時に遠心分離が難しいことがあり、0.95g/cm未満の場合、培養初期にマイクロキャリアが培養液表面のみで浮遊して細胞を付着しにくい問題が発生することがある。
【0046】
前記実施形態の細胞培養用マイクロキャリアが適用される細胞は付着性動物細胞であって、その例が大きく限定されるのではないが、例えば、線維芽細胞(fibroblasts)、上皮細胞(epithelial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨細胞(chondrocyte)、肝細胞、ヒト由来臍帯血細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、腎臓細胞(HEK293、BHK21、MDCK、ベロ細胞(vero cell)など)、またはこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0047】
前記細胞の密度は1.02g/cm以上1.1g/cm未満であってもよい。
【0048】
また、前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下であってもよい。前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下であって密度差が大きく出なくても、前記磁性粒子を含むことによって細胞とマイクロキャリアを容易に分離することができる。
【0049】
一方、前記磁性粒子は、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を含むことができる。前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は、磁性粒子の表面に疎水性官能基が結合された磁性粒子を意味することができる。
【0050】
具体的に、表面処理とは、磁性粒子の凝集を防止し分散性を向上させるために、磁性粒子と疎水性官能基を含む化合物を反応させて磁性粒子の表面に疎水性官能基を結合させることを意味する。
【0051】
前記実施形態で、前記磁性粒子とは、磁気的性質を示す粒子を意味する。全ての物質は磁場(magnetic field)と相互作用して引力(attractive force)または斥力(repulsive force)が発生する。即ち、物質に磁場を加えると磁化(magnetization)され、前記物体が磁化される様相によって強磁性体、常磁性体、反磁性体、フェリ磁性体などに区分される。
【0052】
前記磁性粒子は溶液合成、共同沈殿、ゾル-ゲル方法、高エネルギー粉砕、水熱合成、マイクロエマルジョン合成、熱分解による合成または、音波化学的合成によって製造できるが、これらに対し限定されるのではない。
【0053】
前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の直径は、0.1nm以上1000nm以下であってもよい。即ち、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は、疎水性官能基で表面処理された磁性ナノ粒子であってもよい。
【0054】
前記ナノ粒子はナノメートル(nm)の大きさを有する粒子を意味する。ナノメートルの大きさとは、マイクロメートル(10-6)の大きさを1,000分の1に縮小したものであって、物質の大きさがナノメートル水準に小さくなれば、多様で特異な物理的、化学的、機械的および電子的特性を示すようになる。
【0055】
磁性物質の大きさがナノメートルに小さくなるとそれぞれの粒子が磁気的単一区域を形成するようになり、このような粒子のコロイド溶液は各粒子の熱揺らぎ(thermal fluctuation)によって磁気双極子の方向がそれぞれ不特定な方向に配向するようになって外形的に示される純磁気力(net magnetic force)は「0」と示されるようになる。しかし、外部から内部の熱的エネルギーより大きい磁場を加えると、粒子の磁気双極子は一方向に整列するようになって磁性体に変わるようになる。
【0056】
前記磁性粒子の種類は大きく制限されず金属ナノ粒子を使用することができる。例えば、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、およびスズ(Sn)からなる群より選択される1種以上の金属またはその酸化物を含むことができる。具体的に、前記磁性粒子は鉄(Fe)粒子を含むことができる。
【0057】
前記磁性粒子は、磁性粒子表面に疎水性官能基を含む疎水性リガンドを含むことができる。即ち、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は、磁性粒子表面に疎水性官能基を含有した疎水性リガンドを含むことができる。
【0058】
前記マイクロキャリアが疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を含むことにより、表面処理されていない磁性粒子を含むマイクロキャリアと比較して、金属粒子が独立分散して粒子の固まりが防止されるだけでなく酸化安定性が向上できる。
【0059】
前記リガンドは配位結合している化合物の中心金属イオンの周囲に結合している分子やイオンを意味し、錯化合物で中心金属原子に電子対を提供しながら配位結合を形成する原子または原子団を意味することができる。
【0060】
即ち、前記疎水性リガンドは、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の中心磁性粒子イオンの周囲に結合している疎水性分子または疎水性イオンを意味することができる。
【0061】
具体的に、前記疎水性リガンドは、炭素数2~20の脂肪酸またはその誘導体および炭素数2~20の脂肪酸アミンまたはその誘導体からなる群より選択された1種以上のリガンドを含むことができる。
【0062】
前記脂肪酸誘導体は脂肪酸イオンを含むことができ、脂肪酸アミン誘導体は脂肪酸アミンイオンを含むことができる。
【0063】
前記脂肪酸は炭化水素鎖およびその末端にはカルボキシル基(-COOH)を含む化合物であって、炭化水素鎖は疎水性を有するが、末端のカルボキシル基を通じて親水性である物質と相互作用できる。前記脂肪酸は、不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸であってもよい。
【0064】
前記不飽和脂肪酸は二重結合を1つ以上有している脂肪酸であって、末端にある-COOHまたは-COOは磁性粒子表面に露出されている親水性基および/または磁性粒子の不飽和配位サイトなどと水素結合、イオン結合、共有結合などを形成することができる。
【0065】
前記不飽和脂肪酸が二重結合を含むことによって、不飽和脂肪酸の曲がった炭化水素鎖が磁性粒子の外側に配向されながら、疎水性チャンネルを形成することができる。
【0066】
即ち、前述の前記疎水性官能基は、炭素数2~20の脂肪酸またはその誘導体、または炭素数2~20の脂肪酸アミン、またはその誘導体に由来した炭化水素鎖を含むことができる。より具体的に、前記疎水性官能基は炭素数2~50のアルキル基、または炭素数2~50のアルケニル基を含むことができる。
【0067】
これにより、前記疎水性リガンドは、前記疎水性官能基とその末端に結合した-COOHまたは-COOを含むことができる。
【0068】
前記炭素数2~20の脂肪酸の種類は大きく制限されないが、例えば、オレイン酸、カプロン酸、ステアリン酸のうちのいずれか一つを含むことができる。
【0069】
また、前記炭素数2~20の脂肪酸アミンの種類は大きく制限されないが、例えば、オレイルアミン、ブチルアミン、オクチルアミンのうちのいずれか一つを含むことができる。
【0070】
例えば、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は、図1に示されたような結合構造を有することができる。
【0071】
前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子製造時、炭素数2~20の脂肪酸を塩基性水溶液に添加して、炭素数2~20の脂肪酸イオンを形成した後、磁性ナノ粒子と反応させることによって炭素数2~20の脂肪酸末端に含まれている-COOと磁性ナノ粒子の間の配位結合が図1のように形成できる。
【0072】
一方、前記磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下であってもよい。即ち、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下であってもよい。
【0073】
具体的に、前記磁性粒子の密度が5g/cm以上、5.1g/cm以上、5.15g/cm以上または6g/cm以下、5.8g/cm以下、5.5g/cm以下、5.3g/cm以下、または5g/cm以上6g/cm以下、5g/cm以上5.8g/cm以下、5g/cm以上5.5g/cm以下、5g/cm以上5.3g/cm以下、5.1g/cm以上6g/cm以下、5.1g/cm以上5.8g/cm以下、5.1g/cm以上5.5g/cm以下、5.1g/cm以上5.3g/cm以下、5.15g/cm以上5.8g/cm以下、5.15g/cm以上5.5g/cm以下、5.15g/cm以上5.3g/cm以下であってもよい。
【0074】
前述のように、前記磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下であることにより、炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を5重量部超で過度に添加する場合、密度の大きい磁性粒子を過量含むことによって粒子の全体的な密度が高まって培養器内で粒子が円滑に浮遊しないだけでなく細胞毒性を示すことがある。
【0075】
また、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の直径が100nm以上2000nm以下であってもよい。前記磁性粒子の直径測定方法は大きく制限されないが、例えば、動的光散乱法(Dynamic light scattering、DLS)などを用いて測定することができる。
【0076】
具体的に、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の直径が100nm以上、300nm以上、500nm以上、または2000nm以下、1500nm以下、1000nm以下、800nm以下、600nm以下、または100nm以上2000nm以下、100nm以上1500nm以下、100nm以上1000nm以下、100nm以上800nm以下、100nm以上600nm以下、300nm以上2000nm以下、300nm以上1500nm以下、300nm以上1000nm以下、300nm以上800nm以下、300nm以上600nm以下、または500nm以上2000nm以下、500nm以上1500nm以下、500nm以上1000nm以下、500nm以上800nm以下、500nm以上600nm以下であってもよい。
【0077】
前記ポリスチレン系粒子は、炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;が内部に分散したポリスチレン系高分子を含むことができる。
【0078】
即ち、前記ポリスチレン系粒子は、ポリスチレン系高分子マトリックスと、前記ポリスチレン系高分子マトリックス内部に分散した炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上;および磁性粒子;を含むことができる。
【0079】
具体的に、前記細胞培養用マイクロキャリアは、前記炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上の内部に磁性粒子が分散した状態で存在し得る。
【0080】
前述のように、前記細胞培養用マイクロキャリアは、炭素数12以上である炭化水素オイル、磁性粒子およびスチレン単量体が含まれている単量体組成物の懸濁重合反応結果物を含み、炭素数12以上である炭化水素オイルが懸濁重合途中にポリスチレンと相分離されながら形成された空間である空隙を含むことができる。
【0081】
したがって、単量体組成物に磁性粒子が含まれることによって、炭素数12以上である炭化水素オイル、またはこれから誘導された空隙のうちの少なくとも一つ以上の内部に磁性粒子が分散した状態で存在し得る。
【0082】
具体的に、前記ポリスチレン系粒子は、炭素数12以上である炭化水素オイル、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子およびスチレン単量体が含まれている単量体組成物の懸濁重合反応結果物を含むことができる。
【0083】
前記単量体組成物は炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を0.01重量部以上5重量部以下で含むことができる。具体的に、前記単量体組成物は炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.04重量部以上で含むことができ、5重量部以下、4重量部以下で含むことができ、0.01重量部以上5重量部以下、0.02重量部以上5重量部以下、0.02重量部以上4重量部以下、0.04重量部以上4重量部以下で含むことができる。
【0084】
炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を0.01重量部未満に過度に減少する場合、前記マイクロキャリアの磁性が十分に実現されなくて、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時、分離精製が容易でないだけでなく、回収工程が追加的に伴われて工程が複雑になる限界がある。
【0085】
反面、炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を5重量部超過で過度に添加する場合、密度の大きい磁性粒子を過量含むことによって粒子の全体的な密度が高まって培養器内で粒子が円滑に浮遊しないだけでなく細胞毒性を示すことがある。
【0086】
また、前記単量体組成物は、スチレン単量体1重量部に対してエチレン系不飽和架橋剤を0.033重量部超3重量部未満で含むことができる。
【0087】
具体的に、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤を0.033重量部未満に過度に減少する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が減少することにより炭化水素オイルによって生成された空隙が安定的に製造されにくくてポリスチレン系粒子の密度を十分に下げにくい限界がある。
【0088】
反面、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤を3重量部以上に過度に増加する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が増加しながら、ポリスチレン系粒子の全体的な密度が目標にした水準まで下がりにくい限界がある。
【0089】
また、前記単量体組成物全体重量に対して前記炭化水素オイルの含量が10重量%以上30重量%以下、または14重量%以上21重量%以下であってもよい。前記炭化水素オイルの含量が過度に減少する場合、炭化水素オイルが粒子内部に含浸される量が減少してポリスチレン系粒子の密度が十分に低まりにくい。また、前記炭化水素オイルの含量が過度に増加する場合、ポリスチレン系粒子の形状が球形を成しにくくなって製造される粒子の均一性が減少するようになる。
【0090】
前記エチレン系不飽和架橋剤の例としてはジビニルベンゼンが挙げられる。
【0091】
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満であってもよい。前記ポリスチレン系粒子の全体表面積はポリスチレン系粒子の最外殻で空気中に露出された表面積の合計を意味し、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積は前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアがポリスチレン系粒子の最外殻表面と接触する表面積の合計を意味する。また、前記マイクロポアとは、最大直径がマイクロメートルサイズである空隙であって、例えば1μm以上500μm以下の最大直径を有する空隙を意味する。
【0092】
より具体的に、前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率は下記数式1を通じて求めることができる。
【0093】
[数式1]
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率(%)=[(前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積)/(前記ポリスチレン系粒子の全体表面積)]×100
【0094】
前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満というのは、前記ポリスチレン系粒子の表面に存在するマイクロサイズポアが全くないか、殆どないと見ることができる程度に極めて少ないということを意味する。即ち、前記ポリスチレン系粒子表面にはマイクロポアが存在しないことがある。
【0095】
従来はポリスチレン粒子の密度を下げるために発泡剤を投入して発泡スチレンを製造してきたが、この場合、ポリスチレン粒子の直径範囲と密度範囲の分布が過度に広くなることにより細胞培養用マイクロキャリアとして適用可能な範囲の収率を確保するのに困難があった。
【0096】
反面、前記ポリスチレン系粒子は、前記ポリスチレン系粒子の全体表面積を基準にして、前記ポリスチレン系粒子表面に存在するマイクロポアと接触する前記ポリスチレン系粒子の表面積の比率が0.01%未満であるので、従来の発泡スチレンと異なり発泡剤による発泡工程が全く行われなくて、ポリスチレン粒子の直径範囲と密度範囲の分布をより精密に調節することができる長所がある。
【0097】
前記マイクロキャリアの平均直径が50μm以上400μm以下であってもよい。
【0098】
具体的に、前記マイクロキャリアの平均直径は50μm以上、75μm以上、100μm以上、120μm以上、または400μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、または50μm以上400μm以下、50μm以上300μm以下、50μm以上250μm以下、50μm以上200μm以下、50μm以上400μm以下、75μm以上300μm以下、75μm以上250μm以下、75μm以上200μm以下、100μm以上400μm以下、100μm以上300μm以下、100μm以上250μm以下、100μm以上200μm以下、120μm以上400μm以下、120μm以上300μm以下、50μm以上120μm以下、50μm以上120μm以下であってもよい。前記マイクロキャリアの平均直径が上述の範囲を満足する場合、細胞付着および培養性能に優れる。一方、前記マイクロキャリアの平均直径が50μm未満である場合、細胞培養の可能な表面積が小さくて培養効率が低下する問題点が発生する恐れがあり、400μm超過である場合、付着細胞間相互作用が低下し、培養器内細胞密度が下がって、細胞培養効率が低下する問題が発生することがある。
【0099】
前記マイクロキャリアの直径は前記マイクロキャリアの重心点を通過する直線がマイクロキャリアの最外殻表面と接する二地点間の距離を意味し、前記マイクロキャリアの平均直径は光学顕微鏡を通じて前記細胞培養用マイクロキャリアに含まれる全体粒子の直径を確認して求めることができる。また、前記マイクロキャリアの平均粒径は、前記マイクロキャリアの製造過程で得られる全体マイクロキャリアの直径やこれらの平均直径を通じても確認可能である。
【0100】
前記マイクロキャリアは50μm以上400μm以下の平均直径を有する個別粒子の群(group)であってもよく、このような群(group)に含まれる個別微粒子は平均的に50μm以上400μm以下の直径を有することができる。より具体的に、前記群(group)に含まれる個別微粒子の95%、または99%が50μm以上400μm以下の直径を有することができる。
【0101】
また、前記マイクロキャリアは、比表面積が200cm/g以上1000cm/g以下であってもよい。具体的に、前記マイクロキャリアは比表面積が200cm/g以上、300cm/g以上、330cm/g以上、350cm/g以上であってもよく、1000cm/g以下、500cm/g以下、450cm/g以下であってもよく、200cm/g以上1000cm/g以下、300cm/g以上1000cm/g以下、300cm/g以上500cm/g以下、300cm/g以上450cm/g以下、330cm/g以上450cm/g以下、350cm/g以上450cm/g以下であってもよい。
【0102】
前記比表面積の測定方法は大きく制限されないが、例えば見掛け密度から、下記数式を用いてマイクロキャリアの比表面積を計算することができる。
【0103】
[数式]
マイクロキャリアの比表面積(cm/g)=3/(r×ρ)
【0104】
上記数式中、rはマイクロキャリアの平均半径を意味し、ρはマイクロキャリアの見掛け密度を意味する。
【0105】
前記ポリスチレン系粒子表面に、プライマー高分子層、細胞付着誘導層、またはこれらの組み合わせ層がさらに含まれてもよい。即ち、前記ポリスチレン系粒子表面に、プライマー高分子層1種、細胞付着誘導層1種、またはプライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種の混合層がさらに含まれてもよい。プライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種の混合層でこれらの積層順序は特に限定されず、プライマー高分子層上に細胞付着誘導層が積層された構造、あるいは細胞付着誘導層上にプライマー高分子層が積層された構造を全て適用可能である。
【0106】
一方、前記プライマー高分子層は官能基がないポリスチレン系粒子表面に機能性高分子を導入することができる粘着層の役割を果たし、これによってマイクロキャリア表面に細胞付着のための高分子層が効果的に導入され培養中にも安定的に維持されるようにする。
【0107】
前記プライマー高分子層はその例が大きく限定されるのではないが、水相接着を誘導することができるカテコール誘導体であってL-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、ドーパミン(dopamine)、ポリドーパミン、ノルエピネフリン(norepinephrine)、エピネフリン(epinephrine)、エピガロカテキン(epigallocatechin)、およびこれらの誘導体からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0108】
一方、前記細胞付着誘導層は細胞付着性物質から構成され、これらは細胞の膜貫通タンパク質(transmembrane protein)が結合できる場所を提供する役割を果たして、付着性細胞が安定的に付着、スプレディング(spreading)および培養されるようにする。
【0109】
前記細胞付着誘導層を形成する高分子はその例が大きく限定されるのではないが、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン(fibronectin)キトサン、ポリドーパミン、ポリL-リシン、ビトロネクチン(vitronectin)、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン(lignin)、陽イオン性デキストランおよびこれらの誘導体からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0110】
一例として、前記マイクロキャリアはポリスチレン系粒子の表面に形成されるプライマー高分子層を含んで、マイクロキャリアの表面を親水性に改質することを通じて水分散され、前記プライマー高分子層表面に細胞付着誘導層を導入して培養液内でマイクロキャリアの浮遊度が調節でき、細胞を安定的に付着培養する効果を有することができる。
【0111】
一方、前記ポリスチレン系粒子の半径とプライマー高分子層の厚さの比率は1:0.00001~1:0.01、または1:0.0001~1:0.001であってもよい。
【0112】
ポリスチレン系粒子の半径と表面コーティング層の厚さの比率が1:0.00001未満である場合、ポリスチレン系粒子に対比してプライマー高分子層が過度に薄くてマイクロキャリア表面が親水性に改質する効果が微小であり、1:0.01を超過する場合、ポリスチレン系粒子に対比してプライマー高分子層が厚くなって、細胞培養時、細胞とマイクロキャリアの付着度が減少する恐れがある。
【0113】
発明の他の実施形態によれば、炭素数12以上である炭化水素オイルの存在下で、磁性粒子およびスチレン単量体が含有された単量体組成物の懸濁重合反応を行う段階を含む、細胞培養用マイクロキャリアの製造方法を提供することができる。
【0114】
前記炭化水素オイル、磁性粒子、スチレン単量体に関する内容は前記一実施形態で前述した内容を全て含む。即ち、前記磁性粒子は疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を含むことができる。
【0115】
前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は、磁性粒子の表面に疎水性官能基が結合された磁性粒子を意味することができる。
【0116】
具体的に、表面処理とは、磁性粒子の凝集を防止し分散性を向上させるために、磁性粒子と疎水性官能基を含む化合物を反応させて磁性粒子の表面に疎水性官能基を結合させることを意味する。
【0117】
前記実施形態で、前記磁性粒子とは、磁気的な性質を示す粒子を意味する。全ての物質は磁場(magnetic field)と相互作用して引力(attractive force)または、斥力(repulsive force)が発生する。即ち、物質に磁場を加えると磁化(magnetization)され、前記物体が磁化される様相によって強磁性体、常磁性体、反磁性体、フェリ磁性体などに区分される。
【0118】
前記磁性粒子は溶液合成、共同沈殿、ゾル-ゲル方法、高エネルギー粉砕、水熱合成、マイクロエマルジョン合成、熱分解による合成または音波化学的合成によって製造することができるが、これらに限定されるのではない。
【0119】
前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の直径は0.1nm以上1000nm以下であってもよい。即ち、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は疎水性官能基で表面処理された磁性ナノ粒子であってもよい。
【0120】
前記ナノ粒子はナノメートルの大きさを有する粒子を意味する。ナノメートルの大きさとはマイクロメートル(10-6)の大きさを1,000分の1に縮小したものであって、物質の大きさがナノメートル水準に小さくなると多様で特異な物理的、化学的、機械的および電子的特性を示すことになる。
【0121】
磁性物質の大きさがナノメートルに小さくなるとそれぞれの粒子が磁気的単一区域を形成するようになり、このような粒子のコロイド溶液は各粒子の熱揺らぎ(thermal fluctuation)によって磁気双極子の方向がそれぞれ不特定の方向に配向するようになって外形的に現れる純磁気力(net magnetic force)は「0」として現れるようになる。しかし、外部から内部の熱的エネルギーより大きい磁場を加えると、粒子の磁気双極子は一方向に整列するようになって磁性体に変わるようになる。
【0122】
前記磁性粒子の種類は大きく制限されず、金属ナノ粒子を使用することができる。例えば、金(Au)、銀(Ag)、コバルト(Co)、銅(Cu)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)およびスズ(Sn)からなる群より選択される1種以上の金属またはその酸化物を含むことができる。具体的に、前記磁性粒子は鉄(Fe)粒子を含むことができる。
【0123】
前記磁性粒子は、磁性粒子表面に疎水性官能基を含有した疎水性リガンドを含むことができる。即ち、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は磁性粒子表面に疎水性官能基を含有した疎水性リガンドを含むことができる。
【0124】
前記マイクロキャリアの製造方法が疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を含むことにより、表面処理されていない磁性粒子を含む場合と比較して、最終製造されるマイクロキャリア上で金属粒子が独立分散して粒子の固まりが防止されるだけでなく酸化安定性が向上できる。
【0125】
前記リガンドは配位結合している化合物の中心金属イオンの周囲に結合している分子やイオンを意味し、錯化合物で中心金属原子に電子対を提供しながら配位結合を形成する原子または原子団を意味することができる。
【0126】
即ち、前記疎水性リガンドは、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の中心磁性粒子イオンの周囲に結合している疎水性分子または疎水性イオンを意味することができる。
【0127】
具体的に、前記疎水性リガンドは、炭素数2~20の脂肪酸またはその誘導体、または炭素数2~20の脂肪酸アミン、またはその誘導体を含むことができる。
【0128】
前記脂肪酸誘導体は脂肪酸イオンを含むことができ、脂肪酸アミン誘導体は脂肪酸アミンイオンを含むことができる。
【0129】
前記脂肪酸は炭化水素鎖およびその末端にはカルボキシル基(-COOH)を含む化合物であって、炭化水素鎖は疎水性を有するが末端のカルボキシル基を通じて親水性である物質と相互作用できる。前記脂肪酸は不飽和脂肪酸または飽和脂肪酸であってもよい。
【0130】
前記不飽和脂肪酸は二重結合を1つ以上有している脂肪酸であって、末端にある-COOHまたは-COOは磁性粒子表面に露出されている親水性基および/または磁性粒子の不飽和配位サイトなどと水素結合、イオン結合、共有結合などを形成することができる。
【0131】
前記不飽和脂肪酸が二重結合を含むことにより、不飽和脂肪酸の曲がった炭化水素鎖が磁性粒子の外側に配向されながら、疎水性チャンネルを形成することができる。
【0132】
即ち、前述の前記疎水性官能基は、炭素数2~20の脂肪酸またはその誘導体、または炭素数2~20の脂肪酸アミン、またはその誘導体に由来した炭化水素鎖を含むことができる。より具体的に、前記疎水性官能基は、炭素数2~50のアルキル基、または炭素数2~50のアルケニル基を含むことができる。
【0133】
これにより、前記疎水性リガンドは、前記疎水性官能基とその末端に結合した-COOHまたは-COOを含むことができる。
【0134】
前記炭素数2~20の脂肪酸の種類は大きく制限されないが、例えば、オレイン酸、カプロン酸、ステアリン酸のうちのいずれか一つを含むことができる。
【0135】
また、前記炭素数2~20の脂肪酸アミンの種類は大きく制限されないが、例えば、オレイルアミン、ブチルアミン、オクチルアミンのうちのいずれか一つを含むことができる。
【0136】
例えば、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子は、図1に示されているような結合構造を有することができる。
【0137】
前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子製造時、炭素数2~20の脂肪酸を塩基性水溶液に添加して、炭素数2~20の脂肪酸イオンを形成した後、磁性ナノ粒子と反応させることにより、炭素数2~20の脂肪酸末端に含まれている-COOと磁性ナノ粒子の間の配位結合が図1のように形成できる。
【0138】
一方、前記磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下であってもよい。即ち、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下であってもよい。
【0139】
具体的に、前記磁性粒子の密度が5g/cm以上、5.1g/cm以上、5.15g/cm以上、または6g/cm以下、5.8g/cm以下、5.5g/cm以下、5.3g/cm以下、または5g/cm以上6g/cm以下、5g/cm以上5.8g/cm以下、5.1g/cm以上5.8g/cm以下、5.1g/cm以上5.5g/cm以下、5.1g/cm以上5.3g/cm以下、5.15g/cm以上5.3g/cm以下であってもよい。
【0140】
前述のように、前記磁性粒子の密度が5g/cm以上6g/cm以下であることにより、炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を5重量部超で過度に添加する場合、密度の大きい磁性粒子を過量含むことにより、粒子の全体的な密度が高まって培養器内で粒子が円滑に浮遊しないだけでなく細胞毒性を示すことがある。
【0141】
また、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の直径が100nm以上2000nm以下であってもよい。
【0142】
具体的に、前記疎水性官能基で表面処理された磁性粒子の直径が100nm以上、300nm以上、500nm以上、または2000nm以下、1500nm以下、1000nm以下、800nm以下、600nm以下、または100nm以上2000nm以下、100nm以上1500nm以下、100nm以上1000nm以下、100nm以上800nm以下、100nm以上600nm以下、300nm以上2000nm以下、300nm以上1500nm以下、300nm以上1000nm以下、300nm以上800nm以下、300nm以上600nm以下、または500nm以上2000nm以下、500nm以上1500nm以下、500nm以上1000nm以下、500nm以上800nm以下、500nm以上600nm以下であってもよい。
【0143】
前記単量体組成物は、炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を0.01重量部以上5重量部以下で含むことができる。具体的に、前記単量体組成物は、炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を0.01重量部以上、0.02重量部以上、0.04重量部以上で含むことができ、5重量部以下、4重量部以下で含むことができ、0.01重量部以上5重量部以下、0.02重量部以上5重量部以下、0.02重量部以上4重量部以下、0.04重量部以上4重量部以下で含むことができる。
【0144】
炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を0.01重量部未満に過度に減少する場合、前記マイクロキャリアの磁性が十分に実現されなくて、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時、分離精製が容易でないだけでなく、回収工程が追加的に伴われて工程が複雑になる限界がある。
【0145】
反面、炭素数12以上である炭化水素オイル100重量部に対して、磁性粒子を5重量部超で過度に添加する場合、密度の大きい磁性粒子を過量含むことにより粒子の全体的な密度が高まって培養器内で粒子が円滑に浮遊しないだけでなく細胞毒性を示すことがある。
【0146】
また、前記単量体組成物は、スチレン単量体1重量部に対してエチレン系不飽和架橋剤を0.033重量部超3重量部未満で含むことができる。
【0147】
具体的に、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤0.033重量部未満に過度に減少する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が減少することにより炭化水素オイルによって生成された空隙が安定的に製造されにくくてポリスチレン系粒子の密度を十分に下げにくい限界がある。
【0148】
反面、スチレン単量体1重量部に対して、エチレン系不飽和架橋剤3重量部以上に過度に増加する場合、前記ポリスチレン系高分子の架橋密度が増加しながら、ポリスチレン系粒子の全体的な密度が目標にした水準まで下がりにくい限界がある。
【0149】
また、前記単量体組成物全体重量に対して前記炭化水素オイルの含量が10重量%以上30重量%以下、または14重量%以上21重量%以下であってもよい。前記炭化水素オイルの含量が過度に減少する場合、炭化水素オイルが粒子内部に含浸される量が減少してポリスチレン系粒子の密度が十分に下がりにくい。また、前記炭化水素オイルの含量が過度に増加する場合、ポリスチレン系粒子の形状が球形を有しにくくなって製造される粒子の均一性が減少するようになる。
【0150】
より具体的に、前記単量体組成物の懸濁重合反応は、前記単量体組成物を水系分散液に混合しせん断力を加えて前記単量体組成物を水系分散液に液滴形態に均質化する段階;および前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階を含むことができる。
【0151】
前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下、または400rpm以上800rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階でポリスチレンと炭化水素オイルの粒子構造形成中にポリスチレンと炭化水素オイルの相分離によって内部空隙を形成しながら細胞培養用マイクロキャリアの密度をより下げることができながらも、球形粒子比率の高い細胞培養用マイクロキャリア製造が可能である。
【0152】
前記均質化された単量体組成物を300rpm以上1000rpm以下、または400rpm以上800rpm以下の攪拌速度で懸濁重合する段階で前記懸濁重合条件の例が大きく限定されるのではないが、例えば、50℃以上100℃の温度で3時間以上18時間以下で行うことができる。
【0153】
一方、前記細胞培養用マイクロキャリアの製造方法は、前記懸濁重合反応を行う段階以後に、懸濁重合反応結果物を洗浄する段階および乾燥する段階をさらに含むことができる。
【0154】
具体的に、前記懸濁重合反応結果物を洗浄する段階は、懸濁重合反応結果物を10μm以上100μm以下のシーブ(sieve)にかけた後、エタノール100%および/または50℃以上80℃以下の高温の蒸留水に5-7回常温攪拌する段階を含むことができる。
【0155】
前記懸濁重合反応結果物を乾燥する段階は、真空オーブンに入れて常温で真空乾燥する段階を含む。但し、これに限定されるのではなく、通常使用されると知られた乾燥方法を別段の制限なく使用することができる。
【0156】
一方、前記他の実施形態の細胞培養用マイクロキャリアの製造方法は、前記懸濁重合反応を行う段階以後に、前記懸濁重合反応結果物の表面にプライマー高分子層、細胞付着誘導層、またはこれらの組み合わせ層を塗布する段階をさらに含むことができる。
【0157】
前記プライマー高分子層、細胞付着誘導層に関する内容は前記一実施形態で前述した内容を全て含む。
【0158】
発明のまた他の実施形態によれば、細胞および前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアを含む細胞培養組成物を提供することができる。前記細胞培養用マイクロキャリアに関する内容は前記一実施形態で前述した内容を全て含む。
【0159】
前記細胞は付着性動物細胞であって、その例が大きく限定されるのではないが、例えば、線維芽細胞(fibroblasts)、上皮細胞(epithelial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨細胞(chondrocyte)、肝細胞、ヒト由来臍帯血細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、腎臓細胞(HEK293、BHK21、MDCK、ベロ細胞(vero cell)など)、またはこれらの2種以上の混合物であってもよい。
【0160】
前記細胞の密度は、1.02g/cm以上1.1g/cm未満であってもよい。
【0161】
また、前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下であってもよい。前記細胞培養用マイクロキャリアと前記細胞の密度差が0.02g/cm以上0.20g/cm以下であって密度差が大きく出なくても、磁性粒子を含むことにより細胞とマイクロキャリアを容易に分離することができる。
【0162】
前記細胞培養組成物は、培地溶液をさらに含むことができる。前記培地溶液は血しょうやリンパ液などの体液に基づいた生体の条件に近い栄養分とpH、温度、浸透圧などの環境条件を十分に満足させるための各種添加剤を含むことができ、これは細胞培養関連技術分野で広く知られた多様な物質を制限なく使用することができる。
【0163】
一例として、前記一実施形態の細胞培養用マイクロキャリアは培地溶液より小さい密度を有して、培地溶液内に注入されて攪拌条件下で培地溶液内部で浮遊するようになる。その後、低密度のマイクロキャリアの表面に付着される細胞の数が増加することによって、細胞が付着されたマイクロキャリア(以下、「マイクロキャリア-細胞結合体」という)の密度は次第に増加して培地溶液内で次第に沈むようになる。
【0164】
よって、細胞が付着されたマイクロキャリア(マイクロキャリア-細胞結合体)を細胞脱着酵素添加処理後、遠心分離を通じて分離して、マイクロキャリア-細胞結合体から細胞を分離させることによって培養された細胞を容易に確保することができる。
【発明の効果】
【0165】
本発明によれば、細胞培養が可能なように低密度を有しながら、細胞培養後マイクロキャリアと細胞の分離回収時より容易に分離することができる細胞培養用マイクロキャリア、その製造方法、およびこれを用いる細胞培養方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0166】
図1】疎水性官能基で表面処理された磁性粒子を示したものである。
図2】実施例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアのSEMイメージを示したものである。
図3】実施例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアの粒子断面形状SEMイメージを示したものである。
図4】実施例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアの粒子表面形状SEMイメージを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0167】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0168】
<製造例:磁性粒子の製造>
蒸留水130mlにFe3+(Iron(III) chloride hexahydrate、5.41g)およびFe2+塩(salt)(Iron(II) chloride tetrahydrate、1.98g)を添加して400~600rpmで攪拌して磁性粒子水溶液を製造した。
【0169】
オレイン酸(2g)およびアセトン13mlを混合した後、前記磁性粒子水溶液に添加した。
【0170】
30分間攪拌した後、水酸化アンモニウム水溶液(固形分含量25wt%)15mlを徐々に添加した。
【0171】
80℃~90℃に昇温して1時間以上攪拌した後、65℃~75℃に温度を下げ、1 N HClを反応物のpHが2になるまで添加した。
【0172】
最終反応物のpHが7になるまで蒸留水で洗浄した後、常温で2日以上乾燥して表面処理された磁性粒子(粒子直径:500~600nm、粒子密度:5.15g/cm)を製造した。前記磁性粒子の直径は動的光散乱法(Dynamic light scattering、DLS)を用いて測定した。
【0173】
前記磁性粒子の密度(真密度;true density)はピクノメータ(pycnometer)を使用して測定した。
【0174】
<実施例:細胞培養用マイクロキャリアの製造>
実施例1
(1)分散相(dispersive phase)の製造
下記表1に記載された含量でスチレンモノマー(styrene monomer、st)、架橋剤であるジビニルベンゼン(divinylbezene、DVB)、前記製造例の磁性粒子および低密度オイル(Isopar M、密度0.791g/cm)の混合物を100mlバイアルで攪拌した。その後、熱開始剤であるベンゾイルペルオキシド(benzoylperoxide、BPO、2.1重量%)とtert-ブチルペルオキシベンゾエート(tert-butyl peroxybenzoate、t-BP、0.3重量%)をバイアルに追加投入し、5分~10分間常温で攪拌した。各成分間含量は表1に記載した。
【0175】
(2)連続相(continuous phase)の製造
重量平均分子量が85,000~125,000範囲内であり、加水分解率が87~89%であるPVA6gを蒸留水600gに溶解した。詳しい含量は表1のとおりである。
【0176】
(3)懸濁重合による粒子製造
600gの1%PVA水溶液を分散相と混合して均一分散液になるまでオイルバス(oil bath)内で攪拌した。具体的に、常温で400~500rpmで攪拌しながらオイルバスを次第に昇温させ、80℃~90℃の温度および400~600rpm速度条件下で懸濁重合を行った。前記重合は窒素パージ下で実施した。
【0177】
(4)粒子収得
反応4時間後、45μmのシーブ(sieve)を通じて製造された粒子を回収し、エタノールで3回、70℃以上80℃以下の高温蒸留水で3回洗浄した後、80℃オーブンで乾燥した。
【0178】
(5)粒子表面処理
重合後、常温乾燥した粒子をドーパミン塩酸塩(dopamine hydrochloride)が1mg/mLで溶解されたトリス緩衝液(tris buffer)(pH8.0)に浸漬し、常温で1時間以上攪拌して粒子表面にポリドーパミン層を導入した。反応後、45μmのシーブ(sieve)を通じて粒子を回収し、エタノールで3回洗浄した後、80℃オーブンで乾燥した。
【0179】
実施例2~実施例4
下記表1のように分散相と連続相の組成を調節したことを除いて、実施例1と同一な過程を経て粒子を得た。
【0180】
比較例1
磁性粒子を添加しないことを除いて、実施例1と同一な過程を経て粒子を収得した。
【0181】
比較例2、3
下記の表1のように分散相と連続相の組成を調節し、低密度オイルを添加しないことを除いて、実施例1と同一な過程を経て粒子を得た。
【0182】
参考例1
製造例の磁性粒子の代わりにオレイン酸で表面を疎水性に改質していない磁性粒子を添加したことを除いて、実施例1と同一な過程を経て粒子を得た。
【0183】
【表1】
【0184】
<実験例:細胞培養用マイクロキャリアの物性測定>
前記実施例、比較例および参考例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、下記方法で物性を測定し、その結果を表2に示した。
【0185】
1.粒子の大きさ
前記実施例、比較例および参考例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、光学顕微鏡を通じて100個の粒子直径を測定し、これらの算術平均値を求めた。
【0186】
実施例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアのSEMイメージを図2に示した。
【0187】
2.粒子内部構造および空隙直径
(1)粒子内部構造
前記実施例1から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、SEMを通じて粒子内部構造を確認した。具体的に、粒子をエポキシに組み込み(embedding)した後、イオンミリング(ion milling)を通じて断面を製造した後、粒子断面の形状をSEMを通じて確認し、これを図3に示した。
【0188】
(2)空隙直径
前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリアをエポキシに組み込み(embedding)した後、イオンミリング(ion milling)を通じて断面を製造した後、粒子断面の形状をSEMで確認して粒子内部空隙のうち最小直径と最大直径を求めた。
【0189】
3.見掛け密度
前記実施例、比較例および参考例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、乾燥過程が完了した条件の試料を準備し、前記試料を常温(25℃)および常圧(1atm)条件で、密度が0.95g/cm、0.97g/cm、0.98g/cmまたは0.995g/cmであるエタノール水溶液と、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)にそれぞれ添加して粒子が浮遊または沈降するか確認して以下の基準下で見掛け密度を評価した。
【0190】
1)密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で浮遊:0.95g/cm未満
2)密度が1g/cmである蒸留水(DIW)で沈降:1g/cm超過
3)密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が1g/cmである蒸留水(DIW)で浮遊:0.95g/cm以上1g/cm未満
4)密度が0.95g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が0.97g/cmであるエタノール水溶液で浮遊:0.95g/cm以上0.97g/cm未満
5)密度が0.98g/cmであるエタノール水溶液で沈降し、密度が0.995g/cmであるエタノール水溶液で浮遊:0.98g/cm以上0.995g/cm未満
【0191】
4.比表面積
前記得られた見掛け密度から、下記数式を用いて細胞培養用マイクロキャリアの比表面積を計算した。
【0192】
[数式]
マイクロキャリアの比表面積(cm/g)=3/(r×ρ)
【0193】
上記数式中、rはマイクロキャリアの平均半径を意味し、ρはマイクロキャリアの見掛け密度を意味する。
【0194】
5.細胞培養効率
100mL バイオリアクター(bioreactor)に間葉系幹細胞(密度:1.05g/cm)を含む培養液を満たし、前記実施例および比較例から得られた細胞培養用マイクロキャリア1g~1.5gを入れて25rpmで攪拌した。この時、培養液の温度は37℃を維持し、5日間培養して以下の基準によってマイクロキャリアの細胞培養効率を評価した。
【0195】
上:細胞培養時細胞培養効率が80%以上
下:細胞培養時細胞培養効率が80%未満
【0196】
6.磁性分離効率
前記実施例、比較例および参考例から得られた細胞培養用マイクロキャリアが分散した溶液が入っているバイアルの一側面に強力磁石を接触させて、細胞培養用マイクロキャリアが移動するか否かを肉眼で確認した。
【0197】
細胞培養用マイクロキャリアが90%以上磁石が接触された面方向に移動する場合に「優秀」、90%以下に移動する場合「不良」で評価した。
【0198】
7.空隙成分分析
前記実施例、比較例および参考例から得られた細胞培養用マイクロキャリアに対して、内部空隙に含まれている成分を分析するために、細胞培養用マイクロキャリアを凍結粉砕しクロロホルム(Chloroform)に溶かして未反応残留化合物を抽出し、GC/FID(ガスクロマトグラフィー-火炎イオン化検出器)を通じて細部成分を定性、定量分析した。
【0199】
具体的に、クロロホルムとメタノールを1:2体積比で混合した溶媒に濃度別にスチレン(1/4000mg/mL~1mg/mL)、ジビニルベンゼン(1/10000mg/mL~1mg/mL)、Isopar M(1/400mg/mL~10mg/mL)の標準試料を製造した。GC/FID機器に1uLの標準試料を注入し検量線を作成した。表1の試料を1uL注入し検量線を用いて含量を計算した。GC/FID測定は内径0.53mm、長さ30m、フィルム厚さ5μmのRtx(スチレン、Isopar M)またはワックス(wax)(ジビニルベンゼン)上のカラムを使用し、初期オーブン温度50℃で開始して10℃/min速度で250℃まで昇温した。移動相気体は15mL/minのヘリウム気体を使用した。
【0200】
この時、オイルまたはこれに由来した成分が検出される場合を「O」、オイルまたはこれに由来した成分が検出されない場合を「×」と表示した。
【0201】
【表2】
【0202】
上記表2に示されているように、実施例の細胞培養用マイクロキャリアは1.05g/cm未満の低密度を満足しながらも、細胞培養条件でキャリア培養が効果的に行われ、磁性分離効率も優れていることを確認することができた。
【0203】
反面、比較例1の細胞培養用マイクロキャリアは、磁性粒子を含んでいなくて、磁性分離効率が下がる問題があった。
【0204】
また、比較例2の細胞培養用マイクロキャリアは、粒子の密度が1.05g/cm超であって細胞との密度差によって培養器内で円滑な攪拌が行われなくて細胞付着性が減少する問題があった。
【0205】
また、比較例3の細胞培養用マイクロキャリアは、粒子の密度が1.05g/cm超であって細胞との密度差によって培養器内で円滑な攪拌が行われなくて細胞付着性が減少して細胞培養が不可能な程度に細胞培養効率が下がる問題があった。
【0206】
また、参考例1の細胞培養用マイクロキャリアは疎水性官能基で表面処理されていない磁性粒子を含むことにより、水分散磁性粒子がスチレンモノマーを含む分散相で均等に分散せず、重合時水分散磁性粒子同士が固まるのを確認することができた。また、このように製造された粒子の場合、粒度分布が大きく磁性分離効率が下がる問題があった。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】