(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】金属ドープされたカーボンハードマスク
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240514BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240514BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 104H
H01L21/302 105A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572956
(86)(22)【出願日】2022-05-24
(85)【翻訳文提出日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 US2022030715
(87)【国際公開番号】W WO2022251207
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタサブラマニアン, エスワラナンド
(72)【発明者】
【氏名】ブイヤン, バスカー ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】サルー, マーク ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】マリック, アブヒジット バス
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA01
5F004AA02
5F004BB26
5F004BD01
5F004BD04
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5F045AA08
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5F045EM05
5F045EM09
5F045EM10
5F045HA03
5F045HA04
(57)【要約】
例示的な堆積方法が、半導体処理チャンバの処理領域に、ルテニウム含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することを含みうる。ルテニウム含有前駆体又は水素含有前駆体の少なくとも一方が、炭素を含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することを含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内に配置された基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させることを含みうる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積方法であって、
半導体処理チャンバの処理領域に、ルテニウム含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することであって、前記ルテニウム含有前駆体又は前記水素含有前駆体の少なくとも一方が炭素を含む、ルテニウム含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することと、
前記半導体処理チャンバの前記処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することと、
前記半導体処理チャンバの前記処理領域内に配置された基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させることと、
を含む、堆積方法。
【請求項2】
前記ルテニウム・炭素材料は、堆積した表面の粗さが約2nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項3】
前記ルテニウム・炭素材料は、ルテニウムの密度が約5原子%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項4】
前記ルテニウム・炭素材料は、粒径が約50Å以下であることを特徴とする、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項5】
前記基板上に前記ルテニウム・炭素材料を堆積させる間、前記基板の温度が約300℃以上に維持される、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項6】
前記基板上に前記ルテニウム・炭素材料を堆積させる間、圧力が約15Torr以下に維持される、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項7】
前記基板上に前記ルテニウム・炭素材料を堆積させる間、低周波プラズマパワーが約100W以上に維持される、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項8】
前記基板上に前記ルテニウム・炭素材料を堆積させる間、チャンバ圧力又はプラズマパワーの1つ以上を上げることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ルテニウム含有前駆体及び前記水素含有前駆体と共にアルゴン前駆体を供給することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ルテニウム含有前駆体及び前記水素含有前駆体と共に、ホウ素含有前駆体又は窒素含有前駆体を供給することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
オゾンを利用して前記ルテニウム・炭素材料を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ルテニウム・炭素材料を除去することが、約300℃以下の基板温度で行われる、請求項11に記載の堆積方法。
【請求項13】
堆積方法であって、
半導体処理チャンバの処理領域に、遷移金属含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することであって、前記遷移金属含有前駆体又は前記水素含有前駆体の少なくとも一方が炭素を含む、遷移金属含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することと、
前記半導体処理チャンバの前記処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することと、
前記半導体処理チャンバの前記処理領域内に配置された基板上に遷移金属・炭素材料を堆積させることと、
を含む、堆積方法。
【請求項14】
遷移金属がルテニウム又はオスミウムを含み、前記遷移金属・炭素材料は、ルテニウム又はオスミウムの濃度が約5原子%以上であることを特徴とする、請求項13に記載の堆積方法。
【請求項15】
前記基板から前記遷移金属・炭素材料を灰化することであって、前記灰化が、オゾン又はプラズマ強化酸素を用いて行われる、前記遷移金属・炭素材料を灰化することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記遷移金属・炭素材料を灰化することが、約300℃以下の基板温度で行われる、請求項15に記載の堆積方法。
【請求項17】
前記基板上に前記遷移金属・炭素材料を堆積させる間、チャンバ圧力又はプラズマパワーの1つ以上を上げることをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記基板上に前記遷移金属・炭素材料を堆積させる間、低周波プラズマパワーが約100W以上に維持される、請求項13に記載の堆積方法。
【請求項19】
前記遷移金属含有前駆体が、有機金属前駆体、又は金属ハロゲン化物前駆体を含む、請求項13に記載の堆積方法。
【請求項20】
堆積方法であって、
半導体処理チャンバの処理領域に、遷移金属含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することであって、前記遷移金属含有前駆体又は前記水素含有前駆体の少なくとも一方が炭素を含む、遷移金属含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することと、
前記半導体処理チャンバの前記処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することと、
前記半導体処理チャンバの前記処理領域内に配置された基板上に、遷移金属・炭素材料を堆積させることであって、前記遷移金属・炭素材料は、遷移金属の濃度が約5原子%以上であることを特徴とする、遷移金属・炭素材料を堆積させることと、
前記基板から前記遷移金属・炭素材料を灰化することであって、前記灰化が、オゾン又はプラズマ強化酸素を用いて行われる、前記遷移金属・炭素材料を灰化することと、
を含む、堆積方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年5月25日に出願された「金属ドープされたカーボンハードマスク(METAL-DOPED CARBON HARDMASKS)」と題する米国特許出願第17/330,035号の利益及び優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本技術は、半導体堆積プロセスに関する。より具体的には、本技術は、遷移材料が導入された材料を堆積させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路は、基板表面上に複雑にパターニングされた材料層を作り出すプロセスによって可能となる。基板上にパターニングされた材料を生成するには、露出した材料を形成及び除去する制御された方法が必要である。垂直方向のNAND又は3D NANDといった積層されたメモリは、誘電材料の一連の交互層の形成を含み得、当該誘電材料を通って、幾つかのメモリホール又は開口がエッチングされうる。メモリホール形成中に使用されるマスク材料が、数十又は数百の材料層に通すエッチングの間に維持されうる。ハードマスク材料の厚さ、表面粗さ、及び材料の選択性は、一貫性のないパターニングにつながる可能性があり、このことがさらに、形成される構造の均一性又は一貫性に影響を与える可能性がある。
【0004】
従って、高品質のデバイス及び構造を製造するために使用可能な改良されたシステム及び方法が必要とされている。本技術は、上記の必要性及び他の必要性に対処する。
【発明の概要】
【0005】
例示的な堆積方法が、半導体処理チャンバの処理領域に、ルテニウム含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することを含みうる。ルテニウム含有前駆体又は水素含有前駆体の少なくとも一方が、炭素を含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することを含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内に配置された基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させることを含みうる。
【0006】
幾つかの実施形態において、ルテニウム・炭素材料は、堆積した表面の粗さが約2nm以下であることを特徴としうる。ルテニウム・炭素材料は、ルテニウムの密度が約5原子%以上であることを特徴としうる。ルテニウム・炭素材料は、粒径が約50Å以下であることを特徴としうる。基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させる間、基板の温度が約300℃以上に維持されうる。基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させる間、圧力が約15Torr以下に維持されうる。基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させる間、低周波プラズマパワーが約100W以上に維持されうる。本方法は、基板上にルテニウム・炭素材料を堆積させる間、チャンバ圧力又はプラズマパワーの1つ以上を上げることを含みうる。本方法は、ルテニウム含有前駆体及び水素含有前駆体と共にアルゴン前駆体を供給することを含みうる。本方法は、ルテニウム含有前駆体及び水素含有前駆体と共に、ホウ素含有前駆体又は窒素含有前駆体を供給することを含みうる。本方法は、オゾンを利用してルテニウム・炭素材料を除去することを含みうる。ルテニウム・炭素材料を除去することが、約300℃以下の基板温度で行われうる。
【0007】
本技術の幾つか実施形態が、堆積方法を包含しうる。本方法が、半導体処理チャンバの処理領域に、遷移金属含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することを含みうる。遷移金属含有前駆体又は水素含有前駆体の少なくとも一方が、炭素を含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することを含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内に配置された基板上に遷移金属・炭素材料を堆積させることを含みうる。
【0008】
幾つかの実施形態において、遷移金属が、ルテニウム又はオスミウムであってよく、又はこれらを含みうる。遷移金属・炭素材料は、ルテニウム又はオスミウムの密度が約5原子%以上であることを特徴としうる。本方法は、基板から遷移金属・炭素材料を灰化することを含みうる。灰化は、オゾン又はプラズマ強化酸素を用いて行われうる。遷移金属・炭素材料を灰化することが、約300℃以下の基板温度で行われうる。本方法は、基板上に遷移金属・炭素材料を堆積させる間、チャンバ圧力又はプラズマパワーの1つ以上を上げることを含みうる。基板上に遷移金属・炭素材料を堆積させる間、低周波プラズマパワーが約100W以上に維持されうる。遷移金属含有前駆体が、有機金属前駆体、又は金属ハロゲン化物前駆体であってよく、又はこれらを含んでよい。
【0009】
本技術の幾つか実施形態が、堆積方法を包含しうる。本方法が、半導体処理チャンバの処理領域に、遷移金属含有前駆体及び水素含有前駆体を伝達することを含みうる。遷移金属含有前駆体又は水素含有前駆体の少なくとも一方が、炭素を含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内で全ての前駆体のプラズマを形成することを含みうる。本方法は、半導体処理チャンバの処理領域内に配置された基板上に遷移金属・炭素材料を堆積させることを含みうる。遷移金属・炭素材料は、遷移金属の濃度が約5原子%以上であることを特徴としうる。本方法は、基板から遷移金属・炭素材料を灰化することを含みうる。灰化は、オゾン又はプラズマ強化酸素を用いて行われうる。
【0010】
このような技術は、従来のシステム及び技術に対して数多くの利点を提供することができる。例えば、上記のプロセスによって、表面粗さが低減されていることを特徴とする金属含有膜を生成することができる。さらに、本技術の実施形態の処理によって、処理工程を促進しうる改良されたマスク材料を製造することができる。上記の実施形態及び他の実施形態が、その利点及び特徴の多くと共に、以下の明細書の記載及び添付の図面に関連してより詳細に記載される。
【0011】
開示される技術の性質及び利点は、本明細書の残りの部分及び図面を参照することによって、さらに理解を深めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本技術の幾つかの実施形態に係る例示的な処理チャンバの概略的な断面図を示す。
【
図2】本技術の幾つかの実施形態に係る堆積方法における例示的な工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面のうちの幾つかが、概略図として含まれている。図は例示のためのものであり、縮尺どおりであると明記されていない限り縮尺どおりと見なすべきではないと理解されたい。さらに、概略図として、図面は、理解を助けるために提供されており、写実的な表現と比べて全ての態様又は情報を含まない場合があり、例示を目的として強調された素材を含むことがある。
【0014】
添付の図面では、類似した構成要素及び/又は特徴が同じ参照符号を有しうる。更に、同じ種類の様々な構成要素は、参照符号の後に付いた、類似した構成要素の間で区別する文字によって区別することができる。本明細書で第1の参照符号のみが使用される場合、その説明は、上記文字に関係なく、同じ第1の参照符号を有するいずれの類似の構成要素にも適用されうる。
【0015】
2D NANDから3D NANDへの移行においては、多くのプロセス工程が、垂直方向の動作から水平方向の動作に変更される。加えて、3D NAND構造の形成されるセルの数が増えるにつれて、メモリホール及び他の構造のアスペクト比が、(時には劇的)に上がる。3D NANDの処理中には、プレースホルダ(placeholder)層と誘電材料とのスタックが、電極間誘電体層を形成することができる。上記のプレースホルダ層には、材料を完全に除去して金属と置き換える前に、構造を配置するために様々な処理が行われていることがある。特に、メモリホール形成又は階段形成といった一部のプロセスは、スタックの大半又は全ての層を通るエッチングを含みうる。材料を部分的にエッチングできるように、又は基板全体にフィーチャ(feature)を生成するためにエッチングできるように、マスク材料を使用することができる。何十又は何百もの層に通してエッチングするためにマスクを利用することは、現在のマスク技術にとって難題となりうる。
【0016】
多くの従来技術は、メモリ又はロジック構造を生成するためにエッチングプロセスを利用しており、将来のプロセスノードでは十分な性能を発揮しえない可能性がある。例えば、構造内のセルの数が数百セルまで増えると、メモリホールが、数ミクロンの深さまで形成されることがある。例えば、メモリホールを画定するために使用されるマスクでは、より深いエッチングのための選択性を維持するのに苦労する可能性がある。例えば、層の対の数が増えるにつれて、従来のマスクの厚さが、数ミクロン以上などに増大しうる。しかしながら、マスクの厚さが増すと、マスクを介して開放作業を行って、フィーチャを下の構造がエッチングされる間維持する必要があるエッチングプロセスに負担がかかる可能性がある。これに対応して、従来のマスク技術では、将来のプロセスノードにおいて効果的な処理ができない虞がある。
【0017】
様々なマスク材料への移行によって、新たな課題が生じうる。例えば、金属を含むマスク層は、膜の硬度又は他の機械的特性、及びエッチング選択性を向上させうるが、処理上の問題を引き起こす可能性がある。例えば、ハードマスクを開くプロセスでは、選択的にエッチングすることがより困難になる可能性がある。さらに、金属の導入によって、除去処理が制限される可能性がある。例えば、カーボンハードマスクは酸素プラズマ中で容易に除去され得、マスクを介した処理が完了した後の比較的容易な剥離処理が可能となる。金属は通常、酸素プラズマに接触したときに揮発せず、より積極的な除去が必要となりうる。金属ハードマスクを除去するために、例えば、ウェットエッチング又は化学機械研磨が使用されうる。これに対応して、処理全般が上記のマスク材料ではさらに困難となる可能性があり、さらに、スループットが、新しい材料では悪影響を受ける虞がある。さらに、金属を含むハードマスクは、基板上の別個のフィーチャを処理するのに十分な膜特性を提供しないことがある。例えば、カーボンハードマスクは実質的にアモルファスであり得、3D NANDのメモリホールといった小さいフィーチャが、かなりの均一性でマスクを介して形成されうる。金属を含むマスク材料では、粒子の形成に因り粗さが増して、マスク開口にずれ及び粗さを引き起こす可能性があり、それがエッチングプロセス中に基板に伝わって、歩留まりの問題又は損失につながる虞がある。
【0018】
本技術は、膜の粗さがより低く粒径がより小さいことを特徴としうる金属含有ハードマスクを作製することで、上記の制限を克服することができる。有利に、本技術の幾つかの実施形態に係るハードマスクはまた、酸素を含む除去プロセスを含む灰化プロセスにおいて容易に剥離することができる。例えば、処理が完了した後で、オゾン又は酸素含有プラズマを用いてハードマスクを除去することができる。これにより、カーボン又はシリコンのハードマスクに対して、選択性の向上が促進され、スループットへの影響が限定的になりうる。後述するプラズマ処理工程が実行されうる、本技術の実施形態に係るチャンバのおおまかな態様が記載された後に、特定の方法及び構成要素の構成について述べられる。記載される技術は、幾つかの膜形成プロセスを改善するために使用することができ、かつ様々な処理チャンバ及び処理に適用できるため、本技術は、記載される特定の膜及び処理に限定されることが意図されていないと理解されたい。
【0019】
図1は、本技術の幾つかの実施形態に係る例示的な処理チャンバ100の断面図を示す。図は、本技術の1つ以上の態様が組み込まれた及び/又は本技術の実施形態に係る1つ以上の処理を実行するよう特に構成されたシステムの概要を示しうる。チャンバ100又は実行される方法のさらなる詳細事項が、以下で更に記載されうる。チャンバ100は、本技術の幾つかの実施形態に従って膜層を形成するために利用されうるが、本方法は、膜形成が行われうる任意のチャンバ内で同様に実行されうると理解されたい。処理チャンバ100は、チャンバ本体102と、チャンバ本体102の内部に配置された基板支持体104と、チャンバ本体102と結合されており処理空間120内の基板支持体104を密閉するリッドアセンブリ106と、を含みうる。基板103は、開口部126を通して処理空間120に供給することができ、上記開口部は、スリットバルブ又はドアを使用して、従来のようにシールされうる。基板103は、処理中に基板支持体の表面105上に載置されうる。基板支持体104は、基板支持体104のシャフト144が位置しうる軸147に沿って、矢印145で示すように回転可能でありうる。代替的に、堆積プロセスの間に必要に応じて、基板支持体104を持ち上げて回転させることができる。
【0020】
基板支持体104上に配置された基板103に亘るプラズマ分布を制御するために、プラズマプロファイル変調器111が処理チャンバ100内に配置されうる。プラズマプロファイル変調器111は、第1の電極108を含むことができ、第1の電極108は、チャンバ本体102に隣接して配置することができ、かつ、チャンバ本体102をリッドアセンブリ106の他の構成要素から分離することができる。第1の電極108は、リッドアセンブリ106の一部であってよく、又は別個の側壁電極であってよい。第1の電極108は、環状又はリング状の部材とすることができ、リング電極でありうる。第1の電極108は、処理空間120を取り囲む処理チャンバ100の外周の周りの連続的なループであってよく、又は、所望の場合には、選択された位置で非連続的でありうる。第1の電極108はまた、穿孔リング又はメッシュ電極といった穿孔電極であってよく、又は、例えば、2次ガス分配器といった平板電極であってよい。
【0021】
1つ以上の絶縁体110a、110bは、セラミック又は金属酸化物といった誘電材料、例えば酸化アルミニウム及び/又は窒化アルミニウムでありうるが、第1の電極108と接触して、当該第1の電極108をガス分配器112及びチャンバ本体102から電気的及び熱的に分離することができる。ガス分配器112は、処理空間120内へとプロセス前駆体を分配するための開孔118を画定しうる。ガス分配器112は、RF発生器、RF電源、DC電源、パルス状DC電源、パルス状RF電源、又は処理チャンバと接続しうる任意の他の電源といった第1の電源142と接続することができる。幾つかの実施形態では、第1の電源142がRF電源でありうる。
【0022】
ガス分配器112は、導電性ガス分配器又は非導電性ガス分配器でありうる。ガス分配器112はまた、導電性の構成要素及び非導電性の構成要素から形成されうる。例えば、ガス分配器112の本体が導電性であってよく、ガス分配器112の面板が非導電性であってよい。ガス分配器112は、例えば
図1に示す第1の電源142などによって電力供給することができ、又は幾つかの実施形態では、ガス分配器112が、接地に接続されうる。
【0023】
第1の電極108は、処理チャンバ100の接地経路を制御しうる第1の同調回路128と接続することができる。第1の同調回路128は、第1の電子センサ130と、第1の電子コントローラ134と、を含みうる。第1の電子コントローラ134は、可変キャパシタ又は他の回路素子であってよく、又はこれらを含んでよい。第1の同調回路128は、1つ以上のインダクタ132であってよく又はこれらを含んでよい。第1の同調回路128は、処理中の処理空間120内に存在するプラズマ条件下で可変的な又は制御可能なインピーダンスを可能にする任意の回路でありうる。図示のような幾つかの実施形態では、第1の同調回路128が、接地と第1の電子センサ130との間に並列に接続された第1の回路の脚及び第2の回路の脚を含みうる。第1の回路の脚は、第1のインダクタ132Aを含みうる。第2の回路の脚は、第1の電子コントローラ134と直列に接続された第2のインダクタ132Bを含みうる。第2のインダクタ132Bは、第1の電子コントローラ134と、第1の回路の脚と第2の回路の脚の両方を第1の電子センサ130に接続する接続点と、の間に配置されうる。第1の電子センサ130は、電圧又は電流センサであってよく、かつ第1の電子コントローラ134と接続することができ、これにより、処理空間120の内部のプラズマ条件への或る程度の閉ループ制御がもたらされうる。
【0024】
第2の電極122が、基板支持体104と接続されうる。第2の電極122は、基板支持体104に埋め込まれてよく、又は基板支持体104の表面と接続されてよい。第2の電極122は、プレート、穿孔プレート、メッシュ、ワイヤスクリーン、又は導電性要素の任意の他の分散された構成でありうる。第2の電極122は同調電極とすることができ、コンジット146によって、例えば基板支持体104のシャフト144内に配置された、50オームといった選択された抵抗を有するケーブルによって、第2の同調回路136と接続されうる。第2の同調回路136は、第2の電子センサ138と、第2の可変キャパシタでありうる第2の電子コントローラ140と、を有しうる。第2の電子センサ138は、電圧又は電流センサであってよく、処理空間120内のプラズマ条件への更なる制御を提供するために、第2の電子コントローラ140と接続されうる。
【0025】
バイアス電極及び/又は静電チャック電極でありうる第3の電極124が、基板支持体104と接続されうる。第3の電極は、フィルタ148を介して第2の電源150と接続することができ、ここでフィルタ148はインピーダンス整合回路でありうる。第2の電源150は、DC電源、パルス状DC電源、RFバイアス電源、パルス状RF源若しくはバイアス電源、又は、これらの又は他の電源の組み合わせでありうる。幾つかの実施形態では、第2の電源150は、RFバイアス電源でありうる。
【0026】
図1のリッドアセンブリ106及び基板支持体104は、プラズマ処理又は熱処理のための任意の処理チャンバで使用されうる。稼働時に、処理チャンバ100は、処理空間120内のプラズマ条件のリアルタイム制御を行いうる。基板103は、基板支持体104上に配置することができ、プロセスガスが、任意の所望のフロー計画に従って、入口114を使用してリッドアセンブリ106を流過しうる。ガスは、出口152を通して処理チャンバ100を出ることができる。処理空間120内でプラズマを形成するために、電力がガス分配器112と接続されうる。幾つかの実施形態において、第3の電極124を使用して基板に電気バイアスが掛けられうる。
【0027】
処理空間120内でプラズマが励起されると、プラズマと第1の電極108との間に電位差が確立されうる。プラズマと第2の電極122との間にも、電位差が確立されうる。次いで、電子コントローラ134、140が、2つの同調回路128、136によって表される接地経路の流れ特性を調整するために使用されうる。堆積速度、及び、中心から端までのプラズマ密度の均一性への別々の制御を提供するために、第1の同調回路128及び第2の同調回路136に設定点が伝達されうる。電子コントローラが両方とも可変キャパシタでありうる実施形態において、電子センサは、堆積速度を最大にしかつ厚さの不均一性を最小に抑えるために、可変キャパシタを別々に調整することができる。
【0028】
同調回路128、136のそれぞれは、それぞれの電子コントローラ134、140を使用して調整できる可変インピーダンスを有しうる。電子コントローラ134、140が可変キャパシタである場合に、可変キャパシタのそれぞれの容量範囲、並びに、第1インダクタ132A及び第2インダクタ132Bのインダクタンスは、或るインピーダンス範囲を提供するよう選択されうる。当該範囲は、プラズマの周波数特性及び電圧特性に依存し得、各可変キャパシタの容量範囲内に最小値を有しうる。従って、第1の電子コントローラ134の容量が最小値又は最大値にあるときには、第1の同調回路128のインピーダンスが高くなり得、結果として、プラズマの形状は、基板支持体の上の空中での又は横方向の被覆率が最小になる。第1の電子コントローラ134の容量が、第1の同調回路128のインピーダンスを最小に抑える値に近づくと、プラズマの空中での被覆率が最大値まで増大し、基板支持体104の全作業領域を効率良く覆うことができる。第1の電子コントローラ134の容量が最小インピーダンス設定から外れると、プラズマ形状がチャンバ壁から縮小して、基板支持体の空中での被覆率が低下しうる。第2の電子コントローラ140も同様の効果を有することができ、第2の電子コントローラ140の容量を変更できるため基板支持体の上でのプラズマの空中被覆率を増減させることができる。
【0029】
電子センサ130、138は、閉ループにおいてそれぞれの回路128、136を調整するために使用することができる。電流又は電圧のための設定点を、使用されるセンサの種類に従って各センサに導入することができ、設定点からの逸脱を最小に抑えるために各それぞれの電子コントローラ134、140への調整を決定する制御ソフトウェアを、センサに備えることができる。従って、プラズマ形状が選択され、処理中に動的に制御されうる。先の記載は、可変キャパシタでありうる電子コントローラ134、140に基づいているが、調整可能な特性を備えた任意の電子的構成要素が、調整可能なインピーダンスを有する同調回路128、136を提供するために使用できると理解されたい。
【0030】
図2は、本技術の幾つかの実施形態に係る堆積方法200における例示的な工程を示している。本方法は、上述の処理チャンバ100含む様々な処理チャンバ内で実行されうる。方法200は、本技術に係る方法の幾つかの実施形態に特に関連してもしなくてもよい幾つかの任意の工程を含みうる。例えば、工程の多くは、より広い範囲の構造形成を提供するために記載されているが、本技術にとって重大ではなく、又は容易に分かるであろう代替的な方法によって実行することができる。
【0031】
方法200は、列挙された工程を開始する前に追加の工程を含みうる。例えば、追加の処理工程には、半導体基板上に、3D NANDのための材料のスタックを含む構造を形成すること、トランジスタ又は他のメモリ構造を形成すること、又は、材料の形成及び除去の両方を含みうる任意の他の処理が含まれうる。事前の処理工程は、方法200が実行されうるチャンバ内で実行されてよく、又は、処理は、方法200が実行されうる半導体処理チャンバ内に基板を伝達する前に、1つ以上の他の処理チャンバ内で実行されてよい。いずれにせよ、方法200は、任意選択的に、上記の処理チャンバ100といった半導体処理チャンバ、又は上記の構成要素を含みうる他のチャンバの処理領域に半導体基板を伝達することを含みうる。基板は、基板支持体上に配置することができ、基板支持体は、基板支持体104といったペデスタルであってよく、上述の処理空間120といったチャンバの処理領域内に存在しうる。
【0032】
基板は、材料をその上に堆積させられる任意の数の材料であってよく又は当該材料を含みうる。基板は、基板又は基板上に形成される材料でありうる、ケイ素、ゲルマニウム、酸化ケイ素若しくは窒化ケイ素を含む誘電材料、金属材料、若しくは、これらの材料の任意の数の組み合わせであってよく、又はこれらを含んでよい。幾つかの実施形態において、前処理といった任意の処理工程が、堆積のために基板の表面を準備するために実施されうる。例えば、前処理は、堆積される膜の核生成を促進しうる特定のリガンド終端を、基板の表面上に与えるために実施されうる。例えば、水素、酸素、炭素、窒素、又は他の分子終端(これらの原子やラジカルの任意の組み合わせを含む)が、基板の表面上に吸着し、当該表面上で反応し、又は当該表面上で形成されうる。さらに、自然酸化物の還元、材料のエッチング、又は堆積のために基板の1つ以上の露光表面を準備しうる他の処理といった、材料除去が実施されうる。
【0033】
工程205において、1つ以上の前駆体がチャンバの処理領域に伝達されうる。例えば、遷移金属が導入された膜が形成されうる例示的な実施形態では、遷移金属含有前駆体が、処理チャンバの処理領域に伝達されうる。本技術の幾つかの実施形態において、プラズマ強化堆積を行うことができ、これにより材料の反応及び堆積が促進されうる。上述したように、本技術の幾つかの実施形態は、遷移金属・炭素材料の形成又は堆積を包含することができ、このことは従来では、例えば熱的に作製され又はプラズマにより生成されたケイ素・炭素膜と比べて、増大した表面粗さを特徴としうる。形成特性、及び処理で使用される前駆体を制御することで、本技術は、低減された表面粗さ及び粒径を特徴とする金属含有膜を生成しつつ、後続の処理でより容易に除去されうる材料を生成することもできる。
【0034】
本技術の幾つかの実施形態は、工程210において水素含有前駆体をさらに供給することを含むことができ、この水素含有前駆体は、遷移金属含有前駆体と共に供給されうる。幾つかの実施形態において、炭素含有前駆体も供給することができ、これにより、遷移金属・炭素膜を生成することができる。炭素含有前駆体は、遷移金属前駆体、水素含有前駆体、又は本技術の実施形態で利用される別の前駆体とすることができる。伝達された前駆体は全て、工程215において半導体処理チャンバの処理領域内でプラズマを形成するために使用されうる。工程220では、遷移金属・炭素材料が、基板の上に堆積させられうる。アルゴン、ヘリウム、窒素、又は、キャリアガス若しくは不活性ガスといった、プラズマの形成及び膜特性の発現を促進しうる1つ以上の追加の前駆体も含まれうる。本技術の幾つかの実施形態に従って前駆体のプラズマ放出物を生成することで、材料の粗さ、及び粒子の形成が制御され制限されうる。
【0035】
例えば、金属材料が膜に導入されると、よりアモルファスな膜が生成される代わりに、より膨張した粒子が形成される可能性がある。追加の水素、及び/又は、アルゴン若しくはヘリウムといった不活性ソースを導入するとともに、環境及びプラズマパラメータを制御することで、材料の堆積と同時に、膜の修正又はプロファイルエッチングを行うことができる。例えば、遷移金属・炭素材料で形成されているフィーチャとの反応及び/又は物理的相互作用を介して、水素又は不活性ガスのイオン及び/又は中性種が、粒子及び表面をトリミングする(削る)ことができ、その一方で、より均一なプロファイルが生成される。従って、金属を導入することを試みる従来のプロセスに対して、粒子がそれほど大きくならない可能性がある。プロセス中に十分なラジカルを供給するために、水素含有前駆体及び/又は不活性ガス若しくはキャリアガスが、遷移金属含有前駆体よりも大きな流量で含まれうる。
【0036】
例えば、熱的に生成されたシリコン又はカーボンは、約0.5nm以下といった比較的低い平均粗さを特徴としうる。膜はまた、形成された膜上の最も高いピークと最も低いピークと間の差などの比較的小さい粗さの範囲を特徴としうる。例えば、粗さの範囲は約1.5nm以下、又は約1nm以下でありうる。しかしながら、従来技術に従って生成された金属含有膜の場合、平均粗さは、似たような厚さの膜について、約3nm以上、約4nm以上、約5nm以上、又はそれ以上でありうるが、前述のように、粗さは、膜の厚さが増大するにつれて増大しうる。さらに、生成される金属含有材料の粗さの範囲が、同様に膜の厚さに依存して、約10nm以上であり得、さらに約15nm以上、又はそれ以上でありうる。さらに、膜内の粒径が、約3nm以上、約4nm以上、約5nm以上、又はそれ以上でありうる。後続のエッチング工程の間、膜に亘る上記の比画的大きなばらつきは、エッチング処理の均一性を損なう虞があり、追加の化学的機械的研磨処理といった追加の処理を実行することが必要となりうる。
【0037】
しかしながら、本技術では、追加の水素含有前駆体及び/又はアルゴン若しくは他の不活性ガスを利用する実質的に同時のエッチングを行うことによって、及び/又は以下にさらに記載する1つ以上の追加の調整を行うことによって、
生成される遷移金属・炭素膜の平均粗さと粗さの範囲との両方を低減又は大幅に低減することができる。例えば、本技術の幾つかの実施形態に係る遷移金属含有材料を堆積させることで、堆積された材料は、平均厚さが約5nm以下であることを特徴とし得、さらに、平均厚さが、約4nm以下、約3.5nm以下、約3.0nm以下、約2.5nm以下、約2.0nm以下、約1.5nm以下、約1.0nm以下、約0.9nm以下、約0.8nm以下、約0.7nm以下、約0.6nm以下、約0.5nm以下、又はそれ以下であることを特徴としうる。
【0038】
さらに、幾つかの実施形態において、粗さが、膜の厚さを問わず実質的に制御されうる。これにより、追加の化学的機械的研磨処理を回避することが可能となる。というのは、堆積された膜が、示された平均粗さの範囲のいずれかを特徴としうるからである。さらに、堆積された膜に亘る粗さの範囲が、約10nm以下であり得、さらに、約9nm以下、約8nm以下、約7nm以下、約6nm以下、約5nm以下、約4nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、又はそれ以下でありうる。同様に、成長中の制御されたエッチングプロセスによって、金属含有材料の粒径の削減も促すことができ、粒径は、約5nm以下、4nm以下、約3nm以下、約2nm以下、約1nm以下、約9Å、約8Å、約7Å、約6Å、又はそれ以下に維持されうる。従って、改良された材料を生成することができ、このことにより、従来の材料及びプロセスに対して膜及びマスクの利点が得られるとともに、一連の研磨工程の数を制限又は減らすことで製造工程を潜在的に減らすことができる。
【0039】
含まれるときには、遷移金属窒素含有前駆体、水素含有前駆体、及び炭素含有前駆体に関して、本技術では任意の数の前駆体を使用することができる。コバルト、クロム、ハフニウム、モリブデン、オスミウム、レニウム、ルテニウム、タンタル、チタン、タングステン、ジルコニウム、又は堆積前駆体として供給しうる他の金属若しくは遷移金属を含む任意の数の遷移金属が、本技術に包含されうる。例えば、遷移金属前駆体が、遷移金属ハロゲン化物前駆体、有機金属前駆体であってよく、又はこれらを含んでよい。有機金属前駆体が使用されるときには、例えば炭素含有前駆体を使用しないことができる。非限定的な一例として、遷移金属がルテニウム又はオスミウムであってよく、又はこれらを含んでよい。例示的な前駆体が、ビス(シクロペンタジエニル)ルテニウム、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ルテニウム、トリルテニウムドデカカルボニル、トリオスミウムドデカカルボニル、又は、ハロゲン含有前駆体を含む任意の他のルテニウム若しくはオスミウム前駆体、及び任意の他の遷移金属前駆体であってよく、又はこれらを含みうる。
【0040】
水素含有前駆体は、二原子水素、及び水素含有材料を含むことができ、例えば、
炭素含有前駆体であってよく又は炭素含有前駆体を含んでよい。含まれるときには、炭素含有前駆体は、炭化水素、又は、炭素及び水素を含む若しくはこれらで構成される任意の物質とすることができ、又はこれらを含んでよい。幾つかの実施形態において、炭素含有前駆体が、1つ以上の炭素-炭素二重結合及び/又は1つ以上の炭素-炭素三重結合を特徴としうる。これに対応して、幾つかの実施形態において、炭素含有前駆体が、アセチレン、エチレン、プロペン、又は任意の他の炭素含有材料といったアルケン又はアルキンであってよく、又はこれを含みうる。前駆体は、炭素・水素含有前駆体を含んでよく、炭素・水素含有前駆体は、任意の量の炭素結合及び水素結合を、任意の他の元素結合とともに含みうるが、幾つかの実施形態では、炭素含有前駆体が、炭素-炭素結合及び炭素-水素結合で構成されうる。
【0041】
遷移金属及び/又は炭素の導入を調整して、以下でさらに述べる1つ以上の堆積パラメータに基づいて上記導入を増減させることができる。遷移金属の導入が増すにつれて、より多くの柱状の構造の形成に因り、表面粗さが上がって粗さ特性が上述の閾値を超えうるが、幾つかの実施形態において、遷移金属は、約5原子%以上で導入することができ、さらに、約10原子%以上、約15原子%以上、約20原子%以上、約25原子%以上、約30原子%以上、約35原子%以上、約40原子%以上、約45原子%以上、約50原子%以上、約55原子%以上、約60原子%以上、約65原子%以上、約70原子%以上、又はそれ以上で導入することができる。これに対応して、幾つかの実施形態では、遷移金属は、約75原子%以下で導入することができ、さらに、約70原子%以下、約65原子%以下、約60原子%以下、約55原子%以下、約50原子%以下、又は、それ以下に維持することができ、これにより、幾つかの実施形態において、過半数の炭素濃度が維持されうる。炭素及び/又は水素が、任意の組成であって、上述の範囲内の遷移金属とともに、微量で導入されうる窒素、酸素、又は他の残留物質の或る量の導入を含む任意の組成における残りの割合を表しうる。
【0042】
堆積の1つ以上の追加の態様もまた、実施されている堆積の態様を改善するために調整されうる。例えば、プラズマパワーは、前駆体の解離の程度に影響を与える可能性があり、実施形態が、電極に印加される高周波RFと低周波RFの両方を含みうる。幾つか実施形態では、形成された材料の接着を促進するために界面層が生成されうる。プラズマの生成中には、初期のパワーを、高周波RF源によって、例えば面板又は第1の電極などに印加することができ、その後、バルク堆積パワーまで上昇させる又は段階的に上げることができる。より低い生成パワーを利用することで、解離量がより小さくなり、これにより、膜への炭素の導入が増大しうる。このことにより、基板の界面では、堆積した膜全体でより小さな粒径が生ずるよう促すこともできる。これに対応して、幾つかの実施形態では、プラズマが最初に、他の周波数のうち、13.56MHz又は27MHzで作用するような高周波プラズマパワーで、約500W以下のパワーで生成され得、さらに、約400W以下、約300W以下、約200W以下、又はそれ以下のパワーで生成されうる。
【0043】
第1の期間の後に、パワーが、より大きなパワーに上昇させられ又は階段状に上げられ、このことで、堆積、及び遷移金属の導入が増大しうる。例えば、パワーは、約500W以上まで段階状に上げ又は上昇させることができ、さらに、約600W以上、約700W以上、約800W以上、約900W以上、約1000W以上、約1100W以上、約1200W以上、約1300W以上、約1400W以上、約1500W以上、若しくはそれ以上まで段階状に上げ又は上昇させることができる。
【0044】
低周波RFパワーはまた、基板、ペデスタル、又は第2の電極などに印加することができ、かつ約1000kHz以下で印加することができ、さらに、約750kHz以下、約500kHz以下、約450kHz以下、400kHz以下、約350kHz以下、約300kHz以下、約250kHz以下、約200kHz以下、又は、それ以下(ゼロまで含む)で印加することができ、ここで、低周波パワーが使用されないこともある。低周波RF供給源は、イオンエネルギーを増大させ、生成される膜への物理的影響を大きくし、これにより、上述のように粒径の低減を促進することができる。加えて、当該パワーはより低い膜応力をもたらしうる。例えば、カーボンハードマスクはよりニュートラルな膜応力を特徴としうるが、金属含有材料は、より引張応力を特徴とすることができ、特に後続のマスクパターニングにおいて、下にある構造に対する荷重を引き起こしうる。低周波のRFパワーを増大させることで、応力を下げて、カーボンハードマスクと同様のよりニュートラルな応力を特徴とする膜を生成することができる。これに対応して、幾つかの実施形態において、低周波パワーは、約100W以上で印加することができ、さらに、約150W以上、約200W以上、約250W以上、約300W以上、約350W以上、約400W以上、約450W以上、約500W以上で印加することができ、又は、(幾つかの実施形態ではパワーが約500W以下に維持されうるが)それ以上で印加することができ、これにより、粗さが衝突の増加のために増大する可能性がある。
【0045】
基板の温度もさらに、堆積に影響を与えうる。例えば、幾つかの実施形態において、基板を約300℃以上の温度に維持することができ、さらに、約320℃以上、約340℃以上、約360℃以上、約380℃以上、約400℃以上、約420℃以上、約440℃以上、約460℃以上、約480℃以上、約500℃以上、又はそれ以上の温度に維持することができる。加えて、処理領域内の圧力が、堆積中に起こるイオン化及び物理的相互作用の量に影響を与えうる。処理圧力を下げることで、イオン化の発生が低下し、これにより、界面領域などで炭素の濃度が上がる可能性がある。処理圧力を上げることで、イオン化の発生を増大させることができ、これにより、遷移金属の導入、及び堆積速度の向上が促進されうる。従って、プラズマパワーと同様に、処理領域内の圧力が、第1の期間の経過後に、プラズマ生成中の第1の圧力から第2のより高い圧力に調整されうる。これに対応して、幾つかの実施形態では、生成中の処理圧力は、約6Torr以下に維持することができ、さらに、約5Torr以下、約4Torr以下、約3Torr以下、約2Torr以下、又はそれ以下に維持することができる。第1の期間の後に、圧力は、約5Torr以上、約6Torr以上、約7Torr以上、約8Torr以上、約9Torr以上、約10Torr以上、約11Torr以上、約12Torr以上、約13Torr以上、約14Torr以上、約15Torr以上、又はそれ以上まで階段状に上げる又は上昇させることができる。
【0046】
先に述べたように、プロセス条件が最初に、接着及び粒子制御を促進するために設定され、その後、第1の期間後のバルク堆積のための調整が行われる。界面層は、接着を促進するために数個の単層に制限することができ、第1の期間が、約10秒以下に維持され得、さらに、約9秒以下、約8秒以下、約7秒以下、約6秒以下、約5秒以下、約4秒以下、約3秒以下、約2秒以下、又はそれ以下に維持され得、その後、バルク堆積に移行しうる。第1の期間中に実施されうる追加の工程として、ホウ素含有前駆体及び/又は窒素含有前駆体が、遷移金属前駆体と共に含まれてよく、これにより、接着性及び界面特性が向上しうる。ホウ素含有前駆体又は窒素含有前駆体(ジボラン又は任意の他のホウ素含有前駆体、及び二原子窒素又は任意の他の窒素含有前駆体を含みうる)の伝達は、第1の期間の後に停めることができる。本技術の実施形態に従って堆積を実施することで、遷移金属・炭素含有膜の粗さを低減することができ、これにより、ハードマスクの効果を向上させることができる。
【0047】
さらに、本技術の幾つかの実施形態では、マスク除去の後処理を、灰化によって行うことができる。例えば、マスクの堆積後に、任意の数の処理を行うことができ、この任意の数の処理は、フォトリソグラフィ及びマスク開放、並びに、マスクを利用する任意の数のパターニング又はエッチングの処理を含む。処理が完了した後で、任意の工程225において、マスクが除去され又はエッチングで除去されうる。従来技術では、金属が膜に導入されるときは、より積極的なエッチングプロセスを利用せざるを得なかったが、本技術では、酸素含有プラズマ中又はオゾン中で灰化しうる遷移金属を利用することができる。幾つかの実施形態では、プラズマ強化ハロゲン化物を利用するといった任意の数のウェットエッチング又はドライエッチングを使用することができるが、本技術は、揮発性の酸素含有物質を生成しうる遷移金属を利用することで、カーボンハードマスクと同様の剥離又は灰化を可能することができる。
【0048】
上述の幾つかの実施形態では、導入される遷移金属は、ルテニウム又はオスミウムとすることができ、これらは、酸素を含む剥離処理中に揮発性の錯体を生成しうる。例えば、工程225は、遷移金属・炭素ハードマスクをオゾン又は酸素含有プラズマと接触させることを含みうる。幾つかの実施形態において、除去処理が、オゾン又は酸素含有プラズマの利用に限定されうる。灰化によって膜全体を除去することができ、本技術の幾つかの実施形態では、その後のドライエッチング又はウェットエッチングを必要としないということもある。幾つかの実施形態では、除去が、例えば有害な反応を制限するよう制御しうる除去温度で実施されうる。幾つかの実施形態において、除去が、約100℃以上、約120℃以上、約140℃以上、約160℃以上、約180℃以上、約200℃以上、約220℃以上、約240℃以上、約260℃以上、約280℃以上、約300℃以上、又はそれ以上の温度で実施されうる。
【0049】
しかしながら、温度が上がるにつれて、代替の酸化物材料が生成され又は金属の追加の相が生成される(これらは、揮発性が低いことを特徴としうる)可能性があり、酸素又は他のエッチャントによる除去を制限又は妨げる可能性がある。これに対応して、揮発性酸化物の生成を確実にするために、幾つかの実施形態では、除去を、約500℃以下の温度で実施することができ、さらに、約450℃以下、約400℃以下、約380℃以下、約360℃以下、約340℃以下、約320℃以下、約300℃以下、約280℃以下、又はそれ以下の温度で実施することができる。これに対応して、本技術の実施形態に従ってマスク材料を堆積させ及び/又は除去することで、遷移金属を含むハードマスクであって、従来技術と比較して、粗さ及び応力が低減されていることを特徴としながら、さらに除去及び堆積が改善されていることを特徴としうるハードマスクを形成することができる。
【0050】
先の記載では、説明を目的として、本技術の様々な実施形態の理解を促すべく、数多くの詳細事項を記載した。しかしながら、特定の実施形態が、これらの詳細事項の幾つかを含まずに又は更なる詳細事項を含んで実施されうることが当業者には明らかであろう。
【0051】
幾つかの実施形態を開示してきたが、当業者には、様々な変形例、代替的な構造、及び均等物を、上記の実施形態の思想から逸脱することなく使用できることが分かるであろう。更に、本技術を不必要にあいまいにすることを避けるために、幾つかの周知のプロセス及び要素については説明しなかった。従って、先の説明は、本技術の範囲を限定するものと解釈すべきではない。さらに、方法又はプロセスは、連続的又は段階的に説明されうるが、工程は、同時に行われてもよく、又は、列挙されたものとは異なる順序で行われてもよいと理解されたい。
【0052】
値の範囲が与えられている場合に、文脈上そうでないと明示されていない限り、その範囲の上限値と下限値との間に介在する各値が、下限値の最も小さい単位まで具体的に開示されていると理解される。明記された範囲内の任意の明記された値又は明記されていない介在する値と、その明記された範囲内の他の明記された値又は他の介在する値と、の間の任意のより狭い範囲が包含される。これらのより狭い範囲の上限値及び下限値は、個別にその範囲内に含まれることも除外されることもあり、より狭い範囲内に限界値の一方又は両方が含まれる場合、又はどちらも含まれない場合の各範囲も、明記された範囲内の任意の特に除外された限界値に従って、本技術の範囲内に包含される。明記された範囲が、限界値の一方又は両方を含む場合、この含められた限界値の一方又は両方を除いた範囲も含まれる。
【0053】
本明細書及び添付の特許請求の範囲では、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上別途明示しない限り複数の指示物を含む。したがって、例えば、「ある前駆体(a precursor)」への言及は、複数のこのような前駆体を含み、「その層(the layer)」への言及は、当業者に知られている1つ以上の層及びその均等物への言及を含み、その他の形にも同様のことが当てはまる。
【0054】
また、「備える(comprise(s))」、「備えている(comprising)」、「含有する(contain(s))」、「含有している(containing)」、「含む(include(s))」、及び「含んでいる(including)」という単語は、本明細書及び特許請求の範囲で使用されている場合、記載された特徴、整数、構成要素、又は工程の存在を特定することを意図しているが、1つ以上の他の特徴、整数、構成要素、工程、アクション、又グループの存在又は追加を排除するものではない。
【国際調査報告】