IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特表2024-520117樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-21
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240514BHJP
   C08L 67/04 20060101ALI20240514BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240514BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240514BHJP
【FI】
C08L67/02 ZBP
C08L67/04
C08L23/26
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573655
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-11-29
(86)【国際出願番号】 KR2021018739
(87)【国際公開番号】W WO2023068447
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0138485
(32)【優先日】2021-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ウソン・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン・ジュン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】セ・ヨン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ヒュン・チェ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4J002BB213
4J002CF031
4J002CF051
4J002CF071
4J002CF182
4J002GA00
4J002GB01
4J002GG01
4J002GG02
4J002GN00
4J200AA04
4J200BA09
4J200BA11
4J200BA14
4J200BA22
4J200CA01
4J200CA02
4J200DA01
4J200DA17
4J200DA18
4J200DA22
4J200DA28
4J200EA04
(57)【要約】
本発明は、樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品に関する。本発明の樹脂組成物は、生分解性ポリエステルを用いて、生分解性に優れていながらも、ホットシール時に低い温度でも高いシール強度を実現できるホットシールフィルム、ホットシールバッグ(bag)などの樹脂製品を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、および無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン-アルファオレフィン共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-アルファオレフィン共重合体は、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ペンテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-ヘプテン、およびエチレン-1-オクテンからなる群より選択された1種以上である、エチレン-アルファオレフィン共重合体である、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記ポリ乳酸1~50重量部を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の計100重量部に対して、前記無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマー0.01~10重量部を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、前記無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマー0.01~10重量部を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D3418に基づいて測定した融点(melting point)が40℃~60℃であり、凝固点が20℃~35℃である、請求項1から6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D1238に基づいて190℃、および21.6kgの条件で測定した溶融指数の値が1.3g/10min~2.0g/10minである、請求項1から7のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸のグラフト比率が0wt%超1wt%未満である、請求項1から8のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物を含む、生分解性樹脂成形品。
【請求項11】
前記生分解性樹脂成形品は、生分解性フィルムである、請求項10に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項12】
ISO527に基づいて測定した引張強度の値が250~500kgf/cmである、請求項10または11に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項13】
ISO527に基づいて測定した伸び率の値が200~600%である、請求項10から12のいずれか一項に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項14】
ホットシールフィルムである、請求項10から13のいずれか一項に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項15】
ASTM F1921に基づいて2Nの条件で測定したホットシール開始温度の値が80℃~120℃である、請求項10から14のいずれか一項に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項16】
ASTM F1921に基づいて110℃の条件で測定したシール強度の値が2N以上である、請求項10から14のいずれか一項に記載の生分解性樹脂成形品。
【請求項17】
ASTM F1921に基づいて114℃の条件で測定したシール強度の値が3N以上である、請求項10から14のいずれか一項に記載の生分解性樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物およびこれを含む生分解性樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性高分子樹脂は機械的特性および化学的特性に優れ、飲用水容器、医療用、食品包装紙、食品容器、自動車成形品、農業用ビニルなど多様な分野で使用されている。
【0003】
熱可塑性高分子樹脂は、その中でもポリエチレンフィルムなどは、機械的物性に優れ、人体に無害でありながらも、熱を加えると持続的に変形が可能なため、食品包装用ホットシールバッグや、農業用マルチングフィルムなどに多く用いられる。
【0004】
食品包装用ホットシールバッグは、食品などを真空包装するのに多く用いられるが、低いシール温度でも優れた接合強度を達成できる、ポリエチレンフィルムなどが多く用いられている。
【0005】
農業用フィルムはマルチング農法に多く使用される。マルチングとは、農作物を栽培する時、土壌の表面を覆う資材をいう。多様な種類の資材で土壌の上面を被覆すれば、雑草の生育を遮断し、病虫害を予防することができ、これによって農薬の使用を低減可能である。また、土壌の温度を容易に調節し、土壌内の有益なバクテリアを増殖させることもでき、土壌浸食を防止し、土壌の水分を維持することができる。
【0006】
このようなマルチング資材としては、例えば、稲わら、牧草などの作物の葉や、ポリオレフィン系フィルムなどが挙げられ、一般には、ポリエチレンフィルムなどの合成樹脂が多く使用される。
【0007】
しかし、前記のように食品包装用ホットシールバッグやマルチング材料として多く使用されるポリエチレンフィルムは自然環境で分解されず、再利用にも限界がある。特に、最近は、捨てられたポリエチレンフィルムなどのプラスチックなどが海に流入し、海で還流および太陽光によってサイズが非常に小さい微細プラスチックに破砕される現象が知られている。
【0008】
現在、このような微細プラスチックは、数十億~数百億以上の数えきれない量が海に浮遊していることが知られており、これは海の生物の体内に流入し、生態系内で蓄積されて、食物連鎖全体に影響を及ぼす。
【0009】
したがって、既存に使用されていた熱可塑性プラスチックの代替材に関する研究が必要である。
【0010】
これを解決するために、最近、光分解性または生分解性高分子からなるマルチングフィルムの開発が活発に試みられているが、まだ生分解度が十分でなく、機械的物性が既存のポリエチレンフィルムに及ばない問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本明細書は、ホットシール時に低い温度でも高いシール強度を実現できる樹脂製品のための生分解性樹脂組成物を提供しようとする。
【0012】
また、本明細書は、前記樹脂組成物を含む、生分解性樹脂成形品を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一側面によれば、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、および無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーを含む、樹脂組成物を提供する。
【0014】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン-アルファオレフィン共重合体であってもよい。
【0015】
発明の一実施例によれば、エチレン-アルファオレフィン共重合体は、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ペンテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-ヘプテン、およびエチレン-1-オクテンからなる群より選択された1種以上である、エチレン-アルファオレフィン共重合体であってもよい。
【0016】
発明の一実施例によれば、前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、ポリ乳酸約1重量部~約50重量部、または約10重量部~約30重量部を含むことができる。
【0017】
発明の一実施例によれば、前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の計100重量部に対して、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマー約0.01重量部~約10重量部、または約0.1重量部~約5重量部、または約0.1~約1重量部を含むことができる。
【0018】
そして、前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマー約0.01重量部~約10重量部、または約0.1重量部~5重量部を含むことができる。
【0019】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D3418に基づいて測定した融点(melting point)が40℃~60℃であり、凝固点が20℃~35℃であることが好ましい。
【0020】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D1238に基づいて190℃、および21.6kgの条件で測定した溶融指数の値が約1.3g/10min~約2.0g/10min、さらに好ましくは約1.5g/10min~約2.0g/10min、または約1.5g/10min超過約2.0g/10min未満であってもよい。
【0021】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸のグラフト比率が0wt%超1wt%未満、または約0.1wt%~約0.9wt%、または約0.3wt%~約0.7wt%であってもよい。
【0022】
一方、本発明の他の側面によれば、上述したいずれかの樹脂組成物を含む、生分解性樹脂成形品が提供される。
【0023】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、生分解性フィルムであってもよい。
【0024】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ISO527に基づいて測定した引張強度の値が約250kg/cm~約500kg/cm、または約250kg/cm~約400kg/cm、または約300kg/cm~約400kg/cm、または約350kg/cm~約380kg/cmであってもよい。
【0025】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ISO527に基づいて測定した伸び率の値が約200%~約600%、または約300%~約500%、または約300%~400%であってもよい。
【0026】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、ホットシールフィルムであってもよい。
【0027】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921に基づいて2Nの条件で測定したホットシール開始温度の値が約80℃~約120℃、または約100℃~約120℃、または約105℃~約115℃、または約105℃~約110℃であってもよい。
【0028】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921に基づいて約110℃の条件で測定したシール強度の値が約2N以上、または約2N~約10N、または約2.5N~約5Nであってもよい。
【0029】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921に基づいて約114℃の条件で測定したシール強度の値が約3N以上、または約3N~約10N、または約4N~約5Nであってもよい。
【0030】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0031】
単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0032】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらの組み合わせを説明するためのものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、これらの組み合わせまたは付加の可能性を排除するわけではない。
【0033】
また、本明細書において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されるものと言及された場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成されてもよいことを意味する。
【0034】
本発明は、多様な変更が加えられて様々な形態を有し得るが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物乃至代替物を含むことが理解されなければならない。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0036】
本発明の発明者らは、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸(PLA)をブレンドしたブレンド樹脂において、無水マレイン酸変性ポリオレフィンエラストマーを使用する場合、伸び率、引張強度などの機械的物性が非常に優れ、ホットシール時に低い温度でも高い接合強度を実現できるという点を見出して、本発明を完成するに至った。
【0037】
本発明の一側面による樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、ポリ乳酸(PLA)、および無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーを含む。
【0038】
ポリエステル系樹脂は機械的特性および化学的特性に優れ、多様な産業分野で使用されている。その中でも、ポリブチレンアジペートテレフタレート(Polybutylene Adipate Terephthalate、PBAT)は、軟質のポリエステルに生分解可能なため、包装材、農業用フィルムに主に使用されるポリオレフィン(polyolefin)系高分子代替剤として注目されている。
【0039】
しかし、当該用途に軟質のPBATを単独で使用するにはPBATの機械的物性がやや不足するため、主に硬質のポリ乳酸(Polylactic acid、PLA)とブレンド(blending)して使用するか;PBATを単独で使用しかつ、カーボンブラック(carbon black)のような有機充填剤(filler)をコンパウンディングして使用している。
【0040】
ただし、PBATとPLAは相溶性が非常に低いため、ブレンド時に相溶化剤を必ず使用しなければならない。
【0041】
このため、本発明の一側面による樹脂組成物は、相溶化剤成分として、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーを含む。
【0042】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸変性ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン-アルファオレフィン共重合体であってもよい。
【0043】
無水マレイン酸がグラフトされたエチレン-アルファオレフィン共重合体は、その分子構造的な面によって、PBATとPLAの相溶性を高めることができ、これによって、本発明の一側面による樹脂組成物は、非常に高い伸び率および引張強度などを達成すると同時に、ホットシール時に低い温度でも高い接合強度を実現することができる。
【0044】
発明の一実施例によれば、エチレン-アルファオレフィン共重合体は、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-ペンテン、エチレン-1-ヘキセン、エチレン-1-ヘプテン、およびエチレン-1-オクテンからなる群より選択された1種以上である、エチレン-アルファオレフィン共重合体であってもよい。その中でも、エチレン-1-オクテン共重合体を用いて、無水マレイン酸がグラフトされたエチレン-1-オクテン共重合体を相溶化剤として使用することが最も好ましいが、本発明が必ずしもこれに限定されるものではない。
【0045】
発明の一実施例によれば、前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、ポリ乳酸約1重量部~約50重量部、または約10重量部~約30重量部を含むことができる。
【0046】
ポリ乳酸が過度に少なく含まれる場合、PBATの機械的物性を向上させるための効果が現れず、ポリ乳酸が過度に多く含まれる場合、硬性が高くなって、伸び率が低下する問題点が発生しうる。
【0047】
発明の一実施例によれば、前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の計100重量部に対して、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマー約0.01重量部~約10重量部、または約0.1重量部~約5重量部、または約0.1~約1重量部を含むことができる。
【0048】
そして、前記樹脂組成物は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)100重量部に対して、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマー約0.01重量部~約10重量部、または約0.1重量部~5重量部を含むことができる。
【0049】
無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーが過度に少なく含まれる場合、PBATとPLAの相溶性が低下して、ブレンドが行われない問題点が発生し、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーが過度に多く含まれる場合、機械的物性および生分解度が低下する問題点が発生しうる。
【0050】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D3418に基づいて測定した融点(melting point)が40℃~60℃であり、氷点が20℃~35℃であることが好ましい。
【0051】
発明の一実施例によれば、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、ASTM D1238に基づいて190℃、および21.6kgの条件で測定した溶融指数の値が約1.3g/10min~約2.0g/10min、さらに好ましくは約1.5g/10min~約2.0g/10min、または約1.5g/10min超過約2.0g/10min未満であってもよい。
【0052】
発明の一実施例によれば、前記無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーは、無水マレイン酸のグラフト比率が0wt%超過1wt%未満、または約0.1wt%~約0.9wt%、または約0.3wt%~約0.7wt%であってもよい。
【0053】
一方、本発明の他の側面によれば、上述したいずれかの樹脂組成物を含む、生分解性樹脂成形品が提供される。
【0054】
その他、発明の一実施例による樹脂組成物は、その他の添加剤をさらに含んでもよい。添加剤は、本発明の属する技術分野、つまり、熱可塑性高分子分野における樹脂組成物の成形時に使用する一般的な添加剤を特別な制限なく使用可能である。
【0055】
添加剤は、無機フィラー、有機フィラー、熱安定剤、UV安定剤などを含むことができる。
【0056】
そして、添加剤は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)およびポリ乳酸の計100重量部に対して、約1~約30重量部含まれる。
【0057】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、生分解性フィルムであってもよい。
【0058】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ISO527に基づいて測定した引張強度の値が約250kg/cm~約500kg/cm、または約250kg/cm~約400kg/cm、または約300kg/cm~約400kg/cm、または約350kg/cm~約380kg/cmで、非常に優れた引張強度の値を有することができる。
【0059】
そして、発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ISO527に基づいて測定した伸び率の値が約200%~約600%、または約300%~約500%、または約300%~400%で、非常に優れた伸び率の値を有することができる。
【0060】
このような機械的物性によって、本発明の一実施例による生分解性樹脂成形品は、農業用マルチングフィルムなどの用途に使用可能である。
【0061】
そして、他の例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ホットシールフィルムであってもよい。
【0062】
発明の一実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921に基づいて2Nの条件で測定したホットシール開始温度の値が約80℃~約120℃、または約100℃~約120℃、または約105℃~約115℃、または約105℃~約110℃であってもよい。接合強度2Nは、ホットシールを評価するための最小接合強度値で、接合強度が2N以上の場合、ホットシールが特別な問題なく実現されたものと見られる。本発明の一例による生分解性樹脂成形品は、既存に比べて非常に低い温度でもホットシールを実現することができる。
【0063】
発明の他の実施例によれば、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921に基づいて約110℃の条件で測定したシール強度の値が約2N以上、または約2N~約10N、または約2.5N~約5Nであってもよい。
【0064】
そして、前記生分解性樹脂成形品は、ASTM F1921に基づいて約114℃の条件で測定したシール強度の値が約3N以上、または約3N~約10N、または約4N~約5Nであってもよい。
上記のように、本発明の一例による生分解性樹脂成形品は、既存に比べて非常に低い温度でも高いシール強度の値を実現することができる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の樹脂組成物は、生分解性に優れていながらも、機械的物性に優れ、また、ホットシール時に低い温度でも高いシール強度を実現できるホットシールフィルム、ホットシールバッグ(bag)などの樹脂製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0066】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【実施例
【0067】
使用した試料の情報
ポリブチレンアジペート-コ-テレフタレートとしてはTunhe社のTH801T製品を用意した。
融点:119℃、溶融指数(190℃21.6Kg):2.7g/10min
ポリ乳酸としてはESUN社(AI-1001)製品を用意した。
密度:1.24g/cm、溶融指数(190℃21.6Kg):3.82g/10min
【0068】
相溶化剤としては、次の製品を使用した。
【0069】
実施例:無水マレイン酸変性ポリオレフィンエラストマー
FUSABOND N493(無水マレイン酸変性エチレン-1-オクテン共重合エラストマー、以下、493);密度:0.87g/cm;融点:50℃;凝固点:28℃;溶融指数(190℃21.6Kg):1.6g/10min;マレイングラフト比率:0.5wt%
KT-915(無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン-ジエンエラストマー、以下、915):密度:0.86~0.88g/cm;溶融指数(190℃2.16Kg):0.5~1.5g/10min;マレイングラフト比率:1.0wt%
【0070】
比較例:無水マレイン酸変性ポリプロピレン
FUSABOND P353(以下、353);密度:0.904g/cm;融点:132℃;凝固点:92℃;溶融指数(190℃21.6kg):22.4g/10min;マレイングラフト比率:1.3wt%
【0071】
比較例:無水マレイン酸変性ポリエチレン
FUSABOND E100(以下、100);密度:0.954g/cm;融点:134℃;凝固点:115℃;溶融指数(190℃21.6Kg):2g/10min;マレイングラフト比率:0.8wt%
FUSABOND E588(以下、588);密度:0.93g/cm;融点:120℃;凝固点:102℃;溶融指数(190℃2.16Kg):1.75g/10min;マレイングラフト比率:0.8wt%
【0072】
無機添加剤:
無機添加剤としては炭酸カルシウムを使用した。
炭酸カルシウム:オミヤ(Omya)製品、Hydrocarb 95T
【0073】
下記表1の組成により樹脂組成物を製造した。具体的には、二軸押出機(32mm)に前記PBAT、PLA、および相溶化剤を下記表の組成により投入し、バレル温度:200℃、フィード:30kg/hr、300rpmの条件で押出を進行させて、樹脂組成物をペレット状に製造した。
【0074】
前記製造されたペレットに対して、単軸押出機(Single Screw Extruder、Blown Film M/C、19パイ、L/D=25)を用いて、押出温度約160℃~約170℃で0.05mmの厚さとなるように成形してブローンフィルムを製造した。この時、膨張比(Blown-Up Ratio)は約1.8とした。
【表1】
【0075】
物性の測定
引張強度および伸び率の測定
万能試験機(製造会社:Instron、モデル名:Model5965)を用いて、ISO527に基づいて前記フィルムの引張強度の値を測定した。
【0076】
試験片はBar状の横x縦(10mmx150mm)で製造した。
【0077】
ホットシール開始温度およびシール強度の測定
ホットタック試験機(製造会社:Swiss Management、モデル名:Model4000)を用いて、ASTM F1921に基づいて、シール温度に応じたシール強度の値を測定し、2Nとなる温度値をホットシール開始温度の値に決定した。
【0078】
前記測定結果を下記表2にまとめた。
【表2】
【0079】
前記表2を参照すれば、本発明の一実施例による樹脂組成物は、非常に高い伸び率および引張強度などを達成できると同時に、ホットシール時に低い温度でも高い接合強度を実現できるという点を明確に確認できる。
【0080】
ただし、参考例のように、ポリ乳酸が過度に多く含まれる場合、硬性が高くなって、伸び率が低下し、ホットシール時に接合強度も低下する問題点が発生した。
【0081】
一方、相溶化剤の種類を異ならせて、実験を繰り返した。
【0082】
下記表3の組成により樹脂組成物を製造した。具体的には、二軸押出機(32mm)に前記PBAT80重量部、PLA20重量部、無機添加剤20重量部、および相溶化剤を下記表の組成により投入し、バレル温度:200℃、フィード:30kg/hr、300rpmの条件で押出を進行させて、樹脂組成物をペレット状に製造した。
【0083】
前記製造されたペレットに対して、単軸押出機(Single Screw Extruder、Blown Film M/C、19パイ、L/D=25)を用いて、押出温度約160℃~約170℃で0.05mmの厚さとなるように成形してブローンフィルムを製造した。この時、膨張比(Blown-Up Ratio)は約1.8とした。
【0084】
前記測定結果を下記表3および4にまとめた。
【表3】
【表4】
【0085】
前記表3を参照すれば、相溶化剤を全く使用しない比較例2-1や、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィンエラストマーではない、無水マレイン酸(maleic anhydride)変性ポリオレフィン系相溶化剤を用いたその他の比較例は、その機械的物性が実施例に比べて劣っており、ホットシール開始温度も非常に高く、同一温度内でホットシール強度の値も非常に低いことを確認できる。
【国際調査報告】