(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-22
(54)【発明の名称】3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 29/149 20060101AFI20240515BHJP
C07C 31/22 20060101ALI20240515BHJP
C07C 31/24 20060101ALI20240515BHJP
C07C 33/03 20060101ALI20240515BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20240515BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20240515BHJP
B01J 23/656 20060101ALI20240515BHJP
B01J 27/224 20060101ALI20240515BHJP
B01J 31/28 20060101ALI20240515BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240515BHJP
【FI】
C07C29/149
C07C31/22
C07C31/24
C07C33/03
A01N31/02
B01J23/46 301M
B01J23/656 M
B01J27/224 M
B01J31/28 M
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023568168
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-11-02
(86)【国際出願番号】 EP2022061908
(87)【国際公開番号】W WO2022233904
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジルヴェスター グレッスル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー ジビル リンケ
(72)【発明者】
【氏名】グリット バイアー
(72)【発明者】
【氏名】ルーテ ダ コンセイソン タヴァレス アンドレ
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H011
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA03
4G169BA01A
4G169BA01B
4G169BA04A
4G169BA05A
4G169BA05B
4G169BA08A
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4G169BA32A
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4G169BB15B
4G169BC31A
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4G169BC33A
4G169BC62A
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4G169BC64B
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4G169BC68A
4G169BC70A
4G169BC70B
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4G169BC72B
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4G169BC74A
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169CB02
4G169CB21
4G169CB63
4G169CB70
4G169DA05
4G169ED06
4G169FC08
4H006AA02
4H006AB03
4H006AB99
4H006AC41
4H006BA16
4H006BA23
4H006BA25
4H006BA26
4H006BA55
4H006BA61
4H006BB14
4H006BB25
4H006BB31
4H006BC10
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG30
4H006FG40
4H011AA01
4H011BB03
4H011DC05
4H039CA60
4H039CB20
(57)【要約】
3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物の製造方法、前記生成化合物を製造するための出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される化合物の使用、および1つ以上の前記生成化合物を含む生成物の製造方法における不均一系水素化触媒の使用が記載される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物、または
(b) 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物の製造方法であって、少なくとも以下の段階:
(i) 6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記出発化合物を、
・ 80℃~155℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で化学的に変換して、
前記出発化合物中に存在するカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基が、相応のヒドロキシ基へと選択的に水素化されて、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記出発化合物が、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはα-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、より好ましくはクエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、最も好ましくはクエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸からなる群から選択されるか、または
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはアコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択されるか、または
・ トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(iii)において生じる生成物が、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される、好ましくは
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは1,3,5-ペンタントリオール
からなる群から選択される、1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(ii)において準備または調製される、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤が、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび環状エーテルからなる群から選択される1つ以上の成分を含み、
前記溶剤は好ましくは、
・ 水、および
・ 溶剤の総量に対して50質量%を上回る、好ましくは70質量%を上回る、より好ましくは90質量%を上回る量の水を含む水性混合物
からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(iii)における温度が、
・ 120℃~155℃の範囲であり、且つ/または
・ ラクトンの代わりに、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する前記脂肪族ポリオールを選択的に調製するように選択される、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記不均一系水素化触媒が、
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量の質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含むか、または
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して10質量%以上の総量で、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される1つ以上の金属と組み合わせて含み、ここで、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不均一系水素化触媒が担持材料によって担持されており、好ましくは前記担持材料は金属酸化物、ゼオライトおよび炭素系材料からなる群から選択され、好ましくはAl
2O
3、ZrO
2、TiO
2、SiC、カーボンブラックおよびPTFEからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項、好ましくは請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階(iii)の後に、以下の追加的な段階:
・ 段階(iii)において使用された溶剤を蒸発によって除去する段階、
・ 段階(iii)から生じる生成物中に存在する、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物を化学的に変換して、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物(b)をもたらす段階、および
・ 1つ以上のさらなる化学物質を、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物に添加して、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物を含む反応混合物をもたらす段階
の1つまたは2つ以上を行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、好ましくはクエン酸およびアコニット酸からなる群から選択される出発化合物を含む出発材料が、植物材料から調製または単離され、好ましくは糖発酵によって調製される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成物が、
(a) 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含み、前記生成物が、
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ 塗料配合物および接着剤配合物、
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する1つ以上の前記脂肪族ポリオールをポリアルコキシレートに変換するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物、
・ ポリマーを調製するための、好ましくはポリウレタン、ポリエステルおよびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物、および
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のエステル、非環状エーテルまたは環状エーテルを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物
からなる群から選択される、
または、前記生成物が、
(b) 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含み、前記生成物が、
・ 1つ以上のポリアルコキシレートを含む生成物であって、前記ポリアルコキシレートの少なくとも1つは、段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される、前記生成物、および
・ 1つ以上のポリマー、好ましくはポリウレタンおよびポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む生成物であって、前記ポリマーの少なくとも1つが、段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される、前記生成物
からなる群から選択される、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ 塗料配合物および接着剤配合物、
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する1つまたは2つ以上の前記脂肪族ポリオールをポリアルコキシレートに変換するための反応混合物、
・ ポリマーを調製するための、好ましくはポリウレタン、ポリエステルおよびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーを調製するための反応混合物、および
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のエステル、非環状エーテルまたは環状エーテルを調製するための反応混合物
からなる群から選択される生成物であって、前記生成物が、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される、好ましくは
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは1,3,5-ペンタントリオール
からなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、
前記生成物。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に定義された方法によって得られる、請求項11に記載の生成物。
【請求項13】
・ 以下からなる群から選択される1つ以上の生成化合物:
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは1,3,5-ペンタントリオール
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における出発化合物としての、6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される化合物の使用、好ましくはクエン酸の使用であって、
好ましくは、それらの生成化合物、またはそのような生成化合物の混合物が、バッチあたり100kg以上、より好ましくは500kg以上、およびさらにより好ましくは1000kg以上の量で製造される、前記使用。
【請求項14】
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含むか、または
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して10質量%以上の総量で、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される1つ以上の金属と組み合わせて含み、ここで、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である、
不均一系水素化触媒の、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、(a)3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物、および/または(b)3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物の製造方法、そのような生成物(a)および(b)、および3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される生成化合物を製造するための出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される化合物の使用に関する。3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物の製造方法における不均一系水素化触媒の使用も記載される。
【背景技術】
【0002】
1,1,1-トリメチロールプロパン(TMP)またはペンタエリトリトール(PETP)に匹敵するコア構造を有するラジアルポリオールは、産業規模における用途範囲が広いことから、重要な合成ターゲットである。現在、ポリオール(例えばTMP、ジ-TMP、PETP、プロパンジオール、ペンタンジオールなど)は主に石油化学的に製造されている。化石原料供給の有限性および不安定性、および環境上の理由に起因して、化石原料を非化石原料、つまり再生可能資源から得られる原料によって置き換えることがますます重要になってきている。
【0003】
ラジアルトリカルボン酸、例えばクエン酸、イソクエン酸、トリカルバリル酸およびアコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩は、カルボキシル基のヒドロキシ基への選択的水素化が達成される限り、3つのヒドロキシ基を有するラジアルポリオールのための前駆体として使用され得る。クエン酸およびアコニット酸などのトリカルボン酸は、再生可能資源から、例えば植物材料から糖発酵によって得ることができる。
【0004】
残念ながら、トリカルボン酸は以下の主な理由に起因して、典型的な還元手順について困難な基質である:
・ pKA値が多くの触媒材料と適合しないこと、
・ 中央のC=O結合の求電子性が低いこと、
・ 温度の上昇に伴う脱カルボキシル傾向が強いこと、
・ 大半の有機溶剤中での溶解性が低いこと、
・ 還元電位が高いこと(これは例えば水素化ナトリウムでの中和をみちびくが、水素化アルミニウムリチウムなどのより強い還元剤のみでの還元をみちびく)。
【0005】
クエン酸は特に、温度が上昇する際に非常に脱カルボキシルおよび脱水しやすい。
【0006】
独国特許出願公開第4233431号明細書(DE 42 33 431 A1)は、プロパン-1,2,3-トリカルボン酸、テトラヒドロフルフリル酢酸、およびそのC1~C20-アルキルまたはC7~C12-アラルキルエステル、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-メチルテトラヒドロフラン、3-(2’-ヒドロキシエチル)テトラヒドロフラン、4-ヒドロキシメチルテトラヒドロピラン、2-メチル-γ-ブチロラクトンおよび/または3-メチル-γ-ブチロラクトンの製造方法を開示している。前記方法は、クエン酸またはそのC1~C20-アルキルまたはC7~C12-アラルキルエステルを水素化触媒上で、非水性溶剤中、50℃~400℃、且つ1bar~400barで、反応させることを含む。プロパン-1,2,3-トリメタノールへの水素化のために、低い反応温度、高い反応圧力、および短い滞留時間が好ましい。プロパン-1,2,3-トリメタノールは100℃~250℃、特に125℃~175℃、且つ100bar~400bar、特に150bar~300barで優先的に形成される。例7においては、400mlのクエン酸トリエチルが150℃且つ200barで、1100mlのテトラヒドロフラン中で、37質量%のCuO、1質量%のBaO、1質量%のCr2O3、0.4質量%のZnO、15質量%のMgO、29質量%のSiO2(「触媒D」)を含む60gの触媒を使用して、水素の取り込みが終了するまで水素化された。反応生成物からテトラヒドロフランを除去し、減圧下で蒸留して、87g(39%)のプロパン-1,2,3-トリメタノールおよび41.6g(19%)の3-(2’-ヒドロキシエチル)テトラヒドロフランがもたらされた。
【0007】
米国特許出願公開第2018/0346619号明細書(US2018/0346619 A1)は、アコニット酸がジエチルエーテル中で水素化アルミニウムリチウム(LiAlH4)によって還元され、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールが生じ、それがさらなるプロセスにおいて、エタノール溶液中で、水素ガスおよびカーボン上のパラジウム(Pd/C)触媒を用いて還元されて、プロパン-1,2,3-トリメタノールが生じる方法に言及している。
【0008】
米国特許出願第5731479号明細書(US 5,731,479)、米国特許出願公開第2018/0346688号明細書(US2018/0346688 A1)も関連技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許出願公開第4233431号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0346619号明細書
【特許文献3】米国特許出願第5731479号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2018/0346688号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の課題は、(a)3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物、および/または(b)3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物の製造方法であって、再生可能資源から得られる出発材料を使用できる、前記方法を提供することである。
【0011】
さらなる課題は、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩の、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基の選択的水素化方法であって、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールが有用な収率で得られ、脱カルボキシルによる、とりわけ2つ以上の炭素原子の損失、不完全な水素化および閉環をもたらしかねない望ましくない副反応が抑制される、前記方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の課題および他の課題は、
(a) 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物、および/または
(b) 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物の製造方法であって、少なくとも以下の段階:
(i) 脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つ以上の出発化合物を、
・ 80℃~155℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で化学的に変換して、
前記1つ以上の出発化合物中に存在するカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基が、相応のヒドロキシ基へと選択的に水素化されて、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる段階
を含む、前記方法によって達成され得る。
【0013】
意外なことに、段階(iii)における水素化反応のパラメータを上記で定義されたように選択し、且つ上記で定義された不均一系水素化触媒および上記で定義された溶剤が使用される場合、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩のカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基またはカルボキシレート基の選択的水素化が達成されて、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される生成化合物を有用な収率で得ることができることが判明した。従って、段階(iii)における出発化合物の化学変換が上記で定義されたパラメータ、上記で定義された不均一系水素化触媒、および上記で定義された溶剤を使用して行われる場合、望ましくない副反応が抑制される(出発化合物のクエン酸について、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールの形成、および可能性のある副反応の生成物を示す
図1参照)。
【0014】
上記で定義された(a)の場合、段階(iii)において生じる、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物が、前記方法の最終生成物である。ここで、最終生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなる。
【0015】
上記で定義された(b)の場合、段階(iii)において生じる、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物は中間生成物であり、且つ前記中間生成物は、上記で定義された段階(iii)に引き続く1つ以上のさらなる段階を実施することにより、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む最終生成物へと転換される。ここで、中間生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなり、且つ最終生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記化合物の1つまたは2つ以上の反応生成物を含むか、またはそれらからなる(詳細は下記参照)。
【0016】
上記で定義された方法の段階(i)において、
・ 脂肪族トリカルボン酸、
・ 脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ 脂肪族トリカルボン酸の無水物、
・ 脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される1つ以上の出発化合物を含む出発材料が調製または準備される。それらの出発化合物の中で、脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0017】
出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の場合、カルボキシル基が選択的にヒドロキシ基へと水素化される。出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の塩の場合、カルボキシレート基が選択的にヒドロキシ基へと水素化される。出発化合物が脂肪族トリカルボン酸のエステルの場合、カルボアルコキシ基が選択的にヒドロキシ基へと水素化される。出発化合物が脂肪族トリカルボン酸の無水物の場合、無水物基および場合により残留するカルボキシル基が選択的にヒドロキシ基へと水素化される。
【0018】
例えば、出発材料は、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。
【0019】
出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ 6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、
・ 6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ 6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ 6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択され得る。
【0020】
それらの出発化合物の中で、6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0021】
例えば、出発材料は、6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、出発化合物の全ては、6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0022】
特定の場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ トリカルバリル酸、
・ トリカルバリル酸のエステル、
・ トリカルバリル酸の無水物、および
・ トリカルバリル酸の塩
からなる群から選択される。
【0023】
それらの出発化合物の中で、トリカルバリル酸が好ましい。
【0024】
例えば、出発材料は、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0025】
特定の場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される。
【0026】
それらの出発化合物の中で、α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0027】
例えば、出発材料は、α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0028】
好ましくは、前記α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸はアコニット酸である。この場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ アコニット酸、
・ アコニット酸のエステル、
・ アコニット酸の無水物、および
・ アコニット酸の塩
からなる群から選択される。
【0029】
それらの出発化合物の中で、アコニット酸が好ましい。
【0030】
例えば、出発材料は、アコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、アコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0031】
特定の場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される。
【0032】
それらの出発化合物の中で、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0033】
例えば、出発材料は、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0034】
好ましくは、α-官能基化脂肪族トリカルボン酸はα-ヒドロキシ脂肪族カルボン酸である。この場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸のエステル、
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸の無水物、および
・ α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸の塩
からなる群から選択される。
【0035】
それらの出発化合物の中で、α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸が好ましい。
【0036】
例えば、出発材料は、α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0037】
好ましいα-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸はクエン酸およびイソクエン酸である。この場合、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ クエン酸およびイソクエン酸、
・ クエン酸のエステルおよびイソクエン酸のエステル、
・ クエン酸の無水物およびイソクエン酸の無水物、
・ クエン酸の塩およびイソクエン酸の塩
からなる群から選択される。
【0038】
それらの出発化合物の中で、クエン酸およびイソクエン酸が好ましい。
【0039】
例えば、出発材料は、クエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、クエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0040】
α-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群における最も好ましい出発化合物は、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸である。例えば、出発材料は、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸の1つ、2つまたは全てを含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、クエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸からなる群から選択される。
【0041】
上述の具体的な好ましい出発化合物は、式(I)による構造を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩である:
【化1】
[式中、
(i) R
1=H、R
2=H(トリカルバリル酸)、または
(ii) R
1=OH、R
2=H(イソクエン酸)、または
(iii) R
1=H、R
2=OH(クエン酸)、または
(iv) R
1、R
2が共に二重結合を示す(アコニット酸)]。
【0042】
従って、出発化合物、または前記出発化合物の少なくとも1つは、
・ クエン酸、
・ イソクエン酸、
・ アコニット酸、
・ トリカルバリル酸、
・ クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸からなる群から選択される酸のエステル、
・ クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸からなる群から選択される酸の無水物、および
・ クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸からなる群から選択される酸の塩
からなる群から選択され得る。
【0043】
それらの出発化合物の中で、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸およびトリカルバリル酸が好ましい。
【0044】
例えば、出発材料は、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、前記出発化合物の全ては、クエン酸、イソクエン酸、アコニット酸、トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される。
【0045】
特に好ましい出発化合物はクエン酸である。例えば、出発材料はクエン酸を含むか、またはクエン酸からなる。好ましくは、出発材料はクエン酸からなる。
【0046】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して5質量%以上、好ましくは20質量%以上であってよい。脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される全ての出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して60質量%以下、好ましくは55質量%以下であってよい。
【0047】
ここで、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量は、出発化合物と、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤との合計量である。
【0048】
好ましくは、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して5質量%以上且つ60質量%以下である。より好ましくは、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の総濃度は、段階(iii)の開始時の反応混合物の総量に対して20質量%以上且つ55質量%以下である。
【0049】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、好ましくはクエン酸およびアコニット酸からなる群から選択される、1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料は、好ましくは植物材料から調製または単離される。従って、上記で定義された方法は、再生可能資源から得られる出発材料を使用できるという利点を有する。
【0050】
例えば、出発材料は植物材料から糖発酵によって調製される。
【0051】
出発材料、特にクエン酸、およびクエン酸の化学変換から得られる出発化合物についての可能性のある他の再生可能資源は、柑橘類果実である。
【0052】
上記で定義された方法の段階(iii)において生じる生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む。例えば、段階(iii)において生じる生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなることができる。
【0053】
3つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールはC6-トリオールと称される。4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールはC6-テトロールと称される。3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールはC5-トリオールと称される。
【0054】
好ましくは、生成化合物は
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール
からなる群から選択される化合物である。
【0055】
例えば、段階(iii)において生じる生成物は、3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、および3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含むか、またはそれらからなる。好ましくは、全ての生成化合物は、3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、および3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される化合物である。
【0056】
3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される好ましい生成化合物は、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールである。3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される好ましい化合物は1,3,5-ペンタントリオールである。
【0057】
特定の好ましい場合において、段階(iii)において生じる生成物は、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールおよび1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される2つ以上の生成化合物を含む。
【0058】
クエン酸(例示的に以下に示す)、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、生成化合物の3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールおよび1,3,5-ペンタントリオールを得ることができる:
【化2】
【0059】
アコニット酸(例示的に以下に示す)、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、生成化合物のプロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールを得ることができる:
【化3】
【0060】
トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、生成化合物のプロパン-1,2,3-トリメタノールを得ることができる。
【0061】
イソクエン酸(例示的に以下に示す)、それらのエステル、それらの塩およびそれらの無水物からなる群から選択される出発化合物から、本発明による方法によって、以下の生成化合物を得ることができる:
【化4】
【0062】
段階(iii)において生じる生成物中で、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールの総量は、各々、残留する出発化合物と、1つ以上の出発化合物の化学変換によって得られる生成化合物(3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物を含む)との総量に対して、30質量%以上、好ましくは50質量%以上、または40質量%~95質量%の範囲であってよい。特定の量の、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物は不可避の副反応から生じ得ると理解される。
【0063】
好ましくは、段階(iii)において生じる生成物中で、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される生成化合物の総量は、各々、残留する出発化合物と、1つ以上の出発化合物の化学変換によって得られる生成化合物(3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物を含む)との総量に対して、30質量%を上回り、好ましくは50質量%を上回り、または40質量%~95質量%の範囲であってよい。特定の量の、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物は不可避の副反応から生じ得ると理解される。
【0064】
脂肪族トリカルボン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物と同じ数の炭素原子を有するか、または前記出発化合物中に存在する炭素原子数が1つ減らされて、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物よりも1つ少ない炭素原子を有する。従って、出発化合物の1つ以下の炭素原子が脱カルボキシルによって主に失われる。特定の場合、前記出発化合物は、段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物と同じ数の炭素原子を有する。この場合、出発化合物の炭素原子は脱カルボキシルによって主に失われない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0065】
脂肪族トリカルボン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物と同じ数の炭素間単結合を有するか、または前記出発化合物中に存在する1つの炭素間単結合が炭素間二重結合へと変換されて、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物よりも1つ少ない炭素間単結合を有する。従って、出発化合物の1つ以下の炭素間単結合が脱水によって炭素間二重結合へと主に変換される。特定の場合、前記出発化合物は、段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物と同じ数の炭素間単結合を有する。この場合、出発化合物の炭素間単結合は脱水によって炭素間二重結合へと主に変換されない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0066】
α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記出発化合物中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物と同じ数の炭素間単結合を有するか、または前記出発化合物中に存在する炭素間二重結合が水素化によって炭素間単結合へと変換されて、生じる脂肪族ポリオールは前記出発化合物よりも1つ多い炭素間単結合を有する。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0067】
脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素原子を有するか、または前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数が1つ減らされて、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸よりも1つ少ない炭素原子を有する。従って、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の1つ以下の炭素原子が脱カルボキシルによって主に失われる。特定の場合、前記エステルは、段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素原子を有する。この場合、出発化合物として使用されたエステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素原子は脱カルボキシルによって主に失われない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0068】
脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素間単結合を有するか、または前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する1つの炭素間単結合が炭素間二重結合へと変換されて、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸よりも1つ少ない炭素間単結合を有する。従って、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の1つ以下の炭素間単結合が脱水によって炭素間二重結合へと主に変換される。特定の場合、前記エステルは、段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素間単結合を有する。この場合、前記エステルに相応する脂肪族トリカルボン酸の炭素間単結合は脱水によって炭素間二重結合には主に変換されない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0069】
α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、前記エステルに相応するα,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸と同じ数の炭素間単結合を有するか、または前記エステルに相応するα,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸中に存在する炭素間二重結合が炭素間単結合へと変換されて、生じる脂肪族ポリオールは前記エステルに相応する前記α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸よりも1つ多い炭素間単結合を有する。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0070】
クエン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素原子を有するか、またはクエン酸中に存在する炭素原子数が1つ減らされて、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸よりも1つ少ない炭素原子を有する。従って、クエン酸の1つ以下の炭素原子が脱カルボキシルによって主に失われる。特定の場合、クエン酸は、段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素原子を有する。この場合、クエン酸の炭素原子は脱カルボキシルによって主に失われない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0071】
クエン酸またはそれらの塩またはそれらの無水物が出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素間単結合を有するか、またはクエン酸中に存在する1つの炭素間単結合が脱水によって炭素間二重結合へと変換されて、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸よりも1つ少ない炭素間単結合を有する。特定の場合、前記出発化合物は、段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素間単結合を有する。この場合、クエン酸の脱水は主に起こらない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0072】
クエン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素原子を有するか、またはクエン酸中に存在する炭素原子数が1つ減らされて、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸よりも1つ少ない炭素原子を有する。従って、クエン酸の1つ以下の炭素原子が脱カルボキシルによって主に失われる。特定の場合、前記出発化合物は、段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素原子数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素原子を有する。この場合、クエン酸の炭素原子は脱カルボキシルによって主に失われない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0073】
クエン酸のエステルが出発化合物として使用される場合、それは好ましくは段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素間単結合を有するか、またはクエン酸中に存在する1つの炭素間単結合が脱水によって炭素間二重結合へと変換されて、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸よりも1つ少ない炭素間単結合を有する。特定の場合、前記出発化合物は、段階(iii)において化学的に変換されて、クエン酸中に存在する炭素間単結合数は主に維持され、生じる脂肪族ポリオールはクエン酸と同じ数の炭素間単結合を有する。この場合、クエン酸の脱水は主に起こらない。ここで、主にとは、上記で定義された生成物(a)の50質量%より多くが上記で定義された条件を満たすことを意味する。好ましくは、生成物(a)の60質量%より多く、より好ましくは70質量%より多くが上記で定義された条件を満たす。ここで、生成物(a)の総質量は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールと、残留する出発化合物と、副反応によって形成される、3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない生成化合物との質量の合計である。
【0074】
上記で定義された方法の段階(ii)において、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤が調製または準備される。従って、前記溶剤はn-ブタノールよりも高い極性を有する。好ましい溶剤はプロトン性である。そのような溶剤は、上記で定義された出発化合物について十分な溶解性を有する。
【0075】
段階(ii)において準備または調製される溶剤は、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび環状エーテルからなる群から選択される1つ以上の成分を、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率が生じるような割合で含み得る。典型的な環状エーテルはテトラヒドロフラン(THF)、テトラヒドロピラン(THP)、およびジオキサンである。
【0076】
好ましくは、溶剤は
・ 水、および
・ 溶剤の総量に対して50質量%を上回る、好ましくは70質量%を上回る、より好ましくは90質量%を上回る量の水を含む水性混合物
からなる群から選択される。
【0077】
前記水性混合物において、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、環状エーテルの1つ以上を水に混ぜることができる。
【0078】
上記で定義された方法の段階(iii)において、段階(i)において準備または調製された前記1つ以上の出発化合物が、80℃~155℃の範囲の温度、好ましくは120℃~155℃の範囲の温度で、1つ以上の上記で定義された生成化合物へと化学的に変換される。
【0079】
反応温度に依存して、15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で所定の不均一系水素化触媒の存在下での、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物の化学変換は、ラクトン(本発明によらない、
図1参照)、または3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールのいずれか、または両種の生成物の混合物を生じ得る。従って、段階(iii)において、反応温度は好ましくは、ラクトンの代わりに、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する前記脂肪族ポリオールを選択的に調製するように選択される。
【0080】
上記で定義された方法の段階(iii)を、30時間以上、好ましくは60時間以上の時間にわたって実施してよい。上記で定義された方法の段階(iii)を、200時間以下、好ましくは120時間以下、より好ましくは96時間以下の時間にわたって実施してよい。好ましくは、上記で定義された方法の段階(iii)を、30時間以上、且つ200時間以下の時間にわたって実施する。より好ましくは、上記で定義された方法の段階(iii)を、60時間以上、且つ120時間以下、好ましくは96時間以下の時間にわたって実施する。
【0081】
上記で定義された方法の段階(iii)において、段階(i)において準備または調製された前記1つ以上の出発化合物を、Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で、1つ以上の上記で定義された生成化合物へと化学的に変換する。
【0082】
好ましい不均一系水素化触媒は、Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含むか、またはそれらからなる。ここで、好ましくはRuの量は、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上である。
【0083】
他の好ましい不均一系水素化触媒は、Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して10質量%以上の総量で、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される1つ以上の金属と組み合わせて含むか、またはそれらからなり、ここで、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である。ReおよびRuの1つまたは両方を、PdおよびPtの1つまたは両方と組み合わせて含むか、またはそれらからなる触媒が好ましく、ここでRe、Rh、PdおよびPtからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である。
【0084】
いずれの場合も、触媒は、上述の量の不均一系水素化触媒中に含まれる微量の他の金属および酸化物を含み得ることが理解される。
【0085】
好ましくは、出発化合物の総量に対する不均一系水素化触媒の量は、0.01質量%~5質量%、好ましくは0.05質量%~2.5質量%の範囲である。
【0086】
不均一系水素化触媒は担持材料(担体とも称される)によって担持され得る。担持材料の質量は、不均一系水素化触媒の上述の量には含まれない。
【0087】
不均一系水素化触媒の担持材料は好ましくは、上記で定義された方法の段階(iii)の間に同時に存在する熱、水、酸および水素化分解条件から生じる水熱応力に耐えるように選択される。
【0088】
好ましくは、担持材料は金属酸化物、ゼオライト、および炭素系材料、好ましくはAl2O3、ZrO2、TiO2、SiC、カーボンブラック、およびPTFEからなる群から選択される。異なる担持材料の組み合わせ、例えばPTFE担持カーボンブラックが可能である。
【0089】
担持触媒において、好ましくは不均一系水素化触媒の総量は、不均一系水素化触媒と担持材料との質量の合計に対して0.1質量%~10質量%、好ましくは0.5質量%~5質量%の範囲である。
【0090】
触媒金属と担持材料との好ましい組み合わせは、Ruと、カーボンブラック、PTFE担持カーボンブラック、Al2O3、またはSiCとの組み合わせ、およびRe/Ptとカーボンブラックとの組み合わせである。
【0091】
段階(iii)の後、担持された不均一系水素化触媒を、好ましくはろ過を用いて回収できる。
【0092】
上記で定義された方法は、上記で定義された段階(iii)の後に実施される1つ以上のさらなる段階を含み得る。
【0093】
上記で定義された段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、段階(iii)において使用された溶剤を蒸発によって除去できる。溶剤の蒸発は任意の適した方法によって行うことができる。例えば、溶剤の蒸発は凍結乾燥によって行うことができる。
【0094】
上記で定義された段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記生成化合物を化学的に変換して、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物(b)をもたらすことができる。ここで、段階(iii)において生じる、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む生成物は中間生成物であり、且つ前記中間生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む最終生成物へと化学的に変換される。
【0095】
上記で定義された段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、1つ以上のさらなる化学物質を、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記生成化合物に添加して、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つ以上の生成化合物を含む反応混合物をもたらすことができる。従って、
・ 上記で定義された段階(iii)から生じる3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する1つ以上の脂肪族ポリオール、
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールではない1つ以上のさらなる化学物質
を含有する反応混合物が形成される。
【0096】
そのような反応混合物は、上記で定義された段階(iii)から生じる、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む上述の生成物とは異なる反応生成物を調製するために使用するために構成され且つ意図される(詳細は下記参照)。
【0097】
前記反応混合物において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物は、反応物として、または溶剤として機能し得る。
【0098】
上記で定義された方法は、上記で定義された段階(iii)の後に実施される1つ、2つまたは全ての上記で定義されたさらなる段階を含み得る。
【0099】
上記で説明されたとおり、(a)の場合、上記で定義された方法の生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物を含む。
【0100】
生成物(a)は、
・ ペプチド、
・ タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択されるタンパク質、
・ 酵素、好ましくはリソチーム、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ、およびセルラーゼからなる群から選択される酵素、
・ 微生物、好ましくはグラム陽性菌、グラム陰性菌、有芽胞菌、真菌胞子、菌糸、酵母からなる群から選択される微生物、
・ DNA、RNAおよびウイルス、好ましくはバクテリオファージからなる群から選択されるウイルス、
からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物からなる群から選択され得る。
【0101】
ペプチド、タンパク質、酵素、DNA、RNA、ウイルス、および微生物からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物は、生体触媒、食品分野、飼料用途、ホームケア、パーソナルケア、および農業を含む多様な異なる用途のために使用される。
【0102】
そのような配合物において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される生成化合物は、従来の溶剤、例えば1,2-プロパンジオール、グリセロールまたはソルビトールを置き換えることができ、且つ/またはペプチド、タンパク質、酵素、DNA、RNA、ウイルスおよび微生物からなる群から選択される材料を保護および安定化することができる。より具体的には、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される生成化合物は、微生物の増殖を回避するためのバイオスタティック剤として使用され得る。
【0103】
生成物(a)は塗料配合物または接着剤配合物、好ましくはフェノキシエタノールを含む塗料配合物または接着剤配合物であってよい。そのような配合物において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される生成化合物は、フェノキシエタノールの殺菌作用を強化できる。
【0104】
生成物(a)は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の生成化合物が、1,1,1-トリメチロールプロパン(TMP)またはペンタエリトリトール(PETP)などの従来のポリオールを置換する、反応混合物であってよい。
【0105】
例えば、生成物(a)は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する1つ以上の前記脂肪族ポリオールを、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によってポリアルコキシレートに変換するための反応混合物であり、前記反応混合物は前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に調製される。
【0106】
例えば、生成物(a)は、ポリマーを調製するための、好ましくはポリウレタン、ポリエステル、およびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーを調製するための反応混合物であり、前記反応混合物は前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に調製される。ポリアクリレートを調製するための反応混合物において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される生成化合物は、懸濁重合後に封入をもたらし得る。
【0107】
例えば、生成物(a)は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つ以上の生成化合物のエステル、非環状エーテルまたは環状エーテルを調製するための反応混合物であり、前記反応混合物は、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に調製される。好ましいエステルはアセチルエステルである。非環状エーテルはtert-ブチル化によって得られる。環状エーテルは脱水環化によって得られる。さらなる官能化後、前記エステル、非環状エーテルおよび環状エーテルは匂いおよび芳香化学のための可能性のある構成ブロックであることがある。
【0108】
上述の反応混合物は、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、1つ以上のさらなる化学物質を、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物に添加することによって得ることができる。
【0109】
上記で説明されたとおり、(b)の場合、上記で定義された方法の生成物は、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記化合物の1つ以上の反応生成物を含む。
【0110】
生成物(b)は、1つ以上のポリアルコキシレートを含む生成物からなる群から選択されてよく、前記ポリアルコキシレートの少なくとも1つは、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記生成化合物から調製される。そのようなポリアルコキシレートは、非イオン性の泡抑制剤および解乳化剤として、広範な用途、例えばホームケアおよびパーソナルケアの用途において使用され得る。本発明による方法によって得られたポリアルコキシレートは、従来のポリアルコキシレートに比して強化された生分解性を有することが予測される。
【0111】
生成物(b)は、1つ以上のポリマー、好ましくはポリウレタンおよびポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む生成物からなる群から選択されてよく、前記ポリマーの少なくとも1つは、前記1つ以上の出発化合物を化学的に変換する段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つ以上の前記生成化合物から調製される。
【0112】
本発明による特に好ましい方法において、
(a) 3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される1つ、2つ、3つまたは全ての生成化合物、および/または
(b) 1つ、2つ、3つまたは全ての前記生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物が、少なくとも以下の段階:
(i) クエン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階であって、前記溶剤は水、または水と、メタノールおよびエチレングリコールからなる群から選択される1つとの混合物である、前記段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 120℃~155℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Ruを含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在するカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基が相応のヒドロキシ基へと選択的に水素化されて、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される1つ、2つ、3つまたは全ての生成化合物を含む生成物が生じる段階、
を含む方法によって調製される。
【0113】
本発明による他の特に好ましい方法において、
(a) プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールからなる群から選択される1つまたは両方の生成化合物、および/または
(b) 1つまたは両方の前記生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物が、少なくとも以下の段階:
(i) アコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階であって、前記溶剤は水、または水と、メタノールおよびエチレングリコールからなる群から選択される1つとの混合物である、前記段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 120℃~155℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Ruを含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在するカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基が相応のヒドロキシ基へと選択的に水素化されて、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールからなる群から選択される1つまたは両方の生成化合物を含む生成物が生じる段階、
を含む方法によって調製される。
【0114】
本発明によるさらに特に好ましい方法において、
(a) 生成化合物プロパン-1,2,3-トリメタノール、および/または
(b) 前記生成化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物が、少なくとも以下の段階:
(i) トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階であって、前記溶剤は水、または水と、メタノールおよびエチレングリコールからなる群から選択される1つとの混合物である、前記段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記1つまたは2つ以上の出発化合物を、
・ 120℃~155℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Ruを含む不均一系水素化触媒の存在下で、
化学的に変換して、1つまたは2つ以上の出発化合物中に存在するカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基が相応のヒドロキシ基へと選択的に水素化されて、生成化合物プロパン-1,2,3-トリメタノールを含む生成物が生じる段階、
を含む方法によって調製される。
【0115】
本願は、
・ 以下からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物:
・ ペプチド、
・ タンパク質、好ましくはヒト血清アルブミンおよびウシ血清アルブミンからなる群から選択されるタンパク質、
・ 酵素、好ましくはリソチーム、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、マンナナーゼ、およびセルラーゼからなる群から選択される酵素、
・ 微生物、好ましくはグラム陽性菌、グラム陰性菌、有芽胞菌、真菌胞子、菌糸、酵母からなる群から選択される微生物、
・ DNA、RNAおよびウイルス、好ましくはバクテリオファージからなる群から選択されるウイルス、
・ 好ましくはフェノキシエタノールを含む、塗料配合物および接着剤配合物、
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する1つまたは2つ以上の前記脂肪族ポリオールを、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドとのアルコキシル化によってポリアルコキシレートへと変換するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物、
・ ポリマー、好ましくはポリウレタン、ポリエステルおよびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物、および
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のエステル、非環状エーテルまたは環状エーテルを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される、前記反応混合物
からなる群から選択される生成物であって、前記生成物が3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、前記生成物にも関する。
【0116】
好ましくは、上記で定義された生成物は
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール
からなる群から選択される脂肪族ポリオールを含む。
【0117】
3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する前記脂肪族ポリオールは、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールからなる群から選択される。3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する好ましい脂肪族ポリオールは1,3,5-ペンタントリオールである。
【0118】
より好ましくは、上記で定義された生成物は、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールおよび1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される2つ以上の生成化合物を含む。
【0119】
上記で定義された生成物は、上記で定義された方法によって、好ましくは上記で定義された好ましい方法の1つによって得ることができる。
【0120】
本願は、
・ 以下からなる群から選択される1つ以上の生成化合物:
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための出発材料としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物の使用にも関する。
【0121】
上記で定義された生成化合物を製造するための出発化合物として使用される、特定且つ好ましい脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。上記で定義された生成物を製造するための出発化合物としてのクエン酸およびアコニット酸の使用が最も好ましい。
【0122】
特定且つ好ましい生成化合物に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールは、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールからなる群から選択される。3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する好ましい脂肪族ポリオールは1,3,5-ペンタントリオールである。
【0123】
・ 以下からなる群から選択される生成化合物:
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための出発化合物としての、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つ以上の化合物の使用であって、バッチあたり100kg以上、より好ましくは500kg以上、およびさらにより好ましくは1000kg以上の量での前記使用が好ましい。
【0124】
最も好ましくは、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される上記で定義された好ましい化合物は、上記で定義された方法における出発化合物として使用される。
【0125】
本願は、
・ Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含み、好ましくはRuの量は不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上であるか、または
・ Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して10質量%以上の総量で、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される1つ以上の金属と組み合わせて、好ましくはReおよび/またはRuをPdおよび/またはPtとを組み合わせて含み、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である、
不均一系水素化触媒の、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物の製造方法における使用であって、前記方法は、脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される1つまたは2つ以上の化合物を化学的に変換して、3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じることを含む、前記使用にも関する。
【0126】
特定且つ好ましい不均一系水素化触媒に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。上記で定義された触媒を使用する方法において変換される、特定且つ好ましい脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。上記で定義された生成物を製造するためのクエン酸およびアコニット酸の使用が最も好ましい。
【0127】
特定且つ好ましい生成化合物に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールは、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールからなる群から選択される。3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する好ましい脂肪族ポリオールは1,3,5-ペンタントリオールである。
【0128】
特定且つ好ましい反応パラメータ(温度、水素分圧、化学変換の持続時間、溶剤)に関し、上記で定義された方法に関連して開示されたものと同じことが該当する。最も好ましくは、上記で定義された不均一系触媒は上記で定義された方法において使用される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1】クエン酸からの3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、並びに可能性のあるクエン酸の副反応の生成物の形成を示す図である。
【実施例】
【0130】
本発明による以下の実施例は、本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに説明および例示することが意図されている。
【0131】
図1はクエン酸からの3つ以上のヒドロキシ基および5以上の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、並びに可能性のあるクエン酸の副反応の生成物の形成を示す。
【0132】
水中に溶解されたクエン酸の水素化を以下のように行った:
不均一系水素化触媒(表1に示される触媒の種類、担持材料の種類、および量)を、オートクレーブ内で、溶剤としての水中の出発化合物であるクエン酸一水和物の溶液(クエン酸の濃度および溶液の量を表1に示す)に添加した(任意に触媒バスケットを用いる)。反応容器を閉じ、次いで窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。次いで撹拌(700U/分)および初期水素圧(5MPa)を適用した。反応混合物を表1に示される温度まで加熱し、且つ水素圧を表1に示される値まで上昇させた。それらの条件下で、表1に示される時間の間、反応混合物を撹拌し、次いで室温に冷却して、窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。その後、触媒バスケットが使用されなかった場合は触媒をろ過除去した。溶剤(水)を蒸発によって除去した。生じる油をガスクロマトグラフィーおよびHPLCによって分析した。クエン酸を用いた例の実験パラメータおよび結果を表1にまとめる。
【0133】
水中に溶解されたアコニット酸の水素化を以下のように行った:
不均一系水素化触媒(表2に示される触媒の種類、担持材料の種類、および量)を、オートクレーブ内で、溶剤としての水中の出発化合物であるアコニット酸の溶液(アコニット酸の濃度および溶液の量を表2に示す)に添加した(任意に触媒バスケットを用いる)。反応容器を閉じ、次いで窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。次いで撹拌(700U/分)および初期水素圧(5MPa)を適用した。反応混合物を表2に示される温度まで加熱し、且つ水素圧を表2に示される値まで上昇させた。それらの条件下で、表2に示される時間の間、反応混合物を撹拌し、次いで室温に冷却して、窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。その後、触媒バスケットが使用されなかった場合は触媒をろ過除去した。溶剤(水)を蒸発によって除去した。生じる油をガスクロマトグラフィーおよびHPLCによって分析した。アコニット酸を用いた例の実験パラメータおよび結果を表2にまとめる。
【0134】
水中に溶解されたトリカルバリル酸の水素化を以下のように行った:
不均一系水素化触媒(表3に示される触媒の種類、担持材料の種類、および量)を、オートクレーブ内で、溶剤としての水中の出発化合物であるトリカルバリル酸の溶液(トリカルバリル酸の濃度および溶液の量を表3に示す)に添加した(任意に触媒バスケットを用いる)。反応容器を閉じ、次いで窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。次いで撹拌(700U/分)および初期水素圧(5MPa)を適用した。反応混合物を表3に示される温度まで加熱し、且つ水素圧を表3に示される値まで上昇させた。それらの条件下で、表3に示される時間の間、反応混合物を撹拌し、次いで室温に冷却して、窒素ガス(0.5MPa)を用いて2回洗浄した。その後、触媒バスケットが使用されなかった場合は触媒をろ過除去した。溶剤(水)を蒸発によって除去した。生じる油をガスクロマトグラフィーおよびHPLCによって分析した。トリカルバリル酸を用いた例の実験パラメータおよび結果を表3にまとめる。
【0135】
表において、
・ C6-テトロールは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオールであり、
・ C6-トリオールはプロパン-1,2,3-トリメタノールと、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール(トリカルバリル酸を除く。上記参照)との両方を含み、
・ C5-トリオールは1,3,5-ペンタントリオールである。
【0136】
【0137】
【0138】
【手続補正書】
【提出日】2023-05-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物、または
(b) 3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物
を含む生成物の製造方法であって、少なくとも以下の段階:
(i) 6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される出発化合物を含む出発材料を準備または調製する段階、
(ii) n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤を準備または調製する段階、および
(iii) 段階(i)において準備または調製された前記出発化合物を、
・ 80℃~155℃の範囲の温度で、
・ 15MPa~30MPaの範囲の水素分圧で、
・ 段階(ii)において準備または調製された前記溶剤中で、且つ
・ Mn、Re、Fe、RuおよびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を含む不均一系水素化触媒の存在下で化学的に変換して、
前記出発化合物中に存在するカルボキシル基、カルボアルコキシ基、無水物基および/またはカルボキシレート基が、相応のヒドロキシ基へと選択的に水素化されて、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む生成物が生じる段階
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記出発化合物が、
・ α-官能基化脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはα-ヒドロキシ脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、より好ましくはクエン酸、イソクエン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、最も好ましくはクエン酸、クエン酸トリエチル、およびイソクエン酸からなる群から選択されるか、または
・ α,β-不飽和脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から、好ましくはアコニット酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択されるか、または
・ トリカルバリル酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
段階(iii)において生じる生成物が
、
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは1,3,5-ペンタントリオール
からなる群から選択される、1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(ii)において準備または調製される、n-ブタノールの誘電率を上回る誘電率を有する溶剤が、水、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソ-プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよび環状エーテルからなる群から選択される1つ以上の成分を含み、
前記溶剤は好ましくは、
・ 水、および
・ 溶剤の総量に対して50質量%を上回る、好ましくは70質量%を上回る、より好ましくは90質量%を上回る量の水を含む水性混合物
からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
段階(iii)における温度が、
・ 120℃~155℃の範囲であり、且つ/または
・ ラクトンの代わりに
、前記脂肪族ポリオールを選択的に調製するように選択される、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記不均一系水素化触媒が、
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量の質量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含むか、または
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して10質量%以上の総量で、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される1つ以上の金属と組み合わせて含み、ここで、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記不均一系水素化触媒が担持材料によって担持されており、好ましくは前記担持材料は金属酸化物、ゼオライトおよび炭素系材料からなる群から選択され、好ましくはAl
2O
3、ZrO
2、TiO
2、SiC、カーボンブラックおよびPTFEからなる群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項、好ましくは請求項6に記載の方法。
【請求項8】
段階(iii)の後に、以下の追加的な段階:
・ 段階(iii)において使用された溶剤を蒸発によって除去する段階、
・ 段階(iii)から生じる生成物中に存在する、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物を化学的に変換して、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の化合物の1つ以上の反応生成物を含む生成物(b)をもたらす段階、および
・ 1つ以上のさらなる化学物質を、段階(iii)から生じる生成物中に存在する、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の前記生成化合物に添加して、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物を含む反応混合物をもたらす段階
の1つまたは2つ以上を行う、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される、好ましくはクエン酸およびアコニット酸からなる群から選択される出発化合物を含む出発材料が、植物材料から調製または単離され、好ましくは糖発酵によって調製される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記生成物が、
(a) 3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含み、前記生成物が、
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ 塗料配合物および接着剤配合物、
・
前記脂肪族ポリオールをポリアルコキシレートに変換するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物、
・ ポリマーを調製するための、好ましくはポリウレタン、ポリエステルおよびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物、および
・ 3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のエステル、非環状エーテルまたは環状エーテルを調製するための反応混合物であって、段階(iii)の後に調製される前記反応混合物
からなる群から選択される、
または、前記生成物が、
(b) 3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物の1つ以上の反応生成物を含み、前記生成物が、
・ 1つ以上のポリアルコキシレートを含む生成物であって、前記ポリアルコキシレートの少なくとも1つは、段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される、前記生成物、および
・ 1つ以上のポリマー、好ましくはポリウレタンおよびポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む生成物であって、前記ポリマーの少なくとも1つが、段階(iii)の後に実施されるさらなる段階において、3つ以上のヒドロキシ基および
5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物から調製される、前記生成物
からなる群から選択される、
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
・
酵素からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合
物
からなる群から選択される生成物であって、前記生成物が
、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、およ
び1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物を含む、
前記生成物。
【請求項12】
・ 以下からなる群から選択される1つ以上の生成化合物:
・ 3つまたは4つのヒドロキシ基および6の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノールおよび3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオール、および
・ 3つのヒドロキシ基および5の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオール、好ましくは1,3,5-ペンタントリオール
または
・ そのような生成化合物の混合物
を製造するための、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における出発化合物としての、6の総炭素原子数を有する脂肪族トリカルボン酸、それらのエステル、それらの無水物、およびそれらの塩からなる群から選択される化合物の使用、好ましくはクエン酸の使用であって、
好ましくは、それらの生成化合物、またはそのような生成化合物の混合物が、バッチあたり100kg以上、より好ましくは500kg以上、およびさらにより好ましくは1000kg以上の量で製造される、前記使用。
【請求項13】
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して90質量%以上、好ましくは95質量%以上の総量で含むか、または
・ Mn、Re、Fe、Ru、およびOsからなる群から選択される1つ以上の金属を、不均一系水素化触媒の総量に対して10質量%以上の総量で、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される1つ以上の金属と組み合わせて含み、ここで、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、AgおよびAuからなる群から選択される金属の総量は、不均一系水素化触媒の総量に対して98質量%以上である、
不均一系水素化触媒の、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法における使用。
【請求項14】
3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物の使用であって、
・ ペプチド、タンパク質、酵素、微生物、DNA、RNA、およびウイルスからなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物、
・ 塗料配合物および接着剤配合物、
・ 1つまたは2つ以上の前記脂肪族ポリオールをポリアルコキシレートに変換するための反応混合物、
・ ポリマーを調製するための、好ましくはポリウレタン、ポリエステルおよびポリアクリレートからなる群から選択されるポリマーを調製するための反応混合物、および
・ 3つ以上のヒドロキシ基および5~6の範囲の総炭素原子数を有する脂肪族ポリオールからなる群から選択される前記1つまたは2つ以上の生成化合物のエステル、非環状エーテルまたは環状エーテルを調製するための反応混合物
からなる群から選択される生成物における、前記使用。
【請求項15】
酵素からなる群から選択される1つ以上の材料を含む配合物からなる群から選択される生成物における、3-(ヒドロキシメチル)ペンタン-1,3,5-トリオール、プロパン-1,2,3-トリメタノール、3-(ヒドロキシメチル)-2-ペンテン-1,5-ジオールおよび1,3,5-ペンタントリオールからなる群から選択される1つまたは2つ以上の生成化合物の使用。
【国際調査報告】