(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】厚膜レジスト組成物およびそれを用いたレジスト膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240517BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240517BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/004 503A
G03F7/039 601
G03F7/004 504
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023564234
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 EP2022064144
(87)【国際公開番号】W WO2022248524
(87)【国際公開日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2021090002
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100206265
【氏名又は名称】遠藤 逸子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 理人
(72)【発明者】
【氏名】柳田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】佐尾 高歩
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA08
2H197CA10
2H197CE10
2H197HA03
2H197HA04
2H197HA05
2H197JA22
2H197JA24
2H225AF24P
2H225AF44P
2H225AF75P
2H225AF99P
2H225AH12
2H225AJ13
2H225AJ44
2H225AJ48
2H225AN02P
2H225AN21P
2H225AN38P
2H225AN39P
2H225AN62P
2H225BA01P
2H225BA26P
2H225BA32P
2H225CA12
2H225CB08
2H225CC03
2H225CC15
(57)【要約】
【課題】矩形性の高いレジストパターンを形成できる、厚膜レジスト組成物の提供。
【解決手段】ポリマー(A)、脱保護剤(B)、特定のカルボン酸化合物(C)、および溶媒(D)を含んでなる厚膜レジスト組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー(A)、脱保護剤(B)、C
4-12のカルボン酸化合物(C)および溶媒(D)を含んでなる厚膜レジスト組成物;
ここで
厚膜レジスト組成物から形成されるレジスト膜は膜厚が0.8~20μmであり、
カルボン酸化合物(C)は、1、2または3つのカルボキシ基を含んでなる不飽和炭化水素であり、
溶媒(D)は有機溶媒(D1)を含んでなる。
【請求項2】
カルボン酸化合物(C)が、式(c-1)で表される芳香族カルボン酸(C-1)または式(c-2)で表される脂肪族カルボン酸(C-2)である、請求項1に記載の組成物。
【化1】
(ここで、
Ar
11は、C
5-10の芳香族炭化水素環であり、
R
11は、OHまたはNH
2であり、
n11は0または1であり、n12は0、1または2である)
【化2】
(ここで、
L
21は、-C=C-または-C≡C-であり、
L
22は、-C=C-または-C≡C-であり、
n21は0、1、2または3であり、n22は0または1であり、n23は0、1、2または3である)
【請求項3】
クエンチャー(E)をさらに含んでなる、請求項1または2に記載の組成物:
好ましくは、クエンチャー(E)は、アミン化合物(E1)またはカルボン酸塩(E2)である。
【請求項4】
カルボン酸化合物(C)のpKa1(H
2O)が1.00~6.00である、請求項1~3の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
溶媒(D)が、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、乳酸エステル、芳香族炭化水素、アミド、およびラクトンからなる群から選択される、請求項1~4の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー(A)が、式(P-1)、(P-2)、(P-3)および(P-4)で表される繰り返し単位からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなる、請求項1~5の少なくともいずれか一項に記載の方法。
【化3】
(ここで、
R
p1、R
p3、R
p6およびR
p8は、それぞれ独立に、水素またはC
1-4アルキルであり、
R
p2およびR
p4は、それぞれ独立に、直鎖、分岐もしくは環状のC
3-15アルキル(ここで、アルキルは、フッ素によって置換されていてもよく、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
T
1およびT
2はそれぞれ独立に、単結合またはC
1-12の連結基であり、
R
p5、R
p7およびR
p9は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、
x1は、1~3であり、
x2、x3およびx5は、それぞれ独立に、0~2であり、
x4は、1~2である)
【請求項7】
脱保護剤(B)が、式(B-1)または式(B-2)で表される、請求項1~6の少なくともいずれか一項に記載の組成物。
B
n+カチオン B
n-アニオン (B-1)
(ここで、
B
n+カチオンは、式(BC1)で表されるカチオン:
【化4】
(ここで、
R
b1は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
6-12アリール、C
6-12アリールチオ、またはC
6-12アリールオキシであり、かつ
nb1は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)、
式(BC2)で表されるカチオン:
【化5】
(ここで、
R
b2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、かつ
nb2は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)、および
式(BC3)で表されるカチオン:
【化6】
(ここで、
R
b3は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールであり、
R
b4は、それぞれ独立に、C
1-6アルキルであり、かつ
nb3は、それぞれ独立に、0、1、2または3である)
からなる群から選択される、少なくとも1つのカチオンからなり、全体としてn価(ここで、nは1~3である)であり;
B
n-アニオンは、式(BA1)で表されるアニオン:
【化7】
(ここで、R
b5は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、またはC
1-6アルキルである)、
式(BA2)で表されるアニオン:
【化8】
(ここで、R
b6は、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールである)
式(BA3)で表されるアニオン:
【化9】
(ここで、R
b7は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールであり、ここで、2つのR
b7が相互に結合してフッ素置換されたヘテロ環構造を形成していていもよい)、および
式(BA4)で表されるアニオン:
【化10】
(ここで、
R
b8は、水素、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはヒドロキシであり、
L
bは、カルボニル、オキシまたはカルボニルオキシであり、
Y
bは、それぞれ独立に、水素またはフッ素であり、
nb4は、0~10の整数であり、かつ
nb5は、0~21の整数である)
からなる群から選択される、少なくとも1つのアニオンからなり、全体としてn価である)
【化11】
(ここで、
R
b9は、C
1-5フッ素置換アルキルであり、
R
b10は、それぞれ独立に、C
3-10アルケニルもしくはアルキニル(ここで、アルケニルおよびアルキニル中のCH
3-がフェニルによって置換されていてもよく、アルケニルおよびアルキニル中の-CH
2-が-C(=O)-、-O-またはフェニレンの少なくともいずれか一つによって置き換えられていてもよい)、C
2-10チオアルキル、C
5-10飽和複素環であり、
nb6は、0、1または2である)
【請求項8】
界面活性剤(F)をさらに含んでなる、請求項1~7の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは前記組成物は添加物(G)をさらに含んでなり:または
好ましくは添加物(G)が表面平滑剤、可塑剤、色素、コントラスト増強剤、酸、塩基、ラジカル発生剤、基板密着増強剤および消泡剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
【請求項9】
ポリマー(A)の含有量が、前記組成物を基準として、20~45質量%であり、
カルボン酸化合物(C)の含有量が、ポリマー(A)を基準として、0.01~5質量%である、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、脱保護剤(B)の含有量が、ポリマー(A)を基準として、0.05~10質量%であり;
好ましくは、溶媒(D)の含有量が、前記組成物を基準として、50~80質量%であり;
好ましくは、有機溶媒(D1)の含有量が、溶媒(D)を基準として、80~100質量%であり;
好ましくは、クエンチャー(E)の含有量が、ポリマー(A)を基準として、0.001~5質量%であり;
好ましくは、界面活性剤(F)の含有量が、ポリマー(A)を基準として、0.01~5質量%であり;または
好ましくは、添加物(G)の含有量が、ポリマー(A)を基準として、0.01~10質量%である。
【請求項10】
厚膜化学増幅型レジスト組成物である、請求項1~9の少なくともいずれか一項に記載の組成物:
好ましくは、前記組成物が厚膜KrF化学増幅型レジスト組成物であり、
好ましくは、前記組成物が厚膜ポジ型化学増幅型レジスト組成物であり、または
好ましくは、前記組成物が厚膜KrFポジ型化学増幅型レジスト組成物である。
【請求項11】
下記工程を含んでなるレジスト膜の製造方法。
(1)基板の上方に請求項1~10の少なくともいずれか一項に記載の組成物を適用する;
(2)前記組成物を加熱し、膜厚0.8~20μmのレジスト膜を形成する:
好ましくは、前記(2)の加熱が、100~250℃および/または30~300秒間行われる;または
好ましくは、前記(2)の加熱が、大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
【請求項12】
下記工程を含んでなるレジストパターンの製造方法。
請求項11に記載の方法でレジスト膜を形成する;
(3)前記レジスト膜を露光する;
(4)前記レジスト膜を現像する。
【請求項13】
前記レジストパターン頂部の端点から基板への垂線と、前記レジストパターン側面の最もえぐれている点から基板への垂線との距離が50nm以下である、請求項12に記載のレジストパターンの製造方法。
【請求項14】
下記工程を含んでなる加工基板の製造方法。
請求項12または13に記載の方法でレジストパターンを形成する;
(5)レジストパターンをマスクとして加工する:
好ましくは、前記(5)は下層膜または基板を加工する。
【請求項15】
請求項11~14の少なくともいずれか一項に記載の方法を含んでなるデバイスの製造方法。
好ましくは、加工された基板に配線を形成する工程をさらに含んでなり;または
好ましくは、デバイスは半導体素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や半導体集積回路などの製造に用いられる、厚膜レジスト組成物およびそれを用いたレジスト膜の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体等のデバイスの製造過程において、レジストを用いたリソグラフィ技術による微細加工が一般的に行われている。微細加工の工程は、シリコンウェハ等の半導体基板上に薄いレジスト層を形成し、その層を目的とするデバイスのパターンに対応するマスクパターンで覆い、その層をマスクパターンを介して紫外線等の活性光線で露光し、露光された層を現像することでレジストパターンを得て、得られたレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することを含み、それにより上述のパターンに対応する微細凹凸を形成する。
【0003】
レジストパターンの微細化が求められる一方、高エネルギーのイオン注入等に対応するため、より厚く、アスペクト比が高い、レジストパターンが求められてきている。厚膜のレジストパターンを形成する場合、薄膜の場合とは異なり、組成物に求められる性能やプロセス条件が異なるため、単に薄膜のレジスト組成物の粘度を調整して、厚膜化することでは要求される形状を形成することはできないという、特有の困難性がある。
特許文献1は、厚膜であっても断面形状が矩形に近いパターンを形成する組成物を得ることを目的として、化学増幅ポリマーと複数の酸発生剤を含んでなる組成物について検討する。
イオン注入やエッチング等のその後の工程への耐性をもたせるために、レジストパターン頂部の形状が重要となり、所望の形状を形成できるレジスト組成物が依然として求められている。
【0004】
薄膜レジストを対象に、有機酸を加えることで、現像欠陥やレジストパターン形状を改善する検討が行われている。例えば、特許文献2は、膜厚0.2μm程度の薄膜レジスト組成物に、マレイン酸等を添加する検討を行っている。
特許文献3は、磁気記憶媒体中の磁性膜パターンを作成するために、形状の良好な厚膜のレジストパターンを得るための検討を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-109701号公報
【特許文献2】特開2006-106693号公報
【特許文献3】特開2007-206425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、厚膜レジスト組成物およびその使用について、いまだ改良が求められる1以上の課題が存在すると考えた。それらは例えば以下が挙げられる。
厚膜のレジスト膜を形成できない。レジストパターンの矩形性が不充分である。レジストパターン壁頂部にえぐれ形状がある。パターン頂部付近の形状が悪い。現像後のプロセスにおいて、パターンが壊れる等の問題が生じる。厚膜のレジストパターンをマスクとして、基板を加工する際にパターンが壊れることにより、基板を目的の通りに加工できない。欠陥数が多い。厚膜のレジスト膜で得られる感度が不充分である。経時安定性が悪い。レジスト膜の膜厚が減少する。レジスト膜またはレジストパターンが熱に弱い。露光裕度が小さい。レジストパターンが基板から剥がれる。
本発明は、上述のような技術背景に基づいてなされたものであり、厚膜レジスト組成物およびそれを用いたレジスト膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による厚膜レジスト組成物は、ポリマー(A)、脱保護剤(B)、C4-12のカルボン酸化合物(C)および溶媒(D)を含んでなり、
ここで
厚膜レジスト組成物から形成されるレジスト膜は膜厚が0.8~20μmであり、
カルボン酸化合物(C)は、1、2または3つのカルボキシ基を含んでなる不飽和炭化水素であり、
溶媒(D)は有機溶媒(D1)を含んでなる。
【0008】
また、本発明によるレジスト膜の製造方法は、下記工程を含んでなる:
(1)基板の上方に上記の組成物を適用する;
(2)前記組成物を加熱し、膜厚0.8~20μmのレジスト膜を形成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による厚膜レジスト組成物を用いることで、以下の1または複数の効果を望むことが可能である。
厚膜のレジスト膜を形成できる。矩形性の高いレジストパターンが形成できる。レジストパターン壁頂部のえぐれ形状を小さくできる。パターン頂部付近の形状を良くすることができる。現像後のプロセス(例えばエッチング)において、耐性が高いレジストパターンを得ることができる。厚膜のレジストパターンをマスクとして、基板を加工できる。欠陥数を低減できる。厚膜のレジスト膜でも良好な感度を得ることができる。経時安定性が良い。レジスト膜の膜厚の減少を抑制できる。レジスト膜またはレジストパターンの耐熱性が高い。露光裕度を大きくすることができる。レジストパターンが基板から剥がれることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
[定義]
本明細書において、特に限定されて言及されない限り、本パラグラフに記載の定義や例に従う。
単数形は複数形を含み、「1つの」や「その」は「少なくとも1つ」を意味する。ある概念の要素は複数種によって発現されることが可能であり、その量(例えば質量%やモル%)が記載された場合、その量はそれら複数種の和を意味する。
「および/または」は、要素の全ての組み合わせを含み、また単体での使用も含む。
「~」または「-」を用いて数値範囲を示した場合、これらは両方の端点を含み、単位は共通する。例えば、5~25モル%は、5モル%以上25モル%以下を意味する。
「Cx-y」、「Cx~Cy」および「Cx」などの記載は、分子または置換基中の炭素の数を意味する。例えば、C1-6アルキルは、1以上6以下の炭素を有するアルキル鎖(メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等)を意味する。
ポリマーが複数種類の繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位は共重合する。これら共重合は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合、またはこれらの混在のいずれであってもよい。ポリマーや樹脂を構造式で示す際、括弧に併記されるnやm等は繰り返し数を示す。
温度の単位は摂氏(Celsius)を使用する。例えば、20度とは摂氏20度を意味する。
添加剤は、その機能を有する化合物そのものをいう(例えば、塩基発生剤であれば、塩基を発生させる化合物そのもの)。その化合物が、溶媒に溶解または分散されて、組成物に添加される態様もあり得る。本発明の一形態として、このような溶媒は溶媒(D)またはその他の成分として本発明にかかる組成物に含有されることが好ましい。
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0013】
厚膜レジスト組成物
本発明による厚膜レジスト組成物(以下、組成物ということがある)は、ポリマー(A)、脱保護剤(B)、C4-12のカルボン酸化合物(C)および溶媒(D)を含んでなる。カルボン酸化合物(C)は、1、2または3つのカルボキシ基を含んでなる不飽和炭化水素であり、溶媒(D)は有機溶媒(D1)を含んでなる。
厚膜レジスト組成物とは、厚膜のレジスト膜を形成できるレジスト組成物のことをいう。本発明において、厚膜レジスト組成物から形成されるレジスト膜の膜厚は、0.8~20μmである(好ましくは1~20μm;より好ましくは2~15μm;さらに好ましくは7~15μm;よりさらに好ましくは9~12μm)。
本発明による組成物の粘度は、好ましくは250~400cPである(より好ましくは280~380cP;さらに好ましくは300~350cP)。ここで粘度は、細管粘度計により25℃で測定したものである。
本発明による組成物は、好ましくは、厚膜KrF化学増幅型レジスト組成物であるか、または厚膜ポジ型化学増幅型レジスト組成物であり、より好ましくは厚膜KrFポジ型化学増幅型レジスト組成物である。ここで上記の好適例で使われるKrFの用語は、レジスト組成物から形成するレジスト膜を露光する際にKrFエキシマレーザーを用いることを意味する。
【0014】
(A)ポリマー
本発明による組成物はポリマー(A)を含んでなる。本発明に用いられるポリマー(A)は、酸と反応してアルカリ性水溶液に対する溶解度が増加するものである。このようなポリマーは、例えば保護基によって保護された酸基を有しており、外部から酸が添加されると、その保護基が脱離して、アルカリ性水溶液に対する溶解度が増加するものである。このようなポリマーは、リソグラフィ法において一般的に用いられるものから任意に選択することができる。
【0015】
ポリマー(A)は、好ましくは、式(P-1)、(P-2)、(P-3)および(P-4)で表される繰り返し単位からなる群から選択される繰り返し単位を含んでなる。
【化1】
ここで、
R
p1、R
p3、R
p6およびR
p8は、それぞれ独立に、水素またはC
1-4アルキルである(好ましくは水素またはメチル;より好ましくは水素)。
R
p2およびR
p4は、それぞれ独立に、直鎖、分岐もしくは環状のC
3-15アルキル(ここで、アルキルは、フッ素によって置換されていてもよく、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)である。ここで前記の「フッ素に置換されるアルキル」はアルキルに存在するHがFに置換されることを意味する。前記のフッ素に置換はアルキルに存在するHの全部または一部がFに置換されることを意味し、全部が置換されてもよい。本発明の一形態において、R
p2およびR
p4はフッ素によって置換されない。また、本発明の一形態において、R
p2およびR
p4のアルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていない。R
p2は、好ましくはメチル、イソプロピル、t-ブチル、シクロペンチル、メチルシクロペンチル、エチルシクロペンチル、メチルシクロヘキシル、エチルシクロヘキシル、メチルアダマンチルまたはエチルアダマンチルである(より好ましくはR
p2は分岐または環状構造を有しており;さらに好ましくはt-ブチル、エチルシクロペンチル、エチルシクロヘキシル、またはエチルアダマンチルであり;よりさらに好ましくはt-ブチル)。
R
p4は、好ましくはC
3-10である(より好ましくはC
3-8;さらに好ましくはC
3-5;よりさらに好ましくはt-ブチル)。
T
1およびT
2は、それぞれ独立に、単結合またはC
1-12の連結基である(好ましくは単結合)。T
1またはT
2のC
1-12の連結基として、それぞれ独立にアルキレン、-COO-Rt-、-O-Rt-、またはこれらいずれか2種以上が組み合わせからなる連結基が挙げられ、好ましくは-COO-Rt-である。Rtは、アルキレンまたはシクロアルキレンである(より好ましくはC
1-5アルキレン;さらに好ましくは-CH
2-、-(CH
2)
2-、または-(CH
2)
3-)。
R
p5、R
p7およびR
p9は、それぞれ独立に、C
1-5アルキル(ここで、アルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていてもよい)であり、好ましくはメチルまたはt-ブチルであり、より好ましくはメチルである。本発明の一形態において、R
p5、R
p7およびR
p9のアルキル中の-CH
2-が-O-によって置きかえられていない。
x1は、1~3である(好ましくは1、2または3;より好ましくは1)。
x2、x3およびx5は、それぞれ独立に、0~2である(好ましく0、1または2;より好ましくは0)。
x4は、1~2である(好ましくは0または1;より好ましくは1)。
【0016】
これらの繰り返し単位は、目的に応じて適切に配合されるので、それらの配合比は特に限定されないが、酸によってアルカリ性水溶液に対する溶解度の増加割合が適当になるように配合されることが好ましい。
ポリマー中の全ての繰り返し単位を基準として、(P-1)および(P-2)の繰り返し単位の比率が、好ましくは5~50モル%である(より好ましくは10~40モル%)。
ポリマー(A)において、式(P-1)、(P-2)、(P-3)、および(P-4)の繰り返し単位数をそれぞれnp1、np2、np3、およびnp4とする。
np1/(np1+np2+np3+np4)は、好ましくは0~60%である(より好ましくは1~60%;さらに好ましくは5~50%;よりさらに好ましくは10~30%)。
np2/(np1+np2+np3+np4)は、好ましくは0~60%である(より好ましくは0~50%;さらに好ましくは5~50%;よりさらに好ましくは5~30%)。本発明の一形態において、np2/(np1+np2+np3+np4)=0%であることも好適である。
np3/(np1+np2+np3+np4)は、好ましくは0~90%である(より好ましくは5~80%;さらに好ましくは30~80%;よりさらに好ましくは50~70%)。
np4/(np1+np2+np3+np4)は、好ましくは0~60%である(より好ましくは1~50%;さらに好ましくは5~40%;よりさらに好ましくは10~30%)。
好ましくはnp1+np2>0%であり、つまりnp1とnp2の少なくとも一方は0%より大きい。より好ましくはnp1が0%より大きい。
np1、np2、np3、およびnp4は、以下の式:
0%≦np1/(np1+np2+np3+np4)≦60%、
0%≦np2/(np1+np2+np3+np4)≦60%、
0%≦np3/(np1+np2+np3+np4)≦90%、および
0%≦np4/(np1+np2+np3+np4)≦60%を満たし、
かつnp1+np2>0%
を満たすことが好ましい。
ポリマー(A)は式(P-1)、(P-2)、(P-3)、および(P-4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含むこともできる。ここでポリマー(A)に含まれる全ての繰り返し単位の総数ntotalが、以下の式:
80%≦(np1+np2+np3+np4)/ntotal≦100%を満たすことが好ましい。
(np1+np2+np3+np4)/ntotalは、より好ましくは90~100%である(さらに好ましくは95~100%)。(np1+np2+np3+np4)/ntotal=100%であること、つまり、式(P-1)、(P-2)、(P-3)、および(P-4)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を含まないことも、本発明の好ましい一形態である。
【0017】
【0018】
ポリマー(A)の質量平均分子量(Mw)は、好ましくは2,000~200,000である(より好ましくは4,000~200,000;さらに好ましくは8,000~30,000)。ここで、質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で求める。
【0019】
ポリマー(A)は、1種または2種以上であってよい。
ポリマー(A)の含有量は、組成物を基準として、好ましくは20~45質量%である(より好ましくは25~40質量%;さらに好ましくは30~35質量%)。
【0020】
(B)脱保護剤
本発明による組成物は、脱保護剤(B)を含んでなる。脱保護剤は、光の照射によって酸を放出し、その酸がポリマー(A)に作用して、ポリマー(A)のアルカリ性水溶液に対する溶解度を増加させる役割を果たす。例えばポリマー(A)が保護基によって保護された酸基を有している場合に、酸によって、その保護基を脱離させる。本発明による組成物に用いられる脱保護剤は、従来知られているものから選択することができる。
【0021】
(B)脱保護剤は、露光により、酸解離定数pKa(H2O)が好ましくは-20~1.4(より好ましくは-16~1.4;さらに好ましくは-16~1.2;よりさらに好ましくは-16~1.1)の酸を放出する。
【0022】
脱保護剤(B)は、好ましくは式(B-1)または式(B-2)で表される。
【0023】
式(B-1)は以下である。
Bn+カチオン Bn-アニオン (B-1)
ここで、
Bn+カチオンは、式(BC1)~(BC3)で表されるカチオンからなる群から選択される、少なくとも1つのカチオンからなり、全体としてn価(ここで、nは1~3である)であり、
Bn-アニオンは、式(BA1)~(BA4)で表されるアニオンからなる群から選択される、少なくとも1つのアニオンからなり、全体としてn価である。
n価は、好ましくは1価または2価であり、より好ましくは1価である。
【0024】
式(BC1)は以下である。
【化3】
ここで、
R
b1は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、C
6-12アリール、C
6-12アリールチオ、またはC
6-12アリールオキシである(好ましくはメチル、エチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニルチオ、またはフェニルオキシ;より好ましくは、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニルチオ、またはフェニルオキシ)。
nb1は、それぞれ独立に、0、1、2または3である。全てのnb1が1であり、全てのR
b1が、同一であることも好適な一形態である。また、nb1が0であることも、好適な一形態である。
【0025】
【0026】
式(BC2)は以下である。
【化5】
ここで、
R
b2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールである(好ましくはR
b2はC
4-6の分岐構造を有するアルキル;より好ましくはt-ブチルまたは1,1-ジメチルプロピル;よりさらに好ましくはt-ブチル)。式中のそれぞれのR
b2は同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。
nb2は、それぞれ独立に、0、1、2または3であり、好ましくはそれぞれ1である。
【0027】
【0028】
式(BC3)は以下である。
【化7】
ここで、
R
b3は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールである(好ましくはメチル、エチル、メトキシ、またはエトキシ;より好ましくはメチルまたはメトキシ)。
R
b4は、それぞれ独立に、C
1-6アルキルである(好ましくはメチル、またはエチル;より好ましくはメチル)。
nb3は、それぞれ独立に、0、1、2または3であり、より好ましくは3である。
【0029】
【0030】
Bn+カチオンは、式(BC1)または(BC2)で表されるカチオンからなる群から選択されるものが、より良い効果を奏するので好ましい。
【0031】
式(BA1)は以下である。
【化9】
ここで、
R
b5は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、またはC
1-6アルキルである。例えば、-CF
3はメチル(C
1)の水素がフッ素に置換したものを意味する。好ましくはC
1-6フッ素置換アルキルに存在する水素の全てがフッ素に置換する。R
b5のアルキル部分は、好ましくはメチル、エチルまたはt-ブチルである(より好ましくはメチル)。好適な一形態において、R
b5は、好ましくは、フッ素置換アルキルであり、より好ましくは-CF
3である。
【0032】
【0033】
式(BA2)は以下である。
【化11】
ここで、
R
b6は、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールである(好ましくはC
2-6フッ素置換アルキル;より好ましくはC
2-3フッ素置換アルキル;さらに好ましくはC
3フッ素置換アルキル)。R
b6のフッ素置換アルキルにおいて、アルキル部分に存在する水素の全てがフッ素に置換されている形態が好適である。R
b6のアルキル部分は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルである(より好ましくはプロピル、ブチルまたはペンチル;さらに好ましくはブチル)。R
b6のアルキル部分は直鎖であることが好適である。
【0034】
式(BA2)の具体例は以下である。
C4F9SO3
-、C3F7SO3
-
【0035】
式(BA3)は以下である。
【化12】
ここで、
R
b7は、それぞれ独立に、C
1-6フッ素置換アルキル、C
1-6フッ素置換アルコキシ、C
6-12フッ素置換アリール、C
2-12フッ素置換アシル、またはC
6-12フッ素置換アルコキシアリールである(好ましくはC
2-6フッ素置換アルキル)。R
b7のアルキル部分は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルまたはペンチルである(より好ましくはメチル、エチルまたはブチル;さらに好ましくはブチル)。R
b7のアルキル部分は直鎖であることが好ましい。
ここで、2つのR
b7が相互に結合してフッ素置換されたヘテロ環構造を形成していていもよく、この場合、ヘテロ環は単環であっても、多環であってもよいが、好ましくは、構成員数が5~8の単環構造である。
【0036】
【0037】
式(BA4)は以下であるである。
【化14】
ここで、
R
b8は、水素、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはヒドロキシである(好ましくは水素、メチル、エチル、メトキシ、またはヒドロキシ;より好ましくは水素またはヒドロキシ)である。
L
bは、カルボニル、オキシまたはカルボニルオキシである(好ましくはカルボニルまたはカルボニルオキシ;より好ましくはカルボニル)。
Y
bは、それぞれ独立に、水素またはフッ素であり、好ましくは少なくとも1以上がフッ素である。
nb4は、0~10の整数であり、好ましくは0である。
nb5は、0~21の整数であり、好ましくは4、5または6である。
【0038】
【0039】
Bn-アニオンは、式(BA2)または(BA3)で表されるアニオンからなる群から選択されるものが、より良い効果を奏するので好ましい。本発明による組成物が脱保護剤(B)を2種含み、それぞれがアニオンとして(BA2)で表されるアニオンと(BA3)で表されるアニオンを含む形態も好適である。
【0040】
式(B-2)は以下である。
【化16】
ここで、
R
b9は、C
1-5フッ素置換アルキルである(好ましくはC
1-4の、全ての水素がフッ素置換されているアルキル;より好ましくはC
1またはC
4の全ての水素がフッ素置換されているアルキル)。
R
b10は、それぞれ独立に、C
3-10アルケニルもしくはアルキニル(ここで、アルケニルおよびアルキニル中のCH
3-がフェニルによって置換されていてもよく、アルケニルおよびアルキニル中の-CH
2-が-C(=O)-、-O-またはフェニレンの少なくともいずれか一つによって置き換えられていてもよい)、C
2-10チオアルキル、C
5-10飽和複素環である(好ましくは、C
3-12アルケニルもしくはアルキニル、C
3-5のチオアルキル、C
5-6の飽和複素環;より好ましくは-C≡C-CH
2-CH
2-CH
2-CH
3、-CH=CH-C(=O)-O-tBu、-CH=CH-Ph、-S-CH(CH
3)
2、-CH=CH-Ph-O-CH(CH
3)(CH
2CH
3)およびピぺリジン)。ここで、tBuはt-ブチルを意味し、Phはフェニレンまたはフェニルを意味する。なお、本発明において、アルケニルとは、1以上の二重結合(好ましくは1つ)を有する1価基を意味するものとする。同様に、アルキニルとは、1以上の三重結合(好ましくは1つ)を有する1価基を意味するものとする。
nb6は、0、1または2である(好ましくは0または1;より好ましくは0)。nb6=1であることも、好適な一形態である。
【0041】
式(B-2)の具体例として以下が挙げられる。
【化17】
【0042】
(B)脱保護剤の分子量は、好ましくは400~2,500であり、より好ましくは400~1,500である。
【0043】
脱保護剤(B)は、1種または2種以上であってよく、2種の組み合わせも好ましい一形態である。
脱保護剤(B)の含有量は、(A)ポリマーの総質量を基準として、好ましくは、0.05~10質量%である(より好ましくは0.1~5質量%;さらに好ましくは0.5~2質量%)。明確性のために記載すると、脱保護剤(B)を2種組合せて使用する場合、上記の含有量は2種の脱保護剤(B)の和を意味する。
【0044】
(C)カルボン酸化合物
本発明による組成物はC4-12のカルボン酸化合物(C)を含んでなる。カルボン酸化合物(C)の炭素数は、カルボン酸部分も含めて数える。例えば、フマル酸はC4のカルボン酸化合物(C)に該当する。カルボン酸化合物(C)は、1、2、3つ(好ましくは1または2)のカルボキシ基を含んでなる不飽和炭化水素である。カルボン酸化合物(C)は、炭素原子間に二重結合または三重結合を有するものであり、好ましくは炭素原子間に二重結合を少なくとも1つ有する。
カルボン酸化合物(C)のpKa1(H2O)は、好ましくは1.00~6.00である(より好ましくは1.80~3.50;さらに好ましくは2.25~2.90)。明確性のために記載すると、カルボン酸化合物(C)のpKaは一段目のもの(pKa1)を使用し、pKaが一つしかない場合はそれを用いる。
【0045】
本発明による組成物は、カルボン酸化合物(C)を含むことで、後述するレジストパターン頂部の形状をえぐれが小さく、矩形性が高い形状とすることができる。理論に拘束されないが、カルボン酸化合物(C)が含む不飽和脂肪酸がレジスト膜形成や露光の際の熱で分解しにくく、かつ酸性度が高い(pKa1が低い)ことによりパターン形状の制御を可能にしていると考えられる。理論に拘束されないが、カルボン酸化合物(C)は環境由来のアミンをクエンチし、酸(例えば脱保護剤(B)に由来する)がポリマー(A)のアルカリ可溶性を変化させる作用を、環境由来のアミンが阻害しないようにすることが可能と考えられる。理論に拘束されないが、カルボン酸化合物(C)の分子量が小さいため、成膜時の加熱で溶媒の蒸発に伴い膜表面付近に偏在することが可能となり、影響が大きく出る傾向がある膜表面付近への環境アミンをクエンチングし得ると考えられる。
【0046】
好ましい形態において、カルボン酸化合物(C)は、式(c-1)で表される芳香族カルボン酸(C-1)、または式(c-2)で表される脂肪族カルボン酸(C-2)である。
【0047】
式(c-1)は以下である。
【化18】
ここで、
Ar
11は、C
5-10の芳香族炭化水素環であり、単環であっても多環であってもよい。Ar
11は、好ましくはベンゼンまたはナフタレンである(より好ましくはベンゼン)。
R
11は、OHまたはNH
2であり、好ましくはOHである。
n11は0または1である(好ましくは1)。
n12は0、1または2である(好ましくは1)。
【0048】
芳香族カルボン酸(C-1)の具体例としては、安息香酸、2-ヒドロキシ安息香酸(サリチル酸)、3-ヒドロキシ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、等が挙げられ、好ましくは2-ヒドロキシ安息香酸である。
【0049】
式(c-2)は以下である。
【化19】
ここで、
L
21は、-C=C-または-C≡C-であり、好ましくは-C=C-である。
L
22は、-C=C-または-C≡C-であり、好ましくは-C=C-である。
n21は、0、1、2または3である(好ましくは0または1;より好ましくは0)。
n22は、0または1であり、好ましくは0である。
n23は、0、1、2または3である(好ましくは0または1;より好ましくは0)。
【0050】
脂肪族カルボン酸(C-2)の具体例としては、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、好ましくはフマル酸である。
【0051】
カルボン酸化合物(C)の分子量は、好ましくは80~200であり、より好ましくは90~140である。
【0052】
カルボン酸化合物(C)は、1種または2種以上であってよい。
カルボン酸化合物(C)の含有量は、ポリマー(A)を基準として、好ましくは、0.01~5質量%である(より好ましくは0.03~4質量%;さらに好ましくは0.10~2質量%;よりさらに好ましくは0.12~1.00質量%)。
【0053】
(D)溶媒
本発明による組成物は、(D)溶媒を含んでなる。溶媒(D)は有機溶媒(D1)を含んでなる。有機溶媒(D1)の含有量は、溶媒(D)を基準として、好ましくは80~100質量%である(より好ましくは95~100質量%;さらに好ましくは98~100質量%;よりさらに好ましくは100質量%)。
【0054】
有機溶媒(D1)は、配合される各成分を溶解することができるものであれば特に限定されず、リソグラフィ法において一般的に用いられるものから任意に選択することができる。具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMEということがある)、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAということがある)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート;乳酸メチル、乳酸エチル(以下、ELということがある)等の乳酸エステル;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド;γ-ブチロラクトン等のラクトン等をあげることができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
好適な形態として、溶媒(D)は有機溶媒(D1)として、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、乳酸エステル、芳香族炭化水素、アミド、およびラクトンからなる群から選択される少なくとも一つを含んでなる。
【0055】
他の層や膜との関係で、(D)溶媒が水を実体的に含まないことも一形態である。例えば、(D)溶媒全体に占める水の量が、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下である。(D)溶媒が水を含まない(0質量%)ことも好適な一形態である。
【0056】
(D)溶媒の含有量は、組成物を基準として、好ましくは50~80質量%である(より好ましくは55~75質量%;さらに好ましくは60~70質量%)。
【0057】
(E)クエンチャー
本発明による組成物は、クエンチャー(E)を含んでなる。(E)クエンチャーは、露光部で生成した(B)脱保護剤に由来する酸の拡散を抑えたり、空気中に含まれるアミン等の成分によるレジスト膜表面の酸の失活を抑える効果がある。さらに、クエンチャー(E)の量を調節することで、組成物のpHを制御することもできる。クエンチャー(E)はカルボン酸化合物(C)とは構造が異なる。
クエンチャー(E)は、好ましくはアミン化合物(E1)またはカルボン酸塩(E2)である。クエンチャー(E)がカルボン酸塩(E2)である場合、光の照射によって酸を放出するが、その酸がポリマーに直接的に作用するものではない。この点で、放出した酸によってポリマーの保護基を脱離させることによって、ポリマーに直接的に作用を有する脱保護剤(B)とは異なるものである。
【0058】
アミン化合物(E1)としては、
(i)アンモニア、
(ii)炭素数1~16の第一級脂肪族アミンおよびその誘導体、例えばメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、tert-ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンジアミンなど、
(iii)炭素数2~32の第二級脂肪族アミンおよびその誘導体、例えばジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルメチレンジアミンなど、
(iv)炭素数3~48の第三級脂肪族アミンおよびその誘導体、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、トリシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、トリス[2-(ジメチルアミノ)エチル]アミン、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミンなど、
(v)炭素数6~30の芳香族アミンおよびその誘導体、例えばアニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、N-メチルアニリン、2-メチルアニリン、4-アミノ安息香酸、フェニルアラニン、など、
(vi)炭素数5~30のヘテロ環アミンおよびその誘導体、例えばピロール、オキサゾール、チアゾ-ル、イミダゾール、4-メチルイミダゾール、ピリジン、メチルピリジン、ブチルピリジンなど、
が挙げられる。
アミン化合物(E1)として、(iv)が好ましい形態である。(iv)において、トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]が好ましい形態である。
【0059】
アミン化合物(E1)の分子量は、好ましくは17~500であり、より好ましくは60~400である。
アミン化合物(E1)の塩基解離定数pKb(H2O)は、好ましくは-12~5であり、より好ましくは1~4である。
【0060】
カルボン酸塩(E2)は、露光により、酸解離定数pKa(H2O)が好ましくは1.5~8、より好ましくは1.5~5の酸を放出する。
好ましい一形態において、カルボン酸塩(E2)は、式(e-2)で表される。
Cm+カチオン Cm-アニオン 式(e-2)
で表される。
ここで、
Cm+カチオンは、式(EC1)および(EC2)で表されるカチオンからなる群から選択される、少なくとも1つのカチオンからなり、全体としてm価(ここで、mは1~3である)であり、
Cm-アニオンは、少なくとも1つの、式(EA)で表されるアニオンからなり、全体としてm価である。
m価とは、好ましくは1価または2価であり、より好ましくは1価である。
【0061】
式(EC1)は以下である。
【化20】
ここで、
R
e1は、それぞれ独立に、C
1-6のアルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールである(好ましくはメチル、エチル、t-ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニルチオ、またはフェニルオキシ;より好ましくはt-ブチル、メトキシ、エトキシ、フェニルチオ、フェニルオキシ;さらに好ましくはt-ブチルまたはメトキシ)。
ne1は、それぞれ独立に、0、1、2または3である。全てのne1が1であり、全てのR
e1が、同一であることも好適な一形態である。また、ne1が0であることも、好適な一形態である。
【0062】
【0063】
式(EC2)は以下である。
【化22】
ここで、
R
e2は、それぞれ独立に、C
1-6アルキル、C
1-6アルコキシ、またはC
6-12アリールである(好ましくはR
e2はC
4-6の分岐構造を有するアルキルであり;より好ましくはt-ブチルまたは1,1-ジメチルプロピル;よりさらに好ましくはt-ブチル)。それぞれのR
e2は同一であっても異なっていてもよく、同一であることがより好適である。
ne2は、それぞれ独立に、0、1、2または3であり、好ましくは1である。
【0064】
【0065】
式(EA)は以下である。
【化24】
ここで、
Xは、C
1-20の炭化水素基であり、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよいが、直鎖または環状であることが好ましい。直鎖の場合は、C
1-4であることが好ましく(より好ましくはC
1-2)、鎖中に、二重結合を1つ有しているか、または飽和であることが好ましい。環状である場合は、芳香環の単環、または飽和の単環もしくは多環であってもよく、単環である場合は、6員環であることが好ましく、多環である場合は、アダマンタン環であることが好ましい。Xは、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、エタン、フェニル、シクロヘキサン、またはアダマンタンである(より好ましくはメチル、フェニルまたはシクロヘキサン;さらに好ましくはフェニル)。
R
e3は、それぞれ独立に、OH、C
1-6アルキル、またはC
6-10アリールである(好ましくはOH、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、t-ブチル、またはフェニル;より好ましくはOH)。
ne3は、1、2または3である(好ましくは1または2;より好ましくは1)。
ne4は、0、1または2である(好ましくは0または1;より好ましくは1)。
【0066】
【0067】
カルボン酸塩(E2)の分子量は、好ましくは300~1,400であり、より好ましくは300~1,200ある。
【0068】
クエンチャー(E)は、1種または2種以上であってもよい。
クエンチャー(E)の含有量は、ポリマー(A)を基準として、好ましくは0.001~5質量%である(より好ましくは0.05~2質量%;さらに好ましくは0.01~1質量%)。
【0069】
(F)界面活性剤
本発明による組成物は界面活性剤(F)を含むことができる。界面活性剤(F)によって、組成物の塗布性を改善することができる。界面活性剤(F)としては、例えば非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0070】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友スリーエム)、メガファック(商品名、DIC)、スルフロン(商品名、旭硝子)、または有機シロキサン界面活性剤、例えばKF-53(商品名、信越化学工業)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3,6-ジメチル-4-オクチン-3,6-ジオール、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0071】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0072】
さらに両性界面活性剤としては、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0073】
界面活性剤(F)は、単独で、または2種以上混合して使用することができる。
界面活性剤(F)の含有量は、ポリマー(A)を基準として、好ましくは、0.01~5質量%であり、より好ましくは0.05~1質量%である。
【0074】
(G)添加物
本発明による組成物は、(A)~(F)以外の、添加物(G)を含むことができる。添加物(G)は、好ましくは、表面平滑剤、可塑剤、色素、コントラスト増強剤、酸、塩基、ラジカル発生剤、基板密着増強剤および消泡剤からなる群の少なくとも1つから選択される。
(G)添加物の含有量は、ポリマー(A)を基準として、好ましくは0.01~10質量%であり、より好ましくは0.1~2質量%である。(G)添加剤を含まない(0質量%)ことも、本発明による組成物の好適な一形態である。
【0075】
レジスト膜の製造方法
本発明によるレジスト膜の製造方法は、以下の工程:
(1)基板の上方に本発明による組成物を適用する;
(2)前記組成物を加熱し、膜厚0.8~20μmのレジスト膜を形成する
を含んでなる。
以下、本発明による製造方法の一形態について説明する。
【0076】
工程(1)
基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、シリコンウェハ基板、ガラス基板およびITO基板等)の上方に、適当な方法により本発明による組成物を適用する。ここで、本発明において、上方とは、直上に形成される場合および他の層を介して形成される場合を含む。例えば、基板の直上に、平坦化膜やレジスト下層膜を形成し、その直上に本発明による組成物が適用されていてもよい。本発明による組成物を基板の直上に(他の層を介さずに)適用する形態が、より好適である。適用方法は特に限定されないが、例えばスピナー、コーターによる塗布による方法が挙げられる。
【0077】
工程(2)
組成物の適用後、加熱することにより、膜厚0.8~20μmのレジスト膜を形成する。(2)の加熱は、例えばホットプレートによって行われる。加熱温度は、好ましくは100~250℃である(より好ましくは100~200℃;さらに好ましくは100~160℃)。ここでの温度は加熱雰囲気、例えばホットプレートの加熱面温度である。加熱時間は、好ましくは30~300秒間である(より好ましくは60~240秒間)。加熱は、好ましくは大気または窒素ガス雰囲気にて行われる。
レジスト膜の膜厚は、目的に応じて選択されるが、本発明による組成物を用いた場合、膜厚の厚い塗膜を形成させた場合に、より優れた形状のパターンを形成できる。このため、レジスト膜の厚さは厚いことが好ましく、好ましくは1~20μmである(より好ましくは2~15μm;さらに好ましくは7~15μm;よりさらに好ましくは9~12μm)。
【0078】
さらに、以下の工程
(3)レジスト膜を露光する;
(4)レジスト膜を現像する
を含んでなる方法により、レジストパターンを製造することができる。明確性のために記載すると、(3)工程の前に、(1)および(2)の工程が行われる。工程を示す()の中の数字は、順番を意味する。以降において同様である。
【0079】
工程(3)
レジスト膜に、所定のマスクを通して露光が行なわれる。露光に用いられる光の波長は特に限定されないが、波長が13.5~248nmの光で露光することが好ましい。具体的には、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)、および極紫外線(波長13.5nm)等を使用することができ、好ましくはKrFエキシマレーザーである。これらの波長は±1%の範囲を許容する。露光後、必要に応じて露光後加熱(post exposure bake、PEB)を行なうこともできる。露光後加熱の温度は好ましくは80~150℃、より好ましくは100~140℃であり、加熱時間は0.3~5分間、好ましくは0.5~2分間である。
【0080】
工程(4)
露光されたレジスト膜に、現像液を用いて現像が行なわれる。現像法としては、パドル現像法、浸漬現像法、揺動浸漬現像法など従来フォトレジストの現像の際用いられている方法を用いることができる。また現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、珪酸ナトリウムなどの無機アルカリ、アンモニア、エチルアミン、プロピルアミン、ジエチルアミン、ジエチルアミノエタノール、トリエチルアミンなどの有機アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)などの第四級アミンなどを含む水溶液が用いられ、好ましくは2.38質量%TMAH水溶液である。現像液に、さらに界面活性剤を加えることもできる。現像液の温度は好ましくは5~50℃、より好ましくは25~40℃、現像時間は好ましくは10~300秒、より好ましくは30~60秒である。現像後、必要に応じて、水洗またはリンス処理を行うこともできる。ポジ型レジスト組成物を利用した場合、露光された部分が現像によって除去され、レジストパターンが形成される。このレジストパターンに、例えばシュリンク材料を用いることでさらに微細化することも可能である。
【0081】
化学増幅型レジストを用いて厚膜レジストパターンを形成した場合に、特にアスペクト比が高い場合に、レジストパターンの壁頂部にえぐれが生じることがある(えぐれ部分の詳細は、実施例において図を用いて説明する)。
好ましい形態において、レジストパターン頂部の端点から基板に対する垂線と、前記レジストパターン側面の最もえぐれている点から基板への垂線との距離(以下、食い込み幅ということがある)が50nm以下である(より好ましくは0~45nm;さらに好ましくは0~20nm;よりさらに好ましくは0~1nm)。本発明では、そのえぐれを抑制することができ、矩形性の高いパターンを形成することができる。えぐれ部分を抑制することができることで、その後の工程で、パターンの耐性を強くすることができ、有利である。
【0082】
さらに、以下の工程
(5)レジストパターンをマスクとして加工処理する
を含んでなる方法により、加工基板を製造することができる。本発明の一形態として、レジストパターンのパターン間(溝)に金属(例えばメッキ)を適用しないことが好ましい。すなわち、レジストパターン間に金属(例えばメッキ)が充填されない形態が好ましい。
【0083】
工程(5)
形成されたレジストパターンは、好ましくは下層膜または基板(より好ましくは基板)に加工処理を行うことに使用される。具体的には、レジストパターンをマスクとして、下地となる各種基板を、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、イオン注入法、金属めっき法などを用いて、加工することができる。本発明のレジストパターンをマスクとして、ドライエッチング法で基板をエッチングすることが、より好ましい形態である。本発明によるレジストパターンは、膜厚を厚くし得るので、イオン注入法を用いた基板加工に用いられることも可能である。
レジストパターンを用いて下層膜を加工する場合、段階的に加工を行っても良い。例えば、レジストパターンを用いてBARC層を加工し、BARCパターンを用いてSOC膜を加工し、SOCパターンを用いて、基板を加工しても良い。
【0084】
その後、必要に応じて、基板にさらに加工がされ、好ましくは加工された基板に配線を形成する工程が行い、デバイスを製造することができる。これらの加工は、公知の方法を適用することができる。必要に応じて、基板をチップに切断し、リードフレームに接続され、樹脂でパッケージングされる。本発明では、このパッケージングされたものをデバイスという。デバイスとしては、半導体素子、液晶表示素子、有機EL表示素子、プラズマディスプレイ素子、太陽電池素子が挙げられ、好ましくは半導体素子である。
【0085】
本発明の厚膜レジスト組成物を用いることで、形成されるレジストパターンのパターン形状を制御することが可能である。よって、別の観点として、本発明は以下の方法を提供する。
本発明の厚膜レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成することで、パターン形状を制御する方法。
本発明の厚膜レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成することで、レジストパターンの食い込み幅を制御する方法(好ましくは小さくする方法)。
本発明の厚膜レジスト組成物を用いてレジストパターンを形成することで、レジストパターンの食い込み幅を50nm以下に制御する方法。
上記の方法における厚膜レジスト組成物の詳細は上述の通りである。また、レジスト膜、レジストパターン、加工基板、およびデバイスの製造方法の詳細は上述の通りである。
【実施例】
【0086】
本発明を諸例により説明すると以下の通りである。なお、本発明の態様はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0087】
組成物1の調製
PGMEとPGMEAを質量比70:30(=PGME:PGMEA)で混合し、混合溶媒を得る。この混合溶媒(66.0質量部)に、ポリマーA1(33.451質量部)、脱保護剤B1(0.067質量部)、脱保護剤B2(0.375質量部)、クエンチャーE1(0.007質量部)、カルボン酸化合物C1(0.05質量部)、および界面活性剤F1(0.051質量部)を添加し、室温で30分間攪拌し、溶液を得る。目視で各成分が完全に溶解していることを確認する。得られた溶液を0.05μmフィルターでろ過し、組成物1を得る。
・ポリマーA1:p-ヒドロキシスチレン/スチレン/t-ブチルアクリレート共重合体(Mw=20,000、ランダム共重合)
【化26】
・脱保護剤B1:下記化合物(五協フード&ケミカル)
【化27】
・脱保護剤B2:下記化合物(五協フード&ケミカル)
【化28】
・カルボン酸化合物C1:2-ヒドロキシ安息香酸
・クエンチャーE1:トリス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]アミン
・界面活性剤F1:MEGAFAC R-2011(DIC)
【0088】
組成物2~5および比較組成物1~5の調製
カルボン酸化合物C1を表1に記載の化合物とし、ポリマーA1に対するモル比が組成物1の関係と同じになるようにその化合物の添加量を変更する以外は、上記の組成物1と同様にして、組成物2~5および比較組成物1~5を調製する。
表1中、カルボン酸化合物の隣の括弧内にはそれぞれのpKa1を、パターン頂部の評価は測定値と後述の基準に基づく評価を記載する。
【表1】
【0089】
レジストパターンの形成例
コーターデベロッパーMark8(東京エレクトロン)を用いて、上記で調製された組成物を8センチSiウェハーに滴下し、回転塗布を行う。このウェハーを大気条件下でホットプレートを用い、140℃で90秒間加熱し、レジスト膜を形成する。この時点のレジスト膜の厚さを光干渉式膜厚測定装置M-1210(SCREEN)で測定すると、10.5μmである。
KrFステッパーFPA3000-EX5(キヤノン)を用いて、このレジスト膜を露光する。露光後のウェハーを大気条件下でホットプレートを用いて110℃で90秒間加熱(PEB)する。その後、このレジスト膜を2.38質量%TMAH水溶液で60秒間パドル現像し、DIWで洗浄し、1,000rpmでスピンドライする。これによりライン幅15μm、スペース幅3μm、頂部幅9μmのトレンチパターンを形成する。ライン幅とスペース幅は、パターン底部での計測値である。
図1は、このパターン形状を模式的に示したものである。基板11に、レジストパターン12が形成されており、ライン幅13、スペース幅14、および頂部幅15は
図1に示すとおりである。後述するパターン壁頂部16を拡大した模式図が
図2である。
この形状のパターンを得るために使用する露光エネルギー(mJ/cm
2)を感度とする。組成物1を使用する場合、感度は108(mJ/cm
2)である。組成物2~5の感度を表2に記載する。ここでいう感度は、後述のイニシャル組成の感度である。
【0090】
パターン壁頂部の評価
レジストパターンの形成例で作成するサンプルの切片を作成し、走査型電子顕微鏡(SEM)でパターンの垂直断面を観察する。パターン頂部から内側にえぐれている程度(食い込み幅)を評価する。具体的に
図2を用いて説明する。
図2は壁頂部21を模式的に示す。パターン頂部の端点から基板に垂直に線を引く。パターン側面の最もえぐれている点から基板に垂直に線を引く。それぞれの線の距離を食い込み幅とする。
評価基準は以下とする。
A:食い込み幅が1nm未満
B:食い込み幅が1~50nm
C:食い込み幅が50nmより大きい
評価結果を表1に記載する。
【0091】
経時安定性の評価
各組成物の調製直後に上述のレジストパターンの形成例と同様にライン幅15μm、スペース幅3μm、頂部幅9μmのトレンチパターンを形成し、感度を測定する。これをイニシャル組成の感度とする。
各組成物を30日間40℃で保存する。これらを用いて、レジストパターンの形成例と同様にライン幅15μm、スペース幅3μm、頂部幅9μmのトレンチパターンを形成し、感度を測定する。これを経時組成の感度とする。
(経時組成の感度)/(イニシャル組成の感度)を算出し、経時安定性を評価する。
評価基準は以下とする。
安定:感度の変化が10%未満
不安定:感度の変化が10%以上
評価結果を表2に記載する。
【0092】
膜減り評価
コーターデベロッパーMark8を用いて組成物を8センチSiウェハーに滴下し、回転塗布を行う。このウェハーを大気条件下でホットプレートを用い、140℃で90秒間加熱し、レジスト膜を形成する。この時点のレジスト膜の厚さをM-1210で測定し、これを初期膜厚とする。
上記のレジスト膜の形成を行い、さらにKrFステッパーFPA3000-EX5でレジスト膜を露光する。このウェハーを大気条件下でホットプレートを用いて110℃で90秒間PEBする。このレジスト膜を2.38質量%TMAH水溶液で60秒間現像する。これによりライン幅15μm、スペース幅3μmのトレンチパターンを形成する。このウェハーを1,000rpmでスピンドライする。この時点のレジスト膜の厚さをM-1210で測定し、これを露光後膜厚とする。
露光後膜厚/初期膜厚<99%であれば膜減り無し、露光後膜厚/初期膜厚≧99%であれば膜減り有り、と評価する。評価結果を表2に記載する。
【0093】
露光裕度(EL)の評価
カルボン酸化合物(C)を含まない組成物をControlとして調整し、上述のレジストパターンの形成例と同様にライン幅15μm、スペース幅3μm、頂部幅9μmのトレンチパターンを形成し、感度を測定する(この感度を基準感度という)。表2に記載のカルボン酸化合物(C)を含んだ組成物を用いて、上述のレジストパターンの形成例と同様に、スペース幅±2%(すなわち、2.94~3.06μm)となるようにトレンチパターンを形成し、感度を測定し、感度の変化量を算出する。
EL=感度の変化量/基準感度×100
として、各組成物のELを算出する。結果を表2に記載する。
【0094】
剥がれの評価
ライン幅15μm、スペース幅20μmのトレンチパターンを形成する以外は、上記のレジストパターンの形成例と同様にして、レジストパターンを形成する。Siウェハーとレジスト壁の界面を、CD-SEMで倍率50Kで観察する。剥がれが確認できれば有り、確認できなければ無し、と評価する。評価結果を表2に記載する。
【表2】
【0095】
組成物21の調製
PGMEとPGMEAを質量比70:30(=PGME:PGMEA)で混合し、混合溶媒を得る。この混合溶媒(66.0質量部)に対し、ポリマーA1(33.447質量部)、脱保護剤B1(0.067質量部)、脱保護剤B2(0.375質量部)、クエンチャーE1(0.01質量部)、および界面活性剤F1(0.051質量部)を添加する。これにカルボン酸化合物C1(2-ヒドロキシ安息香酸)をポリマーA1に対して0.015質量%添加し、室温で30分間攪拌することで、溶液を得る。目視で各成分が完全に溶解していることを確認する。得られた溶液を0.05μmフィルターでろ過し、組成物21を得る。
【0096】
組成物22~26の調整
カルボン酸化合物C1の添加量を表3のように変更した以外は、組成物21の調整と同様の調製を行い、組成物22~26を得る。
【表3】
【0097】
レジストパターンの形成およびパターン壁頂部の評価
上述と同様にレジストパターンの形成を行い、ライン幅15μm、スペース幅3μmのトレンチパターンを形成する。それぞれの感度を表3に記載する。同様にパターン壁頂部の評価も行い、評価結果を表3に記載する。
【0098】
組成物31の調整
カルボン酸化合物C1をフマル酸に変更し、添加量をポリマーA1に対して0.0126質量%と変更した以外は、組成物21の調製と同様の調製を行い、組成物31を得る。
なお、実施例21(ポリマーAに対して2-ヒドロキシ安息香酸が0.015質量%)と実施例31(ポリマーAに対してフマル酸が0.126質量%)で、それぞれに添加されるカルボン酸化合物Cの量はそれぞれの組成物において等モルである。
【0099】
組成物32~36の調整
フマル酸の添加量を表4のように変更した以外は、組成物31の調製と同様に調製を行い、組成物32~36を得る。
【表4】
【0100】
レジストパターンの形成およびパターン壁頂部の評価
上述と同様にレジストパターンの形成を行い、ライン幅15μm、スペース幅3μmのトレンチパターンを形成する。それぞれの感度を表4に記載する。同様にパターン壁頂部の評価も行い、評価結果を表4に記載する。
【符号の説明】
【0101】
11.基板
12.レジストパターン
13.ライン幅
14.スペース幅
15.頂部幅
16.パターン壁頂部
21.壁頂部
22.食い込み幅
【国際調査報告】