(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】弾性抗菌ポリウレタン、その製造方法及びこれを含む物品
(51)【国際特許分類】
C08G 18/38 20060101AFI20240517BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240517BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240517BHJP
D01F 6/70 20060101ALI20240517BHJP
C09D 5/14 20060101ALI20240517BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
C08G18/38 019
C08G18/48
C08G18/32 003
C08G18/32 025
D01F6/70 Z
C09D5/14
C09D175/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574262
(86)(22)【出願日】2022-08-19
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2022012465
(87)【国際公開番号】W WO2023027438
(87)【国際公開日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0110765
(32)【優先日】2021-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0102689
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒョン・ホ
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】イヒョン・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ユン・イ
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4L035
【Fターム(参考)】
4J034BA06
4J034BA08
4J034CA04
4J034CA15
4J034CB03
4J034CC03
4J034CC12
4J034CC61
4J034CC62
4J034CC65
4J034CC67
4J034CD01
4J034DA01
4J034DB03
4J034DG04
4J034DG06
4J034HA01
4J034HA02
4J034HA06
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC61
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034HC73
4J034QA01
4J034QA02
4J034QA03
4J034QA05
4J034QB14
4J034QB19
4J034QC01
4J034RA03
4J034RA07
4J034RA09
4J034RA12
4J038DG131
4J038DG261
4J038GA08
4J038GA12
4J038KA06
4L035AA04
4L035BB02
4L035EE11
4L035GG01
(57)【要約】
本発明は、弾性抗菌ポリウレタン重合体及びその製造方法に関するものである。前記ポリウレタン重合体は、優れた抗菌性、機械的物性及び耐熱耐久性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオール由来の単位を含み、
前記(B)ポリオールは、化学式1で表されるジオールを0.01ないし40モル%含む、
弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【化1】
(但し、前記化学式1において、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、脂環式構造、ヘテロ脂環式構造またはアルキルチオ基またはアリールチオ基であり、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
L
3は、直接結合、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
Aは、炭素数が6超であるアルキレン基であり、
X
-は、陰イオンを意味する。)
【請求項2】
JIS Z 2801による測定時に、90%以上の抗菌率を示す、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【請求項3】
ASTM D882引張試験法によって測定された引張ひずみが900%以上である、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
(但し、前記引張ひずみは、幅と長さとの比(幅:長さ)が1:1ないし100である弾性抗菌ポリウレタン重合体試料に対して測定したものである)
【請求項4】
ASTM D882引張試験法によって測定された引張強度が30MPa以上である、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
(但し、前記引張強度は、幅と長さとの比(幅:長さ)が1:1ないし100である弾性抗菌ポリウレタン重合体試料に対して測定したものである)
【請求項5】
化学式1で表される未反応ジオールの含有量が、重合体全体に対して1,000ppm以下である、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【請求項6】
前記(B)ポリオールに対する(A)イソシアネート化合物のモル比が1.0ないし2.0の範囲である、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【請求項7】
前記Aは、炭素数が6超20以下のアルキレン基である、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【請求項8】
前記Aは、下記の化学式2で表される構造を有する、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【化2】
(前記化学式2において、
nは、4以上の数であり、前記*で表される両末端には、L
3及びR
2がそれぞれ結合されてもよい。但し、L
3が直接結合である場合には、前記*で表される一つの末端はN原子と結合する。)
【請求項9】
前記X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、(CN)
2N
-、BF
4
-、ClO
4
-、RSO
3
-(ここで、Rは、炭素数1~9のアルキル基またはフェニル基)、RCOO
-(ここで、Rは、炭素数1~9のアルキル基またはフェニル基)、PF
6
-、(CF
3)
2PF
4
-、(CF
3)
3PF
3
-、(CF
3)
4PF
2
-、(CF
3)
5PF
-、(CF
3)
6P
-、(CF
3SO
3
-)
2、(CF
2CF
2SO
3
-)
2、(C
2F
5SO
2)
2N
-、(CF
3SO
3)
2N
-、(CF
3SO
2)(CF
3CO)N
-、CF
3CF
2(CF
3)
2CO
-、(CF
3SO
2)
2CH
-、(SF
5)
3C
-、(CF
3SO
2)
3C
-、CF
3(CF
2)
7SO
3
-、CF
3COO
-、C
3F
7COO
-、CF
3SO
3
-、またはC
4F
9SO
3
-である、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【請求項10】
鎖延長剤である(C)ジアミン化合物由来の単位をさらに含む、
請求項1に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体。
【請求項11】
(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオールを反応させるステップを含み、
前記(B)ポリオールは、化学式1で表されるジオールを0.01ないし40モル%含む、
弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【化3】
(前記化学式1において、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、脂環式構造、ヘテロ脂環式構造またはアルキルチオ基またはアリールチオ基であり、
L
1及びL
2は、それぞれ独立して、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
L
3は、直接結合、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
Aは、炭素数が6超であるアルキレン基であり、
X
-は、陰イオンを意味する。)
【請求項12】
前記(B)ポリオールに対する前記(A)イソシアネート化合物のモル比が1.0ないし2.0の範囲となるように、前記(B)ポリオールと前記(A)イソシアネート化合物とを混合し反応させる、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【請求項13】
前記反応を100℃以下の温度で行う、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【請求項14】
前記Aは、炭素数が6超20以下のアルキレン基である、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【請求項15】
前記Aは、下記の化学式2で表される構造を有する、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【化4】
(前記化学式2において、
nは、4以上の数であり、前記*で表される両末端には、L
3及びR
2がそれぞれ結合されてもよい。但し、L
3が直接結合である場合には、前記*で表される一つの末端はN原子と結合する。)
【請求項16】
前記X
-は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、NO
3
-、(CN)
2N
-、BF
4
-、ClO
4
-、RSO
3
-(ここで、Rは、炭素数1~9のアルキル基またはフェニル基)、RCOO
-(ここで、Rは、炭素数1~9のアルキル基またはフェニル基)、PF
6
-、(CF
3)
2PF
4
-、(CF
3)
3PF
3
-、(CF
3)
4PF
2
-、(CF
3)
5PF
-、(CF
3)
6P
-、(CF
3SO
3
-)
2、(CF
2CF
2SO
3
-)
2、(C
2F
5SO
2)
2N
-、(CF
3SO
3)
2N
-、(CF
3SO
2)(CF
3CO)N
-、CF
3CF
2(CF
3)
2CO
-、(CF
3SO
2)
2CH
-、(SF
5)
3C
-、(CF
3SO
2)
3C
-、CF
3(CF
2)
7SO
3
-、CF
3COO
-、C
3F
7COO
-、CF
3SO
3
-、またはC
4F
9SO
3
-である、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【請求項17】
(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオールを反応させて得られたプレポリマー(prepolymer)に鎖延長剤である(C)ジアミン化合物をさらに反応させるステップ
をさらに含む、請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【請求項18】
前記弾性抗菌ポリウレタン重合体は、JIS Z 2801による測定時に、90%以上の抗菌率を示す、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
【請求項19】
前記弾性抗菌ポリウレタン重合体は、ASTM D882引張試験法によって測定された引張ひずみが900%以上である、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
(但し、前記引張ひずみは、幅と長さとの比(幅:長さ)が1:1ないし100である弾性抗菌ポリウレタン重合体試料に対して測定したものである)
【請求項20】
前記弾性抗菌ポリウレタン重合体は、ASTM D882引張試験法によって測定された引張強度が30MPa以上である、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法。
(但し、前記引張強度は、幅と長さとの比(幅:長さ)が1:1ないし100である弾性抗菌ポリウレタン重合体試料に対して測定したものである)
【請求項21】
前記弾性抗菌ポリウレタン重合体は、化学式1で表される未反応ジオールの含有量が、重合体全体に対して1,000ppm以下である、
請求項11に記載の弾性抗菌ポリウレタン重合体の製造方法
【請求項22】
請求項1に記載のポリウレタン重合体を含む物品であって、
前記物品は、繊維、織物、衣服、ペイント、車両用内装材、マットレスまたは発泡体(foams)である、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互参照
本出願は、2021年08月23日付の韓国特許出願第10-2021-0110765号及び2022年08月17日付の韓国特許出願第10-2022-0102689号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、弾性抗菌ポリウレタン及びその製造方法に関するものである。また、本発明は、前記弾性抗菌ポリウレタンを含む物品に関するものである。
【背景技術】
【0003】
エンジニアリングプラスチックの一つであるポリウレタン(PU:poly(urethane))は、合成繊維、ペイント、車両用内装材など多様な分野で用いられている。例えば、ポリウレタンは、ナイロンと共に用いられ、スパンデックスと呼ばれる合成繊維を構成することができ、下着、靴下、水着などに用いることができる。また、ポリウレタンは、3次元のフォーム構造を有するので、弾性があり、かつ堅固でマットレスや織物の他にも、フォームスポンジなどで幅広く用いられている。
【0004】
一方、PU関連製品が長期間用いられる場合には、菌が繁殖し得る問題があるので、抗菌性を確保することが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、優れた弾性及び抗菌性を有するポリウレタンを提供することである。
【0006】
本発明の他の目的は、耐熱性に優れたポリウレタンを提供することである。
【0007】
本発明のさらに他の目的は、前記特性のポリウレタンを含む物品に関するものである。
【0008】
本発明の前記目的及びその他その以外の目的は、下記の詳しく説明される本発明によって全て解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関する具体例において、本発明は、弾性抗菌ポリウレタン重合体及びその製造方法に関するものである。本発明のポリウレタン重合体は、優れた抗菌性、耐熱性(耐久性)及び引張特性などを有する。
【0010】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「アルキル基」は、炭素数が1ないし40であるアルキル基であってもよい。例えば、前記アルキル基は、炭素数1ないし36、炭素数1ないし32、炭素数1ないし28、炭素数1ないし24、炭素数1ないし20、炭素数1ないし16、炭素数1ないし12、炭素数1ないし8または炭素数1ないし4のアルキル基であってもよい。このとき、前記アルキル基は、直鎖、分枝鎖または環状のアルキル基であってもよい。また、前記アルキル基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0011】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「ハロアルキル基」は、アルキル基の水素原子がハロゲン原子で置換された化合物を意味する。このとき、アルキル基は、前述のものと同一な意味で使用することができる。
【0012】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「アルケニル基」は、炭素数が2ないし40であるアルケニル基であってもよい。例えば、前記アルケニル基は、炭素数2ないし36、炭素数2ないし32、炭素数2ないし28、炭素数2ないし24、炭素数2ないし20、炭素数2ないし16、炭素数2ないし12、炭素数2ないし8または炭素数2ないし4のアルケニル基であってもよい。このとき、前記アルケニル基は、直鎖、分枝鎖または環状のアルケニル基であってもよい。また、前記アルケニル基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0013】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「アルキニル基」は、炭素数が2ないし40であるアルキニル基であってもよい。例えば、前記アルキニル基は、炭素数2ないし36、炭素数2ないし32、炭素数2ないし28、炭素数2ないし24、炭素数2ないし20、炭素数2ないし16、炭素数2ないし12、炭素数2ないし8または炭素数2ないし4のアルキニル基であってもよい。このとき、前記アルキニル基は、直鎖、分枝鎖または環状のアルキニル基であってもよい。また、前記アルキニル基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0014】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「アリール基」は、一つのベンゼン環構造、または二つ以上のベンゼン環が一つまたは二つの炭素原子を共有しながら連結されているか、または任意のリンカーによって連結されている構造を含む化合物またはその誘導体に由来する1価残基を意味する。例えば、前記アリール基は、炭素数6ないし30、炭素数6ないし25、炭素数6ないし21、炭素数6ないし18、炭素数6ないし13のアリール基であってもよい。このとき、前記アリール基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0015】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「ヘテロアリール基」は、O、N、Si及びSのうち一つ以上を含むアリール基を意味する。例えば、前記ヘテロアリール基で、アリール基は前述のものと同一な意味で使用することができる。また、前記ヘテロアリール基の炭素数は2ないし30であってもよい。
【0016】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「アリールオキシ基」は、Rがアリール基である基RO-を意味する。このとき、アリール基は、前述のものと同一な意味で使用することができる。
【0017】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「アルコキシ基」は、炭素数1ないし40のアルコキシ基であってもよい。例えば、前記アルコキシ基は、炭素数1ないし36、炭素数1ないし32、炭素数1ないし28、炭素数1ないし24、炭素数1ないし20、炭素数1ないし16、炭素数1ないし12、炭素数1ないし8または炭素数1ないし4のアルコキシ基であってもよい。前記アルコキシ基は、直鎖、分枝鎖または環状のアルコキシ基であってもよい。また、前記アルコキシ基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0018】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「脂環式構造」は、芳香族環構造でない環状炭化水素構造であって、-Yで表される化合物を意味する。前記脂環式環構造は、特に異なり規定しない限り、例えば、炭素数3ないし30、炭素数3ないし25、炭素数3ないし21、炭素数3ないし18または炭素数3ないし13の脂環式環構造であってもよい。前記脂環式構造は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0019】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「ヘテロ脂環式構造」は、O、N、Si及びSのうち一つ以上を含む脂環式構造を意味する。例えば、脂環式構造は、前述のものと同一な意味で使用することができる。
【0020】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「アルキルチオ基」は、Rがアルキル基であるRS-を意味する。このとき、アルキル基は、前述のものと同一な意味で使用することができる。
【0021】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「アリールチオ基」は、Rがアリール基であるRS-を意味する。このとき、アリール基は、前述のものと同一な意味で使用することができる。
【0022】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「直接結合」は、直接結合となり得る位置に原子が存在しない場合を意味する。
【0023】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「アルキレン基」は、炭素数が1ないし40であるアルキレン基であってもよい。例えば、前記アルキレン基は、炭素数1ないし36、炭素数1ないし32、炭素数1ないし28、炭素数1ないし24、炭素数1ないし20、炭素数1ないし16、炭素数1ないし12、炭素数1ないし8または炭素数1ないし4のアルキレン基であってもよい。前記アルキレン基は、直鎖、分枝鎖または環状のアルキレン基であってもよい。また、前記アルキレン基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0024】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「ヘテロアルキレン基」は、O、N、Si及びSのうち一つ以上を含むアルキレン基であってもよい。このとき、アルキレン基は、前述のものと同一な意味で使用することができる。
【0025】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「シクロアルキレン基」は、シクルロアルカン(cycloalkane)に由来した2価の作用基であって、炭素数が3ないし20であってもよい。例えば、前記シクロアルキレン基は、炭素数3ないし15、炭素数3ないし10または炭素数3ないし5であるシクロアルキレン基であってもよい。また、前記シクロアルキレン基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0026】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「アリーレン基」は、2価芳香族炭化水素基を意味する。例えば、前記アリーレン基は、一つのベンゼン環構造、または二つ以上のベンゼン環が一つまたは二つの炭素原子を共有しながら連結されているか、または任意のリンカーによって連結されている構造を含む化合物またはその誘導体に由来する2価残基を意味する。例えば、前記アリーレン基は、炭素数6ないし30、炭素数6ないし25、炭素数6ないし21、炭素数6ないし18、炭素数6ないし13のアリーレン基であってもよい。このとき、前記アリーレン基は、任意に一つ以上の置換基によって置換されたものであってもよい。
【0027】
本明細書において、特に他に定義しない限り、用語「ヘテロアリーレン基」は、O、N、Si及びSのうち一つ以上を含むアリーレン基であってもよい。例えば、前記ヘテロアリーレン基で、アリーレン基は前述のものと同一な意味で使用することができる。また、前記ヘテロアリーレン基の炭素数は2ないし30であってもよい。
【0028】
特に制限されないが、前述の基(group)は、置換または非置換されたものであってもよい。本明細書において、用語「置換または非置換された」とは、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;または、N、O及びS原子のうち一つ以上を含むヘテロアリールからなる群より選択された一つ以上の置換基で置換または非置換されるか、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」はビフェニル基であってもよい。つまり、ビフェニル基はアリール基であってもよく、2つのフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0029】
本明細書において、特に他に定義しない限り、前述の基(group)の炭素数は、主鎖(main chain)の長さに関する炭素数または主な骨格の炭素数を意味する。
【0030】
本明細書において、弾性抗菌ポリウレタン重合体が所定の単位を含むということは、一つ以上の化合物が反応して形成された重合体構造(主鎖や側鎖)に前記化合物が重合されることで、それに由来する単位が重合体構造内に含まれていることを意味する。
【0031】
本明細書において、特に他に定義しない限り、「分子量」は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(例:g/mol)であってもよい。
【0032】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0033】
本発明に関する一例において、本発明は、弾性抗菌ポリウレタンに関するものである。以下説明されるポリウレタンは、抗菌性、機械的物性(例:引張強度、引張ひずみ)及び耐熱性などに優れている。
【0034】
具体的には、本発明の弾性抗菌ポリウレタンは、(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオール由来の単位を含み、前記(B)ポリオールは、化学式1で表されるジオールを0.01ないし40モル%含む。
【0035】
【0036】
前記化学式1において、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、脂環式構造、ヘテロ脂環式構造またはアルキルチオ基またはアリールチオ基であり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
L3は、直接結合、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
Aは、炭素数が6超であるアルキレン基であり、
X-は、陰イオンを意味する。
【0037】
このとき、前記化学式1のAの炭素数は、主鎖の炭素数を意味する。
【0038】
前記のように、本発明の弾性抗菌ポリウレタンは、イソシアネート化合物に、少なくても互いに異なる2種のポリオール、つまり、ポリエーテルグリコールと化学式1の化合物(4級アンモニウムジオール)とを含むポリオール成分が反応して製造されたものであってもよい。
【0039】
前記(A)イソシアネート化合物の種類は特に制限されず、例えば、重合体の物性(例:加工性、耐熱性など)と重合体形成成分間の反応性などを考慮してイソシアネート化合物が選択されてもよい。
【0040】
本発明の具体例において、前記ポリウレタンを形成するために用いられるイソシアネート化合物は、芳香族イソシアネートであってもよい。例えば、芳香族イソシアネートは、前記化学式1で表されるアンモニウムジオールの低い耐熱性を補完することができる。
【0041】
一つの例示において、ポリウレタンに含まれるイソシアネート化合物としては、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate)、キシレンジイソシアネート(Xylylene Diisocyanate)、メチレンジフェニルジイソシアネート(methylene diphenyl diisocyanate:MDI)、または前記並べられた化合物の骨格を有する芳香族イソシアネート化合物などが用いられてもよい。しかし、本発明の重合体の製造に用いられる芳香族イソシアネートが前記並べられたものに制限されない。
【0042】
前記(B)ポリオールは、2以上の水酸化基を含むアルコール化合物を意味する。本発明で前記ポリオールは、(b1)ポリエーテルグリコールと(b2)化学式1で表されるジオールとを含む。
【0043】
前記ポリエーテルグリコール(b1)は、本発明のポリウレタンの弾性特性を確保できるようにする主な構成である。
【0044】
本発明の技術課題を達成することに反しない限り、用いられるポリエーテルグリコールの種類は特に制限されない。例えば、ポリテトラメチレングリコール(PTMG:Poly(tetramethylene ether)glycol)やポリプロピレングリコール(PPG)などが用いられてもよい。
【0045】
一つの例示において、前記ポリエーテルグリコールは、重量平均分子量が500ないし3000の範囲であってもよい。具体的には、前記分子量の下限は、600以上、700以上、800以上、900以上、1000以上、1100以上、1200以上、1300以上、1400以上、1500以上、1600以上、1700以上、1800以上、1900以上、2000以上、2100以上、2200以上、2300以上、2400以上または2500以上であってもよく、その上限は、例えば、2900以下、2800以下、2700以下、2600以下、2500以下、2400以下、2300以下、2200以下、2100以下、2000以下、1900以下、1800以下、1700以下、1600以下または1500以下であってもよい。本発明の具体例において、前記ポリエーテルグリコールは、重量平均分子量が1000以上または1500以上であり、及び2500以下または2000以下であってもよい。前述の範囲内でポリエーテルグリコールの分子量を適切に調節する場合、機械的物性(例:弾性、または引張特性)を確保することに有利である。
【0046】
前記化学式1で表されるジオール成分(b2)は、ポリウレタンに抗菌性を付与することができる。
【0047】
一つの例示において、前記化学式1のR1は、水素を除いては、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、脂環式構造、ヘテロ脂環式構造またはアルキルチオ基またはアリールチオ基であってもよい。ジオール形態の4級アンモニウム単量体(または、ジオール系4級アンモニウム単量体)由来の単位を含むポリウレタンは、優れた抗菌性を提供することに、より有利である。
【0048】
一つの例示において、前記Aは、炭素数が6超20以下、より具体的には8ないし20以下、8ないし18、8ないし16、8ないし14、8ないし12または8ないし10であるアルキレン基であってもよい。化学式1のAが前記炭素数を満足するアルキレン基の場合、ポリウレタン重合体に優れた抗菌性及び低い毒性を付与することに有利である。
【0049】
一つの例示において、前記Aは、直鎖型アルキレン基であってもよい。前記化学式1で表される単量体で、アンモニウムの陽イオンは細菌の陰イオン膜に吸着するが、直鎖型アルキレン基、つまり、疎水性基である化学式1のAは、菌の細胞膜構造を破壊して蛋白質及び酵素を流出させながら抗菌作用をすることに有利に機能する。
【0050】
このような細胞膜構造の破壊による抗菌作用は、Aがある程度の疎水性を確保しながらも菌の細胞膜の浸透に有利な構造を有する場合に、より効果的である。これを考慮して、本発明の具体例において、前記Aは、下記の化学式2で表される構造を有してもよい。
【0051】
【0052】
前記化学式2において、
nは、4以上の数であり(例えば、nは、4以上、5以上、または6以上)、前記*で表される両末端には、L3及びR2がそれぞれ結合されてもよい。但し、L3が直接結合である場合には、前記*で表される一つの末端はN原子と結合する。
【0053】
化学式2のnが過度に大きくなる場合、重合体の毒性が増加することがある。これを考慮して、前記nの上限は、例えば、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下または5以下であってもよい。
【0054】
一つの例示において、前記化学式1のR1および/またはR2は、直鎖型アルキル基であってもよい。
【0055】
化学式1の単量体による抗菌作用は、アンモニウムの陽イオンが細菌の陰イオン膜に吸着することによりその機作が始まるが、R1および/またはR2の炭素数が多い場合(例:鎖が長い場合など)には、一種の立体障害効果(steric hindrance)によって吸着が円滑に行われず、重合体の抗菌特性が十分発現しないことがある。これを考慮すると、本発明の具体例において、前記化学式1のR1および/またはR2は、炭素数12以下、8以下、または4以下のアルキル基であってもよい。具体的には、前記R1および/またはR2は、プロピル基、エチル基またはメチル基であってもよい。
【0056】
一つの例示において、前記化学式1のR1及びR2は互いに同一であってもよい。
【0057】
一つの例示において、前記L1および/またはL2は、直鎖型アルキレン基であってもよい。
【0058】
前述のように、化学式1の単量体による抗菌作用は、アンモニウムの陽イオンが細菌の陰イオン膜に吸着することによりその機作が始まるが、L1および/またはL2の炭素数が多い場合には、一種の立体障害効果(steric hindrance)によって吸着が円滑に行われず、重合体の抗菌特性が十分発現しないことがある。これを考慮すると、本発明の具体例において、前記化学式1のL1および/またはL2は炭素数12以下、8以下、または4以下のアルキレン基であってもよい。例えば、前記L1および/またはL2は、プロピレン基、エチレン基またはメチレン基であってもよい。
【0059】
抗菌特性の確保と単量体製造に関する収率を考慮すると、本発明の具体例において、前記L1とL2は互いに同一であってもよい。
【0060】
一つの例示において、前記L3は、直鎖型アルキレン基であってもよい。
【0061】
前述のように、化学式1の単量体による抗菌性発現程度を考慮して、前記L3の炭素数が決定されてもよい。本発明の具体例において、前記L3は、炭素数12以下、8以下、または炭素数4以下のアルキレン基であってもよい。例えば、前記L3は、プロピレン基、エチレン基またはメチレン基であってもよい。
【0062】
化学式1に関連して、前記X-は特に制限されない。例えば、前記X-は、F-、Cl-、Br-、I-、NO3
-、(CN)2N-、BF4
-、ClO4
-、RSO3
-(ここで、Rは、炭素数1~9のアルキル基またはフェニル基)、RCOO-(ここで、Rは、炭素数1~9のアルキル基またはフェニル基)、PF6
-、(CF3)2PF4
-、(CF3)3PF3
-、(CF3)4PF2
-、(CF3)5PF-、(CF3)6P-、(CF3SO3
-)2、(CF2CF2SO3
-)2、(C2F5SO2)2N-、(CF3SO3)2N-、(CF3SO2)(CF3CO)N-、CF3CF2(CF3)2CO-、(CF3SO2)2CH-、(SF5)3C-、(CF3SO2)3C-、CF3(CF2)7SO3
-、CF3COO-、C3F7COO-、CF3SO3
-、またはC4F9SO3
-であってもよい。
【0063】
化学式1で表される単量体の分子量は、抗菌特性を考慮して調節されてもよい。例えば、化学式1のアンモニウムをなすN原子に結合された他の基(group)の炭素数が過度に多いような理由で分子量の大きい場合には、人体に有害な毒性が発現することがある。そして、アンモニウムをなすN原子に結合された他の基(group)の炭素数があまり少ないような理由で分子量が少ない場合には、十分な抗菌力を確保し難い。
【0064】
前述の点を考慮して、本発明の具体例において、前記化学式1で表される化合物、つまりジオール形態であるアンモニウム単量体は、300以上の重量平均分子量を有してもよい。具体的には、前記ジオール形態のアンモニウム単量体の重量平均分子量の下限は、310以上、320以上、330以上、340以上、350以上、360以上、370以上、380以上、390以上または400以上であってもよい。そして、その上限は、500以下であってもよい。具体的には、前記ジオール形態のアンモニウム単量体の重量平均分子量の上限は、例えば、490以下、480以下、470以下、460以下、450以下、440以下、430以下、420以下、410以下、400以下、390以下、380以下、370以下、360以下または350以下であってもよい。
【0065】
本発明の具体例として、前記(B)ポリオールは、化学式1で表されるジオールを0.01ないし40モル%含む。
【0066】
具体的には、前記(B)ポリオール中の化学式1で表されるジオールの含有量は、例えば、0.05モル%以上、0.1モル%以上または0.5モル%以上、具体的には1モル%以上、2モル%以上、3モル%以上、4モル%以上、5モル%以上、6モル%以上、7モル%以上、8モル%以上、9モル%以上、10モル%以上、11モル%以上、12モル%以上、13モル%以上、14モル%以上、15モル%以上、16モル%以上、17モル%以上、18モル%以上、19モル%以上、20モル%以上、21モル%以上、22モル%以上、23モル%以上、24モル%以上、25モル%以上、26モル%以上、27モル%以上、28モル%以上、29モル%以上、30モル%以上、31モル%以上、32モル%以上、33モル%以上、34モル%以上または35モル%以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、39モル%以下、38モル%以下、37モル%以下、36モル%以下、35モル%以下、34モル%以下、33モル%以下、32モル%以下、31モル%以下、30モル%以下、29モル%以下、28モル%以下、27モル%以下、26モル%以下、25モル%以下、24モル%以下、23モル%以下、22モル%以下、21モル%以下、20モル%以下、19モル%以下、18モル%以下、17モル%以下、16モル%以下、15モル%以下、14モル%以下、13モル%以下、12モル%以下、11モル%以下、10モル%以下、9モル%以下、8モル%以下、7モル%以下、6モル%以下または5モル%以下であってもよい。
【0067】
化学式1で表されるジオールが前述の含有量範囲を満足する場合、本発明が技術的課題とする優れた耐熱性、弾性及び抗菌性を共に確保することに有利である。
【0068】
前記(B)ポリオール中のポリエーテルグリコールの含有量は、例えば、ポリオール中の化学式1で表されるジオールの含有量(モル%)を除いた残量であってもよい。
【0069】
例えば、前記(B)ポリオール中のポリエーテルグリコールの含有量は、60モル%以上、65モル%以上、70モル%以上、75モル%以上、80モル%以上、85モル%以上、90モル%以上または95モル%以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、99.99モル%以下、99.95モル%以下、99.9モル%以下または99.5モル%以下、具体的には、99モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、85モル%以下、80モル%以下、75モル%以下、70モル%以下または65モル%以下であってもよい。
【0070】
ポリエーテルグリコールが前述の含有量範囲を満足する場合、本発明が技術的課題とする優れた耐熱性、弾性及び抗菌性を共に確保することに有利である。
【0071】
一つの例示において、前記(B)ポリオールに対する(A)イソシアネートのモル比は1.0ないし2.0の範囲であってもよい。このとき、モル比とは、重合体の製造に用いられるイソシアネート化合物のモル数をポリオールの全モル数で割ったことを意味する。
【0072】
例えば、前記(B)ポリオールに対する(A)イソシアネートのモル比の下限は、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上または1.9以上であってもよい。そして、その上限は、例えば1.9以下、1.8以下、1.7以下、1.6以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下または1.2以下であってもよい。
【0073】
本発明の具体例において、前記ポリウレタン重合体は、イソシアネート化合物であるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI);ポリエーテルグリコールであるポリテトラメチレングリコール(PTMG);及び化学式1の化合物由来の単位を含んでもよい。この場合、ポリウレタン重合体は、下記式で表される構造を含んでもよい。
【0074】
【0075】
前記構造式において、nは、前述のポリエーテルグリコールの分子量を満足できるようにする整数であってもよい。
【0076】
また、前記構造式において、mは、後述するウレタン重合体の分子量を満足できるようにする整数であってもよいが、例えば、3ないし100であってもよい。
【0077】
さらに一つの例示において、前記ポリウレタン重合体は、前記構造式1の単位以外に、イソシアネート化合物であるメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)及びポリエーテルグリコールであるポリテトラメチレングリコール(PTMG)を含む単位をさらに含んでもよい(つまり、化学式1の化合物由来の単位が含まれていない単位)。このような単位は、前記構造式1で化学式1由来の単位が含まれていないものであり、このような単位では整数mが3ないし100であるか、100よりさらに大きくてもよい。
【0078】
一つの例示において、前記弾性抗菌ポリウレタン重合体は、ジアミン化合物由来の単位をさらに含んでもよい。具体的には、前記弾性抗菌ポリウレタン重合体は、(A)イソシアネート化合物;(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオール;及び(C)ジアミン化合物由来の単位を含んでもよい。より具体的には、(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオールの重合物(例:プレポリマー)に対してジアミン化合物をさらに反応させ、前記弾性抗菌ポリウレタン重合体が製造されてもよい。
【0079】
前記ジアミン化合物は、いわゆる鎖延長剤として機能することができる。使用可能なジアミンの種類は特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、1,2’-プロピレンジアミン(1,2’-propylene diamine)、ヘキサメチレンジアミン(hexamethylene diamine)、キシレンジアミン(xylene diamine)、4,4’-ジフェニルメタンジアミン(4,4’-diphenylmethane diamine)またはヒドラジン(hydrazine)などの化合物が本発明に用いられてもよい。または、前記並べられた化合物のうち1以上が用いられてもよい。
【0080】
一つの例示において、前記(B)ポリオールに対する(C)ジアミン化合物のモル比は1.0未満であってもよい。例えば、前記(B)ポリオールに対する(C)ジアミン化合物のモル比は、0.9以下、0.8以下、0.7以下、0.6以下、0.5以下または0.4以下であってもよい。そして、その下限は、例えば、0.1モル以上、0.2モル以上、0.3モル以上または0.4モル以上であってもよい。前記範囲内で前述のエチレンジアミンの機能を適切に確保することができる。
【0081】
特に制限されてはいないが、本発明の具体例において、前記ポリウレタンは1万以上の分子量を有してもよい。具体的には、前記ポリウレタンの分子量は5万以上または10万以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、30万以下、25万以下、20万以下、15万以下または10万以下であってもよい。前述の範囲を満足する場合、機械的物性(例:引張特性)を確保することに有利で、特に、繊維用途で弾性を発揮することに有利である。
【0082】
前記抗菌弾性ポリウレタン重合体は所定の特性を示すことができる。
【0083】
一つの例示において、本発明のポリウレタン重合体は、JIS Z 2801による測定時に、90%以上の抗菌率(静菌減少率)を示すことができる。例えば、前記抗菌率は、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または99.9%以上であってもよい。本発明の具体例で、前記ポリウレタン重合体は実質的に100%の抗菌率を示すことができる。抗菌率が前記数値未満の場合には、優れた抗菌性を有すると見難い。
【0084】
一つの例示において、本発明のポリウレタン重合体は280℃以上の熱分解温度(Td)を有してもよい。このとき、熱分解温度とは、
図1に関する実験のように、N
2の下で10℃/min速度で700℃まで温度を昇温しながら、重合体の重量減少(weight loss)を評価する場合に、重合体の重量減少(weight loss)が10%となる時点の温度(Td)(熱分解開始温度)を意味する。前記熱分解温度は、例えば、285℃以上、290℃以上、295℃以上、300℃以上、305℃以上または310℃以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、350℃以下、345℃以下、340℃以下、335℃以下、330℃以下、325℃以下、320℃以下、315℃以下、310℃以下、305℃以下または300℃以下であってもよい。前記範囲内で重合体は、優れた加工性及び耐熱耐久性を有することができる。
【0085】
一つの例示において、本発明のポリウレタン重合体は、ASTM D882引張試験法によって測定された引張ひずみが900%以上であってもよい。このとき、前記引張ひずみは、例えば、幅と長さとの比(幅:長さ)が1:1ないし100、1:1ないし50、1:1ないし30または1:1ないし10である弾性抗菌ポリウレタン重合体試料に対して測定されてもよい。具体的には、前記引張ひずみは、例えば、910%以上、920%以上、930%以上、940%以上、950%以上、960%以上、970%以上、980%以上、990%以上、1000%以上または1010%以上であってもよい。そして、その上限は、例えば1100%以下、1090%以下、1080%以下、1070%以下、1060%以下、1050%以下、1040%以下、1030%以下、1020%以下、1010%以下または1000%以下であってもよい。後述する実験で確認されるように、本発明の重合体は、抗菌性確保のために化学式1のジオールを導入しながらも、高い引張ひずみを維持することができる。
【0086】
一つの例示において、本発明のポリウレタン重合体は、ASTM D882引張試験法によって測定された引張強度が30MPa以上であってもよい。このとき、前記引張強度は、例えば、幅と長さとの比(幅:長さ)が1:1ないし100、1:1ないし50、1:1ないし30または1:1ないし10である弾性抗菌ポリウレタン重合体試料に対して測定されてもよい。具体的には、前記引張強度は、例えば、35MPa以上、40MPa以上、45MPa以上、50MPa以上、55MPa以上または60MPa以上であってもよい。そして、その上限は、例えば、65MPa以下、60MPa以下、55MPa以下、50MPa以下、45MPa以下、40MPa以下または35MPa以下であってもよい。後述する実験で確認されるように、本発明の重合体は、抗菌性確保のために化学式1のジオールを導入しながらも、高い引張強度を維持することができる。
【0087】
一つの例示において、本発明のポリウレタン重合体は、重合体全体に対して化学式1で表される未反応ジオールの含有量が1,000ppm以下を満足することができる。前記未反応含有量は、HPLC(High Perfomance Liquid Chromatography)を用いて確認することができる。具体的には、重合体全体に対する化学式1で表される未反応ジオールの含有量は、950ppm以下、900ppm以下、850ppm以下、800ppm以下、750ppm以下、700ppm以下、650ppm以下、600ppm以下、550ppm以下、500ppm以下、450ppm以下、400ppm以下、350ppm以下、300ppm以下、250ppm以下、200ppm以下、150ppm以下、100ppm以下または50ppm以下であってもよい。未反応の単量体の含有量が増加するか前記範囲を超えることになる場合、化学結合ができなかった化学式1の単量体によって機械的物性(引張特性)が低下することがある。
【0088】
前記ポリウレタン重合体の用途は特に制限されない。例えば、前記重合体は、繊維(例:スパンデックスのような弾性糸など)、織物、衣服(例:下着、水着、靴下など)、ペイント、車両用内装材、マットレスまたは発泡体(foams)などの原料として用いることができる。
【0089】
本発明に関する他の一例において、本発明は、弾性抗菌ポリウレタン重合体を製造する方法に関するものである。このような方法によって、前述の構成の弾性抗菌ポリウレタン重合体が製造される。
【0090】
具体的には、前記製造方法は、(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオールを混合し、反応させるステップ(S1)を含む。このとき、前記(B)ポリオールは、化学式1で表されるジオールを0.01ないし40モル%含む。
【0091】
【0092】
前記化学式1において、
R1及びR2は、それぞれ独立して、水素、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールオキシ基、アルコキシ基、脂環式構造、ヘテロ脂環式構造またはアルキルチオ基またはアリールチオ基であり、
L1及びL2は、それぞれ独立して、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
L3は、直接結合、アルキレン基、ヘテロアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはヘテロアリーレン基であり、
Aは、炭素数が6超であるアルキレン基であり、
X-は、陰イオンを意味する。
【0093】
このとき、前記化学式1Aの炭素数は、主鎖の炭素数を意味する。
【0094】
本発明のポリウレタンを形成する成分、つまり、ポリウレタン製造に用いられる重合成分とその含有量、及び製造されたポリウレタン重合体の特性などに関する説明は、前述のものと同一であるので、これを省略する。
【0095】
一つの例示において、前記反応は、100℃以下の温度で行われてもよい。反応温度が100℃より高い場合には、ジイソシアネートは、副反応を通じてダイマー(dimer)を生成することができ、これは高分子合成に障害となる。具体的には、前記反応温度は、95℃以下、90℃以下、85℃以下、80℃以下、75℃以下、70℃以下、65℃以下または60℃以下であってもよい。その下限は、例えば、50℃以上、55℃以上、60℃以上、65℃以上または70℃以上であってもよい。
【0096】
一つの例示において、前記反応は、数十分ないし数十時間の間行われてもよい。具体的には、前記反応は、例えば、30分以上、60分以上または90分以上行われてもよい。そして、前記反応時間の上限は、例えば、30時間以下、25時間以下、20時間以下、15時間以下、10時間以下または5時間以下であってもよい。前記時間範囲内で重合体の分子量を適切に調節し、副反応の発生を調節することができる。
【0097】
一つの例示において、前記方法は、(A)イソシアネート化合物及び(B)ポリエーテルグリコールと下記の化学式1で表されるジオールとを含むポリオールを反応させて得られたプレポリマー(prepolymer)に(C)ジアミン化合物をさらに反応させるステップ(S2)をさらに含んでもよい。
【0098】
具体的には、前記プレポリマーまたはその溶液を溶媒に稀釈して稀釈液を製造する。稀釈液の製造のための溶媒の種類は特に制限されないが、例えば、DMAc(dimethylacetamide)が用いられてもよい。このとき、前記稀釈液の濃度は、稀釈液重量全体のうちプレポリマーの含有量が約10ないし40または20ないし30重量%の範囲に調節されてもよい。そして、前記のように製造されたプレポリマー稀釈液にジアミン化合物が添加される。本発明の具体例によると、ジアミン化合物を添加する時に急激な反応が起こらないように、ジアミン化合物がプレポリマー稀釈液に添加される時の温度を10℃以下、例えば、約0ないし4℃水準に調節してもよい。ジアミン化合物の添加後には、約数時間の間、例えば、1ないし2時間の間反応が行われてもよい。
【0099】
前記のように、鎖延長剤であるジアミン化合物とプレポリマーとの反応を通じて、本発明の抗菌弾性ポリウレタンを提供することができる。
【0100】
前述の方法によって製造された抗菌弾性ポリウレタンは、前述の特性(例:抗菌率、引張ひずみ、引張強度及び未反応ジオール含有量)を満足する。
【0101】
本発明に関するさらに他の一例において、本発明は、前記抗菌弾性ポリウレタン重合体を含むエンジニアリングプラスチックに関するものである。
【0102】
前記エンジニアリングプラスチックは、例えば、産業用または工業用機械、器具などの部品材料に用いられるプラスチックであって、その具体的な用途は特に制限されない。
【0103】
本発明に関するさらに他の一例において、本発明は、前記抗菌弾性ポリウレタン重合体を含む物品に関するものである。
【0104】
一つの例示において、前記物品は、繊維(例:スパンデックスのような弾性糸など)、織物、衣服(例:下着、水着、靴下など)、ペイント、車両用内装材、マットレスまたは発泡体(foams)であってもよい。本発明の具体例によると、前記物品は、前述の抗菌弾性重合体を含むスパンデックス繊維、前記繊維を含む織物または衣服であってもよい。
【0105】
本発明に関するさらに他の一例において、本発明は、弾性糸製造用紡糸組成物(または、紡糸液)に関するものである。前記紡糸組成物は、少なくても前述の弾性重合体を含む。
【0106】
本発明に関するさらに他の一例において、本発明は、前記弾性糸製造用紡糸組成物(または、紡糸液)を製造する方法に関するものである。前記方法は、前述の弾性抗菌ポリウレタン重合体を製造する方法及び工程などに関する内容をいずれも含む。
【0107】
本発明に関するさらに他の一例において、本発明は、前記抗菌弾性ポリウレタン重合体を含む弾性糸(例:スパンデックス)に関するものである。
【0108】
前記弾性糸は、前述のような特性のポリウレタン重合体を含むので、引張特性や耐熱耐久性が低下することなく抗菌性を提供することができる。このような弾性糸は、衛生用または医療用繊維に用いることができる。
【0109】
弾性糸の形態は、モノまたはマルチフィラメントであってもよく、特に制限されない。また、その繊度もまた特に制限されず、繊維が用いられる用途により適切に調節されてもよい。
【0110】
ポリウレタン重合体に関する説明は、前述のものと同一であるので、これを省略する。
【0111】
本発明に関するさらに他の一例において、本発明は、前記弾性糸を製造する方法に関するものである。具体的には、前記方法は、紡糸液の製造ステップ(S1)、及び前記紡糸液を紡糸するステップ(S2)を含む。
【0112】
本発明の具体例において、前記ステップ(S1)は、(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと前記化学式1で表されるジオールとを含むポリオールを混合及び反応させるステップ(S11);及び(A)イソシアネート化合物;及び(B)ポリエーテルグリコールと前記化学式1で表されるジオールとを含むポリオールを反応させて得られたプレポリマー(prepolymer)に(C)ジアミン化合物をさらに反応させるステップ(S12)を含む。このとき、前記(B)ポリオールは、化学式1で表されるジオールを0.01ないし40モル%含む。
【0113】
その他に、前記紡糸液の製造ステップに関連して、紡糸液の主成分である弾性抗菌ポリウレタンを製造する内容(例:プレポリマー製造、プレポリマーとジアミンとの反応など)は、弾性抗菌ポリウレタン及びその製造方法で説明したものと同一であるので、これを省略する。
【0114】
前記ステップ(S2)に関連して、繊維製造のための紡糸工程は特に制限されない。例えば、スピナレット(spinneret)を備えた紡糸装置が用いられてもよく、紡糸時の温度は、例えば200℃以上または250℃以上水準に調節されてもよい。
【0115】
紡糸以降には、空気や液体(例:水やその他溶媒を含む液体)による冷却が行われてもよい。
【0116】
一つの例示において、前記方法は、巻き取るステップ(S3)をさらに含んでもよい。紡糸または紡糸の後に冷却された繊維は、巻取ローラのように公知の方法や機器を通じて巻き取られてもよい。
【発明の効果】
【0117】
本発明の具体例によると、優れた抗菌性、機械的物性(例:引張強度及び引張ひずみ)及び耐熱性などを有するポリウレタンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【
図1a】
図1aは、比較例1に関する耐熱性に関する実験結果を示したグラフである。
【
図1b】
図1bは、実施例1に関する耐熱性に関する実験結果を示したグラフである。
【
図1c】
図1cは、実施例2に関する耐熱性に関する実験結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0119】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明することにする。ただし、これは発明の例示として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲が如何なる意味でも限定されるものではない。
【0120】
重合体の製造
実施例1
MDI(Methylene diphenyl diisocyanate)(Mw分子量250.25)11.6g、PTMG(Poly(tetramethylene ether)glycol)(Mw分子量2000.0)52.3g及び下記[化学式1-1]の構造を有する4級アンモニウムジオール(Mw分子量368.00)1.1gを反応器内に投入し、反応機内部をN2で置き換えた。その後、DMAc溶媒を反応器に投入し、反応器を90℃に昇温させて90分間反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを製造した。
【0121】
【0122】
そして、製造されたポリウレタンプレポリマー溶液をDMAc溶媒と混合して約25重量%濃度に希釈したプレポリマー溶液を製造し、約0ないし4℃の温度範囲内でエチレンジアミン(Ethylene diamine)(Mw分子量60.10)0.9gを添加した。次に、エチレンジアミンの添加後に約1.5時間ほど反応を行い、ポリウレタン重合体を製造した。
【0123】
実施例2
MDI(Methylene diphenyl diisocyanate)(Mw分子量250.25)11.2g、PTMG(Poly(tetramethylene ether)glycol)(Mw分子量2000.0)53.3g、前記[化学式1-1]の構造を有する4級アンモニウムジオール(Mw分子量368.00)0.5g、及びエチレンジアミン(Ethylene diamine)(Mw分子量60.10)0.9gを反応器内に投入したことを除いては、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
【0124】
実施例3
MDI(Methylene diphenyl diisocyanate)(Mw分子量250.25)10.9g、PTMG(Poly(tetramethylene ether)glycol)(Mw分子量2000.0)54.0g、前記[化学式1-1]の構造を有する4級アンモニウムジオール(Mw分子量368.00)0.1g、及びエチレンジアミン(Ethylene diamine)(Mw分子量60.10)0.9gを反応器内に投入したことを除いては、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
【0125】
比較例1
MDI(Methylene diphenyl diisocyanate)(Mw分子量250.25)10.8g、PTMG(Poly(tetramethylene ether)glycol)(Mw分子量2000.0)54.2g、及びエチレンジアミン(Ethylene diamine)(Mw分子量60.10)0.9gを反応器内に投入したことを除いては、実施例1と同様にポリウレタンを製造した。
【0126】
比較例2
実施例3で用いたものと同一の含有量のPTMG、MDI及び[化学式1-1]を用いてポリウレタンを製造した。ただし、PTMG、MDI及び[化学式1-1]を共に反応させる実施例3と異なり、PTMGとMDIとをまず反応させ(MDIのNCOの反応率水準が約99%に達するまで反応させる)、前記[化学式1-1]をchain extenderに投入して残余-NCO基と反応させた。
【0127】
実施例と比較例の各重合体の製造に用いられた成分のうち、MDI、PTMG及び[化学式1-1]成分間モル比は、下記表1のとおりである。
【0128】
【0129】
評価
(1)未反応の[化学式1-1]の含有量
重合後にポリウレタン内に残留する化学式1-1のモノマーをHPLC(High Perfomance Liquid Chromatography)分析装置を通じて定量的に測定した。より具体的には、まず製造された樹脂ペレットを一定量の溶媒(食塩水)に入れ、24時間撹拌した後、抽出液をフィルターにかけて樹脂内の未反応成分を抽出する。このように得られた溶液を取った後、HPLC分析して、予め測定した共重合体モノマーのHPLC分析結果と比較して、樹脂内に残留する化学式1の化合物の成分を測定した。後述する実験結果をみると、重合されたポリウレタン内に残留する未反応の化学式1-1のモノマーは、機械的物性の低下の原因として判断される。
【0130】
(2)抗菌性評価
実施例1-3及び比較例1-2の各重合体の抗菌力を評価した。具体的には、DMF(dimethylformamide)を溶媒として用いて製造された20wt%濃度の重合溶液を溶媒キャスティング(solvent casting)してフィルム(5cm×5cm)を製造し、JIS Z 2801方法によって抗菌評価を行った。
【0131】
(3)耐久性(耐熱性)評価
実施例1-2及び比較例の各重合体の耐熱性を評価した。具体的には、N
2の下で10℃/min速度で700℃まで温度を昇温しながら、重合体の重量損失(weight loss)を比較した。その結果は、
図1a(比較例1)、
図1b(実施例1)及び
図1c(実施例2)と同一である。
【0132】
図1をみると、実施例のように、ポリウレタン重合時に化学式1(または、化学式1-1)化合物の単位を導入しても、ポリウレタンの耐熱性低下がないことが確認される。
【0133】
(4)引張特性評価
実施例1-3及び比較例1-2の各重合体の引張特性を評価した。具体的には、ASTM D882の引張試験法によって試料の引張強度と引張ひずみとを測定した。参考までに、ASTM D882は、薄膜(厚さが約1mm未満)フィルムの引張試験に関するものであり、本発明に対する実験時の試料の規格は、5mm×50mm(幅×長さ)である(厚さ:約200ないし300μm)。
【0134】
参考までに、引張強度(Tensile strength)は、材料が引張荷重によって破断するまでの最大応力を意味し、最大荷重を材料の断面積で割った値である。そして、引張ひずみ(Tensile strain)は、材料が引張応力によって変形を起こした時のひずみを意味するもので、最初の長さからの長さの変化量に対する比で示す。
【0135】
【0136】
前記表1のように、実施例1-3は、比較例1-2に対して高い引張強度を有する。引張ひずみの場合、抗菌性をさらに確保した実施例1-3は、比較例1と同様の引張ひずみを示す。つまり、実施例1-3は、(化学式1-1をさらに反応させたにもかかわらず)優れた弾性を示す。
【0137】
一方、本発明のポリウレタン重合体の製造過程と異なり、化学式1-1のジオールが鎖延長剤として用いられた比較例2の場合には、未反応の単量体が過剰存在して機械的物性(引張強度、引張ひずみ)が良くないことが確認される。
【国際調査報告】