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特表2024-520623光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/22 20060101AFI20240517BHJP
   C08L 35/06 20060101ALI20240517BHJP
   C09B 23/00 20060101ALN20240517BHJP
【FI】
G02B5/22
C08L35/06
C09B23/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574264
(86)(22)【出願日】2023-03-03
(85)【翻訳文提出日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2023002978
(87)【国際公開番号】W WO2023167562
(87)【国際公開日】2023-09-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0027487
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0027488
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ・イ
(72)【発明者】
【氏名】スンファ・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チュルスク・ホン
【テーマコード(参考)】
2H148
4J002
【Fターム(参考)】
2H148CA01
2H148CA04
2H148CA12
4J002BC061
4J002FD096
4J002GH01
4J002GP00
(57)【要約】
本発明は、750nm以上1500nm以下の波長の近赤外線に対する光吸収性能に優れ、耐光性および耐湿性に優れて、苛酷条件に露出しても優れた光吸収性能を実現可能な光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成されたコーティング層と、を含み、
前記コーティング層は、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含み、
800nm~1000nmの波長領域で30%以上の初期平均透過率(T0)を有し、
下記の数式1によって計算される平均透過率の変化率が18%以下である、光学フィルム:
[数式1]
平均透過率の変化率=
[(300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)-800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0))/T0]×100。
【請求項2】
下記の数式2によって計算される平均透過率の変化率が10%以下である、請求項1に記載の光学フィルム:
[数式2]
平均透過率の変化率
=[(高温および高湿条件に露出させた後、800nm~1000nmの波長領域で前記光学フィルムが有する平均透過率(T2)-800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0))/T0]×100
この時、高温および高湿条件での露出は、70℃~100℃の温度および70%~90%の湿度条件に50~100時間を露出したことを意味する。
【請求項3】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上500重量部以下含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記コーティング層は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上3重量部以下含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料は、シアニン系染料を含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記コーティング層の厚さが0.005μm以上1000μmであり、
前記光学フィルムの厚さが0.01μm以上1000μmである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記基材の他の一面に形成された金属酸化物層をさらに含む、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記数式1によって計算される平均透過率の変化率が15%以下である、請求項1または9に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記金属酸化物層は、インジウム、亜鉛、スズ、アルミニウム、ガリウム、タリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セシウム、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、ケイ素およびゲルマニウムからなる群より選択されたいずれか1つの金属の酸化物、または前記金属から選択された2つ以上の金属の複合酸化物を含む、請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項12】
前記金属酸化物層は、1nm~100nmの厚さを有する、請求項9に記載の光学フィルム。
【請求項13】
請求項1に記載の光学フィルムを含む、電子機器。
【請求項14】
前記電子機器は、虹彩イメージを取得するカメラ装置部と、赤外線領域の光源と、前記赤外線領域の光源の波長帯域と他の外部光を遮断させる光学フィルムとを含む、請求項13に記載の電子機器。
【請求項15】
ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含み、
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であり、
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含む、コーティング層形成用組成物。
【請求項16】
前記コーティング層形成用組成物は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上3重量部以下含む、請求項15に記載のコーティング層形成用組成物。
【請求項17】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上500重量部以下含む、請求項15に記載のコーティング層形成用組成物。
【請求項18】
前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料は、シアニン系染料を含む、請求項15に記載のコーティング層形成用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2022年3月3日付の韓国特許出願第10-2022-0027487号および韓国特許出願第10-2022-0027488号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器に関する。
【背景技術】
【0003】
仮想現実(Virtual Reality、VR)は、コンピュータなどを用いた人工的な技術で作り出した、実際に似ているものの実際ではない、ある特定の環境や状況あるいはその技術自体をいう。
【0004】
また、拡張現実(Augmented Reality、AR)は、実際の環境に仮想の物体や情報を合成して、元の環境に存在する物体のように見せる技術をいう。
【0005】
複合現実(Mixed Reality、MR)あるいはハイブリッド現実(Hybrid reality)は、仮想世界と現実世界とを合わせて新しい環境や新しい情報を作り出すことをいう。特に、リアルタイムに現実と仮想に存在するものの間でリアルタイムに相互作用できることをいう時、複合現実という。
【0006】
この時、作られた仮想の環境や状況などは使用者の五感を刺激し、実際に似ている空間的、時間的体験をさせることで現実と想像との境界を自由に出入りさせる。また、使用者はこのような環境に単純に没頭するだけでなく、実在するデバイスを用いて操作や命令を加えるなどこのような環境の中に実現されたものと相互作用が可能である。
【0007】
つまり、現実世界に基づいて使用者が仮想の物体と相互作用して向上した現実感を感じることができ、自分が位置している実際の環境を認識すると同時に、実際の映像上に表現された仮想の情報も認識することができる。
【0008】
このような技術分野では、使用者が見つめている実際の世界に仮想現実のイメージをマッチングするために、瞳孔認識センサが用いられている。
【0009】
トラッキング方法の一つである光学方式は、予め測定された位置に赤外線LEDを付着させてカメラで検出する方式であり、写真を撮る時、瞳孔が光を反射して生じる赤目現象のように赤外線LEDが検知した瞳孔をカメラで撮影して、設計されたアルゴリズムにより中心視覚を座標に示す。したがって、瞳孔を検知する赤外線LEDを除いた外部赤外線領域を効果的に遮断することによって、拡張現実の実行における誤差を最小化することができる。
【0010】
そこで、拡張現実(Augmented Reality、AR)に適用して瞳孔認識センサの誤差を最小化するために、外部から流入した近赤外線を効果的に遮断する光学フィルムへの研究が要求されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、750nm以上1500nm以下の波長の近赤外線に対する光吸収性能に優れ、耐光性および耐湿性に優れて、苛酷条件に露出しても優れた光吸収性能を実現可能な光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書では、基材と、前記基材上に形成されたコーティング層と、を含み、前記コーティング層は、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含み、800nm~1000nmの波長領域で30%以上の初期平均透過率(T0)を有し、下記の数式1によって計算される平均透過率の変化率が18%以下である、光学フィルムを提供する。
【0013】
[数式1]
平均透過率の変化率=
[(300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)-800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0))/T0]×100。
【0014】
また、本明細書では、前記光学フィルムを含む、電子機器を提供する。
【0015】
さらに、本明細書では、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含み、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であり、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含む、コーティング層形成用組成物を提供する。
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態による光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器に関してより詳細に説明する。
【0017】
本明細書において、「高温」とは、60℃以上の温度を意味することができる。例えば、前記高温は、65℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、または90℃以上の温度を意味することができ、その上限は特に制限されないが、例えば、110℃以下、105℃以下、100℃以下、95℃以下、90℃以下、85℃以下、または80℃以下であってもよい。物質、物品または各構成の特徴に温度が影響を与える場合、特に他に温度を言及しない以上、前記特徴が測定または説明される温度条件は、常温(例:特に減温または加温が行われない温度であって、約15~30℃の範囲)を意味することができる。
【0018】
また、本明細書において、「高湿」とは、80%以上の相対湿度を意味することができる。例えば、高湿条件とは、85%以上90%以上、または95%以上の相対湿度を満足する条件を意味することができる。物質、物品または各構成の特徴に湿度が影響を与える場合、特に他に言及しない以上、前記特徴が測定または説明される湿度条件は、前記高湿条件より相対湿度が低い場合であって、例えば、15以上80%未満の範囲の相対湿度条件であってもよく、具体的には、その下限が20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上かつ、その上限が75%以下、70%以下、65%以下、または60%以下の相対湿度条件を意味することができる。
【0019】
さらに、本明細書において、高温/高湿条件とは、前述した高温条件および高湿条件のいずれか1つ以上を満足する環境条件を意味することができる。
【0020】
本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0021】
本明細書において使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0022】
本明細書において使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0023】
また、本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(単位:g/mol)を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、流速(flow rate)を適用することができる。前記測定条件の具体例として、25℃の温度、テトラヒドロフラン(THF)および1mL/minの流速(flow rate)が挙げられる。
【0024】
発明の一実施形態によれば、基材と、前記基材上に形成されたコーティング層と、を含み、前記コーティング層は、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含み、800nm~1000nmの波長領域で30%以上の初期平均透過率(T0)を有し、下記の数式1によって計算される平均透過率の変化率が18%以下である、光学フィルムが提供できる。
【0025】
[数式1]
平均透過率の変化率=
[(300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)-800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0))/T0]×100。
【0026】
最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料は、光に対する安定性が脆弱で、従来、これを含む光学フィルムの場合、耐光性が低下して染料の光吸収性能が低下する問題点があった。
【0027】
そこで、本発明者らは、苛酷条件で使用される場合でも耐光性および耐湿性に優れ、750nm以上1500nm以下の波長領域に対する優れた光吸収性を実現可能な光学フィルムに関する研究を進めて、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体とともに含む光学フィルムの場合、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の熱と光に対する酸化安定性に優れて染料の安定性に影響を及ぼす反応種の生成が少なくて染料の安定性を高めることによって、最終製造された光学フィルムが苛酷条件で使用される場合でも耐光性および耐湿性に優れ、750nm以上1500nm以下の波長領域に対する優れた光吸収性を実現できるという点を確認して、発明を完成した。
【0028】
具体的には、前記光学フィルムは、下記の数式1によって計算される平均透過率の変化率が18%以下であってもよい。
【0029】
[数式1]
平均透過率の変化率=
[(300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)-800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0))/T0]×100。
【0030】
前記平均透過率は、厚さ20μm以上250μm以下の光学フィルムに対して測定された値であり、具体的な測定方法は大きく制限されないが、例えば、shimadzu社のsolidspec-3700などの分光光度計を用いて測定することができる。
【0031】
具体的には、前記光学フィルムは、前記数式1によって計算される平均透過率の変化率が18%以下である、15%以下、10%以下、5%以下、2%以下、0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、または0.01%以上10%以下、0.01%以上5%以下、0.01%以上2%以下、0.1%以上10%以下、0.1%以上5%以下、0.1%以上2%以下、0.5%以上10%以下、0.5%以上5%以下、0.5%以上2%以下であってもよい。
【0032】
前記数式1によって計算される平均透過率の変化率が10%以下であることによって、耐光性に優れて、苛酷条件でも750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対して光吸収率性能が低下せず、優れた光吸収性を実現して、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0033】
前記数式1中、前記初期平均透過率とは、製造後に別に処理しない光学フィルムを意味することができる。
【0034】
つまり、前記数式1中、前記初期平均透過率は、30%以上、40%以上、45%以上、60%以下、56%以下、30%以上60%以下、40%以上60%以下、45%以上60%以下、30%以上56%以下、40%以上56%以下、45%以上56%以下であってもよい。
【0035】
前記光学フィルムの初期平均透過率が30%以上60%以下であることによって、750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対する光吸収率に優れて、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0036】
また、前記数式1中、100nm~400nm、または300nm~400nmの波長を有する紫外線に15時間以上30時間以下露出させた後の平均透過率とは、前記実施形態の光学フィルムに対して、Q-Lab社のQUV装置を用いて、15時間~30時間、または24時間300nm~400nm、または340nmで最大値0.10~1.00W/cm、または0.68W/cmの光量に露出させた後に測定した800nm以上1000nm以下の波長領域での平均透過率を意味することができ、この時、QUV装置(Q-Lab社)などを用いることができる。
【0037】
前記300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)は、30%以上65%以下であってもよい。
【0038】
具体的には、前記300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)は、30%以上、40%以上、45%以上、60%以下、56%以下、30%以上60%以下、40%以上60%以下、45%以上60%以下、30%以上56%以下、40%以上56%以下、45%以上56%以下であってもよい。
【0039】
前記300nm~400nmの波長領域で15時間~30時間露光させた後、800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する平均透過率(T1)が30%以上60%以下であることによって、耐光性に優れて、苛酷条件でも750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対して優れた光吸収率を実現して、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0040】
一方、前記光学フィルムは、800nm~1000nmの波長領域で30%以上、または30%以上60%以下の初期平均透過率(T0)を有することができる。
【0041】
前記平均透過率は、厚さ20μm以上250μm以下の光学フィルムに対して測定された値であり、具体的な測定方法は大きく制限されないが、例えば、shimadzu社のsolidspec-3700などの分光光度計を用いて測定することができる。
【0042】
具体的には、前記光学フィルムは、800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率が30%以上、40%以上、45%以上、60%以下、56%以下、30%以上60%以下、40%以上60%以下、45%以上60%以下、30%以上56%以下、40%以上56%以下、45%以上56%以下であってもよい。
【0043】
前記光学フィルムが800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率が30%以上60%以下であることによって、750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対する光吸収率に優れて、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0044】
一方、前記光学フィルムは、下記の数式2によって計算される平均透過率の変化率が10%以下であってもよい。
【0045】
[数式2]
平均透過率の変化率
=[(高温および高湿条件に露出させた後、800nm~1000nmの波長領域で前記光学フィルムが有する平均透過率(T2)-800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0))/T0]×100
【0046】
この時、高温および高湿条件での露出は、70℃~100℃の温度および70%~90%の湿度条件に50~100時間を露出したことを意味する。
【0047】
前記数式2中、平均透過率は、厚さ20μm以上250μm以下の光学フィルムに対して測定された値であり、具体的な測定方法は大きく制限されないが、例えば、shimadzu社のsolidspec-3700などの分光光度計を用いて測定することができる。
【0048】
具体的には、前記光学フィルムは、前記数式2によって計算される平均透過率の変化率が10%以下、5%以下、4.7%以下、0.01%以上、0.1%以上、0.5%以上、または0.01%以上10%以下、0.01%以上5%以下、0.01%以上4.7%以下、0.1%以上10%以下、0.1%以上5%以下、0.1%以上4.7%以下、0.5%以上10%以下、0.5%以上5%以下、0.5%以上4.7%以下であってもよい。
【0049】
前記数式2によって計算される平均透過率の変化率が10%以下であることによって、耐湿性に優れて、苛酷条件でも750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対して光吸収率性能が低下せず、優れた光吸収性を実現して、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0050】
前記数式2中、前記初期平均透過率とは、製造後に別に処理しない光学フィルムを意味することができる。
【0051】
つまり、前記数式2中、前記800nm~1000nmの波長領域で光学フィルムが有する初期平均透過率(T0)は、30%以上、40%以上、45%以上、60%以下、58%以下、30%以上60%以下、40%以上60%以下、45%以上60%以下、30%以上58%以下、40%以上58%以下、45%以上58%以下であってもよい。
【0052】
前記光学フィルムの初期平均透過率が30%以上60%以下であることによって、750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対する光吸収率に優れて、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0053】
前記数式2中、前記高温および高湿条件に露出させた後、800nm~1000nmの波長領域で前記光学フィルムが有する平均透過率(T2)は、前記実施形態の光学フィルムに対して72時間85℃、85%条件で評価を進行させた後に測定した800nm以上1000nm以下の波長領域での平均透過率を意味することができ、この時、最大値0.10~1.00W/cm、または0.68W/cmの光量を適用することができ、また、QUV装置(Q-Lab社)などを用いることができる。
【0054】
前記コーティング層は、後述する一実施形態のコーティング層形成用組成物から形成される。
【0055】
前記基材の種類は特に制限されず、関連技術分野にて公知のものが使用可能である。例えば、ガラス(glass)、PET(polyethylene terephthalate)、TAC(triacetyl cellulose)、PC(poluycarbonate)、COP(cyclo-olefin polymer)などの基材が使用できる。
【0056】
前記実施形態の光学フィルムは、コーティング層に前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体とともに含むことによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の優れた熱と光に対する酸化安定性によって染料の安定性に影響を及ぼす反応種の生成が少なくて染料の安定性を高めることによって、苛酷条件で使用される場合でも耐光性および耐湿性に優れ、750nm以上1500nm以下の波長領域に対する優れた光吸収性を実現できる。
【0057】
前記一実施形態のコーティング層は、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を含むことができる。
【0058】
ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を含む場合、アクリル樹脂などのUV硬化型高分子樹脂またはウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂、アクリル樹脂などの熱可塑性樹脂を含む場合と比較して、優れた耐光性を実現できる。
【0059】
具体的には、UV硬化型高分子樹脂または熱硬化型樹脂は、耐光性が脆弱で、最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料とともに使用する場合、染料の光吸収性能が低下しうる。
【0060】
前記実施形態のコーティング層は、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を含むことによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の熱と光に対する優れた酸化安定性によって優れた耐光性および耐湿性を実現し、これによって苛酷条件でも染料の優れた光吸収性能が実現できる。
【0061】
前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であってもよい。
【0062】
前記「共重合体」は、特に他に言及しない以上、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含むことができる。
【0063】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上、50,000g/mol以上、80,000g/mol以上、100,000g/mol以上、または200,000g/mol以下、150,000g/mol以下、120,000g/mol以下、または10,000g/mol以上200,000g/mol以下、10,000g/mol以上150,000g/mol以下、10,000g/mol以上120,000g/mol以下、50,000g/mol以上200,000g/mol以下、50,000g/mol以上150,000g/mol以下、50,000g/mol以上120,000g/mol以下、80,000g/mol以上200,000g/mol以下、80,000g/mol以上150,000g/mol以下、80,000g/mol以上120,000g/mol以下、100,000g/mol以上200,000g/mol以下、100,000g/mol以上150,000g/mol以下、100,000g/mol以上120,000g/mol以下であってもよい。
【0064】
前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であることによって、コーティング液形成時の流動的特性によってレベリングと濡れ特性に優れて均一なコーティング塗膜を形成できると同時に、優れた耐光特性を実現できる。
【0065】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の重量平均分子量が200,000g/mol超の場合、コーティング液の粘度が高くなって均一な塗膜を形成できず、重量平均分子量が10,000g/mol未満の場合、樹脂の耐熱安定性が減少して耐光特性が低下する問題が発生しうる。
【0066】
前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含むことができる。
【0067】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、ビニルシアン化合物および芳香族ビニル化合物を単量体として含む共重合体であってもよいし、前記ビニルシアン化合物および芳香族ビニル化合物以外に追加的な単量体をさらに含んでもよい。
【0068】
前記共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含むことができる。
【0069】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体間の重量比を調節することによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物由来の繰り返し単位の含有量を調節することができる。
【0070】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上、15重量部以上、17重量部以上、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、または10重量部以上50重量部以下、10重量部以上40重量部以下、10重量部以上30重量部以下、15重量部以上50重量部以下、15重量部以上40重量部以下、15重量部以上30重量部以下、17重量部以上50重量部以下、17重量部以上40重量部以下、17重量部以上30重量部以下含むことができる。
【0071】
つまり、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体全体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物が10重量部以上、15重量部以上、17重量部以上、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、または10重量部以上50重量部以下、10重量部以上40重量部以下、10重量部以上30重量部以下、15重量部以上50重量部以下、15重量部以上40重量部以下、15重量部以上30重量部以下、17重量部以上50重量部以下、17重量部以上40重量部以下、17重量部以上30重量部以下含まれる。
【0072】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含むことによって、 前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が向上して、優れた耐光安定性および耐熱安定性を実現できる。
【0073】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部未満で含む場合、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が低下して耐光安定性が不良になり、50重量部超で含む場合、熱による安定性が低下して耐熱安定性が不良になりうる。
【0074】
一方、前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部以上90重量部以下含むことができる。
【0075】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体間の重量比を調節することによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有量を調節することができる。
【0076】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、90重量部以下、85重量部以下、83重量部以下、または50重量部以上90重量部以下、50重量部以上85重量部以下、50重量部以上83重量部以下、60重量部以上90重量部以下、60重量部以上85重量部以下、60重量部以上83重量部以下、70重量部以上90重量部以下、70重量部以上85重量部以下、70重量部以上83重量部以下含むことができる。
【0077】
つまり、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体全体100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物が50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、90重量部以下、85重量部以下、83重量部以下、または50重量部以上90重量部以下、50重量部以上85重量部以下、50重量部以上83重量部以下、60重量部以上90重量部以下、60重量部以上85重量部以下、60重量部以上83重量部以下、70重量部以上90重量部以下、70重量部以上85重量部以下、70重量部以上83重量部以下含まれる。
【0078】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部以上90重量部以下含むことによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の良好な熱的安定性および優れた機械的特性が実現されて、最終製造される光学フィルムが優れた耐熱安定性を実現できるだけでなく、良好な耐擦傷性を実現できる。
【0079】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部未満で含む場合、熱による安定性が不良で耐光あるいは耐熱安定性が低下し、90重量部超で含む場合、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が低下して耐光安定性が不良になりうる。
【0080】
また、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上500重量部以下含むことができる。
【0081】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上、150重量部以上、200重量部以上、500重量部以下、450重量部以下、110重量部以上500重量部以下、150重量部以上500重量部以下、200重量部以上500重量部以下、110重量部以上450重量部以下、150重量部以上450重量部以下、200重量部以上450重量部以下含むことができる。
【0082】
前記ビニルシアン化合物は大きく制限されないが、例えば、アクリロニトリル、メタニトロロニトリル、エチルアクリロニトリルおよびイソプロピルアクリロニトリルからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。例えば、前記ビニルシアン化合物は、アクリロニトリルを含むことができる。
【0083】
また、前記芳香族ビニル化合物は大きく制限されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレンおよびp-tert-ブチルスチレンからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。例えば、前記芳香族ビニル化合物は、スチレンまたはα-メチルスチレンを含むことができる。
【0084】
一方、前記一実施形態のコーティング層は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体以外の高分子樹脂をさらに含むことができる。
【0085】
前記コーティング層は、コーティング層に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部以上含むことができる。
【0086】
具体的には、前記コーティング層は、コーティング層に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部以上、95重量部以上、99重量部以上、99.9重量部以上、100重量部以下、または90重量部以上100重量部以下、95重量部以上100重量部以下、99重量部以上100重量部以下、99.9重量部以上100重量部以下含むことができる。例えば、コーティング層は、高分子樹脂として前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体のみを含むことができる。
【0087】
前記コーティング層は、コーティング層に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部以上含むことによって、優れた耐光性および耐湿性を実現し、これによって苛酷条件でも染料の熱と光に対する酸化安定性に優れて染料の安定性に影響を及ぼす反応種がほとんど生成されず、優れた光吸収性能が実現できる。
【0088】
前記コーティング層がコーティング層に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部未満で含む場合、染料の光吸収性能が低下して、最終製造される光学フィルムが耐湿性および耐光性に劣り、苛酷条件で劣る光吸収性能を有しうる。
【0089】
前記一実施形態において、前記コーティング層は、最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含むことができる。
【0090】
前記コーティング層が最大吸収波長750nm以上1500nm以下の染料を含むことによって、750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対する光吸収率に優れて、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0091】
前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料の種類は特に制限されず、前記機能を果たすことが知られた化合物の中から適切に選択されて使用可能である。使用可能な染料としては、例えば、セラミドニンのスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6-アセチルアミノ-2-メチルセラミドニン(6-acetylamino-2-methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベーシックイエロー(basic yellow)、ピナシアノールクロリド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(Quinaldine Red)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、ダロウレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベーシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アジュールA(Azure A)、またはこれらの中から選択される2以上の組み合わせが挙げられる。
【0092】
具体的には、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料は、シアニン系染料を含むことができる。
【0093】
前記一実施形態において、前記コーティング層は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上3重量部以下含むことができる。
【0094】
具体的には、前記コーティング層は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上、0.5重量部以上、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.1重量部以上3重量部以下、0.1重量部以上2重量部以下、0.1重量部以上1重量部以下、0.5重量部以上3重量部以下、0.5重量部以上2重量部以下、0.5重量部以上1重量部以下含むことができる。
【0095】
前記コーティング層が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上3重量部以下含むことによって、外部環境から入ってくる750nm以上1500nmの領域の光を吸収してAR/VR機器の視線追跡性能を高めることができる。
【0096】
前記コーティング層が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部未満で含む場合、光を十分に吸収できず視線追跡性能の低下を発生させ、3重量部超で含む場合、可視光線透過率の低下あるいは光学フィルムの色値が高くなって光特性が低下する問題が発生しうる。
【0097】
また、前記一つの例において、前記コーティング層は、その他の添加剤をさらに含むことができる。使用可能なその他の添加剤としては、例えば、消泡剤が挙げられる。
【0098】
一つの例において、前記消泡剤としては、シリコーン系反応性添加剤を使用することができ、Tego Rad 2500などの市販品を使用することができる。
【0099】
前記添加剤、例えば、消泡剤や可塑剤の含有量は、光学フィルムの機能を妨げない水準で適切に調節可能である。
【0100】
前記コーティング層は、前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体100重量部を基準として、前記その他の添加剤を5~50重量部の範囲で含むことができる。具体的には、前記その他の添加剤の含有量の下限は、例えば、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、または45重量部以上であってもよく、その上限は、例えば、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、または10重量部以下であってもよい。前記範囲を満足する場合、コーティング層で要求される特性を妨げることなく添加剤の使用による効果を適切に確保することができる。
【0101】
具体的には、前記実施形態の光学フィルムを製造する方法の例が大きく限定されるものではなく、例えば、前記コーティング層形成用組成物を基材に塗布して塗膜を形成する段階(段階1)と、前記塗膜を乾燥する段階(段階2)と、を含む、製造方法を使用することができる。
【0102】
前記段階1は、上述したコーティング層形成用組成物を基材に塗布して塗膜を形成する段階である。前記コーティング層形成用組成物を基材に塗布する方法は特に制限されない。
【0103】
上述のように、前記コーティング層形成用組成物は、有機溶媒を含むことができる。前記コーティング層形成用組成物は、フィルム形成工程時の塗布性などの工程性を考慮して適切な粘度をもたせる量で固形分を含むことができる。例えば、前記コーティング層形成用組成物は、組成物に含まれる成分全体固形分の濃度が1~70重量%となるように溶媒を含むことができる。具体的には、前記溶媒は、組成物に含まれる成分全体固形分の濃度が2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、または20重量%以上かつ、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、または50重量%以下となるように溶媒を含むことができる。
【0104】
また、前記コーティング層形成用組成物は、上述のように、有機溶媒以外に他の成分を追加的に含むことができる。非制限的な例として、膜厚さの均一性や表面平滑性を向上させたり、あるいは基板との密着性を向上させたり、あるいは誘電率や導電性を変化させたり、あるいは緻密性を増加させることができる添加剤が追加的に含まれる。このような添加剤としては、界面活性剤、シラン系化合物、誘電体または架橋性化合物などが例示される。
【0105】
前記段階2は、前記コーティング層形成用組成物を基材に塗布して形成された塗膜を乾燥する段階である。
【0106】
前記塗膜の乾燥段階は、ホットプレート、熱風循環炉、赤外線炉などの加熱手段によって実施され、50℃以上150℃以下、または50℃以上100℃以下の温度で行うことができる。
【0107】
前記実施形態の光学フィルムの厚さが大きく限定されるものではないが、例えば、0.01μm以上1000μm以下の範囲内で自由に調節可能である。前記光学フィルムの厚さが特定の数値だけ増加または減少する場合、光学フィルムで測定される物性も一定の数値だけ変化可能である。
【0108】
前記実施形態において、コーティング層の厚さは大きく限定されるものではないが、例えば、0.005μm以上1000μm以下の範囲内で自由に調節可能である。より具体的には、前記コーティング層の厚さは、0.005μm以上、0.01μm以上、0.1μm以上、1μm以上、3μm以上、または1000μm以下、20μm以下、15μm以下、または0.01μm以上1000μm以下、0.01μm以上20μm以下、0.01μm以上15μm以下、0.1μm以上1000μm以下、0.1μm以上20μm以下、0.1μm以上15μm以下、1μm以上1000μm以下、1μm以上20μm以下、1μm以上15μm以下、3μm以上1000μm以下、3μm以上20μm以下、3μm以上15μm以下であってもよい。前記コーティング層の厚さが特定の数値だけ増加または減少する場合、光学フィルムで測定される物性も一定の数値だけ変化可能である。
【0109】
前記基材の厚さも大きく限定されるものではなく、例えば、0.01μm以上1000μm以下の範囲、または1μm以上、3μm以上、または1000μm以下、500μm以下、100μm以下であってもよい。
【0110】
一方、前記光学フィルムは、400nm以上500nm以下の波長に対する平均透過率が85%以上95%以下であってもよい。
【0111】
前記平均透過率は、厚さ20μm以上250μm以下の光学フィルムに対して測定された値であり、具体的な測定方法が大きく制限されないが、例えば、shimadzu社のsolidspec-3700などの分光光度計を用いて測定することができる。
【0112】
具体的には、前記光学フィルムは、400nm以上500nm以下の波長に対する平均透過率が85%以上、89%以上、95%以下、90%以下、85%以上95%以下、85%以上90%以下、89%以上95%以下、89%以上90%以下であってもよい。
【0113】
前記光学400nm以上500nm以下の波長に対する平均透過率が85%以上95%以下であることによって、優れた視認性が実現できる。
【0114】
最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料は、光に対する安定性が脆弱で、従来、これを含む光学フィルムの場合、耐光性が低下して染料の光吸収性能が低下する問題点があった。
【0115】
そこで、本発明者らは、苛酷条件で使用される場合でも耐光性および耐湿性に優れ、750nm以上1500nm以下の波長領域に対する優れた光吸収性を実現可能なコーティング層形成用組成物に関する研究を進めて、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体とともに含む組成物の場合、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の熱と光に対する酸化安定性に優れて染料の安定性に影響を及ぼす反応種の生成が少なくて染料の安定性を高めることによって、最終製造された光学フィルムが苛酷条件で使用される場合でも耐光性および耐湿性に優れ、750nm以上1500nm以下の波長領域に対する優れた光吸収性を実現できるという点を確認して、発明を完成した。
【0116】
一方、前記光学フィルムは、前記基材の他の一面に形成された金属酸化物層をさらに含むことができる。
【0117】
また、前記金属酸化物層は、インジウム、亜鉛、スズ、アルミニウム、ガリウム、タリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、セシウム、アンチモン、バナジウム、ニオブ、タンタル、ケイ素およびゲルマニウムからなる群より選択されたいずれか1つの金属の酸化物、または前記金属から選択された2つ以上の金属の複合酸化物を含むことができる。
【0118】
例えば、前記金属酸化物層は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化亜鉛スズ(ZTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、ガリウムドープ酸化亜鉛(GZO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)からなる群より選択される1つ以上の金属酸化物を含むことができる。
【0119】
前記金属酸化物層の製膜方法は特に限定されず、例えば、スパッタリング、真空蒸着、CVD(Chemical Vapor Depositionition)、電子線蒸着法などのドライプロセスによる製膜方式を適用することができる。
【0120】
前記金属酸化物層の厚さは特に制限されず、目的とする耐久性や密着性を考慮して適正な厚さに制御できる。例えば、各金属酸化物層の厚さは、約1nm~100nm、または3nm~45nm程度の範囲内で制御できる。一例において、前記金属酸化物層の厚さは、約40nm以下、35nm以下、30nm以下、25nm以下、または20nm以下程度であってもよい。
【0121】
一方、前記実施形態の光学フィルムは、前記コーティング層上に形成された接着層を含むことができる。つまり、前記実施形態の光学フィルムは、金属酸化物層、基材、コーティング層および接着層が順に積層された積層構造を含むことができる。
【0122】
前記接着層は、光学フィルムの各層の間に塗布、硬化して各層を互いに付着させる層であって、光学透明接着剤(OCA)および光学透明樹脂(OCR)のいずれか1つが使用できる。
【0123】
一方、前記実施形態の光学フィルムは、前記接着層の他の一面に金属酸化物層および基材をさらに含むことができる。つまり、前記実施形態の光学フィルムは、金属酸化物層、基材、コーティング層、接着層、基材および金属酸化物層が順に積層された積層構造を含むことができる。前記光学フィルムにおいて、各金属酸化物層と各基材は、それぞれ独立して同一または異なっていてもよい。
【0124】
また、前記実施形態の光学フィルムは、前記接着層の他の一面にカバー部材をさらに含むことができる。つまり、前記実施形態の光学フィルムは、金属酸化物層、基材、コーティング層、接着層、およびカバー部材が順に積層された積層構造を含むことができる。
【0125】
さらに、前記実施形態の光学フィルムは、前記例示された積層構造の間またはその上下に他の層をさらに含むことができ、この場合にも、光学フィルムは、耐光性および耐湿性に優れて、苛酷条件に露出しても優れた光吸収性能を実現できる。
【0126】
前記カバー部材は、プラスチック材質、金属材質、またはガラス材質からなる。
【0127】
発明の他の実施形態によれば、ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含み、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であり、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含む、コーティング層形成用組成物が提供できる。
【0128】
前記コーティング層形成用組成物から上述した一実施形態の光学フィルムのコーティング層が形成される。前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体および最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料に関する説明は、上述したすべての内容を含む。
【0129】
前記一実施形態のコーティング層形成用組成物は、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を含むことができる。
【0130】
ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を含む場合、アクリレート樹脂、エポキシ樹脂などのUV硬化型高分子樹脂またはウレタン樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化型樹脂を含む場合と比較して、優れた耐光性を実現できる。
【0131】
具体的には、UV硬化型高分子樹脂または熱硬化型樹脂は、耐光性が脆弱で、最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料とともに使用する場合、染料の光吸収性能が低下しうる。
【0132】
前記実施形態のコーティング層形成用組成物は、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を含むことによって、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の優れた熱と光に対する酸化安定性によって優れた耐光性および耐湿性を実現し、これによって苛酷条件でも染料の優れた光吸収性能が実現できる。
【0133】
前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であってもよい。
【0134】
前記「共重合体」は、特に他に言及しない以上、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含むことができる。
【0135】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上、50,000g/mol以上、80,000g/mol以上、100,000g/mol以上、または200,000g/mol以下、150,000g/mol以下、120,000g/mol以下、または10,000g/mol以上200,000g/mol以下、10,000g/mol以上150,000g/mol以下、10,000g/mol以上120,000g/mol以下、50,000g/mol以上200,000g/mol以下、50,000g/mol以上150,000g/mol以下、50,000g/mol以上120,000g/mol以下、80,000g/mol以上200,000g/mol以下、80,000g/mol以上150,000g/mol以下、80,000g/mol以上120,000g/mol以下、100,000g/mol以上200,000g/mol以下、100,000g/mol以上150,000g/mol以下、100,000g/mol以上120,000g/mol以下であってもよい。
【0136】
前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、重量平均分子量が10,000g/mol以上200,000g/mol以下であることによって、コーティング液形成時の流動的特性によってレベリングと濡れ特性に優れて均一なコーティング塗膜を形成できると同時に、優れた耐光特性を実現できる。
【0137】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の重量平均分子量が200,000g/mol超の場合、コーティング液の粘度が高くなって均一な塗膜を形成できず、重量平均分子量が10,000g/mol未満の場合、樹脂の耐熱安定性が減少して耐光特性が低下する問題が発生しうる。
【0138】
前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含むことができる。
【0139】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、ビニルシアン化合物および芳香族ビニル化合物を単量体として含む共重合体であってもよいし、前記ビニルシアン化合物および芳香族ビニル化合物以外に追加的な単量体をさらに含んでもよい。
【0140】
前記共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体を含むことができる。
【0141】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体間の重量比を調節することによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれるビニルシアン化合物由来の繰り返し単位の含有量を調節することができる。
【0142】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上、15重量部以上、17重量部以上、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、または10重量部以上50重量部以下、10重量部以上40重量部以下、10重量部以上30重量部以下、15重量部以上50重量部以下、15重量部以上40重量部以下、15重量部以上30重量部以下、17重量部以上50重量部以下、17重量部以上40重量部以下、17重量部以上30重量部以下含むことができる。
【0143】
つまり、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体全体100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物が10重量部以上、15重量部以上、17重量部以上、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、または10重量部以上50重量部以下、10重量部以上40重量部以下、10重量部以上30重量部以下、15重量部以上50重量部以下、15重量部以上40重量部以下、15重量部以上30重量部以下、17重量部以上50重量部以下、17重量部以上40重量部以下、17重量部以上30重量部以下含まれる。
【0144】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部以上50重量部以下含むことによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が向上して、優れた耐光安定性および耐熱安定性を実現できる。
【0145】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位を10重量部未満で含む場合、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が低下して耐光安定性が不良になり、50重量部超で含む場合、熱による安定性が低下して耐熱安定性が不良になりうる。
【0146】
一方、前記一実施形態において、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部以上90重量部以下含むことができる。
【0147】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体間の重量比を調節することによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位の含有量を調節することができる。
【0148】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、90重量部以下、85重量部以下、83重量部以下、または50重量部以上90重量部以下、50重量部以上85重量部以下、50重量部以上83重量部以下、60重量部以上90重量部以下、60重量部以上85重量部以下、60重量部以上83重量部以下、70重量部以上90重量部以下、70重量部以上85重量部以下、70重量部以上83重量部以下含むことができる。
【0149】
つまり、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の製造時に使用される単量体全体100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物が50重量部以上、60重量部以上、70重量部以上、90重量部以下、85重量部以下、83重量部以下、または50重量部以上90重量部以下、50重量部以上85重量部以下、50重量部以上83重量部以下、60重量部以上90重量部以下、60重量部以上85重量部以下、60重量部以上83重量部以下、70重量部以上90重量部以下、70重量部以上85重量部以下、70重量部以上83重量部以下含まれる。
【0150】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部以上90重量部以下含むことによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の良好な熱的安定性および優れた機械的特性が実現されて、最終製造される光学フィルムが優れた耐熱安定性を実現できるだけでなく、良好な耐擦傷性を実現できる。
【0151】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体100重量部に対して前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を50重量部未満で含む場合、熱による安定性が不良で耐光あるいは耐熱安定性が低下し、90重量部超で含む場合、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が低下して耐光安定性が不良になりうる。
【0152】
また、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上500重量部以下含むことができる。
【0153】
具体的には、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体は、前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して、前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上、150重量部以上、200重量部以上、500重量部以下、450重量部以下、110重量部以上500重量部以下、150重量部以上500重量部以下、200重量部以上500重量部以下、110重量部以上450重量部以下、150重量部以上450重量部以下、200重量部以上450重量部以下含むことができる。
【0154】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部以上500重量部以下含むことによって、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の良好な熱的安定性および優れた機械的特性が実現されて、最終製造される光学フィルムが優れた耐熱安定性を実現できるだけでなく、良好な耐擦傷性を実現できる。
【0155】
前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体が前記ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位100重量部に対して前記芳香族ビニル化合物由来の繰り返し単位を110重量部未満で含む場合、熱による安定性が不良で耐光あるいは耐熱安定性が低下し、500重量部超で含む場合、ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体の光に対する安定性および気体透過度が低下して耐光安定性が不良になりうる。
【0156】
前記ビニルシアン化合物は大きく制限されないが、例えば、アクリロニトリル、メタニトロロニトリル、エチルアクリロニトリルおよびイソプロピルアクリロニトリルからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。例えば、前記ビニルシアン化合物は、アクリロニトリルを含むことができる。
【0157】
また、前記芳香族ビニル化合物は大きく制限されないが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレンおよびp-tert-ブチルスチレンからなる群より選択された1種以上の化合物を含むことができる。例えば、前記芳香族ビニル化合物は、スチレンまたはα-メチルスチレンを含むことができる。
【0158】
一方、前記一実施形態のコーティング層形成用組成物は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体以外の高分子樹脂をさらに含むことができる。
【0159】
前記コーティング層形成用組成物は、コーティング層形成用組成物に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部以上含むことができる。
【0160】
具体的には、前記コーティング層形成用組成物は、コーティング層形成用組成物に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部以上、95重量部以上、99重量部以上、99.9重量部以上、100重量部以下、または90重量部以上100重量部以下、95重量部以上100重量部以下、99重量部以上100重量部以下、99.9重量部以上100重量部以下含むことができる。例えば、コーティング層形成用組成物は、高分子樹脂として前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体のみを含むことができる。
【0161】
前記コーティング層形成用組成物は、コーティング層形成用組成物に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部以上含むことによって、優れた耐光性および耐湿性を実現し、これによって苛酷条件でも染料の熱と光に対する酸化安定性に優れて染料の安定性に影響を及ぼす反応種がほとんど生成されず、優れた光吸収性能が実現できる。
【0162】
前記コーティング層形成用組成物は、コーティング層形成用組成物に含まれる全体高分子樹脂合計100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を90重量部未満で含む場合、染料の光吸収性能が低下して、最終製造される光学フィルムが耐湿性および耐光性に劣り、苛酷条件で劣る光吸収性能を有しうる。
【0163】
前記一実施形態において、前記コーティング層形成用組成物は、全コーティング層形成用組成物100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を10重量部以上30重量部以下含むことができる。
【0164】
具体的には、前記コーティング層形成用組成物は、全コーティング層形成用組成物100重量部に対して、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体を10重量部以上、12重量部以上、30重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、または10重量部以上30重量部以下、12重量部以上30重量部以下、10重量部以上20重量部以下、12重量部以上20重量部以下、10重量部以上15重量部以下、12重量部以上15重量部以下含むことができる。
【0165】
前記一実施形態において、前記コーティング層形成用組成物は、最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を含むことができる。
【0166】
前記コーティング層形成用組成物が最大吸収波長750nm以上1500nm以下の染料を含むことによって、750nm以上1500nm以下の波長領域の近赤外線に対する光吸収率に優れて、拡張現実(Augmented Reality、AR)などへの適用に適した光学フィルムが提供できる。
【0167】
前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料の種類は特に制限されず、前記機能を果たすことが知られた化合物の中から適切に選択されて使用可能である。使用可能な染料としては、例えば、セラミドニンのスルホニウム誘導体(sulfonium derivative)、ニューメチレンブルー(new methylene blue)、チオエリスロシントリエチルアンモニウム(thioerythrosine triethylammonium)、6-アセチルアミノ-2-メチルセラミドニン(6-acetylamino-2-methylceramidonin)、エオシン(eosin)、エリスロシン(erythrosine)、ローズベンガル(rose bengal)、チオニン(thionine)、ベーシックイエロー(basic yellow)、ピナシアノールクロリド(Pinacyanol chloride)、ローダミン6G(rhodamine 6G)、ガロシアニン(gallocyanine)、エチルバイオレット(ethyl violet)、ビクトリアブルーR(Victoria blue R)、セレスチンブルー(Celestine blue)、キナルジンレッド(Quinaldine Red)、クリスタルバイオレット(crystal violet)、ブリリアントグリーン(Brilliant Green)、アストラゾンオレンジG(Astrazon orange G)、ダロウレッド(darrow red)、ピロニンY(pyronin Y)、ベーシックレッド29(basic red 29)、ピリリウムI(pyrylium iodide)、サフラニンO(Safranin O)、シアニン、メチレンブルー、アジュールA(Azure A)、またはこれらの中から選択される2以上の組み合わせが挙げられる。
【0168】
具体的には、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料は、シアニン系染料を含むことができる。
【0169】
前記一実施形態において、前記コーティング層形成用組成物は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上3重量部以下含むことができる。
【0170】
具体的には、前記コーティング層形成用組成物は、前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して、前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上、0.5重量部以上、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.1重量部以上3重量部以下、0.1重量部以上2重量部以下、0.1重量部以上1重量部以下、0.5重量部以上3重量部以下、0.5重量部以上2重量部以下、0.5重量部以上1重量部以下含むことができる。
【0171】
前記コーティング層形成用組成物が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部以上3重量部以下含むことによって、外部環境から入ってくる750nm以上1500nm領域の光を吸収して前記光学フィルムを含む電子機器、例えば、AR/VR機器の視線追跡性能を高めることができる。
【0172】
前記コーティング層形成用組成物が前記ビニルシアン化合物-芳香族ビニル化合物共重合体合計100重量部に対して前記最大吸収波長が750nm以上1500nm以下の染料を0.1重量部未満で含む場合、光を十分に吸収できず視線追跡性能の低下を発生させ、3重量部超で含む場合、可視光線透過率の低下あるいは光学フィルムの色値が高くなって光特性が低下する問題が発生しうる。
【0173】
一方、前記コーティング層形成用組成物は、溶媒をさらに含むことができる。
【0174】
前記溶媒は、有機溶媒であってもよい。例えば、ケトン類、アルコール類、アセテート類およびエーテル類、またはこれらの2種以上の混合物が有機溶媒として使用できるが、これらに制限されるわけではない。
【0175】
このような有機溶媒の具体例としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトンまたはイソブチルケトンなどのケトン類;メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、またはt-ブタノールなどのアルコール類;エチルアセテート、i-プロピルアセテート、またはポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアセテート類;テトラヒドロフランまたはプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメンおよびテトラリン、またはこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0176】
前記有機溶媒は、前記コーティング層形成用組成物に含まれる各成分を混合する時期に添加されるか、各成分が有機溶媒に分散または混合された状態で添加されて、前記コーティング層形成用組成物に含まれる。
【0177】
例えば、前記コーティング層形成用組成物は、組成物に含まれる成分全体固形分の濃度が1~70重量%となるように溶媒を含むことができる。具体的には、前記溶媒は、組成物に含まれる成分全体固形分の濃度が2重量%以上、5重量%以上、10重量%以上、または20重量%以上かつ、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、または50重量%以下となるように溶媒を含むことができる。前記組成物中の溶媒の含有量が過度に少なければ、前記組成物の流れ性が低下して、最終製造されるフィルムに縞模様が生じるなどの不良が発生しうる。また、溶媒が過剰添加される場合には、固形分含有量が低くなって、コーティングおよび成膜が十分になされず光学フィルムの物性や表面特性が低下し、乾燥および硬化過程で不良が発生しうる。
【0178】
また、前記一つの例において、前記コーティング層形成用組成物は、その他の添加剤をさらに含むことができる。使用可能なその他の添加剤としては、例えば、消泡剤が挙げられる。
【0179】
一つの例において、前記消泡剤としては、シリコーン系反応性添加剤を使用することができ、Tego Rad 2500などの市販品を使用することができる。
【0180】
前記添加剤、例えば、消泡剤や可塑剤の含有量は、光学フィルムの機能を妨げない水準で適切に調節可能である。
【0181】
前記コーティング層形成用組成物は、前記ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体100重量部を基準として、前記その他の添加剤を5~50重量部の範囲で含むことができる。具体的には、前記その他の添加剤の含有量の下限は、例えば、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上、または45重量部以上であってもよく、その上限は、例えば、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、または10重量部以下であってもよい。前記範囲を満足する場合、コーティング層形成用組成物で要求される特性を妨げることなく添加剤の使用による効果を適切に確保することができる。
【0182】
一方、発明の他の実施形態によれば、前記光学フィルムを含む、電子機器が提供できる。
【0183】
前記光学フィルムに関する説明は、上述したすべての内容を含む。
【0184】
前記電子機器は、虹彩イメージを取得するカメラ装置部と、赤外線領域の光源と、前記赤外線領域の光源の波長帯域と他の外部光を遮断させる光学フィルムとを含むことができる。
【0185】
前記光学フィルムは、前記赤外線領域の光源の波長帯域と他の外部光を遮断させ、赤外線領域で投射された近赤外線帯域の光のみ主に透過させることができる。
【0186】
これによって、前記光学フィルムによれば、外部光源の特定帯域の近赤外線領域を遮断させることによって、外部光源の影響を最小化することができる。
【0187】
前記電子機器の用途は特に制限されない。例えば、高温/高湿条件に露出する可能性が高い用途、具体的には、モバイル機器などのスマート機器、ウェアラブルディスプレイの部品、または自動車用部品(例:head up display)などに使用できる。より具体的には、前記電子機器は、拡張現実(Augmented Reality、AR)への適用に適することができる。
【発明の効果】
【0188】
本発明によれば、750nm以上1500nm以下の波長の近赤外線に対する光吸収性能に優れ、耐光性および耐湿性に優れて、苛酷条件に露出しても優れた光吸収性能を実現可能な光学フィルム、コーティング層形成用組成物、および電子機器が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0189】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0190】
<実施例1~3および比較例1~4>
実施例1
重量平均分子量120,000g/molのビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体12.5g(製造会社:LG化学、スチレン-アクリロニトリル(Styrene-Acrylonitrile)、ビニルシアン化合物由来の繰り返し単位の含有量:17重量%)、染料0.12g(最大吸収波長865nmのNIR吸収シアニン系染料)、および溶媒のメチルエチルケトン(MEK)50gとトルエン37.5gを添加し、光を遮断した状態で、ペースト(Paste)ミキサで約30分間撹拌してコーティング液を製造した。
【0191】
前記コーティング液を、メイヤーバー(meyer bar)を用いて、60μmの厚さのTAC基材にコーティングし、90℃で2分以内に乾燥させて、厚さ5μmのコーティング層を含む最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0192】
実施例2
最大吸収波長865nmのNIR吸収染料(シアニン系染料)の代わりに、最大吸収波長930nmのNIR吸収染料(シアニン系染料)0.073gを用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法でコーティング液および最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0193】
実施例3
重量平均分子量120,000g/molのビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の代わりに、重量平均分子量110,000g/molのビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体12.5g(製造会社:LG化学)を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法でコーティング液および最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0194】
比較例1
重量平均分子量120,000g/molのビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の代わりに、ポリメチルメタクリレート12.5g(PMMA、Poly(Methyl Methacrylate)、重量平均分子量100,000g/mol、製造会社:LG化学)を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法でコーティング液および最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0195】
比較例2
ペンタエリスリトールトリアクリレート25g(製造会社:SK Entis)、6官能アクリレート25g(製品名:EB1290、製造会社:SK Entis)を入れて、染料0.5g(最大吸収波長865nmのNIR吸収染料)、光重合開始剤2.5g(Irgacure184)および溶媒のメチルエチルケトン(MEK)50gを添加し、光を遮断した状態で、ペースト(Paste)ミキサで約30分間撹拌してコーティング液を製造した。
【0196】
前記コーティング液を、メイヤーバー(meyer bar)を用いて、60μmの厚さのTAC基材にコーティングし、60℃で2分以内に乾燥した後、水銀ランプを用いて200mJ/cmの光量で硬化させて、厚さ5μmのコーティング層を含む最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0197】
比較例3
重量平均分子量120,000g/molのビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の代わりに、ポリスチレン12.5g(PS、重量平均分子量250,000g/mol、製造会社:LG化学)を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法でコーティング液および最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0198】
比較例4
最大吸収波長865nmのNIR吸収染料の代わりに、最大吸収波長930nmのNIR吸収染料(シアニン系染料)0.44gを用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法でコーティング液および最終厚さ65μmの光学フィルムを製造した。
【0199】
<実験例>
1.厚さ
実施例および比較例で製造された光学フィルムに対して、デジタルマイクロメーター(TESA社、製品名:μ-HITE)を用いて、全体光学フィルムの厚さを測定した。
【0200】
2.透過率
実施例および比較例で製造された光学フィルムに対して、shimadzu社のsolidspec-3700を用いて、400nm~500nmの波長に対する平均透過率および800nm~1000nmの波長に対する平均透過率を測定した。
【0201】
また、750nm以上1500nm以下の特定波長領域で最大光線透過率を測定した。
【0202】
3.耐光性
実施例および比較例で製造された光学フィルムに対して、QUV装置(Q-Lab社)に15時間以上30時間以下露出させた後の平均透過率とは、前記実施形態の光学フィルムに対して、QUV装置(Q-Lab社)を用いて、24時間340nmで最大値0.68W/cmの光量条件で評価を進行させた後、上述した透過率測定方法によって800nm~1000nmの波長に対する平均透過率および下記の数式によって耐光性試験前後の平均透過率の変化率を測定した。
【0203】
[数式1]
平均透過率の変化率=QUV装置(Q-Lab社)で340nmの波長の紫外線に24時間露出させた後、800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率/初期800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率×100。
【0204】
4.耐湿熱信頼性
実施例および比較例で製造された光学フィルムに対して、恒温恒湿チャンバ(Jeiotech社)で72時間85℃、85%条件に露出させた後、上述した透過率測定方法によって800nm~1000nmの波長に対する平均透過率および下記の数式によって耐湿性試験前後の平均透過率の変化率を測定した。
【0205】
[数式2]
平均透過率の変化率=(85℃の温度および85%の湿度条件に72時間露出させた後、800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率-初期800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率)/初期800nm以上1000nm以下の波長に対する平均透過率×100。
【0206】
【表1】
【0207】
<実施例4~6および比較例5~8>
実施例4
ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体12.5g(重量平均分子量120,000g/mol、製造会社:LG化学)、染料0.12g(最大吸収波長865nmのNIR吸収染料)、および溶媒のメチルエチルケトン(MEK)50g、トルエン37.5gを添加し、光を遮断した状態で、ペースト(Paste)ミキサで約30分間撹拌してコーティング液を製造した。
【0208】
前記コーティング液を、メイヤーバー(meyer bar)を用いて、インジウム-スズ複合酸化物(ITO)層が形成されたPET基材の他の一面にコーティングし、90℃で2分以内に乾燥させて、厚さ5μmのコーティング層を形成した。
【0209】
前記コーティング層上にフィルムタイプOCA25μmのラミネーション接着層を形成する。
【0210】
前記接着層とインジウム-スズ複合酸化物(ITO)層[厚さ:150nm]が形成されたPET基材のPET基材が接するように、前記接着層上にインジウム-スズ複合酸化物(ITO)層が形成されたPET基材を接着させて、総厚さ131μmの光学フィルムを製造した。
【0211】
実施例5
接着層上に100μmの厚さのガラス(Glass)(製造会社:Schott社)を接着させたことを除き、前記実施例1と同様の方法で総厚さ180μmの光学フィルムを製造した。
【0212】
実施例6
最大吸収波長865nmのNIR吸収染料の代わりに、最大吸収波長930nmのNIR吸収染料0.073gを用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法で総厚さ130μmの光学フィルムを製造した。
【0213】
比較例5
ビニルシアン化合物-芳香族化合物共重合体の代わりに、ポリメチルメタクリレート12.5g(PMMA、Poly(Methyl Methacrylate)、重量平均分子量100,000g/mol、製造会社:LG化学)を用いたことを除き、前記実施例1と同様の方法でコーティング液および最終厚さ131μmの光学フィルムを製造した。
【0214】
比較例6
ペンタエリスリトールトリアクリレート25g(製造会社:SK Entis)、6官能アクリレート25g(製品名:EB1290、製造会社:SK Entis)を入れて、染料0.5g(最大吸収波長865nmのNIR吸収染料)、光重合開始剤2.5g(Irgacure184)および溶媒のメチルエチルケトン(MEK)50gを添加し、光を遮断した状態で、ペースト(Paste)ミキサで約30分間撹拌してコーティング液を製造した。
【0215】
前記コーティング液を、メイヤーバー(meyer bar)を用いて、60μmの厚さのTAC基材にコーティングし、60℃で2分以内に乾燥した後、水銀ランプを用いて200mJ/cmの光量で硬化させて、厚さ5μmのコーティング層を含む最終厚さ131μmの光学フィルムを製造した。
【0216】
<実験例>
1.厚さ
前記実施例4~6および比較例5~6で製造された光学フィルムに対して、デジタルマイクロメーターを用いて、全体光学フィルムの厚さを測定した。
【0217】
2.透過率
前記実施例4~6および比較例5~6で製造された光学フィルムに対して、shimadzu社のsolidspec-3700を用いて、400nm~500nmの波長に対する平均透過率および800nm~1000nmの波長に対する平均透過率を測定した。
【0218】
また、750nm以上1500nm以下の特定波長領域で最大吸収波長を測定した。
【0219】
3.耐光性
前記実施例4~6および比較例5~6で製造された光学フィルムに対して、Q-SUN装置(Q LAB社)を用いて、72時間1SUN条件で評価を進行させた後、上述した透過率測定方法によって800nm~1000nmの波長に対する平均透過率および下記の数式によって耐光性試験前後の平均透過率の変化率を測定した。
【0220】
[数式1]
平均透過率の変化率=(Q-SUN装置(Q LAB社)に1SUN条件で72時間以下露出させた後の平均透過率-初期平均透過率)/初期平均透過率×100。
【0221】
【表2】
【0222】
前記表1および2に示されているように、実施例の光学フィルムは、750nm以上1500nm以下の波長の近赤外線に対する光吸収性能に優れ、耐光性および耐湿熱信頼性に優れて、苛酷条件に露出しても優れた光吸収性能を実現するという点を確認することができた。
【0223】
一方、比較例の光学フィルムは、耐光性および/または耐湿性が不良であることを確認した。
【国際調査報告】