(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】薬物送達デバイス、プランジャロッド、プランジャロッドのセット、薬物送達デバイスを組み立てる方法、および薬物送達デバイスのセット
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20240517BHJP
A61M 5/20 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61M5/168 514Z
A61M5/20 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574353
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022064805
(87)【国際公開番号】W WO2022253852
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ・ダスバッハ
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー・デンヤー
(72)【発明者】
【氏名】ロビン・アインヴェヒター
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーク・ケンプ
(72)【発明者】
【氏名】トム・レヴァー
(72)【発明者】
【氏名】ロビー・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】アレックス・ズーエフ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD13
4C066EE14
4C066FF05
4C066HH13
4C066QQ48
4C066QQ73
4C066QQ78
(57)【要約】
本発明は、薬剤容器(8)を受けるように構成されたハウジング(100)を含み、ストッパ(82)が薬剤容器を近位に封止する薬物送達デバイス(1000)に関する。さらに、薬物送達デバイスは、ハウジングおよび/または薬剤容器に対して軸方向に可動に配置されたプランジャロッド(1)と、プランジャロッドに動作可能に連結されたフィードバック機構とを含む。薬物送達デバイスは、プランジャロッドが開始位置にある初期状態を有する。薬物送達デバイスは、初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、プランジャロッドがストッパから軸方向に隔置されるように構成される。さらに、薬物送達デバイスは、プランジャロッドがその開始位置から遠位方向にフィードバック位置へ軸方向に可動になるように構成される。遠位方向におけるプランジャロッドの動きにより、プランジャロッドがストッパと相互作用してストッパを遠位方向に押すことが可能になり、したがって薬剤容器内に収納された薬剤が送達される。フィードバック機構は、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したときにトリガされる。フィードバック機構のトリガは、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出して、薬剤送達の終了を示す。本発明はまた、プランジャロッド、プランジャロッドのセット、薬物送達デバイスのセット、および薬物送達デバイスを組み立てる方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達デバイス(1000)であって、
薬剤容器(8)を受けるように構成され、ストッパ(82)が薬剤容器(8)を近位に封止する、ハウジング(100)と、
該ハウジング(100)および/または該薬剤容器(8)に対して軸方向に可動に配置されたプランジャロッド(1)と、
該プランジャロッド(1)に動作可能に連結されたフィードバック機構とを含み、ここで、
薬物送達デバイス(1000)は、プランジャロッド(1)が開始位置にある初期状態を有し、
薬物送達デバイス(1000)は、
初期状態において、薬剤容器(8)がハウジング(100)内に受け入れられたとき、プランジャロッド(1)がストッパ(82)から軸方向に隔置され、
プランジャロッド(1)がその開始位置から遠位方向(D)にフィードバック位置へ軸方向に可動であり、
遠位方向(D)におけるプランジャロッド(1)の動きにより、プランジャロッド(1)がストッパ(82)と相互作用して、ストッパ(82)を遠位方向(D)に押すことが可能になり、したがって薬剤容器(8)内に収納された薬剤が送達され、
プランジャロッド(1)がフィードバック位置に到達したとき、フィードバック機構がトリガされ、
フィードバック機構のトリガが、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出して、薬剤送達の終了を示すように構成される、前記薬物送達デバイス。
【請求項2】
薬物送達デバイス(1000)は、薬剤容器(8)がハウジング(100)内に受け入れられたとき、
プランジャロッド(1)が、ストッパ(82)と相互作用する前にその開始位置から遠位方向(D)に移動距離だけ可動であり、移動距離だけ動かされた後、フィードバック位置に到達するまで、プランジャロッド(1)がストッパ(82)と相互作用し、
初期状態において、プランジャロッド(1)がストッパ(82)と相互作用したときの薬剤容器(8)の損傷の確率が低減されるようにプランジャロッド(1)とストッパ(82)との間の初期距離が選択されるように構成される、請求項1に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項3】
初期状態において、プランジャロッド(1)とストッパ(82)との間の初期距離は、製造公差および/もしくは組立て公差ならびに/または薬物送達デバイス(1000)の輸送中に発生する振動による距離の変動が考慮されるように選択される、
請求項1または2に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項4】
フィードバック機構は、第1の状態および第2の状態を有するインジケータ(21)を含み、
薬物送達デバイス(1000)は、フィードバック機構がトリガされたとき、インジケータ(21)が第1の状態から第2の状態へ切り換わり、それにより可聴および/または触覚のフィードバックを生み出すように構成される、
請求項1~3のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項5】
インジケータ(21)は、弾性要素、特に板ばねである、
請求項4に記載の薬物送達デバイス。
【請求項6】
フィードバック機構は、プランジャロッド(1)に軸方向に固定されたトリガ機能(13)を含み、
フィードバック機構は、ハウジング(100)に軸方向に固定された動作機能(23)を含み、
トリガ機能(13)および動作機能(23)のうちの少なくとも1つは変位可能であり、
薬物送達デバイス(1000)は、プランジャロッド(1)がその開始位置からフィードバック位置へ動かされたとき、トリガ機能(13)および動作機能(23)が、互いに軸方向に通過し、または少なくとも互いに軸方向に重なり、それにより変位可能機能が変位してフィードバック機構をトリガすることが可能になるように構成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項7】
動作機能(23)は突起であり、
トリガ機能(13)は、プランジャロッド(1)内の凹部または該プランジャロッド(1)の近位端であり、
プランジャロッド(1)がフィードバック位置に到達したとき、突起は凹部(13)内へ変位し、またはプランジャロッド(1)の近位端の近位後方にある空間内へ変位する、
請求項6に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項8】
フィードバック機構は、プランジャロッド(1)がフィードバック位置に到達するまでインジケータ(21)を第1の状態で保持するために、インジケータ(21)に対する機械的な支持を提供する支持要素(22)を含み、
インジケータ(21)を第1の状態で保持する機械的な支持は、プランジャロッド(1)がフィードバック位置に到達したときに解放され、したがってインジケータ(21)は、第2の状態へ切り換わることが可能にされる、
請求項4または請求項4に従属する請求項5~7のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項9】
プランジャロッド(1)は、ハウジング(100)に対して回転可能に配置され、
初期状態において、プランジャロッド(1)は、遠位方向(D)におけるプランジャロッド(1)の軸方向運動を防止する軸方向ロックインターフェースによってハウジング(100)に連結され、
薬物送達デバイス(1000)は、ハウジング(100)に対するプランジャロッド(1)の回転が軸方向ロックインターフェースを解放し、遠位方向(D)におけるプランジャロッド(1)の動きを有効にするように構成される、
請求項1~8のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項10】
遠位方向(D)におけるプランジャロッド(1)の軸方向運動を誘起するためのエネルギーを提供するように構成されたエネルギー部材(3)をさらに含み、
薬物送達デバイス(1000)は、初期状態から解放状態へ切り換えられるように構成され、解放状態において、プランジャロッド(1)は、エネルギー部材(3)によって提供されるエネルギーによって、遠位方向(D)に動く、
請求項1~9のいずれか1項に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項11】
ハウジング(100)に対して軸方向に可動に配置された解放部材(5)をさらに含み、
薬物送達デバイス(1000)が初期状態にあるとき、軸方向における解放部材(5)の動きは、プランジャロッド(1)の回転を有効にして、軸方向ロックインターフェースを解放する、
請求項9または請求項9に従属する請求項10に記載の薬物送達デバイス(1000)。
【請求項12】
初期状態において、解放部材(5)は伸長位置にあり、薬剤容器(8)の薬物送達要素(80)を覆い、
軸方向における後退位置への解放部材(5)の動きは、プランジャロッド(1)の回転を有効にし、
後退位置は、薬物送達要素(80)を露出させる位置である、
請求項11に記載の薬物送達デバイス。
【請求項13】
薬物送達デバイスのためのプランジャロッドのセットであって、
該プランジャロッドのセットの各プランジャロッド(1)は、該プランジャロッド(1)が薬物送達デバイス内に組み立てられ、かつトリガ機能(13)がフィードバック機構の動作機能(23)を軸方向に通過したとき、または少なくともフィードバック機構の動作機能(23)に軸方向に重なったとき、薬物送達デバイスの可聴および/または触覚のフィードバック機構のトリガを有効にするように構成されたトリガ機能(13)を含み、
各プランジャロッド(1)は、遠位端を有し、
プランジャロッドのセットのうちの少なくともいくつかのプランジャロッド(1)は、異なる長さを有し、
遠位端とトリガ機能(13)との間の距離は、すべてのプランジャロッド(1)に対して同じまたは実質的に同じである、前記プランジャロッドのセット。
【請求項14】
薬物送達デバイス(1000)を組み立てる方法であって、
薬剤容器(8)内の充填体積を占有する薬剤を含む薬剤容器(8)を提供する工程と、
充填体積に応じて、請求項13に記載のプランジャロッドのセットからプランジャロッド(1)を選択する工程と、
薬剤容器(8)および選択されたプランジャロッド(1)を使用することによって、薬物送達デバイス(1000)を組み立てる工程とを含む前記方法。
【請求項15】
薬物送達デバイス(1000)のセットであって、
該薬物送達デバイスのセットの各薬物送達デバイス(1000)は、請求項13に記載のプランジャロッドのセットのプランジャロッド(1)を含み、
各薬物送達デバイス(1000)は、動作機能(23)を有する可聴および/または触覚のフィードバック機構を含み、
各薬物送達デバイス(1000)は、薬剤容器を受けるように構成された容器保持領域(6)を含み、
薬物送達デバイスのセットの薬物送達デバイス(1000)のうちの少なくともいくつかは、異なる長さを有するプランジャロッド(1)を含み、
容器保持領域(6)に対する動作機能(23)の位置は、各薬物送達デバイス(1000)で同じまたは実質的に同じである、前記薬物送達デバイスのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
薬物送達デバイスが提供される。さらに、プランジャロッド、プランジャロッドのセット、薬物送達デバイスを組み立てる方法、および薬物送達デバイスのセットが提供される。
【背景技術】
【0002】
注射を投与することは、使用者および医療従事者にとって精神的にも身体的にも多くのリスクおよび難題をもたらすプロセスである。薬物送達デバイスは、自己注射を患者にとってより容易なものにすることを目的とすることがある。従来の薬物送達デバイスは、ばねおよびトリガボタンによって注射を投与するための力を提供することがあり、または注射を起動するために別の機構が使用されこともある。薬物送達デバイスは、単回使用のデバイスであることも再利用可能なデバイスであることもある。
【0003】
改善された薬物送達デバイスが引き続き必要とされている。さらに、そのような薬物送達デバイスを組み立てる方法、改善されたプランジャロッド、およびそのような薬物送達デバイスのためのプランジャロッドのセット、ならびにそのような薬物送達デバイスのセットが引き続き必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実現されるべき1つの目的は、改善された薬物送達デバイスを提供することである。実現されるべきさらなる目的は、そのような薬物送達デバイスのためのプランジャロッド、薬物送達デバイスのための改善されたプランジャロッドのセット、改善された薬物送達デバイスのセット、および薬物送達デバイスを組み立てる改善された方法を提供することである。これらの目的は、特に請求項1、13、14、および15の主題によって実現される。有利な実施形態およびさらなる発展形態は、従属請求項に準拠し、以下の説明および図でも提示される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1に、薬物送達デバイスが指定される。薬物送達デバイスは、単回使用のデバイスおよび/または使い捨てのデバイスであってよい。
【0006】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ストッパによって薬剤容器を受けかつ/または保持するように構成されたハウジングを含む。ストッパは、薬剤容器を近位に、すなわち近位方向に封止することができる。薬物送達デバイスは、薬剤容器がハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定されるように、薬剤容器をハウジング内に受けるように構成することができる。薬物送達デバイスは、ハウジングとは別個の構成要素であり、薬剤容器を受けかつ/または保持するように構成された薬剤容器ホルダを含むことができる。
【0007】
ハウジングは、プラスチックを含むことができ、もしくはプラスチックからなることができ、かつ/または一体型に形成することができる。ハウジングは、中空とすることができ、かつ/または細長くすることができ、かつ/または中空円筒形とすることができる。ハウジングは、スリーブとすることができる。薬物送達デバイスの長手方向軸は、ハウジングの中心を通って延びることができる。ハウジングは、一体型に形成することができ、すなわち単体の構造とすることができ、または一体形成することができる。薬剤容器ホルダは、ハウジング内に受け入れることができる。薬剤容器ホルダは、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定することができる。薬剤容器ホルダは、一体型に形成することができる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ハウジングおよび/または薬剤容器に対して軸方向に可動に配置されたプランジャロッドを含む。プランジャロッドは、1つの軸方向のみまたは2つの反対の軸方向において、軸方向に可動とすることができる。プランジャロッドは、中空であっても中実であってもよい。プランジャロッドは、円筒形、たとえば中空円筒形とすることができる。プランジャロッドが中空である場合、さらなる要素または部材、たとえばプランジャロッドを駆動するためのエネルギー部材を、プランジャロッド内に受け入れることができる。プランジャロッドは、プラスチックを含むことができ、またはプラスチックからなることができる。たとえば、プランジャロッドは、一体型に形成される。
【0009】
本章および以下において、別段の記載がない場合、部材または要素または機能の動きは、ハウジングに対する動きとして理解されたい。
【0010】
たとえば、プランジャロッドは、ハウジング内に受け入れられる。プランジャロッドは、ハウジングによって円周方向に取り囲むことができ、たとえば円周方向に完全に取り囲むことができる。ハウジングは、プランジャロッドを越えて遠位方向および/または近位方向に突出することができる。プランジャロッドは、薬物送達デバイスの長手方向軸に平行な主延長方向を有することができる。長手方向軸は、プランジャロッドを通って、たとえばその中心を通って延びることができる。
【0011】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、プランジャロッドに動作可能に連結されたフィードバック機構を含む。フィードバック機構は、特に、薬剤送達プロセスの終了を示すように構成された可聴および/または触覚のフィードバック機構とすることができる。フィードバック機構は、プランジャロッドの動き、たとえば軸方向運動がフィードバック機構をトリガするように、プランジャロッドに動作可能に連結することができる。たとえば、プランジャロッドは、それぞれフィードバック機構またはその要素/部材/機能に直接接触することができる。
【0012】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、プランジャロッドが開始位置にある初期状態を有する。開始位置は、プランジャロッドの最も近位の位置とすることができる。初期状態は、薬物送達デバイスが届けられたときの状態、すなわち薬物送達デバイスの使用者が薬物送達デバイスを受け取ったときの状態とすることができる。言い換えれば、初期状態において、薬物送達デバイスは起動されていない。
【0013】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられ、かつ/またはハウジングによって保持されたとき、プランジャロッドがストッパから軸方向に隔置されるように構成される。したがって、初期状態において、プランジャロッドとストッパとの間には隙間が存在する。この隙間は、製造公差、組立て公差、および/または輸送中ストッパの動きを補償することができる。言い換えれば、すべての公差条件において、プランジャロッドとストッパとの間には隙間が存在する。特に、プランジャロッドはこのとき、ストッパに対して近位にずらして配置することができる。たとえば、初期状態において、プランジャロッドの遠位端がストッパの近位端から隔置される。初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、ストッパもまたそれぞれの開始位置につくことができ、これはストッパの最も近位の位置とすることができる。初期状態において、プランジャロッドの遠位端は、薬剤容器内に配置しても薬剤容器の外側に配置してもよい。
【0014】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、特に初期状態から開始するとき、プランジャロッドがその開始位置から遠位方向にフィードバック位置へ軸方向に可動になるように構成される。フィードバック位置は、プランジャロッドの終了位置、または終了位置と開始位置との間の位置とすることができる。フィードバック位置および/または終了位置は、開始位置に対して遠位に配置することができる。終了位置は、薬物送達デバイスが使用されるとき、プランジャロッドの最も遠位の位置とすることができる。フィードバック位置が終了位置と開始位置との間にある場合、フィードバック位置は、好ましくは、開始位置より終了位置の近くに配置される。
【0015】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、遠位方向におけるプランジャロッドの動きにより、プランジャロッドがストッパと相互作用することが可能になるように構成される。したがって相互作用は、プランジャロッドが遠位方向に動かされるとき、プランジャロッドがストッパをたとえばその開始位置から遠位方向に押すことであってよい。好ましくは、遠位方向におけるストッパの動きの結果、薬剤容器内に収納された薬剤の送達が生じる。
【0016】
言い換えれば、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、プランジャロッドの遠位の動きが、プランジャロッドとストッパとの間の相互作用を招くことができ、したがってその動きが、または遠位方向におけるプランジャロッドのさらなる動きが、ストッパを遠位方向に押し、薬剤容器内に収納された薬物を送達する。
【0017】
たとえば、プランジャロッドとストッパとの間の相互作用は、プランジャロッドとストッパとの間の衝突または当接とすることができる。たとえば、プランジャロッドがストッパと相互作用するとき、プランジャロッドの遠位端は、ストッパの近位端に直接接触する。薬物送達デバイスは、プランジャロッドがフィードバック位置に到達する前にこの相互作用が生じるように構成することができる。
【0018】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、フィードバック機構がそれぞれトリガまたは起動されるように構成される。フィードバック機構は、プランジャロッドとフィードバック機構との間の動作可能な連結によってトリガすることができる。好ましくは、フィードバック機構は、プランジャロッドがフィードバック位置にあるときのみトリガされ、またはトリガすることができる。フィードバック機構のトリガは、プランジャロッドがフィードバック位置に到達することによって自動で行われる。
【0019】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィードバック機構のトリガは、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出して、薬剤送達の終了を示す。可聴および/または触覚のフィードバックは、特に、薬物送達デバイスの使用者にとって容易に気付けるものとすることができる。フィードバックは、薬剤送達の終了の明白な標示を提供することができる。たとえば、可聴のフィードバックは、少なくとも70dBまたは少なくとも80dBまたは少なくとも90dBである。
【0020】
少なくとも1つの実施形態では、薬物送達デバイスは、薬剤容器を受けるように構成されたハウジングを含み、ストッパが薬剤容器を近位に封止する。さらに、薬物送達デバイスは、ハウジングおよび/または薬剤容器に対して軸方向に可動に配置されたプランジャロッドと、プランジャロッドに動作可能に連結されたフィードバック機構とを含む。薬物送達デバイスは、プランジャロッドが開始位置にある初期状態を有する。薬物送達デバイスは、初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、プランジャロッドがストッパから軸方向に隔置されるように構成される。さらに、薬物送達デバイスは、プランジャロッドがその開始位置から遠位方向にフィードバック位置へ軸方向に可動になるように構成される。遠位方向におけるプランジャロッドの動きにより、プランジャロッドがストッパと相互作用してストッパを遠位方向に押すことが可能になり、したがって薬剤容器内に収納された薬剤が送達される。フィードバック機構は、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したときにトリガされる。フィードバック機構のトリガは、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出して、薬剤送達の終了を示す。
【0021】
本発明は特に、初期状態においてプランジャロッドがストッパから意図的に軸方向に隔置されるようにデバイスが設計されるとき、薬物の充填体積の変動および/またはプランジャロッドの長さの変動によるたとえばストッパの位置の製造公差が、薬物送達デバイスの有用性に負の影響を及ぼさないという認識に基づいている。たとえば周囲圧力の変化によるカートリッジ内の薬物体積および/または気泡の体積の変化による輸送中のストッパの変位もまた、そのような間隔によって吸収することができる。実際に、薬物送達の意図された使用前にプランジャロッドおよびストッパが接触すると、収納中の漏れまたは意図された使用前の薬物の放出を招く可能性がある。
【0022】
本明細書に指定する薬物送達デバイスは、細長いものとすることができ、かつ/または長手方向軸、すなわち主延長軸を含むことができる。軸方向は、長手方向軸に平行な方向とすることができる。例として、薬物送達デバイスは、円筒形とすることができる。
【0023】
さらに、薬物送達デバイスは、人体の皮膚領域の方を向くように、または人体の皮膚領域に押し付けられるように設けることができる端部、たとえば長手方向端を含むことができる。この端部を、本明細書では遠位端と呼ぶ。薬物または薬剤は、この遠位端を介して供給することができる。反対側の端部を、本明細書では近位端と呼ぶ。近位端は、使用中、皮膚領域から離れている。近位端から遠位端を指す軸方向を、本明細書では遠位方向と呼ぶ。遠位端から近位端を指す軸方向を、本明細書では近位方向と呼ぶ。本明細書では、薬物送達デバイスの部材または要素または機能の遠位端は、部材/要素/機能のうち最も遠位に配置された端部であると理解される。それに応じて、本明細書では、部材または要素または機能の近位端は、要素/部材/機能のうち最も近位に配置された端部であると理解される。
【0024】
言い換えれば、本明細書では、「遠位」は、薬物送達デバイスもしくはその構成要素の投薬端の方を向きもしくは指すように配置されもしくは配置予定であり、かつ/または近位端から離れる方を指し、近位端から離れる方を向くように配置予定であり、もしくは近位端から離れる方を向く方向、端部、または表面を指定するために使用される。他方では、本明細書では、「近位」は、薬物送達デバイスまたはその構成要素の投薬端および/または遠位端から離れる方を向きまたは指すように配置されまたは配置予定である方向、端部、または表面を指定するために使用される。遠位端は、投薬端に最も近くかつ/または近位端から最も遠い端部とすることができ、近位端は、投薬端から最も遠い端部とすることができる。近位面は、遠位端から離れる方および/または近位端の方を向くことができる。遠位面は、遠位端の方および/または近位端から離れる方を向くことができる。投薬端は、たとえば針の端部とすることができ、そこでニードルユニットがデバイスに取り付けられ、または取り付けられる予定である。
【0025】
長手方向軸に直交しかつ/または長手方向軸と交差する方向を、本明細書では径方向と呼ぶ。径方向内方は、長手方向軸の方を指す径方向である。径方向外方は、長手方向軸から離れる方を指す径方向である。
【0026】
「角度方向」、「方位角方向」、または「回転方向」という用語は、本明細書では同義語として使用される。そのような方向は、長手方向軸に直交しかつ径方向に直交する方向である。
【0027】
要素または部材または機能が別の要素または部材または機能に対して回転不能、軸方向、または径方向に固定されるということは、2つの要素/部材/機能間の回転方向または軸方向または径方向の相対運動が可能でなく、または防止されることを意味する。
【0028】
「突起」および「ボス」という用語は、本明細書では同義語として使用される。「凹部」という用語は、特に、くぼみまたは切抜きまたは開口部または孔を表すことができる。
【0029】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、プランジャロッドがストッパと相互作用する前にその開始位置から遠位方向に移動距離だけ可動になるように構成される。薬物送達デバイスは、少なくとも初期状態から開始したとき、このように構成することができる。
【0030】
たとえば、プランジャロッドは、相互作用位置に到達するまで、その開始位置から遠位方向に移動距離だけ可動とすることができる。たとえば、開始位置から相互作用位置へのプランジャロッドの動きの間、ストッパは遠位方向に動かされない。相互作用位置に到達したときのみ、プランジャロッドとストッパとの間の相互作用が開始することができる。そこから、遠位方向におけるプランジャロッドのさらなる動きが、ストッパを遠位方向に押すことができる。相互作用位置に到達したとき、プランジャロッドは、ストッパに当たることができ、ストッパに当接することができる。特に、相互作用位置は、軸方向にフィードバック位置と開始位置との間に、たとえばフィードバック位置より開始位置の近くに配置される。
【0031】
少なくとも1つの実施形態によれば、初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられかつ/または保持されるとき、プランジャロッドとストッパとの間の空間がガスで充填される。しかし好ましくは、この空間は封止されるのではなく、大気に放出される。
【0032】
少なくとも1つの実施形態によれば、移動距離だけ動かされた後、フィードバック位置に到達する前に、プランジャロッドはストッパと相互作用し、特にストッパを遠位方向に押す。
【0033】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、プランジャロッドがストッパと相互作用したときの薬剤容器の損傷の確率が低減されるようにプランジャロッドとストッパとの間の初期距離が選択されるように構成される。たとえば、損傷が防止される。初期距離は、移動距離に等しいものとすることができる。
【0034】
プランジャロッドがその開始位置から遠位方向に動かされたとき、プランジャロッドは、特定の力でストッパに当たることができる。衝撃は薬剤容器へ伝達される。薬剤容器がガラスを含むことができ、たとえばガラスから形成されたカートリッジを含むことができるとき、衝撃はガラスの破損を招く可能性がある。しかし本発明では、プランジャロッドとストッパとの間の初期距離は、好ましくは、薬剤容器の損傷、たとえば破損のリスクが低減されるように、たとえば小さく選択される。しかし、初期距離は、上述したように、製造および輸送公差の補償を可能にするように十分に大きく選択される。
【0035】
たとえば、初期状態におけるプランジャロッドとストッパとの間の初期距離は、プランジャロッドがストッパと相互作用したときの薬剤容器の損傷が防止されるように選択される。
【0036】
少なくとも1つの実施形態によれば、初期状態において、プランジャロッドとストッパとの間の初期距離は、製造公差および/もしくは組立て公差ならびに/または薬物送達デバイスの輸送中に発生する振動による距離の変動が考慮されるように選択される。これは、ストッパとプランジャロッドとの間の空間が、そのような変動を吸収するように事前定義されることを意味する。たとえば、ストッパおよびプランジャロッドの初期距離は、これらの変動の1つまたはそれ以上またはすべてが発生および/または集中した場合でも、プランジャロッドとストッパとの間の最小距離がなお維持され、すなわちプランジャロッドとストッパとの間の直接接触が防止されるように選択される。たとえば、プランジャロッドとストッパとの間の接触は、薬物送達デバイスを起動したとき、初期状態から解放状態へ切り換わるときにのみ見られる。
【0037】
プランジャロッドとストッパとの間の距離は、特定の変動を受けることがある。これらの変動の1つの理由は、プランジャロッドの長さまたは薬剤容器の充填体積のような、薬物送達デバイス、特にその構成要素の製造公差である可能性がある。充填体積は、初期状態におけるストッパの位置に影響する。薬物送達デバイスの組立て中にも、たとえば薬物送達デバイスの駆動ばねの圧縮が変動することによって、変動が発生することがある。さらに、デバイスの輸送中は、たとえば周囲圧力が変動することによって誘起されるカートリッジ内の薬物体積または気泡の体積の変化によって、ストッパの位置が変化することがある。
【0038】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィードバック機構は、第1の状態および第2の状態を有するインジケータを含む。第1の状態は、インジケータの付勢状態とすることができ、第2の状態は、インジケータの弛緩状態とすることができる。
【0039】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、フィードバック機構がトリガまたは起動されたとき、インジケータが第1の状態から第2の状態へ切り換わるように構成される。この切換えにより、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出すことができる。たとえば、第1の状態において、インジケータはエネルギーを蓄積しており、このエネルギーは、第2の状態へ切り換わるときに可聴および/または触覚のフィードバックの形で解放される。たとえば、第1の状態において、インジケータには張力がかけられており、張力エネルギーを蓄積する。第1の状態において、インジケータは、第2の状態に対して変形させることができる。
【0040】
インジケータが第1の状態から第2の状態へ切り換わるとき、インジケータは、薬物送達デバイスのさらなる機能または要素または部材と相互作用し、たとえば薬物送達デバイスのさらなる機能または要素または部材に当たり、それによって可聴および/または触覚のフィードバックを生み出すことも可能である。
【0041】
少なくとも1つの実施形態によれば、初期状態において、インジケータは第1の状態にある。別法として、インジケータは、プランジャロッドがその開始位置から遠位方向に動かされたとき、たとえば第2の状態から第1の状態にすることができ、次いでプランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、再び第1の状態へ切り換わることができる。
【0042】
少なくとも1つの実施形態によれば、インジケータは、弾性要素もしくは弾性部材を含み、または弾性要素もしくは弾性部材である。たとえば、インジケータは、ばねを含み、またはばねであり、たとえば板ばねである。インジケータは、金属もしくはプラスチックを含むことができ、または金属もしくはプラスチックからなることができ、たとえば金属シートとすることができる。インジケータは、単安定または双安定のばね要素とすることができる。
【0043】
少なくとも1つの実施形態によれば、インジケータは、長手方向軸の周りで特定の角度だけ曲げられて、長手方向の丸い折り目を形成し、長手方向の丸い折り目の両側に配置された2つの隣接する傾斜した羽根状セクションを有する。インジケータは、長手方向の丸い折り目内にノッチをさらに含むことができる。ノッチは、長手方向の丸い折り目に対して横断方向に延びることができる。ノッチは、長手方向の丸い折り目内の中心に配置することができる。インジケータは、たとえば羽根状セクションに、支持タブを含むことができる。支持タブは、羽根状セクションから外方へ突出することができる。長手方向の丸い折り目は、包括的に0.5mm~5mm、好ましくは1.5mm~2mmの曲げ半径を有することができる。インジケータは、方形の形状、正方形の形状、または楕円形の形状を有することができる。
【0044】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィードバック機構は、トリガ機能を含む。トリガ機能は、プランジャロッドの一部とすることができ、たとえばプランジャロッドの本体と一体形成することができる。トリガ機能は、プランジャロッドに対して軸方向および/または回転不能に固定することができる。
【0045】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィードバック機構は、動作機能を含む。動作機能は、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定することができる。動作機能は、インジケータの一部とすることができ、たとえばインジケータと一体形成することができ、またはフィードバック機構のさらなる要素もしくは部材の一部とすることができる。
【0046】
少なくとも1つの実施形態によれば、トリガ機能および動作機能のうちの少なくとも1つは、変位可能であり、すなわち変位可能機能である。たとえば、変位可能機能は、径方向に変位可能である。他の機能を、それぞれプランジャロッドまたはハウジングに対して径方向に固定することもできる。変位可能機能は、変位可能要素に固定することができ、または変位可能要素、たとえば可撓性もしくは旋回可能もしくは弾性の要素、たとえば可撓性もしくは旋回可能もしくは弾性のアームの一部とすることができる。変位可能要素は、プランジャロッドの一部とすることができ、またはハウジングに対して軸方向および/もしくは回転不能に固定することができる。たとえば、変位可能要素は、軸方向に向けられる。変位可能要素は、細長いものとすることができ、たとえば長手方向軸に沿って主延長方向を有する。変位可能機能は、変位可能要素の遠位端に配置することができ、または変位可能要素の近位端より遠位端の近くに配置することができる。変位可能アームの遠位端は、変位可能とすることができ、変位可能アームの近位端は、ハウジングに対して径方向に固定することができる。
【0047】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、プランジャロッドがその開始位置からフィードバック位置へ動かされたとき、トリガ機能および動作機能が、互いに軸方向に通過し、または少なくとも互いに軸方向および/もしくは回転不能に重なり、それにより変位可能機能が変位してフィードバック機構をトリガすることが可能になるように構成される。薬物送達デバイスは、少なくとも初期状態から開始したとき、このように構成することができる。変位可能機能の変位は、フィードバック機構をトリガすることができ、またはフィードバック機構のトリガを有効にすることができる。トリガ機能および動作機能は、互いに軸方向および/または回転不能に重なったとき、互いに係合することができる。たとえば、変位可能機能の変位は、第1の状態から第2の状態へのインジケータの遷移を有効にし、またはそのような遷移を伴う。
【0048】
たとえば、プランジャロッドが、その開始位置から開始して遠位方向に動かされ、フィードバック位置に到達したとき、トリガ機能および動作機能は、互いに通過し、または少なくとも互いに軸方向および/もしくは回転不能に重なる。その結果、変位可能機能が変位し、フィードバック機構がトリガされる。
【0049】
少なくとも1つの実施形態によれば、変位可能機能は、フィードバック機構がトリガされる前、たとえばプランジャロッドがフィードバック位置に到達する前は、第1の位置で保持される。第1の位置において、変位可能機能は、第2の位置の方へ、たとえば径方向内方または径方向外方の方向に付勢することができる。第1の位置および第2の位置は、互いに対して径方向にずらすことができる。
【0050】
少なくとも1つの実施形態によれば、変位可能機能は、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、第1の位置から第2の位置へ変位する。この変位は、たとえば変位可能機能が第1の位置で第2の位置の方へ付勢されたとき、自動で発生することができる。
【0051】
少なくとも1つの実施形態によれば、動作機能は、たとえば径方向に変位可能である。プランジャロッドは、プランジャロッドがフィードバック位置に対して近位の位置にあるとき、変位可能な動作機能をその第1の位置で保持することができる。たとえば、変位可能な動作機能は、プランジャロッドの表面、たとえば外面に、径方向に当接することができる。この当接は、変位可能な動作機能を第1の位置で保持することができる。たとえば、変位可能な動作機能は、プランジャロッドが開始位置とフィードバック位置との間にある限り、第1の位置で保持される。
【0052】
別法として、トリガ機能をたとえば径方向に変位可能にすることも可能である。変位可能なトリガ機能は、プランジャロッドがフィードバック位置に対して近位の位置にあるとき、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定された表面に当接することができる。
【0053】
変位可能機能はまた、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、案内機能、たとえば傾斜部またはレールによって、第1の位置から第2の位置へ案内することができる。この場合、変位可能機能は、第1の位置にあるとき、第2の位置の方へ付勢しても付勢しなくてもよい。
【0054】
少なくとも1つの実施形態によれば、動作機能は突起であり、たとえば径方向に突出する突起である。たとえば、突起は、変位可能要素から径方向内方または径方向外方の方向に突出する。突起は、フィンの形状を有することができる。たとえば、突起は、遠位方向を向く遠位縁部または遠位面と、近位方向を向く近位縁部または近位面とを含む。遠位縁部または遠位面は、たとえば長手方向軸に対して測定されるとき、近位縁部または近位面より急勾配にすることができる。
【0055】
少なくとも1つの実施形態によれば、トリガ機能は、プランジャロッド内の凹部である。凹部は、細長いものとすることができ、たとえば主延長方向は、プランジャロッドの主延長方向に対して平行でありかつ/または長手方向軸に対して平行である。凹部は、溝または切抜きとすることができる。凹部は、プランジャロッドの側面内に位置することができる。凹部は、プランジャロッド内で側面から空洞の方へまたは空洞内へ延びることができる。凹部は、プランジャロッドの縁部によって、遠位方向および/または近位方向に区切ることができる。凹部は、そのような縁部によって遠位方向にのみ区切られ、近位方向に開くことも可能である。この場合、凹部は、プランジャロッドの近位端へ延びることができる。
【0056】
少なくとも1つの実施形態によれば、トリガ機能は、プランジャロッドの近位端であり、たとえばプランジャロッドの近位向きの表面である。
【0057】
トリガ機能が上記で指定した突起であり、動作機能が上記で指定した凹部であることも可能である。
【0058】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、突起は凹部内へ変位し、またはプランジャロッドの近位端の近位後方にある空間内へ変位する。特に、凹部および突起は、これら2つの機能間の係合を可能にするような寸法である。
【0059】
少なくとも1つの実施形態によれば、フィードバック機構は、支持要素を含む。支持要素は、プランジャロッドがフィードバック位置に到達するまでインジケータを第1の状態で保持するために、インジケータに対する機械的な支持を提供することができる。たとえば、支持要素が機械的な支持を提供するとき、支持要素およびインジケータは直接接触する。
【0060】
少なくとも1つの実施形態によれば、インジケータを第1の状態で保持する機械的な支持は、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したときに解放または解消され、したがってインジケータは、第2の状態へ切り換わることが可能になる。言い換えれば、プランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、支持要素は、インジケータを第1の状態で保持しなくなり、したがってインジケータは、第2の状態へ切り換わり、または第2の状態へ切り換わることが可能になる。インジケータが第2の状態にあるとき、支持要素は、インジケータを再び保持することができる。
【0061】
支持要素は、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定することができる。支持要素は、それぞれエネルギー部材ホルダまたは駆動ばねホルダのように、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定された部材または要素の一部とすることができる。支持要素は、上述した変位可能要素とすることができ、またはそのような変位可能要素を含むことができる。変位可能機能は、変位可能要素の一部とすることができる。この意味で、変位可能要素の変位を変位可能機能の変位と相関させることができ、逆も同様である。
【0062】
たとえば、プランジャロッドがフィードバック位置に対して近位の位置にあるとき、変位可能要素は第1の位置で保持される。第1の位置は、変位可能要素が第2の位置の方へ、たとえば径方向内方または径方向外方の方向に付勢される付勢位置とすることができる。プランジャロッドがフィードバック位置に到達したとき、変位可能要素が第2の位置へ変位することを可能にすることができる。
【0063】
少なくとも1つの実施形態によれば、動作機能は支持要素に固定され、または支持要素の一部である。
【0064】
少なくとも1つの実施形態によれば、インジケータは、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定される。
【0065】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドは、ハウジングに対して回転可能に配置される。プランジャロッドの回転軸は、長手方向軸を画成することができ、または長手方向軸と一致することができる。
【0066】
少なくとも1つの実施形態によれば、初期状態において、プランジャロッドは、軸方向ロックインターフェースによってハウジングに連結される。軸方向ロックインターフェースは、遠位方向におけるプランジャロッドの軸方向運動を防止する。軸方向ロックインターフェースは、プランジャロッドとハウジングとの間に直接形成することができ、またはプランジャロッドと駆動ばねホルダのようなハウジングに軸方向に固定された部材/要素との間に直接形成することができる。
【0067】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ハウジングに対するプランジャロッドの回転が軸方向ロックインターフェースを解放し、遠位方向におけるプランジャロッドの動きを有効にするように構成される。たとえば、軸方向ロックインターフェースを解放するには、プランジャロッドを少なくとも5°回転させなければならない。
【0068】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドは、保持構造を含む。保持構造は、プランジャロッドの近位端の領域内に、たとえば遠位端より近位端の近くに配置することができる。保持構造は、1つまたはそれ以上の保持機能を含むことができる。保持構造は、互いに対して回転方向および/または軸方向にずれた2つまたはそれ以上の保持機能を含むことができる。たとえば、保持構造は、少なくとも2つまたは少なくとも4つまたは少なくとも6つの保持機能を含む。各保持機能は、突起とすることができ、たとえばプランジャロッドの本体から径方向外方の方向に突出する突起とすることができる。突起は、プランジャロッドの側面から径方向外方の方向に突出することができる。
【0069】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定された軸方向ロック機能を含む。軸方向ロック機能は、ハウジングまたは駆動ばねホルダの一部とすることができる。軸方向ロック機能は、凹部とすることができる。
【0070】
少なくとも1つの実施形態によれば、初期状態において、保持構造、特にその少なくとも1つの保持機能、および軸方向ロック機能は、軸方向ロックインターフェースが確立されるように、互いに相互作用し、または互いに係合される。たとえば、保持構造の突起が、凹部内へ突出して、凹部を遠位方向に区切る縁部に当接し、それによってプランジャロッドの軸方向運動を防止する。
【0071】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドの回転は、保持構造と軸方向ロック機能との間の相互作用または係合を解消する。
【0072】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、薬剤容器を含む。薬剤容器は、針を含むことができる。薬剤容器は、ハウジング内に受け入れることができ、たとえばハウジングによって円周方向に取り囲むことができる。針は、薬剤容器の遠位端を形成することができる。薬剤容器は、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定されて配置することができ、たとえば薬物送達デバイスの意図された使用中にハウジングに対して動かされない。別法として、薬剤容器は、ハウジングに対して可動とすることができ、薬物送達デバイスの意図された使用中にハウジングに対して動かすことができる。
【0073】
薬剤容器は、シリンジ、たとえば充填済みのシリンジとすることができる。薬剤容器は、ガラスを含むことができる。薬剤容器は、ストッパによって近位に封止することができ、すなわち針とは反対に位置する薬剤容器の端部が、ストッパによって封止閉鎖される。薬剤容器は、薬物または薬剤、たとえば液体の薬物または薬剤を含むことができる。ストッパは、薬剤に接触することができる。薬物送達デバイスは、薬物送達プロセスが実行されたとき、薬剤容器を空にするように構成することができる。たとえば、薬剤容器は、ちょうど1回の薬物送達動作に十分な量の薬剤を含む。
【0074】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは自動注射器である。
【0075】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、遠位方向におけるプランジャロッドの軸方向運動を誘起するためのエネルギーを提供するように構成されたエネルギー部材を含む。エネルギー部材は、駆動ばね、たとえば圧縮ばねとすることができ、またはプランジャロッドの軸方向運動を誘起するように構成された別の構成要素、たとえばガスカートリッジもしくは電気モータとすることができる。駆動ばねは、金属、たとえば鋼から形成することができる。長手方向軸は、駆動ばねの中心を通って延びることができる。エネルギー部材は、ハウジング内に受け入れることができる。駆動ばねは、プランジャロッドの空洞内に受け入れることができる。
【0076】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、初期状態から解放状態へ切り換えられるように構成され、解放状態において、プランジャロッドは、エネルギー部材によって提供されるエネルギーによって、遠位方向に動く。たとえば、初期状態において、駆動ばねは付勢され、たとえば圧縮されており、さらにプランジャロッドを遠位方向に付勢することができる。解放状態において、付勢された駆動ばねを解放することができ、エネルギーをプランジャロッドへ伝達し、プランジャロッドを遠位方向に動かすことができる。軸方向ロックインターフェースの解放の結果、初期状態から解放状態への切換えをもたらすことができる。
【0077】
駆動ばねの遠位端は、プランジャロッドの近位向きの表面に当接することができ、またはプランジャロッドの近位向きの表面に固定することができる。駆動ばねの近位端は、ハウジングもしくは駆動ばねホルダに当接することができ、またはハウジングもしくは駆動ばねホルダに固定することができる。
【0078】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスは、ハウジングに対して軸方向に可動に配置された解放部材、たとえばニードルシュラウドを含む。解放部材は、ハウジング内に受け入れることができる。解放部材は、ハウジングに嵌め込み式に連結することができる。解放部材は、ハウジングに回転不能に固定することができる。
【0079】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスが初期状態にあるとき、軸方向、たとえば近位方向における解放部材の動きは、プランジャロッドの回転を有効にして、軸方向ロックインターフェースを解放する。たとえば、初期状態において、プランジャロッドは、回転ロックインターフェースによってハウジングに連結され、回転ロックインターフェースは、ハウジングに対するプランジャロッドの回転を防止する。軸方向における解放部材の動きは、回転ロックインターフェースを解放して、プランジャロッドの回転を有効にすることができる。
【0080】
たとえば、初期状態において、プランジャロッドは回転方向に付勢されるが、回転ロックインターフェースによってその回転は防止される。回転ロックインターフェースの解放後、プランジャロッドは自動で回転することができ、それによって軸方向ロックインターフェースを解放する。回転ロックインターフェースは、解放部材とプランジャロッドとの間に直接形成することができる。たとえば、解放部材は回転ロック機能を含み、回転ロック機能は、初期状態において、プランジャロッドの保持構造、たとえばその少なくとも1つの保持機能と相互作用または係合し、それによって回転ロックインターフェースを確立する。解放部材の軸方向運動は、この相互作用または係合を解消することができる。
【0081】
解放部材の回転ロック機能は、解放部材内の凹部とすることができ、この凹部内へ保持構造の突起が突出する。凹部は、L字形とすることができる。突起は、凹部を回転方向に区切る凹部の縁部に当接することができる。これにより、プランジャロッドの回転を防止する。解放部材が軸方向に動かされたとき、凹部の縁部を保持構造の突起に対して変位させることができ、したがってプランジャロッドの回転が有効にされる。
【0082】
少なくとも1つの実施形態によれば、初期状態において、解放部材は伸長位置にあり、薬剤容器の薬物送達要素を覆う。薬物送達要素は、針またはカニューレとすることができる。たとえば、初期状態において、薬剤容器がハウジング内に受け入れられたとき、解放部材は薬物送達要素を越えて遠位に突出する。伸長位置において、解放部材は、ハウジングを越えて遠位に突出することができる。少なくとも解放部材の遠位領域は、スリーブ状とすることができる。
【0083】
少なくとも1つの実施形態によれば、軸方向、たとえば近位方向における後退位置への解放部材の動きは、プランジャロッドの回転を有効にして、軸方向ロックインターフェースを解放する。
【0084】
少なくとも1つの実施形態によれば、解放部材の後退位置は、薬物送達要素を露出させる位置である。したがって、薬剤容器がハウジング内に受け入れられており、かつ解放部材が後退位置にある場合、薬物送達要素は露出される。たとえば、解放部材が後退位置にあるとき、薬物送達要素は解放部材を越えて遠位に突出する。
【0085】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスはシュラウドばねを含む。シュラウドばねは、解放部材およびハウジングに連結することができる。シュラウドばねは、解放部材が伸長位置から後退位置の方へ動かされたとき、解放部材に対して軸方向、たとえば遠位方向に作用する復原力を誘起するように構成することができる。
【0086】
薬物送達デバイスは次のように使用することができる。まず、薬物送達デバイスはその初期状態にある。次いで使用者が、薬物送達デバイスの遠位端を身体、たとえば人体の皮膚領域に押し付ける。この状態で、薬物送達デバイスの遠位端は、解放部材の遠位端によって形成することができる。これにより、解放部材を伸長位置から後退位置へ動かす。この動きがシュラウドばねを付勢し、付勢されたシュラウドばねは、解放部材をハウジングに対して遠位方向に付勢する。後退位置において、回転ロックインターフェースが解放される。結果として、プランジャロッドが回転し、それにより軸方向ロックインターフェースを解放し、したがって薬物送達デバイスが解放状態に切り換わる。解放状態において、プランジャロッドはまず、ストッパを遠位方向に押さずに遠位方向に動くことができる。次いでプランジャロッドは、ストッパと相互作用してストッパを遠位方向に押し、したがって薬物が送達され、たとえば身体の組織内へ注射される。終了位置またはその付近で、プランジャロッドはフィードバック位置に到達し、それによってフィードバック機構をトリガし、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出す。これにより、薬物送達プロセスが終了したことを使用者に通知する。使用者は次に、薬物送達デバイスの遠位端を皮膚から取り出すことができる。シュラウドばねは、解放部材を遠位方向に動かし、たとえば伸長位置へ戻す。
【0087】
次に、薬物送達デバイスのためのプランジャロッドが指定される。プランジャロッドは、上記で指定した薬物送達デバイスのプランジャロッドとすることができる。したがって、上記で指定した薬物送達デバイスのプランジャロッドに関連して開示したすべての構成が、以下に指定するプランジャロッドに対しても開示され、逆も同様である。
【0088】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドは、プランジャロッドが薬物送達デバイス内へ組み立てられ、かつトリガ機能がフィードバック機構の動作機能を軸方向に通過したとき、または少なくともフィードバック機構の動作機能に軸方向に重なったとき、薬物送達デバイスの可聴および/または触覚のフィードバック機構のトリガを有効にするように構成されたトリガ機能を含む。
【0089】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドは、少なくとも1つの軸方向、たとえば遠位方向における薬物送達デバイスのハウジングに対するプランジャロッドの軸方向運動を防止する軸方向ロックインターフェースを確立するために、薬物送達デバイスの軸方向ロック機能と相互作用するように構成された保持構造を含む。保持構造はまた、薬物送達デバイスのハウジングおよび/または解放部材に対するプランジャロッドの回転を防止する回転ロックインターフェースを確立するために、たとえば解放部材の回転ロック機能と相互作用するように構成することができる。
【0090】
少なくとも1つの実施形態によれば、トリガ機能は、プランジャロッドの近位端であり、かつ/または保持構造と軸方向に重なっておらず、かつ/または保持構造を越えて近位に突出する。
【0091】
保持構造の領域は、保持構造の保持機能によって画成することができる。たとえば、保持構造の遠位端は、最も遠位に配置された保持機能によって、またはこの保持機能の遠位端によって、それぞれ画成される。保持構造の近位端は、最も近位に配置された保持機能によって、またはこの保持機能の近位端によって、それぞれ画成することができる。
【0092】
次に、薬物送達デバイスのためのプランジャロッドのセットが指定される。このセットは、複数のプランジャロッド、たとえば少なくとも2つまたは少なくとも4つまたは少なくとも6つのプランジャロッドを含む。上述した薬物送達デバイスのプランジャロッドまたは上述したプランジャロッドに関連して開示したすべての構成は、プランジャロッドのセットのプランジャロッドに対しても開示され、逆も同様である。特に、以下に記載するプランジャロッドのセットのプランジャロッドは、上述した薬物送達デバイスに使用することができる。
【0093】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドのセットの各プランジャロッドは、プランジャロッドが薬物送達デバイス内へ組み立てられ、かつトリガ機能がフィードバック機構の動作機能を軸方向に通過したとき、または少なくともフィードバック機構の動作機能に軸方向に重なったとき、薬物送達デバイスの可聴および/または触覚のフィードバック機構のトリガを有効にするように構成されたトリガ機能を含む。
【0094】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドのセットの各プランジャロッドは、遠位端を有する。遠位端は特に、薬剤容器のストッパと相互作用するように構成される。遠位端は特に、薬剤容器のストッパの方を向くように構成される。好ましくは、プランジャロッドのセットの各プランジャロッドの各遠位端は、薬物送達デバイスが起動されたとき、薬剤容器のストッパと相互作用するように構成される。その結果、薬物送達デバイスおよび/またはプランジャロッドのセットのうちの少なくとも1つのプランジャロッドは、薬物送達デバイスの初期状態において、プランジャロッドおよび薬剤容器のすべての組合せに対して、プランジャロッドのセットのうちの少なくとも1つのプランジャロッドとストッパとの間に隙間ができるように構成される。
【0095】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドのセットのうちの少なくともいくつかのプランジャロッドは、異なる長さを有する。たとえば、長さは、プランジャロッドのセットのすべてのプランジャロッドに対して平均化された平均長さ前後で少なくとも10%または少なくとも20%または少なくとも50%異なる。たとえば、異なる長さのプランジャロッドは、その長さが少なくとも10%もしくは少なくとも20%および/または少なくとも5mmもしくは少なくとも10mm逸脱する。
【0096】
少なくとも1つの実施形態によれば、遠位端とトリガ機能との間の距離は、プランジャロッドのセットのすべてのプランジャロッドに対して同じまたは実質的に同じである。この距離は、たとえばプランジャロッドの遠位端からトリガ機能の遠位端までの間で測定される。
【0097】
本章および以下において、「実質的に同じ」とは、たとえば平均値から多くとも5%または多くとも2%または多くとも1%の逸脱が発生しうることを意味する。平均値は、それぞれのセットのすべての部材に対して平均化することができる。さらに、2つの要素、部材、または機能が同じまたは実質的に同じであると主張される場合、これは材料が同じであることも意味することができる。
【0098】
遠位端とトリガ機能との間の距離がすべてのプランジャロッドに対して同じまたは実質的に同じであるため、プランジャロッドの長さを変更するとき、薬物送達デバイスのほとんどの構成要素、たとえばハウジング、動作機能、解放部材などは交換する必要がない。薬剤容器内に収納された薬剤の充填体積を変更するときは、プランジャロッドの長さを変更する必要がある。実際に、フィードバック機構は、プランジャロッドの長さにかかわらずトリガまたは起動する。
【0099】
少なくとも1つの実施形態によれば、プランジャロッドのセットのプランジャロッドの各々は、保持構造を含む。保持構造は、すべてのプランジャロッドに対して同じまたは実質的に同じとすることができる。たとえば、軸方向および/もしくは回転方向における保持機能の互いに対する位置、ならびに/または保持機能の寸法は、すべてのプランジャロッドに対して同じまたは実質的に同じである。
【0100】
本章および以下において、部材、要素、または機能の位置は、それぞれの中心、たとえば重力中心の位置によって画成することができる。
【0101】
次に、薬物送達デバイスを組み立てる方法が指定される。特に、以下に記載する方法によって、上記で指定した薬物送達デバイスを組み立てることができる。したがって、薬物送達デバイスに関連して開示したすべての構成が、この方法に対しても開示され、逆も同様である。
【0102】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法は、薬剤を含む薬剤容器が提供される工程を含む。薬剤は、薬剤容器内の充填体積を占有する。たとえば、薬剤の充填体積または量はそれぞれ、包括的に0.5mL~2mLである。薬剤容器は、薬剤容器を近位に封止するストッパを含むことができる。ストッパは、ゴムから形成することができ、かつ/または一体型に形成することができる。
【0103】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法は、それぞれ薬剤の充填体積または量に応じて、プランジャロッドのセットから1つのプランジャロッドが選択される工程を含む。特に、充填体積に応じて、プランジャロッドの長さが選択される。たとえば、充填体積が小さければ小さいほど、選択されるプランジャロッドの長さは大きくなる。
【0104】
少なくとも1つの実施形態によれば、この方法は、薬剤容器および選択されたプランジャロッドを使用することによって薬物送達デバイスが組み立てられる工程を含む。
【0105】
少なくとも1つの実施形態によれば、提供される薬剤容器は、複数の薬剤容器を含む薬剤容器のセットから選択される。薬剤容器のうちの少なくともいくつかは、異なる充填体積を占有する薬剤を含むことができ、すなわち異なる量の薬剤を含むことができる。異なる薬剤容器の幾何形状または寸法は、すべての薬剤容器に対して同じまたは実質的に同じとすることができる。異なる薬剤容器では、薬剤の量、それに応じてストッパの位置のみが異なることができる。
【0106】
次に、薬物送達デバイスのセットが指定される。このセットは、複数の薬物送達デバイス、たとえば少なくとも2つまたは少なくとも4つまたは少なくとも6つを含む。上記で指定した方法によって、各薬物送達デバイスを組み立てることができる。したがって、この方法に関連して開示したすべての構成が、薬物送達デバイスのセットの薬物送達デバイスに対しても開示され、逆も同様である。
【0107】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスのセットの各薬物送達デバイスは、プランジャロッドを含む。プランジャロッドは、上記で指定したプランジャロッドのうちの1つ、たとえばプランジャロッドのセットのうちの1つのプランジャロッドとすることができる。
【0108】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスのセットの各薬物送達デバイスは、動作機能を有する可聴および/または触覚のフィードバック機構を含む。好ましくは、動作機能は、すべての薬物送達デバイスで同じまたは実質的に同じである。フィードバック機構は、いずれの場合も、インジケータを含むことができる。インジケータはまた、すべての薬物送達デバイスで同じまたは実質的に同じとすることができる。
【0109】
少なくとも1つの実施形態によれば、薬物送達デバイスのセットの各薬物送達デバイスは、容器保持領域を含む。容器保持領域は、薬物送達デバイスの薬剤容器を保持しまたは受けるように構成された領域とすることができる。
【0110】
たとえば、薬物送達デバイスは、薬剤容器または薬剤容器を保持する薬剤容器ホルダにたとえば近位方向または遠位方向に当接するように構成された少なくとも1つの容器ホルダ要素を含む。たとえば、容器ホルダ要素は、薬剤容器のフランジに当接するように構成することができる。容器ホルダ要素は、薬剤容器および/または薬剤容器ホルダをそれぞれ容器保持領域またはハウジングに対する軸方向運動および/または回転運動から防止するように構成することができる。容器ホルダ要素は、すべての薬物送達デバイスで同じまたは実質的に同じとすることができる。容器ホルダ要素は、ハウジングの一部とすることができ、たとえばハウジングと一体形成することができる。たとえば、容器ホルダ要素の寸法および/またはハウジングに対する容器ホルダ要素の位置は、すべての薬物送達デバイスで同じまたは実質的に同じとすることができる。
【0111】
容器保持領域、特に容器ホルダ要素は、ハウジングに対して軸方向および/または回転不能に固定することができる。たとえば、容器保持領域は、最も近位の容器ホルダ要素と最も遠位の容器ホルダ要素との間の領域によって画成することができ、またはハウジングのうち最も近位の容器ホルダ要素からハウジングの遠位端までの領域とすることができる。薬物送達デバイスが薬剤容器ホルダを含む場合、容器保持領域はまた、この薬剤容器ホルダの延長によって画成することができる。
【0112】
少なくとも1つの実施形態によれば、異なる薬物送達デバイスのプランジャロッドのうちの少なくともいくつかは、異なる長さを有する。それに応じて、薬物送達デバイスが薬剤容器を含むとき、薬物送達デバイスの薬剤容器のうちの少なくともいくつかは、薬剤容器内で異なる充填体積を占有する薬剤を含むことができる。
【0113】
異なる薬物送達デバイスの薬剤容器の寸法および/またはハウジング内のそれらの位置は、すべての薬物送達デバイスで同じまたは実質的に同じとすることができる。使用される材料もまた、同じまたは実質的に同じとすることができる。
【0114】
少なくとも1つの実施形態によれば、容器保持領域に対する動作機能の位置は、複数の薬物送達デバイスの各薬物送達デバイスで同じまたは実質的に同じである。容器保持領域の位置は、容器保持領域の中心または遠位端または近位端の位置とすることができる。
【0115】
以下、本明細書に記載する薬物送達デバイス、本明細書に記載するプランジャロッド、本明細書に記載するプランジャロッドのセット、本明細書に記載する薬物送達デバイスのセット、および本明細書に記載する薬物送達デバイスを組み立てる方法について、例示的な実施形態に基づいて図面を参照してより詳細に説明する。個々の図において、同じ参照符号は同じ要素を示す。しかし、関連するサイズ比は必ずしも原寸に比例しておらず、個々の要素は、より良好な理解のためにむしろ強調されたサイズで示されることがある。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図2】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図3】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図4】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図5】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図6】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図7】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図8】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図9】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図10】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第1の例示的な実施形態を示す図である。
【
図11】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第2の例示的な実施形態を示す図である。
【
図12】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第2の例示的な実施形態を示す図である。
【
図13】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第2の例示的な実施形態を示す図である。
【
図14】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第2の例示的な実施形態を示す図である。
【
図15】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第3の例示的な実施形態を示す図である。
【
図16】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第3の例示的な実施形態を示す図である。
【
図17】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第3の例示的な実施形態を示す図である。
【
図18】薬物送達デバイスの使用中の異なる視野および異なる位置における薬物送達デバイスの第3の例示的な実施形態を示す図である。
【
図19】異なる状態におけるインジケータの例示的な実施形態を示す図である。
【
図20】異なる状態におけるインジケータの例示的な実施形態を示す図である。
【
図21】プランジャロッドの例示的な実施形態の一部分を示す図である。
【
図22】解放部材の例示的な実施形態の一部分を示す図である。
【
図23】薬物送達デバイスを組み立てる方法の例示的な実施形態、ならびにプランジャロッドのセットの例示的な実施形態、および薬物送達デバイスのセットの例示的な実施形態を示す図である。
【
図24】プランジャロッドのセットのさらなる例示的な実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
図1および
図2は、薬物送達デバイス1000の第1の例示的な実施形態の側面図を示す。
図1は、薬物送達デバイス1000の第1の図を示し、
図2は、第1の図と比べてデバイス1000を長手方向軸Aの周りで90°回転させた第2の図を示す。
【0118】
図1および
図2はまた、部材または要素または機能の位置を指定するために本明細書で使用される座標系を示す。遠位方向Dおよび近位方向Pは、長手方向軸Aに平行に延びる。長手方向軸Aは、デバイス1000の主延長軸である。径方向Rは、長手方向軸Aに直交しかつ長手方向軸Aと交差する方向である。方位角方向Cは、角度方向または回転方向とも呼ばれており、径方向Rおよび長手方向軸Aに直交する方向である。これらの図の明瞭性を増大させるために、異なる方向および軸が以下の図のすべてにおいて示されているわけではない。
【0119】
第1の例示的な実施形態による薬物送達デバイス1000は、自動注射器である。自動注射器1000は、ハウジング100を含む。キャップ110が、ハウジング100にハウジング100の遠位端で取外し可能に取り付けられまたは連結される。ハウジング100は、一体型に形成することができ、キャップ110から自動注射器1000の近位端まで延びることができる。ハウジング100は、円筒形のスリーブである。
【0120】
図1および
図2でさらにわかるように、ハウジング100は窓120を含み、窓120を通してハウジング100内の薬剤容器を調べることができる。たとえば、窓120を通して、薬剤容器内の薬物の充填レベルもしくは薬剤容器内のストッパの前進、または薬物の透明性もしくは薬物の劣化を観察することができる。
【0121】
図3および
図4は、自動注射器1000を
図1および
図2と同じ図であるがここでは断面図で示し、キャップ110はハウジング100から取り外されている。シリンジ8の形態の薬剤容器8が、ハウジング100内に、すなわち容器保持領域6内に受け入れられている。一実施形態では、シリンジ8の近位部分内、たとえばシリンジ8の近位端に、フランジ8aが配置される。フランジ8aは、シリンジ8から、たとえばシリンジのバレルから、径方向に突出することができる。シリンジ8は、シリンジホルダ6cとも呼ばれる薬剤容器ホルダ6c内に保持される。容器ホルダ要素6a、6bが設けられ、ハウジング100に軸方向および回転不能に固定される。容器ホルダ要素6a、6bは、シリンジ8のフランジ8aおよび/またはシリンジホルダ6cの遠位端に当接する。このようにして、シリンジ8は、ハウジング100に対して軸方向に、好ましくは回転不能に支持され、またはハウジング100に固定される。その結果、シリンジ8は、針の挿入および/または送達動作の際にハウジング100に対して遠位に動かされない。容器ホルダ要素6aは、ハウジング100と一体形成される。他の実施形態では、別個の容器ホルダを設けることができる。
【0122】
シリンジ8は、薬物が充填されたカートリッジ81(またはバレル)を含む。シリンジ8は、ストッパ82によって近位方向Pに封止される。シリンジ8は、薬剤容器8の遠位端に針80をさらに含む。針80は、カートリッジ81に流体的に連結される。遠位方向Dにおけるストッパ82の動きは、カートリッジ81内の薬物を針80から押し出す。カートリッジは、ガラスから形成することができる。ストッパ82は、ゴムから形成することができ、かつ/または一体型に形成することができる。
【0123】
プランジャロッド1が、ハウジング100内に受け入れられる。プランジャロッド1は、ストッパ82に対して近位にずれて配置される。プランジャロッド1の遠位端は、シリンジ8内へ、特にカートリッジ81内へ突出し、ストッパ82の方を向く。
【0124】
図3および
図4は、初期状態における自動注射器1000を示す。初期状態において、プランジャロッド1は、特に製造公差、組立て公差、および/または輸送中のストッパ82の動きを考慮に入れて、ストッパ82から隔置される。初期状態において、プランジャロッド1の遠位端は、シリンジ8内(
図3参照)またはシリンジ8の外側(明示せず)に配置することができる。初期状態において、プランジャロッド1の遠位端は、ストッパ82の近位端から近位にずらすことができる。好ましくは、自動注射器1000および/またはプランジャロッド1は、すべての公差条件で初期状態において、プランジャロッド1、好ましくはその遠位端と、ストッパ82、好ましくはその近位端との間に距離ができることを確実にするように設計される。
【0125】
プランジャロッド1は、駆動ばね3(たとえば、
図7~
図10参照)によって遠位方向Dに付勢される。駆動ばね3は圧縮ばねであり、初期状態で圧縮されており、プランジャロッド1を押圧してプランジャロッド1を遠位方向Dに動かそうとする。しかし初期状態では、軸方向ロックインターフェースによってプランジャロッド1がハウジング100に連結されるため、プランジャロッド1の遠位運動は防止される。
【0126】
軸方向ロックインターフェースは、プランジャロッド1と駆動ばねホルダ4との間に確立される。駆動ばねホルダ4は、ハウジング100に対して軸方向に、好ましくは回転不能に固定される。プランジャロッド1は保持構造14を有し、保持構造14は突起10を含む。突起10は、プランジャロッド1の本体から径方向外方の方向に突出する。初期状態において、突起10は、それぞれ駆動ばねホルダ4の凹部24内へ突出または係合し、凹部24を遠位方向Dに区切る縁部に当接する。このようにして、軸方向ロックインターフェースが確立され、プランジャロッド1は、駆動ばね3によって誘起される遠位方向Dの動きから防止される。
【0127】
図3および
図4でさらにわかるように、駆動ばねホルダ4は、弾性アーム22の形態の支持要素22を含む。弾性アーム22は、軸方向に向けられており、径方向に変位可能である。弾性アーム22の近位端は、駆動ばねホルダ4の本体に固定され、弾性アーム22の遠位端は、径方向に変位可能である。突起23の形態の動作機能23が、弾性アーム22の遠位端に配置され、弾性アーム22から径方向内方の方向に突出する。突起23は、プランジャロッド1の外面、すなわち側面に当接する。
図3および
図4で、弾性アーム22および突起23は、第1の径方向位置にあり、径方向内方の方向に付勢されている。突起23を有する弾性アーム22は、プランジャロッド1への当接により、第1の径方向位置で保持される。
【0128】
弾性アーム22は、それぞれ第1の状態または付勢状態において板ばね21の形態のインジケータ21を支持および保持する。
図20は、付勢状態における板ばね21を詳細に示す。インジケータ21は、第1の状態から第2の状態へ切り換わるように構成され、第2の状態は弛緩状態とすることができる。弛緩状態におけるインジケータ21は、
図19に示されている。第1の状態から第2の状態へ切り換わるとき、インジケータ21は、エネルギーが解放されることによって、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出す。しかし、
図3および
図4に示す初期状態では、支持要素22が第1の位置で保持され、それによってインジケータ21を第1の状態で保持するため、インジケータ21が第1の状態から第2の状態へ切り換わることが防止される。インジケータ21および弾性アーム22は突起23とともに、プランジャロッド1に動作可能に連結された可聴および/または触覚のフィードバック機構の一部である。
【0129】
図3および
図4でさらにわかるように、自動注射器1000は、ニードルシュラウド5の形態の解放部材5を含む。ニードルシュラウド5は、ハウジング100内に受け入れられ、ハウジング100に嵌め込み式に連結される。初期状態において、ニードルシュラウド5は伸長位置にあり、ハウジング100から針80を越えて遠位に突出し、それによって針80を覆う。
【0130】
伸長位置におけるニードルシュラウド5は、それぞれ解放部材5またはハウジング100に対するプランジャロッド1の回転を防止する回転ロックインターフェースを介してプランジャロッド1に連結される。以下に説明するように、プランジャロッド1の回転は軸方向ロックインターフェースを解放するはずである。実際に、たとえば駆動ばね3がプランジャロッド1を遠位方向Dに駆動ばねホルダ4の傾斜面に押し付け、駆動ばねホルダ4がプランジャロッド1にトルクを誘起することによって、プランジャロッド1を回転方向に付勢することができる。この例示的な実施形態では、傾斜面は凹部24を遠位方向に区切り、突起10はこの傾斜面に押し付けられる。
【0131】
図4で、駆動ばねホルダ4が実際には各々弾性アーム22の形態の2つの別個の支持要素22を含むことがわかる。
【0132】
図5および
図6は、自動注射器1000を
図3および
図4と同じ図で自動注射器1000の使用中の位置で示す。自動注射器1000の遠位端は、たとえば、身体の皮膚領域の注射側に押し付けられる。これにより、ニードルシュラウド5はハウジング100に対して近位方向Pに後退位置へ動かされ、それによって針80を露出させる。針80は、たとえば身体の組織内へ穿孔される。
【0133】
後退位置におけるニードルシュラウド5の動きは、回転ロックインターフェースを解放する。プランジャロッド1は、回転方向に付勢されると自動で回転する。これにより、突起10が凹部24から係合解除されるため、軸方向ロックインターフェースが解放される。このとき、遠位方向Dにおけるプランジャロッド1の動きが防止されなくなる。このとき、自動注射器1000は解放状態にある。
【0134】
図6でわかるように、プランジャロッド1は、各々プランジャロッド1内の凹部または切抜きの形態である2つのトリガ機能13を含む。プランジャロッド1の回転により、ここで凹部13は、突起23と回転方向に位置合わせされる。
【0135】
図7および
図8は、自動注射器1000を
図5および
図6と同じ図であるが自動注射器1000の使用中の後の位置で示す。プランジャロッド1は、駆動ばね3によって提供されるエネルギーによって遠位方向Dに動いている。
図7および
図8で、プランジャロッド1は相互作用位置にあり、ストッパ82に当たる。ストッパ82に当たったとき、衝撃がシリンジ8へ伝達される。しかし、初期状態におけるプランジャロッド1とストッパ82との間の初期距離は、シリンジ8、特にカートリッジ81の損傷の確率が低減されるように選択される。たとえば、10,000個のそのような薬物送達デバイスのうち、シリンジ8の損傷が発生するのは、多くとも1つである。
【0136】
プランジャロッド1がストッパ82に当たることで、ストッパ82を遠位方向Dに押す。シリンジ8または針80はそれぞれ、容器ホルダ要素6a、6bおよびシリンジホルダ6cによって定位置で保持されるため、遠位方向に動かされない。
【0137】
図9および
図10は、自動注射器1000を
図7および
図8と同じ図であるが使用中のさらに後の位置で示す。プランジャロッド1は、駆動ばね3によって駆動され、遠位方向Dにさらに動いており、それによってストッパ82も同様に遠位方向Dに押している。それによって、カートリッジ81内に収納された薬物が、シリンジ8から針80を通って身体の組織内へ押し出されている。プランジャロッド1は、終了位置に到達しており、遠位方向Dにさらに動かすことはできない。この例示的な実施形態において、この終了位置はフィードバック位置でもあり、突起23および凹部13が互いに回転不能および軸方向に重なる。これにより、フィードバック機構をトリガまたは起動する。特に、この重なりにより、突起23が凹部13内へ係合することが可能になり、したがって突起23を有する弾性アーム22が、それぞれの第1の位置から第2の位置へ変位することができる。しかし、第2の位置における弾性アーム22は、インジケータ21を第1の状態で保持しなくなる。この結果として、インジケータ21は、第2の状態へ切り換わることが可能にされ、これは好ましくは自動で発生する。それによって、可聴および/または触覚のフィードバックが生み出される。これは、薬物の送達の終了を使用者に示す。
【0138】
図11および
図12は、薬物送達デバイス1000の第2の例示的な実施形態を示す。これらの図は、
図2および
図3と同じである。薬物送達デバイスは自動注射器1000である。さらに、
図11および
図12でも、自動注射器1000は初期状態にある。第1および第2の例示的な実施形態の自動注射器1000はほぼ同じである。違いは、第2の例示的な実施形態において、シリンジ8により大きい体積の薬物が充填されていることである。しかし、シリンジ8の幾何形状および寸法は同じである。どちらの例示的な実施形態でも、ハウジング100、容器保持領域6、容器ホルダ要素6a、6b、シリンジホルダ6c、シリンジ8、駆動ばねホルダ4、インジケータ21、弾性アーム22、および突起23の幾何形状、寸法、および相対位置は同じまたは実質的に同じである。特に、2つの例示的な実施形態では、プランジャロッド1、シリンジ8内の薬物の量、およびストッパ82の開始位置のみが異なる。
【0139】
より大量の薬物がシリンジ8内に収納されているため、ストッパ82は、第2の例示的な実施形態において第1の例示的な実施形態よりさらに近位に配置される。それに応じて、プランジャロッド1の長さは、初期状態におけるプランジャロッド1とストッパ82との間の初期距離を維持するために、第2の例示的な実施形態において第1の例示的な実施形態より小さく選択される。
【0140】
図13および
図14は、
図11および
図12と同じ図であるが、ここでは自動注射器1000が初期状態から解放状態へ切り換えられ、かつプランジャロッド1が駆動ばね3によって遠位方向Dに終了位置へ動かされた後の自動注射器1000を示す。第2の例示的な実施形態では、プランジャロッド1のトリガ機能13は、プランジャロッド1の近位端によって形成される。プランジャロッド1の近位端が弾性アーム22の突起23を通過するとすぐに、弾性アーム22は、径方向内方に変位することが可能にされ、それによって突起23は、プランジャロッド1の近位後方にある空間内へ変位する。インジケータ21は、その第1の状態から第2の状態へ切り換わり、可聴および/または触覚のフィードバックを生み出す。
【0141】
図15および
図16は、薬物送達デバイス1000の第3の例示的な実施形態を、この場合も
図3および
図4と同じ図で示す。第3の例示的な実施形態の薬物送達デバイス1000は、この場合も自動注射器1000である。この場合も、ハウジング100、シリンジ8、容器保持領域6、容器ホルダ要素6a、6b、シリンジホルダ6c、シリンジ8、駆動ばねホルダ4、インジケータ21、弾性アーム22、および突起23の寸法および相対位置は、第1および第2の例示的な実施形態と同じまたは実質的に同じである。違いは、この場合も、シリンジ8内に収納された薬物の充填体積およびプランジャロッド1の設計である。第3の例示的な実施形態では、充填体積が第1の例示的な実施形態より小さい。それに応じて、ストッパ82は、第1の例示的な実施形態よりさらに遠位に配置される。この結果として、プランジャロッド1は、第1の例示的な実施形態より長く選択される。この場合も、プランジャロッド1の長さは、初期状態において、プランジャロッド1がストッパ82から軸方向に隔置されるが、解放状態においてプランジャロッド1がストッパ82に当たったとき、それぞれシリンジ8またはカートリッジ81の損傷のリスクを低減させるように、十分にストッパ82に近くなるように選択される。
【0142】
図17および
図18は、自動注射器1000が初期状態から解放状態へ切り換えられ、かつプランジャロッド1が、駆動ばね3によって駆動され、終了位置へ動かされた後の
図15および
図16の自動注射器1000を示し、終了位置はフィードバック位置であってもよい。この場合も、プランジャロッド1は、トリガ機能13を形成する凹部13を含む。フィードバック位置において、凹部13は、弾性アーム22の突起23に軸方向および回転不能に重なり、突起23が凹部13内へ係合することを可能にし、したがって弾性アーム22は変位することができ、インジケータ21はその第1の状態から第2の状態へ切り換わることができ、それによって可聴および/または触覚のフィードバックを生み出す。
【0143】
第1の例示的な実施形態のプランジャロッド1と第3の例示的な実施形態のプランジャロッド1との違いは、第3の例示的な実施形態では、凹部13が突起10に軸方向に重ならないことである。代わりに、第3の例示的な実施形態では、凹部13が突起10に対して遠位方向Dにずれている。
【0144】
図19および
図20は、第1の状態または付勢状態(
図20)および第2の状態または弛緩状態(
図21)におけるインジケータ21の例示的な実施形態を示す。インジケータ21は板ばね21であり、たとえば金属シートから形成される。板ばね21は、長手方向軸Xの周りで特定の角度だけ曲げられて、長手方向の丸い折り目21aを形成する。2つの傾斜している羽根状セクション21bが、長手方向の丸い折り目21aの両側に配置される。板ばね21内に、すなわち長手方向の丸い折り目21a内に、ノッチ21cが形成される。ノッチ21cは、プライミング、すなわち第1の(付勢)状態への切換えの一貫性を支持するように設けることができる。付勢状態において、板ばね21は、長手方向軸Xに直交して延びる横断方向軸Tの周りで曲げられる。
【0145】
図21および
図22は、プランジャロッド1およびニードルシュラウド5の例示的な実施形態の近位部分を示す。プランジャロッド1およびニードルシュラウド5は、薬物送達デバイス1000の第1の例示的な実施形態のものとすることができる。プランジャロッド1は、細長い凹部13を含み、プランジャロッド1がフィードバック位置にあるとき、凹部13内へ弾性アーム22の突起23が係合することができる。プランジャロッド1は、保持構造14をさらに含む。保持構造14は、軸方向ロックインターフェースおよび回転ロックインターフェースを確立するために、駆動ばねホルダ4およびニードルシュラウド5に連結するように構成される。保持構造14は、径方向外方に突出する複数の突起10、11、12を含む。第1の突起10は、軸方向ロックインターフェースを確立するために、駆動ばねホルダ4の凹部24内へ係合するように構成される。第2の突起11は、回転ロックインターフェースを確立するために、ニードルシュラウド5の凹部50(
図22参照)内へ係合し、凹部50を回転方向に区切る縁部51に当接するように構成される。第3の突起12は、ニードルシュラウドが近位方向Pに動かされるとき、ニードルシュラウド5の傾斜部に当接することができる。この当接により、プランジャロッド1の回転を支持または案内することができる。突起10、11、12は、径方向外方に突出しており、互いに対して軸方向および回転不能にずれている。
【0146】
突起11、12および凹部50は、図の明瞭性を増大させるために、前述の図には示されていない。
【0147】
図22でわかるように、凹部50は2つのセクションを含み、第1のセクションは、縁部51によって回転方向に区切られており、第2のセクションは、第1のセクションよりさらに遠位に配置されており、回転方向により大きい範囲を有する。初期状態において、ニードルシュラウド5が伸長位置にあるとき、突起11は第1のセクション内へ突出し、縁部51に当接する。ニードルシュラウド5が近位方向Pにその後退位置へ動かされたとき、突起11は、凹部50の第2のセクションに軸方向に重なる。これにより、プランジャロッド1の回転が可能になる。
【0148】
図23は、薬物送達デバイスを組み立てる方法の例示的な実施形態を示す。シリンジ8の形態の複数の薬剤容器8が提供される。すべてのシリンジ8は、同じまたは実質的に同じ外側寸法、特に同じまたは実質的に同じ直径、および同じまたは実質的に同じ長さを有する。シリンジ8はすべて、同じ材料から形成することができる。しかしシリンジ8は、それぞれのシリンジ8内に収納された薬剤の量に関して異なる。シリンジ8内に収納された薬剤が多ければ多いほど、ストッパ82は針80からより遠くへ隔置される。
【0149】
さらに、プランジャロッド1のセットが提供される。プランジャロッド1はすべて、異なる長さを有し、すべてトリガ機能13と、いくつかの突起10、11、12を有する保持構造14とを含む。プランジャロッド1のうちのいくつかにおいて、トリガ機能13は細長い凹部13であり、いくつかのプランジャロッド1において、トリガ機能13はプランジャロッド1の近位端である。すべてのプランジャロッド1に対して、プランジャロッド1の遠位端とトリガ機能13との間の距離は同じまたは実質的に同じである。トリガ機能13が凹部である場合、この距離は、たとえば凹部13の遠位端からプランジャロッド1の遠位端までの間で測定される。
【0150】
異なるプランジャロッドの保持構造14は、すべてのプランジャロッド1に対して同じまたは実質的に同じである。特に、突起10、11、12間の相対位置および突起10、11、12の寸法は、すべてのプランジャロッド1に対して同じまたは実質的に同じである。プランジャロッド1の長さに応じて、保持構造14は、トリガ機能13に対して近位方向Pにずれており、またはトリガ機能13に軸方向に重なり、またはトリガ機能13に対して遠位方向Dにずれている。いくつかのプランジャロッド1において、トリガ機能13は保持構造14に軸方向に重ならない。
【0151】
この方法の第1の工程で、所望の量の薬剤を有するシリンジ8が選択される。その後、選択されたシリンジ8に応じて、プランジャロッドのセットからプランジャロッド1が選択される。次いで、選択されたプランジャロッド1および選択されたシリンジ8を使用して、薬物送達デバイス1000を組み立てる。
図23の下部に、このようにして組み立てられた薬物送達デバイス1000のセットが示されている。わかるように、構成要素のほとんどの寸法および構成要素間の相対位置は、すべての薬物送達デバイス1000に対して同じである。特に、容器保持領域6および/または容器ホルダ要素6a、6bに対する突起23の位置は、すべての薬物送達デバイス1000で同じである。
【0152】
図24は、プランジャロッドのセットの第2の例示的な実施形態を示す。1つのプランジャロッド1(中央の1つ)が、プランジャロッド1の縁部によって近位方向Pに区切られていない細長い凹部の形態のトリガ機能13を含む。
【0153】
さらなる説明および定義
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0154】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0155】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0156】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0157】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0158】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0159】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0160】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0161】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0162】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0163】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0164】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0165】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0166】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0167】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0168】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0169】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0170】
本発明の完全な範囲および精神から逸脱することなく、本明細書に記載するAPI、製法、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素に修正(追加および/または削除)を加えることができ、本発明はそのような修正およびそのあらゆる均等物を包含することが、当業者には理解されよう。
【0171】
例示的な薬物送達デバイスは、ISO11608-1:2014(E)の第5.2章の表1に記載されている針ベースの注射システムを伴うことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数用量の容器システムおよび単一用量(部分または完全排出)の容器システムに大きく区別することができる。容器は、交換可能な容器であっても、一体化された交換不能の容器であってもよい。
【0172】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを伴うことができる。そのようなシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(使用者によって事前に設定される)であってもよい。別の複数用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを伴うことができる。そのようなシステムでは、各容器が複数の用量を保持し、用量のサイズは、固定であっても可変(使用者によって事前に設定される)であってもよい。
【0173】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単一用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを伴うことができる。そのようなシステムに関する一例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部分が排出される(部分排出)。同じくISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単一用量の容器システムは、一体化された交換不能の容器を有する針ベースの注射デバイスを伴うことができる。そのようなシステムに関する一例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積全体が排出される(完全排出)。さらなる例では、各容器が単一の用量を保持し、それによって送達可能な体積の一部分が排出される(部分排出)。
【0174】
本明細書に記載する発明は、例示的な実施形態に関連する説明によって限定されない。むしろ本発明は、そのような構成またはそのような組合せ自体が特許請求の範囲または例示的な実施形態に明示的に記載されていない場合でも、任意の新しい構成ならびに任意の構成の組合せを含み、特に特許請求の範囲における任意の構成の組合せを含む。
【符号の説明】
【0175】
1 プランジャロッド
3 駆動ばね
4 駆動ばねホルダ
5 ニードルシュラウド
6 容器保持領域
6a 容器ホルダ要素
6b 容器ホルダ要素
6c 薬剤容器ホルダ/シリンジホルダ
8 薬剤容器/シリンジ
8a フランジ
10 突起
11 突起
12 突起
13 トリガ機能
14 保持構造
21 インジケータ/板ばね
21a 長手方向の丸い折り目
21b 羽根状セクション
21c ノッチ
22 支持要素
23 動作機能
24 凹部
80 針
81 カートリッジ
82 ストッパ
100 ハウジング
110 キャップ
120 窓
1000 薬物送達デバイス
D 遠位方向
P 近位方向
A 長手方向軸
R 径方向
C 方位角方向/回転方向/角度方向
X 長手方向軸
T 横断方向軸
【国際調査報告】