(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】神経膠芽腫の処置のための化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/506 20060101AFI20240517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240517BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P35/00
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K45/00 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574605
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 EP2022064993
(87)【国際公開番号】W WO2022253935
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギャン,クラウディア―ナネッテ
(72)【発明者】
【氏名】セリク,イルハン
(72)【発明者】
【氏名】マジド,ナザニン
(72)【発明者】
【氏名】デ グルート,ジョン フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】ウェラー,ミカエル
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB261
4C084ZB262
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、MET増幅を保有する播種性神経膠芽腫を包含する、神経膠芽腫の処置に使用するcMETインヒビターをふくむ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経膠芽腫の長期処置のためのそれを必要とするヒト対象における方法であって、対象へ有効量のcMETインヒビターを処置方針において少なくとも10週間投与することを含み、ここでcMETインヒビターは以下:
【化1】
または、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/または水和物であり、ならびにcMETインヒビターが、同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない、前記方法。
【請求項2】
cMETインヒビターが、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩水和物、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物、および3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
播種性神経膠芽腫、MET増幅を保有する神経膠芽腫、またはそれらの組み合わせが処置される、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
7q31.2にてIDH野生型、MGMT非メチル化またはMET増幅、あるいはそれらの組み合わせを保有する神経膠芽腫が処置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
cMETインヒビターの投与が、完全奏効、完全奏効の可能性の増大、薬剤耐性発生の可能性の低減、腫瘍進行までの時間の延長、および腫瘍再発までの時間の延長の群から選択される、1以上の臨床的有用性;好ましくは完全奏効をもたらす、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
cMETインヒビターが、少なくとも約11~52週間投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
同じ処置方針において放射線療法を施すことをさらに含み;ここで任意に、放射線療法が、単回照射用量として、またはcMETインヒビターの初回投与後に、またはそれらの組み合わせで施される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
放射線療法が、cMETインヒビターの初回投与後96時間以内、好ましくは36時間以内に施される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
cMETインヒビターが、神経膠芽腫の第二選択処置またはより高次の処置方針において投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置を施すことをさらに含み;ここで任意に、cMETインヒビターの初回投与前に、手術または放射線療法、もしくはそれらの組み合わせが最初に施され、続いて化学療法が施される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
cMETインヒビターが、神経膠芽腫の第一選択処置において投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
cMETインヒビターの初回投与の後に、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置を施すことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
放射線療法が施され;ここで任意に、放射線療法が陽子照射である、請求項7~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
放射線療法が、約3000~4000cGyを含み、任意で続いて、2000~3000cGyにて腫瘍床へのブーストを含む、請求項7~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
cMETインヒビターが、単独療法として投与される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野
本発明は、MET増幅を保有する播種性神経膠芽腫を包含する神経膠芽腫の処置における、受容体チロシンキナーゼ(TKI)間葉上皮移行因子(cMET)のインヒビターの使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
cMETインヒビター
間葉上皮移行因子(cMet)は、正常組織における発現のレベルが低いこと、および多くのヒトがんにおけるその特異な活性化ゆえに、抗がん治療法の開発において有望なターゲットとして浮上してきた。受容体チロシンキナーゼcMETの下流の多数のシグナル伝達経路の異常な刺激は、細胞形質転換、腫瘍の運動性および浸潤を促進する。そのため、cMETは、非小細胞肺がんを包含する異なる腫瘍のタイプにおける予後および治療研究の焦点となっている。具体的には、いくつかのcMETインヒビターが革新的な治療の候補として開発され、ならびに臨床試験において現在調査中となっている(例として、van der Stee et al., 2016, Thoracic Onc 11(9): 1423を参照)。選択性に関しては、キナーゼ上の結合部位によって、I型およびII型のクラスのc-Metインヒビターの間に特異性がある。I型インヒビターはさらにIa型とIb型に分けられ得て、Ib型インヒビターはIa型インヒビターと比較される場合、METに対して特異性がより高く、オフターゲット効果がより少ない。II型インヒビターは非活性化METを阻害し、ならびに一般的に他のプロテインキナーゼのオフターゲット効果をより多く示し、それが重篤な毒性効果を引き起こし得る。テポチニブは、高選択的な血液脳関門浸透性経口c-METインヒビターであり、その塩酸塩水和物がMET-エクソン14変異非小細胞肺がん(NSCLC)に対して最近FDA承認された。3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(テポチニブ)は、WO 2009/006959に記載された。
神経膠芽腫
【0003】
神経膠腫は、脳または脊髄のグリア細胞に始まる腫瘍の一種である。神経膠腫は、細胞のタイプ、グレード、および部位によって分類されている。高悪性度グリオーマ(すなわち、WHOグレードIII~IV)は未分化(undifferentiated)または退形成性(anaplastic)、悪性であり、予後が悪い。このグループは、退形成性星状細胞腫および神経膠芽腫を含む。神経膠芽腫は、多形膠芽腫(GBM)としても知られている。神経膠腫の等級区分は最近変化し、神経膠芽腫は現在、主にイソクエン酸脱水素酵素(IDH)変異の状態(IDH野生型またはIDH変異型)に従って分類されている。神経膠芽腫は、おそらく神経膠前駆細胞に由来する内在性の悪性脳腫瘍であり、形態学的に浸潤性増殖、巣状壊死、および血管新生を特徴とし、分子レベルでは、受容体チロシンキナーゼ(RTK)/RAS/ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(phosphatidylinositol 3-kinase)(PI3K)、p53、および網膜芽細胞腫(RB)経路に関与する頻繁な遺伝子変化を特徴とする。MET発がん遺伝子は、受容体チロシンキナーゼをコードし、神経膠芽腫を包含するいくつかの固形がんにおいて細胞増殖、浸潤、および血管新生を促進する。MET腫瘍の病理学的コピー数増幅および点突然変異は、神経膠芽腫におけるドライバーであり、MET増幅の発生率は2~5%である。METの活性化は、腫瘍の増殖、血管新生、および浸潤を促進し、処置に対する応答が乏しいこと、無増悪生存期間、および全生存期間が短くなることによる、神経膠腫における予後不良と関連している。リガンド非依存性Hs746TおよびHGF依存性U87MG腫瘍をもつマウスにおいて、テポチニブによる腫瘍増殖阻害および腫瘍の退行が、腫瘍が抵抗性になり進行する前に一時的に観察された(Bladt et al., 2013, Clin Cancer Res 19(11): 2941)。マウスモデルにおける、がん、とりわけ神経膠芽腫を処置するための、テポチニブならびに4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドの組み合わせが、WO 2016/091347に記載された。
【0004】
神経膠芽腫の処置において使用が考えられる治療法はあるが、臨床的応答は満足のいくものではない。神経膠芽腫は、最も致命的な固形がんのひとつに留まっている。テモゾロミドの導入以来、手術に続いて放射線療法という標準治療に加えて、生存期間を延長させるための薬理学的処置は他に示されていない。HGF抗体AMG-102(Wen et al., 2011, Neuro-oncology 13(4): 437)、またはMET抗体オナルツズマブの有効性検査(Cloughesy et al., 2017, Journal of Clinical Oncology: Official Journal of the American Society of Clinical Oncology 35(3): 343)は、神経膠芽腫において否定的な結果を有した。このように、神経膠芽腫の処置には新規の治療選択肢を開発する必要性が残っている。さらに、既存の治療法よりも高い有効性を有する治療法の必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図面の簡単な記載
【
図1】
図1は、マウス神経膠腫細胞におけるHGF/MET経路活性を示す。
図1A~1B.HgfおよびMetのmRNA発現を、in vitroおよびex vivoでRT-PCRによって査定した。
図1C~1D.HGFタンパク質の遊離、および構成的またはHGF刺激によるp-METレベルを、in vitroで、ELISA(HGF)(C)またはイムノブロット法(p-MET)(D)によって査定した。
【0006】
【
図2】
図2は、in vivoのSMA-560神経膠腫モデルにおいて、放射線照射およびテポチニブを介したMET阻害による相乗的な生存期間の延長を示す。
図2A~2D.同系のマウスに、SMA-560神経膠腫細胞を頭蓋内に移植し、6日目から毎日100mg/kgのテポチニブで、または溶媒で、または7日目に12Gyの単回量で、または組み合わせで処置した。症状を持つ最初のマウスが出たときに安楽死させた動物の脳を、AおよびCにおいて研究した。
図2A.1グループにつき2匹の事前に無作為化した動物からプールされた腫瘍溶解物を、標的阻害(p-MET)についてイムノブロット法によって分析した。
図2B.カプラン-マイヤー生存曲線。
図2C.1グループにつき3匹の事前に無作為化した動物の腫瘍切片を、H&E(上段)、Ki-67(中段)、またはCD31(下段)で染色した。切片を、ヘマトキシリン(青)で対比染色した。免疫反応性の定量化(右枠)(n=3、*p<0.05、t-検定)。
【0007】
【
図3】
図3は、テポチニブ、放射線照射、または組み合わせ治療に応答したサイトカインレベルの変化を示す。1グループにつき2匹の事前に無作為化した動物からプールされた腫瘍溶解物を、プロテオームプロファイラーアレイによって分析した。Aにおいて、生データは、Image Jによって測定されたピクセル密度として表されている。Bにおいて、倍率変化は対照腫瘍に対するダウンレギュレーション(左)、またはアップレギュレーション(右)を示す。対照に対して上方または下方の2倍の差異をカットオフとして使用し、標的を任意のグループへ割り当てた。
【0008】
【
図4】
図4は、適応免疫の消失による、テポチニブ、および放射線照射のみ、または組み合わせに対する応答の変化を示す。
図4A.Rag1欠損マウスに、SMA-560神経膠腫細胞を頭蓋内に移植し、6日目から毎日100mg/kgのテポチニブで、または溶媒で、または7日目に10Gyの単回量で、または組み合わせで処置した。カプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図4B~4C.同系のマウスに、GL-261神経膠腫細胞を頭蓋内に移植し、6日目から毎日100mg/kgのテポチニブで、または溶媒で、または7日目に10Gyの単回量で、または組み合わせで処置した。
図4B.カプラン-マイヤー生存曲線は、ログランク検定を経て分析した。
図4C.(B)において生存しているマウスを、最初の腫瘍細胞注入から13週間後に、対側半球内にGL-261細胞を移植して再誘発させた。GL-261細胞を移植したナイーブマウスが、対照として使用された。カプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図4D~4EGL-261 metノックアウト細胞を、野生型C57/Bl6マウスに頭蓋内移植(D)、またはGL-261野生型細胞をC57/Bl6 Rag1欠損マウスに頭蓋内移植(E)した。マウスは、6日目から毎日100mg/kgのテポチニブ、または溶媒で、または7日目に10Gyの単回量で、またはそれらの組み合わせで処置し、カプラン-マイヤー生存曲線を示す。
図4F.処置グループ間の生存期間中央値の分析。
【0009】
【
図5】
図5は、ある患者の処置経過を示し、テポチニブを用いた処置前に存在したさまざまな実質内、脳室内、および脊髄の病変のMRIスクリーンショットを包含する。
【0010】
【
図S1】
図S1は、METリン酸化の抑制を示すが、マウス神経膠腫細胞株におけるテポチニブの細胞毒性効果はない。
図S1-A.SMA-497またはSMA-560細胞をテポチニブにさらし、METリン酸化の時間および濃度依存的阻害を確定した。
図S1-B~C.急性増殖阻害(B)、またはクローン形成生存率(C)アッセイにおいて、細胞をテポチニブにさらした。生存能力は、MTTアッセイによって査定した(n=3、平均値および平均値の標準誤差)。
【0011】
【
図S2】
図S2は、in vitroでの放射線照射によるHGF/MET経路の変化を示す。
図S2-A~B.細胞は未処理または放射線へさらされたものであり、その後HgfおよびMet mRNAの発現(A)、またはイムノブロット法によるMETおよびp-METレベル(B)を査定した。細胞が、100nMのテポチニブ、および/または50ng/mlのHGFの非存在下または存在下において放射線照射へさらされ、クローン形成生存率(n=6、平均値および平均値の標準誤差)を監視した。
【発明の概要】
【0012】
本発明の概要
以下に記載される態様の各々は、それが組み合わされる態様と矛盾しない本明細書に記載の任意の他の態様と組み合わされ得る。さらに、本明細書に記載の態様の各々は、本明細書に記載の化合物の薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、および/または水和物を、その範囲内に想定する。したがって、「またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物、および/または水和物」という成句は、本明細書に記載のすべての化合物の記載に暗に含まれる。以下に記載する側面内の態様は、同じ側面内または異なる側面内で矛盾しない他の態様と組み合わされ得る。
【0013】
第1の側面において、本発明は、神経膠芽腫の処置において使用するためのこれを必要とする対象におけるcMETインヒビターを提供する。cMETインヒビターは、神経膠芽腫の処置において有効な量で投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、ヒト対象の処置において使用される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置のために使用され、少なくとも10週間投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置のために使用され、1の処置方針において少なくとも10週間投与される。この態様の一側面において、神経膠芽腫の処置において使用するためのcMETインヒビターは、同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない。この態様の一側面において、神経膠芽腫の処置において使用するためのcMETインヒビターは、同じ処置方針において放射線療法と組み合わせて投与される。一態様において、放射線療法は、単回照射量として、またはcMETインヒビターの初回投与後に、またはそれらの組み合わせで施される。この態様の一側面において、神経膠芽腫は、播種性神経膠芽腫である。この態様の別の側面において、神経膠芽腫は、MET増幅を保有する。この態様のさらなる側面において、神経膠芽腫は、7q31.2にてIDH野生型、MGMT非メチル化および/またはMET増幅を保有する。この態様の最後の側面において、cMETインヒビターは、テポチニブ、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/もしくは水和物である。
【0014】
第2の側面は神経膠芽腫の処置を、これを必要とする対象においてする方法であって、有効量のcMETインヒビター、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/もしくは水和物を対象へ投与することを含む。この態様の一側面において、処置される対象はヒトである。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置のために好適であり、少なくとも10週間投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置のために使用され、1の処置方針において少なくとも10週間投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない。この態様の一側面において、cMETインヒビターの投与は、対象において、完全奏効をもたらし、完全奏効の可能性を増大させ、薬剤耐性の発生の可能性を低減させ、腫瘍進行までの時間を延長し、および/または腫瘍再発までの時間を延長する。また、悪性細胞を有する対象における腫瘍の増殖または進行を阻害する方法も提供される。また、対象における悪性細胞の転移を阻害する方法も提供される。また、悪性細胞を有する対象における腫瘍の退行を誘発する方法も提供される。処置は、対象における客観的応答、好ましくは完全奏効または部分奏効をもたらす。この態様の一側面において、方法は、任意に、単回放射線照射用量として、またはcMETインヒビターの初回投与後に、またはそれらの組み合わせで、同じ処置方針において放射線療法を施すことをさらに含む。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第一選択処置において投与される。この態様の別の側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第二選択処置またはより高次の処置方針において投与される。本発明の治療は、以前に1以上の化学療法または免疫療法を用いて処置されたか、または放射線療法を受けたが、かかる以前の処置で失敗した対象の神経膠芽腫処置において使用され得る。この態様のさらなる側面において、対象は、cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置を施される。この態様のさらなる側面において、対象は、cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、またはそれらの組み合わせからなる群から選択され、任意で化学療法が続く処置を施される。放射線療法は、電子、光子、陽子、アルファエミッター、その他のイオン、放射性ヌクレオチド、ホウ素捕獲中性子、およびそれらの組み合わせで行われる処置であり得る。この態様の追加の側面において、対象は、テポチニブ、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/もしくは水和物を投与される。この態様の最後の側面において、cMETインヒビターは、単独療法として投与される。
【0015】
第3の側面は、神経膠芽腫の処置用医薬品の製造のためのcMETインヒビターの使用に関する。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置用であり、かつ少なくとも10週間投与される医薬品の製造のために使用される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置用であり、かつ1の処置方針において少なくとも10週間投与される医薬品の製造のために使用される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置用であり、かつ同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない医薬品の製造のために使用される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、長期処置用であり、かつ同じ処置方針において放射線療法と組み合わせて投与されない医薬品の製造のために使用される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、ヒトの長期処置用医薬品の製造のために使用される。
詳細な記載
【0016】
本発明に従った使用のための化合物は、神経膠芽腫を抑制するためにc-Metを有利に標的とする。cMETインヒビターは、例として血液脳関門を通過することによって、神経膠芽腫を処置するための潜在的な戦略であることもある。本発明の化合物の投与の結果はまた、腫瘍負荷を軽減することになることもあり、それが次に、疾患の重症度を低減するであろう。本発明のcMETインヒビターの抗がん特性について正確な作用機序が何であれ、その投与が本明細書にさらに記載されるとおり1以上の臨床的有用性を有するであろうことが提案される。具体的に、本出願は、対象における神経膠芽腫を処置するためのcMET単独療法を記載し、実証する。
【0017】
本発明の方法を使用する神経膠芽腫の処置は、神経膠芽腫のいずれかのステージで有効量の本発明のcMETインヒビターを投与し、それに関連する症状を予防または低減することを包含する。典型的には、対象は、最も信頼の置ける診断および神経膠芽腫と一致する症状の提示後に有効量の本発明のcMETインヒビターを投与され、および投与が、腫瘍の重症度を低減する、および/またはより重度の状態への腫瘍の進行を予防するであろう。かかる投与の際の臨床的有用性は、以下のセクションにてより詳細に記載される。
定義
【0018】
「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に別段に指示しない限り、複数形の参照対象を包含する。したがって、例えば、1つの化合物(a compound)への参照は、1つ以上の化合物、または少なくとも1つの化合物を指す。そのため、用語「1つ(a)」(または「1つ(an)」)、「1つ以上」、および「少なくとも1つ」は、本明細書では互換的に使用される。
【0019】
数値的に定義されたパラメータ(例として、cMETインヒビターの投与量、または本明細書に記載の治療を用いた処置期間の長さ)を修飾するために使用される場合の「約(about)」は、そのパラメータが、そのパラメータについて述べられた数値の下または上で10%程度変動することもあることを意味する。
【0020】
患者へ薬剤を「投与すること」または「投与」(およびこの表現の文法的同意義のもの)とは、医療専門家による患者への投与でも、または自己投与でもよい直接投与、および/または薬剤を処方する行為でもよい間接投与を指す。例として、患者に薬剤の自己投与を指示したり、または患者に薬剤の処方箋を提供する医師は、患者へ薬剤を投与していることになる。
【0021】
「バイオマーカー」とは、一般的に、疾患状態を指し示す生体分子、ならびにその定量的および定性的測定値を指す。「予後バイオマーカー」は、治療とは無関係に疾患の転帰と相関する。例として、腫瘍の低酸素症は負の予後マーカーであり、腫瘍の低酸素症が高ければ高いほど、疾患の転帰が負であろう可能性が高い。「予測バイオマーカー」は、患者が特定の治療へ明確に応答しそうかどうかを指し示すものである。例として、HER2プロファイリングは、乳がん患者において、患者がハーセプチン(trastuzumab, Genentech)に応答しそうかどうかを判断するために一般的に使用される。「応答バイオマーカー」は、治療に対する応答の程度を提供し、治療が機能しているかどうかの指標を提供する。例として、前立腺特異抗原のレベルが低下することは、一般的に前立腺がん患者に対する抗がん治療が機能していることを指し示すものである。マーカーが、本明細書に記載される処置のために患者を識別または選択するための基準として使用され得る場合、マーカーは、治療前および/または治療中に測定され得て、および/または得られた値は、臨床医が以下のいずれかを査定する際に使用される:(a)個体が最初に処置(単数または複数)を受けるのに大いに適している、または適していそう;(b)個体が最初に処置(単数または複数)を受けるのに大いに不適である、または不適そう;(c)処置に対する応答性;(d)個体が処置(単数または複数)を受け続けるのに大いに適している、または適していそう;(e)個体が処置(単数または複数)を受け続けるのに大いに不適である、または不適そう;(f)投薬量の調整;(g)臨床的有用性の可能性の予測;または(h)毒性。当業者によってよく理解されるように、臨床環境におけるバイオマーカーの測定は、本明細書に記載の処置を施すことを開始、継続、調整、および/または中止するための根拠として、このパラメータが使用されたことを明確に指し示すものである。
【0022】
「化学療法」とは、がんの処置に有用な化学的化合物である化学療法剤を伴う治療である。
【0023】
「臨床結果」、「臨床パラメータ」、「臨床応答」、または「臨床エンドポイント」とは、治療に対する患者の応答に関係するいずれかの臨床的観察または測定を指す。臨床転帰の非限定的な例は、腫瘍応答(TR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間、腫瘍再発までの期間(TTR)、腫瘍進行までの期間(TTP)、相対リスク(RR)、毒性、または副作用を包含する。
【0024】
「cMETインヒビター」は、cMETをコードする遺伝子の発現、および/またはcMETの発現、および/またはcMETの生物学的活性を、阻害、または有意に低減、またはダウンレギュレートする生物学的効果を有する化合物を指す。一態様において、cMETインヒビターは、cMETキナーゼと特異的に結合する。受容体チロシンキナーゼに対して臨床活性を持つ薬品には2種類があり:受容体の細胞外ドメインを標的とする抗体、およびATPと競合することによって細胞内部分を標的とし、かくして受容体の自己リン酸化を阻害し、かつ下流のシグナル伝達を防止する低分子TKIである。cMET TKIの例は、テポチニブ、クリゾチニブ、カプマチニブ、サボリチニブ、カボザンチニブ、MGCD265、メレスチニブ、および
【化1】
(GST-HG161)
を包含し、一方でオナルツズマブおよびARGX-111は、cMET標的抗体の例である。
【0025】
「組み合わせ」は、別の有効な様式に加えて、第一の有効な様式を提供することを指す。本明細書に記載の組み合わせという範囲で意図するのは、単一または多数の組成物にふくまれる、組み合わせ様式または相手(例として、活性化合物、成分、または薬品)のいずれかの方式である。単一の組成物、製剤、または単位剤形(すなわち、固定用量の組み合わせ)の中のいずれの様式も、同一の用量方式および送達経路を有している必要があると理解される。複数の様式が一緒に送達されるように製剤化される必要がある(例として、同じ組成物、製剤、または単位剤形において)と暗示することを意図するものではない。組み合わされた様式は、同じか、または異なる製造者によって、製造および/または製剤化され得る。したがって、組み合わせ相手は、例として、互いに独立して販売される完全に別々の医薬剤形または医薬組成物であってもよい。
【0026】
「組み合わせ療法」、「と組み合わせて」、または「と併せて」は、少なくとも2の別個の処置様式(例として、化合物、成分、または治療剤)を用いた、共同、並行、同時、逐次、または断続的な処置のいずれかの形態を表す。そのため、この用語は、対象へ他の処置様式を施す前、その最中、または後に、一方の処置様式を施すことを指す。組み合わせにおける様式は、いずれの順序でも施され得る。治療的に有効な様式は、一緒に(例として、同じまたは別々の組成物、製剤、または単位剤形において同時に)、または別々に(例として、別々の組成物、製剤、または単位剤形のための適切な投与プロトコールに従って、同じ日に、または異なる日に、ならびにいずれの順序でも)、医療従事者によって、または規制機関に従って処方されるやり方および投与方式で施される。一般的に、各処置様式は、その処置様式用に確定された投与量にて、および/または時間スケジュールで施されるであろう。任意に、3以上の様式が、組み合わせ療法において使用されてもよい。加えて、組み合わせ療法は、他のタイプの処置と併せて使用されてもよい。例えば、他の抗がん処置が、対象に対する現在の標準治療に関連する他の処置の中の、化学療法、手術、放射線療法(放射線)および/またはホルモン療法からなる群から選択されてもよい。
【0027】
「完全奏効」または「完全寛解」は、処置に応答して神経膠芽腫を包含するがんのすべての徴候の消失を指す。これは、必ずしも神経膠芽腫が治癒したことを意味するわけではない。
【0028】
「含む(comprising)」は、組成物および方法が記載された要素を包含するが、他の要素を除外するものではないことを意味することを意図する。組成物および方法を定義するために使用される場合、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」は、組成物または方法にとっていずれかの本質的な意義を持つ他の要素を除外することを意味するものである。「~からなる(consisting of)」は、特許請求される組成物および実質的な方法ステップについて、他の成分の微量要素より多いものを除外することを意味するものである。これらの遷移語の各々によって定義される態様は、本発明の範囲内である。したがって、方法および組成物は、追加のステップおよび成分を包含し得て(含む)、または代替的に、意義のないステップおよび組成物を包含する(本質的に~からなる)、または代替的に、述べられた方法ステップまたは組成物のみを意図する(~からなる)ことを意図するものである。
【0029】
「用量」および「投与量」は、cMETインヒビターを包含する、投与用の活性剤または治療剤の具体的な量を指す。かかる量は「剤形」に包含され、この剤形は、ヒト対象および他の哺乳動物に対する単位投与量として好適な、物理的に分離した単位を指し、各単位は、所望の発現、忍容性および治療効果を生ずるように計算された所定量の活性剤を、担体などの1以上の好適な医薬賦形剤と関連付けて含有する。
【0030】
本発明の意味における「医薬品」とは、医薬分野におけるいずれかの薬品であり、1以上の本発明の化合物またはその調製物(例として、医薬組成物または医薬製剤)を含み、ならびに臨床症状および/または神経膠芽腫に対する既知のリスクをこうむる患者の予防、治療、経過観察またはアフターケアに使用され得る。
【0031】
「客観的応答」とは、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を包含する測定可能な応答を指す。
【0032】
「全生存期間」(OS)とは、患者の登録から、死亡または生存が最後に確認された日にて削除されるまでの時間を指す。OSは、無処置または未処置の、個体または患者と比較した平均余命の延長分を包含する。全生存期間とは、例として、診断または処置の時点から1年、5年等などの、明確にされた期間、患者が生存している状態を指す。
【0033】
「部分奏効」は、RECIST v1.1ガイドラインに定義されているように、処置に応答して、1以上の腫瘍または病変のサイズ、または体内のがんの程度が減少することを指す。
【0034】
「患者」または「対象」は、動物、好ましくは人間を意味する。しかしながら、「対象」は、イヌおよびネコなどの伴侶動物を包含し得る。一態様において、対象は、成人ヒト患者である。別の態様において、対象は、小児の患者である。小児の患者は、処置の開始時で18歳を下回るいずれかのヒトを包含する。成人患者は、処置の開始時で18歳以上であるいずれかのヒトを包含する。一態様において、対象は、年齢65歳以上、MET増幅を保有する、または他の併存疾を持つヒトなどの高リスクグループのメンバーである。
【0035】
「薬学的に許容し得る」とは、化合物、インヒビター、物質または組成物が、製剤中に含まれる他の成分、および/またはそれによって処置される対象と、化学的および/または毒物学的に適合している必要があることを指し示すものである。換言すれば、物質または組成物が、化学的および/または毒物学的に対象の処置に好適である必要がある。
【0036】
「薬学的に許容し得る担体」または「薬学的に許容し得る希釈剤」とは、医薬投与に適合するすべての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤を意味する。薬学的に許容し得る担体の例は、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、ブドウ糖、グリセロール、エタノール等の1以上、ならびにそれらの組み合わせを包含する。かかる媒体および剤を薬学的活性物質用に使用することは、当技術分野においてよく知られている。許容し得る担体、賦形剤または安定剤は、用いられる投薬量および濃度にてレシピエントに対して無毒であり、そして本発明の範囲を限定することなく、以下を含む:追加の緩衝剤;保存剤;共溶媒;アスコルビン酸およびメチオニンを包含する抗酸化剤;EDTAなどのキレート剤;金属錯体(例として、亜鉛-タンパク質錯体);ポリエステルなどの生分解性ポリマー;ナトリウムなどの塩形成性対イオン;多価糖アルコール;アラニン、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、リジン、オルニチン、ロイシン、2-フェニルアラニン、グルタミン酸、およびスレオニンなどのアミノ酸;ラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース、ミオイニシトール、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例として、イノシトール)、およびポリエチレングリコールなどの有機糖または糖アルコール;尿素、グルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[アルファ]-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウムのような含硫黄還元剤;ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリンなどの低分子量タンパク質;ならびにポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー。他の薬学的に許容し得る担体、賦形剤、または安定剤もまた、それらが医薬組成物の所望の特徴に悪影響を及ぼさない場合には、本明細書に記載の医薬組成物中に包含されてもよい。
【0037】
「無増悪生存期間」(PFS)は、登録から疾患進行または死亡までの時間を指す。PFSは一般的に、Kaplan-Meier法、および固形癌効果判定基準(RECIST)1.1標準を使用して測定される。一般に、無増悪生存とは、神経膠芽腫を包含するがんが悪化することなく、患者が生存している状態を指す。
【0038】
「RECIST」とは、固形癌効果判定基準(Response Evaluation Criteria in Solid Tumors)を意味する。RECISTのガイドライン、基準、または標準は、成人および小児がん臨床試験において使用のための、腫瘍サイズの変化を客観的に評価するための固形腫瘍測定および定義への標準的なアプローチを記載している。RECIST v1.1は、改訂RECISTガイドラインのバージョン1.1を意味し、2009, European Journal of Cancers 45: 228に発表された。
【0039】
「再発性」神経膠芽腫を包含する「再発性」がんは、手術などの初期治療への応答後、初期の部位または遠隔部位にて再増殖したものである。局所的「再発性」がんは、以前処置したがんと同じ場所において治療後に再び起こるがんである。
【0040】
症状(単数または複数)の「低下」(およびこの表現の文法的同意義のもの)は、症状(単数または複数)の重症度または頻度を減少すること、あるいは症状(単数または複数)の消失を指す。
【0041】
「耐性のある」腫瘍またはがんは、抗がん剤を用いた処置をし得ない、またはこれ以上し得なくなった、神経膠芽腫を包含する腫瘍またはがんである。抗がん剤を用いた最初の処置を試みる前に、耐性がすでに存在することもある。耐性はまた、抗がん剤を用いた最初の処置後に、場合によっては処置の結果として、つけられることもある。
【0042】
「治療に好適」または「処置に好適」とは、同じがんを有し、同じ治療を受けるものの、比較の目的で考えられる異なる特徴を保有する患者と比較して、患者が1以上の望ましい臨床転帰を示しそうだということを意味するものとする。一側面において、考えられる特徴は、遺伝子多型または体細胞突然変異である。別の側面において、考えられる特徴は、遺伝子またはポリペプチドの発現レベルである。一側面において、より望ましい臨床転帰とは、腫瘍負荷低下などの腫瘍応答が、相対的に高い可能性、または相対的に良好であることである。別の側面において、より望ましい臨床転帰は、全生存期間が相対的に長いことである。なお別の側面において、より望ましい臨床転帰は、無増悪生存期間または腫瘍進行までの時間が相対的に長いことである。なお別の側面において、より望ましい臨床転帰は、無病生存期間が相対的に長いことである。別の側面において、より望ましい臨床転帰は、腫瘍再発が相対的に低下する、または遅れることである。別の側面において、より望ましい臨床転帰は、転移が相対的に減少することである。別の側面において、より望ましい臨床転帰は、相対リスクが相対的に低いことである。なお別の側面において、より望ましい臨床転帰は、毒性または副作用が相対的に低減することである。いくつかの態様において、1より多くの臨床転帰が同時に考えられる。かかる一側面において、遺伝子多型の遺伝子型などの特徴を保有する患者は、同じがんを有し、同じ治療を受けるものの、その特徴を有していない患者と比較して、1以上のより望ましい臨床転帰を示すこともある。本明細書で定義されるように、患者は治療に好適であると考えられる。かかる別の側面において、特徴を保有する患者は、1以上の望ましい臨床転帰を示すが、同時に、1より多くのあまり望ましくない臨床転帰を示すこともある。その後、臨床結果は全体的に考えられ、患者の特定の状況および臨床転帰の関連性を考えて、患者が治療に好適であるかどうかの決定がなされる。いくつかの態様において、無増悪生存期間または全生存期間は、全体的意思決定において腫瘍応答よりも重み付けされる。
【0043】
cMETインヒビターの「治療的に有効な量」とは、神経膠芽腫を包含するがんを持つ患者へ、ある方法、組み合わせまたは組み合わせ療法に従って投与された場合に、その方法、組み合わせまたは組み合わせ療法が意図した治療効果(例として、患者におけるがんの1以上の兆候の緩和、改善、軽減、または除去)、あるいはがん患者の処置過程におけるいずれかの他の臨床的結果を有するであろう、必要な投薬量および期間において有効な量を指す。治療効果は、必ずしも1投与量によって起こるとは限らず、一連の投与量の投与の後にのみ起こることもある。したがって、治療的に有効な量を1以上の投与において投与してもよい。かかる治療的に有効な量は、個体において所望の応答を引き出す、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびにcMETインヒビターの技量などの因子によって変動することもある。治療的に有効な量はまた、cMETインヒビターのいずれかの毒性または有害な効果よりも、治療的に有益な効果が上回る量でもある。
【0044】
「処置(treatment)」、「処置する(treat)」、および「処置している(treating)」は、本明細書に記載の、神経膠芽腫、またはその1以上の症状を逆転させること、緩和すること、発症を遅らせること、または進行を阻害することを指す。いくつかの態様において、処置は、1以上の症状が発症した後に施される。他の態様において、処置は、症状の非存在下で施される。例えば、症状が発症する前に(例として、重度疾患に対する予測因子である併存疾、または他の感受性因子を考慮して)、感受性の高い個体へ処置が施される。
【0045】
がんと診断された、またはがんを有すると疑われる対象へ適用する場合、「腫瘍」は、いずれかのサイズの悪性または潜在的に悪性のある新生物または組織塊を指し、それは原発性腫瘍および続発性新生物を包含する。固形腫瘍は、嚢胞または液体領域を通常は含有しない異常な増殖または組織の塊である。異なるタイプの固形がんが、それらを形成する細胞のタイプに対して命名されている。
化合物
【0046】
一態様は、神経膠芽腫の処置のための、以下:
【化2】
の式に従った化合物、あるいは、その薬学的に許容し得る塩、および/もしくは溶媒和物または水和物の使用である。
【0047】
この化合物はまた、第1の化合物と称されてもよい。第1の化合物はまた、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(INN:テポチニブ)として称されてもよい。それは、WO 2009/006959において、化合物「A257」として開示され、かつさらに特徴づけられている。例示的な態様において、この第1の化合物の塩酸塩水和物形態が使用され、それは、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩水和物として称される。別の例示的な態様において、この第1の化合物の塩酸塩一水和物形態が使用され、それは3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物として称される。それは、WO 2009/007074において、化合物「A7」として開示され、かつさらに特徴づけられている。例示的な態様において、この第1の化合物の塩酸塩一水和物の結晶形態H2が使用され、それは、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2として称される。それは、WO 2010/078897中の実施例12において開示され、かつさらに特徴づけられている。
【0048】
以下における第1の化合物への参照は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩水和物、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物、および3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2への参照を包含するものとして読まれるものとする。好ましい態様において、本発明の方法において使用するためのcMETインヒビターは、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩水和物、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物、および3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2の群から選択される。上述の化合物はすべて、高選択性かつ強力なcMETインヒビターである。
【0049】
一態様は、神経膠芽腫の処置において使用のための、以下:
【化3】
(GST-HG161)
の式に従った化合物、あるいは、その薬学的に許容し得る塩、および/もしくは溶媒和物または水和物である。cMETインヒビターGST-HG161は、EP 3 533 787中に「態様1-2」として開示され、かつさらに特徴付けられている。
【0050】
上記の化合物は、それらの遊離形態で、または薬学的に許容し得る塩としてのいずれかで使用されてもよい。遊離化合物は、酸との反応によって、例えば、等価な量の塩基および酸を、例えば、エタノールなどの不活性溶媒中で反応させ、およびこれに続いて蒸発させることによって、関連する酸付加塩に変換されてもよい。この反応のための好適な酸は、とりわけ、例えば、ハロゲン化水素(例えば、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素)、他の鉱酸およびその対応する塩(例えば、スルファート、ニトラート、またはホスファート等)、スルホン酸アルキル-およびモノアリールスルホナート(例えば、エタンジスルホナート(エジシレート)、トルエンスルホナート、ナフタレン-2-スルホナート(ナプシレート)、ベンゼンスルホナート)ならびに他の有機酸およびその対応する塩(例えば、フマラート、オキサラート、アセタート、トリフルオロアセタート、タートラート、マレアート、スクシナート、シトラート、ベンゾアート、サリチラート、アスコルバート)等の生理学的に許容し得る塩を与える塩である。
【0051】
第1の化合物の薬学的に許容し得る塩の例示的な態様は、上述のように塩酸塩を含む。
【0052】
別段の記載がない限り、本明細書で描かれる構造はまた、構造のすべての異性体(例として、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学上の(またはコンフォメーションの))形態(例えば、各不斉中心のRおよびS配置、ZおよびEの二重結合異性体、ならびにZおよびEのコンフォメーション異性体)を包含することも意味される。したがって、本化合物の単一立体化学異性体、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学上の(またはコンフォメーションの)混合物は、本発明の範囲内である。
【0053】
加えて、別段の記載がない限り、本明細書に描かれる構造はまた、1以上の同位体が濃縮された原子が存在していることのみ異なる化合物を包含することも意味する。例えば、重水素またはトリチウムによる水素の置き換え、または13Cまたは14Cが濃縮された炭素による炭素の置き換えを包含する本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。いくつかの態様において、基は、1以上の重水素原子を含む。
【0054】
具体的に、cMETインヒビターは、同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない。一態様において、cMETインヒビターの投与は、いずれかの他の治療剤との組み合わせ、特に別の化学療法剤との組み合わせは、いずれの処置方針(例として、cMETインヒビターの投与の前、それと同時、またはその後)においても除外される。一態様において、cMETインヒビターの投与は、p70S6kインヒビターとの組み合わせ、特に4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドとの組み合わせにおいては除外される。一態様において、cMETインヒビターは、組み合わせ療法においては投与されない。一態様において、cMETインヒビターは、特に同じ処置方針において放射線療法と組み合わせて投与される。
使用、製剤、および投与
【0055】
本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的に、経直腸的に、経鼻的に、口腔内に、経膣的に、または移植されたリザーバを介して投与される。好ましくは、組成物は、経口的に投与される。より好ましくは、cMETインヒビターは、経口投与を介して投与される。一態様において、本発明の化合物の経口製剤は、錠剤またはカプセル形態である。別の態様において、経口製剤は、口または経鼻胃管を介してこれを必要とする対象に与えられるであろう溶液または懸濁液である。本発明のいずれの経口製剤も、食品の有無にかかわらず投与されてよい。いくつかの態様において、この発明の薬学的に許容し得る組成物は、食品とは別に投与される。他の態様において、この発明の薬学的に許容し得る組成物は、食品と共に投与される。
【0056】
この発明の薬学的に許容し得る組成物は、いずれかの経口的に許容し得る剤形で経口的に投与される。例示の経口剤形は、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液である。経口使用のための錠剤のケースにおいて、一般的に使用される担体は、ラクトースおよびコーンスターチを包含する。ステアリン酸マグネシウムなどの平滑剤もまた、典型的に添加される。カプセル形態での経口投与について、有用な希釈剤は、ラクトースおよび乾燥コーンスターチを包含する。水性懸濁液が経口使用に要求されるとき、活性成分は、乳化剤および懸濁化剤と組み合わせられる。所望される場合、ある甘味料、フレーバー剤または着色剤もまた、任意に添加される。
【0057】
任意に担体材料と組み合わせて単一の剤形で組成物を産生する本発明の化合物の量は、処置される宿主、具体的な投与のモードに応じて変化するであろう。好ましくは、提供される組成物は、0.01~100mg/kg体重/日の化合物の投薬量が、これらの組成物を受ける患者に投与され得るように処方されるべきである。
【0058】
医薬組成物は、1以上の投与単位の形態であり、それは1日1回の投与量として、または1日の総投与量が1日1回の投与量と同じになるように1日2回以上の連続した投与量として提供される。特定の態様において、cMETインヒビターは、約15mg、25mg、100mg、215mg、225mg、250mg、300mg、450mg、500mgまたは1000mg、好ましくは約15mg、25mg、100mg、225mg、250mg、450mgまたは500mg、より好ましくは約225mgまたは250mgの投薬量強度において投与される。
【0059】
特定の態様において、それを必要とする対象へ投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約0.5mg~約1400mgの間、好ましくは1日当たり約300mg~約1400mgの間、より好ましくは1日当たり約225mgと約1000mgとの間である。特定の態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約1mgと1000mgとの間、より好ましくは1日当たり約1mgと700mgとの間、最も好ましくは1日当たり約100mgと500mgとの間、非常に好ましくは1日当たり約225mgと500mgとの間である。一態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約225mgと約900mgとの間、好ましくは1日当たり225mgおよび約450mg、より好ましくは450mgである。一態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約900mgである。一態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約250mgと1000mgとの間、好ましくは1日当たり250mgおよび500mg、より好ましくは500mgである。一態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約1000mgである。特定の態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約30mgと400mgとの間であり、より好ましくは1日当たり約30mg~230mgの間である。一態様において、それを必要とする対象に投与されるcMETインヒビターの総量は、1日当たり約60mg~315mgである。
【0060】
上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、毎日投与される。上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、1日1回投与される。一態様において、cMETインヒビターは約450mg~500mgの投薬量強度において1日1回投与される。一態様において、テポチニブの投薬量は、経口で1日1回、450mg(テポチニブ塩酸塩水和物500mgと等価)である。一態様において、テポチニブの投薬量は、経口で1日1回、225mgである。225mgのテポチニブは、250Mgのテポチニブ塩酸塩水和物と等価である。一態様において、テポチニブの投薬量は、経口で1日1回、900mgである。900mgのテポチニブは、1000Mgのテポチニブ塩酸塩水和物と等価である。
【0061】
上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、1日2回投与される。一態様において、cMETインヒビターは250mgの投薬量強度において1日2回投与される。一態様において、cMETインヒビターは500mgの投薬量強度において1日2回投与される。一態様において、テポチニブの投薬量は、経口で1日2回、450mgである。
【0062】
上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、1日3回投与される。一態様において、cMETインヒビターは約100mgの投薬量強度において1日3回投与される。
【0063】
上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、1日4回投与される。一態様において、cMETインヒビターは250mgの投薬量強度において1日4回投与される。一態様において、テポチニブの投薬量は、経口で1日4回、225mgである。
【0064】
上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、週に3回投与される。一態様において、cMETインヒビターは約60mgと315mgとの間の投薬量強度において週に3回投与される。
【0065】
上述の態様のいずれにおいても、cMETインヒビターは、少なくとも10週の期間投与される。上述の態様のいずれかの一側面において、cMETインヒビターは、少なくとも約11週、12週、13週、14週、15週、16週、17週、18週、19週、20週、21週、22週、23週、24週、25週、26週、27週、28週、29週、30週、31週、32週、33週、34週、35週、36週、37週、38週、39週、40週、41週、42週、43週、44週、45週、46週、47週、48週、49週、50週、51週、または52週の期間投与される。上述の態様のいずれかの一側面において、cMETインヒビターは、少なくとも約11週~約52週、好ましくは少なくとも約11~25週、より好ましくは少なくとも約15~21週、最も好ましくは少なくとも約18~20週、非常に好ましくは少なくとも約19週の期間投与される。
【0066】
上述の態様のいずれかの別の側面において、cMETインヒビターは、少なくとも約10~52週間、特に少なくとも約10~19週間投与される。一態様において、cMETインヒビターは、1日1回約300mg~1400mgの投薬量強度において、少なくとも約10~52週間、特に少なくとも約10~19週間投与される。一態様において、cMETインヒビターは、1日2回約450mg~500mgの投薬量強度において、少なくとも約10~52週間、特に少なくとも約10~19週間投与される。一態様において、テポチニブ塩酸塩水和物は、1日2回約500mgの投薬量強度において、少なくとも約10~52週間、特に少なくとも約10~19週間投与される。
【0067】
本発明の一態様において、対象は、播種性神経膠芽腫に罹患している。本発明の一態様において、播種性神経膠芽腫は処置される。この発明の一態様において、対象は、特に7q31.2にてMET増幅を保有する神経膠芽腫に罹患している。本発明の一態様において、MET増幅を保有する神経膠芽腫は処置される。本発明の一態様において、対象は、播種性神経膠芽腫、および/またはMET増幅を保有する神経膠芽腫に罹患している。本発明の一態様において、播種性神経膠芽腫、MET増幅を保有する神経膠芽腫、またはそれらの組み合わせは処置される。MET増幅は、MET遺伝子のコピー数の増大によってもたらされ、EGFR遺伝子変異陽性NSCLCにおける耐性メカニズムとして識別されている(Socinski et al., 2021, JCO Precision Oncology 5: 653)。この発明の一態様において、対象は、7q31.2にてIDH野生型、MGMT非メチル化および/またはMET増幅を保有する神経膠芽腫に罹患している。この発明の一態様において、7q31.2にてIDH野生型、MGMT非メチル化またはMET増幅、あるいはそれらの組み合わせを保有する神経膠芽腫は処置される。この態様の別の側面において、神経膠芽腫は、MET-エクソン14スキッピングを保有する
【0068】
これらのバイオマーカーは、標準的な方法によって確定され得る。さまざまな態様において、バイオマーカータンパク質レベルは、定量的ウェスタンブロット、多数のイムノアッセイフォーマット、ELISA、免疫組織化学、組織化学、または腫瘍溶解物のFACS分析の使用、蛍光免疫染色、ビードベースの懸濁液イムノアッセイ、ルミネックス技術、または近接ライゲーションアッセイを含む方法によって確定される。別の態様において、バイオマーカーRNAレベルは、マイクロアレイチップ、RT-PCR、qRT-PCR、マルチプレックスqPCR、またはin situハイブリダイゼーションを含む方法によって確定される。別の態様において、マーカーは次世代シーケンシング、リキッドバイオプシー、および/または組織生検によって検出される。例えば、METエクソン14スキッピングは、DNAベースの方法(例として、次世代シーケンシングまたはサンガーシーケンシング)、ならびにRNAベースの方法(例として、次世代シーケンシングまたは定量的PCRアッセイ)によって検出され得て、各事例において、液体生検(例として、Guardant360 CDx Test Version 2.10(73遺伝子)アッセイを使用)または組織生検からのサンプルを使用する。
【0069】
この方法には、いずれの好適なサンプルが使用され得る。かかるものの非限定的な例は、血清サンプル、血漿サンプル、全血、すい液サンプル、組織サンプル、腫瘍溶解物、または腫瘍サンプルの1以上を包含し、これらは、例として、針生検、コア生検、または針穿刺吸引から単離され得る。例えば、組織、血漿、または血清サンプルは、本発明のcMETインヒビターを用いた処置前、および任意で処置中に患者から採取する。得られた情報は、患者が、がん治療に対して有利に応答するであろうか、または不利に応答するであろうかを示すこともある。
【0070】
本発明の一態様において、対象は、処置中の入院中の患者である。別の態様において、対象は、処置中の外来診療の患者である。先行する態様の一側面において、対象は、入院中の患者に処置されるものから外来診療の患者に処置されるものまで推移した後に、cMETインヒビターの投与を継続してもよい。
【0071】
一態様において、cMETインヒビターの投与は、1以上の臨床的有用性をもたらす。この態様の一側面において、1以上の臨床的有用性は、対象における、完全奏効、完全奏効の可能性の増大、薬剤耐性発生の可能性の低減、腫瘍進行までの時間の延長、および腫瘍再発までの時間の延長を含む群から選択され;好ましくは完全奏効である。
【0072】
本発明はまた、神経膠芽腫の処置を、これを必要とする対象においてする方法を提供し、それは有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む。神経膠芽腫を処置または阻害する有効量は、非処置のコントロール対象と比較して、腫瘍負荷および死亡率などの神経膠芽腫の兆候の1以上の低減を引き起こすであろう量である。
【0073】
本発明の一態様は、神経膠芽腫の処置を、これを必要とする対象においてする方法であって、有効量のcMETインヒビター、またはその薬学的に許容し得る塩、および/または溶媒和物または水和物を対象に投与することを含む。この態様の一側面において、対象はヒトである。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、少なくとも10週間対象へ投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、テポチニブ、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/もしくは水和物である。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドとの組み合わせにおいて投与されない。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、単一の処置方針において少なくとも10週間投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない。
【0074】
本発明の好ましい一態様は、それを必要とするヒトにおいて神経膠芽腫を処置する方法であって、有効量のテポチニブ、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/もしくは水和物を、ヒトへ少なくとも10週間投与することを含み、ここでテポチニブは、1の処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない。より具体的には、本発明の好ましい一態様は、それを必要とするヒト対象における神経膠芽腫の長期処置のための方法であって、対象へ有効量のcMETインヒビターを1の処置方針において少なくとも10週間投与することを含み、cMETインヒビターは以下:
【化4】
または、その薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/または水和物であって、ならびにcMETインヒビターが、同じ処置方針において化学療法と組み合わせて投与されない。
【0075】
この態様の別の側面において、cMETインヒビターの投与は、長期的に対象において抗腫瘍活性をもたらす。
【0076】
用語「同じ処置方針」、「1のおよび同じ処置方針」、「特定の処置方針」、および「単一の処置方針」は、文脈が別段の指示をしない限り、本明細書において互換的に使用され、定義された処置方針、すなわち、第一選択処置方針、第二選択処置方針、またはより高次の処置方針を指すが、それらの組合せを指すものではない。
【0077】
さまざまな態様において、本発明の方法は、第一選択、第二選択、第三選択、またはそれ以降の処置方針として用いられる。処置方針とは、患者が受ける異なる薬物またはその他の治療を用いた処置の順序における順番を指す。第一選択治療方式とは、最初に行われる処置のことであり、第二選択治療、または第三選択治療は、それぞれ第一選択治療の後、または第二選択治療の後に行われる。したがって、第一選択治療は、疾患または疾病に対する最初の処置である。神経膠芽腫を包含するがんを持つ患者において、時には一次治療または一次処置と呼ばれる第一選択治療は、手術、化学療法、放射線療法、またはこれらの治療の組み合わせであり得る。典型的に、患者がその後の化学療法方式(第二選択または第三選択治療)を受けるのは、患者が、第一選択または第二選択治療に対して肯定的な臨床転帰を示さなかったか、あるいは亜臨床的な応答しか示さなかったか、あるいは肯定的な臨床的応答を示したが後に後戻りを経験し、場合によっては以前の肯定的な応答を引き出した以前の治療に対して抵抗性を示す疾患を持つようになったためである。
【0078】
この態様の別の側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第一選択処置において投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第一選択処置において投与され、本方法は、cMETインヒビターの初回投与の後に、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置または処置方針を施すことをさらに含む。本発明のcMETインヒビターによって提案される安全性および臨床的有用性は、神経膠芽腫患者における第一選択設定となることを保証するものである。特に、テポチニブは神経膠芽腫に罹患している患者にとって、新たな標準処置になることもある。この態様の別の側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第二選択処置またはより高次の処置方針において投与される。
【0079】
この態様の別の側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第二選択処置またはより高次の処置方針において投与され、本方法は、cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置または処置方針を施すことをさらに含む。対象が少なくとも1巡の以前のがん治療を受けた限り、治療の以前の回数に制限はない。以前のがん治療の巡は、例として、化学療法剤(本発明によるcMETインヒビターを除く)、放射線療法または化学放射線療法を用いて対象を処置するための定められた予定/段階を指し、対象はかかる以前の処置に失敗し、予定よりも早く完了または中止された。その理由のひとつは、がんが以前の治療に対して抵抗性であった、あるいは抵抗性になったことであり得る。cMETインヒビターの使用は、この耐性機序を抑制し、治療の効果を回復させる。耐性を持つ患者の集団は処置可能となり、改善された応答を示す。一側面において、対象は、少なくとも1巡または1方針の以前の神経膠芽腫処置を受け;ここで、任意に、神経膠芽腫は以前の処置に対して抵抗性であったか、または抵抗性になった。1巡の以前の神経膠芽腫治療と1方針の以前の神経膠芽腫処置とは、本明細書では互換的に使用される。この態様の一側面において、対象は、手術、放射線療法および/または化学療法を用いて以前処置されている。
【0080】
上記の態様のいずれかにおいて、cMETインヒビターの投与は、1以上の臨床的有用性を対象へもたらす。この態様の一側面において、1以上の臨床的有用性は、完全奏効、完全奏効の可能性の増大、薬剤耐性発生の可能性の低減、腫瘍進行までの時間の延長、および腫瘍再発までの時間の延長である。
【0081】
本発明の化合物は、神経膠芽腫の発病前もしくはそれに続いて、または対象において神経膠芽腫が診断された後に投与され得る。本発明の使用の先述の化合物および医薬産物は、具体的には治療処置のために使用される。治療的に関係のある効果は、障害の1以上の症状をある程度和らげるか、または疾患または病態に関連するかまたはそれを引き起こす1以上の生理学的または生化学的パラメータを部分的または完全のいずれかで常態に戻す。モニタリングは、化合物が、例として、応答をブーストし、および疾患の症状を根絶するために、別個の間隔で投与される場合は、処置の一種として考えられる。本発明の方法はまた、障害を発症する可能性の低減する、または軽度から中程度の疾患の兆候に先立って神経膠芽腫に関連する障害の開始を予防までもする、または神経膠芽腫の発生した、およびそれの継続する症状を処置するためにも使用され得る。
【0082】
本発明はさらにまた、本発明に従う少なくとも1の使用のための化合物、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/または水和物を含む医薬に関する。
単独療法
【0083】
本発明は、対象における成功した神経膠芽腫の長期治療に関する。さまざまな態様において、cMETインヒビターは単独で、すなわち単独療法として投与される。一態様において、cMETインヒビターは、特定の処置方針において単独療法として投与される。それは、cMETインヒビターを用いた単独療法の前または後に、別の処置方針において他の処置を施すことを除外するものではない。一態様において、cMETインヒビターは、全体的に単独療法として投与される。それは単一の有効成分処置であり、唯一の処置方針(すなわち、第一選択処置)である。
【0084】
さまざまな態様において、cMETインヒビターは、4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドとの組み合わせにおいて投与されない。好ましくは、cMETインヒビターは、いずれのp70S6kインヒビターなしで、より好ましくは、いずれの化学療法剤なしで、最も好ましくは、いずれの化学療法または放射線療法なしで、非常に好ましくは、いずれの他の治療剤なしで投与される(以下、一体的に限定組み合わせ療法と呼ぶ)。
【0085】
本発明者らは、cMETインヒビターが、単独療法(または限定組み合わせ療法)として少なくとも10週間以上、好ましくは19週間以上まで、より好ましくは52週間以上まで投与される場合、耐性のない長期処置が成功することを、驚くべきことに見出した。先行技術は、cMETインヒビター、特にテポチニブが、薬剤耐性および腫瘍進行の発生なしに、単独療法(または限定組み合わせ療法)として、神経膠芽腫を成功裏に処置するために使用され得るということを教示も示唆もしていない。
組み合わせ処置
【0086】
さまざまな態様において、cMETインヒビターは、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせと組み合わせて投与される。それらは、同時に、別々に、または順番に、ならびにいずれの順序でも施され得る。本発明の組み合わせ療法の個々の組み合わせ相手は、治療中の異なる時期に別々に、あるいは分割または単一の組み合わせ形態において同時に施されてよい。組み合わせにおける処置方式は、異なるが重複する送達方式(例として、毎日、1日2回、それに対して、単回または週1回の投与)を有してもよい。これらの態様の一側面において、方法は、cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置または処置方針を施すことをさらに含む。任意で、cMETインヒビターの初回投与前に、手術または放射線療法、もしくはそれらの組み合わせが最初に、化学療法が続いて施される。これらの態様の一側面において、方法は、cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、任意で化学療法が続く処置を施すことを含む。
【0087】
一態様において、cMETインヒビターは、手術と組み合わせて投与される。この態様の一側面において、手術は葉切除および/または切除である。
【0088】
一態様において、cMETインヒビターは、放射線療法と組み合わせて投与される。cMETインヒビターと放射線療法とは、1のかつ同じ処置方針においてか、または異なる処置方針においてかのどちらかの、いずれの処置方針においても施され得る。これらの態様の一側面において、放射線療法は、神経膠芽腫の先行する処置方針において、すなわち、神経膠芽腫のより高次の処置方針におけるcMETインヒビターの初回投与前に、施される。これらの態様の一側面において、cMETインヒビターと放射線療法とは、同じ処置方針において施される。同一選択処置の好ましい態様において、放射線療法は、単回照射量として、またはcMETインヒビターの初回投与後に、またはそれらの組み合わせで施される。同一選択処置のより好ましい態様において、放射線療法は、cMETインヒビターの初回投与後96時間以内、好ましくは72時間以内、より好ましくは48時間以内、最も好ましくは36時間以内、非常に好ましくは24時間以内に施される。一態様において、放射線療法は、同一の処置方針において、cMETインヒビターの初回投与後36時間以内に施される。
【0089】
放射線療法の例は、陽子線治療、ガンマ線照射、中性子線放射線療法、電子線放射線療法、小線源治療、低線量放射線療法、全身放射性同位元素、および強度変調放射線療法(IMRT)である。一態様において、放射線療法は陽子線照射である。
【0090】
いくつかの態様において、放射線療法は、標準的な分割(例として、1日に1.8~2Gy、週5日)、毎日1回に総線量50~70Gyまでのいずれかで行われる。他の分割スケジュールもまた想定され得て、例えば、1回あたりの線量は少ないが1日2回で、cMETインヒビターもまた1日2回とする。より短い期間にわたり、より高い毎日の線量を与えることもまた可能である。一態様において、放射線治療は、1000~6000cGy、好ましくは2000~5000cGy、より好ましくは3000~4000cGy、最も好ましくは3500~3700cGyを含む。この態様の一側面において、放射線治療の後に、1000~4000cGy、好ましくは2000~3000cGy、より好ましくは2300~2500cGyにて腫瘍床へのブーストが続く。好ましい態様において、陽子線放射線療法などの放射線療法が、約3000~4000cGyを含み、任意で続いて、2000~3000cGyの腫瘍床へのブーストを含む。
【0091】
一態様において、cMETインヒビターが同じ処置方針において化学療法剤と組み合わせて投与されないという条件で、cMETインヒビターは、1以上の追加の治療剤と組み合わせて投与される。相乗的または増加した効果は、医薬組成物中の2種以上の化合物を使用して達成されてもよい。活性成分は、同時にかまたは連続してのいずれかで使用され得る。一態様において、cMETインヒビターと抗がん剤とは異なる処置方針において投与されるという条件で、cMETインヒビターは、抗がん剤と組み合わせて投与される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第二選択処置またはより高次の処置方針において投与され、ならびに化学療法は、cMETインヒビターの初回投与前に施される。この態様の一側面において、cMETインヒビターは、神経膠芽腫の第一選択処置において投与され、ならびに化学療法はcMETインヒビターの初回投与後に施される。この態様の一側面において、化学療法または抗がん剤は、テモゾロミドである。
【0092】
いくつかの態様において、cMETインヒビターと1以上の追加の治療剤との組み合わせは、cMETインヒビターまたは追加の治療剤が、単独で投与されるときの投与される有効量と比較して、同じ結果を達成する投与されるcMETインヒビターおよび/または1以上の追加の治療剤の有効量(これらに限定されないが、投薬量の体積、投薬量の濃度、および/または投与される合計薬物用量を包含する)を低減する。いくつかの態様において、cMETインヒビターと追加の治療剤との組み合わせは、追加の治療剤単独での投与と比較して合計処置期間を低減する。いくつかの態様において、cMETインヒビターと追加の治療剤との組み合わせは、追加の治療剤単独での投与に関連する副作用を低減する。いくつかの態様において、有効量のcMETインヒビターと追加の治療剤との組み合わせは、有効量のcMETインヒビターまたは追加の治療剤単独と比較して、より効果的である。一態様において、有効量のcMETインヒビターと1以上の追加の治療剤との組み合わせは、いずれかの剤の単独での投与よりも、1以上の追加の臨床的有用性をもたらす
発明の項目
【0093】
本発明はまた、以下の項目を含む:
1 神経膠芽腫の長期処置のためのそれを必要とするヒト対象における方法であって、対象へ有効量のcMETインヒビターを少なくとも10週間投与することを含み、ここでcMETインヒビターは以下:
【化5】
またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/または水和物であり、それは4-[(S)-2-アゼチジン-1-イル-1-(4-クロロ-3-トリフルオロメチル-フェニル)-エチルアミノ]-キナゾリン-8-カルボン酸アミドとの組み合わせにおいて投与されない、前記方法。
2 cMETインヒビターが、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩水和物、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物、および3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2の群から選択される、項目1に記載の方法。
3 播種性神経膠芽腫が処置される、項目1および2のいずれか一項目に記載の方法。
4 MET増幅を保有する神経膠芽腫が処置される、項目1~3のいずれか一項目に記載の方法。
5 7q31.2にてIDH野生型、MGMT非メチル化および/またはMET増幅を保有する神経膠芽腫が処置される、項目1~4のいずれか一項目に記載の方法。
6 cMETインヒビターの投与が、完全奏効の可能性の増大、薬剤耐性発生の可能性の低減、腫瘍進行までの時間の延長、および腫瘍再発までの時間の延長の群から選択される、1以上の臨床的有用性をもたらす、項目1~5のいずれか一項目に記載の方法。
7 cMETインヒビターが、少なくとも約11~25週間投与される、項目1~6のいずれか一項目に記載の方法。
8 cMETインヒビターが、毎日投与される、項目1~7のいずれか一項目に記載の方法。
9 投与されるcMETインヒビターの総量が、1日当たり約225mg~約1000mgの間である、項目1~8のいずれか一項目に記載の方法。
10 cMETインヒビターが、経口投与を介して投与される、項目1~9のいずれか一項目に記載の方法。
11 手術、放射線療法、化学療法、およびそれらの組み合わせの群から選択される処置を施すことをさらに含む、項目1~10のいずれか一項目に記載の方法。
12 放射線療法が施され;ここで任意に、放射線療法が陽子照射である、項目11に記載の方法。
13 放射線療法が、約3000~4000cGyを含み、任意で続いて、2000~3000cGyにて腫瘍床へのブーストを含む、項目11または12に記載の方法。
14 化学療法が施され;ここで任意に、化学療法がテモゾロミドである、項目11に記載の方法。
15 対象が、少なくとも1巡の以前の神経膠芽腫処置を受け;ここで任意に、神経膠芽腫は以前の処置に対して抵抗性であったか、または抵抗性になった、項目1~14のいずれか一項目に記載の方法。
16 cMETインヒビターが、神経膠芽腫の第二選択処置またはより高次の処置方針において投与される、項目1~15のいずれか一項目に記載の方法。
17 cMETインヒビターの初回投与前に、手術、放射線療法、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、任意で化学療法が続く処置を施すことをさらに含む、項目1~16のいずれか一項目に記載の方法。
18 cMETインヒビターが、神経膠芽腫の第一選択処置において投与される、項目1~14のいずれか一項目に記載の方法。
19 cMETインヒビターが、放射線療法または化学療法と組み合わせて投与されない、項目1~10のいずれか一項目に記載の方法。
20 cMETインヒビターが、単独療法として投与される、項目1~10のいずれか一項目に記載の方法。
【0094】
本発明は、本明細書に記載の特定の化合物、医薬組成物、使用および方法に限定されるものではない(かかる事柄は当然変動し得るので)ことを理解されたい。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様を記載する目的だけのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。本発明に従って不可欠な技術は、明細書に詳細に記載されている。詳細に記載されていない他の技術は、当業者によく知られている既知の標準的な方法に対応するか、またはその技術は、引用文献、特許出願、または標準文献においてより詳細に記載されている。本出願中の他の暗示が与えられない限り、それらは例としてのみ使用され、本発明に従って不可欠であるとは考えられないが、それらは他の好適なツールおよび生物学的材料によって置き換えられ得る。
【発明を実施するための形態】
【0095】
例証
以下の例に描かれるとおり、ある例示の態様において、化合物は、以下の一般的な手順に従って調製される。
【実施例1】
【0096】
合成
化合物「A257」と称される、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(遊離塩基)は、WO2009/006959の実施例40、およびWO2009/007074の実施例3に記載されるように、以下の通り合成され得る:
【化6】
【0097】
115mlのTHF中の13.0g(56.5mmol)の3-(5-ヒドロキシ-ピリミジン-2-イル)-安息香酸メチルエステルと13.4g(62.1mmol)のN-Boc-ピペリジンメタノールの懸濁液へ、17.7g(67.8mmol)のトリフェニル-ホスフィンを入れた。懸濁液を5℃まで冷却した。この温度にて保管した懸濁液へ、13.3ml(67.8mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを45分以内で攪拌下で滴下して入れた。反応混合物を、室温にて1時間撹拌した。その後、さらに22.2g(84.7mmol)のトリフェニルホスフィン、および16.6ml(84.7mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを添加した。反応混合物を、室温にて18時間撹拌し、真空中で濃縮した。結果として得られた4-[2-(3-メトキシカルボニル-フェニル)-ピリミジン-5-イルオキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの固体を吸い上げ、ジエチルエーテルで洗浄し、クロマトグラフィー(シリカゲルカラム、ならびに溶離/移動相としてジクロロメタン/メタノール)を行った。
【0098】
20mlのTHF中の1.71g(3.99mmol)の4-[2-(3-メトキシカルボニル-フェニル)-ピリミジン-5-イルオキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの懸濁液へ、THF中の25ml(25mmol)の1Mのジイソブチルアルミニウムハイドライド溶液を窒素下で滴下して入れた。反応混合物を室温にて1時間撹拌し、硫酸ナトリウムの飽和溶液と混合した。結果として得られた沈殿物を吸い上げ、THFおよび温かい2-プロパノールで洗浄した。濾液を濃縮し、tert-ブチルメチルエーテルから再結晶し、{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-フェニル}-メタノールがベージュの結晶として結果としてできた。
【0099】
2mlのTHF中の313mg(1.00mmol)の{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-フェニル}-メタノール溶液へ、264mg(1.30mmol)の3-(6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル、および397mg(1.5mmol)のトリフェニルホスフィンを順に添加した。反応混合物を氷浴中で冷却し、294μl(1.5mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを滴下して添加する。反応混合物を、室温にて18時間撹拌し、その後濃縮した。残渣でクロマトグラフィー(シリカゲルカラム、ならびに溶離/移動相としてジクロロメタン/メタノール)を行った。画分を含む生成物をプールし、濃縮し、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの残渣をtert-ブチルメチルエーテルで煮出し、吸い上げ、真空中で乾燥した。
【0100】
塩形成によって、化合物「A257」からヘミ硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、硫酸塩、コハク酸塩、および塩酸塩を得ることができる。
【0101】
代替的に、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル(遊離塩基)を、WO 2009/006959の実施例43に記載の通り、以下のように合成し得る:
【化7】
【0102】
40mlの1-メチル-2-ピロリドン中の4.15g(20mmol)の3-(6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの懸濁液へ、6.00g(21mmol)の5-ブロモ-2-(3-クロロメチル-フェニル)-ピリミジン、および2.76g(341mmol)の炭酸カリウムを入れた。反応混合物を、80℃にて18時間撹拌した。その後、反応混合物を200mlの水に入れた。結果として得られた沈殿物、3-{1-[3-(5-ブロモピリミジン-2-イル)-ベンジル]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル}-ベンゾニトリルを吸い上げ、水で洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0103】
85mlのDMF中の18.0g(41.0mmol)の3-{1-[3-(5-ブロモピリミジン-2-イル)-ベンジル]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル}-ベンゾニトリル溶液へ、11.8g(47mmol)のビス(ピナコラート)ジボロン、および11.9g(122mmol)の酢酸カリウムを入れた。反応混合物を、窒素下で80℃まで加熱した。この温度にて15分間撹拌した後、273mg(1.22mmol)の酢酸パラジウム(II)を添加し、反応混合物を窒素下で80℃にて2時間撹拌した。その後、反応混合物を室温まで冷却した後、水とジクロロメタンとを添加し、珪藻土(diatomite)/珪藻土(kieselguhr)上で濾過し、有機相を分離した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濃縮して3-(6-オキソ-1-{3-[5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを灰色固体として産出し、これは精製せずにその後の反応に使用することができた。
【0104】
35mlのTHFおよび35mlの水中の5.33g(10.9mmol)の3-(6-オキソ-1-{3-[5-(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル懸濁液へ、4.93g(49.4mmol)の過ホウ酸ナトリウムを氷冷下で分けて入れた後、室温にて2時間撹拌した。反応混合物を、300mlのジクロロメタンおよび100mlの飽和塩化アンモニウム水溶液と混合した。有機相を分離し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ならびに濃縮した。3-{1-[3-(5-ヒドロキシ-ピリミジン-2-イル)-ベンジル]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル}-ベンゾニトリルの残渣を、メタノールから再結晶した。
【0105】
250mlのTHF中の25g(65.6mmol)の3-{1-[3-(5-ヒドロキシ-ピリミジン-2-イル)-ベンジル]-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル}-ベンゾニトリル懸濁液へ、15.6g(68.8mmol)のN-Boc-4-ピペリジン-メタノールおよび19.1g(72.1mmol)のトリフェニルホスフィンを順に添加した。次に、14.9ml(72.1mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを氷冷下に滴下添加した。その結果の溶液を、室温にて2時間撹拌した。反応混合物を、さらに750mlの2-プロパノールおよび13.1mlのエタノール中水酸化カリウムの0.5M溶液と、エタノール中で混合した。結果として得られた4-(2-{3-[3-(3-シアノ-フェニル)-6-オキソ-6H-ピリダジン-1-イルメチル]-フェニル}-ピリミジン-5-イルオキシメチル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの沈殿物を吸い上げ、ジエチルエーテルで洗浄し、真空中で乾燥させた。
【0106】
80mlのギ酸中の16.0g(28.0mmol)の4-(2-{3-[3-(3-シアノ-フェニル)-6-オキソ-6H-ピリダジン-1-イルメチル]-フェニル}-ピリミジン-5-イルオキシメチル)-ピペリジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステルの水溶液へ、6.60mlの35%ホルムアルデヒド水溶液を入れた。反応混合物を、110℃の温度にて2時間撹拌した後、300mlの水を添加した。反応混合物を、150mlの容積まで真空中で濃縮し、その後200mlのジクロロメタンを用いて抽出した。有機相を炭酸水素水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ならびに濃縮した。3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルの残渣を、2-プロパノールから再結晶した。
【0107】
3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2を、WO 2010/078897の実施例12に記載の通り、以下のように調製し得る:
【0108】
おおよそ511mgの3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリルを、75mLのアセトンに分散させ、1.12mLの1N HCl水溶液を添加した。澄んだ溶液を得なかった。しかしながら、残った固体状態の残渣を濾過によって除去し、その後澄んだ溶液を得た。結果として得られた済んだ溶液をその後一晩インキュベートし、結晶を得た。結晶を濾過によって分離し、65℃にて真空乾燥キャビネット内で1h乾燥させるか(精製オプション1)、または結晶を濾過によって分離し、アセトンを用いて洗浄し、真空乾燥キャビネット内で乾燥させた(精製オプション2)。
【0109】
化合物「A7」の粉末X線回折パターンを、European Pharmacopeia 6th Edition chapter 2.9.33(Cu-Kα1輻射、λ=1.5406Å、Stoe StadiP 611 KL回折計)に記載されている標準的な技術によって得た。化合物「A7」は、以下のXRDデータによって特徴付けられる:
【0110】
粉末X線ディフラクトグラムピークリスト(精製オプション1):
【表1-1】
【表1-2】
【0111】
粉末X線ディフラクトグラムピークリスト(精製オプション2):
【表2】
【0112】
粉末X線回折パターンと対応するX線回折データにより、化合物「A7」は、3-(1-{3-[5-(1-メチル-ピペリジン-4-イルメトキシ)-ピリミジン-2-イル]-ベンジル}-6-オキソ-1,6-ジヒドロ-ピリダジン-3-イル)-ベンゾニトリル塩酸塩一水和物の結晶変態H2であることを確認した。
【実施例2】
【0113】
化合物の抗がん検査
MET増幅を保有する新たに診断された播種性神経膠芽腫(GBM)を持つ患者におけるアジュバントテポチニブ塩酸塩水和物に対する完全奏効
【0114】
ここに、MET増幅を保有する新たに診断された播種性GBMを持つ患者におけるテポチニブ塩酸塩水和物に対する完全なX線検査の応答を報告する。29歳の男性が進行性の頭痛を呈した。脳MRIは、右側脳室三角部において震源を持つ大きな不均一に亢進する脳室内腫瘤、および両側小脳における亢進する小結節を示した。脊椎MRIは、軟膜の疾患が懸念される、頚胸髄および馬尾の末梢に沿った多病巣性亢進を示した。彼は、右側頭葉切除術および腫瘤の部分切除術を受けた。めまいにより、彼のKPSは手術後90であった。病態は、7q31.2でのGBM、IDH野生型、MGMT非メチル化、およびMET増幅と一致していた。彼は、3600cGyにて陽子線頭蓋脊髄照射(CSI)、続いて2400cGyにて強度変調放射線療法(IMRT)で腫瘍床へのブーストを完了したが、大きな照射野のためテモゾロミド(TMZ)を併用しなかった。彼は、アジュバントTMZを2サイクル完了したが、骨髄抑制により保留した。その後彼は、人道的INDで得られたテポチニブ塩酸塩水和物単剤治療を1日1000mgにて開始した。治療1月後のMRIは、脳および脊椎における亢進の領域の分解を示した。具体的には、脳、頚椎、胸椎、および腰椎のMRIは、1サイクル(=4週間)のテポチニブ後、造影剤増強病変(contrast enhancing lesions)およびLMDが完全分解に近いものを示した。彼は、グレード1のクレアチニン上昇および腹部不快感を有しており、投与量は、2サイクル後に1日500mgに低減した。テポチニブ塩酸塩水和物の開始後19週間、彼の完全奏効は持続しており、軽度の慢性めまいを持ちながらも臨床的安定に留まっている。アジュバントテポチニブ単独療法は、耐容性に優れ、11サイクル後の最新のMRIで播種性、MET増幅性のGBMを持つ患者において完全かつ恒久的なコントロールをもたらした(
図5)。分子的に未選択のGBMにおける標的治療の試験は、大部分は期待外れとなっているが、この症例は、GBMにおいてテポチニブ、またはその薬学的に許容し得る塩、溶媒和物および/または水和物を使用して、METを標的とすることが有望であることを実証している。
【実施例3】
【0115】
同系のマウスモデルにおけるMET経路阻害および放射線照射の効果
材料および方法
試薬および細胞株
【0116】
テポチニブをDMSO中に溶解し、さらに細胞培養液に希釈した。in vivo研究用に、テポチニブを、20%ソルトールおよび80%酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)を用いて調製した。組換えヒトHGF(GeneTex, Lucerne, Switzerland)を、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解した。マウス神経膠腫細胞株SMA-497、SMA-540、およびSMA-560を、デューク大学メディカルセンター(Durham, NC)から、ならびにGL-261を、全米がん研究所(Frederick, MD)から得た。細胞は、10%ウシ胎児血清(FCS)および1%グルタミンとともにダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)において培養した。これらの細胞株の遺伝子発現プロファイルはあらかじめ作成されている(Ahmad et al., 2014)。
【0117】
リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
【0118】
1μgの全RNAから逆転写によって作成したcDNAにRT-PCRを行った。相対的遺伝子発現を、2Δ(デルタデルタCT)法のバリエーション(Livak and Schmittgen, 2001)を使用して記載(Papa et al., 2017)の通りに測定した。ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(Hypoxanthine-guanine phosphoribosyltransferase 1)(Hprt1)を参照遺伝子とした。マウス特異的プライマー配列は以下の通りであった:
Hprt1 fw:5'- CCT AAG ATG AGC GCA AGT TGA A -3'、
rev:5'- CCA CAG GAC TAG AAC ACC TGC TAA-3';
Hgf fw:5'- TCA AAA TGT CAC CTA AAA CAA TCC -3'、
rev:5'- ACA AAC AAT ACA ACA GAA AAC ACC -3';
Met fw:5'- TTT GGG GAA GTC TCA TTT TTG -3'、
rev:5'- CGA TTT TCA GTT GGC TTT TG -3'。
【0119】
イムノブロット分析
【0120】
25mMのTris-HCl、120mMのNaCl、フッ化フェニルメチルスルホニル(phenylmethylsulfonyl fluoride)(Sigma Aldrich, St. Louis, MO)を補充した5mMのEDTAと0.5%のNP-40、200mMのオルソバナジン酸ナトリウム、0.5Mのフッ化ナトリウム、プロテアーゼインヒビターカクテル、ならびにホスファターゼインヒビターカクテル2および3(Sigma Aldrich)を含有する放射性免疫沈降法(RIPA)溶解バッファー(pH7.8)を使用して、細胞または腫瘍検体の溶解液を調製した。一次抗体は以下の通りであった:ウサギ抗p-MET(Tyr1234/1235)(D26)、マウス抗MET(クローン25H2;いずれもCell Signaling Technology, Denvers, MA)、またはヤギ抗アクチン(sc-47778; Santa Cruz Biotechnology, SC, Santa Cruz, CA)。膜は、HRP標識二次種特異抗体へさらした。
【0121】
プロテオームプロファイラーアレイ(Proteome profiler array)
【0122】
in vivoでのマウスサイトカインの相対レベルの同時決定法用に、R&D SystemsのMouse XL Cytokine Array Kit(ARY028, Minneapolis, MN)を使用した。組織溶解液は、氷冷した溶解バッファー中で電気ホモジナイザーによって調製し、プロテアーゼインヒビターカクテルを補充した後、遠心分離して細胞の残骸を除去し;各腫瘍サンプルおよびニトロセルロース膜(対照、単独療法、組み合わせ療法)には、150μgのタンパク質を使用した。各腫瘍検体におけるタンパク質レベルの割合を比較するために、アレイの各スポットのピクセル密度の定量を、Image J(バージョン1.32j)ソフトウェア(National Institutes of Health, Bethesda, MD, http://rsb.info.nih.gov/ij/)を使用して行った。
【0123】
酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)
【0124】
36h後に採取した4×106細胞の無血清上清を使用して、Mouse HGF ELISA Kit(#EMHGF, Thermo Scientific, Frederick, MD)を用いて、マウスHGFを定量した。
【0125】
METのCRISPR/Cas9ノックアウト
【0126】
ノックアウトクローンを、記載の通りに作成した(Ran et al., 2013; Machado et al., 2019)。簡単に説明すると、2のMET特異的ガイドRNA(5'-GAGAGCACGACAAATACGTA-3'、および5'-GTATCGGACAGAGTTTACCA-3')をpSpCas9(BB)-2A-GFPにクローニングし、リポフェクタミン(Thermo)を使用して両方のプラスミドを共導入した。ピューロマイシンセレクションの後、単一細胞をBD FACSAria IIIを使用して96ウェルプレートに選別した。RT-PCRおよびクローン拡大後のサンガーシーケンスで、ノックアウトを確認した。
【0127】
動物研究
【0128】
すべての実験は、動物保護に関するスイス連邦法のガイドラインに従い、動物ライセンス許可番号ZH-038およびZH-098の下、スイスの州獣医局に従って実行した。mRNAは、マウスに症状を呈し始めた未治療の神経膠腫、または腫瘍を持たないマウスの脳から調製した。処置研究のために、5,000個の腫瘍細胞を、C57BL/6バックグラウンドで、6~12週齢の免疫担当性VM/Dkマウス、免疫担当性C57BL/6マウス、または成熟BおよびT細胞を持たない「非漏出性」免疫不全Rag1欠損マウス(B6.129S7-Rag1tm1Mom/J)の右線条体に定位移植した。テポチニブを、経管栄養を使用して100mg/kgにて経口投与した。局所頭蓋放射線療法を、腫瘍移植後10日目に、Gulmayの200kV X線装置を使用して、室温にて1Gy/分にて行った(Schneider et al., 2017)。神経学的症状を、チューリヒ州獣医局のガイドラインに従って、毎日査定した(グレード0:目に見える欠陥なし、グレード1:活動性低減、わずかなバランスおよび整合の欠陥、グレード2:活動性低減、ピーク体重と比較して15%の体重減少、疑わしい脚のわずかな麻痺、中等度の痛みの徴候)。初期の組織学的変化を評定するため、最初の動物が神経学的症状を包含する疾患進行のグレード2の兆候を示したときに、動物を安楽死させた。屠殺時にて左右半球および腫瘍から採取した20~25mgの脳組織から、全mRNAまたはタンパク質溶解液を調製した。
【0129】
組織学的検査および免疫組織化学的検査
【0130】
腫瘍を持つ凍結保存脳の切片(8μm厚)を調製した。平均腫瘍サイズは、低倍率(2.5倍)画像からの最長の直角をなす直径を乗じることによる、ヘマトキシリン-エオジン(H&E)染色切片上の水平面における最大腫瘍面積によって確定した。Ki-67抗体(clone SP6, Epitomics, Burlingame, CA)、抗マウスCD31抗体(clone MEC 13.3, BD Pharmingen, Franklin Lakes, NJ)、抗CD45抗体(clone 30-F11; BioLegend)、抗CD3(clone 17A2; BD Biosciences, San Jose, CA)または抗CD11b(clone M1/70; BD Biosciences)、およびヒストファインシンプルステインマウスMAX-PRO抗ウサギ第二抗体(ニチレイバイオサイエンス、東京、日本)を用いて、脳切片を免疫染色し、増殖を確定した。抗ラットN-ヒストファインシンプルステインマウスMAX-PO(ニチレイバイオサイエンス)およびDAB発色体を使用して、血管を染色した。Ki-67陽性腫瘍核のパーセンテージ、および高倍率視野(40倍対物)でのCD31陽性腫瘍内血管の平均数は、グループあたり3匹のマウスの3の無作為に選んだ異なる顕微鏡視野を使用して計算した。代替的に、DAB陽性シグナルは、ImageJソフトウェア(https://imagej.nih.gov/)を使用して定量化した(Crowe and Yue, 2019)。
【0131】
統計分析
【0132】
ここで報告するすべてのin vitroおよびin vivoの実験は、生物学的複製、すなわち独立した実験において、異なる細胞株の継代数で行った。統計的有意性は、両側独立t検定、またはボンフェローニの事後検定を伴う二元配置分散分析(GraphPad Prism)によって査定した。腫瘍サイズは、マン-ホイットニー検定のUノンパラメトリック検定を使用して分析した。生存期間は、カプラン-マイヤー生存プロット、続いてログランク(Mantel-Cox)検定を使用して分析した。p値が0.05未満の場合、差異が統計的に有意であると考えた。
結果
【0133】
マウス神経膠腫細胞は、HGFおよびMETを発現し、外因性HGFに対してMETリン酸化(p-MET)で応答した。神経膠腫細胞の生存能力または増殖は、テポチニブまたはmet遺伝子ノックアウトを使用した遺伝的または薬理学的MET阻害に抵抗性であった。MET阻害は、in vitroで神経膠腫細胞の放射線照射に対する感受性を高めることはできなかった。対照的に、テポチニブと放射線療法の組み合わせは、放射線療法またはテポチニブ処置単独と比較して、同所性SMA-560またはGL-261神経膠腫を持つマウスの生存期間を延長し、神経膠腫細胞増殖の抑制および腫瘍増殖の遅延に関連した。SMA-560モデルにおいて、組み合わせ治療は、放射線単独によってアップレギュレートし、神経膠芽腫における転帰不良に関連していた一連の炎症促進性サイトカインを抑制した。免疫不全RAG欠損マウスにおいて、SMA-560神経膠腫が形成され、処置された場合、相乗効果は失われた。GL-261モデルにおいては、相乗効果はRag1欠損マウスにおいても失われたが、重要なことに、腫瘍においてMET遺伝子の発現が妨害された場合にも同様であった。詳細に:
【0134】
in vitroでのマウス神経膠腫モデルにおけるHGF/MET軸の特性評価
【0135】
われわれは第1に、GL-261、SMA-497、SMA-540、またはSMA-560マウス神経膠腫モデルにおいて、HGFおよびMETの発現レベル、ならびに構成的なMET活性化を考察した。すべての細胞株は、in vitroおよびex vivoでHgfおよびMet mRNAを発現した。4種のモデル全てからのex vivo腫瘍サンプルは、Hgf mRNAの同程度のレベルを示し、それは正常な脳組織におけるレベルに類似していた。対照的に、Met mRNAの発現は、脳組織と比較して腫瘍組織において有意にアップレギュレートした(
図1A、1B)。4種のマウス細胞株の中で、in vitroでのHgf mRNA発現およびHGFタンパク質遊離は、高い相関関係(r=0.998、p=0.002)を示し、SMA-540が最も高いHGF発現を実証した(
図1C)。構成的なMETリン酸化は、SMA-497およびSMA-560細胞において検出された。全ての細胞株は、外因性HGFに応答してp-METを蓄積した(
図1D)。GL-261が、MET促進遺伝子のマイクロアレイベースの転写プロファイリングに基づき、最も低い基底MET活性状態を示した。次に、SMA-497およびSMA-560細胞をMETインヒビターのテポチニブにさらすと、時間および濃度に依存するやり方においてMETのリン酸化が抑制されることを確認した(
図S1A)。けれども、神経膠腫細胞株は、急性増殖阻害またはクローン形成アッセイにおいて、1μMまでの濃度にてテポチニブの阻害効果に対して耐性であった(
図S1B、S1C)。
【0136】
放射線照射はHGF/METシグナル伝達を誘導したが、in vitroでのHGF/METシグナル伝達の阻害によって放射線感受性の誘導はない
【0137】
GL-261、SMA-497、またはSMA-540細胞においては、放射線照射でのHgfまたはMet mRNA発現において大きな変化はなかった。対照的に、SMA-560細胞においては、照射量依存的なHgfおよびMet mRNA発現の誘導があり(
図S2A)、これがテポチニブ感受性のMETリン酸化に変換された(
図S2B)。けれども、METリン酸化を特異的に阻害することが知られている濃度にては(
図S1A)、テポチニブはin vitroで神経膠腫細胞の放射線照射の抑制効果に対しての感受性を高めることはできなかった。この負の効果が単に培養中のHGFの有効性が低い結果であるということを除外するために、外因性HGFの存在下で同様の実験を実行したものの、またテポチニブによる放射線照射に対する感受性は明白にならなかった(
図S2C)。
【0138】
テポチニブは、in vitroでのマウス神経膠腫細胞の浸潤性の、基底および放射線誘導性の活性化を阻害する
【0139】
次に、in vitroでの放射線照射に対する応答におけるHGF/METの運動源性活性(motogenic activity)を評価した。低線量照射(2Gy)はSMA-540およびSMA-560細胞における浸潤性を増大させた一方、高線量照射(8Gy)はSMA-497およびSMA-560細胞における浸潤性を低減した。テポチニブは、低線量照射したSMA-540細胞を除き、照射の有無にかかわらずすべての細胞株において浸潤性を抑制した。同様の傾向が、SMA-560細胞を使用したスフェロイド浸潤アッセイ(Szabo et al., 2016)においても観察された。
【0140】
in vivoでの放射線療法およびテポチニブによるマウスSMA-560神経膠腫の相乗的増殖阻害
【0141】
腫瘍組織における高いMet遺伝子発現および構成的なMETリン酸化に基づき(
図1B)、SMA-560モデルを選択し、in vivoで、テポチニブによるMETの薬理学的阻害と組み合わせた放射線療法の効果を査定した。われわれはまず、ex vivoで免疫ブロットによってp-METレベルを測定することにより、テポチニブによる標的阻害を確認した:p-METを、腫瘍内および腫瘍を持つ右半球内で検出した。それは放射線照射によって誘導されたが、テポチニブを用いて処置した動物においてp-METは検出されなかった(
図2A)。テポチニブ単独も放射線療法単独も、生存期間について有意な効果を有しなかったが、これらの組み合わせは、単独療法の有無にかかわらずおよそ20日であったものから、組み合わせを用いておよそ60日までという強力な相乗的生存期間の延長に帰結した。対照グループにおいて、ならびに放射線療法グループにおいて、腫瘍増殖に関連した症状ゆえに、すべてのマウスを安楽死させた。対照的に、テポチニブグループ内の1匹、および組み合わせグループ内の3匹のマウスは、80日目にて生存し、かつ腫瘍がなかった(
図2B)。in vivoでの相乗効果を媒介する作用機序の知識を得るために、いずれかのグループにおいて症状を持つ最初のマウスが出たときに、無作為化リストに従ってマウスの形態学的および免疫組織化学的評定を使用して組織分析を行った。すべての処置グループ内の動物は、未処置の対照グループに比べて腫瘍体積において30~40%の低下を示した。けれども、Ki-67染色核の割合は両方の単独療法グループにおいて影響無しに留まったものの、組み合わせグループにおいては、Ki-67陽性細胞の顕著な減少があった(
図2C)。in vitroで同じ処置を急性に施した場合、かかる組み合わせの効果は観察されなかった。SMA-560細胞は、CD31陽性血管の高密度を反映した、高度に血管化した腫瘍を生じる(Ahmad et al., 2014)。ここで、両方の単独療法部門において(1.8倍)、ならびに組み合わせ部門においてはよりそのようである(2.8倍)CD31免疫反応性の低下を観察した(
図2D)。
【0142】
放射線照射およびテポチニブによる実験的神経膠腫の相乗的増殖抑制を媒介する細胞および分子の機序
【0143】
in vivoでは増殖抑制の相乗効果を観察したが、in vitroでは観察しなかったので、微小環境が治療効果に寄与していることもあると結論づけた。したがって、4の処置グループからの腫瘍における宿主細胞浸潤の差異を査定したが、初期の時点にては、すなわち症状を持つ最初のマウスが出たとき、一貫した差異は観察されなかった。次に、4の処置グループの中で、ex vivoの腫瘍組織溶解液中のサイトカインプロファイルを比較した。まず、ほとんどすべてのサイトカインが、いずれの治療手段によっても低減するよりむしろ誘導されることに注目した;テポチニブ単独療法だけがいくつかのサイトカインのレベルを低減させた一方で、放射線照射単独はサイトカインの最も目立った誘導を生じた(
図3)。組み合わせによって誘導されたが、いずれかの単独療法だけによっては誘導されなかった唯一のサイトカインは、WNT1誘導性シグナル伝達経路タンパク質(WISP/CCN4)であった。最も関連性が高そうなパターンは、テポチニブによって弱められた放射線照射による誘導であった。この分子のグループは、VEGF、細胞間接着分子1(ICAM-1/CD54)、セルピンE1/PAI-1、P-セレクチンおよびマトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metalloproteinase、MMP)-2と-9、抗血管新生および抗腫瘍性因子であるセルピンF1/PEDF、リポカリン-2、コロニー刺激因子1 M-CSF、および生得的パターン認識分子ペントラキシン2/3およびC反応性タンパク質(CRP、ペントラキシン1)、炎症促進性サイトカインIL-1a/IL-1F1およびCXCL10などの自然免疫応答のメディエーター;抗炎症性サイトカインIL-10およびIL-11、ノッチ/デルタ/セレートタンパク質ファミリーのメンバーであるpref-1/DLK-1/FA1、および低密度リポタンパク質受容体(LDL-R)を包含する、血管新生のメディエーターならびに炎症性細胞接着分子を包含していた。これらの作動的に調整される因子の中で、IL1A遺伝子の発現は神経膠芽腫患者における予後不良と関連している。
【0144】
放射線照射およびテポチニブによる神経膠腫増殖の相乗的抑制は、適応免疫および腫瘍におけるMET発現を必要とする
【0145】
放射線療法とテポチニブとの組み合わせに対する実験的神経膠腫の相乗応答を媒介することにおいて、腫瘍微小環境対腫瘍自律的機序を分離して考えるために、われわれは二重のアプローチを選択し、第二のモデルを研究した:免疫不全動物において組み合わせ療法を探求し、GL-261神経膠腫細胞内のMET遺伝子を破壊した。野生型細胞とは対照的に、MET欠損GL-261は、外因性HGFにさらしたときにMETリン酸化に応答しなかったが、in vitroでの細胞倍加時間、細胞周期進行、または生存能力の測定によって確定されるように、in vitroでの増殖に不利な点はなかった。ex vivo分析は、MET欠損腫瘍が免疫担当性同系マウスにおける同様の増殖の特性、および同等の免疫細胞浸潤を示したことを実証した。MET欠損腫瘍においては、血管密度が有意に低減し、これはテポチニブ処置で見られたパターンに相当した(
図2C)。まず、SMA-560細胞がRAG欠損マウス内で増殖したとき、組み合わせ治療の相乗効果が強く弱まることに注目した(
図4A)。GL-261モデルにおいては、野生型マウス内に腫瘍が生成し処置した場合に、組み合わせ治療は目立った生存期間の延長をもたらした。併処置グループにおいては、約50%の長期生き残りがいた(
図4B)。長期生き残りマウスは、90日目にてGL-261細胞で再誘発させ、4匹の動物すべてが、さらに50日後に実験が終了するまで無症状のままであった(
図4C)。同じ実験をRAG欠損マウスにおいて実行したときは、放射線治療はその活性を保持したが、テポチニブとの相乗効果は失われた(
図4D)。最後に、METが破壊された場合、放射線治療は対野生型腫瘍と同様に有効であったが、このモデルにおいてもまた相乗効果は失われた(
図4E)。比較生存期間データを
図4Fにまとめた。
検討
【0146】
MET阻害と放射線治療との相乗効果は、ヒト神経膠腫、胃腺癌、および肺癌細胞におけるDNA修復の文脈におけるMET経路の細胞保護的役割を妨害することによって媒介されると以前に提言されている(Welsh et al., 2009; De Bacco et al., 2011; Medova et al., 2012)が、in vitroでは放射線治療と薬理学的MET阻害との間に相乗効果はなかったので、われわれのモデルにおいては、かかる機序が働いている可能性は低い(
図S2)。逆に、in vivoでの2種の同系免疫担当性神経膠腫モデルにおいて、放射線治療とテポチニブとの強い相乗効果を観察し(
図2、4)、これはin vitroのデータによって予測されるものではなかった。どちらかの処置単独と比較して、組み合わせ処置は、SMA-560モデルにおいて増殖および血管新生の早期抑制を誘導した(
図2)。血管新生の阻害は、テポチニブとの併処置時の、VEGF、MCSF、MMP2、またはMMP9などの血管新生分子の、放射線治療が誘発する増大が抑制された結果であることもある(
図3)。神経膠芽腫は、多数の適応性分子戦略によって放射線耐性を形成する(Bao et al., 2006; De Bacco et al., 2011; Squatrito and Holland, 2011)。まとめると、放射線療法と組み合わせたときのテポチニブによって腫瘍増殖が遅延する潜在的な機序として、いくつかの放射線治療が誘発するがん関連炎症および免疫調節性サイトカインの発現が、テポチニブによって弱めらることを報告する。免疫不全マウスにおける、またはMET遺伝子の発現が破壊された腫瘍をもっているマウスにおけるいずれかで組み合わせ療法の効能を探求する相補的研究により、相乗効果には、第一に腫瘍におけるMETの発現、第二に機能的免疫系という少なくとも2種の機序が必要であることが確認された(
図4)。したがって、われわれの前臨床データは、ヒト神経膠芽腫におけるMET経路阻害は、放射線療法との組み合わせにおいて有利に探求し得ることを示唆しているであろう。
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