(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】計測システム、時間および空間コヒーレンススクランブラ、およびそれらの方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240517BHJP
【FI】
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575633
(86)(22)【出願日】2022-05-09
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2022062491
(87)【国際公開番号】W WO2022258274
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503195263
【氏名又は名称】エーエスエムエル ホールディング エヌ.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】スウィラム、モハメッド
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197CA02
2H197CA07
2H197CB12
2H197CB16
2H197DB05
2H197DB40
2H197HA03
(57)【要約】
【解決手段】システムは、放射ソース、光学エレメント、検出器、およびプロセッサを含む。放射ソースは、放射のビームを生成する。光学エレメントは、放射のビームの位相に非一様な変化をもたらし、ターゲットを照明するためにコヒーレンスがスクランブルされた放射を出力する。光学エレメントの光学特性は、コヒーレンスがスクランブルされた放射のインコヒーレンスの量を変えるために調整可能である。検出器は、ターゲットによって散乱された放射を受け取り、受け取られた放射に基づいて測定信号を生成する。プロセッサは、ターゲットの特性を判定するために、測定信号を分析する。
【選択図】
図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射のビームを生成するように構成される放射ソースと、
前記放射のビームの位相に非一様な変化をもたらし、ターゲットを照明するためにコヒーレンスがスクランブルされた放射を出力するように構成される光学エレメントであって、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射のインコヒーレンスの量を変えるために光学特性が調整可能である光学エレメントと、
前記ターゲットによって散乱された放射を受け取り、前記受け取られた放射に基づいて測定信号を生成するように構成される検出器と、
前記ターゲットの特性を判定するために、前記測定信号を分析するように構成されるプロセッサと、
を備えるシステム。
【請求項2】
材料を備える前記光学エレメントは、信号を受け取り、前記材料の光学定数を調整するために前記信号を使用するように更に構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記光学エレメントに結合される電極を更に備え、
前記信号は、前記電極に適用される時間変化する電圧である、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記光学エレメントから、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を受け取るように構成される入力と、
前記ターゲットの照明のために、コヒーレンスがスクランブルされた放射のビームを出力するように構成される出力と、
を備える導波デバイスを更に備える請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記光学エレメントは、二以上のサブユニットを備え、
前記二以上のサブユニットの各サブユニットのそれぞれの光学特性は、個別に調整可能である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
各サブユニットに関する前記コヒーレンスがスクランブルされた放射のビームレットの前記インコヒーレンスの量は、前記それぞれの光学特性に対するランダム化された外乱に基づく、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記光学エレメントは、共振器構造および基板を備え、
前記共振器構造は、前記基板の上または中に形成される、
請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記基板は、前記放射のビームの動作波長において透明な材料を備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記光学エレメントは、液晶メタ表面を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記放射ソースは、一または複数の波長を生成するように構成され、
前記一または複数の波長は、可視スペクトル内にある、
請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記光学エレメントは、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を反射する、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記光学エレメントは、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を送る、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
コヒーレントな放射を受け取り、前記コヒーレントな放射の位相に非一様な変化をもたらすように構成されるメタ表面と、
コヒーレンスがスクランブルされた放射を生成するために、前記コヒーレントな放射のインコヒーレンスの量を変えるために、前記メタ表面の光学特性を調整するように構成されるコントローラと、
を備えるコヒーレンススクランブラデバイス。
【請求項14】
前記メタ表面は、二以上のサブユニットを備え、
前記二以上のサブユニットの各サブユニットのそれぞれの光学特性は、個別に調整可能である、
請求項13に記載のコヒーレンススクランブラデバイス。
【請求項15】
前記メタ表面は、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を反射するように構成される、請求項13に記載のコヒーレンススクランブラデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、2021年6月8日に出願された米国仮特許出願63/208,199号の優先権を主張し、その全体が参照によって本書に援用される。
【0002】
[技術分野]
本開示は、計測システム、例えば、リソグラフィプロセスおよびウェーハアライメントを検査するために計測システムにおいて使用されるメタ表面コヒーレンススクランブラを有する照明システムに関する。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上(通常は、基板のターゲット部分の上)に所望パターンを適用する装置である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用されうる。この場合、マスクまたはレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスが、ICの各層に形成される回路パターンを生成するために使用されうる。このパターンは、基板(例えば、シリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば、ダイの部分、一つのダイ、複数のダイを含む)の上に転写されうる。パターンの転写は、典型的には、基板上に提供される放射感応性材料(レジスト)の層におけるイメージングによる。単一の基板は、一般的に、連続的にパターン形成される隣り合うターゲット部分のネットワークを含む。公知のリソグラフィ装置は、ターゲット部分上に全体パターンを一度に露光することで、各ターゲット部分が照射されるいわゆるステッパ、および、放射ビームを通じてパターンを所定方向(「スキャン」方向)にスキャンすると同時に、このスキャン方向に平行または非平行にターゲット部分をスキャンすることで、各ターゲット部分が照射されるいわゆるスキャナを含む。基板上にパターンをインプリントすることで、パターニングデバイスから基板にパターンを転写することも可能である。
【0004】
リソグラフィオペレーションの間、基板上に異なる層が順番に形成されることを、異なる処理ステップが要求してもよい。従って、基板上に形成された先のパターンに対して、当該基板を高い精度で配置する必要がある。一般的に、アライメントマークは、アライン対象の基板上に配置され、第2オブジェクトを参照して位置が特定される。リソグラフィ装置は、マスクからの正確な露光を担保するために、アライメントマークの位置を検出し、アライメントマークを使用して基板をアラインさせるために、検査装置(例えば、アライメント装置)を使用してもよい。二つの異なる層におけるアライメントマークの間のミスアライメントは、オーバーレイエラーとして測定される。
【0005】
リソグラフィプロセスを監視するために、パターン形成された基板のパラメータが測定される。パラメータは、例えば、パターン形成された基板内または上に形成される連続する層の間のオーバーレイエラーおよび現像された感光性レジストの臨界線幅を含んでもよい。この測定は、製品基板および/または専用の計測ターゲットに対して実行されうる。走査電子顕微鏡および様々な特別なツールの使用を含み、リソグラフィプロセスにおいて形成される微細構造の測定を行うための様々な技術がある。高速および非侵襲な態様の特別な検査ツールは、放射のビームが基板の表面上のターゲット上に向けられ、散乱または反射されたビームの特性が測定されるスキャトロメータである。基板によって反射または散乱された前後のビームの特性を比較することによって、基板の特性が判定されうる。これは、例えば、既知の基板特性に関する既知の測定のライブラリに保存されたデータと、反射されたビームを比較することによって行われうる。分光スキャトロメータは、広帯域放射ビームを基板上に向け、特定の狭い角度範囲内に散乱された放射のスペクトル(波長の関数としての強度)を測定する。対照的に、角度分解スキャトロメータは、単色の放射ビームを使用し、角度の関数としての散乱された放射の強度を測定してもよい。
【0006】
このような光学スキャトロメータは、現像された感光性レジストの臨界寸法またはパターン形成された基板内または上に形成された二つの層の間のオーバーレイエラー(OV)等のパラメータを測定するために使用されうる。基板の特性は、ビームが基板によって反射または散乱された前後の照明ビームの特性を比較することによって判定されうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ICがより小さくなり、より密に集積されるにつれて、ウェーハ毎に検査されなければならないフィーチャの数も増加している。現在の大量生産レートから遅れず、生産歩留まりを高めるために、計測システムの性能を向上させるのが望ましい。従って、密に集積された多数のリソグラフィフィーチャを迅速および正確に測定できる計測ツールを提供することが望まれている。測定は、有限時間に亘ってターゲットから散乱された光子を検出することを伴う。測定スピードを増加させるために、計測ソリューションは、例えば、検出期間を短縮するために、より多くの光子でターゲットを照明することを含んでもよい。
【0008】
いくつかの実施形態では、システムが、放射ソース、光学エレメント、検出器、およびプロセッサを備える。放射ソースは、放射のビームを生成するように構成される。光学エレメントは、放射のビームの位相に非一様な変化をもたらし、ターゲットを照明するためにコヒーレンスがスクランブルされた放射を出力するように構成される。光学エレメントの光学特性は、コヒーレンスがスクランブルされた放射のインコヒーレンスの量を変えるために調整可能である。検出器は、ターゲットによって散乱された放射を受け取り、受け取られた放射に基づいて測定信号を生成するように構成される。プロセッサは、ターゲットの特性を判定するために、測定信号を分析するように構成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、コヒーレンススクランブラデバイスが、メタ表面およびコントローラを備える。メタ表面は、コヒーレントな放射を受け取り、コヒーレントな放射の位相に非一様な変化をもたらすように構成される。コントローラは、コヒーレンスがスクランブルされた放射を生成するために、コヒーレントな放射のインコヒーレンスの量を変えるために、メタ表面の光学特性を調整するように構成される。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法が、メタ表面上で入射光放射を受け取ることを備える。メタ表面は、入射光放射の位相に変化をもたらす。方法は、入射光放射のインコヒーレンスの量を変えるために、メタ表面の光学特性を調整するためにメタ表面に対して信号を適用することと、コヒーレンスがスクランブルされた放射をメタ表面から再放出することと、コヒーレンスがスクランブルされた放射でターゲットを照明することと、も備える。
【0011】
発明の更なる特徴および利点は、発明の様々な実施形態の構造および動作と共に、付随する図面を参照して以下で詳細に記述される。なお、発明は、ここで記述される具体的な実施形態に限定されない。このような実施形態は、例示のみを目的としてここで提示される。追加的な実施形態は、ここに含まれる教示に基づいて当業者にとって明白である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここで援用されて明細書の一部を構成する付随する図面は、本発明を例示し、その記述と共に、当業者が発明を製造および使用できるように、発明の原理を更に説明するために用いられる。
【0013】
図1Aは、いくつかの実施形態に係る反射型リソグラフィ装置を例示する。
【0014】
図1Bは、いくつかの実施形態に係る透過型リソグラフィ装置を例示する。
【0015】
図2は、いくつかの実施形態に係る反射型リソグラフィ装置のより詳細な模式図である。
【0016】
図3は、いくつかの実施形態に係るリソグラフィセルの模式図である。
【0017】
図4Aおよび4Bは、いくつかの実施形態に係る検査装置の模式図である。
【0018】
図5は、いくつかの実施形態に係る光学エレメントを例示する。
【0019】
図6は、いくつかの実施形態に係る調整可能なメタ表面を例示する。
【0020】
図7は、いくつかの実施形態に係る空間コヒーレンススクランブラを例示する。
【0021】
図8は、いくつかの実施形態に係る時間コヒーレンススクランブラを例示する。
【0022】
図9は、いくつかの実施形態に係る照明システムを例示する。
【0023】
図10は、いくつかの実施形態に係るメタ表面を含むシステムを例示する。
【0024】
図11は、ここで記述される機能を含む方法を実行するためのいくつかの実施形態に係る方法ステップを例示する。
【0025】
本発明の特徴および利点は、図面(同様の参照記号は一貫して対応する要素を表す)と併せて解釈される、以下の詳細な記述からより明らかになる。図面における同様の参照番号は、特に断らない限り、同一、機能的に同様、および/または、構造的に同様の要素を示す。加えて、特に断らない限り、参照番号における最も左の数字は、当該参照番号が最初に現れる図を示す。特に断らない限り、本開示を通じて提供される図面は、実際の寸法に忠実なものと解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本明細書は、本発明の特徴を備える一または複数の実施形態を開示する。開示される実施形態は、単に発明を例示するものに過ぎない。発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。発明は、添付される特許請求の範囲によって定められる。
【0027】
記述される実施形態や、明細書における「一つの実施形態」「ある実施形態」「ある実施例」等への言及は、記述される実施形態が特定の特徴、構造、特質を含みうるが、全ての実施形態が必ずしも特定の特徴、構造、特質を含まなくてもよいということを表す。更に、このような言い回しは、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。更に、特定の特徴、構造、特質がある実施形態に関して記述される場合、このような特徴、構造、特質を他の実施形態に関して有効にすることは、明示的に記述されているか否かによらず当業者の知識の範囲内であると理解される。
【0028】
「下」(例えば、beneath、below、lower)や「上」(例えば、above、on、upper)等の空間的に相対的な用語は、図示される一方の要素または特徴の他方の要素または特徴に対する関係の記述を容易にするために使用されてもよい。空間的に相対的な用語は図示される方向だけでなく、使用中または動作中のデバイスの異なる方向も包含する意図で用いられる。装置は異なる方向(90度回転された方向や他の方向)を向いていてもよく、それに合わせて同様に空間的に相対的な用語は解釈されてもよい。
【0029】
用語「約」は、特定の技術に基づいて変動しうる与えられた量の値を表す。特定の技術に基づいて、用語「約」は、例えば、値の10-30%(例えば、値の±10%、±20%、±30%)の範囲内で変動しうる与えられた量の値を表してもよい。
【0030】
本開示の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、これらの任意の組合せとして実装されうる。本開示の実施形態は、一または複数のプロセッサによって読み込まれて実行されうる機械読取可能媒体に格納された指令として実装されてもよい。機械読取可能媒体は、装置(例えば、演算デバイス)によって読取可能な形で情報を格納または送信するための任意のメカニズムを含みうる。例えば、機械読取可能媒体は、リードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスクストレージ媒体、光学ストレージ媒体、フラッシュメモリデバイス、電気/光/音その他の形の伝送信号(例えば、搬送波、赤外線信号、デジタル信号等)等を含みうる。更に、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、および/または、指令は、特定のアクションを実行するものとして記述されうる。しかし、このような記述は便宜的なものに過ぎず、このようなアクションは実際には演算デバイス、プロセッサ、コントローラ、その他のファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、指令等を実行する任意のデバイスによって引き起こされると理解されるべきである。
【0031】
このような実施形態を詳細に記述する前に、本開示の実施形態が実施されうる環境例について説明する。
【0032】
リソグラフィシステムの例
【0033】
図1Aおよび1Bは、本開示の実施形態が実装されうるリソグラフィ装置100およびリソグラフィ装置100’それぞれの模式図である。リソグラフィ装置100およびリソグラフィ装置100’は、それぞれ次の要素を含む:放射ビームB(例えば、深紫外または極端紫外放射)を調整するように構成される照明システム(イルミネータ)IL;パターニングデバイス(例えば、マスク、レチクル、動的なパターニングデバイス)MAを支持するように構成され、当該パターニングデバイスMAを正確に配置するように構成される第1ポジショナPMに接続される支持構造(例えば、マスクテーブル)MT;基板(例えば、レジストがコーティングされたウェーハ)Wを保持するように構成され、基板Wを正確に配置するように構成される第2ポジショナPWに接続される基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル)WT。リソグラフィ装置100および100’は、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに形成されたパターンを、基板Wのターゲット部分(例えば、一または複数のダイを含む)C上に投影するように構成される投影システムPSも有する。リソグラフィ装置100では、パターニングデバイスMAおよび投影システムPSは反射型である。リソグラフィ装置100’では、パターニングデバイスMAおよび投影システムPSは透過型である。
【0034】
照明システムILは、放射ビームBの方向付け、形成、制御等のための、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁気型、静電気型その他のタイプの光学コンポーネントや、それらの任意の組合せ等の各種の光学コンポーネントを含んでもよい。
【0035】
支持構造MTは、参照フレームに対するパターニングデバイスMAの方向、リソグラフィ装置100および100’の少なくとも一つのデザイン、パターニングデバイスMAが真空環境に保持されるか否か等の他の条件に応じた態様で、パターニングデバイスMAを保持する。支持構造MTは、パターニングデバイスMAを保持するために、機械型、真空型、静電気型、その他のクランプ技術を利用してもよい。支持構造MTは、例えば、必要に応じて固定された、または、移動可能なフレームまたはテーブルでもよい。センサを使用することで、支持構造MTは、パターニングデバイスMAを、例えば、投影システムPSに対する所望の位置に確実に配置しうる。
【0036】
用語「パターニングデバイス」(MA)は、例えば、基板Wのターゲット部分Cにパターンを生成するように、放射ビームBの断面にパターンを形成するために使用されうる任意のデバイスを指すものと広義に解釈されるべきである。放射ビームBに形成されるパターンは、集積回路を形成するためにターゲット部分Cに生成されるデバイスにおける特定の機能層に対応しうる。
【0037】
用語「検査装置」「計測装置」等は、例えば、構造の特性(例えば、オーバーレイエラー、臨界寸法パラメータ)を測定するために使用される、または、ウェーハのアライメントを検査するためにリソグラフィ装置において使用されるデバイスまたはシステム(例えば、アライメント装置)を指すために、ここで使用されてもよい。
【0038】
パターニングデバイスMAは、透過型(例えば、
図1Bにおけるリソグラフィ装置100’)でもよいし、反射型(例えば、
図1Aにおけるリソグラフィ装置100)でもよい。パターニングデバイスMAの例は、レチクル、マスク、プログラマブルミラーアレイ、プログラマブルLCDパネルを含む。マスクは、リソグラフィにおいて周知であり、バイナリ型、レベンソン型位相シフト、ハーフトーン型位相シフト、各種のハイブリッドマスクタイプ等のマスクタイプを含む。プログラマブルミラーアレイの一例は、入射ビームを異なる方向に反射するために個別に傾けられうる小ミラーのマトリックス配置を採用する。傾けられたミラーは、放射ビームBにパターン(小ミラーのマトリックスによって反射されたもの)を形成する、
【0039】
用語「投影システム」(PS)は、使用される露光放射や、基板W上での液浸液の使用または真空の使用等の他の要素にとって適切な、屈折型、反射型、反射屈折型、磁気型、電磁気型、静電型の光学システムや、それらの任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを包含しうる。他のガスが放射または電子を過剰に吸収してしまうため、EUVまたは電子ビーム放射のために真空環境が使用されうる。このように、真空壁および真空ポンプによって、真空環境がビーム経路全体に提供されてもよい。
【0040】
リソグラフィ装置100および/またはリソグラフィ装置100’は、2(デュアルステージ)またはそれより多い基板テーブルWT(および/または、2以上のマスクテーブル)を有するタイプでもよい。このような「マルチステージ」装置では、追加的な基板テーブルWTが並列に使用されうる、または、一または複数の他の基板テーブルWTが露光のために使用されている間に、準備ステップが一または複数のテーブル上で実行されうる。いくつかの状況では、追加的なテーブルは基板テーブルWTでなくてもよい。
【0041】
リソグラフィ装置は、投影システムおよび基板の間の空間を満たすために、基板の少なくとも一部が水等の比較的高い屈折率を有する液体によって覆われうるタイプでもよい。液浸液は、リソグラフィ装置における他の空間、例えば、マスクおよび投影システムの間の空間に適用されてもよい。液浸技術は、投影システムの開口数を高めるための周知技術である。用語「液浸」は、基板等の構造が液体中に沈まなくてはならないことを意味するのではなく、露光中に液体が投影システムおよび基板の間に存在することのみを意味する。
【0042】
図1Aおよび1Bにおいて、イルミネータILは、放射ソースSOから放射ビームを受け取る。例えばソースSOがエキシマレーザの場合、ソースSOおよびリソグラフィ装置100、100’は物理的に異なる構成でありうる。このような場合、ソースSOは、リソグラフィ装置100または100’の一部を形成するものではなく、例えば、適切な方向付けミラーおよび/またはビームエキスパンダを含むビームデリバリシステムBD(
図1B)によって、放射ビームBがソースSOからイルミネータILに渡される。例えばソースSOが水銀ランプ等の他の場合では、ソースSOはリソグラフィ装置100、100’の一部でもよい。ソースSOおよびイルミネータILは、ビームデリバリシステムBDと共に、必要に応じて放射システムとも呼ばれる。
【0043】
イルミネータILは、放射ビームの角強度分布を調整するためのアジャスタAD(
図1B)を含んでもよい。一般的に、イルミネータの瞳面における強度分布の少なくとも外側半径範囲および/または内側半径範囲(一般的にσ-outer/σ-innerとそれぞれ呼ばれる)が調整されうる。加えて、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCO等の各種の他のコンポーネント(
図1B)を含んでもよい。イルミネータILは、放射ビームBが断面における所望の均一性および強度分布を有するように調整するために使用されてもよい。
【0044】
図1Aにおける放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射し、パターニングデバイスMAによってパターン形成される。リソグラフィ装置100では、放射ビームBがパターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射される。放射ビームBは、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAから反射された後、基板Wのターゲット部分C上に放射ビームBを集光する投影システムPSを通過する。第2ポジショナPWおよび位置センサIF2(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、容量センサ)によって、基板テーブルWTは正確に駆動されうる(例えば、放射ビームBの経路における異なるターゲット部分Cに配置されるように)。同様に、第1ポジショナPMおよび他の位置センサIF1は、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを、放射ビームBの経路に対して正確に配置するために使用されうる。パターニングデバイス(例えば、マスク)MAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせされうる。
【0045】
図1Bにおける放射ビームBは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MT上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスク)MA上に入射し、パターニングデバイスMAによってパターン形成される。マスクMAを通過した放射ビームBは、基板Wのターゲット部分C上にビームを集光する投影システムPSを通過する。投影システムは、照明システム瞳IPUに対する瞳共役PPUを有する。放射の部分は、照明システム瞳IPUでの強度分布から発出され、マスクパターンでの回折によって影響されることなくマスクパターンを通過し、照明システム瞳IPUでの強度分布の像を生成する。
【0046】
投影システムPSは、基板W上にコーティングされたフォトレジスト層上に、マスクパターンMPの像MP’を投影する。ここで、像MP’は、強度分布からの放射によってマスクパターンMPから生成される回折ビームによって形成される。例えば、マスクパターンMPは、線および空間の配列を含んでもよい。零次回折と異なる配列での回折放射は、線に直交する方向における方向の変化を伴う逸れた回折ビームを生成する。非回折ビーム(すなわち、いわゆる零次回折ビーム)は、伝送方向における変化を伴わずにパターンを通過する。零次回折ビームは、投影システムPSの瞳共役PPUの上流において投影システムPSの上方レンズまたは上方レンズ群を通過し、瞳共役PPUに到達する。零次回折ビームと関連付けられる瞳共役PPUの平面における強度分布の部分は、照明システムILの照明システム瞳IPUにおける強度分布の像である。開口デバイスPDは、例えば、投影システムPSの瞳共役PPUを含む平面に実質的に配置される。
【0047】
投影システムPSは、レンズまたはレンズグループLによって、零次回折ビームだけでなく一次または一次および高次回折ビーム(不図示)も取得するように設けられる。いくつかの実施形態では、ダイポール照明による解像度向上効果を利用するために、線に直交する方向に延びる線パターンをイメージングするためのダイポール照明が使用されてもよい。例えば、一次回折ビームは、対応する零次回折ビームとウェーハWのレベルで干渉し、線パターンMPの像を可能な限り高い解像度およびプロセスウィンドウ(すなわち、許容可能な露光ドーズ偏差との組合せにおいて使用可能な焦点深度)で生成する。いくつかの実施形態では、照明システム瞳IPUと反対の象限に放射極(不図示)を提供することによって、非点収差が低減されうる。更に、いくつかの実施形態では、反対の象限における放射極と関連付けられる投影システムの瞳共役PPUにおいて零次ビームをブロックすることによって、非点収差が低減されうる。このことは、その全体が参照によって本書に援用される、2009年3月31日に発行された米国特許7,511,799B2において、より詳細に記述されている。
【0048】
第2ポジショナPWおよび位置センサIF(例えば、干渉デバイス、リニアエンコーダ、容量センサ)を利用することで、基板テーブルWTは正確に駆動されうる(例えば、異なるターゲット部分Cを放射ビームBの経路上に配置するように)。同様に、第1ポジショナPMおよび他の位置センサ(
図1Bでは不図示)が、放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に配置するために使用されうる(例えば、マスクライブラリからの機械的な取出し後やスキャン中)。
【0049】
一般的に、マスクテーブルMTの移動は、第1ポジショナPMの一部を構成する長ストロークモジュール(粗動位置決め)および短ストロークモジュール(微動位置決め)を利用することで実現されうる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2ポジショナPWの一部を構成する長ストロークモジュールおよび短ストロークモジュールを利用して実現されうる。(スキャナではない)ステッパの場合、マスクテーブルMTは、短ストロークアクチュエータのみに接続されてもよいし、固定されてもよい。マスクMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせされてもよい。基板アライメントマークは、図示のように専用のターゲット部分を占めるが、ターゲット部分の間のスペースに配置されてもよい(スクライブラインアライメントマークとして知られている)。同様に、複数のダイがマスクMA上に提供される状況では、マスクアライメントマークはダイの間に配置されてもよい。
【0050】
マスクテーブルMTおよびパターニングデバイスMAは、真空内ロボットIVRがマスク等のパターニングデバイスを真空チャンバ内外で駆動するために使用されうる真空チャンバV内に置かれてもよい。あるいは、マスクテーブルMTおよびパターニングデバイスMAが真空チャンバ外に置かれる場合、真空外ロボットが真空内ロボットIVRと同様に様々な移送動作のために使用されうる。真空内および真空外ロボットは共に、移送ステーションの固定されたキネマティックマウントにペイロード(例えば、マスク)を円滑に移送するために較正される必要がある。
【0051】
リソグラフィ装置100および100’は、以下のモードの少なくとも一つにおいて使用されうる。
【0052】
1.ステップモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTが、放射ビームBに形成された全体パターンがターゲット部分C上に一度に投影される(すなわち、単一静的露光)間、実質的に静止状態に保たれる。そして、異なるターゲット部分Cが露光されるように、基板テーブルWTはXおよび/またはY方向にシフトされる。
【0053】
2.スキャンモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTおよび基板テーブルWTが、放射ビームBに形成されたパターンがターゲット部分C上に投影される(すなわち、単一動的露光)間、同時にスキャンされる。支持構造(例えば、マスクテーブル)MTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの倍率および像反転特性によって決定されてもよい。
【0054】
3.他のモードでは、支持構造(例えば、マスクテーブル)MTが、プログラマブルパターニングデバイスを保持しながら実質的に静止状態に保たれ、放射ビームBに形成されたパターンがターゲット部分C上に投影される間に、基板テーブルWTが駆動またはスキャンされる。パルス放射ソースSOが用いられてもよく、プログラマブルパターニングデバイスが、必要に応じて、基板テーブルWTの各移動後またはスキャン中の連続する放射パルスの間に更新されてもよい。この動作モードは、プログラマブルミラーアレイ等のプログラマブルパターニングデバイスを利用するマスクレスリソグラフィに容易に適用しうる。
【0055】
以上の使用モードの組合せおよび/または変形や、全く異なる使用モードが用いられてもよい。
【0056】
更なる実施形態では、リソグラフィ装置100が、EUVリソグラフィのためのEUV放射のビームを生成するように構成される極端紫外(EUV)ソースを含む。一般的に、EUVソースは放射システムにおいて構成され、対応する照明システムはEUVソースのEUV放射ビームを調整するように構成される。
【0057】
図2は、ソースコレクタ装置SO、照明システムIL、投影システムPSを含むリソグラフィ装置100をより詳細に示す。ソースコレクタ装置SOは、ソースコレクタ装置SOの閉鎖構造220において真空環境が維持されるように、構成および調整される。EUV放射プラズマ210は、放電生成プラズマソースによって形成されうる。EUV放射は、電磁スペクトルのEUV範囲における放射を発するための極高温プラズマ210が生成されるガスまたは蒸気、例えば、Xeガス、Li蒸気、Sn蒸気によって生成されうる。極高温プラズマ210は、例えば、少なくとも部分的にイオン化されたプラズマをもたらす電気的な放電によって生成される。Xe、Li、Sn蒸気や、他の任意の適切なガスまたは蒸気の例えば10Pa程度の分圧が、放射の効率的な生成のために要求されうる。いくつかの実施形態では、EUV放射を生成するためにスズ(Sn)励起プラズマが提供される。
【0058】
高温プラズマ210が発した放射は、ソースチャンバ211における開口の内部または後方に位置するオプションのガスバリアまたは汚染トラップ230(汚染バリアまたはフォイルトラップとも呼ばれる)を介して、ソースチャンバ211からコレクタチャンバ212内に渡される。汚染トラップ230は、チャネル構造を含んでもよい。また、汚染トラップ230は、ガスバリアまたはガスバリアおよびチャネル構造の組合せを含んでもよい。ここで更に例示される汚染トラップまたは汚染バリア230は、少なくともチャネル構造を含む。
【0059】
コレクタチャンバ212は、いわゆる斜入射型コレクタでもよい放射コレクタCOを含んでもよい。放射コレクタCOは、上流放射コレクタ側251および下流放射コレクタ側252を有する。コレクタCOを通過する放射は、格子スペクトルフィルタ240から反射され、仮想ソース点IFに集光されてもよい。仮想ソース点IFは、一般的に中間焦点と呼ばれ、ソースコレクタ装置は、中間焦点IFが閉鎖構造220における開口219上または付近に位置するように設けられる。仮想ソース点IFは、放射プラズマ210の像である。格子スペクトルフィルタ240は、特に赤外線(IR)放射を抑えるために使用される。
【0060】
続いて、放射は、パターニングデバイスMAでの所望の放射ビーム221の角度分布、および、パターニングデバイスMAでの所望の放射強度の均一性を提供するために設けられるファセットフィールドミラーデバイス222およびファセット瞳ミラーデバイス224を含んでもよい照明システムILを通過する。支持構造MTによって保持されたパターニングデバイスMAでの放射ビーム221の反射の際にパターン形成されたビーム226が形成され、投影システムPSによってパターン形成されたビーム226は反射要素228、229を介してウェーハステージまたは基板テーブルWTによって保持された基板W上にイメージングされる。
【0061】
一般的に、図示されたものより多くの要素が照明光学ユニットILおよび投影システムPSに存在してもよい。リソグラフィ装置のタイプに応じて、格子スペクトルフィルタ240がオプションで存在してもよい。更に、
図2に示されたものより多くのミラーが存在してもよい。例えば、1と6の間の追加的な反射要素が、
図2に示されたものに加えて投影システムPSに存在してもよい。
【0062】
図2に例示されるコレクタ光学エレメントCOは、コレクタ(または、コレクタミラー)の一例として、斜入射型リフレクタ253、254、255による入れ子状のコレクタとして示されている。斜入射型リフレクタ253、254、255は、光軸Oの周りに軸対称に配置され、このタイプのコレクタ光学エレメントCOは、しばしばDPPソースと呼ばれる放電生成プラズマソースとの組合せで使用されるのが好ましい。
【0063】
例示的なリソグラフィセル
【0064】
図3は、いくつかの実施形態に係るリソセルまたはクラスタとも呼ばれるリソグラフィセル300を示す。リソグラフィ装置100または100’は、リソグラフィセル300の一部を構成してもよい。また、リソグラフィセル300は、露光前および露光後のプロセスを基板に対して実行する一または複数の装置を含んでもよい。従来、これらは、レジスト層を形成するためのスピンコータSC、露光されたレジストを現像するためのデベロッパDE、冷却プレートCH、ベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、基板を入力/出力ポートI/O1、I/O2からピックアップし、それらを異なる処理装置の間で動かし、それらをリソグラフィ装置100または100’のローディングベイLBに搬送する。しばしばトラックとも総称されるこれらのデバイスは、リソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置も制御する監視制御システムSCSによってそれ自体が制御されるトラック制御ユニットTCUの制御下にある。このように、異なる装置がスループットおよび処理効率を最大化するために動作しうる。
【0065】
例示的な検査装置
【0066】
デバイスフィーチャを基板上に正確に配置するようにリソグラフィプロセスを制御するために、一般的にアライメントマークが基板上に設けられ、リソグラフィ装置は、それによって基板上のマークの位置が正確に測定されなければならない、一または複数のアライメント装置および/またはシステムを含む。これらのアライメント装置は、実質的に位置測定装置である。異なるタイプのマークおよび異なるタイプのアライメント装置および/またはシステムが、異なる時代および異なる製造者から知られている。現在のリソグラフィ装置において広く使用されているシステムのタイプは、米国特許第6,961,116(den Boef et al.)において記述されているように自己参照干渉計に基づく。一般的に、XおよびY位置を取得するために、マークは個別に測定される。但し、米国公開第2009/195768(Bijnen et al.)において記述されている技術を使用して、組み合わされたXおよびY測定が実行されてもよい。これらの開示の両方の全内容は、参照によって本書に援用される。
【0067】
図4Aは、いくつかの実施形態に係る、検査装置400の模式的な断面図である。いくつかの実施形態では、検査装置400が、リソグラフィ装置100または100’の一部として実装されうる。検査装置400は、基板(例えば、基板W)をパターニングデバイス(例えば、パターニングデバイスMA)に対してアラインさせるように構成されうる。検査装置400は、基板上のアライメントマークの位置を検出し、検出されたアライメントマークの位置を使用して、パターニングデバイスまたはリソグラフィ装置100または100’の他のコンポーネントに対して基板をアラインさせるように更に構成されうる。このような基板のアライメントは、基板上の一または複数のパターンの正確な露光を担保しうる。
【0068】
いくつかの実施形態では、検査装置400が、照明システム412、ビームスプリッタ414、干渉計426、検出器428、信号分析器430、およびオーバーレイ演算プロセッサ432を含みうる。照明システム412は、一または複数の通過帯域を有する電磁気的な狭帯域放射ビーム413を提供するように構成されうる。一例では、一または複数の通過帯域は、約500nmと約900nmの間の波長のスペクトル内でもよい。他の例では、一または複数の通過帯域は、約500nmと約900nmの間の波長のスペクトル内の離散的で狭い通過帯域でもよい。照明システム412は、長期間に亘って(例えば、照明システム412の寿命に亘って)実質的に一定の中心波長(CWL)値を有する一または複数の通過帯域を提供するように更に構成されうる。このような照明システム412の構成は、前述されたように、現在のアライメントシステムにおいて、実際のCWL値の所望のCWL値からのシフトを防ぐために役立ちうる。そして、結果として、一定のCWL値の使用は、アライメントシステム(例えば、検査装置400)の長期安定性および精度を、現在のアライメント装置に比べて向上させうる。
【0069】
いくつかの実施形態では、ビームスプリッタ414が、放射ビーム413を受け取り、当該放射ビーム413を少なくとも二つの放射サブビームに分割するように構成されうる。例えば、放射ビーム413は、
図4Aに示されるように、放射サブビーム415および417に分割されうる。ビームスプリッタ414は、ステージ422上に載置された基板420上に放射サブビーム415を向けるように更に構成されうる。一例では、ステージ422が、方向424に沿って移動可能である。放射サブビーム415は、基板420上に位置するアライメントマークまたはターゲット418を照明するように構成されうる。アライメントマークまたはターゲット418は、放射感応性フィルムでコーティングされうる。いくつかの実施形態では、アライメントマークまたはターゲット418が、180度(すなわち、180°)の対称性を有してもよい。すなわち、アライメントマークまたはターゲット418が、それらの面に垂直な対称軸の周りに180°回転された場合、回転されたアライメントマークまたはターゲット418は、回転される前のアライメントマークまたはターゲット418と実質的に等しくなりうる。基板420上のターゲット418は、(a)固形レジスト線で形成されるバーを備えるレジスト層格子、または(b)製品層格子、または(c)製品層格子に重ねられたまたは織り交ぜられたレジスト格子を備えるオーバーレイターゲット構造における複合格子スタック、のいずれでもよい。あるいは、バーは、基板中にエッチングされてもよい。このパターンは、リソグラフィ投影装置(特に、投影システムPL)における色収差および照明対称性に敏感であり、このような収差の存在は、プリントされた格子における変動として自ずから顕在化する。線幅、ピッチ、および臨界寸法の測定のために、デバイス製造において使用される一つのインライン方法は、「スキャトロメトリ」として知られている技術を利用する。スキャトロメトリの方法は、それらの全体が参照によって本書に援用される、「Raymond et al., “Multiparameter Grating Metrology Using Optical Scatterometry”, J. Vac. Sci. Tech. B, Vol. 15, no. 2, pp. 361-368 (1997)」および「Niu et al., “Specular Spectroscopic Scatterometry in DUV Lithography”, SPIE, Vol. 3677 (1999)」において記述されている。スキャトロメトリでは、ターゲットにおける周期構造によって光が反射され、所定の角度における反射スペクトルが検出される。例えば、厳密結合波分析(RCWA)の使用や、シミュレーションによって得られたパターンのライブラリとの比較によって、反射スペクトルを生成する構造は再構成される。このように、プリントされた格子のスキャトロメトリデータは、格子を再構成するために使用される。プリンティングステップおよび/または他のスキャトロメトリプロセスの知識から、線幅および形状等の格子のパラメータが、処理ユニットPUによって実行される再構成プロセスに入力されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、ビームスプリッタ414が、回折放射ビーム419を受け取り、当該回折放射ビーム419を少なくとも二つの放射サブビームに分割するように更に構成されうる。回折放射ビーム419は、
図4Aに示されるように、回折放射サブビーム429および439に分割されうる。
【0071】
なお、ビームスプリッタ414が、放射サブビーム415をアライメントマークまたはターゲット418に向け、回折された放射サブビーム429を干渉計426に向けるように示されているが、開示はそのように限定する趣旨ではない。基板420上のアライメントマークまたはターゲット418の照明およびアライメントマークまたはターゲット418のイメージの検出による同様の結果を取得するために、他の光学配置が使用されてもよいことは当業者にとって明らかである。
【0072】
図4Aに例示されるように、干渉計426は、ビームスプリッタ414を通じて、放射サブビーム417および回折された放射サブビーム429を受け取るように構成されうる。実施形態の例では、回折された放射サブビーム429は、アライメントマークまたはターゲット418から反射されうる放射サブビーム415の少なくとも一部でもよい。本実施形態の例では、干渉計426が、任意の適切な光学エレメントの組、例えば、受け取られた回折された放射サブビーム429に基づいて、アライメントマークまたはターゲット418の二つのイメージを形成するように構成されてもよいプリズムの組合せを備える。良好な品質のイメージが形成される必要はないが、アライメントマーク418のフィーチャは解像されるべきであると理解されるべきである。干渉計426は、二つのイメージの一方を二つのイメージの他方に対して180度回転させ、回転されたイメージと回転されなかったイメージを干渉法的に再結合するように更に構成されうる。
【0073】
いくつかの実施形態では、検査装置400のアライメント軸421がアライメントマークまたはターゲット418の対称中心(不図示)を通過する場合、検出器428が、干渉計信号427を介して再結合されたイメージを受け取り、再結合されたイメージの結果としての干渉を検出するように構成されうる。実施形態の例では、このような干渉が、アライメントマークまたはターゲット418が180°の対称性を有し、再結合されたイメージが建設的または破壊的に干渉するために発生しうる。検出器428は、検出された干渉に基づいて、アライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置を判定し、結果的に基板420の位置を検出するように更に構成されうる。一例では、アライメント軸421が、基板420に垂直でイメージ回転干渉計426の中央を通過する光ビームとアラインされうる。検出器428は、センサ特性を実装し、ウェーハマークプロセス変動と相互作用することによって、アライメントマークまたはターゲット418の位置を推定するように更に構成されうる。
【0074】
更なる実施形態では、検出器428が、以下の一または複数の測定を実行することで、アライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置を判定する。
1.様々な波長についての位置変動(色の間の位置シフト)の測定
2.様々な次数についての位置変動(回折次数の間の位置シフト)の測定
3.様々な偏光についての位置変動(偏光の間の位置シフト)の測定
このデータは、例えば、任意のタイプのアライメントセンサ、例えば、いずれも全体が参照によって本書に援用される、単一の検出器および四つの異なる波長と共に自己参照干渉計を利用し、ソフトウェアまたはATHENA(Advanced Technology using High order ENhancement of Alignment)でアライメント信号を抽出する米国特許第6,961,116、七つの回折次数のそれぞれを専用検出器に向ける米国特許第6,297,876に開示されているSMASH(SMart Alignment Sensor Hybrid)センサで取得されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、ビーム分析器430が、回折された放射サブビーム439を受け取り、その光学状態を判定するように構成されうる。光学状態は、ビーム波長、偏光、またはビームプロファイルの測定結果でもよい。ビーム分析器430は、ステージ422の位置を判定し、ステージ422の位置をアライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置と相関させるように更に構成されうる。このように、アライメントマークまたはターゲット418の位置および結果的に基板420の位置が、ステージ422を参照して正確に分かる。あるいは、ビーム分析器430は、アライメントマークまたはターゲット418の対称中心が、検査装置400または任意の他のリファレンスエレメントを参照して分かるように、検査装置400または任意の他のリファレンスエレメントの位置を判定するように構成されうる。ビーム分析器430は、ある形態の波長帯選択性を有するポイントまたはイメージングポラリメータでもよい。いくつかの実施形態では、ビーム分析器430が、直接的に検査装置400に統合されてもよいし、いくつかのタイプ(他の実施形態では、偏光保持シングルモード、マルチモード、またはイメージング)の光ファイバを介して接続されてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、ビーム分析器430が、基板420上の二つのパターンの間のオーバーレイデータを判定するように更に構成されうる。これらのパターンの一つは、リファレンス層上のリファレンスパターンでもよい。他のパターンは、露光された層上の露光されたパターンでもよい。リファレンス層は、基板420上に既に存在するエッチングされた層でもよい。リファレンス層は、リソグラフィ装置100および/または100’によって基板上に露光されるリファレンスパターンによって生成されてもよい。露光された層は、リファレンス層の近くで露光されたレジスト層でもよい。露光された層は、リソグラフィ装置100または100’によって基板420上に露光される露光パターンによって生成されてもよい。基板420上の露光されたパターンは、ステージ422による基板420の移動に対応してもよい。いくつかの実施形態では、測定されたオーバーレイデータが、リファレンスパターンおよび露光パターンの間のオフセットを表してもよい。測定されたオーバーレイデータは、露光された層およびリファレンス層の間のオフセットがキャリブレーション後に最小化されるように、リソグラフィ装置100または100’によって露光される露光パターンをキャリブレーションするためのキャリブレーションデータとして使用されてもよい。
【0077】
いくつかの実施形態では、ビーム分析器430が、基板420の製品スタックプロファイルのモデルを判定するように更に構成され、単一の測定においてターゲット418のオーバーレイ、臨界寸法、およびフォーカスを測定するように構成されうる。製品スタックプロファイルは、アライメントマーク、ターゲット418、または基板420等のスタック製品についての情報を含み、照明変動の機能であるマークプロセス変動起因光学シグネチャ計測を含んでもよい。製品スタックプロファイルは、製品格子プロファイル、マークスタックプロファイル、およびマーク非対称性情報を含んでもよい。ビーム分析器430の一例は、その全体が参照によって本書に援用される米国特許第8,706,442において記述されているように、ASML(Veldhoven、Netherlands)によって製造されているYieldstar(商標)として公知の計測装置において見つかる。ビーム分析器430は、ある層に露光されたパターンの特定の特性に関する情報を処理するように更に構成されうる。例えば、ビーム分析器430は、層に描かれたイメージのオーバーレイパラメータ(基板上の先の層に対する層の配置精度または基板上のマークに対する第1層の配置精度の指標)、フォーカスパラメータ、および/または臨界寸法パラメータ(例えば、線幅およびその変動)を処理できる。他のパラメータは、露光されたパターンの描かれたイメージの品質に関するイメージパラメータである。
【0078】
いくつかの実施形態では、検出器のアレイ(不図示)がビーム分析器430に接続されてもよく、後述されるように正確なスタックプロファイル検出を可能にしてもよい。例えば、検出器428は、検出器のアレイでもよい。検出器アレイについて、多くのオプション(例えば、マルチモードファイバ束、チャネル毎の離散的なピン検出器、CCDまたはCMOS(線型)アレイ)が可能である。マルチモードファイバ束の使用は、安定性のために、任意の損失エレメントが遠隔に配置されることを可能にする。離散的なPIN検出器は、広いダイナミックレンジを提供するが、それぞれが個別のプリアンプを必要とする。従って、エレメントの数は限られる。CCD線型アレイは、高速で読み出されてもよい多くのエレメントを提供し、位相ステッピング検出が使用される場合に特に興味深い。
【0079】
いくつかの実施形態では、
図4Bに示されるように、第2ビーム分析器430’が、回折された放射サブビーム429を受け取り、その光学状態を判定するように構成されうる。光学状態は、ビーム波長、偏光、またはビームプロファイルの測定結果でもよい。第2ビーム分析器430’は、ビーム分析器430と同じでもよい。あるいは、第2ビーム分析器430’は、ステージ422の位置を判定し、ステージ422の位置をアライメントマークまたはターゲット418の対称中心の位置と相関させること等の、ビーム分析器430の少なくとも全ての機能を実行するように構成されうる。このように、アライメントマークまたはターゲット418の位置および結果的に基板420の位置が、ステージ422を参照して正確に分かる。第2ビーム分析器430’は、アライメントマークまたはターゲット418の対称中心が、検査装置400または任意の他のリファレンスエレメントを参照して分かるように、検査装置400または任意の他のリファレンスエレメントの位置を判定するように構成されうる。第2ビーム分析器430’は、二つのパターンの間のオーバーレイデータおよび基板420の製品スタックプロファイルのモデルを判定するように更に構成されうる。第2ビーム分析器430’は、単一の測定においてターゲット418のオーバーレイ、臨界寸法、およびフォーカスを測定するように構成されうる。
【0080】
いくつかの実施形態では、第2ビーム分析器430’が、直接的に検査装置400に統合されてもよいし、いくつかのタイプ(他の実施形態では、偏光保持シングルモード、マルチモード、またはイメージング)の光ファイバを介して接続されてもよい。あるいは、第2ビーム分析器430’およびビーム分析器430は、回折された放射サブビーム429および439の両方を受け取り、それらの光学状態を判定するように構成される単一の分析器(不図示)を形成するために組み合わされうる。
【0081】
いくつかの実施形態では、プロセッサ432が、検出器428およびビーム分析器430から情報を受け取る。例えば、プロセッサ432は、オーバーレイ演算プロセッサでもよい。情報は、ビーム分析器430によって構築される製品スタックプロファイルのモデルを含んでもよい。あるいは、プロセッサ432は、製品マークに関する受け取られた情報を使用して、製品マークプロファイルのモデルを構築できる。いずれの場合でも、プロセッサ432は、製品マークプロファイルのモデルを使用または統合して、スタック製品およびオーバーレイマークプロファイルのモデルを構築する。そして、スタックモデルは、オーバーレイオフセットを判定し、オーバーレイオフセット測定に対するスペクトル効果を最小化するために使用される。プロセッサ432は、検出器428およびビーム分析器430から受け取られた情報(照明ビームの光学状態、アライメント信号、関連する位置推定、および瞳、イメージ、および追加的な面における光学状態を含むが、これらに限られない)に基づいて、基本的な補正アルゴリズムを生成できる。瞳面は、放射の径方向位置が入射角を定め、角度位置が放射の方位角を定める面である。プロセッサ432は、ウェーハマークおよび/またはアライメントマーク418を参照して検査装置400を特徴付けるために、基本的な補正アルゴリズムを利用できる。
【0082】
いくつかの実施形態では、プロセッサ432が、検出器428およびビーム分析器430から受け取られた情報に基づいて、各マークについてのセンサ推定に対するプリントされたパターン位置オフセットエラーを判定するように更に構成されうる。情報は、基板420上の各アライメントマークまたはターゲット418の製品スタックプロファイル、オーバーレイの測定結果、臨界寸法、およびフォーカスを含むが、これらに限られない。プロセッサ432は、マークを同様の定オフセットエラーの組にグルーピングし、情報に基づいてアライメントエラーオフセット補正テーブルを生成するために、クラスタリングアルゴリズムを利用できる。クラスタリングアルゴリズムは、オフセットエラーの各組に関するオーバーレイ測定、位置推定、および追加的な光学スタックプロセス情報に基づいてもよい。オーバーレイは、多くの異なるマーク、例えば、プログラムされたオーバーレイオフセットの周りの正および負のバイアスを有するオーバーレイターゲットについて演算される。最小のオーバーレイを測定するターゲットが、リファレンスとして使用される(最良の精度で測定されているため)。この測定された小さいオーバーレイおよび対応するターゲットの既知のプログラムされたオーバーレイから、オーバーレイエラーが推測されてもよい。表1は、これが実行されてもよい様子を例示する。示される例における最小の測定されたオーバーレイは「-1nm」である。しかし、これは、「-30nm」のプログラムされたオーバーレイを有するターゲットに関するものである。結果的に、プロセスは「29nm」のオーバーレイエラーを導入したことになる。
【表1】
最小の値は、リファレンスポイントとして使用されてもよく、これに対して、測定されたオーバーレイおよびプログラムされたオーバーレイのために期待される値の間のオフセットが演算されてもよい。このオフセットは、各マークまたは同様のオフセットを有するマークの組について、オーバーレイエラーを決定する。従って、テーブル1の例では、最小の測定されたオーバーレイは、「30nm」のプログラムされたオーバーレイを有するターゲット位置において「-1nm」である。他のターゲットでの期待されるオーバーレイおよび測定されたオーバーレイの間の差は、このリファレンスと比較される。テーブル1等のテーブルは、異なる照明セッティング下のマークおよびターゲット418から取得されてもよく、最小のオーバーレイエラーをもたらす照明セッティングおよび対応するキャリブレーションファクタが判定および選択されてもよい。これに従って、プロセッサ432は、マークを同様のオーバーレイエラーの組にグルーピングできる。マークのグルーピングのための基準は、異なるプロセス制御(例えば、異なるプロセスについての異なるエラー許容度)に基づいて調整されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、プロセッサ432が、追加的な光学スタック計測に基づいて、グループの全てまたはほとんどのメンバーが同様のオフセットエラーを有することを確認でき、クラスタリングアルゴリズムからの個別のオフセット補正を各マークに適用できる。プロセッサ432は、各マークについての補正を決定でき、オーバーレイにおけるエラーを補正するために、例えば、補正を検査装置400内に提供することによって、当該補正をリソグラフィ装置100または100’に対してフィードバックできる。
【0084】
コヒーレンススクランブラを使用する例示的な照明システム
【0085】
ICがますます小さくなるにつれて、リソグラフィツールのユーザは、効率的なウェーハ使用を最大化するための努力において、より小さく密に集積されたアライメントマークを求めている。いくつかの実施形態では、ウェーハ上のリソグラフィフィーチャの数の増加に伴って、ウェーハ毎に検査されなければならないターゲットの数も増加している。ウェーハ毎により多くのターゲットを検査することは、生産スループットを低下させる可能性がある。従って、検査システムがターゲットを高速に測定することが望ましい。例えば、測定毎の時間を減らすことによって(例えば、より多くの光子を収集することによって)、ウェーハ検査のスピードは高められる。レーザは、強力な照明ソースの一例である。しかし、レーザは、照明および検出されるビームにおいてスペックルを形成させる可能性があるコヒーレントな放射を提供する。スペックルは、コヒーレントな放射の干渉する部分のために、放射のビームにおいて形成されうる。そして、スペックルは、光学測定が不正確な結果(例えば、不正確なアライメント位置)をもたらす原因にもなる。インコヒーレントな放射ソースは、強度が限られる(例えば、ターゲット上の低い光子カウント)代わりに、スペックル問題を回避できる。
【0086】
「コヒーレンススクランブリング」等の用語は、コヒーレントな放射の一部または全部がインコヒーレントまたは準コヒーレントな放射に転換される現象を表すために使用されてもよい。コヒーレンススクランブリングは、例えば、放射のビームのインコヒーレンスを増加させることや、準コヒーレントな波面の空間強度分布を経時的に変化させることを包含してもよい。
【0087】
コヒーレントな照明ソースは、従来のインコヒーレントな放射のソースより高い強度を有しエネルギー効率が高い放射のビームを生成してもよい。いくつかの実施形態では、コヒーレントな放射が、自身をインコヒーレントな放射に転換するために撹乱されてもよい。一つの方法は、機械的なコヒーレンススクランブラを使用することでもよい。いくつかの実施形態では、機械的なコヒーレンススクランブラが、コヒーレントな放射のソースおよび回転ディフューザプレートを備える。コヒーレントな放射は、回転ディフューザプレート上に入射してもよい。放射は、ランダム化された位相で散乱されうる。ランダム化された位相は、回転ディフューザプレートの回転のために経時的に変わる粗い表面上に入射する照明によるものでもよい。散乱された光は、インコヒーレントな放射のビーム内に収集され、ターゲットに送られてもよい。インコヒーレントな放射のビームは、回転ディフューザプレートの粗さプロファイルおよびその回転のスピードに基づくレートで継続的に変わるスペックルパターンを生成してもよい。
【0088】
いくつかの実施形態では、計測システムが、ターゲットに送られるインコヒーレントな放射のビームを生成するための機械的なコヒーレンススクランブラを備えてもよい。ターゲットからの照明が検出器で収集されるため、変動するスペックルパターンが統合(例えば、平均化)されてもよいように有限検出期間が選択される。
【0089】
機械的なコヒーレンススクランブラには様々な欠点がある。いくつかの実施形態では、ディフューザプレートが、光子の非効率的な使用(例えば、多くのはぐれた光子が失われる)をもたらし、コヒーレントな放射ソースからの高強度の便益を低減してしまう。測定のスピードに関して、産業の要望はミリ秒以下でターゲットを測定できる計測システムに集まっている。コヒーレンススクランブラは、適切な平均化を実現するために、例えば、検出期間中に1000回に亘ってスペックルパターンを変えなければならない可能性がある。しかし、回転ディフューザプレートは、例えば、kHzの範囲における回転スピードに限定されている。このように、回転ディフューザプレートは、迅速に変わるスペックルパターンを提供する能力に欠けている。加えて、清浄環境(例えば、リソグラフィ装置)において速く動く機械的なコンポーネントを有することは、振動および壊滅的な故障(例えば、回転するエレメントが物を巻き散らす場合のリソグラフィ装置の取り返しのつかないダメージまたは汚染)等の問題をもたらす恐れがある。
【0090】
本開示の実施形態は、例えば、強力なコヒーレントな照明ソースを、ターゲットを照明するための強力なインコヒーレントな照明ソースに転換するためのコヒーレンススクランブラを使用して、より迅速および効率的に基板上の構造の検査を実行するための構造および機能を提供する。本開示の実施形態は、コヒーレントな照明の時間的および空間的なスクランブリングを得るための構造および方法を提供する。いくつかの実施形態では、コヒーレンススクランブラ構造および機能が、メタ表面(すなわち、メタ材料)を使用して実装されてもよい。コヒーレンススクランブラを実装する実施形態を記述する前に、その理解に役立つメタ表面に関する構造および機能を提示する。
【0091】
メタ表面は、ユニークで望ましい光学特性を提供するために設計および製作されうる。例えば、光路に沿って位相シフトまたは位相非連続性を導入することによって、波面が制御されてもよい。いくつかの側面では、メタ表面が、多重共振器のアレイを含む共振器構造を含んでもよい。いくつかの実施形態では、共振器が、電磁キャビティ、開口、量子ドット、ナノ粒子クラスタ、またはプラズモニックアンテナを含んでもよい。いくつかの実施形態では、メタ表面が、光を反射する、または、光を任意の方向に送るように構成される液晶メタ表面でもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、メタ表面のインターフェースを通過するビームの伝播が、一般化されたスネルの法則を使用して記述されてもよい。屈折の一般化されたスネルの法則は、以下のように表されてもよい。
【数1】
ここで、θ
iはビームの入射角であり、n
iは第1媒体の屈折率であり、n
tは第2媒体の屈折率であり、θ
tは屈折角であり、λ
0は光の波長であり、dΦ/dxは第1媒体および第2媒体の間のインターフェースに沿った位相非連続性の勾配である。方程式(1)における非零の位相勾配のために(すなわち、メタ表面によって導入された位相シフトのために)、垂直な入射光は非零の屈折角をもたらす。このように、垂直な入射光ビームは、更に後述されるように、インターフェースに沿って位相非連続性を導入することによって方向付けされる。
【0093】
図5は、いくつかの実施形態に係る光学エレメント(メタ表面)502を例示する。光学エレメント502は、基板506およびエレメント508を含みうる。いくつかの側面では、エレメント(または、セグメンテーション)508が、入射ビーム504に非一様な位相シフトを導入できる。エレメント508は、所望の位相シフトまたは位相遅れを生成するように構成されうる。いくつかの側面では、入射ビーム504が、光学エレメント502の表面に垂直に入射してもよい。
【0094】
いくつかの側面では、エレメント508が、基板506上に搭載されうる。基板506は、入射放射または入射ビーム504の動作波長において透明な材料によって形成されてもよい。いくつかの側面では、基板506が可視範囲において透明でもよい。例えば、基板506は、約380nmと750nmの間の可視光範囲における波長を有する入射ビームに対して、石英ガラスから形成されうる。いくつかの実施形態では、エレメント508が、基板506内に設けられてもよい(例えば、液晶中のナノ粒子の混合物)。
【0095】
いくつかの実施形態では、入射ビーム504について所望のシフト遅れ、従って、所望の屈折角を得るために、各エレメント508の形状および/またはサイズが変えられうる。いくつかの実施形態では、エレメント508がプラズモニックアンテナでもよい。出力波面の完全なコントロールを提供するために、「0」~「2π」の範囲をカバーする位相シフトが望ましい。いくつかの側面では、プラズモニックアンテナが、金、銀、およびアルミニウム等の金属、または高濃度にドープされたガリウムヒ素等の半導体で形成されてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、ビームが方向付けされることを可能にするように、位相シフトが調整可能でもよい。例えば、外部信号(例えば、光、電圧、磁場、または弾性歪)が、メタ表面502の一または複数の光学特性を変えるために、メタ表面502に適用されてもよい。いくつかの実施形態では、エレメントが搭載される基板506が、電気光学材料または電気光学効果、熱効果、または光吸収を通じて光学特性を変えられる他の材料から作られうる。
【0097】
いくつかの実施形態では、共重合体フィルム(例えば、DR1-MMA)または液晶等の電気光学材料から基板506が形成されうる。メタ表面502の両側が、導電材料を使用してコーティングされうる。いくつかの側面では、メタ表面502が、二つの透明導電酸化物(TCO)層を備えうる。電気光学材料の屈折率を変えるために、TCO層の間に電圧が適用されてもよい。いくつかの側面では、メタ表面502の屈折率における変化のために適用される電圧を変えることによって、入射光ビームまたは放射が方向付けされてもよい。
【0098】
図6は、いくつかの実施形態に係る光学デバイス600を例示する。光学デバイス600は、メタ表面602、光学エレメント610、およびコントローラ612を備えうる。いくつかの実施形態では、光学エレメント610が、マルチモード導波管を含みうる。
【0099】
メタ表面602の第1側上への入射光放射(例えば、ビーム)604は、他の側から再放出されうる。再放出された光放射は、光学エレメント610の入力に結合されてもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、コントローラ612が、屈折される角度に変化をもたらすメタ表面602の光学特性を変えるように構成される。いくつかの側面では、光学特性が、電気光学効果、熱光学効果、および/または圧電効果を使用して変えられてもよい。このように、出力ビーム614は、コントローラ612を使用して方向付けされうる。いくつかの側面では、出力ビーム614が、
図6に示されるような位置Aおよび位置Bの間で方向付けされうる。いくつかの側面では、コントローラ612が、光学特性における変化をもたらす信号を生成するように構成される。信号は、ランダムに生成されてもよい。このように、スペックルパターンは、光学エレメント610においてランダムに切り替えられる。
【0101】
いくつかの実施形態では、
図4Aおよび4Bの照明システム412において光学デバイス600が使用されうる。
【0102】
空間コヒーレンススクランブラ
【0103】
図7は、いくつかの実施形態に係る空間コヒーレンススクランブラ700を例示する。空間コヒーレンススクランブラ700は、
図4Aおよび4Bの照明システム412において使用されうる。空間コヒーレンススクランブラ700は、メタ表面702、光学エレメント710(例えば、マルチモード導波管、光ファイバ)、第1電極716、および第2電極718を含みうる。第1電極716および第2電極718は、メタ表面702上または近傍に配置されうる。電極716および718は、メタ表面702の正反対側に配置されうる。電極716は、電圧V(t)を受け取ることができる(例えば、コントローラ712または電源から)。電極718は、電極716に対するリファレンス電圧(例えば、接地)を提供できる。電極716および718は、メタ表面702における電気効果を調整するために使用されうる。
【0104】
メタ表面702は、光学エレメント710内においてビームをランダムに方向付けることができる。光学エレメント710は、絶縁材料を備えうる。絶縁材料は、周りの材料より高い屈折率のために、マルチモード導波管として機能する。
【0105】
いくつかの実施形態では、メタ表面702が、複数のサブユニット(または、セル)702a、702b、702c、702dを含みうる。いくつかの側面では、全てのサブユニットに亘って同じ位相シフトを得るために、同じ電圧が複数のサブユニット702a、702b、702c、702dに適用される。このように、入射ビーム(または、放射)704は、適用される電圧に基づく単一方向に向かってシフトされる。
【0106】
いくつかの実施形態では、放射のビーム704が、放射ソース720によって生成されうる。放射ソース720によって生成される放射は、コヒーレントな放射でもよい。いくつかの実施形態では、放射ソース720が、広帯域波長または二以上の狭帯域波長を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、放射ソース720が、選択可能な波長(例えば、λ
1、λ
2・・・λ
N)の範囲からの波長を有するビームを生成できる。多波長コヒーレントな放射ソースは、商業的に利用可能である。放射ソース720は、一または複数の放射ソース(例えば、レーザダイオード)でもよい。放射ソース720は、空間コヒーレンススクランブラ700の外部にあってもよい(例えば、
図4Aの照明システム412における光源)と理解されるべきである。
【0107】
いくつかの実施形態では、コントローラ712が、放射のビーム704の方向を制御するために、電圧V(t)を変えるように構成される。コントローラ712は、空間コヒーレンススクランブラ700の外部にあってもよい(例えば、計測システムまたはリソグラフィシステムにおけるコントローラ)と理解されるべきである。
【0108】
いくつかの実施形態では、光学エレメント710が、入結合された放射を案内し、放射のビーム714を出力できる。放射のビーム714は、ターゲット(不図示)上に入射してもよい。放射のビーム714は、光学エレメント710における伝播モードに基づくスペックルパターンを有してもよい。入射角(すなわち、光学エレメント710の入力上への入射角)における変化に応じて、スペックル反応が光学エレメント710の出力において観測される。入射角または光学エレメント710における励起モードの数における変化に基づいて、スペックル反応またはエタンデュは特性を変えてもよい。
【0109】
いくつかの実施形態では、コントローラ712が、約10kHz以上、100kHz以上、1MHz以上、10MHz以上、100MHz以上、1GHz以上、または10GHz以上の周波数で電圧V(t)を調整できる。
【0110】
いくつかの実施形態では、電圧が速く変わり(例えば、テラヘルツ)、統合された際に光の空間分布のスクランブリングを生成する速く変わるエタンデュ形状をもたらしてもよい。
【0111】
用語「エタンデュ」は、伝播の方向および空間分布(例えば、原点に対する立体角)に基づく照明強度の広がりを特徴付ける光学システムの光の特性を表すために使用されてもよい。
【0112】
図4Aを再び参照して、いくつかの実施形態では、検出器428が、カメラ(例えば、CCDカメラ)を備えうる。カメラは、ターゲット418の一または複数のイメージを取得するために使用されてもよい。検出器428は、時間変化するスペックルパターンを有する放射を受け取ることができると理解される。例示的なスペックルパターンが、インサート724によって示される。各検出器エレメント(例えば、ピクセル)で受け取られる総強度は、期間に亘って積分(または、累積)されてもよい。このように、スペックルの効果が各検出器エレメントについて平均化されてもよい。空間コヒーレンススクランブラ700がスペックルパターンの高速スイッチングを可能にするため、検出器428は、1s以下、1ms以下、100μs以下、10μs以下、1μs以下、または100ns以下の期間に亘って平均化されたスペックルパターンを有するイメージを生成できる。
【0113】
いくつかの実施形態では、メタ表面(例えば、
図6のメタ表面602)が、入射放射のビームを反射してもよい。このように、放射は受け取られ、メタ表面の同じ側から再放出される。いくつかの側面では、前述されたように、反射された放射のビームが調整されてもよい。反射された放射のビームは、導波管に結合されてもよいし、ターゲットに向けられてもよい。反射された放射のビームがメタ表面を通過する(例えば、
図5のメタ表面502の基板506を通過する)際の吸収による損失を被らないため、より高い効率が提供されうる。
【0114】
時間コヒーレンススクランブラ
【0115】
いくつかの実施形態では、メタ表面が、二以上のサブユニットを備えてもよい。いくつかの側面では、各サブユニットの光学特性(例えば、屈折率)が、個別に調整されてもよい。いくつかの側面では、二以上のサブユニットの各サブユニットにランダム信号が適用されてもよい。例えば、時間変化する電圧信号が、各サブユニットに適用されてもよい。このように、サブユニットに関するビームレットに関するインコヒーレンスの量は、異なっていてもよい(例えば、各ビームレットが異なる位相を有してもよい)。
【0116】
図8は、いくつかの実施形態に係る時間コヒーレンススクランブラ800を例示する。いくつかの実施形態では、時間コヒーレンススクランブラ800が、メタ表面802を備えうる。いくつかの側面では、メタ表面802が、サブユニット802a、802b、802c、802dを備えうる。いくつかの実施形態では、時間コヒーレンススクランブラ800が、電極818および複数の電極816a、816b、816c、および816dを含みうる。いくつかの側面では、電極818および複数の電極816a、816b、816c、および816dが、メタ表面802の正反対側に配置されうる。いくつかの側面では、電極818が、導電層(例えば、透明導電酸化物(TCO)の層)でもよい。いくつかの側面では、複数の電極816a、816b、816c、および816dが、メタ表面802の表面上に非連続性を含む導電層として形成されうる。いくつかの側面では、非連続性が各サブユニット802a、802b、802c、802dに対応してもよい。
【0117】
いくつかの実施形態では、電極816a、816b、816c、および816dが、電圧V(t)を受け取ることができる(例えば、コントローラ812または電源から)。電極818は、電極816a、816b、816c、および816dに対するリファレンス電圧(例えば、接地)を提供できる。電極818および電極816a、816b、816c、および816dは、それぞれのサブユニット802a、802b、802c、802dにおける光学特性を調整するために使用されうる。
【0118】
いくつかの実施形態では、電極816a、816b、816c、および816dの各電極に定電圧が適用される。そして、小さい外乱が適用されてもよい。小さい外乱は、電極816a、816b、816c、および816dに対してランダムに適用される。このため、各ビームレット814a、814b、814c、814dは、元々の位相の周りのランダムな変化(ランダム遅れ)を有し、時間的にスクランブルされた光を生成する。いくつかの側面では、サブユニットのそれぞれに適用される外乱が、インコヒーレントな光が望ましい場合に増幅される。インコヒーレントな光は、高パワーのインコヒーレントな光が望ましいアプリケーションにおいて使用されてもよい。
【0119】
各ビームレット814a、814b、814c、814dのインコヒーレンスの量は、外乱のランダム化に基づいてもよい。ここで記述されるランダム化オペレーションは、例えば、真ランダムアルゴリズム、疑似ランダムアルゴリズム、カオス等に基づいてもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、放射のビーム804が放射ソース820によって生成されうる。放射ソース820によって生成される放射は、コヒーレントな放射でもよい。放射ソース820は、時間コヒーレンススクランブラ800の外部にあってもよい(例えば、
図4Aの照明システム412における光源)と理解されるべきである。
【0121】
コントローラ812は、時間コヒーレンススクランブラ800の外部にあってもよい(例えば、計測システムまたはリソグラフィシステムにおけるコントローラ)と理解されるべきである。
【0122】
いくつかの実施形態では、時間コヒーレンススクランブラ800が、カメラに基づくアライメントセンサにおいて使用されうる。いくつかの実施形態では、時間コヒーレンススクランブラ800が、光学イメージングシステムにおいて使用されうる。
【0123】
いくつかの実施形態では、時間コヒーレンススクランブラ800が、空間コヒーレンススクランブラとして使用されうる。例えば、外乱を伴わない同じ信号(例えば、時間変化する電圧)が、全ての電極(すなわち、電極816a、816b、816c、および816d)に適用されてもよい。
【0124】
図9は、いくつかの実施形態に係る照明システム900を例示する。いくつかの実施形態では、照明システム900が、検査装置の一部(例えば、検査装置400(
図4Aおよび4B)における照明システム412)として実装されうる。
【0125】
いくつかの実施形態では、照明システム900が、メタ表面902aおよびメタ表面902bを備える。いくつかの実施形態では、メタ表面902aおよび902bが、それぞれコヒーレントな放射904aおよび904bのビームを受け取ることができる。いくつかの側面では、コヒーレントな放射904aおよび904bのビームが、メタ表面902aおよび902bの入力表面上に垂直に入射しうる。メタ表面902aおよび902bは、それぞれビーム914aおよび914bを出力できる。いくつかの側面では、ビーム914aおよび914bが、メタ表面902aおよび902bに適用される信号に基づいてコヒーレンスがスクランブルされた放射を含みうる。
【0126】
いくつかの実施形態では、メタ表面902aに関する信号が、ビーム914aをターゲット920に向けるために調整されうる。メタ表面902bに関する信号は、ビーム914bをターゲット920に向けるために調整されうる。前述されたように、垂直入射ビームは、方程式(1)において与えられた一般化されたスネルの法則における非零の位相勾配のために曲げられてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、ターゲット920から散乱された放射が、検出器(例えば、
図4Aの検出器428)によって検出されうる。プロセッサは、ターゲット920の特性を判定するために、検出器からの測定信号を分析してもよい。
【0128】
図10は、いくつかの実施形態に係るシステム1000を例示する。いくつかの実施形態では、システム1000が、レベルセンシングのためにリソグラフィ装置100の一部として実装されうる。いくつかの実施形態では、システム1000が、メタ表面1002aおよびメタ表面1002bを備えうる。メタ表面1002aは、一または複数の光ビームをターゲット1020aおよび1020bに対して再方向付けできる。ターゲット1020aおよび1020bによって反射および/または屈折された光は、メタ表面1002b上に入射しうる。いくつかの側面では、光が、メタ表面1002bの表面における角度で入射してもよい。いくつかの実施形態では、メタ表面1002bの出力から再放出された光1022が、メタ表面1002bの表面に垂直な方向を有してもよい。いくつかの側面では、再放出された光1022が、検出器(不図示)に向けられうる。
【0129】
いくつかの実施形態では、ターゲット1020aおよび1020bが、メタ表面1020aからの構造化された照明を使用して照明されうる。そして、受け取られた形状が、再放出された光1022に基づいて判定されてもよい。いくつかの側面では、焦点に対する基板(ターゲット1020aおよび1020bを含む)の位置が推定されてもよい。例えば、基板が焦点上にあるか否かの判定が行われてもよい。更に、再放出された光1022に基づいてシフト量が決定されてもよい。
【0130】
図11は、いくつかの実施形態に係る、ここで記述される機能を含む方法1100を実行するための方法ステップ(例えば、一または複数のプロセッサを使用するもの)を示す。
図11の方法1100は、任意の考えられる順序で実行でき、全てのステップが実行されることは必須ではない。更に、前述の
図11の方法ステップは、ステップの一例を単に反映しているに過ぎず、限定する趣旨ではない。
【0131】
方法1100は、ステップ1102において例示されるように、メタ表面上の入射光放射を受け取ることを含む。メタ表面は、入射光放射の位相に変化をもたらしうる。例えば、
図5のメタ表面502は、入射光放射(例えば、
図5の入射ビーム504)の位相に変化をもたらしうる。
【0132】
方法は、ステップ1104において例示されるように、入射光放射のインコヒーレンスの量を変えるために、メタ表面の光学特性を調整するようにメタ表面に対して信号を適用することも含む。
【0133】
方法は、ステップ1106において例示されるように、コヒーレンスがスクランブルされた放射をメタ表面から再放出することも含む。いくつかの側面では、方法が、ステップ1108において例示されるように、コヒーレンスがスクランブルされた放射でターゲットを照明することも含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、方法1100が、メタ表面(例えば、
図5のメタ表面502)の各サブユニットのそれぞれの信号に対して、ランダム化された外乱を適用することを含む。
【0135】
実施形態は、更に以下の項目を用いて記述されてもよい。
項目1:
放射のビームを生成するように構成される放射ソースと、
前記放射のビームの位相に非一様な変化をもたらし、ターゲットを照明するためにコヒーレンスがスクランブルされた放射を出力するように構成される光学エレメントであって、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射のインコヒーレンスの量を変えるために光学特性が調整可能である光学エレメントと、
前記ターゲットによって散乱された放射を受け取り、前記受け取られた放射に基づいて測定信号を生成するように構成される検出器と、
前記ターゲットの特性を判定するために、前記測定信号を分析するように構成されるプロセッサと、
を備えるシステム。
項目2:
材料を備える前記光学エレメントは、信号を受け取り、前記材料の光学定数を調整するために前記信号を使用するように更に構成される、項目1に記載のシステム。
項目3:
前記光学エレメントに結合される電極を更に備え、
前記信号は、前記電極に適用される時間変化する電圧である、
項目2に記載のシステム。
項目4:
前記光学エレメントから、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を受け取るように構成される入力と、
前記ターゲットの照明のために、コヒーレンスがスクランブルされた放射のビームを出力するように構成される出力と、
を備える導波デバイスを更に備える項目1に記載のシステム。
項目5:
前記光学エレメントは、二以上のサブユニットを備え、
前記二以上のサブユニットの各サブユニットのそれぞれの光学特性は、個別に調整可能である、
項目1に記載のシステム。
項目6:
各サブユニットに関する前記コヒーレンスがスクランブルされた放射のビームレットの前記インコヒーレンスの量は、前記それぞれの光学特性に対するランダム化された外乱に基づく、項目5に記載のシステム。
項目7:
前記光学エレメントは、共振器構造および基板を備え、
前記共振器構造は、前記基板の上または中に形成される、
項目1に記載のシステム。
項目8:
前記基板は、前記放射のビームの動作波長において透明な材料を備える、項目7に記載のシステム。
項目9:
前記光学エレメントは、液晶メタ表面を備える、項目1に記載のシステム。
項目10:
前記放射ソースは、一または複数の波長を生成するように構成され、
前記一または複数の波長は、可視スペクトル内にある、
項目1に記載のシステム。
項目11:
前記光学エレメントは、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を反射する、項目1に記載のシステム。
項目12:
前記光学エレメントは、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を送る、項目1に記載のシステム。
項目13:
コヒーレントな放射を受け取り、前記コヒーレントな放射の位相に非一様な変化をもたらすように構成されるメタ表面と、
コヒーレンスがスクランブルされた放射を生成するために、前記コヒーレントな放射のインコヒーレンスの量を変えるために、前記メタ表面の光学特性を調整するように構成されるコントローラと、
を備えるコヒーレンススクランブラデバイス。
項目14:
前記メタ表面は、二以上のサブユニットを備え、
前記二以上のサブユニットの各サブユニットのそれぞれの光学特性は、個別に調整可能である、
項目13に記載のコヒーレンススクランブラデバイス。
項目15:
前記メタ表面は、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を反射するように構成される、項目13に記載のコヒーレンススクランブラデバイス。
項目16:
前記光学エレメントから、前記コヒーレンスがスクランブルされた放射を受け取るように構成される入力と、
コヒーレンスがスクランブルされた放射のビームを出力するように構成される出力と、
を備えるマルチモード導波デバイスを更に備える項目13に記載のコヒーレンススクランブラデバイス。
項目17:
前記コントローラは、前記メタ表面の光学定数を変えるために、信号をランダムに調整するように更に構成される、項目13に記載のコヒーレンススクランブラデバイス。
項目18:
入射光放射の位相に変化をもたらすメタ表面上で前記入射光放射を受け取ることと、
前記入射光放射のインコヒーレンスの量を変えるために、前記メタ表面の光学特性を調整するために前記メタ表面に対して信号を適用することと、
コヒーレンスがスクランブルされた放射を前記メタ表面から再放出することと、
前記コヒーレンスがスクランブルされた放射でターゲットを照明することと、
を備える方法。
項目19:
時間的にコヒーレンスがスクランブルされた放射を取得するために、前記メタ表面の前記二以上のサブユニットの各サブユニットのそれぞれの信号に対してランダム化された外乱を適用することを更に備える、項目18に記載の方法。
項目20:
空間的にコヒーレンスがスクランブルされた放射を取得するために、前記メタ表面に亘って一様な信号を適用することを更に備える、項目18に記載の方法。
【0136】
イメージに基づく検査技術は、例えば、リソグラフィ層のオーバーレイを検査するために、および/または、リソグラフィプロセスを介してリソグラフィ層を受け取るためにウェーハをアラインさせるために、ここで記述される実施形態を使用してもよい。ここで記述される実施形態を使用することで、機械的なコヒーレンススクランブラを有する照明システムを使用する場合より、光学検査オペレーションが速く安全になる。より速い検査は、ウェーハ生産スループットの向上を可能にする。ここで開示される実施形態によれば、非効率的な機械的なコヒーレンススクランブラと対照的に、ソースからターゲットまで略無駄なく放射をガイドできる。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示の計測システム、コヒーレンススクランブラ、および関連する光学エレメントは、UV、可視、およびIRに亘る波長範囲(例えば、約400-2000nm)において動作するように構成されてもよい。
【0138】
リソグラフィ装置の用途に関して集積回路の製造が具体的に言及されたが、前述のリソグラフィ装置は他の用途に用いられてもよい。例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッド等の製造にリソグラフィ装置は利用可能である。このような代替的な用途の文脈において、「ウェーハ」または「ダイ」の用語は、当業者にとって、それぞれより一般的な「基板」または「ターゲット部分」の用語と同義であると解釈されうる。ここでの基板は、露光の前または後において、例えば、トラックユニット(典型的に、基板にレジスト層を適用して露光レジストを形成するツール)、計測ユニットおよび/または検査ユニット内で処理されるものでもよい。適用可能な場合、本開示はこのような他の基板処理ツールに適用されてもよい。更に、例えば複数層の集積回路を形成するために基板は複数回に亘って処理されてもよく、「基板」の用語は複数の処理された層を既に含む基板も包含する。
【0139】
発明の実施形態の用途に関して光学リソグラフィが具体的に言及されたが、発明は文脈が許す限り光学リソグラフィに限定されず、インプリントリソグラフィ等の他の用途にも使用されうる。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイスにおけるトポグラフィが、基板上に形成されるパターンを定める。パターニングデバイスのトポグラフィは、基板に供給されたレジスト層にプレスされてもよく、電磁放射、熱、圧力、またはこれらの組合せを適用することによってレジストが硬化される。レジストが硬化された後にパターニングデバイスがレジストから取り除かれると、当該レジスト内にパターンが残される。
【0140】
ここでの表現または用語は非限定的な例示を目的としており、本開示の用語または表現はここでの教示の下で当業者によって解釈されると理解される。
【0141】
「基板」の用語は、材料の層が上に加えられる材料を記述する。いくつかの実施形態では、基板自体がパターニングされてもよく、その上に加えられる材料はパターニングされてもよいし、パターニングされなくてもよい。
【0142】
発明に係る装置および/またはシステムの用途に関して、集積回路の製造が具体的に言及されたが、このような装置および/またはシステムは他の多くの用途を有することが明示的に理解される。例えば、集積光学システム、磁気ドメインメモリのためのガイダンスおよび検出パターン、液晶ディスプレイパネル、薄膜磁気ヘッド等の製造に本開示に係る装置および/またはシステムは利用可能である。このような代替的な用途の文脈において、「レチクル」「ウェーハ」「ダイ」の用語は、当業者にとって、それぞれより一般的な「マスク」「基板」「ターゲット部分」の用語によって置換可能であると解釈される。
【0143】
発明の具体的な実施形態が前述されたが、発明は記述されたものと異なる態様で実施されてもよい。本記述は本開示を限定するものではない。
【0144】
「発明の概要」および「要約書」ではなく、「発明を実施するための形態」が「特許請求の範囲」を解釈するために使用されることが意図されている。「発明の概要」および「要約書」は、発明者が想到した一または複数の本発明の実施例を記述するが、その全てを記述するものではないため、本発明および付随する「特許請求の範囲」をいかなる方法でも限定することを意図したものではない。
【0145】
特定の機能およびそれらの関係の実施形態を例示する機能ブロックを利用して本発明が前述された。これらの機能ブロックの境界は、記述の便宜を考慮して任意に定められている。特定の機能およびそれらの関係が適切に実現される限り、他の境界が定められてもよい。
【0146】
特定の実施形態の以上の記述は、他者が、当技術分野における知識を適用することによって、過度の実験や本発明の概念からの逸脱を伴わずに、このような特定の実施形態を様々な用途に合わせて容易に改変できる、および/または、適合させられるように、発明の本質を完全に明らかにする。従って、このような適合および改変は、ここで提示された教示および示唆に基づいて、開示された実施形態の均等物の意味および範囲内にある。
【0147】
本発明の幅および範囲は、前述の例示的な実施形態によって限定されるべきでなく、特許請求の範囲およびそれらの均等物のみによって定義されるべきである。
【国際調査報告】