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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-24
(54)【発明の名称】ジンプロピリダズの水和性顆粒剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/58 20060101AFI20240517BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20240517BHJP
   A01N 25/14 20060101ALI20240517BHJP
【FI】
A01N43/58 A
A01P7/04
A01N25/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575780
(86)(22)【出願日】2022-05-31
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022064667
(87)【国際公開番号】W WO2022258424
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21179098.5
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ウェン
(72)【発明者】
【氏名】ベントン,カラ ウォールデン
(72)【発明者】
【氏名】チリンスキー,レイモンド エム
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC01
4H011BA05
4H011BB09
4H011BC07
4H011BC22
4H011DA15
4H011DG14
4H011DG16
4H011DH15
(57)【要約】
本発明は、a)ジンプロピリダズ、b)ジオクチルスルホスクシネート、c)アルキルナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物、d)スルホニル化がリグニン骨格の脂肪族部分に存在する、リグニンスルホネートI、e)スルホニル化がリグニン骨格の少なくとも芳香族部分に存在する、リグニンスルホネートIIを含有する水和性顆粒剤に関する。本発明は、その水和性顆粒剤を製造するプロセス、その顆粒剤と水とを接触させることによって得られる水性組成物、植物繁殖材料をその水性組成物で処置する方法、及びその水性組成物を施用することによって無脊椎有害生物を駆除又は制御する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ジンプロピリダズ、
b)ジオクチルスルホスクシネート、
c)アルキルナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物、
d)スルホニル化がリグニン骨格の脂肪族部分に存在する、リグニンスルホネートI、
e)スルホニル化が前記リグニン骨格の少なくとも芳香族部分に存在する、リグニンスルホネートII
を含有する水和性顆粒剤。
【請求項2】
前記ジンプロピリダズの濃度が、前記顆粒剤の総重量を基準に、少なくとも25wt%である、請求項1に記載の顆粒剤。
【請求項3】
前記ジオクチルスルホスクシネートの濃度が、前記顆粒剤の総重量を基準に、0.15~0.6wt%である、請求項1又は2に記載の顆粒剤。
【請求項4】
前記アルキルナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物の濃度が、前記顆粒剤の総重量を基準に、1.2~2.5wt%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項5】
構成成分c)の構成成分b)に対する重量比が、3:1~10:1である、請求項1~4のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項6】
前記リグニンスルホネートIの濃度が、前記顆粒剤の総重量を基準に、2.5~8wt%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項7】
前記リグニンスルホネートIIの濃度が、前記顆粒剤の総重量を基準に、3~5wt%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項8】
前記リグニンスルホネートIの前記リグニンスルホネートIIに対する重量比が、1:2~2:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項9】
前記リグニンスルホネートIIが、スルホネート基を、リグニン骨格の脂肪族部分及び芳香族部分の両方に含有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項10】
前記リグニンスルホネートIが、3~4モル/キログラムのスルホネート基を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項11】
前記リグニンスルホネートIIが、3~4モル/キログラムのスルホネート基を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項12】
前記リグニンスルホネートIIが、15,000~25,000g/molのz+1平均分子量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の顆粒剤。
【請求項13】
前記構成成分a)~e)を、任意選択により水と接触させることを含む、任意の所与の順番で接触させるステップと、得られる組成物を押し出すステップとを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の水和性顆粒剤を製造するプロセス。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の水和性顆粒剤と水とを接触させることによって得られる水性組成物。
【請求項15】
植物繁殖材料を請求項14に記載の組成物と接触させるステップを含む、前記植物繁殖材料を処置する方法。
【請求項16】
無脊椎有害生物を駆除又は制御する方法であって、前記方法は、前記有害生物又はその食物供給、生息地若しくは繁殖地に、有害生物防除有効量の、請求項1~12のいずれか一項に記載の水和性顆粒剤又は請求項13に記載の組成物を接触させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジンプロピリダズを含有する水和性顆粒剤に関し、本発明は、その顆粒剤を製造するプロセス、その顆粒剤と水とを接触させることによって得られる水性組成物、植物繁殖材料を処置する方法、無脊椎有害生物による寄生症又は感染症から、動物を処置又は保護する方法、無脊椎有害生物を駆除又は制御する方法、及び無脊椎有害生物による攻撃又は寄生症から、成長する植物を保護する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
水和性顆粒剤(「WG」)は、有害生物防除化合物の一般的な製剤タイプである。WG製剤は、ユーザーにとって取り扱いが容易であり、有機溶媒を含有せず、半減期の期間が長く、質量比当たりの活性が高い。WG製剤は、通常、施用前に、水性タンク混合などにおいて水に添加される。次に、顆粒剤は崩壊し、その成分は溶解するか、又は水性連続相中に分散される。水性媒体中に容易に分散され得る顆粒剤を製造すること、及び生成されたそのような水性分散体が均質なままであることが、一般に望ましい。粒子が沈殿すると、施用量が非連続的になり、沈殿した粒子は水性組成物の粘度プロファイルに影響を及ぼして、噴霧ノズルが詰まりがちになるおそれがある。したがって、水性組成物が沈降の徴候を示す場合、沈降物の再分散性を促進して、均質な組成物を回復させることが望ましいであろう。
【0003】
固体のWG製剤に関して、顆粒剤は、粉塵の形成が少ないという、粉末に勝る一般的な利点を有する。WG製剤を吸入すると、施用者に有害であり得、したがって、粉塵の形成を可能な限り減らすことが望ましい。WG製剤は、粒子間の摩擦プロセスによって粉塵を生成する場合がある。摩擦は、顆粒剤の表面を変更することによって、例えば、平らな表面を作出することによって、及び顆粒剤の統合性を増強することによって、即ち外力の下で割れたり、又は粉々に砕けたりする傾向を減らすことによって、影響され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、殺虫剤であるジンプロピリダズを含有する水和性顆粒剤に関する。本顆粒剤は、水性組成物中で高分散性を有し、粉塵の形成がほとんどなく、物理的に安定な水性組成物を生成する。これらの効果は、
a)ジンプロピリダズ、
b)ジオクチルスルホスクシネート、
c)アルキルナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物、
d)スルホニル化がリグニン骨格の脂肪族部分に存在する、リグニンスルホネートI、
e)スルホニル化がリグニン骨格の少なくとも芳香族部分に存在する、リグニンスルホネートII
を含む水和性顆粒剤を提供することによって実現された。
【0005】
驚くべきことに、添加物b)~e)の組合せは、上記の利点を付与することが発見された。その添加物のうち1つでも省略すると、望ましい効果がかなり悪化し、それはその他の構成成分の濃度の変更では修復することができない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ジンプロピリダズは、化合物1-[1,2-ジメチルプロピル]-N-エチル-5-メチル-N-ピリダジン-4-イル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミドの一般名である。ジンプロピリダズは、キラル中心を有し、さらには2つの鏡像異性体が記録されており(ip.com IPCOM000256756Dを参照)、それは、1-[(1R)-1,2-ジメチルプロピル]-N-エチル-5-メチル-N-ピリダジン-4-イル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(以下「R-鏡像異性体」という)、及び1-[(1S)-1,2-ジメチルプロピル]-N-エチル-5-メチル-N-ピリダジン-4-イル-1H-ピラゾール-4-カルボキサミド(以下「S-鏡像異性体」という)である。S-鏡像異性体及びR-鏡像異性体は、それぞれ、式I-A及びI-Bに図示されている。
【化1】
【0007】
したがって、「ジンプロピリダズ」という用語は、本明細書で使用する場合、S-鏡像異性体、R-鏡像異性体、及びそれらのラセミ混合物を指す。好ましくは、ジンプロピリダズという用語は、S-鏡像異性体及びR-鏡像異性体のラセミ混合物を指す。
【0008】
水和性顆粒剤は、典型的には、ジンプロピリダズを含む粒子を含有する。ジンプロピリダズは、少なくとも2種の結晶形態で存在し、以下、これらを「多形体A」及び「多形体B」という。ジンプロピリダズ、節足有害生物に対するその抗活性、及びその製造の一般手順は、国際公開第2012/143317号パンフレットから知られている。ジンプロピリダズの製造にこれらの一般手順を適用すると、この化合物が多形体Aを含有するガラス様融成物として得られる。ジンプロピリダズを含む懸濁粒子は、通常、多形体A、多形体B、又はそれらの混合物であるジンプロピリダズの懸濁結晶性粒子に関連する。一実施形態では、ジンプロピリダズを含む懸濁粒子は、多形体Aの形態のジンプロピリダズの懸濁結晶性粒子に関連する。別の実施形態では、ジンプロピリダズを含む懸濁粒子は、多形体Bの形態のジンプロピリダズの懸濁結晶性粒子に関連する。
【0009】
多形体Aは、粉末X線回折法によって、同定し、形態Bと識別することができる。Cu-Kα照射(1.54178Å)を25℃で使用して記録された多形形態AのPXRDパターンは、2θ値として引用される次の反射角のうち少なくとも3つを示す:16.16±0.10°、20.36±0.10°、23.92±0.10°、24.29±0.10°及び27.43±0.10°。これらの反射角は、形態Bには存在しない。これらの5つの反射角に加えて、多形体Aは、そのような回折図において、以下に2θ値として引用される反射角のうち、1つ又は複数、特に少なくとも2つ、多くの場合少なくとも4つ、特に少なくとも6つ又は少なくとも8つの反射角、特に全てを示す場合がある:7.95±0.10°、10.16±0.10°、12.40±0.10°、15.31±0.10°、15.89±0.10°、16.53±0.10°、18.02±0.10°、19.25±0.10°、20.93±0.10°、23.44±0.10°、23.70±0.10°、26.16±0.10°、30.71±0.10°及び32.92±0.10°。
【0010】
多形体AのPXRDパターンのピークの中で、次の2θ値のものが最も顕著なものである:10.16±0.10°、15.31±0.10°、15.89±0.10°、16.16±0.10°、16.53±0.10°、19.25±0.10°、20.36±0.10°、20.93±0.10°、23.44±0.10°、23.70±0.10°、23.92±0.10°、224.29±0.10°、26.16±0.10°、30.71±0.10°及び32.92±0.10°。
【0011】
示差走査熱量測定(DSC)によって分析すると、多形体Aは、融解ピークとも呼ばれる特徴的な吸熱ピークを伴うサーモグラムを示す。融点は、融解ピークの開始として決定され、通常、約82℃~87℃の範囲にある。ここに引用される値は、アルミニウムの密閉カップを使用し、1~10mgの試料サイズで、10K/分の加熱速度を適用して、DSCによって決定した値に関連する。
【0012】
熱重量分析(以下TGAともいう)により、加熱しても重量損失は発生しないことが明らかになった。これは、形態Aが溶媒を含有していないことを示す。
【0013】
多形体Bは、欧州特許出願公開第19151447.0号明細書に記載されているように得ることができる。多形体Bは、粉末X線回折法により、その粉末X線回折図(以下、粉末X線回折パターン又はPXRDパターンとも呼ぶ)に基づいて同定することができる。Cu-Kα照射(1.54178Å)を25℃で使用して記録された多形体Bは、2θ値として引用される次の3つの反射角を示す:20.69±0.10°、24.15±0.10°及び30.52±0.10°。これらの3つの反射角に加えて、多形体Bは、そのようなPXRDパターンにおいて、以下に2θ値として引用される反射角のうち、1つ又は複数、特に少なくとも2つ、多くの場合少なくとも4つ、特に少なくとも6つ又は少なくとも8つの反射角、特に全てを示す場合がある:7.99±0.10°、10.07±0.10°、12.38±0.10°、15.31±0.10°、15.97±0.10°、16.50±0.10°、18.03±0.10°、19.29±0.10°、20.22±0.10°、20.96±0.10°、23.40±0.10°、23.70±0.10°、26.09±0.10°、27.26±0.10°及び32.91±0.10°。
【0014】
これらの反射角の中で、2θ値として引用される次の反射角のうち、好ましくは少なくとも1つ、特に少なくとも2つ、より特定すると少なくとも4つ、特に少なくとも6つ又は全てが、そのようなPXRDパターンにおいて観察され得る:10.07±0.10°、15.31±0.10°、15.97±0.10°、16.50±0.10°、19.29±0.10°、20.22±0.10°、20.96±0.10°及び26.09±0.10°。これらの反射角に加えて、2θ値として引用される次の反射角のうち、好ましくは最小の1つ、特に少なくとも2つ、より特定すると少なくとも4つ、特に少なくとも6つ又は全てが、そのようなPXRDパターンにおいて観察され得る:7.99±0.10°、12.38±0.10°、18.03±0.10°、23.40±0.10°、23.70±0.10°、27.26±0.10°及び32.91±0.10°。
【0015】
Cu-Kα照射(1.54178Å)を25℃で使用して記録された多形形態BのPXRDパターンは、2θ値として引用される次の3つの反射角:20.69±0.10°、24.15±0.10°及び30.52±0.10°、並びに追加として2θ値として引用される次の反射角:15.31±0.10°、15.97±0.10°及び16.50±0.10°を示すことが多い。
【0016】
或いは、Cu-Kα照射(1.54178Å)を25℃で使用して記録された多形形態BのPXRDパターンは、2θ値として引用される次の3つの反射角:20.69±0.10°、24.15±0.10°及び30.52±0.10°、並びに追加として2θ値として引用される次の反射角:23.40±0.10°及び23.70±0.10°を示す。
【0017】
特に、Cu-Kα照射(1.54178Å)を25℃で使用して記録された多形形態BのPXRDパターンは、2θ値として引用される次の3つの反射角:20.69±0.10°、24.15±0.10°及び30.52±0.10°、並びに追加として2θ値として引用される次の反射角:15.31±0.10°、15.97±0.10°、16.50±0.10°、23.40±0.10°及び23.70±0.10°を示す。
【0018】
示差走査熱量測定(DSC)によって分析すると、本発明の多形体Bは、融解ピークとも呼ばれる特徴的な吸熱ピークを伴うサーモグラムを示す。融点は、融解ピークの開始として決定され、通常、約80℃~90℃の範囲にあり、特に82℃~89℃の範囲にある。ここに引用される値は、アルミニウムの密閉カップを使用し、1~10mgの試料サイズで、10K/分の加熱速度を適用して、DSCによって決定した値に関連する。熱重量分析(以下TGAともいう)により、加熱しても重量損失は発生しないことが明らかになり、多形体Bは溶媒を含有していないという単結晶X線試験の所見が確認された。
【0019】
水和性顆粒剤は、典型的には、ジンプロピリダズを、水和性顆粒剤の総重量を基準に、10~90wt%、好ましくは20~80wt%、より好ましくは30~60wt%の濃度で含有する。水和性顆粒剤は、ジンプロピリダズを、水和性顆粒剤の総重量を基準に、少なくとも25wt%、好ましくは少なくとも35wt%の濃度で含有してもよい。水和性顆粒剤は、ジンプロピリダズを、水和性顆粒剤の総重量を基準に、75wt%まで、好ましくは65wt%まで、より好ましくは55wt%までの濃度で含有してもよい。
【0020】
水和性顆粒剤は、さらなる農薬活性物質を含有してもよい。「農薬活性物質」という用語は、望ましい生物学的活性を農薬製剤に付与する物質を指す。通常、さらなる農薬活性物質は、有害生物防除剤である。農薬活性物質は、殺真菌剤、殺虫剤、殺線虫剤、除草剤、薬害軽減剤、硝酸化成阻害剤、ウレアーゼ阻害剤、植物成長調節剤、微量栄養素、バイオ有害生物防除剤及び/又は成長調節剤から選択することができる。一実施形態では、農薬活性物質は殺虫剤である。別の実施形態では、農薬活性物質は殺真菌剤である。さらに別の実施形態では、農薬活性物質は除草剤である。当業者は、そのような有害生物防除剤を熟知しており、それは、例えば、Pesticide Manual,16th Ed.(2013),The British Crop Protection Council,Londonに見出すことができる。適切な殺虫剤は、カルバメート系、有機リン系、有機塩素系殺虫剤、フェニルピラゾール系、ピレスロイド系、ネオニコチノイド系、スピノシン系、アベルメクチン系、ミルベマイシン系、幼若ホルモン類似体、ハロゲン化アルキル、有機スズ化合物、ネライストキシン類似体、ベンゾイル尿素系、ジアシルヒドラジン系、METIアカリジド(acarizide)系の部類の殺虫剤、並びにクロロピクリン、ピメトロジン、フロニカミド、クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、エトキサゾール、ジアフェンチウロン、プロパルギット、テトラジホン、クロロフェナピル(chlorofenapyr)、DNOC、ブプロフェジン、シロマジン、アミトラズ、ヒドラメチルノン、アセキノシル、フルアクリピリム、ロテノン、又はこれらの誘導体などの殺虫剤である。適切な殺真菌剤は、ジニトロアニリン系、アリルアミン系、アニリノピリミジン系、抗生物質、芳香族炭化水素、ベンゼンスルホンアミド系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾイソチアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾチアジアゾール系、ベンゾトリアジン系、カルバミン酸ベンジル系、カルバメート系、カルボキサミド系、カルボン酸ジアミド系、クロロニトリル系、シアノアセトアミドオキシム系、シアノイミダゾール系、シクロプロパンカルボキサミド系、ジカルボキシイミド系、ジヒドロジオキサジン系、クロトン酸ジニトロフェニル系、ジチオカルバメート系、ジチオラン系、エチルホスホネート系、エチルアミノチアゾールカルボキサミド系、グアニジン系、ヒドロキシ-(2-アミノ)ピリミジン系、ヒドロキシアニリド系、イミダゾール系、イミダゾリノン系、無機物、イソベンゾフラノン系、メトキシアクリレート系、メトキシカルバメート系、モルホリン系、N-フェニルカルバメート系、オキサゾリジンジオン系、オキシイミノアセテート系、オキシミノアセトアミド系、ペプチジルピリミジンヌクレオシド系、フェニルアセトアミド系、フェニルアミド系、フェニルピロール系、フェニル尿素系、ホスホネート系、ホスホロチオレート系、フタルアミド酸系、フタルイミド系、ピペラジン系、ピペリジン系、プロピオンアミド系、ピリダジノン系、ピリジン系、ピリジニルメチルベンズアミド系、ピリミジンアミン系、ピリミジン系、ピリミジノンヒドラゾン系、ピロロキノリノン系、キナゾリノン系、キノリン系、キノン系、スルファミド系、スルファモイルトリアゾール系、チアゾールカルボキサミド系、チオカルバメート系、チオファネート系、チオフェンカルボキサミド系、トルアミド系、トリフェニルスズ化合物、トリアジン系、トリアゾール系の部類の殺真菌剤である。適切な除草剤は、アセトアミド系、アミド系、アリールオキシフェノキシプロピオネート系、ベンズアミド系、ベンゾフラン、安息香酸系、ベンゾチアジアジノン系、ビピリジリウム、カルバメート系、クロロアセトアミド系、クロロカルボン酸系、シクロヘキサンジオン系、ジニトロアニリン系、ジニトロフェノール、ジフェニルエーテル、グリシン系、イミダゾリノン系、イソオキサゾール系、イソオキサゾリジノン系、ニトリル系、N-フェニルフタルイミド系、オキサジアゾール系、オキサゾリジンジオン系、オキシアセトアミド系、フェノキシカルボン酸系、フェニルカルバメート系、フェニルピラゾール系、フェニルピラゾリン系、フェニルピリダジン系、ホスフィン酸系、ホスホロアミデート系、ホスホロジチオエート系、フタラメート系、ピラゾール系、ピリダジノン系、ピリジン系、ピリジンカルボン酸系、ピリジンカルボキサミド系、ピリミジンジオン系、ピリミジニル(チオ)ベンゾエート系、キノリンカルボン酸系、セミカルバゾン系、スルホニルアミノカルボニルトリアゾリノン系、スルホニル尿素系、テトラゾリノン系、チアジアゾール系、チオカルバメート系、トリアジン系、トリアジノン系、トリアゾール系、トリアゾリノン系、トリアゾロカルボキサミド系、トリアゾロピリミジン系、トリケトン系、ウラシル系、尿素系の部類の除草剤である。適切な植物成長調節剤は、抗オーキシン系、オーキシン系、サイトカイニン系、落葉剤、エチレン調節剤、エチレン遊離剤、ジベレリン系、成長阻害剤、モルファクチン系、成長遅延剤、成長刺激剤、及びさらなる未分類の植物成長調節剤である。適切な微量栄養素は、ホウ素、亜鉛、鉄、銅、マンガン、塩素、及びモリブデンを含む化合物である。適切な硝酸化成阻害剤は、リノール酸、アルファ-リノレン酸、p-クマル酸メチル、フェルラ酸メチル、メチル3-(4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(MHPP)、カランジン、ブラキアラクトン、p-ベンゾキノンソルゴレオン、2-クロロ-6-(トリクロロメチル)-ピリジン(ニトラピリン又はN-serve)、ジシアンジアミド(DCD、DIDIN)、3,4-ジメチルピラゾールホスフェート(DMPP、ENTEC)、4-アミノ-1,2,4-トリアゾール塩酸塩(ATC)、1-アミド-2-チオ尿素(ASU)、2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジン(AM)、2-メルカプト-ベンゾチアゾール(MBT)、5-エトキシ-3-トリクロロメチル-1,2,4-チオジアゾール(テラゾール、エトリジアゾール)、2-スルファニルアミドチアゾール(ST)、アンモニウムチオスルフェート(ATU)、3-メチルピラゾール(3-MP)、3,5-ジメチルピラゾール(DMP)、1,2,4-トリアゾールチオ尿素(TU)、N-(1H-ピラゾリル-メチル)アセトアミド類、例えば、N-((3(5)-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)メチル)アセトアミドなど、及びN-(1H-ピラゾリル-メチル)ホルムアミド類、例えば、N-((3(5)-メチル-1H-ピラゾール-1-イル)メチルホルムアミド、N-(4-クロロ-3(5)-メチル-ピラゾール-1-イルメチル)-ホルムアミド、N-(3(5),4-ジメチル-ピラゾール-1-イルメチル)-ホルムアミドなど、ニーム、ニームの成分を基材とする生成物、シアンアミド、メラミン、ゼオライト粉末、カテコール、ベンゾキノン、ナトリウムテルタボード(sodium terta board)、硫酸亜鉛、2-(3,4-ジメチル-1H-ピラゾール-1-イル)コハク酸(以下「DMPSA1」という)及び/若しくは2-(4,5-ジメチル-1H-ピラゾール-1-イル)コハク酸(以下「DMPSA2」という)、並びに/又はそれらの誘導体、及び/若しくはそれらの塩、3,4-ジメチルピラゾールのグリコール酸付加塩(3,4-ジメチルピラゾリウムグリコレート、以下「DMPG」という)、及び/又はその異性体、及び/又はその誘導体、3,4-ジメチルピラゾールのクエン酸付加塩(3,4-ジメチルピラゾリウムシトレート、以下「DMPC」という)、及び/又はその異性体、及び/又はその誘導体、3,4-ジメチルピラゾールの乳酸付加塩(3,4-ジメチルピラゾリウムラクテート、以下「DMPL」という)、及び/又はその異性体、及び/又はその誘導体、3,4-ジメチルピラゾールのマンデル酸付加塩(3,4-ジメチルピラゾリウムマンデレート、以下「DMPM」という)、及び/又はその異性体、及び/又はその誘導体、1,2,4-トリアゾール(以下「TZ」という)、及び/又はその誘導体、及び/又はその塩、4-クロロ-3-メチルピラゾール(以下「ClMP」という)、及び/又はその異性体、及び/又はその誘導体、及び/又はその塩、ジシアンジアミドと尿素とホルムアルデヒドとの反応付加物、又はトリアゾニル-ホルムアルデヒド-ジシアンジアミド付加物、2-シアノ-1-((4-オキソ-1,3,5-トリアジナン-1-イル)メチル)グアニジン、1-((2-シアノグアニジノ)メチル)尿素、2-シアノ-1-((2-シアノグアニジノ)メチル)グアニジン、3,4-ジメチルピラゾールホスフェート、アリルチオ尿素、並びに塩素酸塩である。想定されるウレアーゼ阻害剤の例としては、N-(n-ブチル)チオリン酸トリアミド(NBPT、Agrotain)、N-(n-プロピル)チオリン酸トリアミド(NPPT)、2-ニトロフェニルリン酸トリアミド(2-NPT)、当業者に知られているさらなるNXPT、フェニルホスホロジアミデート(PPD/PPDA)、ヒドロキノン、チオ硫酸アンモニウム、及びNBPTとNPPTとの混合物(例えば、米国特許第8,075,659号明細書を参照)が挙げられる。そのようなNBPTとNPPTとの混合物は、NBPTを、活性物質の総量を基準に、40~95%wt.-%、好ましくは60~80%wt.-%の量で含むことができる。そのような混合物は、LIMUSとして販売されており、これは、約16.9wt.-%のNBPT及び約5.6wt.-%のNPPT並びに約77.5wt.-%の、溶媒及び補助剤を含む他の成分を含む組成物である。
【0021】
顆粒剤は、さらなる農薬活性物質を、広範囲の濃度で、例えば、顆粒剤の総重量を基準に、5~95wt%、好ましくは10~80wt%、より好ましくは25~60wt%で含有してもよい。
【0022】
水和性顆粒剤は、20℃で固体である。水和性顆粒剤は、顆粒剤の総重量を基準に、5wt%まで、好ましくは3wt%まで、より好ましくは2wt%まで、特に1wt%までの液体を含有してもよい。
【0023】
水和性顆粒剤は、ジオクチルスルホスクシネート(CAS番号577-11-7)も含有する。水和性顆粒剤は、通常、ジオクチルスルホスクシネートを、顆粒剤の総重量を基準に、0.15~0.6wt%、好ましくは0.175~0.5wt%の濃度で含有する。水和性顆粒剤は、ジオクチルスルホスクシネート又はその塩を、顆粒剤の総重量を基準に、少なくとも0.18wt%、好ましくは少なくとも0.2wt%の濃度で含有してもよい。水和性顆粒剤は、ジオクチルスルホスクシネートを、顆粒剤の総重量を基準に、0.8wt%まで、好ましくは0.5wt%まで、より好ましくは0.4wt%までの濃度で含有してもよい。
【0024】
水和性顆粒剤は、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物も含有する。この縮合物は、ナフタレンスルホネートとホルムアルデヒドとの縮合反応によって得られる。そのような化合物は、代わりに、アルキルナフタレンスルホネート縮合物と呼ばれることが多い。Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,7th Edition,Wiley-VCH Verlag,ISBN 9783527306732,Chapter Naphthalene Derivativesに記載されているように、ホルムアルデヒドとナフタレンスルホネートとの縮合反応により、スキーム1及び2:
【化2】
に図示されている、ナフタレンスルホネートの式(I)によるダイマーと式(II)によるポリマーとの両方が得られ、式中、指数nは、オリゴマー又はポリマーの縮合生成物における繰り返し単位の数を示す。典型的には、指数nは、2~1000,000、好ましくは2~1,000、例えば、2~100の範囲である。
【0025】
したがって、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物という用語は、式(I)の化合物と式(II)の化合物との、広範囲の比の混合物を指すことができ、例えば、式(I)の化合物の式(II)の化合物に対する重量比の範囲は、10,000:1~1:10,000、好ましくは100:1~1:100、より好ましくは10:1~1:10であることが理解されよう。一実施形態では、「ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物」という用語は、式(I)の化合物を指す。別の実施形態では、「ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物」という用語は、式(II)の化合物を指す。
【0026】
この農薬活性懸濁剤は、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物を、顆粒剤の総重量を基準に、1.2~2.5wt%、好ましくは1.5~2.0wt%の濃度で含有することができる。農薬活性懸濁剤は、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物を、顆粒剤の総重量を基準に、少なくとも1.3、好ましくは少なくとも1.4wt%の濃度で含有することができる。農薬活性懸濁剤は、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物を、顆粒剤の総重量を基準に、1.9wt%まで、好ましくは1.8wt%までの濃度で含有することができる。
【0027】
ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物のジオクチルスルホスクシネートに対する重量比は、広範に変化し得る。一実施形態では、ナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物のジオクチルスルホスクシネートに対する重量比は、1:1~10:1、好ましくは3:1~10:1、より好ましくは4:1~9:1であり得る。
【0028】
水和性顆粒剤は、スルホニル化がリグニン骨格の脂肪族部分に存在するリグニンスルホネートIをさらに含有する。水和性顆粒剤は、スルホニル化がリグニン骨格の少なくとも芳香族部分に存在するリグニンスルホネートIIも含有する。
【0029】
リグニンは、芳香族部分及び脂肪族部分の両方を含有する複合バイオポリマーである。リグニンは、フェニルプロパン、コニフェリルアルコール、シナピルアルコール及びパラ-クマリルアルコールなどの、少数の前駆体分子の反応によって誘導される。これらの前駆体分子は、芳香族フェニル単位並びにヒドロキシアルキル部分及びアルコキシ部分、特に、メトキシ部分及びヒドロキシプロピル部分を含有する。したがって、リグニンスルホネートIは、スルホネート基を、メトキシ基及びヒドロキシプロピル基などの脂肪族部分に、スルホメトキシ基及びスルホヒドロキシプロピル基の形態で含有する。他方、リグニンスルホネートIIは、スルホネート基を、リグニン骨格の少なくとも芳香族部分に、即ちフェニル部分に含有する。
【0030】
リグニンスルホネートを製造するために必要な激しい反応条件が原因で、スルホン化は決して位置選択的にはならないことが、当業者には明らかである。そうではなく、スルホネート基をリグニン骨格の全ての位置に含有するが、合成方法に依存してその分布が異なる生成物の混合物が得られることになる。
【0031】
したがって、リグニンスルホネートI及びリグニンスルホネートIIは、通常、スルホネート基を、脂肪族部分及び芳香族部分の両方に含有することになる。しかしながら、リグノスルホネートIは通常、スルホネート基を、圧倒的に脂肪族部分に、例えば、少なくとも60mol-%、好ましくは少なくとも70mol-%、より好ましくは少なくとも80wt-%、最も好ましくは少なくとも90mol-%、特に少なくとも95mol-%有する。
【0032】
他方、リグニンスルホネートIIは通常、脂肪族部分及び芳香族部分に、よりバランスの取れた割合のスルホネート基を含有し得る。例えば、リグニンスルホネートIIが含有する、脂肪族部分の位置のスルホネート基の芳香族部分の位置のスルホネート基に対するモル比は、3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、より好ましくは1.5:1~1:1.5、例えば、1.1:1~1:1.1であり得る。
【0033】
リグニンスルホネートは、スルホン化度によって特性決定することができる。リグニンスルホネートIは、典型的には、2~5モル/キログラム、好ましくは2.5~4モル/キログラム、より好ましくは3~4モル/キログラム、特に3~3.5モル/キログラムのスルホン化度を有する。リグニンスルホネートIIは、典型的には、2~5モル/キログラム、好ましくは2.5~4モル/キログラム、より好ましくは3~4モル/キログラム、特に3~3.5モル/キログラムのスルホン化度を有する。
【0034】
リグニンスルホネートは、その質量平均分子量(M)によって特性決定することもでき、それは、光散乱又は沈降速度によって決定することができる。リグニンスルホネートIの質量平均モル質量は、典型的には、1,000~5,000g/mol、好ましくは2,000~4,000g/mol、より好ましくは3,000~4,000g/mol、特に好ましくは3,500~4,000g/molである。リグニンスルホネートIIの質量平均モル質量は、典型的には、1,000~3,000g/mol、好ましくは1,500~2,500g/mol、より好ましくは1,800~2,300g/molである。
【0035】
リグニンスルホネートの特性決定のさらなる方法は、「z+1分子平均量」(Mz+1)によるものである。z+1平均分子量は、分子量の分布の高分子量の末端によって制御される。これを使用して、生成物における高分子量分画の有無、又はより高い分子量値への分布の全般的シフトを示すことができる。Mz+1は、次式
z+1=(ΣN ):(ΣN
によって計算することができ、式中、Nは、各ポリマー種のモル数であり、Mは、各種のモル質量である。
【0036】
リグニンスルホネートIは、典型的には、8,000~20,000g/mol、好ましくは10,000~15,000g/mol、より好ましくは10,000~12,000g/molのz+1平均分子量を有する。
【0037】
リグニンスルホネートIIは、典型的には、15,000~25,000g/mol、好ましくは16,000~20,000g/mol、より好ましくは17,000~19,000g/molのz+1平均分子量を有する。
【0038】
水和性顆粒剤は、典型的には、リグニンスルホネートIを、顆粒剤の総重量を基準に、2.5~9wt%、好ましくは2.5~8wt%、より好ましくは3~7wt%、特に3.5~6wt%の濃度で含有する。水和性顆粒剤は、リグニンスルホネートIを、顆粒剤の総重量を基準に、少なくとも2wt%、好ましくは少なくとも3.5wt%の濃度で含有してもよい。水和性顆粒剤は、リグニンスルホネートIを、顆粒剤の総重量を基準に、6wt%まで、好ましくは5.5wt%までの濃度で含有してもよい。
【0039】
水和性顆粒剤は、典型的には、リグニンスルホネートIIを、顆粒剤の総重量を基準に、2~6wt%、好ましくは3~5wt%、より好ましくは3.5~4.5wt%の濃度で含有する。水和性顆粒剤は、リグニンスルホネートIIを、顆粒剤の総重量を基準に、少なくとも2.5wt%、好ましくは少なくとも3.8wt%の濃度で含有してもよい。水和性顆粒剤は、リグニンスルホネートIIを、顆粒剤の総重量を基準に、7wt%まで、好ましくは4.2wt%までの濃度で含有してもよい。
【0040】
リグニンスルホネートIのリグニンスルホネートIIに対する重量比は、典型的には、1:4~4:1、好ましくは1:3~3:1、より好ましくは1:2~2:1の範囲である。
【0041】
水和性顆粒剤は、典型的には、充填材料を含有する。充填剤は、鉱物土、例えば、シリケート、シリカゲル、タルク、カオリン、石灰石、石灰、チョーク、粘度、ドロマイト、珪藻土、ベントナイト、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム;多糖類、例えば、セルロース、デンプン;肥料、例えば、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素;植物由来の製品、例えば、穀物粉、樹皮粉、木粉、堅果殻粉、及びそれらの混合物である。好ましい充填材料は、シリケート、カオリン、タルク、シリカゲル及び粘度である。顆粒剤は、通常、充填材料を、顆粒剤の総重量を基準に、10~40wt%、好ましくは20~40wt%、より好ましくは20~35wt%、例えば、25~35wt%の濃度で含有する。
【0042】
水和性顆粒剤は、典型的には、有害生物防除有効量のジンプロピリダズを含む。「有効量」という用語は、栽培植物に対して無脊椎有害生物を制御するために、又は材料の保護において十分であり、処置される植物に実質的な損傷を与えない、組成物の、又はジンプロピリダズの量を意味する。そのような量は、広範に変化する可能性があり、様々な要因、例えば、制御されるべき無脊椎動物の種、処置される栽培植物又は材料、及び気候条件に依存する。
【0043】
水和性顆粒剤は、例えば、Mollet and Grubemann,Formulation technology,Wiley VCH,Weinheim,2001;又はKnowles,New developments in crop protection product formulation,Agrow Reports DS243,T&F Informa,London,2005に記載されている既知の方法で調製される。典型的には、顆粒剤は、構成成分a)~e)を、任意選択により水と接触させることを含む、任意の所与の順番で接触させるステップと、得られる組成物を押し出すステップとによって調製される。押し出しのために添加される水の量は、典型的には5wt%未満、例えば2wt%の量である。次いで、押し出された材料は、顆粒剤にカットすることができ、これはその後乾燥される。
【0044】
水和性顆粒剤は、少なくとも1種の助剤を含有することができる。適切な助剤は、溶媒、液体担体、固体担体又は充填剤、界面活性剤、分散剤、乳化剤、湿潤剤、補助剤、可溶化剤、浸透促進剤、保護コロイド、付着剤、増粘剤、保湿剤、忌避剤、誘引剤、摂餌刺激物質、相溶化剤、殺菌剤、凍結防止剤、消泡剤、着色剤、粘着付与剤及び結合剤である。
【0045】
適切な溶媒及び液体担体は、水及び有機溶媒、例えば、中沸点から高沸点の鉱油留分、例えば、ケロシン、ディーゼル油;植物又は動物起源の油;脂肪族、環状及び芳香族炭化水素、例えば、トルエン、パラフィン、テトラヒドロナフタレン、アルキル化ナフタレン;アルコール、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール;グリコール;DMSO;ケトン、例えば、シクロヘキサノン;エステル、例えば、乳酸エステル、炭酸エステル、脂肪酸エステル、ガンマ-ブチロラクトン;脂肪酸;ホスホネート;アミン;アミド、例えば、N-メチルピロリドン、脂肪酸ジメチルアミド;及びそれらの混合物である。
【0046】
適切な界面活性剤は、表面活性化合物、例えば、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の界面活性剤、ブロックポリマー、高分子電解質、及びそれらの混合物である。そのような界面活性剤は、乳化剤、分散剤、可溶化剤、湿潤剤、浸透促進剤、保護コロイド、又は補助剤として使用することができる。界面活性剤の例は、McCutcheon’s,Vol.1:Emulsifiers&Detergents,McCutcheon’s Directories,Glen Rock,USA,2008(International Ed.又はNorth American Ed.)に収載されている。
【0047】
適切なアニオン性界面活性剤は、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、カルボキシレートの、アルカリ塩、アルカリ土類塩又はアンモニウム塩、及びそれらの混合物である。スルホネートの例は、アルキルアリールスルホネート、ジフェニルスルホネート、アルファ-オレフィンスルホネート、リグニンスルホネート、脂肪酸及び油のスルホネート、エトキシル化アルキルフェノールのスルホネート、アルコキシル化アリールフェノールのスルホネート、縮合ナフタレンのスルホネート、ドデシル-及びトリデシルベンゼンのスルホネート、ナフタレン及びアルキルナフタレンのスルホネート、スルホスクシネート又はスルホスクシナメートである。スルフェートの例は、脂肪酸及び油、エトキシル化アルキルフェノール、アルコール、エトキシル化アルコール又は脂肪酸エステルのスルフェートである。ホスフェートの例は、リン酸エステルである。カルボキシレートの例は、アルキルカルボキシレート及びカルボキシル化アルコール又はアルキルフェノールエトキシレートである。
【0048】
適切な非イオン性界面活性剤は、アルコキシレート、N-置換脂肪酸アミド、アミンオキシド、エステル、糖系界面活性剤、高分子界面活性剤、及びそれらの混合物である。アルコキシレートの例は、1~50当量でアルコキシル化された、アルコール、アルキルフェノール、アミン、アミド、アリールフェノール、脂肪酸又は脂肪酸エステルなどの化合物である。アルコキシル化には、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドを使用することができる。N-置換脂肪酸アミドの例は、脂肪酸グルカミド又は脂肪酸アルカノールアミドである。エステルの例は、脂肪酸エステル、グリセロールエステル又はモノグリセリドである。糖系界面活性剤の例は、ソルビタン、エトキシル化ソルビタン、スクロースエステル及びグルコースエステル又はアルキルポリグルコシドである。高分子界面活性剤の例は、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、又は酢酸ビニルのホメポリマー(home-polymer)又はコポリマーである。
【0049】
適切なカチオン性界面活性剤は、第四級界面活性剤、例えば、1つ又は2つの疎水性基を有する第四級アンモニウム化合物、又は長鎖第一級アミンの塩である。適切な両性界面活性剤は、アルキルベタイン及びイミダゾリンである。適切なブロックポリマーは、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドのブロックを含むA-B又はA-B-A型のブロックポリマー、又はアルカノール、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシドを含むA-B-C型のブロックポリマーである。適切な高分子電解質は、ポリ酸又はポリ塩基である。ポリ酸の例は、ポリアクリル酸のアルカリ塩又はポリ酸櫛型ポリマーである。ポリ塩基の例は、ポリビニルアミン又はポリエチレンアミンである。
【0050】
適切な補助剤は、それ自体の有害生物防除活性はごくわずかであるか又は全くない場合さえあり、標的に対する化合物Iの生物学的性能を高める化合物である。その例は、界面活性剤、鉱油又は植物油、及び他の助剤である。さらなる例は、Knowles,Adjuvants and additives,Agrow Reports DS256,T&F Informa UK,2006,chapter 5に収載されている。
【0051】
適切な増粘剤は、多糖類(例えば、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース)、無機粘土(有機変性されているか、又は未変性)、ポリカルボキシレート、及びシリケートである。
【0052】
適切な殺菌剤は、ブロノポール及びイソチアゾリノン誘導体、例えば、アルキルイソチアゾリノン及びベンゾイソチアゾリノンである。適切な凍結防止剤は、エチレングリコール、プロピレングリコール、尿素及びグリセリンである。適切な消泡剤は、シリコーン、長鎖アルコール、及び脂肪酸の塩である。適切な着色剤(例えば、赤色、青色又は緑色)は、低水溶性染料及び水溶性染料の顔料である。その例は、無機着色剤(例えば、酸化鉄、酸化チタン、ヘキサシアノ鉄酸鉄)及び有機着色剤(例えば、アリザリンシアニン、アゾシアニン及びフタロシアニン着色剤)である。
【0053】
適切な粘着付与剤又は結合剤は、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、生物ワックス又は合成ワックス、及びセルロースエーテルである。
【0054】
本発明は、水和性顆粒剤と水とを接触させることによって得られる水性組成物にも関する。顆粒剤及び水は、通常、混合、粉砕、又は当技術分野において公知の他の技術によって均質化される。水性組成物は、典型的には、30~99wt%の水、好ましくは50~99wt%、より好ましくは60~95wt%、最も好ましくは70~95wt%の水を含有する。したがって、水性組成物は、水性組成物の総重量を基準に、1~70wt%の水和性顆粒剤、好ましくは1~50wt%、より好ましくは5~40wt%、最も好ましくは5~30wt%の水を含む。水性組成物は、通常、分散体である。分散体は、少なくともジンプロピリダズ活性成分を懸濁粒子の形態で含有する。
【0055】
本発明は、植物繁殖材料を水性組成物に接触させるステップを含む、植物繁殖材料を処置する方法にも関する。
【0056】
水和性顆粒剤は、植物繁殖材料、特に種子の処置の目的で使用することができる。当該の組成物は、2~10倍希釈した後、使用準備済み調製物中に、0.01~60重量%、好ましくは0.1~40重量%の活性物質濃度をもたらす。施用は、播種前又は播種中に行うことができる。ジンプロピリダズ及びその組成物をそれぞれ、植物繁殖材料、特に種子に施用する方法は、繁殖材料の粉衣、被覆、ペレット化、散粉、浸漬及び畦間施用の各方法を含む。好ましくは、ジンプロピリダズを含む水性組成物は、発芽が誘導されないような方法、例えば、種子の粉衣、ペレット化、被覆及び散粉によって、植物繁殖材料に施用される。
【0057】
本発明は、無脊椎有害生物を駆除又は制御する方法にも関し、当該方法は、前記有害生物又はその食物供給、生息地若しくは繁殖地に、有害生物防除有効量の水和性顆粒剤又は水性組成物を接触させるステップを含む。
【0058】
その接触は、噴霧、灌漑、畦間施用、灌注、及び当業者に公知の他の技術によって実現することができる。無脊椎有害生物は、広範囲の有害生物、特にクモ形類動物及び節足動物に関連する。
【0059】
植物の保護に使用される場合、ジンプロピリダズの施用量は、所望される効果の種類に依存して、0.001~2kg/ha、好ましくは0.005~2kg/ha、より好ましくは0.05~0.9kg/ha、特に0.1~0.75kg/haである。
【0060】
種子などの植物繁殖材料の処置、例えば、種子に散粉、被覆又は灌注することによる処置において、植物繁殖材料(好ましくは種子)100キログラム当たり、0.1~1000g、好ましくは1~1000g、より好ましくは1~100g、最も好ましくは5~100gのジンプロピリダズの量が、概して必要である。
【0061】
材料又は貯蔵製品の保護に使用される場合、ジンプロピリダズの施用量は、施用領域の種類及び所望の効果に依存する。材料の保護における慣習的な施用量は、処置される材料1立方メートル当たり0.001g~2kg、好ましくは0.005g~1kgの活性物質である。
【0062】
様々な種類の油、湿潤剤、補助剤、肥料、又は微量栄養素、及びさらなる有害生物防除剤(例えば、除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、成長調節剤、薬害軽減剤)が、活性物質又はそれを含む組成物に、プレミックスとして添加されてもよく、又は適切な場合、使用直前まで添加されなくてもよい(タンク混合)。これらの作用剤は、本発明による組成物と、1:100~100:1、好ましくは1:10~10:1の重量比で混合することができる。
【0063】
ユーザーは、本発明による水性組成物を、通常、事前用量設定デバイス(predosage device)、背負式噴霧器、噴霧タンク、噴霧飛行機、又は灌漑システムから施用する。通常、水性組成物は、水、緩衝剤、及び/又はさらなる助剤とともに構成されて所望の施用濃度にされ、このようにして、使用準備済み噴霧液又は本発明による水性組成物が得られる。通常、農業利用面積1ヘクタール当たり、20~2000リットル、好ましくは50~400リットルの使用準備済み噴霧液が施用される。
【0064】
利点:水和性顆粒剤は、水中分散性が良好であること、水で希釈されると安定で均質な水性組成物を形成すること、及び粉塵の形成の度合いが低いことを特徴とする。以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例
【0065】
各実施例の有害生物防除組成物を調製するために以下の成分を使用した。
崩壊剤:リグニンスルホネート、脂肪族側鎖基でスルホン化、重量平均分子量3700Da、スルホン化度3.3(mol/kg)、NaSO含量9.4wt%。
分散剤:リグニンスルホネート、脂肪族側鎖基及び芳香族側鎖基でスルホン化、重量平均分子量2000Da、スルホン化度3.4(mol/kg)、NaSO含量3wt%。
湿潤剤:10~20wt%ナトリウムジオクチルスルホスクシネート、80~90%ナトリウムアルキルナフタレンスルホネート、ホルムアルデヒド縮合物。
充填剤:カオリン粘土。
【0066】
実施例1
表1及び2にまとめられている成分を有する水和性顆粒製剤を調製した。
【0067】
【表1】
【0068】
製剤は、乾燥成分を一緒に混合し、得られた組成物をハンマーミル粉砕によりほぐして粉末にし、その混合物を均質化することによって調製した。次に、ハンマーミル粉砕した混合物を、活性成分が2.5~4.5umの間のD(0.5)粒径に到達するまで空気粉砕した。次いで、空気粉砕した混合物を過不足のない水とブレンドして混合物をまとめ、押し出し機を通過させて顆粒剤を形成した。最後に、顆粒剤を流動空気層乾燥器の中で、水分がおよそ1%になるまで乾燥した。
【0069】
次いで、得られた水和性顆粒剤を、その水中分散性について分析した。この目的のため、顆粒剤を2グラムの量で、100mlの水を含有する直径29.6mmのシリンダーに添加した。シリンダーを2分間静置したままにし、次いでシリンダーを繰り返し上下反転させ、反転回数を計数した。次に、水性組成物を含有するシリンダーを20~25℃で2時間インキュベートし、それについて、沈降物の量を測定した。最後に、水性組成物を含有するシリンダーを20~25℃で合計24時間インキュベートし、均質な組成物を回復するための反転回数を計数した。これらの試験の結果は、下の表2に示されている。
【0070】
【表2】
【0071】
この結果は、試験したWG製剤が、少なくとも2.5wt%だが10%未満の崩壊剤を含む場合に最良の性能を示すことを示した。最適な結果は、およそ5wt%の濃度で得られた。
【0072】
実施例2
表3及び4にまとめられている成分を有する水和性顆粒製剤を調製した。
【0073】
【表3】
【0074】
製剤は、実施例1に記載された方法によって調製した。次いで製剤を、実施例1に記載されたように、分散性について評価した。加えて、粉塵の生成を、Heubach Dustmeterで分析した。顆粒剤を50グラムの量で、回転速度30UPM、空気流201/分、容積600リットル、及び時間1800秒で、粉塵計に添加した。次いで、粉塵計によって回収された粉塵を秤量した。
【0075】
結果は表4に示されている。
【0076】
【表4】
【0077】
この結果は、粉塵が発生しない性能が許容可能であるためには、製剤が分散剤及び湿潤剤の両方を必要とすることを示す。
【0078】
実施例3:
表5及び6にまとめられている成分を有する水和性顆粒製剤を調製した。
【0079】
【表5】
【0080】
製剤は、実施例1に記載された方法によって調製した。次いで製剤を、実施例1及び2に記載されたように、分散性及び粉塵発生性について評価した。結果は表6に示されている。
【0081】
【表6】
【0082】
実施例4:
表7及び8にまとめられている成分を有する水和性顆粒製剤を調製した。
【0083】
【表7】
【0084】
製剤は、実施例1に記載された方法によって調製した。次いで製剤を、実施例1及び2に記載されたように、分散性及び粉塵発生性について評価した。結果は表8に示されている。
【0085】
【表8】
【国際調査報告】