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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】エッチング方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548871
(86)(22)【出願日】2022-04-28
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 JP2022019384
(87)【国際公開番号】W WO2023209982
(87)【国際公開日】2023-11-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ティ トゥイ ガー グエン
(72)【発明者】
【氏名】石川 健治
(72)【発明者】
【氏名】堀 勝
(72)【発明者】
【氏名】篠田 和典
(72)【発明者】
【氏名】濱村 浩孝
【テーマコード(参考)】
5F004
【Fターム(参考)】
5F004AA05
5F004BA09
5F004BA14
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB27
5F004CA04
5F004CB02
5F004CB09
5F004DA24
5F004DA25
5F004DA26
5F004DB12
5F004EA28
5F004EA30
5F004EA31
(57)【要約】
金属窒化物上の金属炭化物をエッチングする、連続またはサイクルエッチング方法が開示される。エッチング方法は、NおよびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において表面に供給して、金属炭化物の表面を改質するステップと、金属炭化物上の改質表面をイオン照射または加熱によって除去するステップと、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
およびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において前記表面に供給して、金属炭化物の前記表面を改質するステップと、金属炭化物上の改質された前記表面をイオン照射によって除去するステップと、を含む、金属窒化物上の金属炭化物をエッチングする連続エッチング方法。
【請求項2】
およびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において前記表面に供給することによって、金属炭化物の表面を改質するステップと、前記金属炭化物の前記表面から改質された前記表面をイオン照射によって除去するステップとの、1または複数のサイクルを含む、金属窒化物上の金属炭化物をエッチングするサイクルエッチング方法。
【請求項3】
およびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において前記表面に供給することによって、金属炭化物の表面を改質するステップと、前記金属炭化物の前記表面から改質された前記表面を加熱によって除去するステップとの、1または複数のサイクルを含む、金属窒化物上の金属炭化物をエッチングするサイクルエッチング方法。
【請求項4】
金属炭化物が炭化チタンアルミニウムである、請求項1、2、および3に記載のエッチング方法。
【請求項5】
金属窒化物が窒化チタンである、請求項1、2、および3に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記ガス混合物がOを含有する、請求項1、2、および3に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記ガス混合物中のOの流量比が10%未満である、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記改質された表面が、CH、CN、およびNHを含む、請求項1、2、および3に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記プラズマの圧力が1000Pa未満である、請求項1、2、および3に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記金属炭化物の温度が50℃または20℃を超える温度である、請求項1、2、および3に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記加熱がランプからの赤外光を照射することによって実施される、請求項3に記載のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの三次元構造の高度な作製には、作製中に損傷していない他の材料は一切除去することなく、1つまたは複数の種類の材料を選択的に除去する必要がある。これは、等方性エッチング技術、およびチタン含有化合物で作られた複数の金属ゲート材料を制御することができる。
【0003】
仕事関数金属ゲートは、フィン型電界効果トランジスタ(FinFET)における複数層のスタック構造で使用することができる。これらの金属ゲートのうち、三元化合物TiAlCは、n型FinFETの閾値電圧および半導体製造プロセスに関する熱抵抗の良好な制御性を有する。FinFETの作製は、TiAlCを取り囲む範囲で露出するかまたはTiAlC膜の下層に現れる、対象外の材料を、例えばp型FinFETの場合はTiN金属ゲートを一切除去することなく、このTiAlC膜をエッチングすることで達成される。TiAlCの選択性は、金属化合物、絶縁体、およびTiN、TaN、HfO、Siなどに例示される半導体に対して必要とされる。
【0004】
本発明以前は、H混合物を使用したウェットエッチングが適用されていた。化学物質を選定することで、ウェットエッチングによってTiAlC膜を除去することができるが、このウェットエッチングは、エッチング速度が低く、また選択性が不十分なため、処理時間が長くなることにより、他の露出した材料を損傷してしまう。
【0005】
関連技術では、アルミニウムを含有することがある炭化チタンの、ウェット過酸化混合物を使用したエッチングが、US2015/0132953A1に開示されている。この方法では、25℃でアンモニア、過酸化物、および水の液体混合物を用いて、TiNに対するTiCの最大選択性を得ることができ、このときのTiCのエッチング速度は8.6nm/分である。
【0006】
半導体産業において次世代FinFETを作製するため、制御可能で高選択性の除去方法が求められている。TiAlC膜のエッチング速度の選択性を増加させるため、ドライエッチングおよびプラズマエッチング技術が実行可能である。関連技術では、三元材料TiAlCのドライエッチングは、大気圧近傍プラズマによって開発されてきた。このことはPCT/JP2021/038955に開示されている。この方法は、NHOH蒸気、HO蒸気、またはNHOH、H、およびHOの蒸気混合物など、Ar/液体蒸気プラズマ中で発生した高密度のラジカルを用いた処理に依存している。イオンおよび荷電粒子は寿命が非常に短く、これまで、基板表面にはイオンが照射されていない。したがって、NHおよびH原子の発光が観察される条件において、等方性エッチングを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2015/0132953A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
次世代のフィン型のナノシート電界効果トランジスタには、金属薄層のスタックが強く求められる。TiAlC膜がTiN膜上にあるスタック構造が求められる。この場合、異方性および等方性両方のエッチングが求められる。異方性エッチングの場合、対象外の膜に対する側壁において横方向エッチングを抑制することが重要な課題である。金属含有膜は、一般に、ハロゲン含有ガス混合物のプラズマを使用することによってエッチングを施される。しかしながら、ハロゲン混合物は横方向エッチングの特徴を生み出す。このため、非ハロゲン混合物のプラズマが必要である。等方性エッチングの場合、下層において生じる損傷を抑制することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、非ハロゲン混合物のプラズマを使用して、金属窒化物を一切除去することなく金属炭化物に異方性および等方性エッチングを施すための、新しいドライエッチング方法を開発してきた。
【0010】
プラズマは、イオン、ラジカルなどの発生源である。イオンまたは荷電粒子は基板表面に達する場合がある。1000Pa未満の低圧では、イオンまたは荷電粒子は、バイアス電力が印加される特定の事例では表面に衝突する。100Pa未満の低圧プラズマがより好ましい。
【0011】
ここでは、連続エッチングおよびサイクルエッチング両方の技術が適用される。原子層エッチングの場合、他の膜に対して膜を選択的に除去する自己停止性の方式で、サイクルエッチングを処理することができる。本発明では、イオン照射または加熱が必要であり、異方性または等方性エッチングが得られる。
【0012】
第一に、表面改質は、励起種として上記イオンおよびラジカル、および光子を用いて表面を処理することによって、制御されてもよい。改質層は、窒素、炭素、および水素を含有する金属化合物から成る。
【0013】
本出願は、10%未満の少量の酸素をNおよびHガスの混合物に添加してプラズマエッチングプロセスを処理することによって、金属窒化物上の金属炭化物を選択的に除去する、最良の例を開示する。エッチングメカニズムは、金属炭化物上のNHおよびCNを含有する揮発性生成物の選択的除去、ならびに金属窒化物上の窒化を介した選択的抑制によって説明することができる。表面に向かうイオン衝撃エネルギーを制御するバイアス電力は、金属窒化物のイオン強化除去が開始される閾値を下回る範囲内で設定しなければならない。
【発明の効果】
【0014】
本明細書に開示する本発明の代表的な構成によって得られる効果は次の通りである。本発明の実施形態によれば、連続またはサイクルエッチング方式で、表面改質層のイオンまたは加熱によって誘導される除去を伴う、表面反応が大きい炭化チタンアルミニウム膜にドライエッチングを施す技術を提供することが可能である。窒化チタンおよび他の材料上の炭化チタンアルミニウムの高選択性エッチングは、高エネルギーのイオン衝撃または加熱下での異なる表面反応によって得ることができる。フッ素、塩素、臭素などのハロゲンを使用することなく、対象でない材料の側壁における横方向エッチングを抑制することができる。非ハロゲン系化学のN、H、およびO混合物は、50℃または20℃を超える温度で使用することができる。本方法は、金属窒化物上の他の金属炭化物の異方性または等方性の選択的エッチングに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】容量結合プラズマ(CCP)エッチングシステムの設計の一例を示す図である。
図2】炭化チタンアルミニウム膜の連続エッチング方法における概略手順を示す図である。
図3】4Paで流量150sccmの純Nのエッチングプロセス中におけるTiAlC膜厚の変化を示す図である。
図4】4Paでそれぞれ流量75sccmおよび75sccmのNおよびHの混合物のエッチングプロセス中におけるTiAlC膜厚の変化を示す図である。
図5】4Paで流量100sccmの純Hのエッチングプロセス中におけるTiAlC膜厚の変化を示す図である。
図6】圧力4Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃でのHおよびNガスの混合物中におけるHの分率の関数としての、TiAlCおよびTiNのエッチング速度ならびに選択性(TiAlC/TiN)の依存度を示す図である。
図7】圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃でのHおよびNガスの混合物中におけるHの分率の関数としての、TiAlCおよびTiNのエッチング速度ならびに選択性(TiAlC/TiN)の依存度を示す図である。
図8】圧力4Paおよび処理時間10分の様々な混合物条件でのプラズマエッチングの前および後の、TiAlC膜およびTiN膜の断面走査電子顕微鏡画像を示す図の一覧である。
図9】圧力4PaでNおよびHの様々な混合物によって得られるプラズマの発光スペクトルおよび写真画像を示す図である。
図10】波長336.3nmのNH、337.2nmのNの第2正帯、656.3nmおよび486.1nmのH原子のバルマー線の強度比の依存度を示す図である。
図11】それぞれの流量50および50sccmのHおよびNの混合物、バイアス電力200W、圧力2Paでの処理を5分行った前および後にTiAlC膜の表面上で得られるX線光電子スペクトルにおける、コア領域Al 2p、C 1s、Ti 2p、およびN 1sの狭域スキャンを示す図である。
図12】それぞれの流量50および50sccmのHおよびNの混合物、バイアス電力200W、圧力2Paでの処理を5分行った前および後にTiN膜の表面上で得られるX線光電子スペクトルにおける、コア領域Ti 2pおよびN 1sの狭域スキャンを示す図である。
図13】代表的条件のXPS解析における化学シフトに対する元素比およびピーク組成の概要を示す図である。
図14】N/Hプラズマを使用したTiAlCの選択的プラズマエッチングを示す断面図である。
図15】NおよびHの混合物のプラズマの流量がそれぞれ100および50sccmであり、バイアス電力200Wが印加され、圧力が4Paである、基板温度範囲-20~50℃に対するTiAlCおよびTiNエッチング速度の依存度を示す図である。
図16】NおよびHの混合物のプラズマの流量がそれぞれ50および50sccmであり、励起VHF電力300Wが印加され、作動圧力が2Paである、バイアス電力範囲25~200Wに対するTiAlCおよびTiNエッチング速度の依存度を示す図である。
図17】圧力1PaにおけるArのプラズマの流量が50sccmである、900~1300Vppの範囲のVppの√Vppに対するTiNスパッタリング速度の依存度を示す図である。
図18】様々なバイアス電力25、50、100、および200W、圧力2Pa、基板温度20℃での処理において、バイアス電力200Wを使用したサンプルの処理時間が5分、他のものの処理時間が20分である、それぞれの流量50および50sccmのHおよびNの混合物での処理の前および後に、TiAlC膜およびTiN膜の表面上で得られるX線光電子スペクトルにおける、コア領域N 1sの狭域スキャンを示す図である。
図19】代表的条件のXPS解析における化学シフトに対する元素比およびピーク組成の概要を示す図である。
図20】圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃でのOおよびNガスの混合物中におけるOの分率の関数としての、TiAlCのエッチング速度の依存度と、参照のため、TiNのエッチング速度の依存度とを示す図である。
図21】圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃での、Oを10%添加したHおよびNガスの混合物中におけるNの分率の関数としての、TiAlCのエッチング速度の依存度と、参照のため、TiNのエッチング速度の依存度とを示す図である。
図22】圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃での、H、O、およびNガスの混合物中におけるN、O、およびHの分率の関数としての、TiAlCおよびTiNのエッチング速度の等高線を示す図である。
図23】N/H/OプラズマにおけるTiNのエッチングの抑制を示す断面図である。
図24】圧力2PaでN、O、およびHの様々な混合物によって得られるプラズマの発光スペクトルを示す図である。
図25】圧力2PaでN、O、およびHの様々な混合物によって得られるプラズマの発光スペクトルを示す図である。
図26】本発明の一実施形態による等方性エッチングの装置を示す概略断面図である。
図27】本発明の一実施形態による等方性原子層エッチングにおけるパラメータである、処理ガス流量、高周波電源電力、赤外ランプ電力、後面He流量、およびウェハ表面温度の時間的変動の例をこの順序で上端から示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明者らは、非ハロゲンガス混合物を使用して炭化チタンアルミニウム膜をエッチングすることを試みてきた。結果として、以下の知見が得られた。
(1)非ハロゲン系ガス混合物を使用した処理によって、TiAlC表面の改質に成功した。
(2)揮発性生成物の脱着を、適切な入射エネルギーのイオン衝撃によって、または加熱によって得ることができる。
(3)TiNエッチングの抑制が、NおよびH混合物のプラズマに少量のOを添加することによって成功した。これにより、TiN膜上のTiAlC膜の高選択的な除去がもたらされる。
(4)イオンの入射エネルギーは、TiAlC膜およびTiN膜のイオン強化除去プロセスに対する閾値未満に設定すべきである。TiAlCのエッチング速度を比較的高くすることにより、TiN上のTiAlCの選択性が改善される。
(5)非選択性の脱着によってTiN上のTiAlCを除去する選択性が低減されるので、基板温度は50℃または20℃を超える温度に設定すべきである。
【0017】
<プロセス例1>
本発明の最良の例について、図1図13を参照して記載する。シリコンウェハ上における窒化チタン膜上の炭化チタンアルミニウム膜の等方性プラズマエッチングプロセスの設計、ならびに金属窒化物(TiAlN、TiN、AlN)上の金属炭化物(TiAlC、TiC、AlC)を高い選択性で除去する選択的プラズマ化学について、一例を記載する。
【0018】
図1は、容量結合プラズマ(CCP)エッチングシステム300の設計の一例を示す図である。分光エリプソメータ350は、下部電極301上に配置されたウェハ340の表面(サンプル341)をその場観察するためのシステムを備える。上部電極311は、整合回路312を通して超短波(VHF)電源313(100MHz)と接続される。下部電極301は、別の整合回路302を通して中波(MF)電源303(2MHz)と接続される。ここで、本例は、本発明をCCPエッチングシステムに適用することについて記載するが、本発明は、誘導結合プラズマ(ICP)エッチングシステムおよび電子サイクロトロン共振(ECR)プラズマエッチングシステムを含む、他のエッチングシステムにも適用可能である。
【0019】
図2は、本実施形態による、炭化チタンアルミニウム膜の連続エッチング方法における手順を概略的に示している。ウェハは、容量結合プラズマを発生させるシステムを有するチャンバ内で処理されることになる。ウェハは、チャンバの下部電極301上に置かれる(S01)。次に、ウェハの温度が冷却液を循環させることによって設定される(S02)。次に、NおよびHのガス混合物が、上部電極311を通してガス入口からチャンバに導入される(S03)。次に、VHF電力およびバイアス電力を印加することによって、プラズマを発生させる(S04)。別段の注記がない限り、300Wの励起VHF電力が使用される。水素含有および窒素含有イオンおよびラジカルが、金属炭化物を改質して、金属-窒素-炭化水素結合を形成することができる。エネルギー制御されたイオン衝撃によって、金属含有および窒素含有層はそのままで、金属含有炭化水素層のみを脱着することができる。表面改質および金属含有揮発性物質除去のサイクルは、金属窒化物に対して金属炭化物のみを選択的にエッチングすることができる。エッチング量が十分である場合、ウェハはチャンバから取り出される(S05、S06)。
【0020】
図3は、エリプソメトリを使用してその場測定した、4Paで流量150sccmの純Nのエッチングプロセス中におけるTiAlC膜厚の変化を示す図である。最上膜の改質が同時にモニタリングされる。200Wのバイアス電力が印加され、基板温度は20℃である。
【0021】
図4は、エリプソメトリを使用してその場測定した、4Paでそれぞれ流量75sccmおよび75sccmのNおよびHの混合物のエッチングプロセス中におけるTiAlC膜厚の変化を示す図である。最上膜の改質が同時にモニタリングされる。200Wのバイアス電力が印加され、基板温度は20℃である。
【0022】
図5は、エリプソメトリを使用してその場測定した、4Paで流量100sccmの純Hのエッチングプロセス中におけるTiAlC膜厚の変化を示す図である。最上膜の改質が同時にモニタリングされる。200Wのバイアス電力が印加され、基板温度は20℃である。
【0023】
図4で分かるように、TiAlCのエッチング速度は、純Nまたは純Hの事例(図3および図5)と比較して、NおよびH混合物プラズマにおいて明白である。
【0024】
図6は、圧力4Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃でのHおよびNガスの混合物中におけるHの分率の関数としての、TiAlCのエッチング速度の依存度を示す図である。参照のため、TiNのエッチング速度の依存度も示している。選択性は、TiAlCのエッチング速度とTiNのエッチング速度との比を取ることによって表される。
【0025】
図7は、圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃でのHおよびNガスの混合物中におけるHの分率の関数としての、エッチング速度の依存度を示す図である。参照のため、TiNのエッチング速度の依存度も示している。選択性は、TiAlCのエッチング速度とTiNのエッチング速度との比を取ることによって表される。
【0026】
図8は、圧力4Paおよび処理時間10分の様々な混合物条件でのプラズマエッチングの前および後の、TiAlC膜およびTiN膜の断面走査電子顕微鏡画像を示す図の一覧である。
【0027】
図9は、圧力4PaでNおよびHの様々な混合物によって得られるプラズマの発光スペクトルおよび写真画像を示す図である。
【0028】
図10は、波長336.3nmのNH、337.2nmのNの第2正帯、656.3nmおよび486.1nmのH原子のバルマー線の強度比の依存度を示す図である。Nと混合されたHでプラズマが発生したとき、NHの発光が強いのは明白である。流量50および100sccmのHおよびNの混合物で、最も強いNH放射が観察された。
【0029】
図11は、流量50および50sccmのHおよびNの混合物による、バイアス電力200W、圧力2Paでの、5分間の処理の前および後にTiAlC膜の表面上で得られるX線光電子スペクトルにおける、コア領域Al 2p、C 1s、Ti 2p、およびN 1sの狭域スキャンを示す図である。
【0030】
図12は、流量50および50sccmのHおよびNの混合物による、バイアス電力200W、圧力2Paでの、5分間の処理の前および後にTiN膜の表面上で得られるX線光電子スペクトルにおける、コア領域Ti 2pおよびN 1sの狭域スキャンを示す図である。
【0031】
TiAlC膜の場合、TiNおよびAlNの化学シフトは、プラズマエッチングプロセスの後に現れ、これはTiAlC膜の窒化を示す。N 1sには3つ以上の成分が存在する。2つの成分はAlNおよびTiNに割当て可能であり得、残りの部分は、水素および炭素の結合による化学シフトとして特定され、これはNHおよびCN結合を示す。
【0032】
TiN膜の場合、TiNの化学シフトはプラズマエッチングプロセスの前および後に現れる。ピーク特徴はプラズマエッチングプロセスの後でほぼ変化しない。
【0033】
図13は、代表的条件のXPS解析における化学シフトに対する元素比およびピーク組成の概要を示す図である。
【0034】
エッチングメカニズムは次の通りである。NH結合を炭化物中に形成することができる。この構成では、炭化水素基は金属元素に結合される。TiおよびAlは、架橋窒素を介した炭化水素基の配位によって中心に配置される。これらの金属有機錯体は、揮発性生成物を形成することによって脱着することができる。このことは、Al(C、Ti-(N(C)、およびTi-(CN)などの揮発性生成物が生成される可能性を示している。TiAlCの選択的プラズマエッチングの断面図が図14に示される。
【0035】
ここで、本例は、本発明を異方性エッチングに適用することについて記載するが、本発明は、イオン照射の代わりに加熱を使用することによる等方性エッチングにも適用可能である。
【0036】
<プロセス例2>
第2の実施形態について、図15を参照して記載する。
【0037】
シリコンウェハ上における窒化チタン膜上の炭化チタンアルミニウム膜のドライプラズマエッチングの開発について一例を記載する。
【0038】
図15は、基板温度範囲-20~50℃に対するTiAlCおよびTiNのエッチング速度の依存度を示す図である。NおよびHの混合物のプラズマの流量は、それぞれ100および50sccmである。バイアス電力200Wが印加され、圧力は4Paである。
【0039】
このセットアップでは、基板温度が20℃を超えて上昇するにしたがって、TiN膜上のTiAlC膜のエッチング速度および選択性が増加していく。
【0040】
<プロセス例3>
第3の実施形態について、図16図19を参照して記載する。
【0041】
シリコンウェハ上における窒化チタン膜上の炭化チタンアルミニウム膜のドライプラズマエッチングの開発について一例を記載する。
【0042】
図16は、バイアス電力範囲25W~200Wに対するTiAlCおよびTiNのエッチング速度の依存度を示す図である。NおよびHの混合物のプラズマの流量は、それぞれ50および50sccmである。励起VHF電力300Wが印加され、作動圧力は2Paである。バイアス電力は、ピーク間電圧の平方根√Vppに変換される。同じバイアス電力では、√Vppが大きいほどTiAlCエッチング速度はTiNエッチング速度よりも速い。この傾向は、エッチング速度を√Vppと線形相関させることによってフィッティングされる。エッチング速度ゼロに対する交差値(閾値)は、TiAlCエッチング速度の方がTiNエッチング速度の場合よりも低いことが分かる。バイアス電力が閾値よりも低い場合、TiN膜上のTiAlC膜を高選択的に除去することが可能となり得る。
【0043】
図17は、900~1300Vppの範囲のVppの√Vppに対するTiNスパッタリング速度の依存度を示す図である。圧力1PaにおけるArのプラズマの流量は50sccmである。この傾向は、TiNスパッタリング速度を√Vppと線形相関させることによってフィッティングされる。スパッタリング速度ゼロに対する交差値(閾値)は、HおよびN混合物のプラズマにおいて、TiNエッチング速度に対する√Vppが25でほぼ同じであることが分かる。しかしながら、TiAlCの傾向は物理的なスパッタリングのものに追随していない。換言すれば、物理的なスパッタリング速度は、NおよびH混合物のプラズマおよび低バイアス電力の印加で得られる、本発明の結果をなぞることができていない。これは、NおよびHの化学作用が、TiN上のTiAlCの選択性エッチングに対して重要な役割を果たすことを意味する。
【0044】
図18は、様々なバイアス電力25、50、100、および200W、圧力2Pa、基板温度20℃を有し、流量50および50sccmのHおよびNの混合物の前および後に、TiAlC膜およびTiN膜の表面上で得られるX線光電子スペクトルにおける、コア領域N 1sの狭域スキャンである。バイアス電力200Wを使用したサンプルの処理時間は5分、他のものの処理時間は20分である。
【0045】
TiN膜の場合、プラズマエッチング前は、N 1s領域に化学シフトの2つの成分がある。一方はバルクTiNに割り当てられ、他方は、TiONを示すTiN膜の自然酸化物に割り当てられる。約402eVの結合エネルギーでは、特に、25Wおよび50Wの低いバイアス電力の場合に小さい特徴が観察される。これはNO結合と特定される。
【0046】
TiAlC膜の場合、プラズマエッチング前は、窒素は確実に存在しない。この初期のTiAlC膜がエッチングされ、明白なピークがN 1sのXPSスペクトルに現れる。同様に、TiN膜では、TiNおよびAlNの成分と、自然酸化物TiONおよびAlONの成分とがある。50Wを超えるバイアス電力では、バイアス電力に関係なくこれらのピークはほぼ不変である。25Wおよび50Wの低いバイアス電力の場合、約402eVの高い結合エネルギーのピーク成分は強度が高くなる。TiAlC表面で観察された改質によって、NおよびH混合物のプラズマに揮発性生成物が形成される。結合Al-C、Ti(Al)-N、N-H、およびC-Nがプラズマ処理後のサンプル中に見られたが、このことは、メチル(Al-CH)、メチルアミン(Ti(Al)-NH-CH3-n)を含む、化学的結合を有する揮発性生成物が形成されたことの証明である。これらの結合成分は、揮発性生成物を得るように制御されるべきである。
【0047】
図19は、代表的条件のXPS解析における化学シフトに対する元素比およびピーク組成の概要を示す図である。
【0048】
<プロセス例4>
第4の実施形態について、図20図23を参照して記載する。
【0049】
シリコンウェハ上における窒化チタン膜上の炭化チタンアルミニウム膜のドライプラズマエッチングの開発について一例を記載する。
【0050】
図20は、圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃でのOおよびNガスの混合物中におけるOの分率の関数としての、TiAlCのエッチング速度の依存度を示す図である。参照のため、TiNのエッチング速度の依存度も示している。
【0051】
図21は、圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃での、Oを10%添加したHおよびNガスの混合物中におけるNの分率の関数としての、TiAlCのエッチング速度の依存度を示す図である。参照のため、TiNのエッチング速度の依存度も示している。
【0052】
図22は、圧力2Pa、バイアス電力200W、および基板温度20℃での、H、O、およびNガスの混合物中におけるN、O、およびHの分率の関数としての、TiAlCおよびTiNのエッチング速度の等高線を示す図である。
【0053】
TiAlC膜の場合、2つの最大値が現れる。一方は、OおよびN混合物のプラズマにおけるものであり、他方はNおよびH混合物のプラズマにおけるものである。NおよびH混合物の場合、Oを10%未満添加することによって、TiAlCとほぼ同じエッチング速度が得られる。Oをさらに添加するとTiAlCエッチング速度は大幅に減少するが、それでもエッチング速度は比較的速いままである。
【0054】
TiN膜の場合、エッチング速度の最大値は、O、H、およびNのうち、この混合物では純Nに現れる。Oを添加した場合、表面酸化はTiN膜のエッチングオフを大幅に抑制する。
【0055】
TiN上のTiAlCのエッチングの選択性と、TiAlC膜の高いエッチング速度を獲得するには、Hの分率が25%~75%の範囲のHおよびNの混合物が最良の例であり、Oは、10%未満のO分率でHおよびNの混合物に添加すべきである。
【0056】
本発明のエッチング結果によれば、TiAlC膜およびTiN膜それぞれの表面改質は、プラズマエッチングの化学によって、つまりガス混合比の制御によって、制御することができる。プラズマは、様々な種類のイオンおよびラジカルを発生させる。主に、NH成分およびCN成分の表面改質はTiAlC膜の除去を支援することができる。この改質層は、揮発性生成物を形成する可能性があり、炭化水素基と窒素架橋との結合を形成してTiおよびAlを中心に配位する。両方の膜における少量の酸化は、TiONの形成によってTiN膜のエッチングを抑制するのを支援することができる。N/H/OプラズマにおけるTiNのエッチングの抑制の断面図が図23に示される。
【0057】
<プロセス例5>
図24および図25は、圧力2PaでN、O、およびHの様々な混合物によって得られるプラズマの発光スペクトルを示す図である。100%Nでは、Nの第2正帯が337、357、および380nm付近で、Nの第1正帯が600~800nm付近で明らかに観察される。100%Hでは、H原子のバルマー線が656.3nmおよび486.1nmで明らかに観察される。100%Oでは、O原子放射が777および844nmで見られる。NおよびH混合物では、NH放射を観察することができるが、このセットアップでは、N放射の重複がNH帯の観察を妨害する。NおよびO混合物では、NO放射を紫外光範囲の245nm付近で観察することができる。HおよびO混合物では、強いOH放射が310nm付近で、またHのバルマー線が明らかに観察される。N、H、および10%Oの混合物では、NOおよびH原子からのすべての放射が重複している。このように、発光スペクトル観察を使用して、ガスがどのように混合されているかの条件をモニタリングすることができる。加えて、Oを10%で固定した場合、NおよびHのバランスが変更される。H原子(656nm)、N(337nm)、OH(310nm)、およびNO(245nm)のスペクトル強度は、これらのガスがプラズマ中でどのように混合するかを示す。
【0058】
<プロセス例6>
一実施形態について図26図27を参照して記載する。この実施形態は、NおよびHの混合物から発生したプラズマが使用され、TiN膜上のTiAlC膜が、300mmウェハ用のプラズマ処理装置内で赤外線加熱を使用することによって、選択的かつ等方的にエッチングされる、一例に対応する。
【0059】
上述したような、炭化チタンアルミニウムを含有する膜のエッチングを実施する、プラズマ処理装置について記載する。図26は、プラズマ処理装置100の概略構成を示す断面図である。
【0060】
処理チャンバ1は、ベースチャンバ11によって構成され、処理されるサンプルとしてのウェハ2が上に配置されるウェハステージ4(以下、ステージ4と呼ぶ)が、処理チャンバ1内に配設される。プラズマ源は、石英チャンバ12、ICPコイル34、および高周波電力源20を含み、ベースチャンバ11の上方に配設されたコンテナ60内に配設される。この例では、誘導結合プラズマ(ICP)放電方法がプラズマ源に使用される。プラズマを発生させる高周波電力源20は、整合ユニット22を介して、円筒状の石英チャンバ12外部のICPコイル34に接続される。13.56MHzなど、数十MHzの周波数帯が、高周波電力の周波数として使用される。
【0061】
上部プレート6は石英チャンバ12の上部部分に配設される。シャワープレート5は上部プレート6内に配設される。ガス拡散プレート17は上部プレート6の下方に配設される。処理ガスは、ガス拡散プレート17の外周から処理チャンバ1に導入される。
【0062】
処理ガスの供給流量は、処理ガス中の各種のガスに対して配設されたマスフローコントローラ50によって調節される。図26は、NおよびHを処理ガスとして使用する一例を示している。しかしながら、処理ガス中のガスの種類はそれらに限定されない。
【0063】
真空排気管16は、ポンプ15に接続されて、処理チャンバ1の下部部分の圧力を低減させる。ポンプ15は、例えば、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースターポンプ、またはドライポンプで構成される。処理チャンバ1または石英チャンバ12内の放電領域3の圧力を調節するために、圧力調節メカニズム14がポンプ15の上流に配設される。圧力調節メカニズム14、ポンプ15、および真空排気管16は、排気メカニズムと総称される。ステージ4は、ステージ4とベースチャンバ11の底面との間の真空封止を実施するOリング81を備える。
【0064】
ウェハ2を加熱する赤外(IR)ランプユニットは、ステージ4とICPプラズマ源を構築する石英チャンバ12との間に配設される。IRランプユニットは主に、IRランプ62と、IR光を反射する反射プレート63と、IR光透過窓74とを含む。円形(丸形)のランプがIRランプ62として使用される。IRランプ62から放射される光(電磁波)は、主に可視光から赤外光領域の光までの光を含む、光(本明細書では、IR光と呼ぶ)である。この例では、IRランプ62は、三周分のIRランプ62-1、62-2、および62-3を含む。しかしながら、IRランプ62は、二周または四周分のIRランプを含んでもよい。IR光を下方に(ウェハ2の配置方向に)反射する反射プレート63は、IRランプ62の上方に配設される。
【0065】
IRランプ電力源64はIRランプ62に接続される。高周波カットオフフィルタ25は、IRランプ電力源64とIRランプ62との間に配設される。高周波カットオフフィルタ25は、高周波電力源20によって生成されるプラズマを発生させる高周波電力のノイズが、IRランプ電力源64に流入するのを防ぐ。IRランプ電力源64は、それぞれのIRランプ62-1、62-2、および62-3に供給される電力を独立して制御する機能を有するので、ウェハ2の加熱量の径方向分布を調節することができる。
【0066】
この例では、石英チャンバ12内に供給されるガスが処理チャンバ1に流入するので、ガス流路75はIRランプユニットの中心に形成される。ガス流路75は、石英チャンバ12内部で発生したプラズマ中のイオンおよび電子を遮蔽し、中性ガスまたは中性ラジカルのみを送りウェハ2を照射する、スリットプレート(イオン遮蔽プレート)78を備える。スリットプレート78は複数の穴を含む。
【0067】
他方で、冷却剤流路39は、ステージ4を冷却するためにステージ4に形成され、冷却剤は冷却装置38が供給し循環させる。静電吸着によってウェハ2をステージ4に固定させるために、プレート状の電極プレートである静電吸着のための電極30がステージ4に埋め込まれる。静電吸着のためのDC電力供給部31はそれぞれ、静電吸着のための電極30に接続される。
【0068】
ウェハ2を効率的に冷却するために、Heガス(冷却ガス)を、ステージ4とステージ4上に配置されたウェハ2の裏面との間に供給することができる。ステージ4の表面(ウェハの配置面)は、ポリイミドなどの樹脂でコーティングされて、静電吸着のための電極30がウェハ2を静電吸着した状態で加熱および冷却を実施するように操作される場合であっても、ウェハ2の裏面が損傷するのを防ぐ。ステージ4の温度を測定する熱電対70は、ステージ4の内部に配設され、熱電対温度計71に接続される。
【0069】
光ファイバ92-1および92-2は、ウェハ2の温度を測定する3つの場所、つまり、ステージ4上に配置されたウェハ2の中心部分付近の場所、径方向でウェハ2の中間部分付近の場所、およびウェハ2の外周付近の場所に配設される。光ファイバ92-1は、外部IR光源93からのIR光をウェハ2の裏面へとガイドし、それによってウェハ2の裏面がIR光で照射される。他方で、光ファイバ92-2は、光ファイバ92-1によって放射されたIR光のうち、ウェハ2を透過したかまたはウェハ2上で反射したIR光を収集し、透過または反射したIR光を分光器96へと送る。
【0070】
つまり、外部IR光源93によって発生した外部IR光は、光路をオンオフする光路スイッチ94に送られる。その後、外部IR光は、光分配器95によって複数の(この場合は3つの)光に分岐され、ウェハ2の裏面の様々な位置が、3つの光ファイバ92-1を介して複数のIR光で照射される。ウェハ2によって吸収または反射されたIR光は、光ファイバ92-2によって分光器96に送られ、スペクトル強度の波長依存データが検出器97によって得られる。検出器97によって得られたスペクトル強度の波長依存データは、制御ユニット40の演算ユニット41に送られて吸収波長が計算され、吸収波長に基づいてウェハ2の温度を決定することができる。光合波器98は、光ファイバ92-2の中間部分に配設されるので、ウェハの中心、ウェハの中間、およびウェハの外周の測定点で分光測定される光を切り替えることが可能である。したがって、演算ユニット41は、ウェハの中心、ウェハの中間、およびウェハの外周それぞれの温度を決定することができる。
【0071】
制御ユニット40は、プラズマ処理装置100を構築する各メカニズムを制御する。具体的には、制御ユニット40は、高周波電力源20を制御し、ICPコイル34への高周波電源のオンオフを制御する。ガス供給ユニット51は、それぞれのマスフローコントローラ50-1~50-4から石英チャンバ12の内部に供給される、ガスのタイプおよび流量を調節するように制御される。エッチングガスが供給されるとき、制御ユニット40は、ポンプ15を作動させ、圧力調節メカニズム14を制御して、処理チャンバ1内部の圧力を所望の圧力に調節する。
【0072】
静電吸着のためのDC電力供給部31を作動させてウェハ2をステージ4に静電吸着し、Heガスをウェハ2とステージ4との間に供給するマスフローコントローラ50-4を作動させる一方で、制御ユニット40は、熱電対温度計71によって測定されるステージ4の温度、ならびに演算ユニット41によって決定されるウェハ2の温度分布の情報に基づいて、IRランプ電力源64および冷却装置38を制御して、ウェハ2の温度が所定の温度範囲内にあるようにする。ウェハ2の温度分布の情報は、検出器97によって測定される、ウェハ2の中心部分付近、径方向でのウェハ2の中間部分付近、およびウェハ2の外周付近のスペクトル強度の情報に基づいて決定される。
【0073】
図27は、TiAlC膜の等方性原子層エッチングがプラズマ処理装置100によって実施される場合の、1サイクルの時間チャートである。
【0074】
最初に、エッチングされるTiAlC膜が上に形成されたウェハ2が、処理チャンバ1に設けられた搬送ポート(図示なし)を介して処理チャンバ1内に運ばれ、ステージ4上に配置される。制御ユニット40は、DC電力供給部31を作動させて、ウェハ2を静電吸着し、ステージ4に固定させ、ガス供給ユニット51を制御して、ウェハ冷却のためのHeガスをウェハ2の裏面とステージ4との間に、Heガスに対応するマスフローコントローラ50-4から供給して、ウェハ2の裏面とステージ4との間のHeガスの圧力230が所定の圧力231に設定され、ウェハ温度240が温度241に設定されるようにする。この例では、ウェハ温度241は20℃である。
【0075】
続いて、制御ユニット40は、Nの混合物であり、マスフローコントローラ50-2および50-3によって処理チャンバ1内に供給される反応ガスである、ガスの流量を調節し、圧力調節メカニズム14の開口度を調節して、処理チャンバ1内部の圧力および石英チャンバ12内部の圧力が目標圧力に設定されるようにする。この状態で、制御ユニット40は、高周波電力源20をオンにして放電電力211を印加し、それによって石英チャンバ12内部のプラズマ放電を開始し、石英チャンバ12内部でプラズマ10を発生させる。このとき、ウェハ2の温度は20℃で維持されるので、IRランプ62に印加される電力220はゼロである(電力221)。
【0076】
この状態で、NおよびHの混合物の一部がイオン化され、プラズマ10中で解離される。プラズマ10が発生した領域内でイオン化されていない中性ガスおよび中性ラジカルは、スリットプレート78を通過するので、ウェハ2に、NHを含む中性ガスおよび中性ラジカルが照射される。ラジカルは、ウェハ2の表面上で吸着され、TiAlC膜と反応して、Al(C、Ti-(N(C)、およびTi-(CN)を含む表面反応層を発生させる。スリットプレート78の効果により、プラズマ10中に発生したイオンがウェハ2に入ることはほぼない。したがって、TiAlC膜の表面反応は主に、ラジカルによって等方的に進行し、表面反応層はTiAlC膜の表面上で生成される。発生する表面反応層の厚さは、ガス混合物を使用するプラズマ処理時間およびプラズマ処理温度に応じて増加する。しかしながら、この場合の温度で15秒が経過すると、表面反応層の量が飽和する。したがって、気相を使用するプラズマ処理の時間は15秒に設定される。
【0077】
表面反応を形成するのに必要なプラズマ処理時間が経過した後、制御ユニット40は、高周波電力源20(放電電力212)をオフにし、プラズマ放電を停止する。処理チャンバ1内に残っているガスは、排気メカニズムによって排気される。ウェハの裏面へのHeガスの供給が停止され、バルブ52が開かれ、ウェハ2の裏面における圧力が処理チャンバ1内の圧力に等しく設定される。ウェハの裏面のHeガスが除去され、それによって、ウェハの裏面におけるHeガスの圧力230が圧力232に設定される。上記が第1のステップである。
【0078】
続いて、制御ユニット40は、IRランプ電力源64の出力をオンにして、IRランプ62(電力222)をオンにする。IRランプ62から放射されるIR光は、IR光透過窓74を通過し、ウェハ2を加熱する。したがって、ウェハの温度はウェハ温度242として示されるように上昇する。ウェハ温度240は、第2のステップが終了すると、温度上昇の開始後25秒で200℃に達する。この例では、到達すべきウェハ温度は200℃に設定される。
【0079】
ウェハ温度240が200℃(ウェハ温度243)に達すると、制御ユニット40は、IRランプ電力源64の出力を電力223に低減し、それによってウェハ2の温度を、特定の期間、温度243で一定に保つ。圧力は5Paに設定される。Al(C、Ti-(N(C)、およびTi-(CN)から成る表面反応層は、高温では揮発性なので除去され、それによってTiAlC膜の厚さが低減される。表面反応層全体が除去されるので、エッチングが停止され、TiAlC層の表面が露出する。
【0080】
第2のステップおよび本ステップ(第3のステップ)では、ウェハ2は、IRランプ62からの電磁波によって加熱されるので、必然的に加熱されるウェハの表面を効率的に温めることができる。例えば、約180℃の温度差がある場合であっても、加熱を迅速に完了することができる。ウェハ2は、ウェハ2がステージ4上に配置された状態で加熱されるものと記載されているが、ウェハ2は、リフトピンなどを使用することによってステージ4から持ち上げられ、ウェハ2がステージ4と熱的に接触していない状態でIR光(電磁波)を照射されてもよい。したがって、ウェハ2からステージ4への伝熱を防ぐことができ、そのため、ウェハ2の温度をより短時間で所望の温度まで上昇させることができる。この場合、ウェハ2の温度は、IRランプ62から放射され、ウェハ2を通って伝わり、光ファイバ92-2に達する光を使用して測定されてもよい。IRランプ62-1、62-2、および62-3の電力比は、ウェハ2の面における径方向の温度分布に基づいて制御されてもよい。
【0081】
その後、制御ユニット40は、IRランプ電力源64(電力224)の出力をオフにし、ウェハ2の加熱を停止する。処理チャンバ1内に残っているガスは、排気メカニズムによって迅速に排気される。このように、第3のステップが終了する。
【0082】
続いて、制御ユニット40は、Arガス供給のためのマスフローコントローラ50-1、およびHeガス供給のためのマスフローコントローラ50-4を制御して、Arガスを処理チャンバ1内に供給し、Heガスをウェハ2の裏面とステージ4との間に供給し、それによって、ウェハ2の裏面とステージ4との間のHeガスの圧力230が、所定の圧力233に設定され、ウェハ2の冷却が開始される(温度244)。ウェハ温度は20℃まで冷却され、冷却に要する時間は30秒である。したがって、第4のステップが終了する。
【0083】
このように、本実施形態では、第1のステップの表面反応処理および第3のステップの昇華除去処理が等方的に進行するので、TiAlC膜の厚さが膜の最初の厚さから減少する。第1~第4のステップを含むサイクルは、この例では10回繰り返され、それによってTiAlC膜全体のエッチングが実施された。また、TiN下層の表面が露出した。加熱ステップが低損傷性なので、TiN下層で生じた損傷は無視できる程度である。
【符号の説明】
【0084】
1:処理チャンバ、2:ウェハ、3:放電領域、4:ウェハステージ、5:シャワープレート、6:上部プレート、11:ベースチャンバ、12:石英チャンバ、14:圧力調節メカニズム、15:ポンプ、16:真空排気管、17:ガス拡散プレート、20 高周波電力源、22:整合ユニット、25:高周波カットオフフィルタ、30:電極、31:DC電力供給部、34:ICPコイル、38:冷却装置、39:冷却剤流路、40:制御ユニット、41:演算ユニット、50:マスフローコントローラ、51:ガス供給ユニット、60:コンテナ、62:IRランプ、63:反射プレート、64:IRランプ電力源、70:熱電対、71:熱電対温度計、74:IR光透過窓、75:ガス流路、78:スリットプレート(イオン遮蔽プレート)、81:Oリング、92:光ファイバ、93:外部IR光源、94:光路スイッチ、95:光分配器、96:分光器、97:検出器、98:光合波器、100:プラズマ処理装置、200:ガス流、210:RF電力、220:IRランプ電力、230:He圧力、240:ウェハ温度、300:容量結合プラズマ(CCP)エッチングシステム、301:下部電極、302:整合回路、303:MF電源、311:上部電極、312:整合回路、313:VHF電源、340:ウェハ、341:サンプル、350:分光エリプソメータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
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図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-08-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
およびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において前記表面に供給して、金属炭化物の前記表面を改質するステップと、金属炭化物上の改質された前記表面をイオン照射によって除去するステップと、を含む、金属窒化物上の金属炭化物をエッチングする連続エッチング方法。
【請求項2】
およびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において前記表面に供給することによって、金属炭化物の表面を改質するステップと、前記金属炭化物の前記表面から改質された前記表面をイオン照射によって除去するステップとの、1または複数のサイクルを含む、金属窒化物上の金属炭化物をエッチングするサイクルエッチング方法。
【請求項3】
およびHを含有するが、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を含むハロゲンガスは含有しない、ガス混合物から発生するプラズマを、金属炭化物の表面の少なくとも一部において前記表面に供給することによって、金属炭化物の表面を改質するステップと、前記金属炭化物の前記表面から改質された前記表面を加熱によって除去するステップとの、1または複数のサイクルを含む、金属窒化物上の金属炭化物をエッチングするサイクルエッチング方法。
【請求項4】
前記金属炭化物が炭化チタンアルミニウムである、請求項1、2、および3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項5】
前記金属窒化物が窒化チタンである、請求項1、2、および3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項6】
前記ガス混合物がOを含有する、請求項1、2、および3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項7】
前記ガス混合物中のOの流量比が10%未満である、請求項6に記載のエッチング方法。
【請求項8】
前記改質された表面が、CH、CN、およびNHを含む、請求項1、2、および3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項9】
前記プラズマの圧力が1000Pa未満である、請求項1、2、および3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項10】
前記金属炭化物の温度が50℃または20℃を超える温度である、請求項1、2、および3のいずれか一項に記載のエッチング方法。
【請求項11】
前記加熱がランプからの赤外光を照射することによって実施される、請求項3に記載のエッチング方法。
【国際調査報告】