(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】モリブデンまたはタングステン材料の堆積方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20240521BHJP
C23C 16/14 20060101ALI20240521BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240521BHJP
H01L 21/285 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
C23C16/455
C23C16/14
H01L21/28 301R
H01L21/285 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568377
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2022028052
(87)【国際公開番号】W WO2022236040
(87)【国際公開日】2022-11-10
(32)【優先日】2021-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ライト, ロバート エル.
【テーマコード(参考)】
4K030
4M104
【Fターム(参考)】
4K030AA01
4K030AA03
4K030AA16
4K030AA17
4K030AA18
4K030BA12
4K030BA20
4K030CA02
4K030CA04
4K030CA12
4K030EA03
4K030FA10
4K030HA01
4K030JA01
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
4M104AA01
4M104AA02
4M104AA03
4M104AA04
4M104AA05
4M104BB16
4M104BB18
4M104DD43
4M104DD45
4M104GG16
4M104GG18
4M104HH20
(57)【要約】
蒸着条件下でマイクロ電子デバイス基板上に高コンフォーマルなモリブデンまたはタングステン含有膜を速やかに堆積するための方法が提供される。本発明の実施では、第1の核生成工程は、反応部内で通常利用されるよりも全体的に低い濃度の金属前駆体を利用しつつ実施される。このような低い濃度の金属前駆体の利用は、(前駆体を収容する)アンプルの温度、前駆体の濃度、反応部内の圧力、およびパルスの持続時間を調節することによって達成することができる。このように、全体的に低い濃度を利用することで、約3Å以上、または最大約9、15、もしくは25Åの核生成層が形成され、このときに、前駆体を導入するための条件が有利に変更され、かつバルク堆積の目的のために反応部内の前駆体の濃度が上昇される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンまたはタングステン含有膜を表面上に蒸着するための方法であって、
約3Å~約25Åの厚さを有する膜が表面上に堆積されるまで、表面を含む反応部に第1の前駆体および還元ガスを導入することと、
所望の厚さを有する膜の堆積が達成されるまで、反応部に第2の前駆体および還元ガスを導入することであって、第1の前駆体濃度が、反応部内で第2の前駆体濃度に対して約1~約75パーセントであり、第1の前駆体および第2の前駆体がともに同じ前駆体、または異なる前駆体であり得る、第2の前駆体および還元ガスを導入することと
を含む方法。
【請求項2】
第1の前駆体濃度が、第2の前駆体濃度の約10~約50パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間の後に約1~約120秒の休止を伴うパルスで繰り返し導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間のパルスで繰り返し導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させ、その後に約1~約120秒の休止を行いながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法。
【請求項5】
前駆体が、WCl
6、WCl
5、WOCl
4、MoO
2Cl
2、MoCl
5、およびMoOCl
4から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前駆体がMoO
2Cl
2である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
反応部内の圧力が約20~約200Torrである、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前駆体の第1の濃度が約20~約500ppmである、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
反応部内の温度が約350~500℃である、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を連続的に導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を連続的に導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法。
【請求項11】
前駆体が、WCl
6、WCl
5、WOCl
4、MoO
2Cl
2、MoCl
5、およびMoOCl
4から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前駆体がMoO
2Cl
2である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
反応部内の圧力が約20~約200Torrである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前駆体の第1の濃度が約20~約500ppmである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
反応部内の温度が約350~500℃である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モリブデンまたはタングステン含有材料の、マイクロ電子基板上への蒸着に関する。
【背景技術】
【0002】
モリブデンおよびタングステンは、融点が非常に高く、熱膨張係数が低く、抵抗率が低く、かつ熱伝導率が高いという特性により、拡散バリア、電極、フォトマスク、パワーエレクトロニクス基板、低抵抗率のゲート、およびインターコネクト器での使用を含む、半導体デバイスの製造への利用が増加している。
【0003】
このような有用性によって、効率的な大量製造作業に適応させるべく、堆積された膜の高コンフォーマリティおよび高堆積速度を特徴とする、モリブデンおよびタングステン膜の堆積を、上記の用途において達成しようとする取り組みが促されてきた。このことは、蒸着作業に有用な改良されたモリブデンおよびタングステン源試薬のほか、かかる試薬を利用する改良されたプロセスパラメータを開発するための取り組みに影響を与えている。さらに、堆積の遅延に、多くの場合、所望の交互積層堆積(layer-on-layer deposition)の前に基板表面上に核生成を確立させることの困難が付随し得る限り、金属、金属窒化物、誘電体材料(酸化物)、半導体、および超伝導体などの特定の基板上にモリブデンを堆積するに際して困難に直面することが多い。堆積温度が低下するにつれて、全体の堆積速度は通常低下し、種々の基板表面に対する感度は全体的により顕著になる。
【0004】
効率的な大量製造作業に適応させるべく、より高い堆積速度でのモリブデンおよびタングステン含有材料の堆積を達成することが、依然として必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
特定の実施形態では、本発明は、蒸着条件下、低温すなわち約400℃未満で、マイクロ電子デバイス上に高コンフォーマルな金属含有膜、例えばモリブデンおよびタングステン含有膜を速やかに堆積するための方法を提供し、これにより本堆積方法は、論理デバイスの製造を含む広範囲の集積スキームで利用することが可能になる。本発明の実施では、第1の核生成工程は、反応部に通常存在するよりも全体的に低い濃度の金属前駆体を利用しつつ実施される。このような低濃度の利用は、(前駆体を収容する)アンプルの温度、前駆体の濃度、反応部内の圧力、およびパルスの持続時間を調節することによって達成することができる。このように、全体的に低い濃度を利用することで、約3オングストローム(Å)以上、または最大約9、15、もしくは25Åの核生成層が形成され、このときに、前駆体を導入するための条件が有利に変更され、かつバルク堆積の目的のために反応部内の前駆体の濃度が上昇される(例えば、核生成工程に使用される濃度よりも50%高い)。一実施形態では、MoO2Cl2などのモリブデン前駆体を利用することで窒化チタン表面上にモリブデン含有膜が堆積されるが、本方法には、金属、金属窒化物、誘電体材料(酸化物)、半導体、および超伝導体など、金属核生成層の形成が困難である(すなわち、全体的に核生成の遅延に直面する)表面上に、モリブデンまたはタングステン含有膜を堆積するための広範な利用可能性があると認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】MoO
2Cl
2を前駆体として用いるMoの化学蒸着(CVD)によって調製された、1.6ÅのMoの質量換算厚さ(mass equivalent thickness)を有する形式上露出された窒化チタン表面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。基板温度は450℃であった。
【
図2】MoO
2Cl
2を用いて窒化チタン上に400℃の基板温度でモリブデンを化学蒸着する(比較)例のSEMである。本例は、表面上に9.9ÅのMoの質量換算厚さを有する不十分な核生成を示し、酸化モリブデン相のみがX線回折によって明白であった。
【
図3】本発明の方法(および390℃の基板温度)を用いた、窒化チタン基板上のモリブデンの堆積/核生成を示すSEMである。Mo膜は、9.4Åの質量換算厚さを有する(後述の実施例1を参照)。
【
図4】膜の良好なコンフォーマリティを呈するようにわずかな厚さのMo膜をビア構造体上に生成するために、多数のサイクルで核生成工程条件を用いて調製された膜のSEMである。
【
図5】PVD Mo基板上に堆積された、質量換算厚さ104ÅのMo膜のSEMである。CVD条件は、T
sub=390℃、低前駆体濃度30ppmであった。このデータは、PVD Mo基板が、バルクMo堆積前のMo核生成工程に匹敵する出発表面であることを示す。
【
図6】CVDによってTiN基板上に堆積された、質量換算厚さ102ÅのMo膜のSEMである。堆積条件はT
sub=450℃、前駆体濃度=37ppmである。この条件は、この濃度によってTiN上でのMoの堆積が可能になる基板温度の下限付近である。
【
図7】2工程でTiN基板上に堆積されたMo膜のSEMである。Moの質量換算厚さは108Åである。堆積温度はT
sub=390℃であり、パルスCVD核生成層では低前駆体濃度22ppmを使用し、バルクCVD堆積では30ppmの前駆体濃度を使用した。このデータは、Mo核生成工程によってバルクMo堆積に好適な(PVD Mo基板に匹敵する出発表面)が生じることを示す。
【
図8】H
2流量(sccm)に対する、Å単位でのTiNエッチングのプロットである。このデータは、H
2流量の増加により前駆体濃度が低下することを示し、かつ、核生成工程中の濃度の低下により基板(TiN)エッチングがどのように減少し得るのかを例示する。
【
図9】堆積時間に応じた、窒化チタン基板およびPVDモリブデン基板上でのCVDモリブデン堆積速度の比較図である。基板温度=650℃、圧力=80Torr、アルゴンキャリアガス流量=50sccm、水素共反応ガス(Hydrogen co-reactant gas)流量=4000sccm。本グラフは、堆積速度に対する核生成遅延の影響を示す。本グラフはまた、300秒~600秒の期間における窒化チタン上でのモリブデン堆積速度が、Mo上に堆積したときにTiN基板に比べて少なくとも25%上昇したことも示す。前駆体濃度=20ppm。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上で別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「または(or)」という用語は、概して、文脈上で別段の明確な指示がない限り、「および/または(and/or)」を含めた意味で利用される。
【0008】
「約(about)」という用語は、概して、列挙された値と等価である(例えば、同じ機能または結果を有する)と考慮される数の範囲を指す。多くの例で、「約」という用語は、最も近い有効数字に四捨五入された数を含む場合もある。
【0009】
端点を用いて表現される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、および5を含む)。
【0010】
概して、本発明の堆積方法は、第1の工程として約3~約25Åの金属核生成層の堆積を必要とする。この第1の工程は、後に、すなわちバルク膜の形成に使用される前駆体の濃度と比べて比較的低い濃度の前駆体を反応部内で用いて、都合良く実施される。概して、核生成層を形成するために第1の低濃度の前駆体を利用することで、最終的に所望の厚さの膜堆積における全体的な処理時間が改善され、驚くべきことに、この低濃度の前駆体は、特定の基板上のモリブデンおよびタングステンの前駆体で典型的に確認される核生成遅延を低減することが見出された。反応部内のこの比較的低い濃度の前駆体は、一実施形態では、バルク堆積工程で使用される濃度の約1~約75モル%、または約10~約50モル%である。本明細書で言及される割合および濃度の列挙はすべて、モルベースとなる。
【0011】
したがって第1の態様では、本発明は、モリブデンまたはタングステン含有膜をマイクロ電子デバイスの表面上に蒸着するための方法であって、約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の前駆体濃度を有する前駆体、および還元ガスを導入すること、その後に、所望の厚さを有するモリブデンまたはタングステン含有膜の堆積が達成されるまで、反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第2の前駆体濃度を有する前駆体、および還元ガスを導入することを含み、第1の前駆体濃度が第2の前駆体濃度の約1~約75パーセントである、方法を提供する。
【0012】
当業者により認識されるように、比較的低い濃度の前駆体を(核生成層を形成するための)第1の段階の堆積に、続いて膜の大部分を堆積する第2の段階に使用するという本発明の認識に基づき、本発明は様々な形態、例えば、前駆体のパルス導入および還元ガスの連続導入、前駆体の連続導入および還元ガスの連続導入、ならびに、不活性ガスを用いるパージ工程を介在させる場合または介在させない場合での前駆体と還元ガス両方の連続的なパルス導入において、実施することができる。したがって、第1の(核生成)段階での濃度が、膜の大部分がマイクロ電子デバイス表面上に堆積される後続の段階に使用される濃度よりも比較的低い限り、これらの個々のレジームに対して他の順列を想定することができる。さらに、当業者であれば、他よりもある特定の前駆体を選択する際に、先ずその前駆体の蒸気圧に着目し、次いで、堆積方法に利用される特定のツールとそれに付随する反応部の構成および体積を考慮した後、利用される特定の前駆体および/またはあらゆるキャリアガスの圧力、濃度、流量を調整することで、本明細書で言及される2つの段階のそれぞれで目標の前駆体濃度を達成することになる。
【0013】
第2の態様では、本発明は、反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、本方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間の後に約1~約120秒の休止を伴うパルスで繰り返し導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間のパルスで繰り返し導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させ、その後に約1~約120秒の休止を行いながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法を提供する。
【0014】
第3の態様では、本発明は、反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、本方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を連続的に導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を連続的に導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法を提供する。
【0015】
第4の態様では、本発明は、反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、本方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を約0.1~約120秒の第1のパルス持続時間にわたり繰り返し導入することによって、反応部内で約1~約5000ppmである前駆体の第1の濃度に到達させ、反応部を不活性ガスで約1~約120秒間パージし、反応部に還元ガスを約0.1~約120秒の第2のパルス持続時間にわたり導入して、不活性ガスで約1~約120秒の持続時間にわたりパージすること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を約0.1~約120秒の第1のパルス持続時間にわたり繰り返し導入することによって、反応部内で第1の濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させ、反応部を不活性ガスで約1~約120秒間パージし、反応部に還元ガスを約0.1~約120秒の第2のパルス持続時間にわたり導入して、不活性ガスで約1~約120秒の持続時間にわたりパージすること
を含む方法を提供する。
【0016】
本発明の第1~第4の態様では、種々の代替的な実施形態が想定される。一実施形態では、核生成(すなわち、第1の)段階での前駆体の濃度は、約1~約5000ppm、約10~約2000ppm、または約20~約500ppmである。
【0017】
別の実施形態では、第1の前駆体濃度は、第2の前駆体濃度の約10~約50モル%である。
【0018】
特定の実施形態では、反応部内で維持される圧力は、約1~約1000torr、約20~約200torr、または約40~約120torrである。
【0019】
特定の実施形態では、反応部の温度は、約300~1000℃、約325~約700℃、または約350~500℃である。
【0020】
一実施形態では、表面は、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択される。特定の例として、ケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、フォトレジスト、ハードマスク、炭素、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有物、ホウ素含有物、Ga/As、多孔質無機材料、銅やアルミニウムなどの金属、および、限定されないがTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、またはWNなどの拡散バリア層が挙げられる。別の実施形態では、表面は窒化チタンである。
【0021】
別の実施形態では、モリブデンおよびタングステンの前駆体は、WCl6、WCl5、WOCl4、MoO2Cl2、MoCl5、およびMoOCl4から選択される。別の実施形態では、前駆体はMoO2Cl2である。
【0022】
別の実施形態では、前駆体のパルス導入が利用される場合、パルス「オン」時間は、約0.1秒~約120秒、約0.5秒~約60秒、または約0.5秒~約3秒である。パルス休止(すなわち、「オフ」時間)は、約1秒~約120秒、約20秒~約60秒、または約15秒~約40秒とすることができる。
【0023】
上記第2の態様の例として、MoO2Cl2を前駆体として利用してモリブデン含有膜を堆積する場合、これら所定レベルの前駆体濃度は、所定量の前駆体をアンプルに入れ、アンプルを所定の温度に加熱することでヘッドスペースを特定の分圧の前駆体蒸気で満たした後、前駆体蒸気とキャリアガスを反応部に放出し、その後追加の前駆体の導入を休止するという工程を利用することによって、生成され得る。この第1の工程を通じて、少なくとも1つの還元ガスが反応部に連続的に導入される。また、この休止中にキャリアガスがアンプル内に流れ続け、これによりアンプル内の圧力が上昇すると同時に、さらにアンプル中の相対濃度が効果的に低下する。この第1の工程では、アンプル温度は、例えば約40~約70℃の温度に維持することができ、反応部の温度は、約300℃~約1000℃、もしくは約325℃~約700℃、または約350℃~約500℃に維持することができる。概して、このような第1の工程の例の間、方法は、反応部内の前駆体の濃度が約1ppm~約5000ppmであるように実施される。この濃度は、キャリアガスに対する前駆体蒸気の分圧として算出することができ、その後、チャンバ内で還元ガスおよび他のいずれかのガスによってさらに希釈することができる。
【0024】
この核生成層が完成、すなわち、約3Å~約25Å、約3Å~約15Å、または約3Å~約9Åになると、モリブデン含有膜のバルク堆積は、核生成工程と比較して比較的高い濃度、すなわち約1.3x~約100xの濃度で実施され得る。核生成層が第1の工程で形成されているため、バルク堆積をはるかに速やかに行うことができ、このとき、より高濃度の前駆体蒸気が利用され得る。本方法は、酸化物や窒化物の基板など、核生成の遅延を呈する傾向がある金属前駆体/基板の組合せに対して、特に都合が良い。金属含有膜のバルク堆積が行われる第2の工程では、反応部内への前駆体の導入は、本質的に連続的またはパルス的であり得る。概して、このバルク堆積の段階では、反応部内の前駆体の濃度は、前駆体が反応部に連続して流れる場合には約1.3x~約100xに維持される。前駆体を反応部内にパルス導入する場合、濃度は、前駆体が反応部内に導入される流量およびパルス持続時間に応じて、約1から約5000ppmまで変動することになる。いずれの事象でも、バルク堆積時の反応部内の前駆体の濃度は、第1の(核生成)工程に利用される濃度の約1.3x~約100x(倍)であり、先述のパルス時の列挙された濃度は、先述のパルス時に達成されるピーク濃度を反映する。
【0025】
キャリアガスの利用、およびその流量は、最終的には堆積ツールの構成、その操作規模、および利用される特定の前駆体に左右されることになる。
【0026】
連続単層での膜の最小厚さは約3Åであることが観察される。一実施形態では、堆積は、例えば約6Å、9Å、15Å、もしくは25Åのタングステンまたはモリブデン含有膜の連続核生成層を得るためにさらに厚い膜が達成されるまで継続され、これによってさらなる気相成長が可能となり、最終的には所望の厚さのタングステンまたはモリブデン含有膜が得られる。このモリブデン含有膜は、高コンフォーマルであり、一例では厚さ39Åで抵抗率が37μΩ-cmであると見出された。一実施形態では、この膜は、約10~約1000μΩ-cmの抵抗率を呈する。
【0027】
こうして、上記で言及されるバルク堆積を利用して、パルスサイクルごとに約0.2~約2Åの堆積速度で膜形成の大部分をもたらすことができる。このため、初期の段階で比較的低い濃度の前駆体に係る本発明の技術を使用することで高品質でコンフォーマルな核生成層をもたらすと同時に、バルク堆積は、パルスモードか連続モードかに関係なく、モリブデンまたはタングステン含有膜を層ごとに堆積することができ、その結果、本方法全体によって、例えば約25Å~約5ミクロンの所望の最終膜厚さがより速やかに形成され、これらはすべて、反応部において一定の比較的高い濃度で単一の金属前駆体を用いて達成することができる。
【0028】
さらに、本発明の実施において最小量のエッチングが生じることが見出された。例えば、
図4を参照されたい。核生成層が低濃度で堆積されると、基板のエッチングはわずかであり、膜は滑らかな表面形状で堆積する。核生成層が連続的で、基板がエッチングに供されない場合は、前駆体蒸気の濃度を上昇させることができる。前駆体蒸気の濃度を上昇させると、堆積速度が上昇し、かつステップカバレッジが改良され得る。
【0029】
本発明の方法では、前駆体化合物は、あらゆる好適な方法で、例えば、シングルウエハチャンバ内、マルチウエハチャンバ内、または複数のウエハを含有する炉内で、所望のマイクロ電子デバイス表面または基板と反応させられる場合もある。
【0030】
本明細書で使用される場合、「還元ガス」という用語は、水素(H2)、ジボラン(B2H6)、シラン(SiH4)、ジシラン(Si2H6)から選択されるガスを意味する。特定の場合には、アンモニア(NH3)やヒドラジン(N2H4)などの窒素含有還元ガス、メチルヒドラジン、t-ブチルヒドラジン、1,1-ジメチルヒドラジン、および1,2-ジメチルヒドラジンなどのC1~C4アルキルヒドラジンが有用であり得るが、一部の条件下では、純粋な金属膜の代わりにMoまたはW窒化物膜が得られる。同様に、特定の場合には、アルカン、アルケン、およびアルキンなどの炭素含有還元ガスが有用であり得るが、一部の条件下では、純粋な金属膜の代わりにMoまたはW炭化物膜が得られることになる。一実施形態では、還元ガスは水素である。
【0031】
本明細書に開示される方法は、金属前駆体の導入と、還元ガスならびにキャリアガスの導入との間における任意選択の工程として、1つまたは複数のパージガスを必要とする場合がある。パージガスまたはキャリアガスは、未消費の反応物および/もしくは反応副産物をパージによって除去するか、または金属前駆体および還元ガスに対する希釈剤およびキャリアとして機能するように使用されるものであり、前駆体と反応しない不活性ガスである。例示的なガスには、アルゴン、窒素、ヘリウム、ネオン、およびそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、Arなどのパージガスを約10~約10000sccmの範囲の流量で約0.1~1000秒間にわたり反応器内に供給し、それによって反応器内に残留し得る未反応材料およびあらゆる副産物をパージする。その他には、かかる不活性ガスをキャリアガスとして利用することで、本明細書で使用されるモリブデンもしくはタングステンの前駆体、および/または還元ガスの濃度を変動させてもよい。
【0032】
本明細書で使用される場合、「マイクロ電子デバイス」という用語は、マイクロエレクトロニクス、集積回路、またはコンピュータチップの用途で使用するために製造された、3D NAND構造体、論理デバイス、DRAM、パワーデバイス、フラットパネルディスプレイ、および微小電気機械システム(MEMS)を含む半導体基板に相当する。「マイクロ電子デバイス」という用語は、あらゆる形で限定することを意図したものではなく、n型チャネル金属酸化物半導体(nMOS)および/またはp型チャネル金属酸化物半導体(pMOS)のトランジスタを備えるとともに最終的にはマイクロ電子デバイスまたはマイクロ電子アセンブリになる、あらゆる基板を含むことを理解されたい。さらに、基礎をなす基板はシリコンである必要はなく、ガラスやサファイアなどの絶縁体、SiCやGaNなどの高バンドギャップ半導体、または、電気回路の製造に有用な他の材料とすることができる。このようなマイクロ電子デバイスは、例えばケイ素、SiO2、Si3N4、OSG、FSG、炭化ケイ素、水素化炭化ケイ素、窒化ケイ素、水素化窒化ケイ素、炭窒化ケイ素、水素化炭窒化ケイ素、窒化ホウ素、反射防止膜、フォトレジスト、ゲルマニウム、ゲルマニウム含有物、ホウ素含有物、Ga/As、可撓性基板、多孔質無機材料、銅やアルミニウムなどの金属、および、限定されないがTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、またはWNなどの拡散バリア層から選択可能な、少なくとも1つの基板を含有する。この膜は、例えば、化学機械平坦化(CMP)や異方性エッチング方法など様々な後続の処理工程に適合する。
【実施例】
【0033】
以下の実施例では、厚さの値は、蛍光X線によって測定された質量換算厚さを指す。この測定技法により、基板上の単位面積当たりのMo原子数が高精度で測定される。この測定値を、膜の厚さが均一なモデルを用いて質量換算厚さに変換するために、約10.28g/cm3であるMo金属の理論密度を使用する。核生成が不十分であり粗度の高い膜は、一部の領域ではかなり厚いが、一部の領域では厚さがない(ベア基板)可能性もあることを理解されたい。
【0034】
実施例1
化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、450℃のTiN基板温度で利用した。アンプル温度は40℃、キャリアガス流量は25sccm、H
2は500sccmであり、これにより80Torrの圧力で70ppmの濃度を得た。24分後、Moはほとんど堆積されず(質量換算厚さ1.6Å)、薄いMo膜では抵抗率を測定することができなかった。
図1を参照されたい。
【0035】
実施例2
化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、400℃のTiN基板温度で利用した。アンプル温度は60℃、キャリアガス流量は50sccm、H
2は4000sccmであり、これにより80Torrの圧力で20ppmの濃度を得た。10分後、核生成部位が単離された不連続な9.9Å膜が生じ、堆積されたが、抵抗率は測定不能であった。
図2を参照されたい。
【0036】
実施例3
パルス化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、390℃のTiN基板温度で利用した。アンプル温度は40℃、キャリアガス流量は20sccm、H
2は1000sccmであり、これにより80Torrの圧力で22ppmの濃度を得た。20回のサイクル後、滑らかな9.4ÅのMo膜が生じ、低効率は222μΩ-cmであった。
図3を参照されたい。本実施例では、パルス時間「オン」対パルス時間「オフ」、および経時的に生じる希釈に起因して、パルスレジームでの濃度は全体的に低いことが例示される。このため、表面にて到達する濃度は、必ずしも表面に残存することで経時的に還元ガスと反応する濃度ではない。したがって、経時的な表面での前駆体の有効濃度は、(連続)CVDレジームと比べてパルスCVDレジームの方が低い。
【0037】
実施例4
パルス化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、400℃のSiN基板温度で利用した。アンプル温度は40℃、キャリアガス流量は20sccm、H
2は1000sccmであり、これにより80Torrの圧力で22ppmの濃度を得た。200回のサイクル後、ビア構造体上に125.3Åの膜。良好なMo膜が生じ、AFM RMS粗度は0.684nmであった。
図4を参照されたい。
【0038】
実施例5
化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、390℃のPVD Mo基板温度で利用した。アンプル温度は40℃、キャリアガス流量は20sccm、H
2は1000sccmであり、これにより80Torrの圧力で30ppmの濃度を得た。20分後、104.4ÅのMo膜を100ÅのPVD Mo基板に添加した。CVD Mo膜の抵抗率は17μΩ-cmであった。390℃の基板温度でPVD Mo上でのCVD Moの高堆積速度を示す、良好なMo膜が生じた。
図5を参照されたい。
【0039】
実施例6
化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、450℃のTiN基板温度で利用した。アンプル温度は40℃、キャリアガス流量は25sccm、H
2は1000sccmであり、これにより80Torrの圧力で37ppmの濃度を得た。20分後、101.9Åの膜が堆積され、抵抗率は34.4μΩ-cmであった。前駆体濃度が実施例1と比較して2倍低下した場合、粗いCVD Mo膜を450℃の基板温度でTiN上に堆積することができた。
図6を参照されたい。
【0040】
実施例7
2工程の化学蒸着法をMoO
2Cl
2とともに、390℃のTiN Mo基板温度で利用した。アンプル温度は40℃、キャリアガス流量は20sccm、H
2は1000sccm、圧力は80Torrであった。1つの実験で、第1の工程は、22ppmの濃度でのパルスCVD核生成工程を45回行うサイクルであり、厚さ23.5ÅのMo層をTiN基板上に堆積させた。第2の実験では、第1の工程を上記条件に従い45回のサイクルで行った。その直後、第2の工程では、30ppmの高濃度を用いることを除き、第1の工程と同じ条件を使用するCVD法を利用した。20分後、Mo膜の総厚さは108Åであり、ρ=17.7μΩ-cmであった。TiN基板上に良好なMo膜が生じ、低効率と粗度はPVD Mo基板上に直接堆積されたCVD Mo膜のものと同等であった。この抵抗率は、実施例6の低濃度の核生成層なしで堆積されたMo膜の抵抗率の半分である。
図7を参照されたい(「B部」に関して)。
【0041】
20sccmでのパルスCVD核生成、10分のCVDバルク堆積(Mo)、T
sub=390℃(基板温度)、およびH
2=1000sccmを用いて、以下の比較例を生成した。
このデータから確認できるように、堆積の核生成段階は、堆積速度の約3~5.6Åの増加により示されるように、約10~25Åの間で停止する。
【0042】
以下の表は、異なる厚さのMo核生成層、核生成層なしのMo堆積、および非常に厚い核生成層を比較する、AFM粗度のデータを提供する。核生成層の厚さの変動は、最終のMo膜の粗度にほとんど影響しないが、バルクMo堆積速度に対する影響は大きい。
【0043】
態様
第1の態様では、モリブデンまたはタングステン含有膜を表面上に蒸着するための方法であって、約3Å~約25Åの厚さを有する膜が表面上に堆積されるまで、表面を含む反応部に第1の前駆体および還元ガスを導入することと、所望の厚さを有する膜の堆積が達成されるまで、反応部に第2の前駆体および還元ガスを導入することであって、第1の前駆体濃度が、反応部内で第2の前駆体濃度に対して約1~約75パーセントであり、第1の前駆体および第2の前駆体がともに同じ前駆体、または異なる前駆体であり得る、第2の前駆体および還元ガスを導入することとを含む方法。
【0044】
第2の態様では、本発明は、第1の前駆体濃度が、第2の前駆体濃度の約10~約50パーセントである、第1の態様の方法を提供する。
【0045】
第3の態様では、本発明は、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択される、第1または第2の態様の方法を提供する。
【0046】
第4の態様では、本発明は、反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、本方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間の後に約1~約120秒の休止を伴うパルスで繰り返し導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間のパルスで繰り返し導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させ、その後に約1~約120秒の休止を行いながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法を提供する。
【0047】
第5の態様では、本発明は、前駆体が、WCl6、WCl5、WOCl4、MoO2Cl2、MoCl5、およびMoOCl4から選択される、第4の態様の方法を提供する。
【0048】
第6の態様では、本発明は、前駆体がMoO2Cl2である、第4または第5の態様の方法を提供する。
【0049】
第7の態様では、本発明は、反応部内の圧力が約20~約200Torrである、第4、第5、または第6の態様の方法を提供する。
【0050】
第8の態様では、本発明は、前駆体の第1の濃度が約20~約500ppmである、第4~第7の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0051】
第9の態様では、本発明は、反応部内の温度が約350~500℃である、第4~第8の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0052】
第10の態様では、本発明は、反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、本方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を連続的に導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を連続的に導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法を提供する。
【0053】
第11の態様では、本発明は、前駆体が、WCl6、WCl5、WOCl4、MoO2Cl2、MoCl5、およびMoOCl4から選択される、第10の態様の方法を提供する。
【0054】
第12の態様では、本発明は、前駆体がMoO2Cl2である、第10または第11の態様の方法を提供する。
【0055】
第13の態様では、本発明は、反応部内の圧力が約20~約200Torrである、第10~第12の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0056】
第14の態様では、本発明は、前駆体の第1の濃度が約20~約500ppmである、第10~第13の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0057】
第15の態様では、本発明は、反応部内の温度が約350~500℃である、第10~第14の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0058】
第16の態様では、本発明は、反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、本方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を約0.1~約120秒の第1のパルス持続時間にわたり繰り返し導入することによって、反応部内で約1~約5000ppmである前駆体の第1の濃度に到達させ、反応部を不活性ガスで約1~約120秒間パージし、反応部に還元ガスを約0.1~約120秒の第2のパルス持続時間にわたり導入して、不活性ガスで約1~約120秒の持続時間にわたりパージすること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を約0.1~約120秒の第1のパルス持続時間にわたり繰り返し導入することによって、反応部内で第1の濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させ、反応部を不活性ガスで約1~約120秒間パージし、反応部に還元ガスを約0.1~約120秒の第2のパルス持続時間にわたり導入して、不活性ガスで約1~約120秒の持続時間にわたりパージすること
を含む方法を提供する。
【0059】
第17の態様では、本発明は、前駆体が、WCl6、WCl5、WOCl4、MoO2Cl2、MoCl5、およびMoOCl4から選択される、第16の態様の方法を提供する。
【0060】
第18の態様では、本発明は、前駆体がMoO2Cl2である、第16または第17の態様の方法を提供する。
【0061】
第19の態様では、本発明は、反応部内の圧力が約20~約200Torrである、第16~第18の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0062】
第20の態様では、本発明は、前駆体の第1の濃度が約20~約500ppmである、第16~第19の態様のうちいずれか1つの方法を提供する。
【0063】
第21の態様では、本発明は、反応部内の温度が約350~500℃である、第20の態様の方法を提供する。
【0064】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態が記述されてきたが、当業者であれば、さらに他の実施形態が添付の特許請求の範囲内で作製かつ使用され得ることを容易に認識するであろう。本明細書によって網羅される本開示の多数の利点は、前述の記載に明記されている。しかし、本開示は多くの点で例示的なものにすぎないことが理解されるであろう。当然ながら本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲が表現される言語で定められる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モリブデンまたはタングステン含有膜を表面上に蒸着するための方法であって、
約3Å~約25Åの厚さを有する膜が表面上に堆積されるまで、表面を含む反応部に第1の前駆体および還元ガスを導入することと、
所望の厚さを有する膜の堆積が達成されるまで、反応部に第2の前駆体および還元ガスを導入することであって、第1の前駆体濃度が、反応部内で第2の前駆体濃度に対して約1~約75パーセントであり、第1の前駆体および第2の前駆体がともに同じ前駆体、または異なる前駆体であり得る、第2の前駆体および還元ガスを導入することと
を含
み、
第1の前駆体が、反応部に導入される前にアンプルに入れられ、アンプルが約40~約70℃の温度に維持される、方法。
【請求項2】
第1の前駆体濃度が、第2の前駆体濃度の約10~約50パーセントである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間の後に約1~約120秒の休止を伴うパルスで繰り返し導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を、約0.1~約120秒の持続時間のパルスで繰り返し導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させ、その後に約1~約120秒の休止を行いながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法。
【請求項4】
前駆体が、WCl
6、WCl
5、WOCl
4、MoO
2Cl
2、MoCl
5、およびMoOCl
4から選択される、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
反応部内でマイクロ電子デバイスの表面上にモリブデンまたはタングステン含有膜を蒸着するための方法であって、反応部が約1~約1000Torrの圧力および約300℃~約1000℃の温度で操作され、表面が、窒化物、酸化物、金属、半導体、および超伝導体から選択され、方法が、
a.約3Å~約25Åの厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部に、モリブデンまたはタングステンの前駆体であって、反応部内で第1の濃度がそのピーク時に約1~約5000ppmである前駆体を連続的に導入しながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること、および
b.所望の厚さを有する膜が堆積されるまで、表面を含む反応部にモリブデンまたはタングステンの前駆体を連続的に導入することによって、反応部内で第1の前駆体濃度の約1.3~約100倍である第2の前駆体濃度に到達させながら、反応部に還元ガスを連続的に導入すること
を含む方法。
【国際調査報告】