(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】レーザーマーキング及びレーザー溶接された成形体及びそれらの製造
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20240521BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240521BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20240521BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240521BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240521BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240521BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20240521BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B32B27/18 A
B32B27/20 Z
B32B9/00 A
C08L101/00
C08K3/22
C08L67/00
C08L77/00
C08K7/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023570111
(86)(22)【出願日】2022-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-12-11
(86)【国際出願番号】 EP2022062050
(87)【国際公開番号】W WO2022238213
(87)【国際公開日】2022-11-17
(32)【優先日】2021-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ペーター アイベック
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F100AA21A
4F100AG00A
4F100AH02A
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4F100AT00A
4F100AT00B
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4J002BB031
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(57)【要約】
本発明は、少なくとも第1成形部品と第2成形部品とを含む成形体に関するものであって、前記第1成形部品は少なくとも部分的に、NIR放射に対して透過性であり、前記第2成形部品は、前記第1成形部品と前記第2成形部品とがレーザー透過溶接により少なくとも部分的に互いに接合されるように、NIR放射を吸収し、前記第1成形部品は、濃色に着色されている少なくとも1つの部分領域を有し、かつ前記部分領域の少なくとも一部分は、淡色のレーザーマーキング部を有し、前記第1成形部品は、少なくとも部分的に成形材料からなり、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、A)熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物を38.2重量%超~99.98重量%、B)0.5nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する二酸化チタン粒子を0.01重量%~0.8重量%未満、C)前記第1成形部品のNIR放射の部分的な透過を可能にする、NIR領域における吸収を有する1種以上の可溶性染料を0.01重量%~1.0重量%、及びD)さらなる添加物を0~60重量%含有する。さらに、本発明は、前記成形体を製造する方法並びに成形体を製造する際のレーザーマーキング部を有する成形部品としての成形材料の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1成形部品と第2成形部品とを含む成形体であって、前記第1成形部品は少なくとも部分的に、NIR放射に対して透過性であり、前記第2成形部品は、前記第1成形部品と前記第2成形部品とがレーザー透過溶接により少なくとも部分的に互いに接合されるように、NIR放射を吸収し、前記第1成形部品は、濃色に着色されている少なくとも1つの部分領域を有し、かつ前記部分領域の少なくとも一部分は、淡色のレーザーマーキング部を有し、前記第1成形部品は、少なくとも部分的に成形材料からなり、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、
A)熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物 38.2重量%超~99.98重量%、
B)0.5nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する二酸化チタン粒子 0.01重量%~0.8重量%未満、
C)前記第1成形部品のNIR放射の部分的な透過を可能にする、NIR領域における吸収を有する、1種以上の可溶性染料 0.01重量%~1.0重量%及び
D)さらなる添加物 0~60重量%
を含有する、前記成形体。
【請求項2】
前記成形材料が、43.8重量%~89.96重量%のA)、0.02重量%~0.65重量%のB、0.02重量%~0.55重量%のC、及び10重量%~55重量%のDを含有することを特徴とする、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記成形材料が、44.1重量%~89.9重量%のA)、0.05重量%~0.35重量%のB、0.05重量%~0.55重量%のC、及び10重量%~55重量%のDを含有することを特徴とする、請求項1に記載の成形体。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエステル又はポリアミド、好ましくはポリエステル、又は複数のこれらの熱可塑性ポリマーの混合物であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項5】
前記熱可塑性ポリマーが、PBTであるか、又はA)の全重量を基準としてPBTを少なくとも45重量%有する熱可塑性ポリマーの混合物であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項6】
前記二酸化チタン粒子が、5nm~25nm、好ましくは10nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項7】
添加物Dとして、前記成形材料の全重量を基準として10重量%~50重量%のガラス繊維が含まれていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項8】
添加物Dとして、前記成形材料の全重量を基準として1重量%~5重量%の加水分解安定剤が含まれていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項9】
淡色のレーザーマーキング部を有する前記第1成形部品の部分領域が、多くとも50cd/m
2、好ましくは多くとも30cd/m
2の背景輝度を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項10】
淡色のレーザーマーキング部を有する前記第1成形部品の部分領域の背景輝度と前記レーザーマーキング部の輝度とのコントラスト値が、少なくとも80%であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項11】
前記NIR放射が、800nm~1200nmの波長範囲内であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項12】
前記第1成形部品が少なくとも部分的に、少なくとも10%のNIR放射に対する透過率を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の成形体。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の成形体を製造する方法であって、
a)前記第1成形部品を前記第2成形部品と、NIR領域におけるレーザー透過溶接によって接合する工程;
b)前記第1成形部品を、レーザーマーキングによってマーキングする工程、ここで、工程b)は、工程a)の前又は後に、好ましくは工程a)の後に行われる、
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記レーザーマーキングが、UV/VIS領域におけるレーザー光で行われることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
成形体を製造する際のレーザーマーキング部を有する成形部品としての、請求項1から12までのいずれかに記載されたような、成形材料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも第1成形部品と第2成形部品とを含む成形体に関するものであって、前記第1成形部品は少なくとも部分的に、NIR放射に対して透過性であり、前記第2成形部品は、前記第1成形部品と前記第2成形部品とがレーザー透過溶接により少なくとも部分的に互いに接合されるように、NIR放射を吸収し、前記第1成形部品は、濃色に着色されている少なくとも1つの部分領域を有し、かつ前記部分領域の少なくとも一部分は、淡色のレーザーマーキング部を有し、前記第1成形部品は、少なくとも部分的に成形材料からなり、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、A)熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物を38.2重量%超~99.98重量%、B)0.5nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する二酸化チタン粒子を0.01重量%~0.8重量%未満、C)前記第1成形部品のNIR放射の部分的な透過を可能にする、NIR領域における吸収を有する1種以上の可溶性染料を0.01重量%~1.0重量%、及びD)さらなる添加物を0~60重量%含有する。さらに、本発明は、前記成形体を製造する方法並びに成形体を製造する際のレーザーマーキング部を有する成形部品としての成形材料の使用に関する。
【0002】
例えば、自動車分野におけるカバー、電気機器、飾り縁又は外被覆として利用されるプラスチック成形体はそれ自体がしばしば、互いに永久的に接合されなければならない、異なる成形部品からなる。
【0003】
プラスチック成形部品の溶接には、多様な方法が存在する(Kunststoffe 87, (1997), 11, 1632 - 1640)。成形部品を永久接合するためにしばしば使用される方法として、レーザー溶接もしくはレーザー透過溶接が当てはまる。該レーザー透過溶接の使用のための前提条件は、レーザーにより放出された放射が最初に、使用される波長のレーザー光に対して十分な透明度を有する第1成形部品を透過し、ついで例えば薄層中の、該第1成形部品と接触する第2成形部品により吸収されることである。このようにして溶融された接触領域は、ついで凝固するので、前記の双方の被着材、すなわち第1成形部品及び第2成形部品の永久接合が可能になる。通常、この際に、近IR(NIR)領域において発光するレーザーが使用される。それに応じて、該第1成形部品は、「NIRに対して透明な被着材」と、かつ該第2成形部品は、「NIR吸収性の被着材」と呼ばれることもある。
【0004】
さらに、成形部品をレーザーによってマーキングする可能性がある。この際に、例えば、同様にレーザー溶接によって該成形部品の接合をもたらす被着材をマーキングすることができる。この際に、該成形部品の色に応じて、該レーザーマーキングによるコントラストの生成のためには、反対色の外観が生成されなければならない。しばしば、該溶接をもたらす成形部品は、熱発生のためのNIR放射の吸収を保証するために、濃色に着色されている。その場合に、レーザーマーキングによって淡色の文字が生成されなければならない。しばしば、このためにはNIRレーザー放射も使用される(例えば1064nm)が、可視領域(例えば532nm)又はUV領域(例えば355nm)において作業するマーキングレーザーも普及している。
【0005】
しかしながら、前記の「NIRに対して透明な」被着材が、濃色に着色されており、それにもかかわらず、一方では(淡色の)レーザーマーキング部を有し、かつ他方ではさらなる被着材と溶接される場合に、満足のいく解決手段は従来技術に開示されていない。
【0006】
国際公開第2020/118059号(WO 2020/118059 A1)には、2種の可溶性アントラキノン染料並びに二酸化チタンを含むポリエステル成形材料が記載されている。その特許の課題は、感光性物品用の包装を製造することができる成形材料を提供することである。その目的は、少ない壁厚(0.5mm)ですでに、UV-VIS領域(190~750nm)における光の透過率ができるだけ低い(1%未満)ことである。850nmでのNIR領域において、依然として極めて低い透過率値(2.5%)が見出された。該二酸化チタンの一次粒子サイズについては記載されていない。レーザー透過溶接プロセスにおけるNIRに対して透明な成分としての該成形材料の使用は開示されておらず、レーザーマーキング性についても、この特許に記載されていない。
【0007】
中国特許出願公開第107163515号明細書(CN107163515 A)には、レーザー透過溶接により互いに接合されることができる、淡色に着色された又は無色のポリエステル成形材料が記載されている。その吸収性の被着材は、その際に、わずかな固有色を有するNIR吸収剤を含む。NIRに対する透明度が高められたNIRに対して透明な被着材が提供されるべきである。前記のNIRに対する透明度の増加は、表面改質された二酸化チタン粒子及び/又は酸化亜鉛粒子の添加により並びに低分子量アルコールを用いて達成される。該酸化物粒子は、その際に、30~400nmのサイズを有する。レーザーマーキング性については、この特許に記載されていない。
【0008】
国際公開第2006/042623号(WO 2006/042623 A1)には、「レーザー散乱性吸収剤」又は「レーザー散乱性添加剤」が添加されていてよい、NIRに対して透明な成形材料が記載されている。レーザー散乱性添加剤として、TiO2、CaCO3、MgCO3及びガラスビーズが挙げられる。実施例において、レーザー散乱性吸収剤の添加は、透明な被着材において高められた吸収をもたらし、それに伴いより低い透過率を有する。
【0009】
国際公開第2009/066232号(WO 2009/066232 A1)には、レーザー溶接プロセスにおいて使用することができる、NIR吸収性の成形材料が記載されている。多様な顔料が、とりわけ30nm~4.35μmの平均粒子サイズを有するTiO2顔料も、プラスチックの場合のNIR透過率を低下させるために使用される。レーザーに対して透明な成形材料は、特に記載されていない。
【0010】
したがって、成形体、NIRに対して透明な成形部品及びそのようなNIRに対して透明な成形部品用の成形材料及び対応する方法への需要があり、これらの場合に、その「NIRに対して透明な」被着材が濃色に着色されており、それにもかかわらず、一方ではレーザーマーキング部を有することができ、かつ他方ではさらなる被着材と溶接することができる。
【0011】
そのため、本発明の課題は、そのような成形体、NIRに対して透明な成形部品及びそのようなNIRに対して透明な成形部品用の成形材料を提供することにある。
【0012】
前記課題は、少なくとも第1成形部品と第2成形部品とを含む成形体であって、前記第1成形部品は少なくとも部分的に、NIR放射に対して透過性であり、前記第2成形部品は、前記第1成形部品と前記第2成形部品とが、レーザー透過溶接により少なくとも部分的に互いに接合されているように、NIR放射を吸収し、前記第1成形部品は、濃色に着色されている少なくとも1つの部分領域を有し、かつ前記部分領域の少なくとも一部分は、淡色のレーザーマーキング部を有し、前記第1成形部品は、少なくとも部分的に成形材料からなり、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、
A)熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物 38.2重量%超~99.98重量%、
B)0.5nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する二酸化チタン粒子 0.01重量%~0.8重量%未満、
C)前記第1成形部品のNIR放射の部分的な透過を可能にする、NIR領域における吸収を有する1種以上の可溶性染料 0.01重量%~1.0重量%、及び
D)さらなる添加物 0~60重量%
を含有する、成形体により解決される。
【0013】
前記課題は、
a)前記第1成形部品を前記第2成形部品と、NIR領域におけるレーザー透過溶接によって接合する工程;
b)前記第1成形部品を、殊にUV/VIS領域におけるレーザーマーキングによってマーキングする工程、ここで、工程b)は、工程a)の前又は後、好ましくは工程a)の後に行われる、
を含む、本発明による成形体の製造する方法により、さらに解決される。
【0014】
前記課題は、成形体を製造する際のレーザーマーキング部を有する成形部品としての本明細書に記載される成形材料の使用により、さらに解決される。
【0015】
特定の一次粒子サイズの二酸化チタン粒子と可溶性染料とを含有する成形材料の使用により、濃色に着色されており、レーザーマーキング可能であり、かつ溶接可能である、NIRに対して透明な被着材を提供することが可能であることが驚くべきことに見出された。
【0016】
本発明による成形体は、少なくとも第1成形部品と第2成形部品とを含む。前記成形体自体は、多種多様な形を取ることができ、かつ相応して多岐にわたって使用することができる。前記成形体は、フィラメントの場合に当てはまるように、本質的に一次元に広がっていてよい。フィルムの場合に存在するように、本質的に二次元の広がりも可能である。しかしながら、典型的には、前記成形体は三次元物体、殊に例えば自動車分野におけるカバー、電気機器、飾り縁又は外被覆として使用することができる構成部品である。
【0017】
本発明による成形体は、前記の双方の(第1及び第2成形部品)成形部品(被着材)のみからなっていてよいか又はさらなる成形部品を有していてよい。これは、殊に使用目的に依存している。
【0018】
前記の第1被着材及び第2被着材は、互いに接合されており、ここで、その結合はレーザー透過溶接法を用いて生成されている。双方の被着材は、完全に互いに溶接されている必要はない。それに応じて、これらは部分的に溶接されているだけで十分である。溶接される領域は、この際に、点状(溶接点)、線状(溶接継目)又は二次元(溶接面)であってよい。
【0019】
該レーザー透過溶接(レーザービーム溶接又は略してレーザー溶接とも呼ばれる)は、従来技術において公知である。該レーザー透過溶接の場合に、殊に、NIR領域におけるレーザー光を用いる。レーザー透過溶接の基本的な原理は、技術文献に記載されている(例えばKunststoffe 87, (1997) 3, 348 - 350;Kunststoffe 88, (1998), 2, 210 - 212;Kunststoffe 87 (1997) 11, 1632 - 1640;Plastverarbeiter 50 (1999) 4, 18 - 19;Plastverarbeiter 46 (1995) 9, 42 -46参照)。
【0020】
該レーザービーム溶接の使用のための前提条件は、レーザーにより放出される放射が最初に、使用されるNIR波長のレーザー光に対して十分に透明である成形部品を透過することである(NIRに対して透明な成形部品とも呼ばれる)。好ましくは、該波長は、800nm~1200nmの範囲内である。
【0021】
十分な透明度は、前記第1成形部品がNIR放射に対して少なくとも部分的に透過性である場合に与えられている。このことは、該NIR放射が、レーザー溶接を可能にするのに十分な程度で前記第2成形部品に衝突することを引き起こす。好ましくは、前記第1成形部品は少なくとも部分的に、NIR放射に対して少なくとも10%の透過率を有する。この際に、「少なくとも部分的に」は、記載された透過率が少なくとも、溶接領域に対応する領域内で得られることを意味する。この溶接領域の外側では、記載された少なくとも10%の透過率は不要である。しかしながら好ましくは、前記第1成形部品全体は、少なくとも10%の透過率を有する。
【0022】
前記第1成形部品を透過するNIR放射は最終的に、これが前記のNIRに対して透明な成形部品と接触する第2成形部品の薄層中で吸収される溶接領域に衝突する(NIR吸収性の成形部品)。前記のNIRレーザー光を吸収する薄層中で、該レーザーエネルギーは、熱へ変換され、これが該溶接領域における溶融及び最終的に前記のNIRに対して透明な成形部品と前記のNIR吸収性の成形部品との接合をもたらす。
【0023】
該レーザー透過溶接のためには、通常800~1200nmの波長範囲内のレーザーが使用される。該熱可塑性プラスチック溶接に使用されるレーザーの波長の範囲内で、Nd:YAG-レーザー(1064nm)又は高出力ダイオードレーザー(800~1000nm)が普通である。
【0024】
すべて透過原理に基づく複数のレーザー溶接法の変法が利用可能である。例えば、輪郭溶接は、レーザービームが、自由にプログラミング可能な継目輪郭に沿って導かれるか又は構成部品が、固定設置されたレーザーに対して相対運動されるかのいずれかによる、順次の溶接方法である。同時溶接では、個々の高出力ダイオードの線状に放出される放射は、溶接されうる継目輪郭に沿って配置される。そのため、該輪郭全体の溶融及び溶接は同時に行われる。準同時溶接は、輪郭溶接及び同時溶接の組合せである。レーザービームは、ガルバノミラー(スキャナ)を用いて10m/s以上の極めて高い速度で該溶接継目輪郭に沿って導かれる。前記の高い速度により、その接合領域は、徐々に加熱及び溶融される。同時溶接に比べて、溶接継目輪郭を変更する際に高いフレキシビリティーがある。マスク溶接は、線状のレーザービームが、接合されうる部品を横切って運動される方法である。マスクにより、該放射は、意図的に遮られ、かつ溶接される場所でのみ、その接合面に衝突する。該方法は、極めて正確に位置決めされた溶接継目の製造を可能にする。これらの方法は、当業者に公知であり、かつ例えば、“Handbuch Kunststoff-Verbindungstechnik”(G. W. Ehrenstein, Hanser, ISBN 3-446-22668-0)及び/又はDVS-Richtlinie 2243 “Laserstrahlschweissen thermoplastischer Kunststoffe”に記載されている。
【0025】
前記の異なる熱可塑性プラスチックのNIRに対する透明度が、結果として異なる可能性がある場合でも、慣用の熱可塑性プラスチックはNIR領域において、十分に高い透明度を有するので、好適なプロセスパラメーターが選択される場合(前記のNIRに対して透明な被着材の厚さ、該レーザービームの強度、該溶接方法の速度等)に、レーザー溶接プロセスが実施できる。
【0026】
該熱可塑性プラスチックの低いNIR吸収に基づき、該レーザー光を吸収する被着材は、通常、NIR吸収性の添加物を備える。それには、該溶接レーザーの波長範囲においてできるだけ高い吸収を有する顔料が殊に適している。特に適しており、かつ広く普及しているのは、NIR吸収性顔料としてあらゆる種類のカーボンブラックの利用である。したがって、前記のNIR吸収性の被着材はしばしば、濃色ないし黒色に着色されている。
【0027】
前記のNIRに対して透明な被着材が、NIR吸収性の被着材と類似の色を有する場合には、前記のNIRに対して透明な被着材の着色がとりわけ、ヒトの目に知覚できる波長範囲において行われ(約380~750nm)、かつNIR透過率ができるだけ損なわれないことに注意する必要がある。
【0028】
プラスチックの着色には、原則的に2種類の着色剤が利用可能である:顔料及び可溶性染料(一部には単純に「染料」と記載される)である。顔料での前記のNIRに対して透明な被着材の着色は、本発明の対象ではない、それというのも、慣用の顔料は、NIR光を散乱させ、ひいはNIR透過率を低下させ、かつ該レーザー溶接プロセスに不都合である、0.5~4μmの範囲内の平均粒子サイズを有するからである。カーボンブラックは、該NIR透過率に特に不都合な作用を及ぼす、それというのも、これらはごく少量でさえも該NIR透過率を吸収により著しく低下させるからである。
【0029】
着色剤でのNIR光の散乱は、可溶性染料が使用される場合に、大幅に回避することができる、それというのも、これらは、該熱可塑性プラスチック中に分子分散する程度まで分配することができ、ひいてはNIR光に対する散乱源ではないからである。さらに、該可溶性染料のNIR吸収はできるだけ少ないべきである。
【0030】
本発明の範囲内で、本発明による成形体は、少なくとも前記第1成形部品と前記第2成形部品とを有する。すでに上記で説明したように、前記第1成形部品は少なくとも部分的に、レーザー溶接を可能にするために、NIR放射に対して透過性である。前記第2成形部品は、前記第1成形部品と前記第2成形部品とがレーザー透過溶接により少なくとも部分的に互いに接合されるように、NIR放射を吸収する。NIR放射に対して必要な吸収能力は、例えば、顔料、例えばカーボンブラックの添加により、行われることができる。
【0031】
前記第1成形部品は、そのうえ、濃色に着色されている少なくとも1つの部分領域を有し、かつ前記部分領域の少なくとも一部分は、淡色のレーザーマーキング部を有する。ここで、用語「濃色」及び「淡色」は、前記レーザーマーキング部と、前記マーキング部を有する前記第1成形部品の部分領域との区別が可能であり、前記マーキング部がより淡色であることを意味する。前記第1成形部品は、完全に濃色に着色されている必要はなく、前記マーキング部を有する部分領域のみで十分である。この部分領域は、通常、完全に文字により覆われるのではなく、前記部分領域の一部分が占有される。本発明の範囲内で、前記の濃色に着色された部分領域が、これが、前記レーザー溶接を可能にするためにNIR放射により透過可能であり、かつ他方ではレーザーマーキングに利用されるように選択されていることは自明である。
【0032】
前記第1成形部品全体が濃色に着色されていることは不要であるにもかかわらず、好ましい。好ましくは、淡色のレーザーマーキング部を有する前記第1成形部品の部分領域は、多くとも50cd/m2、好ましくは多くとも30cd/m2の背景輝度を有する。さらに好ましくは、淡色のレーザーマーキング部を有する前記第1成形部品の部分領域の背景輝度と、前記レーザーマーキング部の輝度とのコントラスト値は、少なくとも80%である。
【0033】
本発明の範囲内で、用語「レーザーマーキング」は、より狭義での文字でのマーキングを意味するのではなく、むしろ多種多様な方法での標示、例えば、文字、数、特殊文字、バーコード及びQRコード、ピクトグラム等の使用を意味する。
【0034】
プラスチック成形体のレーザーマーキング性の方法は、従来技術において公知である。該レーザーマーキングは、光学的に認識可能なマーキングをプラスチック部品上に設けるための、迅速かつ無接触の方法である。これは、ヒトが読み取り可能又は機械で読み取り可能なマーキングであってよい。機械で読み取り可能なマーキングは、例えばバーコード、QRコード又はデータマトリックスコードである。そのようなコードは、しばしば、マーキングされたプラスチック部品を特性決定する重要な情報(例えば製造者、製造日、型式番号、ロット番号等)を含ませるのに利用される。現代の製造プロセスにおいて、そのようなコードの機械的読み取りは、信頼性を伴って成功しなければならず、そのために、コードの品質を評価するための標準化された試験方法がある(例えばISO IEC 15/TR29158)。重要な規準は、その場合に、マーキングと背景との間のコントラスト(明るさの差)である。該プラスチックの着色に応じて、高いコントラスト値を達成することができる2つのマーキング事例を区別することができる:
1.プラスチックの色=淡色及び文字色=濃色(すなわちレーザーによる淡色から濃色への色変化)
2.プラスチックの色=濃色及び文字色=淡色(すなわちレーザーによる濃色から淡色への色変化)。
【0035】
淡色から濃色への色変化(本発明の範囲内ではない)は、例えば炭化により行うことができ、濃色から淡色へは、例えば脱色又は発泡により行うことができる。基礎となる機構は、技術文献、例えばKunststoffe 2006/10 p.199 - 203、Kunststoffe 2009/06 p.66 - 69又はJournal of Materials Processing Technology 1994/42 p.95 - 133に記載されている。
【0036】
商業的に入手可能なマーキング装置は、UV領域からIR領域までのレーザー光で作業する。広く普及しているのは、Nd:YAG及びNd:YVO4レーザー、並びに1064、532及び355nmのマーキング波長である。
【0037】
本発明の範囲内で、該レーザーマーキングにはUV/VIS領域内(<800nm、好ましくは100nm~780nm、殊に100nm~380nmのUV領域内)のレーザー放射が使用される場合が好ましい。
【0038】
良好なマーキングコントラスト及び均質で精細に解像されるマーキングを達成することができるように、マーキングされうるプラスチックは、該レーザーの光を少なくとも部分的に吸収しなければならない。極めて多くのプラスチックが、記載された波長の領域内で光をほとんど吸収しないので、これらは、これらの機能を引き受ける添加剤と混合されなければならない。可視領域において、これらは着色剤であってよく、それに反してUV及びNIR領域用の吸収剤は、無色に見えることもある。該吸収剤が顔料型であり、かつ該プラスチック中に溶解された形で存在しない(上記の可溶性染料とは異なる)場合が、多くの場合に有利であると判明している。あらゆる種類のカーボンブラックは、そのような顔料型の吸収剤であり、かつUVないしNIRの全範囲に好適である。
【0039】
2つのプラスチック成形体が、レーザー透過溶接により互いに接合される場合には、上記のように、該被着材の一方がNIR吸収性である。したがって、原則的に、レーザーマーキング部を、前記のNIR吸収性の被着材上に、例えば1064nmのマーキングレーザーで設けることは容易に可能である。場所が足りないか又は構成部品の幾何学的形状が不利である理由から、該レーザーマーキングをNIR吸収性の被着材上に設けないことが有利である。そうすると、本発明の範囲内でそうであるように、該レーザーマーキングをNIRに対して透明な被着材上に行うことが必要であることがある。
【0040】
前記第1成形部品は、少なくとも部分的に、成形材料からなり、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、
A)熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物 38.2重量%超~99.98重量%、
B)0.5nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する二酸化チタン粒子 0.01重量%~0.8重量%未満、
C)前記第1成形部品のNIR放射の部分的な透過を可能にする、NIR領域における吸収を有する1種以上の可溶性染料 0.01重量%~1.0重量%、及び
D)さらなる添加物 0~60重量%
を含有する。
【0041】
有利には、前記第1成形部品はもっぱら、前記成形材料から形成される。これは、前記成分A)~D)を含有する。好ましくは、これは、これらの成分からなる。この際に、前記成分D)は、必須成分として含まれておらず(0%)、好ましくは、前記成分D)は、例えば、前記成形材料の全重量を基準として少なくとも0.01重量%で含まれている。好ましくは、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、A) 43.8重量%~89.96重量%、B 0.02重量%~0.65重量%、C 0.02重量%~0.55重量%及びD 10重量%~55重量%を含有する。より好ましくは、前記成形材料は、前記成形材料の全重量を基準としてそれぞれ、A) 44.1重量%~89.9重量%、B 0.05重量%~0.35重量%、C 0.05重量%~0.55重量%及びD 10重量%~55重量%を含有する。
【0042】
成分A)として、前記成形材料は、熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーの混合物を含む。好適な熱可塑性ポリマーは、例えばポリエテン(PE)、ポリプロペン(PP)、ポリスチレン(PS)、スチレンコポリマー(SAN、ASA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及びポリアクリレートである。1種類(例えば異なる2種のPEポリマー)又は異なる種類(例えば1種のPE及び1種のPP)の2種以上のこれらのポリマーの混合物も使用することができる。
【0043】
ポリエステル
好ましくは、以下に記載されるポリエステル並びにそれらの混合物である(DIN EN ISO 1043-1による名称):
ポリブチレンテレフタレート(PBT)
ポリエチレンテレフタレート(PET)
ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)
ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)
ポリエチレンナフタレート(PEN)
ポリブチレンナフタレート(PBN)
ポリブチレンスクシネート(PBS)
ポリブチレンスクシネートアジペート(PBSA)
ポリシクロヘキシレンジメチレンシクロヘキサンジカルボキシレート(PCCE)
ポリエチレンスクシネート(PES)
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)
ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(PHB)
ポリカプロラクトン(PCL)。
【0044】
前記の名を付した構造単位に加えて、前記のそれぞれのポリマー中に、他のジオール及び/又はジカルボン酸に由来していてよい、少量のさらなる構造単位も生じていてよい。
【0045】
さらなるジオールの例は、次のものである:
1,2-エタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール及びネオペンチルグリコール又はそれらの混合物。
【0046】
さらなるジカルボン酸の例は、次のものである:
テレフタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,5-フランジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びシクロヘキサンジカルボン酸。
【0047】
好ましくは、それぞれの主成分を基準としたさらなるモノマーの割合は、20mol%未満、特に好ましくは10mol%未満である。
【0048】
主にジカルボン酸及びジオールに由来していてよい(主な)ホモポリマーに加えて、複数のジオール及び又はジカルボン酸に由来していてよい構造単位がより大量で生じるコポリマーも好ましい。
【0049】
特に好ましくは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリエチレンテレフタレート(PET)、並びにそれらの混合物である。
【0050】
PBTは、1,4-ブタンジオール(BDO)及びテレフタル酸から重縮合により製造することができ、ここで、PBTに加えてさらに水が形成される。該重縮合は、たいてい、過剰量のBDOで開始される。前記の過剰量のBDOは、ついで該水と一緒に分離除去されるので、BDO及びテレフタル酸は最後に該PBT中に再びほぼ1:1のモル比で存在する。そのプロセス条件の選択により、その平均モル質量並びにアルコール末端基及び酸末端基の比を必要に応じて調節することができる。
【0051】
たいていの市販のPBTポリマーは、酸末端基よりも多くのアルコール末端基を含有する。好ましくは、酸末端基含有率が、100mmol/kg未満、好ましくは50mmol/kg未満及び殊に40mmol/kg未満であるポリエステルである。
【0052】
該重縮合反応の進行は、通常、触媒の添加により促進される。慣用の触媒は、アルキルオルトチタネートである。これらの触媒は、大体において該ポリマー中に、一部は加水分解された形で残留する。そのため、市販のPBTポリマーにおいて、たいてい20~200ppmのチタン含有率が分析により検出することができる。150ppm未満の残留チタン含有率が好ましい。チタン系触媒の残留物は、本発明の意味で活性ではない。
【0053】
BDO及びジメチルテレフタレート(DMT)からのPBTの製造は、類似して行うことができる。PBT以外の縮合生成物として、その場合にメタノールが水の代わりに生じる。
【0054】
該PBTの粘度数は、一般に50~220cm3/g、好ましくは80~160cm3/gの範囲内である(ISO 1628に従ってフェノール/o-ジクロロベンゼン混合物(重量比1:1)中0.5重量%溶液中で25℃で測定)。
【0055】
PETの製造は、類似してエチレングリコール及びテレフタル酸又はDMTから行うことができる。PETを製造する際の重要な副反応は、エチレングリコールからジエチレングリコールへの縮合であり、これは再び、そのポリマー鎖中へ組み込まれることができるジオール化合物である。市販のPETは、それにより、たいてい、少ない割合(<5mol%)のジエチレングリコールコモノマーを含有する。しかし、必要に応じて、該PET製造の際に、その溶融挙動及び凝固挙動をそれぞれの加工方法もしくは使用事例の要件に適合させるために、さらなるコモノマーも添加される。コモノマーの例は、ジエチレングリコール、イソフタル酸及び1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0056】
ポリエステル製造のための序論は、例えば、“Kunststoff Handbuch 3/1 - Polycarbonate, Polyacetale, Polyester, Celluloseester”, L. Bottenbruch編, Carl Hanser Verlag 1992, p.12 ffに示される。PETポリマーの概要は、例えば、Nexantの市場研究“Polyethylene Terephthalate, PERP 2017-2”に示される。
【0057】
ポリアミド
例えば、米国特許第2071250、2071251、2130523、2130948、2241322、2312966、2512606及び3393210明細書に記載されたような、少なくとも5000の分子量(重量平均値)を有する半結晶性又は非晶性の樹脂が好ましい。
【0058】
これらの例は、7~13個の環員を有するラクタムに由来するポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタム及びポリラウロラクタム並びにジカルボン酸とジアミンとの反応により得られるポリアミドである。
【0059】
ジカルボン酸として、炭素原子6~12個、殊に6~10個を有するアルカンジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が使用できる。ここでは単に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が酸として挙げられる。
【0060】
ジアミンとして、炭素原子6~12個、殊に6~8個を有するアルカンジアミン並びにm-キシリレンジアミン、ジ-(4-アミノフェニル)メタン、ジ-(4-アミノ-シクロヘキシル)-メタン、2,2-ジ-(4-アミノフェニル)-プロパン、2,2-ジ-(4-アミノシクロヘキシル)-プロパン又は1,5-ジアミノ-2-メチル-ペンタンが特に好適である。
【0061】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド及びポリカプロラクタム並びに殊に5~95重量%の割合のカプロラクタム単位を有する、コポリアミド6/66(例えばBASF SEのUltramid(登録商標)C31)である。さらに好適なポリアミドは、ω-アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA 6)及びアジピン酸ジニトリルとヘキサメチレンジアミンと(PA 66)から、水の存在下でのいわゆる直接重合により、例えば独国特許出願公開第10313681号明細書(DE-A 10313681)、欧州特許出願公開1198491第明細書(EP-A 1 198491)及び欧州特許出願公開第922065号明細書(EP 922065)に記載されたように、得ることができる。
【0062】
そのうえ、例えば、高めた温度下での1,4-ジアミノブタンとアジピン酸との縮合により得ることができるポリアミドもさらに挙げられる(ポリアミド4,6)。この構造のポリアミドの製造方法は、例えば欧州特許出願公開第38094号明細書(EP-A 38 094)、欧州特許出願公開第38582号明細書(EP-A 38 582)及び欧州特許出願公開第39524号明細書(EP-A 39 524)に記載されている。
【0063】
さらに、前記のモノマーのうち2種以上の共重合により得ることができるポリアミド、又は複数のポリアミドの混合物が好適であり、ここで、その混合比は任意である。特に好ましくは、ポリアミド66と、他のポリアミド、殊にコポリアミド6/66との混合物である。
【0064】
さらに、トリアミン含有率が0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満である部分芳香族コポリアミド、例えばPA 6/6T及びPA 66/6Tが特に有利であると判明している(欧州特許出願公開第299444号明細書(EP-A 299 444)参照)。さらなる高温耐性のポリアミドは、欧州特許出願公開第1994075号明細書(EP-A 19 94 075)から公知である(PA 6T/6I/MXD6)。
【0065】
低いトリアミン含有率を有する好ましい部分芳香族コポリアミドの製造は、欧州特許出願公開第129195号明細書(EP-A 129 195)及び欧州特許出願公開第129196号明細書(EP-A 129 196)に記載された方法に従って行うことができる。
【0066】
以下の包括的でないリストは、本発明の意味で挙げられる並びにさらなるポリアミドA)及び含まれるモノマーを含む。
【0067】
AB-ポリマー:
PA 4 ピロリドン
PA 6 ε-カプロラクタム
PA 7 エナントラクタム
PA 8 カプリルラクタム
PA 9 9-アミノペラルゴン酸
PA 11 11-アミノウンデカン酸
PA 12 ラウロラクタム
AA/BB-ポリマー
PA 46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA 66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA 69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA 610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA 612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA 1212 1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 1313 1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸A
PA 6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA 9T 1,9-ノナンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m-キシリレンジアミン、アジピン酸
PA 6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA 6-3-T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA 6/6T (PA 6及びPA 6T参照)
PA 6/66 (PA 6及びPA 66参照)
PA 6/12 (PA 6及びPA 12参照)
PA 66/6/610 (PA 66、PA 6及びPA 610参照)
PA 6I/6T (PA 6I及びPA 6T参照)
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウロラクタム
PA 6I/6T/PACM 例えばPA 6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタン
PA 12/MACMI ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA 12/MACMT ラウロラクタム、ジメチルジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA-T フェニレンジアミン、テレフタル酸。
【0068】
商業的に入手可能なあらゆる種類のポリマーは、たいてい特定の粘度で提供される。本質的にそれらの粘度のみが相違するポリマーの混合は、例えば「平均」粘度が調整される場合に、いつでも行うことができる。
【0069】
好ましくは、前記熱可塑性ポリマーは、ポリエステル又はポリアミド、より好ましくはポリエステル、又は複数のこれらの熱可塑性ポリマーの混合物である。好ましいエステルは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)である。それに応じて、本発明の好ましい実施態様において、該熱可塑性ポリマーは、PBTであるか又はA)の全重量を基準としてPBTを少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも60重量%含む熱可塑性ポリマーの混合物である。
【0070】
好ましくは、前記第2成形部品も、上記の熱可塑性プラスチック又はそれらの混合物を有する。
【0071】
成分B)として、前記成形材料は、0.5nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する二酸化チタン粒子を含有する。好ましくは、該二酸化チタン粒子は、5nm~25nm、より好ましくは10nm~25nmの範囲内の平均一次粒子サイズを有する。該平均粒子サイズの決定は、例えば、DIN ISO 9276-2(2018-09)に従って行うことができる。該二酸化チタン粒子は、コーティングされていてよいか又は未コーティングであってよい。
【0072】
成分C)として、前記成形材料は、前記第1成形部品のNIR放射の部分的な透過を可能にする、NIR領域における吸収を有する1種以上の可溶性染料を有する。好適な染料は、当業者に公知であり、かつ例えば、ピラゾロン、ペリノン、アントラキノン、メチン、アゾ、アントラピリドン又はクマリンタイプのものであってよく、かつ例えば、国際公開第02/057353号(WO 02057353)、欧州特許出願公開第1258506号明細書(EP 1258506)、欧州特許出願公開第1353986号明細書(EP 1353986)、欧州特許出願公開第1353991号明細書(EP 1353991)、欧州特許出願公開第1582565号明細書(EP 1582565)、欧州特許出願公開第1797145号明細書(EP 1797145)、欧州特許出願公開第1847375号明細書(EP 1847375)、欧州特許出願公開第3421540号明細書(EP 3421540)、特許第4176986号公報(JP 4176986)又は特許第4073202号公報(JP 4073202)に記載されている。
【0073】
用語「可溶性」は、本発明の範囲内で、前記成形材料中の前記染料が、その液相に可溶でありうるので、分子分散した分布が可能であると理解されるべきである。したがって、可溶性染料は、ピラゾロン、ペリノン、アントラキノン、メチン、アゾ、アントラピリドン又はクマリン染料であってよい。
【0074】
商業的に入手可能である例示的な可溶性染料は、カラーインデックスの種類「ソルベント」で記載される。例は、アントラキノン染料、例えばCIソルベントグリーン3、又はペリノン染料、例えばCIソルベントレッド179である。
【0075】
前記のNIRに対して透明な被着材が、黒又はダークグレーの着色を維持する場合には、2種以上の有彩色可溶性染料を、該染料混合物の吸収が可視領域全体にわたるように組み合わせることも可能である。
【0076】
さらに、前記成形材料は、添加物を含んでいてよい。これらは、前記成形体の適用分野に依存する。例示的な添加物(添加剤)は、難燃剤、例えばリン化合物、有機ハロゲン化合物、窒素化合物及び/又は水酸化マグネシウム、安定剤、加工助剤、例えば滑剤/離型剤、造核剤、加水分解安定剤、耐衝撃性改良剤、例えばゴム又はポリオレフィン等であるが、ただし、これらは、使用される溶接レーザーの波長の領域内で強すぎる吸収を有していないものとする。
【0077】
ガラス繊維以外の繊維状強化材として、アラミド繊維、鉱物繊維及びウィスカーが考慮に値する。好適な鉱物充填剤として、例示的に、炭酸カルシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、雲母、フルオロマイカ、ウォラストナイト、タルク及びカオリンが挙げられる。ガラスビーズ(中実又は中空)は、同様に使用することができる。機械的特性を改善するために、該繊維状強化材及び該鉱物充填剤は表面処理されていてよい。
【0078】
好ましくは、前記成形材料は、前記成分D)の成分としてガラス繊維を含有する。該ガラス繊維の割合は、前記成形材料の全重量を基準として、好ましくは10重量%~50重量%である。
【0079】
加水分解安定剤が、前記成形材料中に含まれていてもよい。好適な割合は、前記成形材料の全重量を基準として、1重量%~5重量%である。
【0080】
好適な加水分解安定剤は、エポキシ化植物油である。より好適な植物油は、高い割合のモノ不飽和脂肪酸及び/又はポリ不飽和脂肪酸を有する、それというのも、そうすると高い比エポキシド含有率を達成することができるからである。他の一価又は多価アルコールとのエステル交換により得ることができる、そのような植物油の誘導体は、同様にエポキシ化することができ、かつ同様に加水分解安定剤として使用することができる。例は、エポキシ化あまに油、エポキシ化大豆油又はあまに油もしくは大豆油をベースとするエポキシ化脂肪酸メチルエステルである。そのような化合物は、工業的規模で製造され、かつPVC用の可塑剤として又は塗料及びポリマー用の原料として使用される。工業的に重要なエポキシドの総説及びそれらの製造者は、例えば、“IHS Chemical Process Economics Program, Report 62B, 2014, Eco-Friendly Plasticizers”に見出される。
【0081】
さらに好適な加水分解安定剤は、ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンから製造され、末端エポキシ基を有するエポキシ樹脂である。そのようなエポキシ樹脂は、塗料及びコーティング用の原料として使用されており、かつ数百~数千g/molの平均分子量を有していてよい。
【0082】
さらに好適な加水分解安定剤は、モノメリック、オリゴメリック又はポリメリックカルボジイミドである。
【0083】
本発明のさらなる対象は、本発明による成形体を製造する方法であって、
a)前記第1成形部品を前記第2成形部品と、NIR領域におけるレーザー透過溶接によって接合する工程;
b)前記第1成形部品を、好ましくはUV/VIS領域における、レーザーマーキングによってマーキングする工程、ここで、工程b)は、工程a)の前又は後に、好ましくは工程a)の後に行われる、
を含む。
【0084】
工程a)におけるレーザー透過プロセスによる接合並びに工程b)におけるレーザーマーキングは、上記により詳しく説明されており、かつ当業者によく知られている。
【0085】
同じように、本発明のさらなる対象は、成形体、殊に本発明による成形体を製造する際の、レーザーマーキング部を有する成形部品としての上記のような成形材料の使用である。
【実施例】
【0086】
原料
PBTポリマー:
A)Ultradur(登録商標) B2550 natur。この製品は次の特性を有する:
粘度数(ISO 1628による、フェノール/1,2-ジクロロベンゼン(1:1)中、25℃):108cm3/g
酸末端基(アルカリ滴定による):22mmol/kg
チタン含有率(蛍光X線測定による):102ppm。
【0087】
ガラス繊維:
B)3BのDS 3185 E-10N:E-ガラスのガラス繊維、平均直径 約10μm、ポリエステル用のサイズ剤を有する。ガラス繊維サイズ剤は、通常複雑な配合物であり、かつシランでの処理、塗膜形成要素及びさらなる添加剤を含む。詳細な例は、例えば、欧州特許出願公開第2540683号明細書(EP 2 540 683 A1)、欧州特許出願公開第2554594号明細書(EP 2 554 594 A1)、又は欧州特許第1993966号明細書(EP 1993 966 B1)に見出される。それについての学術文献は、例えば、J.L. Thomason著、“Glass Fibre Sizings”(ISBN 978-0-9573814-1-4)に見出すことができる。
【0088】
離型剤:
C)Emery OleochemicalsのLoxiol P 861/3.5:ペンタエリトリトールとの脂肪酸エステル。
【0089】
加水分解安定剤:
D1)ArkemaのVikoflex 7190:エポキシ化あまに油、オキシラン酸素約9.5重量%
D2)JanaのARALDITE GT 7077:ビスフェノールA及びエピクロロヒドリンをベースとするエポキシ樹脂、オキシラン酸素約1重量%。
【0090】
染料(カラーインデックスの種類「ソルベント」の):
E1)CIソルベントグリーン3、例えばRheinChemieのMacrolex Gruen 5B
E2)CIソルベントレッド179、例えばRheinChemieのMacrolex Rot E2G。
【0091】
二酸化チタン顔料:
F1)(Venatorの)Hombitec RM 230 L、無機(Al及びCe系)及び有機(ステアリン酸)表面処理を有する超微粒TiO2粒子。平均一次粒子サイズ 約20nm。
F2)(Venatorの)Hombitec RM 130 F、無機(Al系)及び有機(ステアリン酸)表面処理を有する超微粒TiO2粒子。平均一次粒子サイズ 約15nm。
F3)(Venatorの)TiO2 F-RC5、無機(Al系)及び有機表面処理(シリコーン他)を有するTiO2粒子。平均一次粒子サイズ 約190nm。
F4)(Kronosの)Kronos 2220、無機(Al及びSi系)及び有機表面処理(シリコーン)を有するTiO2粒子。一次粒子サイズ 約300~400nm。
【0092】
試験
ISO 527による試験体タイプ1Aでの引張試験
UV-VIS-NIR透過率:厚さ2mmの射出成形されたプレートを、ウルブリヒト球を備えた実験室用光度計で測定した。
【0093】
レーザーマーキング:
厚さ2mmの射出成形されたプレートを、市販のマーキング装置(Trumpf TruMark 6330、Nd:YVO4レーザー、355nm波長)でマーキングした。そのレーザービームの動作電流強さ及びスキャナ周波数は、最適なマーキング結果(最大コントラスト値)を得るために、変えた。最適なマーキング結果は、輝度測定に採用された。
【0094】
輝度測定:
レーザーマーキングされた面及び背景の明るさを、Minolta輝度計LS-110を用いて測定した。その輝度値から、そのコントラスト値を次の式に従って計算した:
1)背景 淡色/マーキング 濃色:コントラスト=100%×(背景の輝度-マーキングの輝度)/背景の輝度
2)背景 濃色/マーキング 淡色:コントラスト=100%×(マーキングの輝度-背景の輝度)/マーキングの輝度。
【0095】
110℃で7日間にわたる過熱蒸気中の引張試験片の加水分解老化。該試験片を、予め乾燥せずに引張試験に使用した。(加水分解安定剤を有する組成物の場合のみ)。
【0096】
コンパウンドの製造
すべてのコンパウンドを、二軸スクリュー押出機(軸直径25mm)を用いて製造した。次の加工パラメーターを選択した:回転数200rpm、処理量14kg/h、温度270℃。ガラス繊維及びVikoflex 7910を、溶融物中へ直接計量供給し、他のすべての原料(PBT及びさらなる添加剤)を、供給口を経て計量供給した。
【0097】
【0098】
該組成物A~Dは、十分に小さい二酸化チタン粒子のみが、所望の改善をもたらすことを示す。該粒子が大きすぎる場合(C及びD)には引張強さは明らかに減少され、NIR領域における透過率値は低下し、かつコントラスト値は、AからBへよりも少ない程度で増加する。
【0099】
【0100】
該組成物E~Lは、適切に小さい二酸化チタン粒子がすでに少量で、NIR領域における透過率値が本質的に損なわれることなく、コントラスト値での所望の改善をもたらすことを示す。しかし、該二酸化チタンが、該加水分解安定剤の有効性を減少させることも認められる。特に目立つのは、0.8%の二酸化チタン割合(本発明によらない)でのこの効果である。
【0101】
【0102】
該組成物M~Nは、適切に小さい二酸化チタン粒子により、未着色の製品でのコントラスト値も改善することができることを示す。しかしながら、該コントラスト値はそれにもかかわらず低いままであり、かつ不満足のままである。
【国際調査報告】