(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-28
(54)【発明の名称】充電式固体リチウムイオン電池用の正極活物質としてのリチウムニッケル系複合酸化物
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240521BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240521BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20240521BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240521BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240521BHJP
H01M 4/1395 20100101ALI20240521BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20240521BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240521BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/0565
H01M10/052
H01M10/058
H01M4/1395
H01M4/1391
H01M4/62 Z
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572902
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-24
(86)【国際出願番号】 EP2022064162
(87)【国際公開番号】W WO2022248534
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジフン・カン
(72)【発明者】
【氏名】キョンソ・パク
(72)【発明者】
【氏名】イェンス・マルティン・パウルゼン
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 真一
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA06
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
5H029AJ03
5H029AK03
5H029AL12
5H029AM16
5H029CJ08
5H029DJ09
5H029HJ01
5H050AA08
5H050BA16
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050DA11
5H050FA17
5H050FA19
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA27
5H050HA02
5H050HA14
(57)【要約】
本発明は、タングステンを含むリチウムニッケル系酸化物粒子を含む、電動ビークル(electric vehicle)及びハイブリッド電動ビークル(hybrid electric vehicle)用途に好適な充電式リチウムイオン電池用の正極活物質としてのリチウムニッケル系複合酸化物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電池用の正極活物質であって、
前記正極活物質は、Li、M’及び酸素を含み、
M’は、
M’に対して50.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0.0mol%~40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0.0mol%~70.0mol%の含有量zのMn、
0.1mol%~3.0mol%の含有量vのAl、
0.05mol%~2.0mol%の含有量wのW、
2.0mol%未満の含有量fのF、
M’に対して、3.0mol%未満の含有量qのLi、O、Ni、Co、Mn、Al、W及びF以外の元素を含み、
x、y、z、v、w及びqは、ICPによって測定され、fは、ICによって測定され、
(x+y+z+v+w+f+q)=100.0mol%であり、
前記正極活物質は、Al
B/v>25.0及びW
B/w>5.0の比率を有し、
Al
B及びW
BはXPS分析によって決定され、Al
B及びW
Bは、XPS分析によって測定されるNi、Co、Mn、Al、W及びFの合計と比較したmol%として表される、正極活物質。
【請求項2】
前記比率Al
B/vは、50.0より大きく、好ましくは60.0より大きく、より好ましくは70.0より大きい、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
Mnの含有量zが、M’に対して、0.0mol%~40.0mol%である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記比率Al
B/vは、250.0未満、好ましくは200.0未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
前記比率W
B/wは、10.0より大きく、好ましくは21.0より大きく、より好ましくは22.0より大きい、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項6】
前記比率W
B/wは、150.0未満、好ましくは100.0未満である、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項7】
f>0であり、前記正極活物質は、比率F
B/f>10.0を有し、F
BはXPS分析によって決定され、F
Bは、XPS分析によって測定されるNi、Co、Mn、Al、W及びFの合計と比較したmol%として表される、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項8】
前記正極活物質は、2つ以上の一次粒子を含む二次粒子を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項9】
前記正極活物質は、単結晶粒子を含む、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、充電式リチウムイオン電池用の正極。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、充電式リチウムイオン電池用のポリマーセル。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質を含む、充電式リチウムイオン電池。
【請求項13】
固体電池用の正極活物質の製造方法であって、
リチウム遷移金属系酸化物化合物を調製する工程と、
前記リチウム遷移金属系酸化物化合物を、Al源及びW源と混合し、それにより混合物を得る工程と、
1時間~20時間の時間、前記混合物を炉内の酸化雰囲気中で250℃~500℃未満、好ましくは高くとも450℃の温度で加熱し、前記正極活物質粉末を得る工程と、の連続した工程を含む、方法。
【請求項14】
前記リチウム遷移金属系酸化物化合物を追加のF源と前記混合し、前記混合物を得る、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記正極活物質は、請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
充電式固体リチウムイオン電池用のポリマーセルを製造する方法であって、前記方法は、
1,500,000g/mol未満であり、かつ500,000g/mol超の分子量を有する第1のポリエチレンオキシドと、リチウム塩と、を非水性溶媒中で混合することによって、固体ポリマー電解質膜を調製する工程と、
第2のポリエチレンオキシド、リチウム塩、正極活物質及び導電材粉末を非水性溶媒中で混合することによって、正極を調製する工程であって、前記第2のポリエチレンオキシドは、300,000g/mol未満であり、かつ50,000g/molを超える分子量を有する、正極を調製する工程と、
リチウム金属を含む負極を調製する工程と、
前記固体ポリマー電解質膜、前記正極、及び前記負極を組み立て、充電式固体電池用のポリマーセルを形成する工程と、を含む、方法。
【請求項17】
前記正極活物質は、請求項1~9のいずれか一項に記載の正極活物質である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、タングステン(W)を含むリチウムニッケル系酸化物粒子を含む、電動ビークル(electric vehicle)(EV)及びハイブリッド電動ビークル(hybrid electric vehicle)(HEV)用途に好適な充電式リチウムイオン電池用の正極活物質としてのリチウムニッケル系複合酸化物に関する。
【0002】
正極活物質は、正極において電気化学的に活性である物質として定義される。活物質とは、所定の時間にわたって電圧変化にさらされたときにLiイオンを捕捉及び放出することができる物質であると理解されたい。
【0003】
本発明の枠組みにおいて、原子%は、原子百分率を意味する。所与の元素の濃度表現としての原子%又は「原子パーセント」は、当該化合物中の全ての原子のうち何パーセントが当該元素の原子であるかを意味する。原子%という表記は、mol%と等価である。
【0004】
充電式固体電池のためのWコーティングした正極物質の使用は、Lim,C.B.及びPark,Y.J.によってSci Rep10,10501(2020)において研究された。
【0005】
しかしながら、このWを含む正極活物質は、固体電池に適用した場合に漏れ容量(Qtotal)が大きい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、固体電池において、好ましくは本発明の方法によって得られる充電式固体リチウムイオン電池において、改善されたQtotalを有する正極活物質を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、固体電池用の正極活物質であって、正極活物質は、Li、M’及び酸素を含み、M’は、
M’に対して50.0mol%~95.0mol%の含有量xのNi、
M’に対して0.0mol%~40.0mol%の含有量yのCo、
M’に対して0.0mol%~70.0mol%、好ましくは0.0mol%~40.0mol%の含有量zのMn、
0.05mol%~2.0mol%の含有量wのW、
0.1mol%~3.0mol%の含有量vのAl、
2.0mol%未満の含有量fのF、
M’の総原子含有量に対して3.0mol%未満の含有量qのQであって、Qは、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V及びZnからなる群のうちの少なくとも1つの元素を含む、Qを含み、
x、y、z、v、w及びqはICPによって測定され、fはICによって測定され、
(x+y+z+v+w+f+q)=100.0mol%であり、
正極活物質は、比率AlB/v>25.0、好ましくはAlB/v>50.0、及びWB/w>5.0、好ましくはWB/w>10.0を有し、
AlB及びWBはXPS分析によって決定され、AlB及びWBは、XPS分析によって測定されるNi、Co、Mn、Al、W及びFの合計と比較したmol%として表される、正極活物質によって達成される。
【0008】
このような物質は、改善された電気化学的特性を有し、特に、より高い温度での容量漏れが大幅に低減されている。
【0009】
好ましくはAlB/v>60.0であり、より好ましくはAlB/v>70.0である。
【0010】
好ましくは、AlB/v<250.0であり、より好ましくはAlB/v<200.0である。
【0011】
特定の好ましい実施形態では、Alb/vは60~250、好ましくは70~200、より好ましくは80~135である。
【0012】
好ましくは、WB/w>21.0であり、より好ましくはWB/w>22.0である。
【0013】
好ましくは、WB/w<150.0であり、より好ましくはWB/w<100.0である。
【0014】
特定の好ましい実施形態では、Wb/wは21.0~150.0、好ましくは22.0~100.0、より好ましくは30.0~50.0である。
【0015】
特定の好ましい実施形態は、M’に対して、含有量xのNiが、55.0mol%≦x≦75.0mol%、好ましくは60.0mol%≦x≦70.0mol%、より好ましくは62.0mol%≦x≦68.0mol%である、本発明の正極活物質である。
【0016】
特定の好ましい実施形態は、Niの含有量xが、M’に対して、75.0mol%≦x≦95.0mol%、好ましくは80.0mol%≦x≦90.0mol%、より好ましくは80.0mol%≦x≦85.0mol%である、本発明の正極活物質である。
【0017】
当業者であれば理解するように、正極活物質中のLi及びM’、好ましくはLi、Ni、Mn、Co、W、Al及びQの量は、誘導結合プラズマ(ICP)によって測定される。例えば、本発明を限定するものではないが、Agilent ICP720-ESが、ICP分析において使用される。本発明の枠組みでは、濃度を表す所与の元素の「原子含有量」又は「原子%」とは、当該化合物中の全原子の何パーセントが当該元素の原子であるかということを意味する。mol%という表記は、「モルパーセント」又は「原子%」と等価である。
【0018】
好ましい実施形態では、Mの含有量zは、0.0mol%<z≦40.0mol%、好ましくは3.0mol%≦z≦20.0mol%、より好ましくは5.0mol%≦z≦10.0mol%である。
【0019】
好ましい実施形態では、Coの含有量yは、M’に対して、0.0mol%<z≦40.0mol%、好ましくは3.0mol%≦z≦20.0mol%、より好ましくは5.0mol%≦z≦10.0mol%である。
【0020】
好ましい実施形態では、Wの含有量wは、M’に対して0.05mol%~2.0mol%、好ましくはM’に対して0.1mol%~1.0mol%、より好ましくは0.2mol%~0.5mol%である。
【0021】
好ましい実施形態では、Alの含有量vは、M’に対して0.1mol%~3.0mol%、好ましくはM’に対して0.2mol%~1.5mol%、より好ましくは0.3mol%~0.5mol%である。
【0022】
好ましい実施形態では、Fの含有量fは、M’に対して2.0mol%未満、好ましくはM’に対して1.5mol%未満、より好ましくは1.2mol%未満である。好ましい実施形態では、Fの含有量fは、M’に対して0.0mol%より大きい、好ましくはM’に対して0.5mol%より大きい、より好ましくは0.8mol%より大きい。特定の好ましい実施形態では、M’に対して、f=0.0mol%である。当業者であれば理解するように、fの量は、イオンクロマトグラフィー(IC)分析によって決定される。例えば、本発明を限定するものではないが、Dionex ICP-2100(Thermo scientific)が、ICP-IC分析において使用される。
【0023】
好ましい実施形態では、Qの含有量qは、M’の総原子含有量に対して3.0mol%未満である。好ましい実施形態では、Qの含有量qは、M’に対して2.0mol%未満、好ましくは1.0mol%未満である。好ましい実施形態では、Qの含有量qは、M’の総原子含有量に対して0.0mol%超である。好ましい実施形態では、Qの含有量qは、M’に対して0.5mol%超、好ましくはM’に対して0.8mol%超である。特定の好ましい実施形態では、Qの含有量は、M’に対して、q=0.0mol%である。
【0024】
好ましい実施形態では、f>0であり、正極活物質は、比率FB/f>10.0、好ましくはFB/f>12.0、より好ましくはFB/f>14.0を有し、FBはXPS分析によって決定され、FBは、XPS分析によって測定されるNi、Co、Mn、Al、W及びFの合計と比較したmol%として表される。好ましい実施形態では、f>0であり、正極活物質は、比率FB/f<30.0、好ましくはFB/f<20.0、より好ましくはFB/f<17.0を有し、FBはXPS分析によって決定され、FBは、XPS分析によって測定されるNi、Co、Mn、Al、W及びFの合計と比較したmol%として表される。好ましい実施形態では、f>0であり、正極活物質は、10.0~20、好ましくは12.0~17.0、より好ましくは14.0~16.0の比率FB/fを有し、FBはXPS分析によって決定され、FBは、XPS分析によって測定されるNi、Co、Mn、Al、W及びFの合計と比較したmol%として表される。
【0025】
具体的には、AlB、WB及びFBは、それぞれ、本発明によるカソード物質粉末の粒子の、当該粒子の外縁の第1の点と当該第1の点からある距離にある第2の点との間で画定される領域において測定されるAl、W及びFの平均モル分率であり、当該第1の点と当該第2の点とを隔てる当該距離は、当該XPSの侵入深さに等しく、当該侵入深さDは、1.0~10.0nmである。特に、侵入深さは、当該外縁に接し当該第1の点を通過する仮想線に垂直な軸に沿った距離である。
【0026】
粒子の外縁は、本発明の枠組みにおいて、粒子をその外部環境から区別する境界又は外部限界である。
【0027】
好ましい実施形態では、第1の態様による当該正極活物質は、2つ以上の一次粒子を含む二次粒子を含む。
【0028】
別の好ましい実施形態では、第1の態様による当該正極活物質は、単結晶粒子を含む。
【0029】
特定の好ましい実施形態では、粒子は、SEM又はTEMによって、好ましくは粒界を観察することによって観察される、1つの結晶粒のみ、又は多くとも5つ、好ましくは多くとも3つ(three)の構成結晶粒からなる場合、単結晶であるとみなされる。
【0030】
本発明の文脈において、粒界は、粒子内の2つの粒間の界面として定義され、好ましくは2つの結晶粒の原子面は、異なる配向に整列され、結晶の不連続面として交わる。
【0031】
当業者であれば理解するように、及び本発明の文脈において、当該正極活物質は、SEM画像における少なくとも45μm×少なくとも60μm(すなわち、少なくとも2700μm2)、好ましくは少なくとも100μm×100μm(すなわち、少なくとも10,000μm2)の視野における粒子の80%以上が単結晶である、単結晶粒子を含む。
【0032】
単結晶粒子の決定において、レーザー回折によって決定される粒子のメジアン粒子径D50の20%よりも小さい、SEMによって観察される最大直線寸法を有する結晶粒は無視される。これによって、本質的には単結晶であるが、いくつかの非常に小さい他の結晶粒を上に堆積し得る粒子が、単結晶でないとして不注意にみなされることを回避する。
【0033】
本発明の特定の好ましい実施形態では、及び本発明の文脈において、単結晶粒子はモノリシック粒子である。当業者であれば理解するように、これらの特定の好ましい実施形態では、単結晶粒子に関する全ての実施形態は、モノリシック粒子に等しく適用される。
【0034】
別の好ましい実施形態では、第1の態様による当該正極活物質は、多結晶粒子を含む。当業者であれば理解するように、多結晶粒子は、5つ以上の単結晶粒子、好ましくは10つ以上の単結晶粒子、より好ましくは50以上の単結晶粒子が凝集している。これは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)(SEM)のような適切な顕微鏡技術で粒界を観察することによって観察することができる。単結晶粒子の多結晶粒子への凝集は、熱処理工程などの後処理工程の下で起こる。
【0035】
好ましい実施形態では、Qは、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、及びZrからなる群の少なくとも1つの元素を含み、好ましくはQは、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、及びZrからなる群の少なくとも1つの元素であり、より好ましくはB、Cr、Nb、S、Si、Ti、Y、及びZrからなる群の少なくとも1つの元素であり、最も好ましくはZrである。
【0036】
本発明は更に、上で定義した本発明による正極活物質を含む、充電式リチウムイオン電池用の正極に関する。
【0037】
好ましくは、本発明は、第1の実施形態による正極活物質を含む、充電式リチウムイオン電池用のポリマーセルを提供する。
【0038】
本発明は更に、充電式リチウムイオン電池用のポリマーセルに関し、当該ポリマーセルは、上で定義した本発明による正極活物質を含む。
【0039】
本発明は更に、上で定義した本発明による正極活物質を含む、充電式リチウムイオン電池に関する。
【0040】
本発明は更に、固体電池用の正極活物質を製造するための方法であって、
リチウム遷移金属系酸化物化合物を調製する工程と、
当該リチウム遷移金属系酸化物化合物を、Al源及びW源と混合し、それにより混合物を得る工程と、
1時間~20時間の時間、混合物を炉内の酸化雰囲気中で250℃~500℃未満、好ましくは高くとも450℃の温度で加熱して、当該正極活物質粉末を得る工程と、の連続した工程を含む、方法に関する。
【0041】
本方法の好ましい実施形態では、リチウム遷移金属系酸化物化合物は、Li、M’及び酸素を含み、M’は、Ni、Mn、Co及びQを含む。
【0042】
好ましくは、使用されるリチウム遷移金属酸化物化合物はまた、典型的には、リチオ化プロセス、すなわち遷移金属前駆体とリチウム源との混合物を好ましくは少なくとも500℃の温度で加熱するプロセスに従って調製される。典型的には、遷移金属前駆体は、アルカリ化合物、例えばアルカリ水酸化物、例えば水酸化ナトリウム及び/又はアンモニアの存在下で、1種以上の遷移金属源、例えばM’元素Ni、Mn及び/又はCoの塩、好ましくは硫酸塩の共沈によって調製される。
【0043】
好ましくは、当該リチウム遷移金属系酸化物化合物を追加のF源と当該混合し、混合物を得る。
【0044】
好ましくは、当該正極活物質は、上で定義した本発明による正極活物質である。
【0045】
当業者であれば理解するように、AlB/vの比率は、例えば、それぞれより多い若しくはより少ない量のAl源を、リチウム遷移金属系酸化物化合物と混合することによって増加又は減少させることができる。
【0046】
当業者であれば理解するように、WB/wの比率は、例えば、それぞれより多い若しくはより少ない量のW源を、リチウム遷移金属系酸化物化合物と混合することによって増加又は減少させることができる。
【0047】
当業者であれば理解するように、FB/vの比率は、例えば、それぞれより多い若しくはより少ない量のF源を、リチウム遷移金属系酸化物化合物と混合することによって増加又は減少させることができる。
【0048】
本発明は更に、充電式固体リチウムイオン電池用のポリマーセルを製造するための方法に関し、当該方法は、
1,500,000g/mol未満であり、かつ500,000g/mol超の分子量を有する第1のポリエチレンオキシドと、リチウム塩と、を非水性溶媒中で混合することによって、固体ポリマー電解質膜を調製する工程と、
第2のポリエチレンオキシド、リチウム塩、正極活物質及び導電材粉末を非水性溶媒中で混合することによって、正極を調製する工程であって、当該第2のポリエチレンオキシドは、300,000g/mol未満であり、かつ50,000g/mol超の分子量を有する、正極を調製する工程と、
リチウム金属を含む負極を調製する工程と、
固体ポリマー電解質膜、正極、及び負極を組み立て、充電式固体電池のためのポリマーセルを形成する工程と、を含む。
【0049】
好ましくは、正極活物質は、上で定義した本発明による正極活物質である。
【0050】
本発明に従って製造されたポリマーセルは、電気化学的特性の信頼できる試験に特に適している。
【0051】
更なるガイダンスとして、本発明の教示をよりよく理解するために、図面を含める。当該図面は、本発明の説明を助けることを意図したものであり、本明細書にて開示された発明を限定することを意図するものではない。そこに含まれる図及び記号は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】多結晶形態を有する実施例1による正極活物質粉末の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)画像を示す。
【
図2】単結晶形態を有する実施例2による正極活物質粉末のSEM画像を示す。
【
図3】比較例1(CEX1)及び比較例2(CEX2)と比較した、実施例1(EX1)におけるAl2pピーク及びW4fピークの存在を示すX線光電子分光法(XPS)グラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明の実施を可能にするために、図面及び以下の発明を実施するための形態において、好ましい実施形態を記載する。本発明は、これらの特定の好ましい実施形態を参照して説明されるが、本発明は、以下の発明を実施するための形態及び添付の図面を考慮することから明らかである多数の代替、改変、及び均等物を含む。
【0054】
A)誘導結合プラズマ(ICP)分析
正極活物質粉末中のLi、Ni、Mn、Co、Al、B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、W、及びZrの量は、Agillent ICP720-ES(Agilent Technologies,https://www.agilent.com/cs/library/brochures/5990-6497EN%20720-725_ICP-OES_LR.pdf)を使用することにより、誘導結合プラズマ(ICP)法を用いて測定する。2グラムの粉末サンプルを、三角フラスコ中で10mLの高純度塩酸(溶液の総重量に対して少なくとも37重量%のHCl)に溶解させる。前駆体を完全に溶解させるまで、フラスコをガラスでカバーし、380℃のホットプレート上で加熱する。室温まで冷却した後、三角フラスコの溶液を250mLメスフラスコに注ぐ。その後、メスフラスコの250mLの標線まで脱イオン水を充填し、続いて、完全に均質化する。ピペットで適切な量の溶液を取り出し、2回目の希釈のために250mLメスフラスコに移し、メスフラスコの250mLの標線まで内部標準物質及び10%塩酸を充填した後、均質化させる。最後に、この50mL溶液をICP測定に使用する。
【0055】
B)イオンクロマトグラフィー(IC)分析
正極活物質粉末中のF量は、Dionex ICS-2100(Thermo scientific)を使用することにより、イオンクロマトグラフィー(IC)法を用いて測定する。250mLメスフラスコ及び100mLメスフラスコを、使用直前に65重量%のHNO3と脱イオン水との体積比1:1の混合溶液ですすいだ後、フラスコを脱イオン水で少なくとも5回すすぐ。2mLのHNO3、2mLのH2O2、及び2mLの脱イオン水を溶媒として混合する。0.5グラムの粉末サンプルを、混合溶媒中に溶解させる。溶液を容器から250mLメスフラスコに完全に移し、フラスコの250mLの標線まで脱イオン水を充填する。充填したフラスコを十分に振盪し、溶液の均質性を確保する。250mLフラスコから9mLの溶液を、100mLメスフラスコに移す。100mLメスフラスコの100mLの標線まで脱イオン水を充填し、希釈溶液を十分に振盪し、均質なサンプル溶液を得る。2mLのサンプル溶液を、IC測定のためにシリンジオンガードカートリッジを介して5mLのICバイアルに挿入する。
【0056】
C)走査型電子顕微鏡(SEM)分析
正極活物質の形態は、走査型電子顕微鏡(SEM)技術によって分析する。測定は、JEOL JSM 7100F(https://www.jeolbenelux.com/JEOL-BV-News/jsm-7100f-thermal-field-emission-electron-microscope)を用いて、25℃で9.6×10-5Paの高真空環境下で実施する。
【0057】
D)X線光電子分光法(XPS)分析
本発明では、X線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy)(XPS)を使用して、正極活物質粉末粒子の表面を分析する。XPS測定では、シグナルは、サンプルの最上部、すなわち、表面層の最初の数ナノメートル(例えば、1nm~10nm)から取得される。したがって、XPSによって測定される全ての元素は、表面層に含有されている。
【0058】
正極活物質粉末粒子の表面分析では、XPS測定は、ThermoK-α+分光計(Thermo Scientific,https://www.thermofisher.com/order/catalog/product/IQLAADGAAFFACVMAHV)を使用して行われる。単波長Al Kα放射線(hv=1486.6eV)は、400μmのスポットサイズ及び45°の測定角度で使用される。表面に存在する元素を同定するための広範な調査スキャンを、200eVのパスエネルギーで実施する。284.8eVの結合エネルギーに最大強度(又は中心)を有するC1sピークは、データ収集後のキャリブレーションピーク位置として使用される。その後、同定された各元素に対して、50eVにて正確なナロースキャンが少なくとも10回スキャンされ、正確な表面組成が決定される。
【0059】
曲線のフィッティングは、CasaXPSバージョン2.3.19PR1.0(Casa Software,http://www.casaxps.com/)により、シャーリー型バックグラウンド処理及びスコフィールド感度係数を使用して行う。フィッティングパラメータは表1aに従う。線形状GL(30)は、70%ガウス線及び30%ローレンツ線におけるガウス/ローレンツ積公式である。LA(α、β、m)は非対称な線形状であり、式中、α及びβはピークのテール広がりを定義し、mは幅を定義する。
【0060】
【0061】
64.1±0.1eV~78.5±0.1のフィッティング範囲内のAlピークについて、表1bに従って定義された各ピークについて制約を設定する。Ni3pピークは、定量化に含まれない。
【0062】
【0063】
XPSによって決定されたAl、W及びFの表面含有量は、粒子の表面中のAl、W及びFのそれぞれのモル%を、当該表面中のNi、Mn、Co、Al、W及びFの合計含有量で割ったものとして表される。それらは以下のように計算される。
【0064】
【0065】
E)ポリマー固体試験
E1)ポリマー固体電池の調製
E1-1)固体ポリマー電解質(SPE)の製造
固体ポリマー電解質(solid polymer electrolyte、SPE)を、以下の方法に従って調製する。
工程1)99.8重量%無水アセトニトリル(Aldrich)中でポリエチレンオキシド(PEO、1,000,000g/mol、Alfa Aesar)と、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(LiTFSI、98.0%超、TCI)と、を2000回転/分(rpm)でミキサーを使用して30分間混合する。ポリエチレンオキシドのLiTFSIに対する質量比は、3.0である。
工程2)工程1)からの混合物をテフロン皿に注ぎ、25℃で12時間乾燥させる。
工程3)乾燥したSPEを皿から取り外し、乾燥したSPEを打ち抜いて、厚さ300μm及び直径19mmのSPEディスクを得る。
【0066】
E1-2)正極の調製
正極を、以下のプロセスに従って調製する。
工程1)99.7重量%無水アニソール(Sigma-Aldrich)中のポリエチレンオキシド(PEO、100,000g/mol、Alfa Aesar)溶液と、アセトニトリル中のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩(LiTFSI、98.0%超、TCI)と、を含むポリマー電解質混合物を調製する。混合物は、PEO:LiTFSIの重量比が74:26である。
工程2)工程1)で調製したポリマー電解質混合物と、正極活物質と、導電材粉末(Super P,Timcal)と、をアセトニトリル溶液中で、重量比21:75:4で混合し、スラリー混合物を調製する。混合は、ホモジナイザーによって5000rpmで45分間行われる。
工程3)工程2)からのスラリー混合物を、厚さ20μmのアルミニウム箔の片面上に100μmのコーターギャップでキャストする。
工程4)スラリーがキャストされた箔を30℃で12時間乾燥させ、続いて打ち抜いて、直径14mmのカソード液電極を得る。
【0067】
E1-3)負極の調製
Li箔(直径16mm、厚さ500μm)を、負極として調製する。
【0068】
E1-3)ポリマーセルの組み立て
コイン型ポリマーセルを、アルゴンを充填したグローブボックス内で、下から上に、2032コインセル缶、セクションE1-2)から調製した正極、セクションE1-1)から調製したSPE、ガスケット、セクションE1-3)から調製した負極、スペーサ、波形ばね、及びセルキャップの順で組み立てる。次いで、コインセルを完全に密封して、電解質の漏れを防止する。
【0069】
E2)試験方法
各コイン型ポリマーセルを、Toscat-3100コンピュータ制御定電流サイクリングステーション(東洋システム製)を使用して80℃でサイクルする。コインセルの試験手順では、下のスケジュールに従って、4.4~3.0V/Li金属のウィンドウ範囲において160mA/gの1Cの電流定義を使用する。
工程1)4.4Vの終了条件で、0.05のCレートにより定電流モードで充電し、続いて10分間休止する。
工程2)3.0Vの終了条件で、0.05のCレートにより定電流モードで放電し、続いて10分間休止する。
工程3)4.4Vの終了条件で、0.05のCレートにより定電流モードで充電する。
工程4)定電圧モードに切り替え、4.4Vを60時間維持する。
工程5)3.0Vの終了条件で、0.05のCレートにより定電流モードで放電する。
【0070】
Qtotalは、記載された試験方法に従って、工程4)における高電圧及び高温での総漏れ容量として定義される。Qtotalの値が小さいことは、高温動作時における正極活物質粉末の安定性が高いことを示す。
【0071】
実施例1
多結晶正極活物質EX1を、以下のプロセスに従って調製する。
1)共沈:混合マンガン-コバルトサルフェート、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを入れた大型連続撹拌槽反応器(CSTR)内での共沈プロセスにより、金属組成Ni0.835Mn0.080Co0.085を有する遷移金属系酸化水酸化物前駆体を調製する。
2)第1の混合:遷移金属系酸化水酸化物前駆体と、リチウム源としてのLiOHとを、工業用ブレンド装置において0.98のリチウム対金属M’(Li/M’)比で均質に混合し、第1の混合物を得る。ここで、M’は、Ni、Mn及びCoの総モル含有量である。
3)第1の加熱:工程2)からの第1の混合物を、酸素雰囲気下で770℃にて10時間加熱する。加熱した粉末を粉砕し、分級し、篩い分けし、リチウム遷移金属複合酸化物P1を得る。
4)第2の混合:60グラムのP1を、0.12グラムのアルミナ(Al2O3)ナノ粉末及び0.34グラムのWO3と混合し、第2の混合物を得る。
5)第2の加熱:工程4)からの第2の混合物を、酸素雰囲気下で350℃にて6時間加熱する。加熱した粉末には、EX1とラベル表記する。粉末は、複数の一次粒子からなる二次粒子を含む。
【0072】
実施例2
単結晶正極活物質EX2を、以下のプロセスに従って調製する。
1)共沈:混合マンガン-コバルトサルフェート、水酸化ナトリウム、及びアンモニアを入れた大型連続撹拌槽反応器(CSTR)内での共沈プロセスにより、金属組成Ni0.850Mn0.070Co0.080を有する遷移金属系酸化水酸化物前駆体を調製する。
2)第1の混合:遷移金属系酸化水酸化物前駆体と、リチウム源としてのLiOHとを、工業用ブレンド装置において0.99のリチウム対金属M’(Li/M’)比で均質に混合し、第1の混合物を得る。ここで、M’は、Ni、Mn及びCoの総モル含有量である。
3)第1の加熱:工程2)からの第1の混合物を、酸素雰囲気下で890℃にて11時間加熱する。加熱した粉末を粉砕し、篩い分けし、リチウム遷移金属複合酸化物P2aを得る。
4)湿式粉砕:P2aを水中で粉砕しながら、P2a中のNi、Mn及びCoの総量に対して0.50mol%のCoSO4を添加する。溶液を濾過した後、スラリーを乾燥空気雰囲気下で175℃にて15時間乾燥させ、P2bを得る。
5)第2の混合:P2bを、ZrO2、Co3O4及びLiOHと、工業用混合装置において均質に混合し、第2の混合物を得る。ここで、ZrO2及びCo3O4の量は、P2b中のNi、Mn及びCoの総量に対してそれぞれ0.25mol%及び0.50mol%であり、第2の混合物のリチウム対金属M’(Li/M’)モル比は0.99であり、M’は、第2の混合物中のNi、Mn及びCoの総モル含有量である。
6)第2の加熱:工程5)からの第2の混合物を、酸素雰囲気下で760℃にて12時間30分加熱する。加熱した粉末を粉砕し、篩い分けし、リチウム遷移金属複合酸化物P2cを得る。
7)第3の混合:60グラムのP2cを、0.12グラムのアルミナ(Al2O3)ナノ粉末及び0.34グラムのWO3と混合し、第3の混合物を得る。
8)第3の加熱:工程7)からの第3の混合物を、酸素雰囲気下で350℃にて6時間加熱する。加熱した粉末には、EX2とラベル表記する。粉末は、単結晶粒子を含む。
【0073】
実施例3
60グラムの多結晶である実施例1からのP1を、0.12グラムのアルミナ(Al2O3)ナノ粉末、0.34グラムのWO3、及び0.18グラムのPVDFと混合し、混合物を得る。混合物を、酸素雰囲気下で350℃にて6時間加熱する。加熱した粉末には、EX3とラベル表記する。
【0074】
実施例4
60グラムの単結晶である実施例2からのP2cを、0.12グラムのアルミナ(Al2O3)ナノ粉末、0.34グラムのWO3、及び0.18グラムのPVDFと混合し、混合物を得る。混合物を、酸素雰囲気下で350℃にて6時間加熱する。加熱した粉末には、EX4とラベル表記する。
【0075】
比較例1
60グラムの実施例1からのP1を、0.12グラムのアルミナ(Al2O3)ナノ粉末、及び0.18グラムのPVDFと混合し、混合物を得る。混合物を、酸素雰囲気下で375℃にて7時間加熱する。加熱した粉末には、CEX1とラベル表記する。
【0076】
比較例2
60グラムの実施例1からのP1を0.34グラムのWO3と混合し、混合物を得る。混合物を、酸素雰囲気下で375℃にて7時間加熱する。加熱した粉末には、CEX2とラベル表記する。
【0077】
表2に、様々な実施例及び比較例の生成物の、Ni、Mn、Co、Al及びWについてはICPによって測定され、FについてはICによって測定された化学組成をまとめる。これらの生成物は全く他のドーパントを含まないので、表2の組成は、特許請求の範囲で定義されるパラメータx、y、z、v、w及びfと等価である。
【0078】
【0079】
表3に、様々な実施例及び比較例の生成物のNi、Mn、Co、Al、W及びFについてXPCによって測定された化学組成をまとめる。これらの生成物は全く他のドーパントを含まないので、表3の組成は、特許請求の範囲で定義されるパラメータNiB、MnB、CoB、AlB、WB、及びFBと等価である。
【0080】
【0081】
表4に、実施例及び比較例のAl
2O
3、WO
3及びPVDFの添加量、XPS及びICPから分析したモル分率の比、並びに対応するQ
totalをまとめる。実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4は、Al及びWの両方を含有するが、比較例1は、Al及びFを含有し、比較例2は、Wのみを含有する。多結晶形態を含む正極活物質の実施例1は、
図1に示すようにSEMによって観察される。
図2は、単結晶正極活物質の実施例2の代表的なSEM画像である。
【0082】
【0083】
表4では、Al(Al
B)、W(W
B)及びF(F
B)のXPS分析結果と、Al(v)、W(w)及びF(f)のICP分析結果とを比較している。Al
B、W
B及びF
Bが0より大きいということは、シグナルがサンプルの最上部、すなわち表面層の最初の数ナノメートル(例えば1nm~10nm)から取得されるXPS測定と関連して、当該Al、W及びFが正極活物質の表面に存在することを示している。他方、ICP測定から得られたv、w及びfは、粒子全体からのものである。したがって、Al
B/v、W
B/w及びF
B/fなどのXPSのICPに対する比率が1より大きいということは、当該元素Al、W及びFが主に正極活物質の表面上に存在することを示している。より高いAl
B/v、W
B/w及びF
B/f値は、正極活物質の表面により多くのAl、W及びFが存在することに対応する。比較例2を除く全ての実施例におけるAl
B/vは全て、50より大きく、比較例1を除く全ての実施例におけるW
B/wは全て、20より大きく、実施例3、実施例4及び比較例1におけるF
B/fは全て、10より大きく、これにより、本発明によるAl、W及び/又はF処理の有効性が確認される。比較例1又は比較例2と比較しての、実施例1のAl2p、W4f5及びW4f7ピークを示す代表的なXPSスペクトルを、
図3に示す。
【0084】
場合によっては、ドーパント、例えば、元素B、Ba、Ca、Cr、Fe、Mg、Mo、Nb、S、Si、Sr、Ti、Y、V、又はZrのうちの1つ以上の使用は、電池特性にとって有益であり得る。当業者であれば周知のように、そのような材料は、いくつかの方法、例えば、実施例1及び実施例2の工程1におけるような共沈、又は実施例1及び実施例2の工程2におけるようなLi源との混合工程における必要な元素源の添加、並びに当技術分野で公知の多くの他の方法によって容易に導入することができる。
【国際調査報告】