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特表2024-521247透明なニッケル錯化合物インキ組成物及びその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-05-29
(54)【発明の名称】透明なニッケル錯化合物インキ組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 53/00 20060101AFI20240522BHJP
【FI】
C01G53/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573557
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 KR2022007650
(87)【国際公開番号】W WO2022255750
(87)【国際公開日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0070171
(32)【優先日】2021-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】321001986
【氏名又は名称】ソウルブレイン シーオー., エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソク ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン ジン
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA02
4G048AA08
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE08
(57)【要約】
本発明は、透明なニッケル錯化合物インキ組成物及びその製造方法に関する。詳しくは、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、ニッケル及び前記ニッケルに配位結合された化合物を含む極性部と、溶媒と、その他の添加剤と、を含み、前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル及び前記ニッケルに配位結合された下記の化学式1で表わされる化合物を含む極性部と、
溶媒と、
その他の添加剤と、
を含む透明なニッケル錯化合物インキ組成物であって、
前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有する、透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【化1】
(上記の化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルケニル、C~C20のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール又はC~C20のアルキルカルボニルであり、
~Rのうちの少なくとも1つは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール及び直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル又はC~C20のアルケニルからなる群から選択されたいずれか1種である。)
【請求項2】
上記の化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニル、C~C18のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルである、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項3】
上記の化学式1中、R及びRは、水素であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換されたC~C18のアリール又はヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルである、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項4】
上記の化学式1で表わされる化合物は、2-アミノ-1-メチル-1-プロパノール(2-amino-1-methyl-1-propanol)、ノルマルヘキシルアミン(n-hexylamine)、ヘキシルアミン(hexylamine)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)、ノルマルオクチルアミン(n-octylamine)、オクチルアミン(octylamine)、ドデシルアミン(dodecylamine)、オレイルアミン(oleylamine)、ベンジルアミン(benzylamine)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール(1-dimethylamino-2-propanol)、2-(ジエチルアミノ)エタノール(2-(diethylamino)ethanol)又はジフェニルアミン(diphenylamine)である、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項5】
前記極性部の濃度は、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、8重量%~72重量%である、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項6】
前記溶媒は、テルピネオール(terpineol)、アルファテルピネオール(α-terpineol)、ジヒドロテルピネオール(dihydro-terpineol)、テルピニルアセテート(terpinyl acetate)、ジヒドロテルピニルアセテート(dihydro terpinyl acetate)、イソボルニルアセテート(isobornyl acetate)、イソボルニルプロピオネート(isobornyl propionate)、イソボルニルイソブチレート(isobornyl isobutyrate)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dipropylene glycol monomethyl ether)、エチレングリコールフェニルエーテル(ethylene glycol phenyl ether)、プロピレングリコールフェニルエーテル(propylene glycol phenyl ether)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、イソオクチルアルコール(isooctyl alcohol)、ブタノール(butanol)、ジアセトンアルコール(diacetone alcohol)、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項7】
前記その他の添加剤は、バインダー樹脂、可塑剤、安定化剤、分散剤、離型剤、還元剤、界面活性剤、湿潤剤、チキソ剤、レベリング剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項8】
前記バインダー樹脂は、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、アクリル(acryl)、ポリビニルアセタール(polyvinyl acetal)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリスチレン(polystyrene)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項7に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項9】
前記バインダー樹脂は、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、アクリル(acryl)、ポリビニルアセタール(polyvinyl acetal)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリスチレン(polystyrene)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項7に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項10】
前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極形成用、電磁波遮蔽用、太陽電池電極形成用又はディスプレイパネル電極形成用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物であることを特徴とする、請求項1に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物。
【請求項11】
ニッケル前駆体及び下記の化学式1で表わされる化合物を混合してニッケル錯化合物を製造するステップと、
前記ニッケル錯化合物を溶媒と混合するステップと、
前記溶媒と混合されたニッケル錯化合物を加熱するステップと、
前記加熱ステップにおいてバインダー樹脂を一緒に加熱するステップと、
を含む、透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法。
【化2】
(上記の化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルケニル、C~C20のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール又はC~C20のアルキルカルボニルであり、
~Rのうちの少なくとも1つは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール及び直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル又はC~C20のアルケニルからなる群から選択されたいずれか1種である。)
【請求項12】
前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有する、請求項11に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法。
【請求項13】
前記加熱は、115℃未満において行われる、請求項11に記載の透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明なニッケル錯化合物インキ組成物及びその製造方法に関し、より具体的には、前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明な無粒子の形状であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有し、前記組成物を基材に塗布して形成された薄膜を構成するニッケル粒子の最大の直径は、150nm以下であることを特徴とし、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極形成用、電磁波遮蔽用、太陽電池電極形成用又はディスプレイパネル電極形成用に使用可能である。
【背景技術】
【0002】
ニッケル粉は、電子回路を構成する電子部品であるコンデンサーの材料、特に、積層セラミックコンデンサー(MLCC)や多層セラミック基板などの積層セラミック部品の内部電極などを構成する厚膜導体の材料として用いられている。
【0003】
近年、積層セラミックコンデンサーの大容量化が進むことに伴い、積層セラミックコンデンサーの内部電極を構成する厚膜導体の形成に用いられる内部電極ペーストの使用量も大幅に増加している。したがって、内部電極ペースト用の金属粉末として、高価な貴金属に代えて、主としてニッケルなどの低価な非金属が用いられている。
【0004】
現在商用化されている積層セラミックコンデンサーの製造は、簡略に以下の工程を経る。まず、ニッケル粉、エチルセルロースなどのバインダー樹脂及びテルピネオールなどの有機溶剤を混錬することにより得られた内部電極ペーストを誘電体グリーンシートの上にスクリーン印刷する。次いで、前記内部電極ペーストが印刷された誘電体グリーンシートを内部電極ペーストと誘電体グリーンシートとが交互に重なり合うように積層して圧着することにより積層体を得る。その後、前記得られた積層体を所定の大きさにカットし、かつ、加熱してバインダー樹脂を取り除いた(以下、「脱バインダー処理」と称する。)後、約1,300℃の高温下で焼成することにより、セラミック成形体が得られる。最後に、前記得られたセラミック成形体に外部電極を設けることにより、積層セラミックコンデンサーが得られる。
【0005】
このとき、内部電極ペースト中の金属粉末としてニッケルなどの非金属が用いられるため、前記積層体の脱バインダー処理は、非金属が酸化されないように不活性雰囲気などの酸素の濃度が極めて低い雰囲気下で行われなければならない。
【0006】
一方、積層セラミックコンデンサーの小型化及び大容量化に伴い、近頃、内部電極及び誘電体の薄膜化の研究・開発への取り組みが一緒に行われている。特に、内部電極薄膜の膜厚を400nm以下に実現するために、内部電極ペーストに用いられるニッケル粉の粒子径もまた微細化が進んでおり、これにより、平均粒径0.5μm以下のニッケル粉が求められて、主として平均粒径0.3μm以下のニッケル粉が用いられている。
【0007】
これに関し、既存の公開技術には、このような電極の形成に際して厚さを最小限に抑えるために粒径が50nmに近い機能性粒子を含む内部電極ペーストを用いるなど、粒子の粒径を最小限に抑えたペースト組成物に関する技術が開示されている。しかしながら、結局のところ、組成物の安定性のために粒子の含量が全体の組成物の100重量部に基づいて50重量部を超えてしまうという問題が生じ、これにより、内部電極の厚さを400nm以下に減少させることができないという限界が存在するのが現状である。
【0008】
この理由から、本発明者らは、前記積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極形成用の透明な無粒子の導電性ニッケル錯化合物インキ組成物を製造して本発明を完成するに至った。前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であって、既存のペーストやインキに比べて金属の含量を少なくできるというメリットがあることから、競争力があり、これにより、薄い内部電極の厚さが得られるという長所がある。
【0009】
これに関し、日本国公開特許第2008-127657号公報は、ニッケル膜形成用の塗布液及びニッケル膜の製造方法、並びにニッケル膜について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開第2008-127657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、前述した問題を解消するために案出されたものであって、本発明の一実施形態は、透明なニッケル錯化合物インキ組成物及びその製造方法を提供する。
【0012】
しかし、本発明が解決しようとする技術的課題は、上述した課題に何ら制限されるものではなく、言及されていない他の技術的課題は、下記の記載から本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって明確に理解できるものであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した技術的課題を達成するための技術的手段として、本発明の一側面は、ニッケル及び前記ニッケルに配位結合された下記の化学式1で表わされる化合物を含む極性部と、溶媒と、その他の添加剤と、を含む透明なニッケル錯化合物インキ組成物であって、前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有するものである、透明なニッケル錯化合物インキ組成物を提供する。
【0014】
【化1】
【0015】
(上記の化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルケニル、C~C20のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール又はC~C20のアルキルカルボニルであり、
~Rのうちの少なくとも1つは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール及び直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル又はC~C20のアルケニルからなる群から選択されたいずれか1種であってもよい。)
上記の化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニル、C~C18のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルであってもよい。
【0016】
上記の化学式1中、R及びRは、水素であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換されたC~C18のアリール又はヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルであってもよい。
【0017】
上記の化学式1で表わされる化合物は、2-アミノ-1-メチル-1-プロパノール(2-amino-1-methyl-1-propanol)、ノルマルヘキシルアミン(n-hexylamine)、ヘキシルアミン(hexylamine)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)、ノルマルオクチルアミン(n-octylamine)、オクチルアミン(octylamine)、ドデシルアミン(dodecylamine)、オレイルアミン(oleylamine)、ベンジルアミン(benzylamine)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール(1-dimethylamino-2-propanol)、2-(ジエチルアミノ)エタノール(2-(diethylamino)ethanol)又はジフェニルアミン(diphenylamine)であってもよい。
【0018】
前記極性部の濃度は、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、8重量%~72重量%であってもよい。
【0019】
前記溶媒は、テルピネオール(terpineol)、アルファテルピネオール(α-terpineol)、ジヒドロテルピネオール(dihydro-terpineol)、テルピニルアセテート(terpinyl acetate)、ジヒドロテルピニルアセテート(dihydro terpinyl acetate)、イソボルニルアセテート(isobornyl acetate)、イソボルニルプロピオネート(isobornyl propionate)、イソボルニルイソブチレート(isobornyl isobutyrate)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dipropylene glycol monomethyl ether)、エチレングリコールフェニルエーテル(ethylene glycol phenyl ether)、プロピレングリコールフェニルエーテル(propylene glycol phenyl ether)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、ブタノール(butanol)、イソオクチルアルコール(isooctyl alcohol)、ジアセトンアルコール(diacetone alcohol)、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。
【0020】
前記その他の添加剤は、バインダー樹脂、可塑剤、安定化剤、分散剤、離型剤、還元剤、界面活性剤、湿潤剤、チキソ剤、レベリング剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。
【0021】
前記バインダー樹脂は、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、アクリル(acryl)、ポリビニルアセタール(polyvinyl acetal)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリスチレン(polystyrene)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。
【0022】
前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物を基材に塗布して形成された薄膜におけるニッケル粒子の最大の直径が、150nm以下であってもよい。
【0023】
前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極形成用、電磁波遮蔽用、太陽電池電極形成用又はディスプレイパネル電極形成用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物であることを特徴とするものであってもよい。
【0024】
本発明の他の一側面は、ニッケル前駆体及び下記の化学式1で表わされる化合物を混合してニッケル錯化合物を製造するステップと、前記ニッケル錯化合物を溶媒と混合するステップと、前記溶媒と混合されたニッケル錯化合物を加熱するステップと、前記加熱ステップにおいてバインダー樹脂を一緒に加熱するステップと、を含む透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法であって、前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有する透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法を提供する。
【0025】
【化2】
【0026】
(上記の化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルケニル、C~C20のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール又はC~C20のアルキルカルボニルであり、
~Rのうちの少なくとも1つは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール及び直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル又はC~C20のアルケニルからなる群から選択されたいずれか1種であってもよい。)
前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有するものであってもよい。
【0027】
前記加熱は、115℃未満において行われてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一側面によれば、透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、しあも、無粒子であることから、従来のペースト組成物に比べて薄いコーティングを行うことが可能であり、これにより、薄膜を形成することが可能である。
【0029】
また、前記ニッケル錯化合物インキ組成物を基材に塗布して形成された薄膜を構成するニッケル粒子の最大の直径は、150nm以下と非常に小さいことから、ニッケル内部電極の粗さが低く、このことは、MLCCの内部電極と誘電体グリーンシートとが交互に重なり合うように積層して圧着するときに密着度が高いという長所につながり、その結果、同一の体積のMLCC内の薄膜の数を増やして性能を向上させることができる。
【0030】
本発明の効果は、上記の効果に何ら限定されることはなく、本発明の詳細な説明の欄または特許請求の範囲に記載の発明の構成から推論可能なあらゆる効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1a】a及びbは、本発明の一実施例及び比較例に従い製造されたMLCCの内部電極形成用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物を示す写真である。
図1b図1aに関して説明した通り。
図2a】a~gは、本発明の一実施例及び比較例に従い製造された透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を示すグラフである。
図2b図2aに関して説明した通り。
図2c図2aに関して説明した通り。
図2d図2aに関して説明した通り。
図2e図2aに関して説明した通り。
図2f図2aに関して説明した通り。
図2g図2aに関して説明した通り。
図3a】a及びbは、本発明の一実施例及び比較例に従い製造されたニッケル内部電極の薄膜を示す写真である。
図3b図3aに関して説明した通り。
図4a】a~gは、それぞれ本発明の一実施例及び比較例に従い製造されたニッケル内部電極薄膜を示す走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
図4b図4aに関して説明した通り。
図4c図4aに関して説明した通り。
図4d図4aに関して説明した通り。
図4e図4aに関して説明した通り。
図4f図4aに関して説明した通り。
図4g図4aに関して説明した通り。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明についてさらに詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、したがって、ここで説明する実施形態により本発明が何ら限定されるものではなく、本発明は、特許請求の範囲のよってのみ定義される。
【0033】
ちなみに、本明細書において用いた用語は、単に特定の実施形態を説明するために用いられたものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は、文脈からみて明らかに他の意味を有さない限り、複数の言い回しを含む。この開示の明細書の全般に亘って、ある構成要素がある構成要素を「含む」とか「備える」とかと言及したとき、これは、特に断りのない限り、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素をさらに含んでいてもよいことを意味する。
【0034】
まず、本発明の一態様による前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、ニッケルを含む多岐にわたる電子機器、半導体の電極に使用可能なものであるか、あるいは、電磁波遮蔽用(EMI Shielding)に使用可能なものであり、例えば、MLCCの内部電極形成用、電磁波遮蔽用、太陽電池電極形成用又はディスプレイパネル電極形成用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物であり得、好ましくは、MLCCの内部電極形成用又は電磁波遮蔽用に用いられるニッケル錯化合物インキ組成物であり得る。
【0035】
MLCC(Multilayer Ceramic Capacitor)
MLCCは、Multilayer Ceramic Capacitorの頭文字をとったものであり、積層セラミックコンデンサーと呼ばれる。
【0036】
MLCCは、セラミック材料が誘電体の役割を果たす固定値をもったコンデンサーであって、2つ以上のセラミック層と電極の役割を果たす金属層とから構成されることが基本である。セラミック材料の構成は、MLCCの電気的な挙動とそれによる適用分野の範囲を決定する。
【0037】
最近のスマートフォン、携帯型パソコン(PC)、自動車産業におけるMLCCへのニーズの増加には目を見張るものがあり、これに伴い、世界中でMLCCの不足は主なイシューとして取り上げられている。我々が毎日のように使用するスマートフォン、パソコン、発光ダイオード(LED)TVなどの電子機器は、1000個以上のMLCCを備える。電気自動車においては、電子制御と自動化システムを実現すべく、一万個以上のMLCCが必要である。MLCCは、回路を介して流れる電流の量を振り分け及び調節し、ノイズの除去、電子機器の誤作動を防ぐため、数多くのMLCCが電子機器に装着されている。さらに、この高い性能、多機能性、高集積性をもった電子機器は、高容量の数多くのMLCCを必要とする。このような傾向と相まって、バッテリーと集積回路によって電子機器の内部空間が限られているため、高容量をもったMLCCの小型化が主なイシューである。
【0038】
高い体積効率と高容量のMLCCの開発のための重要な要因として、1)高い誘電率を有する誘電物質の使用、2)さらに多くの数の内部電極と誘電体層の積層、3)重なり合った内部電極の面積の増加、4)内部電極と誘電体層の厚さの減少が挙げられる。高い容量と体積効率のために、次世代のMLCCは、1μm未満の厚さの数多くの積層された誘電体層を有さなればならならい。特に、内部電極の場合には、400nm以下の厚さの数多くの積層を必要とする。
【0039】
MLCCの基本原理
MLCCが電気を貯蔵する基本原理は、誘電体の分極現象に基づいている。外部電場のない状態では、誘電体の内部の電気双極子が無秩序に分布されて絶縁体の特徴を示すものの、両端の電極に電圧を加えて誘電体フィルムに電場が生じると、双極子が磁場の方向に整列されて陽電極に陽電荷と陰電荷がそれぞれ密集する結果、電気を貯蔵することが可能になるのである。
【0040】
MLCCは、このようにして蓄電された電気を一時的に充電する機能をもった受動素子の核心部品であって、交流電流を通過させ、直流電流は遮断して、電流を常に一定に放電するという特性を有する。次世代の小型化及び高容量化の電子機器に用いられるための受動素子には、さらに高い静電容量を有しているMLCCが求められる。
【0041】
MLCCは、数多くの誘電体層と内部電極とが平行に交差して積層されてなる。内部電極は、表面装着のために、外部の終端に接続される。MLCCの容量は、下記の数式で書き表わされるが、
【0042】
【数1】
【0043】
εは比誘電率、εは真空誘電率、nは積層された内部電極の数、Sは内部電極の面積、Tは内部電極の厚さを示す。高い電気容量のMLCCを実現するためには、チップサイズを決定するとき、誘電体層の厚さと積層数が主な要素となる。すなわち、高容量を実現すべく、MLCCの静電容量を高めるためには、内部電極の表面積が最大化されなければならず、誘電体薄膜と内部電極の厚さは最小限に抑えられなければならない。しかしながら、素子の超小型化へのニーズに伴い、面積を増加させることは不可能であるため、内部電極の厚さを最小限に抑えて、同一の体積内の内部電極と誘電体薄膜を積層して高い静電容量を得なければならない。
【0044】
以下、MLCCの内部電極の厚さを最小限に抑えるための薄膜の形成が実現可能な本発明の各側面について詳しく説明する。
【0045】
本発明の第1の側面は、ニッケル及び前記ニッケルに配位結合された下記の化学式1で表わされる化合物を含む極性部と、溶媒と、その他の添加剤と、を含む透明なニッケル錯化合物インキ組成物であって、前記ニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であり、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上である値を有するものである透明なニッケル錯化合物インキ組成物を提供する。
【0046】
【化3】
【0047】
(上記の化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルケニル、C~C20のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール又はC~C20のアルキルカルボニルであり、
~Rのうちの少なくとも1つは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール及び直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル又はC~C20のアルケニルからなる群から選択されたいずれか1種であってもよい。)
以下、本発明の第1の側面による前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物及び前記ニッケル錯化合物インキ組成物を基材に塗布して形成された薄膜について詳しく説明する。
【0048】
本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、透明であり、無粒子であることを特徴とするものであってもよい。すなわち、従来のニッケルインキ組成物であるといえる内部電極ペーストの場合、粒径が50nmに近い機能性ニッケル粒子を、組成物の安定性のために、粒子の含量が全体の組成物100重量部に基づいて50重量部以上となるように含むため、内部電極の厚さを400nm以下に減少させることができないという限界が存在したものの、本発明による透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、無粒子であることを特徴とするもので、上記のような問題が生じないことから、内部電極の薄膜化を成し遂げることが可能である。これにより、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物を用いて製造された内部電極は、さらに多くの内部電極の積層数を実現することができるので、これを備える積層セラミックコンデンサーの小型化及び大容量化を成し遂げることができる。
【0049】
本発明の一態様において、好ましくは、上記の化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニル、C~C18のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルであってもよく、さらに好ましくは、R及びRは、水素であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換されたC~C18のアリール又はヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルであってもよい。
【0050】
本発明の一態様において、上記の化学式1で表わされる化合物は、2-アミノ-1-メチル-1-プロパノール(2-amino-1-methyl-1-propanol)、ノルマルヘキシルアミン(n-hexylamine)、ヘキシルアミン(hexylamine)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)、ノルマルオクチルアミン(n-octylamine)、オクチルアミン(octylamine)、ドデシルアミン(dodecylamine)、オレイルアミン(oleylamine)、ベンジルアミン(benzylamine)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール(1-dimethylamino-2-propanol)、2-(ジエチルアミノ)エタノール(2-(diethylamino)ethanol)又はジフェニルアミン(diphenylamine)であってもよい。すなわち、上記の化学式1に含まれている窒素の非共有電子対がニッケルと配位結合をなして極性部を形成するものであってもよい。
【0051】
本発明の一態様において、前記極性部の濃度は、前記ニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、8重量%~72重量%であってもよく、好ましくは、8重量%~64重量%であってもよく、さらに好ましくは、8重量%~56重量%であってもよい。前記極性部の濃度が前記導電性ニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、8重量%未満である場合、溶媒の含量が相対的に高いため、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物を基材に塗布して形成されたニッケル内部電極の形成の際に均一な薄膜を形成し難くなる虞があり、72重量%を超える場合、溶媒の含量が相対的に低いため、前記極性部及び溶媒が均一に混合されなくなる虞がある。
【0052】
本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、溶媒として、テルピネオール(terpineol)、アルファテルピネオール(α-terpineol)、ジヒドロテルピネオール(dihydro-terpineol)、テルピニルアセテート(terpinyl acetate)、ジヒドロテルピニルアセテート(dihydro terpinyl acetate)、イソボルニルアセテート(isobornyl acetate)、イソボルニルプロピオネート(isobornyl propionate)、イソボルニルイソブチレート(isobornyl isobutyrate)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ブチレングリコール(butylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、ジプロピレングリコール(dipropylene glycol)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dipropylene glycol monomethyl ether)、エチレングリコールフェニルエーテル(ethylene glycol phenyl ether)、プロピレングリコールフェニルエーテル(propylene glycol phenyl ether)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol)、ブタノール(butanol)、イソオクチルアルコール(isooctyl alcohol)、ジアセトンアルコール(diacetone alcohol)、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。すなわち、前記溶媒が前記極性部と上手く混合され、基材、特に、ガラスの表面に対して優れた濡れ性を示すことから、これを含む前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物を基材に塗布するときに薄い厚さを形成することができ、コーティング平坦度もまた抜群である。さらに、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(dipropylene glycol monomethyl ether)のように蒸気の圧力が低い溶媒の場合、通常の溶媒に比べて気化した分子の数が少ないので、少量の熱のみを加えても、液体状態の分子が速やかに気体の状態に変化することができる。このような溶媒を極性度が略同じである溶媒と併用する場合、液体状態の分子が気化するときに周りの溶媒分子とともに気体となるものであり得る。したがって、コーティング後の乾燥及び焼結工程においてコーティング面積の全面において優れた濡れ性を保ったままで、溶媒が全般的に速やかに気化するので、乾燥及び焼結工程後のコーティング平坦度もまた抜群である。したがって、これを基材に塗布するときに薄い厚さを形成することができ、コーティング平坦度もまた抜群である。したがって、これを積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極に適用すると、内部電極の基材となる誘電体グリーンシートへの濡れ性もまた抜群であるため、内部電極の薄膜化を成し遂げることができる。一方、前記溶媒の含量は、前記導電性ニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、12重量%~86重量%であってもよい。
【0053】
本発明の一態様において、前記その他の添加剤は、バインダー樹脂、可塑剤、安定化剤、分散剤、離型剤、還元剤、界面活性剤、湿潤剤、チキソ剤、レベリング剤及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。
【0054】
前記バインダー樹脂は、ポリビニルブチラール(polyvinyl butyral)、エチルセルロース(ethyl cellulose)、ポリビニルピロリドン(polyvinyl pyrrolidone)、アクリル(acryl)、ポリビニルアセタール(polyvinyl acetal)、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリオレフィン(polyolefin)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリスチレン(polystyrene)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。本発明の一態様において、前記湿潤剤としては、1,2-ヘキサンジオール(1,2-hexanediol)、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール又はトレハロースなどのポリオール、アミノ酸、尿素、乳酸塩又はPCA-Na(ピロリドンカルボン酸ナトリウム)などの天然補湿因子(NMF)、ヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩又は加水分解コラーゲンなどの高分子補湿剤などが使用可能である。
【0055】
本発明の一態様において、前記レベリング剤は、平滑(レベリング)作用をもった添加剤であって、ポリアミンなどの窒素を含む化合物が使用可能である。
【0056】
本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上であるものであってもよい。前記ニッケル錯化合物インキ組成物の600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)のピークが高く観察される理由は、上記の化学式1に含まれている窒素の非共有電子対がニッケルと配位結合をなして極性部を形成するときに、ニッケルのd軌道関数にエネルギー準位差が生じ、これにより、ニッケルの低いエネルギー準位のd軌道関数電子が600nm~650nmの波長帯における特定の波長の光を吸収して高いエネルギー準位のd軌道関数に移動することが測定されるからである。一方、前記吸光度(ABS)の値は、前記極性部の濃度が前記導電性ニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、8重量%~72重量%であるときの値を意味するものであってもよい。
【0057】
本発明の第2の側面は、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物を基材に塗布して形成された薄膜を提供する。このとき、前記基材の種類としては、種々のものが適用可能であるが、例えば、ガラスであってもよく、好ましくは、積層セラミックコンデンサー(MLCC)の内部電極の基材となる誘電体グリーンシートであってもよい。一方、前記MLCCの内部電極の透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、前記極性部と上手く混合され、蒸気の圧力が低い溶媒を含んでいることから、上記のような基材との濡れ性に優れており、コーティング後の乾燥及び焼結工程においてコーティング面積の全面において優れた濡れ性を保ったままで、溶媒が全般的に速やかに気化するので、乾燥及び焼結工程後のコーティング平坦度もまた抜群である。したがって、これを基材に塗布するときに薄い厚さを形成することができ、コーティング平坦度もまた抜群である。
【0058】
本発明の第1の側面と重複する部分については詳細な説明を省略したが、本発明の第1の側面について説明した内容は、第2の側面においてその説明が省略されたとしても、同様に適用可能である。
【0059】
本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物を含む薄膜のニッケル粒子最大の直径は、150nm以下であってもよい。このように、ニッケル粒子の平均直径が非常に小さくて、ニッケル内部電極の粗さが小さくなるという効果を奏することができる。このことは、MLCCの内部電極と誘電体グリーンシートとが交互に重なり合うように積層して圧着するときに密着度が高いという長所につながり、その結果、同一の体積のMLCC内の薄膜の数を増やして性能を向上させることができる。
【0060】
本発明の第3の側面は、ニッケル前駆体及び下記の化学式1で表わされる化合物を混合してニッケル錯化合物を製造するステップと、前記ニッケル錯化合物を溶媒と混合するステップと、前記溶媒と混合されたニッケル錯化合物を加熱するステップと、前記加熱ステップにおいてバインダー樹脂を一緒に加熱するステップと、を含む透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法を提供する。
【0061】
【化4】
【0062】
(上記の化学式1中、
~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルケニル、C~C20のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール又はC~C20のアルキルカルボニルであり、
~Rのうちの少なくとも1つは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C20のヘテロアリール及び直鎖もしくは分枝鎖のC~C20のアルキル又はC~C20のアルケニルからなる群から選択されたいずれか1種であってもよい。)
本発明の第1の側面と重複する部分については詳細な説明を省略したが、本発明の第1の側面について説明した内容は、第3の側面においてその説明が省略されたとしても、同様に適用可能である。
【0063】
以下、本発明の第3の側面による透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法についてステップごとに詳しく説明する。
【0064】
まず、本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法は、ニッケル前駆体及び下記の化学式1で表わされる化合物を混合してニッケル錯化合物を製造するステップを含む。
【0065】
本発明の一態様において、前記ニッケル前駆体は、ニッケルホルマート(CNiO)、ニッケルアセテート(Ni(CHCO)、塩化ニッケル(NiCl)、硫酸ニッケル(NiSO)、ニッケルアセチルアセトナート(Ni(C)、炭酸ニッケル(NiCO)、ニッケルシクロヘキサンブチレート([C11(CHCONi)、硝酸ニッケル(Ni(NO)、ニッケルオキサラート(NiC)、ニッケルステアラート(Ni(HC(CH16CO、ニッケルオクタノナート([CH(CHCONi)及びこれらの水和物を含む組み合わせからなる群から選択される物質を含むものであってもよい。このとき、前記ニッケル前駆体に含まれているカルボキシル基は、後続する脱バインダーステップにおいてCOとして蒸発されて取り除かれるものであってもよく、したがって、最終的に製造された組成物は、ニッケル粒子に配位結合された上記の化学式1で表わされる化合物を含む極性部と溶媒のみを含むものであってもよい。
【0066】
本発明の一態様において、好ましくは、上記の化学式1中、R~Rは、それぞれ独立して、水素、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニル、C~C18のシクロアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換された若しくは無置換のC~C18のヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルであってもよく、さらに好ましくは、R及びRは、水素であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖のC~Cのアルキル、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキルで置換されたC~C18のアリール又はヘテロアリール、直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルキル又は直鎖もしくは分枝鎖のC~C18のアルケニルであってもよい。
【0067】
最も好ましくは、本発明の一態様において、上記の化学式1で表わされる化合物は、2-アミノ-1-メチル-1-プロパノール(2-amino-1-methyl-1-propanol)、ノルマルヘキシルアミン(n-hexylamine)、ヘキシルアミン(hexylamine)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)、ノルマルオクチルアミン(n-octylamine)、オクチルアミン(octylamine)、ドデシルアミン(dodecylamine)、オレイルアミン(oleylamine)、ベンジルアミン(benzylamine)、1-ジメチルアミノ-2-プロパノール(1-dimethylamino-2-propanol)、2-(ジエチルアミノ)エタノール(2-(diethylamino)ethanol)又はジフェニルアミン(diphenylamine)であってもよい。すなわち、上記の化学式1に含まれている窒素の非共有電子対がニッケルと配位結合をなして極性部を形成するものであってもよい。
【0068】
本発明の一態様において、前記ニッケル前駆体と配位結合をなす上記の化学式1で表わされる化合物のモル数は、前記ニッケル前駆体のモル数に比べて2倍~6倍であってもよく、好ましくは、4倍であってもよい。すなわち、前記ニッケル前駆体と上記の化学式1で表わされる化合物とが配位結合をなすことにより、極性部を形成するものであってもよい。このとき、上記の化学式1で表わされる化合物のモル数が前記ニッケル前駆体のモル数に比べて2倍未満である場合に前記極性部が形成されなくなる虞があり、6倍を超える場合に錯化合物を形成できずに残留する化学式1で表わされる化合物によって、後続する脱バインダーの処理に際して多量の気泡が生じる虞があるため、内部電極の薄膜に空隙が生じて導電性が低下するという問題が生じる虞がある。
【0069】
次いで、本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法は、前記ニッケル錯化合物を溶媒と混合するステップを含む。
【0070】
本発明の一態様において、前記混合される溶媒の含量は、前記導電性ニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、12重量%~86重量%であってもよく、好ましくは、20重量%~82重量%であってもよい。前記溶媒の含量が12重量%未満である場合、製造される透明なニッケル錯化合物インキ組成物の分散安定性が低下する虞があり、86重量%を超える場合、ニッケル錯化合物に比べて溶媒の含量が多過ぎて基材に塗布して形成されたニッケル内部電極の均一な薄膜を形成し難くなる虞がある。一方、前記溶媒の具体的な種類については、前記本発明の第1の側面において説明したため、本発明の第3の側面においてはその説明を省略する。
【0071】
次いで、本発明の一態様において、前記薄膜形成用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法は、前記溶媒と混合されたニッケル錯化合物を加熱するステップを含む。
【0072】
本発明の一態様において、前記加熱は、115℃未満において行われてもよく、これを通じて、前記ニッケル前駆体に含まれている水和物が蒸発されて取り除かれてもよい。
【0073】
本発明の一態様において、前記薄膜形成用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造方法は、前記溶媒と混合されたニッケル錯化合物を加熱するステップにおいてバインダー樹脂を一緒に加熱するステップを含んでいてもよい。
【0074】
本発明の一態様において、前記透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)が1.0以上であるものであってもよい。前記ニッケル錯化合物インキ組成物の600nm~650nmの波長帯における吸光度(ABS)のピークが高く観察される理由は、上記の化学式1に含まれている窒素の非共有電子対がニッケルと配位結合をなして極性部を形成するときに、ニッケルのd軌道関数にエネルギー準位差が生じ、これにより、ニッケルの低いエネルギー準位のd軌道関数電子が600nm~650nmの波長帯における特定の波長の光を吸収して高いエネルギー準位のd軌道関数に移動することが測定されるからである。一方、前記吸光度(ABS)の値は、前記極性部の濃度が前記導電性ニッケル錯化合物インキ組成物の全重量に基づいて、8重量%~72重量%であるときの値を意味するものであってもよい。
【0075】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように実施例を挙げて本発明の実施形態について詳しく説明する。しかしながら、本発明は、種々の異なる形態に具体化可能であり、ここで説明する実施形態に何ら限定されるものではない。
【0076】
実施例1:ニッケル内部電極の製造
ステップ1:透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造
ニッケルアセテート(nickel acetate)、ベンジルアミン(benzylamine)をモル比1:4で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部21.4wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を73.6wt%で溶媒として混合し、前記透明なニッケル錯化合物インキにバインダーとしてPVB(ポリビニルブチラール)5wt%を混合して100℃において攪拌して透明なニッケル錯化合物インキ組成物を製造した。
【0077】
ステップ2:ニッケル内部電極の製造
前記ステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物をガラスに30μmのアプリケーター(applicator)にてドクターブレード(doctor blade)印刷して600℃において乾燥させてニッケル内部電極を製造した。
【0078】
実施例2:ニッケル内部電極の製造
前記実施例1のステップ1において、ニッケルアセテート(nickel acetate)、シクロヘキシルアミン(cyclohexylamine)をモル比1:4で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部20.6wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を74.4wt%で溶媒として混合したことを除いては、実施例1の方法と同様にしてニッケル内部電極を製造した。
【0079】
実施例3:ニッケル内部電極の製造
前記実施例1のステップ1において、ニッケルアセテート(nickel acetate)、n-オクチルアミン(n-octylamine)をモル比1:4で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部23.5wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を71.5wt%で溶媒として混合したことを除いては、実施例1の方法と同様にしてニッケル内部電極を製造した。
【0080】
実施例4:ニッケル内部電極の製造
前記実施例1のステップ1において、ニッケルアセテート(nickel acetate)、n-オクチルアミン(n-octylamine)をモル比1:4で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部13.4wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を81.6wt%で溶媒として混合したことを除いては、実施例1の方法と同様にしてニッケル内部電極を製造した。
【0081】
比較例1:ニッケル内部電極の製造
ステップ1:透明なニッケル錯化合物インキ組成物の製造
ニッケルアセテート(nickel acetate)、エチレンジアミン(ethylene diamine)をモル比1:2で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部13.0wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を82.0wt%で溶媒として混合し、前記透明なニッケル錯化合物インキにバインダーとしてPVB(ポリビニルブチラール)5wt%を混合して100℃において反応させて透明なニッケル錯化合物インキ組成物を製造した。
【0082】
ステップ2:ニッケル内部電極の製造
前記ステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物をガラスに30μmのアプリケーター(applicator)にてドクターブレード(doctor blade)印刷して600℃において乾燥させてニッケル内部電極を製造した。
【0083】
比較例2:ニッケル内部電極の製造
前記比較例1のステップ1において、ニッケルアセテート(nickel acetate)、n-オクチルアミン(n-octylamine)をモル比1:4で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部7.2wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を87.8wt%で溶媒として混合したことを除いては、比較例1の方法と同様にしてニッケル内部電極を製造した。
【0084】
比較例3:ニッケル内部電極の製造
前記比較例1のステップ1において、ニッケルアセテート(nickel acetate)、n-オクチルアミン(n-octylamine)をモル比1:4で混合してニッケル極性部を構成し、前記極性部3.7wt%にジアセトンアルコール(diacetone alcohol)を91.3wt%で溶媒として混合したことを除いては、比較例1の方法と同様にしてニッケル内部電極を製造した。
【0085】
実験例1.MLCCの内部電極用の透明なニッケル錯化合物インキ組成物の外観の比較
実験例1-1.アンモニウムリガンドの種類に応じた外観の比較
アンモニウムリガンドの種類に応じた透明なニッケル錯化合物インキ組成物の外観を比較するために、前記実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物及び比較例1のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の写真を図1aにそれぞれ示す。まず、図1aに示すように、本発明の実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の場合に透明であり、沈殿物が形成されないことから、ニッケル粒子を含まない無粒子の状態であることを確認することができた。
【0086】
また、比較例1のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の場合にも透明であり、沈殿物が形成されないことから、ニッケル粒子を含まない無粒子の状態であることを確認することができた。このことから、透明なニッケル錯化合物インキ組成物の場合にアンモニウムリガンドの種類に応じて色の違いのみがあるだけであり、一価のアンモニウムリガンドか二価以上のアンモニウムリガンドかは無関係に透明であり、沈殿物が形成されないことから、ニッケル粒子を含まない無粒子の状態になり得るということが分かった。
【0087】
実験例1-2.極性部濃度による外観の比較
図1aに示す実施例3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物と図1bに示す実施例4のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物、そして、図1bに示す比較例2~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物のように、極性部の含量が減少し、溶媒の含量が増加することにつれて、透明なニッケル錯化合物インキ組成物の濃度が薄くなることを確認することができた。
【0088】
実験例2.透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度の測定
実験例2-1.アンモニウムリガンド種類に応じた吸光度の比較
実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物と比較例1のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を測定するために、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の分光光度計BioMate(商標名)160を使用した。これを用いて、200nm~900nmの波長帯における吸光度を測定して、この結果を図2a~2c及び図2dにそれぞれ示す。図2a~2cは、実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を示すグラフであり、図2dは、比較例1のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を示すグラフである。
【0089】
図2a~図2cに示すように、実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、約600nm~750nmの波長帯の光に対する吸光度が存在することを確認することができた。具体的には、650nmの波長帯の光に対する吸光度(ABS)は、1.5以上の値を有していることを確認することができた。これに対し、図2dに示す比較例1のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の場合に、前記図2a~図2cに示す実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物とは異なり、500nm~650nmの波長帯の光に対する吸光度が存在することを確認することができた。具体的には、650nmの波長帯の光に対する吸光度(ABS)は、実施例1~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物がそれぞれ2.3以上の値と1.5以上の値と2.3以上の値を、比較例1のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物が1.0以上の値を有していることを確認することができた。
【0090】
すなわち、前記実験例1-1から明らかなように、透明なニッケル錯化合物インキ組成物の場合に、アンモニウムリガンドの種類のうち、一価のアンモニウムリガンドを用いると、650nmの波長帯の光に対する吸光度(ABS)の値が1.0以上の値を有していることを確認することができた。
【0091】
実験例2-2.極性部の濃度に応じた吸光度の比較
実施例3及び4のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物と比較例2及び3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を測定するために、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製の分光光度計BioMate(商標名)160を使用した。これを用いて、200nm~900nmの波長帯における吸光度を測定して、この結果を図2eと図2f及び2gにそれぞれ示す。図2cは、実施例3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を示すグラフであり、図2eは、実施例4のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を示すグラフであり、そして、図2f及び2gは、それぞれ比較例2及び3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の吸光度を示すグラフである。
【0092】
図2cに示すように、実施例3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物は、約600nm~750nmの波長帯の光に対する吸光度が存在することを確認することができた。具体的には、650nmの波長帯の光に対する吸光度(ABS)は、2.3以上の値を有していることを確認することができた。また、図2eに示す実施例4のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物と図2f及び図2gに示す比較例2及び3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物の場合に、前記図2cに示す実施例3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物と同様に、600nm~750nmの波長帯の光に対する吸光度が存在することを確認することができた。これに対し、具体的には、650nmの波長帯の光に対する吸光度(ABS)は、実施例4のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物が1.4以上の値を、比較例2~3のステップ1において製造した透明なニッケル錯化合物インキ組成物がそれぞれ0.7以上の値と0.3以上の値を有していることを確認することができた。
【0093】
すなわち、前記実験例1-2から明らかなように、極性部の含量が減少し、溶媒の含量が増加することにつれて、透明なニッケル錯化合物インキ組成物の濃度が薄くなることを吸光度(ABS)値を通じて確認することができた。
【0094】
実験例3.ニッケル内部電極の観察
実験例3-1.アンモニウムリガンド種類に応じたニッケル内部電極の比較
実施例1~3のステップ2において製造したニッケル内部電極及び比較例1のステップ2において製造したニッケル内部電極の写真を図3aに示す。また、前記実施例1~3のステップ2において製造したニッケル内部電極及び比較例1のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜の形状を観察するために走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮り、この結果を図4a~4dにそれぞれ示す。
【0095】
図3aに示すように、実施例1~3のステップ2において製造したニッケル内部電極及び比較例1のステップ2において製造したニッケル内部電極の場合に、一価のアンモニウムリガンドか二価以上のアンモニウムリガンドかは無関係に、あたかも目視上の相違点がないかのように見えるが、図4a~4dに示すように、一価のアンモニウムリガンドを用いた実施例1~3のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜を構成するニッケル粒子の最大の直径に比べて、二価のアンモニウムリガンドを用いた比較例1のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜を構成するニッケル粒子の最大の直径の方がさらに大きいことを確認することができた。特に、図4cに示す一価のアンモニウムリガンドであるノルマルオクチルアミン(n-octylamine)を用いた実施例3のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜を構成するニッケル粒子の場合に、平均直径が非常に小さいのに対し、図4dに示す二価のアンモニウムリガンドであるエチレンジアミン(ethylene diamine)を用いた比較例1のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜を構成するニッケル粒子の最大の直径は、150nmに近いということを確認することができた。また、これによって、実施例3のステップ2において製造したニッケル内部電極の場合の方が、比較例1のステップ2において製造したニッケル内部電極に比べて、粗さがさらに小さいことを確認することができた。
【0096】
このことは、MLCCの内部電極と誘電体グリーンシートとが交互に重なり合うように積層して圧着するときに密着度が高いという長所につながり、その結果、同一の体積のMLCC内の薄膜の数を増やして性能を向上させることができる。
【0097】
実験例3-2.極性部の濃度に応じたニッケル内部電極の比較
前記実施例4のステップ2において製造したニッケル内部電極及び比較例2及び3のステップ2において製造したニッケル内部電極の写真を図3bに示す。また、前記実施例4のステップ2において製造したニッケル内部電極及び比較例2及び3のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜の形状を観察するためにSEM写真を撮り、この結果を図4e~図4gにそれぞれ示す。
【0098】
図4eに示すように、実施例4のステップ2において製造したニッケル内部電極の場合とは異なり、比較例2~3のステップ2において製造したニッケル内部電極の場合には、均一な薄膜が形成されないことから、団塊状になっていることを確認することができた。このことは、図4eに示すように、実施例4のステップ2において製造したニッケル内部電極の場合に均一な薄膜が形成されていることを確認することができるのに対し、図4fに示す比較例2のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜が途切れていることと、図4gに示す比較例3のステップ2において製造したニッケル内部電極の薄膜が観察されないことを通じて確認することができた。このことは、極性部の含量が減少し、溶媒の含量が増加することにつれて、均一な薄膜が形成され難くなる可能性があることを示唆する。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図4g
【国際調査報告】