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特表2024-521642ディスプレイデバイスにおける使用のための回路用薄膜トランジスタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】ディスプレイデバイスにおける使用のための回路用薄膜トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20240528BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20240528BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240528BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240528BHJP
   G09G 3/3266 20160101ALI20240528BHJP
   G09G 3/36 20060101ALI20240528BHJP
   H10K 59/12 20230101ALI20240528BHJP
【FI】
H01L29/78 612C
H01L29/78 618B
H01L29/78 612Z
H01L29/78 617N
G09F9/30 365
G09F9/30 338
G09F9/30 348A
G09G3/20 624B
G09G3/3266
G09G3/20 621M
G09G3/20 680G
G09G3/20 622E
G09G3/20 611J
G09G3/20 611D
G09G3/20 621F
G09G3/20 611H
G09G3/20 642A
G09G3/20 670K
G09G3/20 611A
G09G3/36
H10K59/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023568456
(86)(22)【出願日】2021-05-07
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 US2021031364
(87)【国際公開番号】W WO2022235273
(87)【国際公開日】2022-11-10
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】イム, ドンキル
(72)【発明者】
【氏名】チェ, スヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジョンベ
【テーマコード(参考)】
3K107
5C006
5C080
5C094
5C380
5F110
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC31
3K107EE04
3K107HH05
5C006AA16
5C006AF50
5C006BB16
5C006BC02
5C006BC03
5C006BC06
5C006BC11
5C006BC20
5C006BF25
5C006BF34
5C006BF42
5C006FA12
5C006FA22
5C006FA25
5C006FA33
5C006FA36
5C006FA46
5C006FA47
5C080AA06
5C080AA10
5C080BB05
5C080DD05
5C080DD08
5C080DD10
5C080DD25
5C080DD26
5C080DD29
5C080EE29
5C080FF03
5C080FF11
5C080HH09
5C080JJ02
5C080JJ03
5C080JJ05
5C080JJ06
5C080KK02
5C080KK04
5C080KK07
5C080KK43
5C094AA02
5C094AA04
5C094AA25
5C094BA03
5C094BA27
5C094BA43
5C094CA19
5C094DA09
5C094DA13
5C094DB04
5C094FA01
5C094FA02
5C094FB02
5C094FB14
5C094HA08
5C380AA01
5C380AB06
5C380AB11
5C380AB12
5C380AB18
5C380AB24
5C380AC07
5C380AC11
5C380AC12
5C380BA01
5C380BA05
5C380BA10
5C380BA20
5C380BB05
5C380BB11
5C380BB21
5C380BB22
5C380BB23
5C380BD05
5C380CA12
5C380CB14
5C380CB26
5C380CC02
5C380CC26
5C380CC30
5C380CC33
5C380CC62
5C380CC77
5C380CD012
5C380CF12
5C380DA02
5C380DA06
5C380HA02
5C380HA05
5C380HA12
5F110AA01
5F110AA06
5F110AA07
5F110AA08
5F110AA14
5F110BB02
5F110CC01
5F110DD01
5F110DD02
5F110DD05
5F110DD13
5F110DD14
5F110DD15
5F110DD17
5F110EE02
5F110EE04
5F110EE06
5F110EE07
5F110EE30
5F110FF01
5F110FF02
5F110FF03
5F110GG01
5F110GG02
5F110GG13
5F110HL02
5F110HL04
5F110HL06
5F110HL07
5F110NN22
5F110NN23
5F110NN24
5F110NN71
5F110NN73
(57)【要約】
駆動薄膜トランジスタを含むデバイスが、本明細書で開示される。駆動薄膜トランジスタは、金属酸化物チャネルと、駆動金属酸化物チャネルと接触するソース電極と、金属酸化物チャネルより上に配置され、駆動ソース電極に物理的に接続されているトップゲート電極とを含む。
【選択図】図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動薄膜トランジスタ(TFT)を備えるデバイスであって、前記駆動TFTが、
駆動チャネルと、
前記駆動チャネルと電気的に接続された駆動ソース電極と、
前記駆動チャネルより上に配置され、前記駆動ソース電極に電気的に接続された駆動トップゲート電極とを備える、デバイス。
【請求項2】
1つまたは複数のスイッチングTFTをさらに備え、各スイッチングTFTが、
スイッチング金属酸化物(MO)チャネルと、
前記スイッチングMOチャネルより上に配置されたスイッチングトップゲート電極とを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
少なくとも1つのスイッチングTFTが、前記スイッチングトップゲート電極に電気的に接続されたスイッチングボトムゲート電極を備える、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記1つまたは複数のスイッチングTFTのそれぞれが、ピクセル回路における、またはゲートドライバオンアレイ(GOA)回路における使用のために動作可能である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記駆動TFTが駆動ボトムゲート電極をさらに備え、ゲートバイアスが、前記駆動ボトムゲート電極に印加される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
駆動薄膜トランジスタ(TFT)を備えるデバイスであって、前記駆動TFTが、
第1のチャネルと、
前記第1のチャネルより下に配置された第1のボトムゲート電極と
を備える第1のTFTと、
第2のチャネルと、
前記第2のチャネルより下に配置され、前記第1のTFTの前記第1のボトムゲート電極に電気的に接続された第2のボトムゲート電極と
を備える第2のTFTと、を備える、デバイス。
【請求項7】
前記第1のTFTが、前記第1のチャネルより上に配置された第1のトップゲート電極を備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
1つまたは複数のスイッチングTFTをさらに備え、各スイッチングTFTがトップゲート電極TFTであり、前記トップゲート電極TFTがボトムゲート電極を有さない、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
1つまたは複数のスイッチングTFTをさらに備え、各スイッチングTFTが、
スイッチングボトムゲート電極と、
前記スイッチングボトムゲート電極より上に配置されたスイッチング金属酸化物(MO)チャネルと、
前記スイッチングMOチャネルより上に配置されたスイッチングトップゲート電極とを備え、前記スイッチングトップゲート電極が、前記スイッチングボトムゲート電極に電気的に接続されている、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
ゲートドライバオンアレイ(GOA)回路を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
ピクセル回路を備える、請求項9に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1のチャネルの上に配置され、前記第2のチャネルの上に延びるトップゲート絶縁層をさらに備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項13】
前記第1のチャネルの上に配置された第1のトップゲート絶縁層と、前記第2のチャネルの上に配置された第2のトップゲート絶縁層とをさらに備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項14】
駆動薄膜トランジスタ(TFT)を備えるデバイスであって、前記駆動TFTが、
第1のチャネルと、
前記第1のチャネルより上に配置された第1のトップゲート電極と
を備える第1のTFTと、
第2のチャネルと、
前記第2のチャネルより上に配置され、前記第1のTFTの前記第1のトップゲート電極に電気的に接続された第2のトップゲート電極と
を備える第2のTFTと、を備える、デバイス。
【請求項15】
1つまたは複数のスイッチングTFTをさらに備え、各スイッチングTFTが、
スイッチングチャネルと、
前記スイッチングチャネルより上に配置されたスイッチングトップゲート電極と、を備える、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
1つまたは複数のスイッチングTFTをさらに備え、各スイッチングTFTが、前記スイッチングチャネルより下に配置されたスイッチングボトムゲート電極を備え、前記スイッチングトップゲート電極が、前記スイッチングボトムゲート電極に電気的に接続されている、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルのうちの少なくとも一方が、インジウム、亜鉛、ガリウム、酸素、アルミニウム、スズ、In-Zn-O、In-Sn-O、In-Zn-Sn-O、In-Ga-O、In-Ga-Zn-O、In-Ga-Sn-O、In-Ga-Zn-Sn-O、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む層を含む金属酸化物である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルのうちの少なくとも一方が、低温ポリシリコン(LTPS)の単層である、請求項14に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第1のチャネルもしくは前記第2のチャネルのうちの少なくとも一方、または、前記第1のチャネルと前記第2のチャネルとの両方が、それぞれ単層から構成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第1のチャネルまたは前記第2のチャネルのうちの少なくとも一方が、2つ以上の層を備え、各層が、異なる電子移動度を有する、請求項14に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、ゲート(スキャン)ドライバオンアレイ(GOA)回路、および/または、ピクセル回路に使用される、駆動薄膜トランジスタ(TFT)、および/または、スイッチングTFTを有するデバイスに関する。デバイスは、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイスクリーンなどのディスプレイスクリーンにおいて使用され得る。
【背景技術】
【0002】
薄膜トランジスタ(TFT)は、ガラスなどの支持基板の上に、活性半導体層ならびに誘電体層の薄膜と、金属コンタクトとを堆積させることによって作られる。特に、TFTは、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)とすることができる。
【0003】
TFTは、液晶ディスプレイ(LCD)および有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイ向けの、TFTの高解像度、低電力消費、および高速動作により、ディスプレイ用途において大きな関心を集めている。TFTはディスプレイのパネル内に埋め込まれている。ディスプレイモジュール内のソースドライバICからのデータライン電圧信号と、ディスプレイパネル内の周辺ディスプレイパネルエリア内のゲートドライバ回路からのスキャンライン電圧信号とが、ピクセル回路内のTFTに送達されて、アクティブディスプレイパネルエリア内のTFTをオンおよびオフすることによってディスプレイ画像を制御する。画像ゆがみは、より高い移動度によりTFTの応答を改善すること、および/または、ピクセル間のクロストークを低減することによって、減少させる。LCDもしくはOLEDテレビ(TV)またはモニタを含むほとんどのディスプレイ製品は、パネル内にTFTを含む。多くの現代の高解像度および高品質の電子ビジュアルディスプレイデバイスは、多数のTFTをピクセル回路の構成要素として用いるアクティブマトリクスベースのOLEDディスプレイを使用する。TFT技術の1つの有益な側面は、ディスプレイ上の各ピクセルに対して別個のTFTを使用することである。各TFTは、ディスプレイ画像の増大した制御のために、データラインまたはゲート信号ラインを通じて電圧および電流を制御することによって、ピクセル回路またはゲートドライバ回路内の電流スイッチまたは電流源として機能する。高移動度のTFTからのオン電流がより高くなると、ディスプレイ画像の素早いリフレッシュと、データのゆがみおよびゲート信号電圧を最小化することによるより優れた画像品質とが実現する。
【0004】
OLEDディスプレイパネル向けの従来のTFTの1つの欠点は、従来のTFTが、安定性と、色および/またはグレースケールに対する電圧制御と、表示動作中の駆動TFTにおけるオン電流変動に起因するOLED均一性変化によるOLED電流制御の制御に対するピクセル回路の構成要素としての駆動TFTからのドレイン電圧に対して高感度であることと、特に高解像度および/または大型スクリーンディスプレイに対して、ピクセル回路の構成要素としてのスイッチングTFTの応答が低速であることと、に対して制限を有し得ることである。
【0005】
したがって、必要とされるのは、オフリーク電流が低い、ピクセル回路向けの改善されたスイッチングおよび駆動TFTならびにゲートドライバ回路向けの改善されたスイッチングTFTである。
【発明の概要】
【0006】
本明細書において開示されたのは、駆動チャネルを含む駆動薄膜トランジスタ(TFT)を有するデバイスである。駆動ソース電極は駆動チャネルに電気的に接続され、駆動チャネルより上に配置され、駆動ソース電極に電気的に接続された駆動トップゲート電極。
【0007】
いくつかの実施形態では、第1のTFTを含む駆動薄膜トランジスタ(TFT)を有するデバイスが用意される。第1のTFTは、第1のチャネルと、第1のチャネルより下に配置された第1のボトムゲート電極とを含む。第2のチャネルと、第2のチャネルより下に配置され、第1のTFTの第1のボトムゲート電極に電気的に接続された第2のボトムゲート電極と、を有する第2のTFTが用意される。
【0008】
いくつかの実施形態では、駆動薄膜トランジスタ(TFT)を有するデバイスが用意される。駆動TFTは第1のTFTを含む。第1のTFTは、第1のチャネルと、第1のチャネルより上に配置された第1のトップゲート電極とを含む。駆動TFTは、第2のチャネルと、第2のチャネルより上に配置され、第1のTFTの第1のトップゲート電極に電気的に接続された第2のトップゲート電極と、を含む第2のTFTを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、駆動薄膜トランジスタ(TFT)を有するデバイスが用意される。駆動TFTは、第1のチャネルと、第1のチャネルより上に配置された第1のトップゲート電極と、を備える第1のTFTを含む。駆動TFTは、第2のチャネルと、第2のチャネルより上に配置され、第1のTFTの第1のトップゲート電極に電気的に接続された第2のトップゲート電極と、を有する第2のTFTを含む。
【0010】
本開示の上記で列挙した特徴を詳細に理解することができる様式で、その一部が添付図面に示される実施形態を参照することにより、上記で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明を得ることができる。しかしながら、添付図面は例示的実施形態を例証しているにすぎず、したがって、本開示は他の等しく有効な実施形態を許容することができるので、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】いくつかの実施形態による、簡略化された有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)パネルの概略図である。
図2】いくつかの実施形態による、OLEDパネルの表示エリアにおけるアクティブマトリクスピクセルアレイの概略図である。
図3A】いくつかの実施形態による、ボトムエミッションOLEDディスプレイの概略図である。
図3B】いくつかの実施形態による、トップエミッションOLEDディスプレイを伴う概略図である。
図4】いくつかの実施形態による、OLEDディスプレイパネルにおけるピクセル回路およびGOA回路の簡略化されたセットの概略図である。
図5A】いくつかの実施形態による、ピクセル回路の駆動トランジスタを示す図である。
図5B】いくつかの実施形態による、ピクセル回路の駆動トランジスタを示す図である。
図6】いくつかの実施形態による、ピクセル回路の駆動トランジスタを示す図である。
図7】いくつかの実施形態による、ピクセル回路の駆動トランジスタを示す図である。
図8】いくつかの実施形態による、ピクセル回路の駆動トランジスタを示す図である。
図9】いくつかの実施形態による、ピクセルおよび/またはGOA回路向けのスイッチングトランジスタを示す図である。
図10】いくつかの実施形態による、ピクセルおよび/またはGOA回路向けのスイッチングトランジスタを示す図である。
図11】いくつかの実施形態による、同じ基板上に配置された駆動トランジスタおよびスイッチングトランジスタを示す図である。
図12】いくつかの実施形態による、トランジスタのゲート電圧に対するドレインソース電流の挙動比較のグラフ図である。
図13A】いくつかの実施形態による、スイッチングトランジスタに対する出力曲線のグラフ図である。
図13B】いくつかの実施形態による、スイッチングトランジスタに対する出力曲線のグラフ図である。
図14A】いくつかの実施形態による、駆動トランジスタに対する出力曲線のグラフ図である。
図14B】いくつかの実施形態による、駆動トランジスタに対する出力曲線のグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするため、可能な場合には、図に共通である同一の要素を示すために、同一の参照番号を使用した。1つの実施形態で開示された要素は、特定の詳述なく他の実施形態に対して有益に利用することができることが企図されている。本明細書で参照される図面は、特に言及されていない限り一定の縮尺で描かれているとは理解しないものとする。さらに、図面はたびたび簡略化され、詳細または構成要素は、提示および説明を明瞭にするために省略されている。図面および考察は、下記で論じられた原理を説明するのに役立ち、但し、同様の記号表示は同様の要素を示す。
【0013】
下記の詳細説明は、本質的に単に例示であり、本開示または本願ならびに本開示の使用を制限することを意図するものではない。さらに、先行する背景、概要、または以下の詳細説明において提示される任意の表現されるまたは示唆される理論によって制約されることを意図するものではない。
【0014】
本明細書における実施形態は、ディスプレイデバイスなどのデバイス向けの回路において使用される薄膜トランジスタ(TFT)を含む。本明細書で開示されるTFTは、TFTにおけるオン電流がより高いことにより、TFTの、高い安定性、十分な制御、および素早い応答によって高電流を輸送し、バイアスを印加するための電極の選択を各回路に対して接続するための電極の選択と組み合わせる。本明細書に記述されているTFTは、ピクセル回路向けの駆動TFTとして、ならびに、ゲートドライバオンアレイ(GOA)回路およびピクセル回路向けのスイッチングTFTとして使用することができる。TFTのうちの1つまたは複数は、高キャリア密度の金属酸化物チャネルの上に配置されたゲート構造を含む。ゲート構造は、1つまたは複数のゲート電極を含み、したがって、TFTはトップゲート(TG)、ダブルゲート(DG)、またはボトムゲート(BG)TFTである。本明細書に記述されているTFTは、ダブルゲート構造に特に有用である。チャネルは各TFTに対して異なる利益をもたらすさまざまな電子移動度の1つまたは複数の層を含むことができる。特に、チャネルの高移動度層は、TFTの応答速度を増大させ、低移動度層は、同じTFT内の高移動度層よりも、より正のしきい値電圧(ターンオン電圧)およびより低いリーク電流を可能にする。低移動度層と高移動度層との組み合わせは、本明細書で説明したように、改善された移動度、より低いオフリーク電流、および正のしきい値電圧(ターンオン電圧)などの改善された品質を備えるTFTをもたらす。
【0015】
ディスプレイ向けのOLEDピクセルのサブピクセルを動作させるために、少なくとも1つのスイッチングトランジスタ、1つの駆動トランジスタ、および1つのコンデンサが使用される。スイッチングTFTは、データ電圧をコンデンサ(ストレージ)に渡す。ストレージコンデンサは、駆動TFTのためのゲートに接続される。ストレージキャパシタンスに接続された駆動TFTのゲート電圧は、駆動TFTのどれだけの電流が、明度を制御するためにOLEDに流れているかを決定する。ストレージコンデンサの必要とされるキャパシタンスは、フレームレートと、ストレージコンデンサ、およびディスプレイのための駆動TFTのゲートの両方に接続されたスイッチングTFTのリーク電流と、によって決定される。
【0016】
図1は、簡略化された有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)パネル100の概略図である。OLEDパネル100は、ゲートドライバオンアレイ(GOA)回路のためのスイッチングTFTの非表示エリア102、ピクセル回路のためのスイッチングおよび駆動TFTの表示エリア104、ならびにソース(データ)ドライバ集積回路のエリア106を含む。いくつかの態様では、非表示エリア102は、1つもしくは複数の側部に配置された、または表示エリア104を取り囲む、エッジ領域内に配置される。
【0017】
図2は、OLEDパネル100の表示エリア104におけるアクティブマトリクスピクセルアレイの概略図である。表示エリア104は、行260および列280に配列されたピクセル290、すなわち、第1のピクセル290、第2のピクセル290、第3のピクセル290などのアレイを有する。各ピクセル290は、ピクセル290の値を決定するための複数のサブピクセル250を有する。例えば、第1のピクセル290は、第1のサブピクセル2501A、第2のサブピクセル2501B、および第3のサブピクセル2501Cを有する。各サブピクセル250は、それぞれのピクセル290の単色要素である。しかしながら、第1のピクセル290は、3つを超えるサブピクセル250、例えばサブピクセル2501Nを有することができ、「1N」は、第1のピクセル290に対する任意の数のサブピクセル250を表すことができる。OLEDパネル100内の各行260には、スキャンライン210を使用して独立してアクセスすることができる。OLEDパネル100内の各列280には、データライン220を使用してアクセスすることができる。第1のスキャンライン212および第1のデータライン222をアドレス指定することにより、OLEDパネル100の第1のピクセル290内の第1のサブピクセル2501Aにアクセスする。各サブピクセル250は、OLEDパネル100において同様にアドレス指定され得る。さまざまな実施形態では、各サブピクセル250が、単一のスキャンライン210に結合されているように例示されている一方、各サブピクセルは、各サブピクセル250の更新を制御するために使用され得る複数のスキャンライン210に結合されてもよい。そのような実施形態では、スキャンライン210は、サブピクセル250の更新タイミングを制御するために、異なる選択信号を用いて異なる時刻に駆動されてもよい。
【0018】
1つまたは複数の実施形態では、OLEDパネル100は、有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイデバイスであり得る。そのような実施形態では、サブピクセル250のそれぞれは、1つまたは複数のトランジスタを介して、対応するスキャンライン(複数可)およびデータラインに結合される電極を備えることができる。スイッチングTFTがオンされると、サブピクセルデータ信号(複数可)がスイッチングTFTに印加されて、データ信号を、特定の電圧レベルを有する駆動TFTに送達する。駆動TFTはOLEDに接続されており、駆動TFTからの電流はOLEDデバイスパネルにおけるOLEDの明度を制御する。供給電圧(ELVDDまたはVSS)が各サブピクセルに印加されて、各ピクセルにおける駆動TFT内の電流を制御することによって、OLEDのグレースケール色および明度を制御する。1つの実施形態では、正の供給電圧はELVDDと称されてもよく、負の供給電圧はVSSまたはELVSSと称されてもよい。
【0019】
図3Aは、ボトムエミッションOLEDディスプレイを用いた概略図である。OLEDは、サブピクセル回路320の頂部上に位置づけられる。OLEDからの光は、下向きの発光方向のため、サブピクセル回路エリア320を通り抜けることができない。単一のサブピクセル250は、第1のサブピクセル2501Aであり得る。しかしながら、図3Aに示される単一のサブピクセル250は、第1のサブピクセル2501Aなどのサブピクセル250のそれぞれにとって総称的であり、総称サブピクセル250に関してさらなる考察を行うこととする。サブピクセル250はサブピクセルエリア350を有する。サブピクセルエリア350の一部分は、OLEDエリア310によって占有されている。OLEDエリア310は、サブピクセル250の発光要素である。OLEDエリア310は、電流駆動型発光デバイスである。サブピクセルエリア350の残りの部分は、1つまたは複数のトランジスタと、コンデンサと、サブピクセル回路320を形成するためにトランジスタとコンデンサとを接続する金属経路と、を有するサブピクセル回路320によって占有されている。1つまたは複数のトランジスタ、コンデンサ、および金属経路は、サブピクセル回路320を形成するトランジスタ、コンデンサ、および金属経路のうちの別の1つとは、異なる、基板(デバイス)の金属層内に配置され得る。サブピクセル回路320は、サブピクセル250を駆動するために、すなわち、発光するまたは発光しないために必要な電力を供給して、OLEDエリア310を制御する。
【0020】
図3Bは、トップエミッションOLEDディスプレイを用いた概略図を示す。トップエミッションOLEDディスプレイでは、OLEDは、サブピクセル回路320の頂部上に位置づけられる。OLEDからの光の方向は上向きであるため、サブピクセル回路320は光を遮断しない。したがって、トップエミッションOLEDディスプレイからのサブピクセル回路320のエリアは、OLEDエリア310と同等とすることができ、そのことにより、ボトムエミッションOLEDディスプレイよりも高密度とすることができる。
【0021】
図4は、1つまたは複数の実施形態による、OLEDディスプレイパネル100におけるピクセル回路404およびGOA回路402の簡略化されたセットの概略図である。ピクセル404およびGOA回路402の各セットは、3つ以上のトランジスタおよび/または2つ以上のコンデンサなどの、複数の薄膜トランジスタ(TFT)およびストレージコンデンサを有する。一般に、サブピクセル回路320などのピクセル回路404は、スイッチングトランジスタT1、電流調整器または駆動トランジスタT2、およびストレージコンデンサC1を含む。GOA回路402は、プルアップバッファスイッチングトランジスタTDOWNおよびプルダウンバッファスイッチングトランジスタTUPなどのスイッチングトランジスタを含む。GOA回路およびピクセル回路向けのトランジスタは、酸化物トランジスタまたは低温多結晶シリコン(LTPS)トランジスタとすることができる。
【0022】
スイッチングトランジスタゲート(G1)は、スキャンライン(Vscan)に接続され、ソースドレインは、Vdataラインと駆動トランジスタT2のゲート(G2)との間に接続される。フルカラーディスプレイにおけるサブピクセル250ピクセルのOLEDエリア310内に配置されたOLED406は、駆動トランジスタT2に電気的に接続される。OLED406のための回路はさらに、低レベル供給電圧(VSS)または接地(GND)へと続く。OLED406は、ピクセル回路320によって制御され、コモン端子または導体に接続されたカソードと、駆動トランジスタT2のソースドレインを通じて高レベル電源(ELVDD)に接続されたアノードと、を有する。ストレージコンデンサC1は、駆動トランジスタT2のゲート電圧を保持する。ストレージコンデンサC1の他のロケーションもまた企図される。
【0023】
選択信号がVscanライン上に現れ、データ信号がVdataライン上に現れると、OLEDは、アドレス指定または選択される。トランジスタは、選択されたラインを介してトランジスタのゲートに選択信号を印加することによって、オンおよびオフされ得る。Vscanライン上の信号はスイッチングトランジスタT1のゲート(G1)に印加されて、トランジスタを「オン」する。Vdataライン上のデータ信号は、スイッチングトランジスタT1のソース-ドレインを通じて駆動トランジスタT2のゲート(G2)に印加されて、データ信号の振幅および/または持続期間に応じて駆動トランジスタT2を「オン」する。次いで、駆動トランジスタT2は、一般に駆動電流の形態で、電力をOLED406に供給し、OLED406によって生成される光の明度または強度は、供給される電流の量および/または持続期間に依存し得る。ストレージコンデンサC1は、スイッチングトランジスタT1が「オフ」された後にVdataライン上の電圧を記憶する。
【0024】
図5A、5B、および6は、本開示のいくつかの態様による、ピクセル回路のためのさまざまな駆動トランジスタの概略的な断面図を示す。いくつかの態様では、駆動トランジスタのそれぞれは、図4に示されるように、ピクセル回路404内の駆動トランジスタ(T2)として使用されることが可能である。
【0025】
図5Aおよび5Bの駆動TFT500A、500Bは、トップゲート電極514およびボトムゲート電極506を有するダブルゲートTFTである。TFT500A、500Bは、シリコンベースの基板、絶縁ベースの基板、ゲルマニウムベースの基板、または他の適したフレキシブル基板などの基板502を含む。基板502は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)デバイス構造において存在することになる1つまたは複数の一般層を含むことができる。基板502は、TFTが、TV、タブレット、ラップトップ、モバイルフォン、または他のディスプレイなどのLCDまたはOLEDディスプレイ用途で使用される場合に有用とすることができる、硬質ガラスまたはフレキシブルなポリイミド(PI)などの透明な材料を含むことができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、緩衝層504は、基板502と直接接触した状態でなど、基板502の上に配置される。緩衝層504は、単一の二酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、多層窒化ケイ素および/または酸化ケイ素(SiN/SiO)、酸窒化ケイ素(SiON)、他の絶縁材料、またはこれらの組み合わせなどの絶縁材料を含むことができる。ボトムゲート電極506は、緩衝層504の上に配置される。いくつかの態様では、ボトムゲート電極506は、図4のG2に対応する。いくつかの実施形態では、ゲートバイアスは、OLED用途での使用中、ボトムゲート電極506に印加される。いくつかの態様では、ボトムゲート電極は、当業界で知られている任意の適切なプロセスを使用して、堆積およびパターニングされる。ボトムゲート絶縁(GI)層508は、ボトムゲート電極506の上に配置され、ボトムゲート電極506を取り囲む。ボトムゲート絶縁体、および/または本明細書に記載の任意のゲート絶縁体向けのGI材料は、ケイ素、SiN、他の絶縁材料、もしくは、二酸化ケイ素(SiO2)、ポリメチルシルセスキオキサン(PMSQ)などのこれらの組み合わせなどの絶縁材料、または他の適切な材料を含むことができる。
【0027】
チャネル構造510は、底部GI層508の上に配置される。チャネル構造510は、単層のチャネル構造、各層が異なる電子移動度を有する二重層チャネルスタック、または、各層が、自身のすぐ上もしくは下に配置された層とは異なる電子移動度を有する3つ以上の層とすることができる。チャネル構造510は、金属酸化物材料または低温ポリシリコン(LTPS)からなる。本明細書に記載されているチャネル構造は、いずれも、金属酸化物(MO)材料、そのような単一または複数層MOチャネルからなり得る。代替的に、本明細書に記載されているチャネル構造は、いずれも、単層のLTPSチャネルなどのLTPSからなり得る。金属酸化物は、酸素(O)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、アルミニウム(Al)、および、In-Zn-O、In-Ga-O、In-Sn-O、In-Ga-Zn-O、In-Zn-Sn-O、In-Ga-Sn-O、In-Ga-Zn-Sn-O、もしくはこれらの任意の組み合わせなどの、これらの組み合わせを含むことができる。金属酸化物材料またはLTPSは、チャネル構造510の1つまたは複数の層のために選択されたあらかじめ定められた電子移動度に基づいて選択されることが可能である。トップゲート絶縁(GI)層512は、チャネル構造510の上に配置される。いくつかの実施形態では、頂部GI層512は、頂部GI層512より上に配置されるトップゲート電極514の幅に近似するようにパターニングされる。代替的に、図5Bに示されるように、頂部GI層512’は、チャネル構造510の上に配置され、チャネル構造510を取り囲み、底部GI層508の上に配置される。図に示されるTFTのすべては、図5Aに似た頂部GI層512を示しているが、図5Bに示される頂部GI層512’か、または、トップゲート電極よりも幅が大きな頂部GI層を含む任意の他のパターニングが、他の図のいずれかにおいて示されているTFTのうちの1つまたは複数で使用されることが可能である。
【0028】
層間誘電体(ILD)層516は、トップゲート電極514とチャネル構造510の一部分との上に配置される。本明細書に記述されている任意のILD層は、酸化ケイ素、窒化物、酸素窒化物、およびシリコンベースの誘電体膜などの炭化物などの材料からなってもよい。
【0029】
駆動TFT500Aは、ILD層516の上に配置された、ソース518およびドレイン519を含む。ソース518およびドレイン519は、ILD層516内のビアに結合されてチャネル構造510に到達する。本明細書に記述されている各電極(例えば、トップゲート電極514、ボトムゲート電極506、ソース/ドレイン電極518、519)は、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、MoWを含む合金、MoW、TiCu、MoCu、MoCuMo、TiCuTi、MoWCu、MoWCuMoWを含む導電性材料の組み合わせ、インジウムスズ酸化物(InSnO)[ITO]およびインジウム亜鉛酸化物(InZnO)[IZO]などの導電性金属酸化物を含むなど、任意の電気伝導性材料、または任意のこれらの組み合わせなどの導電性材料を含む。
【0030】
図のそれぞれにおいて、TFTの各電極は、電極ごとに電流通路が示されている電極通路を含む。例えば、TFT500Aは、ドレイン電圧に結合されたドレイン電極通路520と、ソース電圧に結合されたソース電極通路522と、ソース電極およびソース電圧に結合されたトップゲート電極通路524と、ゲート電圧に結合されたボトムゲート電極通路526と、を含む。駆動TFT500Aは、電極通路522および524による、ソース電極518とトップゲート電極514との間の物理的かつ電気的な接続部を含む。いくつかの実施形態では、接続部は電気的な配線および/または他の接続ブリッジによって接続される。接続部は、アクティブピクセルエリア(表示エリア104)内のコンタクトホールを使用して作られることが可能である。ゲートバイアスは、ボトムゲート電極通路526を介してボトムゲート電極506に印加される。
【0031】
図5Aを参照して説明された接続部とは対照的に、ソース電極518(例えば、ソース電極通路522)とボトムゲート電極506(例えば、ボトム電極通路526)との間の接続部は、図6に示される駆動TFT600の使用のために作られることが可能である。ソース電極通路522およびボトム電極通路526は、ソース電圧に接続および結合される。ゲートバイアスは、ゲート電圧に結合された通路524を介してトップゲート電極514に印加される。TFT600と比較して、OLEDデバイス内のピクセル回路のための駆動TFTとして使用されるとき、ソース電極518をトップゲート電極514と接続することにより、安定性の改善、色および/またはグレースケールに対する電圧制御の改善、ならびに、OLED電流制御に対する、出力飽和曲線の改善およびドレイン電圧に対する感度の低下が可能になることが判明した。特に、トップゲート電極514は、安定性の改善を実現するソース電極518と実質的に同じ電圧である。
【0032】
図7は、基板(TFT701AおよびTFT701B)上に配置された表示エリアにおける2つの隣り合うサブピクセル回路からの2つのTFT構造を有する一例の駆動TFT700を示す。一方の駆動TFTは1つのサブピクセル回路からであり、他方の駆動TFTは隣のサブピクセル回路からである。各サブピクセル回路は、OLEDに接続された1つの駆動TFTを有する。各TFTは、図5Aおよび図5Bを参照して説明された層を含む。特に、各TFTは、基板702の上に配置された緩衝層704を有するダブルゲートTFTである。各TFTは、ボトムゲート電極706A、706B、底部GI層708、チャネル構造710、トップゲート絶縁層712、トップゲート714A、714B、およびILD層716を含む。各TFTは、ソース電極719A、719B、およびドレイン電極718A、718Bを有する。
【0033】
各TFT701A、701Bに対するボトム電極706A、706Bは、示されているように通路726Aおよび726Bによって接続され、直流(DC)電圧または接地(GND)に結合される。他の通路は図5Aに示されたのと同様に示されている(例えば、ドレイン電圧に結合されたドレイン電極通路720A、720B、ソース電圧に結合されたソース電極通路722A、722B、およびゲート電圧に結合されたトップゲート電極通路724A、724B)。いくつかの態様では、トップゲート電極は図4に示されるG2に対応する。ボトム電極の接続により、ボトムゲート電極の電圧を正または負のDC電圧で変化させることによって、しきい値電圧(Vth)の調整が可能になることが判明した。ボトムゲート金属は、集積プロセス中に物理的に接続され、コンタクトホールは、電圧信号を印加するために、パネルの端部で頂部層金属を接続するために作られることが可能である。ボトムゲートとソース電極を接続するためにアクティブピクセルエリア内にコンタクトホールは必要ではない。したがって、TFT600のためのコンタクトホールの必要性をなくすことによって、1枚少ないマスク、および、より大きな空間が利用できるようになる。TFT600と比較して、ピクセル回路のための駆動トランジスタとして駆動TFT700を使用することにより、ボトムゲート電極の電圧を正または負のDC電圧で変化させることによって、しきい値電圧(Vth)の調整が可能になり、さらに、色および/またはグレースケールに対する電圧のより優れた制御と、OLED電流制御に対する、より優れた出力飽和およびドレイン電圧に対する感度の低下と、が可能になる。
【0034】
図8は、基板上に配置された2つのTFT構造(TFT801AおよびTFT801B)を有する一例の駆動TFT800を示す。TFT800は、トップゲート電極714A、714Bが、通路724Aおよび724Bを通じて接続され、直流(DC)電圧に結合されており、ボトムゲート電極706A、706Bが接続されていないことを除いて、TFT700と同一である。いくつかの態様では、ボトムゲート電極706A、706Bは、図4に示されているG2に対応する。他の通路は、図7に示されているのと同様に示されている。特に、ドレイン電極通路720A、720Bは、ドレイン電圧に結合され、ソース電極通路722A、722Bは、ソース電圧に結合され、ボトムゲート電極通路726A、726Bはゲート電圧に結合される。しきい値電圧(Vth)は、トップゲート電極714A、714Bの電圧を変化させることによって、容易に調整されることが可能である。トップゲート金属は、集積プロセス中に物理的に接続され、コンタクトホールは、電圧信号を印加するために、パネルの端部で頂部層金属を接続するように作られることが可能である。したがってTFT500AまたはTFT600と比較して、接続部を作るのに必要なマスクは1枚少ない。トップゲートとソース電極を接続するためにアクティブピクセルエリア内にコンタクトホールは必要ではない。TFT500Aと比較して、ピクセル回路のための駆動トランジスタとして駆動TFT800を使用することにより、トップゲートの電圧を正または負のDC電圧で変化させることによって、しきい値電圧(Vth)の調整が可能になり、さらに、正バイアスの温度ストレス(PBTS)または負バイアスの温度ストレス(NBTS)下でのより優れた電気安定性と、色および/またはグレースケールに対する電圧のより優れた制御と、OLED電流制御に対する、より優れた出力飽和およびドレイン電圧に対する感度の低下と、が可能になる。
【0035】
図5A、5B、および6~8を参照して説明された駆動トランジスタのそれぞれは、図9および10を参照して説明されることになるGOA回路またはピクセル回路のための1つまたは複数のスイッチングトランジスタを組み合わせて使用することができる。いくつかの態様では、図4に示されるように、スイッチングトランジスタのそれぞれは、ピクセル回路404内のスイッチングトランジスタ(T1)、および/またはGOA回路402内のスイッチングトランジスタ(TUP、TDOWN)として使用することができる。図9を参照すると、スイッチングTFT900は、ボトムゲート電極がないトップゲートTFTである。スイッチングTFT900は、ボトムゲート電極を除いて、図5Aおよび5Bを参照して説明された層を含む。特に、スイッチングTFTは、基板902の上に配置された緩衝層904を有するトップゲートTFTである。底部絶縁層908は、緩衝層904の上に配置され、その後にチャネル構造910、トップゲート絶縁層912、トップゲート電極914、およびILD層916が続く。スイッチングTFT900は、ソース電圧に結合された対応するソース電極通路920を備えるソース電極918と、ドレイン電圧に結合された対応するドレイン電極通路922を備えるドレイン電極919とを含む。トップゲート電極914は、ゲート電圧に結合されたトップゲート電極通路924を含む。
【0036】
図10を参照すると、スイッチングTFT1000は、トップゲート電極914およびボトムゲート電極1006を備えるダブルゲートトランジスタである。スイッチングTFT1000は、ボトムゲート電極1006が、緩衝層904より上に配置され、底部絶縁層908が、ボトムゲート電極1006より上に配置され、ボトムゲート電極1006を取り囲んでいることを除いて、TFT900を参照して説明される。TFT900とは対照的に、TFT1000は、ゲート電圧に結合される通路924および1026を通じた、トップゲート電極914とボトムゲート電極1006との間の接続部を含む。スイッチングTFT900と比較して、スイッチングTFT1000は、高周波および高速動作での、より優れたVth均一性、より優れた安定性、およびより高いオン電流を有するGOA回路という点でさらによく働いた。スイッチングTFT900と比較して、スイッチングTFT1000は、正バイアスの温度ストレス(PBTS)または負バイアスの温度ストレス(NBTS)下での、より優れたVth均一性、およびより優れた電気安定性を有するピクセル回路という点でさらによく働いた。
【0037】
図11は、同じ基板1102上に配置された、駆動トランジスタ1122およびスイッチングトランジスタ1124を含むトランジスタ1100の一例を示す。各TFTは、緩衝層1104、ゲート絶縁層(または絶縁層)1108、チャネル構造1110、トップゲート絶縁層1112、およびILD層1116を含む。各TFTは、ソース電極1119A、1119B、およびドレイン電極1118A、1118Bを含む。単一TFTである駆動TFTが示されているが、駆動トランジスタ1122は、TFT500A、TFT500B、TFT600、TFT700、またはTFT800などの、図5A、5B、6~8に示された駆動トランジスタのいずれかとすることもできる。いくつかの態様では、駆動トランジスタ1122は、ボトムゲート電極1106Aおよびトップゲート電極1114Aを有するダブルゲートTFTである。ダブルゲートTFTが示されているが、ボトムゲート電極1106Bおよびトップゲート電極1114Bによって示されているように、スイッチングトランジスタ1124は、TFT900などのトップゲートトランジスタ、または、TFT1000などのダブルゲートトランジスタとすることもできる。
【0038】

本明細書に記述されているトランジスタなどのトランジスタは、底部層上のIn-Zn-Oと上部層上のIn-Ga-Zn-Oとからなるデュアル層チャネル構造を使用して形成された。チャネル構造は、40μmの幅と10μmの長さを有した。
【0039】
図12は、トランジスタのゲート-ソース間電圧に対するドレイン-ソース間電流(Ids)の挙動比較のグラフ図1200を示し、ある特定の特性がさらに、下記の表1に要約されている。特に、グラフは、図10(TFT1000)、図6(TFT600)、図5A(TFT500A)、および図9(TFT900)を参照して説明された各TFTについて、ゲート-ソース間電圧(Vgs)に対する対数スケールのドレイン-ソース間電流log(IDS)を示している。図12は、各TFTの各伝達曲線からのサブスレショルド勾配(SS)を比較するために、ゲート電圧が-1V~+5Vの小さな範囲にある、ドレイン電圧(Vds)が1Vでの伝達曲線を示す。図には示されていないが、10Vドレイン電圧データも表1に収集した。このとき、TFTは、1Vのドレイン-ソース間電圧(Vds)で、線形領域で動作され、10Vのドレイン-ソース間電圧(Vds)で、飽和領域で動作される。サブスレショルド電圧の値は、ドレイン-ソース間電圧(Vds)の値と共に変動する。典型的には、大きなサブスレショルド値は、高いドレイン電圧値から得られる。例えば、Vds=10Vでは、Vds=1Vなどの、より低いドレイン-ソース間電圧でのサブスレショルド値と比較して、より高いサブスレショルド値が作り出される。スイッチングトランジスタは、低いドレイン電圧値(Vgs-Vth>Vds、Vgs>Vth)で、線形領域で動作され、駆動トランジスタは、高いドレイン電圧値(Vgs-Vth<Vds、Vgs>Vth)で、飽和領域で動作されることが見出された。このとき、Vgsはゲート-ソース間電圧であり、Vdsはドレイン-ソース間電圧であり、Vthはしきい値電圧である。
【0040】
低レベル電流1E-11から高レベル電流1E-7アンペア(A)までの範囲によって規定される曲線ごとの領域は、曲線ごとに比較され、サブスレショルド勾配(SS)値が得られた。小さなサブスレショルド値(SS)を有するトランジスタは、素早いスイッチング動作のために高レベルのドレイン電流値(Ids)に迅速に到達するスイッチングトランジスタとして有用であることが見出された。対照的に、大きなサブスレショルド勾配値(SS)を有するトランジスタは、低レベル(1E-11)ドレイン電流値と高レベル(1E-7)ドレイン電流値との間のより幅が広いゲート電圧範囲で、グレースケールゲート電圧のより優れた制御のために、高レベルのドレイン電流値(Ids)にゆっくりと到達する駆動トランジスタとして有用である。
【0041】
図12では、電流範囲は、例示目的で選択されたが、OLEDディスプレイの明度のみならず駆動トランジスタのためのグレースケールゲート電圧も制御するためのOLEDディスプレイを通過することができる、駆動トランジスタからの電流に対応することができる。大きなサブスレショルド勾配(SS)値は、グレースケールのより優れた制御のために有用である。図12において水平の破線によって特定される1E-11Aのドレイン-ソース間電流は、OLEDディスプレイにおいて黒画像を得るためにTFTをオフするための電流の一例であり、1E-7Aは、OLEDディスプレイにおいて最大明度を可能にするための最大電流の一例である。用途およびディスプレイに応じて他の電流値を使用することができる。1E-11と1E-7との間の中間電流範囲は、駆動TFTにおける、1E-11に対するゲート電圧と1E-7に対するゲート電圧との間のある特定のレベルのゲート電圧を使用して、OLEDディスプレイにおけるある特定のレベルの明度を制御するように選択されることが可能である。例えば、ゲート電圧は、明度などの属性の制御のために使用される256の「レベル」に分割することができる。
【0042】
図12において特定された領域1202はTFT1000に対応し、領域1204はTFT600に対応し、領域1206はTFT500Aに対応し、領域1208はTFT900に対応する。領域の幅(ΔV)は、所望の電流範囲内で電圧を制御する能力を示している。図12における領域と表1におけるΔVとの比較において理解できるように、TFT500Aに対応する領域1206は、最も広く、したがって、駆動トランジスタのためのグレースケールゲート電圧の十分な制御を立証している。これはさらに、下記に示す(例えば、V/ディケードの単位を有するサブスレショルド勾配)領域における曲線の逆勾配を測定する際に、定量的に表され得る。各TFTに対する値は、ドレイン電圧が1Vに等しい場合は下記に、Vdが10Vに等しい場合には()内の値に要約されている。TFT500Aは、駆動TFTにおける電圧および電流を制御する能力を高めることを示す、したがって、表示画像の制御を向上させる、各電圧に対する最高のSS値を示した。したがって、TFT500A、その次のTFT600などのSS値が高いトランジスタは、ピクセル回路内の駆動トランジスタとして十分に働く。チャネル層の電子移動度は、ある特定の電極間の接続部を形成することと協調して、あらかじめ定められたSS値を有するTFTを形成するように最適化されることが可能であることが判明した。特に、表1に要約されたトランジスタのそれぞれは、同じチャネル層組成物および寸法を有するにもかかわらず、TFT500Aは、最低の電子移動度μ(cm2/Vs)を有する。TFT500Aからの低い電子移動度は十分に働き、低い電子移動度により、TFT600、TFT1000、およびTFT900と比較して、高いサブスレショルド勾配(SS)値を有する駆動トランジスタに対する十分な制御が可能になる。
【0043】
対照的に、TFT1000、その次のTFT900などのSS値が低いスイッチングトランジスタは、GOAおよびピクセル回路内のスイッチングトランジスタに対して十分に働く。低いSS値を備える高い電子移動度は、スイッチングTFTに好適である。同じチャネル層組成物を使用して、低いSS値を備え、高い電子移動度を有するスイッチングトランジスタ(例えば、TFT1000)と、高いSS値を備え、低い電子移動度を有する、同じ基板上に配置された隣の駆動トランジスタ(例えば、TFT500A)とを実現することができることが判明した。
底部チャネル層および単層のチャネル構造としてのIn-Zn-O(IZO)の頂部上の上部層としてIn-Ga-Zn-Sn-Oを位置づけることによって、デュアル層チャネル構造(IZO/IGZTO)などの他のチャネル組成物を有するTFTの比較の際に、表2および表3に示される同様の結果が見出された。したがって、TFT(TFT500A、TFT600、TFT900、TFT1000)は、チャネル構造にかかわらず、TFT500Aからの、最高のサブスレショルド値およびより優れたグレースケールに対するΔVと、TFT1000からの、最低のサブスレショルド値および素早いスイッチングに対するΔVと、を示す同様の結果を示すことができる。
【0044】
図13A、13B、14A、および14Bは、いくつかの実施形態による、トランジスタの出力特性のグラフ図を示す。図13Aは、TFT900に対する曲線を示し、図13Bは、TFT1000に対する曲線を示し、図14Aは、TFT600に対する曲線を示し、図14Bは、TFT500Aに対する曲線を示す。スイッチングまたは駆動トランジスタとしてのTFTの性能を比較するために、TFTからのドレイン-ソース間電流(Ids)が、0Vから15Vまでのゲート-ソース間電圧(Vgs)で、2.5Vの電圧ステップでモニタされ、0Vから20Vまでのドレイン-ソース間電圧(Vgs)で、0.5Vの電圧ステップでモニタされた。ドレイン-ソース間電圧(Vds)は、水平軸で表され、ドレイン-ソース間電流(Ids)は、垂直軸で表されている。図13Bに示されるTFT1000は、図13A、14A、および14Bに示されるTFT900、TFT600、およびTFT500Aと比較して、より高いドレイン-ソース間電流(Ids)およびより低いサブスレショルド勾配(SS)値による素早いスイッチング動作のためのスイッチングトランジスタとして十分に働く。しかしながら、図14A、および14Bに示されるTFT600、およびTFT500Aは、グレースケールの、より優れた制御のための駆動トランジスタとして十分に働く。何故なら、ドレイン-ソース間電流(Ids)は、飽和領域におけるドレイン-ソース間電圧(Vds)に対する変化に伴い注目すべき変動を示さず、しかも、ドレイン-ソース間電流は、図13Aおよび13Bに示されるTFT900およびTFT1000と比較して低いドレイン-ソース間電圧(Ids)で、指定された目標電流に迅速に飽和するからである。したがって、TFT500AおよびTFT600からの飽和領域は、十分な出力飽和を実現するTFT900およびTFT1000よりも広範である。その上、飽和領域におけるドレイン-ソース間電圧の変化によって、ドレイン-ソース間電流の感度が低くなることにより、より優れたOLED均一性のための駆動TFTとして、ドレイン-ソース間電流(Ids)の精密な制御ができるようになる。それに加えて、図14Bに示されるTFT500Aは、図14Bに示されるTFT600と比較してサブスレショルド勾配(SS)値が高いので、駆動トランジスタとしてのグレースケールのより優れた制御を可能にする。
【0045】
図12~14Bおよび表1~3は、図7に示されるTFT700からのデータを示さないが、TFT700は、DC電圧とのVthの調整がTFT700において使用されていないことを除いて、TFT600と同様の結果を示したことが見出された。その上、図12~14Bおよび表1~3は、図8に示されるTFT800からのデータを示さないが、TFT800は、DC電圧とのVthの調整がTFT800において使用されていないことを除いて、TFT500Aと同様の結果を示した。さらに、図12~14Bおよび表1~3は、金属酸化物チャネルを有するトランジスタを示しているが、LTPS単層チャネルなどの他のチャネルも企図される。LTPSトランジスタは、MOチャネル構造と同様の相対的結果を有することが判明した。
【0046】
要約すると、0Vに近い正のしきい値電圧(例えば、ターンオン電圧)と、スイッチングTFTに対してなど、より高いオン電流と、OLEDディスプレイ向けの駆動TFTにおいてなど、低いサブスレショルド勾配値を伴う十分な電圧/グレー色制御、および、ドレイン-ソース間電圧変化にあまり依存しないゲート-ソース間電圧を伴う良好な出力飽和曲線と、を実現するトランジスタが、本明細書において用意される。
【0047】
これらのおよび他の利点は、説明された特定の実施形態ならびに他の変形形態にしたがっておそらく実現される。上の説明は、例示的であるが、限定を意図するものではないことを理解されたい。本特許請求の精神および範囲内の多くの他の実施形態および修正形態が、当業者にとっては、上の説明を確認すれば明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲を参照して決定されるものとする。下記の特許請求の範囲では、用語「第1の」、「第2の」、および「第3の」などは、単にラベルとして使用され、それらの対象物に対する数字要件を課すことを意図するものではない。
【0048】
本明細書で使用されるように、用語「約」は、公称値からの+/-10%のばらつきを指している。そのようなばらつきは、本明細書で用意された任意の値に含まれ得ることを理解されたい。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
【国際調査報告】