(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】大気チャンバから真空チャンバへの一貫した既知の体積の液体金属または金属合金の移送
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240528BHJP
【FI】
C23C14/24 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023571796
(86)(22)【出願日】2022-05-16
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 US2022029411
(87)【国際公開番号】W WO2022245712
(87)【国際公開日】2022-11-24
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ラマチャンドラッパ, プラサンナカレーシュワル ブッダッパ
(72)【発明者】
【氏名】クンドゥ, サンブー ナス
(72)【発明者】
【氏名】リム, ビセント エム.
(72)【発明者】
【氏名】シヴァラマクリシュナン, ヴィスウェスウォレン
(72)【発明者】
【氏名】ヘール, スブラマニヤ ピー.
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029CA01
4K029DB12
4K029DB15
4K029DB18
4K029DB21
4K029JA10
4K029KA03
(57)【要約】
一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法およびシステムが提供される。システムは、流体入口を有する蒸発システムと、流体送出システムとを含む。流体送出システムは、原材料を保持するように動作可能なアンプルを含む。アンプルは、流体出口およびガス入口を含む。流体送出システムは、蒸発システムに原材料を送出するように動作可能な流体送出ラインをさらに含む。流体送出ラインは、流体出口と流体的に結合された第1の端部と、流体入口に流体的に結合された第2の端部とを含む。流体送出ラインは、一定の体積の流体送出ラインを画定する、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブとをさらに含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原材料を保持するように動作可能なアンプルであって、流体出口およびガス入口を含むアンプルと、
蒸発システムに前記原材料を送出するように動作可能な流体送出ラインであって、
前記流体出口と流体的に結合された第1の端部と、
前記蒸発システムと流体接続するように動作可能な第2の端部と、
前記流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、
前記流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブと、
前記第1の分離バルブと前記第2の分離バルブとの間に前記流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダと
を備える、流体送出ラインと
を備える、流体送出システム。
【請求項2】
前記流体送出ラインと流体接続している押出しガス源をさらに備え、前記押出しガス源が、押出しガスを保持するように動作可能である、請求項1に記載の流体送出システム。
【請求項3】
前記押出しガスが、ヘリウム、窒素、アルゴン、またはこれらの組合せから選択される、請求項2に記載の流体送出システム。
【請求項4】
前記押出しガス源と前記流体送出ラインとを接続するガス送出ラインをさらに備え、前記ガス送出ラインが、
前記ガス入口に流体的に結合された前記ガス送出ラインの第1の区間と、
前記第1の分離バルブと前記較正シリンダとの間で前記流体送出ラインに流体的に結合された前記ガス送出ラインの第2の区間と
を備える、請求項3に記載の流体送出システム。
【請求項5】
前記ガス送出ラインが、
前記ガス送出ラインに沿って配設された第1の空気圧バルブと、
前記第1の空気圧バルブの下流側に配設された第2の空気圧バルブと、
前記第2の空気圧バルブの下流側に配設された計量バルブと、
前記計量バルブの下流側に配設された圧力計と
をさらに備える、請求項4に記載の流体送出システム。
【請求項6】
前記原材料が、溶融したリチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、セレン、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルル、アルカリ土類金属、銀、またはこれらの組合せから選択される、請求項1に記載の流体送出システム。
【請求項7】
前記第2の分離バルブと前記較正シリンダとの間で前記流体送出ラインに流体的に結合され、前記アンプルに流体的に結合された循環ラインをさらに備える、請求項1に記載の流体送出システム。
【請求項8】
流体入口を有する蒸発システムと、
流体送出システムであって、
原材料を保持するように動作可能なアンプルであって、流体出口およびガス入口を含むアンプル、
前記蒸発システムに前記原材料を送出するように動作可能な流体送出ラインであって、
前記流体出口と流体的に結合された第1の端部、
前記流体入口に流体的に結合された第2の端部、
前記流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブ、
前記流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブ、および
前記第1の分離バルブと前記第2の分離バルブとの間に前記流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダ
を備える、流体送出ライン
を備える、流体送出システムと
を備える、堆積システム。
【請求項9】
前記流体送出ラインと流体接続している押出しガス源をさらに備え、前記押出しガス源が、押出しガスを保持するように動作可能である、請求項8に記載の堆積システム。
【請求項10】
前記押出しガスが、ヘリウム、窒素、アルゴン、またはこれらの組合せである、請求項9に記載の堆積システム。
【請求項11】
前記押出しガス源と前記流体送出ラインとを接続するガス送出ラインをさらに備え、前記ガス送出ラインが、
前記ガス入口に流体的に結合された前記ガス送出ラインの第1の区間と、
前記第1の分離バルブと前記較正シリンダとの間で前記流体送出ラインに流体的に結合された前記ガス送出ラインの第2の区間と
を備える、請求項10に記載の堆積システム。
【請求項12】
前記ガス送出ラインが、
前記ガス送出ラインに沿って配設された第1の空気圧バルブと、
前記第1の空気圧バルブの下流側に配設された第2の空気圧バルブと、
前記第2の空気圧バルブの下流側に配設された計量バルブと、
前記計量バルブの下流側に配設された圧力計と
をさらに備える、請求項11に記載の堆積システム。
【請求項13】
前記原材料が、溶融したリチウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、セレン、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルル、アルカリ土類金属、銀、またはこれらの組合せから選択される、請求項8に記載の堆積システム。
【請求項14】
前記第2の分離バルブと前記較正シリンダとの間で前記流体送出ラインに流体的に結合され、前記アンプルに流体的に結合された循環ラインをさらに備える、請求項8に記載の堆積システム。
【請求項15】
前記蒸発システムが、
堆積表面であって、前記堆積表面上に設けられる基板上に前記原材料を堆積させるように動作可能な堆積表面と、
前記基板上に前記原材料を堆積させるように配置されたるつぼと
をさらに備える、請求項8に記載の堆積システム。
【請求項16】
流体送出の方法であって、
流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブを開き、前記流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブを閉じることであって、前記流体送出ラインが、
原材料を保持するアンプルに流体的に結合された第1の端部と、
るつぼと流体接続している第2の端部と、
前記流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと
前記流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブであって、前記第1の分離バルブおよび前記第2の分離バルブが、一定の体積の前記流体送出ラインを画定する、第2の分離バルブと、
前記第1の分離バルブと前記第2の分離バルブとの間に前記流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダと
を備える、閉じることと、
前記一定の体積の前記流体送出ラインを充填するために、前記アンプルから前記原材料を送出することであって、前記原材料が、前記較正シリンダを通過する、送出することと、
前記一定の体積の前記流体送出ラインが充填されたとき、前記第1の分離バルブを閉じることと、
前記一定の体積の前記原材料が前記流体送出ラインを通じて前記るつぼに流れるように前記第2の分離バルブを開くことと
を含む、方法。
【請求項17】
押出しガス源からガス送出ラインを介して前記流体送出ラインに押出しガスを流すことをさらに含み、前記ガス送出ラインが、前記押出しガス源および前記流体送出ラインと流体接続している、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
一定のガス体積の前記ガス送出ラインを前記押出しガスで充填することをさらに含み、前記一定のガス体積が、第1の空気圧バルブと、前記第1の空気圧バルブの下流側の第2の空気圧バルブとによって画定され、前記第1の空気圧バルブが開かれ、前記第2の空気圧バルブが閉じられる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記一定のガス体積が前記押出しガスで充填されたとき、前記第2の空気圧バルブを開くことをさらに含み、前記押出しガスが、前記ガス送出ラインを介して前記流体送出ラインに送出されて、前記原材料に圧力を加える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記一定の体積内に配設された前記較正シリンダが、前記原材料を監視し、前記一定の体積が前記原材料で充填されたときを確認する、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、溶融金属および金属合金の移送のための方法およびシステムに関する。より詳細には、本開示は、一般に、一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルムやプラスチックフォイルなどのフレキシブル基板の処理は、パッケージング業界、半導体業界、および他の業界において高い需要がある。処理は、金属や金属合金などの選ばれた材料を用いたフレキシブル基板のコーティングを含み得る。こうしたコーティングの経済的な生産は、製品のために必要な厚さ均一性、コーティング材料の反応性、コーティング材料のコスト、およびコーティング材料の堆積速度によってしばしば制限される。最も要求の厳しい適用分野は、一般に堆積を含み、堆積は、コーティング厚さの精密な制御および最適な光学的特性のために真空チャンバ内で行われる。高い資本コストの真空コーティング装置は、大規模な商業用の適用のために高スループットのコーティングエリアを必要とする。
【0003】
大型真空チャンバを利用し得るプロセスは、極めて大きな経済的利点を有する。使用される一技法は熱蒸発である。原材料が真空チャンバ内の開いたるつぼで加熱される場合に、より冷たい基板上での凝縮のための、源からの十分な蒸気流束があるような温度に達するとき、熱蒸発が直ちに行われる。原材料は、るつぼを加熱することによって間接的に加熱され、または、るつぼによって閉じ込められた原材料内に向けられた大電流電子ビームによって直接的に加熱され得る。溶融金属や溶融金属合金などの一定の体積の原材料を、原材料がチャンバ内ではね散ることなく、るつぼに送出することは難しい。したがって、るつぼに入る原材料の体積が未知であるので、原材料の過充填および充填不足が生じ得る。
【0004】
したがって、一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法およびシステムが当技術分野で求められている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において説明される実装は、一般に、溶融金属および金属合金の移送のための方法およびシステムに関する。より詳細には、本開示は、一般に、一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法およびシステムに関する。一実装では、流体送出システムが提供される。流体送出システムは、原材料を保持するように動作可能なアンプルを含む。アンプルは流体出口およびガス入口を含む。流体送出システムは、蒸発システムに原材料を送出するように動作可能な流体送出ラインをさらに含む。流体送出ラインは、流体出口と流体的に結合された第1の端部と、蒸発システムと流体接続するように動作可能な第2の端部とを含む。流体送出ラインは、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブとをさらに含む。流体送出ラインは、第1の分離バルブと第2の分離バルブとの間に流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダをさらに含む。
【0006】
別の実装では、堆積システムが提供される。システムは、流体入口を有する蒸発システムを含む。システムは流体送出システムをさらに含む。流体送出システムは、原材料を保持するように動作可能なアンプルを含む。アンプルは、流体出口およびガス入口を含む。流体送出システムは、蒸発システムに原材料を送出するように動作可能な流体送出ラインをさらに含む。流体送出ラインは、流体出口と流体的に結合された第1の端部と、流体入口に流体的に結合された第2の端部とを含む。流体送出ラインは、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブとをさらに含む。流体送出ラインは、第1の分離バルブと第2の分離バルブとの間に流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダをさらに含む。
【0007】
さらに別の実装では、流体送出の方法が提供される。方法は、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブを開き、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブを閉じることを含む。流体送出ラインは、原材料を保持するアンプルに流体的に結合された第1の端部と、るつぼと流体接続している第2の端部とを含む。流体送出ラインは、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブとをさらに含む。第1の分離バルブおよび第2の分離バルブは、一定の体積の流体送出ラインを画定する。流体送出ラインは、第1の分離バルブと第2の分離バルブとの間に流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダをさらに含む。方法は、一定の体積の流体送出ラインを充填するために、アンプルから原材料を送出することをさらに含む。原材料は較正シリンダを通過する。方法は、一定の体積の流体送出ラインが充填されたとき、第1の分離バルブを閉じることをさらに含む。方法は、一定の体積の原材料が流体送出ラインを通じてるつぼに流れるように第2の分離バルブを開くことをさらに含む。
【0008】
本開示の上記で列挙した特徴を詳細に理解することができるように、その一部が添付の図面に示される実施形態を参照することにより、上記で簡潔に要約した本開示のより具体的な説明を得ることができる。しかしながら、添付の図面は、例示的実施形態のみを示しており、したがって、範囲の限定と見なされるべきではないことに留意されたい。本開示は、他の同等に有効な実施形態を認め得るからである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の1つまたは複数の実装による、蒸発源を有する蒸発システムの概略側面図である。
【
図2】本開示の1つまたは複数の実装による処理環境の概略図である。
【
図3】本開示の1つまたは複数の実装による、一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法の一実装を要約するプロセスフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、各図に共通の同一の要素を示すために、可能な場合には同一の参照符号が用いられている。一実施形態の要素および特徴が、さらなる説明なしに、他の実施形態に有利に組み込まれ得ることが想定される。
【0011】
次に、本開示の様々な実装が詳細に参照され、そのうちの1つまたは複数の例が図に示される。以下の図面の説明の中で、同一の参照番号は同一の構成要素を指す。一般に、個々の実装に関する違いのみが説明される。各例は本開示の説明として与えられ、本開示の限定を意味するわけではない。さらに、一実装の部分として図示または説明される特徴が他の実装に関して使用され、または他の実装と共に使用され、さらに別の実装が生み出され得る。説明はそのような修正および変形を含むものとする。
【0012】
図に示される細部、寸法、角度、および他の特徴の多くは特定の実装の例に過ぎない。したがって、本開示の趣旨または範囲から逸脱することなく、他の実装は、他の細部、構成要素、寸法、角度、および特徴を有し得る。さらに、本開示の別の実装は、以下で説明される細部のうちのいくつかを用いずに実施され得る。
【0013】
いくつかの実装によれば、基板上、たとえばフレキシブル基板上の層堆積のための、蒸発装置への原材料の送出のためのシステムおよび方法が提供される。したがって、フレキシブル基板は、とりわけ、プラスチック材料、金属、または他の材料のフィルム、フォイル、ウエブ、ストリップを含むと見なされ得る。一般に、「ウエブ」、「フォイル」、「ストリップ」、「基板」などの用語は同義に用いられる。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装によれば、本明細書で説明される実装による、蒸発プロセスおよび蒸発装置のための構成要素が、前述のフレキシブル基板のために提供され得る。しかしながら、構成要素および装置はまた、蒸発源からの反応性堆積プロセスが施される、ガラス基板などの非フレキシブル基板と共に提供され得る。
【0014】
アノード予備リチオ化および固体金属アノード保護のための真空ウエブコーティングは、両面コーティングされ、カレンダ加工された合金型グラファイトアノードおよび集電体、たとえば6ミクロン以上の銅フォイル、ニッケルフォイル、または金属化プラスチックウエブ上への厚い(3から20ミクロン)金属(たとえば、リチウム)堆積を含む。堆積のための一技法は熱蒸発である。原材料が真空チャンバ内の開いたるつぼで加熱される場合に、より冷たい基板上での凝縮のための、源からの十分な蒸気流束があるような温度に達するとき、熱蒸発が直ちに行われる。原材料は、るつぼを加熱することによって間接的に加熱され、またはるつぼによって閉じ込められた原材料内に向けられた大電流電子ビームによって直接的に加熱され得る。
【0015】
一定の体積の原材料を常にるつぼに送出することが望ましい。しかしながら、送出されている原材料の体積は一般に未知であるので、溶融金属や溶融金属合金などの一定の体積の原材料をるつぼに送出することは難しいことがある。その結果、原材料がるつぼに送出されるとき、原材料の過充填、充填不足、およびはね散りが生じ得る。したがって、一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法およびシステムを有することが有利となるはずである。
【0016】
本開示の実装はシステムを提供する。システムは、流体入口を有する蒸発システムを含む。システムは流体送出システムをさらに含む。流体送出システムは、原材料を保持するように動作可能なアンプルを含む。アンプルは、流体出口およびガス入口を含む。流体送出システムは、蒸発システムに原材料を送出するように動作可能な流体送出ラインをさらに含む。流体送出ラインは、流体出口と流体的に結合された第1の端部と、流体入口に流体的に結合された第2の端部とを含む。流体送出ラインは、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブとをさらに含む。流体送出ラインは、第1の分離バルブと第2の分離バルブとの間に流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダをさらに含む。
【0017】
本開示の実装は方法をさらに提供する。方法は、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブを開くことと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブを閉じることとを含む。流体送出ラインは、原材料を保持するアンプルに流体的に結合された第1の端部と、るつぼと流体接続している第2の端部とを含む。流体送出ラインは、流体送出ラインに沿って配設された第1の分離バルブと、流体送出ラインに沿って配設された第2の分離バルブとをさらに含む。第1の分離バルブおよび第2の分離バルブは、一定の体積の流体送出ラインを画定する。流体送出ラインは、第1の分離バルブと第2の分離バルブとの間に流体送出ラインに沿って配設された較正シリンダをさらに含む。方法は、一定の体積の流体送出ラインを充填するために、アンプルから原材料を送出することをさらに含む。原材料は較正シリンダを通過する。方法は、一定の体積の流体送出ラインが充填されたとき、第1の分離バルブを閉じることをさらに含む。方法は、流体送出ラインを通じて一定の体積の原材料がるつぼに流れるように第2の分離バルブを開くことをさらに含む。
【0018】
本開示の実装は、以下の利点のうちの1つまたは複数を含む。流体送出システムの流体送出ラインに沿って配設された分離バルブが、一定の体積の原材料の送出を可能にすることにより、蒸発システム内の原材料でのるつぼの過充填および充填不足の低減を可能にする。さらに、流体送出システムは原材料のはね散りを低減する。流体送出システムは、蒸発システムに送出される原材料の厳密な測定を可能にし、それによって原材料の浪費を削減し、所有コストを削減する。
【0019】
図1は、本開示の1つまたは複数の実装による堆積システム105の概略側面図を示す。堆積システム105は、蒸発システム100および流体送出システム200を含む。蒸発システム100は、Applied Materialsによって製造され、本明細書で説明される実装に従って金属含有フィルムスタックを製造するように適合されたSMARTWEB(登録商標)システムであり得る。一例として、蒸発システム100は、リチウム含有アノード、特にリチウム含有アノードのためのフィルムスタックを製造するために使用され得る。蒸発システム100は、共通処理環境104を画定するチャンバ本体102を含み、共通処理環境104では、リチウム含有アノードを製造するための処理動作の一部またはすべてが実施され得る。共通処理環境104は真空環境として動作可能である。別の例では、共通処理環境104は不活性ガス環境として動作可能である。いくつかの例では、共通処理環境104はプロセス圧力1×10
-3mbar以下、たとえば1×10
-4mbar以下に維持され得る。
【0020】
蒸発システム100は、連続フレキシブル基板108を供給するための巻戻しロール106と、連続フレキシブル基板108がその上で処理されるコーティングドラム110と、連続フレキシブル基板を収集するための巻取りロール112とを含むロールツーロールシステムとして構成される。コーティングドラム110は、連続フレキシブル基板108上に材料が堆積する間に連続フレキシブル基板108がその上を移動する堆積表面111を含む。蒸発システム100は、巻戻しロール106、コーティングドラム110、および巻取りロール112の間に配置された1つまたは複数の補助移送ロール114、116をさらに含み得る。一態様によれば、1つまたは複数の補助移送ロール114、116、巻戻しロール106、コーティングドラム110、および巻取りロール112のうちの少なくとも1つが、モータによって駆動され、回転し得る。巻戻しロール106、コーティングドラム110、および巻取りロール112が共通処理環境104内に配置されるものとして示されているが、巻戻しロール106と巻取りロール112は別々のチャンバまたはモジュール内に配置され得、たとえば巻戻しロール106の少なくとも1つが巻戻しモジュール内に配置され得、コーティングドラム110が処理モジュール内に配置され得、巻取りロール112が巻戻しモジュール内に配置され得ることを理解されたい。
【0021】
巻戻しロール106、コーティングドラム110、および巻取りロール112は、個々に温度制御され得る。たとえば、巻戻しロール106、コーティングドラム110、および巻取りロール112は、各ロール内に配置された内部熱源または外部熱源を使用して個々に加熱され得る。
【0022】
蒸発システム100は蒸発源120をさらに含む。蒸発源120は、連続フレキシブル基板108または材料のウエブに対して1つの処理動作を実施するように配置される。一例として、
図1に示されるように、蒸発源120は、コーティングドラム110の周りに半径方向に配設される。さらに、半径方向以外の配置も想定される。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、蒸発源は、原材料165を保持するように動作可能である。堆積される原材料165は、るつぼ130内で供給され得る。堆積される材料は、たとえば熱蒸発技法によって蒸発し得る。
【0023】
るつぼ130は、蒸発器本体140と流体的に結合される。蒸発器本体140は、蒸発した材料を堆積のために送出するように動作可能である。るつぼ130は、蒸発器本体140と流体的に結合され得る。るつぼ130は、堆積材料を保持することのできるモノリシック制限オリフィス容器を含む。るつぼ130は、堆積される原材料165を保持するように動作可能である。蒸発システム100は流体入口170を含む。流体入口170は、るつぼ130と流体接続している。原材料165は、流体入口170を介して(
図2に示されるように)流体送出システム200からるつぼ130に供給され得る。
【0024】
動作の際に、蒸発源120は、蒸発した材料122のプルームを放出し、プルームが連続フレキシブル基板108に引き寄せられ、堆積した材料のフィルムが、連続フレキシブル基板108上に形成される。
【0025】
さらに、単一の蒸発源である蒸発源120が示されているが、蒸発システム100が1つまたは複数の追加の堆積源をさらに含み得ることを理解されたい。たとえば、本明細書で説明される1つまたは複数の堆積源は、電子ビーム源および追加の堆積源を含み得、追加の堆積源は、CVD源、PECVD(プラズマ化学気相堆積)源、および様々なPVD源のグループから選択され得る。例示的なPVD源には、スパッタリング源、電子ビーム蒸発源、および熱蒸発源が含まれる。
【0026】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、蒸発源120がサブチャンバ(図示せず)内に配置される。サブチャンバは、共通処理環境104から蒸発源120を分離し得る。サブチャンバは、蒸発システム100が本開示の実装に従って金属含有フィルムスタックを堆積させることを可能にする任意の適切な構造、構成、配置、および/または構成要素を含み得る。たとえば、限定はしないが、サブチャンバは、コーティング源、電源、個々の圧力制御機構、堆積制御システム、および温度制御機構を含む適切な堆積システムを含み得る。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、サブチャンバが個々のガス供給源を備える。
【0027】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、蒸発システム100は、連続フレキシブル基板108の両面を処理するように構成される。たとえば、蒸発源120と同様の追加の蒸発源が、連続フレキシブル基板108の反対側の面を処理するために配置され得る。蒸発システム100は、水平に配向される連続フレキシブル基板108を処理するように構成されるが、蒸発システム100は、異なる配向に配置された基板を処理するように構成され得、たとえば、連続フレキシブル基板108は垂直に配向され得る。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、連続フレキシブル基板108はフレキシブル導電性基板である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、連続フレキシブル基板108は、1つまたは複数の層がその上に形成された導電性基板を含む。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、導電性基板は銅基板である。
【0028】
蒸発システム100はガスパネル150をさらに含む。ガスパネル150は、1つまたは複数の導管(図示せず)を使用して、蒸発システム100に処理ガスを送出する。ガスパネル150は、蒸発システム100に供給されるそれぞれの個々のガスについてのガス圧および流量を制御するために、質量流量コントローラおよびシャットオフバルブを含み得る。
【0029】
蒸発システム100は、蒸発システム100および流体送出システム200の様々な側面を制御するように動作可能なコントローラ160をさらに含む。コントローラ160は、蒸発システム100および流体送出システム200の制御および自動化を容易にし、中央演算処理装置(CPU)、メモリ、および支援回路(またはI/O)を含み得る。CPUに指令するために、ソフトウェア命令およびデータが符号化され、メモリ内に記憶され得る。コントローラ160は、たとえばシステムバスを介して、蒸発システム100および流体送出システム200の構成要素のうちの1つまたは複数と通信し得る。コントローラ160によって読取り可能なプログラム(またはコンピュータ命令)が、どの作業が基板上で実施可能かを判定する。いくつかの態様では、プログラムはコントローラ160によって読取り可能なソフトウェアであり、ソフトウェアは、チャンバ条件を監視し、蒸発源120を制御し、流体送出システム200からの原材料165の送出を制御するためのコードを含み得る。単一のシステムコントローラであるコントローラ160が示されているが、本明細書で説明される態様では複数のシステムコントローラが使用され得ることを理解されたい。コントローラ160は、様々なチャンバおよびサブプロセッサを制御するための工業設定で使用され得る任意の形態の汎用コンピュータプロセッサの1つであり得る。
【0030】
図2は、本開示の1つまたは複数の実装による処理システム201の概略図を示す。処理システム201は、流体送出システム200および蒸発システム100を含む。流体送出システム200は、蒸発システム100に原材料(たとえば、
図1に示される原材料165)を送出するのに適している。蒸発システム100は、原材料の熱蒸発を実施するように動作可能なシステムであり得る。流体送出システム200は大気圧環境として動作可能である。
【0031】
流体送出システム200は、点線内に示されるキャビネット202を含む。キャビネット202は、アンプル204、第1の分離バルブ206、第2の分離バルブ208、および較正シリンダ210を収納するように動作可能である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、流体送出システム200は、第1のチェックバルブ232および第2のチェックバルブ234をさらに含む。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、アンプル204は、流体送出システム200と共に使用されるように意図されるが、流体送出システム200の一部ではない。アンプル204は、流体出口212およびガス入口214を含む。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、アンプル204は循環入口216を含む。
【0032】
アンプル204は、原材料を保持するように動作可能である。原材料は、溶融金属または金属合金である。原材料の例には、限定はしないが、アルカリ金属(たとえば、リチウムおよびナトリウム)、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、セレン、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルル、アルカリ土類金属、銀、またはこれらの組合せが含まれる。さらに、原材料はまた、2つ以上の金属の合金であり得る。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、化学的適合性および機械的強度のために、アンプル204は、316ステンレス鋼(316 SST)などのステンレス鋼製である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、高反応性材料などの様々なタイプの化学前駆体がアンプル204内に貯蔵され得るので、アンプル204の材料は化学的にかなり不活性である。
【0033】
アンプル204の流体出口212は流体送出ライン218と流体接続している。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、流体送出ライン218は、キャビネット202内に部分的に収納される。流体送出ライン218の第1の端部219は、流体出口212に流体的に結合される。流体送出ライン218の第2の端部220は、蒸発システム100の流体入口170に流体的に結合される。動作の際に、原材料は、流体送出ライン218を通じてアンプル204から蒸発システム100に移動するように動作可能である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、流体送出ライン218と流体入口170の一方または両方が、それに結合された熱源250を含む。熱源250は、流体送出ライン218および/または流体入口170内の原材料に熱を供給するように動作可能である。たとえば、熱源250は、流体送出ライン218に沿って較正シリンダ210から蒸発システム100まで巻かれたラインヒータまたはビュレットヒータに熱を供給する。一例として、熱源250は、原材料を液体状態に維持する温度に原材料を維持する。たとえば、原材料は約250℃に維持される。熱源250は、原材料の送出中の流体送出ライン218内のコールドスポットを防止する。
【0034】
流体送出ライン218は、第1の分離バルブ206および第2の分離バルブ208を含む。第2の分離バルブ208は、第1の分離バルブ206の下流側に配設される。第1の分離バルブ206および第2の分離バルブ208は、一定の体積222の流体送出ライン218を画定する。一定の体積222は、約1mLから約1000mLまで(たとえば、約200mLから約800グラムまで、または約400グラムから約600グラムまで)であり得る。
【0035】
第1の分離バルブ206は、一定の体積222とアンプル204との間の流体接続を可能にするように開かれ得る。第2の分離バルブ208は、一定の体積222と蒸発システム100との間の流体接続を可能にするように開かれ得る。動作の際に、一定の体積222が原材料で充填され得るように、第2の分離バルブ208が閉じられ、第1の分離バルブ206が開かれる。一定の体積222が原材料で充填されたとき、第1の分離バルブ206が閉じられる。次いで、第2の分離バルブ208が開かれるとき、一定の体積222内の原材料が蒸発システム100に送出され得る。キャビネット202(大気圧環境内で動作する)と、蒸発システム100(真空環境内で動作する)との間の圧力差により、蒸発システム100に原材料を送出することが可能となる。
【0036】
流体送出ライン218は、第1の分離バルブ206と第2の分離バルブ208との間に配設された較正シリンダ210をさらに含む。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、較正シリンダ210は一定の体積222内に含まれる。較正シリンダ210は、約1mLから100mLの間である。動作の際に、較正シリンダ210は、一定の体積222が原材料で充填されることを確認するために使用される。さらに、較正シリンダ210は、一定の体積222内の原材料の厳密な体積を確認する。したがって、蒸発システム100に送出されている原材料の厳密な体積測定値が取得され得、蒸発システム100のるつぼの過充填および充填不足が低減される。
【0037】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、流体送出システム200は、押出しガス源226と流体接続しているガス送出ライン224をさらに含む。押出しガス源226は、押出しガスを保持するように動作可能である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、ガス送出ライン224はキャビネット202内に部分的に収納される。適切な押出しガスの例には、ヘリウム、窒素、アルゴン、またはこれらの組合せなどの不活性ガスが含まれる。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、押出しガスは、原材料に圧力を与えるように動作可能であり、それによって原材料が流体送出ライン218を通じて送出される。押出しガス源226はガスプラッタ228と流体接続している。ガスプラッタ228は、ガス送出ライン224に流体的に結合されたガス送出出口230に結合される。ガスプラッタ228は、流体送出システム200に処理ガスを送出するために、1つまたは複数の導管(図示せず)をさらに含み得る。ガスプラッタ228は、流体送出システム200に供給される、押出しガスなどのそれぞれの個々のガスについてのガス圧および流量を制御するために、質量流量コントローラ、圧力計、およびシャットオフバルブを含み得る。たとえば、ガスプラッタ228は、ガス送出出口230内への押出しガスの導入を容易にし得る。
【0038】
ガス送出ライン224は、第1の区間224aおよび第2の区間224bを含む。ガス送出ライン224の第1の区間224aは、ガス送出出口230と、アンプル204のガス入口214とに接続される。ガス入口214は第1のチェックバルブ232を含む。第1のチェックバルブ232は、アンプル204への押出しガスの送出を容易にする。第1のチェックバルブ232は、原材料の後ろの押出しガスの流れが、流体送出ライン218を通じて原材料を押し出すことを可能にするように開かれ得る。押出しガスは、外部ガスからの原材料との反応がないことを保証するために、流体送出ライン218をパージするように動作可能である。
【0039】
ガス送出ライン224の第2の区間224bは、ガス送出出口230およびオーバーフローライン235に接続される。オーバーフローライン235は、流体送出ライン218に流体的に結合される。一定の体積222内に収まらない追加の原材料が、オーバーフローライン235内に流れ得る。第2の区間224bは第2のチェックバルブ234を含む。第2のチェックバルブ234は、オーバーフローライン235への押出しガスの送出を容易にする。第2のチェックバルブ234は、原材料の後ろの押出しガスの流れが、流体送出ライン218を通じて原材料を押し出し、オーバーフローライン235の外に出ることを可能にするように開かれ得る。さらに、第2のチェックバルブ234は、オーバーフローライン235内の原材料がガス送出ライン224に入ることを防止する。押出しガスは、外部ガスからの原材料との反応がないことを保証するために、流体送出ライン218をパージするように動作可能である。
【0040】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、ガス送出ライン224の第2の区間224bは、第1の空気圧バルブ236および第2の空気圧バルブ238を含む。第2の空気圧バルブ238は、第1の空気圧バルブ236の下流側に配設される。第1の空気圧バルブ236および第2の空気圧バルブ238は、一定のガス体積240のガス送出ライン224を画定する。第1の空気圧バルブ236は、一定のガス体積240とガスプラッタ228との間の流体接続を可能にするように開かれ得る。第2の空気圧バルブ238は、一定のガス体積240とオーバーフローライン235との間の流体接続を可能にするように開かれ得る。動作の際に、一定のガス体積240が押出しガスで充填されるように、第2の空気圧バルブ238が閉じられ、第1の空気圧バルブ236が開かれる。一定のガス体積240が押出しガスで充填されたとき、第1の空気圧バルブ236が閉じられる。次いで、一定のガス体積240内の押出しガスが、オーバーフローライン235および流体送出ライン218に送出され得る。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、第2の区間224bは、第2の空気圧バルブ238の下流側の計量バルブ242を含む。計量バルブ242は圧力計244と通信している。圧力計244は、計量バルブ242の下流側に配設される。計量バルブ242は、流体送出ライン218に流れる押出しガスに加えられる圧力を低減するように動作可能である。計量バルブ242は、圧力計244から提供される圧力測定値に基づいて調節され得る。したがって、計量バルブ242は、圧力のために原材料が蒸発システム100に送出されるときにはね散らないことを保証する。計量バルブ242および圧力計224は、流体送出ライン218に送出される押出しガスの圧力を監視および調節することによって流体送出ライン218内の圧力制御を可能にする。一例として、流体送出ライン218内の圧力は、約10mbarから約500mbarの間である。
【0041】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、循環ライン225が、較正シリンダ210の下流側、かつ第2の分離バルブ208の上流側の流体送出ライン218に接続される。循環ライン225は、循環ラインがアンプル204と流体接続するように循環入口216に流体的に結合される。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、第2の分離バルブ208が閉じられ、第1の分離バルブ206が開かれるとき、循環ライン225により、原材料が循環入口216を介して流体送出ライン218から循環ライン225およびアンプル204に循環することが可能となる。したがって、循環ライン225により、流体送出ライン218内に閉じ込められた押出しガスがないように、原材料が循環することが可能となる。さらに、過剰な原材料が循環してアンプル204に戻され、原材料の浪費が削減され得る。
【0042】
コントローラ160が設けられ、処理システム201の様々な構成要素の動作を制御するように、様々な構成要素に結合され得る。本明細書で説明される方法は、本明細書で説明される方式で流体送出システム200および/または蒸発システム100の動作を制御するように実行または起動され得るソフトウェアルーチンとしてコントローラ160のメモリ内に記憶され得る。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、コントローラ160は、第1の分離バルブ206、第2の分離バルブ208、第1の空気圧バルブ236、第2の空気圧バルブ238、計量バルブ242、第1のチェックバルブ232、および第2のチェックバルブ234を制御するように動作可能である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、コントローラ160は、キャビネット202に接続され、キャビネット内に流れ、キャビネットの外に出る原材料および押出しガスの流量および体積を制御し、流体送出システム200の性能を監視するように動作可能である。
【0043】
動作の際に、原材料、たとえばリチウム(Li)などの溶融金属がアンプル204内に貯蔵される。原材料は、一定の体積222の流体送出ライン218内に流れる。較正シリンダ210は、一定の体積222内の原材料を監視し、一定の体積222が原材料で充填されたときを確認する。第2の分離バルブ208が開かれ、原材料が、流体送出ライン218を介して蒸発システム100に送出される。原材料は、キャビネット202と蒸発システム100との間の圧力差のために送出される。いくつかの実装では、押出しガスが、ガス送出ライン224を介して流体送出ライン218に送出される。押出しガスは、原材料が流体送出ライン218を通じて送出されるように原材料に圧力を与える。原材料を保持する一定の体積222により、既知の体積の原材料を蒸発システム100に反復的に送出することが可能となる。したがって、蒸発システム100の(
図1に示される)るつぼ130での原材料の過充填、充填不足、およびはね散りが低減される。
【0044】
図3は、本開示の1つまたは複数の実装による、一定の体積の溶融金属および金属合金の送出のための方法の一実装を要約するプロセスフローチャート300を示す。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、方法がコンピュータ可読媒体上に記憶される。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、処理システム201を使用して方法が実施される。方法は、
図1および
図2を参照して説明される。
【0045】
動作310では、第1の分離バルブ206が開かれ、第2の分離バルブ208が閉じられる。第1の分離バルブ206および第2の分離バルブ208は、流体送出ライン218に沿って配設される。流体送出ライン218は、流体送出システム200のキャビネット202内に少なくとも部分的に収納される。流体送出ライン218は、アンプル204および蒸発システム100に接続される。第2の分離バルブ208は、流体送出ライン218に沿って第1の分離バルブ206の下流側に配設される。第1の分離バルブ206および第2の分離バルブ208は、一定の体積222の流体送出ライン218を画定する。
【0046】
動作320では、原材料が一定の体積222に送出される。原材料はアンプル204内に貯蔵される。一定の体積222が原材料で充填されるまで、原材料が一定の体積222に送出される。一定の体積222内に配設された較正シリンダ210が、原材料を監視し、一定の体積222が充填されたときを確認する。較正シリンダ210はまた、一定の体積222内の原材料の厳密な体積を確認する。原材料は溶融金属または金属合金である。原材料の例には、アルカリ金属(たとえば、リチウムおよびナトリウム)、マグネシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、セレン、スズ、鉛、アンチモン、ビスマス、テルル、アルカリ土類金属、銀、またはこれらの組合せが含まれる。一例として、原材料はリチウム、セレン、またはナトリウムを含む。さらに、原材料はまた、2つ以上の金属の合金であり得る。
【0047】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、押出しガスが原材料に圧力を与え、一定の体積222に原材料を送出する。適切な押出しガスの例には、ヘリウム、窒素、アルゴン、またはこれらの組合せなどの不活性ガスが含まれる。押出しガスは、ガス送出ライン224の第1の区間224aを介して、アンプル204および流体送出ライン218に送出される。ガス送出ライン224は、キャビネット202内に少なくとも部分的に収納される。ガス送出ライン224の第1の区間224aは、ガス入口214を介してアンプル204に流体的に結合される。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る別の実装では、原材料は、流体送出ライン218に接続された循環ライン225を通じて循環し得る。循環ライン225は、流体送出ライン218およびアンプル204に接続される。循環ライン225により、流体送出ライン218内に閉じ込められた押出しガスがないように、原材料が循環することが可能となる。
【0048】
動作330では、第1の分離バルブ206が閉じられる。一定の体積222が原材料の一定の体積で充填されるように、第1の分離バルブ206が閉じられる。一定の体積222は、約1mLから約1000mLの間である。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、第1の分離バルブ206および第2の分離バルブ208の開閉は、コントローラ160によって容易にされ、制御される。一定の体積222が充填されることを較正シリンダ210が確認したとき、第1の分離バルブ206が閉じられ得る。
【0049】
動作340では、蒸発システム100への原材料の送出を可能にするように第2の分離バルブ208が開かれる。第2の分離バルブ208が開かれるとき、一定の体積222は蒸発システム100と流体接続する。原材料は、流体送出ライン218を通じて蒸発システムの流体入口170に流れる。原材料は、蒸発システム100内の(
図1に示される)るつぼ130に送出される。蒸発システム100が真空環境内にあり、キャビネットが大気圧環境内にあるとき、圧力差により、原材料が一定の体積222から蒸発システム100に引き寄せられる。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、圧力差により、約40mbarから約500mbar(たとえば、約40mbarから約100mbar)の間の受け入れられる圧力範囲が原材料に加えられる。本明細書で説明される流体送出システム200は、原材料に加えられる、受け入れられる圧力範囲の改善を可能にする。たとえば、受け入れられる圧力範囲により、るつぼ130内の原材料のはね散りが低減される。原材料に加えられる圧力を低減すると、蒸発システム100内の原材料のはね散りが低減される。蒸発システム100に送出される一定の体積の原材料により、後続の動作で原材料の厳密な体積測定値が反映され得るので、るつぼ130の充填不足および過充填の防止が可能となる。
【0050】
本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、圧力差に加えて、押出しガスが原材料に圧力を与え、蒸発システム100に原材料を送出する。押出しガスは、ガス送出ライン224の第1の区間224aおよび第2の区間224bを介して流体送出ライン218に送出される。ガス送出ライン224の第1の区間224aは、ガス入口214を介してアンプル204に流体的に結合される。ガス送出ライン224の第2の区間224bは、オーバーフローライン235を介して流体送出ライン218に流体的に結合される。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、ガス送出ライン224に沿って配設された第1の空気圧バルブ236および第2の空気圧バルブ238が、一定のガス体積240のガス送出ライン224を画定する。一定のガス体積240が押出しガスで充填されるように、第2の空気圧バルブ238が閉じられ、第1の空気圧バルブ236が開かれる。一定のガス体積240が押出しガスで充填されたとき、第1の空気圧バルブ236が閉じられる。次いで、一定のガス体積240内の押出しガスが、オーバーフローライン235および流体送出ライン218に送出され得る。一定の体積の押出しガスは、蒸発システム100内の原材料のはね散りを低減するために、原材料に加えられる圧力を低減する助けとなる。
【0051】
動作350では、蒸発システム100のるつぼ130が加熱され、基板、たとえば連続フレキシブル基板108上に堆積される原材料が蒸発する。
【0052】
まとめとして、本開示の利点のいくつかは、蒸発システム内のるつぼの原材料での過充填および充填不足の低減を含む。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得るいくつかの実装では、アンプルから蒸発システムに一定の体積の原材料を送出するための流体送出システムが提供される。本明細書で説明される他の実装と組み合わせられ得る一実装では、るつぼに原材料を送出する前に流体送出ラインの一定の体積を充填するために分離バルブおよび較正シリンダを使用することにより、一定の体積の原材料が蒸発システムに送出される。一定の体積は既知であり、したがって一定の体積の原材料が反復的に送出され得る。したがって、本明細書で説明される本開示のいくつかの実装は、るつぼの過充填および充填不足を低減し、原材料の送出時の蒸発システム内のはね散りを防止する。
【0053】
本明細書で説明される実装および機能的動作のすべては、本明細書で開示される構造的手段およびその構造的均等物、またはそれらの組合せを含む、デジタル電子回路で、またはコンピュータソフトウェア、ファームウェア、もしくはハードウェアで実装され得る。本明細書で説明される実装は、データ処理装置、たとえばプログラム可能プロセッサ、コンピュータ、または複数のプロセッサもしくはコンピュータによる実行のための、あるいはデータ処理装置の動作を制御するための1つまたは複数の非一時的コンピュータプログラム製品、すなわち機械可読記憶デバイスで有形に実施された1つまたは複数のコンピュータプログラムとして実装され得る。
【0054】
本明細書で説明される方法は、入力データに対して演算し、出力を生成することによって機能を実施するための1つまたは複数のコンピュータプログラムを実行する1つまたは複数のプログラム可能プロセッサによって実施され得る。プロセスおよび論理フローはまた、専用論理回路、たとえばFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)またはASIC(特定用途向け集積回路)によって実施され得、装置はまた、専用論理回路として実装され得る。
【0055】
本開示の要素または本開示の例示的態様もしくは実装を導入するとき、冠詞「a(一つ)」、「an(ある)」、「the(その)」、および「said(前記)」は、要素のうちの1つまたは複数があることを意味するものとする。
【0056】
「備える」、「含む」、および「有する」という用語は包含的であるものとし、列挙された要素以外の追加の要素があり得ることを意味する。
【0057】
上記は本開示の実装を対象とするが、本開示の基本的範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態およびさらなる実施形態が考え出され得、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
【国際調査報告】