(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】EGFRを標的にするFc抗原結合性フラグメント-薬物抱合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20240528BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240528BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240528BHJP
【FI】
A61K47/68 ZNA
A61P35/00
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023572806
(86)(22)【出願日】2022-05-23
(85)【翻訳文提出日】2024-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2022063839
(87)【国際公開番号】W WO2022248380
(87)【国際公開日】2022-12-01
(32)【優先日】2021-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イエーガー,セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュレーター,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
(57)【要約】
本発明は、EGFRを標的にするFc抗原結合性フラグメント-薬物抱合体(EGFR Fcab-薬物抱合体)、および、哺乳動物(特にヒト)における過剰増殖性の疾患および障害の処置および/または予防のための本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の使用、および、かかるEGFR Fcab-薬物抱合体を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、EGFR Fcab-標識抱合体、および、かかるEGFR Fcab-標識抱合体を含有する診断用組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Fcab-(L)
m-(D)
nを含み、式中:
e) Fcabは、EGFR Fcabを含み、
f) Lは、リンカーを含み、
g) Dは、薬物を含み、
h) mは、1~5の整数であり、および、nは、1~10の整数である、EGFR Fcab-薬物抱合体またはその薬学的に許容し得る塩。
【請求項2】
EGFR Fcabが、配列番号1~6に掲げるとおりのアミノ酸配列を有する、Fcab-1、Fcab-2、Fcab-3、Fcab-4、Fcab-5およびFcab-6からなる群から選択される、請求項1に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体。
【請求項3】
式Fcab-(L)
m-(La)
nを含み、式中:
e) Fcabは、EGFR Fcabを含み、
f) Lは、リンカーを含み、
g) Laは、標識を含み、
h) mは、1~5の整数であり、および、nは、1~10の整数である、EGFR Fcab-標識抱合体。
【請求項4】
少なくとも1の請求項1または2に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体を含む、医薬製剤。
【請求項5】
賦形剤および/またはアジュバントをさらに含む、請求項4に記載の医薬製剤。
【請求項6】
少なくとも1の請求項1または2に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体、および、少なくとも1のさらなる医薬活性化合物を含む、医薬製剤。
【請求項7】
請求項1または2に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体が、固体、液体または半液体の賦形剤またはアジュバントと一緒に好適な剤形にされることを特徴とする、医薬製剤の調製のためのプロセス。
【請求項8】
少なくとも1の請求項3に記載のEGFR Fcab-標識抱合体を含む、診断用組成物。
【請求項9】
生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法における使用のための、少なくとも1の請求項1または2に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体を含む、医薬。
【請求項10】
過剰増殖性の疾患および障害からなる群から選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法における使用のための、請求項1または2に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体を含む、医薬。
【請求項11】
過剰増殖性の疾患または障害が、がんである、請求項10に記載の使用のための医薬。
【請求項12】
がんが、EGFR陽性がんである、請求項11に記載の使用のための医薬。
【請求項13】
がんが、急性および慢性のリンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、子宮頸部過形成、絨毛膜がん、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ性白血病、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、胆道がん、肝細胞癌、肝臓がん、食道がん、本態性血小板増加症、泌尿生殖器癌、神経膠腫、膠芽腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵臓インスリノーマ、甲状腺髄様癌、黒色腫、軟骨肉腫、多発性骨髄腫、菌状息肉種、骨髄性およびリンパ性白血病、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、原発性マクログロブリン血症、前立腺がん、腎細胞がん、横紋筋肉腫、皮膚がん、小細胞肺がん、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がんおよびウィルムス腫瘍、からなる群から選択される、請求項11に記載の使用のための医薬。
【請求項14】
がんが、乳がん、胃部のがん、胃がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮内膜がんまたは非小細胞肺がんからなる群から選択される、請求項11に記載の使用のための医薬。
【請求項15】
a) 有効量の少なくとも1の請求項1または2に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体を含むもの、および
b) 有効量のさらなる医薬活性化合物
の別々のパックからなる、セット(キット)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EGFRを標的にするFc抗原結合性フラグメント-薬物抱合体EGFR Fcab-薬物抱合体)、および、哺乳動物(特にヒト)における過剰増殖性の疾患および障害の処置および/または予防のための本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の使用、および、かかるEGFR Fcab-薬物抱合体を含有する医薬組成物に関する。さらに、本発明は、EGFR Fcab-標識抱合体、および、かかるEGFR Fcab-標識抱合体を含有する診断用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
上皮成長因子受容体(EGFR;ErbB-1およびHER1ともまた称される)は、細胞外タンパク質リガンドの上皮成長因子ファミリー(EGFファミリー)のメンバーに対する細胞表面受容体である。EGFRは、単一の膜貫通領域、および、非触媒性調節領域が隣接された細胞質チロシンキナーゼドメインを持つ、大きな単量体糖タンパク質である。配列分析は、外部ドメインが、L1、CR1、L2およびCR2という用語で呼ばれる4のサブドメインを含有することを示しており、ここでLおよびCRは夫々「大きい(large)」および「Cysリッチ(Cys-rich)」の頭文字である。L1およびL2ドメインは、夫々、ドメインIおよびIIIともまた称されている。CRドメインは、これまでに、ドメインIIおよびIV、またはS1.1~S1.3およびS2.1~S2.3と称されており、ここでSは、「小さい(small)」の略語である。
【0003】
EGFRを発現することが知られているがんは、肺がん(例えば非小細胞肺がん[NSCLC])(Pao et al., 2010; Amman et al., 2005)、多形性膠芽腫(Taylor et al., 2002)、皮膚がん(例えば皮膚の扁平上皮細胞癌)(Uribe et al., 2011)、頭頸部がん(頭頸部の扁平上皮細胞癌[HNSCC]など)(Zimmermann et al., 2006; Smilek et al., 2012)、乳がん(Masuda et al., 2013)、胃がん(胃部のがん)(Terashima et al., 2012)、大腸がん(CRC)(Spano et al., 2005; Saletti et al., 2015)、卵巣がん(Hudson et al., 2009)、膵臓がん(Troiani et al., 2012)、または子宮内膜がん(Scambia et al., 1994)を包含する。
【0004】
EGFRの細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体は、記載されている。これらの抗体は、EGFRへのリガンド結合をおよびこれに続くシグナル伝達を分断させる。
【0005】
mAbC225(アービタックス/セツキシマブ)は、EGFRの細胞外ドメインに結合しおよびEGFRへの結合についてEGFと競合するキメラのIgG1抗体であり、それによって下流の経路シグナリングを阻害しおよび腫瘍細胞の増殖をブロックする(Voigt et al., 2012)。セツキシマブは、頭頸部がんの処置、特に放射線療法との組み合わせで局所的にまたは領域的に進行した頭頸部の扁平上皮細胞癌、5-FUを伴う白金ベースの治療との組み合わせで再発性の局所領域的な疾患または転移性の頭頸部の扁平上皮細胞癌、および白金ベースの治療の後で進行している再発性または転移性の頭頸部の扁平上皮細胞癌の処置のためにFDA承認されている。
【0006】
セツキシマブはまた、FDA承認済み試験によって決定される、KRAS突然変異陰性(野生型)の、EGFRを発現する、転移性大腸がんの処置のためにも、とりわけFOLFIRIとの組み合わせで第一選択の処置として、または、イリノテカンとの組み合わせで、イリノテカンベースの化学療法に抵抗性である患者において、および、オキサリプラチンおよびイリノテカンベースの化学治療に失敗したかまたは単一薬剤としてのイリノテカンに不耐性である患者の処置のためにも、FDA承認されている。
【0007】
ABX-EGF(ベクチビックス/パニツムマブ)は、セツキシマブのように、EGFRの細胞外ドメインに結合しおよびEGFRへの結合についてEGFと競合するヒトlgG2抗体であり、それによって下流の経路シグナリングを阻害しおよび腫瘍細胞の増殖をブロックする(Voigt et al., 2012)。パニツムマブは、FDA承認済み試験によって決定される野生型KRAS(エクソン2、コドン12または13)転移性大腸がん(mCRC)を持つ患者の処置のために、FOLFOXとの組み合わせでの第一選択の治療として、または、フルオロピリミジン、オキサリプラチン、およびイリノテカンを含有する化学療法での先立つ処置の後の疾患進行に続く単剤療法として、のいずれかでFDAによって承認されている。
【0008】
ネシツムマブ(Portrazza)は、EGFRを結合させる別の抗体であり、および、転移性の扁平上皮非小細胞肺がんを持つ患者の第一選択の処置のための、ゲムシタビンおよびシスプラチンとの組み合わせでの使用のために、2015年にFDAによって承認された。
【0009】
ニモツズマブ(これまでにh-R3として知られている)は、数か国において臨床試験に登録された、EGFRの細胞外領域に結合するヒト化されたIgG1抗体である。ニモツズマブは、インド、キューバ、アルゼンチン、コロンビア、コートジボワール、ガボン、ウクライナ、ペルー、およびスリランカにおいて頭頸部における扁平上皮細胞癌の処置のために;ならびにキューバ、アルゼンチン、フィリピンおよびウクライナにおいて神経膠腫(小児のおよび成年の)の処置のために;および中国において鼻咽腔がんの処置のために承認されている(Ramakrishnan et al., 2009)。
【0010】
ザルツズマブ(HuMax-EGFr)およびマツズマブ(かつてのEMD 72000)を包含する、他のEGFRを標的とする抗体の臨床の試験が開始されているが、これらの抗体は規制当局の承認を得ておらず、および開発はそのため止まっている。
【0011】
抗体-薬物抱合体(ADC)は、近年にわたって急速に進歩し、および、様々ながんを患う患者に治療的な利益を提供する腫瘍学の分野における恒久的なプレーヤーとして確立された。その結果として、5の新しいADCが、2019年~2020年8月の間にFDAによって承認されており、この治療薬クラスの臨床的成功を実証している。1-3 ADCは、モノクローナル抗体の大きな選択性を高度に細胞傷害性の薬物の細胞死滅能力と結び付け、および、これらの毒素を腫瘍細胞へガイドすることによって治療濃度域を拡大させる。今日まで、承認されているADC、および、臨床および前臨床ステージのADCの圧倒的多数は、モノクローナルIgGスキャフォールドを保有する。4 従来の完全サイズのADCの大きな成功の結果として、代替のより小さい抗体フラグメントをベースとした薬物抱合体が進化している。5 かかる抱合体は、Fabフラグメント6,7、単一鎖可変フラグメント(scFv)8,9、二重特異性抗体10、または、アブジュリン、nano-10もしくはhumabodies13のような単一ドメイン抗体をベースとした構造体からなる。それらの小さなサイズは、血管から間質組織空間への血管外漏出および組織を通じた間質拡散の上昇に起因して、より良好な固形腫瘍浸透を可能にする。16,19
【0012】
しかしながら、抗体フラグメントは、しばしば、より良好な有効性を示さず7,13、これは、Fcドメインおよびその半減期延長機能が不在であることと関連し得る。Fcドメインとその天然のリガンドである新生児Fc受容体(FcRn)との相互作用は、血流中の完全長IgG抗体の長期化された循環を媒介する(例としてマウスでの消失t1/2 トラスツズマブ対FcRn非結合トラスツズマブ、212h対6.9h19)。したがって、Fc部分を欠いたフラグメントは、しばしば速い全身クリアランス速度および限定された曝露によって阻まれる(例としてトラスツズマブFab、マウスでの消失t1/2 4.4h19)。これらの知見は、それらのin vivo半減期を改善するための、小さいバインダーフラグメントがPAS化されたか、PEG10、アルブミン結合ドメイン10,12,13またはFc部分へ縮合された、様々な新規な抱合体フォーマットに導いたが、しかしながら、流体力学半径を増大させるという対価のもとであり、これは腫瘍浸透を限定する。
【0013】
したがって、ADCは、それらのサイズの上昇(150kDa)に起因して、固形腫瘍浸透の低減を示す。これは、ペイロードの細胞傷害性の用量へのがん細胞の不均一な曝露、および低減されたADCの治療的有効性を、結果としてもたらす。
【0014】
対照的に、既知のより小さい抗体フラグメントをベースとした薬物抱合体(≦50kDa)は、理論上はがん細胞の治療薬へのより均一な曝露を結果としてもたらす、増大した固形腫瘍浸透を示す。しかしながら、それらのより小さいサイズ、および、FcRn結合部位の欠如は、持続性のある腫瘍浸透に対し反対に作用するこれらのフラグメント薬物抱合体のより短い半減期の原因となる。
【0015】
よって、増大した腫瘍浸透を示すが同時に長い半減期も示してその両方が治療的有効性の増大を媒介する、ADCまたは抗体-フラグメントをベースとした抱合体による、がんの処置のための新規な治療的選択肢を開発するニーズが残っている。
【発明の概要】
【0016】
本発明の概要
驚くべきことに、別の抗体フラグメントベースのフォーマットの薬物抱合体であるFc抗原結合性フラグメント(Fcab)は、より小さいサイズ、およびFcに媒介される半減期延長に起因して、既知のADCおよび既知のより小さい抗体フラグメントをベースとした薬物抱合体とは対照的に、増大した腫瘍浸透および長い半減期を両方同時に示し、その両方がかかるFcab-薬物抱合体の治療的有効性の増大を媒介するということが見出された。従って、効率的なリソソームの送達が、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体について観察されており、腫瘍細胞における強力な細胞傷害効果を結果としてもたらした。よって、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体は、がんなどの過剰増殖性の疾患および障害の処置のために使用することができる。
【0017】
Fcabは、抗がん薬物抱合体として説明されまたは探索されたことがない。Fcabは、C
H3ドメインのC末端構造ループを改変して抗原結合部位を形成することによって、ヒトIgG1抗体のFcフラグメントから導出された(
図3A、B)。ゆえに、Fcabは、Fcに媒介されるエフェクター機能と、抗原結合機能を持つ新生児Fc受容体(FcRn)結合とを組み合わせているが、従来のIgGのサイズの3分の1のみを含む。
[15] Fcabフォーマットのより小さなサイズは、循環から間質腔内への血管外漏出を増強させること、および間質および腫瘍組織を通じた拡散速度を増大させることによって、固形腫瘍浸透を改善する見込みがある。
[16]その上、半減期延長性FcRn結合部位は、Fcabの全身クリアランスを遅延させ(マウスでの消失t
1/2 Fcab 60~85h
[17,18])およびそれによって、組織内への浸透をさらに推進する高い血漿濃度を維持する。
[16]
【0018】
FcRn結合は、FcRn結合部位を欠きおよびその結果としてin vivoでの短い半減期(マウスでの消失t1/2 トラスツズマブ由来Fab 4.4h[19])に悩まされる他の報告された≦50kDaのFab[6,7]、scFv[8,9]、二重特異性抗体[10]または単一ドメイン抗体ベースの薬物抱合体[11-13]に対して有意な利点を、Fcabに提供する。HER Fcab-薬物抱合体での同様の実験において、我々は、Fcabフォーマットが、HER2結合性の薬物抱合体を生成するのに好適であるということを示すことができた。[14] 改変された微生物トランスグルタミナーゼを配備することで、我々は、保存されたFc位置Q295にリンカー-ペイロードを部位特異的に抱合させ、2.0の薬物抗体比(DAR)を持つ安定かつ機能的なFcab-薬物抱合体を結果としてもたらすことができた。さらにまた、我々は、in vitroスフェロイド実験において、スフェロイド蓄積が、Fcabでは完全長抗体対照と比較してより高いということを実証し、Fcabの好ましい浸透能を確認した。[14]
【0019】
本実験において、我々は、FcabベースのADCの概念をHER2からEGFR結合性Fcab-ADCへ拡張させ、および、部位特異的、安定、かつ高度に強力な薬物抱合体の生成のためのこの抗体フォーマットの多用途性を実証した。我々は、選択したEGFR結合性FcabがADCアプローチのために好適であるということを、pH依存性の色素を抱えている異種抱合体を使用した選択的な細胞取り込みデータに基づいて、最初に実証した。我々は、次いで、部位特異的な酵素的抱合を採用したことで、微小管インヒビターモノメチルアウリスタチンE(MMAE)を位置Q295に、しかしまた、より高いDARに到達するのを可能にする新規な位置Q311およびQ438にも付着させた。薬物抱合体は、マウスおよびヒト血清中において、EGFRおよびFcRn結合特性を保持することを示し、および優れた安定性を保有していた。最終的に、我々は、種々異なるがん細胞株に対する、我々のFcab-薬物抱合体の、EGFR媒介性であるナノモル以下での細胞傷害性を示した。
【0020】
本明細書に示されているとおり、Fcabの好ましい薬物動態プロファイルは、それらの小さなサイズの組み合わせで、驚くべきことに、Fcabをベースとした薬物抱合体によって、固形腫瘍の、より良好なかつ持続性のある浸透へ繋がる。これは、他のフラグメントをベースとした同様のサイズの薬物抱合体、または従来のIgGをベースとしたADCとの比較において本発明の抱合体の、全体的な腫瘍曝露の上昇およびより良好な有効性を、結果としてもたらす(
図1に示されている概念)。
【0021】
本明細書では、我々は初めて、EGFRを標的にするFcab-薬物抱合体の生成および機能を提示する。概念証明のために、我々は、固形腫瘍抗原EGFRを標的にするFcabの多様なセットを選択した。弾頭の細胞内放出がADCの前提条件であることから、選択されたFcab分子についてのEGFR依存的な取り込み率をがん細胞に対して決定した。続いて、Fcabを、十分に確立されたチューブリンインヒビターモノメチルアウリスタチンE(MMAE)とカップリングするために、様々な部位特異的抱合の技法を採用した。その上、すべてのFcab-薬物抱合体ならびにFcRnについて標的依存的な細胞傷害性および血清中の安定性を、および、親のFcab分子と比較した標的結合特性を、評価した。概して、開示された実験および結果は、Fcab-薬物抱合体の生成のためのFcabの応用を強調する。
【0022】
本実験の範囲において生産されたFcabは、ナノモルの親和性でEGFRを結合し、および、EGFRを発現させる細胞内に標的依存的に蓄積される。Q295および新規な位置Q311およびQ438へのmTGを介した部位特異的抱合は、EGFRまたはFcRn結合親和性の変化のないDAR2.7~2.9のVal-Cit-PAB-MMAE抱合体を生じた。生成されたFcab-薬物抱合体は、ヒトおよびマウス血清中において高い安定性を呈し、および、セツキシマブベースの参照抱合体と同様にナノモル以下の濃度でEGFR媒介性の細胞傷害性を示した。
【0023】
広範なin vitro特徴付けに基づき、我々の実験および結果は、Fcabフォーマットが、安定なかつ細胞傷害性の薬物抱合体の生成に好適であるという概念実証を提供する。その上、先のHER2 Fcab-薬物抱合体を用いた実験において、我々は、50kDaのFcabフォーマットが、150kDaの参照構築物と比較して秀でた浸透を示すということを実証できた。[14]Fcab-薬物抱合体の有益な浸透は、より良好な腫瘍浸透および全体的な腫瘍曝露の増大、および究極的にはADCと比較して改善された有効性を実証している。
【0024】
よって、本発明は、式Fcab-(L)m-(D)nを含み、式中:
a) Fcabは、EGFR Fcabを含み、
b) Lは、リンカーを含み、
c) Dは、薬物を含み、
d) mは、1~5の整数であり、および、nは、1~10の整数である、EGFR Fcab-薬物抱合体またはその薬学的に許容し得る塩に関する。
本発明の好ましい態様において、mは、1~3であり、および、nは、1~5である。
【0025】
本発明は、EGFR Fcabが、以下からなる群:配列番号1~6に掲げるとおりのアミノ酸配列を有する、Fcab-1、Fcab-2、Fcab-3、Fcab-4、Fcab-5およびFcab-6、から選択される、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体に関する。
【0026】
本発明の好ましい態様は、EGFR Fcabが、以下からなる群:配列番号1~3に掲げるとおりのアミノ酸配列を有する、Fcab-1、Fcab-2およびFcab-3、から選択される、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体である。
【0027】
本発明に網羅されるのはまた、Fcabのアミノ酸配列が、保存的アミノ酸置換によって修正または修飾された、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体である。本明細書に使用されるとき、用語「保存的置換」は、当業者によって知られており、および、一般にその結果得られる分子の生物活性を変化させることなくなされる、アミノ酸の置換を指す。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換は、実質的に生物活性を変化させないということを理解する(例として、Watson, et al., MOLECULAR BIOLOGY OF THE GENE, The Benjamin/ Cummings Pub. Co., p. 224 (第4版 1987)を参照)。
【0028】
一般に、本発明の方法に従って得られるEGFR Fcab-薬物抱合体は、好ましくはそれが所望の標的細胞に到達する前に早期放出されるのを防ぐのに充分に安定であり、それによって非標的細胞への損傷を防ぎおよび標的部位での利用可能性を増大させられる限り、あらゆる薬物が抱合されたものとすることができる。薬物が、最も一般的にはリンカー分子の切断に続いてリソソーム内で放出されることから、薬物が低pH環境中でも安定なままでありそれが効果を発揮する細胞の細胞質ゾルまたは核の区画内へと移動する能力があることを確実にすることが重要である。同様に、薬物の分子構造は、リンカーへのその抱合を許容しつつ、免疫原性を回避し、EGFR Fcab-薬物抱合体の内在化速度を維持し、およびその生物学的効果(すなわち、ADCC、CDCCおよびCDC)を、もしあれば、促進するか、または少なくとも損なわないようにすることが望まれる。薬物の安定性に関係なく、典型的には、投与されたEGFR Fcab-薬物抱合体のごく一部のみが、標的細胞に到達することになる。よって、抱合された薬物は、好ましくは、低濃度で強力である。
【0029】
よって、本発明の一態様は、EGFR Fcab-薬物抱合体であり、ここで、EGFR Fcabは、化学療法剤などの細胞傷害性薬剤、成長阻害剤、毒素(例として、細菌、真菌、植物、もしくは動物起源の酵素的に活性な毒素、またはそのフラグメント)、または放射性同位体(すなわち、放射性抱合体)から選択される薬物へ抱合されている。ADCとしての抗体-薬物抱合体の、および本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の、細胞傷害性または細胞増殖抑制性の薬剤すなわちがんの処置において腫瘍細胞を殺すかまたは阻害するための薬物の局所送達のための使用(SyrigosおよびEpenetos (1999) Anticancer Research 19:605-614;Niculescu-DuvazおよびSpringer (1997) Adv. Drg Del. Rev. 26:151-172;米国特許第4,975,278号)は、これらの抱合されていない薬剤の全身投与の場合は消滅させようとした腫瘍細胞だけでなく正常細胞にも許容し得ないレベルの毒性を結果としてもたらし得るところ、薬物部分の腫瘍への標的送達およびその中への細胞内蓄積を可能にする(Baldwin et al., (1986) Lancet pp. (Mar. 15, 1986):603-05;Monoclonal Antibodies ’84: Biological And Clinical Applications, A. Pinchera et al. (ed.s), pp. 475-506におけるThorpe, (1985)「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review」)。最小限の毒性を伴う最大限の有効性が、それによって追求される。
【0030】
これらの方法において使用される薬物は、ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびビンデシンを包含する(Rowland et al., (1986)上記参照)。抗体-毒素抱合体において使用される毒素は、ジフテリア毒素などの細菌性毒素、リシンなどの植物毒素、ゲルダナマイシン(Mandler et al. (2000) Jour. of the Nat. Cancer Inst. 92(19):1573-1581;Mandler et al. (2000) Bioorganic&Med. Chem. Letters 10:1025-1028;Mandler et al (2002) Bioconjugate Chem. 13:786-791)、メイタンシノイド(EP 1391213;Liu et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:8618-8623)、およびカリケアマイシン(Lode et al. (1998) Cancer Res. 58:2928;Hinman et a et al. (1993) Cancer Res. 53:3336-3342)などの小分子毒素を包含する。毒素は、チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害を包含する機構により、それらの細胞傷害性および細胞増殖抑制性の効果を発揮し得る。いくつかの細胞傷害性の薬物は、大きな抗体またはタンパク質受容体リガンドに抱合されたとき、不活性または活性が少なくなる傾向がある。
【0031】
本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体を調製するための企図される好適な薬物は、今日まで一般的にADCにおいて利用されている全ての細胞毒素を包含する。細胞毒素のほとんどのクラスは、細胞分裂を阻害するように作用し、およびそれらの作用機序に基づき分類されている。本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の一部として考えられる例示の細胞毒素は、限定せずに、アントラサイクリン、ドキソルビシン、メトトレキサート、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を包含するアウリスタチン、メイタンシンおよびそれらのメイタンシノイド誘導体(DM)、カリケアマイシン、デュオカリマイシン、およびピロロベンゾジアゼピン(PBD)ダイマーを包含する。
【0032】
一態様において、薬物部分は、V-ATPaseインヒビター、アポトーシス促進剤、Bcl2インヒビター、MCL1インヒビター、HSP90インヒビター、IAPインヒビター、mTorインヒビター、微小管安定剤、微小管脱安定剤、アウリスタチン、アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン、RNAポリメラーゼインヒビター、ドラスタチン、メイタンシノイド、MetAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRM1の核外輸送のインヒビター、DPPIVインヒビター、プロテアソームインヒビター、ミトコンドリアにおけるホスホリル転移反応のインヒビター、タンパク質 合成 インヒビター、キナーゼインヒビター、CDK2インヒビター、CDK9インヒビター、キネシンインヒビター、HDACインヒビター、DNA損傷剤、DNAアルキル化剤、DNAインターカレーター、DNA副溝結合剤およびDHFRインヒビターからなる群から選択される。いくつかの態様において、細胞傷害性薬剤は、メイタンシノイドであり、ここで、メイタンシノイドは、N(2')-デアセチル-N(2')-(3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン(DM1)、N(2')-デアセチル-N(2')-(4-メルカプト-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM3)またはN(2')-デアセチル-N2-(4-メルカプト-4-メチル-1-オキソペンチル)-メイタンシン(DM4)である。
【0033】
よって、本発明の好ましい態様は、薬物が、以下からなる群:アントラサイクリン、ドキソルビシン、メトトレキサート、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を包含するアウリスタチン、メイタンシンおよびそれらのメイタンシノイド誘導体(DM)、カリケアマイシン、デュオカリマイシンおよびピロロベンゾジアゼピン(PBD)ダイマー、V-ATPaseインヒビター、アポトーシス促進剤、Bcl2インヒビター、MCL1インヒビター、HSP90インヒビター、IAPインヒビター、mTorインヒビター、微小管安定剤、微小管脱安定剤、アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン、RNAポリメラーゼインヒビター、ドラスタチン、メイタンシノイド、MetAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRM1の核外輸送のインヒビター、DPPIVインヒビター、プロテアソームインヒビター、ミトコンドリアにおけるホスホリル転移反応のインヒビター、タンパク質合成インヒビター、キナーゼインヒビター、CDK2インヒビター、CDK9インヒビター、キネシンインヒビター、HDACインヒビター、DNA損傷剤、DNAアルキル化剤、DNAインターカレーター、DNA副溝結合剤およびDHFRインヒビター、から選択される、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体である。
【0034】
具体的な好ましい態様において、薬物は、チューブリンインヒビターモノメチルアウリスタチンE(MMAE)である。
リンカーは、好ましくは、血流中で安定であり(抗体の循環時間の増大に適合するように)、および薬物の迅速な放出を可能にするために標的部位で不安定になるように設計される。好適なリンカーを設計するときに考慮されるパラメーターは、典型的には、リンカーの切断可能性、および、連結の位置および機構(すなわち共役化学)を包含する。現存のリンカーは、伝統的に、切断可能なまたは切断不能なリンカーとして分類される。
【0035】
切断可能なリンカーは、EGFR Fcab-抗原複合体が標的細胞内へと内在化した際の環境の変化を活用し、リンカーの切断および標的細胞内への薬物の放出を結果としてもたらす。本明細書に提供されるEGFR Fcab-薬物抱合体とともに使用することが企図される例示的な切断可能なリンカーは、ヒドラゾン、ジスルフィドおよびペプチドリンカーを包含する。薬物を放出するために特有の細胞内条件に頼る切断可能なリンカーとは対照的に、チオエーテルリンカーなどの切断不能なリンカーは、もっぱらEGFR Fcab-抗原内在化に続くタンパク分解性の分解のプロセス、およびリソソームの経路におけるプロセシングにもっぱら依存する。抗体-薬物設計のためのリンカーは、当該技術分野において周知であり、および、すなわちPetersおよびBrown, Biosci. Rep. 2015年8月; 35(4): e00225によって、総括されている。1またはいくつかの薬物を、適正な治療的有効性を達成するために、各EGFR Fcabへ連結することができる。
【0036】
ADCを調製するための手段および方法は、当該技術分野において説明されており、および、すなわちPetersおよびBrownによって、総括されている(上記参照)。伝統的に、薬物は、それによってネイティブなアミノ酸の反応性の部分がリンカー分子の特定の部分と相互作用しおよび結合させられる従来の技法を使用して、抗体へ化学的に抱合される。反応基の例は、リシン残基のイプシロン-アミノ末端、および部分還元型のシステイン残基中に存在するチオール側鎖を包含する。従来の抱合の技法の代替手段は、(i)部位特異的突然変異誘発を使用して、抗体に沿った特定の制御された部位に導入される新規の不対システイン残基、(ii)プラスミドを介して抗体中へと組み込まれることができるグルタミン「タグ」配列を認識し、グルタミン側鎖へアミンを含有する薬物を付加する、微生物トランスグルタミナーゼ、または(iii)転写中に抗体中へと導入されるセレノシステインまたはアセチルフェニルアラニンなどの非天然アミノ酸であって好適な細胞毒素(実例として求核性のセレノシステインの場合には正に帯電した薬物分子)との抱合のために利用可能であるもの、を介しての抱合を包含する。
【0037】
薬物部分Dは、リンカーLを通じてEGFR Fcabへ連結されることができる。Lは、共有結合を通じて薬物部分を抗体へ連結することを可能とするあらゆる化学的部分である。架橋試薬は、薬物部分とFcabとを連結させることでEGFR Fcab-薬物抱合体を形成するために使用することができる二官能性のまたは多官能性の試薬である。EGFR Fcab-薬物抱合体は、薬物部分とEGFR Fcabとの両方へ結合することを可能とする反応性官能基を有する架橋試薬を使用して調製することができる。例えば、システイン、チオールまたはアミン、例としてN末端、またはEGFR Fcabのリシンなどのアミノ酸側鎖は、架橋試薬の官能基を結合を形成することができる。
【0038】
一態様において、Lは、切断可能なリンカーである。別の態様において、Lは、切断不能なリンカーである。いくつかの態様において、Lは、酸に不安定なリンカー、光に不安定なリンカー、ペプチダーゼ切断可能なリンカー、エステラーゼ切断可能なリンカー、ジスルフィド結合切断可能なリンカー、親水性リンカー、プロチャージリンカー、またはジカルボン酸をベースとしたリンカーである。
【0039】
薬物部分例えばメイタンシノイドと抗体との間に切断不能なリンカーを形成する好適な架橋試薬は、当該技術分野において周知であり、および、硫黄原子を含む切断不能なリンカー(SMCCなど)または硫黄原子なしのそれらのものを形成することができる。薬物部分例えばメイタンシノイドとEGFR Fcabとの間に切断不能なリンカーを形成する好ましい架橋試薬は、マレイミドまたはハロアセチルをベースとした部分を含む。本発明に従うと、かかる切断不能なリンカーは、マレイミドまたはハロアセチルをベースとした部分に由来すると言われる。
【0040】
マレイミドをベースとした部分を含む架橋試薬は、これらに限定されないが、N-スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシラート(SMCC)、スルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシラート(スルホ-SMCC)、SMCCの「長鎖」類似体(LC-SMCC)であるN-スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロアート)、K-マレイミドウンデカノン酸N-スクシンイミジルエステル(KMUA)、γ-マレイミド酪酸N-スクシンイミジルエステル(GMBS)、e-マレイミドカプロン酸N-スクシンイミジルエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-O-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMSA)、スクシンイミジル-6-(B-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノアート(SMPH)、N-スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)-ブチラート(SMPB)、N-(-p-マレイミドフェニル)-イソシアナート(PMIP)およびMAL-PEG-NHSなどのポリエチレングリコールスペーサーを含有するマレイミドをベースとした架橋試薬、を包含する。これらの架橋試薬は、マレイミドをベースとした部分に由来する切断不能なリンカーを形成する。
【0041】
よって、本発明の好ましい態様は、リンカーが、本明細書に記載のリンカーから選択される、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体である。
本発明の別の好ましい態様は、リンカーが、酸に不安定なリンカー、光に不安定なリンカー、ペプチダーゼ切断可能なリンカー、エステラーゼ切断可能なリンカー、ジスルフィド結合切断可能なリンカー、親水性リンカー、プロチャージリンカーおよびジカルボン酸をベースとしたリンカーからなる群から選択される、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体である。
本発明のさらに好ましい態様は、リンカーが、ジスルフィド結合切断可能なリンカーである、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体である。
【0042】
本明細書に記載の態様の各々は、それと組み合わせられる態様と矛盾しない本明細書に記載のいずれの他の態様とも、組み合わせることができる。さらにまた、所与の文脈において不適合でなければ、化合物がイオン化(例としてプロトン化または脱プロトン化)することが可能なものとして規定されていればどこでも、該化合物の定義はそのあらゆる薬学的に許容し得る塩を包含する。従って、句「またはその薬学的に許容し得る塩」は、本明細書に記載のすべての化合物の記載に黙示されている。下に記載のとおりの側面の範囲内の態様は、同じかまたは異なる側面の範囲内の矛盾しないいずれの他の態様とも組み合わせることができる。実例として、本発明の処置方法のいずれかの態様は、本発明の組み合わせ製品または本発明の医薬組成物のいずれの態様とも組み合わせることができ、逆の場合も同じである。同じく、本発明の処置方法のために与えられたいずれかの詳細または特徴は、矛盾するものでなければ、本発明の組み合わせ製品および本発明の医薬組成物のそれらにも当てはまり、逆の場合も同じである。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、他の抗体フラグメントをベースとした薬物抱合体(VHH
11,12、scFv
8,9、Fab
6,7)および従来のIgGをベースとしたADC
4に対する、Fcab-薬物抱合体の利点の概念的な表現を示す。
【
図2】
図2は、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体のグラフィカルな要約を示す。
【0044】
【
図3A-3B】
図3は、Fcab構造およびpHAb色素標識化を示す。(A)C
H3ドメインのC末端での改変された抗原結合部位を伴うホモ二量体Fcabの略図。 (B)選択されるEGFR結合性Fcabにおいて改変されたC
H3 AB、CDおよびEFループを描くヒトIgG1-Fcモノマー。明確さのため、グリコシル化は図示しない。(PDB ID 5JII)。
【
図4】
図4は、MDA-MB-468細胞へのC-IgG-pHAbの蓄積率(100%)に対して相対的なFcab-、huFc-、C-Fab-およびC-IgG-pHAb色素抱合体の細胞内蓄積を示す。細胞内蓄積率を、100nMでの0~26hインキュベーションから導出し、および、各構築物の細胞数および個々のpHAb色素蛍光に対して正規化させた。相対的なEGFR発現プロファイル(MDA-MB-468>A431>MCF-7)は、棒グラフの下に表示されている。エラーバーは、トリプリケートの標準偏差を示す。
【0045】
【
図5A】
図5は、Fcab-薬物抱合体を示す。 (A)C
H3領域内に位置するEGFR 結合部位ならびに抱合部位Q295、Q311およびQ438(EU付番)を示すヒトFc部分(PDB ID 5VGP)の代表的な図。
【
図6】
図6は、抱合部位特定を示す。消化されたFcab-1-MMAEのLC-MSクロマトグラムは、Fcab-1製剤においては検出されなかった抱合されたペプチド(e~i、k~m)を示す。抱合されたペプチドは、疎水性のMMAEに起因してより長い保持時間で溶離した。マッチした抱合されていないペプチドのペア(a~d)は、より少ない保持時間で溶離し、および、ピークは消失したか(a、b)、または、Fcab-1-MMAE製剤においてFcab-1と比較して低減された強度を示した(c)。
【0046】
【
図7】
図7は、細胞増殖アッセイを示す。 (A)EGFR陽性(MDA-MB-468、A431)およびEGFR陰性細胞(MCF-7)についての細胞生存率。細胞をMMAE抱合体および遊離MMAEの段階希釈液とともに4日間インキュベートしてから、細胞生存率を分析した。エラーバーは、トリプリケートの標準偏差(SD)を表す。 (B)MMAE抱合体および遊離MMAEの阻害活性。IC
50値は、3の独立した実験の平均(IC
50±SD)として与えられている。
【0047】
【
図8A】
図8は、発現したFcabのプロテインA精製プロセスを示す。 (A)プロテインAカラム(50mM 酢酸(HOAc)、pH3.2)からの溶離後のFcab-2タンパク質ピーク、およびこれに続くバッファー替えステップ後の第2のタンパク質ピークを示す、例示的なAEKTA Xpress(HiTrap(商標) MabSelect SuRe(商標) 5mLおよびHiPrep(商標) 26/10脱塩カラム) クロマトグラム。
【
図8B】(B) 還元されたExpi293F上清、プロテインAフロースルー、および精製されたFcabのSDS-PAGE分析。4-12% ビス-トリスゲル(Invitrogen(商標))、MES SDSランニングバッファー(1x)、200Vにて40min、InstantBlue(商標)(クマシーをベースとした)で2hの間染色されている、マーカー: Precision Plus Protein(商標)未着色スタンダード(BioRad)。
【
図8C】(C)Expi-293F発現培養物体積あたりの精製されたFcabおよびhuFc陰性対照の収量。
【0048】
【
図9A1】
図9は、LC-MS分析がFcabおよびhuFc対照の同一性を確認することを示す。 (A)FcabのデコンボリューションされたMSスペクトル。
【
図9A2】
図9は、LC-MS分析がFcabおよびhuFc対照の同一性を確認することを示す。 (A)FcabのデコンボリューションされたMSスペクトル。
【
図9A3】
図9は、LC-MS分析がFcabおよびhuFc対照の同一性を確認することを示す。 (A)FcabのデコンボリューションされたMSスペクトル。
【
図9B】(B)計算質量と実測質量との間の質量変動は、グリコシル化パターンおよび標準測定偏差の主要因になる。最も強烈なグリコシル化パターン(G1F)のみをリストしている。
【0049】
【
図10】FcabおよびhuFc対照分子の熱安定性。熱アンフォールディング曲線の一次導関数(A)ならびにアンフォールディング遷移中間点(T
m)(B)が示される。熱アンフォールディングを決定するために、FcabおよびhuFc(PBS pH6.8)をナノDSFグレードの標準キャピラリー内へとロードし、これを次いでPrometheus NT.PLEXナノDSF(NanoTemper Technologies)機器内へと移した。試料を、350および330nmでの蛍光を同時に記録しながら、1℃/minの勾配で20℃~95℃の直線的な温度上昇に供した。アンフォールディング遷移中間点(T
m)を、蛍光比率350nm/330nmの一次導関数から決定した。すべての試料は、デュプリケートで測定した。n.d.-検出されていない
【0050】
【
図11A】
図11は、EGFR陽性(MDA MB 468およびA431)およびEGFR陰性(MCF 7)細胞に対するFcabおよび対照分子の細胞結合分析を示す。FcabおよびC-IgGは、EGFRを発現する細胞を選択的に結合し、一方でhuFcおよび二次検出抗体は何らの結合も示さない。細胞を、100nMのFcab/C IgGとともに4℃にて60minの間インキュベートし、PBS-1% BSAで2回洗浄し、500nMのAF488標識付き検出抗体(109-546-008、Jackson ImmunoResearch)とともに暗所で4℃にて30minの間インキュベートし、PBS-1% BSAで2回洗浄し、および最終的に蛍光強度を、Attune NxTフローサイトメーター(Invitrogen(商標))を適用して測定した。
【
図11B】
図11は、EGFR陽性(MDA MB 468およびA431)およびEGFR陰性(MCF 7)細胞に対するFcabおよび対照分子の細胞結合分析を示す。FcabおよびC-IgGは、EGFRを発現する細胞を選択的に結合し、一方でhuFcおよび二次検出抗体何らの結合も示さない。細胞を、100nMのFcab/C IgGとともに4℃にて60minの間インキュベートし、PBS-1% BSAで2回洗浄し、500nMのAF488標識付き検出抗体(109-546-008、Jackson ImmunoResearch)とともに暗所で4℃にて30minの間インキュベートし、PBS-1% BSAで2回洗浄し、および最終的に蛍光強度を、Attune NxTフローサイトメーター(Invitrogen(商標))を適用して測定した。
【
図11C】
図11は、EGFR陽性(MDA MB 468およびA431)およびEGFR陰性(MCF 7)細胞に対するFcabおよび対照分子の細胞結合分析を示す。FcabおよびC-IgGは、EGFRを発現する細胞を選択的に結合し、一方でhuFcおよび二次検出抗体何らの結合も示さない。細胞を、100nMのFcab/C IgGとともに4℃にて60minの間インキュベートし、PBS-1% BSAで2回洗浄し、500nMのAF488標識付き検出抗体(109-546-008、Jackson ImmunoResearch)とともに暗所で4℃にて30minの間インキュベートし、PBS-1% BSAで2回洗浄し、および最終的に蛍光強度を、Attune NxTフローサイトメーター(Invitrogen(商標))を適用して測定した。
【0051】
【
図12】
図12は、細胞解離定数(KD)の決定を示す。 (A)EGFR陽性(MDA MB 468およびA431)およびEGFR陰性(MCF 7)細胞を、種々異なる濃度でのFcabとともにインキュベートし、AF488標識付き検出抗体での染色、洗浄、および
図S4において記載されているとおりのサイトメーター分析がこれに続いた。MDA MB 468およびA431細胞の間の、変化している結合飽和レベルは、区別のつく細胞特異的なEGFR発現密度を反映する。KDを得るために、用量応答曲線を、GraphPad Prism(GraphPad Software, Inc.)の非対称(5パラメーター)フィッティング機能を使用してフィットさせた。 (B)Fcabの細胞解離定数は、BLIを介した組換えEGFRへの結合から導出されたKD値(表2)および文献データ
[1]と良好に合致している。
【0052】
【
図13A-13B】
図13は、pHAb色素標識化および標識化の程度(DOLF、DOLA)の決定を示す。 (A)リシンのε-アミノ基と反応することができるNHSエステル基を抱えたpHAbアミン反応性色素2の構造。 (B)SE-HPLCバッファー(pH6.3)中におけるpHAb色素の吸収および蛍光スペクトル。
【
図13C】(C)タンパク質が、ランダムなリシンカップリングを介してpHAb色素で標識化されている。複数の因子がフルオロフォア量子収率に影響を及ぼし得る。
[4]
【
図13D】(D)DOLFおよびDOLA値を決定するための確立されたSE-HPLC法の概観。抱合されていないタンパク質、遊離pHAb色素およびpHAb色素抱合体を、ダイオードアレイ(DAD)および蛍光(FLD)検出器を備えたSE-HPLCデバイスによって分析した。抱合されていないタンパク質および遊離pHAb色素のモル吸光係数(MEC)ならびに遊離pHAb色素のモル蛍光係数(MFC)を、ピーク面積および物質の注入された量から算出した。MECおよびMFCを、次いで、pHAb色素抱合体ピーク面積から抱合された蛍光pHAb色素の量およびタンパク質の量を算出するために使用した。最終的に、DOLFおよびDOLAをこれらのデータから導出することができる。
【0053】
【
図14A-14C】
図14は、pHAb色素に抱合されたFcabについて例示的に示された、DOLFおよびDOLAの決定のためのSE-HPLC分析を示す。 (A)抱合されていないFcabは、535nmで光を吸収しない。 (B)ゆえに、Fcabは、535nm(pHAb色素吸収極大)で励起されたときに566nmで蛍光を示さない。 (C)280nm(芳香族アミノ酸)でのFcabの吸収。Fcab(54kDa)は、9.3minで溶離する。
【
図14D-14F】(D)535nmでの吸収極大における遊離pHAb色素の吸収。そのより小さなサイズに従うと、遊離pHAb色素(786g/mol、カルボン酸形態)は、11.2minで後に溶離する。 (E)535nmで励起されたときの遊離pHAb色素の566nm(pHAb色素蛍光極大)での蛍光。 (F)遊離pHAb色素は280nmでもまた吸収する。11.8minでのより小さなピークは、バッファー構成要素が原因で引き起こされ、および、ピーク積分にはこれを無視した。
【
図14G-14I】(G)Fcab pHAb抱合体の535nmでの吸収。赤色でマークされた第1のピークは、抱合されたpHAb色素分子の吸収を表し、一方で、青色でマークされた第2のピークは、Zeba(商標) spin脱塩カラム精製によっては全面的に除去することができなかった遊離pHAb色素を示す。 (H)Fcab pHAb抱合体の566nmでの蛍光。赤色で描かれたピークは、抱合されたpHAb色素の蛍光を示し、一方で青色のピークは、遊離pHAb色素の蛍光を示す。蛍光および吸収ピーク(535nm)のピーク面積を比較したとき、抱合されたpHAb色素の蛍光は、遊離pHAb色素に対してはるかにより低かった。これは、フルオロフォア量子収率に対する局所的な分子環境の影響を確認する。 (I)Fcab pHAbの280nmでの吸収は、そのタンパク質およびpHAb色素の構成要素の吸収から構成される。
【0054】
【
図15A1】
図15は、この研究において使用したpHAb色素抱合体の特徴付けを示す。 (A)280nm(タンパク質およびpHAb色素)および535nm(pHAb色素)での吸収ならびにpHAb色素蛍光(Exc. 535nm、Em. 566nm)を示す、精製されたpHAb色素抱合体の分析的なサイズ排除SE-HPLC。tR 11~12minで、抱合されていないpHAb色素が溶離し得る。
【
図15A2】
図15は、この研究において使用したpHAb色素抱合体の特徴付けを示す。 (A)280nm(タンパク質およびpHAb色素)および535nm(pHAb色素)での吸収ならびにpHAb色素蛍光(Exc. 535nm、Em. 566nm)を示す、精製されたpHAb色素抱合体の分析的なサイズ排除SE-HPLC。tR 11~12minで、抱合されていないpHAb色素が溶離し得る。
【
図15A3】
図15は、この研究において使用したpHAb色素抱合体の特徴付けを示す。 (A)280nm(タンパク質およびpHAb色素)および535nm(pHAb色素)での吸収ならびにpHAb色素蛍光(Exc. 535nm、Em. 566nm)を示す、精製されたpHAb色素抱合体の分析的なサイズ排除SE-HPLC。tR 11~12minで、抱合されていないpHAb色素が溶離し得る。
【
図15B】(B) (A)に示されているSE-HPLCデータから導出された吸収および蛍光ベースのpHAb色素標識化の程度(DOLF、DOLA)。
【0055】
【
図16A】
図16は、pHAb色素標識付き構築物の細胞取り込み動態を示す。(A)MDA MB 468細胞に対するFcab 1 pHAbについて例示的に示した細胞内蓄積の時系列。細胞を、37℃、湿度80%および5% CO
2にて100nM Fcab 1 pHAbとともにインキュベートし、およびRFPチャネル画像(ex.: 531nm、em.: 593nm)を、DAPIおよびRFPフィルターキューブおよびBioSpa 8自動化インキュベーター(BioTek)を備えたCytation 5細胞イメージングリーダー(BioTek)を使用して26hの間2h毎に記録した。
【
図16B】(B)画像の合計蛍光強度を、細胞数、およびpHAb色素標識付き構築物のDOLF値に対して正規化し、および、線形回帰の勾配から正規化された細胞内蓄積率を導出するために経時的にプロットした(GraphPad Software, Inc.)。続いて、相対的細胞内蓄積を、これらの率から算出することができる。
【
図16C-16D】(C)記載されているイメージャーベースのアッセイから導出した正規化された細胞取り込み率は、同じ pHAb色素標識付き構築物を採用した第2のFACSベースの細胞取り込みアッセイにおいて検証することができた。 (D)FACSベースのアッセイから導出されたMDA MB 468における相対的な細胞内蓄積は、イメージャーベースの細胞取り込みデータと良く合致している(
図3)。
【0056】
【
図17A】
図17は、Fcab-MMAE抱合体について例示的に示される抱合および精製ストラテジーを示す。 (A)酵素的なトランスグルタミナーゼ抱合によって、MMAE抱合体を生成した。抱合の後、過剰の微生物トランスグルタミナーゼ(mTG)およびGly
3-Val-Cit-MMAE(1)を、分取SECによって除去した。
【
図17B】(B) Fcab-2-MMAEおよびhuFc-MMAEについて例示的に示される、分取SECによるトランスグルタミナーゼ抱合されたMMAE構築物の精製。抱合されたタンパク質(および非抱合の種)を含有する画分をプールし、濃縮し、滅菌濾過し、および分析に供した。
【0057】
【
図18A】
図18は、Fcab-1 MMAE、Fcab-2 MMAE Fcab-3 MMAEおよびhuFc MMAEについて例示的に示される、生成されたMMAE抱合体のクロマトグラフの特徴付けを示す。 (A)分析的サイズ排除SE-HPLCは、凝集のないモノマー薬物抱合体の形成を実証する区別のつく単一ピークを示す。シグナル強度は、214nmでの吸収を表す。
【
図18B】(B)逆相RP-HPLCは、Gly3-Val-Cit-MMAE 1の抱合を明らかにする。RP-DARは、個々のDAR種のピーク面積から算出される(Fcab 1 MMAE RP DAR 2.6;Fcab 2 MMAE RP DAR 2.5;Fcab 3 MMAE RP DAR 2.5;huFc MMAE RP DAR 2.0)。例えば、DAR 1種の25%の相対的なピーク面積およびDAR 2種の75%の相対的なピーク面積は、1.75の最終的なRP-DARを明らかにする。シグナル強度は、214nmでの吸収を表す。
【0058】
【
図19-1】
図19は、質量分析によるFcab-MMAE抱合体のDAR決定を示す。異なるようにグリコシル化された、0~3のGly3-Val-Cit-MMAE(1)を抱えている重鎖(HC)のグループを示すデコンボリューションされたMSスペクトル。0~3のリンカーペイロードを抱えているHC種のTIC面積を、MS-DARを算出するために使用した。
【
図19-2】
図19は、質量分析によるFcab-MMAE抱合体のDAR決定を示す。異なるようにグリコシル化された、0~3のGly3-Val-Cit-MMAE(1)を抱えている重鎖(HC)のグループを示すデコンボリューションされたMSスペクトル。0~3のリンカーペイロードを抱えているHC種のTIC面積を、MS-DARを算出するために使用した。
【
図19-3】
図19は、質量分析によるFcab-MMAE抱合体のDAR決定を示す。異なるようにグリコシル化された、0~3のGly3-Val-Cit-MMAE(1)を抱えている重鎖(HC)のグループを示すデコンボリューションされたMSスペクトル。0~3のリンカーペイロードを抱えているHC種のTIC面積を、MS-DARを算出するために使用した。
【0059】
【
図20】
図20は、速度論的なEGFR結合パラメーターを示す。解離定数(KD)、オン速度(kon)およびオフ速度(koff)を、組換え生産されたEGFRを使用したBLIによってpH7.4で測定した。誤差は、Forte´Bioデータ分析ソフトウェア9.1を使用したフィッティングからの標準誤差である。フィッティングの質は、R2によって特徴付けられる。
【
図21】
図21は、速度論的なFcRn結合パラメーターを示す。解離定数(KD)、オン速度(kon)およびオフ速度(koff)を、組換え生産されたFcRnを使用したBLIによって測定した。FcRnへの結合親和性は、pH6.0で決定した。誤差は、Forte´Bio データ分析ソフトウェア9.1を使用したフィッティングからの標準誤差である。フィッティングの質は、R2によって特徴付けられる。
【0060】
【
図22A】
図22は、抱合されていないFcab、セツキシマブバリアントおよび夫々のMMAE抱合体の、受容体結合BLIセンサーグラムを示す。 (A)EGFR結合分析。会合および解離を、pH7.4で記録しおよび1:1包括的フルフィット結合モデルによってフィットさせた。
【
図22B】(B)FcRn結合分析。分析物の会合および解離を、pH6.0で記録しおよび1:1包括的部分解離モデルによってフィットさせた。フィッティングは、赤色で示されている。各センサーグラムに対して、結合の間の分析物の最も高い濃度およびその希釈倍率が与えられている。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、本発明の具体的なかつ好ましい態様の上記および下記の詳細な記載ならびに本明細書に包含される例を参照することによって、より容易に理解され得る。本明細書に使用される専門用語は、特定の態様を記載する目的のためのものにすぎず、限定を意図しないということを理解されたい。本明細書に具体的に定義されない限り、本明細書に使用される専門用語は、関係のある技術において知られているとおりのその既存の意味を与えられるものであるということを、さらに理解されたい。本発明がより容易に理解され得るように、ある技術用語および科学用語は、具体的に下記に定義されている。この文書中の別の場所に具体的に定義されない限り、本明細書に使用される他のすべての技術および科学用語は、本発明の属する技術における当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0062】
「A」、「an」、および「the」は、文脈が明確に別様に指示しない限り、複数形の指示対象も包含する。よって、例えば、抗体と言うときは、1以上の抗体または少なくとも1の抗体を指す。そのため、用語「a」(または「an」)、「1以上の」、および「少なくとも1の」は、本明細書中で互換的に使用される。
【0063】
用語「約」は、数字で表して定義されたパラメーターを修飾するように使用されるとき、全体としての効果、例として、疾患または障害の処置における薬剤の有効性を、変化させないような、かかるパラメーターにおける最小限の変更を指す。いくつかの態様において、用語「約」は、パラメーターが、そのパラメーターについて規定された数値よりも最大10%上下に変動してもよいことを意味する。
【0064】
患者へ薬物「を投与すること」または「の投与」(およびこの句の文法的に等価なもの)は、患者への医療従事者による投与であってもよくまたは自己投与であってもよい直接投与、および/または、薬物を処方するという行為、例として、患者へ薬物を自己投与するように指示するかまたは患者に薬物の処方箋を提供する医師が、患者へ薬物を投与することであってもよい、間接投与を指す。
「アミノ酸の違い」は、アミノ酸の置換、欠失または挿入を指す。
【0065】
「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内に位置する少なくとも1の抗原認識部位を通じて炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチド等々、などの標的への特異的な結合を可能とする免疫グロブリン(Ig)分子である。本明細書に使用されるとき、用語「抗体」は、無傷のポリクローナルまたはモノクローナル抗体のみならず、別様に特定されない限り、特異的結合について無傷の抗体と競合するそれらのあらゆる抗原結合性フラグメントまたは抗体フラグメント、ならびにかかるそれらの抗原結合性フラグメントまたは抗体フラグメントを含むあらゆるタンパク質をも網羅し、これは融合タンパク質(例として、抗体-薬物抱合体、サイトカインへ融合された抗体またはサイトカイン受容体へ融合された抗体)、ポリエピトープ特異性を持つ抗体組成物、および多重特異性抗体(例として、二重特異性抗体)を包含する。
【0066】
基本4鎖抗体単位は、2の同一の軽(L)鎖および2の同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。IgM抗体は、J鎖と呼ばれる追加のポリペプチドと共に5の基本ヘテロ四量体単位からなり、かつ、10の抗原結合部位を含有し、一方で、IgA抗体は、J鎖と組み合わせられて多価集合体を形成するように重合化することができる2~5の基本4鎖単位を含む。IgGのケースでは、4鎖単位は、一般に約150,000ダルトンである。各L鎖は、1の共有ジスルフィド結合によってH鎖へ連結されており、一方で2のH鎖は、H鎖アイソタイプに依存して1以上のジスルフィド結合によって互いに連結されている。
【0067】
各HおよびL鎖はまた、規則的に間隔をあけた鎖内ジスルフィド架橋も有する。各H鎖は、N末端に、可変ドメイン(VH)を、これに続きαおよびγ鎖の各々については3の定常領域(CH)を、およびμおよびεアイソタイプについては4のCHドメインを有する。各L鎖は、N末端に、可変ドメイン(VL)を、これに続き他方の端には定常領域を有する。VLは、VHとアラインされており、および、CLは、重鎖の第1の定常領域(CH1)とアラインされている。特定のアミノ酸残基は、軽鎖と重鎖可変ドメインの間に界面を形成すると考えられている。VHおよびVLの対形成は、一緒になって単一の抗原結合部位を形成する。
【0068】
抗体の種々異なるクラスの構造および特性については、例として、Basic and Clinical Immunology, 8th Edition, Sties et al.(編), Appleton & Lange, Norwalk, CT, 1994, 頁71およびChapter 6を参照されたい。あらゆる脊椎動物種からのL鎖は、それらの定常領域のアミノ酸配列に基づき、カッパおよびラムダと呼ばれる2のはっきり区別されるタイプのうちの一方へ割り当てられることができる。それらの重鎖(CH)の定常領域のアミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプへ割り当てられることができる。免疫グロブリンには5のクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM、があり、夫々α、δ、ε、γおよびμと名付けられた重鎖を有する。γおよびαクラスは、CH配列および機能の比較的少ない違いに基づいてさらにサブクラスへと分割され、例として、ヒトは以下のサブクラス:IgG1、IgG2A、IgG2B、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgK1を発現する。
【0069】
抗体または「抗体フラグメント」の「抗原結合性フラグメント」は、無傷の抗体の一部分であって、依然として抗原結合を可能とするものを含む。抗原結合性フラグメントは、例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fd、FcabおよびFvフラグメント、ドメイン抗体(dAb、例として、サメおよびラクダ科動物の抗体)、CDRを包含するフラグメント、単鎖可変フラグメント抗体(scFv)、単鎖抗体分子、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、マキシボディー、ナノボディー、ミニボディー、イントラボディー、二重特異性抗体、三重特異性抗体、四重特異性抗体、v-NARおよびビス-scFv、直鎖状抗体(例として、米国特許第5,641,870号、例2;Zapata et al. (1995) Protein Eng. 8HO: 1057を参照されたい)、および、ポリペプチドへ特異的な抗原結合を付与するのに充分である免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチド、を包含する。
【0070】
抗体のパパイン消化は、「Fab」と呼ばれる2の同一の抗原結合性フラグメント、および、その残りの、容易に結晶化する能力を反映した呼び名の「Fc」フラグメントを生じる。Fabフラグメントは、H鎖(VH)の可変領域ドメインと共に全L鎖および1のの第1の定常領域(CH1)、からなる。各 Fab フラグメントは、抗原結合に関しては一価である、すなわち、それは単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大きなF(ab')2フラグメントを産出し、これは大まかには、異なる抗原結合活性を有する2のジスルフィド連結されたFabフラグメントに対応し、および依然として架橋抗原を架橋することを可能とする。Fab'フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1以上のシステインを包含するCH1ドメインのカルボキシ末端に数個の追加の残基を有することでFabフラグメントとは異なる。Fab'-SHは、定常領域のシステイン残基(単数または複数)がフリーのチオール基を有するFab'の本明細書における呼び名である。F(ab')2抗体フラグメントは、元々、ヒンジシステインをそれらの間に有するFab'フラグメントの対として作られたものである。抗体フラグメントのその他の化学的カップリングもまた知られている。
【0071】
「バイオマーカー」は、一般には、疾患状態を示す生体分子ならびにその定量的および定性的な測定を指す。「予後バイオマーカー」は、治療とは無関係に、疾患の転帰と相関する。例えば、腫瘍低酸素症は、陰性の予後マーカーである - 腫瘍低酸素症が高いほど、疾患の転帰がマイナスになる可能性が高くなる。「予測バイオマーカー」は、患者が特定の治療に対してプラスに応答しそうであるかどうかを示し、例として、EGFRプロファイリングは、乳がん患者においてそれらの患者がハーセプチン(トラスツズマブ、Genentech)に対して応答しそうであるかどうかを決定するために一般的に使用される。「応答バイオマーカー」は、治療への応答の尺度を提供し、そのため治療がうまくいっているかどうかの指標を提供する。例えば、前立腺に特異的な抗原のレベルの減少は、一般に、前立腺がん患者のための抗がん治療がうまくいっているということを示す。
【0072】
本明細書に記載の処置のための患者を同定することまたは選択することの根拠としてマーカーが使用されるとき、マーカーは、処置前および/または処置中に測定されることができ、および、得られた値は、臨床医によって以下のいずれかのものを査定することにおいて使用される:(a)個人が最初に処置(単数または複数)を受けるのに適している可能性が高いかまたはおそらくその可能性があること;(b)個人が最初に処置(単数または複数)を受けるのに適していない可能性が高いかまたはおそらくその可能性があること;(c)処置への応答性;(d)個人が継続して処置(単数または複数)を受けるのに適している可能性が高いかまたはおそらくその可能性があること;(e)個人が継続して処置(単数または複数)を受けるのに適していない可能性が高いかまたはおそらくその可能性があること;(f)投薬量を調整すること;(g)臨床上の利益になる可能性を予測すること;または(h)毒性。当業者には十分に理解されるであろうとおり、臨床の場におけるバイオマーカーの測定は、このパラメーターが本明細書に記載の処置の投与を開始すること、続けること、調整することおよび/または止めることの根拠として使用されたことの明確な指標である。
【0073】
「がん」では、異常な様式で増殖していく一群の細胞を意味する。本明細書に使用されるとき、用語「がん」は、白血病、癌、および肉腫を包含する、哺乳動物において見出されるすべてのタイプのがん、新生物、悪性または良性の腫瘍を指す。例示的ながんは、急性および慢性のリンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、子宮頸部過形成、絨毛膜がん、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ性白血病、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、胆道がん、肝細胞癌、肝臓がん、食道がん、本態性血小板増加症、泌尿生殖器癌、神経膠腫、膠芽腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵臓インスリノーマ、甲状腺髄様癌、黒色腫、軟骨肉腫、多発性骨髄腫、菌状息肉種、骨髄性およびリンパ性白血病、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、原発性マクログロブリン血症、前立腺がん、腎細胞がん、横紋筋肉腫、皮膚がん、小細胞肺がん、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がんおよびウィルムス腫瘍を包含する。
【0074】
「CDR」は、抗体、抗体フラグメントまたは抗原結合性フラグメントの相補性決定領域アミノ酸配列である。これらは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には3の重鎖および3の軽鎖のCDR(またはCDR領域)がある。
【0075】
「臨床転帰」、「臨床パラメーター」、「臨床応答」、または「臨床エンドポイント」は、治療への患者の反応に関連するあらゆる臨床の所見または測定を指す。臨床転帰の非限定例は、腫瘍応答(TR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間、腫瘍再発までの時間(TTR)、腫瘍進行までの時間(TTP)、相対的なリスク(RR)、毒性、または副作用を包含する。
【0076】
「組み合わせ」は、本明細書に使用されるときは、1以上のさらなる活性なモダリティ(ここで1以上の活性なモダリティは融合されていてもよい)に加えての第1の活性なモダリティの提供を指す。本明細書に記載の組み合わせの範囲内には、単一のまたは複数の化合物および組成物に網羅される組み合わせモダリティまたはパートナー(すなわち、活性化合物、構成要素または薬剤)のあらゆるレジメンが企図される。単一の組成物、処方物または単位剤形(すなわち、固定用量の組み合わせ)内でのあらゆるモダリティは、同一の用法および送達のルートを有していなければならないということが理解される。モダリティが一緒に送達されるために(例として、同じ組成物、処方物または単位剤形中で)製剤化されなければならないことを暗示することを意図するものではない。組み合わせられるモダリティは、同じまたは異なる製造業者によって製造および/または製剤化されることができる。組み合わせパートナーは、例として、全面的に別々の医薬の剤形または医薬組成物であり、互いに独立して販売もされるものであってもよい。
【0077】
「併用療法」、「との組み合わせで」または「と併せて」は、本明細書に使用されるときは、区別のつく少なくとも2の処置モダリティ(すなわち、化合物、構成要素、標的にされた薬剤または治療剤)でのあらゆる形態の併用の、並行の、同時の、逐次的なまたは断続的な処置を示す。そのため、用語は、対象への他の処置モダリティの投与前、投与中または投与後の1の処置モダリティの投与を指す。組み合わせでのモダリティは、いずれの順番で投与されることもできる。
【0078】
治療的に活性なモダリティは、医療管理者によって処方されたまたは規制当局に従った様式および投薬レジメンで、一緒に(例として、同じかまたは別々の組成物、処方物または単位剤形で同時に)または個別に(例として、同じ日にまたは異なる日におよび別々の組成物、処方物または単位剤形についての適切な投薬プロトコルに従うとおりのあらゆる順番で)投与される。一般に、各処置モダリティは、その処置モダリティのために決定された用量および/または時間スケジュールで投与されることになる。任意に、4以上のモダリティが併用療法において使用されてもよい。加えて、本明細書に提供される併用療法は、他のタイプの処置と併せて使用されてもよい。例えば、他の抗がん処置は、対象のための現在の標準治療に関連する他の処置の中でも、化学療法、外科手術、放射線治療(放射線)および/またはホルモン療法からなる群から選択されてもよい。
【0079】
「完全奏功」または「完全寛解」は、処置に応答してがんのすべての兆候が消失することを指す。これは、常にがんが治ったことを意味するわけではない。
「含む」は、本明細書に使用されるとき、組成物および方法が、述べられている要素を包含するが、しかし他を排除するものでもないという意味であることを意図する。「から本質的になる」は、組成物および方法を定義することに使用されるとき、組成物または方法にとって何らかの本質的な重要性がある他の要素を排除することを意味するものとする。
【0080】
「からなる」は、クレームされている組成物および実質的な方法ステップに対する他の成分の微量以上の要素を排除することを意味するものとする。これらの移行用語の各々によって定義された態様は、本発明の範囲内である。従って、方法および組成物は、追加のステップおよび構成要素を包含することができ(含む)、あるいは代替的に重要性のないステップおよび組成物を包含することができ(から本質的になる)、あるいは代替的に、規定された方法ステップまたは組成物のみを意図することができる(からなる)、ということが意図される。
【0081】
「用量」および「投薬量」は、投与のための活性薬剤または治療剤の特定の量を指す。かかる量は、ヒト対象およびその他の哺乳動物のための統一された投薬量として好適な物理的に不連続な単位を指す「剤形」に包含され、各単位は、担体などの1以上の好適な医薬賦形剤と関連付けて、所望されるオンセット、忍容性、および治療的効果を生じるように算出された予め決められた分量の活性薬剤を含有する。
【0082】
本発明に従う「薬物抱合体」または「薬物」は、本発明に従うEGFR Fcabと、これらに限定されないがアントラサイクリン、ドキソルビシン、メトトレキサート、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)およびモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を包含するアウリスタチン、メイタンシンおよびそれらのメイタンシノイド誘導体(DM)、カリケアマイシン、デュオカリマイシンおよびピロロベンゾジアゼピン(PBD)ダイマー、V-ATPaseインヒビター、アポトーシス促進剤、Bcl2インヒビター、MCL1インヒビター、HSP90インヒビター、IAPインヒビター、mTorインヒビター、微小管安定剤、微小管脱安定剤、アマニチン、ピロロベンゾジアゼピン、RNAポリメラーゼインヒビター、ドラスタチン、メイタンシノイド、MetAP(メチオニンアミノペプチダーゼ)、タンパク質CRM1の核外輸送のインヒビター、DPPIVインヒビター、プロテアソームインヒビター、ミトコンドリアにおけるホスホリル転移反応のインヒビター、タンパク質合成インヒビター、キナーゼインヒビター、CDK2インヒビター、CDK9インヒビター、キネシンインヒビター、HDACインヒビター、DNA損傷剤、DNAアルキル化剤、DNAインターカレーター、DNA副溝結合剤またはDHFRインヒビター、を包含する群から選択される薬物との、抱合体である。
【0083】
本発明に従う「Fcab」は、Fcエフェクター機能を、CH3ドメイン内のC末端の構造的ループに位置する改変された抗原結合部位と組み合わせる、IgG1をベースとしたホモダイマーFc領域である。21-23例として高親和性でEGFRへ結合する修飾されたlgG1 Fcドメインを含む、抗原結合Fcフラグメント(Fcab(商標) [抗原の結合を伴うFcフラグメント]ともまた称される)は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれるWO2009/132876A1およびWO2009/000006A1に記載されている。本明細書に記載の特異的結合メンバーは、本明細書に記載の抗原結合Fcフラグメントを包含し、これは各々が少なくとも1の構造上のループ領域内に1以上のアミノ酸修飾を有し、ここで、修飾された構造上のループ領域は、修飾されていないFcフラグメントが有意に結合しない抗原のエピトープ、例としてEGFRへ、特異的に結合する。
【0084】
「Fc」は、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含むフラグメントである。抗体のエフェクター機能は、ある種の細胞上で見出されるFc受容体(FcR)によってもまた認識される領域であるFc領域における配列によって決定される。抗原結合Fcフラグメントは、Fcフラグメントの定常領域、例としてCH2またはCH3ドメインの1以上の構造上のループ領域内に改変された抗原結合部位を含み得る。抗原結合Fcフラグメントの調製は、WO2006/072620およびWO2009/132876に記載されている。
【0085】
本発明における使用のための特異的結合メンバーは、好ましくは、Fcab(商標)ともまた称される抗原結合Fcフラグメントであるかまたはこれを含む。より好ましくは、本発明における使用のための特異的結合メンバーは、抗原結合Fcフラグメントである。特異的結合メンバーは、lgA1、lgA2、IgD、IgE、lgG、lgG2、lgG3、lgG4またはIgM抗原結合Fcフラグメントであってもよい。最も好ましくは、本明細書で言及される特異的結合メンバーは、lgG1(例として、ヒトlgG1)抗原結合Fcフラグメントである。ある態様において、特異的結合メンバーは、ヒンジまたはその一部、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、lgG1抗原結合Fcフラグメントである。
【0086】
「Fv」は、完全な抗原認識および抗原結合部位を含有する、最小抗体フラグメントである。このフラグメントは、緊密な非共有結合的に会合した、1の重鎖および1の軽鎖可変領域ドメインのダイマーからなる。これらの2のドメインのフォールディングは、アミノ酸残基を抗原結合に寄与させる6の高可変性のループ(HおよびL鎖の各々から各3のループ)を発生させ、および抗体へ抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または、抗原に特異的なHVRを3のみ含む、Fvの半分)でもなお、結合部位全体よりも低い親和性でとはいえ、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0087】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生産された抗体のそれに対応するアミノ酸配列を保有するおよび/または本明細書に開示のとおりのヒト抗体を作製するための技法のいずれかを使用して作製された抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体は特別に除外する。ヒト抗体は、当該技術分野において知られている、ファージディスプレーライブラリを包含する様々な技法を使用して、生産することができる(例として、HoogenboomおよびWinter (1991)、JMB 227: 381;Marks et al. (1991) JMB 222: 581を参照されたい)。Cole et al. (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, 頁77;Boerner et al. (1991), J. Immunol. 147(l): 86;van Dijkおよびvan de Winkel (2001) Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368において記載された方法もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製のために利用可能である。
【0088】
ヒト抗体は、抗原チャレンジに応答してかかる抗体を生産するように修飾されているがしかしその内在性の遺伝子座は無効化されているようなトランスジェニック動物、例として、免疫化された異種マウス(XENOMOUSE技術に関して、例として、米国特許第6,075,181;および6,150,584を参照されたい)へ抗原を投与することによって、調製することができる。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されたヒト抗体に関して、例えば、Li et al. (2006) PNAS USA, 103: 3557もまた参照されたい。
【0089】
非ヒト(例として、マウス)抗体の「ヒト化された」形態は、最小限の非ヒト免疫グロブリンに由来する配列を含有するキメラ抗体である。一態様において、ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)において、レシピエントのHVRからの残基が、所望される特異性、親和性および/または容量を有するマウス、ラット、ウサギ、または霊長目の非ヒト動物などの非ヒト種のHVR(ドナー抗体)からの残基によって置き換えられたものである。いくつかの場合において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク(「FR」)残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられている。さらにまた、ヒト化抗体は、レシピエント抗体においてまたはドナー抗体においては見出されない残基を含んでいてもよい。これらの修飾は、結合親和性などの抗体性能をさらに改良するためになされてもよい。
【0090】
一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1の、および典型的には2の、可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、その中で、高可変性のループのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリン配列のそれらに対応し、およびFR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のそれらであり、ただし、FR領域は、結合親和性、異性化、免疫原性等々、などの抗体性能を改善する1以上の個々のFR残基置換を包含してもよい。FR内におけるこれらのアミノ酸置換の数は、典型的にはH鎖内においては6を超えず、およびL鎖内においては3を超えない。ヒト化抗体は、任意には、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの、少なくとも一部分もまた含み得る。さらなる詳細については、例として、Jones et al. (1986) Nature 321: 522;Riechmann et al. (1988)、Nature 332: 323;Presta (1992) Curr. Op. Struct. Biol. 2: 593;VaswaniおよびHamilton (1998), Ann. Allergy, Asthma & Immunol. 1: 105;Harris (1995) Biochem. Soc. Transactions 23: 1035;HurleおよびGross (1994) Curr. Op. Biotech. 5: 428;および米国特許第6,982,321および7,087,409を参照されたい。
【0091】
「注入」または「注入する」は、治療目的での、静脈を通じた体内への、薬物を含有する溶液の導入を指す。一般に、これは、静脈内(IV)バッグを介して達成される。
「転移性」がんは、体の1の部分(例として、肺)から体の別の部分へと広がったがんを指す。
【0092】
「モノクローナル抗体」は、本明細書に使用されるときは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在してもよいような考えられる天然に存在する突然変異および/または翻訳後修飾(例として、異性化およびアミド化)を除いて同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位に対して向けられる。典型的に異なる決定基(エピトープ)に対して向けられた異なる抗体を包含するものであるポリクローナル抗体製剤とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられる。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらがハイブリドーマ培養によって合成され、および他の免疫グロブリンによってコンタミネーションされないという点で有利である。
【0093】
修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から得られるものとしての抗体の特質を示し、および、いずれかの特定の方法による抗体の生産を要求するものとして解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えばハイブリドーマ法(例として、KohlerおよびMilstein (1975) Nature 256: 495;Hongo et al. (1995) Hybridoma 14 (3): 253;Harlow et al. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press第2版;Hammerling et al. (1981) In: Monoclonal Antibodies and T-CeIl Hybridomas 563 (Elsevier, N.Y.)、組換えDNA法(例として、米国特許第4,816,567を参照されたい)、ファージディスプレー技術(例として、Clackson et al. (1991) Nature 352: 624;Marks et al. (1992) JMB 222: 581;Sidhu et al. (2004) JMB 338(2): 299;Lee et al. (2004) JMB 340(5): 1073;Fellouse (2004) PNAS USA 101(34): 12467;およびLee et al. (2004) J. Immunol. Methods 284(1-2): 119を参照されたい)、および、ヒト免疫グロブリン遺伝子座またはヒト免疫グロブリン配列をコードする遺伝子の一部または全部を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を生産するための技術(例として、WO 1998/24893;WO 1996/34096;WO 1996/33735;WO 1991/10741;Jakobovits et al. (1993) PNAS USA 90: 2551;Jakobovits et al. (1993) Nature 362: 255;Bruggemann et al. (1993) Year in Immunol. 7: 33;米国特許第5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;および5,661,016;Marks et al. (1992) Bio/Technology 10: 779;Lonberg et al. (1994) Nature 368: 856;Morrison (1994) Nature 368: 812;Fishwild et al. (1996) Nature Biotechnol. 14: 845;Neuberger (1996), Nature Biotechnol. 14: 826;ならびにLonbergおよびHuszar (1995), Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93を参照されたい)を包含する様々な技法によって作製され得る。
【0094】
本明細書中のモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であり、一方で鎖(単数または複数)の残りは別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体の対応する配列と同一または相同であるキメラ抗体(免疫グロブリン)、ならびにかかる抗体のフラグメントを、それらが所望の生物活性を呈する限り、包含する(例として、米国特許第4,816,567;Morrison et al. (1984) PNAS USA, 81: 6851を参照されたい)。
【0095】
「客観的奏効」は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を包含する測定可能な応答を指す。
「部分奏効」は、処置に応答した、1以上の腫瘍または病変のサイズのまたは体内のがんの程度の減少を指す。
【0096】
「患者」および「対象」は、がんの処置を必要とする哺乳動物を指すのに本明細書中で互換的に使用される。一般に、患者は、がんの1以上の症状を患うと診断されたかまたはそのリスクを持っている、ヒトである。ある態様において、「患者」または「対象」は、霊長目の非ヒト動物、イヌ、ネコ、ウサギ、ブタ、マウス、またはラットなどの非ヒト哺乳動物、あるいは、例として薬物および治療をスクリーニングすること、特徴付けすること、および評価することにおいて使用される動物、を指してもよい。
【0097】
ペプチドまたはポリペプチド配列に関する「パーセント(%)配列同一性」は、配列をアラインメントしおよび必要ならば最大限のパーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後の、および配列同一性の一部として保存的置換は何ら考慮しないものとする、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的のでのアラインメントは、当技術分野における技能の範囲内の様々な手法で、実例として、BLAST、BLAST-2またはALIGNソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して、達成することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大限のアラインメントを達成するために必要なあらゆるアルゴリズムを含む、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0098】
「薬学的に許容し得る」とは、物質または組成物が、処方物を含む他の成分と、および/またはそれで処置される哺乳動物と、化学的におよび/または毒物学的に適合性でなければならないということを示す。「薬学的に許容し得る担体」は、生理学的に適合性のある、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張化および吸収遅延剤等を包含する。薬学的に許容し得る担体の例は、を水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等、ならびにそれらの組み合わせのうちの、1以上を包含する。
【0099】
EGFR Fcab-薬物抱合体の「薬学的に許容し得る塩」の形態は、ほとんどが、従来の方法によって調製することができる。本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体がカルボキシル基を含有する場合、その好適な塩の1つは、対応する塩基付加塩を与える好適な塩基と本発明の化合物を反応させることによって形成することができる。かかる塩基は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを包含するアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウムおよび水酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属アルコキシド、例えばカリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;およびピペリジン、ジエタノールアミンおよびN-メチルグルタミンなどの様々な有機塩基である。
【0100】
さらにまた、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の塩基性塩は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III)、マンガン(II)、カリウム、ナトリウムおよび亜鉛塩を包含するが、しかしこれは、制限を表すことを意図するものではない。
【0101】
上述の塩のうち、アンモニウム;アルカリ金属塩ナトリウムおよびカリウム、およびアルカリ土類金属塩カルシウムおよびマグネシウムが、好ましいものとされる。薬学的に許容し得る有機の非毒性の塩基に由来する本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の塩は、一級、二級および三級アミン、天然に存在する置換アミンも包含するものである置換アミン、環状アミン、および塩基性のイオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジシクロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N-メチル-D-グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)、の塩を包含するが、しかしこれは、制限を表すことを意図するものではない。
【0102】
言及したとおり、EGFR Fcab-薬物抱合体の薬学的に許容し得る塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミンなどの金属またはアミンとともに形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチル-D-グルカミンおよびプロカインである。
【0103】
本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の塩基付加塩は、遊離酸形態を充分な量の所望される塩基と接触させ、従来の様式で塩の形成を引き起こすことによって調製される。遊離酸は、塩形態を酸と接触させ、および従来の様式で遊離酸を単離することによって、再生成することができる。遊離酸形態は、極性溶媒への可溶性など、ある物理的特性に関しては、対応する塩形態とはある点で異なるが;本発明の目的では、しかしながら、塩はそれ以外の点ではその夫々の遊離酸形態に対応する。
【0104】
「プロドラッグ」は、有効な分子を形成するように生体内へと迅速に切断されまたは遊離される、例えば、アルキルまたはアシル基(下のアミノ保護基およびヒドロキシル保護基もまた参照されたい)、糖またはオリゴペプチドを用いる手段によって修飾されている、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の誘導体を指す。これらはまた、例えばInt. J. Pharm. 115 (1995), 61-67において記載されているとおり、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の生分解性ポリマー誘導体を包含する。
【0105】
「再発性の」がんは、外科手術などの初期治療に対する応答の後、初期部位または遠位部位のいずれかにて再成長したものである。局所的に「再発性の」がんは、これまでに処置されたがんと同じ場所に、処置後に再度戻るがんである。
症状(単数または複数)の「低減」(およびこの句の文法的に等価なもの)は、症状(単数または複数)の重症度または頻度を減少させること、または症状(単数または複数)の解消を指す。
【0106】
「sFv」または「scFv」ともまた略される、「単鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖へと接続されたVHおよびVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントである。いくつかの態様において、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするVHおよびVLドメインの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。sFvの総括については、例として、Pluckthun(1994)、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, RosenburgおよびMoore(編), Springer-Verlag, New York, pp. 269におけるものを参照されたい。
【0107】
「溶媒和物」は、相互の引力によって形成される本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体への不活性な溶媒分子の付加を指す。溶媒和物は、例えば、一水和物または二水和物などの水和物、またはアルコール和物、すなわち、例えば、メタノールまたはエタノールとなどのアルコールとの付加化合物である。
「実質的に同一の」では、(1)対象アミノ酸配列に対して少なくとも75%、85%、90%、95%、99%または100%アミノ酸配列同一性を呈するクエリアミノ酸配列、または(2)対象アミノ酸配列のアミノ酸配列からのそのアミノ酸位置が20%以下、30%、20%、10%、5%、1%または0%異なり、ここでアミノ酸位置の違いがアミノ酸の置換、欠失または挿入のいずれかであるクエリアミノ酸配列、を意味する。
「全身性の」処置は、薬剤物質が血流を通じて移動し、体中のすべての細胞に到達しおよび影響する処置である。
【0108】
EGFR Fcab-薬物抱合体の「治療的に有効な量」は、がんを持つ患者へ投与されたとき、意図した治療的効果、例として、患者におけるがんの1以上の兆候の緩和、回復、軽減または解消、または、がん患者を処置する過程におけるあらゆる他の臨床上の結果を有することになる、必要な投薬量および期間で有効な量を指す。治療的効果は、必ずしも1の用量によって起こるものではなく、および、一連の用量の後でのみ起こるものであってもよい。よって、治療的に有効な量は、1以上の投与にて施され得る。かかる治療的に有効な量は、個々の病状、年齢、性別、および体重、ならびに個々において所望される応答を奏するEGFR Fcab-薬物抱合体の能力などの要因に従って変動し得る。
【0109】
EGFR Fcab-薬物抱合体のあらゆる毒性または有害作用に治療的に有益な効果が勝るというものもまた、治療的に有効な量である。用語「有効量」は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば、調査者または医者によって追求されまたは所望される、生物学的なまたは医学的な応答を引き起こすような医薬のまたは医薬活性化合物の量を示す。
【0110】
加えて、用語「治療的に有効な量」は、その量を受けていない対応する対象と比較して以下の因果関係を有する量を示す:疾患、症候群、病状、愁訴、障害への改善された処置、治癒、予防または消滅、または副作用の予防、またはさらには疾患、愁訴または障害の進行の低減。用語「治療的に有効な量」はまた、正常な生理学的機能を増大させるのに有効である量も網羅する。
【0111】
「処置すること」、あるいは疾病または患者「の処置」は、臨床上の結果を包含する有益なまたは所望の結果を得るための措置を取ることを指す。本発明の目的では、有益なまたは所望される臨床上の結果は、これらに限定されないが、がんの1以上の症状の緩和、回復;疾患の程度の小康化;疾患進行の遅延または減速;病状の回復、軽減、または安定化;または他の有益な結果を包含する。当然のことながら、「処置すること」または「処置」と言うときは、疾病の、確立された症状の予防法ならびに緩和を包含する。
【0112】
状態、障害または疾病を「処置すること」またはその「処置」は、したがって、以下のことを包含する:(1)状態、障害または疾病に罹患しているかまたはその素因がある可能性があるがしかし未だ状態、障害または疾病の臨床症状または不顕性症状を経験していないまたは顕示させていない対象において発症する状態、障害または疾病の臨床症状の出現を予防するまたは遅延させること、(2)状態、障害または疾病を阻害すること、すなわち、疾患またはその再燃(維持療法のケースにおける)またはその少なくとも1の臨床症状または不顕性症状の発症を阻止する、低減させるまたは遅延させること、あるいは(3)疾患、すなわち、状態、障害または疾病を緩めるもしくは減弱させることまたはその少なくとも1の臨床症状または不顕性症状の後退を引き起こすこと。
【0113】
「単位剤形」は、本明細書に使用されるときは、処置される対象のために適切な治療的処方物の物理的に不連続な単位を指す。しかしながら、本発明の組成物の一日毎の総使用量は、主治医によって穏健な医学的判断の範囲内で判断されるであろうということが理解される。あらゆる特定の対象または生物に対する具体的な有効用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;採用される具体的な活性薬剤の活性;採用される具体的な組成物;対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別および食生活;採用される具体的な活性薬剤の投与の時間、および排出速度;処置の持続時間; 採用される具体的な化合物(単数または複数)と組み合わせでまたは偶然同時に使用される薬物および/または追加の治療、および医学技術分野において周知である同様の要因を包含する様々な要因に依存することになる。
【0114】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖および軽鎖の可変ドメインは、夫々「VH」および「VL」と称されることもある。これらのドメインは、一般に抗体の最も可変性の部分(同じクラスの他の抗体に対して)であり、および抗原結合部位を含有する。
本明細書に使用されるとき、複数の項目、構造的な要素、構成的な要素、および/または材料が、利便性のために共通のリストで提示され得る。しかしながら、これらのリストは、リストの各メンバーが、別々のかつ一意のメンバーとして個別に識別されるかのように解釈されるべきである。
【0115】
濃度、量、およびその他の数字で表したデータは、範囲のフォーマットで本明細書中に表現されまたは提示され得る。かかる範囲のフォーマットは、ただ単に利便性および簡潔さのために使用されているのであって、およびよって範囲の限度として明示的に述べられている数値を包含するのみならず、その範囲内に網羅されるすべての個々の数値または部分範囲をもまた各数値および部分範囲が明示的に述べられているかのように包含するものとして、柔軟に解されるべきであるということを理解されたい。例解として、「約1~約5」の数字で表した範囲は、約1~約5の明示的に述べられた値を包含するのみならず、示された範囲内の個々の値および部分範囲をもまた包含するものとして解されるべきである。よって、2、3、および4などの個々の値および1~3、2~4、および3~5等々、などの部分範囲、ならびに個々に1、2、3、4、および5が、この数字で表した範囲に包含される。この同じ原理は、最小または最大としての1の数値のみを述べている範囲にも適用される。さらにまた、かかる解釈は、範囲の広さまたは記載されている特徴を問わず適用されるべきである。
【0116】
治療剤を発見および開発するとき、当業者は、所望のin-vitro特性を保ちながら薬物動態のパラメーターを最適化しようと試みる。薬物動態のプロファイルが劣っている多くの化合物は、酸化的代謝を受けやすいと仮定することが合理的である。目下のところ利用可能なin-vitro肝臓ミクロソームアッセイは、このタイプの酸化的代謝の過程についての貴重な情報を提供し、これは次にかかる酸化的代謝への耐性を通じて改善された安定性を持つ重水素化された本発明の化合物の合理的設計を可能にする。本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の薬物動態のプロファイルにおける有意な改善が、それによって得られ、ならびに、in-vivo半減期(T/2)、最大の治療的効果での濃度(Cmax)、用量応答曲線の下の面積(AUC)、およびFにおける増大という観点で;およびクリアランス、用量および材料のコストの低減という観点で、定量的に表現できる。
【0117】
本発明はまた、生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法における使用のための本発明に従う少なくとも1のEGFR Fcab-薬物抱合体を含む医薬にも関する。
生理学的および/または病態生理学的状態は、例えば、疾患または病気および医学的な障害、愁訴、症状または合併症等、とりわけ疾患などの、医学的に関係のある生理学的および/または病態生理学的状態を意味するものと取られる。
【0118】
本発明の好ましい態様は、過剰増殖性の疾患および障害からなる群から選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法における使用のための、少なくとも1の本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体を含む、医薬である。
本発明のなおより好ましい態様は、過剰増殖性の疾患および障害からなる群から選択される、ここで、過剰増殖性の疾患または障害は、がんである、生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法における使用のための、本発明に従う医薬である。
【0119】
本発明の別の好ましい態様は、がんが、急性および慢性のリンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、副腎皮質がん、膀胱がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、子宮頸部過形成、絨毛膜がん、慢性顆粒球性白血病、慢性リンパ性白血病、結腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、胆道がん、肝細胞癌、肝臓がん、食道がん、本態性血小板増加症、泌尿生殖器癌、神経膠腫、膠芽腫、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキン病、カポジ肉腫、肺癌、リンパ腫、悪性カルチノイド癌、悪性高カルシウム血症、悪性黒色腫、悪性膵臓インスリノーマ、甲状腺髄様癌、黒色腫、軟骨肉腫、多発性骨髄腫、菌状息肉種、骨髄性およびリンパ性白血病、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、真性赤血球増加症、原発性脳腫瘍、原発性マクログロブリン血症、前立腺がん、腎細胞がん、横紋筋肉腫、皮膚がん、小細胞肺がん、軟部組織肉腫、扁平上皮細胞がん、胃がん、精巣がん、甲状腺がんおよびウィルムス腫瘍、からなる群から選択される、がんの処置における使用のための、本発明に従う医薬である。
【0120】
とりわけ、EGFRと繋がりのある生理学的および/または病態生理学的状態が具体的に好ましいものとされる。よって、本発明は、EGFR陽性がんの処置における使用のための、本発明に従う医薬に関する。
【0121】
本明細書で言及されるがんは、胃部のがん、乳がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がん、肺がん(例えば、非小細胞肺がん)、胃がん、または子宮内膜がんであってもよい。これらのがんはすべて、EGFRを過剰発現することが示されている。好ましくは、がんは、胃部のがん、乳がん、または大腸がんである。より好ましくは、がんは、胃部のがんまたは乳がんである。好ましい一態様において、がんは、胃部のがんである。本明細書で言及される胃部のがんは、食道がんを包含する。別の好ましい態様において、がんは、乳がんである。がんのEGFR遺伝子コピー数は、上に掲げられたとおりである。かかるがんは、EGFR陽性(EGFR+)またはEGFR過剰発現と称され得る。よって、本明細書で言及されるがんは、EGFR陽性であり得る。加えて、または代替的に、本明細書で言及されるがんは、EGFRを過剰発現し得る。がんがEGFR陽性であるかまたはEGFRを過剰発現するかどうかは、例えば、まず免疫組織化学(IHC)を使用し、任意にこれに続き上で概説されたとおりのqPCRなどの方法を使用することにより、決定され得る。
【0122】
さらなる好ましい態様は、乳がん、胃部のがん、胃がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がん、子宮内膜がんまたは非小細胞肺がんを包含する固形がんの処置における使用のための本発明に従う医薬である。
好ましい態様において、がんは、肺がん、例えば非小細胞肺がん[NSCLC]、多形性膠芽腫、皮膚がん、例えば皮膚の扁平上皮細胞癌、頭頸部の扁平上皮細胞癌[HNSCC]などの頭頸部がん、乳がん、胃がん(胃部のがん)、大腸がん(CRC)、卵巣がん、膵臓がんおよび子宮内膜がん、からなる群から選択される。
【0123】
上に開示された医薬は、上の生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法のための医薬の調製のための本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の対応する使用を包含するということが意図される。
加えて、上に開示された医薬は、上の生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防法のための、本発明に従う少なくとも1のEGFR Fcab-薬物抱合体がかかる処置を必要とする患者へ投与される、対応する方法を包含するということが意図される。
【0124】
従って、がんの処置のための本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の使用もまた、本発明の態様である。
従って、がんの処置のための医薬の製造のための本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の使用もまた、本発明の態様である。
【0125】
従って、対象におけるがんを処置するための方法であって、対象へ本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体または医薬製剤を投与することを含む方法もまた、本発明の態様である。
従って、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体または医薬製剤をこれを必要とする対象へ投与することを含むがんの処置のための方法の使用もまた、本発明の態様である。
【0126】
一態様において、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体は、ヒト対象の処置において使用される。EGFR Fcabと薬物との治療的組み合わせでの処置における主な期待される利益は、これらのヒト患者にとってのリスク/利益比の向上である。本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体の投与は、EGFR Fcabと薬物との組み合わせが、単一の治療剤単独での個々の投与と比較すると以下の改善された特性の1以上を提供し得るという点で、個々の治療剤よりも有利であり得る:i)最も活性な単一の薬剤よりも大きな抗がん効果、ii)相乗的なまたは高度に相乗的な抗がん活性、iii)低減された副作用プロファイルとともに増強された抗がん活性を提供する投薬プロトコル、iv)毒性効果プロファイルにおける低減、v)治療濃度域の増大、および/またはvi)治療剤の一方または両方のバイオアベイラビリティーの増大。
【0127】
ある態様において、本発明は、過度のまたは異常な細胞増殖によって特徴付けられる疾患、障害、および疾病の処置を提供する。かかる疾患は、増殖性または過剰増殖性の疾患を包含する。増殖性および過剰増殖性の疾患の例は、がんおよび骨髄増殖性障害を包含する。
【0128】
別の態様において、がんは、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫、および肉腫から選択される。かかるがんのより具体的な例は、扁平上皮細胞癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫、胃腸(管)がん、腎がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ球性白血病、大腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、黒色腫、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、膠芽腫、子宮頸がん、脳がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸癌、胆道がん、および頭頸部がんを包含する。問題となる疾患または医学的な障害は、WO2015118175、WO2018029367、WO2018208720、PCT/US18/12604、PCT/US19/47734、PCT/US19/40129、PCT/US19/36725、PCT/US19/732271、PCT/US19/38600、PCT/EP2019/061558に開示されたもののいずれかから選択されてもよい。
【0129】
一態様において、がんは、以下のものから選択される:虫垂がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、大腸がん、子宮内膜がん、食道がん(とりわけ食道扁平上皮細胞癌)、卵管がん、胃部のがん、神経膠腫(びまん性内因性橋神経膠腫など)、頭頸部がん(とりわけ頭頸部扁平上皮細胞癌および中咽頭がん)、白血病(とりわけ急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病)、肺がん(とりわけ非小細胞肺がん)、リンパ腫(とりわけホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、黒色腫、中皮腫(とりわけ胸膜悪性中皮腫)、メルケル細胞癌、神経芽細胞腫、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、前立腺がん、腎がん、唾液腺 腫瘍、肉腫(とりわけユーイング肉腫または横紋筋肉腫)、扁平上皮細胞癌、軟組織肉腫、胸腺腫、甲状腺がん、尿路上皮がん、子宮がん、膣がん、外陰がんまたはウィルムス腫瘍。
【0130】
さらなる態様において、がんは、以下のものから選択される:虫垂がん、膀胱がん、子宮頸がん、大腸がん、食道がん、頭頸部がん、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺がん、前立腺がんおよび尿路上皮がん。さらなる態様において、がんは、子宮頸がん、子宮内膜がん、頭頸部がん(とりわけ頭頸部扁平上皮細胞癌および中咽頭がん)、肺がん(とりわけ非小細胞肺がん)、リンパ腫(とりわけ非ホジキンリンパ腫)、黒色腫、口腔がん、甲状腺がん、尿路上皮がんまたは子宮がんから選択される。別の態様において、がんは、頭頸部がん(とりわけ頭頸部扁平上皮細胞癌および中咽頭がん)、肺がん(とりわけ非小細胞肺がん)、尿路上皮がん、黒色腫または子宮頸がんから選択される。
【0131】
一態様において、ヒトは、固形腫瘍を有する。一態様において、固形腫瘍は、進行した固形腫瘍である。一態様において、がんは、頭頸部がん、頭頸部の扁平上皮細胞癌(SCCHNまたはHNSCC)、胃部のがん、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、食道がん、非小細胞肺癌、前立腺がん、大腸がん、卵巣がんおよび膵臓がんから選択される。一態様において、がんは、以下のものからなる群から選択される:大腸がん、子宮頸がん、膀胱 がん、尿路上皮がん、頭頸部がん、黒色腫、中皮腫、非小細胞肺癌、前立腺がん、食道がん、および食道扁平上皮細胞癌。
【0132】
一側面において、ヒトは、以下のものの1以上を有する:SCCHN、大腸がん、食道がん、子宮頸がん、膀胱 がん、乳がん、頭頸部がん、卵巣がん、黒色腫、腎細胞癌(RCC)、食道扁平上皮細胞癌、非小細胞肺癌、中皮腫(例として胸膜悪性中皮腫)、および前立腺がん。
別の側面においてヒトは、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、多発性骨髄腫、慢性リンパ芽球性白血病、濾胞性リンパ腫、急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病などの液性腫瘍を有する。
【0133】
いくつかの態様において、がんは、進行がんである。いくつかの態様において、がんは、転移性がんである。いくつかの態様において、がんは、再発性のがん(例として、再発性上皮性卵巣がん、再発性卵管がん、再発原発性腹膜がん、または再発性子宮内膜がんなどの再発性婦人科がん)である。一態様において、がんは、再発性であるかまたは進行している。
【0134】
様々な態様において、本発明の方法は、第1、第2、第3、またはそれ以降の処置のライン(line of treatment)として採用される。処置のラインは、患者が受けた異なる薬またはその他の治療での処置の順序を指す。第1ラインの治療レジメンは、最初に与えられる処置であり、他方で第2または第3ラインの治療は、夫々第1ラインの治療の後または第2ラインの治療の後で与えられる。したがって、第1ラインの治療は、疾患または疾病のための第1の処置である。
【0135】
がんの患者において、一次治療または一次処置と称されることも時々ある第1ラインの治療は、外科手術、化学療法、放射線治療、またはこれらの治療の組み合わせとすることができる。典型的には、患者がプラスの臨床転帰を示さなかったため、または第1または第2ラインの治療に対して不顕性の応答しか示さなかったため、またはプラスの臨床応答を示したもののしかし後に、時には初期のプラスの応答を奏した初期の治療に今度は耐性を持つようになった疾患を伴う、再燃を経験したため、のいずれかを理由として、患者はこれに続く化学療法レジメン(第2または第3ラインの治療)を受ける。
【0136】
いくつかの態様において、がんの処置は、がんの第1ラインの処置である。一態様において、がんの処置は、がんの第2ラインの処置である。いくつかの態様において、処置は、がんの第3ラインの処置である。いくつかの態様において、処置は、がんの第4ラインの処置である。いくつかの態様において、処置は、がんの第5ラインの処置である。いくつかの態様において、がんの該第2ライン、第3ライン、第4ラインまたは第5ラインの処置に対する先立つ処置は、放射線治療、化学療法、外科手術または放射線化学療法の1つ以上を含む。
【0137】
一態様において、先立つ処置は、パクリタキセル、nab-パクリタキセルまたはドセタキセルなどのジテルペノイド;ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビノレルビンなどのビンカアルカロイド;シスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金配位錯体;シクロホスファミド、メルファラン、またはクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチンなどのニトロソ尿素;ダカルバジンなどのトリアゼン;ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン;ブレオマイシン;エトポシドまたはテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;フルオロウラシル、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、またはゲムシタビンなどの代謝体拮抗性抗新生物剤;メトトレキサート;イリノテカンまたはトポテカンなどのカンプトテシン;リツキシマブ;オファツムマブ;トラスツズマブ;セツキシマブ;ベキサロテン;ソラフェニブ;ラパチニブなどのErbBインヒビター、エルロチニブまたはゲフィチニブ;ペルツズマブ;イピリムマブ;ニボルマブ;FOLFOX;カペシタビン;FOLFIRI;ベバシズマブ;アテゾリズマブ;セリクレルマブ;オビヌツズマブまたはあらゆるそれらの組み合わせでの処置を含む。
【0138】
一態様において、がんの該第2ライン、第3ライン、第4ラインまたは第5ラインの処置に対する先立つ処置は、イピリムマブおよびニボルマブを含む。一態様において、がんの該第2ライン、第3ライン、第4ラインまたは第5ラインの処置に対する先立つ処置は、FOLFOX、カペシタビン、FOLFIRI/ベバシズマブおよびアテゾリズマブ/セリクレルマブを含む。一態様において、がんの該第2ライン、第3ライン、第4ラインまたは第5ラインの処置に対する先立つ処置は、カルボプラチン/Nab-パクリタキセルを含む。一態様において、がんの該第2ライン、第3ライン、第4ラインまたは第5ラインの処置に対する先立つ処置は、ニボルマブおよび電気化学療法を含む。一態様において、がんの該第2ライン、第3ライン、第4ラインまたは第5ラインの処置に対する先立つ処置は、放射線治療、シスプラチンおよびカルボプラチン/パクリタキセルを含む。
【0139】
一態様において、本発明の方法は、該ヒトへ少なくとも1の抗新生物薬剤またはがんアジュバントを投与することをさらに含む。本発明の方法はまた、がん処置のその他の治療的な方法とともに採用されてもよい。
典型的には、処置される感受性腫瘍などの腫瘍に対する活性を有するあらゆる抗新生物薬剤またはがんアジュバントが、本発明におけるがんの処置において共投与されてもよい。かかる薬剤の例は、V.T. Devita、T.S. Lawrence、およびS.A. Rosenberg(編集)によるCancer Principles and Practice of Oncology、第10版(12月 5日、2014)、Lippincott Williams & Wilkins Publishersにおいて見出すことができる。
【0140】
一態様において、ヒトは、これまでに1以上の異なるがん処置モダリティで処置されている。いくつかの態様において、がん患者集団における患者の少なくとも一部が、これまでに外科手術、放射線治療、化学療法または免疫療法などの1以上の治療で処置されている。いくつかの態様において、がん患者集団における患者の少なくとも一部が、これまでに化学療法(例として白金をベースとした化学療法)で処置されている。例えば、2のがん処置のラインを受けている患者は、2Lがん患者(例として2L NSCLC患者)として同定することができる。
【0141】
いくつかの態様において、患者は、2のがん処置のラインまたはより多くのがん処置のラインを受けている(例として2L+子宮内膜がん患者などの2L+がん患者)。いくつかの態様において、患者は、これまでに抗PD-1治療などの抗体療法では処置されていない。いくつかの態様において、患者は、これまでに少なくとも1のがん処置のラインを受けている(例として、これまでに少なくとも1のがん処置のラインまたは少なくとも2のがん処置のラインを受けた患者)。いくつかの態様において、患者は、これまでに転移性がんのための少なくとも1の処置のラインを受けている(例として、転移性がんのための少なくとも1または2の処置のラインを受けた患者)。
【0142】
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、好ましくは、例に示されるとおり、酵素アッセイおよび動物実験において容易に実証することができる有利な生物活性を呈する。かかる酵素をベースとしたアッセイにおいて、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、好ましくは、大抵は好適な範囲、好ましくはマイクロモル範囲、およびより好ましくはナノモル範囲におけるIC50値によって記される阻害効果を呈しおよび引き起こす。
【0143】
本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体は、とりわけ非化学的方法による、医薬製剤の調製のために使用することができる。このケースにおいて、それらは、固体、液体または半液体の賦形剤またはアジュバントと一緒に、および任意に1以上のさらなる活性化合物(単数または複数)と組み合わせて、好適な剤形にされる。
よって、本発明はさらに、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体を含む医薬製剤に関する。
【0144】
本発明の別の態様において、この医薬製剤は、さらなる賦形剤および/またはアジュバントを含む。加えて、本発明に従う別の態様は、少なくとも1の本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体および少なくとも1のさらなる医薬活性化合物を含む、医薬製剤である。
本発明はさらに、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体が、固体、液体または半液体の賦形剤またはアジュバントと一緒に好適な剤形にされることを特徴とする、医薬製剤の調製のためのプロセスに関する。
【0145】
本発明に従う医薬製剤は、ヒト医学または獣医学における医薬として使用することができ、およびヒトまたは動物の体の治療的な処置においておよび上述の疾患と戦うことにおいて使用することができる。患者または宿主は、いずれかの哺乳動物種、例えば霊長目の動物種、具体的にはヒト;マウス、ラットおよびハムスターを包含する齧歯類の動物;ウサギ;ウマ、畜牛、イヌ、ネコ等々に属し得る。動物モデルは、実験調査のための関心対象であり、それらはヒト疾患の処置のためのモデルを提供する。それらはさらにまた、診断用薬としてまたは試薬としても使用することができる。
【0146】
好適な担体物質は、腸内(例えば経口)、非経口または局所投与のために好適であり、および新規化合物と反応しない、有機または無機物質、例えば、水、植物油(ヒマワリ油またはタラ肝油など)、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、ラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラノリンまたはワセリンである。当業者は、その専門知識により、所望される医薬処方物のためにいずれのアジュバントが好適であるかを熟知している。
【0147】
溶媒、例えば水、生理食塩水溶液、または例えばエタノール、プロパノールまたはグリセロールなどのアルコール、グルコースまたはマンニトール溶液などの糖溶液、または、該溶媒、ゲル形成剤、錠剤補助剤および他の活性成分担体の混合物の他にも、例えば、潤滑剤、安定剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を与えるための塩、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、緩衝物質、フレーバーおよび/またはアロマ、またはフレーバー補正剤、防腐剤、可溶化剤または色素もまた、使用することが可能である。所望であれば、本発明に従う製剤または医薬は、1以上のさらなる活性化合物、例えば1以上のビタミンを含んでもよい。
【0148】
所望であれば、本発明に従う製剤または医薬は、1以上のさらなる活性化合物および/または1以上の作用エンハンサー(アジュバント)を含んでもよい。
用語「医薬製剤」および「医薬調製物」は、本発明の目的では、同義語として使用される。
【0149】
ここで使用されるとき、「薬学的に忍容性である」は、医薬、沈殿試薬、賦形剤、アジュバント、安定剤、溶媒およびその他の薬剤であって、これから得られる医薬製剤の哺乳動物への投与を、例えば、吐き気、眩暈、消化問題または同種のものなどの望ましくない生理学的副作用なしに円滑化するものに関する。
【0150】
非経口投与のための医薬製剤には、等張性、体水分正常性および忍容性、ならびに、処方物の(低い毒性)、採用されるアジュバントのおよび一次包装の安全性の要件がある。驚くべきことに、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、好ましくは、直接の使用が可能であるという利点を有し、および、例えば、高濃度の有機溶媒またはその他の毒物学的に許容し得ないアジュバントなどの、毒物学的に許容し得ない薬剤の除去のためのさらなる精製ステップは、よって、医薬処方物中における本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の使用の前には不必要である。
【0151】
本発明は、殊更好ましくはまた、沈殿した非結晶の、沈殿した結晶の、または溶解または懸濁された形態にある少なくとも1の本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体、および、任意に、賦形剤および/またはアジュバントおよび/またはさらなる医薬活性化合物を含む、医薬製剤にも関する。
【0152】
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、好ましくは、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の不都合な望ましくない凝集が起こることなしに、高濃度に濃縮された処方物の調製を可能にする。よって、水性溶媒とともにまたは水性媒体中において、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の助けを借りて、高い活性成分含量を有するすぐに使用できる溶液を調製することができる。
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体はまた、凍結乾燥することができ、および結果として生じる凍結乾燥物は、例えば、注射製剤の調製のために使用することができる。
【0153】
水性の製剤は、水性溶液中に本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体を溶解させまたは懸濁させ、および任意にアジュバントを加えることによって、調製され得る。このために、定義された濃度で該さらなるアジュバントを含む定義された体積の原液は、有利なことに、定義された濃度の本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体を有する溶液または懸濁液へ加えられ、および混合物は、任意に、予め算出された濃度へ水で希釈される。代替的に、アジュバントは、固体形態で加えることもできる。各ケースにおいて必要な量の原液および/または水を、続いて、得られた水性溶液または懸濁液へ加えることができる。本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、本発明に従ってまた有利なことにすべてのさらなるアジュバントを含む溶液中に直接溶解させまたは懸濁させることもできる。
【0154】
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体を含み、および4~10のpHを有する、好ましくは5~9のpH、および250~350mOsmol/kgの重量オスモル濃度を有する溶液または懸濁液を、有利なことに、調製することができる。医薬製剤は、よって、実質的に疼痛なく、静脈内に、動脈内に、関節内に、皮下にまたは経皮的に、直接的に投与することができる。加えて、製剤はまた、例えば、グルコース溶液、等張の生理食塩水溶液またはRingerの溶液などの、注入溶液へ加えられてもよく、これはまたさらなる活性化合物を含有してもよく、よって相対的に多量の活性化合物が投与されることもまた可能にする。
【0155】
本発明に従う医薬製剤はまた、本発明に従う複数のEGFR Fcab-薬物抱合体の混合物もまた含んでもよい。
本発明に従う製剤は、生理学的に十分に忍容性であり、調製が簡単であり、正確に分配でき、および好ましくは、保管および輸送および複数の凍結および解凍プロセスの間中全体を通して、アッセイ、分解産物および凝集物に関して安定である。それらは、好ましくは、安定した様式で少なくとも3月~2年の期間にわたって、冷蔵温度にて(2~8℃)および室温にて(23~27℃)および60%の相対大気湿度(R.H.)にて保管することができる。
【0156】
例えば、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、乾燥することによって安定した様式で保管することができ、および必要とあれば溶解または懸濁によって即時使用できる医薬製剤へと変換することができる。考えられる乾燥方法は、例えば、これらの例に制限されることなしに、窒素ガス乾燥、真空オーブン乾燥、凍結乾燥、有機溶媒で洗浄することおよびこれに続く空気乾燥、液床乾燥、流体床乾燥、噴霧乾燥、ローラー乾燥、層乾燥、室温での空気乾燥およびさらなる方法である。
【0157】
本発明に従う製剤または医薬の使用の際、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、一般に知られている市販製剤または製剤と類似して、好ましくは、使用単位当たり0.1~500mg、とりわけ5~300mgの間の投薬量で、使用される。毎日の用量は、好ましくは体重の、0.001~250mg/kg、とりわけ0.01~100mg/kgの間である。製剤は、1日当たり1回以上、例えば1日当たり2、3または4回、投与されることができる。しかしながら、患者のための個々の用量は、例えば、使用される特定の化合物の有効性に、年齢、体重、全般的な健康状態、性別、栄養に、投与の時間および方法に、排出速度に、他の医薬との組み合わせに、および特定の疾患の重症度および持続時間になど、多数の個々の要因に依存する。
【0158】
生体における医薬活性化合物の取り込みの尺度は、そのバイオアベイラビリティである。医薬活性化合物が、注射溶液の形態にて静脈内で生体へ送達される場合、その絶対的なバイオアベイラビリティ、すなわち、全身血液、すなわち大循環に、変化しない形態で到達する医薬の割合は、100%である。治療薬活性化合物の経口投与のケースでは、活性化合物は、一般に、処方物中では固体の形態であり、およびしたがって、それが侵入障壁、例えば胃腸管、口腔粘膜、鼻粘膜、または皮膚、とりわけ角質層、を乗り越えられるようにするために、または体に吸収されることができるようにするために、最初に溶解させられなければならない。薬物動態学についての、すなわちバイオアベイラビリティについてのデータは、J. Shaffer et al., J.Pharm. Sciences, 88 (1999), 313-318の方法と同様にして得ることができる。
【0159】
さらにまた、このタイプの医薬は、薬学技術分野において一般に知られているプロセスの1つを用いる手段によって調製することができる。
医薬は、あらゆる所望される好適なルートを介しての、例えば経口の(口腔内または舌下を包含する)、直腸の、肺の、経鼻の、局所の(口腔内、舌下または経皮を包含する)、膣内または非経口の(皮下、筋肉内、静脈内、皮内およびとりわけ関節内を包含する)ルートによっての、投与のために適応されることができる。このタイプの医薬は、薬学技術分野において知られているすべてのプロセスを用いる手段によって、例えば、活性なEGFR Fcab-薬物抱合体を賦形剤(単数または複数)またはアジュバント(単数または複数)と組み合わせることによって調製することができる。
【0160】
非経口投与は、好ましくは本発明に従う医薬の投与のために好適である。非経口投与のケースでは、関節内投与が、殊更好ましい。
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体はまた、活性な化合物を徐放、持続的および/または制御放出させるように非経口的に投与される医薬の調製のためにもまた好適である。それらは、よって、投与が相対的に長い時間間隔でのみ必要になることから患者にとって有利であるような遅延放出の処方物の調製のためにもまた好適である。
【0161】
非経口投与に適応された医薬は、酸化防止剤、緩衝剤、静菌剤および溶質であってこれを用いる手段によって処方物が処置されるレシピエントの血液または滑液と等張になるものを含む滅菌された注射溶液;ならびに、懸濁媒体および増粘剤を含むことができる水性のおよび非水性の滅菌された懸濁液を包含する。処方物は、単回用量または複数回用量の容器、例えばシールされたアンプルおよびバイアルにおいて送達されることができ、および、注射の目的で水などの滅菌されたキャリア液を使用の直前に加えることだけ必要であるように、フリーズドライ(凍結乾燥)状態で保管されることができる。処方に従った注射溶液および懸濁液は、滅菌された粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0162】
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体はまた、例えば、小さな単層ベシクル、大きな単層ベシクルおよび多重層ベシクルなどの、リポソーム送達系の形態で投与されてもよい。リポソームは、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの、様々なリン脂質から形成されることができる。
【0163】
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体はまた、標的にされた医薬の賦形剤として可溶性ポリマーにカップリングされたものとすることもできる。かかるポリマーは、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルタミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリシンがパルミトイルラジカルによって置換されたものを、網羅することができる。本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、さらにまた、医薬の徐放を達成するために好適である生分解性ポリマーのクラス、例えばポリ乳酸、ポリ-イプシロン-カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリル酸塩、ポリ乳酸-コ-グリコール酸、デキストランとメタクリラートとの間の抱合体などのポリマー、ポリホスホエステル、様々な多糖類およびポリアミンおよびポリ-ε-カプロラクトン、アルブミン、キトサン、コラーゲンまたは修飾ゼラチン、および架橋されたかまたは両親媒性のヒドロゲルのブロックコポリマー、にカップリングされたものとすることができる。
【0164】
腸内投与(経口のまたは直腸の)のために好適なものは、とりわけ、錠剤、糖衣錠、カプセル、シロップ、ジュース、点薬または坐薬であり、および局所使用のために好適なものは、軟膏、クリーム、ペースト、ローション、ゲル、スプレー、泡、エアロゾル、溶液(例えば、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセトアミド、1,2-プロパンジオールまたはそれらの互いとおよび/または水との混合物中の溶液)または粉末である。局所の使用のためにもまた殊更好適なものは、リポソーム製剤である。
【0165】
軟膏を与えるための処方物のケースでは、活性化合物は、パラフィン性または水混和性のクリームベースのいずれかとともに採用することができる。代替的に、活性なEGFR Fcab-薬物抱合体は、水中油クリームベースまたは油中水ベースでの、クリームへと製剤化されることができる。
経皮的投与に適合された医薬は、レシピエントの表皮との長時間の密着のための独立した硬膏剤として送達されることができる。よって、例えば、活性なEGFR Fcab-薬物抱合体は、Pharmaceutical Research, 3 (6), 318 (1986)に記載されているとおり、イオントフォレーシスを用いる手段によって、硬膏剤から供給されることができる。
【0166】
言うまでもないことであるが、上で殊更言及された構成物質の他にも、本発明に従う医薬はまた、医薬処方物の特定のタイプに関して当該技術分野において通例である他の薬剤も含んでもよい。
本明細書に記載のEGFR Fcab-薬物抱合体はまた、医薬処方物、医薬製剤、セットまたはキットの形態であってもよい。
【0167】
本発明はさらに、
a) 有効量の少なくとも1の本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体、および
b) 有効量のさらなる医薬活性化合物
の別々のパックからなる、セット(キット)に関する。
セットは、箱またはカートン、個々の瓶、バッグまたはアンプルなどの好適な容器を含む。セットは、例えば、有効量の本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体および有効量のさらなる医薬活性化合物を溶解または凍結された形態で各々含有する、別々のアンプルを含んでもよい。
【0168】
一態様において、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体は、2~6週間毎(例として2、3または4週、とりわけ3週)に1回投与される。一態様において、EGFR Fcab-薬物抱合体は、2週間毎に1回投与される(「Q2W」)。一態様において、EGFR Fcab-薬物抱合体は、3週間毎に1回投与される(「Q3W」)。一態様において、EGFR Fcab-薬物抱合体は、6週間毎に1回投与される(「Q6W」)。一態様において、EGFR Fcab-薬物抱合体は、2~6投薬サイクル(例として最初の3、4、または5投薬サイクル、とりわけ、最初の4投薬サイクル)の間Q3Wで投与される。
【0169】
ある態様において、処置されるがんは、EGFR陽性である。例えば、ある態様において、処置されるがんは、EGFR+発現(例として、高いEGFR発現)を呈する。例えばEGFRなどの、がんまたは腫瘍上のバイオマーカーを検出する方法は、当該技術分野において日常的であり、および本明細書において企図される。非限定例は、免疫組織化学、免疫蛍光および蛍光活性化セルソーティング(FACS)を包含する。
【0170】
いくつかの態様において、EGFRの高いがんを持つ対象または患者は、静脈内に抗EGFR Fcab-薬物抱合体を約1200mg Q2Wの用量で投与することによって処置される。いくつかの態様において、EGFRの高いがんを持つ対象または患者は、静脈内にEGFR Fcab-薬物抱合体を約1800mg Q3Wの用量で投与することによって処置される。いくつかの態様において、EGFRの高いがんを持つ対象または患者は、静脈内にEGFR Fcab-薬物抱合体を約2100mg Q3Wの用量で投与することによって処置される。いくつかの態様において、EGFRの高いがんを持つ対象または患者は、静脈内にEGFR Fcab-薬物抱合体を約2400mg Q3Wの用量で投与することによって処置される。いくつかの態様において、EGFRの高いがんを持つ対象または患者は、静脈内にEGFR Fcab-薬物抱合体nを約15mg/kg Q3Wの用量で投与することによって処置される。
【0171】
ある態様において、処置されるがんは、腫瘍微小環境におけるアデノシンの上昇したレベルを有する。
【0172】
ある態様において、投薬レジメンは、約0.01~3000mgの用量(例として、用量約0.01mg;用量約0.08mg;用量約0.1mg;用量約0.24mg;用量約0.8mg;用量約1mg;用量約2.4mg;用量約8mg;用量約10mg;用量約20mg;用量約24mg;用量約30mg;用量約40mg;用量約48mg;用量約50mg;用量約60mg;用量約70mg;用量約80mg;用量約90mg;用量約100mg;用量約160mg;用量約200mg;用量約240mg;用量約300mg;用量約400mg;用量約500mg;用量約600mg;用量約700mg;用量約800mg;用量約900mg;用量約1000mg;用量約1100mg;用量約1200mg;用量約1300mg;用量約1400mg;用量約1500mg;用量約1600mg;用量約1700mg;用量約1800mg;用量約1900mg;用量約2000mg;用量約2100mg;用量約2200mg;用量約2300mg;用量約2400mg;用量約2500mg;用量約2600mg;用量約2700mg;用量約2800mg;用量約2900mg;または用量約3000mg)で抗EGFR Fcab-薬物抱合体を投与することを含む。
【0173】
いくつかの態様において、用量は、約500mgの用量である。いくつかの態様において、用量は、約1200mgである。いくつかの態様において、用量は、約2400mgである。いくつかの態様において、EGFR Fcab-薬物抱合体の用量は、約0.001~100mg/kg(例として、用量約0.001mg/kg;用量約0.003mg/kg;用量約0.01mg/kg;用量約0.03mg/kg;用量約0.1mg/kg;用量約0.3mg/kg;用量約1mg/kg;用量約2mg/kg;用量約3mg/kg;用量約10mg/kg;用量約15mg/kg;または用量約30mg/kg)である。
【0174】
本明細書に開示のすべての固定された用量は、80kgの参照体重に基づく体重用量に匹敵するとみなされる。従って、2400mgの固定用量に言及するとき、30mg/kgの体重用量も、同じくそれとともに開示される。
【0175】
本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体での処置に加えて、かつ患者の健全さのために必要とみなされる併用療法が、処置医の裁量で与えられてもよい。いくつかの態様において、本発明は、化学療法、放射線治療または化学放射線療法などの追加の治療とともにEGFR Fcab-薬物抱合体をこれを必要とする患者へ投与することを含む、本明細書に記載の1以上の疾患または障害の重症度または進行を処置、安定化または減少させる方法を提供する。
【0176】
一態様において、パクリタキセル、nab-パクリタキセルまたはドセタキセルなどのジテルペノイド;ビンブラスチン、ビンクリスチン、またはビノレルビンなどのビンカアルカロイド;シスプラチンまたはカルボプラチンなどの白金配位錯体;シクロホスファミド、メルファラン、またはクロラムブシルなどのナイトロジェンマスタード;ブスルファンなどのスルホン酸アルキル;カルムスチンなどのニトロソ尿素;ダカルバジンなどのトリアゼン;ダクチノマイシンなどのアクチノマイシン;ダウノルビシンまたはドキソルビシンなどのアントラサイクリン;ブレオマイシン;エトポシドまたはテニポシドなどのエピポドフィロトキシン;フルオロウラシル、ペメトレキセド、メトトレキサート、シタラビン、メルカプトプリン、チオグアニン、またはゲムシタビンなどの代謝体拮抗性抗新生物剤;メトトレキサート;イリノテカンまたはトポテカンなどのカンプトテシン;リツキシマブ;オファツムマブ;トラスツズマブ;セツキシマブ;ベキサロテン;ソラフェニブ;ラパチニブ、エルロチニブまたはゲフィチニブなどのerbBインヒビター;ペルツズマブ;イピリムマブ;トレメリムマブ;ニボルマブ;ペンブロリズマブ;FOLFOX;カペシタビン;FOLFIRI;ベバシズマブ;アテゾリズマブ;セリクレルマブ;オビヌツズマブまたはあらゆるそれらの組み合わせ(単数/複数)がさらに投与される。
【0177】
一態様において、放射線治療が、EGFR Fcab-薬物抱合体と並行または連続してさらに施される。いくつかの態様において、放射線治療は、全身性放射線治療、外部ビーム放射線治療、画像誘導放射線治療、トモセラピー、定位放射線外科手術、体幹部定位放射線治療、および陽子線療法からなる群から選択される。いくつかの態様において、放射線治療は、外部ビーム放射線治療、内部放射線治療(小線源療法)、または全身性放射線治療を含む。例として、Amini et al., Radiat Oncol.「Stereotactic body radiation therapy (SBRT) for lung cancer patients previously treated with conventional radiotherapy: a review」9:210 (2014);Baker et al., Radiat Oncol.「A critical review of recent developments in radiotherapy for non-small cell lung cancer」11(1):115 (2016);Ko et al., Clin Cancer Res「The Integration of Radiotherapy with Immunotherapy for the Treatment of Non-Small Cell Lung Cancer」(24)(23) 5792-5806;および、Yamoah et al., Int J Radiat Oncol Biol Phys「Radiotherapy Intensification for Solid Tumors: A Systematic Review of Randomized Trials」93(4): 737-745 (2015)を参照されたい。
【0178】
いくつかの態様において、放射線治療は、外部ビーム放射線治療を含み、および、外部ビーム放射線治療は、強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、トモセラピー、定位放射線外科手術、体幹部定位放射線治療、陽子線療法、または他の荷電粒子ビームを含む。
いくつかの態様において、放射線治療は、体幹部定位放射線治療を含む。
【0179】
本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の他に、本発明に従う医薬製剤はまた、さらなる医薬活性化合物、例えばがんの処置における使用のための他の抗腫瘍医薬をもまた含んでもよい。言及された他の疾患の処置のために、本発明に従う医薬製剤はまた、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体の他に、その処置の技術分野における当業者に知られているさらなる医薬活性化合物も含んでもよい。
【0180】
一態様において、方法は、抗体と組み合わせてまたはこれと交代で宿主へ本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体を投与することを含む。特定の下位態様において、抗体は、治療用抗体である。具体的な一態様において、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体と組み合わせてまたはこれと交代で1以上の受動抗体を投与することを含む、受動的抗体治療の有効性を増強させる方法が提供される。この方法は、がんなどの異常細胞増殖性の障害の処置のための抗体療法の有効性を増強させることができ、または、感染性疾患の処置または予防において治療の有効性を増強させることができる。本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体は、例えばリツキシマブ、ハーセプチンまたはアービタックスなどの抗体と組み合わせてまたはこれと交代で投与されることができる。
【0181】
主たる別の態様では、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体を、実質的に別の抗がん剤の不在下において、これを必要とする宿主へ投与することを含む、異常な細胞増殖を処置または予防する方法が提供される。
【0182】
主たる別の態様では、実質的に第1の抗がん剤と組み合わせて宿主へ第1の本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体を投与することおよび続いて第2のEGFR Fcab-薬物抱合体を投与することを含む、これを必要とする宿主における異常な細胞増殖を処置または予防する方法が提供される。1の下位態様では、第2のEGFR Fcab-薬物抱合体は、実質的に別の抗がん剤の不在下で投与される。主たる別の態様において、実質的に第1の抗がん剤と組み合わせて宿主へ本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体を投与することおよび続いてEGFR Fcab-薬物抱合体の不在下で第2の抗がん剤を投与することを含む、これを必要とする宿主における異常な細胞増殖を処置または予防する方法が提供される。
【0183】
よって、ここに開示されたがん処置は、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体での治療として、または手術、照射または化学療法と組み合わせて実施することができる。このタイプの化学療法は、抗腫瘍活性化合物の以下のカテゴリーの1以上の活性化合物の使用を包含することができる:
【0184】
(i)アルキル化活性化合物(例えばシスプラチン、パルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗薬(例えば、5-フルオロウラシルおよびテガフールなどの葉酸拮抗薬、フッ化ピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素およびゲムシタビン);抗腫瘍抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン-C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシンなどのアントラサイクリン);抗有糸分裂活性化合物(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイド、および、タキソールおよびタキソテールなどのタキソイド);トポイソメラーゼインヒビター(例えば、エトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカンおよびカンプトテシンなどのエピポドフィロトキシン)および細胞分化活性化合物(例えば全トランス型レチノイン酸、13-cis-レチノイン酸およびフェンレチニド)などの、医学的腫瘍学において使用されるとおりの抗増殖性/抗新生物/DNA損傷活性化合物およびそれらの組み合わせ;
【0185】
(ii)抗エストロゲン薬(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびヨードキシフェン)、エストロゲン受容体調節因子(例えば フルベストラント)、抗アンドロゲン薬(例えば ビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲステロン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼインヒビター(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボロゾールおよびエキセメスタン)、およびフィナステリドなどの5α-レダクターゼのインヒビターなどの、細胞増殖抑制性の活性化合物;
(iii)例えばマリマスタットのようなメタロプロテイナーゼインヒビター、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能のインヒビターを包含する、がん浸潤を阻害する活性化合物;
【0186】
(iv)成長因子機能のインヒビター、例えば成長因子抗体、成長因子受容体抗体、例えば抗erbb2抗体トラスツズマブ[ハーセプチン(商標)]および抗erbbl抗体セツキシマブ[C225]、ファルネシルトランスフェラーゼインヒビター、チロシンキナーゼインヒビターおよびセリン/トレオニンキナーゼインヒビター、例えば上皮成長因子ファミリーのインヒビター(例えば、N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6- (3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)キナゾリン-4-アミン(エルロチニブ、OSI-774)および6-アクリルアミド-N-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-(3-モルホリノプロポキシ)キナゾリン-4-アミン(CI 1033)などのEGFRファミリーチロシンキナーゼインヒビター)、例えば血小板由来成長因子ファミリーのインヒビター、および、例えば、肝細胞成長因子ファミリーのインヒビター;
【0187】
(v)ベバシズマブ、アンギオスタチン、エンドスタチン、リノミド、バチマスタット、カプトプリル、軟骨由来のインヒビター、ゲニステイン、インターロイキン12、ラベンダスチン、酢酸メドロキシプロゲステロン、組換えヒト血小板因子4、テコガラン、トロンボスポンジン、TNP-470、抗VEGFモノクローナル抗体、可溶性VEGF-受容体キメラタンパク質、抗VEGF受容体抗体、抗PDGF受容体、インテグリンのインヒビター、チロシンキナーゼインヒビター、セリン/トレオニンキナーゼインヒビター、アンチセンスオリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド、siRNA、抗VEGFアプタマー、色素上皮由来因子および国際特許出願WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856およびWO98/13354)に公開されている化合物などの血管新生阻害活性化合物;
【0188】
(vi)国際特許出願WO99/02166、WO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434およびWO02/08213に公開されているコンブレタスタチンA4および化合物などの血管破壊剤;
(vii)アンチセンス療法、例えば抗RasアンチセンスであるISIS 2503など、上に言及された標的へ向けられたもの;
【0189】
(viii)例えば、異常なp53または異常なBRCA1またはBRCA2などの異常な修飾された遺伝子の置き換えのためのアプローチ、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌のニトロレダクターゼ酵素を使用するものなどのGDEPTアプローチ(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)、および、多剤耐性治療などの化学療法または放射線治療に対する患者の耐性を増大させるアプローチなどを包含する、遺伝子治療アプローチ;および
【0190】
(ix)例えば、インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインでのトランスフェクションなどの患者の腫瘍細胞の免疫原性を増大させるためのex-vivoおよびin-vivoアプローチ、T細胞アネルギーを減少させるためのアプローチ、サイトカインでトランスフェクトされた樹状細胞などのトランスフェクトされた免疫細胞を使用したアプローチ、サイトカインでトランスフェクトされた腫瘍細胞の使用のためのアプローチ、および抗イディオタイプの抗体の使用のためのアプローチ、を包含する免疫療法アプローチ
【0191】
(x)例えばアバレリックス、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、BCG生、ベバシズマブ、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シナカルセト、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキンジフチトクス、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロモスタノロン、エピルビシン、エポエチンアルファ、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジン、フルダラビン、フルオロウラシル、フルベストラントおよびゲムシタビンを包含する化学療法剤。
【0192】
表1からの医薬は、好ましくは、排他的にではないが、本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体と組み合わせることができる。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0193】
本開示は、本明細書に記載のEGFR Fcab-色素抱合体を使用した診断的、予測的、予後的および/または治療的な方法をさらに提供する。かかる方法は、少なくとも部分的には、関心のあるバイオマーカーの発現レベルの同一性の決定に基づく。とりわけ、がん患者試料におけるEGFRのいずれか1つの量は、患者が本発明の治療的な組み合わせを利用したがん治療に好ましく応答しそうであるかどうかを予測するためのバイオマーカーとして使用することができる。
【0194】
よって、本発明の別の態様は、式Fcab-(L)m-(La)nを含むEGFR Fcab-標識抱合体であり、式中:
a) Fcabは、EGFR Fcabを含み、
b) Lは、リンカーを含み、
c) Laは、標識を含み、
d) mは、1~5の整数であり、および、nは、1~10の整数である。
【0195】
本発明の好ましい態様は、EGFR Fcabが、以下からなる群:配列番号1~6に掲げるとおりのアミノ酸配列を有する、Fcab-1、Fcab-2、Fcab-3、Fcab-4、Fcab-5およびFcab-6、から選択される、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体である。
【0196】
本発明のさらに好ましい態様は、EGFR Fcabが、以下からなる群:配列番号1~3に掲げるとおりのアミノ酸配列を有する、Fcab-1、Fcab-2およびFcab-3、から選択される、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体である。
本発明の好ましい態様において、mは、1~3であり、および、nは、1~5である。
【0197】
本発明はまた、本発明に従うEGFR Fcabが、標識を加えることによって修飾されて標識付きEGFR Fcab抱合体を生じた、EGFR Fcab-標識抱合体にも関する。標識は、潜在的な立体障害を低減させるために様々な長さのスペーサー/リンカーを介してEGFR Fcabへカップリングされることができる。リンカーは、本発明に従うEGFR Fcab-薬物抱合体について上に記載されたとおりのものと同じであることができる。
【0198】
用語「標識」または「標識基」は、あらゆる検出可能な標識を指す。例示的な標識は、これらに限定されないが、放射性同位体または放射性核種(例として、3H、14C、15N、35S、89Zr、90Y、99Tc、111In、125I、131I)などの、放射性同位体もしくは重同位体であり得る同位体標識;磁性標識(例として、磁性粒子);酸化還元活性部分;蛍光基(例として、FITC、ローダミン、ランタニド蛍光体)、化学ルミネセンス基、および「小分子」フルオロフォアまたはタンパク性のフルオロフォアのいずれとすることもできるフルオロフォアなどの光学色素(これらに限定されないが、発色団、蛍光体およびフルオロフォアを包含する);酵素基(例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、~-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アルカリホスファターゼ);ビオチン化された基;または、二次レポーター(例として、ロイシンジッパーペア配列、二次抗体に対する結合部位、金属結合ドメイン、エピトープタグ、等々)によって認識される予め決められたポリペプチドエピトープ、を包含する。
【0199】
本発明の好ましい態様は、標識が、同位体標識、磁性標識、酸化還元活性部分、光学色素および酵素基からなる群から選択される、本発明のEGFR Fcab-標識抱合体である。
本発明のさらに好ましい態様は、標識がpHAb色素である、本発明のEGFR Fcab-標識抱合体である。
【0200】
本発明に従うと、標識はまた、抗体の精製および単離の助けになるアフィニティータグなどのタグとすることもできる。かかる追加のドメインの非限定例は、Mycタグ、HATタグ、HAタグ、TAPタグ、GSTタグ、キチン結合ドメイン(CBDタグ)、マルトース結合タンパク質(MBPタグ)、Flagタグ、Strepタグおよびそのバリアント(例としてStrepIIタグ)およびHisタグとして知られるペプチドモチーフを含む。
【0201】
よって、本発明のさらに好ましい態様は、標識がタグである、本発明のEGFR Fcab-標識抱合体である。
本発明の別の態様は、本発明に従うEGFR Fcab-標識抱合体を含有する診断用組成物である。
【0202】
あらゆる好適な試料を、方法のために使用することができる。かかるものの非限定例は、針生検、コア生検および針吸引から単離されたものとすることができる、血清試料、血漿試料、全血、膵液試料、組織試料、腫瘍ライセートまたは腫瘍試料の1以上を包含する。例えば、組織、血漿または血清試料は、処置の前に、および任意に本発明の治療的な組み合わせで処置した際に、患者から取られる。処置した際に得られる発現レベルは、患者の処置を開始する前に得られた値と比較される。得られる情報は、がん治療に対して患者の応答が好ましかったか好ましくなかったかを示すことができるという点で、予後的であり得る。
【0203】
本明細書に記載の診断アッセイを使用して得られる情報は、単独で、あるいは、これらに限定されないが、他の遺伝子の発現レベル、臨床化学的パラメーター、組織病理学的パラメーター、または対象の年齢、性差および重量などのその他の情報と組み合わせて、使用されてもよいということが理解される。単独で使用されるとき、本明細書に記載の診断アッセイを使用して得られる情報は、処置の臨床転帰を決定または同定すること、処置する患者を選択すること、または患者を処置すること、等々において有用である。他方で、他の情報と組み合わせて使用されるとき、本明細書に記載の診断アッセイを使用して得られる情報は、処置の臨床転帰の決定または同定の助けになること、処置する患者の選択の助けになること、または患者の処置の助けになること等において有用である。具体的な側面において、発現レベルは、最終的な診断、予後、または患者のために選択される処置に各々寄与する診断パネルにおいて使用することができる。
【0204】
バイオマーカータンパク質または他の好適なバイオマーカーレベルについてのリードアウトを測定するためには、あらゆる好適な方法を夫々使用することができ、その例は、本明細書に記載されており、および/または当業者に周知である。
【0205】
いくつかの態様において、バイオマーカーレベルを決定することは、バイオマーカー発現を決定することを含む。いくつかの態様において、バイオマーカーレベルは、患者試料中のバイオマーカータンパク質濃度によって、例として、抗体または特異的結合パートナーなどのバイオマーカー特異的リガンドを用いて、決定される。結合事象は、例として、競合的または非競合的方法によって検出することができ、これは、結合事象について標識付きタンパク質と競合する、標識付きリガンドまたはバイオマーカー特異的部分、例として、抗体、または、標識付きバイオマーカー標準を包含する標識付きの競合部分の使用を包含する。バイオマーカー特異的リガンドが、バイオマーカーを複合体を形成することを可能とする場合、複合体形成は、試料中のバイオマーカー発現を示すことができる。
【0206】
様々な態様において、バイオマーカータンパク質レベルは、定量的ウエスタンブロット、複合型イムノアッセイフォーマット、ELISA、免疫組織化学法、組織化学法を含む方法、または、腫瘍ライセートのFACS分析、蛍光免疫染色、ビーズに基づく懸濁イムノアッセイ、ルミネックス技術、もしくは近接ライゲーションアッセイの使用によって決定される。一態様において、バイオマーカー発現は、バイオマーカーを特異的に結合させる1以上の一次抗体を使用した免疫組織化学法によって決定される。
【0207】
しかしながら、本発明の好ましい態様においては、本発明に従うEGFR Fcab-標識抱合体が、細胞、オルガノイド、血清試料、血漿試料、全血、膵液試料、組織試料、腫瘍ライセートまたは腫瘍試料中におけるEGFRタンパク質の発現を決定するために使用される。
一態様において、本発明の治療的な組み合わせの有効性は、腫瘍試料中におけるEGFR発現を用いる手段によって予測される。
【0208】
本開示はまた、患者から単離された試料中におけるEGFRのタンパク質レベルを決定するための手段、および取扱説明を含む、本発明の組み合わせが、がん患者の治療的な処置のために好適であるかどうかを決定するためのキットも提供する。本発明の一側面において、高いEGFRレベルの決定は、患者が本発明のEGFR Fcab-薬物抱合体で処置されたときの増大したPFSまたはOSを示す。キットの一態様において、バイオマーカータンパク質レベルを決定するための手段は、バイオマーカーへの特異的結合を伴う抗体である。
【0209】
さらなる態様がなくても、当業者は最も広い範囲において上の記載を使用することができるであろうということが仮定される。好ましい態様は、したがって、ただ単に、絶対的にいかなるやり方によっても限定するものでもない記述的開示とみなされるべきである。
本明細書に引用された全ての参考文献は、本発明の開示において参照により本明細書に組み込まれる。
【0210】
本明細書に記載のものと同様のまたは等価な方法および材料が本発明の実践または試験において使用することができるが、好適な例を、下に記載している。例の中において、(実際的な場合には常に)汚染活性のない標準的な試薬および緩衝剤が使用される。例は、殊更、それらは明示的に実証された特色の組み合わせに限定されないが、例示された特色を本発明の技術的課題が解決されることを前提として制限なく再び組み合わせてもよいというように解釈されたい。同様に、いずれかの請求項の特色を、1以上の他の請求項の特色と組み合わせることができる。要約にておよび詳細に説明してきた本発明を、以下の例によって例解するが、これらによって限定されるものではない。
【0211】
別様に明記されない限り、パーセントデータは重量による百分率を示す。すべての温度は、セ氏の度で表示される。「従来のワークアップ」:最終産物の構成に依存して、水を、必要ならば加え、pHを、必要ならば、2~10の間の値へ調整し、混合物を、酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出物し、相を分離し、有機相を、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過しおよび蒸留し、および、産物を、シリカゲル上のクロマトグラフィーによっておよび/または結晶化によって精製する。
【0212】
シリカゲル上のRf値;質量分析: EI(電子衝撃イオン化): M+、FAB(高速原子衝撃法): (M+H)+、THF(テトラヒドロフラン)、NMP(N-メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EA(酢酸エチル)、MeOH(メタノール)、TLC(薄層クロマトグラフィー)
【0213】
略語の一覧
AUC 血漿薬物濃度-時間曲線の下の面積
Cmax 最大血漿濃度
CL クリアランス
CV 変動係数
CYP シトクロムP450
DMSO ジメチルスルホキシド
F バイオアベイラビリティー
fa 吸収率
iv 静脈内
LC-MS/MS 液体クロマトグラフィータンデム質量分析
LLOQ 定量下限
NC 算出されていない
ND 決定されていない
PEG ポリエチレングリコール
Pgp 透過性糖タンパク質
PK 薬物動態(単数または複数)
po Per os(経口)
t1/2 半減期
tmax 薬物の最大血漿濃度に到達する時間
UPLC 超高速液体クロマトグラフィー
Vss 分布の体積(定常状態で)
v/v 体積対体積
【実施例】
【0214】
例
例1: Fcab、対照およびpHAb色素標識付き構築物の調製
出発点として、我々は、3の異なるEGFR結合Fcab(Fcab-1、Fcab-2、Fcab-3)を文献から選択した。3つすべてについて、EGFRに対する1桁のナノモルの結合親和性が記載されている(KD 0.7~2.6nM)。[20] 陰性対照として、我々は、修飾されていないヒトFc(huFc)フラグメントを包含させた。EGFR結合の参照として、セツキシマブベースの完全長IgG(C-IgG)およびセツキシマブ由来Fab(C-Fab)フラグメントの、両方とも軽鎖のC末端にソルターゼA(SrtA)認識モチーフ(LPETG)を備えたものを、包含させた。
【0215】
FcabsおよびhuFcを、Fcγ受容体(I、II、III)に媒介される細胞傷害性
[23]を回避するためにD265A突然変異
[21,22]を伴って発現させ、およびアフィニティークロマトグラフィーによって精製した(
図8)。質量分析分析(LC-MS、
図9)で、すべての分子の同一性を確認した。示差走査蛍光分析は、Fcabについてのより低いアンフォールディング転移中点(T
m)(例として T
m,1 59℃対66℃;
図10)を示しており、huFcと比較して低下しているが依然として許容し得るFcabの熱安定性が示される。その上、我々は、精製された構築物の機能的かつ選択的な細胞結合性を評価した(
図11、
図12)。
【0216】
細胞取り込み研究のために、すべての構築物をランダムなリシンにてアミンカップリングを介して蛍光色素(pHAb色素)で標識化しており(
図3C)、これは細胞外の中性のpHでは極めて低い蛍光を、しかしエンドソームのおよびリソソームの区画内の酸性のpHでは強く増大した蛍光を呈する(
図13)。
[24] pHAb色素標識化の成功および凝集の不在を、分析的なサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)によって確認した(
図15)。異なるように標識化された構築物から結果としてもたらされる個々の蛍光強度間の比較可能性を確保するために、蛍光シグナルを正規化した。根本的な実験手順の包括的な記載は、SIにおいて見出すことができる。
【0217】
例2: 細胞取り込み研究
細胞内薬物送達のための、EGFR結合Fcabの一般的な適性を査定するために、がん細胞内へのそれらのそれらの取り込みおよび蓄積を研究した。したがって、pHAb色素標識付き構築物を、EGFR過剰発現の(MDA-MB-468、A431)およびEGFR陰性の(MCF-7)接着性の細胞上でインキュベートし、および蛍光を26時間にわたって絶え間なく測定した(
図16A)。蛍光強度を、個々の細胞数および標識付き構築物の蛍光強度を考慮して正規化させた。線形回帰によって細胞内蓄積率を決定するため、これらの強度を時間に対してプロットした。(
図16B)。
【0218】
すべての蓄積率は、最も速い取り込みを示したC-IgG-pHAb(MDA-MB-468に対するC-IgG-pHAb)の率に対して相対的に表した(
図4)。MDA-MB-468およびA431細胞の間の蓄積の違いは、特異的なEGFR発現密度の違いと直接的に相関する。意外なことに、すべてのFcabは、選択的な、EGFR媒介性の細胞取り込みを受けた。興味深いことに、二価および一価の対照C-IgG-pHAbおよびC-Fab-pHAbが最も顕著な内在化を呈しており、これはセツキシマブによって対応されるエピトープがFcabによって対応されるものとは異なることから起こり得る。
[20] 夫々のFcab-薬物抱合体について治療的な閾値(IC
50)を測定するために、Fcabを細胞傷害性のペイロードへ抱合させおよびそれらの細胞死滅活性について試験した。
【0219】
例3: Fcab-薬物抱合体の生成
Fcab-1、Fcab-2、Fcab-3およびhuFcを、トリプルグリシンハンドル(1)を保有するVal-Cit-PAB-MMAEを用いてQ295を標的化する改変されたトランスグルタミナーゼ(mTG)
[27]によって抱合させ(
図5)(表1)、および分取サイズ排除クロマトグラフィーによって精製した(
図17)。C-FabおよびC-IgGを、SrtA
[28,29]によって1に抱合させ、DAR 0.8~1.1の範囲であるDARに到達させた。精製された抱合体の分析的SE-HPLCは、高分子量の種の不在を示した(
図18A)(表1)。驚くべきことに、逆相クロマトグラフィー(RP-HPLC)(
図18B)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HI-HPLC)(表4)およびLC-MS(
図19)を介した分析は、3つすべてのFcabが、2.7~2.9の間の、上昇したDARを示したことを明らかにした。これはhuFc(DAR 2.0)については観察されておらず、これは、基質1がFcabスキャフォールド内の追加の残基にのみカップリングされていたということを示す(表1)。
【0220】
追加の抱合部位を、続いてLC-MSペプチドマッピングを介して、定常C
H2およびC
H3領域内のQ311およびQ438であると同定することができた(
図5A)(
図6)。消化されたFcab-1-MMAE混合物中におけるQ295を含有する抱合されていないペプチドに割り当てられたピークの消失は、Fcabが、位置Q295ではほぼ完全に抱合されており、一方で位置Q311およびQ438では部分的にしか抱合されていなかったことを示した。先のHER2 Fcab内またはネイティブなIgG内の同じ定常領域へのmTG抱合がQ311またはQ438抱合へ繋がらなかったことから
[14]、mTGへのアクセス可能性は、十中八九、隣接する領域における構造上の変化によって推進されていた可能性がある。変化は、C
H3領域へのEGFRパラトープの挿入またはEGFR Fcabのヒンジ領域の欠落のいずれかによって誘導されることができる。Q311およびQ438の両方が、Fcabの外側に露出した溶媒内にある。Q311は、FcRnの近くに位置し、およびQ438は、EGFR結合部位の近くに位置する。その結果として、Q311およびQ438での抱合は、理論上、血清プロテアーゼのアクセス可能性に影響し、および、FcRnおよびEGFR結合と干渉した可能性がある。この説を査定するために、Fcab-1-MMAE、Fcab-2-MMAEおよびFcab-3-MMAEを、続いて、FcRnおよびEGFR結合および血清安定性について試験した。
【0221】
表1. 抱合されたFcabおよび対照の概観。サイズは、LC-MSによって測定したものとしての最も豊富なグリコシル化パターンを包含する、抱合されていないタンパク質を指す。DARは、RP-HPLCおよびLC-MS分析からの平均として与えられる。SE-HPLC純度は、最終的な薬物抱合体を参照するものであり、および、凍結解凍サイクル後に分析された。
【表1-6】
【0222】
例4: Fcab-薬物抱合体の受容体結合特性
Fcab-MMAE抱合体を、対照および非抱合の親分子と一緒に、標的受容体EGFRおよび半減期延長性FcRnへのそれらの結合親和性について分析した(表2)(
図20~22)。バイオレイヤー干渉(BLI)測定は、EGFRおよびFcRnの解離定数(K
D)が抱合によっては損なわれなかったということを明らかにしており、位置Q438、Q311およびQ295での付着したペイロードは両方の受容体の結合機能性に影響を及ぼさないということを示唆する。
【0223】
表2. Fcab-薬物抱合体および対照の結合親和性および血清安定性。解離定数(K
D)は、BLIによって測定した。組換え生産されたEGFRおよびFcRnへの結合を、夫々pH7.4およびpH6.0で測定した。誤差は、Forte´Bioデータ分析ソフトウェア9.1を使用したフィッティングからの標準誤差である。遊離MMAEは、96hの間の37℃でのマウスおよびヒト血清中におけるインキュベーション後、LC MS/MSを介して測定した(n=3)。数は、当初抱合されていたMMAEに対して相対的な、放出された画分を示す。n.d.-決定されていない
【表2】
【0224】
例5: Fcab-薬物抱合体の血清安定性
数件の研究は、タンパク質を細胞傷害性の薬物に接続するリンカーの早期切断によって抱合体の薬物動態が強く影響される可能性があるということを示している。[30-32] Val-Citリンカーモチーフは、マウス血清中に存在するがヒト血清中には存在しないカルボキシルエステラーゼ(mCes1c)によって特に切断されやすい。[33] この不安定性がどこまでなのかは、選んだ抱合部位に大きく依存する。Fcab-MMAE抱合体をマウス血清中およびヒト血清中で96hの間インキュベートしたとき、すべての構築物について、遊離MMAEを検出することができなかった。これは、Val-Citリンカーモチーフが、位置Q295でも新規の位置Q311およびQ438でもmCes1cにとってアクセス可能でなく、ゆえにすべての位置が、抱合体を早期に切断されることから保護するということを示す(表2)。
【0225】
例6: Fcab-薬物抱合体のin vitro細胞傷害性
次に、我々は、in vitro細胞増殖アッセイにおいてFcab-薬物抱合体の選択的な細胞死滅能力を評価した(
図7)。すべてのFcab-薬物抱合体は、同様のナノモル以下での阻害活性をEGFR陽性のMDA-MB-468およびA431細胞に対して示しており(夫々、IC
50 0.18~0.22nMおよび0.23~0.32nM)、一方でEGFR陰性のMCF-7の細胞に対する毒性は数桁減少しており(IC
50>100nM)、強い標的依存的な細胞死滅が示される。非標的化huFc-MMAEも同様に低い毒性を示しており(MDA-MB-468: IC
50>300nM;A431およびMCF-7: IC
50>100nM)、Fcab-MMAE毒性が主に特定の受容体に媒介される取り込みによって推進されるということを確認した。
【0226】
A431細胞と比較したMDA-MB-468細胞へのより高い細胞取り込みを踏まえると(
図5)、Fcab-薬物抱合体およびセツキシマブ対照は、A431と比較してMDA-MB-468細胞へのより高い活性を示した(
図7B)。さらにまた、EGFR陽性細胞に対するFcab-薬物抱合体(IC
50 0.18~0.32nM)の、C-Fab-MMAE(IC
50 0.78~0.99nM)またはC-IgG-MMAE(IC
50 0.44~0.50nM)と比較してより高い力価は、Fcabの細胞内蓄積の低減が(
図5)、Q311およびQ438への追加の抱合によって可能になるより高いDAR(2.7~2.9 対 夫々0.8および1.1)によって補償され得ることを示唆する。概して、結果は、それらの一価の結合方式にもかかわらず、Fcab-薬物抱合体のin vitro力価は、ADCの典型的なナノモル以下の範囲にあるということを示す。
【0227】
例7: 細胞取り込みアッセイ
我々の細胞取り込み研究には、我々は、pH依存性のフルオロフォア(pHAb色素)ベースのアッセイを使用した。
[35] 我々は、ランダムなリシンカップリングを適用することによってpHAb色素で構築物を直接的に標識化し、および、構築物が酸性のエンドソームおよび/またはリソソームに到達したときに生成する経時的な蛍光増大を測定することによって、細胞に対するそれらの細胞内蓄積動態を取得した。重要なことには、ランダムにカップリングされたpHAb色素分子の蛍光は、pHAb色素の局所的な分子環境(
図13C)によって変化させられる可能性があり、これはおそらく、カップリングされたpHAb色素分子の数と構築物の個々の蛍光との間に非線形の関係を結果としてもたらす。
[35-37]
【0228】
これを検討するために、我々は、Wang et al.と同様の方法を開発し、SE-HPLCデータから蛍光および吸収ベースのpHAb色素標識化の程度(DOL
FおよびDOL
A)を導出した。
[38] SE-HPLC法は、DOL
FおよびDOL
Aならびに標識付き構築物の凝集および精製(遊離pHAb色素)状態を同時に分析できるという利点を有する。各pHAb色素標識付き構築物のDOL
F値は、次いで、細胞内蓄積動態の蛍光値を正規化するために使用することができる。以下において、方法の詳細な記載が与えられている。
図13Dは、方法を短くまとめている。
【0229】
SE-HPLC分析
ダイオードアレイ(DAD)および蛍光(FLD)検出器モジュールとTSKgel SuperSW3000またはSuperSW2000カラムのいずれかとを備えたAgilent Technologiesからの1260 Infinityデバイス上で、SE-HPLCを行った。移動相は、50mMリン酸ナトリウム、400mM過塩素酸ナトリウム、pH6.3からなり、およびその流速は0.35mL/minに設定した。DADは、280nm(芳香族アミノ酸)および535nm(pHAb色素)での吸収を検出するように設定した。pHAb色素の蛍光を記録するためにFLDの励起および放射波長は535nmおよび566nmに設定した(
図13B)。
【0230】
遊離pHAb色素、pHAb色素抱合タンパク質および対応する抱合されていないタンパク質を、次いでSE-HPLCによって分析した。
図14は、抱合されていないタンパク質、遊離pHAb色素およびpHAb色素抱合タンパク質についてのその結果得られたクロマトグラムを例示的に描く。次のステップにおいて、モル吸光または蛍光係数をこれらのデータから導出した。
【0231】
SE-HPLCピーク面積から抱合されていないタンパク質および遊離pHAb色素のモル吸光/蛍光係数(MEC/MFC)を算出する
抱合されていないタンパク質および遊離pHAb色素のMEC/MFCを、SE-HPLCピーク面積から算出した。例示のクロマトグラムは、 C(抱合されていないタンパク質)および
図14D~F(遊離pHAb色素)において見出される。関係のあるピークを、AgilentによるChemStation分析ソフトウェアを使用して積分した。対応するピーク面積から、抱合されていないタンパク質のMEC
280nmおよび遊離pHAb色素のMEC
535nm/MFC
566nmは、Wang et al.
[5]から導出された以下の方程式を適用して決定することができる。
【数1】
式中、ε
iは、波長λ
iでのMECまたはMFCであり、Arは、算出されたピーク面積であり、Fは、SE-HPLCの流速であり、lは、フローセルのパス長さであり、cは、注入された試料の濃度であり、およびυ
injは、注入された試料体積である。表3は、抱合されていないタンパク質および遊離pHAb色素のその結果得られるMECおよびMFCをまとめている。
【0232】
表3. 種々異なる波長でのモル吸光/蛍光係数。MECおよびMFCは、平均値±SDとして与えられている。種々異なる体積の、抱合されていないタンパク質または遊離pHAb色素溶液を、3回の連続したSE-HPLCのランにて注入し、およびその結果得られたピーク面積を使用したことでMECまたはMFCを方程式(1)から計算した。例えば、v
inj=7.5μLのc=18.3μM Fcabを注入したとき、1825のピーク面積Ar
280nmを伴う単一ピークが、9.3minで溶離した(
図14C)。一定のSE-HPLC流速 F=5.8μL/sで、77122(mM・cm)
-1のMEC
280nmが算出された。
【表3】
【0233】
pHAb色素抱合タンパク質のSE-HPLCピーク面積およびMEC/MFCからDOL
F
およびDOL
A
を算出する
pHAb色素標識付き構築物からのDOL
F値を算出するために、抱合された蛍光pHAb色素(n
pHAb,566nm)およびタンパク質(n
タンパク質,280nm)のモル量を最初に算出した。したがって、pHAb色素標識付き構築物をSE-HPLCによって分析し、および、抱合されたpHAb色素の吸収および蛍光ピーク面積(
図14G~Hの赤色でマークされたピーク)、ならびに280nmでの吸収からのピーク面積(
図14I)を算出した。280nmでの吸収は、タンパク質構造のみならず抱合されたpHAb色素もまた原因で引き起こされる(
図14F)。
【0234】
このピークから注入されたタンパク質の量を算出するために、pHAb色素によって寄与されたピーク面積は差し引かれなければならない。280nmでのpHAb色素吸収の一部は、その535nmでのピーク面積(Ar
535nm)に由来するものであり得、および、方程式(2)に示されるとおり280nmでの総ピーク面積(Ar
280nm)から差し引かれる
【数2】
【0235】
続いて、注入されたタンパク質の量を、補正済みのピーク面積(Ar
280nm,補正済み)から、方程式(3)によって算出することができる
【数3】
同様に、抱合された蛍光pHAb色素の量を、その566nm(Ar
566nm)での蛍光シグナルのピーク面積から算出することができる:
【数4】
抱合された蛍光pHAb色素分子およびタンパク質の量の間の比率は、構築物の個々の蛍光についてのDOL
F値を定義する:
【数5】
【0236】
類似して、タンパク質あたりの抱合されたpHAb色素分子の絶対量(DOL
A)を、方程式(6)および(7)を適用して535nmでのpHAb色素吸収のピーク面積から算出することができる。
【数6】
関係のあるpHAb色素抱合体のSE-HPLCクロマトグラムならびにDOL
FおよびDOL
A値は、 に示される。我々の期待を踏まえると、タンパク質あたりの蛍光pHAb色素分子の数(DOL
F)は、抱合されたpHAb色素分子の絶対数(DOL
A)と比較して低い。蛍光は細胞取り込みアッセイのリードアウトを表すことから、蛍光値は、pHAb色素標識付き構築物の個々の蛍光を考慮して、それらのDOL
F値に対して正規化させることができる。その結果として、DOL
Fおよび細胞数で正規化された細胞内蓄積率は、比較を可能にさせる。
【0237】
例8: 材料および方法
抗体フラグメントの調製
Fcabのアミノ酸配列は、文献から取った。[20] 修飾されたFcab(D265A)の配列は、修飾されたhuFc(D265A)およびセツキシマブの配列(SrtAタグ)と一緒に、SIにおいて与えられている。コード配列をコドン最適化されたバージョンでオーダーし、および、哺乳動物発現のためのpTT5ベクター(GeneArt、Thermo Fisher Scientific)にクローニングした。FcabおよびhuFc対照を、製造業者の取扱説明に従いExpi293F(商標)細胞の一過的なトランスフェクションによって発現させ、および、上清を、トランスフェクションの5日後に収集した。C-Fabは、精製のためのHis6タグを含有しており、および、AEKTA Pureデバイス(GE Healthcare)を使用した固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(1mL HisTrap(商標) HP、GE Healthcare)による精製の前にリン酸緩衝生理食塩水(PBS) pH7.4に対して透析した。
【0238】
Fcab、huFcおよびC IgGは、HiTrap(商標) Mab Select SuRe 5mLカラム(GE Healthcare)を使用してプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、および続いてHiPrep(商標) 26/10脱塩カラムを使用してPBS pH6.8中で製剤化した。抗体純度を、TSKgel(登録商標) SuperSW3000カラム(Tosoh Bioscience)を使用した分析SE-HPLCによっておよびSDSゲル電気泳動によって分析した。タンパク質の同一性は、Exion LCおよびTripleTOF(登録商標) 6600+質量分析計(AB Sciex)を使用したLC-MSによるインタクト質量分析を介して確認した。タンパク質を、Ultra遠心式フィルターユニット(3K MWCO、Amicon(登録商標))を使用して濃縮し、滅菌濾過し、およびタンパク質濃度をUV-VIS分光法によって280nmで決定した。タンパク質は、液体窒素中で瞬間冷凍し、および-80℃で保管した。
【0239】
MMAE抱合体の調製:
FcabおよびhuFcを、薬物-リンカーGly3-Val-Cit-PAB-MMAE(1、Levena)へ、遺伝的に改変されたmTGを使用して抱合させた。[27] mTGに媒介される抗体抱合を、10%までのDMSOを伴うPBS pH6.8中の、5mg/mLのFcab/huFc、20モル当量の薬物-リンカー、および60U/mLのmTGを使用して行った。反応混合物を18hの間37℃にて緩やかな振盪しながらインキュベートし、10℃まで冷却し、および分取サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって精製した。
SrtA抱合のために、C IgGまたはC Fab(5mg/mL)を、150mM NaCl、50mM トリス-HCl、5mM CaCl2 pH7.5中で製剤化した。SrtA認識モチーフあたり10当量のGly3 Val-Cit-PAB-MMAE(1)とともに、SrtA[29]を13μMの最終濃度まで加えた。反応混合物を25℃にて90minの間インキュベートし、EDTA(最終10mM)を加えることによって反応を停止させ、および分取SECによって精製した。
【0240】
ランニングバッファーとしてPBS pH6.8を用いて1260液体クロマトグラフィーシステム(Agilent Technologies)またはAEKTA Avantデバイス(GE Healthcare)においてSuperdex(商標) 200 Increase 10/300 GL、Superdex(商標) 75 10/30 GLまたはSuperdex(商標) 200 prep grade 16/60カラムのいずれかを使用して分取SECを行った。精製された抱合体を、Ultra遠心式フィルターユニット(10K MWCO、Amicon(登録商標))を使用して濃縮し、滅菌濾過し、およびタンパク質濃度をUV-VIS分光法によって280nmで決定した。精製された抱合体を、別の場所に記載されているとおり[27]、SE-HPLCおよびDAR決定(RP HPLC、LC-MS)による分析に供し、液体窒素中で瞬間冷凍し、および-80℃で保管した。
【0241】
pHAb色素抱合体の調製
Fcabs、huFcおよびセツキシマブ対照を、10mM ナトリウム-重炭酸緩衝液 pH8.5中で製剤化した。pHAbアミン反応性色素(10mg/mL 1:1 (v/v) DMSO/H2O、Promega)を、2:1のモル比(pHAb:抗体)(Fcab 1、Fcab 2、Fcab 3、C IgG、C Fab)または10:1のモル比(huFc)のいずれかで加え、光の不在下で25℃、450rpmにて1hの間のインキュベーションがこれに続いた。製造業者の取扱説明に従い、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)で平衡化されたZeba(商標) Spin脱塩カラム(Thermo Fisher Scientific)によって、過剰な色素を除去した。pHAb色素抱合体の凝集および蛍光の標識化の程度(DOLF)を、SIにおいて記載されているSE-HPLC法によって決定した。
【0242】
ペプチドマッピング: Fcab-1およびFcab-1-MMAEを、取扱説明マニュアルに従ってGlycINATOR(Genovis)を用いて脱グリコシル化した。脱グリコシル化された分子を、次いで、56℃にて30minの間10mM DTTで還元し、および、暗中において室温にて30minの間55mMヨードアセトアミドでアルキル化した。10μgのタンパク質を、終夜37℃にて、0.5μgのトリプシン(質量分析グレード、Promega)で消化した。
【0243】
LC-MS分析は、TripleTOF 6600+質量分析計(Sciex)にカップリングされたExion HPLCを使用して行った。7.5μgのペプチド溶液を、Aeris PEPTIDE XB-C18カラム(Phenomenex、パート番号00F-4506-AN)上へとロードし、および、5%~50%バッファーB(アセトニトリル、0.1% ギ酸;バッファーA: 水、0.1% ギ酸)の直線勾配で49min以内で溶離させた。データは、正極性で、かつ350~2500m/zのTOF-MS質量範囲、および50~2500m/zのTOF-MS/MS質量範囲において取得した。他の機器設定は以下のとおりであった:イオンスプレー電圧 5.5kV、ソース温度 450℃、蓄積時間 TOF-MSに0.25sおよびTOF-MS/MSに0.08s、ガス1 45psi、ガス2 45psi、カーテンガス 35psi、デクラスタリング電位 80V、およびコリジョンエネルギーは動的へ設定した。データは、Genedata Expressionistで処理した。
【0244】
細胞培養:
ヒトがん細胞株をAmerican Type Culture Collectionから取得し(EGFR陽性: MDA MB 468、A431;EGFR陰性: MCF 7)、および標準的な培養条件(37℃、5% CO2、95% 湿度)に従って維持した。10%ウシ胎仔血清(FBS)、2mM L-グルタミンおよび1mMピルビン酸ナトリウムが添加されたDMEM高グルコース培地中で、A431およびMCF 7細胞を培養した。10% FBS、2mM L-グルタミンおよび1mMピルビン酸ナトリウムが添加されたRoswell Park Memorial Institute (RPMI) 1640培地中で、MDA-MBA-468細胞を培養した。継代培養のために、接着した成長済みの細胞を、0.05%トリプシン-EDTAを加えることによって剥離させ、新鮮な培地で希釈し、および新しい培養フラスコ内へと移した。
【0245】
細胞取り込み:
細胞を、5minの間500×gにて遠心分離し、上清を捨て、および細胞をフェノールレッドなしで夫々の培地中に300,000vc/mLで再懸濁させた。細胞懸濁液(40μL/ウェル)を、黒色384透明底プレート内へと播種し、これに続き湿ったチャンバー内で終夜インキュベーションを行った(37℃、5% CO2)。pHAb色素標識付きタンパク質に0.3% Tween-20(最終)を添加し、3μMへ希釈し、およびD300eデジタルディスペンサー(Tecan)を使用してトリプリケートで細胞へ加えた(最終100nM)。細胞を、即時に、DAPIおよびRFPフィルターキューブおよびBioSpa 8自動化インキュベーター(BioTek)を備えたCytation 5細胞イメージングリーダー(BioTek)へ移した。明視野(対物: 10x、LED強度: 10、積分時間: 13ミリ秒、カメラゲイン: 24)およびRFPチャネル画像(ex.: 531nm、em.: 593nm、LED強度: 10、積分時間: 50ミリ秒、カメラゲイン: 24)は、26hの期間にわたって2h毎に撮った。
【0246】
26h測定の約30min前、プレートをBioSpa 8デバイスから取り外し、および1μg/mL Hoechst 33342(ThermoFisher Scientific)を、Tecan D300eデジタルディスペンサーを介して追加の26hエンドポイントDAPI画像のために加えた。画像を、BioTek gen5データ分析ソフトウェアによって処理した。各画像の積分されたpHAb色素蛍光強度の和を、DAPIチャネルにおいて決定された細胞の数に対して正規化し、および0hでの積分されたRFPシグナル(バックグラウンドシグナル)の和によって減算した。細胞数およびバックグラウンドで正規化された強度を、各構築物のpHAb色素DOLFによって除算し、および時間に対してプロットした。正規化されたデータをGraphPad Prism(GraphPad Software, Inc.)における線形回帰によってフィットさせ、および細胞内蓄積率(勾配)を導出した。最終的に、最も高い細胞内蓄積率(ここでは、MDA MB 468に対してのC IgG-pHAbを100%に設定した)に対する相対的細胞内蓄積を各構築物について算出した。
【0247】
FcRnおよびEGFR結合
Fcab、セツキシマブバリアントおよびそれらの夫々のMMAE抱合体の速度論的パラメーターを、30℃および1,000rpmの攪拌スピードにてOctet(登録商標) RED96システム(Forte´Bio、Pall)を使用したBLIによって決定した。
EGFR結合分析のために、Fcabバリアント(DPBS中の10μg/mL)、C IgG(DPBS中の2.5μg/mL)および夫々のMMAE抱合体を、抗ヒトIgG Fc捕捉バイオセンサー(AHC)上に60~180sの間ロードした。C Fab(DPBS中の2.5μg/mL)を、抗ヒトFab CH1第2世代バイオセンサー(FAB2G)上に180sの間ロードした。バイオセンサーを、次いでキネティクスバッファー(DPBS pH7.4、0.02% Tween 20および0.1%ウシ血清アルブミン)中へと移しおよび60sの間インキュベートし、EGFR-His6(自社で生産された)への会合ステップがこれに続いた。EGFR-His6は、20nM~0.313nMで変化させた濃度範囲においてキネティクスバッファー中に段階希釈した。
【0248】
会合を180s、240sまたは300sの間モニタリングし、konおよびkoff値を決定するためのキネティクスバッファー中での600sの間の解離ステップがこれに続いた。EGFR-His6を、陰性対照および参照としての役割があるキネティクスバッファーによって置き換えた。夫々の非結合huFcを、各実験における陰性対照として使用した。データをフィッティングするために抗体測定値から緩衝剤の参照測定値(対照曲線)を差し引き、および、動態パラメーターを、Savitzky-Golay濾過の後で1:1包括的フルフィット結合モデルを適用してForte´Bioデータ分析ソフトウェア12.0を使用して決定した。FcRn結合アッセイを、別の場所に記載されているとおり行った。[14]
【0249】
血清安定性
血清安定性アッセイを、少しの改変を適用してこれまでに記載されたとおりに実施した[27]:MMAE抱合体を、ヒトおよびマウス血清中における5μMの最終濃度の抱合されたMMAE(各構築物のDARを考慮)でインキュベートした。その上、血清試料に、5μMの重水素化されたD8-MMAE内部標準を96hの血清インキュベーションに先立って添加した。
【0250】
細胞増殖アッセイ
C IgG-、C Fab-およびFcab-MMAE抱合体ならびに関連する化合物の評価のために、40μLの生存細胞懸濁液を不透明384ウェルプレート内へと播種し(MDA-MB-468: 2500細胞/ウェル、A431: 9000細胞/ウェル、MCF 7: 5000細胞/ウェル)、これに続き湿ったチャンバー内で終夜インキュベーションを行った(37℃、5% CO2)。D300eデジタルディスペンサー(Tecan)を使用して、試験化合物を加えた。遊離MMAEおよびタンパク質/タンパク質抱合体溶液に0.3% Tween-20(最終)を添加し、および6μM(MMAE)または10μM(タンパク質)へ希釈した。すべてのウェルを、加えたTween-20の最大量に対して正規化させた。製造業者の取扱説明に従ってCell Titer Glo試薬(Promega)を使用して4d後に細胞生存率を決定した。発光値を、処置されていない細胞の発光に対して正規化し、および、IC50値を導出するために、用量-応答を、GraphPad Prism(GraphPad Software, Inc.)の非対称(5パラメーター)フィッティング機能を使用してフィットさせた。
【0251】
例9: 注射バイアル
3lの再蒸留水中の100gの本発明の抱合体および5gのリン酸水素二ナトリウムの溶液を、2N塩酸を使用してpH6.5へ調整し、滅菌条件下で濾過し、注射バイアル内へと移し、滅菌条件下で凍結乾燥し、および滅菌条件下でシールした。各注射バイアルは、5mgの本発明の抱合体を含有する。
【0252】
例10: 溶液
溶液は、940mlの再蒸留水中の1gの本発明の抱合体、9.38gのNaH2PO4 2H2O、28.48gのNa2HPO4 12H2Oおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから調製される。pHは6.8へ調整され、および溶液は、1lになるように作製され、および照射によって滅菌される。
【0253】
例11: アンプル
60lの再蒸留水中の1kgの本発明の抱合体の溶液を、滅菌条件下で濾過し、アンプル内へと移し、滅菌条件下で凍結乾燥し、および滅菌条件下でシールした。各アンプルは、10mgの本発明の抱合体を含有する。
【0254】
例12: 発現したタンパク質のアミノ酸配列
【化1】
配列番号1 - Fcab-1(修飾されたFS1-60
[1]):
【化2】
配列番号2 - Fcab-2(修飾されたFS1-65
[1]):
【化3】
配列番号3 - Fcab-3(修飾されたFS1-67
[1]):
【化4】
【0255】
配列番号4 - Fcab-4(FS1-60[1]): APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELDEGGPVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESTYGPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVSHWRWYSGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号5 - Fcab-5(FS1-65[1]):
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELDEGGPVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESTYGPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVSYWRWVKGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
配列番号6 - Fcab-6(FS1-67[1]):
APELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDETDDGPVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESTYGPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVSYWRWYKGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0256】
配列番号7 - huFc(修飾されたヒトIgG1 Fcフラグメント):
【化5】
【0257】
C-IgG(抱合のためのLC C末端(G
4S)
3-LPETGSソルターゼA認識タグで修飾されたセツキシマブ):
配列番号8 - 軽鎖
【化6】
配列番号9 - 重鎖
QVQLKQSGPGLVQPSQSLSITCTVSGFSLTNYGVHWVRQSPGKGLEWLGVIWSGGNTDYNTPFTSRLSINKDNSKSQVFFKMNSLQSNDTAIYYCARALTYYDYEFAYWGQGTLVTVSAASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKRVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0258】
C-Fab(抱合のためのLC C末端(G
4S)
3-LPETGSソルターゼA認識タグおよび精製のためのHC C末端G
4S-His
6タグで修飾されたセツキシマブFabフラグメント):
配列番号10 - 軽鎖
【化7】
配列番号11 - 重鎖
【化8】
【0259】
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【配列表】
【国際調査報告】