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特表2024-521858洗浄剤組成物、その製造方法およびその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-04
(54)【発明の名称】洗浄剤組成物、その製造方法およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/50 20060101AFI20240528BHJP
   C11D 17/04 20060101ALI20240528BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20240528BHJP
【FI】
C11D7/50
C11D17/04
B08B3/02 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573418
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 CN2021096912
(87)【国際公開番号】W WO2022246828
(87)【国際公開日】2022-12-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(71)【出願人】
【識別番号】523447683
【氏名又は名称】グアンドン・インドゥ・ドスン・ファイン・ケミカル・インダストリー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Yingde Dosoon Fine Chemical Industry Co., Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【弁理士】
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】リウ,グオグアン
(72)【発明者】
【氏名】チュウ,ホンユー
(72)【発明者】
【氏名】シュイ,ボォ
(72)【発明者】
【氏名】パン,シャオホイ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ゼンファン
【テーマコード(参考)】
3B201
4H003
【Fターム(参考)】
3B201AA46
3B201AB52
3B201BB22
3B201BB88
3B201BB94
3B201BB95
4H003AA03
4H003BA20
4H003DA11
4H003DA12
4H003DA14
4H003DA20
4H003EB04
4H003EB06
4H003ED03
4H003ED04
4H003ED28
4H003ED29
4H003ED32
4H003FA01
4H003FA04
4H003FA45
(57)【要約】
a)25~35重量部の、イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンからなる群から選択される溶媒、b)18~30重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒、c)5~15重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカン、d)5~15重量部のエタノール、e)1~15重量部のイソプロパノール、f)1~10重量部のアセトン、および、g)0.01~0.2重量部の、HLB値が12~13であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、を含む液体洗浄剤混合物、並びに、ガス推進剤を含む、エアゾールスプレー缶に収容された洗浄剤組成物が提供される。また、前記洗浄組成物の製造方法およびその使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾールスプレー缶に収容された洗浄剤組成物であって、
‐a)25~35重量部の、イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンからなる群から選択される溶媒、
b)18~30重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒、
c)5~15重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカン、
d)5~15重量部のエタノール、
e)1~15重量部のイソプロパノール、
f)1~10重量部のアセトン、および
g)0.01~0.2重量部の、HLB値が12~13であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、
を含む液体洗浄剤混合物、並びに、
‐ガス推進剤、
を含む、洗浄剤組成物。
【請求項2】
イソトリデカノールポリオキシエチレンエーテルのHLB値は12である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
‐a)28~32重量部のイソヘキサン、
b)18~22重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒、
c)5~10重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカン、
d)8~10重量部のエタノール、
e)4~6重量部のイソプロパノール、
f)4~6重量部のアセトン、および
g)0.1~0.2重量部の、HLB値が12~13である、好ましくはHLB値が12であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、
を含む液体洗浄剤混合物、並びに、
‐ガス推進剤
を含む、請求項1または2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
ガス推進剤が、二酸化炭素、プロパンおよびブタンからなる群から選択されるガスを含む、請求項1~3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
ガス推進剤が、
h)1~5重量部の二酸化炭素、および
i)10~30重量部の、約1~4:9~6の体積比の、好ましくは約3:7の体積比のプロパンとブタンとの混合物、
を含む、請求項4に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の洗浄剤組成物の製造方法であって、
成分a)~g)を混合して液体洗浄剤混合物を得ること、
液体洗浄剤混合物をエアゾールスプレー缶にパッケージングし、前記缶を密封すること、および、
密封した缶にガス推進剤を充填すること
を含む方法。
【請求項7】
エアゾールスプレー缶にパッケージングする前に、液体洗浄剤混合物を濾過すること、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
車両または機械の部品の洗浄における請求項1~5のいずれかに記載の洗浄剤組成物の使用であって、車両が好ましくは自動車であり、部品が好ましくはブレーキディスクである、使用。
【請求項9】
部品がゴム、またはプラスチック、例えばポリプロピレンおよび/またはポリカーボネート製である、請求項8に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エアゾールスプレー缶に収容される洗浄剤組成物、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両(例えば、自動車)の修理、機械の洗浄およびメンテナンスの分野において、種々の洗浄剤調製物が知られている。しかしながら、堆積した油性の汚れを除去することは困難であり、また、様々な部品の表面は複雑で接近しにくいため、市販の洗浄剤調製物は、良好な洗浄能力と健康/環境への懸念とのバランスを常に満足できるとは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、洗浄能力と健康/環境への懸念とのバランスに優れる洗浄剤組成物を提供することである。驚くべきことに、本発明の洗浄剤組成物は、強力な洗浄能力、適切な乾燥速度を有し、低毒性および低臭気であり、最終顧客の使用に便利である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、本発明は、エアゾールスプレー缶に収容された洗浄剤組成物であって、
‐a)25~35重量部の、イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンからなる群から選択される溶媒、
b)18~30重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒、
c)5~15重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカン、
d)5~15重量部のエタノール、
e)1~15重量部のイソプロパノール、
f)1~10重量部のアセトン、および
g)0.01~0.2重量部の、HLB値が12~13であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、
を含む液体洗浄剤混合物、並びに、
‐ガス推進剤、
を含む、洗浄組成物に関する。
【0005】
別の態様において、本発明は、
成分a)~g)を混合して液体洗浄剤混合物を得ること、
液体洗浄剤混合物をエアゾールスプレー缶にパッケージングし、前記缶を密封すること、および、
密封した缶にガス推進剤を充填すること
を含む、本発明の洗浄剤組成物の製造方法に関する。
【0006】
さらに別の態様において、本発明は、車両または機械の部品の洗浄における本発明の洗浄剤組成物の使用であって、車両が好ましくは自動車であり、部品が好ましくはブレーキディスクである使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の章において、本発明をより詳細に説明する。そこで説明される各態様は、それに反することが明示されない限り、他の(複数の)態様と組み合わせることができる。特に、好ましいまたは有利であると示された特徴は、好ましいまたは有利であると示された他の(複数の)特徴と組み合わせることができる。
【0008】
本発明に関して用いられる用語は、文脈において別途明示されない限り、以下の定義に従って解釈される。
【0009】
本明細書で使用される時、単数形「a」、「an」と「the」は、文脈において明示されない限り、単数および複数の両方の参照語を含む。
【0010】
本明細書で使用される「含む」(comprising、comprises)および「含まれる」(comprised of)という用語は、「含む」(including、includes、containingまたはcontains)と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、引用されていない部材、要素、または方法工程を排除しない。
【0011】
数値の終点の記載は、それぞれの範囲内に包含されるすべての数値および分数、並びに記載された終点を含む。
【0012】
文脈上、各数値は、参照される数値の±10%の導出を有することができる。例えば、数値「5」は、5±0.5、すなわち4.5~5.5の数値範囲を表す。
【0013】
本明細書で引用したすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0014】
「クローズドカップ引火点」は、ASTM D56に従って測定される。
【0015】
「蒸留範囲」は、ASTM D86に従って測定される。
【0016】
すべての操作、工程および方法は、文脈上明示されるか、または明らかに矛盾する場合を除き、室温および大気圧下で実施される。
【0017】
別段の定義がない限り、技術用語および科学用語を含め、本発明の開示において使用される全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の技術者によって一般的に理解される意味を有する。さらなる指針として、本発明の教示をよりよく理解するための用語の定義が含まれる。
【0018】
<洗浄剤組成物>
一態様において、本発明は、エアゾールスプレー缶に収容された洗浄剤組成物であって、
‐a)25~35重量部の、イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンからなる群から選択される溶媒、
b)18~30重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒、
c)5~15重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカン、
d)5~15重量部のエタノール、
e)1~15重量部のイソプロパノール、
f)1~10重量部のアセトン、および
g)0.01~0.2重量部の、HLB値が12~13であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、
を含む液体洗浄剤混合物、並びに、
‐ガス推進剤、
を含む、洗浄組成物に関する。
【0019】
いくつかの例において、本発明の洗浄剤組成物は、
‐a)28~32重量部、好ましくは約30重量部のイソヘキサン、
b)18~22重量部、好ましくは約20重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒、例えばD20、
c)5~10重量部、好ましく10重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカン、例えばイソパラフィンG、
d)8~10重量部、好ましくは10重量部のエタノール、
e)4~6重量部、好ましくは5重量部のイソプロパノール、
f)4~6重量部、好ましくは5重量部のアセトン、および
g)0.1~0.2重量部、好ましくは0.1重量部の、HLB値が12~13である、好ましくはHLB値が12であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル、
を含む液体洗浄剤混合物、並びに、
‐ガス推進剤
を含む。
【0020】
本発明による液体洗浄剤混合物は、低毒性、低コスト、強力な分解性能、および適切な乾燥速度を含む利点を有する。エアゾールスプレー缶とガス推進剤との組み合わせは、最終顧客が洗浄剤組成物を使用するのに便利であり、汚れに適用される洗浄力を増加させ、残留洗浄剤組成物が容器の壁や底に滞留するのを防止する。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物は、90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の洗浄能力を有する。ここで洗浄能力は、汚損表面上の汚れの全質量に対する、洗浄剤組成物によって汚損表面から除去された汚れの質量の比を表す。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物は、3~4分、好ましくは3~3.5分の乾燥速度を有する。ここで乾燥速度は、洗浄剤組成物中の溶媒が室温および大気圧下で蒸発する時間を表す。3~4分、好ましくは3~3.5分の乾燥速度は、汚損物への十分な浸透と所望の洗浄効率を確保できるため有利である。
【0023】
<成分a)>
洗浄剤組成物は、25~35重量部、好ましくは28~32重量部の、イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンからなる群から選択される溶媒を含む。
【0024】
イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンは、非極性の油性汚れに対する良好な分解性能、高い揮発速度、および低い毒性を有する。好ましくは、成分a)はイソヘキサンであり、これは非常に高い洗浄能力を示し、コスト効率がよい。
【0025】
<成分b)>
洗浄剤組成物は、18~30重量部、好ましくは18~22重量部の、分子中に7~8個の炭素原子を有し、120~160℃の蒸留範囲および約20℃のクローズドカップ引火点を有する脱芳香族炭化水素溶媒を含む。
【0026】
脱芳香族炭化水素溶媒は脱芳香族化されているため、芳香族成分がほとんどなく、環境にやさしい。脱芳香族炭化水素溶媒は、通常、脱芳香族脂肪族アルカンの混合物であり、主にn-アルカンを含む。非極性油汚れに対する良好な浸透力と分解性能を有し、車両や機械の表面に付着した油汚れを効果的に除去することができる。成分a)の溶媒、成分c)の分岐脂肪族アルカン(イソパラフィン)、並びに成分d)のエタノールを含む石油系溶剤と混和性がある。
【0027】
脱芳香族炭化水素溶媒は、例えば、Industrial Chemical Technologies社から、EXXSOLの商品名でPure Chems社から、またはMobil社から市販されている。
【0028】
好ましくは、脱芳香族炭化水素溶媒はD20である。D20は、40重量部のC7アルカンと60重量部のC8アルカンとの混合物であり、120~160℃の蒸留範囲と、約20℃のクローズドカップ引火点を有する。
【0029】
<成分c)>
洗浄剤組成物は、5~15重量部、好ましくは5~10重量部の、10~11個の炭素原子を有し、161~173℃の蒸留範囲および約44℃のクローズドカップ引火点を有する分岐脂肪族アルカンを含む。
【0030】
分岐脂肪族アルカン(「イソパラフィン」としても知られる)は、表面張力が低く、凝集力が強いため、非極性の油汚れに対して良好な浸透力と分解性能を有し、車両や機械の表面に付着した油汚れを効果的に除去することができる。また、イソパラフィンはリサイクルが容易で、コスト効率に優れている。イソパラフィンは臭いが少なく、芳香族よりも生分解性が良好なため、人体や環境に無害である。
【0031】
イソパラフィンは、例えばPure Chems社からEXXSOLの商品名で、またはExxonMobil社から市販されている。
【0032】
好ましくは、イソパラフィンはイソパラフィンGである。イソパラフィンGは、C10分岐脂肪族アルカンとC11分岐脂肪族アルカンの混合物であり、蒸留範囲は161~173℃、クローズドカップ引火点は約44℃である。
【0033】
<成分d)>
洗浄剤組成物は、5~15重量部、好ましくは8~10重量部のエタノールを含む。
【0034】
エタノールは、種々の無機物質および有機物質(油性の汚れを含む)を溶解することができる。エタノールは、炭素堆積物、ガム、ほこり、鉄さび、水垢に対する良好な洗浄能力を有する。エタノールは、洗浄剤組成物と洗浄される機械部品との接触面積を増加させ、洗浄速度を向上させることができる。
【0035】
<成分e)>
洗浄剤組成物は、1~15重量部、好ましくは4~6重量部のイソプロパノールを含む。
【0036】
イソプロパノールは、親油性物質に対する強力な分解性能を有する。イソプロパノールは、炭素堆積物、ガム、ほこり、鉄さび、水垢に対する良好な洗浄能力を有する。また、イソプロパノールは、成分d)エタノールとの相溶性に優れる。
【0037】
<成分f)>
洗浄剤組成物は、1~10重量部、好ましくは4~6重量部のアセトンを含む。
【0038】
アセトンは、油性の汚れに対する良好な分解性能を有する。アセトンは、炭素堆積物、ガム、ほこり、鉄さび、および、水垢に対する良好な洗浄能力を有する。
【0039】
<成分g)>
洗浄剤組成物は、0.01~0.2重量部、好ましくは0.1~0.2重量部の、HLB値が12~13であるイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテルを含む。
【0040】
イソトリデカノールポリオキシエチレンエーテルは、イソトリデカノールとエチレンオキシドの重合により得られる。イソトリデカノールポリオキシエチレンエーテルは非イオン界面活性剤であり、良好な乳化性と洗浄性を有する。
【0041】
イソトリデカノールポリオキシエチレンエーテルは、例えばHaian Petrochem,Jiangsu Provinceから市販されている。
【0042】
本発明によれば、イソトリデカノールポリオキシエチレンは、12~13の、好ましくは12のHLB値を有する。HLB値が前記範囲内にあることで、イソトリデカノールポリオキシエチレンは、適切な可溶化および洗浄性を有し、均一な乳化性を有する。
【0043】
好ましくは、成分g)は、HLB値12を有するイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル1307およびHLB値13を有するイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル1308からなる群から選択され、より好ましくは、HLB値12を有するイソトリデカノールポリオキシエチレンエーテル1307である。
【0044】
<ガス推進剤>
本組成物は、ガス推進剤を含み、エアゾールスプレーとの組み合わせで、洗浄剤組成物を最終顧客が使用するのに便利にする。さらに、汚損物への十分な浸透と所望の洗浄効率を確保し、残留洗浄剤組成物が容器の壁や底に滞留するのを防止する。
【0045】
ガス推進剤については特に限定はなく、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、液体洗浄剤組成物用の推進剤として一般に知られているものを使用可能である。
【0046】
いくつかの例において、ガス推進剤は、二酸化炭素、プロパンおよびブタンからなる群から選択されるガスを含む。
【0047】
いくつかの例において、ガス推進剤は、
h)1~5重量部の二酸化炭素、および
i)10~30重量部の、約1~4:9~6の体積比の、好ましくは約3:7の体積比のプロパンとブタンとの混合物
を含む。成分h)と成分i)とを組み合わせることにより、ガス推進剤は非常に望ましい噴霧性と内圧を確保する。
【0048】
液体洗浄剤混合物とガス推進剤との質量比は、望ましい噴霧性および内圧を確保する限り、特に限定されない。いくつかの例では、液体洗浄剤混合物とガス推進剤との質量比は、約60~90:40~10であり、例えば70:30、75:35、80:20、85:15または90:10であってもよく、これにより非常に望ましい噴霧可能性および内圧が確保される。
【0049】
エアゾールスプレー缶の材質は、耐圧性および耐腐食性であれば特に限定されない。いくつかの例では、エアゾールスプレー缶は電解錫めっき鉄から作られる。
【0050】
<洗浄剤組成物の製造方法>
別の態様において、本発明は、
成分a)~g)を混合して液体洗浄剤混合物を得ること、
液体洗浄剤混合物をエアゾールスプレー缶にパッケージングし、前記缶を密封すること、および、
密封した缶にガス推進剤を充填すること
を含む、本発明の洗浄剤組成物を製造するための方法を提供する。
【0051】
任意に、本方法は、エアゾールスプレー缶にパッケージングする前に、例えばフィルタースクリーンを介して液体洗浄剤混合物を濾過することをさらに含む。
【0052】
液体洗浄剤混合物および/またはガス推進剤の成分を混合する方法または順序は特に限定されず、本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り、一般に知られている混合方法を利用可能である。
【0053】
<洗浄剤組成物の使用>
本発明による洗浄剤組成物は、車両または機械の部品を洗浄するために使用することができる。車両は好ましくは自動車であり、部品は好ましくはブレーキディスクである。
【0054】
いくつかの例において、部品はゴム、またはプラスチック、例えばポリプロピレンおよび/またはポリカーボネート製である。
【実施例
【0055】
<材料>
6#溶媒油:主成分として、n-ヘキサン、2,4-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルブタン、n-ペンタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサンと、少量の芳香族炭化水素との混合物を含む、Maoming petrochemical社から入手可能。
【0056】
120#溶媒油:工業用ヘプタンとしても知られる、n-ヘプタン、イソ-ヘプタンおよびシクロヘプタンを主成分として、少量の芳香族炭化水素、硫黄含有化合物および窒素含有化合物などの不純物を含む、Maoming petrochemical社から入手可能。
【0057】
D20:40重量部のC7アルカンと60重量部のC8アルカンとの混合物、蒸留範囲は120~160℃、クローズドカップ引火点は約20℃、Mobil社から入手可能。
【0058】
D30:45重量部のC8アルカンと55重量部のC9アルカンとの混合物、蒸留範囲は145~160℃、クローズドカップ引火点は約30℃、Mobil社から入手可能。
【0059】
D80:C18~C30のn-アルカンを主成分とする混合物、蒸留範囲は208~237℃、クローズドカップ引火点は約80℃、Mobil社から入手可能。
【0060】
イソパラフィンG:C10分岐脂肪族アルカンとC11分岐脂肪族アルカンの混合物、蒸留範囲は161~173℃、クローズドカップ引火点は約44℃、ExxonMobil社から入手可能。
【0061】
イソパラフィンC:C7分岐アルカンとC8分岐アルカンの混合物、沸点範囲は99~104℃、クローズドカップ引火点は0℃以下、ExxonMobil社から入手可能。
【0062】
イソパラフィンE:C8分岐アルカンとC9分岐アルカンの混合物、沸点範囲は113~139℃、クローズドカップ引火点は約7℃、ExxonMobil社から入手可能。
【0063】
イソパラフィンH:C11分岐脂肪族アルカンとC12分岐脂肪族アルカンの混合物、蒸留範囲は182~192℃、クローズドカップ引火点は54℃以下、ExxonMobil社から入手可能。
【0064】
イソパラフィンL:C11分岐脂肪族アルカンとC12分岐脂肪族アルカンの混合物、蒸留範囲は207~253℃、クローズドカップ引火点は64℃以下、ExxonMobil社から入手可能。
【0065】
E-1307:約12のHLB値を有するイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0066】
E-1308:約13のHLB値を有するイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0067】
E-1305:約10.5のHLB値を有するイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0068】
E-1306:HLB値が約11.2のイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0069】
E-1310:HLB値が約13.5のイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0070】
E-1312:HLB値が約14.5のイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0071】
E-1315:HLB値が14.5~18のイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0072】
E-1320:14.5~18のHLB値を有するイソトリデカノールポリオキシエチレン、Haian Petrochem,Jiangsu Province社から入手可能。
【0073】
<洗浄剤組成物の調製>
実施例(Ex.)および比較例(CEx.)の洗浄剤組成物は、以下の表に示す配合に従って調製した。以下の表に記載した各成分の量は、単位「重量部」で表した。
【0074】
成分a)~g)のそれぞれを反応器に添加し、800r/分の回転速度で15分間撹拌し、ベースストックを得た。このベースストックをフィルタースクリーン(300メッシュ)で濾過した。濾過したベースストックをエアゾールスプレー缶に充填した。エアゾール缶を密封した。二酸化炭素、プロパン/ブタン(体積比3:7)を、エアレーターで密閉されたエアゾールスプレー缶に充填した。エアゾールスプレー缶にプレスヘッドを組み付けて、最終的な洗浄剤組成物を得た。
【0075】
<調製した洗浄剤組成物の評価>
このようにして得られた各組成物について、洗浄性、乾燥速度、臭気について以下のように評価した。
【0076】
i)油汚れの調製
QB/T 2117-1995 General Water-based Metal Detergentsに従って、石油スルホン酸ナトリウム8%、ラノリンマグネシウム石鹸3.5%、ラノリン2%、工業用ワセリン30%、20#機械油34.5%、30#機械油12%、カルシウム石鹸グリース2%、アルミナ8%を秤量し(重量比)、120℃に加熱して均一に溶融混合し、室温まで冷却して油性汚れを調製した。
【0077】
ii)テストプレートの準備
鋼板(20mm×40mm)を無水アルコールで洗浄し、「M0」として秤量した。
【0078】
ステップi)で調製した1gの油性汚れを、鋼板の片面に均一にコーティングした。油性汚れがコーティングされた鋼板を「M1」として秤量した。
【0079】
iii)クリーニング
テストプレートを水平方向から60°の傾斜角度に置き、クランプで固定した。上記で調製した洗浄剤組成物をテストプレートに水平方向に数回スプレーし、油汚れの表面を覆った。噴霧器とテストプレートとの水平方向の噴霧距離は15cmであった。洗浄された油汚れが流れ落ちた後、洗浄後のテストプレートを乾燥させた。洗浄および乾燥後のテストプレートの重量を「M2」とした。
【0080】
乾燥時間(分)を乾燥速度とした。
【0081】
ステップiii)において、洗浄剤組成物の臭いをオペレーターの嗅覚で評価し、軽い、中程度軽い、中程度、中程度強い、強いという異なるレベルで記録した。
【0082】
洗浄能力は、汚損表面(すなわち、洗浄される表面)上の汚れの総質量に対する、洗浄剤組成物によって汚損表面から除去された汚れの質量の比を表す。
【0083】
洗浄能力は、以下の式に従って計算することができる:
X1=[(M1-M2)/(M1-M0)]×100%
X1:洗浄能力、%、
M0:鋼板の質量、g、
M1:洗浄前の汚れた鋼板の質量、g
M2:洗浄および乾燥後の汚れた鋼板の質量、g
【0084】
【表1】
【0085】
表1からわかるように、成分a)が6#溶媒油、120#溶媒油、イソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンからなる群から選択された場合、強い洗浄力(90%以上)、適切な乾燥速度(3~3.5分)が達成され、臭気は許容できる程度に軽いまたは中程度軽かった。しかしながら、比較例1で使用した6#溶媒油と比較例2で使用した120#溶媒油は芳香族炭化水素を含んでおり、毒性があった。これに対して、実施例3~5のイソヘキサン、イソヘプタンおよびn-ヘプタンは芳香族炭化水素を含まず、環境に優しかった。特に、成分a)がイソヘキサンの場合、99.2%という高い洗浄能力、わずかな臭気、適切な乾燥速度、極めて低い毒性、低コストという最適なバランスが得られた。
【0086】
【表2】
【0087】
表2からわかるように、実施例3において成分b)がD20であった場合、99.2%という高い洗浄能力、わずかな臭気、適切な乾燥速度、および非常に低い毒性との間で最適なバランスが得られた。これに対して、成分b)がD30である比較例6、または、D80である比較例7では、洗浄力が低下し、乾燥速度が遅すぎた。
【0088】
【表3】
【0089】
表3からわかるように、実施例3において成分c)がイソパラフィンGであった場合、99.2%という高い洗浄能力、わずかな臭気、適切な乾燥速度、および非常に低い毒性との間で最適なバランスが得られた。これに対して、成分c)がイソパラフィンCである比較例8、イソパラフィンEである比較例9、イソパラフィンHである比較例10、またはイソパラフィンLである比較例11では、洗浄能力が低下し、乾燥速度が遅すぎる、または、速すぎた。
【0090】
【表4】
【0091】
表1および表4からわかるように、実施例3、12および13において成分a)の量が25~35重量部の範囲内で適切であった場合、洗浄能力は95%より高く、乾燥速度は適切であり、臭気はわずかであった。
【0092】
比較例14において成分b)の量が少なすぎた場合(15重量部)、洗浄能力は好ましくないほど低下した。実施例3および15において成分b)の量が18~30重量部であった場合、洗浄能力は95%より高く、乾燥速度は適切であり、臭気はわずかであった。
【0093】
実施例3、16および17において成分c)の量が5~15重量部であった場合、洗浄能力は90%より高く、乾燥速度は適切であり、臭気はわずかであった。
【0094】
【表5】
【0095】
表5と表1からわかるように、比較例18において成分d)およびe)の量が0であった場合、洗浄能力が劇的に低下し、乾燥速度は速すぎた。比較例19において成分d)およびe)の量が多すぎた場合、洗浄能力が劇的に低下し、乾燥速度は遅すぎた。
【0096】
【0097】
表6および表1からわかるように、g)のHLB値が12(実施例3、E-1307)~13(実施例22、E-1308)であった場合、95%以上の洗浄能力、低臭、速い乾燥速度、および低い毒性の間で最適なバランスが得られた。g)のHLB値が12より低い(比較例20および21、E-1305およびE-1306)、または、13より高い(比較例23~26、E-1310、E-1312、E-1315、E-1320)場合、好ましくないことに洗浄能力が低下した。
【国際調査報告】