(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-11
(54)【発明の名称】有機スズ化合物の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/22 20060101AFI20240604BHJP
【FI】
C07F7/22 A
C07F7/22 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577665
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(85)【翻訳文提出日】2024-01-26
(86)【国際出願番号】 US2022033954
(87)【国際公開番号】W WO2022266421
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン, トーマス エム.
(72)【発明者】
【氏名】エルメルト, デビット エム.
【テーマコード(参考)】
4H049
【Fターム(参考)】
4H049VN03
4H049VP01
4H049VQ07
4H049VQ14
4H049VR21
4H049VR24
4H049VR33
4H049VS12
4H049VV06
(57)【要約】
本発明は、アルキル及びアリール置換基を有する特定の有機スズ化合物を調製するための容易な方法を提供する。これらの化合物は、特定のアルキルアミノ及びアルコキシ置換アルキルスズ化合物の合成における中間体として有用であり、ひいては、マイクロ電子デバイス製造に使用される極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術における高純度酸化スズ膜の堆積の前駆体として有用である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(Q)
3SnR(I)、
(式中、Qは、
(a)フェニルと、
(b)式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基と、
(c)式C
1~C
12アルキル-O-の基と、
(d)ハロゲン化物と
から選択され、
Rは、C
1~C
12アルキル基である)
の化合物を調製するための方法であって、式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択される)の化合物と接触させ、続いて式R-Xの化合物と組み合わせることを含む方法。
【請求項2】
Qが、フェニル、式(C
1-C
12アルキル)
2N-の基、又は式C
1-C
12アルキル-O-の基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MがLiである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
Rが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル又はsec-ペンチル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
Rが環状C
1~C
5基である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
Rがビニル基又はアセチレニル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
Rが、1つ又は複数のハロゲン基又はエーテル基で更に置換されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
Rが過フッ素化C
1~C
5基である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
Rが、アルキル部分がアルキルエーテル基であり、アルキル部分がC
1~C
5アルキル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式SnX
2の化合物の量に基づいて、過剰モルの式Q-Mの化合物が約2.7から約3.3である、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
Qがフェニルであり、Xがクロロであり、Rがイソプロピルであり、Mがリチウムである、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
式(I)の化合物が、
(式中、R
1はC
1~C
12アルキルである)
である、請求項2に記載の方法。
【請求項13】
R
1がイソプロピルであり、Xがクロロである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Qがハロゲン化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
式Q-Mの化合物と式SnX
2の化合物とが1.2:1から1:1.2の比で組み合わされる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
式(II):
(式中、RはC
1~C
12アルキル基であり、R
2はC
1~C
12アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって、方法は、
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはフェニル、式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基、又は式C
1~C
12アルキル-O-の基である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)ハロゲン化スズ(IV)と反応させてアルキルトリハロスズを得ることと、
(d)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む第1の方法であるか、又は方法は、
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはハロゲン化物である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む第2の方法である、方法。
【請求項17】
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはフェニル、式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基、又は式C
1~C
12アルキル-O-の基である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)ハロゲン化スズ(IV)と反応させてアルキルトリハロスズを得ることと、
(d)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはハロゲン化物である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
式(II)の化合物が、
である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
式(Q)
3SnR、
(式中、Qはフェニルであり、Rは、
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル又はsec-ペンチル基と、
環状C
1~C
5基と、
ビニル基又はアセチレニル基と、
過フッ素化C
1~C
5基と、
アルキル部分がC
1~C
5基であるアルキルエーテル基と、
からなる群から選択される)
を有する化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機スズ化学の分野に属し、特に、特定の有機スズ中間体を調製するための容易な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の有機スズ化合物は、特定のマイクロ電子デバイスの製造に使用される極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術などの用途における、高純度酸化スズ(IV)の堆積に有用であることが示されている。
【0003】
特に興味深いのは、アルキルアミノ基(又はアルコキシ基)とアルキル基との組み合わせを有する有機スズ化合物であり、これは、マイクロ電子デバイス基板上へのスズ含有膜の堆積における液体前駆体として有用である。したがって、高純度酸化スズ膜の堆積に使用するための高純度の形態のそのような有機スズ化合物を製造するための、改善された技法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
アルキル、アリール又はハロ置換基を有する特定の有機スズ化合物を調製するための容易な方法を提供する。これらの化合物は、例えば、マイクロ電子デバイス製造に使用される極端紫外線(EUV)リソグラフィ技術における高純度酸化スズ膜の堆積の前駆体として有用な、特定のアルキルアミノ及びアルコキシ置換アルキルスズ化合物の合成における中間体として有用である。例えば、本発明の方法を用いてイソプロピルトリフェニルスズを調製することができ、次いで、これを四塩化スズ、続いてジメチルアミン及びリチウムジメチルアミドと反応させて、トリス(ジメチルアミド)イソプロピルスズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】実施例1のPh
3Sn-iPr(イソプロピルトリフェニルスズ)の、CDCl
3で記録された
1H-NMRである。
【
図2】実施例1のPh
3Sn-iPrの、CDCl
3で記録された
119Sn-NMRである。
【
図3】実施例2のiPrSnI
3(イソプロピルスズトリヨージド)の、2-ヨードプロパンで記録された
119Sn-NMRである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「a」、「an」及び「the」はその内容が明らかに別途指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「又は」は、一般に、その内容が明らかに別途指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0007】
用語「約」は、一般に、記載された値(例えば、同じ機能又は結果を有する)と等価であると考えられる数の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に四捨五入される数を含むことができる。
【0008】
端点を用いて表される数値範囲は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1から5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む)。
【0009】
第1の態様では、本開示は、式(I):
(Q)3SnR(I)、
(式中、Qは、
(a)フェニルと、
(b)式(C1~C12アルキル)2N-の基と、
(c)式(C1~C12アルキル-O)-の基と、
(d)ハロゲン化物(F、Cl、Br、I)と、
から選択され、
Rは、C1~C12アルキル基である)
の化合物を調製するための方法であって、式SnX2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択される)の化合物と組み合わせ、続いて式R-Xの化合物と組み合わせることを含む、方法を提供する。
【0010】
この方法の一実施形態では、Qは、(a)、(b)又は(c)から選択される。この実施形態の具体例として、式Q-Mの化合物は、一般に、ジハロスズ化合物(SnX2)及び非プロトン性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテルを含む反応混合物に(生じる発熱反応を制御しながら)ゆっくりと添加されて、式Q3SnMの化合物を形成する。上記のように、式SnX2の化合物の出発量に対し、過剰モルの式Q-Mの化合物が用いられる。一実施形態では、約2.7~約3.3モル当量、例えば2.8~約3.2モル当量又は2.9~約3.1モル当量が用いられ、別の実施形態では、約3モル当量が用いられる。式Q-Mの化合物の添加が完了すると、反応混合物を、これらの2種を確実に完全に反応させるのに十分な時間、常温より高い温度、例えば約40℃~80℃、又は約55℃~65℃に加熱することができる。次に、概して等モル量の式R-Xの化合物を反応混合物に添加すると、式(I)の所望の生成物が得られる。特定の実施形態では、式R-Xの化合物は、式SnX2の出発物質の量に対し、約0.7~約1.3モル当量、例えば約0.8~約1.2モル当量又は約0.9~約1.1モル当量添加される。
【0011】
本方法の別の実施形態では、Qは(d)から選択される。この実施形態の具体例として、式Q-Mの化合物は、ジハロスズ化合物(SnX2)に1.2:1から1:1.2の比、例えば1.1:1から1:1.2の比で、好ましくは1:1の比で添加され、Qはハロゲン化物である。式Q-Mの化合物の添加が完了すると、反応混合物を、確実に完全に反応させて式Q3SnMの化合物を形成するのに十分な時間、常温より高い温度、例えば約180℃~220℃に加熱することができる。次に、概して過剰のR-Xを反応混合物に添加する。R-Xの化合物の添加が完了すると、反応混合物を、これらの種を確実に完全に反応させるのに十分な時間、常温より高い温度、例えば約90℃~140℃に加熱することができ、次いで、Qがハロゲン化物である式(I)の所望の生成物が得られる。特定の実施形態では、式R-Xの化合物は、式SnX2の出発物質の量に対し、約4~約8モル当量添加される。
【0012】
この方法では、Rは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチルなどの直鎖又は分岐鎖アルキル基であり得るC1~C12アルキル基から選択することができる。更に、Rは、シクロプロピル基などの環状C1~C5基であり得る。また、Rは、ビニル基又はアセチレニル基等の不飽和C1~C5基であってもよい。これらのR基のいずれも、1つ又は複数のハロゲン基又はエーテル基などで更に置換されていてもよい。例えば、Rは、式-(CH2)n(CHaFb)m(式中、mは1~5であり、m+nは1~5であり、bは1~3であり、a+b=3である)を有し、-CH2F又は-CH2CH2F基などのモノフッ素化C1~C5アルキル基、及び-CF3又はCF2CF3基などの過フッ素化C1~C5基を含む、フッ素化アルキル基であってもよい。あるいは、Rは、アルキル部分がC1~C5アルキル基であるアルキルエーテル基であってもよい。
【0013】
一実施形態では、Xはクロロ又はブロモから選択される。例えば、式R-Xの反応物は、一実施形態では、2-ブロモプロパン又は2-クロロプロパンであり得る。
【0014】
Qがフェニル、式(C1~C12アルキル)2N-の基、又は式C1~C12アルキル-O-の基などの式(I)の化合物は、特定のジアルキルアミド有機スズ前駆体化合物の合成における中間体として有用であり、この化合物は、マイクロ電子デバイス表面上へのスズ含有膜の蒸着に有用である。一実施形態では、式(I)の化合物はイソプロピルトリフェニルスズである。
【0015】
この第1の態様の1つの具体的な実施形態において、本発明は、式:
(式中、R
1はC
1~C
6アルキルである)
の化合物を調製する方法を提供し、この方法は、式SnX
2(式中、Xはクロロ又はブロモである)の化合物を、過剰モルの式(Ph)Li(式中、Phはフェニルである)の化合物と接触させ、続いて式R
1Xの化合物を添加することを含む。一実施形態では、R
1はイソプロピルであり、Xはクロロである。
【0016】
上記のように、Qがフェニル、式(C
1~C1
2アルキル)
2N-の基、又は式C
1~C
12アルキル-O-の基など、又はF、Cl、Br若しくはIなどのハロゲン化物である式(I)の化合物は、ジアルキルアミドアルキルスズ化合物の形成における中間体として有用である。したがって、第2の態様では、本開示は、式(II):
(式中、RはC
1~C
12アルキル基であり、R
2はC
1~C
12アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって、
(a)式SnX
2(式中、Xがフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはフェニル、式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基、又は式C
1~C
12アルキル-O-の基である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RがC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)ハロゲン化スズ(IV)と反応させてアルキルトリハロスズを得ることと、
(d)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む方法を提供する。
【0017】
この方法では、工程(a)及び(b)は、第1の態様で上述したものと同様である。具体例としては、[フェニル]
3Sn-[イソプロピル]などの化合物は、SnCl
2などのスズ(II)ジハライドと(Ph)Liとを組み合わせ、更にハロゲン化イソプロピルと組み合わせることで、形成することができる。得られた[フェニル]
3Sn-[イソプロピル]をSnCl
4などのハロゲン化スズ(IV)と更に反応させて、トリハロスズ中間体、例えばイソプロピルスズトリクロリドを得てもよく、次いで、これを式(R
2)
2NHのジアルキルアミン、例えばジメチルアミン、及び式R
2)
2N-Mの化合物、例えばリチウムジメチルアミドと反応させて、式(IIa):
の化合物を得てもよい。
【0018】
あるいは、本開示はまた、式(II)、
(式中、RはC1~C12アルキル基であり、R2はC1~C12アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって、
(a)式SnX2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはハロゲン化物である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC1~C12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)3SnRの化合物を得ることと、
(c)式(R2)2NHの化合物及び式(R2)2N-Mの化合物と反応させることと
を含む方法を提供する。
【0019】
この方法では、工程(a)及び(b)は、第1の態様で上述したものと同様である。具体例としては、イソプロピルスズトリクロリドなどのアルキルトリハロゲン化スズは、KClなどのハロゲン化金属(M-X)と、SnCl2などのハロゲン化スズ(II)(SnX2)とを反応させてトリハロスズ中間体を得、次いでこれをヨードプロパンなどのアルキルハロゲン化物(R-X)と反応させて、[クロロ]3Sn-[イソプロピル]などの式Q3SnRの化合物を形成することによって、形成することができる。上記のように、次いで、これを式(R2)2NHのジアルキルアミン、例えばジメチルアミンと、式(R2)2NMの金属アミド、例えばリチウムジメチルアミドと反応させて、式(IIa)の化合物を得ることができる。
【0020】
特定の実施形態では、Qは、式(C1~C4アルキル)2N-の基であり、以下の式:
a.(CH3)2N-、
b.(CH3CH2)2N-、
c.(n-プロピル)2N-、
d.(イソプロピル)2N-、
e.(tert-ブチル)2N-、
f.(sec-ブチル)2N-、及び
g.(n-ブチル)2N-、
から選択される。
【0021】
他の実施形態では、Rは、式C1~C4アルキル-O-の基であり、以下の式:
a.CH3O-、
b.CH3CH2O-、
a.n-プロピル-O-、
b.イソプロピル-O-、
c.tert-ブチル-O-、
d.sec-ブチル-O-、及び
e.n-ブチル-O-、
から選択される。
【実施例】
【0022】
実施例1-イソプロピルトリフェニルスズ(Ph3SniPr)の合成
窒素充填グローブボックス内で、SnCl2(15g、78.2mmol)を、磁気撹拌子を装備した250mL丸底フラスコに入れ、THF(約50mL)で希釈して、わずかに濁った溶液を形成した。フラスコを250mLの加熱マントルに置き、PhLi(1.9M(n-Bu)2O、129mL、246mmol)をシリンジを介してゆっくり添加した。添加すると、反応物は迅速に暗赤色の混合物を呈し、発熱を示し、還流を始めた。PhLiをゆっくり(2.5シリンジ分を約20分超かけて)添加して発熱を制御し、添加が完了すると、反応物は暗赤色/褐色の混合物を呈した。更なるTHF(約50mL)を添加し、フラスコにコンデンサーを取り付け、反応物を撹拌しながら60℃で6時間加熱した。
【0023】
この時間の後、反応物は暗褐色の混合物を呈した。2-クロロプロパンを40mLバイアルに秤量し、ピペットを介して混合物に迅速に添加し、添加が完了すると、反応物は明褐色混合物に変化し、これを室温で撹拌した。溶媒を減圧下で反応物から除去し、得られた粘着性の黄色混合物をグローブボックスから取り出し、ヒュームフードに入れた。生成物をジクロロメタン(約50mL)に溶解し、分液漏斗内で脱イオン水(DI H2O)によって洗浄した(100mLで3回)。3回目の水洗浄後、合わせた有機層をMgSO4で乾燥させ、使い捨てポリエチレンフィルタフリットで濾過し、得られた桃色/黄色溶液を減圧下で乾燥させて、淡黄色固体20.2g(65.7%)を得た。
【0024】
1H-NMR(CDCl3 400MHz);d、6H、1.528ppm;sept、1H、2.15ppm;m、9H、7.42ppm;m、6H、7.63ppm。119Sn{1H}-NMR(CDCl3、150MHz);-103.318ppm。
【0025】
実施例2-イソプロピルスズトリヨージド(iPrSnI3)の合成
窒素充填グローブボックス内で、KCl(1.93g、26.0mmol)とSnCl2(5g、26.0mmol)とを、磁気撹拌子を装備した40mLバイアル内で合わせ、195℃で加熱し、1時間加熱後に反応物は淡黄色の液体を呈した。混合物を室温に冷却し、白色固体に固化させた。2-ヨードプロパン(26.5g、156mmol)を反応物に添加し、混合物を125℃で12時間撹拌し、その時点で、反応物は黄色/橙色の混合物を呈した。母液のアリコートで記録された1H-及び119Sn-NMRは、iPrSnI3の生成と一致する。
【0026】
1H-NMR(400MHz、2-ヨードプロパン、298K):0.14(d、6H);2.82(sept、1H)ppm;119Sn{1H}-NMR(149MHz、2-ヨードプロパン、298K):-439.54ppm。
【0027】
態様
第1の態様では、本開示は、式(I):(Q)3SnR(I)、
(式中、Qは、
(a)フェニルと、
(b)式(C1~C12アルキル)2N-の基と、
(c)式C1~C12アルキル-O-の基と、
(d)ハロゲン化物と
から選択され、
Rは、C1~C12アルキル基である)
の化合物を調製するための方法であって、式SnX2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択される)の化合物と接触させ、続いて式R-Xの化合物と組み合わせることを含む、方法を提供する。
【0028】
第2の態様では、本開示は、Qがフェニル、式(C1~C12アルキル)2N-の基、又は式C1~C12アルキル-O-の基である、第1の態様の方法を提供する。
【0029】
第3の態様では、本開示は、MがLiである、第1又は第2の態様の方法を提供する。
【0030】
第4の態様では、本開示は、Rがメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル又はsec-ペンチル基である、第1~第3の態様のいずれかの方法を提供する。
【0031】
第5の態様では、本開示は、Rが環状C1~C5基である、第1~第4の態様のいずれかの方法を提供する。
【0032】
第6の態様では、本開示は、Rがビニル基又はアセチレニル基である、第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0033】
第7の態様では、本開示は、Rが1つ又は複数のハロゲン基又はエーテル基で更に置換されている、第1~第4の態様のいずれか1つの方法を提供する。
【0034】
第8の態様では、本開示は、Rが過フッ素化C1~C5基である、第1~第4の態様のいずれかの方法を提供する。
【0035】
第9の態様では、本開示は、Rが、C1~C5基のアルキル部分を有するアルキルエーテル基である、第1~第4の態様のいずれかの方法を提供する。
【0036】
第10の態様では、本開示は、式SnX2の化合物の量に対して、過剰モルの式Q-Mの化合物が約2.7~約3.3である、第2~第9の態様のいずれかの方法を提供する。
【0037】
第11の態様では、本開示は、Qがフェニルであり、Xがクロロであり、Rがイソプロピルであり、Mがリチウムである、第1~第10の態様のいずれかの方法を提供する。
【0038】
第12の態様では、本開示は、式(I)の化合物が、
(式中、R
1はC
1~C
6アルキルである)
である、第1~第11の態様のいずれかの方法を提供する。
【0039】
第13の態様では、本開示は、R1がイソプロピルであり、Xがクロロである、第12の態様の方法を提供する。
【0040】
第14の態様では、本開示は、Qがハロゲン化物である、第1の態様の方法を提供する。
【0041】
第15の態様では、本開示は、式Q-Mの化合物と式SnX2の化合物とが1.2:1から1:1.2の比で組み合わされる、第14の態様の方法を提供する。
【0042】
第16の態様では、本開示は、式(II):
(式中、RはC
1~C
12アルキル基であり、R
2はC
1~C
12アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって、
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはフェニル、式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基、又は式C
1~C
12アルキル-O-の基である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)ハロゲン化スズ(IV)と反応させてアルキルトリハロスズを得ることと、
(d)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含むか、又は
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはハロゲン化物である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む方法を提供する。
【0043】
第17の態様では、本開示は、
(a)式SnX2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはフェニル、式(C1~C12アルキル)2N-の基、又は式C1~C12アルキル-O-の基である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC1~C12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)3SnRの化合物を得ることと、
(c)ハロゲン化スズ(IV)と反応させてアルキルトリハロスズを得ることと、
(d)式(R2)2NHの化合物及び式(R2)2N-Mの化合物と反応させることと
を含む、第16の態様の方法を提供する。
【0044】
第18の態様では、本開示は、
(a)式SnX2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはハロゲン化物である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC1~C12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)3SnRの化合物を得ることと、
(c)式(R2)2NHの化合物及び式(R2)2N-Mの化合物と反応させることと
を含む、第16の態様の方法を提供する。
【0045】
第19の態様では、本開示は、式(II)の化合物が
である、第16~第18の態様のいずれかの方法を提供する。
【0046】
第20の態様では、本開示は、式(Q)3SnR、
(式中、Qはフェニルであり、Rは、
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル又はsec-ペンチル基と、
環状C1~C5基と、
ビニル基又はアセチレニル基と、
過フッ素化C1~C5基と、
アルキル部分がC1~C5基であるアルキルエーテル基と、
からなる群から選択される)
を有する化合物を提供する。
【0047】
このように本開示のいくつかの例示的な実施形態を説明してきたが、当業者は、添付の特許請求の範囲内で更に他の実施形態を作成及び使用することができることを容易に理解するであろう。本書類によって包含される本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される言語において定義される。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(Q)
3SnR(I)、
(式中、Qは、
(a)フェニルと、
(b)式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基と、
(c)式C
1~C
12アルキル-O-の基と、
(d)ハロゲン化物と
から選択され、
Rは、C
1~C
12アルキル基である)
の化合物を調製するための方法であって、式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択される)の化合物と接触させ、続いて式R-Xの化合物と組み合わせることを含む方法。
【請求項2】
式SnX
2の化合物の量に基づいて、過剰モルの式Q-Mの化合物が約2.7から約3.3である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
式(I)の化合物が、
(式中、R
1はC
1~C
12アルキルである)
である、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
式(II):
(式中、RはC
1~C
12アルキル基であり、R
2はC
1~C
12アルキル基である)
の化合物を調製する方法であって、方法は、
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、過剰モルの式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはフェニル、式(C
1~C
12アルキル)
2N-の基、又は式C
1~C
12アルキル-O-の基である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)ハロゲン化スズ(IV)と反応させてアルキルトリハロスズを得ることと、
(d)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む第1の方法であるか、又は方法は、
(a)式SnX
2(式中、Xはフルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードから選択される)の化合物を、式Q-M(式中、MはLi、Na及びKから選択され、Qはハロゲン化物である)の化合物と接触させることと、
(b)式R-X(式中、RはC
1~C
12アルキル基である)の化合物を添加して、式(Q)
3SnRの化合物を得ることと、
(c)式(R
2)
2NHの化合物及び式(R
2)
2N-Mの化合物と反応させることと
を含む第2の方法である、方法。
【請求項5】
式(Q)
3SnR、
(式中、Qはフェニルであり、Rは、
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル又はsec-ペンチル基と、
環状C
1~C
5基と、
ビニル基又はアセチレニル基と、
過フッ素化C
1~C
5基と、
アルキル部分がC
1~C
5基であるアルキルエーテル基と、
からなる群から選択される)
を有する化合物。
【国際調査報告】