(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/00 20060101AFI20240614BHJP
C04B 18/16 20230101ALI20240614BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20240614BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20240614BHJP
C04B 24/10 20060101ALI20240614BHJP
C04B 24/06 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C04B28/00
C04B18/16
C04B24/26 B
C04B24/26 E
C04B24/26 F
C04B24/26 G
C04B24/22 D
C04B24/10
C04B24/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563192
(86)(22)【出願日】2022-06-02
(85)【翻訳文提出日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 EP2022065080
(87)【国際公開番号】W WO2022258490
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100227352
【氏名又は名称】白倉 加苗
(72)【発明者】
【氏名】アルント エーベルハルト
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル ガルーシ
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ユイラント
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス フルンツ
(72)【発明者】
【氏名】デニーズ ムーツ-ケルン
(72)【発明者】
【氏名】ボルフガング デルスペルガー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアオ ピント
(72)【発明者】
【氏名】ルイス ペガド
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112PA02
4G112PA30
4G112PB17
4G112PB19
4G112PB23
4G112PB29
4G112PB31
4G112PB32
(57)【要約】
本発明は、以下の工程を含む、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための方法に関する:a)少なくとも1種のミネラルバインダーを提供すること、b)リサイクル粉体を混ぜ入れること、c)ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の加工性改良剤を混ぜ入れること、及びd)水を混ぜ入れること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための方法:
a)少なくとも1種のミネラルバインダーを提供すること、
b)リサイクル粉体を混ぜ入れること、
c)ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の加工性改良剤を混ぜ入れること、及び
d)水を混ぜ入れること。
【請求項2】
前記リサイクル粉体が、十分に炭酸塩化されたセメント、好ましくは十分に炭酸塩化されたポルトランドセメントを含むか、又は実質的にそれからなることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1種のミネラルバインダー対前記リサイクル粉体の重量比が、(99:1)~(5:95)、好ましくは(94:6)~(45:55)、より好ましくは(94:6)~(65:35)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、下記の繰り返し単位A及び繰り返し単位Bを含むか、又はそれらからなるポリカルボキシレートであり:
a)一般構造式(I)の繰り返し単位A、
【化1】
及び
b)一般構造式(II)の繰り返し単位B、
【化2】
[式中、
それぞれのR
uは、独立して、水素又はメチル基を表し、
それぞれのR
vは、独立して、水素又はCOOM(ここで、Mは、独立して、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属である)を表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
それぞれのR
1は、独立して、-(CH
2)
z-[YO]
n-R
4(ここで、Yは、C
2~C
4アルキレンであり、R
4は、H、C
1~C
20アルキル、-シクロヘキシル、-アルキルアリール、又は-N(-R
i)
j-[(CH
2)
z-PO
3M]
3-jであり、z=0、1、2、3又は4であり、n=2~350であり、j=0、1、又は2であり、R
iは、水素原子又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、Mは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムイオンを表す)である]、
かつ前記PCEの中の前記繰り返し単位A及びBが、(10:90)~(90:10)の範囲の(A:B)のモル比を有していることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、グルコン酸ナトリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、2種の異なったポリカルボキシレートの混合物から、又はポリカルボキシレートと糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムとの混合物から、又は糖とグルコン酸ナトリウムとの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、PCE、糖、及び糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のミネラルバインダーが、ポルトランドセメント、特にCEM Iのタイプ、カルシウムアルミネートセメント、カルシウムスルホアルミネートセメント、セッコウ、水硬性石灰、気硬性石灰、ジオポリマー、スラグ、クレー、微粉砕石灰石、及びそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、ポリカルボキシレートから選択され、混ぜ入れるポリカルボキシレートの重量が、それぞれ、存在している前記リサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、0.1~3.0重量%、好ましくは0.20~1.125重量%、より好ましくは0.40~0.85重量%の間であることを特徴とする、請求項1~4、及び6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が糖酸、特にはグルコン酸ナトリウムから選択され、混ぜ入れる糖酸、特にはグルコン酸ナトリウムの重量が、それぞれの場合において、存在している前記リサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、0.025~1.0重量%、好ましくは0.3~0.9重量%の間であることを特徴とする、請求項1~3、及び5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、ポリカルボキシレートと、糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムとの混合物から選択され、それぞれ、存在している前記リサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、混ぜ入れるポリカルボキシレートの重量が、0.20~1.125重量%、好ましくは0.25~0.85重量%の間であり、かつ混ぜ入れる糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの重量が、0.025~1.0重量%、好ましくは0.28~0.5重量%の間であることを特徴とする、請求項1~3、及び6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種の加工性改良剤が、ポリカルボキシレート、糖、及び糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの混合物から選択され、それぞれ、存在している前記リサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、混ぜ入れるポリカルボキシレートの重量が、0.1~3.0重量%、好ましくは0.1~1.125重量%の間であり、かつ混ぜ入れる糖の重量が、0.1~2.0重量%、好ましくは0.2~1.2重量%の間であり、混ぜ入れる糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの重量が、0.025~1.0重量%、好ましくは0.07~0.50重量%の間であることを特徴とする、請求項1~3、及び7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
以下を含む、ミネラルバインダー組成物、特にはコンクリート又はモルタル:
a)(99:1)~(5:95)、好ましくは(94:6)~(45:55)、より好ましくは(94:6)~(65:35)の重量比にある、少なくとも1種のミネラルバインダー及びリサイクル粉体、
b)少なくとも1種の加工性改良剤、
c)少なくとも1種の骨材、
d)任意に、さらなる添加剤、及び
e)任意に、水。
【請求項14】
水が存在し、EN 1015-3に従って測定した初期のスランプフローが、前記少なくとも1種の加工性改良剤を含まない同一のミネラルバインダー組成物と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、特には少なくとも50%増大されることを特徴とする、請求項13に記載のミネラルバインダー組成物。
【請求項15】
請求項13に記載のミネラルバインダー組成物を水の存在下に硬化することにより得られるか、又は請求項14に記載のミネラルバインダー組成物を硬化することにより得られる、硬化したミネラルバインダー組成物、好ましくは建造物の一部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミネラルバインダー材料のリサイクルに関する。特には、本発明は、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための材料及び方法に関する。そのリサイクル粉体は、建造物解体廃棄物、規格外建設材料、又は余分となった建設材料のような、廃建設材料のリサイクルから入手可能である。
【背景技術】
【0002】
今までのところ、大量の廃建設材料、たとえば解体、規格外製造、又は余分となった建設材料からの、固化されたコンクリート又はモルタルは、埋立て地で処分されている。ほんの僅かな量だけが、建設業界におけるローテク用途のための原料物質として、部分的に再使用されている。
【0003】
さらには、現在の実施状況では、廃建設材料、特には解体廃棄物を破砕し、粗い画分だけが再使用されるのに対して、微細な画分は、典型的には廃棄処分される。この理由は、その微細な画分を再使用した場合、フレッシュなコンクリート及び固化させたコンクリートの性質に悪影響を及ぼす可能性があるためである。したがって、現在の実施状況は、不完全であるとしか考えられない。
【0004】
世界中各所での現行のインフラストラクチャーは、老化しており、このインフラストラクチャーの少なくとも一部は、再建する必要がある。したがって、たとえば、コンクリート製の建造物の解体からの大量の廃建設材料は、現在でも、そして今後も、近い将来において発生し続けるであろう。しかしながら、ある種の地域及び国では、廃棄物の処分は、ますます、高い費用がかかり、新しい規制のために困難となってきている。さらには、廃建設材料には、たとえばセメント質の性質を有するバインダー及び骨材のような、価値ある材料が含まれ、それらは、一般的には、フレッシュな建設材料を製造するために再使用することが可能である。したがって、廃建設材料のリサイクルは、重要な課題である。
【0005】
欧州特許第2 978 724号明細書及び欧州特許第2 708 520号明細書のいずれにも、解体の破壊屑又は廃建設材料から、骨材及び/又は炭酸塩化されたバインダーを得るための方法が記載されている。その方法は、炭酸塩化及び微粉砕のステップが含まれている。欧州特許第2 978 724号明細書には、ミネラルバインダーに加えて、粉体状の鉱物性物質、すなわち、実質的に炭酸塩化されたバインダーを含むセメントペースト又はモルタルの初期広がり流動は、そのような粉体状の鉱物性物質を含まないセメントペースト又はモルタルに比較して、大きくは違わないという教示がある。しかしながら、欧州特許第2 978 724号明細書は、初期流動性を改良したり、及び/又はそのようなミネラルバインダー組成物の加工性を長期間にわたって保持したりするための手段は、まったく提供していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための、材料及び方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの目的は、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良することである。特には、本発明の一つの目的は、初期流動性を増大させること、及び/又は少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物のある種の流動が維持される時間を長引かせることである。本発明の場合における、ミネラルバインダー組成物の流動性は、標準のEN 1015-3に従って測定されるようなスランプフローを指している。
【0008】
本発明のまた別な目的は、少なくとも1種のミネラルバインダー及び追加のリサイクル粉体を含み、加工性を有する、ミネラルバインダー組成物、特にはモルタル又はコンクリート組成物を提供することである。改良された加工性とは、本発明の文脈の内では、初期流動性を増大させること、及び/又は少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物のある種の流動性が維持される時間を長引かせることを意味している。
【0009】
驚くべきことには、ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される加工性改良剤を混ぜ入れることにより、本発明の課題を解決することが可能であるということが見出された。
【0010】
たとえば、本発明の方法に従って製造されたミネラルバインダー組成物の、EN 1015-3に従って測定した初期のスランプフローが、その少なくとも1種の加工性改良剤を含まない、同一のミネラルバインダー組成物に比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、特には少なくとも50%増大する。それと同時に、そのスランプフローが、長い時間にわたって、たとえば少なくとも30分間、好ましくは少なくとも60分間、より好ましくは少なくとも90分間、特には少なくとも120分間もの間、高いレベルに維持される。スランプフローは、混合した後、前記の所定時間後に測定したその値の変化が、混合直後に測定した初期のスランプフローに比較して、35%以下、好ましくは30%以下、特には25%以下であるのなら、維持されている。さらには、その凝結時間も、ほとんどの実用的用途ではまだ受容される値にまで長くなった。
【0011】
したがって、本発明の課題は、独立請求項に記載の方法及び組成物により解決される。本発明の好ましい実施態様が、従属請求項の主題である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
第一の態様においては、本発明は、以下の工程を含む、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための方法に関する:
a)少なくとも1種のミネラルバインダーを提供すること、
b)リサイクル粉体を混ぜ入れること、
c)ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の加工性改良剤を混ぜ入れること、及び
d)水を混ぜ入れること。
【0013】
本発明の文脈の内では、ミネラルバインダー組成物の加工性の改良は、初期のスランプフローの増大、及び/又はあるレベルのスランプフローが維持されている時間の延長に関連する。スランプフローは、標準のEN 1015-3に従って測定することができる。したがって、本発明の方法においては、本発明の少なくとも1種の加工性改良剤を含まない同一のミネラルバインダー組成物の、初期のスランプフロー及び/又は経時的なスランプフローに比較して、少なくとも1種のミネラルバインダー及びさらにはリサイクル粉体並びに少なくとも1種の加工性改良剤を含むミネラルバインダー組成物の初期のスランプフローが増大されるか、及び/又はそのようなミネラルバインダー組成物のあるレベルのスランプフローの経時的な維持が延長される。
【0014】
本発明の方法における実施態様においては、EN 1015-3に従って測定した初期のスランプフローが、その少なくとも1種の加工性改良剤を含まない同一のミネラルバインダー組成物に比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、特には少なくとも50%増大する。
【0015】
本発明の文脈の内では、ミネラルバインダーは、好ましくは、セメント、セッコウ、石灰、マグネシア、アルミナ、ジオポリマー、潜在的水硬結合剤、及び/又はポゾランから選択される。
【0016】
セメントは、具体的には、以下のものであってよい;標準のEN 197-1に記載のような、CEM I、CEM II、CEM III、CEM IV、CEM Vのタイプのポルトランドセメント;標準のEN 14647に記載のようなカルシウムアルミネートセメント、及び/又はカルシウムスルホアルミネートセメント。「セッコウ」という用語は、各種の形態のCaSO4、具体的にはCaSO4の硬セッコウ、CaSO4のα-及びβ-半水塩、並びにCaSO4の二水塩が包含されることを意味している。「石灰」という用語は、標準のEN 459-1:2015に記載のような、天然の水硬性石灰、配合石灰、水硬性石灰、及び気硬性石灰が包含されることを意味している。「アルミナ」という用語は、以下のものを表す:酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び/又はオキシ水酸化アルミニウムたとえばギブザイト及びベーマイト、焼成若しくはフラッシュ焼成のアルミナ、バイヤー法から得られたアルミナ、水和可能なアルミナたとえば、非晶質のメソフェーズアルミナ、並びにρ相アルミナ。ポゾラン及び潜在的水硬化性物質は、好ましくは、以下のものからなる群より選択される:スラグ、クレー、焼成クレー、特にはメタカオリン、キルンダスト、ミクロシリカ、フライアッシュ、熱分解法シリカ、沈降シリカ、シリカフューム、ゼオライト、籾殻灰、焼成オイルシェール、並びに天然ポゾランたとえば、軽石、トラス、及び微粉砕石灰石。
【0017】
実施態様においては、その少なくとも1種のミネラルバインダーが、以下のものからなる群より選択される:ポルトランドセメント、特にCEM Iのタイプ、カルシウムアルミネートセメント、カルシウムスルホアルミネートセメント、セッコウ、水硬性石灰、気硬性石灰、ジオポリマー、スラグ、クレー、微粉砕石灰石、及びそれらの混合物。
【0018】
「リサイクル粉体(rcycled powder)」という用語は、本発明の文脈の内では、廃建設材料から回収したミネラル粉体に関する。廃建設材料から粉体を回収すなわちリサイクルする方法としては、機械的方法、特には、廃建設材料の破砕及び/又は摩砕が挙げられる。実施態様においては、そのリサイクル粉体が、機械的方法、特には破砕及び/又は摩砕、次いで、たとえば、サイズによるか又は重量による分離のための手段による骨材からの分離により廃建設材料から回収される。リサイクル粉体を、部分的又は十分に水和させることもできる。そのリサイクル粉体を、たとえば、ミネラルバインダーを使用すると自然に起きる炭酸塩化によって、部分的又は十分に炭酸塩化させることも可能である。しかしながら、リサイクル粉体を炭酸塩化させないこともまた可能である。
【0019】
任意に、機械的方法に加えて、化学的方法を使用してもよい。リサイクル粉体を回収するための化学的方法としては、たとえば、廃建設材料の炭酸塩化、酸処理、及び/又は溶解/沈降が挙げられる。廃建設材料からリサイクル粉体を回収するための特に好ましい方法は、化学機械的方法であって、それでは、機械的処理及び化学的処理を組み合わせて、リサイクル粉体を回収する。機械的処理及び化学的処理は、順次、同時、又は複数のステップで実施することができる。
【0020】
本発明の実施態様においては、そのリサイクル粉体を、廃建設材料の断片をCO2雰囲気下で炭素塩化させ、それに続けて、その炭酸塩化された材料を摩砕することによって、リサイクル粉体を骨材から分離することにより廃建設材料から回収する。
【0021】
特に本発明の好ましい実施態様においては、廃建設材料を破砕及び/又は摩砕すると同時に炭素塩化することにより、リサイクル粉体を廃建設材料から回収する。そのような方法は、たとえば、欧州特許第2 978 724号明細書及び欧州特許第2 708 520号明細書に記載されている。
【0022】
本発明のリサイクル粉体を、その廃建設材料の中に存在している、骨材、繊維、金属、及び木材から分離するのが、特に好ましい。特には、そのリサイクル粉体に、いかなる骨材も含まれない。骨材については、以下で定義する。
【0023】
リサイクル粉体の出発源である廃建設材料には、特段の制限はない。廃建設材料の好ましい出発源は、たとえば、解体廃棄物、さらには製造からの規格外材料又は余分となった材料である。特に好ましい出発源は、たとえばコンクリート構造物の解体からの廃棄物のコンクリート又はモルタル、規格外のコンクリート又はモルタル、及び余分となったコンクリート、たとえば生コンクリートプラントからの余分となったコンクリートである。しかしながら、その他の廃建設材料たとえば、煉瓦又はセッコウ、たとえば、セッコウ下塗り(render)、セッコウボード、セッコウスクリードもまた、リサイクル粉体のための出発源として使用することが可能である。特には、本発明におけるリサイクル粉体を回収するために、混合された廃建設材料を使用することも可能である。混合された廃建設材料には、2種以上の異なったミネラルバインダーが含まれる。混合された廃建設材料は、たとえば、セメント質の本体とセッコウプラスター、煉瓦積みとセメント質のモルタル及び/又は下塗りなど、2種類以上のバインダー材料が使用されていたインフラストラクチャーの解体から生じる可能性がある。混合された廃建設材料は、コンクリート又はモルタルの配合物、すなわち、そのコンクリート又はモルタルが、2種類以上のバインダー、たとえば、ポルトランドセメントとスラグ、ポルトランドセメントとセッコウ、ポルトランドセメントとアルミネートセメント、そして任意にセッコウとポルトランドセメントとクレー、及び任意に石灰石などの組合せを含むようなものからも生じる可能性がある。混合された廃建設材料にはさらに、複合セメント、たとえば標準のEN 197-1に記載のような、CEM II、CEM III、CEM IV、又はCEM Vが含まれていてもよい。言うまでもないことであるが、混合された廃建設材料にはさらに、ミネラルバインダー以外の、建設材料ではありふれた物質が含まれていてもよい。そのような、その他の材料としては、以下で定義されるような骨材、繊維、ガラス、金属、木材、有機ポリマーが挙げられる。
【0024】
本発明のリサイクル粉体の化学的組成は、その廃建設材料の中に存在する、ミネラルバインダー又はミネラルバインダー組成物の化学的組成に依存する。そのリサイクル粉体の元素の酸化物の組成に依存して、それは、各種の用途で使用することができる。たとえば、その元素の酸化物の組成が、水硬性の、ミネラルバインダーのそれと似ている場合には、そのリサイクル粉体は、コンクリート又はモルタルの充填剤又は補助的セメント質材料として使用することができる。たとえば、追加の硫酸カルシウムが含まれているような場合には、そのリサイクル粉体は、ミネラルバインダーを硫酸化させるのに使用することができる。そのリサイクル粉体は、数ナノメートル~数マイクロメートルの範囲の粒子サイズを有している。典型的には、そのリサイクル粉体の粒子サイズは、標準のEN 933-1に記載のふるい分析により測定して、0~0.250mm、好ましくは0.001~0.200mm、特には0.01~0.125mmの範囲である。このことにより、回収の際に、骨材からそのリサイクル粉体を分離させることが容易となる。
【0025】
好ましい実施態様においては、本発明のリサイクル粉体は、少なくとも1種のセメントクリンカー、特にはポルトランドセメントクリンカーを含むか、又はそれらからなっている。
【0026】
本発明のリサイクル粉体が、炭酸塩化されたリサイクル粉体であれば、特に好ましい。炭酸塩化されたリサイクル粉体は、ミネラルバインダー又はミネラルバインダー組成物、特には自然に起きる炭酸塩化を経ているモルタル又はコンクリートから回収することができる。しかしながら、その炭酸塩化されたリサイクル粉体が、炭酸塩化プロセスで処理されたミネラル粉体又はミネラル粉体組成物であるのが好ましい。好適な炭酸塩化プロセスは、たとえば欧州特許第2 978 724号明細書、欧州特許第2 708 520号明細書、及び国際公開第2015/123769号パンフレットに記載されている。
【0027】
ある種の実施態様においては、その炭酸塩化されたリサイクル粉体が、2種以上のミネラルバインダーの混合物の炭酸塩化反応生成物である。これは、特には、混合された廃建設材料を炭酸塩化にかけて、炭酸塩化されたリサイクル粉体を形成させた場合である。
【0028】
本発明の文脈の内では、「炭酸塩化」という用語は、化合物の中への二酸化炭素の取込み、すなわち、二酸化炭素と出発材料との化学反応を表す。ミネラルバインダー又はミネラルバインダー組成物、たとえば、セメント、モルタル、又はコンクリートの炭酸塩化は、自然状態でも、いくぶんかは起きる。しかしながら、本明細書においては、「炭酸塩化」という用語は好ましくは、炭酸塩化が、自然な過程に比較して、意図的に増進或いは加速されるような過程を表している。これは、過剰な二酸化炭素を供給することにより、達成することができる。したがって、「炭酸塩化」には、特に、出発材料の二酸化炭素処理が含まれる。
【0029】
ミネラルバインダーに関連して、「炭酸塩化」は、たとえば、セメントキルンの中で起きている焼成の化学反応とは、実質的に逆の反応であるプロセスを表している。たとえば、カルシウム、ケイ酸塩、及びアルミニウムの水和物から実質的になる水硬セメントの形態中の、硬化されたミネラルバインダーが二酸化炭素と反応して、相当する炭酸塩を形成することができる。炭酸塩化されたミネラルバインダー、特には炭酸塩化されたポルトランドセメントは、一般的には、炭酸塩化されていない材料に比較して、低いpHを有している。したがって、ミネラルバインダー、特に硬化されたミネラルバインダーの炭酸塩化の進行は、pH値の低下で測定することができる。たとえば、コンクリートの炭酸塩化の進行は、コンクリートの表面に、フェノールフタレインのエタノール性溶液をスプレーすることにより、検出可能である。無色の領域は、炭酸塩化されたコンクリートを示し、紫色の領域は、炭酸塩化されていないコンクリートを示す。
【0030】
したがって、本発明の文脈の内では、炭酸塩化されたリサイクル粉体とは、炭酸塩化にかけられたミネラルバインダーである。炭酸塩化されたリサイクル粉体が、本発明の文脈の内では、炭酸塩化されたリサイクルポルトランドセメントであるのが好ましい。
【0031】
本発明の炭酸塩化されたリサイクル粉体、好ましくは炭酸塩化されたリサイクルポルトランドセメントは、部分的又は十分に炭酸塩化されていてよく、十分に炭酸塩化されているのが好ましい。実施態様においては、そのリサイクル粉体が、十分に炭酸塩化されたセメント、好ましくは十分に炭酸塩化されたポルトランドセメントを含むか、又は実質的にそれからなっている。
【0032】
炭酸塩化の進行は、たとえば、ミネラルバインダー又はミネラルバインダー組成物をCO2雰囲気に置いた際の、CO2の分圧を測定することによって求めることができる。CO2の分圧が下がるようなら、炭酸塩化が起きている。CO2の分圧が、さらに下がることがなくなったら、炭酸塩化が実質的に完了したとみなすことができる。別な方法として、ミネラルバインダー又はミネラルバインダー組成物のpH値を測定することによって、炭酸塩化の進行を求めることもできる。ポルトランドセメントをベースとするミネラルバインダー組成物の間隙溶液(pore solution)又はポルトランドセメント若しくはそれをベースとするミネラルバインダー組成物の水性スラリーのpH値が、12.5~14の間であるのならば、炭酸塩化は実質的に起きていない。それらのpHが、7~9の間の値にまで低下すれば、炭酸塩化は実質的に完了している。
【0033】
実施態様においては、本発明の方法における、少なくとも1種のミネラルバインダー対リサイクル粉体の重量比は、(99:1)~(5:95)の間、好ましくは(94:6)~(45:55)、より好ましくは(94:6)~(65:35)である。
【0034】
本発明の方法においては、ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも1種の加工性改良剤が混入される。
【0035】
「ポリカルボキシレート」という用語は、本発明の文脈の内では、ポリカルボン酸、ポリカルボキシレートエーテル、及びポリカルボキシレートエステルを表す。本発明の文脈の内で好ましいのは、ポリカルボキシレートエーテル及びポリカルボキシレートエステル(いずれも略して、PCE)である。したがって、加工性改良剤の一つの特に好ましいタイプが、PCEである。
【0036】
本発明のPCEは、以下のものを含むか、又はそれらからなっている:
(i)一般構造式(I)の繰り返し単位A、
【化1】
及び
(ii)一般構造式(II)の繰り返し単位B、
【化2】
[式中、
それぞれのR
uは、独立して、水素又はメチル基を表し、
それぞれのR
vは、独立して、水素又はCOOM(ここで、Mは、独立して、H、アルカリ金属、又はアルカリ土類金属である)を表し、
m=0、1、2又は3であり、
p=0又は1であり、
それぞれのR
1は、独立して、-(CH
2)
z-[YO]
n-R
4(ここで、Yは、C
2~C
4アルキレンであり、そしてR
4は、H、C
1~C
20アルキル、-シクロヘキシル、-アルキルアリール、又は-N(-R
i)
j-[(CH
2)
z-PO
3M]
3-jであり、z=0、1、2、3又は4であり、n=2~350であり、j=0、1、又は2であり、R
iは、水素原子又は1~4個の炭素原子を有するアルキル基を表し、そしてMは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はアンモニウムイオンを表す)である]、
そして、PCEの中の繰り返し単位A及びBは、(10:90)~(90:10)の範囲の(A:B)のモル比を有している。
【0037】
好ましい実施態様においては、本発明のPCEの側鎖R1は、-(CH2)z-[YO]n-R4であり、ここでz=0であり、YはC2アルキレンであり、n=11~350、好ましくは22~250であり、そしてR4は、H又はメチルである。
【0038】
さらなる好ましい実施態様においては、本発明のPCEのモル比(A:B)が、(10:90)~(60:30)である。
【0039】
特に好ましい実施態様においては、本発明のポリカルボキシレートエーテル及び/又はポリカルボキシレートエステルの中で、その側鎖R1が、-(CH2)z-[YO]n-R4であり、ここでz=0であり、Yは、C2アルキレンであり、n=11~350、好ましくは22~250であり、そしてR4は、H又はメチルであり、そしてモル比(A:B)は、(10:90)~(60:30)である。
【0040】
本発明のPCEは、好ましくは1000~1000000、より好ましくは1500~500000、最も好ましくは2000~100000、特には3000~75000、又は3000~50000g/molの範囲の平均分子量Mwを有している。そのモル質量Mwは、標準としてポリエチレングリコール(PEG)を用いた、ゲル-浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求める。この技法は、当業者には公知である。
【0041】
本発明におけるPCEは、ランダムコポリマーであっても、或いは非ランダムコポリマーであってもよい。非ランダムコポリマーは、特には、交互コポリマー、又はブロック若しくはグラジエントコポリマー、又はそれらの混合物である。
【0042】
本発明におけるPCEは、少なくとも1種の、一般構造式(Ia)のオレフィン性不飽和カルボン酸モノマー
【化3】
及び少なくとも1種の、一般構造式(IIa)のオレフィン性不飽和モノマーを含む混合物をフリーラジカル重合させることによって、調製することができる。
【化4】
[ここで、R
u、R
v、m、p、及びR
1は、上で示した意味合いを有し、そして、波形の結合(looped bond)は、cis-及びtrans-二重結合両方の異性体又はそれらの混合物を表している]。
【0043】
フリーラジカル重合を実施するのに適した条件は、当業者には自体公知であり、たとえば、欧州特許第1 103 570号明細書に記載されている。
【0044】
本発明におけるPCEはさらに、ポリマー類似反応によって調製することもまた可能である。具体的には、本発明におけるPCEは、一般構造式(I)の繰り返し単位を含むホモポリマー又はコポリマーを、一般構造式(III)のポリアルキレングリコールを用いてエステル化させることによって、調製することができる。
HO-R1 (III)
[式中、R1は、先に定義されたものである]
【0045】
エステル化によって本発明におけるPCEを調製するのに好適なプロセスは、当業者には自体公知であり、たとえば欧州特許第1138697号明細書(Sika AG)にも記載されている。
【0046】
少なくとも1種の、一般構造式(Ia)のオレフィン性不飽和カルボン酸モノマー、及び少なくとも1種の、一般構造式(IIa)のオレフィン性不飽和マクロモノマーに加えて、本発明におけるPCEには、1種又は複数のさらなるモノマーMが含まれていてもよい。それらのさらなるモノマーMは、以下のものから選択することができる:スチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル。
【0047】
その1種又は複数のさらなるモノマーMのモル分率が、それぞれ、そのPCEを構成する全部のモノマーを基準にして、66mol%以下、好ましくは50mol%以下、より好ましくは25mol%以下、特に好ましくは10mol%以下、特には5mol%以下であるがの好ましい。極めて特に好ましい実施態様においては、そのPCEが、さらなるモノマー単位Mを実質的に含まない。
【0048】
「リグノスルホネート」という用語は、本明細書で使用するとき、リグノスルホネートアニオンと、適切なカチオンとから構成される塩を指しており、具体的には、ナトリウムリグノスルホネート(CAS No.8061-51-6)、マグネシウムリグノスルホネート(CAS No.8061-54-9)、カルシウムリグノスルホネート(CAS No.8061-52-7)などの物質が挙げられる。本発明においては、そのカチオンは、有効性には何の役割も果たさない。リグノスルホネートは、リグニンから調製されるが、それは、さかのぼれば、植物、特には木本(woody plant)で産生される。
【0049】
リグニンは、三次元の、非晶質ポリマーであるが、他のほとんどのバイオポリマーとは異なって、規則的な配列や繰り返し単位を有している訳ではない。この理由から、定義されたリグニン構造を名づけることはできないが、その「平均的な」構造については、各種のモデルが提案されてきた。各種の分類群の植物の間、さらにはそれぞれの種の各種の組織、細胞、及び細胞壁層の間で、リグニンが一様でないことは、当業者には周知である。
【0050】
リグノスルホネートは 亜硫酸の影響下でのパルプ製造の際の副生物として形成されるが、亜硫酸は、スルホン化及びリグニンのある程度の脱メチル化を起こさせる。リグニンの場合と同様に、それらも、その構造及び組成で、多様性を有している。それらは、全pH範囲で水に可溶性であるが、エタノール、アセトン、及びその他の一般的な有機溶媒には不溶である。
【0051】
リグノスルホネートを単離及び精製する方法は、当業者には公知である。Howardプロセスにおいては、使用済みの亜硫酸塩浸出液に対して、石灰を過剰に添加することにより、カルシウムリグノスルホネートを沈殿させる。リグノスルホネートはさらに、長鎖アミンを用いて、不溶性の第四級アンモニウム塩を形成させることによっても、単離することができる。工業的スケールにおいては、限外濾過法及びイオン交換クロマトグラフィー法を使用して、リグノスルホネートを精製することもできる。
【0052】
本発明において使用することが可能な一連のリグノスルホネートが、たとえば以下のような、各種の商品名で市販されている:Ameri-Bond、Borresperse(Borregaard)、Dynasperse、Kelig、Lignosol、Marasperse、Norlig(Daishowa Chemicals)、Lignosite(Georgia Pacific)、Reax(MEAD Westvaco)、Wafolin、Wafex、Wargotan、Wanin、Wargonin(Holmens)、Vanillex(日本製紙)、Vanisperse、Vanicell、Ultrazine、Ufoxane(Borregaard)、Seria-Bondex、Seria-Con、Seria-Pon、Seria-Sol(Serlachius)、Collex、Zewa(Wandhof-Holmes)、Raylig(ITT Rayonier)。
【0053】
言うまでもないことであるが、異なったリグノスルホネートの混合物もまた使用可能である。さらには、そのリグノスルホネートは、液体の形状、固体の形状のいずれであってもよい。
【0054】
「糖酸」は、本発明の文脈においては、カルボキシル基を有する単糖である。それは、アルドン酸、ウルソン酸、ウロン酸、又はアルダル酸のいずれかのタイプに属しているのがよい。好ましくは、それがアルドン酸である。本発明に関連して有用な糖酸の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない;グルコン酸、アスコルビン酸、ノイラミン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸、粘液酸、及び糖酸。その糖酸は、遊離酸の形態であっても、塩としてでもよい。実施態様においては、糖酸の塩は、元素周期律表のIa、IIa、Ib、IIb、IVb、VIIIb族の金属を用いた塩であってよい。好ましい糖酸の塩は、アルカリ金属及びアルカリ土類金属、鉄、コバルト、銅、又は亜鉛の塩である。特別に好ましいのは、ナトリウム、カリウム、及びカルシウムとの塩である。糖酸のD-形及びL-形のいずれもが、同様に好ましい。特別に好ましい糖酸は、グルコン酸及びその塩、特にはグルコン酸ナトリウムである。
【0055】
本発明の好ましい実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が、グルコン酸ナトリウムである。
【0056】
「糖」は、本発明の感覚では、アルデヒド基又はアセタール残基を有する炭水化物である。特に好ましい実施態様においては、その糖が、単糖又は二糖の群に属する。糖の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定される訳ではない:グリセルアルデヒド、トレオース、エリトロース、キシロース、リキソース、リボース、アラビノース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、フルクトース、ソルボース、ラクトース、マルトース、スクロース、ラクツロース、トレハロース、セロビオース、キトビオース、イソマルトース、パラチノース、マンノビオース、ラフィノース、及びキシロビオース。糖は、デキストリン、糖蜜蒸留残渣、又は糖蜜の形態で使用することも可能である。糖のD-形及びL-形のいずれもが、同様に好ましい。特別に好ましい糖は、以下のものである:フルクトース、マンノース、マルトース、グルコース、ガラクトース、デキストリン、糖蜜蒸留残渣、及び糖蜜。「糖」という用語には、本発明の文脈の内では、水素化された糖もまた含まれると理解されたい。水素化された糖は、特には、水素化されたデンプン加水分解物、又は水素化されたグルコースシロップである。水素化された糖は、オリゴ糖及び多糖類を部分加水分解し、次いでそれを水素化させることにより、製造される。得られるのは、糖アルコールの混合物である。
【0057】
言うまでもないことであるが、本発明の文脈の内では、2種以上、たとえば3種又は4種を組み合わせた加工性改良剤の混合物を使用することも可能である。これは、加工性の改良においてある種の相乗効果を達成することが可能となるという利点を有している。
【0058】
たとえば、2種の異なったポリカルボキシレートの混合物を使用することも可能である。2種の異なったポリカルボキシレートとは、それら2種のポリカルボキシレートが、それらの化学的組成及び/又は構造的組成の点で異なっているということを意味している。違いは、たとえば、繰り返し単位A及び/又はBが異なっていてもよいし、或いはモル比(A:B)が異なっていてもよい(ここで、A及びBは、先に述べたものである)。違いはさらに、そのポリカルボキシレートの構造が、ランダムであるか、又は非ランダム、たとえばブロック状であるかであってもよい。さらには、1種のポリカルボキシレートと、1種の糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムとの混合物を使用することも可能である。糖とグルコン酸ナトリウムとの混合物を使用することもまた可能である。ポリカルボキシレート、糖、及び糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの混合物を使用することもまた可能である。
【0059】
実施態様においては、したがって、少なくとも1種の加工性改良剤が、以下の混合物から選択される;2種の異なったポリカルボキシレートの混合物;ポリカルボキシレートと糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムとの混合物;又は糖とグルコン酸ナトリウムとの混合物。
【0060】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が、したがって、ポリカルボキシレート、糖、及び糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの混合物である。
【0061】
本発明の方法において、少なくとも1種のミネラルバインダーに対して、リサイクル粉体、少なくとも1種の加工性改良剤、及び水を混ぜ入れることは、当業者に公知の各種適切な手段によって実施することができる。適切なミキサーとしては、たとえば以下のものが挙げられる:水平単軸シャフトミキサー、双軸パドルミキサー、垂直シャフトミキサー、リボンブレンダー、オービティングミキサー、チェンジカンミキサー、タンブリングベッセル、垂直攪拌チャンバー、又は空気攪拌操作。混合は、連続式であっても、バッチ式であってもよい。
【0062】
実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤を、少なくとも1種のミネラルバインダーとリサイクル粉体との混合物へ混入させ、その後で、混合水を混ぜ入れる。
【0063】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤を、混合水と共に、少なくとも1種のミネラルバインダーとリサイクル粉体との混合物へ混ぜ入れる。
【0064】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤を、最初に少なくとも1種のミネラルバインダーと混合し、次いでその混合物に炭酸塩バインダーを混合し、その後で水を混ぜ入れる。
【0065】
本発明の少なくとも1種の加工性改良剤を、純粋な化学物質の形態で、その液体状態又は固体状態のいずれかで、混ぜ入れることが可能である。本発明の少なくとも1種の加工性改良剤を、液体中の溶液又は分散体として混ぜ入れることも、同様に可能である。好適な溶液又は分散体は、水溶液又は水性分散体である。少なくとも1種の加工性改良剤を、乾燥させた形態、たとえば乾燥キャリヤーの上に吸着させたり、噴霧乾燥した粉体としたりして混ぜ入れることもまた可能である。
【0066】
実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が、ポリカルボキシレートから選択されているような、本発明の方法において、混ぜ入れるポリカルボキシレートの重量は、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、0.1~3.0重量%、好ましくは0.20~1.125重量%、より好ましくは0.40~0.85重量%の間である。そのような場合においては、ポリカルボキシレートの重量は、存在しているポリカルボキシレート全部の合計乾燥重量を指している。これはすなわち、2種以上の異なったポリカルボキシレートの混合物が存在しているのならば、この重量は、そのようなポリカルボキシレートの合計乾燥重量を指している。
【0067】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤がリグノスルホネートから選択されている、本発明の方法において、混ぜ入れるリグノスルホネートの重量は、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、1.0~6.0重量%、好ましくは3.5~5.5重量%、より好ましくは4.0~5.0重量%の間である。
【0068】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が糖酸、特にはグルコン酸ナトリウムから選択されている、本発明の方法において、混入される糖酸、特にはグルコン酸ナトリウムの重量は、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、0.025~1.0重量%、好ましくは0.3~0.9重量%の間である。
【0069】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が糖から選択されている、本発明の方法において、混入される糖の重量は、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、0.5~2.0重量%、好ましくは0.7~1.5重量%の間である。
【0070】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が、ポリカルボキシレートと、糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムとの混合物から選択されている本発明の方法において、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、混入されるポリカルボキシレートの重量は、0.20~1.125重量%、好ましくは0.25~0.85重量%の間であり、そして混入される糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの重量は、0.025~1.0重量%、好ましくは0.28~0.5重量%の間である。
【0071】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が、糖と、糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムとの混合物から選択される本発明の方法において、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、混入される糖の重量は、0.5~2.0重量%の間であり、そして混入される糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの重量は、0.025~1.0重量%、好ましくは0.10~0.50重量%の間である。
【0072】
さらなる実施態様においては、その少なくとも1種の加工性改良剤が、ポリカルボキシレート、糖、及び糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの混合物から選択される本発明の方法において、それぞれ、存在しているリサイクル粉体の乾燥重量を基準にして、混入されるポリカルボキシレートの重量は、0.1~3.0重量%、好ましくは0.1~1.125重量%の間であり、混入される糖の重量は、0.1~2.0重量%、好ましくは0.2~1.2重量%の間であり、そして混入される糖酸、好ましくはグルコン酸ナトリウムの重量は、0.025~1.0重量%、好ましくは0.07~0.50重量%の間である。
【0073】
本発明の方法にはさらに、ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の加工性改良剤の使用量を調節するためのステップが含まれていてもよい。その調節は、リサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性が、そのリサイクル粉体を含まない同一のミネラルバインダー組成物の加工性と実質的に同じになるようにするのが好ましい。特には、そのリサイクル粉体を含まないミネラルバインダー組成物には、排除されたリサイクル粉体を補償する量の、ミネラルバインダーの追加の量が含まれている。別の言い方をすれば、そのリサイクル粉体は、そのミネラルバインダーの置換え物質、特には部分的な置換え物質とみなすことができる。
【0074】
したがって、本発明はさらに、以下の工程を含む、少なくとも1種のミネラルバインダー及びリサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物のための、少なくとも1種の加工性改良剤の最適な使用量を測定するための方法に関する;
a)少なくとも1種のミネラルバインダー及びリサイクル粉体を含む混合物を提供すること、
b)ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種の加工性改良剤の第一の量を混ぜ入れること、
c)水を混ぜ入れること、
d)工程c)で得られた混合物の加工性を測定すること、
e)工程c)で測定された加工性を、目標の加工性と比較すること、
f)工程e)における比較が、予め決められた「しきい値」を逸脱しているようなら、工程b)において混ぜ入れる少なくとも1種の加工性改良剤の量を調節すること、及び
g)工程e)における比較が、予め決められた「しきい値」を超えなくなるまで、工程a)~f)をくり返すこと。
【0075】
好ましい実施態様においては、工程e)において使用される目標の加工性は、リサイクル粉体を一切添加することなく、工程a)で得られる同一の混合物の加工性である。さらなる好ましい実施態様においては、工程e)において使用される目標の加工性が、工程a)で得られるのと同一の混合物であるが、混入されなかったリサイクル粉体の量を補償するためのミネラルバインダーの追加の含量を有するものの加工性である。
工程f)及びg)で使用される予め決められた「しきい値」は、たとえば、50%以下、好ましくは25%以下、特には10%以下であってよい。本発明において記載された、すべてのその他の定義及び実施態様が、そのような方法にも適用される。
【0076】
第二の態様において、本発明は、以下のものを含む、ミネラルバインダー組成物、特にはコンクリート又はモルタルに関する:
a)(99:1)~(5:95)、好ましくは(94:6)~(45:55)、より好ましくは(94:6)~(65:35)の重量比にある、少なくとも1種のミネラルバインダー及びリサイクル粉体、
b)少なくとも1種の加工性改良剤、
c)少なくとも1種の骨材、
d)任意に、さらなる添加剤、及び
e)任意に、水。
【0077】
その少なくとも1種のミネラルバインダー、そのリサイクル粉体、及びその少なくとも1種の加工性改良剤は、先に述べたのと同じである。
【0078】
骨材は、バインダーの水和反応で非反応性である、各種の材料であってよい。骨材は、建設材料のために典型的に使用される、各種の骨材であってよい。典型的な骨材は、たとえば以下のものである:岩石、砕石、砂利、砂、特には、けい砂、川砂、及び/又は人工砂、スラグ、リサイクルコンクリート、ガラス、発泡ガラス、中空ガラスビーズ、ガラスセラミックス、火山岩、軽石、パーライト、バーミキュライト、採石場廃棄物、未処理若しくは焼成若しくは溶融させた土類(earth)若しくはクレー、磁器、電気溶融若しくは焼結された研磨材、焼成担体(firing support)、シリカキセロゲル。骨材は、バイオベースの骨材、たとえば麻の繊維であってもよい。本発明において有用な骨材は、そのような骨材に典型的に適した、各種の形状及びサイズを有していてよい。特別に好ましい骨材は、砂である。砂は、微粉砕されて岩石又はミネラル粒子状物質からなる、天然に産する粒子状の物質である。各種の形状及びサイズで入手可能である。適切な砂の例は、けい砂、石灰石の砂、川砂、又は破砕した骨材である。好適な砂については、たとえば標準のASTM C778又はEN 196-1に記載されている。言うまでもないことであるが、骨材の混合物も可能である。
【0079】
さらなる添加剤は、モルタル及びコンクリート産業で一般的ないかなる添加剤であってもよいが、ただし、リグノスルホネート、糖酸、糖、及びポリカルボキシレート(PCEを含む)は除く。特には、そのさらなる添加剤は、以下のものから選択することができる:可塑剤、収縮抑制剤、エアエントレーナー、脱気剤、安定剤、粘度調節剤、増粘剤、減水剤、凝結遅緩剤、促進剤、耐水剤、繊維、発泡剤、消泡剤、再乳化型ポリマー粉体、制塵剤、クロメート抑制剤(chromate reducer)、顔料、殺生物剤、腐食抑制剤、及び鉄不動態化剤。
【0080】
本発明のミネラルバインダー組成物の中の、少なくとも1種のミネラルバインダーと炭酸塩バインダーとを合わせた量は、それぞれ、組成物の合計乾燥重量を基準にして、10~79重量%、好ましくは15~60重量%の間であってよい。
【0081】
本発明のミネラルバインダー組成物の中の少なくとも1種の加工性改良剤の量は、それぞれ、組成物の合計乾燥重量を基準にして、0.025~6.0重量%、好ましくは0.1~4.5重量%、より好ましくは0.2~1.5重量%の間であってよい。
【0082】
本発明のミネラルバインダー組成物の中の少なくとも1種の骨材の量は、それぞれ、組成物の合計乾燥重量を基準にして、15~84重量%、好ましくは34~79重量%の間であってよい。
【0083】
さらなる添加剤(存在させるのなら)を合わせた量は、それぞれ、組成物の合計乾燥重量を基準にして、0.1~10重量%とすることができる。
【0084】
水(存在させるのなら)の量は、水対バインダーの比率が、0.1~0.8、好ましくは0.2~0.6、特には0.25~0.4の間となるようにすることができる。
【0085】
したがって、実施態様においては、本発明のミネラルバインダー組成物、特にはモルタル又はコンクリートには、(それぞれ、組成物の合計乾燥重量を基準にして)以下のものが含まれるか、又はそれらからなっている;
a)10~79重量%、好ましくは15~60重量%の、少なくとも1種のミネラルバインダー及び炭酸塩バインダー、
b)0.025~6.0重量%、好ましくは0.1~4.5重量%、より好ましくは0.2~1.5重量%の、少なくとも1種の加工性改良剤、
c)15~84重量%、好ましくは35.5~80.5重量%の、少なくとも1種の骨材、
d)任意に、0.1~10重量%の、さらなる添加剤、及び
e)任意に、水対バインダーの比率を、0.1~0.8、好ましくは0.2~0.6、特には0.25~0.4とする量の、水。
【0086】
したがって、本発明のミネラルバインダー組成物、特にはモルタル又はコンクリートは、乾式組成物又は湿式組成物のいずれであってもよい。
【0087】
本発明のミネラルバインダー組成物は、以下のものであってよい:コンクリート、特にはクレーン及びバケットコンクリート、ポンプトコンクリート、プレキャストコンクリート、生コンクリート、スプレードコンクリート、スリップフォームコンクリート、高性能コンクリート、超高性能コンクリート、自己充填式コンクリート、ローラー充填式コンクリート、軽量コンクリート、重量コンクリート、スパンパイルコンクリート、水中コンクリート、又はマスコンクリート。本発明のミネラルバインダー組成物はさらに、以下のものであってもよい:セメント質のタイル接着剤、グラウト材、セルフレベリング性アンダーレイメント、セルフレベリング性オーバーレイメント、下塗り(render)、補修モルタル、メーゾンリーシンジョイントモルタル又はコンクリート、スクリード、屋内用及び屋外用ウォールレベラー、非収縮性グラウト材、シンジョイントモルタル、防水用モルタル、又はアンカリングモルタル。
【0088】
コンクリートは、特には、標準のEN206である。セメント質のタイル接着剤は、特には、標準のEN12004-1に記載のものである。グラウト材は、特には、標準のEN13888に記載のものである。セルフレベリング性アンダーレイメント又はセルフレベリング性オーバーレイメントは、特には、標準のEN 13813に記載のものである。下塗りは、特には、標準のEN998-1に記載のものである。補修モルタルは、特には、標準のEN1504-3に記載のものである。メーゾンリーモルタル又はコンクリートは、特には、標準のEN 998-2及びEN206-1に記載のものである。スクリードは、特には、標準のEN206に記載のものである。非収縮性グラウト材は、特には、標準のEN1504-6に記載のものである。シンジョイントモルタルは、特には、標準のEN 998-2に記載のものである。防水用モルタルは、特には、標準のEN 1504-2に記載のものである。アンカリングモルタルは、特には、標準のEN 1504-6に記載のものである。
【0089】
また別の態様においては、本発明はさらに、リサイクル粉体を含むミネラルバインダー組成物の加工性を改良するための添加物にも関し、前記添加物には、以下のものが含まれるか、又はそれらからなる:
a)少なくとも1種の、ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、糖、又はそれらの混合物から選択される、加工性改良剤、及び
b)任意に、水。
【0090】
ミネラルバインダー、リサイクル粉体、ポリカルボキシレート、リグノスルホネート、糖酸、及び糖は、先に述べたのと同じである。
【0091】
本発明の添加物の中の水の量は、広い範囲で変化させることができる。水(存在させるのなら)の量は、それぞれ、添加物の合計重量を基準にして、好ましくは1~90重量%、好ましくは10~66重量%、より好ましくは15~50重量%の範囲である。
【0092】
本発明の添加物には、さらに、モルタル及びコンクリート産業で一般的なさらなる添加剤を含んでいてもよいが、ただし、リグノスルホネート、糖酸、糖、及びポリカルボキシレート(PCEを含む)は除く。特には、そのさらなる添加剤は、以下のものから選択することができる:可塑剤、収縮抑制剤、エアエントレーナー、脱気剤、安定剤、粘度調節剤、増粘剤、減水剤、凝結遅緩剤、促進剤、耐水剤、繊維、発泡剤、消泡剤、再乳化型ポリマー粉体、制塵剤、クロメート抑制剤、顔料、殺生物剤、腐食抑制剤、及び鉄不動態化剤。
【0093】
実施態様においては、先に述べたミネラルバインダー組成物は、水を存在させた場合、その少なくとも1種の加工性改良剤を含まない同一のミネラルバインダー組成物と比較して、少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも45%、特には少なくとも50%高い、初期のスランプフロー(EN 1015-3に従って測定)を有している。
【0094】
最後の態様において、本発明は、先に述べたミネラルバインダー組成物を、水を存在させて硬化することにより得られる、好ましくは建造物の一部としての、硬化されたミネラルバインダー組成物に関する。
【0095】
その硬化は、5~40℃の間の温度、大気圧下で実施されるのが好ましい。原理的には、そのミネラルバインダー組成物を、より高い温度及び/又はより高い圧力たとえばオートクレーブ中で硬化することもまた可能である。
【0096】
以下の実施例は、さらなる実施態様を当業者に与えるであろう。それらは、本発明を限定することを意図したものでははい。
【実施例】
【0097】
材料:
- CEM I 42.5N、CEM II/A-LL 42.5N、及びCEM II/B-LL 42.5N、標準のEN 197-1に準拠、Vigierから入手
- リサイクル粉体は、次のようにして得た:CEM I 42.5Nを23℃で、水中に懸濁させ、完全に硬化させた。その硬化させた反応生成物を80℃で乾燥させ、20℃/65%r.h.で恒量に達するまでコンディショニングさせてから、ピンミル中で摩砕して、0.063mm未満の粒子サイズとした。粉化させた材料は、反応器中、23℃/65%r.h.で保存した。その粉体を穏やかに攪拌しながら、CO2ガスの連続気流を、その反応器に通した。その炭酸塩化プロセスの後で、炭酸塩の量を熱重量分析(TGA)により測定した。TGA中で、炭酸塩は、500~800℃の温度範囲での質量損失から求められる。TGAが、55~60重量%の炭酸塩の存在を示すようなら、十分な炭酸塩化があったとみなした。
- PCE-1は、Mn=5000g/molで、メトキシ末端ポリエチレンオキシド側鎖(Mn=3000g/mol)を有し、(カルボキシレート:側鎖)のモル比=4.5の、コ(ポリ-アクリレート-ポリ-メタクリレート)である。
- PCE-2は、Mn=5000g/molで、メトキシ末端ポリエチレンオキシド側鎖(Mn=1000g/mol)を有し、(カルボキシレート:側鎖)のモル比=1.6の、コ(ポリ-アクリレート-ポリ-メタクリレート)である。
- PCE-3は、メタリルアルコール開始のポリエチレンオキシド(Mn=2400g/mol)、アクリル酸、及び2-ヒドロキシアクリレートの(0.625:0.416:2.80)のモル比でのコポリマーである。
- PCE-4は、Mn=5000g/molで、メトキシ末端ポリエチレンオキシド側鎖(Mn=1000g/mol)を有し、(カルボキシレート:側鎖)のモル比=0.8の、コ(ポリ-アクリレート-ポリ-メタクリレート)である。
- PCE-5は、Mn=5000g/molで、メトキシ末端ポリエチレンオキシド側鎖(Mn=500g/mol)を有し、(カルボキシレート:側鎖)のモル比=1.0の、コ(ポリ-アクリレート-ポリ-メタクリレート)である。
- Ligno:ナトリウムリグノスルホネート(LignoStar group BV製)。
- Gluco:グルコン酸ナトリウム(Sigma Aldrich製、>99%)
- メラッセ:サトウキビからの糖の製造時の未処理のメラッセ(固形分含量=約80重量%;pH=5.5)。
- Polysorb:水素化されたグルコースシロップ、ソルビトール含量、12重量%(Polysorb70/12)。
【0098】
測定:
- スランプフローは、EN 1015-3に従い、39cm3の容積のコーンを使用し、以下の表に示した、混合プロセス終了後の時間に測定した。60mm未満のスランプフローは計測せず、以下の表においては、いずれの場合でも「<60」の形で示した。
- 硬化の開始は、ASTM C1702-17に従い、等温伝導熱量測定法を使用して測定した。この目的のためには、CAL 8000装置(Calumetrix製)を使用して、水和熱を記録した。硬化の開始は、その熱流動曲線での、最初の極小値が観察された時点に相当する。
【0099】
実施例1
実施例1においては、単独で使用した各種の加工性改良剤がセメントペーストに及ぼす影響を評価した。CEM I 42.5Nをミネラルバインダー(鉱物質バインダー)として使用し、リサイクル粉体と、目視で均一になるまでドライブレンドした。ミネラルバインダー:リサイクル粉体の重量混合比は、82:18であった。ミネラルバインダーとリサイクル粉体との混合物を、水:バインダーの重量比が0.45となるような量の水と混合した。プロペラミキサーを用い、速度2.5~5.5m/秒で2分間かけて、混合を実施した。それぞれの加工性改良剤を、以下の表1に示した量で、混合水と共に添加した。
【0100】
次の表1に、結果の概要を示す。例1-1は、比較例であって、本発明によるものではない。例1-2~1-22は、本発明実施例である。
【0101】
【0102】
上の表1から、次のことが認められる:試験したすべての加工性改良剤が、初期のスランプフローを顕著に増大させ、同一のミネラルバインダー及びリサイクル粉体を含むが加工性改良剤を含まない組成物に比較して、長い時間、スランプを維持することが可能であった。実際のところ、ほとんどの場合において、初期のスランプフロー及びスランプフローの維持は、本発明による加工性改良剤を使用したときには、CEM II/A-LLをベースとするセメントペーストのスランプフロー性能よりも改良された(水対セメントの比率=0.45)。
【0103】
測定された凝結時間も、依然として、ほとんどの実際的用途では受容可能な範囲内であった。目標の用途が生コンクリートであるような場合では、この延長された凝結時間は、さらに有利となるであろう。
【0104】
実施例2
実施例2は、実施例1と同様にして実施したが、ただし、ミネラルバインダー:リサイクル粉体の重量混合比が、65:35であった。
【0105】
次の表2に、結果の概要を示す。例2-1は、比較例であって、本発明によるものではない。例2-2~2-7は、本発明実施例である。
【0106】
【0107】
上の表2から、次のことが認められる:試験したすべての加工性改良剤が、初期のスランプフローを顕著に増大させ、同一のミネラルバインダー及びリサイクル粉体を含むが加工性改良剤を含まない組成物に比較して、長い時間、スランプを維持することが可能であった。実際のところ、たとえば2-2、2-5、及び2-7では、初期のスランプフローが、CEM II/B-LLをベースとするセメントペーストの初期のスランプフローよりもさらに長かった(水対セメントの比率=0.45)。そして、たとえば2-5、2-6、及び2-7では、スランプフローの維持が、CEM II/B-LLをベースとするセメントペーストの性能よりも改良されていた(水対セメントの比率=0.45)。
【0108】
測定された凝結時間も、依然として、ほとんどの実際的用途では受容可能な範囲内であった。目標の用途が生コンクリートであるような場合では、この延長された凝結時間は、さらに有利となるであろう。
【0109】
実施例3
実施例3においては、組み合わせて使用した各種の加工性改良剤がセメントペーストに及ぼす影響を評価した。実施例3は、実施例1と同様にして実施したが、ただし、加工性改良剤を組み合わせて使用した。
【0110】
次の表3に、結果の概要を示す。例3-1~3-23は、本発明実施例である。
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
上の表3から、次のことが認められる:試験したすべての加工性改良剤の組合せが、初期のスランプフローを顕著に増大させ、同一のミネラルバインダー及びリサイクル粉体を含むが加工性改良剤を含まない組成物に比較して、長い時間、スランプを維持することが可能であった。
【0115】
測定された凝結時間も、依然として、ほとんどの実際的用途では受容可能な範囲内であった。目標の用途が生コンクリートであるような場合では、この延長された凝結時間は、さらに有利となるであろう。
【0116】
実施例4
実施例4は、実施例3と同様にして実施したが、ただし、ミネラルバインダー:リサイクル粉体の重量混合比が、65:35であった。
【0117】
次の表4に、結果の概要を示す。例4-1~4-12は、本発明実施例である。
【0118】
【0119】
【0120】
上の表4から、次のことが認められる:試験したすべての加工性改良剤の組合せが、初期のスランプフローを顕著に増大させ、同一のミネラルバインダー及びリサイクル粉体を含むが加工性改良剤を含まない組成物に比較して、長い時間、スランプを維持することが可能であった。測定された凝結時間も、依然として、ほとんどの実際的用途では受容可能な範囲内であった。目標の用途が生コンクリートであるような場合では、この延長された凝結時間は、さらに有利となるであろう。
【0121】
実施例5
実施例5は、実施例3と同様にして実施したが、ただし、ミネラルバインダー:リサイクル粉体の重量混合比が70:30であり、そして水:バインダーを、0.50の重量比で使用した。
【0122】
次の表5に、結果の概要を示す。例5-2~5-8は、本発明実施例である。
【0123】
【0124】
表5の結果から、次のことが認められる;試験した加工性改良剤によって、初期のスランプフローが顕著に増大している。さらに、加工性改良剤が所定の合計使用量の場合、PCE-1対PCE-2の比率が低いほど、スランプフローの維持が長くなるということも認められる。
【国際調査報告】