(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】シリコンカーバイド結晶性材料のための光吸収の低減
(51)【国際特許分類】
C30B 29/36 20060101AFI20240614BHJP
C30B 33/02 20060101ALI20240614BHJP
C30B 23/06 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C30B29/36 A
C30B33/02
C30B23/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023573110
(86)(22)【出願日】2022-06-06
(85)【翻訳文提出日】2024-01-12
(86)【国際出願番号】 US2022072773
(87)【国際公開番号】W WO2022266580
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レオナード、ロバート テイラー
(72)【発明者】
【氏名】バルカス、エリフ
(72)【発明者】
【氏名】ツウェトコフ、ヴァレリ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】クレーブニコフ、ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】オハラ、キャスリン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ブベル、サイモン
(72)【発明者】
【氏名】マルタ、デイビッド ピー.
【テーマコード(参考)】
4G077
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AB08
4G077AB09
4G077BE08
4G077DA02
4G077DA18
4G077FE11
4G077FE13
4G077HA12
(57)【要約】
シリコンカーバイドSiC結晶性材料、及び光吸収が低減したSiC結晶性材料を提供する関連する方法が開示される。一定の態様では、可視スペクトル内の光の波長について吸収係数が低減したSiC結晶性材料が開示される。波長スペクトルにわたる吸収における多様なピークは、可視スペクトルにわたり総体的な吸収係数の均一性を改善するために、SiC結晶性材料において低減されうる。SiC結晶性材料についての吸収係数のこのような改善を提供することによって、対応するデバイス中の光の反射及び透過損失の低減が実現されうる。関連する方法が開示され、これは、多様な成長後熱的調整工程ありで及びなしで、結晶性成長の様々な組み合わせを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075逆数センチメートル(cm
-1)によって規定される吸収係数範囲内にある吸収係数を含む、シリコンカーバイド(SiC)結晶性材料。
【請求項2】
前記吸収係数範囲が、前記波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.05cm
-1によって規定される、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項3】
前記吸収係数範囲が、前記波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.025cm
-1によって規定される、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項4】
145mm以上である直径を含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項5】
前記直径が、145mm~305mmの範囲内にある、請求項4に記載のSiC結晶性材料。
【請求項6】
195mm以上である直径を含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項7】
前記直径が、195mm~305mmの範囲内にある、請求項6に記載のSiC結晶性材料。
【請求項8】
4H-SiCを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項9】
半絶縁性SiCを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項10】
n型SiCを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項11】
p型SiCを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項12】
前記吸収係数が、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.1cm
-1によって規定される別の吸収係数範囲内にある、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項13】
前記吸収係数が、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075cm
-1によって規定される別の吸収係数範囲内にある、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項14】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0.15cm
-1以下である、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項15】
2mm~55mmの範囲内の厚さを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項16】
100μm~2mmの範囲内の厚さを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項17】
420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり0.15逆数センチメートル(cm
-1)未満である吸収係数を含む、シリコンカーバイド(SiC)結晶性材料。
【請求項18】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0.1cm
-1未満である、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項19】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0.07cm
-1未満である、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項20】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0cm
-1超~0.15cm
-1未満の範囲内にある、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項21】
前記吸収係数が、450nm~680nmの別の波長範囲にわたり、0.06cm
-1未満である、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項22】
145mm以上である直径を含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項23】
前記直径が、145mm~305mmの範囲内にある、請求項22に記載のSiC結晶性材料。
【請求項24】
195mm以上である直径を含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項25】
前記直径が、195mm~305mmの範囲内にある、請求項24に記載のSiC結晶性材料。
【請求項26】
4H-SiCを含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項27】
半絶縁性SiCを含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項28】
n型SiCを含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項29】
p型SiCを含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項30】
前記吸収係数が、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、0.15cm
-1未満である、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項31】
2mm~55mmの範囲内の厚さを含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項32】
100μm~2mmの範囲内の厚さを含む、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項33】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075cm
-1によって規定される吸収係数範囲内にある、請求項17に記載のSiC結晶性材料。
【請求項34】
シリコンカーバイド(SiC)の結晶性材料を成長させる工程と、
前記結晶性材料を熱的調整して、420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075逆数センチメートル(cm
-1)によって規定される吸収係数範囲内にある吸収係数を結晶性材料に提供する工程と
を含む、方法。
【請求項35】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0.15cm
-1未満である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記熱的調整が、前記結晶性材料を、1300℃~2600℃の範囲内の温度にて焼きなますことを含む、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記温度が、2000℃~2600℃の範囲内にある、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
1分当たり0.5℃~5℃の範囲内にある速度において、前記結晶性材料を前記温度からクールダウンすることを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記温度が、1300℃~2000℃の範囲内にある、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
1分当たり5℃超~100℃の範囲内の速度において、前記結晶性材料を前記温度からクールダウンすることを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記結晶性材料が、145mm以上である直径を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記直径が、145mm~305mmの範囲内にある、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記結晶性材料が、195mm以上である直径を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項44】
前記直径が、195mm~305mmの範囲内にある、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記結晶性材料が、前記結晶性材料を熱的調整する前にSiC結晶性ブールから分離されたSiCウエハーを含む、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結晶性材料に関し、より詳細には、光吸収が低減したシリコンカーバイド結晶性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンカーバイド(SiC:Silicon carbide)は、多くの魅力的な電気的及び熱物理的性質を呈する。SiCは、その物理的強度、及び化学的攻撃への高い抵抗性、並びに、耐放射性、高い破壊電界、かなり広いバンドギャップ、高い飽和の電子ドリフト速度、高温での操作、並びにスペクトルの青色、紫色及び紫外の各領域における高エネルギー光子の吸収及び発光を含む、様々な電子的性質に起因して特に有用である。ケイ素及びサファイアを含む従来のウエハー材料と比較して、SiCのこのような性質は、パワーエレクトロニクス、高周波及び光電子工学デバイスを含む、高パワー密度の半導体デバイス用のウエハーの作製に、より好適なものとする。
【0003】
SiCは優れた材料特性を呈するが、SiCを成長させるのに必要とされる結晶成長技術は、従来の他の結晶性材料のための成長プロセスとはきわめて異なり、それよりも著しくより困難である。従来の、半導体製造において利用される結晶性材料、例えばケイ素及びサファイアは、著しくより低い融点を有し、大きい直径の結晶性材料の作製を可能にする溶融した源材料からの直接結晶成長技術を可能にする。対照的に、バルク結晶性SiCは、高温において、播種された昇華成長プロセスによって生産されることが多く、ここで、様々な課題には、何よりも、不純物の取り込み、熱的及び結晶学的ストレスに伴う構造的欠陥、及び異なるポリタイプの形成が挙げられる。典型的なSiC成長技術において、基板と源材料とは両方とも反応るつぼの内側に置かれる。るつぼが加熱されるときに、熱的勾配が創製して、材料の、源材料から基板への気相の移動を促進し、基板上の濃縮へと続き、バルク結晶成長がもたらされる。不純物がドーパントとしてSiC中に導入されうること、及びこれらのドーパントが一定の性質を調節できることが既知である。SiCの昇華成長について、そのプロセスから生成されたSiC結晶中にドーパントが存在することになるように、ドーパントは様々な方法でチャンバ中に導入されうる。当該プロセスは、特定の用途のためのドーパントの適当な濃度を提供するように制御される。バルク結晶成長に続いて、SiCの個々のウエハーは、SiCのバルク結晶インゴット又はブールをスライスすることによって得ることができ、且つ個々のウエハーはそれに続いて、追加のプロセス、例えばラップ仕上げ又は研磨に供されうる。
【0004】
SiCウエハーの独特な性質は、高パワーのアレイ及び/又は高周波数の半導体デバイスの設計及び作製を可能にする。継続した開発が、このような半導体デバイスが一層広範な商業的用途のために製造されることを可能にするSiCウエハーの作製における成熟したレベルへと導いてきた。半導体デバイス産業が成熟を続けているため、SiCウエハー特性の継続した改善が、現代の半導体デバイス及び用途の挑戦的要請に見合うことが必要とされている。SiC結晶性材料はまた、半導体デバイスを超えた構造体の部品としても有用でありうる。
【0005】
この技術分野は、用途における従来のウエハーに伴う課題を克服しながら、改善したSiC結晶性材料、ウエハー及び関連するデバイスの探求を続けている。
【発明の概要】
【0006】
シリコンカーバイド(SiC)結晶性材料、及び光吸収が低減したSiC結晶性材料を提供する関連する方法が開示される。一定の態様では、可視スペクトル内の光の波長について吸収係数が低減したSiC結晶性材料が開示される。波長スペクトルにわたる吸収における様々なピークが、SiC結晶性材料において低減させて、可視スペクトルにわたり、総体的な吸収係数の均一性を改善することができる。SiC結晶性材料についての吸収係数のこのような改善を提供することによって、対応するデバイス中の光の反射及び透過損失の低減が実現されうる。様々な成長後熱的調整工程ありの及びなしの、結晶性成長の様々な組み合わせを含む関連する方法が開示される。
【0007】
一態様では、SiC結晶性材料は、420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075逆数センチメートル(reciprocal centimeter)(cm-1)によって規定される吸収係数範囲内にある吸収係数を含む。一定の実施例では、吸収係数範囲は、当該波長範囲にわたり、プラス若しくはマイナス0.05cm-1、又はプラス若しくはマイナス0.025cm-1によって規定される。一定の実施例では、SiC結晶性材料は145mm以上である直径を含み、又は直径は145mm~305mmの範囲内にある。一定の実施例では、SiC結晶性材料は195mm以上である直径を含み、又は直径は195mm~305mmの範囲内にある。一定の実施例では、SiC結晶性材料は、4H-SiC、又は半絶縁性SiC、又はn型SiC、又はp型SiCを含む。一定の実施例では、吸収係数は、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.1cm-1によって規定される別の吸収係数範囲内にある。一定の実施例では、吸収係数は、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075cm-1によって規定される別の吸収係数範囲内にある。一定の実施例では、吸収係数は、当該波長範囲にわたり、0.15cm-1以下である。いくつかの実施例では、SiC結晶性材料は、2mm~55mmの範囲内の、又は100μm~2mmの範囲内の厚さを含む。
【0008】
別の態様では、SiC結晶性材料は、420nm~700nmの波長範囲にわたり、0.15cm-1未満である吸収係数を含む。一定の実施例では、吸収係数は、当該波長範囲にわたり、0.1cm-1未満、又は0.07cm-1未満である。一定の実施例では、吸収係数は、当該波長範囲にわたり、0cm-1超~0.15cm-1未満の範囲内にある。一定の実施例では、吸収係数は、450nm~680nmの別の波長範囲にわたり、0.06cm-1未満である。一定の実施例では、SiC結晶性材料は、145mm以上である直径を含み、又は直径は145mm~305mmの範囲内にある。一定の実施例では、SiC結晶性材料は、195mm以上である直径を含み、又は直径は195mm~305mmの範囲内にある。一定の実施例では、SiC結晶性材料は、4H-SiC、又は半絶縁性SiC、又はn型SiC、又はp型SiCを含む。一定の実施例では、吸収係数は、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、0.15cm-1未満であり、又は450nm~680nmの別の波長範囲にわたり、0.06cm-1未満である。いくつかの実施例では、SiC結晶性材料は、2mm~55mmの範囲内、又は100μm~2mmの範囲内の厚さを含む。一定の実施例では、吸収係数は、当該波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075cm-1によって規定される吸収係数範囲内にある。
【0009】
別の態様では、方法は以下を含む:シリコンカーバイド(SiC)の結晶性材料を成長させる工程;及び結晶性材料を熱的調整して、420nm~700nmの波長範囲にわたり、プラス若しくはマイナス0.075cm-1によって規定される吸収係数範囲内にある吸収係数を結晶性材料に提供する工程。一定の実施例では、吸収係数は、当該波長範囲にわたり、0.15cm-1未満である。一定の実施例では、熱的調整は、1300℃~2600℃の範囲内にある、又は2000℃~2600℃の範囲内にある温度にて結晶性材料を焼きなます工程を含む。一定の実施例では、方法は、1分当たり0.5℃~5℃の範囲内の速度において、結晶性材料を当該温度からクールダウンする工程を更に含む。一定の実施例では、当該温度は、1300℃~2000℃の範囲内にある。一定の実施例では、方法は、1分当たり5℃超~100℃の範囲内の速度において、結晶性材料を当該温度からクールダウンする工程を更に含む。一定の実施例では、結晶性材料は145mm以上である直径を含み、又は直径は145mm~305mmの範囲内にある。一定の実施例では、結晶性材料は195mm以上である直径を含み、又は直径は195mm~305mmの範囲内にある。一定の実施例では、結晶性材料は、結晶性材料を熱的調整する前に、SiC結晶性ブールから分離されたSiCウエハーを含む。
【0010】
別の態様では、個々の又は一緒の先の態様、及び/又は本明細書に記載されている様々な別々の態様及び特徴のうちの任意のものが、追加の利点のために合わされてもよい。本明細書で開示されている様々な特徴及び要素のうちの任意のものは、本明細書で逆に示されていない限り、1つ又は複数の他の開示されている特徴及び要素と組み合わされてもよい。
【0011】
当業者であれば、本開示の範囲を認識し、添付の図面を伴って、以下の、好ましい実施例の「発明を実施するための形態」を読んだ後、それらの追加の態様を認めることになる。
【0012】
本明細書中に組み込まれている且つ本明細書の一部を形成している添付の図面は、本開示の原則を説明するように働く記載と一緒に、本開示のいくつかの態様を例示する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本明細書で開示されている実施例による結晶性シリコンカーバイド(SiC)を成長させるプロセスを例示している。
【
図1B】本明細書で開示されている実施例による結晶性シリコンカーバイド(SiC)を成長させるプロセスを例示している。
【
図2】六方晶のための配位系、例えば4H-SiCを示す、第1の透視図結晶面略図である。
【
図3】c面と平行していない面を例示する、六方晶についての第2の透視図結晶面略図である。
【
図4】c面に対する近接ウエハーの配向性を示す、透視図ウエハー配向性略図である。
【
図5A】結晶学的面を示す付け加えた矢印を伴う、例示的なSiCウエハーの平面図である。
【
図5B】結晶学的面を示す付け加えた矢印を伴う、例示的なSiCウエハーの平面図である。
【
図6】本開示の態様による、光吸収係数が低減したSiC結晶性材料に提供するための、例示的な作製シーケンスを例示するプロセスフローチャートである。
【
図7A】従来の熱的調整ありの及びなしの、SiCウエハーについての可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。ここで、SiCウエハーは、同一の結晶性ブールの隣接した部分から選択した。
【
図7B】従来の熱的調整ありの及びなしの、
図7Aと同一の結晶性ブールの隣接した部分からの2種の他のSiCウエハーについての、
図7Aのグラフと類似のグラフである。
【
図7C】従来の熱的調整ありの及びなしの、
図7Aと同一の結晶性ブールの隣接した部分からの2種の他のSiCウエハーについての、
図7Aのグラフと類似のグラフである。
【
図7D】従来の熱的調整ありの及びなしの、
図7Aと同一の結晶性ブールの隣接した部分からの2種の他のSiCウエハーについての、
図7Aのグラフと類似のグラフである。
【
図8】従来のn型SiCウエハー、従来の半絶縁性SiCウエハー、及び本開示によるSiCウエハーを有する従来のサファイアウエハーと比較した、可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。
【
図9】
図8からの従来のサファイアウエハーと比較した、
図8の実験個体群からの1種のウエハーについての、可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。
【
図10】本開示の原則に従った熱的調整を有するSiCウエハーと比較した、任意の熱的調整なしの、SiCウエハーについての可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に明記される実施例は、当業者が実施例を実践するのを可能にするために必要な情報を表し、且つ実施例を実践する最良のモードを例示している。当業者であれば、添付の図面に照らして以下の「発明を実施するための形態」を読むことで本開示の概念を理解することになり、本明細書において特に検討されていないこれらの概念の適用を認めることになる。これらの概念及び適用が、本開示及び添付の特許請求の範囲内に落とし込まれることが理解されるべきである。
【0015】
第1の、第2のなどの用語が、本明細書において、多様な要素を記載するのに使用されうるが、これらの要素がこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されることになる。これらの用語は、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。例えば、本開示の範囲から逸脱することなく、第1の要素は第2の要素と称されてもよく、同様に、第2の要素は第1の要素と称されてもよい。本明細書で使用されるとき、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数の、任意の及び全ての組み合わせを含む。
【0016】
層、領域又は基板等の1つの要素が別の要素の「上に(on)」ある、若しくは別の要素の「上へ(onto)」延びていると称されているとき、それは、他の要素の上に直接的にある、若しくは他の要素の上へ直接的に延びていることがあり得、又は介在する要素がまた存在しうることが理解されることになる。対照的に、1つの要素が別の要素の「直接的に上に(directly on)」ある、又は別の要素の「直接的に上へ(directly onto)」延びていると称されるとき、介在する要素は存在しない。同様に、層、領域又は基板等の1つの要素が別の要素の「上に(over)」ある、若しくは別の要素の「上へ(over)」延びていると称されるとき、それは、他の要素の上に直接的にありうること、若しくは他の要素の上に直接的に延びていることがあり得、又は介在する要素がまた存在しうることが理解されることになる。対照的に、1つの要素が別の要素の「上に直接的に(directly over)」ある、若しくは別の要素の「直接的に上に(directly over)」延びていると称されるとき、介在する要素は存在しない。1つの要素が別の要素に「結合されている」、又は「カップリングされている」と称されるとき、それは、他の要素に直接的に結合されている、若しくは直接的にカップリングされていることがあり得、又は介在する要素が存在しうる。対照的に、1つの要素が別の要素に「直接的に結合されている」又は「直接的にカップリングされている」と称されるとき、介在する要素は存在しない。
【0017】
「下の(below)」若しくは「上の(above)」、又は「より上の(upper)」若しくは「より下の(lower)」、又は「水平の」若しくは「垂直の」等の相対的な用語は、本明細書では、図に例示しているように、1つの要素、層又は領域の、別の要素、層又は領域に対する関係を説明するのに使用されうる。これらの用語、及び上に検討されているものが、図面中で描写されている配向性に加えてデバイスの異なる配向性を包括すると意図されていることが理解されることになる。
【0018】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを説明する目的のためであり、本開示を限定するとは意図されていない。本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに逆のことを示していない限り、複数形も含むと意図される。用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」が、本明細書で使用されるとき、述べられている特徴、整数、工程、操作、要素及び/又は成分の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、工程、操作、要素、成分、及び/又はそれらの群の存在又は追加を除外するものではないことが更に理解されることになる。
【0019】
別段の定義がなされていない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本開示が属する当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。本明細書で使用される用語が、本明細書の文脈及び関連する技術分野におけるそれらの意味と一致している意味を有すると解釈されるべきであること、並びに本明細書で明示的にそのように定義されていない限り、理想化された又は過度に型どおりの意味において解釈されることにはならないことが、更に理解されることになる。
【0020】
実施例は、本明細書において、本開示の実施例の概略図を参照して説明される。そのようなものとして、層及び要素の実際の寸法が異なることがあり、且つ、例えば製造技術及び/又は許容値の結果として、図の形状からのバリエーションが予想される。例えば、正方形又は長方形として描かれている又は説明されている領域は、丸い又は曲がった外観を有してもよく、且つ直線として示されている領域は、いくらかの不規則性を有してもよい。そのため、図面中に描かれている領域は概略図であり、それらの形状は、デバイスの領域の正確な形状を描いているとは意図されておらず、且つ本開示の範囲を限定するとは意図されていない。加えて、構造体又は領域のサイズは、図示目的のための他の構造体又は領域に対して誇張されていることがあり、そのため、本主題の一般的な構造体を描くように提供されており、縮尺通りに描かれていることもあり、描かれていないこともある。図面間の共通した要素は、本明細書では、要素の共通の数字で示され得、それに続いて再度説明されることはないことがある。
【0021】
シリコンカーバイド(SiC)結晶性材料、及び光吸収が低減したSiC結晶性材料を提供する、関連する方法が開示されている。一定の態様では、可視スペクトル内の光の波長についての吸収係数が低減したSiC結晶性材料が開示されている。波長スペクトルにわたる多様な吸収ピークは、可視スペクトルにわたる総体的な吸収係数の均一性を改善するために、SiC結晶性材料において低減されうる。SiC結晶性材料についての吸収係数のこのような改善を提供することによって、対応する光電子工学デバイス及び/又は光学部品中の光の反射及び透過損失の低減が実現されうる。多様な成長後熱的調整工程ありの及びなしの、結晶成長の様々な組み合わせを含む、関連する方法が開示されている。
【0022】
SiCのための、播種された昇華成長プロセスの一般的な態様が、良好に確立されている。そのようなものとして、結晶成長の分野における当業者、及び特にSiC成長及び関連する系の分野における当業者であれば、所与の技術又はプロセスの特定の詳細が、多くの関係する状況、プロセッシング条件及び装置の立体配置に応じて多様でありうることを認めることになる。したがって、当業者が、不必要な実験なしで、提供されている開示に基づいて、本明細書で開示されている多様な実施例を組み込み且つ使用することができることになるという認識を伴って、本明細書で与えられる説明は、一般的且つ概略的意味において最も適当に与えられる。加えて、当業者であれば、本明細書に記載されている型のSiC昇華系が、様々な標準的立体構造において市販されていることを認めることになる。或いは、昇華系は、必要な又は適当なところで、通例の立体構造において設計され実行されうる。したがって、本明細書に記載されている実施例は、昇華系の特定のサブセット、又は任意の特定な系の立体構造に限定されない。そうではなく、昇華系の多くの異なる型及び立体構造が、本明細書に開示されている実施例に従って、結晶性SiC材料を成長させるために使用されうる。
【0023】
図1A及び
図1Bは、本明細書に開示されている実施例に従って結晶を成長させる方法を例示している。
図1Aにおいて、るつぼ10は源材料12を収容し、るつぼ10の内部は、成長ゾーンとして働く。源材料12は、固体、粉末及び気体のうちの1種又は複数の組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない多様な形態のうちの任意のものにある任意の好適な材料、例えばケイ素(Si)、炭素(C)、SiC、ケイ素化合物、炭素化合物、又は先のもののうちの任意の又は全ての組み合わせが挙げられうる。他の任意選択の要素、例えばドーパント(例えば、何よりも、窒素(N))及びひずみ補償成分(例えば、何よりも、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ヒ素(As)及びリン(P))がまた、源材料12中にも含まれうる。ひずみ補償成分は、存在するとき、好ましくは、ドーパントとして、同数の電子を有しているか、又は同じ大多数の担体型(例えば、n型又はp型、ドナー又はアクセプター)を有しているかの、いずれかである。或いは、他の要素のうちの1つ、いくつか又は全てが、源材料12中に含める以外の方法で、成長ゾーン内へ導入されうる。種14、例えば結晶性SiCは、るつぼ蓋16の近くに置かれてもよく、これは、それに続いて、
図1Aの点線の矢印により示されているように、るつぼ10上に置かれる。この方法において、種14は、るつぼ10が加熱されるにつれて、るつぼ10の中、源材料12の上に懸濁される。他の配置において、種14は、るつぼ10内のいずれの場所に置かれてもよく、例えばるつぼ10の底表面又は側表面に沿って置かれてもよい。
【0024】
結晶成長の間、源材料12は昇華し、種14上にSiCを形成する。昇華は、源材料12が、他の温度範囲よりも、1200℃~3000℃、又は1800℃~3000℃、又は1800℃~2500℃、又は1800℃~2000℃、又は2000℃~2200℃を含む範囲内の温度に加熱されるときに起こりうる。源材料12の温度が上げられている間、種14の成長表面の温度は、同様に、源材料12の温度に近づく温度へと上げられる。典型的には、種14の成長表面は、他の温度範囲よりも、1200℃~3000℃、又は1800℃~3000℃、又は1800℃~2500℃、又は1700℃~2400℃、又は1800℃~2000℃、又は2000℃~2200℃を含む範囲内の温度に加熱される。成長プロセスの間、るつぼ10は、ゆっくりと真空状態にされて、圧力を低下させる及び/又は維持する。一定の実施例では、成長は、他の圧力範囲よりも、0.1トール(13Pa)~50トール(6.7kPa)、又は0.1トール(13Pa)~25トール(3.3kPa)、又は0.1トール(13Pa)~15トール(2.0kPa)、又は1トール(133Pa)~15トール(2.0kPa)を含む範囲内の圧力において実施されうる。成長温度及び成長圧力は、一般に、互いに多様であってもよい。例えば、成長条件に応じて、より高い成長温度がより高い成長圧力に伴われ得、又はより低い成長温度がより低い成長圧力に伴われうる。源材料12、及び種14の成長表面を、それらのそれぞれの温度にて十分な時間の間、維持することによって、所望のポリタイプの単結晶性SiCの巨視的成長が、種14上に形成しうる。
【0025】
図1Bに目を向けると、SiC結晶18は、るつぼ10中で、物理的蒸気輸送プロセスを用いて、源材料12からの昇華から成長される。結晶成長は、SiC結晶18の成長が一定の長さに達するまで起きる。長さ(又は種14からの高さ)は、部分的に、利用されることになる形成後プロセッシングの型に依存する。長さはまた、構造的結晶性欠陥を含むSiC結晶18の様々な結晶性品質特性によっても限定されうる。SiC結晶18の成長が止められるところのポイントはまた、るつぼ10のサイズ及びタイプ、並びにドーパントの任意の濃度、及び源材料12中に存在するときのひずみ補償成分のようなパラメータにも依存することになる。このポイントは、得られたSiC結晶18の検査とカップリングされた実験上の成長を通して事前に決定されて、不純物の濃度を決定しうる。SiC結晶18が所望のサイズに達したら、系は、不活性ガスで埋め戻されて圧力を上げ得、温度はゆっくりと中間温度へと下がり、次いで、より急速に室温に下がりうる。一定の実施例では、中間温度は、他の温度よりも、成長温度の約90%、又は80%、又は70%であってよい。中間温度は、他の温度範囲よりも、150℃~2000℃、又は150℃~1200℃、又は150℃~500℃、又は175℃~225℃の範囲を含みうる。得られたSiC結晶18は、結晶性ブール又はインゴットを形成しうる。
【0026】
SiCの昇華成長は、多種の成長系、異なるサイズのるつぼ、多種の材料の異なるタイプのるつぼ、及び様々な加熱方法を用いることで達成されうる。特定の成長温度及び圧力が当業者によって適用されて、それらの変数に合わせうる。るつぼのタイプ又はサイズとしてのこのような変数が変更されるところの典型的な事例では、いくつかの実験上の成長が、上に挙げられたように実施されて、特定の系のための最良の成長条件に決定する必要がありうる。結晶成長の後、SiC結晶18は、時々ブール又はインゴットと称されるバルク結晶性材料を形成する。
【0027】
マイクロ電子の、光電子工学の及びマイクロ加工の様々な用途は、多種の有用な系を作製するための出発構造体として、結晶性材料の薄層(例えばウエハー)を必要とする。バルク結晶性材料から結晶性材料の薄層を形成する様々な方法には、ソーイング及びレーザー補助分離技術が挙げられる。一定の実施例では、結晶性ブール又はインゴットから薄層を切断する方法には、ワイヤーソーの使用が含まれる。ワイヤーソーイング技術は、多種の結晶性材料、例えばSi、サファイア及びSiCに適用されてきた。バルク結晶性材料からウエハー又は基板を分離する別の方法は、バルク結晶性材料内にレーザーサブ表面損傷を形成する工程と、それに続いてレーザーサブ表面損傷に沿ってバルク結晶性材料からウエハーを分離する工程とを含む、レーザー補助分離技術を含む。結晶性材料中にサブ表面損傷を形成するためのツールは、レーザー発光が、結晶性材料の内部内に焦点が当てられることを許容し、且つレーザーの、結晶性材料に対して横に向かう動きを可能にする。このようなレーザー補助分離技術は、ソーイング技術と比較して、カーフロス、又は個々のウエハーの形成と関連する材料損失の総量を低減しうる。
【0028】
本明細書で使用されるとき、「基板」又は「ウエハー」は、結晶性材料、例えば単結晶半導体材料を指す。一定の実施例では、用語「基板」及び「ウエハー」は互換的に使用されてよく、ウエハーは、典型的には、その上に形成されうる半導体デバイスのための基板として用いられる。そのようなものとして、基板又はウエハーは、より大きいバルク結晶性材料、例えばブール、インゴット、又はより大きい基板から分離された自立型結晶性材料を指してよい。一定の実施例では、ウエハーは、(i)1つ又は複数の半導体材料層のエピタキシャルな堆積を支持するように表面加工される(例えばラップ仕上げ及び又は研磨)のに十分な厚さを有しうる、並びに任意選択で(ii)硬い担体から分離される場合に及び硬い担体から分離されるときに自立型であるように十分な厚さを有しうる。一定の実施例では、ウエハーは、一般に、円筒形又は円形の形状を有してよく、その一方で他の実施例では、ウエハーは、一般に、正方形及び/又は長方形の形状を有してよい。一定の実施例では、ウエハーは、以下の厚さのうちの少なくとも約1つ又は複数の厚さを有してよい:200ミクロン(μm)、300μm、350μm、500μm、750μm、1ミリメートル(mm)、2mm、又はそれ以上若しくはそれ以下。他の用途では、厚さは、半導体デバイスの域を越えた光学部品における使用のために、より小さくてもより大きくてもよく、例えば、100μm~4mmの範囲内、又は100μm~55mmの範囲内、又は100μm~50mmの範囲内、又は2mm~55mmの範囲内である。一定の実施例では、ウエハーは、2枚のより薄いウエハーへと分割するより厚いウエハーを含んでもよい。一定の実施例では、ウエハーは、複数の電気的に操作可能なデバイスを備えたデバイスウエハーの一部としてその上に配置された1つ又は複数のエピタキシャル層(任意選択で1つ又は複数の金属接触を併用して)を有する、より厚い基板又はウエハーの部分であってもよい。デバイスウエハーは、本開示の態様に従って分割されて、より薄いデバイスウエハーと、その上に1つ又は複数のエピタキシャル層(任意選択で1つ又は複数の金属接触を併用して)がそれに続いて形成されうる第2のより薄いウエハーとを生成してもよい。一定の実施例では、大きい直径のウエハーは、およそ145mm以上、又は150mm以上、又は195mm以上、又は200mm以上、又は300mm以上、又は450mm以上の直径を含んでもよく、又は145mm~455mm、又は145nm~305nm、又は195nm~305nm、又は195mm~455mm、又は145mm~205mmの範囲内にある直径を含んでもよい。一定の実施例では、ウエハー又は基板は、およそ145mm以上、又は150mm以上、又は195mm以上、又は200mm以上の直径を有する、又は上の特定の直径範囲のうちの任意のものを有する、4H-SiC又は6H-SiCを含んでよく、且つ100μm~1000μmの範囲内、又は100μm~800μmの範囲内、又は100μm~600μmの範囲内、又は150μm~500μmの範囲内、又は150μm~400μmの範囲内、又は200μm~500μmの範囲内、又は300μm~1000μmの範囲内、又は500μm~2000μmの範囲内、又は500μm~1500μmの範囲内にある厚さ、又は任意の他の厚さ範囲にある厚さ、又は本明細書で特定された任意の他の厚さ値を有する4H-SiC又は6H-SiCを含んでよい。
【0029】
相対的な寸法に関して、用語「およそ」は、一定の許容値内、例えば直径寸法からのプラス又はマイナス5mm内の名称寸法を意味すると定義される。例えば、本明細書で使用されるとき、「150mm」直径を有するウエハーは、145mm~155mmを含む直径範囲を包含してよく、「200mm」直径を有するウエハーは、195mm~205mmを含む直径範囲を包含してよく、「300mm」直径を有するウエハーは、295mm~305mmを含む直径範囲を包含してよく、且つ「450mm」直径を有するウエハーは、445mm~455mmを含む直径範囲を包含してよい。更なる実施例では、このような許容値はより小さくてもよく、例えばプラス若しくはマイナス1mm、又はプラス若しくはマイナス0.25mmであってもよい。
【0030】
本明細書で開示されている実施例は、単結晶バラエティーと多結晶性バラエティーとの両方の、多種の結晶性材料の基板又はウエハーに適用されうる。一定の実施例では、基板又はウエハーは、立方晶の、六方晶の及び他の結晶構造を含んでよく、且つ軸上の及び軸外の結晶学的配向性を有する結晶性材料を含んでよい。例示的な実施例には、六方晶構造を有する単結晶半導体材料、例えば4H-SiC又は6H-SiCが挙げられうる。本明細書で後に記載される様々な例示的実施例は、一般にSiCを、又は特に4H-SiCを挙げているが、他の好適な結晶性材料が使用されうることが認められることになる。多種のSiCポリタイプの中で、パワーエレクロトニクスデバイス用の4H-SiCポリタイプが、その高い熱伝導性、広いバンドギャップ及び等方的な電子移動度に起因して、特に魅力的である。4H-SiCポリタイプはまた、光電子工学デバイスにとっても特に魅力的である。本明細書で開示されている実施例は、軸上SiC(すなわちそのc面から意図的な角度偏差がない)又は軸外SiC(すなわち典型的に、非ゼロ角度、典型的には0.5~10°又はそのサブ範囲、例えば2~6°又は別のサブ範囲により、成長軸から、例えばc軸から離れている)に適用されうる。本明細書で開示されている一定の実施例は、1~10°、又は2~6°若しくは約2°、4°、6°又は8°を含む範囲内のオフカットを有する軸上4H-SiC又は近接(軸外)4H-SiCを利用しうる。
【0031】
本明細書で開示されている実施例はまた、ドープされた結晶性半導体材料(例えば、nドープ導電性SiC及び/又はpドープSiC、及び/又は導電性SiC)と、共ドープされた及び/又はドープされていない結晶性半導体材料(例えば、半絶縁性SiC又は高抵抗性SiC)との両方に適用されうる。一定の実施例では、SiCブール及びSiCウエハーを含むSiC結晶性材料は、n型ドーピング(意図的な及び意図的ではないドーパント、例えばNを含む)及び/又はp型ドーピングを含んでもよい。他の実施例では、半絶縁性SiCブール及び半絶縁性SiCウエハーを含むより高い抵抗性のSiC結晶性材料は、意図的にではなくドープされた、又はドープされていないSiCを含んでもよい。半絶縁性SiCウエハーは、バナジウム(V)、アルミニウム(Al)、又はこれらの組み合わせでドープされうる。共ドープSiCウエハーは、実施例に応じて、何よりも、2種以上のドーパント、例えばN、Al、V及びBの組み合わせを含んでもよい。
【0032】
結晶性SiCは、多様な構造的結晶欠陥を含むことがあり得、含まれるのは、何よりも、転位(例えば、何よりも、マイクロパイプ、ねじ切り端部、ねじ切りスクリュー及び/又は基礎面の各転位)、六方晶空隙(hexagonal void)、及び積層欠陥である。構造的結晶欠陥は、結晶成長の間に及び/又は成長後のクールダウンの間に形成されることがあり、ここで、1つ又は複数の途切れが、結晶性SiCの材料格子構造体中に形成される。このような構造的結晶欠陥は、作製、適切な操作、デバイス収率、及びSiCウエハー上に形成された後の半導体デバイスの信頼性に対して弊害をもたらしうる。多様な構造的結晶欠陥の存在は、ウエハーの形状において、多様な逸脱に寄与しうる、自立性SiCウエハー中にストレスをもたらすおそれがある。構造的欠陥はまた、SiC結晶性材料が個別の半導体デバイスを超えた用途における光学部品として使用されるとき、透過を妨げるおそれがある。
【0033】
図2は、4H-SiC等の六方晶についての配位系を示す、第1の透視図結晶面略図であり、ここで、[0001](垂直)結晶方向に対応するC面((0001)面)は、M面(
【数1】
面)とA面(
【数2】
面)との両方に対して直角であり、R面(
【数3】
面)に対して非垂直である。小さいオフカット(例えば結晶学的c面からの角度の半分未満)を有する軸上SiCウエハー又はC面(C-face)SiC結晶性材料は、SiCのホモエピタキシャル層の高品質のエピタキシャル成長のための成長基板並びに他の材料(例えば窒化アルミニウム(AIN:aluminum nitride)及び他のIII群ニトリド)として頻繁に利用される。C面(C-face)SiC結晶性材料に加えて、本開示の原則はまた、A面(A-face)、M面(M-face)及び
【数4】
面SiC結晶性材料のうちの1種又は複数にも適用されうる。なおも更なる実施例では、本開示の原則は、SiCの複屈折の性質を活用するために、SiC結晶性材料が様々な3次元形状、例えばプリズムにおいて形成されるところの実施例に当てはめることができる。
【0034】
上に記載した通り、結晶学的c面に対して平行ではない末端面を有する近接(オフカット又は軸外としても知られる)ウエハーを製造することもまた可能である。多様な度(例えば、0.1°、0.25°、0.5°、0.75°、1°、2°、4°、6°、8°、又はそれ以上の度)を有する近接ウエハー(例えばSiCの)オフカットが、SiCのホモエピタキシャル層の高品質エピタキシャル成長のための成長基板並びに他の材料(例えばAIN及び他のIII群ニトリド)として頻繁に利用される。近接ウエハーは、c軸から離れた方向においてブール又はインゴットを成長させる(例えば、近接種材料にわたり成長させ、且つインゴット側壁に垂直なインゴットをソーイングする)ことによるか、又は軸上種材料で開始してインゴットを成長させて、インゴット側壁に対しての垂直から離れた角度においてインゴットをソーイングする若しくは切断することによるか、のいずれかによって生成されうる。
図3は、c面に対して平行ではない面20を例示している、六方晶についての第2の透視図結晶面略図であり、ここでベクトル22(これは面20に対してノーマルである)は、傾斜角βによって[0001]方向から傾いて離れ、傾斜角βは、
【数5】
方向に向けて(わずかに)傾けられている。
図4は、c面((0001)面)に対する近接ウエハー24の配向性を示す透視図ウエハー配向性略図であり、ここで、ベクトル22A(これはウエハー面24’に対してノーマルである)は、傾斜角βによって[0001]方向から傾いて離れている。この傾斜角βは、ウエハー面24’の(0001)面とプロジェクション26との間に架かる直交の傾斜(又は配向性不一致の角度)βと等しい。
【0035】
図5A及び5Bは、例示的なSiCウエハー28-1、28-2の平面図であり、これは、上部面28’(例えば、これは(0001)面(c面)と平行であり、[0001]方向に垂直である)を含み、且つ一般に丸い端28’’(直径φを有する)によって横方向に結合している。
図5Aにおいて、SiCウエハー28-1の丸い端28’’は、
【数6】
面に対して垂直であり、且つ
【数7】
方向に対して平行であるプライマリーフラット30(長さL
Fを有する)を含む。
図5Bにおいて、SiCウエハー28-2の丸い端28’’は、
図5Aに例示されているプライマリーフラット30の代わりにノッチ32を含む。特定の用途に応じて、ノッチ32は、その上でSiCウエハー28が加工されうる多様な半導体製造ツールとの適合性のために設けられてもよい。先に記載したように、SiCウエハー28-1、28-2はまた、c面に正しく整列されていないことがある(例えば、c面に対する斜の角度において軸外である)。
【0036】
SiCウエハーは、発光ダイオードを含む、光電子工学デバイス用の成長基板及び/又は担体基板として利用されうる。多くのデバイス作製工程は、個々の光電子工学デバイスが、対応するSiCウエハーから単一化される前に、ウエハーレベルにて大部分が起こりうる。この点において、それぞれの個々の光電子工学デバイスは、デバイス基板として働く元々のSiCウエハーの一部を含みうる。多くの用途において、光電子工学デバイスによって発生する光は、残っているSiCウエハー(例えばデバイス基板)の部分と相互作用しうる。光電子工学デバイス、例えばいわゆるフリップ-チップデバイスの一定の形状は、発生した発光が、デバイス基板のSiC材料を意図的に通るように更に配置されうる。本開示の原則によれば、SiCウエハーには、可視スペクトルにわたる光の波長について低減した吸収係数が提供され、それにより、対応する光学デバイス及び/又は光電子工学デバイスの明度及び効率を改善する。一定の態様では、波長スペクトルにわたる吸収係数における多様なピークは、SiCウエハーにおいて低減されて、可視スペクトルにわたる総体的吸収係数の均一性を改善する。したがって、対応する光電子工学デバイス中の光の反射及び透過損失の低減が実現されうる。
【0037】
一定の実施例では、本開示による吸収係数の値及び統一性を有するSiC結晶性材料は、個別の光電子工学のデバイスの域を越えた用途において有用でありうる。例えば、本開示によるSiC結晶性材料は、光学部品を通る光の透過及び/又は反射のためにこのような光学部品を使用する視覚用途のための光学部品を形成しうる。例示的な光学部品には、光学平面、光学レンズ及び光学ウィンドウが挙げられる。一定の実施例では、他の光学部品には、基板、導波管及び鏡のうちの1種又は複数が挙げられうる。なおも更なる実施例では、本開示の結晶性材料は、量子コンピューティング用途、例えば量子ビットのストレージにおける、部品及び/又は統合された部品のために使用されうる。
【0038】
図6は、SiC結晶性材料、例えば本開示の態様による光吸収係数が低減したSiCウエハーに提供するための例示的な作製シーケンスを例示している方法フローチャート34である。第1の工程36において、バルクSiCの結晶性成長は、
図1A及び1Bについて一般に上に記載されているように生じうる。用途に応じて、SiC結晶性材料は、ドープされた結晶性材料(例えば、nドープSiC及び/又はpドープSiC)、共ドープされた又はドープされていない結晶性材料(例えば半絶縁性SiC、高純度半絶縁性材料SiC及び/又は高抵抗性SiC)を具体化しうる。nドープSiCについて、SiC結晶性材料は、Nで能動的にドープされてもよく、又は成長系中に存在しうるバックグラウンドNで受動的にドープされてもよい。ホウ素(B)は、成長系部品及び/又は原材料中に存在する要素として、結晶性成長の間に意図せずに導入されうる。nドープSiCについて、Nドーピングレベルは、典型的には、任意の補償Bドーパント又は存在しうる他のp型ドーパントをよそに、n型ドーピングを維持する濃度において提供されうる。しかしながら、SiC結晶性材料中のより高いNドーピングは、可視スペクトルの多様な波長にわたり光吸収係数を増大するように働きうる。一定の実施例では、n型SiCは、n型結晶性SiCを依然として維持しながらNドーピングレベルを低下させることによって、第1の工程36により、低い吸収係数を伴って成長しうる。これは、単独で、又はn型の大多数の担体タイプを有するひずみ補償ドーパントの導入との組み合わせにおいて、低減したNドーピングを提供することによって達成されうる。n型結晶性SiCについて上に記載した原則はまた、p型結晶性SiCにも当てはめることができ、ここで、一定のp型ドーパントは低減され得、且つp型が大多数の担体を有するひずみ補償ドーパントが任意選択で導入されうる。半絶縁性SiCの成長について、Bの濃度は、結晶性材料中の十分なp型ドーパントの濃度のみを維持するように精製及び再導入を通じて制御されて、意図的でなく存在しうる任意のNを補いうる。しかしながら、半絶縁性SiCの成長及び成長後プロセッシングは、光吸収係数を増大させる他の欠陥レベルを導入することがある。以下に、より詳細に説明されるように、SiC結晶性材料には、様々な成長工程及び/又は成長後プロセッシング工程によって、低減した光吸収係数が提供されうる。
【0039】
第2の工程38において、第1の工程36からのSiCバルク結晶性材料は、個々のSiCウエハーへとスライスされうる(例えばウエハリング)。SiCウエハーの域を越えたSiC結晶性材料に関する実施例について、第2の工程38は省かれてもよい。第3の工程40において、SiCウエハー又はSiC結晶性材料は、熱的調整プロセスに供されうる。他の実施例では、熱的調整は、ブールレベルにおいて実施されうる。従来の半絶縁性SiCについて、熱的調整は、典型的には、SiCウエハーを、SiCウエハー内の内因性欠陥の形成及び保持を促進する焼きなましプロセスに供することを含む。典型的な熱的調整シーケンスは、2000℃超の焼きなまし温度を含んでよく、且つ急速なクールダウンへと続きうる。内因性欠陥は、原子価及び伝導帯の外にある深いレベルの結晶性欠陥を形成して、それにより、半絶縁性の性質を提供するために、電子のためのトラップ及び/又は穴を設けることがある。しかしながら、このような内因性欠陥は、時々、光吸収係数を増大させうる。本開示の態様によれば、熱的調整の工程は、光吸収係数が低減したSiCウエハー又はSiC結晶性材料を提供するために、改質されうる又は除去されることさえありうる。一定の実施例では、SiCウエハー、SiCブール、又は他のSiC結晶性材料は、第3の工程40において熱的調整に供され得、ここで、例えば1300℃~2600℃の範囲内、又は2000℃~2600℃の範囲内、又は2200℃~2500℃の範囲内、又は1300℃~2000℃の範囲内、又は1300℃~1900℃の範囲内、又は1400℃~1900℃の範囲内の、内因性欠陥を誘起する温度にて焼きなましが行われる。選択される温度範囲又はサブ範囲に応じて、室温にクールダウンする速度は、除去される内因性欠陥の量に対して、残る内因性欠陥の量の域を越えた制御を提供するために、緩慢な冷却又は急速な冷却を含んでよい。例えば、熱的調整工程の一例として、SiC結晶性材料は、少なくとも2000℃、又は2000℃~2600℃の範囲内の温度にて、30分~120分の範囲内の時間の間、焼きなましされてよく、いくらかの内因性欠陥がそれら自体が拡散する及び除去することを可能にする緩慢なクールダウンに続き、それにより、そうでなければより高い光吸収を引き起こしうる内因性欠陥の量を減らしうる。緩慢なクールダウンは、1分当たり0.5℃~1分当たり12℃の範囲内、又は1分当たり0.5℃~1分当たり5℃の範囲内、又は1分当たり0.5℃~1分当たり3℃の範囲内、又は1分当たり0.5℃~1分当たり2℃の範囲内、又は1分当たり0.5℃~1分当たり1.5℃の範囲内、又は1分当たり1℃~1分当たり5℃の範囲内、又は1分当たり1℃~1分当たり3℃の範囲内、又は1分当たり1℃~1分当たり2℃の範囲内の冷却の速度を含んでよい。熱的調整工程の他の例では、SiCウエハーは、2000℃以下、又は1300℃~2000℃の範囲内、又は1400℃~1900℃の範囲内の温度にて、30分~120分の範囲内の時間の間焼きなましされ、より急速なクールダウンへと続いてよい。より急速なクールダウンは、1分当たり5℃超、例えば1分当たり5℃超~約20℃の範囲内、又は1分当たり5℃~約100℃の範囲内、又は1分当たり20℃~約100℃の範囲内にある様々な冷却速度を含んでよい。熱的調整工程のなおも更なる例では、SiC結晶性材料は、2000℃~2600℃の範囲内の温度にて焼きなましされ、続いて1300℃~2000℃の範囲内にあるより低い温度への緩慢な冷却へと続き、急速なクールダウンへと続いてよい。上の例の点において、本開示の熱的調整工程は、SiC結晶性材料における内因性欠陥の量を制御するために、焼きなまし温度と冷却の速度との異なる組み合わせを含んでよい。この方法において、熱的調整工程は、得られたSiCウエハー又は他の結晶性材料が、様々な光電子工学用途及び/又は光学部品用途のための様々な光吸収係数プロファイルを提供するべく注文通りにされうるように、微細なチューニング能力を提供しうる。一定の実施例では、このような熱的調整は、SiC結晶性材料中の既存のドーパントを更に補いうる、取り込まれていないドーパントを活性化させうる。なおも更なる実施例では、本開示による第1の工程36の結晶成長は、熱的調整を一切必要とせずに、好適な吸収係数を提供するのに十分でありうる。このような実施例では、第3の工程40は省かれてもよく、且つSiC結晶性材料は、ウエハー表面調製の第4の工程42へと進みうる。ウエハー表面調製には、表面洗浄、研磨などが挙げられうる。一定の実施例では、ウエハー表面調製には、ウエハーの片側又は両側への、化学的機械的研磨(CMP:chemical mechanical polishing)、酸化、湿潤エッチング、乾燥エッチング、及び/又は反応性イオンエッチングのうちの1つ又は複数を含んでよい。n型及びp型のSiCウエハーについて、作製は、上に記載した第3の工程40の熱的調整を含んでもよく、又は第3の工程40は省かれてもよい。SiCウエハーの域を越えたSiC結晶性材料に関する実施例について、第4の工程42は省かれてもよい。
【0040】
図7~10において、可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値が、従来のウエハーを有する本開示の多種のSiCウエハーと比較して提供される。本開示の目的のために、SiCウエハーの測定された吸収係数は、周知のベールの法則(すなわちランベルト・ベールの法則)に従った計算に基づく。しかしながら、吸収係数の計算はまた、計算された値における同一の又は小さいのみの偏差を伴う他の周知の計算に従って実施されてもよい。
図7~9において、吸収係数値は、紫外線可視(UV-Vis:ultraviolet-visible)分光光度計を用いて、多種のウエハーについて収集された。加えて、
図7~10に表されているSiCウエハーの全てが、両面CMPプロセッシングに供された。一定の実施例では、
図7~10において反映された値は、このようなSiCウエハーの中央領域を表している。本開示の原則によるSiCウエハーは、145mm以上、又は150mm以上、又は195mm以上、又は200mm以上、又は295mm以上、又は300mm以上;又は205mm、305mm、又は450mm、又はそれ以上の上限を伴う、前述した値を含む任意の範囲の直径を有してもよく、且つ先に記載した厚さ範囲のうちの任意のもの、例えば、100μm~1000μmの範囲内、又は100μm~800μmの範囲内、又は100μm~600μmの範囲内、又は150μm~500μmの範囲内、又は150μm~400μmの範囲内、又は200μm~500μmの範囲内、又は300μm~1000μmの範囲内、又は500μm~2000μmの範囲内、又は500μm~1500μmの範囲内の厚さを有してもよい。
【0041】
図7A~7Dは、従来の熱的調整ありの及びなしの、SiCウエハーについての可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。x軸はナノメートル(nm)における波長範囲を表し、y軸は逆数センチメートル(cm
-1)における吸収係数を表す。
図7A~7Dにおいて、対照個体群(Control7A~7Dと標識されている)は、上に記載した従来の熱的調整に供されたSiCウエハーを表し、実験個体群(Exp7A~7Dと標識されている)は、熱的調整に一切供与されなかったSiCウエハーを表す。対照個体群ウエハーと実験個体群ウエハーとの両方が、同一のバルク結晶性ブールからであった。比較目的のために、
図7AのExp7Aと標識されたウエハーと、Control7Aと標識されたウエハーは、結晶性ブールの隣接した部分から取られた。同一の関係を、他のウエハーの対にも当てはめた(すなわち、
図7BのExp7BとControl7B、
図7CのExp7CとControl7C、並びに
図7DのExp7DとControl7D)。
図7A~7Dのそれぞれにおいて例示されているように、実験個体群は、420nm~700nmの範囲内にある波長を含む可視スペクトル全体を通して、著しく低減した光吸収係数を呈した。例えば、実験個体群は、420nm~700nm、又は450nm~700nmの波長範囲にわたり、0.15cm
-1未満である、又は0cm
-1超~0.15cm
-1未満の範囲内にある、吸収係数を呈した。実験個体群はまた、400nm~700nmの波長範囲にわたり、0.2cm
-1未満である、又は0cm
-1超~0.2cm
-1未満の範囲内にある吸収係数を呈した。加えて、実験個体群は、420nm~700nmの波長範囲にわたり、吸収係数値の改善された均一性を呈した。例えば、実験個体群の吸収係数は、420nm~700nmの波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075cm
-1によって規定される吸収係数範囲内にあってよい。本明細書で使用されるとき、プラス又はマイナス値は、値の特定の範囲についての最小値及び最大値を規定するのに使用されうる。上の例において、プラス又はマイナス0.075cm
-1によって規定される吸収係数範囲は、一般に、0.15cm
-1離れた最小値及び最大値によって規定される吸収係数範囲を指す。この点において、従来の熱的調整処理の不在との組み合わせにおける本開示の結晶成長条件は、吸収係数値が低減したSiCウエハーが提供されうる。
【0042】
図8は、従来のn型SiCウエハー、従来の半絶縁性SiCウエハー及び従来のサファイアウエハーを、本開示によるSiCウエハーと比較する、可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。x軸はnmにおける波長範囲を表し、y軸はcm
-1で吸収係数を表す。
図8において、対照個体群は、n型ウエハー(Control8Aと標識されている)及び半絶縁性ウエハー(Control8Bと標識されている)によって表される。半絶縁性ウエハーは、上に記載した従来の熱的調整に供された。実験個体群(Exp8A~8Bと標識されている)は、熱的調整に一切供されなかったSiCウエハーを表す。
図7A~7Dにあるように、実験個体群は、420nm~700nmの範囲内の波長を含む可視スペクトル全体を通じて、著しく低減した光吸収係数を呈した。例えば、両方の実験個体群が、420nm~700nmの波長範囲において、0.15cm
-1未満である吸収係数、及び0.15cm
-1以下を外れる吸収係数を呈した。加えて、実験個体群Exp8Bは、サファイアの吸収係数に近い吸収係数を呈し、これは、以下に
図9に更に記載されることになる。
【0043】
図9は、
図8からの従来のサファイアウエハーと比較した、
図8の実験個体群からの1つのウエハーについての可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。
図9に例示されているように、実験ウエハーExp8Bは、サファイアの吸収係数値から遠くない吸収係数値を呈する。例えば、Exp8Bウエハーは、400nm~700nm、又は420nm~700nm、又は450nm~700nmの波長範囲にわたり、0.15cm
-1未満、又は0.1cm
-1未満、又は0.075cm
-1未満である、又は0cm
-1超~ちょうど特定の値のうちの任意のものの任意の範囲内にある吸収係数を呈した。Ex8Bウエハーは、450nm~680nmの別の波長範囲について、0.06cm
-1未満である吸収係数を更に明示した。吸収係数値の均一性について、実験個体群は、420nm~700nmの波長範囲にわたり、プラス若しくはマイナス0.075cm
-1、又はプラス若しくはマイナス0.05cm
-1、又はプラス若しくはマイナス0.025cm
-1によって規定される吸収係数範囲内であった吸収係数を呈した。
【0044】
図10は、本開示の原則による熱的調整を有するSiCウエハーと比較した、熱的調整が一切ないSiCウエハーについての可視スペクトルの波長範囲にわたる吸収係数値を表すグラフである。
図10において、対照個体群は、従来の熱的調整を受けなかった2種のSiCウエハー(Control10A及び10Bと標識されている)によって表されている。同一の結晶性ブールからの隣接したウエハーは、それぞれ、Exp10A及び10Bと標識されており、ここで、Exp10Aウエハーは、Control10Aウエハーと同一の結晶性ブールの隣接した部分から取られ、且つ同じ関係がまた、Exp10Bウエハー及びControl10Bウエハーについても提供された。Exp10Aウエハー及び10Bウエハーは、
図6について上に記載した本開示の熱的調整工程に供された。例示されているように、Exp10Aウエハー及び10Bウエハーは、熱的調整を一切受けなかったControl10Aウエハー及び10Bウエハーと比較して、低減した吸収係数値を呈した。この点において、本開示の一定の実施例は、従来の熱的調整を省いただけのものと比較して、吸収係数値を更に低減するよう注文通りにされうる熱的調整工程を提供する。Exp10Bウエハーが、n型ドーピング特性を示唆する450nmから475nmの間の吸収係数値においてピークを示すこともまた認められ、その一方で、全ての他の波長範囲において、低減した吸収係数値を依然として明示している。この点において、本開示による熱的調整と組み合わされた結晶成長は、n型SiCウエハーを含む様々な型のSiCウエハーに、低減した吸収係数値を提供しうる。
【0045】
本明細書で記載されている、前述した態様、並びに/又は様々な別々の態様及び特徴のうちの任意のものが、追加の利点のために組み合わされうることが熟慮される。本明細書で開示されている様々な実施例のうちの任意のものは、本明細書で逆の指定がない限り、1つ又は複数の他の開示されている実施例と組み合わされてもよい。
【0046】
当業者であれば、本開示の好ましい実施例への改善及び修正を認めることになる。全てのこのような改善及び修正は、本明細書で開示されている概念及び以下の特許請求の範囲の、範囲内と考えられる。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり、
0.15cm
-1
離れた最小値及び最大値によって規定される吸収係数範囲内にある吸収係数を含む、シリコンカーバイド(SiC)結晶性材料。
【請求項2】
前記吸収係数範囲が、前記波長範囲にわたり、
0.1cm
-1
離れた前記最小値及び前記最大値によって規定される、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項3】
前記吸収係数範囲が、前記波長範囲にわたり、
0.05cm
-1
離れた前記最小値及び前記最大値によって規定される、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項4】
145mm以上である直径を含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項5】
前記直径が、145mm~305mmの範囲内にある、請求項4に記載のSiC結晶性材料。
【請求項6】
4H-SiC、半絶縁性SiC、n型SiC及びp型SiCのうちの1つを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項7】
前記吸収係数が、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、
0.2cm
-1
離れた前記最小値及び前記最大値によって規定される別の吸収係数範囲内にある、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項8】
前記吸収係数が、400nm~700nmの別の波長範囲にわたり、
0.15cm
-1
である別の最小値及び別の最大値によって規定される別の吸収係数範囲内にある、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項9】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0.15cm
-1以下である、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項10】
2mm~55mmの範囲内の厚さを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項11】
100μm~2mmの範囲内の厚さを含む、請求項1に記載のSiC結晶性材料。
【請求項12】
420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり0.15逆数センチメートル(cm
-1)未満である吸収係数を含む、シリコンカーバイド(SiC)結晶性材料。
【請求項13】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0cm
-1超~0.15cm
-1未満の範囲内にある、請求項
12に記載のSiC結晶性材料。
【請求項14】
前記吸収係数が、450nm~680nmの別の波長範囲にわたり、0.06cm
-1未満である、請求項
12に記載のSiC結晶性材料。
【請求項15】
145mm以上である直径を含む、請求項
12に記載のSiC結晶性材料。
【請求項16】
前記直径が、145mm~305mmの範囲内にある、請求項
15に記載のSiC結晶性材料。
【請求項17】
4H-SiC、半絶縁性SiC、n型SiC及びp型SiCのうちの1つを含む、請求項
12に記載のSiC結晶性材料。
【請求項18】
2mm~55mmの範囲内の厚さを含む、請求項
12に記載のSiC結晶性材料。
【請求項19】
100μm~2mmの範囲内の厚さを含む、請求項
12に記載のSiC結晶性材料。
【請求項20】
シリコンカーバイド(SiC)の結晶性材料を成長させる工程と、
前記結晶性材料を熱的調整して、420ナノメートル(nm)~700nmの波長範囲にわたり、プラス又はマイナス0.075逆数センチメートル(cm
-1)によって規定される吸収係数範囲内にある吸収係数を結晶性材料に提供する工程と
を含む、方法。
【請求項21】
前記吸収係数が、前記波長範囲にわたり、0.15cm
-1未満である、請求項
20に記載の方法。
【請求項22】
前記熱的調整が、前記結晶性材料を、1300℃~2600℃の範囲内の温度にて焼きなますことを含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項23】
前記温度が、2000℃~2600℃の範囲内にある、請求項
22に記載の方法。
【請求項24】
1分当たり0.5℃~5℃の範囲内にある速度において、前記結晶性材料を前記温度からクールダウンすることを更に含む、請求項
23に記載の方法。
【請求項25】
前記温度が、1300℃~2000℃の範囲内にある、請求項
22に記載の方法。
【請求項26】
1分当たり5℃超~100℃の範囲内の速度において、前記結晶性材料を前記温度からクールダウンすることを更に含む、請求項
25に記載の方法。
【請求項27】
前記結晶性材料が、145mm以上である直径を含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項28】
前記直径が、145mm~305mmの範囲内にある、請求項
27に記載の方法。
【請求項29】
前記結晶性材料が、195mm以上である直径を含む、請求項
20に記載の方法。
【請求項30】
前記直径が、195mm~305mmの範囲内にある、請求項
29に記載の方法。
【請求項31】
前記結晶性材料が、前記結晶性材料を熱的調整する前にSiC結晶性ブールから分離されたSiCウエハーを含む、請求項
20に記載の方法。
【国際調査報告】