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  • 特表-熱伝導性組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/10 20060101AFI20240614BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240614BHJP
   C09K 5/10 20060101ALI20240614BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240614BHJP
   C09D 201/10 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C08L101/10
C08K3/22
C09K5/10 E
C09D7/61
C09D201/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575532
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022032430
(87)【国際公開番号】W WO2022261045
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】63/208,117
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、 ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】キアン、 ユチャン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4J002AA031
4J002CF201
4J002CH051
4J002CK021
4J002CP051
4J002DE146
4J002DE147
4J002FD156
4J002FD207
4J002GQ00
4J038DL051
4J038HA216
4J038JC38
4J038KA04
4J038KA08
4J038KA09
4J038NA13
4J038PA18
4J038PB09
(57)【要約】
熱伝導性組成物は、縮合硬化性シリル変性樹脂から形成されたポリマーと、高い総比表面積を有する粒子状アルミナフィラーとを含む。この組成物は、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を示し、環境水分を添加することなく、かつ、触媒の添加量を減らしても硬化可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性組成物であって、
縮合硬化性シリル変性樹脂;および
少なくとも1m/gの総比表面積を有する粒子状アルミナフィラーであって、前記粒子状アルミナフィラーの一部が1μm未満の平均粒径を有し、該一部が組成物の0.1~10重量%を構成する粒子状アルミナフィラー;
0.1重量%未満の有機金属触媒;ならびに
0.5重量%未満の水を含み、
前記組成物は少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を示す、熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記粒子状アルミナが未修飾である、請求項1に記載の熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記粒子状アルミナフィラーの少なくとも一部がヒュームドアルミナを含む、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記アルミナフィラーが、アルファおよびガンマ結晶構造のうちの少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項5】
総比表面積が4m/g~150m/gである、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項6】
1重量%~7重量%の前記シリル変性樹脂;および
50重量%~95重量%の前記粒子状アルミナフィラーを含む、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項7】
前記1μm未満の平均粒径を有する粒子状アルミナフィラーの一部を0.1重量%~1重量%含む、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項8】
25℃で100cP未満の粘度を有する可塑剤を5重量%~20重量%含む、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項9】
前記シリル変性樹脂はシラン末端ポリエーテルであり;および/または
前記シリル変性非シリコーンポリマーはアルコキシシラン末端基を含み;および/または
前記シリル変性非シリコーンポリマーには、-Si-O-単位が含まれず;および/または
前記シリル変性非シリコーンポリマーは、2パート組成物である、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項10】
各成分が、90psiでノードソンEFDシリンジバレルを通して押し出されるときに、50g/分より大きい、好ましくは150g/分より大きい、より好ましくは300g/分より大きい押出速度を有する、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物の硬化反応生成物。
【請求項12】
25℃で20ショア00~80ショアAの硬化硬度を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱伝導性組成物の硬化反応生成物。
【請求項13】
電池;および
前記電池に熱的に結合された、請求項1または2に記載の熱伝導性組成物を含む、電池システム。
【請求項14】
サーマルインターフェース材料であって、
1~7重量%の縮合硬化性シリル変性樹脂;ならびに
50~95重量%の粒度分布を有する熱伝導性粒子状フィラーを含み、前記熱伝導性フィラーの第1の部分は、アルミナであり、サーマルインターフェース材料の0.1重量%~10重量%を構成し、5nm~1000nmの平均粒径および4m/g~150m/gの比表面積を有し、
前記サーマルインターフェース材料が、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率、および25℃で20ショア00~80ショアAの硬化硬度を示す、サーマルインターフェース材料。
【請求項15】
前記粒子状アルミナフィラーは、少なくとも1m/gの総比表面積を有し;および/または
前記熱伝導性フィラーの第1の部分は、5nm~250nmの平均粒径を有し;および/または
前記粒子状アルミナフィラーは未修飾である、請求項14に記載のサーマルインターフェース材料。
【請求項16】
2パート硬化性組成物であって、
粒度分布を有する熱伝導性フィラーを含む第1のパートであって、前記熱伝導性フィラーの第1の部分は、アルミナであり、第1のパートの0.1重量%~10重量%を構成し、5nm~1000nmの平均粒径および4m/g~150m/gの比表面積を有し、前記熱伝導性フィラーの第2の部分は第1のパートの80重量%~95重量%を構成し、1μm~100μmの平均粒径を有する、第1のパート;ならびに
縮合硬化性シリル変性樹脂を含む第2のパートであって、前記樹脂は、前記第1のパートに暴露されることにより、25℃で20ショア00~80ショアAの硬度を有するゲル状態まで硬化可能である、第2のパート
を含む、2パート硬化性組成物。
【請求項17】
前記シリル変性樹脂がシラン末端ポリエーテルであり;および/または
前記シリル変性非シリコーンポリマーがアルコキシシラン末端基を含み;および/または
前記シリル変性非シリコーンポリマーは-Si-O-単位を含まない、請求項16に記載の2パート硬化性組成物。
【請求項18】
前記第1のパートが、0.5重量%未満の有機金属触媒および0.5重量%未満の水を含む、請求項16または17に記載の2パート硬化性組成物。
【請求項19】
前記第2のパートが、アルミナ、アルミニウム三水和物、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、黒鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、金属粒子、およびそれらの組み合わせから選択される80重量%~95重量%の熱伝導性フィラーを含む、請求項16または17に記載の2パート硬化性組成物。
【請求項20】
硬化した材料が少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を示す、請求項16または17に記載の2パート硬化性組成物。
【請求項21】
硬化した材料が、少なくとも1m/gの総比表面積を有する粒子状アルミナを含む、請求項16または17に記載の2パート硬化性組成物。
【請求項22】
請求項1に記載の熱伝導性組成物または請求項16に記載の2パート硬化性組成物の、熱伝導性コーティングまたはサーマルインターフェース材料としての使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して熱伝導性材料に関し、より詳細には、2成分系からディスペンスでき、低湿環境で触媒依存性が低減されて硬化可能なポリマーをベースとするサーマルインターフェース材料に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導性材料は、例えば、発熱する電子部品と放熱器との間の界面として広く採用されており、電子部品から熱的に結合された放熱器への過剰な熱エネルギーの伝達を可能にする。このようなサーマルインターフェースの設計および材料は数多く実施されており、サーマルインターフェースとそれぞれの伝熱面との間の隙間が実質的に回避され、電子部品から放熱器への伝導性熱伝達が促進されたときに最高の性能が達成される。したがって、サーマルインターフェース材料は、それぞれの部品の多少凹凸のある伝熱面に機械的に適合するのが好ましい。したがって、高性能サーマルインターフェース材料の重要な物理的特性は、柔軟性と低硬度である。ディスペンス可能な材料の場合、サーマルインターフェースが伝熱面を濡らすことができること、また、剥離を回避し、想定される耐用年数にわたってインターフェースの形状と機能を維持するために、適切な接着力と凝集力を提供することがさらに重要である。したがって、ディスペンス可能なサーマルインターフェース材料は、ディスペンス後の著しい広がりを避けるために降伏応力を持たせて設計してもよいし、表面に最大限に流動して浸透するように降伏応力を持たせずに設計してもよい。材料の硬化挙動は、粒子の沈降を回避し、再作業および取り扱いに十分な硬化前時間を提供するように調整し得る。
【0003】
適合する熱伝導性組成物のいくつかの例には、アルミナ(酸化アルミニウム)および窒化ホウ素などの熱伝導性粒子が充填されたマトリックスを形成するシリコーンポリマーが挙げられる。コーティングは通常、室温および/または高温のいずれにおいても、界面表面の凹凸に適合する十分な柔軟性を有する。しかし、シリコーンベースのコーティングは、表面を汚染する可能性があり除去が難しい低分子量の揮発性成分の存在により、多くの用途に適さないことがしばしばある。代替の非シリコーンポリマー系は、その温度安定性とガラス転移挙動に制限がある。許容可能な硬度を示す従来の非シリコーン系のいくつかは、比較的高い硬化前粘度を示すものもあり、ディスペンスや組み立てに課題がある。他の非シリコーン系は、ディスペンスや組み立てに適した硬化前粘度および許容できる硬化後の硬度を有するが、通常、ポリマーの架橋反応を妨げる可能性のある反応性希釈剤、または時間の経過とともにコーティングから移行する傾向のある非反応性希釈剤のいずれかを必要とする。シリル変性ポリマーは、ディスペンス可能な非シリコーン用途として検討されてきた材料の一種である。
【0004】
シリル変性ポリマーをベースとした熱伝導性コーティングの開発は、低硬度、高い使用温度、および汎用性のような望ましい機械的特性から有望視されている。しかし、シリル変性ポリマーは反応性が低く、多段階の反応化学を必要とするため、効果的に硬化させることは困難であることが分かっている。これらの課題は、材料が典型的な加水分解-縮合の硬化経路を促進する大気中の湿気にさらされない電池セルのような密閉された用途では、さらに悪化する。
【0005】
1つ以上の末端アルコキシシラン官能基を含むポリエーテルまたはポリウレア等のシリル変性ポリマーは、硬化性樹脂が大気中の湿気にさらされる用途で広く使用されており、大気中の湿気は官能性末端基の初期加水分解を達成し、その後の縮合反応を可能にするために必要である。水分の存在だけでは、反応は遅い速度で進行する。適切な硬化速度を得るためには、通常、強力な触媒が必要である。これらの触媒は通常、有機金属触媒化合物をベースとしており、健康や環境への有害性が知られている。有機金属を含まない系が提案されているが、効果的な重合反応を促進するのに必要な活性がないことがわかっている。従来のシリル変性ポリマー系は、それに応じて、水分の存在と、場合によっては環境毒性を有し得る触媒の使用を必要とする。
【0006】
シリル変性ポリマーのような縮合硬化性ポリマーを閉じた形状で使用すると、硬化反応の加水分解部分を開始するための大気中の水分が利用できないため、特別な課題が生じる。1つの方法として、混合前に非樹脂成分に水を加える2成分系を利用することができる。しかし、このような系で使用できる触媒の最大量には環境上の制限があり、2成分系では同等の1成分系の半分の触媒含有量に制限される。さらに、配合物中の水の量を増やすと、コーティング組成物にしばしば含まれる疎水性可塑剤との不相溶性に関連した問題が生じうる。この不相溶性により、高温でのガス放出が発生し、空隙が残ったり、ブリードが促進されたり、その他製品の寿命が制限される可能性がある。硬化を促進し得る様々なシランが入手可能であるが、これらは実用的な影響はほとんどない傾向があり、反応の加水分解部分の助けにはならない。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の課題は、触媒の量を増やしたり、硬化した組成物の貯蔵寿命や安定性を低下させたり、配合物の流動挙動および他の機能特性を大きく変化させたりすることなく、低湿環境下で硬化可能な熱伝導性材料を提供することである。
【0008】
本発明の別の課題は、従来のディスペンス装置を介して供給可能であり、低湿度環境で硬化可能な2パート反応組成物から形成される熱伝導性組成物を提供することである。
【0009】
本発明のさらなる課題は、高い熱伝導率を示し、同時に高速でディスペンス可能な縮合硬化性樹脂から形成される熱伝導性組成物を提供することである。
【0010】
本発明により、低硬度で高熱伝導性の材料が、従来の液体ディスペンス装置を通して液体コーティングとしてディスペンスするのに適した粘度を示す組成物から形成され得る。硬化性組成物は、触媒含有量を増加させることなく、また、多くの環境水分なしに、加速された速度で硬化しうる。本明細書において、「多くの」という用語は、微量または残留量を超えることを意味することを意図する。硬化性組成物は、加水分解-縮合硬化反応を促進するための有機金属触媒化合物への依存性を低減または排除する環境適合性触媒を使用し得る。硬化性組成物は、硬化速度が比較的遅いために一般的には好まれないポリマーも使用し得る。
【0011】
該組成物は、概して、縮合硬化性シリル変性樹脂と熱伝導性粒子状フィラーの2つの主成分を含む。硬化前の材料は、液体でディスペンス可能な粘度を示し、硬化して高い熱伝導率を有する柔らかい固体を形成することができる。高比表面積アルミナは、本発明の組成物において硬化促進剤として作用することが発見され、熱伝導性フィラーとして二重に使用できる。高比表面積アルミナは、好ましくは未修飾である。
【0012】
一実施形態では、組成物は、シリル変性樹脂から形成されたポリマーと、少なくとも1m/gの総比表面積を有する粒子状フィラーとを含み、粒子状フィラーの一部は、1μm未満の平均粒径を有するアルミナであり、該一部は、組成物の0.1~10重量%を構成する。この組成物はさらに、0.1重量%未満の有機金属触媒化合物および0.5重量%未満の水を含む。この組成物は少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を示す。
【0013】
組成物は、25℃で20ショア00~80ショアAの硬化硬度を示し得る。
【0014】
粒子状アルミナフィラーの表面は未修飾であってもよい。粒子状アルミナフィラーの少なくとも一部はヒュームドアルミナであってもよい。粒子状アルミナフィラーの少なくとも一部は、主にアルファもしくはガンマ結晶構造、またはそれらの混合を示してもよい。
【0015】
粒子状フィラーの総比表面積は、4~150m/gである。
【0016】
組成物は、1~5重量%のポリマーおよび50~95重量%の粒子状フィラーを含んでもよい。組成物は、1μm未満の平均粒径を有する粒子状アルミナフィラーの部分を0.1~1重量%含んでもよい。組成物は、25℃で100cP未満の粘度を有する可塑剤を5~10重量%含んでもよい。
【0017】
サーマルインターフェース材料は、シリル変性樹脂から形成されたポリマーを1~5重量%、および粒度分布を有する熱伝導性粒子状フィラーを50~95重量%を含み、該粒度分布の第1の部分がサーマルインターフェース材料の0.1~10重量%を構成する。粒度分布の第1の部分は、5~1000nmの平均粒径と4~150m/gの比表面積を有するアルミナ粒子である。サーマルインターフェース材料は、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率と、25℃で20~80ショア00の硬度を示す。
【0018】
熱伝導性粒子状フィラーは、少なくとも1m/gの総比表面積を有していてもよい。
【0019】
粒度分布の第1の部分は、5~250nmの平均粒径を有していてもよい。
【0020】
粒子状アルミナフィラーは、未修飾の表面を有していてもよい。
【0021】
電池システムは、電池と、該電池に熱的に結合されたサーマルインターフェース材料を含む。電池システムは、サーマルインターフェース材料に熱的に結合された放熱器をさらに含んでもよい。
【0022】
2パート硬化性組成物は、粒度分布を有する粒子状フィラーを有する第1のパートを含み、該粒度分布の第1の部分は、第1のパートの0.1~10重量%を構成し、5~1000nmの平均粒径、および4~150m/gの比表面積を有するアルミナである。粒度分布の第2の部分は、第1のパートの80~95重量%を構成し、1~100μmの平均粒径を有する。2パート硬化性組成物の第2のパートは、縮合硬化性シリル変性樹脂を含み、該樹脂は、第1のパートに暴露されて25℃で20ショア00~80ショアAの硬度を示す硬化材料に硬化可能である。
【0023】
2パート硬化性組成物は、25℃で24時間以内にゲル化状態まで硬化可能であり得る。
【0024】
2パート硬化性組成物は、シラン末端ポリエーテルを含んでもよい。
【0025】
2パート硬化性組成物は、0.1重量%未満の有機金属触媒化合物および0.5重量%未満の水を含んでもよい。
【0026】
2パート硬化性組成物の第2のパートは、アルミナ、アルミニウム三水和物、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム、黒鉛、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化ホウ素、金属粒子、およびそれらの組み合わせから選択される熱伝導性微粒子を80~95重量%含んでもよい。
【0027】
2パート硬化性組成物は、少なくとも1W/m・Kの熱伝導率を示し得る。
【0028】
2パート硬化性組成物からの硬化材料は、少なくとも1m/gの総比表面積を有する粒子状アルミナを含む。
【0029】
2パート硬化性組成物は、上記特徴のいくつかまたは全ての任意の組み合わせを含んでもよく、上記の特徴の1つまたは複数を除外してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、粒子状アルミナフィラーの総比表面積の関数として硬化硬度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
好ましい実施形態の詳細な説明
上に列挙した目的および利点を、本発明によって表される他の目的、特徴、および進歩とともに、ここで詳細な実施形態に関して提示する。しかしながら、本発明の他の実施形態および態様は、当業者であれば把握できる範囲内であると認識される。
【0032】
本発明の熱伝導性組成物は、典型的には熱を発生する電子部品から過剰な熱を除去するための放熱経路に沿って配置するために、表面または自己支持体上にコーティングとして形成されてもよい。熱伝導性組成物は、少なくとも1W/m・Kの所望の熱伝導率、および硬化前に表面を完全に被覆するのに十分な湿潤性を示す。組成物は、安定した界面を提供するのに十分な柔軟性と凝集力を示すのが好ましい。組成物は、好ましくは24時間以内にゲル状態まで硬化し、その時間内に当技術分野で知られているレオメーターで測定すると、貯蔵弾性率が損失弾性率を超える。
【0033】
熱伝導性材料は、材料の硬化が望まれる時点まで反応性シリル変性樹脂を反応触媒および水から分離するために、少なくとも2つの別々の容器からディスペンスできる2パート硬化性組成物から形成される。本発明の組成物は、混合され、ディスペンスされ、その場でシリル加水分解および縮合によって硬化され、反応生成物は不可逆的な軟固体形態を有する。多くの用途において、加水分解経路は環境水分の吸収によって進行する。環境水分が不十分であると、加水分解反応が遅くなったり、あるいは、加水分解反応の完了が完全に妨げられたりする可能性がある。2パート組成物中の水含有量を増やすと加水分解反応に水を利用できるようになるが、これは疎水性可塑剤および反応性樹脂と相溶性がないため望ましくない。本発明の組成物は、硬化促進剤として高表面積のアルミナを使用することにより、環境水分が不十分であるという課題を克服する。
【0034】
2パート硬化性組成物の一方または両方のパートは、アルミナを含む熱伝導性フィラー、ならびにレオロジー調整剤、相溶化剤、可塑剤、顔料、水スカベンジャー、酸化防止剤、および他の機能性フィラーをさらに含んでもよい。
【0035】
開示された硬化性組成物は、混合されてすぐに使用できるとき、1,500,000cP未満の低せん断速度粘度を有し得る。いくつかの用途では、開示された硬化性組成物は、混合されると、750,000cP未満の粘度を有し得る。いくつかの用途では、開示された硬化性組成物は、混合されると、約200,000cP~約500,000cPの範囲の粘度を有し得る。低せん断速度粘度は、25mm平行プレートを備えた平行プレートレオメーターを使用して、25℃、せん断速度1 1/sで測定できる。
【0036】
一実施形態では、組成物はチキソトロピー性であり、より高い流速で粘度の低下を示す。これらの組成物は、大量ディスペンス用途では5,000cP程度、その他の用途では最大50,000cPまでの低粘度を有する。高せん断速度粘度は、通常ISO 11443に従ってキャピラリーレオメーターを使用して、30℃および3,000 1/秒のせん断速度で測定することができる。開示された硬化性組成物は、混合されると、押出圧力、ノズルタイプなどを考慮して、その用途での使用に適した押出速度を有するであろう。押出速度は、ノズルを追加せずにノードソン EFD シリンジバレルを通して90psiで個別に押出される各成分の量を測定することによって求めることができる。各成分は、50g/分を超える、好ましくは150g/分を超える、場合によっては300g/分を超える押出速度を有するべきである。
【0037】
樹脂
様々なシリル変性樹脂を本発明のマトリックスに使用し得る。縮合硬化性シラン末端樹脂は、好ましくは周囲温度以上での加水分解縮合硬化経路に関与する。いくつかの実施形態では、樹脂は非シリコーンであってもよく、組成物中に含まれるシリコーンは微量以下である。いくつかの実施形態では、組成物中にシリコーンは含まれない。いくつかの実施形態では、非シリコーン樹脂は、その中に-Si-O-単位を実質的に含まない。他の実施形態では、非シリコーン樹脂はシリコーンおよびポリシロキサン樹脂を除外し、その中に-Si-O-単位を有しない。
【0038】
本明細書で採用されるシリル変性反応性樹脂は、組成物の全重量に対して約1~約50重量%の範囲で存在し;いくつかの実施形態では、組成物は、シリル変性反応性樹脂を約1~約20重量%の範囲で含み;いくつかの実施形態では、組成物は、シリル変性反応性樹脂を約1~約10重量%の範囲で含み;いくつかの実施形態では、組成物は、シリル変性反応性樹脂を1~7重量%の範囲で含む。
【0039】
本発明の反応性樹脂に好適な樹脂の例としては、水で活性化され得る少なくとも1つの結合を含む、少なくとも1つのシリル反応性官能基を有する反応性ポリマー樹脂が挙げられる。例示的なシリル反応性官能基としては、アルコキシシラン、アセトキシシラン、およびケトキシムシランが挙げられる。
【0040】
反応性ポリマー樹脂は、シリル加水分解反応に関与できる任意の反応性ポリマーであり得る。例えば、反応性ポリマー樹脂は、反応性シリル基を有するポリマー系として広範囲のポリマーから選択することができ、例えば、シリル変性反応性ポリマーが挙げられる。シリル変性反応性ポリマーは、電子デバイスに使用される場合等、加熱された時にシリコーンの放出を制限または回避するために、非シリコーン骨格を有することができる。好ましくは、シリル変性反応性ポリマーは非シリコーン骨格を有する。好ましくは、シリル変性反応性ポリマーは、弾性率およびガラス転移温度を低くするために柔軟な骨格を有する。好ましくは、シリル変性反応性ポリマーは、ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレン-ブタジエン、またはポリブチレン-イソプレンの柔軟な骨格を有する。
【0041】
シリル変性反応性ポリマーは、ラジカル開始剤の存在下でポリマーと少なくとも1つのエチレン性不飽和シランとを反応させることによって得ることができ、このエチレン性不飽和シランはケイ素原子上に少なくとも1つの加水分解性基を有する。例えば、シリル変性反応性ポリマーは、ジメトキシシラン変性ポリマー、トリメトキシシラン変性ポリマー、またはトリエトキシシラン変性ポリマーであり得る。例えば、シリル変性反応性ポリマーとしては、シラン変性ポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリスチレン-ブタジエン、またはポリブチレン-イソプレンが挙げられ得る。
【0042】
エチレン性不飽和シランは、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、トランス-β-メチルアクリル酸トリメトキシシリルメチルエステル、およびトランス-β-メチルアクリル酸トリメトキシシリルプロピルエステルからなる群から選択されてもよい。
【0043】
シリル変性反応性ポリマーは、統計的分布でケイ素原子上に少なくとも1つの加水分解性基を有するシリル基を含むことが好ましい。例えば、一実施形態では、シリル変性反応性ポリマーは、一般式:
【0044】
【化1】
のシラン変性ポリマーであり得る。ここで、式中、Rは、1価から4価のポリマーラジカルであり、R、R、Rは、独立して、1から8個のC原子を有するアルキル基またはアルコキシ基であり、かつ、Aは、カルボキシ、カルバメート、アミド、カーボネート、ウレイド、ウレタンまたはスルホネート基、酸素原子または共有結合であり、x=1~8およびn=1~4である。いくつかの実施形態では、Rは-Si-O-単位を含まない。
【0045】
シリル変性反応性ポリマーは、水酸基を有するポリマーとイソシアネート基を有するアルコキシシランとを反応させることによっても得ることができる。例えば、シリル変性反応性ポリマーは、ジメトキシシラン変性ポリウレタンポリマー、トリメトキシシラン変性ポリウレタンポリマー、またはトリエトキシシラン変性ポリウレタンポリマーであり得る。さらに、シリル変性反応性ポリマーは、平均的な一般式:
【0046】
【化2】
のα-エトキシシラン変性ポリマーであり得る。ここで、式中、Rは1~4価のポリマー残基であり、式のポリマーに含まれる残基R、RおよびRの多くとも3分の1は、独立して1~4個の炭素原子を有するアルキルラジカルであり、式のポリマーに含まれる残基R、RおよびRの少なくとも4分の1は、独立してエトキシ残基であり、残りのラジカルR、RおよびRは互いに独立してメトキシラジカルであり、n=1~4である。いくつかの実施形態では、Rは、-Si-O-単位を含まない。
【0047】
シリル変性反応性ポリマーは、例えば、カネカ・ベルギーNVのポリエーテル骨格を有するジメトキシシラン変性MSポリマーおよびポリアクリレート骨格を有するXMAP(商標)ポリマー、エボニックのトリメトキシシラン変性STポリマー、エボニックのトリエトキシシラン変性Tegopac(商標)ポリマー、コベストロのシラン変性Desmoseal(商標)ポリマー、またはワッカーのジ-もしくはトリ-メトキシシラン変性Geniosil(商標)ポリマーとして入手可能である。
【0048】
アルミナ硬化促進剤
出願人らは、比較的表面積の大きいアルミナ、好ましくは表面修飾されていないアルミナが、シラン末端樹脂などのシリル変性反応性樹脂の硬化を促進することを発見した。硬化加速度は、フィラーの総表面積に応じて変化する。しかし、本発明のディスペンス可能な組成物では、過剰なアルミナ配合がディスペンス性に悪影響を及ぼす可能性があるため、硬化促進性と粘度/ディスペンス性との間でバランスを取らなければならない。シラン末端反応性樹脂の硬化促進には、アルミナの配合範囲とアルミナの総表面積の組み合わせが最も好ましい性能を達成しうることが判明した。
【0049】
硬化促進剤として有用なアルミナは、未修飾の表面を有する高比表面積粒子であることが好ましい。本明細書において、「未修飾」または「未修飾表面」という用語は、アルミナ粒子が適用された処理プロセスによって化学的、物理的、または電気的に修飾されていないことを意味する。周囲環境への曝露の結果としてのアルミナ粒子の変化は、適用された処理プロセスとはみなされない。未修飾アルミナの例はヒュームドアルミナである。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナは表面修飾されていてもよい。粒子状アルミナの表面修飾の例としては、シラン処理などの疎水性とするためのものであってもよい。
【0050】
アルミナ粒子の特定の表面結晶性が硬化促進特性を促進する可能性があることがわかった。特に、アルファよびガンマ結晶性の一方または両方を有するアルミナは、シリル変性反応性樹脂の硬化を促進するために望ましい結果を示した。
【0051】
アルミナの粒径が硬化促進の促進に重要な役割を果たすことも判明した。いくつかの実施形態では、アルミナ粒子は、5nm~100μmの範囲の平均粒径(d50)を有する。いくつかの実施形態では、アルミナの平均粒径は5nm~20μmの範囲にある。いくつかの実施形態では、アルミナの平均粒径は5nm~1000nmの範囲にある。いくつかの実施形態では、アルミナの平均粒径は5nm~250nmの範囲内である。アルミナ粒子は、球状、棒状、板状、または分枝粒子などの任意の好適な形状であってもよく、1つ以上の粒子形状を本発明の組成物に使用してもよい。
【0052】
有用な実施形態では、粒子状アルミナフィラーは、組成物中の熱伝導性フィラーの一部を構成する。いくつかの実施形態では、熱伝導性フィラーの第1の部分は、1μm未満の平均粒径を有する粒子状アルミナフィラーである。いくつかの実施形態では、第1の部分の粒子状アルミナフィラーは、5nm~500nmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、第1の部分の粒子状アルミナフィラーは、5nm~250nmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、第1の部分の粒子状アルミナフィラーは、5nm~100nmの平均粒径を有する。熱伝導性フィラーの第1の部分は、好ましくは全組成物の0.1~10重量%を構成する。いくつかの実施形態では、熱伝導性フィラーの第1の部分は、好ましくは全組成物の0.1~1重量%を構成する。
【0053】
熱伝導性フィラーの第2の部分は、1μmを超える平均粒径を有してもよい。いくつかの実施形態では、熱フィラーの第2の部分は、1μm~100μmの平均粒径を有する。いくつかの実施形態では、熱伝導性フィラーの第2の部分は、1μm~60μmの平均粒径を有する。熱伝導性フィラーの第2の部分は、好ましくは全組成物の20~95重量%を構成する。いくつかの実施形態では、熱伝導性フィラーの第2の部分は、好ましくは全組成物の40~95重量%を構成する。いくつかの実施形態では、熱伝導性フィラーの第2の部分は、好ましくは全組成物の50~95重量%を構成する。
【0054】
熱伝導性フィラーは、好ましくは全組成物の50~95重量%を構成する。熱伝導性フィラーの粒子状アルミナ部分の配合量は、未硬化の2パート組成物の分散性を過度に阻害せず、硬化組成物の柔軟性を過度に制限しない範囲内であることが好ましい。したがって、粒子状アルミナフィラーの配合量範囲と粒径範囲において、硬化促進特性と粘度/硬度効果とのバランスをとることが好ましい。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーは、全組成物中に1~1000phrで存在する。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーは、全組成物中に1~100phrで存在する。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーは、全組成物中に1~50phrで存在する。
【0055】
本発明の組成物中の粒子状アルミナフィラーの比表面積(単位質量当たりの材料の総表面積、「SSA」)が硬化促進特性に寄与することがわかった。本明細書において、「総比表面積」という用語は、組成物中の全アルミナフィラーの比表面積を意味する。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーの総比表面積は少なくとも0.2m/gである。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーの総比表面積は少なくとも1m/gである。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーの総比表面積は1~200m/gである。いくつかの実施形態では、粒子状アルミナフィラーの総比表面積は4~150m/gである。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、組成物の熱伝導率を高めるために、粒子状アルミナフィラーに加えて熱伝導性粒子が含まれてもよい。粒子は、熱伝導性および電気伝導性の両方を有していてもよい。あるいは、粒子は熱伝導性で電気絶縁性であってもよい。熱伝導性粒子の例としては、アルミニウム三水和物、酸化亜鉛、黒鉛、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、金属粒子、およびそれらの組み合わせが挙げられる。熱伝導性粒子は、様々な形状およびサイズであってもよく、特定の用途のパラメータに適合するような粒度分布を採用することが考えられる。
【0057】
本発明の組成物は、少なくとも1W/m・K、より好ましくは少なくとも2W/m・Kの熱伝導率を示すことが望ましい。
【0058】
可塑剤
本発明の組成物は、特にせん断下でディスペンスされるものの粘度を調整し、組成物が硬化状態にあるときの柔軟性/柔らかさ特性を維持するために、可塑剤を含まれてもよい。硬化した組成物は、80ショアA未満の比較的低い弾性率(modulus)または硬度を示し、電子部品組み立て時の応力を緩和し、電子部品のそれぞれの接触面に対する熱材料の適合性を促進する。
【0059】
本発明の組成物において有用な可塑剤は、組成物を構成する凝集物の流動性を促進するのに有効な可塑剤である。本発明の可塑剤は、好ましくは、組成物が液体ディスペンス装置を通して容易にディスペンス可能であるように、硬化前の組成物全体の粘度を低下させる低揮発性液体であってよい。したがって、可塑剤は、25℃で1000cP未満の粘度を示してもよい。別の実施形態では、可塑剤は、25℃で500cP未満の粘度を示してもよい。さらなる実施形態では、可塑剤は25℃で100cP未満の粘度を示してもよい。好ましくは、可塑剤は25℃で1~50cPの粘度を示す。
【0060】
可塑剤は、硬化前の分散性および硬化後の柔らかさのための粘度を適切に調整するのに適した量で組成物に添加されることが好ましい。いくつかの実施形態では、可塑剤は、組成物の約1~50重量パーセントを占めてもよい。いくつかの実施形態では、可塑剤は、組成物の約1~20重量パーセントを占めてもよい。いくつかの実施形態では、可塑剤は、組成物の約5~10重量パーセントを占めてもよい。可塑剤は、好ましくは組成物の20重量%未満で存在してもよい。
【0061】
可塑剤の例としては、セバケート、アジペート、テレフタレート、ジベンゾエート、グルテレート、フタレート、アゼレート、ベンゾエート、スルホンアミド、有機ホスフェート、グリコール、ポリエーテル、トリメリテート、ポリブタジエン、エポキシ、アミン、アクリレート、チオール、ポリオール、イソシアネート等が挙げられる。
【0062】
組成物のバルクマトリックスを形成するシリル変性反応性ポリマーは、可塑剤と反応せずにネットワークを形成することが好ましい。本出願人は、米国特許第3,632,557号および米国特許出願公開第2004/0127631号(これらの内容はその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているようなシリル変性ポリマー(SMP)が、本発明の熱伝導性材料の調製に特に有用であり得ることを見出した。
【0063】
レオロジー調整剤
本発明の組成物には、流動特性、チキソトロピー、およびディスペンス形態の安定性を補助するために、「増粘剤」と呼ばれることもある特定のレオロジー調整剤を含んでもよい。本発明において有用なレオロジー調整剤としては、ヒュームドシリカ、有機粘土、ポリウレタン、およびアクリルポリマー等の増粘剤を挙げられる。レオロジー調整剤には、熱伝導性フィラーの分散剤も含まれ得る。いくつかの実施形態において、レオロジー調整剤は、それ自体が組成物の熱伝導性および/または硬化に寄与し得る。レオロジー調整剤は、保管中のフィラーの沈降を抑制し得る。
【0064】
本発明の組成物に使用される増粘剤は、約0~約3重量パーセントの範囲で存在する。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.01~約1重量パーセントの範囲の増粘剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、約0.05~約0.5重量パーセントの範囲の増粘剤を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、0.5重量パーセント未満の増粘剤を含む。
【0065】
反応触媒
シリル変性反応性樹脂の加水分解-縮合硬化反応をさらに促進するために、反応触媒を使用してもよい。本発明の組成物において有用な反応触媒の例としては、シリル変性反応性樹脂の湿気硬化を促進する有機スズおよび有機亜鉛および有機チタン化合物(本明細書ではこれらをまとめて「有機金属触媒」と呼ぶ)が挙げられる。
【0066】
粒子状アルミナの発見された硬化促進特性の結果として、本発明の組成物は、反応触媒への依存性が低いことが好ましい。いくつかの実施形態では、有機金属触媒化合物の使用を完全に避けることができる。いくつかの実施形態では、有機金属触媒化合物の使用を完全に回避し得る。これは、そのような化合物の環境毒性および健康毒性を考慮すると好ましい場合がある。他の実施形態では、有機金属触媒化合物の使用を減らしてもよい。さらに、有機金属触媒化合物の少なくとも一部の代わりに、シリル変性樹脂の湿気硬化反応を促進するには不適切である、他の代替のより安全な反応触媒を使用してもよい。
【0067】
本発明の組成物において使用される反応触媒は、0~0.1重量パーセントの範囲で存在してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、0.01~0.5重量パーセントの範囲の反応触媒を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、0.01~0.02重量パーセントの範囲の反応触媒を含む。本明細書において、特定の量「未満」の濃度には、0が含まれてもよい。
【0068】
本発明の熱伝導性組成物は、好ましくは、周囲温度で水の存在下で硬化可能(湿気硬化可能)である。用途に応じて、水分は周囲環境から、または組成物が塗布される対象物(単数または複数)から放出される水から利用可能であり得る。本発明の組成物は、シリル変性樹脂の加水分解-縮合硬化反応を促進するのに必要な水の量を著しく減少させる。好ましくは、本発明の組成物は、環境水分の添加なしに硬化可能である。いくつかの実施形態において、水は、その場で反応性樹脂と混合するために、複数パートの硬化性組成物の非樹脂パートに成分として含まれてもよい。しかし、好ましくは、組成物自体に必要な水の量は、熱材料の機能特性を妨げないように、少量である。いくつかの実施形態において、水は、0~0.5重量%の範囲で本発明の組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、組成物は、0.01~0.3重量%の範囲の水を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、0.01~0.2重量%の範囲の水を含む。
【0069】
本明細書において、「周囲温度」という用語は、反応が起こる環境の温度であり、15~30℃、好ましくは25℃の温度範囲内であることを意味することを意図する。熱伝導性組成物は、周囲温度で72時間以内、好ましくは24時間以内に硬化可能である。熱伝導性組成物はまた、高温で硬化可能であってもよい。本明細書において、「硬化性(curable)」という用語は、組成物が適切な条件下で反応でき、反応生成物が不可逆的な固体形態を有することを意味することを意図する。
【0070】
水スカベンジャー
本発明の組成物は、好ましくは、貯蔵寿命を延長するように、ディスペンス前の樹脂含有成分の反応を回避するために、水スカベンジャーを含む。水スカベンジャーは、例えば、アルキルトリメトキシシラン、オキサゾリジン、ゼオライト粉末、p-トルエンスルホニルイソシアネート、オキソカルシウム、およびオルトギ酸エチルであってよい。水スカベンジャーは、好ましくはビニルトリメトキシシランである。水スカベンジャーが組成物中に多すぎると硬化が遅くなる。水スカベンジャーは、組成物の約0.05重量%超かつ約0.5重量%未満、例えば約0.1重量%の量で存在してもよい。
【0071】
任意の添加物
本発明のいくつかの実施形態に従って、本明細書に記載の組成物は、フィラー、安定剤、接着促進剤、溶媒、顔料、湿潤剤、分散剤、難燃剤、増量剤、および腐食防止剤から選択される1つ以上の添加剤をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、添加剤のいずれかまたはすべてを含まないことができる。
【実施例
【0072】
本明細書に記載した例は、反応性ポリマー成分としてアルコキシシラン変性ポリエーテル樹脂を使用した2成分硬化性組成物である。
【0073】
例1
例1は、有機スズ触媒を含むパートAと、シリル変性反応性樹脂を含むパートBを含む2成分熱伝導性材料である。組成を表1に要約する。パートAは、粘度100cP未満の可塑剤8重量%、増粘剤(ヒュームドシリカ、有機粘土、および液体レオロジー添加剤)3重量%、有機スズ触媒0.1重量%、顔料0.2重量%、水0.4重量%、および熱伝導性フィラー88重量%を含有した。標準パートBは、粘度100cP未満の可塑剤4重量%、ジメトキシシラン末端基を有するアルコキシシラン変性ポリエーテル樹脂4重量%、増粘剤(ヒュームドシリカ、有機粘土、液体レオロジー調整剤)1重量%、樹脂添加剤(水スカベンジャー、酸化防止剤)0.2重量%、および熱伝導性添加剤90重量%を含有した。フィラーは、加水分解を避けるため、反応性樹脂を添加する前に、高温および真空で混合するか、または場合により水スカベンジャーを添加して周囲温度で乾燥させた。
【0074】
【表1】
【0075】
配合物は初めに、プラネタリーミキサーを用いて調製された。パートAはその後、硬化反応を変化させるために様々な戦略を用いて、表2に示すように変更された。各試験には同じパートBを使用した。別々のパートを2成分カートリッジに充填し、スタティックミキサーでディスペンスしている間に混合した。試料を小さなアルミトレイにディスペンスし、温度74°F、相対湿度50%の制御された環境下で、様々な時間間隔の後に硬度を評価した。硬度はショア00またはショアAデュロメータで測定した。
【0076】
【表2】
【0077】
選択した配合物のショア00硬度の変化を表3に示す。空気に曝されたオープントレイにおいて、ベース配合物(危険分類の表示を回避するために最大許容レベルの有機スズ触媒と、硬化反応の初期加水分解工程を加速するための0.4重量%の水を含む)は、ショア00スケールの測定可能な硬度を発現するのに室温で24時間超を要し、7日間で硬度のプラトーに達しなかった。密閉容器内では、材料は1週間たっても硬化せず、機械的強度の発現が遅いため、剥離および亀裂を伴う様々な表面欠陥が見られ、多くの用途では許容されない。
【0078】
【表3】
【0079】
有機スズ触媒の量を許容可能な配合量の3倍に増やすと、硬化は速くなったが、最終的な硬度と強度は低下した(試験A-2)。この変化は、望ましくない骨格構造の変化を示している。有機スズ触媒の種類の変更、第2の触媒の添加(試験A-3)、および水量の増加(試験A-4)に基づく他の試験でも同様に、用途の許容範囲内の硬化速度の改善は不十分であった。
【0080】
最も顕著な改善は、未処理のアルミナフィラーを添加した場合に観察された。3種類の小径球状アルミナを使用し、それぞれ24時間後に50%以上の硬化を示した。所定の配合量では、速度はフィラーの比表面積(SSA)に対応し、配合量を増やすと反応速度はさらに向上した。このことは、アルミナ表面の相互作用が反応を促進していることを裏付けている。重要なことは、未処理のアルミナを添加することにより、触媒の変更で観察されたような材料の最終硬度の大きな変化はなく、水のような揮発成分の変化もないことである。アルミナの高い熱伝導率により、材料の熱性能を変えることなく、処理されたアルミナを部分的に置換して、粘度やディスペンス速度の変化を補正することもできる。
【0081】
【表4】
【0082】
例2
例2では、有機スズ触媒の量を増やし、許容できるレベルまで硬化を促進した。2パート配合物の説明を表5に示す。ジメトキシシラン末端反応性樹脂はパートBに4重量%含まれ、パートAには0.4重量%の水を含んだ。
【0083】
【表5】
【0084】
例1に記載の方法を用いてトレイを準備し、硬化を促進するために空気にさらしたままにした。ディスペンシング後の硬度の変化を表6に示す。有機スズ配合量が0.1重量%の場合、材料は24時間後に硬化せず、72時間までに最終硬度に達しなかった。閉じたパックでは、材料は7日以内に硬化せず、未硬化材料のゆっくりとしたガス放出により亀裂や機械的欠陥が見られた。配合量を0.8重量%に増やすと、材料は24時間以内に最終硬化の約80%に達することができたが、さらに増やすと硬度が低下し、材料内で不均一性が生じる傾向があった。
【0085】
【表6】
【0086】
この例は、触媒レベルを増加することで硬化を促進することができるが、望ましくないレベルまで配合量を上げることによってのみ可能であることを強調している。ほとんどの用途では、含めることができる有機スズの最大量は0.1重量%のスズである。この方法は、スズ系触媒に関連する環境および健康への危険性から好ましくない。
【0087】
例3
未処理のフィラーは、処理済みのフィラーよりも粘度や流量に対してより大きな影響を与える傾向があり、多くの隙間充填用途では最大配合量が制限される。フィラーの添加によるディスペンス特性への影響を最小限に抑えるために、体積領域(volume area)に対する表面積が大きいフィラーを使用することが望ましい。例3では、非常に高い表面積を提供するヒュームドアルミナが選択され、それによってフィラーの所定の体積分率に対するアルミナ表面の量が最大化された。
【0088】
【表7】
【0089】
材料はプラネタリーミキサーを使用して調製し、スタティックミキサーを使用してオープンアルミトレイにディスペンスした。ショア00デュロメータを用いて測定した24時間後の硬度を表8に示す。例3では、一つのパートBを使用し、ヒュームドアルミナの配合量を0~0.5重量%に変化させた様々なパートAを調製した。
【0090】
【表8】
【0091】
ヒュームドアルミナを含まないベース配合物は、24時間後に測定可能な硬度を示さなかった。ヒュームドアルミナの含有量が0.5重量%では、最終硬度の70%であるショア00が40まで、フュームドアルミナの含有量とともに硬度は上昇した。より大きな直径の未処理アルミナの量を増やすと、硬度はさらに向上したが(例C-6)、比表面積が著しく低いため、配合時の速度はかなり制限された。
【0092】
例4
硬度の増加率は、シラン変性樹脂の硬化を促進する様々なフィラーの能力を評価するための代替として用いられた。例4には、シリカおよび酸化亜鉛だけでなく、様々な種類のアルミナを使用し、様々な種類の表面処理についての多くの実験結果が含まれる。混合組成物の一般的なパラメータ範囲を表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
例4では、ジメトキシ末端ポリエーテルの硬化速度の主な要因は、アルミナなどの組成物中の所定のフィラー(i)の未処理の表面積(USA)の総量であった。このパラメータは、各粒子についてUSA=SSAi*cと定義した。ここで、SSAiはフィラーiの比表面積(m/g)であり、cは組成物中の重量%である。複数のフィラーを有する組成物の場合、フィラーの総表面積(TUSA)は、TUSA=Sum{USA* A}として定義され、ここでAは活性指数(activity index)である。
【0095】
24時間後のショア00硬度の概要を図1に示す。この結果は、未処理のアルミナの活性表面積量と硬度との間に極めて強い相関関係があることを示している。この効果は、含水量および触媒配合量の変化よりも顕著であり、酸化亜鉛またはシリカでは同様の効果は観察されなかった。
【0096】
アルミナ表面の重要性は、同グレードのアルミナをシラン基で表面処理後に硬化速度の向上が見られなかったという観察によって強調される。アルミナの表面をコーティングするように設計された相溶化剤または他の分散助剤のレベルを上げると、露出する表面積の量が制限され、および/または有機金属触媒と錯体化し、それによってその活性が低下することにより、硬化速度が低下するという同様の影響があった。
【0097】
様々なフィラーの活性指数の概要を提供する。活性指数は、上記の例に記載されているように、種々のフィラーの総表面積とトレイの24時間硬度との関係を最適化することによって得られた。
【0098】
【表10】
【0099】
例5
追加の組成物の表11は、複数種類の熱伝導性フィラーを配合した別の遅硬化組成物を示す。酸化亜鉛フィラーは未処理であるが、硬化促進に相当な効果をもたらすには十分ではない。0.15重量%の有機金属触媒を用いても、この組成物は測定可能な硬度を有する固体を形成することができない。高表面積アルミナの硬化促進効果を明確に示すために、少なくとも100m/gの未修飾表面と0.1μm未満の平均粒径(d50)を有するヒュームドアルミナを、表12に示すように、表11の組成物に異なる量で添加した。
【0100】
表12は、様々な量のフュームドアルミナを用いた1日硬化と4日硬化のショア00硬度を示す。これは、1日硬化硬度はフュームドアルミナの添加量に応じてほぼ直線的に増加することを示す。
【0101】
【表11】
【0102】
【表12】

図1
【国際調査報告】