(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの新規固形物
(51)【国際特許分類】
C07D 403/12 20060101AFI20240614BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240614BHJP
A61K 31/517 20060101ALI20240614BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
A61P35/00
A61K31/517
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575702
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-01-30
(86)【国際出願番号】 EP2022065342
(87)【国際公開番号】W WO2022258584
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】アスランド, ベンクト
(72)【発明者】
【氏名】コンラス, マニュエル
(72)【発明者】
【氏名】ラーション, ウルフ イェラン
(72)【発明者】
【氏名】マルムベリ, ヨハン サルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミニディス, アレクサンダー ボグダン エーミル
(72)【発明者】
【氏名】モドロ-チェラット, イザベル ジョーゼット ユゲット
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC46
4C086GA07
4C086GA15
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZC20
(57)【要約】
本発明は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物およびその溶媒和物、ならびに新規固形物の治療的使用および製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物
の固形物であって、固形物が、約10.22度2シータの回折角におけるピークおよびおよそ7.90、8.92、11.58、12.16、12.66、14.66、17.50、18.06、19.64または20.54度2シータの値で表される少なくとも1つの追加のピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶多形A型である、固形物。
【請求項2】
約10.22度2シータおよび約18.06度2シータの回折角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1に記載の固形物。
【請求項3】
約10.22度2シータおよび約20.54度2シータの回折角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1に記載の固形物。
【請求項4】
約7.90、8.92、10.22、11.58、12.16、12.66、14.66、17.50、18.06、19.64および20.54度2シータの回折角で少なくとも3つのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項5】
約7.90、8.92、10.22、11.58、12.16、12.66、14.66、17.50、18.06、19.64および20.54度2シータの回折角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項6】
およそ5.06、9.88、11.28、13.16、13.64、14.84、15.38、15.66、15.86、16.24、16.54、17.18、18.58、18.98、19.40、20.72、21.18、22.26、23.00、23.30、23.90、24.08または24.44度2シータの値で表される少なくとも1つの追加のピークをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のX線粉末回折パターンを特徴とする、固形物。
【請求項7】
図1に示すX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項8】
加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、215℃超、特に約215.6℃から約219.6℃の間に、ピークシグナルを有する融点を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項9】
式(I)の化合物
の固形物であって、固形物が、689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1または2874(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1または2874(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1および2874(±2)cm
-1の位置にピークを含むIRスペクトルによって特徴付けられる結晶多形A型である、固形物。
【請求項10】
式(I)の化合物
の固形物であって、固形物が、691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1または3061(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1または3061(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1および3061(±2)cm
-1の位置にピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる結晶多形A型である、固形物。
【請求項11】
式(I)の化合物
またはその溶媒和物の固形物であって、固形物が非晶質である、固形物。
【請求項12】
加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、約63.1℃から約69.1℃、特に約64.6℃から約67.6℃の温度でガラス転移の開始を示すことを特徴とする、請求項11に記載の固形物。
【請求項13】
加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、約114.4℃から約120.4℃、特に約115.9℃から約118.9℃の間の温度で再結晶化の開始を示すことを特徴とする、請求項11または12に記載の固形物。
【請求項14】
679(±2)cm
-1、1035(±2)cm
-1または1337(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に679(±2)cm
-1、1035(±2)cm
-1または1337(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると679(±2)cm
-1、1035(±2)cm
-1および1337(±2)cm
-1の位置にピークを含むIRスペクトルによって特徴付けられる、請求項11から13のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項15】
1159(±2)cm
-1、1344(±2)cm
-1または3069(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に1159(±2)cm
-1、1344(±2)cm
-1または3069(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると1159(±2)cm
-1、1344(±2)cm
-1および3069(±2)cm
-1の位置にピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる、請求項11から14のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の実質的に純粋な固形物。
【請求項17】
医薬として使用するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項18】
がん、特にBRAF関連がんの治療または予防のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項19】
がん、特に黒色腫または非小細胞肺がんの治療または予防のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の固形物。
【請求項20】
請求項1から17のいずれか一項に記載の固形物と、1つ以上の薬学的に許容される補助物質とを含む、薬学的組成物。
【請求項21】
がん、特にBRAF関連がんの治療のための、請求項1から16のいずれか一項に記載の固形物の使用。
【請求項22】
がん、特にBRAF関連がんの治療のための医薬を調製するための、請求項1から16のいずれか一項に記載の固形物の使用。
【請求項23】
がん、特にBRAF関連がんの治療または予防処置のための方法であって、それを必要とする患者に有効量の請求項1から16のいずれか一項に記載の固形物を投与することを含む、方法。
【請求項24】
式(I)の化合物
の調製のための方法であって、以下:
(a)式(A1)の化合物
を、式(A2)の化合物
と、適切な溶媒の存在下、適切な塩基の存在下で反応させて、式(B1)の化合物を得る工程
(b)式(B1)の化合物を、式(B2)の化合物
と、適切な溶媒の存在下、適切な塩基の存在下で反応させて、式(I)の化合物を得る工程
(c)好適な溶媒および好適な酸中の式(I)の化合物の粗生成物の懸濁液を濾過によってさらに精製して、実質的な量の二量体硫酸塩を除去し、実質的な量の式(I)の化合物を含む濾液を得る工程
を含む、方法。
【請求項25】
式(I)の化合物
の結晶多形A型の調製のための方法であって、以下:
(a)実質的な量の式(I)の化合物を含む請求項24に記載の濾液を減圧下で濃縮して懸濁液を得る工程、
(b)水および好適な塩基を、式(I)の化合物を含む懸濁液に添加し、pHを6.7±0.5に調整した後、反応物を攪拌して、式(I)の化合物を含む沈殿物を得る工程、
(c)式(I)の化合物を含む沈殿物を濾過し、次いで好適な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させ、結晶化された(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを得る工程、
(d)好適な溶媒および水を(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドに添加し、懸濁液を約40℃から約80℃の間、特に約60℃に加熱し、得られた溶液を濾過し、好適な溶媒で洗浄する工程、
(e)好適な溶媒中の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを含む溶液を真空中で濃縮する工程、
(f)蒸留によって(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを含む溶液の溶媒交換を行い、懸濁液を攪拌して、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを沈殿させる工程、ならびに
(g)好適な溶媒中の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの懸濁液を濾過し、真空中で乾燥させ、結晶多形A型を得る工程
のうちの少なくとも1つを含む、方法。
【請求項26】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの新規固形物、ならびに新規固形物の治療的使用および製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
急速進行性線維肉腫(RAF)クラスのセリンスレオニンキナーゼは、MAPキナーゼシグナル伝達経路の最初のノードを構成する3つのメンバー(ARAF、BRAF、RAF1)を含む。MEK1および2のリン酸化を介したシグナル伝達伝播における3つのRAFアイソフォームの明らかな重複にもかかわらず、頻繁な発がん性活性化変異はBRAFについてのみ一般的に見出される。特に、V600をグルタミン酸またはリジンで置換すると、キナーゼが高度に活性化され、その結果、外部刺激とは無関係にMAPK経路が過剰刺激される(Cell.2015年6月18日;161(7):1681~1696頁)。
【0003】
変異型BRAFは標的化可能な発がん性ドライバーであり、3種類のBRAF阻害剤(ベムラフェニブ、ダブラフェニブおよびエンコラフェニブ)がこれまでに市場に投入され、BRAFV600E陽性黒色腫において有効性が示されている。しかしながら、薬物耐性の迅速な獲得はほぼ普遍的に観察されており、標的療法に関する治療上の利益の持続期間は依然として限られている。
【0004】
その上、開発されたBRAF阻害剤は、BRAFV600E駆動性腫瘍においてMAPKシグナル伝達を抑制する予想外の「逆説的」能力を明らかにしたが、同じ阻害剤がBRAF野生型(WT)モデルにおいてMAPK刺激活性を示した(N Engl J Med 2012;366:271~273;およびBritish Journal of Cancer、111巻、640~645頁(2014年))。
【0005】
次いで、RAFパラドックスに関する機構的研究により、発がん性BRAFV600Eがその単量体サイトゾル形態でMEK1/2をリン酸化する一方で、WT BRAFおよびRAF1の活性化は、細胞膜移行、ならびに活性化RAS(KRAS、NRAS、HRAS)によって促進されるホモおよび/またはヘテロ二量体化を含む事象の複雑な段階を必要とすることが明らかになった(Nature Reviews Cancer、14巻、455~467頁(2014年))。
【0006】
ベムラフェニブ、ダブラフェニブまたはエンコラフェニブのような阻害剤のWT BRAFまたはRAF1プロトマーへの結合は、RAFホモおよび/またはヘテロ二量体化、ならびに新たに形成されたRAF二量体の膜会合を迅速に誘導する。二量体型の立体配座では、1つのRAFプロトマーが第2のRAFプロトマーの立体配座変化をアロステリックに誘導してキナーゼ活性状態をもたらし、重要なことに、阻害剤の結合にとって好ましくない立体配座をもたらす。薬物治療によって誘導された二量体は、結果として、経路の過活性化を伴う未結合プロトマーによって動作される触媒作用によりMEKリン酸化を促進する。
【0007】
RAFパラドックスは、2つの臨床的に関連する結果をもたらす:1)BRAFi単剤療法時の二次腫瘍(主に角化棘細胞腫および扁平上皮癌)の増殖の促進(N Engl J Med 2012;366:271~273)、および2)BRAFi単剤療法の状況と並んでBRAFi+MEKiの組合せにおける薬物耐性の獲得は、RAS変異、BRAF増幅、二量体作用性BRAFスプライスバリアントの発現を含む遺伝的に駆動される事象による二量体媒介性RAFシグナル伝達の活性化を示す(Nature Reviews Cancer、14巻、455~467頁(2014年))。したがって、このパラドックスを遮断することができるRAF阻害剤が必要とされている。
【0008】
さらに、現在認可されている古典的なBRAF阻害剤であるベムラフェニブ(Mol.Pharmaceutics 2012、9、11、3236~3245頁)、ダブラフェニブ(J Pharmacol Ex Ther、2013、344(3)、655~664頁)およびエンコラフェニブ(Pharmacol Res.2018;129;414~423頁)はすべて、脳透過性が非常に不良である。これは、脳がんまたは脳転移の治療の場合、これらの古典的なBRAF阻害剤の使用にとって大きな制限である。したがって、脳透過性が改善されたBRAF阻害剤が必要とされている。
【0009】
これに応じて、高い効能を保ちながら、示されるMAPKシグナル伝達経路のパラドックス活性化が非常に低い有効なBRAF阻害剤である化合物が必要とされる。このような化合物は、RAFパラドックスを誘導する化合物(パラドックス誘導剤またはRAFパラドックス誘導剤と呼ぶことができる)とは対照的に、パラドックス遮断剤またはRAFパラドックス遮断剤と呼ぶことができる。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドは、これらの必要を満たし、好都合な脳透過性を有するパラドックス遮断性BRAF阻害剤である。
【0010】
多形体は、異なる結晶形の同じ化合物である。多形体は、典型的には、格子中の分子の異なるパッキングに起因して、異なる結晶構造を有する。多形は、医薬業界、特に好適な剤形の開発に関与する者にとって興味を引くものである。多形が臨床試験中に一定に保持されない場合、使用されるまたは試験されるまさにその剤形は互いに比較できない。任意の不純物が望ましくない影響(例えば、毒性)を引き起こすことがあるため、化合物が臨床試験または市販製品に使用される場合、高純度の選択された多形を有する化合物を調製する方法を有することも望ましい。特定の多形体は、強化された安定性も示し得、またはより容易に高純度で大量に製造でき、薬学的製剤中に含ませることがより好適である。特定の多形体は、吸湿性傾向の欠如、改善された溶解性、および種々の格子エネルギーに起因して強化された溶解率などの他の有利な物理的性質を示し得る。
【発明の概要】
【0011】
(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドは、好都合な脳透過性を有し、がん、特に黒色腫、肺がんおよび脳転移性がんの治療に有用である、パラドックス遮断性BRAF阻害剤である。これに応じて、医薬開発および商業化のために、高結晶度、高純度、好都合な物理安定性、化学安定性、溶解性および機械的性質などの所望の性質を有する(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物を特定することが必要とされている。本発明は、2つの別個の固形物(i)結晶多形A型および(ii):非晶形にある(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形A型のX線粉末回折パターンを例示する。
【
図2】非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドのX線粉末回折パターンを例示する。
【
図3】示差走査熱量測定(DSC)によって得られる(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形A型のサーモグラムである。鋭い融解シグナルが観察された(開始216.1℃、ピーク217.6℃、エンタルピー98.3J/g)。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形A型のサーモグラムは、熱重量分析(TGA)によっても得られた。有意な質量損失は観察されなかった。鋭い融解シグナルがDSCにおいて観察され、融解後に分解が生じる。
【
図4】示差走査熱量測定(DSC)によって得られる非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドのサーモグラムである。観察される熱的事象は、ガラス転移(開始66.1℃、エンタルピー0.319J/g)、再結晶(開始117.4℃、ピーク123.5℃、エンタルピー66.1J/g)および分解による融解(開始209.1℃)である。
【
図5】動的蒸気収着(DVS)によって得られる(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形A型の収着/脱着曲線である。質量変化は、0%~90%のRHで0.2%未満であり;多形A型は吸湿性でなく、サイクル中、固形物に変化はない。
【
図6】動的蒸気収着(DVS)によって得られる非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの収着/脱着曲線である。質量変化は、0%~90%のRHで約3.8%であり;非晶形は吸湿性である。A型への再結晶が、高湿度貯蔵実験において観察された。
【
図7】(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形A型のラマンスペクトルである。
【
図8】非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドのラマンスペクトルである。
【
図9】(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形A型のIRスペクトルである。
【
図10】非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドのIRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、式(I)の化合物
の固形物であって、該固形物が、結晶多形A型または非晶形である、固形物に関する。
【0014】
式(I)の化合物はまた、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドとも呼ばれる。
【0015】
結晶多形A型は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの熱力学的に安定性の形態である。結晶多形A型は、例としては安定性、溶解性などの好都合な生物物理学的特性によって特徴付けられ、非吸湿性である。
【0016】
非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドは、吸湿性であり、例としては溶解性またはバイオアベイラビリティなどの強化された生物物理学的特性によって特徴付けられる。
【0017】
「薬学的に許容される担体」および「薬学的に許容される補助物質」という用語は、製剤の他の成分と相溶性である担体および補助物質、例えば希釈剤または添加物を指す。
【0018】
「室温」という用語は、18~30℃、特に20~25℃、より特定すると20℃を指す。
【0019】
「約」または「およそ」という用語は、区別がなく、指定の基準値のよりも5%以内で大きいまたは小さい範囲値を指す。より具体的には、「約」または「およそ」は、±0.2°度2シータまたは±0.5℃を指す。
【0020】
「実質的な量」という用語は、本明細書では、規定の画分中の特異的物質の初期に存在していた量の少なくとも50%、特に少なくとも60%、より特定すると少なくとも70%を意味することができる。例としては、精製工程後、実質的な量の特異的物質を含む画分は、精製工程前の該特異的物質の初期に存在していた量の少なくとも50%、特に少なくとも60%、より特定すると少なくとも70%の該特異的物質を含むことになる。
【0021】
「結晶化」および「再結晶化」は、区別なく用いることができ、特定の化合物の安定性の多形または結晶形をもたらすプロセスを指し、ここで、プロセスの前の化合物は、非晶形であってもよく、または溶媒系に溶解もしくは懸濁されていてもよい。例えば、結晶化工程は、溶媒および貧溶媒を用いて結晶を形成することによって実施することができる。
【0022】
「XRPD」は、X線粉末回折の分析方法を指す。角度値の繰り返し精度は、2シータ±0.2°の範囲内である。角度値と合わせて記載される「およそ」という用語は、2シータの範囲内にある繰り返し精度を示す。相対的なXRPDピーク強度は、構造因子、温度因子、結晶化度、分極因子、多重度、ローレンツ因子などの多くの因子に依存する。相対強度は、好ましい配向効果のために、測定ごとにかなり異なる可能性がある。USP941(米国薬局方、第37版、一般第941章)によれば、同じ材料の2つの試料間の相対強度は、「好ましい配向」効果のためにかなり変化する可能性がある。好ましい配向を採用する異方性材料は、例えばKocks U.F.ら(Texture and Anisotropy:Preferred Orientations in Polycrystals and Their Effect on Materials Properties、Cambridge University Press、2000)に記載されるように、係数、強度、延性、靭性、導電率、熱膨張などの性質の異方性分布をもたらす。XRPDだけでなくラマン分光法においても、好ましい配向は強度分布の変化を引き起こす。好ましい配向効果は、比較的粒径の大きい結晶性APIで特に顕著である。
【0023】
「特性ピーク」は、基準結晶形態(A型)として、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを最終的に同定するX線粉末回折ピークの存在を指す。典型的には、X線粉末回折分析は、STOE STADI P回折計(CuKα1放射線、一次モノクロメータ、シリコンストリップ検出器、角度範囲3~42度の2シータ、およそ30分の総測定時間)を用いて透過幾何形の周囲条件で実施される。試料(およそ10~50mg)を薄いポリマー膜の間に調製し、物質をさらに処理(例えば、粉砕またはふるい分け)することなく分析する。
【0024】
「多形体」は、同じ化学組成を有するが、結晶を形成する分子、原子、および/またはイオンの空間的配置が異なる結晶形を指す。概して、本明細書全体にわたって参照するのは、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの多形である。「多形」という用語は、本明細書では、同じ化合物の水和物(例えば、結晶構造中に存在する結合水)を含めた他の結晶性固体状態の分子形態を含んでも含まなくてもよい。多形体は、典型的には、格子中の分子の異なるパッキングに起因して、異なる結晶構造を有する。これは、異なる結晶対称および/または単位格子パラメータをもたらし、結晶または粉末のX線回折特性などの物理的性質に直接影響する。
【0025】
「非晶質」は、結晶性固形物の特性である長距離秩序を欠く固形物を指す。
【0026】
「溶媒和物」という用語は、本明細書では、式(I)の化合物と、化学量論量または非化学量論量の1種以上の溶媒分子(例えば、エタノール)とを含む分子錯体を指す。「水和物」は、本明細書では、式(I)の化合物と、化学量論量または非化学量論量の水とを含む溶媒和物を指す。
【0027】
用語「薬学的に許容される添加物」、「薬学的に許容される担体」および「治療的に不活性な添加物」は、区別なく使用可能であり、医薬品の調合において使用される、薬学的組成物中の、治療活性を有さず、かつ投与される対象に対して無毒性である任意の薬学的に許容される成分、例えば、崩壊剤、結合剤、充填剤、溶媒、バッファー、等張化剤、安定剤、抗酸化剤、界面活性剤、担体、希釈剤、または潤滑剤を示す。
【0028】
「薬学的組成物」という用語は、所定の量または比率で特定の成分を含む製品、および特定の量で特定の成分を組み合わせることによって直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含する。特にこれは、1種以上の活性成分を含む生成物、および不活性成分を含む任意選択の担体、ならびに任意の2種以上の成分の組合せ、錯体形成、もしくは凝集から、または1種以上の成分の解離から、または1種以上の成分の他のタイプの反応もしくは相互作用から、直接的または間接的に生じる任意の生成物を包含する。
【0029】
「薬学的に許容される担体」および「薬学的に許容される補助物質」という用語は、製剤の他の成分と相溶性である担体および補助物質、例えば希釈剤または添加物を指す。
【0030】
「治療的有効量」は、疾患の症状を予防、軽減、もしくは改善する、または治療対象の生存期間を延ばす量を意味する。
【0031】
「実質的に純粋」という用語は、固形物(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドに関連して使用される場合、純度が>90%の前記多形体を指す。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物は、10%超の他の任意の化合物を含有せず、具体的には10%超の他の任意の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物を含有しない。
【0032】
より具体的には、「実質的に純粋」という用語は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物に関連して使用される場合、純度が>95%の前記固体を指す。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物は、5%超の他の任意の化合物を含有せず、具体的には5%超の他の任意の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物を含有しない。
【0033】
さらにより具体的には、「実質的に純粋」という用語は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物に関連して使用される場合、純度が>97%の前記固形物を指す。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物は、3%超の他の任意の化合物を含有せず、具体的には3%超の他の任意の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物を含有しない。
【0034】
最も具体的には、「実質的に純粋」という用語は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物に関連して使用される場合、純度が>99%の前記多形体を指す。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物は、1%超の他の任意の化合物を含有せず、具体的には1%超の他の任意の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物を含有しない。
【0035】
最も具体的には、「実質的に純粋」という用語は、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物に関連して使用される場合、純度が>99.5%の前記多形体を指す。(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物は、1%超の他の任意の化合物を含有せず、具体的には1%超の他の任意の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの固形物を含有しない。
【0036】
本発明をその特定の実施形態を参照して説明してきたが、当業者は、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えることができ同等物が置き換え可能であることを理解すべきである。加えて、多くの修正を加えて、特定の状況、材料、物質の組成、プロセス、プロセスの工程(複数可)を、本発明の目的とする趣旨および範囲に適応させることができる。すべての該修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。すべての別々の実施形態は組み合わせることができる。
【0037】
本発明の態様は、以下である:
式(I)の化合物
の固形物であって、約10.22度2シータの回折角におけるピークおよびおよそ7.90、8.92、11.58、12.16、12.66、14.66、17.50、18.06、19.64または20.54度2シータの値で表される少なくとも1つの追加のピークを含むX線粉末回折パターンによって特徴付けられる結晶多形A型である、固形物;
約10.22度2シータおよび約18.06度2シータの回折角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、態様1による固形物;
約10.22度2シータおよび約20.54度2シータの回折角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、態様1による固形物;
約7.90、8.92、10.22、11.58、12.16、12.66、14.66、17.50、18.06、19.64および20.54度2シータの回折角で少なくとも3つのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、態様1から3のいずれか1つによる固形物;
約7.90、8.92、10.22、11.58、12.16、12.66、14.66、17.50、18.06、19.64および20.54度2シータの回折角におけるピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、態様1から4のいずれ1つによる固形物;
およそ5.06、9.88、11.28、13.16、13.64、14.84、15.38、15.66、15.86、16.24、16.54、17.18、18.58、18.98、19.40、20.72、21.18、22.26、23.00、23.30、23.90、24.08または24.44度2シータの値で表される少なくとも1つの追加のピークをさらに含む、態様1から5のいずれか1つによるX線粉末回折パターンを特徴とする、固形物;
CuKα1放射線(1.5406Å)で得られた、本発明によるX線粉末回折パターンを特徴とする、式(I)の化合物の固形物;
図1に示すX線粉末回折パターンを特徴とする、態様1から7のいずれか1つによる固形物;
加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、215℃超、特に約215.6℃から約219.6℃の間に、ピークシグナルを有する融点を有することを特徴とする、態様1から8のいずれか1つによる固形物;
式(I)の化合物
の固形物であって、加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、215℃超、特に約215.6℃から約219.6℃の間に、ピークシグナルを有する融点を有することを特徴とする、結晶多形A型である固形物;
結晶多形A型が、689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1または2874(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1または2874(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1および2874(±2)cm
-1の位置にピークを含むIRスペクトルによってさらに特徴付けられる、態様1から10のいずれか1つによる固形物;
式(I)の化合物
の固形物であって、固形物が、689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1または2874(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1または2874(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると689(±2)cm
-1、1326(±2)cm
-1および2874(±2)cm
-1の位置にピークを含むIRスペクトルによって特徴付けられる結晶多形A型である、固形物;
691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1または3061(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1または3061(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1および3061(±2)cm
-1の位置にピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる結晶多形A型である、態様1から12のいずれか1つによる固形物。
【0038】
式(I)の化合物
の固形物であって、固形物が、691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1または3061(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1または3061(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると691(±2)cm
-1、1660(±2)cm
-1および3061(±2)cm
-1の位置にピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる結晶多形A型である、固形物。
式(I)の化合物
またはその溶媒和物の固形物であって、固形物が非晶質である、固形物;
加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、約63.1℃から約69.1℃、特に約64.6℃から約67.6℃、より特定すると約66.1℃の温度でガラス転移の開始を示すことを特徴とする、態様15による固形物;
加熱速度10K/分で示差走査熱量測定を用いて、約114.4℃から約120.4℃、特に約115.9℃から約118.9℃の間、より特定すると約117.4℃の温度で再結晶化の開始を示すことを特徴とする、態様15または16による固形物;
679(±2)cm
-1、1035(±2)cm
-1または1337(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に679(±2)cm
-1、1035(±2)cm
-1または1337(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると679(±2)cm
-1、1035(±2)cm
-1および1337(±2)cm
-1の位置にピークを含むIRスペクトルによって特徴付けられる、態様15から17のいずれか1つによる固形物;
1159(±2)cm
-1、1344(±2)cm
-1または3069(±2)cm
-1の位置の1つに少なくとも1つのピークを含む、特に1159(±2)cm
-1、1344(±2)cm
-1または3069(±2)cm
-1の位置に少なくとも2つのピークを含む、より特定すると1159(±2)cm
-1、1344(±2)cm
-1および3069(±2)cm
-1の位置にピークを含むラマンスペクトルによって特徴付けられる、態様15から18のいずれか1つによる固形物;
態様1から19のいずれ1つによる実質的に純粋な固形物;
医薬として使用するための、態様1から20のいずれか1つによる固形物;
がん、特にBRAF関連がんの治療または予防のための、態様1から20のいずれか1つによる固形物;
がん、特に黒色腫または非小細胞肺がんの治療または予防のための、態様1から20のいずれか1つによる固形物;
態様1から20のいずれか1つによる固形物と、1種以上の薬学的に許容される補助物質とを含む、薬学的組成物;
がん、特にBRAF関連がんの治療のための、本発明による固形物の使用;
がん、特にBRAF関連がんの治療のための医薬を調製するための、本発明による固形物の使用;
がん、特にBRAF関連がんの治療または予防処置のための方法であって、それを必要とする患者に有効量の本発明による固形物を投与することを含む、方法。
【0039】
一実施形態において、本発明による式(I)の化合物の結晶多形A型の固形物は、溶媒和物である。
【0040】
特定の実施形態は、
図1に示すX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の結晶多形A型に関する。
【0041】
特定の実施形態は、
図3に示す示差走査熱量サーモグラムによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の結晶多形A型に関する。
【0042】
特定の実施形態は、
図5に示す動的蒸気収着プロフィールによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の結晶多形A型に関する。
【0043】
特定の実施形態は、
図7に示すラマンスペクトルによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の結晶多形A型に関する。
【0044】
特定の実施形態は、
図9に示すIRスペクトルによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の結晶多形A型に関する。
【0045】
特定の実施形態は、
図2に示すX線粉末回折パターンによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の非晶形に関する。
【0046】
特定の実施形態は、
図4に示す示差走査熱量サーモグラムによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の非晶形に関する。
【0047】
特定の実施形態は、
図6に示す動的蒸気収着プロフィールによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の非晶形に関する。
【0048】
特定の実施形態は、
図8に示すラマンスペクトルによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の非晶形に関する。
【0049】
特定の実施形態は、
図10に示すIRスペクトルによって特徴付けられる、本明細書に記載の式(I)の化合物の非晶形に関する。
【0050】
一実施形態において、式(I)の化合物の結晶多形A型は、無水であり、すなわち、結晶格子中に結合される水を含まず、非吸湿性(欧州薬局によれば<0.2%の水の取り込み率)である。別の実施形態では、式(I)の化合物の結晶多形A型は、実質的に水および他の溶媒を含まない(具体的には、エタノール<5000ppm;H2O<0.2%wt)。
【0051】
したがって、本発明はまた、式(I)の化合物
の調製のための方法であって、以下:
(A)式(a1)の化合物
を、式(a2)の化合物
pと、適切な溶媒の存在下で反応させて、式(b1)の化合物を得る工程
(B)式(b1)の化合物を、式(b2)の化合物
と、適切な溶媒の存在下、適切な塩基の存在下で反応させて、式(B2)の化合物を得る工程
のうちの1つまたは2つを含む、方法にも関するが、ここで、工程(B)の塩基は炭酸カリウムおよび水素化ナトリウムから選択される。
【0052】
上記の方法の工程(A)において、溶媒は、例えば、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)であってもよい。
【0053】
工程(A)の条件は、約80℃から約200℃の間、特に約100℃から約145℃の間、より特定すると約120℃から約145℃の間であってもよい。簡便には、反応は、約30分から約36時間、特に約1時間から約30時間、より特定すると約16時間から約26時間維持される。
【0054】
工程(A)の好都合な条件は、約2.0当量から約10.0当量のN-メチルホルムアミド(NMP、a2)および約1.0当量から約10.0当量の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を使用して、約100℃から約145℃の間であってもよい。
【0055】
工程(A)の特に好都合な条件は、約2.6当量から約7.2当量のN-メチルホルムアミド(NMP、a2)および約1.0当量から約3.0当量の1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)を使用して、約120℃から約145℃の間であってもよい。
【0056】
上記の方法の工程(B)において、溶媒は、例えば、DMF、水、アセトン、アセトニトリルまたはこれらの混合物、特にアセトンであってもよい。
【0057】
工程(B)の条件は、約40℃から約120℃の間、特に約60℃から約100℃の間、より特定すると約70℃から約90℃の間であってもよい。簡便には、反応は、約30分から約36時間、特に約1時間から約30時間、より特定すると約16時間から約26時間維持される。
【0058】
工程(B)の好都合な条件は、約5.0から約20当量の、DMF、水、アセトニトリル、アセトンまたはこれらの混合物から選択される溶媒、ならびに約1.15当量から約5.0当量の、K2CO3および水素化ナトリウムから選択される塩基を使用して、約60℃から約100℃の間であってもよい。
【0059】
工程(B)の特に好都合な条件は、約5.0から約10当量の、DMF、水、アセトニトリル、アセトンまたはこれらの混合物から選択される溶媒、ならびに約1.15当量から約2.0当量の、K2CO3および水素化ナトリウムから選択される塩基を使用して、約60℃から約100℃の間であってもよい。
【0060】
上記の方法の一実施形態において、工程(A)の生成物を追加の工程(A-1)によって単離し、ここで、好適な溶媒を添加し、懸濁液を冷却し、濾過する。工程(A-1)において、溶媒は、例としては、水、酢酸エチルまたはこれらの混合物であってもよい。簡便には、懸濁液を約0℃から約60℃の間、好ましくは約10℃から約40℃の間、より優先的には約20℃まで冷却する。
【0061】
したがって、本発明はまた、式(I)の化合物
の調製のための方法であって、以下:
(a)式(A1)の化合物
を、式(A2)の化合物
と、適切な溶媒の存在下、適切な塩基の存在下で反応させて、式(B1)の化合物を得る工程
(b)式(B1)の化合物を、式(B2)の化合物
と、適切な溶媒の存在下、適切な塩基の存在下で反応させて、式(I)の化合物を得る工程
ならびに
(c)好適な溶媒および好適な酸中の式(I)の化合物の粗生成物の懸濁液を濾過によってさらに精製して、実質的な量の二量体硫酸塩を除去する工程
のうちの1つ、2つまたは3つを含む、方法にも関する。
【0062】
上記の方法の一実施形態において、工程(b)の終了時で、EtOH、水または混合物から選択される溶媒を反応混合物に添加して標題化合物を沈殿させる。次いで沈殿物を濾過し、EtOHおよびH2Oで洗浄し、真空中で乾燥し、粗生成物の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを得ることができ、次いでこれを上記の方法の工程(c)に供する。
【0063】
上記方法において、工程(a)は、溶媒中で好都合に行うことができる。溶媒は、例えば、tert-ブタノール、DCMもしくはこれらの混合物、または酢酸エチルであってもよい。
【0064】
工程(a)は、塩基の存在下で好都合に行うことができる。塩基は、例えばDIPEAであり得る。
【0065】
工程(a)の好都合な条件は、約0℃から約30℃の間、特に約1℃から約20℃の間、より特定すると約1℃から約4℃の間であってもよい。簡便には、反応は、約20分から約24時間、特に約30分から約2時間、好都合な温度で維持される。
【0066】
工程(b)は、溶媒中で好都合に行うことができる。溶媒は、例えばDMF、アセトニトリル、DMSO/水または1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)であってもよい。
【0067】
工程(b)は、塩基の存在下で好都合に行うことができる。塩基は、例えば炭酸セシウムであり得る。
【0068】
簡便には、室温で濾過する前の工程(c)において、懸濁液を約50℃から約120℃の間、特に約60℃から約110℃の間、より特定すると約70℃から約100℃の間で維持する。簡便には、懸濁液を約30分から約10時間、より特定すると約40分から約2時間維持する。好都合な条件は、約1時間で約80℃である。
【0069】
工程(c)は、溶媒中で好都合に行うことができる。溶媒は、例えばアセトニトリルであり得る。
【0070】
工程(c)は、酸の存在下で好都合に行うことができる。塩基は、例えば硫酸であり得る。
【0071】
式(I)の化合物
の結晶多形A型を調製するための方法は:
(a)実質的な量の式(I)の化合物を含む本明細書に記載の濾液を減圧下で濃縮して懸濁液を得る工程、
(b)水および好適な塩基を、式(I)の化合物を含む懸濁液に添加し、pHを6.7±0.5に調整した後、反応物を攪拌して、式(I)の化合物を含む沈殿物を得る工程、
(c)式(I)の化合物を含む沈殿物を濾過し、次いで好適な溶媒で洗浄し、真空中で乾燥させ、結晶化された(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを得る工程、
(d)好適な溶媒および水を(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドに添加し、懸濁液を約40℃から約80℃の間、特に約60℃に加熱し、得られた溶液を濾過し、好適な溶媒で洗浄する工程、
(e)好適な溶媒中の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを含む溶液を真空中で濃縮する工程、
(f)蒸留によって(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを含む溶液の溶媒交換を行い、懸濁液を攪拌して、(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを沈殿させる工程、ならびに
(g)好適な溶媒中の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドの懸濁液を濾過し、真空中で乾燥させ、結晶多形A型を得る工程
のうちの少なくとも1つ、2つまたは3つを含む。
【0072】
工程(b)の好都合な溶媒は、例えば水である。工程(b)の好都合な塩基は、例えばNaOHである。
【0073】
工程(c)の好都合な溶媒は、例えばアセトニトリルおよび/または水である。
【0074】
工程(d)の好都合な溶媒は、例えばアセトンおよび/または水である。
【0075】
工程(e)の好都合な溶媒は、例えばアセトンおよび/または水である。
【0076】
簡便には、工程(f)において、溶媒は、アセトン/水からエタノール/水に交換された。
【0077】
簡便には、工程(g)において、溶媒は、エタノール、水またはこれらの混合物である。
【0078】
本発明はまた、本発明の方法に従って製造される場合の本発明による化合物にも関する。
【0079】
アッセイ手順
材料
L-グルタミンを補充したDMEM無フェノールレッド培地を(Thermo Fisher Scientific)から購入した。ウシ胎児血清(FBS)をVWRから購入した。Advanced ERK phospho-T202/Y204キット-10,000試験を、Cisbioカタログ番号64AERPEHから購入した。A375およびHCT116細胞を、元々ATCCから入手し、Rocheリポジトリによって保管した。384ウェルマイクロプレートは384ウェル(蓋付き、HiBase、小容量カタログ784-080)でありGreiner Bio-Oneから購入した。
【0080】
A375細胞またはHCT116細胞におけるP-ERK決定のためのHTRFアッセイ
A375は、V600E変異BRAFを発現する細胞がんモデルであり、HCT116は、WT BRAFを発現する細胞がんモデルである。第1世代のBRAF阻害剤、例えばダブラフェニブは、V600E変異BRAF細胞(例えばA375等)の増殖を阻害する一方、WT BRAF細胞(例えば、HCT116等)の増殖を活性化するという点で、腫瘍細胞に対するパラドックス効果を誘導する。ERK1,2リン酸化(MAPK経路のリン酸化カスケードの末端メンバー)は、MAPK経路の活性化状態の主な読み出しとして以後報告されている。アッセイの前に、A375およびHCT116細胞株を、10%ウシ胎児血清(FBS)を補充したDMEM無フェノールレッド培地中で維持する。化合物処置の後、Thr202/Tyr204でリン酸化されたときの、ERKタンパク質上の、前述のキット(Cisbioカタログ番号64AERPEH)において提供される2つの抗体の選択的結合によって誘導されるFRET蛍光シグナルを測定することによって、P-ERKレベルを決定する。簡潔に言えば、12μl培地/ウェル中の8000細胞/ウェルを384ウェルプレートに播種し、インキュベータ内に一晩放置し(5%CO2加湿雰囲気下、37℃で)、翌日、プレートを以下の最終薬物濃度で試験化合物、ダブラフェニブおよびPLX8394(後者の2つは対照として)を用いて二連で処置する:10μM-3μM-1μM-0.3μM-0.1μM-0.03μM-0.01μM-0.003μM-0.001μM、すべてのウェルをDMSO正規化に供し、薬物インキュベーションを1時間行う。次いで、キットと共に供給された4X溶解バッファー4μlをウェルに添加し、次いで、プレートを30秒間遠心分離(300rcf)し、プレートシェーカー上で室温にて1時間インキュベートする。
【0081】
インキュベーションの最後に、4μL/ウェルの高機能P-ERK抗体溶液(製造業者の指示に従って調製)、続いて4μL/ウェルのクリプテートP-ERK抗体溶液(製造業者の指示に従って調製)(Cisbioカタログ番号64AERPEH)を試験ウェルに添加する。
【0082】
適切なデータ正規化を可能にするために、報告される薬物処置なしの対照ウェルは、常に各プレートに含まれる(製造業者の指示に従って):
対照および実験のp-ERK HTRFウェル含有量(μl):
【0083】
次いで、プレートを300rcfで30秒間遠心分離し、エバポレーションを防ぐために密封し、室温の暗所で一晩インキュベートする。
【0084】
次いで、プレートを分析し、蛍光発光値をPherastast FSX(BMG Labtech)装置によって665nMおよび620nMで収集する。
【0085】
得られた蛍光値は、比率=シグナル(620nm)/シグナル(625nm)*10000の式に従って処理され、次いで、すべての値に対してブランクでの比率の平均が差し引かれる。
【0086】
A375細胞(BRAF阻害)の場合、DMSOのみで処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を100%とみなし、10μMダブラフェニブで処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を0%とみなして、データを正規化する。正規化された点の平均をシグモイド曲線でフィッティングし、IC50を決定する。結果を表1に示す。
【0087】
HCT116細胞(BRAF活性化)の場合、DMSOのみで処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を0%とみなし、最も高いシグナルを提供する濃度でダブラフェニブ処置した細胞によって誘導された比(ブランクを差し引いたもの)の平均を100%とみなして、データを正規化する。個々の点をシグモイド曲線またはベル形状曲線でフィッティングし、ダブラフェニブを介在させた最大活性化と比較した活性化のパーセンテージを決定する。EC50は、ダブラフェニブによって達成される最大値の50%に等しい活性化が得られる濃度である。結果を表2に示す。
【0088】
活性化がダブラフェニブによって達成される最大値の50%に達しない場合、EC50計算は適用できない。
【0089】
ダブラフェニブからの最大パラドックス誘導効果のパーセンテージは、試験化合物がその最大P-ERKシグナルを誘導するパーセンテージを、試験した用量範囲内でダブラフェニブによって生成された最大シグナルのパーセンテージとして評価することによって決定される。
【0090】
WO2012/118492は、実施例25として参照化合物AR-25、実施例30としてAR-30、および実施例31としてAR-31を開示している。
表1:実施例1 ((3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド)は、AR-30およびAR-31と比較したとき、RAFキナーゼに対する高い親和性ならびにC末端Srcキナーゼ(CSK)およびリンパ球特異性チロシンプロテインキナーゼ(LCK)に対する高い選択性を有する。
表2:実施例1 ((3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド)は、WT BRAFを発現するHCT-116がん細胞中のパラドックスRAF活性化を遮断する。ダブラフェニブまたはAR-25と比較した場合、最大パラドックス誘導効果は50%未満に減少する。
【0091】
薬学的組成物
式(I)の化合物を、例えば薬学的組成物の形態で、治療的活性物質として使用することができる。薬学的組成物は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、硬質ゼラチンカプセルおよび軟質ゼラチンカプセル、溶液、エマルジョン、または懸濁液の形態で経口投与することができる。しかしながら、投与はまた、例えば坐剤の形態で直腸に、または、例えば注射液の形態で非経口的に行うこともできる。
【0092】
式(I)の化合物を、薬学的組成物の製造のために、薬学的に不活性な無機または有機担体と共に処理することができる。ラクトース、コーンスターチもしくはその誘導体、タルク、およびステアリン酸またはその塩等は、例えば、錠剤、コーティング錠、糖衣錠、および硬質ゼラチンカプセルの担体として使用することができる。軟質ゼラチンカプセルに好適な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半固体および液体ポリオール等である。しかしながら、活性物質の性質にもよるが、軟質ゼラチンカプセルの場合には通常、担体は必要とされない。溶液およびシロップ剤の製造に適した担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。坐剤に適した担体は、例えば、天然または硬化油、ワックス、脂肪、半液体または液体ポリオールなどである。
【0093】
その上、薬学的組成物は、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味剤、浸透圧を変化させるための塩、バッファー、マスキング剤、または抗酸化剤などの薬学的に許容される補助物質を含有することができる。それらはまた、さらに他の治療上価値のある物質を含有し得る。
【0094】
式(I)の化合物を含む薬学的組成物は、単独でまたは組合せで、所望の程度の純度を有する活性成分を任意選択の薬学的に許容される担体、添加物または安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、Osol,A.(編)(1980年))と混合することによって、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で貯蔵のために調製することができる。許容される担体、添加物、または安定剤には、用いられる投与量および濃度でレシピエントに対して無毒であり、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルバラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンもしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンもしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースもしくはデキストリンを含むその他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0095】
式(I)の化合物および治療的に不活性な担体を含有する医薬はまた、本発明により提供され、その製造のためのプロセスは、1つ以上の式(I)の化合物および/またはその薬学的に許容される溶媒和物、ならびに所望により、1つ以上の他の治療上価値のある物質を、1つ以上の治療的に不活性な担体と共に生薬投与形態とすることを含む。
【0096】
BRAF阻害剤の薬学的組成物には、経口、経鼻、局所(頬側および舌下を含む)、直腸、膣および/または非経口投与に適したものが含まれる。
【0097】
投与量は、広範囲内で変化させることができ、当然、それぞれの具体的な症例において個々の要件に対して調整されなければならない。経口投与の場合、成人の投与量は、一般式(I)の化合物または対応する量のその薬学的に許容される溶媒和物で1日あたり約0.01mg~約1000mgで変化させることができる。1日投与量は、単回投与または分割投与で投与されてもよく、加えて、必要であると判明した場合、上限を超えることもできる。
【0098】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するが、本発明の代表例に過ぎない。薬学的調製物は、簡便には、約1~500mg、特に1~100mgの式(I)の化合物を含有する。
【実施例】
【0099】
本発明による組成物の実施例は、以下の通りである。
【0100】
実施例A
以下の組成の錠剤は、通常の方法で製造される:
表3:可能な錠剤組成
【0101】
製造手順
1.成分1、2、3および4を混合し、精製水で顆粒化する。
2.顆粒を50℃で乾燥させる.
3.顆粒を適切な粉砕装置に通す。
4.成分5を添加し、3分間混合し、適切なプレス機で圧縮する。
【0102】
実施例B-1
以下の組成のカプセルを製造する:
表4:可能なカプセル成分組成
【0103】
製造手順
1.成分1、2および3を適切なミキサーで30分間混合する。
2.成分4および5を添加し、3分間混合する。
3.適切なカプセルに充填する。
【0104】
式(I)の化合物、ラクトースおよびコーンスターチを、初めにミキサー中、次いで粉砕機中で混合する。混合物をミキサーに戻し、そこにタルクを加えてよく混合する。混合物は、機械によって適切なカプセル、例えば硬質ゼラチンカプセルに充填される。
【0105】
実施例B-2
以下の組成の軟質ゼラチンカプセルを製造する:
表5:可能な軟質ゼラチンカプセル成分組成
表6:可能な軟質ゼラチンカプセル組成
【0106】
製造手順
式(I)の化合物を他の成分の温かい融解物に溶解し、混合物を適切なサイズの軟質ゼラチンカプセルに充填する。充填した軟質ゼラチンカプセルを通常の手順に従って処理する。
【0107】
実施例C
以下の組成の坐剤を製造する:
表7:可能な坐剤組成
【0108】
製造手順
坐剤塊をガラスまたはスチール容器中で溶融し、充分に混合し、45℃に冷却する。これに微粉末化した式(I)の化合物を添加し、完全に分散するまで攪拌する。混合物を好適なサイズの坐剤型に注ぎ、冷えるまで放置し、次いで坐剤を型から取り出し、ろう紙または金属箔で個々に包装する。
【0109】
実施例D
以下の組成の注射液を製造する:
表8:可能な注射液組成
【0110】
製造手順
式(I)の化合物を、ポリエチレングリコール400と注射用の水(一部)との混合物に溶解する。pHを酢酸により5.0に調整する。残量の水を添加し、体積を1.0mlに調整する。溶液を濾過し、適切な過量を用いてバイアルを充填し、滅菌する。
【0111】
実施例E
以下の組成のサシェ剤を製造する:
表9:可能なサシェ剤組成
【0112】
製造手順
式(I)の化合物を、ラクトース、微結晶セルロースおよびカルボキルメチルセルロースナトリウムと混合し、水中のポリビニルピロリドンの混合物で顆粒化する。顆粒をステアリン酸マグネシウムおよび調味添加剤と混合し、サシェ剤に充填する。
【0113】
実験
以下の実験は、本発明を説明するために提供される。それらは、本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではなく、単にその代表例とみなされるべきである。
【0114】
略語:
ATR=減衰全反射;DCM=ジクロロメタン;DIPEA=N,N-ジイソプロピルエチルアミン;DMF=ジメチルホルムアミド;DMSO=ジメチルスルホキシド;DSC=示差走査熱量測定;DVS=動的水蒸気収着;ESI=エレクトロスプレーイオン化;EtOAc=酢酸エチル;FT=フーリエ変換;FTIR=フーリエ変換赤外;IR=赤外;LC-MS/MS=液体クロマトグラフィーMS/MS;MeOH=メタノール;MS=質量分析;RH=相対湿度;rt=室温;SFC=超臨界流体クロマトグラフィー;TGA=熱重量分析。
【0115】
高分解能X線粉末回折
高分解能X線粉末回折(XRPD)パターンは、透過幾何学において記録された。X線回折パターンを、CuKa1放射線(1.5406Å)およびMythen位置感度検出器を備えたSTOE STADI P回折計で記録した。試料(およそ10~50mg)を薄いポリマー膜の間に調製し、物質をさらに処理(例えば、粉砕またはふるい分け)することなく普通に分析した。
【0116】
多形A型では、XRPDによって以下のピーク(度2シータの値で表される)が判明した:およそ5.06;7.90;8.92;9.88;10.22;11.28;11.58;12.16;12.66;13.16;13.64;14.66;14.84;15.38;15.66;15.86;16.24;16.54;17.18;17.50;17.72;18.06;18.58;18.86;18.98;19.40;19.64;20.54;20.72;21.18;22.26;22.56;23;23.30;23.90;24.08;24.44;25.16;25.46;25.78;26.04;26.16;26.40;26.66;27.28;27.82;28.26;28.40;28.76;28.92;29.36;29.58;29.96;30.28。
【0117】
示差走査熱量測定(DSC)
DSC曲線は、Mettler-Toledo(商標)示差走査熱量計DSC2を使用して記録した。システム適合性試験を、インジウムを基準物質として用いて実施し、インジウム、安息香酸、ビフェニルおよび亜鉛を基準物質として使用してキャリブレーションを行った。
【0118】
測定のために、約2~6mgの試料をアルミニウム皿に入れ、正確に秤量し、穿孔蓋で密閉した。測定前に、蓋に穴を開けて、およそ0.5mmのピンホールを開けた。次いで、試料を、約100mL/分の窒素流下で、典型的には1~20、通常は10K/分の加熱速度を適用して、典型的には180℃~350℃の最高温度(分解温度に依存する)まで加熱した。
【0119】
熱重量分析(TGA)
熱重量分析(TGA)は、Mettler-Toledo(商標)熱重量分析装置(TGA/DSC1またはTGA/DSC3+)で実施した。システム適合性試験を、ハイドラナールを基準物質として用いて実施し、アルミニウムおよびインジウムを基準物質として使用してキャリブレーションを行った。
【0120】
熱重量分析のために、およそ5~15mgの試料をアルミニウム皿に入れ、正確に秤量し、穿孔蓋で密閉した。測定の前に、蓋に自動的に穴を開け、およそ0.5mmのピンホールを開けた。次いで、試料を約50mL/分の窒素流下で、5K/分の加熱速度を適用して、典型的には350℃の最高温度まで加熱した。
【0121】
水分収着/脱着
DVS Advantage、DVS Adventure、またはDVS Intrinsic(SMS Surface Measurements Systems)水分バランスシステムで水分の収着/脱着データを収集した。収着/脱着等温線を、典型的には25℃で、0%-RHから90%-RHまでの範囲で段階的に測定した。次のレベルの相対湿度(重量変化基準が満たされなかった場合、典型的には24時間の最大平衡時間で)に切り替えるための基準として、典型的には<0.001%/分の重量変化が選択された。0%-RHで試料を乾燥させた後の重量を0点とすることによって、試料の初期含水量についてのデータを補正した。
【0122】
所与の物質の吸湿性は、相対湿度を0%-RHから90%-RHに上昇させた場合の質量の増加によって特徴付けられた(欧州薬局方とよく似ている):
非吸湿性:重量増加 Dm<0.2%
わずかに吸湿性:重量増加 0.2%≦Dm<2.0%
吸湿性:重量増加 2.0%≦Dm<15.0%
非常に吸湿性:重量増加 Dm≧15.0%
潮解性:十分な水を吸着させて液体を形成する
欧州薬局方-第8編(2014年)、5.11章
【0123】
IR分光法
ATR FTIRスペクトルは、ATRアクセサリを備えたThermoNicolet iS5 FTIR分光計を使用して、試料を一切調製せずに記録した。スペクトル範囲は4000cmー1~650cmー1であり、分解能は2cmー1であり、少なくとも50回の同時追加走査が収集された。Happ-Genzelアポダイゼーションを適用した。ATR FTIRの使用により、赤外線域の相対強度は、KBrディスクまたはヌジョール試料調製を使用する透過FTIRで見られるものとは異なるようになる。ATR FTIRの性質に起因して、低波数の帯域は、高波数の帯域より強度が高い。
【0124】
自動式「Find Peaks」機能を採用したThermo Scientific Omnic 8.3ソフトウェアを使用してピークピッキングを実施した。「閾値」および「感度」を手動で調整して代表的なピーク数を得た。
表11:多形A型の赤外分光法によって特定されたピークのリスト
表12:非晶形の赤外分光法によって特定されたピークのリスト
【0125】
ラマン分光法
FT-ラマンスペクトルは、一切の試料の調製なしで、NdYAG 1064nmレーザーおよび液体窒素冷却ゲルマニウム検出器を備えたBruker MultiRam FT-ラマン分光計を用いて4000~50cm
-1のスペクトル範囲で記録された。試料のレーザー出力は約300mWであり、2cm
-1の分解能を使用し、2048回の走査を同時に追加した。Blackman-Harris4タームアポダイゼーション機能を使用した。約5mgの試料(ガラスバイアル中の粉末)を必要とした。自動式「Find Peaks」機能を採用したThermo Scientific Omnic 8.3ソフトウェアを使用してピークピッキングを実施した。「閾値」および「感度」を手動で調整して代表的なピーク数を得た。
表13:多形A型のラマン分光法によって特定されたピークのリスト
表14:非晶形のラマン分光法によって特定されたピークのリスト
【0126】
合成
(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド
【0127】
工程1:6-ヒドロキシ-3-メチル-キナゾリン-4-オン
2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(10g、65.3mmol、当量:1.0)およびN-メチルホルムアミド(30g、29.9mL、503mmol、当量:7.7)を145℃で21時間45分間加熱し、次いで室温に冷却した。反応混合物を50mLのH
2Oで希釈し、室温で20分間攪拌した。得られた沈殿物を濾過により回収した。明褐色の固体を20mLの水で3回洗浄した。固体をトルエンに取り込ませ、エバポレートして乾固させた(3回)。固体を、高真空下、40℃の真空中で一晩乾燥させて、標題化合物を明褐色の固体(10.3g、収率89%)として得た。MS(ESI)m/z:177.1[M+H]
+。
【0128】
工程2:3,6-ジフルオロ-2-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-ベンゾニトリル
炭酸セシウム(3.22g、9.79mmol、当量:1.15)を、室温で、N,N-ジメチルホルムアミド(35mL)中の6-ヒドロキシ-3-メチルキナゾリン-4-オン(1500mg、8.51mmol、当量:1.0)の溶液に添加した。混合物を室温で30分間攪拌し、次いで2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル(1.47g、1.08ml、9.37mmol、当量:1.1)を添加した。1時間後、反応物を氷上で冷却し、水(120mL)で希釈した。得られた固体を濾過によって回収し、氷水(100mL)およびヘプタン(100mL)で洗浄し、吸引乾燥させた。固体をトルエンに取り込ませ、エバポレートして乾固させ(3回)、次いで真空中で一晩乾燥させて、標題化合物を明褐色の固体(2.58g、収率97%)として得た。MS(ESI)m/z:314.1[M+H]
+。
【0129】
工程3:(3R)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド
(R)-3-フルオロピロリジン塩酸塩(1.8g、14.3mmol、当量:1.2)を、ジオキサン(10mL)中の硫酸ジアミド(1.148g、11.9mmol、当量:1.0)およびトリエチルアミン(2.42g、3.33mL、23.9mmol、当量:2)の溶液に添加した。反応物を密閉管中115℃で15.5時間攪拌し、次いで室温に冷却し、真空中で濃縮した。残留物をDCMで希釈し、シリカゲルでエバポレートして乾固させ、カラムに移した。フラッシュクロマトグラフィー(40gのシリカ、80%のEtOAc)による精製によって、標題化合物を白色の結晶性固体(1.82g、収率91%)として得た。MS(ESI)m/z:169.1[M+H]
+。
【0130】
工程4:(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド
(R)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド(1.26g、7.51mmol、当量:2.1)および炭酸セシウム(2.56g、7.87mmol、当量:2.2)を、アルゴン雰囲気下、乾燥DMF(10.2mL)中に懸濁させた。反応物を50℃で30分間攪拌した。反応混合物を室温に冷却し、DMF(25.5mL)中の3,6-ジフルオロ-2-((3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)オキシ)ベンゾニトリル(1.12g、3.58mmol、当量:1.0)の溶液を添加した。反応混合物を100℃で15時間攪拌し、次いで真空中で濃縮した。残留物を飽和水性NH
4Cl(100mL)およびEtOAc(100mL)中に取り込ませた。相を分離し、水層を2×100mLのEtOAcでさらに抽出した。合わせた有機層を水(200mL)およびブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮した。水層をEtOAc(3×100mL)で逆抽出した。合わせた有機抽出物をブライン(200mL)で洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をDCMおよびMeOHで希釈し、シリカ上で濃縮した。フラッシュクロマトグラフィー(120g、0.5~2%のMeOH/DCM)による精製によって、オフホワイト色の固体が得られ、これを超音波処理により1:1のヘプタン/DCM(20mL)で粉砕し、次いで真空中で乾燥させて、標題化合物(実施例1)を無色の固体(1.087g、収率66%)として得た。MS(ESI)m/z:426.2[M+H]
+。キラルSFC:RT=4.594分[Chiralpak ICカラム、4.6×250mm、粒径5μm(Daicel);8分間にわたり0.2%のNHEt
2を含有する20~40%のMeOHの勾配;流量:2.5mL/分;140バールの背圧]。
【0131】
(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド-別途合成
【0132】
工程1:6-ヒドロキシ-3-メチル-キナゾリン-4-オン
2-アミノ-5-ヒドロキシ安息香酸(1当量)をN-メチルホルムアミド(2.6当量)および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(2.96当量)中で懸濁させた。懸濁液を140℃で21時間加熱し、次いで90℃で1時間冷却した。水(3.1容)をゆっくり添加し、懸濁液を20℃まで2時間冷却した。追加の水(0.15容)を添加し、次いで反応器の底に固体を1.5時間沈殿させた。上澄み液をカニューレで取り出し、次いで水(2.6容)を添加し、懸濁液を攪拌した。反応器の底に固体を沈殿させ、次いで上澄み液をカニューレで取り出した。この工程をさらに5回繰り返した。最後に、水(2.6容)を残留懸濁液に添加し、攪拌し、濾過した。濾過ケーキを水(0.7容)で洗浄した。生成物を真空中で乾燥し、褐色の結晶性固体の標題化合物(収率73%)を得た。
【0133】
工程2:3,6-ジフルオロ-2-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-ベンゾニトリル
6-ヒドロキシ-3-メチル-キナゾリン-4-オン(1当量)、炭酸カリウム(1.15当量)、2,3,6-トリフルオロベンゾニトリル(1.1当量)およびアセトン(5.2容)を、窒素でフラッシュされた反応器に添加した。内容物を80℃で16時間加熱した。混合物を20℃に冷却し、水(10容)を添加した。スラリーを0.5時間攪拌し、濾過した。濾過ケーキを水(2.4容)で洗浄した。生成物を真空中で乾燥し、白色の結晶性固体の標題化合物(96.34%)を得た。
【0134】
工程3:(3R)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド
1.13当量のt-BuOHおよびDCM(6.8容)を、窒素でフラッシュされた反応器に添加し、0℃まで冷却した。反応温度を-2℃から4℃に維持しながら、1.08当量のイソシアン酸クロロスルホニルを添加した。追加の容器をジクロロメタン(0.34容)で洗浄し、混合物を30分間攪拌した。1当量の(R)-(-)-3-フルオロピロリジンHClを添加した後、反応温度を1℃から4℃で維持しながら2.41当量のジイソプロピルエチルアミンを添加した。溶液を0℃で1時間攪拌し、25℃まで温めた。有機層を水(3.4容)および塩酸(0.33当量)で、次いで水(1.7容)で抽出した。溶媒を蒸留し、残留固体を15Lの1-プロパノール(2.6容)中に溶解した。次いで、調製した1-プロパノール(6.8容)中のHCl(1.5当量)の溶液を50℃で30分以内に添加した。溶液をさらに1時間攪拌した。次いで溶媒を、容量を一定に維持しながら、蒸留によってトルエン(合計16.1容)と交換し、室温で一晩攪拌した。懸濁液を濾過し、トルエン(2容)で洗浄し、真空中で乾燥し、オフホワイト色の結晶性固体の標題化合物(88%)を得た。
【0135】
工程4:(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド
DMF(5.39当量)中の(R)-3-フルオロピロリジン-1-スルホンアミド(1.06当量)を、アルゴン雰囲気下、90℃で、乾燥DMF(12.59当量)中に懸濁された炭酸セシウム(2.14当量)および3,6-ジフルオロ-2-((3-メチル-4-オキソ-3,4-ジヒドロキナゾリン-6-イル)オキシ)ベンゾニトリル(1.0当量)の溶液にゆっくり添加した。反応物を約90℃で約16時間攪拌した。反応混合物を約70℃で維持し、酢酸(4.06当量)を20分にわたって添加した。反応混合物を室温に冷却し、EtOHを添加して(最初に23.84当量を一度に、次いで追加で26.23当量を1時間にわたって)、標題化合物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、次いでEtOHおよびH
2Oで洗浄し、真空中で乾燥し、粗生成物の(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを得た。粗生成物(1.0当量)を、室温でアセトニトリル(70.57当量)および硫酸(1.34当量)を添加することによってさらに精製した。懸濁液を80℃まで加熱し、1時間攪拌し、次いで懸濁液を室温で冷却した。懸濁液を濾過して二量体硫酸塩を除去し、濾過器をアセトニトリル(28.33当量)およびH
2Oで洗浄し、45分間、水酸化ナトリウムを濾液に添加し、室温で終夜攪拌した。
【0136】
結晶化工程:溶液を真空下で濃縮して懸濁液を得た。水を、45分間、懸濁液に添加し、1時間攪拌した。水および水酸化ナトリウム(0.07当量)を、15分間、添加することによって、懸濁液のpHをpH6.7に補正した。懸濁液を室温で一晩攪拌した。
【0137】
沈殿物を濾過し、次いでアセトニトリル(0.003当量)およびH2Oで洗浄し、真空中で乾燥し、結晶化された(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドを得た。
【0138】
(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミドに、アセトン(50.95当量)および水を添加し、懸濁液を60℃に加熱した。結果として得られた溶液を濾過し、濾過器をアセトンおよび水で洗浄した。溶液を、真空下、50℃で濃縮し、次いで一晩攪拌した。次いで、容量を一定に維持しながら蒸留することによって、アセトンをエタノール(106.79当量)と交換した。得られた懸濁液を、室温で一晩攪拌した。
【0139】
沈殿物を濾過し、次いでエタノール(16.02当量)で洗浄し、真空中で乾燥し、白色の結晶性固体の標題化合物の多形A型(収率94.24%)を得た。
【0140】
非晶形の式(I)の化合物を得るための手順:
6.31gの(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド(実施例1)を119.9gのアセトン/水(90%/10%)中に溶解した。
【0141】
以下の設定で、溶液を噴霧乾燥した:Buchi Mini Spray Dryer B-290;アスピレーター100%;窒素5バール;入口温度160℃;溶媒なしの出口89℃;ポンプ:7.65g/分;アセトン/水ありの出口:81℃;5%BRAF阻害剤ありの出口:72℃まで低下;噴霧乾燥の継続時間:16.5分;
収率=3.13gの非晶質(3R)-N-[2-シアノ-4-フルオロ-3-(3-メチル-4-オキソ-キナゾリン-6-イル)オキシ-フェニル]-3-フルオロ-ピロリジン-1-スルホンアミド
【0142】
細胞株および培養条件
細胞株をATCCから入手し、標準的な条件で5%CO2の加湿インキュベータ内で維持し、週に2回継代した。培養条件を以下に記録する:
【国際調査報告】