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特表2024-522816マイクロキャリア、細胞複合体およびこれを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】マイクロキャリア、細胞複合体およびこれを含む医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20240614BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20240614BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240614BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240614BHJP
【FI】
A61K47/36
A61K47/42
A61K35/12
A61K9/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578133
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2022012635
(87)【国際公開番号】W WO2023054901
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129845
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ユンソプ・キム
(72)【発明者】
【氏名】イェジ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソン・キム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA22
4C076BB11
4C076BB32
4C076EE37
4C076EE42
4C076EE43
4C076FF70
4C087AA01
4C087BB64
4C087CA04
4C087MA23
4C087MA66
4C087MA67
4C087NA13
4C087ZC80
(57)【要約】
本発明は、生体適合性高分子を含む高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散され、反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチド;を含む高分子マイクロ粒子を含む、マイクロキャリア、これを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体適合性高分子を含む高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散され、反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチド;を含む高分子マイクロ粒子を含む、マイクロキャリア。
【請求項2】
前記ポリペプチドの流体力学的半径(hydrodynamic radius)が1nm乃至30nmである、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項3】
前記反応性官能基は、アミン基、ヒドロキシ、チオール、フェニルヒドロキシ基およびイミド基からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項4】
前記反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチドは、
表面の反応性官能基がブロッキング化合物で90モル%以上置換されたポリペプチドを含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項5】
前記ポリペプチドは、ブロッキング化合物と反応性官能基の結合物である官能基を有するポリペプチドを含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項6】
前記高分子マイクロ粒子は、蒸溜水での平均直径が1μm以上1,000μm以下である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項7】
前記高分子マイクロ粒子は、下記の数式1による膨潤度が10以下である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
[数式1]
膨潤度={(蒸溜水での平均直径)-(乾燥粒子の平均直径)}/(乾燥粒子の平均直径)
【請求項8】
前記高分子マイクロ粒子は、
150時間以上培養した後、pH5.0以上および30℃以上40℃以下の放出条件で薬学有効物質の放出量が20%以上100%以下である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項9】
前記高分子マトリックスは、生体適合性高分子が第1架橋剤を介して架橋された第1架橋領域;および
生体適合性高分子が第2架橋剤を介して架橋された第2架橋領域;を含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項10】
前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸およびゼラチンを含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項11】
前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層をさらに含む、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項12】
前記細胞付着誘導層は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチンキトサン、ポリドーパミン、ポリL-リジン、ビトロネクチン、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン、陽イオン性デキストランおよびこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上の細胞付着性物質を含む、請求項11に記載のマイクロキャリア。
【請求項13】
前記細胞付着誘導層は、1nm乃至10,000nmの層厚さを有する、請求項11に記載のマイクロキャリア。
【請求項14】
前記マイクロキャリアは、1μm乃至1,000μmの平均直径を有する、請求項1に記載のマイクロキャリア。
【請求項15】
前記マイクロキャリアは、下記の数式で計算される細胞付着性が2000%以上である、請求項1に記載のマイクロキャリア。
[数式]
細胞付着性=(マイクロキャリアを細胞培養液に投入して37℃で7日間培養した後の細胞数/細胞培養液に最初含まれている細胞数)X100
【請求項16】
請求項1に記載のマイクロキャリア;および
前記マイクロキャリア表面上に付着された細胞;を含む、細胞複合体。
【請求項17】
請求項1に記載のマイクロキャリアまたは請求項16に記載の細胞複合体のうちのいずれか一つを含む、医療用組成物。
【請求項18】
請求項1に記載のマイクロキャリアまたは 請求項16に記載の細胞複合体のうちのいずれか一つを含む、美容組成物。
【請求項19】
請求項17に記載の医療用組成物を含む、医療用品。
【請求項20】
請求項18に記載の美容組成物を含む、美容用品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(ら)との相互引用
本出願は、2021年9月30日付韓国特許出願第10-2021-0129845号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
本発明は、高い架橋効率および生産収率と同時に、安定性を実現することができるだけでなく、蛋白質またはペプチド薬学有効物質の化学的修飾なしに薬物放出特性を確認することができ、細胞脱着工程なしに3次元培養後に直ちに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高まって高い体内移植率に寄与することができるマイクロキャリア、およびこれを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達システムは、薬物の活性を維持しながら標的位置に薬物の送達および放出が可能なようにする一連の技術を意味する。高齢化時代に進入することに伴い、健康管理および薬物治療のニーズが増加しており、これに対応するための薬物送達技術の開発が活発に行われている。
【0003】
薬物送達システムは、送達経路により経口投与型、経皮投与型、注射型、肺吸入型、粘膜投与型に分類することができる。経口投与型は、経口で投与する最も一般的な薬物送達方式であり、市場でも最も高い比重を占めている。経皮投与型は、皮膚を通じて薬物を送達する方式であり、長時間に連続投与が可能であり、血中濃度の調節が容易である。注射型は、静脈、筋肉、皮下注射などに区分され、肺吸入型と粘膜投与型は、吸収が速く、痛みを回避することができるという長所がある。このような薬物送達システム分野で利用するキャリアは、生体適合性が確保されなければならず、したがって天然高分子を活用する試みが継続して行われている。また、使用する薬物は、既存の低分子量の合成薬物から高分子量の蛋白質やペプチド医薬品へ拡張されている。薬物送達システムの薬物放出モデルは、システムパラメータを基盤として時間に応じた薬物放出現象を観察するためのモデルである。数式を基盤とする薬物放出モデルは、薬物送達システム内の各パラメータが放出挙動に如何に影響を与えるのか判断および予測することができるツールになり得、これにより新規な薬物送達システムを設計することができるため非常に重要である。この過程で各モデルにおける時間に応じた薬物の放出度を正確に測定し分析する過程が必要である。
【0004】
生体適合性高分子であるヒアルロン酸およびゼラチンは、薬物送達システムキャリアの高分子素材として使用されている。生体適合性物質として主に利用されるヒアルロン酸は、N-アセチル-D-グルコサミンとD-グルクロン酸から構成されており、前記繰り返し単位が線形で連結されている生体高分子物質である。眼球の硝子体液、関節の滑液、鶏冠などに多く存在する。ヒアルロン酸は、優れた生体適合性と粘弾性により生体注入型物質としてよく使用されるが、それ自体だけでは生体内(invivo)または酸、アルカリなどの条件で簡単に分解されて使用が制限的である。一方、ゼラチンは、生体結合組織であるコラーゲンを加水分解した高分子であり、細胞培養用スキャフォルダーとして多く活用される。ゼラチンの細胞付着性能を利用して細胞を捕集したり培養したりすることができるが、その強度が弱く、温度に応じた相転移特性があり、化学的方法で官能基を導入して物性を改善しようとする研究が行われている。
【0005】
ヒアルロン酸とゼラチンを利用した薬物送達システムに関する多数の文献では、体内環境に対する素材の物理/化学的安定性を向上させるためにヒアルロン酸/ゼラチンの化学的架橋を提案しており、化学的架橋は、主にヒアルロン酸のヒドロキシル(hydroxyl)官能基やカルボキシレート(carboxylate)とゼラチンのアミノ酸の残基であるアミン(amine)やカルボキシレート(carboxylate)との間の架橋を通じて行われる。しかし、送達可能な蛋白質やペプチド有効物質の場合、ほとんどは高分子粒子の構成物質と同一にヒドロキシル(hydroxyl)とアミン(amine)のような官能基を保有して架橋過程でキャリアに化学的に結合することによって、実際の薬物放出挙動を確認し難い。
【0006】
そのため、送達しようとする蛋白質およびペプチド薬学有効物質の構造的変化を誘発することなく薬物放出特性の確認が可能なマイクロキャリアまたは高分子マイクロ粒子の開発が必要であるのが実情である。
【0007】
また、マイクロキャリアを利用した付着性細胞の大量拡張過程において、既存の2次元培養の限界を克服するために表面効率を増加させることができる球形態のマイクロキャリアが開発されて3次元的拡張培養に利用されており、培養終了後に細胞脱着過程を通じて細胞を回収している従来技術上では脱着工程の追加による製造費用の増加、細胞損傷の誘発の問題があった。
【0008】
そして、注射型細胞治療剤の場合、主に液相に細胞が浮遊する状態で患部に注入することとなることから、付着性細胞の場合、生存に安定的でない環境と体内免疫反応により体内移植率および細胞生存率が低くなる限界があった。
【0009】
そのため、細胞脱着工程なしに3次元培養後に直ちに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高まって高い体内移植率に寄与することができるマイクロキャリアの開発が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い架橋効率および生産収率と同時に、安定性を実現することができるだけでなく、蛋白質またはペプチド薬学有効物質の化学的修飾なしに薬物放出特性を確認することができ、細胞脱着工程なしに3次元培養後に直ちに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高まって高い体内移植率に寄与することができるマイクロキャリアを提供することにある。
【0011】
また、本発明の目的は、前記マイクロキャリアを含む、細胞複合体を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、前記のマイクロキャリアまたは細胞複合体を含む医療用組成物を提供することにある。
【0013】
また、本発明の目的は、前記のマイクロキャリアまたは細胞複合体を含む美容組成物を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、前記の医療用組成物を含む医療用品を提供することにある。
【0015】
また、本発明の目的は、前記の美容組成物を含む美容用品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書では、生体適合性高分子を含む高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散され、反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチド;を含む高分子マイクロ粒子を含む、マイクロキャリアが提供される。
【0017】
本明細書ではまた、前記マイクロキャリア;および前記マイクロキャリア表面上に付着された細胞;を含む、細胞複合体が提供される。
【0018】
本明細書ではまた、前記のマイクロキャリアまたは細胞複合体を含む、医療用組成物が提供される。
【0019】
本明細書ではまた、前記のマイクロキャリアまたは細胞複合体を含む、美容組成物が提供される。
【0020】
本明細書ではまた、前記の医療用組成物を含む医療用品が提供される。
【0021】
本明細書ではまた、前記の美容組成物を含む美容用品が提供される。
【0022】
以下、発明の具体的な実施形態によるマイクロキャリア、およびこれを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品についてより詳細に説明する。
【0023】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0024】
本明細書で使用される単数の形態は、文脈上これと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。
【0025】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるものではない。
【0026】
そして、本明細書で「第1」および「第2」のように序数を含む用語は、一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的で使用され、前記序数により限定されない。例えば、本発明の権利範囲内で第1構成要素は第2構成要素と命名されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と命名されてもよい。
【0027】
本明細書で「置換または非置換された」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;第1級アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アルアルキル基;アルアルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換または非置換されるか、または前記例示した置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0028】
本明細書で(共)重合体は、重合体または共重合体を全て含む意味であり、前記重合体は単一の繰り返し単位からなる単独重合体を意味し、共重合体は2種以上の繰り返し単位を含有する複合重合体を意味する。
【0029】
本明細書において、使用した高分子の分子量は、メーカーの測定方法に従っており、その方法は通常のGPC測定法を逸脱しない。例えば、本明細書において、重量平均分子量は、光散乱法(light scattering methods)または粘度法で測定された分子量を意味し得る。
【0030】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、前記思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0031】
本明細書でマイクロ粒子とは、粒子断面が円形または楕円形であり、粒子の短軸/長軸の比(球形化率)が0.7乃至1.0の範囲であることを意味する。粒子の短軸および長軸の長さは、粒子に対する光学写真を撮影し、光学写真での任意の粒子30個乃至100個の平均値を計算することによって導出することができる。
【0032】
本明細書において、エマルジョンとは、油相または水相の混合されていない液体のうちの一つ以上を微粒子状態(分散質)で他の液体(分散媒)に分散させておいた混合相を意味する。エマルジョンは、分散相の粒度サイズにより、通常、マクロエマルジョン、マイクロエマルジョン、ナノエマルジョンに区分され得る。
【0033】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0034】
1.マイクロキャリア
発明の一実施形態によれば、生体適合性高分子を含む高分子マトリックス;および前記高分子マトリックスに分散され、反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチド;を含む高分子マイクロ粒子を含む、マイクロキャリアが提供され得る。
【0035】
従来の高分子マイクロ粒子は、有機溶媒状に直ちに粒子を添加して架橋反応を行うことによって、高分子の濃度および架橋剤の含有量により粒子の形態が大きく左右され、特に高分子の濃度が低いか架橋剤の含有量が少ない場合、粒子の形態が維持されず、マイクロ粒子の形成が難しいという問題があった。
【0036】
そこで、本発明者らは、後述する高分子マイクロ粒子の製造方法のように、2回の架橋反応を行うことによって、同一の架橋剤量で架橋密度を最大化させると同時に、マイクロ粒子内の薬学有効物質の放出挙動を確認して発明を完成した。
【0037】
特に、2回の架橋反応のうち、第2次架橋反応を固相で行うことによって、少量の架橋剤でも球形の粒子を実現することができ、生産収率が向上するという点も実験を通じて確認した。
【0038】
また、前記一実施形態のマイクロキャリアは、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層をさらに含むことによって、細胞脱着工程なしに3次元培養後に直ちに体内注入が可能であり、付着性細胞が安定的にマイクロキャリアと付着した状態で複合体を形成することによって、細胞生存率が高まって高い体内移植率を実現することができることを、実験を通じて確認して発明を完成した。
【0039】
具体的には、前記生体適合性高分子とは、人体に適用される医薬の効果的な薬物送達のために、人体内に直接注入が可能な高分子を意味する。具体的には前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギナン、コンドロイチン(スルフェート)、デキストラン(スルフェート)、キトサン、ポリリジン(polylysine)、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(吉草酸)、ポリアクリレート、セルロースアセテート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、シクロデキストリン、およびポリアクリル酸共重合体、およびこれらの誘導体から構成された群より選択された1種以上の高分子であり得る。
【0040】
より具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、ゼラチンまたはヒアルロン酸およびゼラチンの混合物であり得る。
【0041】
本明細書において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体とヒアルロン酸塩を全て含む意味であり得る。そのために、ヒアルロン酸水溶液は、ヒアルロン酸の水溶液、ヒアルロン酸塩の水溶液、およびヒアルロン酸とヒアルロン酸塩の混合水溶液を全て含む概念であり得る。前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩、およびその混合物であり得る。
【0042】
発明の一実施形態で、ヒアルロン酸の分子量は特に制限されるのではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために500g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0043】
本明細書において、ゼラチンは、動物に由来するコラーゲンを酸またはアルカリで処理し、後続して抽出して得られる蛋白質を意味し得る。
【0044】
発明の一実施形態において、ゼラチンの分子量は特に制限されるのではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために100,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0045】
本発明者らは、高分子マイクロ粒子に対する研究を行った結果、後述するように膨潤されたエマルジョンで第1次架橋反応後に脱水凝集された固相で行われる第2次架橋反応を経ることによって、同一の架橋剤量で架橋密度を最大化されることを確認して発明を完成した。
【0046】
特に、2回の架橋反応のうち、第2次架橋反応をより凝集された固相で行うことによって、少量の架橋剤でも球形の粒子を実現することができ、生産収率が向上するという点も実験を通じて確認して発明を完成した。
【0047】
また、従来使用される高分子マイクロ粒子の場合、製造中に薬学有効物質が架橋に参加することとなって構造が変わるか、あるいは実際の放出特性がなくなるか低下する技術的問題点があったが、本願の高分子マイクロ粒子の場合、前記高分子マトリックスに分散され、反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチドを利用することによって優れた蛋白質薬物放出モデルとしての特性が実現され得るということを、実験を通じて確認して発明を完成した。
【0048】
具体的には、前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子は、反応性官能基の含有量が1mol/10g以下、または0.001mol/10g以上1mol/10g以下、または0.001mol/10g以上0.5mol/10g以下、または0.001mol/10g以上0.1mol/10g以下であるポリペプチドを含むことができる。
【0049】
つまり、前記一実施形態において、ポリペプチドの反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であることは、前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子に含まれるポリペプチド10gに対して、反応性官能基が1mol以下含まれることを意味し得る。
【0050】
前記反応性官能基含有量の測定方法は大きく制限されないが、例えばポリペプチド10gを有機溶媒に溶解させ、メチルレッドまたは、フェノールフタレインなどの指示薬を添加した後、0.1M塩酸(アミン官能基)または水酸化ナトリウム(カルボキシル官能基)で中和滴定することによって測定したり、下記のような数式を通じて計算したりすることができる。
[数式]
反応性アミン(カルボキシル)官能基含有量(mol/10g)=添加した塩酸の量(L)(または、水酸化ナトリウムの量)x塩酸水溶液のmolarity(mol/L)(または、水酸化ナトリウム水溶液のmolarity)/溶媒に溶解したポリペプチドの量(10g)
【0051】
前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子は、ポリペプチドの反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であることから、ポリペプチドに反応性官能基が存在しないか極少量で含まれて、高分子マイクロ粒子の物理的および化学的安定性の向上のための化学的架橋過程で架橋剤とポリペプチド内の反応性官能基との反応を最小化することができる。そのために、架橋による蛋白質薬物の機能喪失の問題点が発生しないだけでなく、優れた蛋白質薬物放出特性が実現され得る。
【0052】
前記一実施形態において、前記ポリペプチドの流体力学的半径(hydrodynamic radius)は、1nm乃至30nm、または1nm乃至20nm、または1nm乃至15nmであり得る。
【0053】
前記ポリペプチドの流体力学的半径(hydrodynamic radius)は、1nm乃至30nmであることから、同一の高分子マイクロ粒子でのポリペプチド放出速度を調節することができる技術的効果が実現され得る。
【0054】
具体的には、前記ポリペプチドの流体力学的半径(hydrodynamic radius)は、1mg/mL濃度のポリペプチド水溶液3mLをプラスチック製スクエアキュベット(plastic square cuvette)に入れて37℃条件でNanoBrook 173 plus(Brookhaven Instruments Corporation)装置を利用して測定することができる。
【0055】
一方、前記一実施形態において反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であるポリペプチドは、表面の反応性官能基がブロッキング化合物で90モル%以上、または90モル%以上100モル%以下、または95モル%以上100モル%以下、または99モル%以上100モル%以下置換されたポリペプチドを含むことができる。
【0056】
前記ブロッキング化合物の例が大きく限定されるのではなく、前記ポリペプチドに含有されている反応性官能基と反応して化学結合を形成することができる官能基および反応性が弱いブロッキンググループを有する化合物であれば制限なしに使用可能である。
【0057】
前記ポリペプチドに含有されている反応性官能基と反応して化学結合を形成することができる官能基の一例を挙げれば、イソシアネート基、カルボキシ基、ハロゲン基などが挙げられる。また、前記反応性が弱いブロッキンググループの一例を挙げれば、炭素数1乃至50のアルキル基、炭素数2乃至50のシクロアルキル基、炭素数6乃至50のアリール基、炭素数3乃至50のヘテロアリール基などが挙げられる。
【0058】
本明細書において、アルキル基は、アルカン(alkane)に由来する1価の官能基であり、直鎖または分枝鎖であり得るが、前記直鎖アルキル基の炭素数は特に限定されず、1乃至20であることが好ましい。また、前記分枝鎖アルキル基の炭素数は、3乃至20である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,6-ジメチルヘプタン-4-イルなどがあるが、これらに限定されない。前記アルキル基は、置換または非置換されてもよく、置換される場合、置換基の例示は前述のとおりである。
【0059】
本明細書において、シクロアルキル基は、シクロアルカン(cycloalkane)に由来する1価の官能基であり、単環式または多環式であり得るが、特に限定されず、炭素数は3乃至20である。もう一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3乃至10である。具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクルロヘプチル、シクロオクチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプチルなどがあるが、これに限定されない。前記シクロアルキル基は、置換または非置換されてもよく、置換される場合、置換基の例示は前述したとおりである。
【0060】
本明細書において、アリール基は、アレーン(arene)に由来する1価の官能基であり、特に限定されないが、炭素数6乃至20であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であり得る。前記アリール基が単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などであり得るが、これに限定されるのではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これに限定されるのではない。前記アリール基は、置換または非置換されてもよく、置換される場合、置換基の例示は前述したとおりである。
【0061】
本明細書において、ヘテロアリール基は、炭素でない原子、異種原子を1以上含むものであり、具体的には前記異種原子は、O、N、SeおよびSなどからなる群より選択される原子を1以上含むことができる。炭素数は特に限定されないが、炭素数4乃至20であることが好ましく、前記ヘテロアリール基は、単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリニル基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、アジリジル基、アザインドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリン基(purine)、プテリジル基(pteridine)、β-カルボリル基、ナフチリジル基(naphthyridine)、テル-ピリジル基、フェナジニル基、イミダゾピリジル基、ピロピリジル基、アゼピン基、ピラゾリル基およびジベンゾフラニル基などがあるが、これに限定されるのではない。前記ヘテロアリール基は、置換または非置換されてもよく、置換される場合、置換基の例示は前述したとおりである。
【0062】
ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0063】
より具体的な一例を挙げれば、前記ブロッキング化合物の例としては、求電子性炭素を含む官能基を有するブロッキング化合物として、フルオロセインイソチオシアネート(Fluorescein isothiocyanate、FITC)、ロダミンBイソチオシアネート(Rhodamine B isothiocyanate、RBITC)、テトラメチルロダミンBイソチオシアネート(Tetramethylrhodamine B isothiocyanate)、N-hydroxy-succinimidyl-ester linked fluorescein(NHS-fluorescein)、6-[Fluorescein-5(6)-carboxamido]hexanoic acid N-hydroxysuccinimide ester、Fluorescein-5-EX N-hydroxysuccinimide ester、Alexa Fluor(商標名)350 NHS Ester、Alexa Fluor(商標名)430 NHS Ester、Alexa Fluor(商標名)488 NHS Ester、Rhodamine Green(商標名)Carboxylic Acid、Succinimidyl Ester、Hydrochloride(5(6)-CR110、SE)、Rhodamine Red(商標名)-X、Succinimidyl Ester、5-isomer、およびAlexa Fluor(商標名)647 NHS Esterからなる群より選択された1種以上の化合物が挙げられる。
【0064】
前記一実施形態において、ポリペプチドの反応性官能基がブロッキング化合物と反応して90モル%以上置換されることによって、前述のように前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子に含まれるポリペプチドの反応性官能基の含有量が1mol/10g以下であり得る。
【0065】
つまり、前記一実施形態において、ポリペプチドの反応性官能基がブロッキング化合物と反応して90モル%以上置換されることによって、ポリペプチドに反応性官能基が存在しないか極少量で含まれることで、高分子マイクロ粒子の物理的および化学的安定性の向上のための化学的架橋過程で架橋剤と反応性官能基との反応を最小化することができる。そのために、架橋による蛋白質薬物の機能喪失の問題点が発生しないだけでなく、優れた蛋白質薬物放出特性が実現され得る。
【0066】
前記一実施形態において、前記反応性官能基は、アミン基、ヒドロキシ、フェニルヒドロキシ基およびイミド基からなる群より選択された1種以上であり得る。
【0067】
前記反応性官能基は、高分子マイクロ粒子に含まれるポリペプチドに含まれている反応性官能基であり得る。
【0068】
前記反応性官能基が物理的および化学的安定性の向上のための化学的架橋過程で架橋剤と反応することによって、架橋による蛋白質薬物の機能喪失だけでなく、蛋白質薬物放出特性が実現されないという問題点が発生することがある。
【0069】
前記一実施形態において、前記ポリペプチドは、ブロッキング化合物と反応性官能基の結合物である官能基を有するポリペプチドを含むことができる。つまり、前記ポリペプチドは、ブロッキング化合物と反応性官能基の結合物である官能基、およびブロッキング化合物と反応しない反応性官能基を有することができる。そして、前記ポリペプチドは、ブロッキング化合物と反応しない反応性官能基の含有量が前述のように1mol/10g以下を満たすことができる。
【0070】
前記ブロッキング化合物と反応性官能基の結合物である官能基の例が大きく限定されるのではなく、前述の多様なブロッキング化合物と反応性官能基の反応で得られる反応生成物に含まれている官能基であれば制限なしに適用可能である。前記ブロッキング化合物と反応性官能基の結合物である官能基の一例を挙げれば、ウレタン、チオウレタン、ウレア、チオウレア、アミド、エーテル、チオエーテル、アミンなどが挙げられる。
【0071】
より具体的な一例を挙げれば、前記ポリペプチドは、イソチオシアネート(Isothiocyanate)基を含むブロッキング化合物と反応性官能基の結合物であるチオウレアまたはチオウレタン系官能基を有するポリペプチドを含むことができる。
【0072】
具体的には、前記高分子マイクロ粒子は、イソチオシアネート(Isothiocyanate)を含むブロッキング化合物と反応性官能基を含むポリペプチドとの反応結果物を含むことができる。
【0073】
つまり、イソチオシアネート(Isothiocyanate)を含むブロッキング化合物に含まれるイソチオシアネート(Isothiocyanate)基(-N=C=S)と反応性官能基を含むポリペプチドに含まれる反応性官能基とが反応してチオウレア系官能基を形成して、チオウレア系官能基を有するポリペプチドを含むことができる。
【0074】
また、前記反応性官能基を含むポリペプチドの例が大きく制限されるのではないが、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途により、当該用途に適したポリペプチドを制限なしに適用することができる。つまり、前記ポリペプチドの具体的な例は限定されず、第1級アミンをN末端に含むことができる。例えば前記ポリペプチドは、ポリグリシン、ポリアラニン、ポリバリン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリフェニルアラニン、ポリトリプトファン、ポリグルタミン酸、ポリプロリン、またはポリアスパラギン酸であり得る。
【0075】
前記ポリペプチドが第1級アミン外の求核性官能基を1mol/10g以上含む場合、ブロッキング化合物との反応にも反応性官能基が全て保護されないため、化学的架橋剤と保護されない反応性官能基との付加反応により高分子マイクロ粒子の薬物放出特性が低下することがある。
【0076】
前記ポリペプチドの添加量も大きく限定されず、適用用途と対象により含有量を制限なしに使用することができる。例えば、前記ポリペプチドは、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1,000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量、過剰量の制限なしに含まれ得る。
【0077】
一方、前記高分子マトリックスは、生体適合性高分子が第1架橋剤を介して架橋された第1架橋領域;および生体適合性高分子が第2架橋剤を介して架橋された第2架橋領域;を含むことができる。
【0078】
前記第1架橋領域は、生体適合性高分子を含むエマルジョンと第1架橋剤の第1次架橋反応が行われて形成された架橋領域を意味し、前記第2架橋領域は、生体適合性高分子を含むエマルジョンにおいて第1架橋剤との第1次架橋反応が行われず、第2架橋剤と第2次架橋反応が行われて形成された架橋領域および第1架橋領域と第2架橋剤が追加的な第2次架橋反応を通じて形成された架橋領域を意味し得る。
【0079】
前記発明の一実施形態で第1架橋剤は、その例が大きく制限されるのではない。具体的には前記第1架橋剤は、塩化鉄(III)、塩化アルミニウムのうちの一つを含むことができる。
【0080】
前記発明の一実施形態で第2架橋剤は、その例が大きく制限されるのではない。具体的には前記第2架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether:EGDGE)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene)、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)、ジビニルスルホン(divinylsulfone)およびグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。より具体的には、前記第2架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)であり得る。
【0081】
一方、前記マイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子は、蒸溜水での平均直径が1μm以上1,000μm以下、100μm以上1,000μm以下、100μm以上800μm以下、100μm以上750μm以下、100μm以上600μm以下、150μm以上600μm以下であり得るが、高分子マイクロ粒子の平均直径が前述の範囲を満たす場合、細胞付着および培養性能に優れている。
【0082】
また、前記マイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子は、下記の数式1による膨潤度が10以下、0.1以上10以下、0.1以上5以下、0.5以上5以下、0.9以上4.5以下であり得る。
[数式1]
膨潤度={(蒸溜水での平均直径)-(乾燥粒子の平均直径)}/(乾燥粒子の平均直径)
【0083】
前記高分子マイクロ粒子の膨潤度が10を超える場合、架橋密度が低く、力学的強度が劣るため、安定性が低下する技術的問題点が発生することがある。
【0084】
また、前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子は、150時間以上培養した後、pH5.0以上および30℃以上40℃以下の放出条件で薬学有効物質の放出量が20%以上100%以下、50%以上100%以下、75%以上100%以下、90%以上100%であり得る。
【0085】
前記放出条件は、具体的にはpH5.0以上、pH5.0以上pH14.0以下、pH5.0以上pH11.0以下、pH5.6以上pH11.0以下であり得る。
【0086】
また、前記放出条件は、具体的には30℃以上40℃以下、35℃以上40℃以下、36℃以上38℃以下であり得る。
【0087】
前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子の放出量が20%以上100%以下であることから、架橋剤を使用して薬物有効物質放出特性に優れた高分子マイクロ粒子が実現され得る。
【0088】
一方、前記一実施形態のマイクロキャリアに含まれている高分子マイクロ粒子を製造する方法の例が大きく限定されるのではないが、例えば、ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物、生体適合性高分子および第1架橋剤を含む混合物を第1次架橋反応させて架橋粒子を形成する段階;および前記架橋粒子を抽出して第2架橋剤を含む有機溶媒で第2次架橋反応させる段階;を含む、高分子マイクロ粒子の製造方法を用いることができる。
【0089】
従来の高分子マイクロ粒子は、有機溶媒状に直ちに粒子を添加して架橋反応を行うため、高分子の濃度および架橋剤の含有量により粒子の形態が大きく左右され、特に高分子の濃度が低いか架橋剤の含有量が少ない場合、粒子の形態が維持されず、マイクロ粒子の形成が難しいという問題があった。
【0090】
そこで、本発明者らは、前記高分子マイクロ粒子の製造方法のように、2回の架橋反応を行うことによって、同一の架橋剤量で架橋密度を最大化させると同時に、薬学有効物質の放出挙動を確認した。
【0091】
特に、2回の架橋反応のうち、第2次架橋反応を固相で行うことによって、少量の架橋剤でも球形の粒子を実現することができ、生産収率が向上するという点も実験を通じて確認した。
【0092】
具体的には、前記生体適合性高分子とは、人体に適用される医薬の効果的な薬物送達のために、人体内に直接注入が可能な高分子を意味する。具体的には前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、カルボキシメチルセルロース(Carboxymethyl cellulose:CMC)、アルギン酸(alginic acid)、ペクチン、カラギナン、コンドロイチン(スルフェート)、デキストラン(スルフェート)、キトサン、ポリリジン(polylysine)、コラーゲン、ゼラチン、カルボキシメチルキチン(carboxymethyl chitin)、フィブリン、アガロース、プルラン、ポリラクチド、ポリグルコリド(PGA)、ポリラクチド-グルコリド共重合体(PLGA)、ポリアンハイドライド(polyanhydride)、ポリオルトエステル(polyorthoester)、ポリエーテルエステル(polyetherester)、ポリカプロラクトン(polycaprolactone)、ポリエステルアミド(polyesteramide)、ポリ(ブチル酸)、ポリ(吉草酸)、ポリウレタン、ポリアクリレート、エチレン-ビニルアセテート重合体、アクリル置換セルロースアセテート、非分解性ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリ(ビニルイミダゾール)、クロロスルホネートポリオレフィン(chlorosulphonate polyolefins)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリメタクリレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、シクロデキストリン、ポリ(N-イソプロピルアミド)(PNIPAam)、ポロキサマー(poloxamer)、およびポリアクリル酸共重合体、およびこれらの誘導体から構成された群より選択された1種以上の高分子であり得る。
【0093】
より具体的には、前記生体適合性高分子は、ヒアルロン酸(Hyaluronic acid:HA)、ゼラチンまたはヒアルロン酸およびゼラチンの混合物であり得る。
【0094】
本明細書において、ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸自体とヒアルロン酸塩を全て含む意味であり得る。そのために、ヒアルロン酸水溶液は、ヒアルロン酸の水溶液、ヒアルロン酸塩の水溶液、およびヒアルロン酸とヒアルロン酸塩の混合水溶液を全て含む概念であり得る。前記ヒアルロン酸塩は、ヒアルロン酸ナトリウム、ヒアルロン酸カリウム、ヒアルロン酸カルシウム、ヒアルロン酸マグネシウム、ヒアルロン酸亜鉛、ヒアルロン酸コバルトなどの無機塩、ヒアルロン酸テトラブチルアンモニウムなどの有機塩、およびその混合物であり得る。
【0095】
発明の一実施形態において、ヒアルロン酸の分子量は特に制限されるのではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために500g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0096】
本明細書において、ゼラチンは、動物に由来するコラーゲンを酸またはアルカリで処理し、後続して抽出して得られる蛋白質を意味し得る。
【0097】
発明の一実施形態において、ゼラチンの分子量は特に制限されるのではないが、多様な物性と生体適合性を実現するために100,000g/mol以上5,000,000g/mol以下であることが好ましい。
【0098】
前記ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物において、前記ブロッキング化合物の例が大きく限定されるのではなく、前記ポリペプチドに含有された反応性官能基と反応して化学結合を形成することができる官能基および反応性が弱いブロッキンググループを有する化合物であれば制限なしに使用可能である。
【0099】
前記ポリペプチドに含有された反応性官能基と反応して化学結合を形成することができる官能基の一例を挙げれば、イソシアネート基、カルボキシ基、ハロゲン基などが挙げられる。また、前記反応性が弱いブロッキンググループの一例を挙げれば、炭素数1乃至50のアルキル基、炭素数2乃至50のシクロアルキル基、炭素数6乃至50のアリール基、炭素数3乃至50のヘテロアリール基などが挙げられる。
【0100】
より具体的な一例を挙げれば、前記ブロッキング化合物の例としては、求電子性炭素を含む官能基を有するブロッキング化合物として、フルオレセインイソチオシアネート(Fluorescein isothiocyanate、FITC)、ロダミンBイソチオシアネート(Rhodamine B isothiocyanate、RBITC)、テトラメチルロダミンBイソチオシアネート(TetramethylRhodamine B isothiocyanate)、N-hydroxy-succinimidyl-ester linked fluorescein(NHS-fluorescein)、6-[Fluorescein-5(6)-carboxamido]hexanoic acid N-hydroxysuccinimide ester、Fluorescein-5-EX N-hydroxysuccinimide ester、Alexa Fluor(商標名)350 NHS Ester、Alexa Fluor(商標名)430 NHS Ester、Alexa Fluor(商標名)488 NHS Ester、Rhodamine Green(商標名)Carboxylic Acid、Succinimidyl Ester、Hydrochloride(5(6)-CR110、SE)、Rhodamine Red(商標名)-X、Succinimidyl Ester、5-isomer、およびAlexa Fluor(商標名)647 NHS Esterからなる群より選択された1種以上の化合物が挙げられる。
【0101】
また、前記ポリペプチドの例が大きく制限されるのではないが、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途により、当該用途に適したポリペプチドを制限なしに適用することができる。つまり、前記ポリペプチドの具体的な例は限定されず、第1級アミンを1種以下含むことができる。例えば前記ポリペプチドは、ポリグリシン、ポリアラニン、ポリバリン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリフェニルアラニン、ポリトリプトファン、ポリグルタミン酸、ポリプロリン、ポリアスパラギン酸であり得る。
【0102】
前記ポリペプチドが第1級アミンを2種以上含む場合、イソチオシアネート(Isothiocyanate)を含むブロッキング化合物との反応にも反応性官能基が全てチオウレア系官能基で保護されないため、チオウレア系官能基で保護されない反応性官能基を含むこととなり、保護されない反応性官能基の付加反応により高分子マイクロ粒子の薬物放出特性が低下することがある。
【0103】
より具体的な一例を挙げれば、前記ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物は、イソチオシアネート(Isothiocyanate)基を含むブロッキング化合物と反応性官能基の結合物であるチオウレアまたはチオウレタン系官能基を有するポリペプチドとの結合物を含むことができる。
【0104】
具体的には、前記高分子マイクロ粒子は、イソチオシアネート(Isothiocyanate)を含むブロッキング化合物と反応性官能基を含むポリペプチドとの反応結果物を含むことができる。
【0105】
つまり、イソチオシアネート(Isothiocyanate)を含むブロッキング化合物に含まれるイソチオシアネート(Isothiocyanate)基(-N=C=S)と反応性官能基を含むポリペプチドに含まれる反応性官能基が反応してチオウレア系官能基を形成して、チオウレア系官能基を有するポリペプチドを含むことができる。
【0106】
前記第1架橋剤は、その例が大きく制限されるのではない。具体的には前記第1架橋剤は、塩化鉄(III)、塩化アルミニウムのうちの一つを含むことができる。
【0107】
一方、前記ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物、生体適合性高分子および第1架橋剤を含む混合物を第1次架橋反応させて架橋粒子を形成する段階は、前記ポリペプチド、ブロッキング化合物および生体適合性高分子を溶かした混合溶液を形成する段階;および前記混合溶液を吐出させて第1架橋剤に添加する段階;を含むことができる。
【0108】
つまり、前記第1次架橋反応は、前記ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物と生体適合性高分子を含む混合溶液に第1架橋剤を添加して行われる液相反応であり得る。
【0109】
また、前記ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物、生体適合性高分子および第1架橋剤を含む混合物を第1次架橋反応させて架橋粒子を形成する段階で、前記第1次架橋反応は、イオン架橋反応であり得る。
【0110】
つまり、前記ポリペプチドおよびブロッキング化合物の結合物、生体適合性高分子および第1架橋剤を含む混合物を第1次架橋反応させて架橋粒子を形成する段階で、第1架橋剤は、イオン化合物であり得る。前記発明の一実施形態で第1架橋剤は、その例が大きく制限されるのではない。具体的には前記第1架橋剤は、塩化鉄(III)、塩化アルミニウムのうちの一つを含むことができる。
【0111】
一方、前記架橋粒子を抽出して第2架橋剤を含む有機溶媒で第2次架橋反応させる段階で、前記架橋粒子および第2架橋剤は固相で架橋反応を行うものであり得る。
【0112】
つまり、前記高分子マイクロ粒子の製造方法によれば、アルカリ性有機溶媒で固相で行われる第2次架橋反応が含まれ得る。また、前記固相で行われる第2次架橋反応は、膨潤された高分子粒子を脱水化させてより凝集された状態で行われる第2次架橋反応を意味し得る。発明の一実施形態のように、有機溶媒で固相で行われる第2次架橋反応を含む、つまり、膨潤された高分子粒子を脱水化させてより凝集された状態で行われる第2次架橋反応を含む場合、そうではない場合と比較して優れた架橋効率が実現されることで、高い強度を有するマイクロ粒子を得ることができる。
【0113】
前記架橋粒子を回収することは、篩目のサイズが30μm以上である網篩を使用する方式によることができる。このように第1次架橋反応を通じて形成された架橋粒子を回収した後、有機溶媒に再分散して第2架橋剤を添加することによって第2次架橋反応がより凝集された固相で行われ得る。
【0114】
前記第2架橋剤は、その例が大きく制限されるのではない。具体的には前記第2架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethylene glycol diglycidyl ether:EGDGE)、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,6-hexanediol diglycidyl ether)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(propylene glycol diglycidyl ether)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(polypropylene glycol diglycidyl ether)、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(polytetramethylene glycol diglycidyl ether)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(neopentyl glycol diglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル(tri-methylpropane polyglycidyl ether)、ビスエポキシプロポキシエチレン(1,2-(bis(2,3-epoxypropoxy)ethylene)、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル(pentaerythritol polyglycidyl ether)、ソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)、ジビニルスルホン(divinylsulfone)およびグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)からなる群より選択された一つ以上を含むことができる。より具体的には、前記第2架橋剤は、ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-butandiol diglycidyl ether:BDDE)であり得る。
【0115】
前記第1架橋剤および第2架橋剤は、それぞれ独立して、塩化鉄(III)、塩化アルミニウム、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、グルタルアルデヒド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリグリコールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチルプロパンポリグリシジルエーテル、ビスエポキシプロポキシエチレン、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテルおよびソルビトールポリグリシジルエーテル、ジビニルスルホンからなる群より選択された一つ以上を含むことができる。
【0116】
また、前記第2架橋剤は、前記生体適合性高分子100重量部に対して30重量部以上300重量部以下、40重量部以上250重量部以下、または50重量部以上200重量部以下含まれ得る。発明の一実施形態による高分子マイクロ粒子の製造方法は、前述のように第1次架橋反応後に第2次架橋反応を行うことによって、前記生体適合性高分子100重量部に対して30重量部以上300重量部以下の第2架橋剤を添加して十分な力学的強度および球形化率を実現する高分子マイクロ粒子を製造することができる。
【0117】
第2架橋剤を前記生体適合性高分子100重量部に対して30重量部未満添加する場合、架橋度が低くて粒子形成が難しく、300重量部を超えて添加する場合、過剰量の未反応した架橋剤が除去されずに架橋粒子に残存する技術的問題点が発生することがある。
【0118】
一方、前記架橋粒子を抽出して第2架橋剤を含む有機溶媒で第2次架橋反応させる段階で、前記有機溶媒は、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチルカプロラクタム、2-ピロリドン、N-エチルピロリドン、N-ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチルウレア、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、3-メトクシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートからなる群より選択された一つ以上であり得る。
【0119】
一方、前記一実施形態のマイクロキャリアは、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成された細胞付着誘導層;をさらに含むことができる。前記細胞付着誘導層は、細胞付着性物質から構成され、付着性細胞が安定的に付着、分散(spreading)および培養され得るようにする。
【0120】
前記細胞付着誘導層は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン(fibronectin)キトサン、ポリドーパミン、ポリL-リジン、ビトロネクチン(vitronectin)、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン(lignin)、陽イオン性デキストランおよびこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上の細胞付着性物質を含むことができる。つまり、前記細胞付着誘導層は、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン(fibronectin)キトサン、ポリドーパミン、ポリL-リジン、ビトロネクチン(vitronectin)、RGDを含むペプチド、RGDを含むアクリル系高分子、リグニン(lignin)、陽イオン性デキストランおよびこれらの誘導体からなる群より選択される1種、またはこれらの2種以上の混合物を含む細胞付着性物質を含むことができる。
【0121】
前記細胞付着誘導層は、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成され得る。つまり、前記高分子マイクロ粒子の表面に前記細胞付着誘導層が直接接触するか、あるいは前記高分子マイクロ粒子の表面に接触した他のその他層の表面に前記細胞付着誘導層が接触することができる。
【0122】
一例として、前記マイクロキャリアは、高分子マイクロ粒子の表面に直接接触するように形成される細胞付着誘導層を含んで、マイクロキャリアの表面に細胞付着誘導層を導入して培養液内でマイクロキャリアの浮遊度が調節され得、細胞を安定的に付着培養する効果を有することができる。
【0123】
前記細胞付着誘導層は、1nm乃至10,000nm、または10nm乃至1,000nm、または50nm乃至500nm、または80nm乃至200nmの層厚さを有することができ、前記細胞付着誘導層の層厚さは、前記マイクロキャリア全体の半径から内部の高分子マイクロ粒子の半径を引いた値を通じて求めることができる。前記半径は、直径の1/2値を意味する。前記直径を測定する方法の例が大きく限定されるのではないが、一例を挙げれば、共焦点蛍光顕微鏡、電子透過顕微鏡(TEM)または断面IR、断面SEMイメージを通じて測定可能である。
【0124】
前記マイクロキャリアは、1μm乃至1,000μm、または10μm乃至1,000μm、または100μm乃至1,000μm、または100μm乃至800μmの平均直径を有することができる。前記直径を測定する方法の例が大きく限定されるのではないが、一例を挙げれば、光学顕微鏡を通じて測定可能である。
【0125】
一方、前記高分子マイクロ粒子の半径と細胞付着誘導層の厚さの比率は、1:0.00001乃至1:0.1、または1:0.0001乃至1:0.01であり得る。
【0126】
前記高分子マイクロ粒子の半径と細胞付着誘導層の厚さの比率が1:0.00001未満である場合、前記高分子マイクロ粒子に比べて細胞付着誘導層が過度に薄くて細胞培養時に細胞とマイクロキャリアの付着度が減少する恐れがあり、1:0.1を超える場合、前記高分子マイクロ粒子に比べて細胞付着誘導層が厚くなって、高分子マイクロ粒子の親水性度のような物性を変化させて分散性を低下させる問題が発生することがある。
【0127】
前記マイクロキャリアは、下記の数式で計算される細胞付着性が2000%以上、または2500%以上、または3000%以上、または4000%以下、または2000%乃至4000%、または2500%乃至4000%、または3000%乃至4000%であり得る。
[数式]
細胞付着性=(マイクロキャリアを細胞培養液に投入して37℃で7日間培養した後の細胞数/細胞培養液に最初含まれている細胞数)X100
【0128】
前記細胞培養液、細胞、培養条件については特に限定されず、従前に知られている多様な細胞培養液、細胞、培養条件を制限なしに適用することができる。そして、前記細胞数を測定する方法も特に限定されず、従前に知られている多様な細胞数測定方法を制限なしに適用することができる。
【0129】
前記マイクロキャリアは、前記数式で計算される細胞付着性が2000%以上、または2500%以上、または3000%以上、または4000%以下、または2000%乃至4000%、または2500%乃至4000%、または3000%乃至4000%を満たすことによって、マイクロキャリアの細胞付置力が向上し、これにより3次元的拡張培養を通じて表面効率を増加させて付着性細胞の大量拡張が可能であるという長所がある。
【0130】
反面、前記マイクロキャリアは、前記数式で計算される細胞付着性が前述の範囲に至らない場合、マイクロキャリアの表面の細胞付置力が弱いため、3次元的拡張培養が十分に行われ難いという限界がある。
【0131】
一方、前記マイクロキャリアは、前記高分子マイクロ粒子の表面上に形成されたプライマー高分子層をさらに含むことができる。
【0132】
つまり、前記高分子マイクロ粒子表面に、プライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種の混合層がさらに含まれ得る。プライマー高分子層1種と細胞付着誘導層1種の混合層においてこれらの積層順序は特に限定されず、プライマー高分子層上に細胞付着誘導層が積層された構造、あるいは細胞付着誘導層上にプライマー高分子層が積層された構造を全て適用可能である。
【0133】
一方、前記プライマー高分子層は、前記高分子マイクロ粒子の表面に機能性高分子を導入することができる粘着層の役割を果たし、これによりマイクロキャリア表面に細胞付着のための高分子層が効果的に導入され、培養中にも安定的に維持され得るようにする。
前記プライマー高分子層は、その例が大きく限定されるのではないが、水相接着を誘導することができるカテコール誘導体としてL-ジヒドロキシフェニルアラニン(L-DOPA)、ドーパミン(dopamine)、ポリドーパミン、ノレピネプリン(norepinephrine)、エピネフリン(epinephrine)、エピガロカテキン(epigallocatechin)およびこれらの誘導体からなる群より選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0134】
前記マイクロキャリアは、細胞培養用マイクロキャリアであり得る。
【0135】
2.細胞複合体
本発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態のマイクロキャリア;および前記マイクロキャリア表面上に付着された細胞;を含む、細胞複合体が提供され得る。前記マイクロキャリアに関する内容は、前記一実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。
【0136】
前記他の実施形態の細胞複合体は、細胞が安定的にマイクロキャリアと付着した状態で複合体を形成することによって、細胞生存率が高まって高い体内移植率を実現することができる。
【0137】
前記細胞は、付着性動物細胞であって、その例が大きく限定されるのではないが、例えば線維芽細胞(fibroblasts)、上皮細胞(epithelial cell)、骨芽細胞(osteoblast)、軟骨細胞(chondrocyte)、肝細胞、ヒト由来臍帯血細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、CHO(Chinese hamster ovary)細胞、腎臓細胞(HEK293、BHK21、MDCK、vero cellなど)、またはこれらの2種以上の混合物であり得る。
【0138】
前記細胞の密度は、1.02g/cm以上1.1g/cm未満であり得る。
【0139】
前記細胞は、前記マイクロキャリアの表面上に付着され得る。つまり、前記マイクロキャリアの表面に細胞が直接接触するか、あるいは前記マイクロキャリアの表面に接触した他のその他層の表面に細胞が接触することができる。
【0140】
3.医療用組成物
本発明のまた他の実施形態によれば、前記一実施形態のマイクロキャリアまたは前記他の実施形態の細胞複合体を含む医療用組成物が提供され得る。前記マイクロキャリアに関する内容は、前記一実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。前記細胞複合体に関する内容は、前記他の実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。
【0141】
つまり、前記一実施形態の薬学有効物質が医療用で適用される場合、医療用組成物が提供され得る。
【0142】
このような場合、医療用有効物質の例は大きく限定されず、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途により、当該用途に適した有効物質を制限なしに適用することができる。つまり、前記医療用有効物質の具体的な例は限定されず、ポリグリシン、ポリアラニン、ポリバリン、ポリロイシン、ポリイソロイシン、ポリフェニルアラニン、ポリトリプトファン、ポリグルタミン酸、ポリプロリン、またはポリアスパラギン酸などを含むか、エラスチン由来ポリペプチド((バリン-プロリン-グリシン-バリン-グリシン)の反復重合体)などの医療用有効物質を含むことができ、医療用効果が立証された全ての物質が制限なしに適用可能である。
【0143】
前記医療用有効物質の添加量も大きく限定されず、適用用途と対象により含有量を制限なしに使用することができる。例えば、前記医療用有効物質は、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1,000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量、過剰量の制限なしに含まれ得る。
【0144】
4.美容組成物
本発明のまた他の実施形態によれば、前記一実施形態のマイクロキャリアまたは前記他の実施形態の細胞複合体を含む美容組成物が提供され得る。前記マイクロキャリアに関する内容は、前記一実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。前記細胞複合体に関する内容は、前記他の実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。
【0145】
つまり、前記一実施形態の薬学有効物質が美容用で適用される場合、美容組成物が提供され得る。
【0146】
このような場合、美容用有効物質の例は大きく限定されず、前記一実施形態の高分子マイクロ粒子の適用用途により、当該用途に適した有効物質を制限なしに適用することができる。つまり、前記美容有効物質の具体的な例は限定されず、天然抽出物、蛋白質、ビタミン、酵素、抗酸化剤などがあり、美容効果が立証された全ての物質が制限なしに適用可能である。
【0147】
前記美容有効物質の添加量も大きく限定されず、適用用途と対象により含有量を制限なしに使用することができる。例えば、前記美容有効物質は、前記高分子マイクロ粒子100重量部に対して0.0001重量部以上1,000重量部以下で、高分子マイクロ粒子に対して少量、過剰量の制限なしに含まれ得る。
【0148】
5.医療用品
本発明のまた他の実施形態によれば、前記他の実施形態の医療用組成物を含む医療用品が提供され得る。前記医療用組成物に関する内容は、前記他の実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。
【0149】
前記医療用品の例が大きく限定されないが、本発明の特性が実現されるためには体内に挿入されて使用されるか、あるいは長期間強度が維持されなければならない場合に適しており、例えば、体内保形物、体内挿入型薬物送達体、経皮パッチ、創傷治療剤などが挙げられる。
【0150】
6.美容用品
本発明のまた他の実施形態によれば、本発明は、前記他の実施形態の美容組成物を含む美容用品が提供され得る。前記美容組成物に関する内容は、前記他の実施形態で前述した全ての内容を含むことができる。
【0151】
前記美容用品の例が大きく限定されないが、本発明の特性が実現されるためには、例えば、美容クリーム、ローション、ヘアーゲル、パックなどが挙げられる。
【0152】
前記美容パックの構造が大きく限定されるのではないが、例えば、支持体、および前記支持体上に形成され、前記他の実施形態の高分子マイクロ粒子を含む美容的有効物質送達層を含むことができる。前記支持体の例としては、織布、不織布、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、金属メッシュ、ポリエステルなどが挙げられる。
【発明の効果】
【0153】
本発明によれば、高い架橋効率および生産収率と同時に、安定性を実現することができるだけでなく、蛋白質またはペプチド薬学有効物質の化学的修飾なしに薬物放出特性を確認することができ、細胞脱着工程なしに3次元培養後に直ちに体内注入が可能であり、付着性細胞に安定した環境を提供して細胞生存率が高まって高い体内移植率に寄与することができるマイクロキャリア、これを含む細胞複合体、医療用組成物、美容組成物、医療用品および美容用品が提供され得る。
【発明を実施するための形態】
【0154】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例により限定されるのではない。
【0155】
<実施例:高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアの製造>
実施例1
(1)高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)0.15gおよびゼラチン(ゲル強度:300g)1gをそれぞれ蒸溜水に1.0wt%、12.5wtに溶かして溶液を製造した後、この二つの溶液を1:1体積比で混合する。ここにフルオレセインイソチオシアネート-ポリプロリン(流体力学的半径(hydrodynamic radius):2.5nm、反応性官能基含有量:0.01mol/10g)水溶液を600μg/mLの濃度に混合した。前記混合溶液(4g)をビュッヒ社のカプセル化装置(Buchi encapsulator)のノズルを通じて吐出させ、5wt%FeCl(iron chloride)溶液に固形化させて粒子を製造した。その後、前記固形粒子をエタノールに5回洗浄した後、固形粒子分散液25gに架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を0.5ml(0.55g)を添加して常温で4日間架橋反応させた。その後、エタノールで洗浄して篩目のサイズが45μmである網篩を使用して製造された架橋粒子を回収した。
【0156】
(2)細胞培養用マイクロキャリアの製造
回収された粒子をドーパミンが1mg/mLに溶解されたトリスバッファー(tris buffer)(pH8.0)に浸漬して攪拌下で常温で2時間コーティングした。過剰量のコーティング物質をエタノールで洗浄後、45μmの篩(sieve)に粒子を濾過した後、細胞培養用マイクロキャリアとして使用した。
【0157】
実施例2
実施例1の(1)で1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル含有量を1ml(1.1g)に添加したことを除き、実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0158】
実施例3
実施例1の(1)でノズルの大きさを200μmに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0159】
実施例4
実施例1の(1)でノズルの大きさを200μmに変更し、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル含有量を1ml(1.1g)添加したことを除き、実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0160】
実施例5
実施例1の(1)でノズルの大きさを300μmに変更したことを除き、実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0161】
実施例6
実施例1の(1)でノズルの大きさを300μmに変更し、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル含有量を1ml(1.1g)添加したことを除き、実施例1と同様の方法で高分子マイクロ粒子および細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0162】
実施例7
実施例1の(2)のドーパミンコーティングを行わず、実施例1の(1)で製造された架橋粒子を細胞培養用マイクロキャリアとして使用した。
【0163】
実施例8
1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル含有量を1ml(1.1g)添加したことを除き、実施例7と同様の方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0164】
実施例9
ノズルの大きさを200μmに変更したことを除き、実施例7と同様の方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0165】
実施例10
ノズルの大きさを200μmに変更し、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル含有量を1ml(1.1g)添加したことを除き、実施例7と同様の方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0166】
実施例11
ノズルの大きさを300μmに変更したことを除き、実施例7と同様の方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0167】
実施例12
ノズルの大きさを300μmに変更し、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル含有量を1ml(1.1g)添加したことを除き、実施例7と同様の方法で細胞培養用マイクロキャリアを製造した。
【0168】
<比較例>
比較例1:高分子マイクロ粒子の製造
ヒアルロン酸塩(重量平均分子量:500kDa)0.15gおよびゼラチン(ゲル強度:300g)1gをそれぞれ蒸溜水に1.5wt、10wtに溶かして溶液を製造した後、この二つの溶液を1:1体積比で混合する。フルオレセインイソチオシアネート-ポリプロリン(流体力学的半径(hydrodynamic radius):1.7nm、反応性官能基含有量:1.1mol/10g)水溶液を600μg/mLの濃度に混合した。前記混合溶液(4g)を液体パラフィン溶液(40g)と混合して油中水型(W/O)マイクロエマルジョンを含む混合液を製造した。その後、前記混合液44gに架橋剤として1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(1,4-Butandiol diglycidyl ether、BDDE)を1.1g(1ml)添加し、常温で4日間架橋反応させた後、アセトン、ジクロロメタン、エタノールの順序に洗浄して架橋粒子を製造した。この時、篩目のサイズが45μmである網篩を使用して製造された架橋粒子を回収した。
【0169】
比較例2:高分子マイクロ粒子の製造
比較例1で有効物質をフルオレセインイソチオシアネート-ポリプロリンの代わりにヒト成長ホルモン(human growth hormone)(流体力学的半径(hydrodynamic radius):2.5nm、反応性官能基含有量:10mol/10g)を使用したことを除き、比較例1と同様の方法で製造した。
【0170】
比較例3:高分子マイクロ粒子の製造
比較例1で有効物質をフルオレセインイソチオシアネート-ポリプロリンの代わりにウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)(流体力学的半径(hydrodynamic radius):3.8nm、反応性官能基含有量:20mol/10g)を使用したことを除き、比較例1と同様の方法で製造した。
【0171】
比較例4:高分子マイクロ粒子の製造
比較例1で有効物質をフルオレセインイソチオシアネート-ポリプロリンの代わりにフルオレセインイソチオシアネート-ポリリジン(流体力学的半径(hydrodynamic radius):1.9nm、反応性官能基含有量:50mol/10g)を使用したことを除き、比較例1と同様の方法で製造した。
【0172】
比較例5:高分子マイクロ粒子の製造
実施例1の(1)で有効物質をフルオレセインイソチオシアネート-ポリプロリンの代わりにフルオレセインイソチオシアネート-ポリリジン(流体力学的半径(hydrodynamic radius):1.9nm、反応性官能基含有量:50mol/10g)を使用したことを除き、実施例1の(1)と同様の方法で製造した。
【0173】
比較例6:細胞培養用マイクロキャリアの製造
実施例1の(1)で得られた高分子マイクロ粒子を細胞培養用マイクロキャリアとして使用した。
【0174】
【表1】
【0175】
<実験例1>
前記実施例および比較例で製造された高分子マイクロ粒子に対して次のような方法で高分子マイクロ粒子の物性を測定し、表2、表3に記載した。
【0176】
1.平均直径および膨潤度
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子の平均直径を測定し、これから膨潤度を計算した。
本発明による粒子の膨潤度は、下記の数式1により計算した。
[数式1]
膨潤度={(蒸溜水での平均直径)-(乾燥粒子の平均直径)}/(乾燥粒子の平均直径)
【0177】
この時、膨潤度値が0に近いほど膨潤が起こらないことを意味し、その値が大きくなるほど膨潤されて粒子が大きくなることを意味する。
【0178】
乾燥粒子の平均直径と蒸溜水での平均直径は、光学顕微鏡(Olympus、BX53)を利用して測定した。
【0179】
2.球形化度
前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子の光学(Olympus、BX53)写真を撮影し、これから球形化度を計算した。
【0180】
本発明による球形化度は、光学写真での任意の30個粒子の最も長い直径に対する最も短い直径の比率(長径比)の平均値で計算した。
【0181】
この時、球形化度の値が100に近いほど球形に近いことを意味する。
【0182】
【表2】
【0183】
前記表2に示されているように、第1次架橋後に粒子を回収して第2次架橋させる段階を含む本願の製造方法により製造された実施例の高分子マイクロ粒子は、球形化度が80以上と現れて高い球形化度を示しながらも、同時に膨潤度が0.9以上4.3以下と現れて優れた架橋度を示すことを確認することができた。
【0184】
3.放出量
下記表3に表示されている各放出条件で前記実施例および比較例の高分子マイクロ粒子を5mg/mLで分散させた後、37℃で4週培養した。蛍光強度(Fluorescence intensity)を495nmの波長で、Synergy HTXマルチモードプレートリーダー(multi-mode plate reader)機器(BioTek社)を使用して培養上清液の495nmでの蛍光強度(intensity)を測定し、前記実施例および比較例で使用したポリペプチドおよびブロッキング化合物(フルオレセインイソチオシアネート)の結合物の検量線(Calibration curve)を通じてフルオレセインイソチオシアネート-ポリペプチド含有量を計算した。
【0185】
【表3】
【0186】
前記表3に示されているように、第1次架橋後に粒子を回収して第2次架橋させる段階を含む本願の製造方法により製造された実施例の高分子マイクロ粒子は、150時間以上の放出期間の間に100%の放出量を示して薬学有効物質の化学的修飾なしに蛋白質薬物放出特性を示すことを確認することができた。反面、第1次架橋のみを経た比較例の高分子マイクロ粒子は、150時間以上の放出期間の間に20%以下の放出量を示して薬学有効物質の化学的修飾により非常に不良な蛋白質薬物放出特性を示すことを確認することができた。
【0187】
<実験例2>
前記実施例1および比較例6で製造された細胞培養用マイクロキャリアに対して次のような方法で物性を測定し、表4に記載した。
【0188】
4.コーティング層の厚さ
細胞培養用マイクロキャリア内の高分子マイクロ粒子の表面に形成されたコーティング層の厚さは断面TEMイメージを通じて測定した。
【0189】
5.細胞付着性
100mLの垂直ホイールバイオリアクタ(vertical wheel bioreactor)(PBS社)に間葉系幹細胞(密度:1.05g/cm)を含む培養液を満たし、前記細胞培養用マイクロキャリアを培養液に注入して攪拌した。37℃で7日間培養した後、細胞培養用マイクロキャリアで培養された細胞数を確認した。そして下記の数式のように初期投入された細胞数と比較してマイクロキャリアの細胞付着性を評価した。
細胞付着性=(マイクロキャリアを細胞培養液に投入して37℃で7日間培養した後の細胞数/細胞培養液に最初含まれている細胞数)X100
【0190】
【表4】
【0191】
前記表4に示されているように、実施例1の細胞培養用マイクロキャリアは、高分子マイクロ粒子表面に0.1μmの細胞付着性物質コーティング層を含むことによって、細胞付着性が比較例6に比べて顕著に向上したことを確認することができた。
【国際調査報告】