(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-21
(54)【発明の名称】ピロリジン化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07D 207/14 20060101AFI20240614BHJP
C07D 207/24 20060101ALI20240614BHJP
C07C 311/19 20060101ALI20240614BHJP
C07B 57/00 20060101ALN20240614BHJP
【FI】
C07D207/14 CSP
C07D207/24
C07C311/19
C07B57/00 350
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508820
(86)(22)【出願日】2022-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-11-27
(86)【国際出願番号】 IB2022053829
(87)【国際公開番号】W WO2022229820
(87)【国際公開日】2022-11-03
(31)【優先権主張番号】P 2021074435
(32)【優先日】2021-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】平野 沙悠梨
(72)【発明者】
【氏名】矢部 治
(72)【発明者】
【氏名】梶田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】小田 恒夫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 享史
(72)【発明者】
【氏名】山下 敬規
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC83
(57)【要約】
本発明は、(V)化合物(IV)を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供し、そしてこの生成物をN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供する工程を含む、式(V)の化合物の工業生産に適した方法を提供する。(IV)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(V):
【化1】
(式中、各R
1は、ハロゲン原子およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択され;
Aは、さらに置換されていてもよい4~7員のN含有単環式飽和ヘテロシクリルであり;そして
PGは、保護基である)
の化合物を製造する方法であって、
該方法は、式(IV):
【化2】
の化合物を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること、および生じた生成物をN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供することを含む、方法。
【請求項2】
式(IV)の化合物を提供するために、
(a)式(II):
【化3】
(式中、R
1は、ハロゲン原子およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択され;そして
Xは、ハロゲン原子である)
の化合物を、式(III):
【化4】
(式中、PGは、保護基であり;そして
Aは、さらに置換されていてもよい4~7員のN含有単環式飽和ヘテロシクリルである)
の化合物のアニオンと反応させること;
(b)工程(a)の生成物を脱保護すること;
(c)工程(b)の生成物を有機酸のラセミ体と反応させること;および
(d)保護基を工程(c)の生成物に導入すること;
をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】
Aが、それぞれさらに置換されていてもよい、ピロリジン、ピペリジン、およびアゼチジンから選択される、請求項1の方法。
【請求項4】
各R
1が、Cl、Br、I、およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択される、請求項1の方法。
【請求項5】
有機酸がラセミ酒石酸(DL-酒石酸)である、請求項2の方法。
【請求項6】
ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンのN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を製造する方法であって、
工程3a:ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること;および
工程3b:工程3aの生成物を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供すること
を含む工程を含む、方法。
【請求項7】
工程1a:1-ブロモ-3-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼンと、ピロリジン1位に保護基を有するピロリジン-3-オンを反応させること;
工程1b:工程1aの生成物を脱保護し、そしてDL-酒石酸と反応させること;および
工程2:工程1bの生成物に保護基を導入して、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを提供すること
をさらに含む、請求項6の方法。
【請求項8】
金属錯体におけるキラル配位子が、BINAP配位子、ホスフィン配位子、フェロセン配位子、またはシクロファン配位子である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
金属錯体における金属が、ルテニウム、ロジウム、またはイリジウムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
キラル配位子を含む金属錯体が、キラルBINAP配位子を含むルテニウム錯体、またはキラルシクロファン配位子を含むルテニウム錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
キラル配位子を含む金属錯体が、式:
Ru(OAc)
2(Ligand)
(式中、Ligandは、(S)-binap、(R)-キシリル-Phanephosまたは(R)-キシリル-binapである)で表される金属錯体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
キラル配位子を含む金属錯体がRu(OAc)
2{(R)-キシリル-binap}である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ピロリジン1位の保護基が、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アセチル、トリチル、ベンジル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、およびメトキシメチルから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ピロリジン1位の保護基がtert-ブトキシカルボニルである、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
精製条件が再結晶化を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
結晶化が、溶媒中60℃~78℃の温度で行うN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成、60℃~78℃の温度での約0.5時間の撹拌、15℃~35℃での約12~約48時間の撹拌、および生じた析出物の濾過を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
析出物を、アルコール、エーテル、または芳香族炭化水素から選択される溶媒から再結晶化させることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
溶媒がエタノールである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
工程4:ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンのN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を脱塩に供し、そしてメタンスルホニル化剤と反応させること;
工程5:工程4の生成物を(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸と反応させること;
工程6:工程5の生成物を脱保護条件に供すること;および
工程7:工程6の生成物を2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸との縮合反応に供して、N-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド、またはその水和物、若しくはその溶媒和物を得ること
をさらに含む、請求項6または7に記載の方法。
【請求項20】
【化5】
のラセミ有機酸塩である化合物。
【請求項21】
ラセミ酒石酸塩である、請求項20の化合物。
【請求項22】
【化6】
である、請求項20の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピロリジン化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ピロリジン化合物、例えば、ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンは、医薬品の製造における中間体として有用であり、それらの工業生産に適した方法が、望まれている。
【0003】
特許文献1においては、3-オキソピロリジン環を含む化合物(18)を、イリジウム触媒を用いる還元的アミノ化反応に供して、3-アミノピロリジン環を含む対応するシス体化合物(19)を取得している(スキーム4)。該シス体をキラルカラムに供して、対応する(2S,3S)体を取得している。
【0004】
特許文献2は、1位に保護基を有する2-(3-ブロモ-2-フルオロベンジル)-3-(メトキシイミノ)ピロリジンを、塩化イルコニウム(IV)を使用する還元反応に供することによって、1位に保護基を有する(2S,3S)3-アミノ-2-(3-ブロモ-2-フルオロベンジル)ピロリジンを取得する方法を、開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/027058号
【特許文献2】国際公開第2021/100730号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載する方法においては、(2S,3S)体を、キラルカラムを使用する光学分割によって取得しているため、この方法が工業生産に適しているとは言い難い。特許文献2に記載する方法においては、ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)3-アミノ-2-(3-ブロモ-2-フルオロベンジル)ピロリジンの純度および収率は、工業生産には十分ではない。
【0007】
本発明の目的は、キラル(2S,3S)-2-ベンジル-3-アミノ置換複素環類の大規模製造に適した方法を提供することである。他の態様においては、本発明の目的は、ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンの工業生産に適した方法を提供することである。他の態様においては、本発明の目的は、製造された、ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンを使用して、N-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミドの工業的大規模生産に適した方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意研究を行い、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供し、次いで、得られた化合物を特定のキラル酸との塩形成を利用した精製に供することにより、ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンを塩として取得することができることを見出し、また原料である、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンをより高い純度で取得することができることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
従って、本発明は、以下を提供する。
[1]
式(V):
【0010】
【0011】
(式中、各R1は、ハロゲン原子およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択され;
Aは、さらに置換されていてもよい4~7員のN含有単環式飽和ヘテロシクリルであり;そして
PGは、保護基である)
の化合物を製造する方法であって、
該方法は、式(IV):
【0012】
【0013】
の化合物を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること、および生じた生成物をN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供することを含む、方法。
【0014】
[2]
式(IV)の化合物を提供するために、
(a)式(II):
【0015】
【0016】
(式中、R1は、ハロゲン原子およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択され;そして
Xは、ハロゲン原子である)
の化合物を、式(III):
【0017】
【0018】
(式中、PGは、保護基であり;そして
Aは、さらに置換されていてもよい4~7員のN含有単環式飽和ヘテロシクリルである)
の化合物のアニオンと反応させること;
(b)工程(a)の生成物を脱保護すること;
(c)工程(b)の生成物を有機酸のラセミ体と反応させること;および
(d)保護基を工程(c)の生成物に導入すること;
をさらに含む、上述の[1]に記載の方法。
【0019】
[3]
Aが、それぞれさらに置換されていてもよい、ピロリジン、ピペリジン、およびアゼチジンから選択される、上述の[1]または[2]に記載の方法。
[4]Aがピロリジンである、上述の[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
各R1が、Cl、Br、I、およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択される、上述の[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]
有機酸がラセミ酒石酸(DL-酒石酸)である、上述の[2]~[5]のいずれかに記載の方法。
【0020】
[7]
ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンのN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩(以下、化合物(5)ともいう)を製造する方法であって、
工程3a:ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン(以下、化合物(4)ともいう)を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること;および
工程3b:工程3aの生成物を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供すること
を含む工程を含む、方法。
【0021】
[8]
工程1a:1-ブロモ-3-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼンを、ピロリジン1位に保護基を有するピロリジン-3-オンと反応させること;
工程1b:工程1aの生成物を脱保護し、そしてDL-酒石酸と反応させること;および
工程2:工程1bの生成物に保護基を導入して、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを提供すること
をさらに含む、上述の[7]に記載の方法。
【0022】
[9]
金属錯体におけるキラル配位子が、BINAP配位子、ホスフィン配位子、フェロセン配位子、またはシクロファン配位子である、上述の[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[10]
金属錯体における金属が、ルテニウム、ロジウム、またはイリジウムである、上述の[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[11]
キラル配位子を含む金属錯体が、キラルBINAP配位子を含むルテニウム錯体、またはキラルシクロファン配位子を含むルテニウム錯体である、上述の[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
【0023】
[12]
キラル配位子を含む金属錯体が、式:
Ru(OAc)2(Ligand)
(式中、Ligandは、(S)-binap、(R)-キシリル-Phanephosまたは(R)-キシリル-binapである)
で表される金属錯体である、上述の[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
[13]
キラル配位子を含む金属錯体がRu(OAc)2{(R)-キシリル-binap}である、上述の[1]~[8]のいずれかに記載の方法。
【0024】
[14]
ピロリジン1位の保護基が、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アセチル、トリチル、ベンジル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、およびメトキシメチルから選択される、上述の[1]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15]
ピロリジン1位の保護基がtert-ブトキシカルボニルである、上述の[1]~[14]のいずれかに記載の方法。
[16]
精製条件が結晶化を含む、上述の[1]~[15]のいずれかに記載の方法。
【0025】
[17]
結晶化が、溶媒中60℃~78℃の温度で行うN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成、60℃~78℃の温度での約0.5時間の撹拌、15℃~35℃での約12~約48時間の撹拌、および生じた析出物の濾過を含む、上述の[16]に記載の方法。
[18]
析出物を、アルコール、エーテル、または芳香族炭化水素から選択される溶媒から再結晶化させることをさらに含む、上述の[17]に記載の方法。
[19]
溶媒がエタノールである、上述の[18]に記載の方法。
【0026】
[20]
工程4:ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンのN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を脱塩に供し、そしてメタンスルホニル化剤と反応させること;
工程5:工程4の生成物を(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸と反応させること;
工程6:工程5の生成物を脱保護条件に供すること;および
工程7:工程6の生成物を2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸との縮合反応に供して、N-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド、またはその水和物、若しくはその溶媒和物を得ること
をさらに含む、上述の[7]または[8]に記載の方法。
[21]
【0027】
【0028】
のラセミ有機酸塩である化合物。
[22]
ラセミ酒石酸塩である、上述の[21]に記載の化合物。
[23]
【0029】
【0030】
である、上述の[21]に記載の化合物。
【0031】
[24]
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン(以下、化合物(3)ともいう)ヘミ酒石酸塩を製造する方法であって、
工程1a:1-ブロモ-3-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン(以下、化合物(1)ともいう)とピロリジン1位に保護基を有するピロリジン-3-オン(以下、化合物(2)ともいう)を反応させること、および
工程1b:工程1aの生成物を脱保護反応に供し、次いで酒石酸との塩形成を行うこと
を含む工程を含む、方法。
【0032】
[25]
ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを製造する方法であって、
工程2:保護基を、2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩のピロリジン1位に導入する工程
を含む、方法。
[26]
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩。
【0033】
[27]
N-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド、またはその水和物、若しくはその溶媒和物を製造する方法であって、
工程1a:1-ブロモ-3-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼンを、ピロリジン1位に保護基を有するピロリジン-3-オンと反応させること、および
工程1b:工程1aの生成物を脱保護反応に供し、次いで酒石酸との塩形成を行って、2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩を得ること
を含む工程;
工程2:保護基を、2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩のピロリジン1位に導入して、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを得る工程;
工程3a:ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オンを、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること、および
工程3b:工程3aの生成物を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供して、
ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンのN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を得ること
を含む工程;
工程4:ピロリジン1位に保護基を有する(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミンのN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を脱塩に供し、次いで生じた化合物をメタンスルホニル化剤と反応させて、ピロリジン1位に保護基を有するN-(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-イル)メタンスルホンアミド(以下、化合物(6)ともいう)を得る工程;
工程5:ピロリジン1位に保護基を有するN-(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-イル)メタンスルホンアミドを(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸と反応させて、ピロリジン1位に保護基を有するN-{(2S,3S)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド(以下、化合物(7)ともいう)を得る工程;
工程6:ピロリジン1位に保護基を有するN-{(2S,3S)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミドを脱保護反応に供して、N-{(2S,3S)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド(以下、化合物(8)ともいう)塩酸塩を得る工程;および
工程7:N-{(2S,3S)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド塩酸塩を2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸との縮合反応に供して、N-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド、またはその水和物、若しくはその溶媒和物(以下、化合物(I)ともいう)を得る工程
を含む、方法。
【0034】
[28]
工程3aにおけるキラル配位子を含む金属錯体がRu(OAc)2{(R)-キシリル-binap}である、上述の[27]に記載の方法。
[29]
工程1bにおいて製造した2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩を単離する工程をさらに含む、上述の[27]に記載の方法。
【0035】
[30]
ピロリジン1位の保護基が、tert-ブトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、アセチル、トリチル、ベンジル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル、およびメトキシメチルから選択される、上述の[27]に記載の方法。
[31]
ピロリジン1位の保護基がtert-ブトキシカルボニル基である、上述の[27]~[30]のいずれかに記載の方法。
【0036】
[32]
式(V):
【0037】
【0038】
(式中、各R1は、ハロゲン原子およびトリフルオロメタンスルホニル基から独立して選択され;
Aは、さらに置換されていてもよい4~7員のN含有単環式飽和ヘテロシクリルであり;そして
PGは、保護基である)
の化合物であって、式(IV):
【0039】
【0040】
の化合物を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること、および生じた生成物をN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供することを含む方法によって製造される、化合物。
【0041】
[33]
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチルを、Ru(OAc)2{(R)-キシリル-binap}の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること;および生じた生成物を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供することによって製造される、(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩。
【発明の効果】
【0042】
本発明の製造方法によれば、化合物(5)を、工業生産に適した方法によって、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩として取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
(発明の詳細な説明)
本発明の製造方法を、以下に説明する。
【0044】
各工程において得られる化合物は、反応混合物としてそのまま、または粗生成物として、次の反応用に使用することができる。あるいは、各工程において得られる化合物は、自体公知の方法、例えば、濃縮、結晶化、再結晶化、蒸留、溶媒抽出、分留、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段に従って、反応混合物から単離し精製することができる。本発明の製造方法で使用する「処理する」、「処理した」または「処理すること」は、用語「反応させる」、「反応した」または「反応させること」と同義である。
【0045】
各工程で使用する原材料化合物および試薬が市販されているとき、該市販品をそのまま使用することもできる。
【0046】
他に特定しない限り、各工程における反応は、無溶媒で、または原材料化合物を適切な溶媒中で溶解させる若しくは懸濁させることによって行う。溶媒の例は、実施例において記載するものおよび以下の溶媒を含む:
アルコール類:メタノール、エタノール、tert-ブチルアルコール、2-メトキシエタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等;
エーテル類:ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,2-ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン等;
芳香族炭化水素類:クロロベンゼン、トルエン、キシレン等;
飽和炭化水素類:シクロヘキサン、ヘキサン等;
アミド類:N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等;
ハロゲン化炭化水素類:ジクロロメタン、四塩化炭素等;
ニトリル類:アセトニトリル等;
スルホキシド類:ジメチルスルホキシド等;
有機塩基類:ピリジン、トリエチルアミン等;
酸無水物類:無水酢酸等;
有機酸類:ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等;
無機酸類:塩酸、硫酸等;
エステル類:酢酸エチル、酢酸イソプロピル等;
ケトン類:アセトン、メチルエチルケトン等;
水。
【0047】
上述の溶媒は、適切な比のそれらの2種以上の混合物で使用することができる。
【0048】
塩基を各工程における反応に使用するとき、その例は、以下の塩基および実施例において記載するものを含む。
無機塩基類:水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、水酸化リチウム、リン酸三カリウム等;
有機塩基類:トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン、N,N-ジメチルアニリン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、イミダゾール、ピペリジン、ピロリジン等;
金属アルコキシド類:ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムtert-ブトキシド、ナトリウムtert-ブトキシド、リチウムエトキシド等;
水素化アルカリ金属類:水素化ナトリウム等;
金属アミド類:ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラジド等;
有機リチウム類:n-ブチルリチウム等。
【0049】
本発明においては、スキーム1に示すように、式(V)の化合物は、式(II)の化合物から製造することができ、式(V)の化合物は、式(X)の化合物の製造で使用することができる(以下、式(…)の化合物を、単に「化合物(…)」ということがある)。
【0050】
【0051】
化合物(II)(Xは、ハロゲン原子またはトリフルオロメタンスルホネート基である)は、基Xの、化合物(III)のカルバニオンによる求核置換によって、化合物(III)(Aは、さらに置換されていてもよい4~7員の窒素含有単環式飽和複素環である。Aの例は、それぞれさらに置換されていてもよい、ピロリジン、ピペリジン、およびアゼチジンを含む。Aの好ましい例は、ピロリジン、ピペリジン、およびアゼチジンを含み、Aのより好ましい例は、ピロリジンである。)と反応させることができる。カルバニオンの生成用に使用する塩基の例は、有機リチウム類、金属アルコキシド類、無機塩基類、有機塩基類等を含む。特定の態様においては、塩基は、有機塩基であり得る。いくつかの態様においては、塩基は、第二級アミンであり得る。いくつかの態様においては、塩基は、ピロリジンであり得る。
【0052】
選択した保護基に適切な条件を使用する保護基の除去、次いで酸との反応により、化合物(IVA)が、塩の形態として得られる。有機酸(有機酸ラセミ体を含む)に加えて、無機酸(すなわちHCl)も、化合物(IVA)の結晶化の目的で使用してもよい。
【0053】
有機酸の例は、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等を含む。
【0054】
無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等を含む。
【0055】
特定の態様においては、式(IVA)の化合物は、有機酸ラセミ体の塩として形成される。いくつかの態様においては、有機塩は、酒石酸のラセミ体(DL-酒石酸)である。
【0056】
式(IVA)の化合物を適切な保護基で保護して、式(IV)の化合物を得ることができる。
【0057】
本明細書においてさらに記載するように、キラル配位子を含有する金属錯体の存在下での不斉還元的アミノ化により、化合物(V)を得る。使用する金属触媒の例は、Ru(OAc)2{(R)-binap}、[RuCl2(ベンゼン)]2およびRu(OAc)2{(R}-キシリル-binap})などのRu触媒、並びに[RhCl(cod)]2および[Rh(cod)2]OTfなどのRh触媒を含み、使用する配位子の例は、(S)-binap、(R)-キシリル-phanephosおよび(R)-キシリル-binapを含み、使用する水素源の例は、水素ガス、ギ酸、ギ酸アンモニウム等を含む。さらに、窒素源を反応系に添加することができ、その例は、アンモニアおよび酢酸アンモニウム等を含む。
【0058】
化合物(V)をアルキルスルホニル化試薬(例えばメタンスルホニル化剤、エタンスルホニル化試薬)と反応させて、化合物(VI)(R2は、C1-2アルキルである)を得、さらに、これを、鈴木カップリング(鈴木-宮浦カップリング)により(VII)とカップリングさせて、化合物(VIII)を得ることができる。カップリングで使用する金属触媒の例は、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-フェロセンパラジウム(II)クロリドなどのパラジウム化合物;テトラキス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(0)などのニッケル化合物;トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(III)クロリドなどのロジウム化合物;コバルト化合物;酸化銅、ヨウ化銅(I)などの銅化合物;白金化合物等を含む。さらに、塩基を反応系に添加することができ、その例は、無機塩基類等を含む。
【0059】
化合物(VIII)の脱保護により、塩の形態の化合物(IX)を得る。塩の例は、塩酸塩および酒石酸等を含み、好ましくは塩は、塩酸塩である。化合物(IX)を2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸と反応させて、水和物、無水物、または溶媒和物の形態で化合物(X)を得ることができる。水和物は、ヘミ水和物およびセスキ水和物を含む。
【0060】
本発明の製造方法において原材料または生成物として使用する種々のピロリジン化合物において、ピロリジン1位についての保護基の例は、tert-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、トリチル基等、ベンジル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc基)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc基)、メトキシメチル基(MOM基)等を含み、、容易な脱保護の観点から、好ましいものは、tert-ブトキシカルボニル基である。本明細書において、「さらに置換されていてもよい4~7員のN含有単環式飽和ヘテロシクリル」の例は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲン化されていてもよいC1-6アルキル基、カルバモイル基、アミノ基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、およびC3-10シクロアルキル基から選択される1~3個の置換基を有していてもよいヘテロシクリルを含む。
【0061】
本発明においては、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩は、以下の工程3aおよび工程3bを含む工程によって製造することができる。
工程3a:化合物(4)を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供すること;および
工程3b:工程3aの生成物を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供すること。
【0062】
工程3a
この工程においては、化合物(4)を、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で不斉還元的アミノ化反応に供する。
【0063】
該反応は、化合物(4)を、溶媒中、キラル配位子を含む金属錯体の存在下で、水素雰囲気下、アミン源と反応させることにより行う。
【0064】
化合物(4)は、好ましくは2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a))である。該化合物は、自体公知の方法によって製造することができる。あるいは、該化合物はまた、後述するように、工程1aおよび工程1bを含む工程、並びに工程2によって製造することができる。
【0065】
アミン源の例は、アンモニア、塩化アンモニウム、ギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、サリチル酸アンモニウムなどのアンモニウム塩等を含む。それらの中でも、好ましいのは、塩化アンモニウムおよび酢酸アンモニウムの組合せである。
【0066】
アミン源の使用量は、化合物(4)1モルあたり、一般的には2~8モル、好ましくは4~6モルである。
【0067】
キラル配位子を含む金属錯体におけるキラル配位子の例は、(S)-BINAP、(R)-キシリル-BINAP、(R)-p-tol-BINAP、(S)-m-tol-BINAP、(S)-DMANYL-BINAP、(S)-DADMP-BINAP、(R)-H8-BINAP、(S)-PMP-BINAP、(S)-BOP-BINAPなどのBINAP配位子;(R,R)-iPr-DUPHOS、(R)-SYNPHOS、(R)-SOLPHOS、(R)-MeO-BIPHEP、(R)-ClMeO-BIPHEP、(R,R)-Skewphos、(R,R)-PTBP-Skewphos、(R)-MONOPHOSなどのホスフィン配位子;(R)(S)-SL-J003、(R)(R)-SL-T001、(R)(R)-SL-W002、(R)(S)-JOSIPHOSなどのフェロセン配位子;(R)-PHANEPHOS、(R)-キシリル-PHANEPHOSなどのシクロファン配位子等を含む。
【0068】
それらの中でも、エナンチオ選択性、アミン選択性およびシス選択性の観点から、好ましくは(S)-BINAP、(R)-キシリル-BINAP、(R)-p-tol-BINAP、(S)-m-tol-BINAP、(S)-DMANYL-BINAP、(S)-DADMP-BINAP、(R)-H8-BINAP、(S)-PMP-BINAP、(S)-BOP-BINAPなどのBINAP配位子、または(R)-PHANEPHOS、(R)-キシリル-PHANEPHOSなどのシクロファン配位子であり、より好ましくは(S)-BINAP、(R)-p-tol-BINAP、(S)-m-tol-BINAP、(R)-キシリル-PHANEPHOSまたは(R)-キシリル-BINAPであり、さらにより好ましくは(S)-BINAP、(R)-キシリル-PHANEPHOSまたは(R)-キシリル-BINAPであり、特に好ましくは(R)-キシリル-BINAPである。
【0069】
エナンチオ選択性およびシス選択性の観点から、キラル配位子を含む金属錯体における金属は、好ましくはルテニウム、ロジウムまたはイリジウムであり、特に好ましくはルテニウムである。
【0070】
キラル配位子を含むそのような金属錯体の例は、キラルBINAP配位子を含むルテニウム錯体、およびキラルシクロファン配位子を含むルテニウム錯体を含む。
【0071】
その好ましい具体例は、以下の式(Ia)~(Id)から選択される構造を有する金属錯体を含む。
【0072】
【0073】
(式中、Arは、フェニル、トリルまたはキシリルである)
【0074】
キラル配位子を含む金属錯体は、より好ましくは式:
Ru(OAc)2(Ligand)
(式中、Ligandは、(S)-binap、(R)-キシリル-Phanephosまたは(R)-キシリル-binapである)で表される金属錯体である。
【0075】
Ligandは、好ましくは(R)-キシリル-binapである。
【0076】
キラル配位子を含む金属錯体は、特に好ましくはRu(OAc)2{(R)-キシリル-binap}である。
【0077】
キラル配位子を含む金属錯体の使用量は、化合物(4)1モルあたり、一般的には0.10~1.00モル%、好ましくは0.40~0.60モル%である。
【0078】
水素圧は、一般的には0.60~5.00MPa(G)、好ましくは0.80~1.00MPa(G)である。
【0079】
溶媒の例は、アルコール類;エーテル類;水等を含む。それらの中でも、好ましいのは、メタノール、およびメタノールと水の混合溶媒である。
【0080】
反応は、一般的には75~95℃で、好ましくは80~85℃で行う。反応時間は、一般的には約10時間~約72時間、好ましくは約16時間~約48時間である。
【0081】
反応終了後、相分離、濃縮などの通常の後処理を行う。
【0082】
反応においては、化合物(4)の変換率が、95%以上、特に99%以上であることが望ましい。
【0083】
該反応ではまた、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オールも、副生成物として生成する。しかしながら、ピロリジン1位に保護基を有する2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-アミン(以下、化合物(5A)ともいう)が、80%以上、特に90%以上のアミン選択性で生成することが望ましい。
【0084】
該反応ではまた、シス体((2S,3S)および(2R,3R))に加えて、トランス体((2R,3S)および(2S,3R))も生成する。しかしながら、ピロリジン1位に保護基を有する化合物(5A)のシス体が、50%以上、特に70%以上の収率で生成することが望ましい。
【0085】
該反応においては、化合物(5)は、25%以上、特に35%以上の鏡像体過剰率で生成することが望ましい。
【0086】
この工程において得られる生成物中に存在する化合物(5)は、次の工程3bにおいて、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩として取得される。
【0087】
工程3b
この工程においては、工程3aの生成物を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンとの塩形成を利用した精製に供することによって、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を取得することができる。
【0088】
精製は、工程3aの生成物を、溶媒中でN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンと混合し、次いで析出した結晶を濾取することにより行う。
【0089】
N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンの使用量は、工程3aの生成物中に含有される化合物(5)1モルあたり、一般的には1.1~2.4モル、好ましくは1.2~2.2モルである。さらに、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンの使用量は、工程3aの出発原料である化合物(4)に基づいて、一般的には0.80~1.20モル、好ましくは0.90~1.10モルである。
【0090】
工程3aの生成物をN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンと混合するための溶媒の例は、アルコール類、エーテル類、芳香族炭化水素類類等を含む。それらの中でも、好ましいのは、エタノールである。
【0091】
混合は、撹拌下、工程3aの生成物の溶液を、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンに添加(好ましくは滴下)することによって行う。混合はまた、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニンを、撹拌下、工程3aの生成物の溶液に添加することによって行う。添加温度は、一般的には60~78℃、好ましくは65~75℃である。添加後、混合物を、一般的には60~78℃、好ましくは65~75℃で約0.5時間、次いで15~35℃、好ましくは20~30℃で約12時間~約48時間、好ましくは約18時間~約24時間、撹拌下で熟成させる。
【0092】
上記操作によって、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩の結晶が析出する。析出した結晶を、濾取し、次いで、必要により、アルコール、エーテル、芳香族炭化水素などの溶媒から再結晶化させる。そのような溶媒の中でも、好ましいのは、エタノールである。
【0093】
このようにして、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を、高純度(例えば、98.5%以上の純度)で取得することができる。
【0094】
工程3aの出発原料である化合物(4)の純度は、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩の純度に大きく影響する。従って、より高い純度を有する化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を取得するためには、工程3aにおいてより高い純度を有する化合物(4)を使用することが重要である。
【0095】
化合物(4)が2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a))であるとき、この化合物は結晶化し難い。従って、純度を上げることが困難であった。
【0096】
本発明者らは、以下の工程1aおよび工程1bを含む工程、並びに以下の工程2によって、より高い純度を有する化合物(4)を取得することに成功した。
工程1a:化合物(1)および化合物(2)を反応させること、および
工程1b:工程1aの生成物を脱保護反応に供し、次いで酒石酸との塩形成を行って、化合物(3)のヘミ酒石酸塩を得ること
を含む工程;並びに
工程2:保護基を、化合物(3)のヘミ酒石酸塩のピロリジン1位に導入して、化合物(4)を得る工程。
【0097】
工程1a
この工程においては、化合物(1)と化合物(2)を、反応させる。
【0098】
該反応は、化合物(1)と化合物(2)を、溶媒中、第二級アミンの存在下で反応させることによって行う。より詳細には、該反応は、化合物(2)を、溶媒中、第二級アミンの存在下で活性体(エナミン体)に変換し、次いで該活性体を化合物(1)と反応させることによって行う。
【0099】
化合物(1)は、市販品であり得る。
【0100】
化合物(2)は、好ましくは3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル化合物(2a))であり、市販品であり得る。
【0101】
化合物(2)の使用量は、化合物(1)1モルあたり、一般的には1.5~2.5モル、好ましくは1.9~2.1モルである。
【0102】
第二級アミンの例は、環状アミンを含む。それらの中でも、好ましいのは、ピロリジンである。
【0103】
第二級アミンの使用量は、化合物(1)1モルあたり、一般的には1.5~3.5モル、好ましくは2.0~3.0モルである。
【0104】
必要により、テトラブチルアンモニウムヨージド(TBAI)などの相間移動触媒を、反応系に添加してもよい。その使用量は、化合物(1)1モルあたり、一般的には0.01~0.20モル、好ましくは0.09~0.11モルである。
【0105】
溶媒の例は、芳香族炭化水素類、ニトリル類等を含む。それらの中でも、好ましいのは、トルエンとアセトニトリルの混合溶媒である。
【0106】
反応は、一般的には20~55℃で、好ましくは35~45℃で行う。反応時間は、一般的には約30分~約12時間、好ましくは約1時間~約2時間である。
【0107】
反応終了後、相分離、濃縮などの通常の後処理を行う。
【0108】
該反応では化合物(4)が生成するが、反応混合物から単離せずに次の工程1bに供することができる。
【0109】
工程1b
この工程においては、工程1aの生成物を脱保護反応に供し、その後酒石酸との塩形成を行うことにより、化合物(3)のヘミ酒石酸塩を取得することができる。
【0110】
該脱保護反応は、ピロリジン1位の保護基の種類に依存する。例えば、保護基がtert-ブトキシカルボニル基であるとき、該脱保護反応は、溶媒中で酸と反応させることによって行う。
【0111】
酸の例は、塩化水素等を含む。塩化水素は、好ましくは有機溶媒中の溶液として、特に好ましくは2-プロパノール中の塩化水素の溶液として使用する。
【0112】
溶媒の例は、アルコール類、エステル類等を含む。それらの中でも、好ましいのは、2-プロパノール、酢酸エチル、およびそれらの混合溶媒であり、特に好ましいのは、2-プロパノールである。
【0113】
反応は、一般的には40~60℃で、好ましくは45~55℃で行う。反応時間は、一般的には約1時間~約6時間、好ましくは約2時間~約4時間である。
【0114】
該反応では化合物(3)が生成するが、脱保護反応を塩化水素で処理した場合は塩酸塩として析出する。反応終了後、該塩酸塩は、晶析のために酢酸エチルを45~55℃で添加し、1時間以上かけて0~10℃に冷却し、次いで酢酸エチルで洗浄することによって、取得することができる。取得した化合物(3)の塩酸塩は、溶媒中で塩基を添加することによって遊離体に変換し、次の酒石酸との塩形成に供する。
【0115】
酒石酸との塩形成は、化合物(3)と酒石酸を溶媒中で混合し、次いで生じた析出した結晶を濾取することによって行う。
【0116】
酒石酸の使用量は、化合物(1)1モルあたり、一般的には0.3~1.0モル、好ましくは0.4~0.6モルである。
【0117】
溶媒の例は、アルコール類;芳香族炭化水素類;ケトン類等を含む。それらの中でも、好ましいのは、メタノールとトルエンの混合溶媒である。
【0118】
混合は、撹拌下、化合物(3)の溶液を酒石酸の溶液に添加すること(好ましくは滴下すること)によって行う。添加温度は、一般的には15~35℃、好ましくは20~30℃である。添加後、混合物を、一般的には-5~15℃で、好ましくは0~10℃で約1時間~約24時間、撹拌下で熟成させる。
【0119】
上記操作によって、化合物(3)のヘミ酒石酸塩の結晶が析出する。この化合物(3)のヘミ酒石酸塩の結晶は、析出した結晶を濾取し、メタノールとトルエンの混合溶媒で洗浄し、次いで乾燥することによって、取得することができる。
【0120】
工程3aで使用する化合物(4)をより高い純度で取得するためには、化合物(3)のヘミ酒石酸塩の純度を高めることが重要である。上記の結晶化によって、化合物(3)のヘミ酒石酸塩を、純度(例えば、98.0%以上の純度)で取得することができる。
【0121】
このようにして得られた化合物(3)のヘミ酒石酸塩は、新規化合物である。
【0122】
工程2
この工程においては、化合物(3)のヘミ酒石酸塩のピロリジン1位に保護基を導入することによって、化合物(4)を得ることができる。
【0123】
該反応は、ピロリジン1位の保護基の種類に依存する。例えば、保護基がtert-ブトキシカルボニル基であるとき、該反応は、化合物(3)のヘミ酒石酸塩を、溶媒中、塩基の存在下でtert-ブトキシカルボニル化試薬と反応させることによって行う。
【0124】
tert-ブトキシカルボニル化試薬の例は、ジ-tert-ブチルジカーボネート、tert-ブトキシカルボニルクロリド等を含む。
【0125】
tert-ブトキシカルボニル化試薬の使用量は、化合物(3)のヘミ酒石酸塩1モルあたり、一般的には0.8~2.0モル、好ましくは0.9~1.1モルである。
【0126】
塩基の例は、有機塩基類を含む。それらの中でも、好ましいのは、トリエチルアミンである。
【0127】
塩基の使用量は、化合物(3)のヘミ酒石酸塩1モルあたり、一般的には1.5~3.0モル、好ましくは2.1~2.3モルである。
【0128】
溶媒の例は、ニトリル類、エーテル類等を含む。それらの中でも、好ましいのは、アセトニトリルである。
【0129】
反応は、一般的には-5~35℃で、好ましくは0~10℃で行う。反応時間は、一般的には約30分~約12時間、好ましくは約1時間~約2時間である。
【0130】
反応終了後、10%クエン酸水溶液および酢酸エチルを反応混合物に添加し、混合物を20~30℃で15分間以上撹拌し、次いで水層を除去する。次いで、有機層を、5%食塩水で洗浄する。有機層を活性炭で処理し、次いで減圧濃縮およびエタノール添加の繰り返しによって、溶媒をエタノールで置換する。水をそれに20~30℃で添加し、混合物を0~10℃に冷却し、次いで化合物(4)の種結晶をそれに添加して、化合物(4)の結晶を析出させる。混合物を0~10℃で3時間以上撹拌し、水をそれに滴下し、混合物を2時間以上撹拌する。析出した結晶を、水-エタノールで洗浄し、乾燥して、化合物(4)の結晶を取得する。
【0131】
活性炭での処理方法は、活性炭を反応器に添加し、混合物を撹拌して濾過するか、または反応溶液を活性炭を含有するフィルターを通すこと;および次いで不溶物を酢酸エチルで洗浄することの方法を含む。
【0132】
このようにして、化合物(4)を高純度(例えば、98%以上の純度)で取得することができる。
【0133】
工程3bにおいて得られる化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩は、以下の工程4~7によって、医薬的に有用なN-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド)に誘導することができる。
工程4:化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を脱塩に供し、次いで生じた化合物をメタンスルホニル化試薬で、化合物(6)を得る工程;
工程5:化合物(6)を(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸を反応させて、化合物(7)を得る工程;
工程6:化合物(7)を脱保護反応に供して、化合物(8)の塩酸塩を得る工程;および
工程7:化合物(8)の塩酸塩を、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸との縮合反応に供して、化合物(I)を得る工程。
【0134】
工程4
この工程においては、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を脱塩に供し、次いで生じた化合物をメタンスルホニル化試薬と反応させることによって、化合物(6)を得ることができる。
【0135】
該反応は、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を、溶媒中、塩基で脱塩することによって遊離体に変換し、次いで該遊離体を、塩基の存在下でメタンスルホニル化試薬と反応させることによって行う。
【0136】
化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩は、好ましくは(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(5a))N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩である。
【0137】
遊離体への変換に使用する塩基の例は、無機塩基類を含む。それらの中でも、好ましいのは、炭酸ナトリウムである。
【0138】
メタンスルホニル化試薬の例は、メタンスルホニルクロリド等を含む。メタンスルホニル化試薬は、市販品であり得る。
【0139】
メタンスルホニル化試薬の使用量は、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩1モルあたり、一般的には1.0~3.0モル、好ましくは1.3~1.5モルである。
【0140】
塩基の例は、有機塩基類を含む。それらの中でも、好ましいのは、トリエチルアミンである。
【0141】
塩基の使用量は、化合物(5)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩1モルあたり、一般的には1.5~4.0モル、好ましくは1.9~2.1モルである。
【0142】
溶媒の例は、エステル類;芳香族炭化水素類;アミド類等を含む。それらの中でも、好ましいのは、酢酸エチルとトルエンの混合溶媒である。
【0143】
反応は、一般的には-10~15℃で、好ましくは-2~8℃で行う。反応時間は、一般的には約30分~約6時間、好ましくは約1時間~約2時間である。
【0144】
反応終了後、相分離、濃縮などの通常の後処理を行う。次いで、n-ヘプタンなどの飽和炭化水素の添加によって、化合物(6)を析出させる。必要により、トルエンなどの芳香族炭化水素およびn-ヘプタンなどの飽和炭化水素から、化合物(6)を再結晶化してもよい。
【0145】
このようにして、化合物(6)の結晶を取得することができる。
【0146】
工程5
この工程においては、化合物(6)を(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸と反応させることによって、化合物(7)を得ることができる。
【0147】
該反応は、化合物(6)を、溶媒中、パラジウム触媒、ホスフィン配位子および塩基の存在下で(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸と反応させることによって行う。
【0148】
化合物(6)は、好ましくは(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-[(メタンスルホニル)アミノ]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(6a))である。
【0149】
(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸は、市販品であり得る。
【0150】
(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸の使用量は、化合物(6)1モルあたり、一般的には1.0~3.0モル、好ましくは1.1~1.3モルである。
【0151】
パラジウム触媒の例は、Pd炭素粉末、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン(Pd(m-Crophos)Cl2)、酢酸パラジウム(II)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンパラジウム(II)クロリド等を含む。パラジウム触媒は、好ましくはジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン(Pd(m-Crophos)Cl2)またはPd炭素粉末、特に好ましくは10%Pd炭素粉末(例えばPE-TYPE、N.E.CHEMCAT製)である。
【0152】
パラジウム触媒の使用量は触媒量であり、具体的には、化合物(6)1モルあたり、一般的には0.01~2.00モル%、好ましくは0.08~0.12モル%である。
【0153】
ホスフィン配位子の例は、Xphos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル)、Xantphos(4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン)等を含む。ホスフィン配位子は、好ましくはXphos(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル)である。
【0154】
ホスフィン配位子の使用量は触媒量であり、具体的には、化合物(6)1モルあたり、一般的には0.02~4.00モル%、好ましくは0.16~0.24モル%である。
【0155】
塩基の例は、有機塩基類および無機塩基類を含む。塩基は、好ましくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンまたは水酸化ナトリウム、特に好ましくは水酸化ナトリウムである。
【0156】
塩基の使用量は、化合物(6)1モルあたり、一般的には1.0~3.0モル、好ましくは1.4~1.6モルである。
【0157】
溶媒は、好ましくはエーテル類、またはエーテルおよび水の混合物、より好ましくは水と1,2-ジメトキシエタンの混合物である。
【0158】
反応は、一般的には70~83℃、好ましくは75~81℃で行う。反応時間は、一般的には約1時間~約12時間、好ましくは約3時間~約6時間である。
【0159】
反応終了後、酢酸エチルおよび水を反応混合物に添加し、次いで不溶物を濾去する。濾液をN-アセチルシステインおよびNaClで処理し、溶媒を濃縮によってエタノールで置換する。水を60~70℃でそれに添加し、混合物を20~30℃に冷却して、化合物(7)の結晶を析出させる。析出した結晶を、エタノール-水で洗浄し、乾燥する。このようにして、化合物(7)の結晶を取得することができる。
【0160】
工程6
この工程においては、化合物(7)を脱保護反応に供することによって、化合物(8)の塩酸塩を得ることができる。
【0161】
化合物(7)は、好ましくは(2S,3S)-3-[(メタンスルホニル)アミノ]-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(7a))である。この場合において、反応は、化合物(7)を酸と溶媒中で反応させることによって行う。
【0162】
酸の例は、塩化水素等を含む。塩化水素は、好ましくは有機溶媒中の溶液として、より好ましくは2-プロパノールまたは酢酸エチル中の塩化水素の溶液として、特に好ましくは2-プロパノール中の塩化水素の溶液として使用する。
【0163】
溶媒の例は、アルコール類、エステル類、水等を含む。溶媒は、好ましくはアルコール類、エステル類、またはそれらの混合溶媒、より好ましくはエタノール、酢酸エチル、2-プロパノール、またはそれらの混合溶媒、特に好ましくは2-プロパノールである。
【0164】
反応は、一般的には40~80℃、好ましくは50~70℃で行う。反応時間は、一般的には約1時間~約12時間、好ましくは約2時間~約8時間である。
【0165】
反応終了後、n-ヘプタンを40~80℃で反応混合物に添加して結晶を析出させ、混合物を1時間以上かけて0~10℃に冷却し、2-プロパノール/n-ヘプタンまたはエタノール/n-ヘプタン、好ましくは2-プロパノール/n-ヘプタンで結晶を洗浄する。このようにして、化合物(8)の塩酸塩の結晶を取得することができる。
【0166】
工程7
この工程においては、化合物(8)の塩酸塩を2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸との縮合反応に供することによって、化合物(I)を得ることができる。
【0167】
縮合反応は、化合物(8)の塩酸塩を、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸と縮合試薬および塩基の存在下で反応させることによって行う。
【0168】
2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸は、市販品であり得る。
【0169】
2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸の使用量は、化合物(8)の塩酸塩1モルあたり、一般的には1.5~5.0モル、好ましくは2.4~2.6モルである。
【0170】
塩基の例は、有機塩基類および無機塩基類を含む。塩基は、好ましくはトリエチルアミンである。
【0171】
塩基の使用量は、化合物(8)の塩酸塩1モルあたり、一般的には1.5~7.5モル、好ましくは3.6~3.8モルである。
【0172】
縮合試薬の例は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSCD)などのカルボジイミド縮合試薬;4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド-n-水和物(DMT-MM)などのトリアジン縮合試薬;1,1-カルボニルジイミダゾール(CDI)などの炭酸エステル縮合試薬;ジフェニルホスホリルアジド(DPPA);ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリスジメチルアミノホスホニウム塩(BOP試薬);2-クロロ-1-メチル-ピリジニウムヨージド(向山試薬);塩化チオニル;ギ酸クロロエチルなどのハロギ酸低級アルキル;O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム ヘキサフルオロホスホレート(HATU);硫酸;それらの組合せ等を含む。カルボジイミド縮合試薬を使用するとき、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)一水和物、N-ヒドロキシスクシンイミド(HOSu)、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(HONB)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)などの添加剤を反応系に添加してもよい。縮合試薬は、好ましくはCDIまたはWSCDである。縮合試薬は、特に好ましくはCDIである。添加剤は、好ましくはHOBt一水和物またはHONBである。添加剤は、特に好ましくはHONBである。
【0173】
縮合試薬の使用量は、化合物(8)の塩酸塩1モルあたり、一般的には1.5~5.0モル、好ましくは2.4~2.6モルである。
【0174】
添加剤の使用量は、化合物(8)の塩酸塩1モルあたり、一般的には1.5~5.0モル、好ましくは2.2~2.4モルである。
【0175】
反応は、一般的には溶媒中で行う。溶媒の例は、アミド類等を含む。溶媒は、好ましくはアミド類、より好ましくはジメチルアセトアミドである。
【0176】
反応は、一般的には20~50℃で、好ましくは32~42℃で行う。反応時間は、一般的には約2時間~約24時間、好ましくは約4時間~約8時間である。
【0177】
反応終了後、水を反応混合物に添加し、pHを水酸化ナトリウムでアルカリ性に調整し、混合物を加熱下撹拌する。次いで、pHを室温で塩酸で中性に調整し、水をそれに添加して、化合物(I)の結晶を析出させる。必要により、種結晶(例えば、セスキ水和物の種結晶)を、それに添加してもよい。例えば、水を混合物に15~45℃で添加し、pHを水酸化ナトリウムで13.0~14.0に調整し、混合物を40~60℃で撹拌する。次いで、混合物を20~40℃に冷却し、pHを塩酸で7.5~8.5に調整する。次いで、水をそれに55~65℃で滴下し、種結晶をそれに添加し、混合物を55~65℃で撹拌する。次いで、水をそれに55~65℃で滴下し、混合物を、0.5時間以上かけて45~55℃に冷却し、次いで1.5時間以上かけて30℃以下に冷却して、化合物(I)の結晶を析出させる。析出した結晶をエタノール-水で洗浄して、化合物(I)の結晶を取得する。必要により、結晶をエタノール-水-トリエチルアミン中で撹拌するか、またはエタノール-水から再結晶化してもよい。必要により、化合物(I)の溶液を、活性炭を有するフィルターを通した後、エタノール-水で再結晶化してもよい。
【0178】
このようにして、化合物(I)の結晶を、高純度(例えば、99%以上の純度)で取得することができる。
【0179】
化合物(I)は、水和物、非水和物または溶媒和物であり得る。化合物(I)は、好ましくは水和物(好ましくはセスキ水和物)である。
【実施例】
【0180】
本発明を、実施例を参照することによって以下において詳細に説明する。しかしながら、実施例は本発明を限定せず、実施例は本発明の範囲内で修飾してもよい。
【0181】
以下の実施例における「室温」は、一般的には、約10℃~約35℃である。混合溶媒についての比は、他に特定しない限り、体積混合比であり、%は、他に特定しない限り、重量%を意味する。
【0182】
実施例におけるカラムクロマトグラフィーによる溶出は、他に特定しない限り、TLC(薄層クロマトグラフィー)による観察下で行った。TLCによる観察においては、メルク社製60F254をTLCプレートとして使用し、カラムクロマトグラフィーにおける溶出溶媒として使用する溶媒を溶離液として使用し、UV検出器を検出用に使用した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにおいては、NHの表示は、アミノプロピルシラン結合シリカゲルの使用を意味し、DIOLの表示は、3-(2,3-ジヒドロキシプロポキシ)プロピルシラン結合シリカゲルの使用を意味する。分取HPLC(高速液体クロマトグラフィー)においては、C18の表示は、オクタデシル結合シリカゲルの使用を意味する。溶出溶媒についての比は、他に特定しない限り、体積混合比である。参考例および実施例において記載する反応および処理操作における温度は、±5℃の範囲の変動を含む。
【0183】
1H NMRは、フーリエ変換NMRによって測定した。1H NMRの分析については、ACD/SpecManager(商品名)ソフトウェア等を使用した。ブロードなプロトンピークを有する水酸基、アミノ基等のピークは、記載しない場合がある。
【0184】
以下の実施例においては、以下の略語を使用する。
M:モル濃度
N:規定
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
【0185】
実験例1
キラル配位子のスクリーニング
本発明の不斉還元的アミノ化反応に最も適した金属錯体を特定するために、キラル配位子をスクリーニングした。
【0186】
[RuCl2(ベンゼン)]2(0.0010g)、キラル配位子、およびサリチル酸アンモニウムまたは酢酸アンモニウム(5.0当量)を、反応器に仕込んだ。次いで、2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a))(0.7445g)/メタノール(25ml)の溶液を調製し、該溶液の1mlをそれに添加した。混合物を、窒素雰囲気下、50℃で約1時間撹拌し、次いで5.0MPa(G)の水素圧下、80℃で16時間撹拌して、所望の化合物(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(5a))を含有する混合物を得た。
【0187】
得られた化合物(5a)を含有する混合物を以下の条件下のキラルHPLC分析に供し、シス体の収率(HPLCアミン面積%)、アミン選択性および鏡像体過剰率(シスの%ee)を計算した。結果を表4に示す。
【0188】
略語は、以下のとおりである。
(2S,3S)-体:(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(5a))
(2R,3R)-体:(2R,3R)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
トランス体:トランス-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【0189】
(HPLC分析条件)
シス体の収率(HPLCアミン面積%)およびアミン選択性
カラム:YMC-Pack C18 Pro RS、5μm、4.6×150mm
移動相: A溶液)CH3CN
B溶液)0.03M K2HPO4
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10mL
分析時間:30分
勾配プログラム:
【0190】
【0191】
保持時間:
(2S,3S)-体 15.02分
トランス体 15.78分
【0192】
鏡像体過剰率(シスの%ee)
シスの%ee={[(2R,3R)-体のHPLC面積 - (2S,3S)-体のHPLC面積]/[(2R,3R)-体のHPLC面積 + (2S,3S)-体のHPLC面積]}×100
【0193】
(R,R)-iPr-DUPHOSまたは(R)-PHANEPHOSの場合
カラム:Chiralpak(ダイセル)、5μm、4.6×150mm
移動相: A溶液)0.01M K2HPO4
B溶液)CH3CN
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10μL
分析時間:20分
勾配プログラム:
【0194】
【0195】
保持時間:
(2S,3S)-体 6.48分
(2R,3R)-体 15.77分
【0196】
(R,R)-iPr-DUPHOSおよび(R)-PHANEPHOS以外の場合
カラム:Chiralpak IE(ダイセル)、5μm、4.6×250mm
移動相: A溶液)0.01M K2HPO4
B溶液)CH3CN
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10μL
分析時間:30分
勾配プログラム:
【0197】
【0198】
保持時間:
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(立体異性体混合物) 6.90分
(2S,3S)-体 8.84分
(2R,3R)-体 9.95分
化合物(4a) 11.02分
【0199】
【0200】
表4から、これらの中でも、BINAP、ホスフィン、フェロセンおよびシクロファンキラル配位子が良好な反応効率および高いエナンチオ選択性を有することが示された。
【0201】
実験例2-1
金属触媒のスクリーニング
本発明の不斉還元的アミノ化反応に最も適した金属錯体を特定するために、金属触媒をスクリーニングした。
【0202】
金属触媒(0.0010g)およびキラル配位子(1.1当量)を、反応器に仕込んだ。次いで、2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a))(0.2978g)/メタノール(5ml)の溶液を調製し、該溶液の0.5mlをそれに添加した。次いで、NH4OAc(0.0308g)/メタノール(5ml)の溶液を調製し、該溶液の0.5mlをそれに添加し、混合物を30分間撹拌した。混合物を5.0MPa(G)の水素圧下、80℃で17時間撹拌して、所望の化合物(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(5a))を含有する混合物を得た。
【0203】
得られた化合物(5a)を含有する混合物を以下の条件下のキラルHPLC分析に供し、シス体の収率(HPLCアミン面積%)および鏡像体過剰率(シスの%ee)を計算した。結果を表7に示す。
【0204】
略語は、以下のとおりである。
(2S,3S)-体:(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(=化合物(5a))
(2R,3R)-体:(2R,3R)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
トランス体:トランス-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【0205】
(HPLC分析条件)
シス体の収率(HPLCアミン面積%)
カラム:YMC-Pack C18 Pro RS、5μm、4.6×150mm
移動相: A溶液)0.03M K2HPO4
B溶液)CH3CN
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10mL
分析時間:30分
勾配プログラム:
【0206】
【0207】
保持時間:
(2S,3S)-体 15.02分
トランス体 15.78分
【0208】
鏡像体過剰率(シスの%ee)
シスの%ee={[(2R,3R)-体のHPLC面積 - (2S,3S)-体のHPLC面積]/[(2R,3R)-体のHPLC面積 + (2S,3S)-体のHPLC面積]}×100
カラム:Chiralpak IE(ダイセル)、5μm、4.6×250mm
移動相: A溶液)0.01M K2HPO4
B溶液)CH3CN
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10μL
分析時間:30分
勾配プログラム:
【0209】
【0210】
保持時間:
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(立体異性体混合物) 6.90分
(2S,3S)-体 8.84分
(2R,3R)-体 9.95分
化合物(4a) 11.02分
【0211】
【0212】
表7から、ロジウムおよびイリジウム金属触媒が、種々のキラル配位子と組み合わせて良好な反応効率および高いエナンチオ選択性を有することが示された。
【0213】
実験例2-2
金属触媒のスクリーニング
本発明の不斉還元的アミノ化反応に最も適した金属錯体を特定するために、ルテニウム金属触媒をスクリーニングした。
【0214】
[RuCl(p-シメン)((R)-キシリル-binap)]ClおよびRuCl
2
((R)-キシリル-binap)(dmf)n
ルテニウム錯体を反応器に仕込み、次いで2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a)、1.1911g)/メタノール(10ml)の溶液を調製し、該溶液の0.5mlを反応器に添加した。次いで、NH4OAc(1.2333g)/メタノール(10ml)の溶液を調製し、該溶液の0.5mlを反応器に添加した。混合物を撹拌し、次いで5.0MPa(G)の水素圧下、80℃で約18時間撹拌して、(2S,3S)-3-アミノ-2-(3-ブロモ-2-フルオロベンジル)ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(5a))を含有する混合物を得た。
【0215】
(NH
2
Me
2
)[(RuCl((R)-キシリル-binap))
2
(η-Cl)
3
]、Ru(TFA)
2
((R)-キシリル-binap)およびRu(OAc)
2
((R)-キシリル-binap)
ルテニウム錯体を反応器に仕込んだ。次いで、化合物(4a)(0.5956g)/メタノール(5ml)の溶液を調製し、該溶液の0.5mlをそれに添加した。次いで、NH4OAc(0.6166g)/メタノール(5ml)の溶液を調製し、該溶液の0.5mlをそれに添加した。混合物を、撹拌し、次いで5.0MPa(G)の水素圧下、80℃で撹拌して、化合物(5a)を含有する混合物を得た。
【0216】
得られた化合物(5a)を含有する混合物を以下の条件下のHPLC分析に供し、反応の変換率、シス体/トランス体の形成比(シス/トランス)および鏡像体過剰率(シスの%ee)を計算した。結果を表10に示す。
【0217】
略語は、以下のとおりである。
(2S,3S)-体:(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(5a))
(2R,3R)-体:(2R,3R)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
トランス体:トランス-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル
【0218】
(HPLC分析条件)
変換率およびシス体/トランス体の形成比(シス/トランス)
シス/トランス=(シス体のHPLC面積)/[(シス体のHPLC面積)+(トランス体のHPLC面積)]×100
カラム:YMC-Pack C18 Pro RS、5μm、4.6×150mm
移動相: A溶液)0.03M K2HPO4
B溶液)CH3CN
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10mL
分析時間:30分
勾配プログラム:
【0219】
【0220】
保持時間:
(2S,3S)-体 15.02分
トランス体 15.78分
【0221】
鏡像体過剰率(シスの%ee)
シスの%ee={[(2R,3R)-体のHPLC面積 - (2S,3S)-体のHPLC面積]/[(2R,3R)-体のHPLC面積 + (2S,3S)-体のHPLC面積]}×100
カラム:Chiralpak IE(ダイセル)、5μm、4.6×250mm
移動相: A溶液)0.01M K2HPO4
B溶液)CH3CN
流量:1.0mL/分
カラム温度:25℃
検出:UV 220nm
注入:10μL
分析時間:30分
勾配プログラム:
【0222】
【0223】
保持時間:
(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-ヒドロキシピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル 6.90分
(2S,3S)-体 8.44分
(2R,3R)-体 9.55分
化合物(4a) 10.89分
トランス体 11.02分
【0224】
【0225】
表10から、種々のルテニウム金属が良好な反応効率および高いエナンチオ選択性を有することが、示された。
【0226】
実施例1
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩(化合物(3)のヘミ酒石酸塩)の合成
3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(2a)、6.91g)およびトルエン(45ml)を反応器に仕込み、次いでピロリジン(3.32g)を40℃以下でそれに滴下し、混合物を10分間撹拌した。反応溶液を25mlに濃縮し、濃縮液にトルエン(25ml)を添加し、溶液を25mlに濃縮した。再度、濃縮液にトルエン(25ml)を添加し、溶液を25mlに濃縮した。得られた濃縮液にアセトニトリル(40ml)を添加し、次いでテトラブチルアンモニウムヨージド(0.689g)をそれに添加した。混合物の温度を約30℃で維持し、1-ブロモ-3-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン(化合物(1)、5.00g)のアセトニトリル溶液(7.5ml)をそれに滴下した。使用した滴下ロートをアセトニトリル(2.5ml)で洗浄し、洗浄液をそれに添加し、混合物を40℃で1時間撹拌した。次いで、混合物を15~25℃に冷却し、pHを2M塩酸で2.0~3.0に調整した。酢酸エチル(40ml)をそれに添加し、混合物を静置し、水層を分離で除去して、有機層を得た。得られた有機層に10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(35ml)を添加し、混合物を静置し、水層を分離で除去して、有機層を得た。得られた有機層に10%食塩水(35ml)を添加し、混合物を静置した。水層を分離で除去し、得られた有機層を15mlに濃縮した。
【0227】
濃縮液に2-プロパノール(40ml)を添加し、混合物を15mlに濃縮した。再度、濃縮液に2-プロパノール(40ml)を添加し、混合物を15mlに濃縮した。濃縮液を50℃に加熱し、その温度を維持しながら、5M塩化水素/2-プロパノール(15ml)をそれに滴下して、結晶を析出させた。結晶化が生じた溶液を、50℃で1時間撹拌した。酢酸エチル(50ml)を50℃でゆっくりそれに添加し、混合物を50℃で1時間撹拌した。混合物を、5℃にゆっくり冷却して、5℃で1時間撹拌し、結晶を濾取して、酢酸エチル(15ml)で洗浄した。このようにして得た化合物(3)の塩酸塩の湿結晶と、トルエン(40ml)を反応器中に入れ、混合物を5℃に冷却した。トリエチルアミン(2.27g)を5℃でそれに滴下した。混合物を5℃で1時間撹拌し、不溶物を濾去し、トルエン(25ml)で洗浄し、洗浄液を濾液と合わせた。
【0228】
メタノール(50ml)およびDL-酒石酸(1.40g)を別の反応器に仕込み、混合物を25℃で30分間撹拌した。上記濾液を25℃で2時間以上かけてそれに滴下して、結晶を析出させた。使用した滴下ロートをトルエン(5ml)で洗浄し、洗浄液を上記混合物と合わせた。混合物を、25℃で1時間撹拌し、撹拌しながら5℃にゆっくり冷却して、5℃で3時間以上撹拌した。析出した結晶を濾取し、5℃に冷却したトルエン-メタノール=2:1(15ml)溶液で洗浄し、減圧乾燥して、標題の化合物(3)のヘミ酒石酸塩の結晶(3.35g)(98.0HPLC面積%)を得た。
【0229】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ=7.56(t、J=7.3Hz、1H)、7.34(t、J=7.3Hz、1H)、7.10(t、J=7.3Hz、1H)、4.16(m、1H)、3.38(dd、J=4.3、9.3Hz、1H)、3.22(m、1H)、3.12-2.99(m、2H)、2.70(dd、J=9.3、14.2Hz、1H)、2.47-2.17(m、2H)
【0230】
(HPLC分析条件)
カラム:YMC-Pack Pro C18(株式会社ワイエムシー)、カラムサイズ4.6×150mm、粒子サイズ5μm
カラム温度:40℃
移動相: A溶液) 0.02M K2HPO4(pH7.0):CH3CN=70:30
B溶液) 0.02M K2HPO4(pH7.0):CH3CN=30:70
勾配プログラム:
【0231】
【0232】
流量:1.0ml/分
保持時間:
化合物(1) 15.7分
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a)) 16.5分
化合物(3) 7.7分
DL-酒石酸 1.4分
【0233】
実施例2
2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a))の合成
化合物(3)のヘミ酒石酸塩(10.0g)およびアセトニトリル(60ml)を反応器に仕込み、トリエチルアミン(6.4g)を、温度を25℃で維持しながらそれに滴下した。Boc2O(6.3g)およびアセトニトリル(15ml)を別の反応器に仕込み、混合物を25℃で撹拌し、上記化合物(3)の溶液に滴下し、使用した滴下ロートをアセトニトリル(5ml)で洗浄し、洗浄液を反応器に添加した。このようにして得た混合物を25℃で1時間撹拌した。10%クエン酸水溶液(50ml)および酢酸エチル(80ml)をそれに添加し、混合物を25℃で静置し、水層を分離で除去した。得られた有機層に5%食塩水(50ml)を添加し、混合物を25℃で静置し、水層を分離で除去して、有機層を得た。得られた有機層に活性炭SHIRASAGI A(大阪ガスケミカル)(1.0g)を添加し、混合物を25℃で30分間以上撹拌した。不溶物を濾去し、酢酸エチル(30ml)で洗浄し、洗浄液を濾液と合わせた。濾液を40℃以下で30mlの体積に濃縮した。エタノール(100ml)をそれに添加し、混合物を40℃以下で30mlに濃縮した。エタノール(100ml)を濃縮液に再度添加し、混合物を40℃以下で30mlに濃縮した。エタノール(20ml)を25℃で濃縮液に添加し、水(20ml)を25℃でそれに滴下した。混合物を5℃に冷却し、化合物(4a)の種結晶(5mg)を5℃でそれに添加し、結晶化の確認後、混合物を5℃で6時間以上撹拌した。水(50ml)をそれに滴下し、混合物を5℃で1時間以上撹拌した。5℃でさらに2時間撹拌した後、結晶を濾取し、3℃に冷却したエタノール-水=1:2(30ml)で洗浄した。液切りした湿結晶を25℃以下で減圧乾燥して、標題の化合物(4a)の湿結晶(10.73g)(99.5HPLC面積%)を得た。化合物(4a)の種結晶としては、上記反応で、種結晶の添加の前に自然に析出した結晶を使用した。
【0234】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ=7.58(t、J=7.0Hz、1H)、7.20-7.04(m、2H)、4.12(t、J=6.2Hz、1H)、3.76(m、1H)、3.35-3.05(m、2H)、2.97(m、1H)、2.61(m、1H)、2.34(m、1H)、1.29(br s、9H)
【0235】
(HPLC分析条件)
カラム:YMC-Pack Pro C18(株式会社ワイエムシー)、カラムサイズ4.6×150mm、粒子サイズ5μm
カラム温度:40℃
移動相: A溶液) 0.02M K2HPO4(pH7.0):CH3CN=70:30
B溶液) 0.02M K2HPO4(pH7.0):CH3CN=30:70
勾配プログラム:
【0236】
【0237】
流量:1.0ml/分
保持時間:
化合物(4a) 16.5分
化合物(3) 7.7分
DL-酒石酸 1.4分
【0238】
実施例3
(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩(化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩)の合成
Ru(OAc)2{(R)-キシリル-binap}(0.298g)、化合物(4a)(23.24g)、塩化アンモニウム(13.36g)および酢酸アンモニウム(4.81g)を、オートクレーブに仕込んだ。混合物を、撹拌下、減圧脱気および窒素復元の操作に7回供した。メタノール(232ml)および水(2.87ml)を別の反応器に仕込み、混合物を、撹拌下、減圧脱気および窒素復元の操作に5回供した。得られた、脱気メタノール-水の溶液を、20℃で反応前の混合物に添加した。混合物の撹拌を停止した後、混合物を、0.10MPa(G)への水素加圧および放圧の操作に20℃で10回供した。20℃での0.32МPa(G)への水素加圧の後、撹拌を再開し、混合物を80~85℃に加熱した。水素圧を80~85℃で0.90±0.05МPa(G)に調整し、混合物を24時間撹拌した。反応溶液を50℃以下の外温で116mlに濃縮した。濃縮液を25℃に冷却し、1M水酸化ナトリウム水溶液(116ml)および酢酸エチル(116ml)をそれに添加した。反応溶液を50℃以下の外温で232mlに濃縮した。酢酸エチル(116ml)をそれに添加し、混合物を50℃以下の外温で232mlに濃縮した。酢酸エチル(116ml)をそれに再度添加し、混合物を50℃以下の外温で232mlに濃縮した。酢酸エチル(47ml)をそれに添加し、混合物を25℃で静置し、水層を分離で除去した。得られた有機層を50℃以下の外温で70mlに濃縮した。エタノール(116ml)をそれに添加し、有機層を50℃以下の外温で70mlに濃縮した。エタノール(116ml)を濃縮液に再度添加し、有機層を50℃以下の外温で70mlに濃縮した。エタノール(163ml)を得られた濃縮液に添加し、混合物を70℃に加熱した。N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン(19.94g)を70℃でそれに添加し、使用した反応器をエタノール(23ml)で洗浄し、洗浄液をそれに添加した。混合物を70℃で30分間撹拌し、25℃にゆっくり冷却し、25℃で18時間以上撹拌した。これらの操作によって得られた結晶を濾取し、エタノール(186ml)で洗浄し、50℃で減圧乾燥して、標題の化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩の結晶(31.00g)(99.1HPLC面積%)を得た。
【0239】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(500MHz、DMSO-d6、回転異性体の混合物として観察)δ7.63-7.45(m、3H)、7.30-6.94(m、9H)、4.07(bs、1H)、3.59(t、J=6.0Hz、1H)、3.54-3.40(m、1H)、3.01-2.72(m、3H)、2.48-2.42(m、1H)、2.34(s、3H)、2.15-2.02(m、1H)、1.96-1.78(m、1H)、1.20(s、9H)、0.99。 。
【0240】
(HPLC分析条件)
カラム:YMC-Pack Pro C18 RS(株式会社ワイエムシー)、カラムサイズ4.6×150mm、粒子サイズ5μm
カラム温度:25℃
移動相: A溶液)0.03M K2HPO4水溶液
B溶液)アセトニトリル
勾配プログラム:
【0241】
【0242】
流量:1.0ml/分
保持時間:
N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン 9.77分
化合物(5a) 15.02分
【0243】
実施例4
(2S,3S)-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-[(メタンスルホニル)アミノ]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(6a))の合成
化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩(60.0g)にトルエン(600ml)を添加し、混合物を40~50℃に加熱した。炭酸ナトリウム水溶液(900ml)をそれに添加し、混合物を撹拌し、溶液のpHを9以上に調整して、化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩を溶解させた。溶液を静置し、水(600ml)を分離した有機層に添加した。混合物を撹拌し、再度静置し、有機層を分離した。得られた有機層を50℃以下の外温で約180mlに減圧濃縮し、トルエン(300ml)をそれに添加し、混合物を180mlに減圧濃縮した。酢酸エチル(420ml)を20~30℃で得られた濃縮液に添加し、トリエチルアミン(17.53g)を-2~8℃でそれに滴下した。使用した滴下ロートを酢酸エチル(30ml)で洗浄し、洗浄液をそれに添加した。メタンスルホニルクロリド(13.89g)を-2~8℃でそれに滴下し、使用した滴下ロートを酢酸エチル(30ml)で洗浄し、洗浄液をそれに添加した。混合物を-2~8℃で1時間撹拌し、0.5M塩酸(600ml)を30℃以下でそれに滴下し、混合物を15分以上撹拌し、静置した。有機層を分離し、5%炭酸水素ナトリウム水溶液(600ml)をそれに添加し、混合物を20~30℃で15分間撹拌し、静置した。有機層を分離し、5%塩化ナトリウム水溶液(600ml)を20~30℃でそれに添加し、先の工程と同様に、混合物を撹拌し、静置した。有機層を分離して、50℃以下の外温で約240mlに減圧濃縮した。混合物を、得られた濃縮液へのトルエン(240ml)の添加、および約240mlへの減圧濃縮の操作に2回供した。トルエン(120ml)を45~55℃でそれに添加し、n-ヘプタン(120ml)を45~55℃で30分以上かけてそれに滴下した。
【0244】
結晶の析出の確認後、混合物を、45~55℃で2時間以上撹拌した。n-ヘプタン(240ml)を30分以上かけてそれに滴下し、混合物を1時間以上、次いで0~10℃で1時間以上撹拌した。析出した結晶を濾取し、0~10℃に冷却したトルエン/n-ヘプタン(1:1)溶液(120ml)および0~10℃に冷却したn-ヘプタン-エタノール(10:1)溶液(120ml)で洗浄した。結晶を減圧乾燥して、標題の化合物(6a)の結晶(34.18g)を得た。
【0245】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ7.61-7.53(2H、m)、7.25-7.19(1H、m)、7.09-7.04(1H、m)、4.14-4.09(1H、m)、3.94-3.84(1H、m)、3.34-3.28(2H、m)、3.01(3H、s)、3.00-2.96(1H、m)、2.44-2.36(1H、m)、2.22-2.13(1H、m)、2.03-1.89(1H、m)、1.00(9H、s)。
【0246】
(HPLC分析条件)
カラム:L-column2 ODS(CERI、日本)、カラムサイズ4.6×100mm、粒子サイズ3μm
カラム温度:おおよそ25℃の一定温度
移動相: A溶液)0.1%リン酸水溶液
B溶液)MeCN
勾配プログラム:
【0247】
【0248】
流量:1.0ml/分
保持時間:
化合物(6a) 約10分
化合物(5a) 約5分
【0249】
実施例5
(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩(化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩)の合成
1)2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-3-オン ヘミ酒石酸塩(化合物(3)のヘミ酒石酸塩)の合成
3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(2a)、830g)およびトルエン(4.8L)を反応器に仕込み、ピロリジン(398g)を40℃以下でそれに滴下し、混合物を12分間撹拌した。反応溶液を3Lに濃縮し、トルエン(3L)を濃縮液に添加し、反応溶液を3Lに濃縮した。再度、トルエン(3L)を濃縮液に添加し、混合物を3Lに濃縮した。アセトニトリル(4.8L)を得られた濃縮液に添加し、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(83g)をそれに添加した。混合物の温度を約30℃で維持し、1-ブロモ-3-(ブロモメチル)-2-フルオロベンゼン(化合物(1)、600g)のアセトニトリル溶液(0.9L)をそれに滴下した。使用した滴下ロートをアセトニトリル(0.3L)で洗浄し、洗浄液をそれに添加し、混合物を35~43℃で1時間撹拌した。次いで、混合物を23℃に冷却し、pHを2M塩酸で2.8に調整した。酢酸エチル(4.8L)をそれに添加し、混合物を静置し、水層を分離で除去して、有機層を得た。10%チオ硫酸ナトリウム水溶液(4.2L)を得られた有機層に添加し、混合物を静置し、水層を分離で除去して、有機層を得た。10%食塩水(4.2L)を得られた有機層に添加し、混合物を静置し、水層を分離で除去し、得られた有機層を1.8Lに濃縮した。
【0250】
2-プロパノール(4.8L)を濃縮液に添加し、混合物を1.8Lに濃縮した。再度、2-プロパノール(4.8L)を濃縮液に添加し、混合物を1.8Lに濃縮した。濃縮液を50℃に加熱し、その温度を維持しながら、5M塩化水素/2-プロパノール(1663g)をそれに滴下して、結晶を析出させた。析出した結晶を含有する混合物を、50℃で6時間撹拌した。酢酸エチル(6.0L)を47~52℃でゆっくりそれに添加し、混合物を52℃で1時間撹拌した。混合物を1℃にゆっくり冷却して、1℃で1時間撹拌し、結晶を濾取して、酢酸エチル(1.8L)で洗浄した。このようにして得た化合物(3)の塩酸塩の湿結晶、およびトルエン(4.8L)を反応器に仕込み、混合物を9℃に冷却した。トリエチルアミン(272g)を、9~10℃でそれに滴下した。混合物を5℃で1.5時間撹拌し、不溶物を濾去し、トルエン(3L)で洗浄し、洗浄液を濾液と合わせた。
【0251】
メタノール(6.0L)およびDL-酒石酸(168g)を別の反応器に仕込み、混合物を24℃で45分間撹拌した。上記濾液を24℃で2時間以上かけてそれに滴下して、結晶を析出させた。使用した滴下ロートをトルエン(0.6L)で洗浄し、洗浄液を上記混合物と合わせた。混合物を25℃で1時間撹拌し、撹拌しながら5℃にゆっくり冷却して、0~5℃で12時間撹拌した。析出した結晶を濾取し、5℃に冷却したトルエン-メタノール=2:1溶液(1.8L)で洗浄し、減圧乾燥して、標題の化合物(3)のヘミ酒石酸塩の結晶(425g)(99.0HPLC面積%)を得た。
【0252】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ=7.56(t、J=7.3Hz、1H)、7.34(t、J=7.3Hz、1H)、7.10(t、J=7.3Hz、1H)、4.16(m、1H)、3.38(dd、J=4.3、9.3Hz、1H)、3.22(m、1H)、3.12-2.99(m、2H)、2.70(dd、J=9.3、14.2Hz、1H)、2.47-2.17(m、2H)
【0253】
2)2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]-3-オキソピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(4a))の合成
1)で得た化合物(3)のヘミ酒石酸塩(400g)、およびアセトニトリル(2.4L)を反応器に仕込み、温度を20~21℃で維持しながら、トリエチルアミン(257g)をそれに滴下した。Boc2O(251g)およびアセトニトリル(0.6L)を別の反応器に仕込み、混合物を25℃で撹拌し、化合物(3)の上記溶液に滴下した。使用した滴下ロートをアセトニトリル(0.2L)で洗浄し、洗浄液を反応器に添加した。このようにして得た混合物を23~28℃で1時間撹拌した。10%クエン酸水溶液(2L)および酢酸エチル(3.2L)をそれに添加し、混合物を15分間撹拌し、45分間静置し、水層を分離で除去した。5%食塩水(2L)を得られた有機層に添加し、混合物を15分間撹拌し、24分間静置し、水層を分離で除去して、有機層を得た。得られた有機層を、3連結Pall SUPRAcap 50 (Pall品番SC050XAK2)を通し、フィルターを酢酸エチル(1.2L)の一部で洗浄した。不溶物を濾去し、酢酸エチル(1.2L)の残りで洗浄し、洗浄液を濾液と合わせた。濾液を55~60℃の外温で濃縮して、体積を1.2Lに調整した。エタノール(4L)をそれに添加し、混合物を60℃の外温で1.2Lに濃縮した。エタノール(4L)を濃縮液に再度添加し、混合物を60℃の外温で1.2Lに濃縮した。エタノール(0.8L)を25℃で濃縮液に添加し、水(0.8L)を26~27℃でそれに滴下した。混合物を8℃に冷却し、化合物(4a)の種結晶(218mg)を8℃でそれに添加した。結晶化の確認後、混合物を0~5℃で7.5時間撹拌した。水(2L)をそれに滴下し、混合物を0~5℃で12.5時間撹拌した。結晶を濾取して、0~6℃に冷却したエタノール-水=1:2(1.2L)で洗浄した。液切りした湿結晶を25℃以下で減圧乾燥して、標題の化合物(4a)の結晶(396g)(99.2HPLC面積%)を得た。化合物(4a)の種結晶としては、上記反応で、種結晶の添加の前に自然に析出した結晶を使用した。
【0254】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ=7.58(t、J=7.0Hz、1H)、7.20-7.04(m、2H)、4.12(t、J=6.2Hz、1H)、3.76(m、1H)、3.35-3.05(m、2H)、2.97(m、1H)、2.61(m、1H)、2.34(m、1H)、1.29(br s、9H)
【0255】
3)(2S,3S)-3-アミノ-2-[(3-ブロモ-2-フルオロフェニル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩(化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩)の合成
Ru(OAc)2{(R)-キシリル-binap}(3.2g)、2)で得た化合物(4a)の結晶(250g)、塩化アンモニウム(143.5g)、酢酸アンモニウム(51.7g)、メタノール(2.5L)および水(125ml)をオートクレーブに仕込み、混合物を、減圧脱気および窒素復元の操作に7回供した。混合物の撹拌を停止した後、混合物を、0.12~0.13MPa(G)への水素加圧および放圧の操作に10回供した。20℃での0.32МPa(G)への水素加圧の後、撹拌を再開し、混合物を80~85℃に加熱した。水素圧を80~85℃で0.90±0.05МPa(G)に調整し、混合物を40時間撹拌した。反応溶液を50℃以下の外温で1.25Lに濃縮した。濃縮液を25℃に冷却し、1M水酸化ナトリウム水溶液(1.25L)および酢酸エチル(1.25L)をそれに添加した。反応溶液を50℃以下の外温で2.5Lに濃縮した。酢酸エチル(1.25L)を濃縮液に添加し、混合物を50℃以下の外温で2.5Lに濃縮した。酢酸エチル(1.25L)を得られた濃縮液に再度添加し、混合物を50℃以下の外温で1.25Lに濃縮した。酢酸エチル(0.5L)をそれに添加し、混合物を15分間撹拌し、24分間静置し、水層を分離で除去した。得られた有機層を50℃以下の外温で0.75Lに濃縮した。エタノール(1.25L)をそれに添加し、有機層を50℃以下の外温で0.75Lに濃縮した。エタノール(1.25L)を濃縮液に再度添加し、有機層を50℃以下の外温で0.75Lに濃縮した。エタノール(1.75L)を得られた濃縮液に添加し、混合物を68℃に加熱した。N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン(214g)を68~69℃でそれに添加し、反応器をエタノール(0.25L)で洗浄し、洗浄液を混合物に添加した。混合物を、75℃で30分間撹拌し、22℃にゆっくり冷却して、22℃で18時間撹拌した。これらの操作によって得た結晶を濾取し、エタノール(186ml)で洗浄し、50℃で減圧乾燥して、標題の化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩の結晶(305g)(99.6HPLC面積%)を得た。
【0256】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(500MHz、DMSO-d6、回転異性体の混合物として観察) δ7.63-7.45(m、3H)、7.30-6.94(m、9H)、4.07(bs、1H)、3.59(t、J=6.0Hz、1H)、3.54-3.40(m、1H)、3.38-3.17(m、1H)、3.01-2.72(m、3H)、2.48-2.42(m、1H)、2.34(s、3H)、2.15-2.02(m、1H)、1.96-1.78(m、1H)、1.20(s、9H)、0.99。
【0257】
(HPLC分析条件)
カラム:YMC-Pack Pro C18 RS(株式会社ワイエムシー)、カラムサイズ4.6×150mm、粒子サイズ5μm
カラム温度:25℃
移動相: A溶液)0.03M K2HPO4水溶液
B溶液)アセトニトリル
勾配プログラム:
【0258】
【0259】
流量:1.0ml/分
保持時間:
N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン 9.77分
化合物(5a) 15.02分
【0260】
このようにして得た化合物(5a)のN-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩の、化合物(1)に対する収率は、約33.1%であった。
【0261】
参考例1
(2S,3S)-3-[(メタンスルホニル)アミノ]-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-1-カルボン酸tert-ブチル(化合物(7a))の合成
反応器中で、1,2-ジメトキシエタン(225ml)、水(135ml)および水酸化ナトリウム(3.99g)に、化合物(6a)の結晶(30g)および(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン酸(12.6g)を25℃で添加した。10%Pd炭素粉末(PE-TYPE、N.E.CHEMCAT製)(179.3mg)およびXphos(63.4mg)をそれに添加し、混合物を減圧脱気に供し、減圧を窒素で解除した。得られた混合物を73~83℃で3時間以上撹拌し、酢酸エチル(330ml)および水(270ml)を45~55℃で添加した。不溶物を25℃で濾去し、酢酸エチル(60ml)および水(60ml)で順に洗浄した。N-アセチルシステイン(5.42g)およびNaCl(19.5g)を25℃で濾液に添加し、混合物を20~30℃で30分間以上撹拌した。分離した有機層に、エタノール(300ml)を20~30℃で添加し、混合物を60℃以下の外温で約450mlに減圧濃縮した。次いで、混合物を、40℃以下で撹拌しながらのエタノール(300ml)の添加、および60℃以下の外温での約450mlへの減圧濃縮の操作に2回供した。エタノール(150ml)を40℃以下で得られた濃縮液に添加し、混合物を60~65℃に加熱し、30分以上撹拌した。水(600ml)を60~65℃でそれに滴下し、混合物を30分以上撹拌し、20~30℃で1時間以上撹拌して、結晶を析出させた。析出した結晶を分離し、エタノール/水(1:1)の混合溶媒(150ml)で洗浄し、60℃の外温で減圧乾燥して、標題の化合物(7a)の結晶(31.40g)を得た。
【0262】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ7.61-7.59(1H、m)、7.50-7.45(1H、m)、7.33-7.20(5H、m)、4.16-4.10(1H、m)、3.95-3.85(1H、m)、3.35-3.27(2H、m)、3.01(3H、s)、3.03-2.97(1H、m)、2.50-2.44(1H、m)、2.22-2.14(1H、m)、2.05-1.91(1H、m)、0.96(9H、s)。
【0263】
(HPLC分析条件)
カラム:L-column2 ODS(CERI、日本)、カラムサイズ4.6×100mm、粒子サイズ3μm
カラム温度:おおよそ25℃の一定温度
移動相: A溶液)0.1%リン酸水溶液
B溶液)MeCN
勾配プログラム:
【0264】
【0265】
流量:1.0ml/分
保持時間:
化合物(7a) 約10分
化合物(6a) 約9分
【0266】
参考例2
N-{(2S,3S)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド塩酸塩(化合物(8)の塩酸塩)の合成
化合物(7a)の結晶(5.00g)に2-プロパノール(55ml)を添加し、5~6M塩化水素/2-プロパノール溶液(6.2ml)を15~35℃で撹拌しながらそれに滴下した。混合物を65~75℃に徐々に加熱して、2時間以上撹拌し、n-ヘプタン(82.5ml)を65~75℃でそれに滴下した。混合物を5℃に徐々に冷却し、2時間以上撹拌した。析出した結晶を分離し、2-プロパノール/n-ヘプタン(1:2)の混合溶媒(15ml)で洗浄し、50℃の外温で減圧乾燥して、標題の化合物(8)の塩酸塩の結晶(4.15g)を得た。
【0267】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(300MHz、DMSO-d6) δ9.38(2H、brs)、7.60-7.49(3H、m)、7.36-7.27(4H、m)、4.19-4.11(1H、m)、3.89-3.83(1H、m)、3.47-3.37(1H、m)、3.24-3.09(3H、m)、3.01(3H、s)、2.38-2.25(1H、m)、2.10-2.00(1H、m)。
【0268】
(HPLC分析条件)
カラム:L-column2 ODS(CERI、日本)、カラムサイズ4.6×100mm、粒子サイズ3μm
カラム温度:おおよそ25℃の一定温度
移動相: A溶液)0.1%リン酸水溶液
B溶液)MeCN
勾配プログラム:
【0269】
【0270】
流量:1.0ml/分
保持時間:
化合物(8) 約5分
化合物(7a) 約10分
【0271】
(HPLC分析条件)
カラム:YMC-Pack Pro Cl8 RS(YMC、日本)、カラムサイズ4.6×250mm、粒子サイズ5μm
カラム温度:おおよそ25℃の一定温度
移動相: A溶液)0.1%リン酸水溶液
B溶液)MeCN
勾配プログラム:
【0272】
【0273】
流量:1.0ml/分
保持時間:化合物(8) 約17分
【0274】
参考例3
N-{(2S,3S)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド(化合物(I))セスキ水和物の合成
窒素雰囲気下、ジメチルアセトアミド(30ml)を反応器に仕込み、2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸(3.09g)および1,1-カルボニルジイミダゾール(CDI)(4.82g)を-10~0℃でそれに添加し、反応器をジメチルアセトアミド(1.35ml)で洗浄し、洗浄液を混合物に添加した。次いで、窒素雰囲気下、-10~0℃で、N-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド(4.90g)をそれに添加し、反応器をジメチルアセトアミド(1.35ml)で洗浄し、洗浄液を混合物に添加し、混合物を2時間以上撹拌した。反応器を3回減圧脱気した(混合物を減圧脱気に供し、減圧を窒素で解除した)。化合物(8)の塩酸塩の結晶(5.00g)を窒素雰囲気下、-10~0℃で混合物に添加し、反応器をジメチルアセトアミド(1.35ml)で洗浄し、洗浄液を混合物に添加した。トリエチルアミン(4.45g)を窒素雰囲気下、-10~0℃でそれに滴下し、使用した滴下ロートをジメチルアセトアミド(0.95ml)で洗浄し、洗浄液を混合物に添加した。混合物を窒素雰囲気下、30~40℃(目標約37℃)で4時間以上撹拌し、水(35ml)を15~45℃でそれに滴下した。pHが13.4~13.9になるまで、15~45℃で水酸化ナトリウムをそれに加え、混合物を40~60℃で1時間以上撹拌した。20~40℃で6N塩酸を用いて、pHを7.5~8.5に調整した。混合物を60℃に加熱し、水(DMAc総使用量×1.214-水使用量2vol-6N塩酸使用量-pH再調整に使用したNaOH水溶液および塩酸の量)をそれに滴下した。化合物(I)のセスキ水和物の種結晶(2.5mg)をそれに添加し、混合物を55~65℃で1時間以上撹拌した。水(10ml)を55~65℃でそれに滴下し、混合物を30分以上かけて45~55℃に徐々に冷却し、1時間以上撹拌し、1.5時間かけて20~30℃に冷却して、1時間以上撹拌した。析出した結晶を分離し、エタノール(5ml)と水(15ml)の混合溶媒で2回洗浄して、粗製の化合物(I)のセスキ水和物のプレリスラリー体を得た。エタノール(12.5ml)、水(12.5ml)およびトリエチルアミン(0.30g)を反応器に仕込み、得られた粗製の化合物(I)のセスキ水和物のプレリスラリー体をそれに添加した。混合物を40~50℃で30分間以上撹拌し、水(25ml)を40~50℃で20分以上かけてそれに滴下した。次いで、混合物を40~50℃で1時間以上撹拌し、1時間以上かけて20~30℃に冷却して、1時間以上撹拌した。結晶をエタノール(5ml)と水(15ml)の混合溶媒で2回洗浄し、液切りし、50℃の外温で減圧乾燥して、化合物(I)のセスキ水和物の粗結晶(5.39g)を得た。
【0275】
このようにして得た化合物(I)のセスキ水和物の粗結晶(5g)、エタノール(40ml)および精製水(5.0ml)を反応器に仕込み、混合物を40℃で撹拌して、溶液を得た。該溶液を研磨(polish)濾過に供し、フィルターをエタノール(5.0ml)で洗浄し、洗浄液を濾液に添加した。精製水(40ml)を43~53℃で濾液に滴下し、化合物(I)のセスキ水和物の種結晶(2.5mg)をそれに添加した。結晶の析出の確認後、精製水(54ml)を48~53℃で2時間以上かけてそれに滴下し、混合物を43~53℃で1時間以上撹拌し、60~65℃に加熱して、1時間以上撹拌した。混合物を2時間以上かけて25℃に冷却し、1時間以上撹拌した。結晶を分離し、エタノール(10ml)と精製水(30ml)の混合溶媒で洗浄し、50℃の外温で減圧乾燥し、加湿に供して、標題の化合物(I)のセスキ水和物の結晶(4.90g)(純度99.8%)を得た。
【0276】
(化合物NMRデータ)
1H NMR(400MHz、DMSO-d6) δ7.51-7.21(6H、m)、7.18-7.08(1H、m)、5.00(1H、s)、4.68-4.50(1H、m)、3.99-3.69(3H、m)、3.10-2.95(1H、m)、2.95-2.85(3H、m)、2.70-2.59(1H、m)、2.23-2.11(1H、m)、2.07-1.90(1H、m)、1.19-1.04(6H、m)。。
【0277】
(HPLC分析条件)
カラム:YMC-Pack Pro C18(株式会社ワイエムシー)、カラムサイズ4.6×150mm、粒子サイズ5μm
カラム温度:おおよそ25℃の一定温度
移動相: A溶液)0.01mol/Lリン酸緩衝液(pH3.0):MeCN=7:3
B溶液)MeCN:0.01mol/Lリン酸緩衝液(pH3.0)=4:1
勾配プログラム:
【0278】
【0279】
流量:1.0ml/分
保持時間:化合物(I) 約17分
カラム:CHIRALPAK IE-3(ダイセル)、カラムサイズ4.6×150mm、粒子サイズ3μm
カラム温度:おおよそ35℃の一定温度
移動相: A溶液)0.1%リン酸水溶液:MeCN:THF=70:25:5
勾配プログラム:
【0280】
【0281】
流量:1.0ml/分
保持時間:
化合物(I) 約12分
N-{(2R,3R)-1-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロパノイル)-2-[(2,3’,5’-トリフルオロ[1,1’-ビフェニル]-3-イル)メチル]ピロリジン-3-イル}メタンスルホンアミド(化合物(I)のエナンチオマー) 約14分
【産業上の利用可能性】
【0282】
本発明の製造方法によれば、化合物(5)を、工業生産に適した方法によって、N-(4-メチルベンゼン-1-スルホニル)-L-フェニルアラニン塩として得ることができる。
【国際調査報告】