(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】酵素変性デンプンを含有する寸法安定性接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 103/02 20060101AFI20240621BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C09J103/02
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575623
(86)(22)【出願日】2022-05-25
(85)【翻訳文提出日】2023-12-08
(86)【国際出願番号】 EP2022064190
(87)【国際公開番号】W WO2022258377
(87)【国際公開日】2022-12-15
(32)【優先日】2021-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】シュレーダー,ベンヤミン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルヴィヒ,ニルス
(72)【発明者】
【氏名】カウリシュ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ツィックーア,イヴォンヌ
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040BA111
4J040HB25
4J040JA06
4J040LA06
(57)【要約】
本発明は、酵素変性デンプンを含む寸法安定性接着剤組成物、および該接着剤組成物のスティック糊としての使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの場合において接着剤組成物の総重量に基づいて、
a)少なくとも10重量%の、ブルックフィールドに従って測定して500,000mPas未満の動粘度を有し、天然デンプンをグリコーゲン分岐酵素(EC 2.4.1.18)を用いて変性することにより得られる、分解型酵素変性デンプン;
b)少なくとも20重量%のスクロース;
c)少なくとも3重量%の、C
12-C
22脂肪酸および/またはその塩から選択されるビルダー;
を含有する、水系、寸法安定性接着剤組成物であって、
ここで、デンプン、特に分解型酵素変性デンプン、および、スクロースの合計割合は、接着剤組成物の総重量に基づいて65重量%未満であり、スクロースに対するデンプン、特に分解型酵素変性デンプンの重量比は、0.70未満である、
水系、寸法安定性接着剤組成物。
【請求項2】
デンプン、特に分解型酵素変性デンプン、および、スクロースの合計割合は、接着剤組成物の総重量に基づいて60重量%未満であるが、好ましくは40重量%を超える、特に好ましくは45重量%を超えることを特徴とする、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
スクロースに対するデンプン、特に分解型酵素変性デンプンの重量比は、0.60未満であり、好ましくは0.30より大きいことを特徴とする、請求項1または2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
分解型酵素変性デンプンの動的粘度が、200,000mPas未満、好ましくは100,000mPas未満、特に好ましくは50,000mPas未満であるが、好ましくは少なくとも10,000mPasであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項5】
分解型酵素変性デンプンは、穀物、塊茎、根および/またはマメ科植物から、好ましくは塊茎から、特に好ましくはサツマイモおよび/またはジャガイモから、とりわけ好ましくはジャガイモから得られることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項6】
酵素的に分解されたデンプンの割合は、合計デンプン割合に基づいて、少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%である、請求項1~5のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項7】
分解型化学変性デンプン、特にヒドロキシアルキル-カルボキシメチル-変性デンプンの割合が、合計デンプン割合に基づいて、好ましくは20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、非常に特に好ましくは5重量%未満である、請求項1~6のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤組成物は、それぞれの場合において接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも5重量%であるが、好ましくは10重量%以下の、C
12-C
22脂肪酸およびその塩から選択されるビルダーを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項9】
C
12-C
22脂肪酸の塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、および/またはカルシウム塩から選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項10】
接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%、とりわけ好ましくは少なくとも25重量%の水を含有する、請求項1~9のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項11】
接着剤組成物は、少なくとも9.0、好ましくは少なくとも9.5であるが、好ましくは11.0以下の、pH値を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項12】
a)10~25重量%の、ブルックフィールドに従って測定して500,000mPas未満の動粘度を有し、天然デンプンをグリコーゲン分岐酵素(EC 2.4.1.18)を用いて変性することにより得られる、分解型酵素変性デンプン;
b)20~45重量%のスクロース;
c)3~10重量%の、C
12-C
22脂肪酸および/またはその塩から選択されるビルダー;
d)少なくとも20重量%の水;および
e)5重量%未満の分解型化学変性デンプン;ならびに、該当する場合には
f1)少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%であるが、好ましくは3.0重量%未満のヒドロキシアルキル-カルボキシメチル-変性デンプン、および、好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満の、ヒドロキシアルキル-カルボキシメチル-変性デンプンではない、分解型化学変性デンプン;または
f2)3重量%未満、好ましくは1重量%未満の、分解型化学変性デンプン
を含み、該重量%の記載はそれぞれの場合において接着剤組成物の総重量に基づく、請求項1~11のいずれかに記載の接着剤組成物。
【請求項13】
請求項1~12の少なくとも1つに記載の接着剤組成物から形成されたスティック糊。
【請求項14】
基材の表面対表面の結合のための、特に紙、ボール紙および/またはプラスチックを互いに結合するための、請求項13に記載のスティック糊の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素変性デンプンを含む寸法安定性接着剤組成物、および該接着剤組成物のスティック糊としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
スティック糊は、半固体状の接着剤が充填された円筒として一般に知られており、その内容物は、スクリューの原理により機能する機構を回転させることによりスティックの端において、押し出し、引き戻すことができる。最初のスティック糊は1969年に市場に導入され、それ以来、当初使用されていた油系接着剤をより持続可能な代替品に置き換える広範な努力がなされてきた。
【0003】
独国特許出願公開第1811466号には、水および/または水混和性有機溶媒中、8~36個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸のアルカリ塩またはアンモニウム塩のゲルから形成された成形ビルダーと、接着成分としての既知の水溶性または水分散性接着剤とからなるスティック糊が開示されている。
【0004】
国際公開第03/029376号は、合成ポリマーの水性製剤およびビルダー成分としての石鹸ゲルから作られた寸法安定性の軟磨耗型スティック糊に関し、ここで、該合成ポリマーの水性調製物は少なくとも大部分が溶媒不含水性ポリアクリレート分散体または固体のアルカリ可溶性ポリアクリレートであり、両方とも遊離酸基を有する。
【0005】
国際公開第2014/019001号は、接着成分としてのアクリル酸エステルコポリマーの水性調製物、およびビルダー物質としての石鹸ゲルから作られたスティックペーストを開示し、ゲル構造形成石鹸としてC12-C22脂肪酸(特にC14-C18脂肪酸)のナトリウム塩が含まれ、ここで、該アクリル酸エステルのアクリル酸含有量は10~25%である。
【0006】
従来技術に記載されているスティック糊の欠点は、それらが石油化学成分に依存し続けていることである。再生可能原料に基づくスティック糊を形成するためのさらなるアプローチは、デンプンの使用である。
【0007】
独国特許出願公開第19908560号には、接着成分としてのデンプンエーテルおよびスクロースの水性調製物と、成形ビルダー構造としての石鹸ゲルとからなる、寸法安定性の軟磨耗性スティック糊が記載されている。
【0008】
欧州特許出願公開第2455436号には、組成物の製造後、14日後の粘度および2時間後の粘度の商によって決定される1.3以下の粘度安定指数SIを有する酵素分岐デンプンを含む、高均質性の接着剤組成物が開示されている。
【0009】
国際公開第2012/110594号は、20℃、スピンドル7、20rpmで、Brookfield RTV粘度計を用いて40重量%水溶液として測定して2,000,000mPas未満の粘度を有する少なくとも1つのヒドロキシアルキル-カルボキシメチルデンプンの水性調製物と石鹸とを含有するスティック糊、およびその製造方法、ならびに、基材(特に紙、ボール紙、木材、および/またはプラスチック)の平面接着のための使用に関する。
【0010】
国際公開第2014/200344号には、デンプンまたはデンプン誘導体とグリコーゲン分岐酵素(EC2.4.1.18)とを反応させることによって得られる高分岐デンプン(HBS)と、カルボキシメチル(CM)多糖誘導体とを含む水性接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許出願公開第1811466号明細書
【特許文献2】国際公開第03/029376号
【特許文献3】国際公開第2014/019001号
【特許文献4】独国特許出願公開第19908560号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2455436号明細書
【特許文献6】国際公開第2012/110594号
【特許文献7】国際公開第2014/200344号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来技術で入手可能なデンプンをベースとするスティック糊は、化石資源に遡り、再生可能な植物原材料からは全く得られないか、または部分的にしか得られない成分を引き続き有し続けるという欠点を有する。したがって、スティック糊として使用できる持続可能な組成物の必要性が依然として存在する。したがって、本発明の目的は、従来使用されている化学変性デンプンを代替的に分解型デンプンに置き換えた、寸法安定的な接着剤組成物を提供することであり、ここで、そのような接着剤組成物が高い結合強度および寸法安定性、ならびに優れた耐摩耗性を有することが保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、この目的は、請求項1に記載の水系寸法安定性接着剤組成物によって達成されることが見出された。好ましい実施形態は従属請求項に記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
したがって、本発明は第一に、それぞれの場合に接着剤組成物の総重量に基づいて、
a)少なくとも10重量%の、ブルックフィールドに従い測定して500,000mPas未満の動粘度を有し、グリコーゲン分岐酵素(EC 2.4.1.18)を用いて天然デンプンを変性することにより得られる、分解型(broken down)酵素変性デンプン;
b)少なくとも20重量%のスクロース;
c)少なくとも3重量%のC12-C22脂肪酸および/またはその塩から選択されるビルダー、
を含む、水系寸法安定性接着剤組成物に関し、
ここで、デンプン(特に分解型酵素変性デンプン)およびスクロースの合計割合は、接着剤組成物の総重量に基づいて65重量%未満であり、スクロースに対するデンプン(特に分解型酵素変性デンプン)の重量比は、0.70未満である。
【0015】
脱イオン水中の40重量%溶液(K<1μScm-1)としての、デンプンのブルックフィールドによる動粘度は、20℃の温度、回転速度20rpm、50,000mPasを超える動粘度にはスピンドル7を使用し、50,000mPasまでの動粘度にはスピンドル6を使用し、10,000mPas未満の動粘度にはスピンドル4を使用して、ブルックフィールドDV2T粘度計を用いて、それぞれの場合に個々に測定することができる。
【0016】
本発明の文脈における分解型デンプンは、糊化(gelatinization)によって天然デンプン顆粒から得られる水溶性デンプンである。糊化は、不可逆的で、通常は熱的に誘導されるプロセスであり、デンプン顆粒が水の存在下で膨潤し、デンプンが水相に移行し、ポリマー溶液および/または分散液が形成される。このような分解型デンプンは、化学的に変性または分解され、酵素的に変性され、特に再配列され得る。本発明に関連して、デンプンは、糊化工程後に、脱イオン水中の40重量%溶液として、回転速度20rpmでスピンドル7を使用してブルックフィールドに従って測定して、その動粘度が500,000mPas未満である場合、十分に分解されているとみなされる。本発明の文脈において、本発明による接着剤組成物のデンプン割合は、アミロース成分およびアミロペクチン成分を含むα-D-グルコースに基づく任意の多糖類を含む。したがって、該デンプン割合には、酵素的に変性された分解型デンプン割合に加えて、化学的に変性されたおよび/または化学的に分解された分解型デンプンも含まれ、但しこれらは、前述の多糖類として存在する。
【0017】
本発明による接着剤組成物に使用されるデンプンを得るために、デンプンを分解し、次いでグリコーゲン分岐酵素(E.C.2.4.1.18)を使用して、変換することができる。通常のデンプンは、α-1,4-グリコシド結合を有する実質的に直鎖状のアミロースと、α-1,6-分岐状アミロペクチンの2つの成分から構成される。分岐酵素は、アミロペクチンおよびアミロース中に存在するα-1,4-グリコシド結合をα-1,6結合に変換して、新しい分岐部位を作成できる酵素である。分解型デンプンとのインキュベーション中に、新しいα-1,6-グリコシド結合が形成されるにつれて、アミロース、および/または、アミロペクチンの長い側鎖が移動する。これにより、平均側鎖長が短くなり、分岐分子の相互作用能力が大幅に低下する。分岐酵素によって変性されたデンプンは、高濃度での低粘度、劣化なし、および、透明な溶液などの一連の機能特性と、十分に高い湿潤粘着性などのさらなる機能特性とを兼ね備えている。
【0018】
したがって、本発明は、デンプンまたはデンプン誘導体をグリコーゲン分岐酵素(EC 2.4.1.18)で処理することによって得られる、ブルックフィールドに従って測定して500,000mPas未満の動粘度を有する分解型酵素変性デンプンの使用を提供する。分岐の程度はさまざまであり、意図する用途によって異なる。通常、分解型酵素変性デンプンは少なくとも4%の分子分岐度を有することが、したがって好ましい。好ましい一実施形態において、分解型酵素変性デンプンは、本発明による接着剤組成物の成分として少なくとも5.0%の分子分岐度を有する。これにより、安定性の高い製品が得られる。これに関連して、分岐度は好ましくは少なくとも5.5%であり、例えば約5.5~約6.5%の範囲である。ここで使用される分子分岐度は、α-1,6-およびα-1,4-グリコシド結合全体に対するα-1,6-グリコシド結合の相対量を指し((α-1,6/(α-1,6+α-1,4)*100%)、当技術分野で知られている方法によって決定することができる。典型的には、したがって好ましくは、本発明の文脈における分岐度は8.0%を超えず、非常に特に好ましくは7.5%を超えない。
【0019】
好ましくは、デンプンまたはデンプン誘導体は、分岐酵素と接触させる前に、まず分解される。既に上で述べたように、デンプンの糊化は、水と熱の存在下でデンプン分子の分子間結合を壊して開き、水素結合部位(ヒドロキシル水素と酸素)がより多くの水を吸収できるようにするプロセスである。それにより、デンプン顆粒は不可逆的に溶解される。水の浸透により、全体的な粒状構造のランダム性が増加し、結晶性領域の数とサイズが減少する。糊化したデンプンは、酸または塩基を添加することによって所望のpHにすることができる。所望の温度に到達した後、分岐酵素を添加し、溶液を所望の温度で所望の時間維持する。あるいは、分岐酵素を室温でデンプン懸濁液に添加し、撹拌しながらスラリーを所望の温度まで加熱し、この温度で所望の時間保持することもできる。
【0020】
分岐酵素は、任意の適切な微生物源に由来することができ、好ましくは、中温性または好熱性生物から得られる熱安定性グリコーゲン分岐酵素から得られる。好ましくは、グリコーゲン分岐酵素は、Aquifex aeolicus、Anaerobranca gottschalkiiまたはRhodothermus obamensisである。
【0021】
本発明の文脈において、驚くべきことに、分解型変性デンプンが使用される場合、スティック糊に関して従来記載されている組成物からは、寸法安定性接着剤組成物が得られないことがわかり、そのため、デンプンおよびスクロースの合計割合の制限が示されている。したがって、本発明の文脈内において、特に寸法安定性および耐摩耗性に関して、特に有利な特性を達成するには、本発明による接着剤組成物におけるデンプンの合計割合は厳密に定義された制限内に維持されるべきであることがわかった。したがって、デンプン(特に分解型酵素変性デンプン)およびスクロースの合計割合が、それぞれの場合において接着剤組成物の総重量に基づいて、60重量%未満であるが、好ましくは40重量%を超え、特に好ましくは45重量%を超える、実施形態が好ましい。
【0022】
スティック糊は、特に、十分な接着強度に加えて、耐摩耗性、寸法安定性、および圧縮強度の特性の組み合わせによって特徴付けられ、これらは互いに調整されなければならない。この目的のために、驚くべきことに、特に接着剤組成物が0.70未満の重量比でデンプンおよびスクロースを有する場合に、特性の所望の組み合わせを達成できることが見出された。この重量比を適合させることにより、本発明による接着剤組成物の特性をさらに改善することができ、ここで、デンプン(特に分解型酵素変性デンプン)のスクロースに対する重量比が、0.60未満であり、好ましくは0.30より大きい実施形態が好ましい。重量比が0.70を超える場合には、接着剤組成物に要求される圧縮強度および耐摩耗性を達成することができず、ここで、本発明の文脈における圧縮強度は、圧縮荷重下で、スティック状の接着剤組成物が崩壊する際の長手軸と平行に測定される最大荷重である。接着強度の低下が、0.30未満の重量比で認められた。
【0023】
本発明の接着剤組成物に含まれるデンプンは、500,000mPas未満の動粘度を特徴とする。好ましい一実施形態において、分解型酵素変性デンプンの動粘度は、200,000mPas未満、好ましくは100,000mPas未満、特に好ましくは50,000mPas未満であるが、好ましくは少なくとも10,000mPasであり、ここで、動粘度は上記のように測定した。動粘度が10,000mPas未満の場合、低粘度で、より長い処理時間が必要となることに加えて、高温で、接着剤組成物の色の望ましくない変化が観察される場合もあるため、ほとんどの用途については、少なくとも10,000mPasの動粘度が好ましい。反対に、驚くべきことに、動粘度が200,000mPa・s未満であると、接着剤組成物におけるゲル形成および再結晶化が抑制され、均質で貯蔵安定性の接着剤組成物が得られることがわかった。動粘度を100,000mPas未満、好ましくは50,000mPas未満にさらに低下させることによって、液体状態および加熱状態における接着剤組成物のポンプ輸送性および充填性を顕著に改善することができた。10,000~50,000mPasの粘度範囲は、プロセス期間およびエネルギー要件と、本発明の接着剤組成物の十分な接着強度および色安定性を得るために十分に分解されたデンプンを準備することとの間での、良好な妥協点として特定された。さらに、この粘度範囲では、スティック糊として提供するために必要な円筒状の接着剤組成物の製造において、スティックスリーブの誤充填の結果として生じる不良品が少なくなり、充填中の全体的なダウンタイムの減少の達成が可能となる。
【0024】
本発明の接着剤組成物に使用される分解型酵素変性デンプンに用いられる原料デンプンは、好ましくは天然由来のデンプンである。この天然デンプンは、任意の従来の、塊茎、穀物または豆科のデンプンであってよく、例えば、エンドウ豆デンプン、ワキシーコーンデンプンを含むコーンデンプン、ワキシージャガイモデンプンを含むジャガイモデンプン、アマランサスデンプン、ワキシー米デンプンを含む米デンプン、ワキシー小麦デンプンを含む小麦デンプン、ワキシー大麦デンプンを含む大麦デンプン、タピオカデンプン、またはサゴデンプンであってよい。好ましい一実施形態では、分解型酵素変性デンプンは、穀類、塊茎、根および/またはマメ科植物から得ることができ、好ましくは塊茎から、特に好ましくはサツマイモおよび/またはジャガイモから、とりわけ好ましくはジャガイモから得ることができる。
【0025】
天然由来のデンプンは、それらが得られる植物種に応じて、一般に20%~40%のアミロース含量を有する。このアミロース含量も、本発明の文脈において好ましい。しかし、アミロペクチン含量が大幅に増加したアミロペクチンに富むデンプンや、アミロース含量が増加した製品もある。高いアミロペクチン含量を有するデンプンは、本発明の接着剤組成物に関して、本発明に関連して同様に分解および酵素分解することができ、80%を超えるアミロペクチン含量を有するデンプンもここで使用可能である。アミロペクチンはすでに分岐デンプンであり、分岐酵素を使用する本発明による酵素変性は、このすでに天然に高い分岐をさらに増加させることができる。
【0026】
デンプンは天然的に不均一であるため、デンプン分子に加えて、該接着剤組成物用に本発明に従って調製される酵素的に分岐されたデンプン中に、本発明による好ましい範囲で、前記特性を有する他のデンプン分子も存在し得る。好ましい一実施形態において、酵素変性デンプンの割合は、合計デンプン割合に基づいて、少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも80重量%、特に好ましくは少なくとも90重量%である。
【0027】
本発明の接着剤組成物は、主に天然原料から得られることを特徴とする。したがって、分解型化学変性されたデンプン、特にヒドロキシアルキル-カルボキシメチル-変性デンプンの割合が、合計デンプン割合に基づいて、好ましくは20重量%未満、特に好ましくは10重量%未満、非常に特に好ましくは5重量%未満である実施形態が好ましい。化学変性デンプンは、特に、デンプン分子のアンヒドログルコース単位(AGE)のヒドロキシル基と、他の化合物のアルコール性ヒドロキシル基との間での縮合の生成物として得られるものである。しかしながら、特定の一実施形態では、スティック糊の工業生産において本発明の接着剤組成物を液体充填するためのレオロジー特性を調整する上で、本発明の接着剤組成物において、それぞれの場合に接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%であるが、好ましくは5.0重量%未満、特に好ましくは3.0重量%未満のヒドロキシアルキル-カルボキシメチル-変性デンプンが有利であり得る。
【0028】
本発明の接着剤組成物のビルダー構造は、C12-C22脂肪酸および/またはその塩から構成される。好ましい一実施形態において、それぞれの場合に接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも4重量%、好ましくは少なくとも5重量%であるが、好ましくは10重量%以下の、C12-C22脂肪酸および/またはその塩から選択されるビルダーが、本発明の接着剤組成物中に含まれる。ビルダー構造は、好ましくは、C14-C18脂肪酸および/またはその塩から選択される。特に好ましくは、ビルダー構造の塩は、対応する脂肪酸のナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩、あるいはこれらの塩の混合物である。
【0029】
本発明の接着剤組成物は水系である。水系接着剤組成物は、本発明の文脈内では、接着剤組成物の総重量に基づいて少なくとも5重量%の水を含有する接着剤組成物を意味すると理解することができる。好ましい一実施形態では、本発明の接着剤組成物は、接着剤組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、好ましくは少なくとも15重量%、特に好ましくは少なくとも20重量%、とりわけ好ましくは少なくとも25重量%の水を含有する。
【0030】
本発明の接着剤組成物は、好ましくは少なくとも9.0、とりわけ好ましくは少なくとも9.5であるが、好ましくは11.0以下の、pH値を有する。接着剤組成物のpH値は、水酸化ナトリウムなどの従来のアルカリ反応性物質を用いて調整することができ、pH値は、標準緩衝液で校正後のpH感受性ガラス電極を使用して、80℃で液化した塊中において、接着剤組成物の特性として直接測定される。
【0031】
特に好ましい一実施形態では、本発明の接着剤組成物は以下の成分を含む:
a)10~25重量%の、ブルックフィールドに従って測定して500,000mPas未満の動粘度を有し、天然デンプンをグリコーゲン分岐酵素(EC 2.4.1.18)を用いて変性することにより得られる、分解型酵素変性デンプン;
b)20~45重量%のスクロース;
c)3~10重量%の、C12-C22脂肪酸および/またはその塩から選択されるビルダー;
d)少なくとも20重量%の水;
e)5重量%未満の分解型化学変性デンプン;ならびに、該当する場合には、
f1)少なくとも0.1重量%、好ましくは少なくとも1.0重量%であるが、好ましくは3.0重量%未満のヒドロキシアルキル-カルボキシメチル-変性デンプン、および、好ましくは3重量%未満、特に好ましくは1重量%未満の、ヒドロキシ-アルキルカルボキシメチル-変性デンプンではない、分解型化学変性デンプン;または
f2)3重量%未満、好ましくは1重量%未満の、分解型化学変性デンプン、
該重量%の記載は、それぞれの場合において、接着剤組成物の総重量に基づく。
【0032】
本発明の接着剤組成物は、スティック糊としての使用に特に適している。したがって、本発明はさらに、本発明の接着剤組成物から形成されたスティック糊に関する。
【0033】
本発明はまた、基材の表面対表面結合、特に紙、ボール紙、および/またはプラスチックを互いに結合するための、本発明のスティック糊の使用にも関する。
【実施例】
【0034】
以下の実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、これらは本発明の概念を限定するものとは何ら考えられるべきではない。
【0035】
表1に例示的な配合物をまとめる、ここで、重量%で指定されるデータは組成物の総重量に対して表される。得られた接着剤組成物を測定し、その結果を表1に示した。
【0036】
【0037】
圧縮強度の測定には、Zwick Roell社の10kN Pro Line試験装置を使用する。
【0038】
ピストンの直上で切り取られた長さ30mmの接着剤を2つの保持片の間に挿入する;これらは厚さ約10mmのステンレス鋼製のディスクで、関連するスティックの直径に合わせて3mmの円形の凹みを有している。保持片を備えたスティックを圧縮強度試験機の試験台の中央に置く。測定ヘッドの高さは、試験部品の高さに合わせる。次に、測定ヘッドを120mm/分の送り速度で、テスト対象のスティックに向かって移動させる。到達する最も高い圧縮力が、N単位での圧縮強度を与える。直径21mmの場合、スティック糊の圧縮強度は60~120Nであるべきである。
【0039】
示されたデータから分かるように、本発明の接着剤組成物は、特に、高い圧縮強度、良好な耐摩耗性、および高い接着強度の組み合わせによって特徴付けられる。
【国際調査報告】