(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】ポリ乳酸重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 63/08 20060101AFI20240621BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C08G63/08
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577437
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2022008774
(87)【国際公開番号】W WO2022270869
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】10-2021-0080925
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】シ・ジュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ウォンソク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ワン・キュ・オ
(72)【発明者】
【氏名】ユジン・アン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・ヒ・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョンチュル・ジュン
【テーマコード(参考)】
4J029
4J200
【Fターム(参考)】
4J029AA02
4J029AB05
4J029AC01
4J029AD01
4J029AE01
4J029EH03
4J029JB171
4J029JC461
4J029JF371
4J029KD02
4J029KD05
4J029KE05
4J029KE08
4J200AA10
4J200BA14
4J200EA04
4J200EA17
(57)【要約】
本発明は、ポリ乳酸重合体の製造方法に関するものであって、乳酸オリゴマーの開環重合反応で、特定の触媒の組み合わせを用いることによって、高分子量を有しかつ色特性が良好で、重合速度が速いポリ乳酸重合体を製造する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズ系触媒およびホスフィナイト系助触媒の存在下で、ラクチドを開環重合してポリ乳酸重合体を製造するステップを含む、ポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項2】
前記スズ系触媒は、Sn(Oct)
2である、請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項3】
前記ホスフィナイト系助触媒は、下記の化学式1で表される化合物中から選択される1種以上である、
請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
[化学式1]
P(OR
1)(R
2)(R
3)
式中で、
R
1は、置換されたまたは非置換のC
1-30アルキル、または、置換されたまたは非置換のC
6-30アリールであり、
R
2およびR
3は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換のC
1-30アルキル、または、置換されたまたは非置換のC
6-30アリールである。
【請求項4】
前記R
1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、ビフェニリルまたはナフチルである、請求項3に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項5】
前記R
2およびR
3は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、ビフェニリルまたはナフチルであり、これらはメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはイソプロポキシで置換または非置換される、 請求項3に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項6】
前記ホスフィナイト系助触媒は、下記の化学式1-1ないし化学式1-3で表される化合物中から選択される1種以上である、 請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【化1】
【請求項7】
前記スズ系触媒およびホスフィナイト系助触媒は、1:0.1ないし1:5のモル比で含まれる、請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項8】
前記スズ系触媒は、ラクチド含有量に対して、0.001mol%ないし0.05mol%で含まれる、請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項9】
前記ホスフィナイト系助触媒は、ラクチド含有量に対して、0.001mol%ないし0.05mol%で含まれる、請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項10】
前記開環重合は、150℃ないし200℃および0.5barないし2barで30分ないし6時間の間反応を行う、請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【請求項11】
前記ポリ乳酸重合体の重量平均分子量は、50,000ないし600,000である、請求項1に記載のポリ乳酸重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)との相互引用
本出願は、2021年6月22日付の韓国特許出願第10-2021-0080925号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリ乳酸重合体の製造方法に関するものであって、乳酸オリゴマーの開環重合反応で、特定の触媒の組み合わせを用いることによって、高分子量を有しかつ色特性が良好なポリ乳酸重合体を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
ポリ乳酸(PLA;polylactic acid)は、トウモロコシなどの植物から得られる植物由来の樹脂であって、生分解性特性を有する親環境素材として注目を集めている。
【0004】
従来使用されているポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレンなどの石油系樹脂とは異なり、ポリ乳酸は、石油資源の枯渇防止、炭酸ガスの排出抑制などの効果があるので、石油系プラスチック製品のデメリットである環境汚染を減らすことができる。したがって、廃プラスチックなどによる環境汚染問題が社会問題として浮上するにつれて、食品包装材および容器、電子製品ケースなど一般のプラスチック(石油系樹脂)が使用された製品分野まで適用範囲を拡大しようと努力している。
【0005】
一方、ポリ乳酸は、微生物発酵によって生産された乳酸を重合して製造されているが、乳酸の直接重合によっては低い分子量の重合体だけが生成される。高分子量のポリ乳酸を合成するためには、乳酸の直接重合で得られた低い分子量のポリ乳酸から鎖カップリング剤(chain coupling agent)を用いてより分子量の大きいポリ乳酸に重合する方法があるが、工程が複雑で、カップリング剤と有機溶媒が共に使用され、これらの除去が容易ではないというデメリットがある。
【0006】
現在、商用化されている高分子量のポリ乳酸の生産工程は、乳酸をラクチド(lactide)に転換し、ラクチド環の開環反応を通じてポリ乳酸を合成する化学合成方法が使用されている。ただし、この場合でも、高分子量の達成が難しいという問題があり、特に、高分子量化の達成のために使用されるSn(Oct)2の触媒の使用量を増加させる場合、時間当たりの転換率は増加するが、実際に増加する分子量は大きくなく、むしろ製造される樹脂の色に悪影響を与えるという問題がある。また樹脂の変色を憂慮して触媒使用量を減らす場合、同時間に対する転換率が低いため長い重合時間が必要となり、分子量が小幅減少するという問題があった。
【0007】
そこで、優れた物性を有するとともに、多様な産業に適用できるように高分子量化が容易なポリ乳酸重合体の製造方法に関する開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、乳酸オリゴマーの開環重合反応で特定の触媒の組み合わせを用いることによって、高分子量を有しかつ色特性が良好で、重合速度が十分速いポリ乳酸重合体を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、スズ系触媒およびホスフィナイト系助触媒の存在下で、ラクチドを開環重合してポリ乳酸重合体を製造するステップを含むポリ乳酸重合体の製造方法を提供する。
【0010】
本明細書全体において、特に言及しない限り「含む」または「含有」というのは、ある構成要素(または、構成成分)を特別な制限なく含むことを称し、他の構成要素(または、構成成分)の付加を除外するものと解釈されてはならない。
【0011】
(ポリ乳酸重合体の製造方法)
現在、商用化されている高分子量のポリ乳酸の生産工程は、乳酸をラクチド(lactide)に転換し、ラクチドリングの開環反応を通じてポリ乳酸を合成する化学合成方法が使用されている。ただし、商用化に適した高分子量の達成が難しいという問題があり、高分子量化の達成のために使用されるSn(Oct)2の触媒の使用量を増加させる場合、時間当たり転換率は増加するが、実際に増加する分子量は大きくなく、むしろ製造される樹脂の色に悪影響を与えるという問題がある。また、樹脂の変色を憂慮して触媒使用量を減らす場合、同時間に対する転換率が低いため重合に長い時間が必要となり、分子量が小幅減少するという問題があった。
【0012】
そこで、本発明者等は、乳酸オリゴマーの開環重合反応で、特定の触媒の組み合わせを用いることによって、高分子量を有しかつ色特性が良好で、重合速度が改善されたポリ乳酸重合体を容易に製造できることを確認し、本発明を完成した。
【0013】
従来、開環重合反応で使用されていたスズ系触媒とともにホスフィナイト系助触媒を用いることによって反応転換率が顕著に改善され、高分子量化の達成に容易であることを確認した。特に、ホスフィンなどの他のリン系助触媒化合物に対して最終的に製造される重合体の重量平均分子量を約15%以上増加させることができ、高分子量の重合体の具現に容易であることを確認した。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明することにする。
【0015】
本発明の一具現例によると、ラクチドを開環重合(Ring Opening Polymerization;ROP)してポリ乳酸重合体を製造するステップを含む。
【0016】
前記開環重合は、スズ系触媒とともにホスフィナイト系(Phosphinite)助触媒の組み合わせ触媒の存在下で行われることによって、従来、スズ系触媒を単独で用いる場合に対して重合速度が十分速く、反応転換率が顕著に改善されて高分子量化の達成に容易である。また、前記反応中でのスズ系触媒の使用量を減らすことができるようになって経済的であり、最終的に生成されるポリ乳酸重合体は、親環境性および生分解性を維持するとともに、色変化の問題がないため多様な分野への適用が容易である。特に、前記組み合わせ触媒の使用により、前記開環重合反応を通じて約40万以上の重量平均分子量を有する非常に大きい分子量を有するポリ乳酸重合体を容易に製造することができる。
【0017】
前記開環重合で、スズ系触媒は、Sn(Oct)2であってもよい。
【0018】
また、前記開環重合で、前記ホスフィナイト系助触媒は、下記の化学式1で表される化合物中から選択される1種以上であってもよい。
【0019】
[化学式1]
P(OR1)(R2)(R3)
式中で、
R1は、置換されたまたは非置換のC1-30アルキル、または、置換されたまたは非置換のC6-30アリールであり、
R2およびR3は、それぞれ独立して、置換されたまたは非置換のC1-30アルキル、または、置換されたまたは非置換のC6-30アリールである。
【0020】
好ましくは、前記R1は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、ビフェニリルまたはナフチルであり、さらに好ましくは、エチル、プロピル、イソプロピルまたはフェニルである。
【0021】
好ましくは、前記R2およびR3は、それぞれ独立して、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、フェニル、ビフェニリルまたはナフチルであり、これらはメトキシ、エトキシ、プロポキシまたはイソプロポキシで置換または非置換されてもよい。さらに好ましくは、エチル、プロピル、イソプロピルまたはフェニルであり、前記フェニルは、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはイソプロポキシで置換または非置換されてもよい。
【0022】
好ましくは、前記ホスフィナイト系助触媒は、下記の化学式1-1ないし化学式1-3で表される化合物中から選択される1種以上であってもよい。
【化1】
【0023】
前記スズ系触媒およびホスフィナイト系助触媒は、1:0.1ないし1:5のモル比で含まれていてもよく、前記モル比範囲で反応転換率が顕著に改善され、高分子量化の達成が容易である。さらに好ましくは、前記スズ系触媒およびホスフィナイト系助触媒は、1:0.5ないし1:3、1:0.8ないし1:2または1:0.9ないし1:1.5のモル比で用いられてもよい。
【0024】
前記スズ系触媒は、ラクチド含有量に対して、0.001mol%ないし0.05mol%で含まれていてもよく、前記の範囲において高い反応性で開環重合を促進することができ、比較的少ない量が使用されて経済性に優れ、最終重合体に色変化を発生させないため好ましい。より好ましくは、前記スズ系触媒は、ラクチド含有量に対して、0.0015mol%ないし0.03mol%、0.0015mol%ないし0.01mol%または0.002mol%ないし0.01mol%で含まれていてもよい。また、前記含有量範囲を満たすと同時に前述のホスフィナイト系助触媒とのモル比範囲を満たすことによって、優れた触媒活性を具現することができる。
【0025】
前記ホスフィナイト系助触媒は、ラクチド含有量に対して、0.001mol%ないし0.05mol%で含まれていてもよく、前記の範囲において高い反応性で縮合重合を促進することができるので好ましい。より好ましくは、前記ホスフィナイト系助触媒は、ラクチド含有量に対して、0.0015mol%ないし0.03mol%、0.0015mol%ないし0.01mol%または0.002mol%ないし0.01mol%で含まれていてもよい。また、前記含有量範囲を満たすと同時に前述のスズ系触媒とのモル比範囲を満たすことができる。
【0026】
前記開環重合反応は、実質的に溶媒を使用しないバルク重合で行ってもよい。このとき、実質的に溶媒を使用しないというのは、触媒を溶解するための少量の溶媒、例えば、使用するラクチドの合計1Kg当たり最大10ml未満の溶媒を使用する場合まで包括できる。前記開環重合をバルク重合で行うことによって、重合後に溶媒除去などのための工程の省略が可能となり、このような溶媒除去工程での樹脂の分解または損失なども抑制することができる。また、前記バルク重合によって前記ポリ乳酸重合体が高い転換率および収率で得られる。
【0027】
前記開環重合は、150℃ないし200℃および0.5barないし2barで30分ないし6時間の反応を行ってもよく、好ましくは、170℃ないし190℃でおよび0.7barないし1.5barで1時間ないし3時間の間反応を行ってもよい。前記条件下で重合する場合、時間当たり転換率が高く効率的に目的とする高分子量のポリ乳酸重合体を製造することができ、製造される重合体の変色が少ない。
【0028】
一方、前記ラクチドは、当分野で通常使用される方法によって製造されたものであってもよく、市販の製品を使用してもよい。
【0029】
市販の製品としては、FORUSORB社のL-lactide、TCI社のL-lactide、Sigma-aldrich社のL-lactideまたはAcrosorganics社のL-lactideが使用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0030】
また、前記ラクチドは、下記のステップを通じて製造されたものを使用することができる。
【0031】
具体的に、乳酸(Lactic acid)を縮合重合(Condensation Polymerization)して乳酸プレポリマー(Lactic acid Prepolymer)を製造する1-1ステップ、および前記縮合重合反応を通じて製造された低分子量の乳酸プレポリマーを解重合(Depolymerization)する1-2ステップを含んでラクチド(Lactide)を製造することができる。
【0032】
ここで、前記「乳酸」は、L-乳酸、D-乳酸、またはこれらの混合物を称す。
【0033】
各ステップの反応条件は特に限定されず、例えば、前記1-1ステップは、スルホン酸系触媒およびスズ系触媒の存在下で行ってもよく、好ましくは、前記スルホン酸系触媒は、p-トルエンスルホン酸、m-キシレン-4-スルホン酸、2-メシチレンスルホン酸、またはp-キシレン-2-スルホン酸である。前記スズ系触媒は、SnCl2である。
【0034】
また、前記1-1ステップは、150℃ないし200℃で110分ないし130分間の間反応を行った後、150℃ないし200℃および10mbarないし30mbar下で1時間ないし5時間の間反応を行ってもよい。
【0035】
前記1-2ステップは、スズ系触媒の存在下で行ってもよく、前記スズ系触媒としては、Sn(Oct)2が好ましい。
【0036】
また、前記1-2ステップは、200℃ないし250℃および8mbarないし12mbarで1時間ないし5時間の間反応を行ってもよく、好ましくは、200℃ないし230℃および9mbarないし11mbarで2時間ないし4時間の間反応を行ってもよい。
【0037】
発明の一具現例によると、前記製造方法は、2種の組み合わせ触媒を用いることによって優れた転換率(Conversion rate)を有する。前述の組み合わせ触媒の使用により、相対的に短い反応時間および/または少ない含有量の触媒を用いても優れた転換率で高分子量のポリ乳酸重合体を製造することができる。
【0038】
好ましくは、前記製造方法は、75%以上の転換率を示し、好ましくは、75%ないし99%、75%ないし97%、80%以上、90%以上または95%以上の高い転換率を示す。
【0039】
前記転換率は、ラクチドの供給量(モル数)に対する反応量(モル数)の百分率を意味し、転換率の具体的な測定方法は、後述する実験例の内容で詳細に説明することにする。
【0040】
(ポリ乳酸重合体)
発明の一具現例によると、前述の製造方法によって製造される、ポリ乳酸重合体を提供する。
【0041】
前記ポリ乳酸重合体の重量平均分子量(Mw)は、50,000ないし600,000であってもよく、好ましくは、100,000ないし500,000である。前記範囲を満たすことによって、包装材、フィルム、繊維、耐久材など商用アプリケーションが要求する物性を具現するのに適している。
【0042】
前記ポリ乳酸重合体の数平均分子量(Mn)は、25,000ないし300,000であってもよく、好ましくは、50,000ないし250,000であってもよい。
【0043】
前記ポリ乳酸重合体の多分散指数(PDI)は、1.0ないし3.0であってもよく、好ましくは、1.5ないし2.5であってもよい。
【0044】
前記重量平均分子量、数平均分子量および多分散指数の測定方法は、後述する実験例の内容で詳細に説明することにする。
【0045】
前記ポリ乳酸重合体は優れた色特性を示し、本願で提示した方式である、溶液相でtransmissionモードでY.I.(yellow index)の測定時に2.4以下の値を有し、好ましくは、2.35以下、2.15以下、2.0以下、1.7以下、1.5以下、1.0ないし2.4、または1.0ないし2.35、1.0ないし2.15、1.0ないし2.0、1.0ないし1.7、または1.0ないし1.5であってもよい。
【0046】
(物品)
また、本発明の他の一具現例によると、前記ポリ乳酸重合体を含む物品を提供する。
前記物品は、包装材、フィルム、不織布、繊維、コーヒーカプセル、耐久材、タバコフィルターなどが挙げられ、当該物品に適用されて生分解特性に優れ、CO2発生を低減する親環境製品の製作に用いることができる。
【発明の効果】
【0047】
前述のように、本発明に係るポリ乳酸重合体は、乳酸オリゴマーの開環重合反応で、特定の組み合わせの触媒を用いることによって、時間当たり転換率が高く、高分子量を有するポリ乳酸重合体を製造する方法を提供する。
【0048】
また、前記ポリ乳酸重合体は、親環境性および生分解性を維持するとともに色特性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の具現例を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明の具現例を例示するものであるだけで、本発明の詳細な説明が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
<実施例および比較例>
【0051】
実施例1
20mL容量のSchlenk Flaskにmagnetic stirrerとL-lactide(FORUSORB社)1gを入れ、触媒Sn(Oct)2と助触媒のエチレンジフェニルホスフィナイト(EDP)を、ラクチドに対して、それぞれ50ppmmolとなるように投入した(Sn(Oct)2:EDPのモル比=1:1)。Flaskの内部を真空にして60℃のOil bathで1時間維持して溶媒および不純物を除去した。次いで、Ar雰囲気下、常圧(1bar)状態で180℃まで昇温させて1時間の間開環重合反応を行い、ポリ乳酸重合体を製造した。
【0052】
実施例2
実施例1において、助触媒のエチレンジフェニルホスフィナイト(EDP)の含有量を10ppmmolとして用いたことを除いては(Sn(Oct)2:EDPのモル比=1:0.2)、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0053】
実施例3
実施例1において、助触媒のエチレンジフェニルホスフィナイト(EDP)の代わりに、isopropoxy(4-methoxyphenyl)(phenyl)phosphineを同一の含有量で用いたことを除いては(Sn(Oct)2:ipr-mpppのモル比=1:1)、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0054】
実施例4
実施例1において、反応時間を1時間から2時間に増加させたことを除いては、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0055】
実施例5
実施例1において、反応時間を1時間から3時間に増加させたことを除いては、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0056】
比較例1
実施例1において、助触媒のEDPを用いないことを除いては、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0057】
比較例2
実施例1において、助触媒のEDPを用いず、反応時間を3時間に増加させたことを除いては、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0058】
比較例3
実施例1において、助触媒のEDPを用いず、Sn(Oct)2の含有量を100ppmmolに増量し、反応時間を3時間に長く維持したことを除いては、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0059】
比較例4
実施例1において、助触媒のエチレンジフェニルホスフィナイト(EDP)の代わりに、トリフェニルホスフィンを同一の含有量で用いたことを除いては、実施例1と同一の方法でポリ乳酸重合体を製造した。
【0060】
<実験例>
前記実施例および比較例で製造した重合体に対して、下記のようにその特性を評価し、その結果を表1に示した。
【0061】
1)分子量特性評価
前記実施例および比較例で製造される重合体に対して、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography、Tosoh ECO SEC Elite)で重量平均分子量、数平均分子量、多分散指数を測定し、その結果を表1に示した。
溶媒:Tetrahydrofuran(THF)(eluent)
流速:1.0ml/min
コラム温度:40℃
Standard:Polystyrene(3次関数で補正)
【0062】
2)転換率測定
前記実施例および比較例で製造される重合体に対して、ラクチドの供給量(モル数)に対する反応量(モル数)の百分率で定義される転換率を測定した。
【0063】
具体的に、核磁気共鳴分光法(NMR:nuclear magnetic resonance、Bruker 500MHz solution NMR)を使用し、溶媒としてCDCl3を用い、1H NMRを測定し、4.9ppmないし5.2ppmの間に現れるPLAとlactideのpeak area integrationとを比較する方法を通じて転換率を測定した。
【0064】
3)色特性評価
前記実施例および比較例で製造される重合体に対して、残留ラクチドと水分を除去して色変化特性を評価するために、真空オーブンにて135℃で24時間乾燥させた。次いで、重合体サンプル2gをCHCl
3 40mlに溶かし、Ultrascan VIS(HunterLab社)装備のtransmissionモードを用いて、樹脂のY.I.(yellow index)を測定した。
【表1】
【0065】
前記表1で確認できるように、本発明により2種の組み合わせ触媒下でラクチドの開環重合を行った場合、約75%以上の高い転換率を具現するとともに、40万以上の重量平均分子量を有する重合体を容易に製造できることを確認した。特に、これらは色特性が改善されたことが確認できた。
【0066】
2種の組み合わせ触媒の代わりに、従来のSn(Oct)2のみを用いた比較例1ないし3の場合、40万以上の重量平均分子量を有する重合体を製造し難いことが確認できた。特に、比較例1の場合、実施例1と同一の含有量のSn(Oct)2を用いて色特性には問題がないが、転換率および分子量特性が実施例に対して顕著に低下することが確認できた。
【0067】
比較例2および3の場合、反応時間を増加させるかまたは触媒の使用量を増加させ、転換率を実施例と同等の水準を具現することができたが、この場合でも、分子量の増加程度は低調であることが確認できた。特に、Sn(Oct)2触媒の使用量が増加した比較例3の場合、Y.I.が顕著に増加して、色特性が低下することが確認できた。
【0068】
一方、比較例4の場合、Sn(Oct)2とともにリン系助触媒を用いたが、本発明のホスフィナイト系触媒でないトリフェニルホスフィンを用いることによって、転換率が実施例に対して低く、特に、目的とする程度の高分子量の重合体が得られ難いことが確認できた。
【国際調査報告】