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特表2024-523326新規な化合物およびこれを含む有機発光素子
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  • 特表-新規な化合物およびこれを含む有機発光素子 図1
  • 特表-新規な化合物およびこれを含む有機発光素子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを含む有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07D 405/04 20060101AFI20240621BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240621BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240621BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
H10K85/60
H10K50/12
C09K11/06 690
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577438
(86)(22)【出願日】2023-05-03
(85)【翻訳文提出日】2023-12-14
(86)【国際出願番号】 KR2023006081
(87)【国際公開番号】W WO2023219337
(87)【国際公開日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】10-2022-0057910
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0057176
(32)【優先日】2023-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】サン・ドゥク・ス
(72)【発明者】
【氏名】ジュンハ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ソク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドンヒ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジュンスク・オ
(72)【発明者】
【氏名】ミンテク・オ
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ウ・ジュン
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107CC12
3K107CC14
3K107CC21
3K107DD53
3K107DD59
3K107DD66
3K107DD68
3K107DD69
(57)【要約】
本発明は、下記の化1で表される新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で表される化合物:
【化1】
前記化1中、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-60アリール;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-60ヘテロアリールであり、
前記ArおよびArの少なくとも1つは、置換もしくは非置換のベンゼン環が2個以上縮合されたアリールであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素または重水素であり、
前記ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されるか、R~Rの少なくとも1つが重水素である。
【請求項2】
ArおよびArはそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、ビナフチリル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルであり、
前記ArおよびArはそれぞれ独立して、非置換であるか、1個以上の重水素で置換されている、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ArおよびArの少なくとも1つは、置換もしくは非置換のナフチル、置換もしくは非置換のフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルであり、
前記置換もしくは非置換のナフチル、置換もしくは非置換のフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルは、非置換であるか、1個以上の重水素で置換されている、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
ArおよびArの少なくとも1つは、ナフチル、フェニルナフチル、ビナフチリル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルであり、
前記ナフチル、フェニルナフチル、ビナフチリル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルは、非置換であるか、1個以上の重水素で置換されている、
請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されるか、R~Rの少なくとも1つが重水素である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されたフェニルまたは重水素で置換されたナフチルであるか;R~Rの少なくとも5個が重水素である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
ArおよびArの少なくとも1つが5個の重水素で置換されたフェニルまたは7個の重水素で置換されたナフチルであるか;RおよびR~Rが重水素である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
前記化1で表される化合物は、少なくとも5個の重水素が置換されている、
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
前記化1で表される化合物は、下記からなる群より選択されるいずれか1つである、
請求項1に記載の化合物:
【化2】
前記化合物において、a+b+cは、1~19の整数であり、
【化3】
前記化合物において、a+b+cは、1~21の整数であり、
【化4】
前記群において、a+b+c+dは、1~23の整数であり、
【化5】
前記群において、a+b+c+dは、1~25の整数であり、
【化6】
前記群において、a+b+cは、1~23の整数であり、
【化7】
前記群において、a+b+cは、1~25の整数であり、
【化8】
前記群において、a+b+c+d+eは、1~27の整数である。
【請求項10】
第1電極;前記第1電極に対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物を含む、
有機発光素子。
【請求項11】
前記有機物層は、発光層である、
請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記発光層は、下記の化2で表される化合物をさらに含む、
請求項11に記載の有機発光素子:
【化9】
前記化2中、
~Aはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-60アリール;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-60ヘテロアリールであり、
~Lはそれぞれ独立して、単結合;置換もしくは非置換のC6-60アリーレン;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-60ヘテロアリーレンである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【0002】
関連出願との相互参照
本出願は、2022年5月11日付の韓国特許出願第10-2022-0057910号および2023年5月2日付の韓国特許出願第10-2023-0057176号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
一般に、有機発光現象とは、有機物質を用いて電気エネルギーを光エネルギーに変換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性に優れ、多くの研究が進められている。
【0004】
有機発光素子は、一般に、陽極と、陰極と、前記陽極と陰極との間に有機物層とを含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安定性を高めるためにそれぞれ異なる物質で構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において2つの電極の間に電圧をかけると、陽極からは正孔が、陰極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子とが出会った時にエキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちた時、光を発する。
【0005】
このような有機発光素子に使用される有機物について新たな材料の開発が持続的に要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許公開番号第10-2000-0051826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、新規な有機発光材料およびこれを含む有機発光素子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記の化1で表される化合物を提供する:
【化1】
前記化1中、
ArおよびArはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-60アリール;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-60ヘテロアリールであり、
前記ArおよびArの少なくとも1つは、置換もしくは非置換のベンゼン環が2個以上縮合されたアリールであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素または重水素であり、
前記ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されるか、R~Rの少なくとも1つが重水素である。
【0009】
また、本発明は、第1電極;前記第1電極に対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上述した化1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として使用可能であり、有機発光素子において効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。特に、上述した化1で表される化合物は、正孔注入、正孔輸送、発光、電子輸送、および/または電子注入材料として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基板1、陽極2、発光層3、および陰極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
図2】基板1、陽極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、電子阻止層7、発光層3、電子輸送および注入層8、並びに陰極4からなる有機発光素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の理解のためにより詳細に説明する。
【0013】
本発明は、前記化1で表される化合物を提供する。
【0014】
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換もしくは非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;ニトリル基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素期;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうちの1個以上を含むヘテロアリール基からなる群より選択された1個以上の置換基で置換もしくは非置換であるか、前記例示した置換基のうちの2以上の置換基が連結された基で置換もしくは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であってもよい。つまり、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されてもよい。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の置換基になってもよいが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0017】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分枝鎖もしくは環鎖アルキル基、または炭素数6~25のアリール基で置換されていてもよい。具体的には、下記の構造式の置換基になってもよいが、これに限定されるものではない。
【化4】
【0018】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的には、下記のような構造の置換基になってもよいが、これに限定されるものではない。
【化5】
【0019】
本明細書において、シリル基は、具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書において、ホウ素基は、具体的には、トリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これらに限定されない。
【0021】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0022】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において、前記アルケニル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施態様によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。もう一つの実施態様によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。もう一つの実施態様によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において、シクロアルキル基は特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。もう一つの実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。もう一つの実施態様によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において、アリール基は特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であってもよい。一実施態様によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施態様によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記アリール基が、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などになってもよいが、これらに限定されるものではない。前記多環式アリール基としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0026】
本明細書において、フルオレニル基は置換されていてもよく、置換基2個が互いに結合してスピロ構造を形成することができる。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化6】
などになってもよい。ただし、これらに限定されるものではない。
【0027】
本明細書において、ヘテロアリール基は、異種元素としてO、N、SiおよびSのうちの1個以上を含むヘテロアリール基であって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。一実施態様によれば、前記ヘテロアリール基の炭素数は6~30である。一実施態様によれば、前記ヘテロアリール基の炭素数は6~20である。ヘテロアリール基の例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾ-ル基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジン基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基中のアリール基は、前述したアリール基の例示の通りである。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基中のアルキル基は、前述したアルキル基の例示の通りである。本明細書において、ヘテロアリールアミン中のヘテロアリールは、前述したヘテロアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基中のアルケニル基は、前述したアルケニル基の例示の通りである。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除けば、前述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除けば、前述したヘテロアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は、1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、前述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールは、1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除けば、前述したヘテロアリール基に関する説明が適用可能である。
【0029】
好ましくは、ArおよびArはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-20アリール;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-20ヘテロアリールであってもよい。
【0030】
より好ましくは、ArおよびArはそれぞれ独立して、フェニル、ビフェニリル、ターフェニリル、ナフチル、フェニルナフチル、ナフチルフェニル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、ビナフチリル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルであり、前記ArおよびArはそれぞれ独立して、非置換であるか、1個以上の重水素で置換されていてもよい。
【0031】
好ましくは、Arは、非置換であるか、重水素で置換されたフェニル;または非置換であるか、重水素で置換されたナフチルであってもよい。より好ましくは、Arは、フェニルまたはナフチルであってもよい。
【0032】
好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つは、置換もしくは非置換のナフチル、置換もしくは非置換のフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルであり、前記置換もしくは非置換のナフチル、置換もしくは非置換のフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルは、非置換であるか、1個以上の重水素で置換されていてもよい。
【0033】
より好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つは、ナフチル、フェニルナフチル、ビナフチリル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルであり、前記ナフチル、フェニルナフチル、ビナフチリル、フェナントレニル、フェニルフェナントレニル、クリセニル、またはベンゾ[c]フェナントレニルは、非置換であるか、1個以上の重水素で置換されていてもよい。
【0034】
好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されていてもよい。
【0035】
好ましくは、R~Rの少なくとも1つが重水素であってもよい。
【0036】
好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されるか、R~Rの少なくとも1つが重水素であってもよい。より好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換され、R~Rの少なくとも1つが重水素であってもよい。より好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つが重水素で置換されたフェニルまたは重水素で置換されたナフチルであるか;R~Rの少なくとも5個が重水素であってもよい。最も好ましくは、ArおよびArの少なくとも1つが5個の重水素で置換されたフェニルまたは7個の重水素で置換されたナフチルであるか;RおよびR~Rが重水素であってもよい。
【0037】
好ましくは、前記化1で表される化合物は、少なくとも5個の重水素が置換されていてもよい。
【0038】
前記化1で表される化合物の代表例は、次の通りである:
【化7】
【0039】
前記化合物において、a+b+cは、1~19の整数であり、
【化8】
【0040】
前記化合物において、a+b+cは、1~21の整数であり、
【化9】
【0041】
前記群において、a+b+c+dは、1~23の整数であり、
【化10】
【0042】
前記群において、a+b+c+dは、1~25の整数であり、
【化11】
【0043】
前記群において、a+b+cは、1~23の整数であり、
【化12】
【0044】
前記群において、a+b+cは、1~25の整数であり、
【化13】
【0045】
前記群において、a+b+c+d+eは、1~27の整数である。
【0046】
前記化合物において、Dは、重水素であり、a~eは、各置換基に置換された重水素の個数である。
【0047】
前記化1で表される化合物は、一例として、下記の反応式1のような製造方法で製造することができ、その他の残りの化合物も類似して製造することができる。
【化14】
【0048】
前記反応式1中、R~R、ArおよびArは、前記化1で定義した通りであり、Xは、ハロゲンであり、好ましくは、Xは、クロロまたはブロモである。
【0049】
前記反応式1は、鈴木カップリング反応であって、パラジウム触媒と塩基の存在下に行うことが好ましく、鈴木カップリング反応のための反応器は、当業界周知により変更が可能である。前記製造方法は、後述する製造例においてより具体化できる。
【0050】
また、本発明は、前記化1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。一例として、本発明は、第1電極;前記第1電極に対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうちの1層以上は、前記化1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【0051】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなってもよいが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少数の有機物層を含むことができる。
【0052】
また、前記有機物層は、発光層を含むことができ、前記発光層は、前記化1で表される化合物を含むことができる。
【0053】
また、前記有機物層は、正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層を含むことができ、前記正孔輸送層、正孔注入層、または正孔輸送および正孔注入を同時に行う層は、前記化1で表される化合物を含むことができる。
【0054】
さらに、前記有機物層は、電子輸送層、電子注入層、または電子注入および輸送層を含むことができ、前記電子輸送層、電子注入層、または電子注入および輸送層は、前記化1で表される化合物を含むことができる。
【0055】
また、本発明による有機発光素子は、基板上に、陽極、1層以上の有機物層、および陰極が順次に積層された構造(normal type)の有機発光素子であってもよい。なお、本発明による有機発光素子は、基板上に、陰極、1層以上の有機物層、および陽極が順次に積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であってもよい。例えば、本発明の一実施例による有機発光素子の構造は、図1および図2に例示されている。
【0056】
図1は、基板1、陽極2、発光層3、および陰極4からなる有機発光素子の例を示す図である。図2は、基板1、陽極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、電子阻止層7、発光層3、電子輸送および注入層8、並びに陰極4からなる有機発光素子の例を示す図である。このような構造において、前記化1で表される化合物は、前記発光層に含まれる。
【0057】
このような構造において、前記化1で表される化合物は、前記発光層に含まれる。
【0058】
本発明による有機発光素子は、前記有機物層のうちの1層以上が前記化1で表される化合物を含むことを除けば、当技術分野にて知られる材料と方法で製造できる。また、前記有機発光素子が複数の有機物層を含む場合、前記有機物層は、同一の物質または異なる物質で形成されてもよい。
【0059】
例えば、本発明による有機発光素子は、基板上に、第1電極、有機物層、および第2電極を順次に積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)のようなPVD(Physical Vapor Deposition)方法を利用して、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物、またはこれらの合金を蒸着させて陽極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層、および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、その上に陰極として使用可能な物質を蒸着させて製造することができる。このような方法以外にも、基板上に陰極物質から有機物層、陽極物質を順次に蒸着させて有機発光素子を作ることができる。
【0060】
また、前記化1で表される化合物は、有機発光素子の製造時、真空蒸着法のみならず、溶液塗布法によって有機物層に形成されてもよい。ここで、溶液塗布法とは、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレーディング、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらのみに限定されるものではない。
【0061】
このような方法以外にも、基板上に、陰極物質から有機物層、陽極物質を順次に蒸着させて有機発光素子を製造することができる(WO2003/012890)。ただし、製造方法がこれに限定されるものではない。
【0062】
一例として、前記第1電極は、陽極であり、前記第2電極は、陰極であるか、または前記第1電極は、陰極であり、前記第2電極は、陽極である。
【0063】
前記陽極物質としては、通常、有機物層への正孔注入が円滑となるように仕事関数の大きい物質が好ましい。前記陽極物質の具体例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金のような金属、またはこれらの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)のような金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbのような金属と酸化物との組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンのような導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0064】
前記陰極物質としては、通常、有機物層への電子注入が容易となるように仕事関数の小さい物質であることが好ましい。前記陰極物質の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタン、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛のような金属、またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alのような多層構造の物質などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0065】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層であり、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し、陽極からの正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が陽極物質の仕事関数と周辺の有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。正孔注入物質の具体例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0066】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層であり、正孔輸送物質として、陽極や正孔注入層から正孔が輸送されて発光層に移し得る物質で、正孔に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共にあるブロック共重合体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0067】
前記電子阻止層は、陰極から注入された電子が発光層で再結合されずに正孔輸送層へ越えていくのを防止するために正孔輸送層と発光層との間に置く層であり、電子抑制層と呼ばれたりもする。電子阻止層には、電子輸送層より電子親和力の小さい物質が好ましい。
【0068】
前記発光物質としては、正孔輸送層と電子輸送層から正孔と電子がそれぞれ輸送されて結合させることによって可視光線領域の光を発し得る物質であって、蛍光や燐光に対する量子効率の良い物質が好ましい。具体例として、8-ヒドロキシ-キノリンアルミニウム錯体(Alq);カルバゾール系化合物;二量体化スチリル(dimerized styryl)化合物;BAlq;10-ヒドロキシベンゾキノリン-金属化合物;ベンゾキサゾール、ベンズチアゾールおよびベンズイミダゾール系の化合物;ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)系の高分子;スピロ(spiro)化合物;ポリフルオレン、ルブレンなどがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0069】
前記発光層は、ホスト材料およびドーパント材料を含むことができる。ホスト材料は、縮合芳香族環誘導体またはヘテロ環含有化合物などがある。具体的には、縮合芳香族環誘導体としては、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタレン誘導体、ペンタセン誘導体、フェナントレン化合物、フルオランテン化合物などがあり、ヘテロ環含有化合物としては、カルバゾール誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ラダー型フラン化合物、ピリミジン誘導体などがあるが、これらに限定されない。好ましくは、発光層のホスト材料として前記化1で表される化合物が使用できる。
【0070】
好ましくは、前記発光層は、下記の化2で表される化合物をさらに含むことができる:
【化15】
前記化2中、
~Aはそれぞれ独立して、置換もしくは非置換のC6-60アリール;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-60ヘテロアリールであり、
~Lはそれぞれ独立して、単結合;置換もしくは非置換のC6-60アリーレン;または置換もしくは非置換のN、OおよびSからなる群より選択されるいずれか1つ以上を含むC2-60ヘテロアリーレンである。
【0071】
ドーパント材料としては、芳香族アミン誘導体、スチリルアミン化合物、ホウ素錯体、フルオランテン化合物、金属錯体などがある。具体的には、芳香族アミン誘導体としては、置換もしくは非置換のアリールアミノ基を有する縮合芳香族環誘導体であって、アリールアミノ基を有するピレン、アントラセン、クリセン、ペリフランテンなどがあり、スチリルアミン化合物としては、置換もしくは非置換のアリールアミンに少なくとも1個のアリールビニル基が置換されている化合物で、アリール基、シリル基、アルキル基、シクロアルキル基およびアリールアミノ基からなる群より1または2以上選択される置換基が置換もしくは非置換である。具体的には、スチリルアミン、スチリルジアミン、スチリルトリアミン、スチリルテトラアミンなどがあるが、これらに限定されない。また、金属錯体としては、イリジウム錯体、白金錯体などがあるが、これらに限定されない。
【0072】
前記電子輸送層は、電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送する層であり、電子輸送物質としては、陰極から電子がよく注入されて発光層に移し得る物質であって、電子に対する移動性の大きい物質が好適である。具体例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alqを含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらのみに限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されているように、任意の所望のカソード物質と共に使用可能である。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く通常の物質である。具体的には、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウムおよびサマリウムであり、各都合にて、アルミニウム層またはシルバー層が後に続く。
【0073】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層であり、電子を輸送する能力を有し、陰極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、また、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。具体的には、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキシド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物および含窒素5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0074】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラト)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラト)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0075】
一方、本発明において、「電子注入および輸送層」は、前記電子注入層と前記電子輸送層の役割をすべて行う層であり、前記各層の役割を果たす物質を単独で、あるいは積層したり混合して使用することができるが、これに限定されない。
【0076】
本発明による有機発光素子は、背面発光(bottom emission)素子、前面発光(top emission)素子、または両面発光素子であってもよいし、特に相対的に高い発光効率が要求される背面発光素子であってもよい。
【0077】
また、前記化1で表される化合物は、有機発光素子以外にも、有機太陽電池または有機トランジスタに含まれてもよい。
【0078】
以下、本発明の理解のためにより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【実施例
【0079】
[製造例]
製造例1:化合物1の合成
【化16】
【0080】
窒素雰囲気下、2-クロロ-4-(フェニル-d5)-6-(6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(15.0g、37.6mmol)とジベンゾ[b,d]フラン-1-イルボロン酸(8.8g、41.4mmol)を、THF300mlに入れて撹拌および還流した。この後、炭酸カリウム(20.8g、150.4mmol)を水62mlに溶かして投入し、十分に撹拌した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.2g、1.1mmol)を投入した。9時間反応後、常温に冷まして有機層と水層とを分離後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離して、無水硫酸マグネシウムを入れて撹拌した後、ろ過してろ液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、昇華精製により化合物1を9.0g製造した。(収率45%、MS:[M+H]=532)
【0081】
製造例2:化合物2の合成
【化17】
【0082】
製造例1において、2-クロロ-4-(フェニル-d5)-6-(6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを2-([2,2’-ビナフタレン]-6-イル-1’,3’,4’,5’,6’,7’,8’-d7)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンに変更して用いたことを除けば、化合物1の製造方法と同様の製造方法で化合物2を製造した。(MS[M+H]=584)
【0083】
製造例3:化合物3の合成
【化18】
【0084】
製造例1において、2-クロロ-4-(フェニル-d5)-6-(6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを2-クロロ-4-(ナフタレン-2-イル)-6-(6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンに、ジベンゾ[b,d]フラン-1-イルボロン酸を(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル-2,4,6,7,8-d5)ボロン酸に変更して用いたことを除けば、化合物1の製造方法と同様の製造方法で化合物3を製造した。(MS[M+H]=582)
【0085】
製造例4:化合物4の合成
【化19】
【0086】
製造例1において、2-クロロ-4-(フェニル-d5)-6-(6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを2-([1,2’-ビナフタレン]-6’-イル)-4-クロロ-6-フェニル-1,3,5-トリアジンに、ジベンゾ[b,d]フラン-1-イルボロン酸を(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル-d7)ボロン酸に変更して用いたことを除けば、化合物1の製造方法と同様の製造方法で化合物4を製造した。(MS[M+H]=584)
【0087】
製造例5:化合物5の合成
【化20】
【0088】
製造例1において、2-クロロ-4-(フェニル-d5)-6-(6-フェニルナフタレン-2-イル)-1,3,5-トリアジンを2-クロロ-4-(ナフタレン-2-イル-d7)-6-(フェナントレン-3-イル)-1,3,5-トリアジンに、ジベンゾ[b,d]フラン-1-イルボロン酸を(ジベンゾ[b,d]フラン-1-イル-2,4,6,7,8-d5)ボロン酸に変更して用いたことを除けば、化合物1の製造方法と同様の製造方法で化合物5を製造した。(MS[M+H]=563)
【0089】
製造例6:化合物6の合成
【化21】
【0090】
窒素雰囲気下、2-クロロ-4-フェニル-6-(7-フェニルフェナントレン-2-イル)-1,3,5-トリアジン(15g、33.8mmol)とジベンゾ[b,d]フラン-1-イルボロン酸(7.9g、37.2mmol)をTHF300mlに入れて撹拌および還流した。この後、炭酸カリウム(18.7g、135.2mmol)を水56mlに溶かして投入し、十分に撹拌した後、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(0.1g、1mmol)を投入した。8時間反応後、常温に冷まして有機層と水層とを分離後、有機層を蒸留した。これを再びクロロホルムに溶かし、水で2回洗浄後に有機層を分離して、無水硫酸マグネシウムを入れて撹拌した後、ろ過してろ液を減圧蒸留した。濃縮した化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物6-aを11.7g製造した。(収率60%、MS:[M+H]=577)
【0091】
【化22】
【0092】
シェーカーチューブに化合物6-a(10.0g、17.4mmol)、PtO(1.2g、5.2mmol)、DO87mlを入れた後、チューブを密封し、250℃、600psiで12時間加熱した。反応が終了したら、クロロホルムを入れて、反応液を分液漏斗に移して抽出した。抽出液をMgSOで乾燥、濃縮し、試料をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した後、昇華精製により化合物6を5.1g製造した。(収率49%、MS:[M+H]=602)
【0093】
[実施例]
<比較例1>
ITO(Indium Tim Oxide)が1400Åの厚さに薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤に溶かした蒸留水に入れて超音波洗浄した。この時、洗剤としてはフィッシャー社(Fischer Co.)のDecon(登録商標)CON705製品を用い、蒸留水としてはミリポア社(Millipore Co.)製品の0.22μm滅菌フィルターで2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸留水で2回繰り返し超音波洗浄を10分間進行させた。蒸留水洗浄が終わった後、イソプロピルアルコール、アセトンおよびメタノールの溶剤でそれぞれ10分間超音波洗浄し、乾燥させた後、プラズマ洗浄機に輸送させた。また、酸素プラズマを用いて前記基板を5分間洗浄した後、真空蒸着機に基板を輸送させた。
【0094】
このように用意されたITO透明電極上に、下記の化合物HI-Aと化合物LG-101をそれぞれ800Å、50Åの厚さに順次に熱真空蒸着して正孔注入層を形成した。その上に、正孔輸送層として下記の化合物HT-Aを800Åの厚さに真空蒸着した後、電子阻止層として下記の化合物EB-Aを600Åの厚さに熱真空蒸着した。発光層のホストとして化合物RH-Aを、ドーパントとして化合物RD-Aを適用し、ホストとドーパントとを98:2の重量比で400Åの厚さに真空蒸着した。次に、電子輸送および注入層として下記の化合物ET-Aと化合物Liqとを1:1の重量比で360Åの厚さに熱真空蒸着し、次に、化合物Liqを5Åの厚さに真空蒸着した。
【0095】
【化23】
【0096】
前記電子注入層上に、順次に、マグネシウムと銀とを10:1の重量比で220Åの厚さに、アルミニウムを1000Åの厚さに蒸着して陰極を形成して、有機発光素子を製造した。
【0097】
<実施例1~実施例9および比較例2~比較例8>
前記比較例1において、化合物1の代わりに表1のように変更したという点を除けば、前記実施例1-1と同様の方法を用いて実施例1~実施例9および比較例2~比較例8の有機発光素子をそれぞれ製造した。この時、ホストとして2種の化合物の混合物を用いた場合、括弧内はホスト化合物間の重量比を意味する。表1の化合物pRH-1と化合物pRH-2および化合物A~Fの構造は、下記の通りである。
【0098】
【化24】
【0099】
<実験例>
前記実施例1~実施例9および比較例1~比較例8で製造された有機発光素子に電流を印加して、電圧、効率、寿命を測定し、その結果を下記表1に示した。この時、電圧、効率は10mA/cmの電流密度を印加して測定し、寿命(LT97)は電流密度20mA/cmで初期輝度が97%に低下するまでの時間を意味する。
【0100】
【表1】
【0101】
表1に開示されたところによれば、水素または重水素でのみ置換されたジベンゾフランの1位にトリアジンが直接結合した構造は、電子の注入および移動度特性が高くて低電圧の特性を示すことが分かる。特に、化合物pRH-1あるいはpRH-2のような正孔伝達特性に優れたpタイプのホストと同時適用時に発光層内の電荷均衡の調節に容易であった。また、ArまたはArの少なくとも1つが含むベンゼン環が2個以上縮合されたアリール基は、物質の三重項エネルギーを低下させて、特に赤色発光ドーパントへのエネルギー伝達が容易になって高効率の特性を示す。それだけでなく、化1のように重水素で置換された場合、物質の振動エネルギーが低くなって物質の安定性が高まるだけでなく、pタイプのホストと形成するエキサイプレックスの安定性も高まって長寿命の特性を示すことができる。
【0102】
上記の結果から、化1の構造を有する化合物を有機電界発光素子の発光層に適用した場合、低電圧、高効率、長寿命の特性を有する素子を得ることができることを確認した。
【符号の説明】
【0103】
1:基板
2:陽極
3:発光層
4:陰極
5:正孔注入層
6:正孔輸送層
7:電子阻止層
8:電子輸送および注入層
図1
図2
【国際調査報告】