(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】静脈内への自己注射および針またはカテーテルの挿入のためのデバイスおよび手順
(51)【国際特許分類】
A61M 5/42 20060101AFI20240621BHJP
A61M 5/32 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A61M5/42 520
A61M5/32 530
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579139
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2022066852
(87)【国際公開番号】W WO2022268794
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ナディヤ・ボーエッシェン
(72)【発明者】
【氏名】ハーディ・キーツマン
(72)【発明者】
【氏名】ホルスト・ミッショ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066FF04
4C066FF05
4C066LL13
4C066LL16
4C066QQ48
4C066QQ52
4C066QQ79
4C066QQ82
4C066QQ92
(57)【要約】
自己IV注射デバイスが提供される。自己IVデバイスは、ユーザの腕に対してデバイスを固定する固定手段と;光センサと;IV針と;駆動装置と;プロセッサとを含む。自己IV注射デバイスは:光センサを用いて、ユーザの腕上に配置されているマークの位置を検出し;ユーザの腕上に配置されている検出されたマークの位置に基づいて、プロセッサを用いて、適切なIV注射スポットを決定し;IV針がユーザの静脈に貫入するように、駆動装置を用いてIV針を決定された適切なIV注射スポットに動かすように構成される。
【選択図】
図1b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己IV注射デバイスであって、
ユーザの腕に対して該デバイスを固定する固定手段と;
光センサと;
IV針と;
駆動装置と;
プロセッサと;を含み、
ここで、該自己IV注射デバイスは:
光センサを用いて、ユーザの腕上に配置されているマークの位置を検出し;
ユーザの腕上に配置されている検出されたマークの位置に基づいて、プロセッサを用いて、適切なIV注射スポットを決定し;
IV針がユーザの静脈に貫入するように、駆動装置を用いてIV針を決定された適切なIV注射スポットに動かす
ように構成される、前記自己IV注射デバイス。
【請求項2】
ユーザの皮膚を照明しマークの検出を容易にする光源をさらに含む、請求項1に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項3】
駆動装置は、IV針を垂直方向に駆動しIV針を前方に進めるように構成される、請求項1または請求項2に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項4】
適切なIV注射スポットは、ユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の距離、マークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の角度、またはユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の距離およびマークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の角度の両方に基づいて決定される、請求項1~3のいずれか1項に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項5】
適切なIV注射スポットは、ユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の相対距離、マークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の相対角度、またはユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の相対距離およびマークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の相対角度の両方に基づいて決定される、請求項1~4のいずれか1項に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項6】
プロセッサはさらに、異なる適切なIV注射スポットに対応する異なるグループに属する、ユーザの腕上に配置されたマークを認識するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項7】
プロセッサはさらに、それぞれのユーザの腕上に配置されたそれぞれのマークの一意のデザインに基づいて、特定のユーザを識別するように構成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項8】
薬剤を針中に放出するようにプロセッサによって動作可能なバルブをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項9】
2つ以上の適切な自己IV注射スポットを識別し、スポットの使用予定の順序およびスポットの使用履歴についての情報に基づいて、適切な自己IV注射スポットを決定するように構成される、請求項1~8のいずれか1項に記載の自己IV注射デバイス。
【請求項10】
自己IV注射デバイスを動作させる方法であって、該デバイスは、ユーザの腕に対して該デバイスを固定する固定手段と;光センサと;IV針と;駆動装置と;プロセッサとを含み、該方法は:
光センサを用いて、ユーザの腕上に配置されているマークの位置を検出することと;
ユーザの腕上に配置されている検出されたマークの位置に基づいて、プロセッサを用いて、適切なIV注射スポットを決定することと;
IV針がユーザの静脈に貫入するように、駆動装置を用いてIV針を決定された適切なIV注射スポットに動かすことと
を含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイスと、位置決め補助器具とを含むシステムであって、該位置決め補助器具は、ユーザの手上にマークを配置するために使用されるように構成される、前記システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静脈内への自己注射および針またはカテーテルの挿入のためのデバイスおよび手順に関する。
【背景技術】
【0002】
注射によって投与される薬剤のすべてが皮下投与に適しているわけではない。病気によっては、薬剤の静脈内(IV)投与、すなわち、静脈中への薬剤の投与が必要である。従来、薬剤のIV投与は訓練を受けた看護師(または他の医療従事者)が行う必要がある。これは、患者が病院もしくは診療所に移動しなければならないか、または訓練を受けた看護師が患者の自宅に移動しなければならないことを意味する。これは、患者、病院、および健康管理システムに追加のコストをもたらす。
【0003】
一部の完全に自動化された自動IV注射システムおよびデバイス(すなわち、訓練を受けた看護師または他の医療従事者からの入力を必要としないデバイス)には、いくつかの欠点がある場合がある。センサを用いた静脈の検出は信頼性が低いことがあり;デバイスは高価なことがあり;ユーザが完全に自動化されたシステムを怖がって治療に従わないことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
薬剤のIV投与について患者を支援できるシステムが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様において、自己IV注射デバイスが提供される。自己IVデバイスは、ユーザの腕に対してデバイスを固定する固定手段と;光センサと;IV針と;駆動装置と;プロセッサとを含む。自己IV注射デバイスは:光センサを用いて、ユーザの腕上に配置されているマークの位置を検出し;ユーザの腕上に配置されている検出されたマークの位置に基づいて、プロセッサを用いて、適切なIV注射スポットを決定し;IV針がユーザの静脈に貫入するように、駆動装置を用いてIV針を決定された適切なIV注射スポットに動かすように構成される。
【0006】
本発明の第1の態様の実施形態において、以下の構成の1つまたはそれ以上を提供できる:
- デバイスは、ユーザの皮膚を照明しマークの検出を容易にする光源をさらに含む;
- 駆動装置は、IV針を垂直方向に駆動しIV針を前方に進めるように構成される;
- 適切なIV注射スポットは、ユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の距離、マークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の角度、またはユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の距離およびマークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の角度の両方に基づいて決定される;
- 適切なIV注射スポットは、ユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の相対距離、マークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の相対角度、またはユーザの腕上に配置されたマークと適切なIVスポットとの間の相対距離およびマークと適切なIV注射スポットとを結ぶ想像線間の相対角度の両方に基づいて決定される;
- プロセッサはさらに、異なる適切なIV注射スポットに対応する異なるグループに属する、ユーザの腕上に配置されたマークを認識するように構成される;
- プロセッサはさらに、それぞれのユーザの腕上に配置されたそれぞれのマークの一意のデザインに基づいて、特定のユーザを識別するように構成される;
- デバイスは、薬剤を針中に放出するようにプロセッサによって動作可能なバルブをさらに含む;
- デバイスは、2つ以上の適切な自己IV注射スポットを識別し、スポットの使用予定の順序およびスポットの使用履歴についての情報に基づいて、適切な自己IV注射スポットを決定するように構成される。
【0007】
本発明の第2の態様において、自己IV注射デバイスを動作させる方法が提供される。本デバイスは、ユーザの腕に対してデバイスを固定する固定手段と;光センサと;IV針と;駆動装置と;プロセッサとを含む。本方法は、光センサを用いて、ユーザの腕上に配置されているマークの位置を検出することと;ユーザの腕上に配置されている検出されたマークの位置に基づいて、プロセッサを用いて、適切なIV注射スポットを決定することと;IV針がユーザの静脈に貫入するように、駆動装置を用いてIV針を決定された適切なIV注射スポットに動かすこととを含む。
【0008】
本発明の第3の態様において、システムが提供される。本システムは、本発明の第1の態様に関連して説明したデバイスと、位置決め補助器具とを含み、位置決め補助器具は、ユーザの手上にマークを配置するために使用されるように構成される。
【0009】
本発明の第4の態様において、自己IV注射デバイスを動作させる方法が提供される。本デバイスは、ユーザの腕に対してデバイスを固定する固定手段と;光センサと;IV針と;駆動装置と;プロセッサとを含む。本方法は、センサを用いて、ユーザの腕上に以前に配置されたマークの位置を検出することと;検出されたマークを処理して適切なIV注射スポットを決定することと;自己IV注射デバイスのIV針を決定された適切なIV注射スポットに動かすことと;適切なIV注射スポットにおいてIV針をユーザの静脈に貫入させることとを含む。
【0010】
以下の説明は以下の図を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1aから
図1dは、使用中の自己IV注射デバイスの概略図を示す。
【
図3】自己IV注射デバイスの自由度の概略図である。
【
図4】自己IV注射デバイスの使用を示すフローチャートである。
【
図5】自己IV注射デバイスによって使用できるマークの概略図である。
【
図6】
図6aおよび
図6bは、マークを用いて適切なIV注射スポットを決定する例示的手法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図は自己IV注射デバイスの例および自己IV注射デバイスの動作状態の例を示す。当業者は、以下で説明する異なる図および異なる実施形態の要素を必要に応じて組み合わせできることを理解するであろう。当業者は、以下で説明する実施形態の多くの要素および構成が任意選択であることも理解している。
【0013】
図2は、本発明による例示的な自己IV注射デバイス200の概略図である。自己IV注射デバイス200はコントローラ204を有する。コントローラ204は、ユーザの腕に対するデバイス200の位置を(以下に記載されるように)決定し、駆動装置203を動作させる。自己IV注射デバイス200はさらに針207を有し、針207は、ユーザの皮膚を貫通でき静脈に貫入できる。針207は、針207を動かすために設けられた駆動装置203に連結されている。自己IV注射デバイス200はさらに、コントローラ204に連結され、ユーザの手または前腕上のマーク500を検出する(以下で説明する)ように構成された、センサ202と、オン/オフスイッチ205と、電源206と、薬剤容器210から針207への薬剤の流れを調整するバルブ208と、センサ202を動作させる命令を記憶するメモリ201と、駆動装置203と、場合により光源209とを有する。
【0014】
針207は、静脈に挿入するための適切な任意の針でよい。針207はカニューレに付属していてもよい。針207はカテーテルを挿入するように働くことができる。
【0015】
センサ202は、たとえば、光センサでよい。センサ202は、光検出器、電荷結合素子、カメラ、またはユーザの皮膚上のマーク500を検出できる任意の他の適切なデバイスでよい。「センサ」という単語はここでは単数形で用いられているが、センサ202の代わりにセンサが複数あってよいことが理解されよう。
【0016】
ユーザの皮膚を照明するために光源209を設けることができ、光源209はセンサ202によるユーザの皮膚上のマーク500の検出を容易にすることができる。光源209は、可視光線(約380nmから約750nm)を提供して、暗い場所またはそれ以外の次善の採光条件でのマーク500の検出を支援することができる。代替的または追加的に、光源209は、特定の波長/スペクトルの光を提供して、可視光線下で見えづらいかまたは見えないマークを照明することができる。たとえば、光源209は、UV光線、IR光線、特定の色の光などを提供することができる。
【0017】
駆動装置203は、針207を動かすために設けられている。針207は、垂直方向に(「上」および「下」に)可動でよい。針207は、針の長手方向軸によって決められた方向(「前」および「後ろ」)に可動でよい。針207は、針207とユーザの皮膚との間の水平および/または垂直の角度を調節するために可動でよい。
【0018】
図3は、駆動装置203が針207を駆動できる方向を示す。分かりやすくするために、
図3では自己IV注射デバイス200のほとんどの構成要素が省略されている。まず、ユーザの皮膚に対して角度354下で針が固定される。角度354は10度と40度との間でよい。
【0019】
駆動装置203は、矢印351によって示されているように、針207を垂直方向に(「上」および「下」に)駆動する。この「上」および「下」の動きによって、針207が適切なIV注射スポット601に到達し、必要に応じて後退することが可能になる。駆動装置203は、矢印352によって示されているように、針207を「前」および「後ろ」にも駆動する。この動きによって、針207が静脈中に挿入され、必要に応じて後退することが可能になる。さらに、精密さを改善するために、駆動装置203は、矢印353によって示されている針207の水平角度(「アジマス」)および針207の垂直角度(「エレベーション」)を適合させる、すなわち、角度354または水平角度および垂直角度の両方を変更することができる。より複雑でないデバイスが(たとえば、より低いコストおよび/またはより削減されたメンテナンスによって)望ましい場合には、水平角度および/または垂直角度(「アジマス」および/または「エレベーション」)を適合させる能力を省略してよい。
【0020】
自己IV注射デバイス200は、ユーザの皮膚上に配置されたマーク500を識別することによって、適切なIV注射スポット601を識別する。次いで、マーク500と適切なIV注射スポット601との間の既知の(予め設定されたおよび/または予め記憶された)関係を用いて、適切なIV注射スポットを決定することができる。マーク500と適切なIV注射スポット601との間の既知の関係は、たとえば、マーク500と適切なIV注射スポット601との間の距離、マーク500と適切なIV注射スポット601との間の相対距離または距離の比、マーク500と適切なIV注射スポット601とを結ぶ想像線間の角度などでよい。適切なIV注射スポット601が識別されると、適切なIV注射スポット601に向かって垂直下向きに針207を駆動できる。針が適切なIV注射スポット601に到達するとすぐに、針207は、適切なIV注射スポット601で前方に静脈中に駆動できる。
【0021】
マーク500は、通常、最初のIV注射を行う前に前もってユーザの皮膚上に配置されている。ユーザの皮膚上にマークを配置する例示的なプロセスが
図1a~
図1dに示されている。
図1a~
図1dの例において、位置決め補助器具100が用いられている。しかし、位置決め補助器具100の使用は必須ではない。位置決め補助器具は、照準クロス101およびいくつかの位置決めマーク102を有することができる。図示の例は、3つの位置決めマーク102を示しているが、4つもしくは5つの位置決めマーク102または任意の他の適切な数のマークがあってよい。
【0022】
位置決め補助器具100を用いることで、訓練を受けた看護師または他の医療従事者(以下で「看護師」と称される)が、IV注射に適切なユーザの手または前腕上の適切なIV注射スポット601を識別する。言い換えれば、看護師は、針207の挿入に使用される可能性のある静脈を1つまたはそれ以上識別する。看護師は、照準クロス101が識別された適切なIV注射スポット601上に位置するように、位置決め補助器具100をユーザの前腕上に配置する。次いで、看護師は、位置決めマーク102を用いて、ユーザの皮膚上にマーク500を作成する。マーク500は(以下でより詳細に説明するように)恒久的または半恒久的でよい。たとえば、マーク500は、タトゥー、任意の種類の恒久的マーカなどを用いて作成できる。マーク500は、磁気インクを用いて作成できる。マーク500は、特定の波長の光線下、たとえば、UV光線下またはIR光線下でのみ見ることができる。いくつかの構成において、UV光線の使用が有利な場合がある。
【0023】
第1組のマーク500が作成されると、看護師は、ユーザの手の上で針の挿入に適切な別のスポットを識別し、第2組のマーク500を作成することができる。第2組のマーク500は、デザイン、色、または他の特徴が第1組のマーク500とは異なっていてよい。このプロセスは、ユーザの腕上の複数のスポットを識別するために適切な数の組のマーク500、たとえば、3組、4組、5組、7組、10組、または12組のマーク500が作成されるまで繰り返すことができる。
【0024】
位置決め補助器具100を用いて位置決めされたマーク500は、適切なIV注射スポット601に対して精密な位置に配置される。これは、すべてのユーザに関してマーク500と適切なIV注射スポット601との間に同じ関係を有する標準化された組のマーク500を提供する。そのことによって、自己IV注射デバイス200がすべてのユーザに関して同じ位置決め情報を記憶することを可能にでき、したがって、自己IV注射デバイス200は複数のユーザによって使用できる。これは、2人以上のユーザが定期的なIV注射を必要とするときにいつでも有利になる可能性がある。
【0025】
代替的または追加的に、位置決め補助器具100の使用なしで、所定の数のマーク500をユーザの手または前腕上の各スポットに配置できる。たとえば、マーク500は、肘、肘の折り目、手首など、ユーザの手および/または前腕上の目立つ点に所定の関係になるように配置できる。マーク500は、適切なIVスポット601に所定の関係で配置できる。マーク500は、ユーザの手および/または前腕上でランダムな箇所に配置できる。いくつかの実施形態において、ユーザの手および/または前腕上でのマーク500の精密な位置決めは必須でないことがあり、マーク500は所定のスポットの「近く」(たとえば、前腕の前側で肘と手首との間の距離の3分の1内側の位置)に配置できるが、精密さは必要とされない場合がある。このような事例において、マーク500は、好ましいスポットの数センチメートル以内に配置できる。
【0026】
位置決め補助器具100なしで(または適切なIV注射スポット601に対して精密な位置決めをせずにより概略的に)配置されるマーク500を利用するために、自己IV注射デバイス200は、マーク500を検出し、特定のユーザに関するIV注射のためのマーク500の構成およびマーク500と適切なスポットとの間の関係をそのメモリに保存することができる。次いで、保存された情報は、その特定のユーザに関する適切なIV注射スポット601を識別するために使用できる。このように、自己IV注射デバイス200は、自己IV注射デバイス200が初めて使用される前に、特定の1人またはそれ以上のユーザの画像を作成することができる。
【0027】
一実施形態において、メモリ201は、マーク500間の絶対距離ではなくマーク500の相対位置に関する情報を記憶することができる。そのことは、ユーザの体重が増えるかまたは減る場合に、絶対距離が変化したとしてもマーク間の相対距離は変わらないと考えられるため有利な場合がある。
【0028】
自己IV注射デバイス200は、マーク500を検出および認識する。2組以上のマーク500が設けられている場合は、自己IV注射デバイス200は、異なる組からマーク500を認識および区別し、単一の組からマーク500をピックアップするように構成できる。マーク500およびそれらの位置の認識に基づいて、自己IV注射デバイス200は、適切なIV注射スポット601を識別する。スポット601が識別されると、駆動装置203は、針207がユーザの皮膚に到達するまで針を矢印351に沿って下に駆動し(
図3)、次いで、針207を矢印352に沿って前に(
図3)ユーザの静脈中に駆動する。注射が完了すると、針207は、矢印352に沿って後退でき、次いで、矢印351に沿って持ち上げることができる。
【0029】
自己IV注射デバイス200の例示的な使用が
図4に概略的に示されている。使用前に、ユーザの手首および上腕が固定され、肘がまっすぐに伸び、マーク500を担持するユーザの前腕の前方がセンサ202および針207に露出されるように、ユーザの腕は好ましくは自己IV注射デバイス200に対して固定されている。一実施形態において、自己IV注射デバイス200は、それ自体をユーザの腕、たとえば手首および上腕に固定することができる。いくつかの実施形態において、ユーザの腕の動きおよび/または曲げを防止することが有利な場合がある。
【0030】
コントローラ204は、センサ202を用いてマーク500を検出する(工程402)。視認性が乏しい場合および/または特定の波長を用いるときしかマークが見えない場合に、コントローラ204は、自己IV注射デバイス200のタイプに応じて、光源209を用いて、検出中にユーザの手を照明することができる(工程401)。コントローラ204は、マーク500の位置に基づいて、適切なIV注射スポット601を識別する(工程403)。コントローラ204は、上記で説明したように、針207をユーザの静脈中に挿入するように駆動装置203を動作させる(工程404)。コントローラ204は、自己IV注射デバイス200のタイプに応じて、薬剤収納部(たとえば、薬剤容器210、薬剤袋など)から針207に、したがってユーザの静脈への薬剤の移送を促すようにバルブ208を動作させることができる(工程405)。代替的または追加的に、ユーザまたはその介護者は、手でバルブ208を解放することができる。薬剤の送達が完了すると、針207は、上記で説明したように後退される(工程406)。
【0031】
IV注射の挿入は、通常、限られた範囲の適切な挿入角度を有する。挿入角度354は、たとえば、15度と35度との間でよい。
【0032】
センサ202およびコントローラ204がマーク500を検出すること、および/または異なる組からマークを区別すること、および/または適切なIV注射スポット601を決定することを支援するために、各マーク500は一意のデザインを備えることができる。一例が
図5に示されている。この例では、マーク500aから500jはそれぞれ、異なるデザインを備え;そのデザインを用いて、マーク500aから500jを互いに区別しかつ/または他の情報を符号化することができる。
図5が単なる例示の目的で提供されていることが理解されよう。10を超える一意のデザインがあってよく、その一意のデザインは、円形以外の任意の他の形状に基づくこともでき、2つ以上の形状(たとえば、異なる形状の組合せ)に基づいてよく、各マーク500のデザインは、(たとえば、より複合的な情報を符号化できるように)より単純にまたはより複雑にでき、必要に応じて同様に対応できる。マーク500のそれぞれが一意のデザインを備えないことが可能であることも理解されよう。たとえば、単一のグループのマーク500は、同じかまたは対応するデザインを有することができ;
図5の例を用いると、デザイン500aを有する1組のマーク、500bに示すデザインを有する1組のマークなどがあってよい。たとえば、マーク500のグループは、1つの適切なIV注射スポット601に対応でき、そのグループからのマークは、すべてが同じデザインを備え、任意の他のグループのデザインとは別個である。代替的または追加的に、いくつかのマーク500だけ、たとえば一定の目立つ箇所のものだけが、一意のデザインを備えることができる。次いで、デバイス200のメモリ201は、マーク500のデザインに符号化された情報(たとえば、上記で説明したような、それらのグループ分け、それらの目立つ位置など)を記憶する。
【0033】
コントローラ204は、メモリ201に記憶された情報へのアクセスを有する。記憶された情報は、各マーク500の位置決めに関するものでよい。マーク500の位置決めは、たとえば、マーク500間の既知の距離、マーク500を結ぶ想像線間の既知の角度、ユーザの手および/または前腕上の目立つ点までの距離、マーク500間の相対距離、マーク500を結ぶ想像線間の相対角度などに基づいてよい。マーク500が上記で説明したような一意のデザインを備える場合には、デザインについての情報は、マーク500の位置決めについての情報に追加的に記憶できる。
【0034】
マーク500の一意のデザインは、自己IV注射デバイス500に対する特定のユーザを識別するために使用できる。代替的または追加的に、特定のユーザを識別する他の手法を使用できる。特定のユーザを識別することは、同じ自己IVデバイスが2人以上のユーザによって使用される場合に有利な場合がある。
【0035】
図6aおよび
図6bは、適切なIV注射スポット601を識別できる手法の2つの例を示す。自己IV注射デバイス200はマーク500を識別する。
図6aは、三角形に配置されたマーク500を示し;
図6bは、方形に配置されたマーク500を示す。4つ以上の点を用いて、方形以外の配置、たとえば矩形または台形を使用してよい。5つ以上の点、たとえば6つの点(図示せず)を用いて適切なIV注射スポット601を識別することができる。
【0036】
図6aおよび
図6bに示されている例において、マーク500は、適切なIV注射スポット601の近傍で静脈600に沿って(その隣に)配置されている。自己IV注射デバイス200は、上記で説明したように、センサ202を用いてマーク500を検出する。マーク500と適切なIV注射スポット601との相対位置は、既知であり、メモリ201に記憶されている。したがって、自己IV注射デバイス200は、検出されたマーク500の位置を用いて、適切なIV注射スポット601の位置を決定することができる。さらに、検出されたマーク500の位置に基づいて、自己IV注射デバイス200は、針207が適切なIV注射スポット601に近づく方向602(すなわち、
図3に示されている角度353)を決定することができる。
【0037】
マーク500と1つまたはそれ以上の適切なIV注射スポット601との相対位置についての情報は、自己IV注射デバイス200のメモリ201に記憶されている。その情報は、各ユーザに特有でよい(すなわち、自己IV注射デバイス200はユーザごとに個別化できる)。そのような場合に、情報は、看護師が管理する初回の使用中に、自己IV注射デバイス200のメモリ204に記憶される。たとえば、看護師は、適切なIV注射スポット601の1つまたはそれ以上を識別し、マーク500と適切なIV注射スポット601との相対位置を検出および記憶するように自己IV注射デバイス200を案内することができる。後続の手順は上記で説明したように行ってよい。
【0038】
2つ以上の適切なIV注射スポット601についてマーク500を識別および提供することが有利な場合がある。一定の状況において、まったく同じスポットにIV注射を繰り返すと、傷または静脈の炎症を引き起こす可能性がある。そのことは、特に血友病患者にとって問題になる場合がある。いくつかの適切なIV注射スポット601を識別し使用することによって、同じスポットに注射する間の時間間隔を大きくすることができ、したがって、ユーザへの悪影響のリスクが低下する。
【0039】
たとえば、ユーザの腕上で識別される8つの適切なIV注射スポット601があってよい。いくつかの要因に応じて、自己IV注射デバイス200は、次の注射をするときにどの適切なIV注射スポット601が注射予定であるかについての情報を記憶することができる。たとえば、互いに近くにある適切な自己IVスポット、最後に使用されたスポットについての情報、使用するべきスポットの順序、および他の因子のうちの1つまたはそれ以上に基づいて、自己IV注射デバイスが次の注射に使用予定のスポットを決定することができる。たとえば、スポットを連続して1から8に番号付けするときに、スポットの順序は、1-2-3-4-5-6-7-8、1-3-5-7-2-4-6-8、1-5-2-7-8-3-4-6、または任意の他の適切な順序でよい。この順序は、自己IV注射デバイス200の初回の使用の前に、看護師によって予め設定できる。
【0040】
自己IV注射デバイス200は、薬剤容器210を備えることができる。薬剤容器210は、自己IV注射デバイス200に連結可能にできる。薬剤容器210は、針207に連結され、それと流体連絡している。容器210を針207に連結する任意の適切な手段、たとえば可撓性のプラスチックチューブを用いることができる。薬剤容器210は、バルブ208を介して針207に連結でき、バルブ208は、開放、閉鎖、および/または部分的に閉鎖することによって、針207へのおよびユーザの静脈中への薬剤の流れを調整することができる。バルブ208は、プロセッサ204によって操作できる。代替的または追加的に、バルブ208は、ユーザによって操作できる。
【0041】
バルブ208は、針207への薬剤の線形の流れを有効にすることができる。代替的または追加的に、バルブ208は、針207への薬剤の流れの異なるプロフィールを有効にすることができる。たとえば、流れは、薬剤投与の初期段階で緩やかであり、速度が上昇して薬剤投与の第2の段階で最大の流れに達し、速度が低下して薬剤投与の第3の段階でゼロになることが可能である。流量の他の適切なプロフィールが可能である。流量のプロフィールは、投与される薬剤およびユーザの病状に基づいて決定できる。
【0042】
上記で説明したような自己IV注射デバイスは、いくつかの病気の患者または薬剤の定期的なIV投与を必要とする状況の患者にとって有利な場合がある。たとえば、自己IV注射デバイスは、珍しい病気、腫瘍の患者、血友病患者、または定期的な血液検査を必要とする患者によって使用できる。
【0043】
自己IV注射デバイスは、医療従事者の時間を節約し、したがって、医療システムのコストも削減する。自己IV注射デバイスは、ユーザの自宅だけではなく、病院、ケアホーム、または研究でも使用できる。
【0044】
自己IV注射デバイスのユーザは、自宅で、たとえば冷蔵庫に、IV投与に使用される薬剤を保管することができる。患者は、薬剤投与が必要になるたびに新たな薬剤容器210を挿入するという訓練を受けることができる。
【0045】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0046】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子、ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素)、炭水化物および多糖、ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0047】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0048】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0049】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0050】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0051】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0052】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C(エフペグレナチド)、HM-15211、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9423、NN-9709、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、ZP-DI-70、TT-401(ペガパモドチド(Pegapamodtide))、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、チルゼパチド(LY3298176)、バマドゥチド(Bamadutide)(SAR425899)、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0053】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))、またはアルポート症候群の治療のためのRG012である。
【0054】
DPP4阻害剤の例は、リナグリプチン、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0055】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0056】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0057】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0058】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本発明に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0059】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0060】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0061】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0062】
本明細書に記載されているAPIの各種成分、処方、装置、方法、システム、および実施形態の修正(追加および/または削除)は、このような修正およびそのあらゆる等価物を包含する本発明の全範囲および精神から逸脱することなく行うことができることを、当業者なら理解するであろう。
【0063】
例示的な薬物送達デバイスは、ISO11608-1:2014(E)のセクション5.2の表1に記載されているような針ベースの注射システムを含むことができる。ISO11608-1:2014(E)に記載されているように、針ベースの注射システムは、複数回用量の容器システムおよび単回用量(部分排出または全量排出による)の容器システムに大別できる。容器は、交換可能な容器でもよく、交換不能な一体型容器でもよい。
【0064】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、複数回用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムにおいて、各容器は複数回用量を保持し、そのサイズは固定でも可変(ユーザによって予め設定される)でもよい。別の複数回用量容器システムは、交換不能な一体型容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムにおいて、各容器は複数回用量を保持し、そのサイズは固定でも可変(ユーザによって予め設定される)でもよい。
【0065】
ISO11608-1:2014(E)にさらに記載されているように、単回用量の容器システムは、交換可能な容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムの一例において、各容器は単回用量を保持し、そうすることで、送達可能な体積全体が排出される(全量排出)。さらなる例において、各容器は単回用量を保持し、そうすることで、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。やはりISO11608-1:2014(E)に記載されているように、単回用量の容器システムは、交換不能な一体型の容器を有する針ベースの注射デバイスを含むことができる。このようなシステムの一例において、各容器は単回用量を保持し、そうすることで、送達可能な体積全体が排出される(全量排出)。さらなる例において、各容器は単回用量を保持し、そうすることで、送達可能な体積の一部が排出される(部分排出)。
【国際調査報告】