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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】抗菌性共重合体
(51)【国際特許分類】
   A01N 61/00 20060101AFI20240621BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240621BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
A01N61/00 D
A01P3/00
C08F220/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579601
(86)(22)【出願日】2022-06-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-25
(86)【国際出願番号】 KR2022009131
(87)【国際公開番号】W WO2023287062
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093704
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】イヒョン・ペク
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ソンジュン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒョン・ホ
【テーマコード(参考)】
4H011
4J100
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BB19
4H011DH02
4J100AB02Q
4J100AC03Q
4J100AG04Q
4J100AL02Q
4J100AL03Q
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100AM02Q
4J100BA32P
4J100BA32Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100GC26
4J100JA43
4J100JA50
4J100JA57
4J100JA59
4J100JA64
(57)【要約】
本発明は、抗菌性共重合体に関し、より具体的には、優れた抗菌特性が持続的に維持される抗菌性共重合体に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表される第1繰り返し単位;および1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体に由来する第2繰り返し単位を含み、
前記第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位の総モル数に対して3~60モル%含まれる、
抗菌性共重合体:
【化1】
前記化学式1中、
Lは炭素数1~10のアルキレンであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
Xはハロゲンである。
【請求項2】
前記化学式1中、
Lはメチレン、エチレン、またはプロピレンである、
請求項1に記載の抗菌性共重合体。
【請求項3】
前記化学式1中、
~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルである、
請求項1に記載の抗菌性共重合体。
【請求項4】
前記化学式1中、
はメチルであり、
およびRは水素であり、
~Rのうちの1つは炭素数6~16のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルである、
請求項1に記載の抗菌性共重合体。
【請求項5】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記の化学式1-1~1-4のいずれか1つで表される、
請求項1に記載の抗菌性共重合体:
【化2】
前記化学式1-1~1-4中、
aは2~9の整数であり、
bは2~8の整数であり、
Xはハロゲンである。
【請求項6】
前記第1繰り返し単位は、下記で構成される群より選択されるいずれか1つである、
請求項1に記載の抗菌性共重合体:
【化3】
【請求項7】
前記1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、ハロゲン化ビニル単量体、ビニルアルキレート系単量体、アルケニルシアン化物単量体および芳香族ビニル系単量体で構成される群より選択される1種以上である、
請求項1に記載の抗菌性共重合体。
【請求項8】
前記1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体は、メチル(メタ)アクリレート、ビニルクロライド、ビニルアセテート、アクリロニトリル、またはスチレンである、
請求項7に記載の抗菌性共重合体。
【請求項9】
重量平均分子量が10,000~1,000,000g/molである、
請求項1に記載の抗菌性共重合体。
【請求項10】
グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに対して抗菌性を示す、
請求項1に記載の抗菌性共重合体。
【請求項11】
前記グラム陰性菌は、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、または大腸菌(Escherichia coli)であり、
前記グラム陽性菌は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、または黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)である、
請求項10に記載の抗菌性共重合体。
【請求項12】
グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の両方に対して抗菌性を示す、
請求項10に記載の抗菌性共重合体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗菌性共重合体を含む、
抗菌性物品。
【請求項14】
鮮度保持用材料、ファブリック製品、農業用フィルム、各種事務用品、各種包装材料および医療用品の中から選択される1種以上である、
請求項13に記載の抗菌性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年7月16日付の韓国特許出願第10-2021-0093704号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた抗菌性を示す抗菌性共重合体に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、生活の多様化、生活水準の向上、意識の変化および改善により、個人の生活環境での衛生と快適さの増進に対する関心が高まっている。これによって、これを脅かす微生物に関する研究が行われているが、日常生活環境に存在する微生物はその種類が非常に多いだけでなく、自然界に広範囲に分布していて、被害が深刻なのが現状である。
【0004】
特に、食生活、住居環境、衣服、工業製品などの多様な環境にバクテリア、かびなどの微生物が生息しうるが、この時、バクテリアは各種炎症や食中毒などの原因になり、かびは悪臭を発生させるだけでなく、各種皮膚疾患、呼吸器疾患、アレルギー、アトピー性皮膚炎などの原因になりかねず問題になる。また、電子製品および生活用品類の表面に生息する微生物の場合、製品の性能の低下要因にもなりうる。
【0005】
そこで、このような微生物による人間の被害を防止するために、微生物の増殖を抑制したり、あるいは微生物を死滅するための多様な抗菌物質が開発されている。
【0006】
具体的には、従来開発された抗菌物質としては、大きく、無機抗菌剤と有機抗菌剤とに分けられる。前記無機抗菌剤は、銀や銅などの金属を含む抗菌剤で、熱安定性に優れて高温条件でも抗菌特性が維持できるというメリットがあるが、価格が高く、加工後に含まれている金属イオンによる変色の可能性があるという問題がある。また、有機抗菌剤は、無機抗菌剤に比べて低価格で少量でも抗菌効果に優れるというメリットがあるが、製品への適用後に溶出する可能性があり、抗菌持続性が良くないという問題があった。
【0007】
さらに、有機抗菌剤は、微生物の繁殖の阻止および死滅の面で製品の安定性を確保することはできるが、同時に毒性があり、使用者の皮膚に刺激を誘発する原因にもなっていた。
【0008】
これによって、抗菌性に優れていながらも、抗菌性が持続可能であり、人体安全性が確保された抗菌素材への要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許第10-0601393号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、環境にやさしく、人体安全性の面で有利でありながらも、優れた抗菌力が持続的に維持される抗菌性共重合体を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記抗菌性共重合体を含む抗菌性物品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、
下記の化学式1で表される第1繰り返し単位;および1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体に由来する第2繰り返し単位を含み、
前記第1繰り返し単位は、前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位の総モル数に対して3~60モル%含まれる、
抗菌性共重合体を提供する:
【0013】
【化1】
【0014】
前記化学式1中、
Lは炭素数1~10のアルキレンであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
Xは、ハロゲンである。
【0015】
また、本発明は、上述した抗菌性共重合体を含む、抗菌性物品を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明による抗菌性共重合体は、優れた抗菌特性が持続的に維持されつつ、人体安定性が確保できるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0018】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0019】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されるものと言及された場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成できることを意味する。
【0020】
本発明は多様な変更が加えられて様々な形態を有することができるが、特定の実施例を例示して下記に詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むことが理解されなければならない。
【0021】
また、本明細書に使用される専門用語は単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0022】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートをすべて含む。
【0023】
また、本明細書において、前記アルキル基は、直鎖もしくは分枝鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましい。一実施形態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。前記アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチルブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチルプロピル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、イソヘキシル、1-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2,4,4-トリメチル-1-ペンチル、2,4,4-トリメチル-2-ペンチル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチルなどがあるが、これらに限定されない。また、本明細書において、アルキレンは、2価の基であることを除けば、前述したアルキル基に関する説明が適用可能である。
【0024】
一般に、家庭、オフィス、複合施設などの日常的な生活空間で使用される生活化学製品に抗菌特性を示すために、バクテリアなどの微生物の繁殖の阻止および/または死滅が可能な抗菌機能を有する金属化合物、有機化合物などの抗菌剤が導入された。しかし、時間が経過するほど使用された抗菌剤が溶出する問題があり、このように溶出した抗菌剤に使用者が曝される場合、かえって使用者の健康を脅かす恐れがあった。
【0025】
また、バクテリア(細菌)は確認されたものだけで5千種を超すほど多様な種類が存在する。具体的には、バクテリアは、球状、棒状、螺旋状などとその細胞の形状が多様であり、酸素を要求する程度も菌ごとに異なっていて、好気性菌、通性菌および嫌気性細菌に分けられる。したがって、通常、1種類の抗菌剤が多様なバクテリアの細胞膜/細胞壁を損傷させたり、タンパク質を変性させることができる物理/化学的メカニズムを有することは容易ではなかった。
【0026】
そこで、本発明者らは、特定の構造を有する4級アンモニウム塩部分を、単量体形態ではない重合体中の主鎖をなす繰り返し単位に含ませる場合、抗菌剤が溶出する恐れがなくて人体安全性を確保することができ、特に、特定の構造の4級アンモニウム塩部分を含む繰り返し単位とともに他の物性を実現可能な共単量体に由来する繰り返し単位をさらに含む共重合体は、優れた抗菌性を持続的に示しながら、共単量体の種類によって様々な応用分野に応用させることができることを確認して、本発明を完成した。
【0027】
より具体的には、このような抗菌性共重合体は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに、より具体的には、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の両方に抗菌性を示すことができる。
【0028】
前記グラム陽性菌は、グラム染色法で染色すれば紫色に染色されるバクテリアを総称するもので、グラム陽性菌の細胞壁は数重のペプチドグリカンで構成されていて、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理しても脱色せずに紫色を呈する。このようなグラム陽性菌に分類されるバクテリアとしては、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)、肺炎レンサ球菌(Streptococcus pneumoniae)、腸球菌(Enterococcus faecium)、または乳酸レンサ球菌(Lactobacillus lactis)などがある。
【0029】
また、前記グラム陰性菌は、グラム染色法で染色すれば赤色に染色されるバクテリアを総称するもので、グラム陽性菌に比べて相対的に少ない量のペプチドグリカンを有する細胞壁を有する代わりに、脂質多糖質、脂質タンパク質、および他の複雑な重合体物質で構成された外膜を有する。これによって、クリスタルバイオレットなどの塩基性染料で染色した後、エタノールを処理すれば脱色が起こり、サフラニンのように赤色の染料で対比染色をすれば赤色を呈する。このようなグラム陰性菌に分類されるバクテリアとしては、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、大腸菌(Escherichia coli)、チフス菌(Salmonella typhi)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、またはコレラ菌(Vibrio cholerae)などが挙げられる。
【0030】
したがって、前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌は、接触時に多様な疾病を誘発しうるだけでなく、免疫力の低下した重症患者には2次感染も起こしかねないので、1つの抗菌剤を用いて前記グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して抗菌性を示すことが好ましい。
【0031】
一方、一実施形態による抗菌性共重合体は、前記化化学式1で表される第1繰り返し単位を含むことによって、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも1つに対して抗菌性を示す。具体的には、前記抗菌性共重合体に含まれる抗菌性共重合体をなす特定の炭素数以上のアルキル基を有する4級アンモニウム塩部分(moiety)によって、4級アンモニウム塩のアンモニウム陽イオンがグラム陽性菌またはグラム陰性菌の細胞壁に静電気に吸着し、以後、疎水性を示す4級アンモニウム塩のアルキル基との相互作用によってコーティング組成物は抗菌性を示すことができる。
【0032】
以下、発明の具体的な実施形態により、抗菌性共重合体および抗菌性物品についてより詳しく説明する。
【0033】
抗菌性共重合体
一実施形態の抗菌性共重合体は、下記の化学式1で表される第1繰り返し単位;および1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体に由来する第2繰り返し単位を含む:
【0034】
【化2】
【0035】
前記化学式1中、
Lは炭素数1~10のアルキレンであり、
~Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルであり、
~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、炭素数1~4のアルキルであり、
Xはハロゲンである。
【0036】
特に、抗菌性を示す前記第1繰り返し単位は、前記共重合体中に前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位の総モル数に対して3~60モル%含まれる。前記第1繰り返し単位の含有量が3モル%未満の場合、十分な抗菌効果を示しにくく、前記第1繰り返し単位の含有量が60モル%超の場合、化学的安定性が低下して適用に問題が発生しうる。
【0037】
この時、前記共重合体中での前記化学式1で表される第1繰り返し単位の総数を「n」と称し、第2繰り返し単位の総数を「m」と称する場合に、n:mは3:97~60:40であってもよい。
【0038】
より具体的には、前記第1繰り返し単位は、前記共重合体中に前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位の総モル数に対して3モル%以上、5モル%以上、10モル%以上、20モル%以上、23.1モル%以上、25モル%以上、30モル%以上であり、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、35モル%以下、または33.3モル%以下含まれる。
【0039】
一方、前記第1繰り返し単位に含まれている4級アンモニウム陽イオンは、主鎖に連結されたリンカー(L)と3個の末端基R、RおよびR置換基を有する。この時、リンカー(L)は炭素数1~10の線状アルキレンであってもよい。より具体的には、Lは1~5の線状アルキレン、例えば、メチレン、エチレンまたはプロピレンであってもよい。
【0040】
また、前記第1繰り返し単位の4級アンモニウム陽イオンに置換された3個の末端基R、RおよびR置換基のうちの1つは炭素数5~20のアルキルである。より具体的には、R、RおよびR置換基のうちの1つは炭素数5~20の線状、つまり、直鎖アルキルである。この時、R、RおよびR置換基のすべてが炭素数5個未満のアルキルの場合、抗菌性を示さない問題があり、R、RおよびR置換基のうちの1つでも炭素数20個超のアルキルの場合、前記共重合体製造のための出発物質が溶媒に溶解せずに合成自体が不可能な場合がある。
【0041】
また、前記化学式1中、R~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであってもよい。好ましくは、Rが炭素数5~20のアルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであってもよい。
【0042】
より具体的には、Rはメチルであり、RおよびRは水素であり、R~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであるか;または
~Rはすべて水素であり、R~Rのうちの1つは炭素数5~20のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであってもよい。
【0043】
また、R、RおよびR置換基のうち炭素数5~20のアルキル以外の残りの2個の置換基は互いに同一であってもよい。
【0044】
好ましくは、前記化学式1中、R、RおよびRのうちの1つは炭素数6以上、7以上、または8以上であり、20以下、18以下、16以下、14以下、または12以下であってもよい。このような化学式1で表される第1繰り返し単位を含む抗菌性共重合体は、より優れた抗菌特性を示すことができる。
【0045】
前記化学式1中、Rはメチルであり、RおよびRは水素であり、R~Rのうちの1つは炭素数6~16のアルキルであり、残りはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルである。例えば、Rはメチルであり、RおよびRは水素であり、Rは炭素数6~16のアルキルであり、RおよびRはそれぞれ独立して、メチルまたはエチルであってもよい。このような構造の第1繰り返し単位を含む抗菌性共重合体は、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の少なくとも1つ、より具体的には、グラム陽性菌およびグラム陰性菌の両方に対して優れた抗菌性を示すことができる。
【0046】
また、前記化学式1中、Xはハロゲンであり、好ましくは、クロロ(Cl)またはブロモ(Br)であってもよい。
【0047】
そして、前記化学式1で表される繰り返し単位は、下記の化学式1-1~1-4のいずれか1つで表される:
【0048】
【化3】
【0049】
前記化学式1-1~1-4中、
aは2~9の整数であり、
bは2~8の整数であり、
Xはハロゲンである。
【0050】
より具体的には、前記化学式1-1~1-4中、aは2、3、4、5、6、7、8、または9であってもよく、bは2、3、4、5、6、7、または8であってもよい。
【0051】
この時、前記化学式1で表される第1繰り返し単位は、下記の化学式1’で表される単量体化合物に由来することができる。
【0052】
【化4】
【0053】
前記化学式1’中、
各置換基の定義は前記化学式1で定義した通りである。
【0054】
一例として、前記第1繰り返し単位は、下記で構成される群より選択されるいずれか1つである:
【0055】
【化5】
【0056】
一方、前記第2繰り返し単位は、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体に由来して、前記第1繰り返し単位とともに共重合体を形成することができる。具体的には、前記共重合体は、前記第1繰り返し単位および前記第2繰り返し単位が互いにランダムに配列されているランダム共重合体であってもよい。
【0057】
この時、前記1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体は、アルキル(メタ)アクリレート系単量体、ハロゲン化ビニル単量体、ビニルアルキレート系単量体、アルケニルシアン化物単量体および芳香族ビニル系単量体で構成される群より選択される1種以上であってもよい。
【0058】
前記アルキル(メタ)アクリレート系単量体は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n-アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、n-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n-アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、n-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、セチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、セチルメタクリレート、またはステアリルメタクリレートであってもよいし、好ましくは、メチルメタクリレートであってもよい。
【0059】
また、前記ハロゲン化ビニル単量体は、ビニルクロライド、ビニルブロミド、ビニリデンクロライド(vinylidene chloride)、またはテトラフルオロエチレンであってもよい。
【0060】
また、前記ビニルアルキレート系単量体は、ビニルアセテートなどのビニルアルキレート(CHCH-OC(O)R、ここで、Rは炭素数1~10のアルキル)、ビニルピロリドン、ビニルカルバゾール、またはビニルアルキルエーテル(CHCH-OR、ここで、Rは炭素数1~10のアルキル)であってもよい。
【0061】
また、前記アルケニルシアン化物単量体は、分子内にエチレン性不飽和基とニトリル基をすべて含む単量体であり、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アリルシアニドなどが挙げられる。
【0062】
また、前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、クロロスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、またはジビニルベンゼンであってもよいし、好ましくは、スチレンであってもよい。
【0063】
より具体的には、前記1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体は、メチル(メタ)アクリレート、ビニルクロライド、ビニルアセテート、アクリロニトリル、またはスチレンであってもよい。
【0064】
また、前記抗菌性共重合体は、重量平均分子量(Mw)が10,000~1,000,000g/molであってもよい。前記抗菌性共重合体の重量平均分子量が10,000g/mol未満の場合、一部の分子が重合体の形態ではない単量体やあるいはオリゴマーの形態で存在し得て溶出しやすく、さらに低い分子量によって人体に吸収される問題が発生することがあり、前記抗菌性共重合体の重量平均分子量が1,000,000g/molを超える場合、加工性に問題が生じうる。
【0065】
より具体的には、前記抗菌性共重合体は、重量平均分子量(Mw;g/mol)が10,000以上、15,000以上、20,000以上、23,000以上、25,000以上、25,636以上、29,376以上であり、1,000,000以下、500,000以下、300,000以下、100,000以下、50,000以下、40,000以下、35,000以下、または31,246以下であってもよい。
【0066】
この時、前記抗菌性共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン(PS)を校正(Calibration)用標準試料として用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。より具体的には、前記抗菌性共重合体200mgを200mlのN,N-ジメチルホルムアミド(N,N-Dimethylformamide、DMF)溶媒で希釈して約1000ppmのサンプルを製造した後、Agilent 1200 series GPC機器を用いて、1ml/minの流速(Flow)でRI detectorにより重量平均分子量を測定することができる。この時、サンプルの分子量は、標準PSスタンダード(Standard)8種を用いて検量線を作成した後、これを基準として算出できる。
【0067】
また、前記抗菌性共重合体は、微生物、特にグラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の少なくとも1つに対して優れた抗菌効果を示すことができる。
【0068】
より具体的には、前記抗菌性共重合体は、グラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。あるいは、前記抗菌性共重合体は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。あるいは、前記抗菌性共重合体は、グラム陰性菌に分類されるバクテリア1種以上およびグラム陽性菌に分類されるバクテリア1種以上に対して抗菌性を示すことができる。
【0069】
この時、前記抗菌性共重合体が抗菌性を示すグラム陰性菌は、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、または大腸菌(Escherichia coli)であり、前記グラム陽性菌は、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、または黄色ブドウ状球菌(Staphylococcus aureus)であってもよいが、これらに限定されるものではない。より好ましくは、前記抗菌性共重合体は、グラム陽性菌(Gram-positive bacteria)およびグラム陰性菌(Gram-negative bacteria)の両方に対して抗菌性を示すことができる。この時、抗菌性共重合体が抗菌性を示すとの意味は、前記抗菌性共重合体が基材にコーティングされた後、乾燥して形成された、つまり、前記コーティング組成物から溶媒が除去されて形成されたコーティング層が抗菌性を示すことを意味し、これは後述する吸光度を利用した抗菌特性評価で測定される菌増殖抑制率が60%以上であることが確認可能である。
【0070】
ここで、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)は、グラム陰性(Gram negative)の桿菌、通性嫌気性または好気性細菌であり、多様な環境に分布し、人間と動物の呼吸器や皮膚に感染して泌尿系関連疾病を起こすことがある。特に、人間が前記プロテウス・ミラビリスに感染する場合、尿道感染や急性腎盂腎炎を起こすことが知られている。
【0071】
また、前記抗菌性共重合体のバクテリアに対する抗菌性評価は、JIS Z 2801(プラスチックおよび非多孔性表面で抗菌活性測定)またはASTM E2149(Determining the Antimicrobial Activity of Immobilized Antimicrobial Agents Under Dynamic Contact Conditions)に基づいて測定することができる。
【0072】
具体的には、前記抗菌性共重合体のJIS Z 2801により測定したバクテリアの静菌減少率は、75%以上、80%以上、83.3%以上、90%以上、92.7%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、または99.9%以上であり、100%以下であってもよい。
【0073】
一方、前記共重合体は、前記化学式1’で表される単量体化合物および前記1つ以上のエチレン性不飽和基を有する単量体との共重合によって製造できる。
【0074】
より具体的には、前記共重合は、重合開始剤の存在下で重合される。このような重合開始剤は、重合方法により適切に選択可能であり、熱重合方法を利用する場合には、熱重合開始剤を使用し、光重合方法を利用する場合には、光重合開始剤を使用し、混成重合方法(熱および光をすべて使用する方法)を利用する場合には、熱重合開始剤と光重合開始剤をすべて使用することができる。ただし、光重合方法によっても、紫外線照射などの光照射によって一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するので、追加的に熱重合開始剤を使用することもできる。
【0075】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によってラジカルを形成できる化合物であれば、その構成の限定なく使用可能である。
【0076】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される1つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体例としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートなどが挙げられる。より多様な光開始剤については、Reinhold Schwalm著「UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier2007年)」p.115によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0077】
前記光重合開始剤は、前記単量体の総和100重量部に対して0.001~1重量部含まれる。このような光重合開始剤の含有量が0.001重量部未満の場合、重合速度が遅くなり、光重合開始剤の含有量が1重量部を超えると、重合体の分子量が小さくて物性が不均一になりうる。より具体的には、前記光重合開始剤は、前記単量体の総和100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上かつ、0.5重量部以下、または0.3重量部以下の量で含まれる。
【0078】
また、前記重合開始剤として熱重合開始剤を使用する場合、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤の群より選択される1つ以上を使用することができる。具体的には、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、アゾビスイソブチロニトリル、2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitrile)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odian著「Principle of Polymerization(Wiley,1981)」、p.203によく明示されており、上述した例に限定されない。
【0079】
前記熱重合開始剤は、前記単量体の総和100重量部に対して0.001~3重量部含まれる。このような熱重合開始剤の含有量が0.001重量部未満であれば、追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果がわずかであり、熱重合開始剤の含有量が3重量部を超えると、重合体の分子量が小さくて物性が不均一になりうる。より具体的には、前記熱重合開始剤は、前記単量体の総和100重量部に対して0.005重量部以上、または0.01重量部以上、または0.1重量部以上かつ、3重量部以下、2.5重量部以下、または2.3重量部以下の量で含まれる。
【0080】
また、前記単量体および重合開始剤は、溶媒に溶解した溶液の形態で準備される。
【0081】
この時使用可能な前記溶媒は、上述した成分を溶解できれば、その構成の限定なく使用可能であり、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用可能である。
【0082】
一方、このような単量体間の共重合は、通常知られた方法であれば特別な構成の限定なく行われる。例えば、前記共重合は、60~100℃、または70~90℃の温度で1時間~24時間行われ、反応が完了すれば、製造された重合物を抽出および乾燥して、最終的に所望の共重合体を得ることができる。
【0083】
抗菌性物品
一方、他の実施形態によれば、上述した抗菌性共重合体を含む抗菌性物品が提供される。
【0084】
前記抗菌性物品は、抗菌性が要求される各種生活化学用品、医療用品、自動車用部品、建築材料などその種類は限定されない。より具体的には、前記抗菌性物品は、鮮度保持用材料、ファブリック製品、農業用フィルム、各種事務用品、各種包装材料および医療用品の中から選択される1種以上であってもよい。
【0085】
例えば、食品包装資材、野菜包装資材、穀物包装資材、果物包装資材、精肉包装資材、水産物包装資材、加工食品包装資材などの包装資材、野菜、穀物、果物、精肉、水産物、加工食品などの容器等の鮮度保持用材料;食品用トレイマット;テーブルマット、テーブルクロス、カーペット、座席用シートカバーなどのファブリック製品;農業用フィルム;マスク;テープ、粘着テープ、マスキングテープ、マスキングフィルムなどの事務用品;花包装資材、プラスチック袋、イージーオープン包装袋、買い物バック、スタンディングバック、透明包装箱、自動包装フィルム、電子部品包装資材、機械部品包装資材などの各種包装材料;医療用フィルム、医療用テープ、細胞培養用パックなどの医療用品などであってもよい。
【0086】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0087】
製造例A:抗菌性単量体1-1’の製造
【0088】
【化6】
【0089】
250mlフラスコに、アセトニトリル30ml、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート0.05mol、1-ブロモヘキサン(オクチルブロミド)0.05mol、p-メトキシフェノール4mgを投入した。以後、45℃でマグネチックバーを用いて24時間撹拌してアミノ基にアルキル基を置換して4級アンモニウム塩を製造する反応を進行させた。24時間後、反応が完了した溶液を、ジエチルエーテル溶液200mlに入れて抽出を進行させた。以後、真空フィルタを用いて反応物をろ過し、残っているジエチルエーテルを完全に除去して、前記抗菌性単量体1-1’を製造した(15g、収率:75%)。
【0090】
MS[M+H]+ = 322
1H NMR (500MHz, DMSO-d6,δ[ppm]): 6.07, 5.76(R2,R3), 1.90(R1), 4.51, 3.70, 3.69(L), 3.09(R4,R6), 1.26, 0.87(R5)
【0091】
製造例B:抗菌性単量体1-2’の製造
【0092】
【化7】
【0093】
前記製造例Aにおいて、ブロモヘキサン(bromohexane)の代わりにブロモドデカン(bromododecane)を用いたことを除けば、前記製造例Aと同様の方法を用いて前記抗菌性単量体1-2’を製造した(15g、収率:75%)。
【0094】
MS[M+H]+ = 406
1H NMR (500MHz, DMSO-d6,δ[ppm]): 6.07, 5.76(R2,R3), 1.90(R1), 4.51, 3.70, 3.69(L), 3.09(R4,R6), 1.26, 0.87(R5)
【0095】
実施例1:共重合体1の製造
【0096】
【化8】
【0097】
250mLフラスコに、エタノール370mL、製造例Bで製造した抗菌性単量体1-2’ 0.3当量(121.93g)、メチルメタクリレート1当量(100.12g)およびアゾビスイソブチロニトリル2モル%(4.35g)を投入した。以後、78℃の温度でマグネチックバーを用いて8時間撹拌して重合反応を進行させた。以後、反応が完了した溶液を常温に冷却後、十分な量の水に溶解した。溶解が完了すれば、NaClを過剰添加して固体の重合物を抽出し、以後、真空フィルタを用いて反応物をろ過した後、真空オーブンに残っているエタノールと水を完全に除去して、最終的に共重合体1を得た。
【0098】
この時、製造された共重合体1は上述した繰り返し単位からなる共重合体で、前記共重合体の重量平均分子量は25,636g/molであり、nは36であり、mは120であった。この時、共重合体1の重量平均分子量はGPC(Agilent 1200 series GPC)を用いて測定し、DMFに重合体を溶解して測定された。
【0099】
実施例2:共重合体2の製造
前記実施例1において、抗菌性単量体1-2’を0.3当量ではなく0.5当量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法を用いて共重合体2を製造した。製造された共重合体2の重量平均分子量は31,246g/molであり、nは54であり、mは108であった。
【0100】
実施例3:共重合体3の製造
前記実施例1において、メチルメタクリレートを1当量ではなく0.7当量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法を用いて共重合体3を製造した。製造された共重合体3の重量平均分子量は29,376g/molであり、nは48であり、mは112であった。
【0101】
比較例1:重合体PMMAの製造
250mlフラスコに、メチルメタクリレート1.5当量およびアゾビスイソブチロニトリル2モル%を投入した。以後、78℃の温度でマグネチックバーを用いて8時間撹拌して重合反応を進行させた。以後、反応が完了した溶液を常温に冷却後、十分な量の水に溶解した。溶解が完了すれば、NaClを過剰添加して固体の重合物を抽出し、以後、真空フィルタを用いて反応物をろ過した後、真空オーブンに残っているエタノールと水を完全に除去して、最終的に単一重合体PMMAを得た。
【0102】
この時、製造された単一重合体PMMAの重量平均分子量は19,423g/molであり、メチルメタクリレートに由来する繰り返し単位の数は194であった。
【0103】
比較例2:共重合体4の製造
前記実施例1において、抗菌性単量体1-2’を0.3当量ではなく0.029当量用い、メチルメタクリレートを1当量ではなく0.971当量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法を用いて共重合体4を製造した。製造された共重合体4の重量平均分子量は41,368g/molであり、nは58であり、mは1942であった。
【0104】
比較例3:共重合体5の製造
前記実施例1において、抗菌性単量体1-2’を0.3当量ではなく0.7当量用い、メチルメタクリレートを1当量ではなく0.3当量用いたことを除けば、実施例1と同様の方法を用いて共重合体5を製造した。製造された共重合体5の重量平均分子量は35,389g/molであり、nは84であり、mは36であった。
【0105】
実験例
4種のバクテリアである、プロテウス・ミラビリス(Proteus Mirabilis、ATCC7002)、大腸菌(E.coli、ATCC25922)、エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis、ATCC29212)および黄色ブドウ状球菌(S.aureus、ATCC15923)それぞれに対して、JIS Z 2801(プラスチックおよび非多孔性表面で抗菌活性測定)およびASTM E2149(Determining the Antimicrobial Activity of Immobilized Antimicrobial Agents Under Dynamic Contact Conditions)に基づいて抗菌特性を評価した。
【0106】
(1)JIS Z 2801による抗菌特性評価
まず、37℃の恒温恒湿器で24時間培養した菌株を分離して、滅菌されたトリプティックソイブロス(tryptic soy broth)で希釈して、2.5-10×105CFU/mLの菌液を準備した。
【0107】
次に、実施例および比較例で製造した共重合体をジメチルスルホキシド(DMSO)に5%~20%に溶解させて、スピンコーター(spin coater)を用いて1200rpmで2分間作動させて、5×5cmサイズのフィルム状に製造後、これを5cm×5cmサイズの正方形に切断した後、これを試験片とし、この試験片の表面を70%エタノールを用いて洗浄し、紫外線で30分間殺菌した。
【0108】
殺菌された試験片をペトリディッシュ(petri dish)上に載せて、菌液0.4mL(2.5-10×10CFU/mL)を試験片の表面上に接種(inoculation)した後、4cm×4cmサイズのLDPEフィルムで完全に密着するように覆った。菌が塗布された試験片を37℃の恒温恒湿器で24時間培養させた後、フィルムとトリプティックソイブロス(tryptic soy broth)栄養培地10mLをストマッカー用袋に共に入れて洗った。洗った菌液1mLを取ってこれを100倍に希釈した後、ニュートリエント寒天(nutrient agar)20ml入りのペトリディッシュ(petri dish)に希釈液1mLを塗抹した後、37℃の恒温恒湿器で48時間最終培養した後、菌群集の数を数え、下記の数式1を用いて抗菌活性値を求め、3回反復試験後に求められた平均値を用いて静菌減少率を求め、その値を下記表1に示した。
【0109】
[数式1]
抗菌活性値(R)=[log(B/A)/log(C/A)]=[log(B/C)]
前記数式1中、
Aは比較例1を用いて製造した試験片の接種直後の生菌数の平均値であり、
Bは比較例1を用いて製造した試験片の24時間培養後の生菌数の平均値であり、
Cは実施例および比較例を用いて製造した試験片の24時間培養後の生菌数の平均値である。
【0110】
(2)ASTM E2149による抗菌特性評価
菌をテストする試料に一定時間接触させた後、回収して培地に培養した後、対照群(Control)とのCFU(colony forming unit)を比較して静菌減少率を計算した。抗菌試験に必要な培地および試験群の製造法と抗菌試験の詳細な方法は次の通りである。
【0111】
[培地製造]
液体培地の場合、NB broth8g、蒸留水1Lを2L容器に入れて十分に溶解した後、高温高圧滅菌器に103kPAの蒸気圧力と(120±2)℃で20分間滅菌した。
【0112】
固体培地の場合、NB broth8gと寒天粉末(agar powder)25g、蒸留水1Lを2L容器に入れて、スプーンでかき回したり加熱して溶解した。壁面についた寒天粉末(agar powder)は滅菌過程中に高温でも溶けないことから振って溶解しないようにした。そして、液体培地と同一の条件で滅菌した。NB brothは40℃で固まるため、滅菌後、60℃まで温度が下がった時、溶液を25mLずつ直径90mmのペトリディッシュに注いで固めた。
【0113】
[試験群培養]
(i)ループを用いて所蔵菌株の一部を10mLの液体培地に移植し、(37±1)℃で18時間~24時間シェーキングインキュベーター(shaking incubator)を用いて懸濁培養した。
(ii)液状に培養された菌を2000rpmで3分間遠心分離して培地から菌のみ分離した後、600nmの波長でOD値(optical density)が1となるように1X PBSを用いて希釈した。プロテウス・ミラビリス(Proteus Mirabilis)はOD600nm=0.45でのCFU値は約2×10CFU/mLであり、大腸菌(E.coli)のOD600nm=0.45でのCFU値は2×10CFU/mLであり、エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)はOD600nm=0.45でのCFU値は約2×10CFU/mLであった。
【0114】
[静菌減少率測定]
(i)50mLコニカルチューブに、粉末または液状の抗菌試料0.5g、10CFU濃度の菌25mL(1X PBS25mL、OD600nm=0.45値の菌250uL)を添加した。対照試験片は抗菌試料を除いた残り(菌、PBS)を50mLコニカルチューブに準備した。
(ii)準備されたサンプルはシェーキングインキュベーター(shaking incubator)を用いて(37±1)℃で18時間~24時間懸濁培養した。
(iii)菌培養が終わった試料を1倍、10倍、100倍に希釈して、寒天(agar)固体培地に100ulずつ接種した後、スプレッダまたはビー玉を用いて培地に吸収されるまで塗抹した。
(iv)固体培地を(37±1)℃で24時間~48時間静置培養した。
(v)1倍、10倍、100倍希釈サンプルのうち30~300個の菌のコロニー(colony)があるペトリディッシュのコロニーを数えて記録した。その後、対照群に比べて試料のCFU数が何パーセント減少したかを下記の数式2により計算して静菌減少率(%)を求め、3回反復試験後に求められた平均値を求めた。
【0115】
[数式2]
静菌減少率(%)=[1-(試験群の菌数/対照群の菌数)]×100
前記数式2中、
試験群の菌数は各実施例および比較例の共重合体での抗菌試験菌数
対照群の菌数は比較例1の共重合体での抗菌試験後の菌数
【0116】
(3)耐薬品性テスト
実施例および比較例で製造された共重合体の耐薬品性を評価するために、JIS Z 2801により製造された試験片上に菌液を接種(inoculation)した時、試験片の表面が白く変形が起こりながらべたつきが発生するか否か、およびASTM E2149による時、各共重合体の表面にスウェリング(swelling)が起こりながらべたつきが発生するか否かをそれぞれ確認し、その結果を下記表1に示した。この時、「○」の表示は変形およびべたつきが発生せずに耐薬品性に優れていることを意味し、「X」の表示は変形およびべたつきが発生して耐薬品性が良くないことを意味する。
【0117】
【表1】
【0118】
前記表1を参照すれば、実施例の共重合体は、前記化学式1で表される第1繰り返し単位を含まない比較例1の共重合体、および前記化学式1で表される第1繰り返し単位の含有量が過度に低い比較例2の共重合体4に比べて、プロテウス・ミラビリス(Proteus Mirabilis)、大腸菌(E.coli)、エンテロコッカス・フェカーリス(E.faecalis)および黄色ブドウ状球菌(S.aureus、ATCC15923)の両方に対して顕著に向上した抗菌特性を示すことが分かる。
【0119】
また、前記化学式1で表される第1繰り返し単位の含有量が過度に高い比較例3の共重合体5の場合、JIS Z 2801により製造された試験片上に菌液を接種した時、試験片の表面が白く変形が起こりながらべたつきが発生し、ASTM E2149による時も、重合体の表面が水に溶解してスウェリングおよびべたつきが発生した。したがって、このような比較例3の共重合体5は、耐久性および耐薬品性が低下して、使用時に物性の低下が予想されることから、物品への適用性が非常に劣るといえる。これに対し、実施例の共重合体は、バクテリアによる変形およびべたつきが起こらずに耐久性および耐薬品性に優れていることを確認することができた。
【0120】
これによって、前記化学式1で表される第1繰り返し単位を特定の範囲に含む実施例の抗菌性共重合体は、耐薬品性に優れていながらも、同時にグラム陰性菌およびグラム陽性菌に対して向上した抗菌特性を示すことが確認される。
【国際調査報告】