(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】キサンチンオキシダーゼ阻害剤を合成するための中間体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 209/08 20060101AFI20240621BHJP
C07D 209/42 20060101ALI20240621BHJP
C07D 403/04 20060101ALI20240621BHJP
【FI】
C07D209/08
C07D209/42
C07D403/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579843
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 KR2022009544
(87)【国際公開番号】W WO2023277658
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0087042
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ア・ビョル・パク
(72)【発明者】
【氏名】ジュ・ヨル・イ
(72)【発明者】
【氏名】キ・デ・キム
(72)【発明者】
【氏名】フイ・ラク・ジョン
(57)【要約】
本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤を合成するための中間体の製造方法に関し、より具体的には、安価な出発物質及びリガンドを使用し、キレート抽出及び精製技術を採用して、式(2)及び式(4)化合物を製造する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)の化合物の製造方法であって、
(i)下記式(1)
【化1】
(式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルである)で示される化合物及びX-R3を有機溶媒中でKOHを含む塩基とともに反応させる工程;及び
(ii)アルコール及び炭素数5~8個の炭化水素を含む逆溶媒(逆溶媒)を用いて、前記工程(i)で得られた生成物を結晶化する工程;
を含む下記式(2)
【化2】
[式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化3】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)である。]で示される化合物の製造方法。
【請求項2】
前記X-R3が、2-ヨードプロパンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒が、アセトンであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルコールが、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記炭素数5~8個の炭化水素が、ヘキサン、ヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
下記式(4)の化合物の製造方法であって、
下記式(2)
【化4】
[式中、式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化5】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)である。]で示される化合物及び式(3)
【化6】
(式中、R4は、水素、ハロゲン又はC
1-C
7アルキルであり;R5は、-C(O)OR8(ここで、R8は、水素、C
1-C
7アルキル又はC
3-C
7シクロアルキルである)である。)で示される化合物を銅触媒、塩基及びN,N-ジメチルエチレンジアミンを含むリガンドを用いて、有機溶媒中でC-Nカップリング反応を行う工程を含む、下記式(4)
【化7】
[式中、R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化8】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)であり、R4は、水素、ハロゲン又はC
1-C
7アルキルであり;R5は、-C(O)OR8(ここで、R8は、水素、C
1-C
7アルキル又はC
3-C
7シクロアルキルである)である。]で示される化合物の製造方法。
【請求項7】
前記有機溶媒が、キシレン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)及びジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記銅触媒が、CuI、Cu(OAc)
2、Cu、Cu
2O及びCuOからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項9】
前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸セシウム、第三リン酸カリウム、トリエチルアミン及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
EDTA、クエン酸、クエン酸カリウム塩及びクエン酸ナトリウム塩よりなる群から選択される1つ以上のキレート試薬;及び
塩化アンモニウム及びアンモニア水からなる群から選択される1つ以上のリガンド試薬;
を用いて、式(4)の化合物を精製する工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
R1がCNであり、R2が水素であり、R3がイソプロピルであることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
R1がCNであり、R2が水素であり、R3がイソプロピルであり、R4が水素であり、R5がエトキシカルボニル(-C(O)OEt)であることを特徴とする請求項6~10のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤を合成するための中間体の製造方法に関することで、より具体的には、安価な出発物質及びリガンドを使用し、キレート抽出及び精製技術を採用して、下記式(2)
【化1】
[式中、式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化2】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)である。]
で示される化合物及び式(4)
【化3】
[式中、R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化4】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)であり、R4は、水素、ハロゲン又はC
1-C
7アルキルであり;R5は、-C(O)OR8(ここで、R8は、水素、C
1-C
7アルキル又はC
3-C
7シクロアルキルである)である。]で示される化合物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)は、ヒポキサンチンをキサンチンに変換し、さらにこうして形成されたキサンチンを尿酸に変換する酵素として知らされている。ほとんどの哺乳動物はウリカーゼを持っているが、ヒトとチンパンジーは持っていないため、尿酸はプリン代謝の最終産物として知られている(非特許文献1)。血中尿酸濃度の上昇が続くと、痛風を代表とする様々な疾患が引き起こされる。
【0003】
前述するように、痛風は体内の尿酸数値の上昇によって引き起こされ、軟骨、靭帯及びその周辺組織に蓄積した尿酸結晶が激しい炎症と痛みを引き起こす状態をいう。痛風は炎症性関節疾患の一種であり、その発症率は過去40年間発着実に増加している(非特許文献2)。
【0004】
従って、新しいキサンチンオキシダーゼ阻害剤を開発するために様々な研究が行われ、特許文献1にはキサンチンオキシダーゼ阻害剤として有効である、以下の新規化合物が開示されている。
【化5】
【0005】
特許文献1では、前記キサンチンオキシダーゼ阻害剤の中間体である5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの従来の製造工程が開示されているが、経済性が低く、密度が高いため使用に不便なCsCO3を使用されているため、その代替品を確保する必要があった。さらに、確立された精製方法がないため、反応及び後処理(work up)工程後に得られた有機層を濃縮し、直ちに次の反応を行った。このとき、精製されていないために反応混合物に含まれた5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが、次の反応で不純物を生成させる原因物質として作用し、製品の品質に悪影響を及ぼすという問題点があった。
【0006】
さらに、従来の1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの製造工程は、反応時間が35~48時間と非常に長く、出発物質である5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールが残留し、様々な不純物が生成された。その結果、これらの物質は原料となる医薬品に影響を与える可能性があり、品質及び収率を改善させる必要があった。また、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの反応完了後、Na2SO4とシリカゲルを反応器に投入し、吸着工程を行った後、後処理工程でCu錯体及び無機副生成物を除去した。このとき、製造装置の洗浄が課題となる。また、吸着剤及び固体複合体を除去するためのろ過及び洗浄は工程時間が長くなり、固体廃棄物処理が困難であるため、効果的な精製方法の開発が必要とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国 特開 第10-2011-0037883号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】S. P. Bruce, Ann. Pharm., 2006, 40, 2187-2194
【非特許文献2】N. L. Edwards, Arthritis & Rheumatism, 2008, 58, 2587-2590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の技術的課題は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤の合成における重要な中間体である下記式(2)
【化6】
(式中、X、R1、R2及びR3は、本明細書で定義したものと同義である)
で示される化合物及び下記式(4)
【化7】
(式中、R1、R2、R3、R4及びR5は、本明細書で定義したものと同義である)で示される化合物を低コストで、残留不純物を効果的に低減し、反応時間を短縮し、収率を向上させ、固体廃棄物の発生の可能性を排除して製造するための新規な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、
(i)下記式(1)
【化8】
(式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルである)で示される化合物及びX-R3を有機溶媒中でKOHを含む塩基とともに反応させる工程;及び
(ii)アルコール及び炭素数5~8個の炭化水素を含む逆溶媒(anti-solvent)を用いて、前記工程(i)で得られた生成物を結晶化する工程;
を含む下記式(2)
【化9】
[式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化10】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)である。]で示される化合物の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、前記X-R3は、2-ヨードプロパンであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記有機溶媒はアセトンであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールよりなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、前記炭素数5~8個の炭化水素は、ヘキサン、ヘプタン及びそれらの混合物からなる群から選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、R1がCNであり、R2が水素であり、R3がイソプロピルであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の別の側面によれば、下記式(2)
【化11】
[式中、式中、Xは、F、Cl、Br又はIであり;R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化12】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)である。]で示される化合物及び式(3)
【化13】
(式中、R4は、水素、ハロゲン又はC
1-C
7アルキルであり;R5は、-C(O)OR8(ここで、R8は、水素、C
1-C
7アルキル又はC
3-C
7シクロアルキルである)である。)で示される化合物を銅触媒、塩基及びN,N-ジメチルエチレンジアミンを含むリガンドを用いて、有機溶媒中でC-Nカップリング反応を行う工程を含む、下記式(4)
【化14】
[式中、R1は、水素又はCNであり;R2は、水素、ハロゲン、C
1-C
7アルキル、C
1-C
7アルコキシ-C
1-C
7アルキル又はフェニルであり;R3は、水素;非置換又はハロゲン、C
3-C
7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6はC
1-C
4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC
1-C
7アルキル;C
3-C
7シクロアルキル;又は
【化15】
(ここで、Wは、O又はSであり、R7は、水素又はC
1-C
4アルキルであり、nは、0~3の整数である)であり、R4は、水素、ハロゲン又はC
1-C
7アルキルであり;R5は、-C(O)OR8(ここで、R8は、水素、C
1-C
7アルキル又はC
3-C
7シクロアルキルである)である。]で示される化合物の製造方法が提供される。
【0017】
本発明の一実施形態により、前記有機溶媒がキシレン、トルエン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)からなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記銅触媒が、CuI、Cu(OAc)2、Cu、Cu2O及びCuOからなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記塩基が、炭酸カリウム、炭酸セシウム、第三リン酸カリウム、トリエチルアミン及びナトリウムtert-ブトキシドからなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、前記式(4)の化合物の製造方法は、EDTA、クエン酸、クエン酸カリウム塩及びクエン酸ナトリウム塩よりなる群から選択される1つ以上のキレート試薬;及び
塩化アンモニウム及びアンモニア水からなる群から選択される1つ以上のリガンド試薬を用いて、式(4)の化合物を精製する工程をさらに含むが、これに限定されるものではない。
【0021】
本発明の一実施例によれば、R1がCNであり、R2が水素であり、R3がイソプロピルであり、R4が水素であり、R5がエトキシカルボニル(-C(O)OEt)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0022】
本発明の製造方法は、式(2)の化合物製造において、高価なCs2CO3を著しく安価なKOHに置き換えることにより、経済性を確保し、残留不純物を効果的に低減することができる。また、本発明の製造方法は、式(4)の化合物を製造する際に、反応時間を劇的に短縮すると同時に、従来の方法に比べて収率が劇的に向上し、固体廃棄物の発生の可能性を大幅に低減することができ、これにより、スケールアップが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化前後の残留5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールのHPLCピーク面積を比較した図である(GD40:5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドール、GD60:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール)。
【
図2】1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応に供されたリガンドの構造を示す図である。
【
図3】5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールから1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへのHPLC転換率(%)を示す図である。
【
図4】5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールから1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへのHPLC転換率(%)を示す図である。
【
図5】5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールから1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへのHPLC転換率(%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものでないことを理解されたい。
【0025】
実施例1:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール反応実験の結果
実施例1.1:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの塩基スクリーニング
【0026】
従来公知の工程で5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの合成に使用される原料であるCs
2CO
3はかなり高価であり、5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールに対して1.7当量が反応に投入され、原料コストの約1%を占めた。また、Cs
2CO
3は密度が高いため(密度4.07g/cm
3)、反応中の撹拌をスムーズに行うために撹拌速度の運転範囲を広げた。このような問題を解決するために、まずインドール源として5-ブロモインドールを選択し、下記反応スキーム1で各種塩基のスクリーニングを行った(表1)。
<反応スキーム1>
【化16】
【0027】
【0028】
1.7当量の2-ヨードプロパンと反応溶媒としてDMFを選択し、反応温度と反応時間を変更しながら、アルキル化生成物への転換率の観点から適切な塩基を予測した。実施例1-1-1~1-1-5では、KOHが最も高い転換率を示した。実施例1-1-7~1-1-11の場合は、反応温度を90℃に上げてから反応を行った。その結果、K2CO3<Cs2CO3<STP<NaOMe≦KOHの転換率傾向性を知ることができた。
【0029】
実施例1-1-12~1-1-18では、KOHとNaOMeと比較するために、反応温度と当量を変更した。その結果、KOHを塩基として用いた場合に最も好ましい結果が得られた。表1の実験に基づいて、5-ブロモインドールのC3位が、CN基が置換された5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールを用いて、下記の反応スキーム2でイソプロピル化反応を行った(表2)。
<反応スキーム2>
【化17】
【0030】
【0031】
実施例1-2-1により、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール反応条件では、反応完了後に5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが残留しないことが確認された。実施例1-2-2~1-2-4ではCs
2CO
3の代わりにKOHに変更し、DMF溶媒中で反応を行った。反応温度及び2-ヨードプロパンの当量とKOHの当量を変更した結果、反応は良好に進んだが、出発物質(5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドール)の0.43~0.93%残存していることが確認された。実施例1-2-5では、塩基としてKOHを用い、反応溶媒をDMFからアセトンに変更し、還流条件下で反応を行った。その結果、従来のCs
2CO
3を用いた場合と同様の結果が得られることが確認された。従って、Cs
2CO
3をKOHに変更することができることが分かった。前記表1及び表2の結果を検証するために、追加の実験を行った。5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール反応では、イソプロピル化生成物への転換率だけでなく、反応完了後の後処理工程過程で生成される脱イソプロピル化不純物の含量変化と実際の単離収率を確認する必要があった。下記の反応スキーム3において、7種類の塩基と反応溶媒としてアセトンを用いた還流条件下での反応内容をまとめた(表3)。
<反応スキーム3>
【化18】
【0032】
【0033】
実施例1-3-1は、イソプロピル化反応に用いられたCs2CO3を用いた実験であり、反応完了後に後処理及び濃縮を行ったところ、脱イソプロピル化不純物が0.03%から0.16%に増加することが確認された。実施例1-3-2の場合、LiOHを塩基として使用し、後処理後、有機層を分離、濃縮し、結晶化工程を進める前に試料を分析した。その結果、脱イソプロピル化不純物が12.76%から24.80%に増加していることが確認された。実施例1-3-4及び1-3-5におけるNaOHとKOHを用いた実験でも、後処理工程において脱イソプロピル化不純物が増加する傾向が確認された。後処理中に生成される中間層のタール生成量、反応時間と単離収率、塩基購入価格などを考慮すると、Cs2CO3よりKOHを使用した方が好ましいと判断した。
【0034】
実施例2:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール結晶化実験の結果
【0035】
実施例2.1:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール結晶化工程の検討
前記実施例1で説明したように、脱イソプロピル化不純物が、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール工程で残留すると、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルのC-Nカップリング反応においてインドール二量体不純物が生成され、後の製造工程で除去が容易でなかった。
<反応スキーム4>脱イソプロピル化不純物によるインドール二量体不純物の生成
【0036】
【化19】
GD40:5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドール
GD60:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール
GD65:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル
【0037】
特に、反応中に脱イソプロピル化不純物はほとんど生成されなかったが、後処理中又は酢酸エチル蒸留及びトルエンによる共沸蒸留工程において増加する傾向が確認された(表4)。
【0038】
【0039】
5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの脱イソプロピル化不純物をHPLC分析で追跡した結果、反応IPC(工程内管理)では検出されなかったが、後処理と蒸留工程中に増加していることが観察された。このようにして得られた5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールを用いて、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸及び1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の製造工程を行った。最終API(原薬)を分析した。その結果、インドール二量体として予想される不純物が検出されたため、オプション工程を行った。
【0040】
実施例2.1.1:i-PrOHを用いた5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化
溶解度曲線により得られた結果に基づいて、i-PrOHを用いた5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化を行った。Cs2CO3を用いて5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールを合成する工程では、層分離後、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの脱イソプロピル化によって5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが再生成され、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応に参加してインドール二量体を生成することになる。5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールを予め除去し、インドール二量体の生成を抑制できる条件を探索するために、5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールを0.86%、1.56%、3.00%含むようにスパイクした後、それらを還流条件で溶解し、室温でゆっくり冷却し、0~5℃で1時間保持し、次いでろ過した。得られた結晶のHPLC純度と総収率をまとめた(表5)。
【0041】
【0042】
実施例2-1-1~2-1-3の結果、1.0倍のi-PrOHを用いて結晶化を行っても脱イソプロピル化不純物である5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが少量残留していることが確認された。初期の出発物質である5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが十分に5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールに転換されなかった場合、又は5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールの含量が後処理工程で脱イソプロピル化不純物が増加した不純物は、1倍のi-PrOHを用いた結晶化工程を行っても完全に除去することができなかった。
図1は、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化前後の残留5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールのHPLCピーク面積を比較したものである。
【0043】
実施例2.1.2:i-PrOHと逆溶媒を用いた5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化(実験室規模)
i-PrOHを用いて結晶化を行ったとき、残留5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが精製されていたことを確認し、逆溶媒を用いて収率を増加させる結晶化条件を探索した。i-PrOH、ヘキサン、ヘプタンを用いて結晶化を行ったとき、残渣5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが効果的に除去されていたことを確認し、ヘキサンとヘプタンと間で純収率に有意な差は無かった(表6)。
【0044】
【0045】
実施例2.1.3:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化条件の探索
5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの結晶化工程における収率を向上させながら、5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが除去されるかどうかを確認するための追加の試験が行われた。5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールは、0.78%と2.59%をスパイクし、結晶化後、残留する量をHPLCで確認された。
【0046】
i-PrOHの量を減らすと、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの収率が向上するが、5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールは残留することが確認された。これらの結果から、残留5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールを完全に除去するためには、i-PrOHを1倍、ヘプタンを2倍とうい条件で結晶化を進めることが好ましいと判断された。しかし、反応中に5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドールが0.78%以下存在する状態で結晶化を行えば、0.5倍のi-PrOHを用いて結晶化を行っても管理可能であることが判明した(表7)。
【0047】
【0048】
実施例3:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールの製造方法
反応器にアセトン(800L)、5-ブロモ-3-シアノ-1H-インドール(300kg)、KOH(114kg)、2-ヨードプロパン(346kg)を順次加え、高温還流条件下で反応を行った。HPLCで反応の終結を確認した後、反応混合物を室温まで冷却した。抽出及び層分離のため、EtOAc(1,353kg)、精製水(1,500kg)を反応混合物に追加的に加え、1時間撹拌し、1時間静置し、下に形成された水層を廃棄した。残った有機層を精密ろ過し、蒸留によって可能か限り濃縮し、残留EtOAcをGCによって確認した。濃縮された反応混合物に2-プロパノール(150L)及びヘプタン(816kg)を加えた後、78℃に昇温した。反応混合物が透明であることを目視で確認し、さらに30分間撹拌した後、ゆっくり冷却した。約6時間かけて冷却し、5~10℃で1時間静置した後、ろ過した。濾過した固体をヘプタン(408kg)で洗浄し、窒素乾燥して、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール(335.7kg、94.0%総収率)を得た。
【0049】
実施例4:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応の実験結果
【0050】
実施例4.1.1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの工程研究
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの従来の製造工程では、濃縮された粗製5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールに1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル、触媒としてCuI、リガンドとして1,2-シクロヘキサンジアミン(1,2-CHDA)、塩基としてK
2CO
3、及び反応溶媒としてトルエンを用い、還流条件下で38~45時間撹拌し、冷却し、NH
4OH及び精製水を用いて後処理した。後処理後、層分離した有機層には過量のタール及び固体不純物が含まれていた。これらの不純物を除去するために、Na
2SO
4とシリカゲルを加え、撹拌し、ろ過した。このとき、Na
2SO
4とシリカゲルの量は、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールと同じ重量比で使用したため、ろ過工程において多量の固体廃棄物が発生した。ろ液を洗浄した反応器に移して濃縮し、濃縮完了後、i-PrOHを加えて昇温、冷却により結晶化工程を行い、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルを得た。従来の工程の平均収率は56%程度であった。
<反応スキーム5>1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの工程
【化20】
GD10:1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル
GD60:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール
GD65:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル
【0051】
実施例4.1.1:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応のためのリガンドスクリーニング
前記工程と同様に、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの場合、C-Nカップリング反応には1,2-CHDA(1,2-シクロヘキサンジアミン、L1)を使用した。この場合、1級アミンリガンドが5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールと結合し、過剰な5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-リガンド不純物が生成されることが確認された。最終的には、リガンドと結合した不純物が収率に影響を与えるだけでなく、反応の完結を遅らせたり、反応が完結しなかったりする場合があった。これらの問題を解決するために、まずリガンドスクリーニングを行った。スクリーニングに使用されたリガンドは、N-Nリガンド、N-Oリガンド及びその他の適用可能なリガンドを選択することによって実験を行った(
図3)。
【0052】
リガンドスクリーニング実験条件は以下の通りであった:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール(1.0当量)、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(1.0当量)、トルエン(4倍、倍数=5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールのmL/g)、CuI(0.2当量)、K
2CO
3(2、0当量)及びリガンド(0.4当量)を加え、外部設定温度125~130℃で24時間撹拌し、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールから1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへの転換率(%)を評価基準として実験を行った(
図3)。
【0053】
図3からわかるように、リガンドL1(1,2-シクロヘキサンジアミン)を用いた場合、変換率は38.85%であったが、リガンドL10(N,N-ジメチルエチレンジアミン、DMEDA)をもちいた場合、87.28%の高い転換率が得られたことが確認された。
【0054】
最終的に、同じ反応時間でリガンドをL10に変更すると、反応速度が向上し、不純物が抑制され、有率が高くなる。L2(1,2-フェナントロリン)0.41%、L7(JohnPhos)2.1%を除いて、他のリガンドの場合には全く反応が進行しなかった。
【0055】
実施例4.1.2:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応のための塩基及び溶媒のスクリーニング
実施例4.1.1.では、従来使用していたL1リガンドよりもL10リガンドを使用した場合、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへの転換率が増加することが確認された。次に、塩基のスクリーニング実験を行った(
図4)。
【0056】
【0057】
図4の実験条件は以下の通りであった:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール(1.0当量)、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(1.0当量)、溶媒(4倍、倍数=5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールのmL/g)、CuI(0.2当量)、塩基(2.0当量)、1,2-CHDA(0.4当量)を加え、外部設定温度125~130℃で24時間撹拌し、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールから1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへの転換率(%)を評価基準として実験を行った。まず、トルエン溶媒中、塩基としてK
2CO
3、K
3PO
4、Nat-ブトキシド、Cs
2CO
3を用いて反応させた結果、K
2CO
3とK
3PO
4では77.6%と81.4%の転換率を確認された。一方、Nat-ブトキシドとCs
2CO
3ではほとんど反応が進まなかった。反応溶媒をDMFに変更すると、K
2CO
3、Nat-ブトキシド、Cs
2CO
3はトルエンに比べて良好な転換率を示し、K
3PO
4は全く反応しなかった。DMSOを使用した場合、トルエンを使用した実験と同様の傾向を示したが、転換率が比較的低くかった。前記実験では塩基と溶媒の購入価格と製造工程の安全性、後工程(後処理及び蒸留)を考慮すると、塩基としてK
2CO
3、溶媒としてトルエンを使用することが好ましいと判断された。
【0058】
実施例4.1.3:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応のための触媒スクリーニング
実施例4.1.1.及び実施例4.1.2.では、リガンドとして1,2-シクロヘキサンジアミン(L1)よりもN,N-ジメチルエチレンジアミン(L10)を使用した方が反応速度及び転換率に優れ、塩基と反応溶媒としてK
2CO
3とトルエンが、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル反応に好ましいことが明らかになった。1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの合成は、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルと5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールのC-Nカップリングの触媒として銅源を使用するウルマン反応であるため、種々の銅触媒をスクリーニングする必要があった。さらに、パラジウム触媒を用いたバックワルド・ハートウィグ型のクロスカップリング反応を研究する必要があった。合計4種の触媒についてスクリーニング実験を行った(
図5)。
【0059】
実験条件は以下の通りであった:5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール(1.0当量)、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(1.0equiv)、溶媒(4倍、倍数=5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールのmL/g)、触媒(0.2当量)、K2CO3(2.0当量)、1,2-CHDA(0.4当量)を加え、外部設定温度125~130℃で24時間撹拌し、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールで1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへの転換率(%)を評価基準として実験を行った。
【0060】
【0061】
触媒スクリーニング実験では、カルーセルマルチリアクターを使用した。実験結果によると、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールで1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへの転換率は、DMSO反応溶媒下で、CuClが最も高かったが、副反応として脱臭素化不純物がHPLCで検出された。パラジウム源としてPd(OAc)2を使用したが、3つの反応溶媒中では全く反応しなかった。Culの場合、DMSO溶媒を使用すると脱臭素化不純物が検出された。その結果、DMSO溶媒中でCuClとCuIを用いて反応を行った場合、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドールから1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルへの転換率は高かったが、同時に脱臭素化不純物生成量が増加するという問題があることが確認された。従って、DMSO溶媒は反応に適していないと判断された。前記実験により、トルエン反応溶媒中で触媒としてCuIを用いた場合の方が、CuBr、CuCl、Pd(OAc)2を用いた場合よりも転換率が高いことが確認された。最終的に、反応溶媒としてトルエンを、触媒としてCuIを選択した。
【0062】
実施例5:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル残留Cu除去の実験結果
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの後処理工程を改善するには、新しい接近方法が必要であった。特に、吸着工程を省略し、層分離を効果的に行うことができる新しい方法を検討した。最終的には、Cu錯体、KBr、K2CO3、過量のタール及びその他の副産物を効果的に除去するために使用する精製水の量を増やす必要があり、キレートかによって銅を効果的に除去する方法が必要であった。この目的のために、キレート剤であるクエン酸とEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を使用して後処理を行った。
【0063】
実施例5.1:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの後処理研究(II)
【0064】
実施例5.1.1:後処理研究(クエン酸)
トルエン溶媒中で反応後、後処理を行ったとき、有機層と水層が濁った塊となり、層分離が良くなかったため、酢酸エチルを加えて、後処理を行った。NH4OHに変わる様々な後処理方法の中で、10%クエン酸溶液を使用したところ、水層がきれいで、層分離も良好であったため、最初の後処理に10%クエン酸水溶液を使用することにした。
【0065】
次に、精製水を加えた後、3N HClを使用してpHを2~3に下げ、Cu錯体を確かに破壊した。次の工程では、5%EDTA二ナノリウム溶液で処理して残留Cuを除去し、この過程をもう一度繰り返した。最後に、精製水を加えて残った塩を洗浄した(模式
図1)。
【0066】
【0067】
実施例5.1.2:後処理の最適化(10%クエン酸+HCl)
最初の後処理に使用した溶液をaq.HClと組み合わせた場合、良好な層分離挙動を示す最適な比率を探索しようとした(表10)。これらの結果に基づいて、最適な条件は10%クエン酸水溶液と6N HCl水溶液を各2倍同時に使用することにより適正pH範囲は2.75~3.5であることが判明した。
【0068】
【表11】
a) 反応は10.0gスケールで行った。b) 反応は100.0gスケールで行った。
【0069】
次に、スケールアップ実験を行った(表11)。2Lの反応器を使用した100.0gスケールでは、10%クエン酸水溶液を4倍加えた場合には、6N HClが2.8倍、10%クエン酸水溶液を8倍加えた場合には、6N HClg2.2倍が加えられたとき、層分離が良好で、色の識別が容易であった。
【0070】
【0071】
従来、Cu除去はシリカゲルとNa2SO4を加えた後、ろ過する工程を経て行われていたが、この過程で多量の固体廃棄物が発生し、その処理に多大な時間を要していた。この問題を解決るために、実施例5に示す様々な実験を行った結果、新たな後処理方法を見出し、ろ過工程をキレート原理を利用した後処理工程に置き変えることができた。
【0072】
実施例6:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルの製造方法
トルエン(880L)、5-ブロモ-3-シアノ-1-イソプロピル-インドール(220kg)、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(129kg)、K2CO3(231kg)を反応器に加え、N2パージを約30分間行った。CuI(32kg)及びDMEDA(30kg)を加えた後、N2パージを維持しながら内部温度45℃に昇温した。還流条件下で9時間反応した後、反応IPC(工程内管理)を行って反応終結が確認し、反応混合物を室温まで冷却した。従来の工程では35時間かかっていた反応時間を9時間に短縮した。抽出及び層分離のために、反応混合物に10%クエン酸水溶液(880L)、EtOAc(794kg)を順次加え、次いでpH=2~3になるように6N HCl(381kg)を滴加した。30分撹拌後、1時間静置し、分離した水層を廃棄した。残った有機層に5%EDTA水溶液(880L)を加えい30分間撹拌し、1時間静置をして層分離を行った。同様の工程を合計2回繰り返した。最後に、精製水(880L)を加え、30分撹拌及び静置して分離した水層を廃棄した。以上の工程において、約35℃で抽出及び層分離を合計4回行った。残った有機層を精密ろ過後、可能な限り蒸留し、濃縮IPC(工程内管理)を行って、EtOAcが除去されたことを確認した。蒸留完了後、反応混合物に2-プロパノール(880L)を加え、昇温した。反応混合物が透明であることを確認したら、7~8時間かけて0~10℃までゆっくり冷却し、約1時間静置し、ろ過した。濾過した固体を2-プロパノール(880L)で洗浄し、窒素及び真空を利用して乾燥して、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(253.5kg、94.0%総収率)を得た。これは、従来工程の収率56%に比べて約1.7倍も高い数値であった。
【国際調査報告】