(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-06-28
(54)【発明の名称】半導体エッチング液
(51)【国際特許分類】
H01L 21/308 20060101AFI20240621BHJP
【FI】
H01L21/308 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580840
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2022026794
(87)【国際公開番号】W WO2023286666
(87)【国際公開日】2023-01-19
(32)【優先日】2021-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】水谷 篤史
(72)【発明者】
【氏名】ブジョロパブリック、ミック
(72)【発明者】
【氏名】バイェステロス、カール
【テーマコード(参考)】
5F043
【Fターム(参考)】
5F043AA07
5F043AA20
5F043BB30
5F043DD07
(57)【要約】
【課題】SiおよびSiGeを含む被処理物を処理する際、Siに対するSiGeのエッチング比が大きく、かつ、保存安定性に優れる半導体エッチング液を提供する。
【解決手段】フッ化物イオン源と、カルボン酸と、過カルボン酸と、過酸化水素と、臭化物イオンと、を含む、半導体エッチング液であって、臭化物イオンの含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である、半導体エッチング液。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
臭化物イオンと、を含む、半導体エッチング液であって、
前記臭化物イオンの含有量が、前記半導体エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である、半導体エッチング液。
【請求項2】
フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、3-モルホリノ-1,2プロパンジオール、および、ジイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メタンスルホン酸、C
12~C
14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
臭化物イオンと、を含み、
前記臭化物イオンの含有量が、前記半導体エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である、半導体エッチング液。
【請求項3】
前記臭化物イオンの含有量が、前記半導体エッチング液の全質量に対して5質量ppt以上である、請求項1に記載の半導体エッチング液。
【請求項4】
前記臭化物イオンの含有量に対する前記カルボン酸の含有量の質量比が、1.0×10
10以上である、請求項1または2に記載の半導体エッチング液。
【請求項5】
フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、を含む、半導体エッチング液であって、
前記カルボン酸と前記過カルボン酸と前記過酸化水素との合計質量に対して、
前記カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、
前記過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、
前記過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である、半導体エッチング液。
【請求項6】
フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、3-モルホリノ-1,2プロパンジオール、および、ジイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メタンスルホン酸、C
12~C
14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む、半導体エッチング液であって、
前記カルボン酸と前記過カルボン酸と前記過酸化水素との合計質量に対して、
前記カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、
前記過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、
前記過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である、半導体エッチング液。
【請求項7】
前記カルボン酸が酢酸であり、前記過カルボン酸が過酢酸である、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項8】
前記フッ化物イオン源が、フッ化水素である、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項9】
臭素酸イオンをさらに含み、
前記臭素酸イオンの含有量が、前記半導体エッチング液の全質量に対して1~100質量ppmである、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項10】
アルコール系溶媒を含まない、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項11】
硫酸をさらに含む、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項12】
スルホン酸基を有する有機化合物をさらに含む、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項13】
前記スルホン酸基を有する有機化合物が、スルホン酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーである、請求項12に記載の半導体エッチング液。
【請求項14】
アミンをさらに含む、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項15】
Mn、Ni、V、Co、Fe、および、Crからなる群より選択される1種以上の元素を含む金属不純物成分をさらに含み、
前記金属不純物成分に含まれるいずれの前記元素の含有量が、前記半導体エッチング液の全質量に対して1.0質量ppb未満である、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項16】
前記金属不純物成分に含まれる前記元素の合計含有量に対する前記過カルボン酸の含有量の質量比が、2.0×10
9以上である、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項17】
前記金属不純物成分に含まれる前記元素の合計含有量に対する前記フッ化物イオン源の含有量の質量比が、2.0×10
7以上である、請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液。
【請求項18】
請求項1、2、5および6のいずれか1項に記載の半導体エッチング液を用いる、半導体デバイスの製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の半導体デバイスの製造方法によって製造される半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体エッチング液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化が進む中で、半導体デバイス製造プロセス中における、処理液を用いたエッチング、または、洗浄等の処理を、高効率かつ精度よく実施する需要が高まっている。
例えば、特許文献1においては、フッ化水素、溶解した過酸化水素、溶解した酢酸、溶解したギ酸、および、溶解した硫酸を含む、水性エッチング組成物を用いて、シリコンに対してシリコンゲルマニウムを選択的に除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、特許文献1に基づいて半導体エッチング液(水性エッチング組成物)について検討したところ、シリコン含有物(以下、単に「Si」ともいう。)に対してシリコンゲルマニウム含有物(以下、単に「SiGe」ともいう。)を選択的にエッチングすることはできるものの、半導体エッチング液の保存安定性に改善の余地があることを見出した。
【0005】
本発明は、上記事情を鑑みて、SiおよびSiGeを含む被処理物を処理する際、Siに対するSiGeのエッチング比が大きく、かつ、保存安定性に優れる半導体エッチング液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
〔1〕 フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
臭化物イオンと、を含む、半導体エッチング液であって、
臭化物イオンの含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である、半導体エッチング液。
〔2〕 フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、3-モルホリノ-1,2プロパンジオール、および、ジイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メタンスルホン酸、C12~C14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
臭化物イオンと、を含み、
臭化物イオンの含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である、半導体エッチング液。
〔3〕 臭化物イオンの含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して5質量ppt以上である、〔1〕または〔2〕に記載の半導体エッチング液。
〔4〕 臭化物イオンの含有量に対するカルボン酸の含有量の質量比が、1.0×1010以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔5〕 フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、を含む、半導体エッチング液であって、
カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、
カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、
過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、
過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である、半導体エッチング液。
〔6〕 フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、3-モルホリノ-1,2プロパンジオール、および、ジイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メタンスルホン酸、C12~C14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む、半導体エッチング液であって、
カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、
カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、
過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、
過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である、半導体エッチング液。
〔7〕 カルボン酸が酢酸であり、過カルボン酸が過酢酸である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔8〕 フッ化物イオン源が、フッ化水素である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔9〕 臭素酸イオンをさらに含み、
臭素酸イオンの含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して1~100質量ppmである、〔1〕~〔8〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔10〕 アルコール系溶媒を含まない、〔1〕~〔9〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔11〕 硫酸をさらに含む、〔1〕~〔10〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔12〕 スルホン酸基を有する有機化合物をさらに含む、〔1〕~〔11〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔13〕 スルホン酸基を有する有機化合物が、スルホン酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーである、〔12〕に記載の半導体エッチング液。
〔14〕 アミンをさらに含む、〔1〕~〔13〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔15〕 Mn、Ni、V、Co、Fe、および、Crからなる群より選択される1種以上の元素を含む金属不純物成分をさらに含み、
金属不純物成分に含まれるいずれの元素の含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して1.0質量ppb未満である、〔1〕~〔14〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔16〕 金属不純物成分に含まれる元素の合計含有量に対する過カルボン酸の含有量の質量比が、2.0×109以上である、〔1〕~〔15〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔17〕 金属不純物成分に含まれる元素の合計含有量に対するフッ化物イオン源の含有量の質量比が、2.0×107以上である、〔1〕~〔16〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液。
〔18〕 〔1〕~〔17〕のいずれか1つに記載の半導体エッチング液を用いる、半導体デバイスの製造方法。
〔19〕 〔18〕に記載の半導体デバイスの製造方法によって製造される半導体デバイス。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、SiおよびSiGeを含む被処理物を処理する際、Siに対するSiGeのエッチング比が大きく、かつ、保存安定性に優れる半導体エッチング液を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施形態に制限されない。
【0010】
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において「ppm」とは“parts per million”の略であり、10-6を意味する。また、「ppb」とは“parts per billion”の略であり、10-9を意味する。「ppt」とは“parts per trillion”の略であり、10-12を意味する。
【0011】
本明細書において、「シリコン含有物」とは、実質的にSi元素のみから構成される材料のことをいう。上記実質的とは、材料全原子に対して、Si元素の含有量が90原子%以上であることを意味する。よって、Si元素の含有量が上記範囲内であれば、他の元素(ただし、Ge元素を除く)が含まれていてもよい。
また、本明細書において、「シリコンゲルマニウム含有物」とは、実質的にSi元素およびGe元素のみから構成される材料のことをいう。上記実質的とは、材料全原子に対して、Si元素およびGe元素の合計含有量が90原子%以上であることを意味する。よって、Si元素およびGe元素の合計含有量が上記範囲内であれば、他の元素が含まれていてもよい。また、シリコンゲルマニウムにおいては、Si元素とGe元素との含有量比は特に制限されず、Si元素およびGe元素の合計量に対する、Ge元素の含有量は10~70原子%が好ましい。
【0012】
{半導体エッチング液}
本発明の半導体エッチング液(以下、単に「エッチング液」ともいう。)において、第1実施態様、および、第2実施態様について説明する。具体的には、以下、エッチング液の第1実施態様、および、第2実施態様における、各成分および任意成分、ならびに、エッチング液の製造方法、エッチング液の収容体、および、エッチング液の提供方法について説明する。
エッチング液の第1実施態様は、フッ化物イオン源と、カルボン酸と、過カルボン酸と、過酸化水素と、臭化物イオンとを含み、臭化物イオンの含有量が、エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満であるエッチング液である。
エッチング液の第2実施態様は、フッ化物イオン源と、カルボン酸と、過カルボン酸と、過酸化水素とを含み、過カルボン酸とカルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、過酸化水素の含有量が1.0~15.0質量%である、エッチング液である。
なお、以下では、Siに対するSiGeのエッチング比がより大きいこと、および、エッチング液の保存安定性がより優れることの少なくとも一方を満たす場合、「本発明の効果がより優れる」ともいう。
【0013】
[成分:第1実施態様]
以下、エッチング液の第1実施態様に含まれる成分について説明する。
本発明のエッチング液の第1実施態様は、フッ化物イオン源と、カルボン酸と、過カルボン酸と、過酸化水素と、臭化物イオンとを含み、臭化物イオンの含有量が、エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である。
【0014】
(フッ化物イオン源:第1実施態様)
本発明のエッチング液の第1実施態様は、フッ化物イオン源を含む。
フッ化物イオン源は、エッチング液中で、フッ化物イオンを放出する成分である。フッ化物イオンとしては、例えば、F-およびHF2
-のようにフッ素原子を含むイオンが挙げられる。
機序は明らかでないが、エッチング液はフッ化物イオンを含むことにより、SiGeに対するエッチング能を発現すると発明者らは推察している。
【0015】
フッ化物イオン源としては、例えば、フッ化水素(HF。なお、フッ化水素は、フッ化水素酸(HF水溶液)として用いられてもよい。)、ヘキサフルオロリン酸(HPF6)、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)、および、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、ならびに、それらの塩が挙げられる。また、フッ化物イオン源としては、ビフルオリドイオン(HF2
-)、および、フッ化物含有イオン(例えば、MF6
n-、M:任意の原子、n:1~3)を放出する成分であってもよい。
塩を構成する対カチオンとしては、例えば、アルカリ金属イオン、アンモニウムカチオン、第4級アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン、および、ヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0016】
フッ化水素の塩の具体例としては、例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化カリウム(KF)、フッ化アンモニウム(NH4F)、および、フッ化テトラn-ブチルアンモニウム(N(C4H9)4F)、フッ化テトラメチルアンモニウム(N(CH3)4F)が挙げられる。
ヘキサフルオロリン酸の塩の具体例としては、例えば、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム(NaPF6)、ヘキサフルオロリン酸カリウム(KPF6)、ヘキサフルオロリン酸アンモニウム(NH4PF6)、および、ヘキサフルオロリン酸テトラn-ブチルアンモニウム(N(C4H9)4PF6)が挙げられる。
ヘキサフルオロケイ酸の塩の具体例としては、例えば、ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム(Na2SiF6)、ヘキサフルオロケイ酸カリウム(K2SiF6)、および、ヘキサフルオロケイ酸アンモニウム((NH4)2SiF6)が挙げられる。
テトラフルオロホウ酸の塩の具体例としては、例えば、テトラフルオロホウ酸リチウム(LiBF4)、テトラフルオロホウ酸ナトリウム(NaBF4)、テトラフルオロホウ酸カリウム(KBF4)、および、テトラフルオロホウ酸アンモニウム(NH4BF4)が挙げられる。
ビフルオリドイオンを放出する成分の具体例としては、例えば、フッ化水素ナトリウム(NaHF2)、フッ化水素カリウム(KHF2)、および、フッ化水素アンモニウム(NH4・HF)が挙げられる。
フッ化物含有イオンを放出する成分の具体例としては、例えば、ヘキサフルオロアルミニウム酸ナトリウム(Na3AlF6)、ヘキサフルオロチタン酸2-アンモニウム((NH4)2TiF6)、ヘキサフルオロニオブ酸カリウム(KNbF6)、および、ヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム(NaSbF6)が挙げられる。
列挙した中でも、フッ化物イオン源は、フッ化水素、ヘキサフルオロリン酸、または、ヘキサフルオロケイ酸が好ましく、本発明の効果がより優れる点で、フッ化水素がより好ましい。
【0017】
エッチング液の第1実施態様におけるフッ化物イオン源の含有量は特に制限されないが、SiGeに対するエッチング速度が適度に優れる点で、エッチング液の全質量に対して、0.05~1.0質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましく、0.1~0.4質量%がさらに好ましい。
【0018】
フッ化物イオン源は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。フッ化物イオン源を2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0019】
(カルボン酸:第1実施態様)
本発明のエッチング液の第1実施態様は、カルボン酸を含む。
エッチング液は、カルボン酸と、後述する過酸化水素とを同時に含むことで、後述する過カルボン酸を発生する。
【0020】
本明細書において、カルボン酸とはカルボキシ基を有する有機化合物である。
カルボン酸に含まれるカルボキシ基の数は特に制限されず、1以上であればよく、1~4が好ましく、1~3がより好ましく、1または2がさらに好ましい。
カルボン酸としては、例えば、脂肪族基を有するカルボン酸、および、芳香族基を有するカルボン酸が挙げられる。
【0021】
上記脂肪族基を有するカルボン酸における脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、および、アルキニル基が挙げられる。脂肪族基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、環状であってもよい。
脂肪族基の炭素数は、1~10が好ましく、1~6がより好ましい。
また、脂肪族基は、カルボキシ基の他に置換基を有していてもよい。
脂肪族基が有していてもよい置換基としては、特に制限されないが、カルボキシ基の他に、例えば、ヒドロキシ基、チオール基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、アミノ基、ニトロ基、および、シアノ基が挙げられる。
脂肪族基を構成する-CH2-の一部が2価の置換基に置き換わっていてもよい。
-CH2-の一部を置き換える2価の置換基としては、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、-NRT-、および、-SO2-が挙げられる。RTはアルキル基を表す。
上記脂肪族基としては、アルキル基が好ましく、直鎖状のアルキル基がより好ましい。
【0022】
上記芳香族基を有するカルボン酸における芳香族基は、芳香族性を示す構造を有していればよく、アリール基、ヘテロアリール基、および、それらと非芳香族性の基を組み合わせた基が挙げられる。芳香族基は、カルボキシ基の他に置換基を有していてもよい。
芳香族基を構成する芳香環としては、ベンゼン環、および、ナフタレン環が挙げられる。
芳香族基が有していてよい置換基としては、上記アルキル基が有していてよい置換基と同様である。
アリール基が有するカルボキシ基の数は、1~4が好ましく、1~2がより好ましく、1がさらに好ましい。
【0023】
カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、アクリル酸、酪酸、吉草酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、アコニット酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、タウリン二酢酸、メチルグリシン二酢酸、グルタミン酸二酢酸、トリフルオロ酢酸、クロロ酢酸、安息香酸、p-クロロ安息香酸、o-クロロ安息香酸、m-クロロ安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメシン酸、メリト酸、および、サリチル酸が挙げられる。
中でも、本発明の効果がより優れる点で、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、m-クロロ安息香酸、または、フタル酸が好ましく、酢酸、または、m-クロロ安息香酸がより好ましく、酢酸がさらに好ましい。
【0024】
エッチング液の第1実施態様におけるカルボン酸の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、エッチング液の全質量に対して、30.0~80.0質量%が好ましく、40.0~70.0質量%がより好ましく、50.0~65.0質量%がさらに好ましい。
【0025】
カルボン酸は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。カルボン酸を2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0026】
(過酸化水素:第1実施態様)
本発明のエッチング液の第1実施態様は、過酸化水素を含む。
エッチング液は、上記カルボン酸と、過酸化水素とを同時に含むことで、後述する過カルボン酸を発生する。
過酸化水素は、安全性および入手容易性の点で、過酸化水素水として用いてもよい。
エッチング液の第1実施態様における過酸化水素の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、エッチング液の全質量に対して、1.0~10.0質量%が好ましく、2.0~6.0質量%がより好ましく、2.5~5.0質量%がさらに好ましい。
【0027】
(過カルボン酸:第1実施態様)
本発明のエッチング液の第1実施態様は、過カルボン酸を含む。
機序は明らかでないが、エッチング液は上記カルボン酸と、過酸化水素とを同時に含むことで、過カルボン酸を発生し、発生した過カルボン酸と上記フッ化物イオンとが協奏的に作用することで、Siに対するSiGeのエッチング比が大きくなると発明者らは推察している。
【0028】
過カルボン酸は、エッチング液中にカルボン酸と過酸化水素を同時に含むことで、以下式(1)の平衡反応から生じると考えられている。式(1)中、Rは残基を表す。
なお、過カルボン酸は、必要に応じて、別途エッチング液に添加してもよい。
【0029】
【0030】
エッチング液中では、エッチング液に含まれるカルボン酸に対応した過カルボン酸が生じる。過カルボン酸としては、過ギ酸、過酢酸、過プロピオン酸、過アクリル酸、過酪酸、過乳酸、過クエン酸、過シュウ酸、過マロン酸、過コハク酸、過グルタル酸、過アジピン酸、過フマル酸、過マレイン酸、トリフルオロ過酢酸、クロロ過酢酸、過安息香酸、p-クロロ過安息香酸、o-クロロ過安息香酸、m-クロロ過安息香酸、過フタル酸、過イソフタル酸、過テレフタル酸、過トリメシン酸、過メリト酸、および、過サリチル酸、ならびに、吉草酸、リンゴ酸、アコニット酸、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、シクロヘキサンジアミン四酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、タウリン二酢酸、メチルグリシン二酢酸、および、グルタミン酸二酢酸に対応する過カルボン酸が挙げられる。
好ましい過カルボン酸は、上記好ましいカルボン酸から生じる過カルボン酸である。好ましい過カルボン酸としては、例えば、過ギ酸、過酢酸、トリフルオロ過酢酸、過安息香酸、m-クロロ過安息香酸、および、過フタル酸が挙げられる。中でも、本発明の効果がより優れる点で、過酢酸、または、m-クロロ安息香酸がより好ましく、過酢酸がさらに好ましい。
過カルボン酸を別途添加する場合の好ましい過カルボン酸は、上記好ましい過カルボン酸と同様である。
【0031】
過カルボン酸の含有量の定量方法は既知の方法が挙げられ、例えば、過酸化マンガン、ヨウ化カリウム、および、チオ硫酸ナトリウムを用いた滴定が挙げられる。以下に具体的な手順を説明する。
定量するエッチング液を硫酸酸性とし、エッチング液中に含まれる過酸化水素を過マンガン酸カリウムで滴定する。その後、ヨウ化カリウムをエッチング液に加え、過カルボン酸と等量の遊離ヨウ素を生じさせる。遊離ヨウ素をチオ硫酸ナトリウムで滴定し、過カルボン酸量を求める。各滴定の終点は、溶液の酸化還元電位の変化によってモニターできる。
本明細書における過カルボン酸の含有量は、上記滴定を用いて測定される。
【0032】
エッチング液の第1実施態様における過カルボン酸の含有量は、本発明の効果がより優れる点で、エッチング液の全質量に対して、5.0~20.0質量%が好ましく、8.0~15.0質量%がより好ましく、10.0~13.0質量%がさらに好ましい。
【0033】
エッチング液の第1実施態様に含まれる、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との質量比は、特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%で、過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%で、過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%であることが好ましく、カルボン酸の含有量が70.0~89.0質量%で、過カルボン酸の含有量が10.0~20.0質量%で、過酸化水素の含有量が1.0~10.0質量%であることがより好ましい。
【0034】
過カルボン酸は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。過カルボン酸を2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0035】
(臭化物イオン:第1実施態様)
本発明のエッチング液の第1実施態様は、臭化物イオンを含み、臭化物イオンの含有量が、エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である。
機序は明らかでないが、エッチング液はエッチング液の全質量に対して500質量ppm未満の臭化物イオンを含むことで、保存安定性に優れると発明者らは推察している。さらに、Geに対する臭化物イオンの親和性から、エッチング処理後のSiGeの表面粗さが小さくなるとも推察している。
【0036】
エッチング液の第1実施態様における臭化物イオンの含有量は、本発明の効果がより優れる点で、エッチング液の全質量に対して、10質量ppm以下が好ましく、10質量ppb以下がより好ましく、100質量ppt以下が好ましい。
また、臭化物イオンの含有量の下限は、SiGeの表面粗さが小さくなる点で、エッチング液の全質量に対して、1質量ppt以上が好ましく、5質量ppt以上がより好ましい。
【0037】
エッチング液に臭化物イオンを供給する方法としては、エッチング液に臭化物イオンを含む化合物(臭化物イオン源)を加える方法が挙げられる。
臭化物イオン源としては、臭化物および臭化物イオンとカチオンとからなる塩が挙げられる。臭化物としては、臭化水素酸(HBr水溶液)が挙げられる。臭化物イオンとカチオンとからなる塩としては、アルカリ金属イオンと臭化物イオンとからなる塩、アルカリ土類金属イオンと臭化物イオンとからなる塩、および、塩基性化合物イオンと臭化物イオンとからなる塩が挙げられる。
アルカリ金属イオンと臭化物イオンとからなる塩としては、例えば、臭化リチウム、臭化ナトリウム、および、臭化カリウムが挙げられる。
アルカリ土類金属イオンと臭化物イオンとからなる塩としては、例えば、臭化マグネシウム、臭化カルシウム、および、臭化ストロンチウムが挙げられる。
塩基性化合物イオンと臭化物イオンとからなる塩としては、例えば、臭化アンモニウム、臭化メチルアンモニウム、臭化エチルアンモニウム、臭化ジエチルアンモニウム、臭化トリエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、および、臭化テトラブチルアンモニウムが挙げられる。
【0038】
臭化物イオンの含有量の測定方法は既知の方法が挙げられ、例えば、イオンクロマトグラフィーを用いることができる。本明細書における臭化物イオンの含有量はイオンクロマトグラフィーを用いて測定した方法を表す。
より具体的には、イオンクロマトグラフ(Dionex ICS-6000)を使用して分析を行う。
なお、上記装置を用いて臭化物イオンが検出されなかった場合には、Dionex(登録商標)IonPac(登録商標)AC15濃縮カラムを用いてエッチング液を濃縮して、臭化物イオンの検出を行う。この濃縮操作によって臭化物イオンが検出されない場合、臭化物イオンの含有量は0とする。
【0039】
上記臭化物イオンの含有量に対するカルボン酸の含有量の質量比は特に制限されないが、1.0×108以上の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、1.0×1010以上であることが好ましい。上記臭化物イオンの含有量に対するカルボン酸の含有量の質量比の上限は特に制限されないが、SiGeの表面粗さが小さくなる点から、1.0×1011以下が好ましい。
【0040】
(任意成分等:第1実施態様)
以下、エッチング液の第1実施態様が含んでいてもよい任意成分について説明する。
本発明のエッチング液の第1実施態様が含んでいてよい任意成分としては、溶媒、臭素酸イオン、硫酸、スルホン酸を有する化合物、アミン、および、金属不純物が挙げられる。
【0041】
<溶媒:第1実施態様>
本発明のエッチング液の第1実施態様は溶媒を含んでいてもよい。
溶媒は、上記成分および任意成分を溶解できるものであれば特に制限されないが、水および有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、スルホン系溶媒、スルホキシド系溶媒、ニトリル系溶媒、および、アミド系溶媒が挙げられる。
エッチング液の第1実施態様は、アルコール系溶媒を含まないことが好ましい。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、および、プロピレングリコールが挙げられる。なお、後述するように、アミンは、上記アルコール系溶媒に含まれない。より具体的には、アルカノールアミンは、上記アルコール系溶媒には含まれない。
機序は明らかでないが、エッチング液はアルコール系溶媒を含まないことで、過酸化水素および/または過カルボン酸の減少を抑制し、保存安定性が向上すると発明者らは推察している。
溶媒としては水が好ましく、超純水であることがより好ましい。
【0042】
エッチング液の第1実施態様における溶媒の含有量は特に制限されないが、エッチング液の全質量に対して、15.0~70.0質量%が好ましく、18.0~60.0質量%がより好ましく、20.0~50.0質量%がさらに好ましく、20.0~30.0質量%が特に好ましい。
【0043】
<臭素酸イオン:第1実施態様>
本発明のエッチング液の第1実施態様は、臭素酸イオンを含んでいてもよい。
エッチング液は臭素酸イオンを含むことで、過酸化水素および/または過カルボン酸の分解を抑制し、保存安定性が向上すると発明者らは推察している。
【0044】
臭素酸イオンをエッチング液に添加する際は、臭素酸イオンを含む化合物をエッチング液に添加してもよく、臭素酸イオンを含む化合物の水溶液をエッチング液に添加してもよい。
臭素酸イオンを含む化合物としては、アルカリ金属イオンと臭素酸イオンとからなる塩、アルカリ土類金属と臭素酸イオンとからなる塩、塩基性化合物イオンと臭素酸イオンとからなる塩、および、臭素酸(HBrO3)が挙げられる。
アルカリ金属イオンと臭素酸イオンとからなる塩としては、例えば、臭素酸ナトリウム、および、臭素酸カリウムが挙げられる。
アルカリ土類金属と臭素酸イオンとからなる塩としては、例えば、臭素酸カルシウム、および、臭素酸ストロンチウムが挙げられる。
塩基性化合物イオンと臭素酸イオンとからなる塩としては、例えば、臭素酸アンモニウムが挙げられる。
臭素酸イオンを含む化合物は、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
エッチング液の第1実施態様における臭素酸イオンの含有量は特に制限されないが、100質量ppb~500質量ppmの場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、エッチング液の全質量に対して1~100質量ppmがより好ましく、50~100質量ppmがより好ましい。
【0046】
<硫酸:第1実施態様>
本発明のエッチング液の第1実施態様は、硫酸を含んでいてもよい。
機序は明らかではないが、エッチング液は硫酸を含むことにより、カルボン酸、過酸化水素、および/または、過カルボン酸と協奏的に作用し、Siに対するSiGeのエッチング比を大きくすると発明者らは推察している。
【0047】
エッチング液の第1実施態様における硫酸の含有量は特に制限されないが、エッチング液の全質量に対して0.01~2.0質量%が好ましく、0.1~1.0質量%がより好ましい。
【0048】
<スルホン酸基を有する有機化合物:第1実施態様>
本発明のエッチング液の第1実施態様は、スルホン酸基を有する有機化合物を含んでいてもよい。
機序は明らかではないが、エッチング液はスルホン酸基を有する有機化合物を含むことにより、カルボン酸、過酸化水素、および/または、過カルボン酸と協奏的に作用し、Siに対するSiGeのエッチング比を大きくすると発明者らは推察している。
【0049】
エッチング液の第1実施態様におけるスルホン酸基を有する有機化合物は特に制限されないが、例えば、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、および、それらの塩が挙げられる。また、スルホン酸基を有する有機化合物としては、上記スルホン酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーであってもよく、その塩であってもよい。
スルホン酸との塩を構成するカチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、および、アンモニウムカチオンが挙げられる。
【0050】
上記アルキルスルホン酸におけるアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、置換基を有していてもよい。アルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、および、ヒドロキシ基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~6がより好ましく、1がさらに好ましい。
アルキルスルホン酸としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1-プロパンスルホン酸、2-プロパンスルホン酸、および、ドデシルスルホン酸が挙げられる。中でも、メタンスルホン酸が好ましい。
【0051】
上記アリールスルホン酸におけるアリール基は、芳香族性を示す基を有していればよく、アルキル基と芳香族性を示す基の組み合わせであってもよい。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、および、ビフェニル基が挙げられる。
アリールスルホン酸としては、例えば、ベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、テトラデシルジフェニルエーテルジスルホン酸が挙げられる。中でも、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸、または、テトラデシルジフェニルエーテルジスルホン酸が好ましい。
【0052】
上記スルホン酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーとしては、例えば、上記アルキルスルホン酸由来の基、および/または、上記アリールスルホン酸由来の基を有する繰り返し単位を含むポリマーが挙げられる。
ポリマーには、スルホン酸基を有さない繰り返し単位が含まれていてもよい。
ポリマーの重量平均分子量は、400~50000が好ましい。
スルホン酸基を有する繰り返し単位を含むポリマーとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合体、および、ナフタレンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合体が挙げられる。
【0053】
スルホン酸基を有する有機化合物としては、スルホン酸系界面活性剤も好ましい。
スルホン酸系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸、スチレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等のアリールスルホン酸のホルマリン縮合物、および、それらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩)が挙げられる。
【0054】
エッチング液の第1実施態様におけるスルホン酸基を有する有機化合物の含有量は特に制限されないが、エッチング液の全質量に対して0.001~1.0質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。
【0055】
スルホン酸基を有する有機化合物は、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。スルホン酸基を有する有機化合物を2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0056】
<アミン:第1実施態様>
本発明のエッチング液の第1実施態様は、アミンを含んでいてもよい。
機序は明らかではないが、エッチング液はアミンを有する化合物を含むことにより、フッ化物イオン源、カルボン酸、過酸化水素、および/または、過カルボン酸と協奏的に作用し、Siに対するSiGeのエッチング比を大きくすると発明者らは推察している。
本明細書においてアミンとは、アンモニアの水素原子のうち1つ以上を、置換基を有していてもよい炭化水素基で置換した化合物のことをいう。ただし、炭化水素基が置換基としてヒドロキシ基を有していても、その化合物はアルコール系溶媒に含めない。すなわち、エッチング液は、ヒドロキシ基を有するアミンを含んでいてもよい。
【0057】
置換基を有していてもよい炭化水素基としては、例えば、置換基を有していてもよいアルキル基、および、置換基を有していてもよいアリール基が挙げられる。
置換基を有していてもよいアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~3がより好ましい。アルキル基が有していてもよい置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、アミノ基(-NH2)、および、ヒドロキシ基が挙げられる。中でも、アミノ基、および、ヒドロキシ基が好ましい。
置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、2,3-ヒドロキシプロピル基、2-アミノエチル基、および、3-アミノプロピル基が挙げられる。
アミンにおけるアルキル基が2つ以上ある場合、2つが互いに結合して環を形成して環状アミンとなっていてもよい。環状アミンは、芳香族性を示しても示さなくてもよい。形成される環状アミンとしては、例えば、ピロリジン環、ピぺリジン環、モルホリン環、ピロール環、および、ピリジン環が挙げられる。中でも、モルホリン環が好ましい。
置換基を有していてもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、フリル基、ピロリル基、p-ヒドロキシフェニル基、および、p-クロロフェニル基が挙げられる。
【0058】
アミンとしては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミン、プロピルアミン、ジイソプロパノールアミン、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、モルホリン、および、3-モルホリノ-1,2プロパンジオールが挙げられる。中でも、ジイソプロパノールアミン、N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、または、3-モルホリノ-1,2プロパンジオールが好ましい。
【0059】
エッチング液の第1実施態様におけるアミンの含有量は特に制限されないが、エッチング液の全質量に対して0.01~1質量%が好ましく、0.02~0.1質量%がより好ましい。
【0060】
アミンは、1種類のみを用いても、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。アミンを2種類以上用いる場合は、その合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0061】
<金属不純物:第1実施態様>
本発明のエッチング液の第1実施態様は、Mn、Ni、V、Co、Fe、および、Crからなる群より選択される1種以上の元素(以下、「特定元素」ともいう。)を含む金属不純物成分をさらに含んでいてもよい。
金属不純物成分に含まれるいずれの元素の含有量も、エッチング液の全質量に対して1.0質量ppb未満であることが好ましい。つまり、特定元素のそれぞれの含有量が、1.0質量ppb未満であることが好ましい。
いずれの元素の含有量の下限は特に制限されないが、1質量ppt以上であってもよく、検出されなくてもよい。
機序は明らかでないが、金属不純物成分のいずれの元素の質量も、エッチング液の全質量に対して1.0質量ppb未満とすることで、過酸化水素および/または過カルボン酸の分解を抑制し、保存安定性が向上すると発明者らは推察している。
【0062】
金属不純物成分は、金属粒子および金属イオンの形態であってもよい。
金属不純物成分は、特定元素を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。
金属粒子は、単体でも合金でもよく、金属が有機物と会合した形態で存在してもよい。
【0063】
エッチング液中の金属不純物成分中の特定元素の含有量は、SP-ICP-MS法(Single Nano Particle-Inductively Coupled Plasma-Mass Spectrometry)で測定できる。
ここで、SP-ICP-MS法とは、通常のICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)と同様の装置を使用し、データ分析のみが異なる。SP-ICP-MS法のデータ分析は、市販のソフトウェアにより実施できる。
【0064】
SP-ICP-MS法による測定方法としては、例えば、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(inductively coupled plasma-mass spectrometry、半導体分析用、オプション#200)を用いて、実施例に記載した方法により測定できる。上記以外の装置としては、PerkinElmer社製 NexION350S、および、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8900も使用できる。
なお、上記測定において特定元素の含有量を検出できなかった場合には、エッチング液を濃縮して、上記測定を行う。濃縮後において特定元素が検出されなかった場合、その含有量は0とする。
上記濃縮の操作は、まず、エッチング液にアンモニア水を加えて、pHを6~8に調整して、室温にて1週間放置する。次に、得られたエッチング液を100℃に加熱して、100倍に濃縮する。
【0065】
金属不純物成分に含まれる特定元素の合計含有量に対するフッ化物イオン源の含有量の質量比は特に制限されないが、1.0×106以上の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、2.0×107以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1.0×1010以下が好ましく、1.0×109以下がより好ましい。
【0066】
金属不純物成分に含まれる特定元素の合計含有量に対する過カルボン酸の含有量の質量比は特に制限されないが、1.0×108以上の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、2.0×109以上が好ましい。上限は特に制限されないが、1.0×1010以下が好ましい。
【0067】
<その他成分:第1実施態様>
エッチング液の第1実施態様は、上記以外の成分を含有していてもよい。
エッチング液の第1実施態様が含有していてもよい他の成分としては、例えば、酸化剤、および、界面活性剤が挙げられる。
酸化剤としては、例えば、硝酸、過酸化物、過硫化物(モノ過硫化物およびジ過硫化物等)、過炭酸塩、酸化ハライド(ヨウ素酸および過ヨウ素酸等)、過ホウ酸、過マンガン酸塩、モリブデン酸化合物、セリウム化合物、および、フェリシアン化物、ならびに、それらの酸または塩が挙げられる。ただし、過酸化物に過カルボン酸は含めない。
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、および、両性界面活性剤が挙げられる。なお、上記スルホン酸基を有する有機化合物は上記界面活性剤に含めない。
【0068】
エッチング液の第1実施態様の好適態様としては、
フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、3-モルホリノ-1,2プロパンジオール、および、ジイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メタンスルホン酸、C12~C14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
臭化物イオンと、を含み、
臭化物イオンの含有量が、半導体エッチング液の全質量に対して500質量ppm未満である、半導体エッチング液が挙げられる。
【0069】
[成分:第2実施態様]
以下、エッチング液の第2実施態様に含まれる成分について説明する。
本発明のエッチング液の第2実施態様は、フッ化物イオン源と、カルボン酸と、過カルボン酸と、過酸化水素とを含み、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である。
なお、本発明のエッチング液の第2実施態様は、臭化物イオンを必須の成分としていない点、および、カルボン酸、過カルボン酸および過酸化水素とが所定の質量関係を満たす点以外は、本発明のエッチング液の第1実施態様と同様の構成を満たしている。
【0070】
(フッ化物イオン源:第2実施態様)
本発明のエッチング液の第2実施態様は、フッ化物イオン源を含む。
フッ化物イオン源は、第1実施態様で説明したものと同様であり、好適態様(例えば、フッ化物イオン源の種類、および、エッチング液中でのフッ化物イオン源の含有量など)も同様である。
【0071】
(カルボン酸:第2実施態様)
本発明のエッチング液の第2実施態様は、カルボン酸を含む。
カルボン酸は、第1実施態様で説明したものと同様であり、好適態様(例えば、カルボン酸の種類、および、エッチング液中でのカルボン酸の含有量など)も同様である。
【0072】
(過酸化水素:第2実施態様)
本発明のエッチング液の第2実施態様は、過酸化水素を含む。
過酸化水素は、第1実施態様で説明したものと同様であり、好適態様(例えば、エッチング液中での過酸化水素の含有量など)も同様である。
【0073】
(過カルボン酸:第2実施態様)
本発明のエッチング液の第2実施態様は、過カルボン酸を含む。
過カルボン酸は、第1実施態様で説明したものと同様であり、好適態様(例えば、過カルボン酸の種類、および、エッチング液中での過カルボン酸の含有量など)も同様である。
【0074】
(カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との質量比率:第2実施態様)
エッチング液の第2実施態様に含まれる、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との質量比は、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%で、過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%で、過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である。
なかでも、本発明の効果がより優れる点から、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、カルボン酸の含有量が70.0~89.0質量%で、過カルボン酸の含有量が10.0~20.0質量%で、過酸化水素の含有量が1.0~10.0質量%であることが好ましく、カルボン酸の含有量が75.0~85.0質量%で、過カルボン酸の含有量が12.0~17.5質量%で、過酸化水素の含有量が3.0~7.5質量%であることがより好ましい。
【0075】
(任意成分等:第2実施態様)
以下、エッチング液の第2実施態様が含んでいてもよい任意成分について説明する。
本発明のエッチング液の第2実施態様が含んでいてよい任意成分としては、溶媒、臭化物イオン、臭素酸イオン、硫酸、スルホン酸を有する化合物、アミン、および、金属不純物が挙げられる。
各成分は、第1実施態様で説明したものと同様であり、好適態様(種類、含有量など)も同様である。
なお、エッチング液の第2実施態様においては、第1実施態様と同様に、臭化物イオンを含んでいてもよく、臭化物イオンの含有量はエッチング液の全質量に対して500質量ppm未満であることが好ましい。臭化物イオンの含有量の好適範囲は、第1実施態様で述べた好適範囲と同じである。
【0076】
エッチング液の第2実施態様の好適態様としては、
フッ化物イオン源と、
カルボン酸と、
過カルボン酸と、
過酸化水素と、
N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン、3-モルホリノ-1,2プロパンジオール、および、ジイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、
ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、メタンスルホン酸、C12~C14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸、および、トリイソプロピルナフタレンスルホン酸からなる群から選択される少なくとも1種の化合物と、を含む、半導体エッチング液であって、
カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対して、
カルボン酸の含有量が55.0~94.0質量%であり、
過カルボン酸の含有量が5.0~25.0質量%であり、
過酸化水素の含有量が1.0~20.0質量%である、半導体エッチング液が挙げられる。
【0077】
[半導体エッチング液の製造方法]
エッチング液(第1実施態様および第2実施態様)の製造方法は特に制限されず、公知の製造方法が使用できる。例えば、第1実施態様のエッチング液を製造する際には、フッ化物イオン源、カルボン酸、過酸化水素、および臭化物イオン源を所定量で混合する方法が挙げられる。なお、上記成分を混合する際に、必要に応じて水等の任意成分を合わせて混合してもよい。
また、エッチング液を製造する際は、必要に応じてフィルターによるろ過処理を行ってもよい。ろ過処理は、原料に対して行ってもよく、混合後のエッチング液に対して行ってもよい。
【0078】
[半導体エッチング液の収容体および半導体エッチング液の提供方法]
エッチング液(第1実施態様および第2実施態様)は、容器に収容されて使用時まで保管してもよい。
このような容器と、容器に収容されたエッチング液とをあわせてエッチング液収容体という。保管されたエッチング液収容体からは、エッチング液が取り出され使用される。また、エッチング液収容体として運搬されて、メーカーからユーザー、または、保管場所から使用場所等の間で、エッチング液が提供されてもよい。
【0079】
容器は、容器内の圧力(内圧)を調整するためのガス抜き機構を有することも好ましい。ガス抜き機構は、例えば、エッチング液収容体の保管時に容器内部のエッチング液の温度上昇、および/または、エッチング液の一部の成分の分解等によってエッチング液からガスが発生した際に、発生したガスを容器内から外部に放出させて、内圧を過剰に上昇させることなく、一定の範囲に収める機構である。
ガス抜き機構としては、例えば、逆止弁、および、ガス抜き機構を備えるガス抜きキャップが挙げられる。
また、エッチング液の取り扱いの便宜等の点から、このようなエッチング液収容体を用いた方法で、メーカーからユーザー、または、保管場所から使用場所等の間で、エッチング液が提供されることが好ましい。
【0080】
容器(特に容器本体)は、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。使用可能な容器としては、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、および、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」が挙げられる。
容器(特に容器本体)の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂およびポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、もしくは、これとは異なる樹脂から形成されることが好ましい。
【0081】
上記の異なる樹脂としては、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)が好ましい。内壁がフッ素系樹脂である容器を用いることで、内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、または、ポリエチレン-ポリプロピレン樹脂である容器と比べて、エチレンまたはプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
内壁がフッ素系樹脂である容器としては、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム等が挙げられる。また、特表平3-502677号公報の第4頁等、国際公開第2004/016526号パンフレットの第3頁等、および、国際公開第99/046309号パンフレットの第9頁および16頁等に記載の容器も用いることができる。
【0082】
これらの容器(容器本体およびキャップ等)は、エッチング液を充填前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に使用される液体は、その液中における金属不純物量が低減されていることが好ましい。
エッチング液は、製造後にガロン瓶またはコート瓶等の容器にボトリングし、輸送または保管されてもよい。
【0083】
保管におけるエッチング液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(窒素、またはアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送、および保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、-20~20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0084】
なお、上記エッチング液は、その原料を複数に分割したキットとしてもよい。
【0085】
{用途}
エッチング液(第1実施態様および第2実施態様)は、半導体処理に用いられる。より具体的には、半導体デバイス用が好ましい。
「半導体デバイス用」とは、半導体デバイスの製造の際に用いられることを意味する。
エッチング液は、半導体デバイスを製造するための工程にも用いることができ、例えば、基板上に存在するシリコンゲルマニウムで構成される材料、絶縁膜、レジスト膜、反射防止膜、エッチング残渣物、および、アッシング残渣物(以下、単に「残渣物」ともいう。)等の処理に使用できる。エッチング液は、化学機械研磨後の基板の処理に用いてもよい。特に、SiとSiGeとを含む被処理物(以下、単に「被処理物」ともいう。)の処理に、エッチング液は好ましく用いられる。
【0086】
{被処理物}
被処理物は、SiとSiGeとを含む。
SiGeは、Si元素およびGe元素の合計量に対する、Ge元素の含有量は10~70原子%が好ましい。例えば、Si元素およびGe元素の合計量に対する、Ge元素の含有量が15原子%、30原子%、および、50原子%の態様が代表的である。
被処理物はSiとSiGeとを含んでいれば特に制限されないが、通常、基板上にSiおよびSiGeが配置されている。
ここで「基板上」とは、基板の表裏、側面、および溝内のいずれの態様も含む。
また、「基板上にSiとSiGeとが配置されている」とは、基板の表面上に直接SiとSiGeとがある場合、および、基板上に他の層を介してSiとSiGeとがある場合も含む。
また、「基板上にSiとSiGeとが配置されている」とは、SiとSiGeとが基板上に同時に存在していれば、その存在形態は問わない。例えば、SiとSiGeとが接していてもよく、他の層や部材を介して接していてもよい。他にも、同一基板上に存在するがSiとSiGeとが接していない形態であってもよい。
【0087】
基板とは、特に制限されないが、例えば、金属基板、半導体基板、金属以外の導電性基板、金属酸化物基板、ガラス基板、および、樹脂基板が挙げられる。中でも、半導体基板が好ましい。
半導体基板としては、例えば、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、および、光磁気ディスク用基板が挙げられる。
半導体基板を構成する材料としては、例えば、ケイ素、および、GaAs等の第III-V族化合物、ならびに、それらの組み合わせが挙げられる。
基板の大きさ、厚さ、形状、および、層構造等は、特に制限はなく、所望に応じ適宜選択できる。
【0088】
基板上のSiまたはSiGeの形態としては、膜状、配線状、板状、柱状、および、粒子状に配置された形態のいずれであってもよい。
【0089】
被処理物は、SiおよびSiGe以外に、所望に応じた層もしくは構造、または、その両方を含んでいてもよい。
例えば、基板上には、金属配線、ゲート電極、ソース電極、ドレイン電極、絶縁層、強磁性層、および、非磁性層からなる群から選択される1つ以上の部材が配置されていてもよい。
基板は、曝露された集積回路構造を含んでいてもよい。
集積回路構造としては、例えば、金属配線および誘電材料等の相互接続機構が挙げられる。相互接続機構に使用する金属および合金としては、例えば、アルミニウム、銅アルミニウム合金、銅、ニッケル、ニッケルシリサイド、コバルト、コバルトシリサイド、ルテニウム、白金、金、チタン、タンタル、タングステン、ケイ素、窒化チタン、および、窒化タンタルが挙げられる。基板は、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、および、炭素ドープ酸化ケイ素からなる群より選択される材料の層を1つ以上含んでいてもよい。
【0090】
被処理物の製造方法は、特に制限されない。例えば、基板上に絶縁膜を形成し、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、および、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法等の方法で、絶縁膜上にSiGeおよびSiを配置した後、CMP等の平坦化処理を実施して、被処理物を製造してもよい。
【0091】
被処理物の用途としては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、FRAM(登録商標)(Ferroelectric Random Access Memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)、ロジック回路、および、プロセッサが挙げられる。
【0092】
{被処理物の処理方法}
本発明の被処理物の処理方法(以下、「本処理方法」ともいう。)は、SiおよびSiGeを含む被処理物と、エッチング液(第1実施態様および第2実施態様)を接触させる工程Aを有する。本処理方法を実施することにより、被処理物中のSiGeが選択的にエッチングされる。
本処理方法で用いられる被処理物については上述したとおりである。
【0093】
[工程A]
被処理物に対してエッチング液を接触させる工程Aについて説明する。
接触させる方法としては、例えば、タンクに入れたエッチング液中に被処理物を浸漬する方法、被処理物上にエッチング液を噴霧する方法、被処理物上にエッチング液を流す方法、および、それらを組み合わせた方法が挙げられ、被処理物をエッチング液に浸漬する方法が好ましい。
さらに、エッチング液の洗浄能力をより増進するために、機械式撹拌方法を用いてもよい。
機械式撹拌方法としては、例えば、被処理物上でエッチング液を循環させる方法、被処理物上でエッチング液を流過または噴霧させる方法、および、超音波またはメガソニックにてエッチング液を撹拌する方法が挙げられる。
【0094】
工程Aの処理時間は、適宜調整できる。
処理時間(エッチング液と被処理物との接触時間)は、0.25~10分間が好ましく、0.5~2分間がより好ましい。
処理の際のエッチング液の温度は、20~100℃が好ましく、40~80℃がより好ましい。
本発明のエッチング液を用いる本処理は、Siに対するSiGeのエッチング比が大きい。すなわち、本処理は、被処理物中のSiのエッチングを抑制しながら、SiGeを良好にエッチングできる。
本処理におけるSiに対するSiGeのエッチング比は、例えば、SiGe中のSi元素およびGe元素の合計量に対するGe元素の含有量が30原子%の場合、10以上が好ましく、30以上がより好ましく、40以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、1000以下が好ましい。
また、本処理におけるSiGeのエッチング速度は、例えば、SiGe中のSi元素およびGe元素の合計量に対するGe元素の含有量が30原子%の場合、100Å/分以上が好ましく、200~500Å/分がより好ましく、300~500Å/分がさらに好ましい。
本処理におけるSiのエッチング速度は、25Å/分未満が好ましく、0.01~15Å/分がより好ましい。
【0095】
(リンス工程)
本処理方法は、必要に応じて、リンス液を用いて被処理物に対してリンス処理を行うリンス工程を有してもよい。
例えば、被処理物をエッチング液に接触させた後に、さらに、リンス工程を実施してもよい。
【0096】
リンス液としては、例えば、水、フッ酸(好ましくは0.001~1質量%フッ酸)、塩酸(好ましくは0.001~1質量%塩酸)、過酸化水素水(好ましくは0.5~31質量%過酸化水素水、より好ましくは3~15質量%過酸化水素水)、フッ酸と過酸化水素水との混合液(FPM)、硫酸と過酸化水素水との混合液(SPM)、アンモニア水と過酸化水素水との混合液(APM)、塩酸と過酸化水素水との混合液(HPM)、二酸化炭素水(好ましくは10~60質量ppm二酸化炭素水)、オゾン水(好ましくは10~60質量ppmオゾン水)、水素水(好ましくは10~20質量ppm水素水)、クエン酸水溶液(好ましくは0.01~10質量%クエン酸水溶液)、硫酸(好ましくは1~10質量%硫酸水溶液)、アンモニア水(好ましくは0.01~10質量%アンモニア水)、イソプロピルアルコール(IPA)、次亜塩素酸水溶液(好ましくは1~10質量%次亜塩素酸水溶液)、王水(好ましくは「37質量%塩酸:60質量%硝酸」の体積比として「2.6:1.4」~「3.4:0.6」の配合に相当する王水)、超純水、硝酸(好ましくは0.001~1質量%硝酸)、過塩素酸(好ましくは0.001~1質量%過塩素酸)、シュウ酸水溶液(好ましくは0.01~10質量%シュウ酸水溶液)、酢酸(好ましくは0.01~10質量%酢酸水溶液、もしくは、酢酸原液)、または、過ヨウ素酸水溶液(好ましくは0.5~10質量%過ヨウ素酸水溶液。過ヨウ素酸は、例えば、オルト過ヨウ素酸およびメタ過ヨウ素酸が挙げられる)が好ましい。
【0097】
APMの組成は、例えば、「アンモニア水:過酸化水素水:水=1:1:1」~「アンモニア水:過酸化水素水:水=1:3:45」の範囲内(質量比)が好ましい。
FPMの組成は、例えば、「フッ酸:過酸化水素水:水=1:1:1」~「フッ酸:過酸化水素水:水=1:1:200」の範囲内(質量比)が好ましい。
SPMの組成は、例えば、「硫酸:過酸化水素水:水=3:1:0」~「硫酸:過酸化水素水:水=1:1:10」の範囲内(質量比)が好ましい。
HPMの組成は、例えば、「塩酸:過酸化水素水:水=1:1:1」~「塩酸:過酸化水素水:水=1:1:30」の範囲内(質量比)が好ましい。
なお、これらの好ましい組成比の記載は、アンモニア水は28質量%アンモニア水、フッ酸は49質量%フッ酸、硫酸は98質量%硫酸、塩酸は37質量%塩酸、過酸化水素水は30質量%過酸化水素水である場合における組成比を意図する。
また、体積比は、室温における体積を基準とする。
好適範囲としての[「A:B:C=x:y:z」~「A:B:C=X:Y:Z」]という記載は、[「A:B=x:y」~「A:B=X:Y」]、[「B:C=y:z」~「B:C=Y:Z」]、および、[「A:C=x:z」~「A:C=X:Z」]の範囲のうちの少なくとも1個(好ましくは2個、より好ましくは全部)を満たすのが好ましいことを示す。
なお、フッ酸、硝酸、過塩素酸、および、塩酸は、それぞれ、HF、HNO3、HClO4、および、HClが、水に溶解した水溶液を意図する。
オゾン水、二酸化炭素水、および、水素水は、それぞれ、O3、CO2、および、H2を水に溶解させた水溶液を意図する。
リンス工程の目的を損なわない範囲で、これらのリンス液を混合して使用してもよい。
また、リンス液には有機溶媒が含まれていてもよい。
【0098】
リンス工程の具体的な方法としては、リンス液と、被処理物とを接触させる方法が挙げられる。
接触させる方法としては、タンクに入れたリンス液中に基板を浸漬する方法、基板上にリンス液を噴霧する方法、基板上にリンス液を流す方法、またはそれらの任意の組み合わせた方法で実施される。
【0099】
処理時間(リンス液と被処理物との接触時間)は特に制限されないが、例えば、5秒間~5分間である。
処理の際のリンス液の温度は特に制限されないが、例えば、一般に、16~60℃が好ましく、18~40℃がより好ましい。リンス液としてSPMを用いる場合、その温度は90~250℃が好ましい。
【0100】
(乾燥工程)
また、本処理方法は、リンス工程の後に必要に応じて、乾燥処理を実施する乾燥工程を有してもよい。乾燥処理の方法は特に制限されないが、スピン乾燥、基板上での乾燥ガスの流動、基板の加熱手段例えばホットプレートまたは赤外線ランプによる加熱、IPA(イソプロピルアルコール)蒸気乾燥、マランゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、または、それらの組合せが挙げられる。
乾燥時間は、用いる特定の方法に応じて変わるが、通例は30秒~数分程度である。
【0101】
[その他工程]
本処理方法は、上記工程A以外に、その他工程を有していてもよい。
その他の工程としては、例えば、金属配線、ゲート構造、ソース構造、ドレイン構造、絶縁層、強磁性層、および、非磁性層等からなる群より選択される1つ以上の各構造の形成工程(例えば、層形成、エッチング、化学機械研磨、および、変成)、レジストの形成工程、露光工程および除去工程、熱処理工程、洗浄工程、乾燥工程、ならびに、検査工程が挙げられる。
本処理方法は、バックエンドプロセス(BEOL:Back end of the line)、ミドルプロセス(MOL:Middle of the line)、および、フロントエンドプロセス(FEOL:Front end of the line)中のいずれの段階で行ってもよく、フロントエンドプロセスまたはミドルプロセス中で行うことが好ましい。
【実施例】
【0102】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0103】
{エッチング液の調製}
実施例1-1については、超純水に対して、フッ化物イオン源としてフッ化水素、カルボン酸として酢酸、過酸化水素、硫酸、スルホン酸基を有する有機化合物としてナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(竹本油脂株式会社製「タケサーフA45-Q」)、および、臭化物イオンを表1に示す含有量となるようにそれぞれ添加して、混合液とした後、混合液を撹拌機によって十分撹拌し、実施例1のエッチング液を得た。
なお、表1中の各成分の含有量は、エッチング液全質量に対する、質量%を表す。ただし、超純水の含有量は、エッチング液中における、表1に記載の超純水以外の成分の合計質量を除いた残りの質量(残部)に該当する。また、エッチング液中の臭化物イオンの含有量に関しては、エッチング液に添加する各成分および超純水に対してろ過処理を実施して臭化物イオンを除去した後、臭化水素酸を添加することで表1に記載の臭化物イオン含有量に調整した。
表1にしたがって各成分の種類および量を変更した以外は、実施例1-1と同様の手順で、実施例1-2~1-18のエッチング液、および、比較例1-1~1-2のエッチング液を得た。
実施例2-1~2-8については、表2(その1)および表2(その2)にしたがって各成分の種類および量を変更した以外は、実施例1-1と同様の手順で得た。エッチング液中のMn、Ni、V、Co、Fe、および、Crの金属元素の濃度は、表中の値となるように組成物にこれらの成分の添加を行ったり、組成物に対してろ過処理を実施したりすることにより、適宜調整した。
なお、表1および2中に記載される化合物列における空欄は、当該成分を添加しなかったことを表す。
なお、表1および2に示す各成分はいずれも、半導体グレードに分類されるもの、または、それに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用した。
【0104】
[成分]
以下に、各表に記載した各成分について示す。
(フッ化物イオン源)
・HF:フッ化水素(なお、各実施例においては、フッ化水素酸を使用した。また、後述する表に示すように、フッ化水素(HF)の含有量が所定の範囲となるように使用した。)
【0105】
(カルボン酸)
・酢酸
【0106】
(過酸化水素)
・過酸化水素
【0107】
(溶媒)
・超純水
・PG:プロピレングリコール
【0108】
(臭素酸イオン)
・臭素酸イオン源:臭素酸
【0109】
(硫酸)
・S-1:硫酸
【0110】
(スルホン酸基を有する有機化合物)
・S-2:ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物(竹本油脂株式会社製「タケサーフA45-Q」)
・S-3:メタンスルホン酸
・S-4:C12~C14アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(竹本油脂株式会社製「タケサーフA43-NQ」)
・S-5:トリイソプロピルナフタレンスルホン酸(竹本油脂株式会社製「タケサーフA47-Q」)
・S-6:p-トルエンスルホン酸
・S-7:ドデシルベンゼンスルホン酸
【0111】
(アミン)
・A-1:N-(3-アミノプロピル)ジエタノールアミン
・A-2:3-モルホリノ-1,2-プロパンジオール
・A-3:ジイソプロパノールアミン
【0112】
(金属不純物)
表2(その2)におけるMn、Ni、V、Co、Fe、および、Cr含有量は、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry、半導体分析用、オプション#200)を用いて測定した。
【0113】
<測定条件>
サンプル導入系は石英のトーチと同軸型PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)ネブライザ(自吸用)、白金インターフェースコーンを使用した。クールプラズマ条件の測定パラメータは以下のとおりである。
・RF(Radio Frequency)出力(W):600
・キャリアガス流量(L/min):0.7
・メークアップガス流量(L/min):1
・サンプリング深さ(mm):18
各元素成分の含有量の測定においては、含有量を求めようとしているエッチング液そのものを測定対象とした。エッチング液そのものを測定対象とした場合に、エッチング液中に存在する各元素成分の含有量が検出限界未満であった場合は、測定対象のエッチング液を適宜濃縮した状態で再度測定を行い、得られた測定値を濃縮前のエッチング液の濃度に換算して、各元素成分の含有量の算出を行った。
【0114】
{試験および評価}
調製した実施例または比較例のエッチング液を用いて、以下の試験を行った。
【0115】
[エッチング速度の評価]
シリコンゲルマニウム(Si:Ge=70:30(元素比)。後段でSiGe30とも示す。)が膜厚100nmで積層された基板、および、シリコンが膜厚100nmで積層された基板を作製し、これらの基板をそれぞれ、2×2cm角に切断して試験片を作製した。以下、それぞれの積層した膜を「SiGe膜」および「Si膜」ともいう。
試験片を、実施例または比較例のエッチング液(25℃)に10分間浸漬した。
上記浸漬試験の前後において、基板上に積層したSiGe膜およびSi膜の膜厚を、光学式膜厚計Ellipsometer M-2000(JA Woollam社製)で測定した。測定された浸漬前後の膜厚から、各エッチング液を用いた際の各膜のエッチング速度(Å/分)を算出した。
各エッチング液を用いてSiGe膜およびSi膜に対するエッチング速度評価の結果を、表1および2に示す。
【0116】
[表面平滑性の評価]
エッチング液を用いてエッチング処理を行った際、デバイスの加工精度に大きく寄与し、歩留まり向上にも繋がる点で、処理後のSiGeの表面平滑性が高いことが好ましい。
上記エッチング比の評価試験における膜厚評価において、光学式膜厚計Ellipsometer M-2000(JA Woollam社製)を用い、膜厚と同時に表面粗さ(Ra)を測定した。
各エッチング液を用いて表面平滑性の評価を行った際の表面粗さ(Ra)を、表1および2に示す。Raは小さいことが好ましい。
【0117】
[保存安定性の評価]
次いで、各実施例および各比較例のエッチング液を用いて保管試験を行い、各エッチング液の保存安定性を評価した。
具体的には、まず、容量が250mLである高密度ポリエチレン製容器に200mLの各エッチング液を充填して、密閉した。エッチング液を充填した容器を、25℃の環境下で7日間保管した(保管試験)。
保管試験後のエッチング液を用いること以外は、上記のSiGe膜に対するエッチング速度の評価方法にしたがって、SiGe膜に対するエッチング速度の評価試験を行った。保管試験を施す前のエッチング液(調製直後のエッチング液)を用いて求められたSiGe膜のエッチング速度(Å/分)を100%とした場合における、保管試験後のエッチング液を用いて求められたSiGe膜のエッチング速度(Å/分)の維持率(=[保管試験後のエッチング液を用いて求められたSiGe膜のエッチング速度(Å/分)]/[調製直後のエッチング液を用いて求められたSiGe膜のエッチング速度(Å/分)]×100)を算出した。以下、上記維持率のことを単に「維持率」ともいう。
各エッチング液を用いて保存安定性の評価試験を行った際の維持率を、表1および2に示す。
【0118】
表1および2中の「超純水」欄の「残部」とは、表1および2に記載される成分(フッ化物イオン源、カルボン酸、過酸化水素、過カルボン酸、臭化物イオン、臭素酸イオン、硫酸、スルホン酸基を有する有機化合物、アミン、PG)以外の残りの部分が「超純水」に該当することを意味する。
表1および2中、「ppt」「ppm」「ppb」は、いずれも「質量ppt」「質量ppm」「質量ppb」を意味する。
表1および2中、含有割合Aは、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対するカルボン酸の含有量(質量%)を表し、含有割合Bは、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対する過酸化水素の含有量(質量%)を表し、含有割合Cは、カルボン酸と過カルボン酸と過酸化水素との合計質量に対する過カルボン酸の含有量(質量%)を表す。
実施例1-1~1-18および比較例1-1~1-2については、表1(その1)および表1(その2)にわたってエッチング液の成分および評価結果を示した。例えば、実施例1-1においては、フッ化物イオン源の含有量が0.2質量%であり、含有割合Aが79.9%であり、SiGe30(Å/分)が338であった。
実施例2-1~2~8については、表2(その1)および表2(その2)にわたってエッチング液の成分および評価結果を示した。例えば、実施例2-1においては、フッ化物イオン源の含有量が0.2質量%であって、Mnの含有量が0.5質量ppbであり、SiGe30(Å/分)が345であった。
また、表1および2中、「SeGe30/Si」は、「Si(Å/分)」欄に記載のSiのエッチング速度に対する「SiGe30(Å/分)」欄に記載のSiGeのエッチング速度の比を表す。
また、表2(その2)には、カルボン酸と臭化物イオンの比、過カルボン酸と金属不純物の比、および、フッ化物イオン源と金属不純物の比についても示した。
各表中、「E-n」の表記は、「×10-n」を意味し、「E+n」の表記は、「×10n」を意味する。nは整数を表す。
表1中、「< X」の表記は、その値がX未満であることを表す。また、「-」の表記は、評価を実施していないか、その値が計算できないかのいずれか一方を表す。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
実施例1-1~1-18、および、2-1~2-8と、比較例1-1および1-2との比較から、本発明のエッチング液は、Siに対するSiGeのエッチング比が大きく、かつ、保存安定性に優れることが確認された。
実施例1-12および1-14~1-16と、他の実施例との比較から、臭素酸イオンを含み、臭素酸イオンの含有量が、エッチング液の全質量に対して1~100質量ppmである場合、SiGeのエッチング速度が大きく、かつ、保存安定性がより優れることが確認された。
実施例1-11と他の実施例との比較から、エッチング液がアルコール系溶媒を含まない場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例1-7~1-9と、実施例1-1、1-3~1-5、1-10、1-17および1-18との比較から、エッチング液が硫酸を含む場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例1-7~1-9と、実施例1-2~1-6、1-13および1-17との比較から、エッチング液がスルホン酸基を有する有機化合物を含む場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例2-1~2-4に対する、実施例2-5の比較から、エッチング液がMn、Ni、V、Co、Fe、および、Crからなる群より選択される1種以上の元素を含む金属不純物成分をさらに含み、金属不純物成分に含まれるいずれの元素成分の含有量が、エッチング液の全質量に対して1.0質量ppb未満である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例2-1~2-4に対する、実施例2-6の比較から、金属不純物成分に含まれる特定元素の合計含有量に対する過カルボン酸の含有量の質量比が、2.0×109以上である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例2-1~2-4に対する、実施例2-7の比較から、金属不純物成分に含まれる特定元素の合計含有量に対するフッ化物イオン源の含有量の質量比が、2.0×107以上である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
実施例2-1~2-4に対する、実施例2-8の比較から、臭化物イオンの含有量に対するカルボン酸の含有量の質量比が、1.0×1010以上である場合、本発明の効果がより優れることが確認された。
【0124】
また、実施例1-19として、フッ化水素酸(フッ化水素の含有量が0.2質量%となるように使用)、酢酸(含有量:60.5質量%)、過酸化水素(含有量:10質量%)、過酢酸(含有量:11.8質量%)、臭化物イオン(含有量:1質量ppt)、S-1(含有量:1質量%)、水(残部)を含むエッチング液を得る。上記含有量は、エッチング液全質量に対する、各成分の含有量を表し、水は残りの部分を占める。
上記実施例1-19で調製されるエッチング液で評価を行うと、他の実施例1-1~1-18と同様に、Siに対するSiGeのエッチング比が大きく、かつ、保存安定性に優れる。ただし、実施例1-19は、実施例1-18と比較して、処理後のSiGeの表面粗さが大きくなる。
【0125】
また、実施例1-1、実施例1-7、および、実施例1-10で調整されたエッチング液を用いて、上記[エッチング速度の評価]で使用したシリコンゲルマニウム(Si:Ge=70:30(元素比))の代わりに、シリコンゲルマニウム(Si:Ge=50:50(元素比))を使用した[エッチング速度の評価]を実施し、SiGe膜に対するエッチング速度を求めた。実施例1-1、実施例1-7、および、実施例1-10のエッチング液を使用したそれぞれの結果は、540Å/分、501Å/分、および、536Å/分であった。
また、実施例1-1~1~6、実施例1-10、および、実施例1-17で調整されたエッチング液を用いて、上記[エッチング速度の評価]で使用したシリコンゲルマニウム(Si:Ge=70:30(質量比))の代わりに、シリコンゲルマニウム(Si:Ge=85:15(質量比))を使用した[エッチング速度の評価]を実施し、SiGe膜に対するエッチング速度を求めた。実施例1-1~1~6、実施例1-10、および、実施例1-17のエッチング液を使用したそれぞれの結果は、30Å/分、40Å/分、39Å/分、13Å/分、42Å/分、37Å/分、29Å/分、および、44Å/分であった。
【0126】
また、実施例2-1、実施例2-5、および、実施例2-6で調整されたエッチング液を用いて、上記[エッチング速度の評価]で使用したシリコンゲルマニウム(Si:Ge=70:30(質量比))の代わりに、シリコンゲルマニウム(Si:Ge=50:50(質量比))を使用した[エッチング速度の評価]を実施し、SiGe膜に対するエッチング速度を求めた。実施例2-1、実施例2-5、および、実施例2-6のエッチング液を使用したそれぞれの結果は、512Å/分、501Å/分、および、499Å/分であった。
また、実施例2-1~2-4、および、実施例2-6~2-7で調整されたエッチング液を用いて、上記[エッチング速度の評価]で使用したシリコンゲルマニウム(Si:Ge=70:30(質量比))の代わりに、シリコンゲルマニウム(Si:Ge=85:15(質量比))を使用した[エッチング速度の評価]を実施し、SiGe膜に対するエッチング速度を求めた。実施例2-1~2-4、および、実施例2-6~2-7のエッチング液を使用したそれぞれの結果は、41Å/分、13Å/分、42Å/分、37Å/分、45Å/分、および、12Å/分であった。
【国際調査報告】