(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-02
(54)【発明の名称】アクリレート官能性化合物に基づく二重硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/045 20160101AFI20240625BHJP
C09D 163/10 20060101ALI20240625BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240625BHJP
【FI】
C08G75/045
C09D163/10
C09D7/63
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023574446
(86)(22)【出願日】2022-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-12-13
(86)【国際出願番号】 EP2022064862
(87)【国際公開番号】W WO2022253878
(87)【国際公開日】2022-12-08
(32)【優先日】2021-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チュンフー
【テーマコード(参考)】
4J030
4J038
【Fターム(参考)】
4J030BA04
4J030BA42
4J030BA44
4J030BB07
4J030BB13
4J030BB62
4J030BB67
4J030BC43
4J030BG02
4J030BG03
4J038DB361
4J038FA182
4J038GA13
4J038JC02
4J038KA03
4J038MA07
4J038NA02
4J038PA17
4J038PA19
4J038PC03
(57)【要約】
本発明は、室温で硬化され得るが熱硬化性または光硬化性でもある二重硬化性組成物に関する。前記組成物は、該組成物の重量に基づいて、10~95重量%のa)少なくとも2個のアクリレート基を有する少なくとも1のエポキシアクリレート化合物;および5~90重量%のb)少なくとも1のポリチオール化合物を含み、前記組成物は、チオール基(-SH)とアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)とのモル比が0.2:1~1:1、好ましくは0.5:1~1:1の範囲であることを特徴とする。前記組成物は更に、フリーラジカル開始剤を含まないことを更なる特徴とし得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二重硬化性組成物の重量に基づいて、
10~95重量%のa)少なくとも2個のアクリレート基を有する少なくとも1のエポキシアクリレート化合物;および
5~90重量%のb)少なくとも1のポリチオール化合物
を含む二重硬化性組成物であって、
前記組成物は、チオール基(-SH)とアクリレート基(H
2C=CHC(O)O-)とのモル比が0.2:1~1:1の範囲であることを特徴とし、
前記組成物は、室温で、加熱下で、または光照射下で硬化可能である、
二重硬化性組成物。
【請求項2】
二重硬化性組成物の重量に基づいて、
20~90重量%、好ましくは40~90重量%の前記a)少なくとも2個のアクリレート基を有する少なくとも1のエポキシアクリレート化合物;
10~80重量%、好ましくは10~60重量%の前記b)少なくとも1のポリチオール化合物;および
0~50重量%、好ましくは0~30重量%のc)少なくとも1のエチレン性不飽和非イオン性モノマー
を含む、請求項1に記載の二重硬化性組成物であって、
前記組成物は、チオール基(-SH)とアクリレート基(H
2C=CHC(O)O-)とのモル比が0.2:1~1:1、好ましくは0.5:1~1:1の範囲であることを特徴とする、二重硬化性組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1のエポキシアクリレート化合物はアクリル酸とポリエポキシド化合物の付加物である、請求項1または2に記載の二重硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリエポキシド化合物は100~700g/eq、好ましくは120~320g/eqのエポキシド当量を有する、請求項3に記載の二重硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリエポキシドは、多価アルコールのポリグリシジルエーテル;多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;およびエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素からなる群から選択される、請求項3または4に記載の二重硬化性組成物。
【請求項6】
前記ポリエポキシドは、脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル;ビスフェノールAベースのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ポリアルキレングリコールベースのジグリシジルエーテル;およびポリカーボネートジオールベースのグリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテルである、請求項3~5のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項7】
組成物に含まれるポリチオール化合物または各ポリチオール化合物は、2~5個のチオール基を有する、請求項1~6のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項8】
組成物に含まれるポリチオール化合物または各ポリチオール化合物は、20,000ダルトン未満、好ましくは200~800ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有する、請求項1~7のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項9】
要素b)は、チオカルボン酸のポリエステルの少なくとも1つを含む、またはそれからなる、請求項1~8のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項10】
要素b)は、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);トリス(2-(メルカプトプロピオニルオキシ)エチル)イソシアネート;およびグリコールジメルカプトアセテートからなる群から選択される少なくとも1の化合物を含むか、またはそれからなる、請求項9に記載の二重硬化性組成物。
【請求項11】
5~30重量%のc)少なくとも1のエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含んでなる、請求項2~10のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項12】
アクリレートモノマーは、組成物中に存在するエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総量の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%を構成する、請求項2~11のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項13】
フリーラジカル光開始剤を実質的に含まない、請求項1~12のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項14】
フリーラジカル熱開始剤を実質的に含まない、請求項1~13のいずれかに記載の二重硬化性組成物。
【請求項15】
コーティング剤、接着剤またはシーラントとしての、請求項1~14のいずれかに記載の二重硬化性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重硬化性組成物に関する。より具体的には、本発明は、室温で、または化学線および/または熱を用いることで硬化され得、エポキシアクリレートモノマーおよびチオール官能性化合物を含む、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
コーティング組成物等、化学線によって硬化可能な組成物は、従来、放射線源への曝露によって比較的短時間で硬化させることができる。組成物の硬化が迅速であると、メーカーは、例えば工業用コーティング工程での処理能力を向上させることができる。しかし、多くのコーティングされた基材は、化学線に曝露されにくい領域を有する:例えば、回路基板および電子部品の表面は、多くの場合、非常に起伏に富むため、該表面に適用されたコンフォーマルコーティングを完全に曝露することは困難であり得る。適用された組成物を化学線に曝露することへのこのような困難性は、「影」の領域に適用された組成物の一部が未硬化のまま残るという問題を招く。
【0003】
本発明は、アクリレート官能性化合物に基づく光硬化性組成物について、初期の入射光源によって照射されていない領域全体で完全な硬化を達成するという問題に対処しようとするものである。この問題は、従来、当技術分野では、化学線への曝露で硬化可能であることに加えて、熱への曝露でも硬化可能な組成物を提供することによって対処されてきた。そのような組成物は、二重硬化性と称されている。
【0004】
US 2007029034 A1(Mgayaら)には、a)少なくとも1種のビニルエステルホモポリマーまたはコポリマーの水性エマルション;b)紫外線または可視光への曝露により重合および/または架橋可能な少なくとも1種の(メタ)アクリレート官能化モノマーおよび/またはオリゴマー;およびc)少なくとも1種の光開始剤を含んでなる二重硬化性接着剤組成物が開示されている。
【0005】
米国特許番号10174146B2(Morinら)には、a)少なくとも1種の重合性アクリル化合物、熱開始剤、光開始剤および過酸化物を混合して混合物を生成する工程であって、過酸化物は分解温度を有する工程;b)第一硬化剤を生成するのに十分な第一の時間、混合物を光に曝露する工程;およびc)混合物の光への曝露後、第二硬化剤を生成するのに十分な第二の時間、混合物を過酸化物の分解温度未満の温度に曝露する工程の方法を用いて適用される二重硬化性組成物が開示されている。
【0006】
WO 2013/023545(Henkel China Company Ltd.)には、接着剤組成物の総重量に基づいて、10~90重量%のペンダント(メタ)アクリロイルオキシまたはビニル基を有する光硬化性オリゴマーまたはポリマー;5~55重量%の(メタ)アクリレート;0~50重量%の液体ポリブタジエン;0.5~5重量%のUV光開始剤;および0.5~5重量%の熱開始剤を含んでなる、二重硬化性接着剤組成物が開示されている。
【0007】
KR 102155180 B1(KCC Corporation)には、光硬化可能および熱硬化可能であり、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー;ポリオール(メタ)アクリレートオリゴマー;(メタ)アクリレートモノマー;光開始剤;および熱開始剤を含む、二重硬化性接着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 2007029034 A1
【特許文献2】米国特許番号10174146B2
【特許文献3】WO 2013/023545
【特許文献4】KR 102155180 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これらの先行技術の組成物における光開始剤の存在に注意すべきである。また、当業者であれば、このような先行技術の組成物の実施例では、光開始重合の速度を増大させるか、または重合が起こる波長をシフトさせることによって、供給されたエネルギーを光開始剤が使用する効率を改善するために、組成物が一般に光増感剤を含むことを認識するであろう。光開始剤および場合により光増感剤は、最終硬化物中に光化学反応による残留化合物を生成することがある。これらの残留物は、赤外、紫外およびNMR分光法;ガスまたは液体クロマトグラフィー;および質量分析法等の通常の分析技術によって検出され得る。従って、先行技術の組成物は、硬化したマトリックス(コ)ポリマーと、少なくとも光開始剤からの検出可能な量の残留物とを含み得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の実施形態によれば、二重硬化性組成物の重量に基づいて、
10~95重量%のa)少なくとも2個のアクリレート基を有する少なくとも1のエポキシアクリレート化合物;および
5~90重量%のb)少なくとも1のポリチオール化合物
を含む二重硬化性組成物であって、
前記組成物は、チオール基(-SH)とアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)とのモル比が0.2:1~1:1の範囲であることを特徴とし、
前記組成物は、室温で硬化可能であるが、加熱下でも、光照射下でも硬化可能である、
二重硬化性組成物が提供される。
【0011】
一実施形態では、二重硬化性組成物は、組成物の重量に基づいて、
20~90重量%、好ましくは40~90重量%のa)前記少なくとも2個のアクリレート基を有する少なくとも1のエポキシアクリレート化合物;
10~80重量%、好ましくは10~60重量%のb)前記少なくとも1のポリチオール化合物;および
0~50重量%、好ましくは0~30重量%のc)少なくとも1のエチレン性不飽和非イオン性モノマー
を含んでなり、
該組成物は、チオール基(-SH)とアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)とのモル比が0.2:1~1:1の範囲、好ましくは0.5:1~1:1の範囲であることを特徴とする。
【0012】
二重硬化性組成物は、フリーラジカル光開始剤および/またはフリーラジカル熱開始剤を実質的に含むべきでない。実際、フリーラジカル熱開始剤およびフリーラジカル光開始剤の両方を含まない本発明における有用な組成物は、室温または独立して加熱および光照射下で効果的に硬化することが示された。完全を期すために、重要な実施形態では、本発明の組成物は、フリーラジカル開始剤を実質的に含まなくてもよい。
【0013】
組成物中に存在するエポキシアクリレート化合物または各エポキシアクリレート化合物は、好ましくはアクリル酸とポリエポキシド化合物の付加物である。例示的な実施形態では、前記ポリエポキシドは、多価アルコールのポリグリシジルエーテル;多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;およびエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素からなる群から選択される。より具体的には、前記ポリエポキシドは、脂肪族および脂環式ジオールのジグリシジルエーテル;ビスフェノールAベースのジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ポリアルキレングリコールベースのジグリシジルエーテル;およびポリカーボネートジオールベースのグリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテルである。
【0014】
組成物に含まれるポリチオール化合物または各ポリチオール化合物は、好ましくは、2~5個のチオール基を有すべきである。この官能性とは独立してまたはこの官能性に加えて、組成物に含まれるポリチオール化合物または各ポリチオール化合物は、20,000ダルトン未満、好ましくは200~800ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有すべきである。
【0015】
例示的なポリチオール化合物は、チオカルボン酸のポリエステルであり、特に使用について言及できるものは、下記化合物の単独または組み合わせである:ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);トリス(2-(メルカプトプロピオニルオキシ)エチル)イソシアネート;および、グリコールジメルカプトアセテート。
【0016】
組成物を特徴付けるモル比の用語は、チオール基(-SH)がアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)に対してモル過剰であってはならない、ということを示す。完全を期すために、モル比の用語は、組成物中に存在するアクリレート基およびチオール基の総数に関する。従って、要素c)が存在し、アクリレート官能基を有するモノマーを含む場合、アクリレート基に対するチオール基のモル比の用語は、組成物の要素a)と要素c)の両方からの寄与を含む。
【0017】
本発明の第二の実施形態では、コーティング剤、接着剤またはシーラントとしての、上述し、特許請求の範囲で規定されている二重硬化性組成物の使用が提供される。複合材における二重硬化性組成物の使用もまた想定される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0019】
本明細書で使用される「含んでなる」、「含む」、および「構成される」という用語は、「包含する」、「含む」、「含有してなる」、または「含有する」と同義であり、包括的またはオープンエンドであり、追加の、記載されていない部材、要素または方法工程を除外しない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「からなる」という用語は、記載されていない要素、成分、部材、または方法工程を除外する。
【0021】
量、濃度、寸法および他のパラメータを範囲、好ましい範囲、上限値、下限値、または好ましい上限値および好ましい下限値で表す場合、文脈上、得られる範囲が明確に言及されているかどうかに関係なく、任意の上限値または好ましい上限値と任意の下限値または好ましい下限値とを組み合わせることによって得られる範囲も具体的に開示されていると理解すべきである。
【0022】
また、標準的な理解に従い、「0からxまで」として表される重量範囲は、具体的には0重量%を含む。前記範囲によって定義される成分は、組成物中に存在しなくてもよく、またはx重量までの量で組成物中に存在してもよい。
【0023】
「好ましい」、「好適な」、「望ましくは」および「特に」という用語は、特定の状況下で特定の利益をもたらし得る本開示の実施形態を言及するために本明細書で頻繁に使用されている。しかし、1以上の好ましい、好適な、望ましいまたは特定の実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味するものではなく、また、それらの他の実施形態を本発明の範囲から除外することを意図するものではない。
【0024】
この出願全体で使用される「し得る」という言葉は、強制的な意味ではなく、許容的な意味、つまり潜在的な意味で使用されている。
【0025】
本明細書で使用される場合、室温は23℃±2℃である。
【0026】
本明細書で言及される分子量は、硬化性組成物の巨大分子、オリゴマーおよびポリマー成分について説明するためのものであり、ASTM 3536に従って行われるような、ポリスチレン校正標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定できる。
【0027】
本明細書に記載の組成物の粘度は、別段の規定がない限り、ブルックフィールド粘度計を使用して20℃、相対湿度(RH)50%の標準条件で測定される。ブルックフィールド粘度計の校正方法、スピンドルの種類および回転速度は、測定する組成物に応じて適宜、製造業者の指示に従って選択される。
【0028】
本明細書で使用する「モノマー」という用語は、重合反応を受けてポリマーの化学構造に構成単位を与えることができる物質を指す。本明細書で使用される「単官能性」という用語は、1つの重合性部分を有することを指す。本明細書で使用される「多官能性」という用語は、2つ以上の重合性部分を有することを指す。
【0029】
本明細書で使用される「当量(eq.)」という用語は、化学表記では通常であるように、反応中に存在する反応性基の相対的な数に関する。
【0030】
本明細書で使用される「当量」という用語は、分子量を、関係する官能基の数で割ったものを指す。例えば「エポキシ当量(EEW)」は、1当量のエポキシを含む、グラム単位での樹脂の重量を意味する。
【0031】
本明細書で使用する場合、「エポキシド」という用語は、少なくとも1つの環状エーテル基、即ちエーテル酸素原子が2つの隣接する炭素原子に結合し、それによって環状構造を形成しているものの存在を特徴とする化合物を指す。この用語は、モノエポキシド化合物、(2つ以上のエポキシド基を有する)ポリエポキシド化合物、およびエポキシド末端プレポリマーを包含することが意図されている。「モノエポキシド化合物」という用語は、1つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を意味する。「ポリエポキシド化合物」という用語は、少なくとも2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を意味する。「ジエポキシド化合物」という用語は、2つのエポキシ基を有するエポキシド化合物を意味する。
【0032】
エポキシドは非置換であってもよいが、不活性な状態に置換されていてもよい。例示的な不活性置換基には、塩素、臭素、フッ素およびフェニルが包含される。
【0033】
本明細書で使用される「ポリチオール」という用語は、1分子当たり少なくとも2つのペンダントまたは末端チオール基(-SH)を有する単純または複雑な有機化合物を指す。そのようなポリチオールは一般に、式:Rt-(SH)cで表すことができ、式中、cは少なくとも2の値を有する整数であり、Rtは価数cの多価有機基である。
【0034】
本明細書で使用される「フリーラジカル開始剤」という用語は、(例えば光または熱の形態の)十分なエネルギーに曝露されると、帯電していないが、それぞれが少なくとも1つの不対電子を有する2つの部分に分解する化学種を指す。例えば、フリーラジカル熱開始剤は、熱に曝露されるとフリーを生成する。公知のフリーラジカル熱開始剤には、過酸化物、アゾ化合物および過硫酸塩化合物が包含されるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
本明細書で使用される「光開始剤」という用語は、エネルギーを運ぶ(電磁放射線等の)活性化光線を照射すると活性化され得る化合物を指す。特に、本明細書で使用される「フリーラジカル光開始剤」という用語は、フリーラジカルを生成する光活性化合物を指す。このラジカルは、組成物中に存在するC=C二重結合に付加することによって重合または反応を開始することができる。そのようなフリーラジカル光開始剤は通常、NorrishタイプIおよびNorrishタイプII光開始剤に分類される。NorrishタイプIラジカル光開始剤は、化学線に曝露されるとNorrishタイプI反応を起こす:この反応は、IUPACによって、一次光生成物として(非環式カルボニル化合物からの)アシル-アルキルラジカル対または(環式カルボニル化合物からの)アシル-アルキルビラジカルをもたらす励起カルボニル化合物のα-開裂として定義されている。NorrishタイプIIラジカル光開始剤は、化学線に曝露されるとNorrishタイプII反応を起こす:この反応は、IUPACによって、一次光生成物として1,4-ビラジカルを生成する、励起されたカルボニル化合物によるγ-水素の光化学的引き抜きとして定義されている。
【0036】
本明細書で使用される場合、「C1~Cnアルキル」基は1~n個の炭素原子を含む一価の基を指し、この基は、アルカンの基であり、直鎖および分枝有機基を包含する。例えば、「C1~C18アルキル」基は1~18個の炭素原子を含む一価の基を指し、この基は、アルカンの基であり、直鎖および分枝有機基を包含する。アルキル基の例には、メチル;エチル;プロピル;イソプロピル;n-ブチル;イソブチル;sec-ブチル;tert-ブチル;n-ペンチル;n-ヘキシル;n-ヘプチル;および2-エチルヘキシルが包含されるが、これらに限定されない。本発明では、そのようなアルキル基は非置換であってもよく、または1つ以上のハロゲンで置換されていてもよい。特定の部分(R)に該当する場合、アルキル基内の1つ以上の非ハロゲン置換基の許容範囲は明細書に記載される。
【0037】
本明細書で使用される「C1~C18ヒドロキシアルキル」という用語は、1~18個の炭素原子を有するHO-(アルキル)基を指す。ここで、置換基の結合点は、酸素原子を介しており、アルキル基は先で定義した通りである。
【0038】
「アルコキシ基」とは、Aがアルキル基である-OAで表される1価の基を指す。その非限定的な例は、メトキシ基、エトキシ基およびイソプロピルオキシ基である。本明細書で使用される「C1~C18アルコキシアルキル」という用語は、先に定義したアルコキシ置換基を有するアルキル基を指し、部分(アルキル-O-アルキル)は合計で1~18個の炭素原子を含む。そのような基には、メトキシメチル(-CH2OCH3)、2-メトキシエチル(-CH2CH2OCH3)および2-エトキシエチルが包含される。
【0039】
本明細書で使用される「C2~C4アルキレン」という用語は、2~4個の炭素原子を有する飽和二価炭化水素基と定義される。
【0040】
「C3~C18シクロアルキル」という用語は、3~18個の炭素原子を有する飽和の単環式または多環式炭化水素基を意味すると理解される。本発明において、そのようなシクロアルキル基は非置換であってもよく、または1つ以上のハロゲンで置換されていてもよい。特定の部分(R)に該当する場合、シクロアルキル基内の1つ以上の非ハロゲン置換基に対する許容範囲は本明細書に記載される。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル;シクロブチル;シクロペンチル;シクロヘキシル;シクロヘプチル;シクロオクチル;アダマンタンおよびノルボルナンが包含される。
【0041】
本明細書において、単独でまたは(「アラルキル基」の場合のように)より大きな部分の一部として使用される「C6~C18アリール」基は、単環式、二環式および三環式環系を指す。ここで、単環式環系は芳香族であるか、または二環式若しくは三環式環系の環の少なくとも1つは芳香族である。二環式および三環式の環系には、ベンゾ縮合した2~3員炭素環が含まれる。本発明では、そのようなアリール基は、非置換であってもよく、または1つ以上のハロゲンで置換されていてもよい。特定の部分(R)に該当する場合、アリール基内の1つ以上の非ハロゲン置換基に対する許容範囲は本明細書に記載される。アリール基の例には、フェニル;(C1~C4)アルキルフェニル、例えばトリルおよびエチルフェニル;インデニル;ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル;テトラヒドロアントラセニル;およびアントラセニルが包含される。フェニル基が好ましいことが言及され得る。
【0042】
本明細書で使用する場合、「アルキルアリール」は、アルキル置換アリール基を指し、両方の基は先に定義した通りである。また、本明細書で使用する場合、「アラルキル」は、先に定義したアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0043】
本発明の組成物は、本明細書では、特定の化合物、元素、イオン、または他の同様の成分を「実質的に含まない」と定義され得る。「実質的に含まない」という用語は、化合物、元素、イオン、または他の同様の成分が組成物に意図的に添加されておらず、かつ、コーティングの所望の特性に(悪い)影響を及ぼさない、せいぜい微量でしか存在しないことを意味することが意図されている。典型的な微量とは、組成物の重量で1000ppm未満である。「実質的に含まない」という用語は、特定の化合物、元素、イオン、または他の同様の成分が組成物中に完全に存在しない、または当技術分野で一般的に使用される技術によって測定可能な量で存在しない実施形態を明示的に包含する。
【0044】
a)エポキシアクリレート化合物
組成物は、前記組成物の重量に基づいて10~95重量%の量で、少なくとも2個のアクリレート基を有する少なくとも1のエポキシアクリレート化合物を含む。前記エポキシアクリレート化合物が、前記組成物の20~90重量%、例えば40~90重量%を構成することが好ましい。
【0045】
エポキシアクリレート化合物は、アクリル酸とポリエポキシド化合物との反応生成物として得られる。本発明を限定することを意図するものではないが、反応体に適したポリエポキシド化合物は、液体、固体または溶媒中溶液であってよい。また、そのようなポリエポキシド化合物は、100~700g/eq、例えば120~320g/eqのエポキシド当量を有すべきである。また、一般に、500g/eq未満または400g/eq未満のエポキシド当量を有するジエポキシド化合物は好ましい。これは主にコストの観点からであり、低分子量のエポキシ樹脂は、その製造時に、より限定された精製処理が必要とされるためである。
【0046】
アクリル酸と反応させ得るポリエポキシド化合物のタイプまたは群の例として、以下が挙げられる:多価アルコールおよび多価フェノールのポリグリシジルエーテル;ポリカルボン酸のポリグリシジルエステル;およびエポキシ化ポリエチレン性不飽和炭化水素。
【0047】
ジエポキシド化合物の使用が好ましい。例えば、適当なジグリシジルエーテル化合物は、本質的に芳香族、脂肪族または脂環式であってよく、そのため、二価フェノールおよび二価アルコールから誘導され得る。そのようなジグリシジルエーテルの有用な群は下記である:脂肪族および脂環式ジオール、例えば、1,2-エタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,12-ドデカンジオール、シクロペンタンジオールおよびシクロヘキサンジオールの、ジグリシジルエーテル;ビスフェノールAベースジグリシジルエーテル;ビスフェノールFジグリシジルエーテル;ジグリシジルo-フタレート、ジグリシジルイソフタレートおよびジグリシジルテレフタレート;ポリアルキレングリコールベースジグリシジルエーテル、特にポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル;およびポリカーボネートジオールベースグリシジルエーテル。同様に挙げられる他の適当なジエポキシドには下記が包含される:二重不飽和脂肪酸C1~C18アルキルエステルのジエポキシド;ブタジエンジエポキシド;ポリブタジエンジグリシジルエーテル;ビニルシクロヘキサンジエポキシド;およびリモネンジエポキシド。
【0048】
別の例示的なポリエポキシド化合物には下記が包含されるが、これらに限定されない:グリセロールポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル;ジグリセロールポリグリシジルエーテル;ポリグリセロールポリグリシジルエーテル;およびソルビトールポリグリシジルエーテル。
【0049】
特に好ましい反応体であるポリエポキシド化合物の例には、下記が包含される:ビスフェノールAエポキシ樹脂;ビスフェノールFエポキシ樹脂;ビスフェノールA/Fエポキシ樹脂混合物;ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、例えばDERTM 732;エポキシノボラック樹脂、例えばDENTM 438;臭素化エポキシ樹脂、例えばDERTM 542;ひまし油トリグリシジルエーテル、例えばERISYSTM GE-35H;ポリグリセロール-3-ポリグリシジルエーテル、例えばERISYSTM GE-38;およびソルビトールグリシジルエーテル、例えばERISYSTM GE-60。
【0050】
少なくとも2個のアクリレート基を有するエポキシアクリレート化合物はもちろん、商業的供給源から得ることもできる。代表的な市販のエポキシジアクリレートには、下記が包含されるがこれらに限定されない:ビスフェノールAエポキシジアクリレートオリゴマーである、Daicel-Cytec Company Ltdから入手可能なEbecryl 3700、Ebecryl 3702およびEbecryl 3703;エトキシル化ビスフェノールAエポキシジアクリレート化合物である、Sartomer社から入手可能なSR601、SR602およびCD9038;並びにIGM Resins社から入手可能なPhotomer 3016。
【0051】
エポキシアクリレート付加物の生成に有用なポリエポキシド化合物がモノマーまたはオリゴマーであり得ることに留意すべきである。本発明の組成物にモノマーエポキシアクリレートを含めると、一般に、硬質で耐摩耗性の特性を有する硬化生成物が得られると考えられる。逆に、オリゴマーの多官能性アクリレートを含めると、一般に、やや柔軟な、より可撓性の硬化生成物が得られるであろう。もちろん、モノマーおよびオリゴマーのエポキシアクリレート化合物の両方の使用により、硬化生成物の所望の特性のバランスをとることもできる。
【0052】
b)ポリチオール化合物
本発明の組成物は、少なくとも1のポリチオール化合物b)を含む。ここで、チオール基(-SH)とアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)とのモル比は0.2:1~1:1の範囲、好ましくは0.5:1~1:1の範囲である。
【0053】
このモル比の条件において、組成物は、組成物の重量に基づいて、5~90重量%、好ましくは10~80重量%の前記少なくとも1のポリチオール化合物b)を含む。例えば、組成物は、組成物の重量に基づいて、10~60重量%、好ましくは15~40重量%の前記少なくとも1のポリチオール化合物b)を含み得る。
【0054】
好ましい実施形態では、組成物に含まれるポリチオール化合物または各ポリチオール化合物は、2~5個のチオール基、例えば2~4個のチオール基を有すべきである。この官能基の条件とは独立してまたは加えて、組成物に含まれるポリチオール化合物または各ポリチオール化合物が20,000ダルトン未満、例えば5000ダルトン未満、好ましくは200~800ダルトンの重量平均分子量(Mw)を有することが好ましい。
【0055】
単独でまたは組み合わせて使用され得る適当なチオール基含有化合物は、下記を包含するが、これらに限定されない。
・液状チオール(SH)末端ポリサルファイドポリマー、その市販品の例は下記を包含する:Thiokol(登録商標)ポリマー(Morton Thiokol社から入手可能)、特にタイプLP-3、LP-33、LP-980、LP-23、LP-55、LP-56、LP-12、LP-31、LP-32およびLP-2;並びにThioplast(登録商標)ポリマー(Akzo Nobel社製)、特にタイプG10、G112、G131、G1、G12、G21、G22、G44およびG4。
・ポリオキシアルキレンジ-およびトリオールとエピクロロヒドリンまたはアルキレンオキシドとの反応、並びに続く硫化水素ナトリウムとの反応により得られる、チオール(SH)末端ポリオキシアルキレンエーテル。
・Capcure(登録商標)(Cognis社製)の商品名で知られている、ポリオキシアルキレン誘導体としてのチオール(SH)末端化合物、特にタイプWR-8、LOFおよび3-800。
・メルカプト酢酸(チオグリコール酸)、メルカプトプロピオン酸、メルカプト安息香酸およびメルカプトコハク酸等のチオカルボン酸のポリエステル。そのようなポリエステルの特定の例には以下が包含される:ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);グリコールジメルカプトアセテート;およびポリオキシアルキレンジオールおよびトリオール、エトキシル化トリメチロールプロパンおよびポリエステルジオールのチオカルボン酸(例えばメルカプト酢酸(チオグリコール酸)および2-若しくは3-メルカプトプロピオン酸)によるエステル化生成物。
・2,4,6-トリメルカプト-1,3,5-トリアジン、2,2’-(エチレンジオキシ)-ジエタンチオール(トリエチレングリコールジメルカプタン)および/またはエタンジチオール。
・トリス(2-(メルカプトプロピオニルオキシ)エチル)イソシアネート。
【0056】
チオカルボン酸のポリエステルを使用することが好ましいこと、特に、ペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート;ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート);トリメチロールプロパントリメルカプトアセテート(TMPMP);トリス(2-(メルカプトプロピオニルオキシ)エチル)イソシアネート;およびグリコールジメルカプトアセテートの少なくとも1つを使用することが好ましいことが認められる。
【0057】
c)エチレン性不飽和非イオン性モノマー
本開示の組成物は、前記組成物の重量に基づいて0~50重量%の少なくとも1のエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含む。組成物が、0~30重量%、例えば0~20重量%の前記少なくとも1のエチレン性不飽和非イオン性モノマーを含むことが好ましい。
【0058】
組成物におけるこの要素c)のモノマーは、要素a)のエポキシアクリレートモノマーとは異なる。それとは別に、そのようなモノマーは、原則として、任意の他のエチレン性不飽和非イオン性モノマーであってもよい。しかし、本発明は、組成物中に存在するエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総量の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも75重量%または少なくとも85重量%をアクリレートモノマーが構成する組成物に特に適用できる。
【0059】
本発明の組成物の室温での硬化能力に関し、要素c)がメタクリレート官能基を有するエチレン性不飽和非イオン性モノマーを実質的に含まないことが好ましい。
【0060】
C.1 アクリレートモノマー
本発明において有用なアクリル酸エステルを限定する特別な意図はなく、アクリレートモノマーは当技術分野で知られているアクリル酸の任意のエステルであり得ると考えられる。即ち、例示的なアクリレートモノマーとして下記が包含されるが、これらに限定されない:
・アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル(全ての異性体)、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸n-ヘプチル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ノニル、アクリル酸n-デシル、アクリル酸n-ドデシルおよびアクリル酸n-ステアリル等の、アクリル酸のC1~C18アルキルエステル;
・アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル等の、アクリル酸のC3~C18シクロアルキルエステル;
・アクリル酸フェニルおよびアクリル酸トリル等の、アクリル酸のC6~C18アリールエステル;
・アクリル酸ベンジル等の、アクリル酸のC7~C24アラルキルエステル;
・2-メトキシエチルアクリレート、2-エトキシエチルアクリレートおよび3-メトキシブチルアクリレート等の、アクリル酸のC1~C18アルコキシアルキルエステル;
・トリフルオロメチルメチルアクリレート、2-トリフルオロメチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチルアクリレート、2-パーフルオロエチルアクリレート、パーフルオロメチルアクリレート、ジパーフルオロメチルメチルアクリレート、2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチルアクリレート、2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、2-パーフルオロデシルエチルアクリレートおよび2-パーフルオロヘキサデシルエチルアクリレート等の、アクリル酸のフッ素含有C1~C18アルキルエステル;
・2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレート等の、アクリル酸のC1~C18ヒドロキシアルキルエステル、特にアクリル酸のC1~C6ヒドロキシアルキルエステル;
・エチレングリコールジアクリレート、1,3-または1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレート等の、二官能性/多官能性アルコールのジ/ポリエステル;
・2-アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレートおよびアクリルオキシエトキシエチルアミン等の、アクリル酸のC1~C18アミノアルキルエステル;
・(3-アクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等の、アクリル酸のC1~C18アルコキシシリル含有アルキルエステル;
・アクリル酸のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド付加物;並びに
・テトラヒドロフルフリルアクリレート等の、他の官能基を有するアルコールによって生成されたアクリル酸エステル。
【0061】
完全を期すために、組成物の要素c)が、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートからなる群から選択される1つ以上のオリゴマーからなるマクロモノマー成分を含むことは排除されない。しかし、(重合可能なアクリレート官能基に関して単官能性または多官能性であり得るが、反復構造のウレタン、エステルおよびエーテルサブユニットに基づく)そのようなオリゴマー化合物は、通常、前記組成物中のアクリレートモノマーの合計の30重量%を超えて構成すべきではない。
【0062】
当技術分野で知られているように、ウレタンアクリレートオリゴマーは、本明細書において先に定義したポリイソシアネートとヒドロキシル基含有多官能性アクリレートとの反応によって調製され得る。具体的には、ヒドロキシル基を有する多官能性アクリレートは、下記からなる群から選択され得る:2-ヒドロキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシイソプロピルアクリレート;4-ヒドロキシブチルアクリレート;ヒドロキシエチルカプロラクトンアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート;およびそれらの組み合わせ。
【0063】
適当なポリエステルアクリレートオリゴマーは、アクリル酸と、多塩基酸またはその無水物および多価アルコールから調製されるポリエステルとの反応によって得られる。多塩基酸の例には下記が含まれるが、これらに限定されない:フタル酸;コハク酸;アジピン酸;グルタル酸;セバシン酸;イソセバシン酸;テトラヒドロフタル酸;ヘキサヒドロフタル酸;ダイマー酸;トリメリット酸;ピロメリット酸;ピメリン酸;およびアゼライン酸。多価アルコールの例には下記が含まれるが、これらに限定されない:1,6-ヘキサンジオール;ジエチレングリコール;1,2-プロピレングリコール;1,3-ブチレングリコール;ネオペンチルグリコール;ジプロピレングリコール;ポリエチレングリコール;およびポリプロピレングリコール。
【0064】
当技術分野で知られているように、ポリエーテルアクリレートオリゴマーは、ポリエーテルと、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステルとのエステル交換反応により得られ得る。例示的なポリエーテルには、エトキシル化またはプロポキシル化トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等から得られた、または1,4-プロパンジオール等のポリエーテル化により得られたポリエーテルが包含される。
【0065】
好ましい実施形態では、組成物は、下記からなる群から選択される少なくとも1つのアクリレートモノマーを含む:アクリル酸メチル;アクリル酸エチル;アクリル酸n-プロピル;アクリル酸イソプロピル;アクリル酸n-ブチル;アクリル酸イソブチル;アクリル酸tert-ブチル;アクリル酸n-ペンチル;アクリル酸n-ヘキシル;アクリル酸シクロヘキシル;アクリル酸n-ヘプチル;アクリル酸n-オクチル;2-エチルヘキシルアクリレート;ノニルアクリレート;デシルアクリレート;ドデシルアクリレート;フェニルアクリレート;トリルアクリレート;ベンジルアクリレート;2-メトキシエチルアクリレート;3-メトキシブチルアクリレート;2-ヒドロキシエチルアクリレート;2-ヒドロキシプロピルアクリレート;ステアリルアクリレート;グリシジルアクリレート;イソボルニルアクリレート;2-アミノエチルアクリレート;y-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン;アクリル酸-エチレンオキシド付加物;トリフルオロメチルメチルアクリレート;2-トリフルオロメチルエチルアクリレート;2-パーフルオロエチルエチルアクリレート;2-パーフルオロエチル-2-パーフルオロブチルエチルアクリレート;2-パーフルオロエチルアクリレート;パーフルオロメチルアクリレート;ジパーフルオロメチルメチルアクリレート;2-パーフルオロメチル-2-パーフルオロエチルメチルアクリレート;2-パーフルオロヘキシルエチルアクリレート;2-パーフルオロデシルエチルアクリレート;2-パーフルオロヘキサデシルエチルアクリレート;エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレート;1,6-ヘキサンジオールジアクリレート;ネオペンチルグリコールジアクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート;1,2-ブチレングリコールジアクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート;グリセリルプロポキシレートトリアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート;トリプロピレングリコールジアクリレート;ネオペンチルグリコールプロポキシレートジアクリレート;1,4-ブタンジオールジアクリレート;トリエチレングリコールジアクリレート;およびブチレングリコールジアクリレート。
【0066】
C.2 共重合可能な酸
組成物は任意に、少なくとも1つの共重合可能な酸を含み得る。用いる場合、前記酸は、存在するエチレン性不飽和非イオン性モノマーの総量の40重量%まで、例えば25重量%までの量で添加され得る。従って、前記少なくとも1つの共重合可能な酸は、エチレン性不飽和非イオン性モノマーの総量の0~15重量%を構成し得る。完全を期すために、そのようなモノマーは典型的には遊離酸の形態で使用されるべきであるが、共重合への関与が損なわれない限り、モノマーの構成酸基が適当な塩基で部分的または完全に中和されることは妨げられない。
【0067】
本発明を限定することを意図するものではないが、共重合可能な酸モノマーは、下記から選択されるべきである:エチレン性不飽和カルボン酸;エチレン性不飽和スルホン酸;およびビニルホスホン酸。適当なエチレン性不飽和スルホン酸は、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸およびアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸である。
【0068】
組成物における好ましい前記少なくとも1つの共重合可能な酸は、α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸;α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸;α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸のC1~C6アルキル半エステル;α,β-モノエチレン性不飽和トリカルボン酸;および少なくとも1つの遊離カルボン酸基を有するα,β-モノエチレン性不飽和トリカルボン酸のC1~C6アルキルエステル;およびそれらの混合物からなる群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸を含むか、またはそれからなる。具体的には、組成物における好ましい前記少なくとも1つの共重合可能な酸は、メタクリル酸;アクリル酸、イタコン酸;マレイン酸;アコニット酸;クロトン酸;フマル酸;およびそれらの混合物からなる群から選択されるエチレン性不飽和カルボン酸を含むか、またはそれからなる。
【0069】
C.3 更なるモノマー
本発明は、アクリレートモノマーと共重合することができ、以下からなる群から選択されるビニルモノマーの、組成物中での存在を排除するものではないことに留意されたい:スチレンモノマー、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレンおよびクロロスチレン;フッ素含有ビニルモノマー、例えば、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレンおよびフッ化ビニリデン;ケイ素含有ビニルモノマー、例えば、ビニルトリメトキシシランおよびビニルトリエトキシシラン;マレイミドモノマー、例えば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミドおよびシクロヘキシルマレイミド;ニトリル基含有ビニルモノマー、例えば、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;アミド基含有ビニルモノマー、例えば、アクリルアミドおよびメタクリルアミド;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニルおよび桂皮酸ビニル;アルケン、例えば、エチレンおよびプロピレン;共役ジエン、例えば、ブタジエンおよびイソプレン;並びに塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリルおよびアリルアルコール。
【0070】
添加剤および補助成分
本発明で得られる前記組成物は、典型的には、これらの組成物に改善された特性を与えることができる助剤および添加剤を更に含み得る。例えば、助剤および添加剤は下記の1つ以上を与え得る:向上した弾性特性、向上した弾性回復、より長い加工時間、より迅速な硬化時間、およびより低い残留粘着性。そのような助剤および添加剤には、下記が包含される:触媒;可塑剤;UV安定剤を包含する安定剤;酸化防止剤;反応性希釈剤;非反応性希釈剤;乾燥剤;接着促進剤;殺菌剤;難燃剤;レオロジー助剤;充填材;および、着色顔料またはカラーペースト。
【0071】
そのような助剤および添加剤は、組成物の性質および本質的な特性に悪影響を及ぼさない限り、所望の組み合わせおよび割合で使用することができる。例外が存在する場合もあるが、これらの助剤および添加剤は全体として、組成物全体の50重量%を超えるべきではなく、好ましくは組成物の20重量%を超えるべきではない。
【0072】
本発明の組成物の組成は、場合によりマイケル付加触媒を含んでもよい。本明細書においてマイケル付加触媒とは、ポリチオール化合物とアクリレート基含有化合物との間のマイケル付加反応を促進することができる化合物を指す。従来、マイケル付加触媒には、アミン系触媒、塩基触媒および有機金属触媒が包含され、これらのタイプは単独でまたは組み合わせて使用され得る。例示的なアミン系触媒には、プロリン;トリアザビシクロデセン(TBD);ジアザビシクロウンデセン(DBU);ヘキサヒドロメチルピリミドピリジン(MTBD);ジアザビシクロノナン(DBN);テトラメチルグアニジン(TMG);およびトリエチレンジアミン(TEDA)が包含される。塩基触媒の例には、ナトリウムメトキシド;ナトリウムエトキシド;カリウムt-ブトキシド;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;金属ナトリウム;リチウムジイソプロピルアミド(LDA);およびブチルリチウムが包含される。例示的な有機金属触媒には、(シクロオクタジエン)(シクロオクタトリエン)ルテニウムおよび水素化ルテニウム等のルテニウム触媒;塩化鉄(III)および鉄アセチルアセトネート等の鉄触媒;ニッケルアセチルアセトネート、酢酸ニッケルおよびニッケルサリチルアルデヒド等のニッケル触媒;銅触媒;パラジウム触媒;スカンジウム触媒;ランタン触媒;イッテルビウム触媒;およびスズ触媒が包含される。
【0073】
本発明において、マイケル付加触媒は、組成物の重量に基づいて、0~5重量%、例えば0~2重量%の量で使用され得る。しかし、繰り返しになるが、このようなマイケル付加触媒は組成物中に存在する必要はない。実際、好ましい実施形態では、組成物は、マイケル付加触媒を実質的に含まない。
【0074】
本発明の目的における「可塑剤」は、組成物の粘度を低下させ、従って、その加工性を高める物質である。本明細書において、可塑剤は、組成物の総重量に基づいて0~10重量%または0~5重量%を構成し得る。存在する場合、可塑剤は、好ましくは、ジウレタン;単官能性の直鎖または分枝C4~C16アルコールのエーテル、例えば、Cetiol OE(デュッセルドルフ在Cognis Deutschland GmbHから入手可能);アビエチン酸、酪酸、チオ酪酸、酢酸のエステル、プロピオン酸エステル、およびクエン酸;ニトロセルロースおよびポリビニルアセテートに基づくエステル;脂肪酸エステル;ジカルボン酸エステル;OH基含有脂肪酸のエステル;グリコール酸エステル;安息香酸エステル;リン酸エステル;スルホン酸エステル;トリメリット酸エステル;ポリエーテル可塑剤、例えば、末端キャップポリエチレンまたはポリプロピレングリコール;ポリスチレン;炭化水素可塑剤;塩素化パラフィン;およびそれらの混合物からなる群から選択される。原則として、フタル酸エステルも可塑剤として使用できるが、毒性の可能性があるため好ましくないことに留意すべきである。
【0075】
本発明の目的における「安定剤」は、酸化防止剤、UV安定剤、熱安定剤または加水分解安定剤として理解されるべきである。本発明において、安定剤は合計で、組成物の総重量に基づいて0~10重量%または0~5重量%を構成すべきである。本発明での使用に適した安定剤の標準的な市販品の例には、下記が包含される:立体障害フェノール;チオエーテル;ベンゾトリアゾール;ベンゾフェノン;ベンゾエート;シアノアクリレート;アクリレート;ヒンダードアミン光安定剤(HALS)タイプのアミン;リン;硫黄;およびそれらの混合物。
【0076】
本開示の組成物は、粒状充填材を含み得る。生成される硬化性組成物の所望の粘度は、使用される充填材の量で決まり得る。後者を考慮すると、組成物を基材に適用する選択された方法による組成物の容易な適用が、充填材の総量により妨げられるべきではない。例えば、印刷または注入によって特定の部位に適用することが意図された本発明の組成物は、1000~50,000、好ましくは10,000~20,000mPasの粘度を有すべきである。
【0077】
概して、充填材として使用される粒子の形状を制限する特別な意図は存在しない。針状、球状、楕円体、円筒状、ビーズ状、立方体状、または小板状の粒子を単独でまたは組み合わせて使用できる。また、複数の粒子タイプの凝集体が使用され得ることが想定される。同様に、充填材として使用される粒子の寸法を制限する特別な意図は存在しない。しかし、そのような充填材は、従来、レーザー回折/散乱法によって測定される、0.1~1000μm、例えば1~500μmの平均粒径(d50)を有し得る。
【0078】
例示的な充填材には下記が包含されるが、これらに限定されない:グラファイト、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム(石灰粉)、硫酸カルシウム、溶融シリカ、非晶質シリカ、沈降および/または熱分解ケイ酸、ゼオライト、ベントナイト、珪灰石、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、珪藻土、硫酸バリウム、酸化バリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、粘土、タルク、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、砂、石英、フリント、マイカ、ガラスビーズ、ガラス粉、およびその他の鉱物粉砕物。有機充填材、具体的には、木繊維、木粉、おがくず、セルロース、綿、パルプ、綿、ウッドチップ、細断藁、もみがら、粉砕くるみ殻、およびその他の細断繊維を使用することもでき、ポリ(テトラクロロエチレン)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)およびポリ(塩化ビニリデン)粉を使用することもできる。また、短繊維、例えば、ガラス繊維、ガラスフィラメント、ポリアクリロニトリル、炭素繊維、Kevlar繊維、またはポリエチレン繊維を加えることもできる。
【0079】
鉱物殻またはプラスチック殻を有する中空球もまた、充填材として適している。これらは例えば、Glass Bubbles(登録商標)という商品名で市販されている中空ガラス球であり得る。プラスチックベース中空球、例えばExpancel(登録商標)またはDualite(登録商標)を使用することもでき、EP 0 520 426 B1に記載されている。それらは、無機または有機物質で構成されており、それぞれの直径は1mm以下、好ましくは500μm以下である。
【0080】
充填材としてコア-シェルゴム粒子を使用することも排除されない。用語「コアシェルゴム」またはCSRは、当該技術分野における標準的な意味に従って、主成分としてエラストマー性またはゴム状ポリマーを含むポリマーによって形成されるゴム粒子コアと、該コア上にグラフト重合されたポリマーによって形成されるシェル層とを表すものとして使用される。シェル層は、グラフト重合プロセスにおいてゴム粒子コアの表面を部分的または全体的に覆う。重量で、コアは、コア-シェルゴム粒子の少なくとも50重量%を構成すべきである。
【0081】
コア-シェルゴム粒子は、市販品から選ぶことができ、その例には下記が包含される:The Dow Chemical Company社から入手可能なParaloid TMS-2670J、EXL 2650A、EXL 2655およびEXL2691 A;Arkema Inc.社から入手可能なClearstrength(登録商標)XT100;株式会社カネカから入手可能なKane Ace(登録商標)MXシリーズ、具体的には、MX 120、MX 125、MX 130、MX 136、MX 551、MX553;および三菱レイヨン株式会社から入手可能なMETABLEN SX-006。
【0082】
組成物にチキソトロピー性を付与する充填材が、多くの用途に好まれ得る。そのような充填材はまた、レオロジー助剤として記載され、その例は、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、またはPVC等の膨潤性プラスチックである。
【0083】
金属キレート特性を有する化合物を本発明の組成物に使用して、硬化接着剤の基材表面への接着力を高め得ることに留意されたい。また、K-FLEX XM-B301の商品名でKing Industriesから販売されているアセトアセテート官能化変性樹脂も、接着促進剤として使用するのに適している。
【0084】
保存寿命を更に延ばすために、乾燥剤を使用して湿気の浸透に関して本発明の組成物を更に安定化させることがしばしば賢明である。反応性希釈剤を使用することにより、特定の用途のために本発明の接着剤またはシーラント組成物の粘度を下げる必要性も、しばしば存在する。存在する反応性希釈剤の総量は、組成物の総重量に基づいて、典型的には0~10重量%、例えば0~5重量%であり得る。
【0085】
本発明の組成物中の溶媒および非反応性希釈剤の存在も排除されず、これにより、その粘度が有用に緩和され得る。例えば、もっぱら説明のためであるが、組成物は、下記の1以上を含み得る:キシレン;2-メトキシエタノール;ジメトキシエタノール;2-エトキシエタノール;2-プロポキシエタノール;2-イソプロポキシエタノール;2-ブトキシエタノール;2-フェノキシエタノール;2-ベンジルオキシエタノール;ベンジルアルコール;エチレングリコール;エチレングリコールジメチルエーテル;エチレングリコールジエチルエーテル;エチレングリコールジブチルエーテル;エチレングリコールジフェニルエーテル;ジエチレングリコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル;ジエチレングリコールモノエチルエーテル;ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル;ジエチレングリコールジメチルエーテル;ジエチレングリコールジエチルエーテル;ジエチレングリコールジ-n-ブチリルエーテル;プロピレングリコールブチルエーテル;プロピレングリコールフェニルエーテル;ジプロピレングリコール;ジプロピレングリコールモノメチルエーテル;ジプロピレングリコールジメチルエーテル;ジプロピレングリコールジ-n-ブチルエーテル;N-メチルピロリドン;ジフェニルメタン;ジイソプロピルナフタレン;石油留分、例えばSolvesso(登録商標)製品(Exxonから入手可能);アルキルフェノール、例えば、tert-ブチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシルフェノールおよび8,11,14-ペンタデカトリエニルフェノール;スチレン化フェノール;ビスフェノール;芳香族炭化水素樹脂、特にフェノール基を有するもの、例えば、エトキシル化またはプロポキシル化フェノール;アジペート;セバケート;フタレート;ベンゾエート;有機リン酸またはスルホン酸エステル;およびスルホアミド。
【0086】
上記とは別に、前記非反応性希釈剤は、組成物の総重量に基づいて全体で10重量%未満、特に5重量%未満または2重量%未満を構成することが好ましい。
【0087】
方法および応用
規定の硬化性組成物を生成するため、要素を一緒にして混合する。混合により組成物内の成分が均一に分散されることが重要である。そのような完全かつ効果的な混合は、硬化後に得られるポリマーマトリックス内でのあらゆる構成要素、粒状充填材または他の補助材料の均一な分布を決定し得る。
【0088】
当技術分野で知られているように、一成分(1K)硬化性組成物を生成するためには、反応性成分の反応を抑制または防止する条件下で組成物の成分を一緒にして均一に混合する。そのような条件は、当業者であれば容易に理解できるであろう。従って、硬化性成分は、意図的な光照射または加熱を伴わずに、所定の量を、手動で混合するのではなく(例えば静的ミキサーまたは動的ミキサー等の)機械で混合することがしばしば好ましい。
【0089】
本発明の最も広範な方法の実施形態によれば、上記組成物は基材に適用され、その後イン・サイチュで硬化される。組成物を適用する前に、関連する基材表面を前処理してそこから異物を除去することがしばしば推奨される:適用可能であれば、この工程により、後続の組成物の基材への接着を容易にすることができる。そのような処理は当技術分野で知られており、例えば、下記の1つ以上を用いることによって構成される単一または多段階の方法で実施することができる:基板に適した酸および場合により酸化剤を用いたエッチング処理;超音波処理;化学プラズマ処理、コロナ処理、大気圧プラズマ処理および火炎プラズマ処理を含むプラズマ処理;水系アルカリ脱脂浴への浸漬;水性洗浄エマルションによる処理;例えばアセトン、四塩化炭素またはトリクロロエチレン等の洗浄溶剤による処理;および水洗、好ましくは脱イオン水または脱塩水による洗浄。
【0090】
幾つかの実施形態では、好ましくは前処理された基材への本発明の組成物の接着は、そこにプライマーを適用することにより促進され得る。実際、プライマー組成物は、不活性な基材上での組成物の有効な固着および/または硬化時間を確保するために必要になり得る。当業者は、適当なプライマーを選択できる。
【0091】
次いで、組成物は、下記のような従来の適用方法によって、任意に前処理され、任意にプライマー処理されていてよい基材の表面に適用される:刷毛塗り;ロールコーティング;ドクターブレード塗布;エア霧化スプレー、エアアシストスプレー、エアレススプレーおよび大容量低圧スプレーを包含するがこれらに限定されないスプレー法;スクリーン印刷を包含する印刷法;ピン転写;および電空制御シリンジによる適用を包含するシリンジ適用。組成物は、10~500μmの湿潤フィルム厚で表面に適用されることが推奨される。この範囲内でより薄い層を適用すると、より経済的であり、有害な厚い硬化領域が生じる可能性が低減される。しかし、不連続な硬化フィルムの形成を回避するために、より薄いコーティングまたは層を適用する際には、慎重に制御する必要がある。
【0092】
組成物を光化学的に硬化する場合、適用された組成物の硬化を開始するために使用されるエネルギー源は、紫外線(UV)、赤外線(IR)、可視光線、X線、ガンマ線または電子線(電子ビーム)のうちの少なくとも1つを放射する。適用後、市販の硬化装置を使用して照射する場合、組成物は典型的には5分未満、通常は1~60秒間、例えば3~12秒間で活性化され得る。
【0093】
照射する紫外線は、通常、150~600nmの波長を有すべきであり、好ましくは200~450nmの波長を有すべきである。有用なUV光源には、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低輝度蛍光灯、メタルハライドランプ、マイクロ波駆動ランプ、キセノンランプ、UV-LEDランプ、並びにエキシマレーザーおよびアルゴンイオンレーザー等のレーザー光源が包含される。
【0094】
適用された組成物を硬化するために電子ビームを使用する場合、操作装置の標準的なパラメータは下記の通りであり得る:0.1~100keVの加速電圧、10~10-3Paの真空度、0.0001~1アンペアの電流、および0.1ワット~1キロワットの電力。
【0095】
(例えば、そのコーティングが固定される等)個々の組成物を十分に硬化させるのに必要な放射線の量は、放射線への曝露の角度および適用された組成物の厚さを包含する様々な因子に依存する。しかし、一般的には、5~5000mJ/cm2の硬化線量が典型的なものとして挙げられ得、50~500mJ/cm2、例えば50~400mJ/cm2の硬化線量が非常に効果的であると考えられ得る。
【0096】
光照射下での硬化化学は、任意の化学反応と同じ熱力学の法則に従う:反応速度は熱によって上昇したり、低温によって低下したりし得る。組成物が適用された基材の上に影の領域が存在する場合、影の領域の完全な硬化を確実にするために、光照射後にその基材の温度を周囲温度よりも高くしてもよい。
【0097】
先に述べたように、本発明の組成物は室温で硬化し得る。同様に、組成物は、組成物の温度を室温より高くすることによって影響され得る。本発明を限定することを意図するものではないが、適用された硬化性組成物のそのような熱硬化は、典型的には、50℃~200℃、好ましくは75℃~175℃または100℃~150℃の範囲の温度で起こるべきである。適用可能な場合、硬化性組成物の温度は、マイクロ波誘導を包含する従来の手段を使用して、混合温度および/または適用温度よりも高くしてよい。完全な硬化を確実にするため、高い温度を最大60分間維持してよい。
【0098】
完全を期すために、本発明の組成物が適用され得る例示的な基材には、以下が含まれる:アルミニウム、亜鉛およびその合金等の非鉄金属基材;鉄、ステンレス鋼、冷間圧延鋼、電気亜鉛メッキ鋼等の鉄系金属;エンジニアリングプラスチック;ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)およびアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)等の熱可塑性材料;紙;厚紙;ガラス;複合材;木材;皮革;およびそれらの組み合わせ。
【0099】
本発明における組成物は、コーティング剤、接着剤およびシーラントとして、または複合構造の形成において有用であり得ることが想定される。
【0100】
以下の実施例は、本発明を例示的に説明するものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例】
【0101】
下記材料を実施例で用いた。
Ebecryl 3703:850ダルトンの分子量(Mw)を有する二官能性エポキシアクリレート、Daicel-Allnex Ltdから入手可能。
PTMP:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、CAS番号:7575-23-7、Sigma Aldrichから入手可能。
TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート、CAS番号:15625-89-5、Sigma Aldrichから入手可能。
【0102】
実施例1~2
下記表1に従って組成物を調製した。所定の成分をスピードミキサー(1200rpm;1分間)で混合し、確実に均一な混合物を生成した。実施例1におけるチオール基(-SH)とアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)とのモル比は0.84:1であった。実施例2におけるチオール基(-SH)とアクリレート基(H2C=CHC(O)O-)とのモル比は1:1であった。
【0103】
【0104】
実施例の組成物について、下記試験を行った。
【0105】
粘度:これは、25℃、相対湿度(RH)50%で、ブルックフィールド粘度計を用いて、組成物を混合してから5分以内に測定した。
【0106】
UV固着時間:清浄で乾燥したスライドガラス(76×26×1mm)上に、室温で小滴の組成物を手動で配置し、試験片を作製した。30°から90°の間の角度で、第二のスライドガラスを、第一のスライドガラスに付着させた。次いで、254nmおよび365nmにピークを有する短波長出力で100mW/cm2のエネルギーを供給する高圧水銀ランプの下で、試験片を硬化させた。光源は4~5秒の間隔で適用し、硬化間隔の後に手動で両スライドにせん断モーメントを印加した。2つのスライドの相対的な動きを伴わずに、組立部材がせん断モーメントを支持したときを、固着時間(秒)とした。
【0107】
表面硬化(UV):組成物をタックフリーのスライドガラスに適用し、254nmおよび365nmにピークを有する短波長出力で100mW/cm2のエネルギーを供給する高圧水銀ランプの下で、硬化させた。光源は60秒間、5秒間隔で適用した。
【0108】
ゲル化時間:ASTM Specification D-3451に従い、一枚のアルミホイルをホットプレート上に置き、120℃に加熱した。少量の組成物を加熱したホイル上に滴下し、ホイルから舌圧子を持ち上げたときに連続した切れやすいフィラメントが形成されるまで、舌圧子で該組成物を撫でた。その経過時間を秒単位で測定した。
【0109】
熱硬化:サンプルを120℃で15分間加熱することで、組成物を熱硬化させた。
【0110】
室温硬化:25℃で3日間サンプルを保持することにより、組成物を硬化させた。
【0111】
これらの試験の結果および観察結果を、下記表2に示す。
【0112】
【0113】
前述の説明および実施例を考慮すれば、特許請求の範囲から逸脱することなく、これと同等の変更を加え得ることが当業者には明らかであろう。
【国際調査報告】