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特表2024-524044セルの三次元アレイに配置された複数のセルを含む電子素子およびかかる電子デバイスを生産するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】セルの三次元アレイに配置された複数のセルを含む電子素子およびかかる電子デバイスを生産するための方法
(51)【国際特許分類】
   H10B 63/00 20230101AFI20240628BHJP
   H10N 70/20 20230101ALI20240628BHJP
   H10N 97/00 20230101ALI20240628BHJP
   C07F 9/655 20060101ALI20240628BHJP
   C07F 9/59 20060101ALI20240628BHJP
   C07F 9/6553 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H10B63/00
H10N70/20
H10N97/00
C07F9/655 CSP
C07F9/59
C07F9/6553
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575870
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022065312
(87)【国際公開番号】W WO2022258563
(87)【国際公開日】2022-12-15
(31)【優先権主張番号】21178494.7
(32)【優先日】2021-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D-64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110003971
【氏名又は名称】弁理士法人葛和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キルシュ,ピア
(72)【発明者】
【氏名】レッシュ,セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】シム,ヘニング
(72)【発明者】
【氏名】トルノー,マルク
【テーマコード(参考)】
4H050
5F083
【Fターム(参考)】
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB92
5F083FZ10
5F083JA31
5F083JA40
5F083JA60
5F083PR03
5F083PR05
5F083PR22
(57)【要約】
セル(100)の三次元アレイに配置された複数のセル(100)を含む電子素子(10)が提供され、ここでセル(100)は、2本の交差した電極線(30、31)の間の交差部に位置する。電子コンポーネント(100)の各セル(100)は、第1の電極(102)、分子層(20)の一部(104)、および第2の電極(106)をこの順番で含み、ここで分子層(20)は、立体配座的にフレキシブルなユニットを用いて双極子ユニットへ接続されたアンカリング基を有する有機分子の自己組織化単分子膜を含む。本発明のさらなる側面は、かかる電子素子(10)を生産するための方法および化合物、およびかかる電子素子(10)の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル(100)の三次元アレイに配置された複数のセル(100)を含み、ここでセル(100)が、2本の交差した電極線(30、31)の間の交差部に位置する、電子素子(10)であって、
各セル(100)は、第1の電極(102)、分子層(20)の一部(104)、および第2の電極(106)をこの順番で含み、ここで分子層(20)は、立体配座的にフレキシブルなユニットを用いて双極子ユニットへ接続されたアンカリング基を有する有機分子の自己組織化単分子膜であることを特徴とする、前記電子素子(10)。
【請求項2】
各セル(100)がさらに、セレクタデバイス(108)としての、ダイオード、閾値スイッチまたはトランジスタを含むことを特徴とする、請求項1に記載の電子素子(10)。
【請求項3】
セレクタデバイス(108)が、さらなる有機分子の自己組織化単分子膜として、または分子層と第1の電極または第2の電極との間に配置された無機ダイオードとして構成される、請求項2に記載の電子素子(10)。
【請求項4】
各セル(100)の第1の電極(102)および/または第2の電極(106)が、金属、導電性合金、導電性セラミック、半導体、導電性酸化物材料、導電性もしくは半導電性有機分子、または層状導電性2D材料から作られていることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の電子素子(10)。
【請求項5】
自己組織化単分子膜の形成のための有機分子が、式I
T-ZT-(A1-Z1)r-B-(Z2A2)s-(Z3A3)t-(Z4A4)u-Sp-G (I)
で表される1以上の化合物から選択され、
その中のTは、以下の群:
a) 3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環であって、その中の少なくとも1個の-CH2-基が、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられているか、またはその中の少なくとも1個の-CH=基が、-N=に置き換えられているもの、
b) 各々1~20個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキルまたはアルコキシであって、そこでこれらのラジカル中の1個以上のCH2基は各々、互いに独立して、-C≡C-、-CH=CH-、
【化1】
-O-、-S-、-CF2O-、-OCF2-、-CO-O-、-O-CO-、-SiR0R00-、-NH-、-NR0-または-SO2-によって、O原子同士が互いに直接連結することがない様式で、置き換えられていてもよく、および、その中の1個以上のH原子が、ハロゲン、CN、SCNまたはSF5によって置き換えられていてもよく、
式中R0、R00は、同一であるかまたは異なって、1~15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシラジカルを表し、加えてその中の1個以上のH原子が、ハロゲンによって置き換えられていてもよいもの、
c) ダイヤモンドイドラジカル、好ましくは低級ダイヤモンドイドに由来するもの、極めて好ましくはアダマンチル、ジアマンチル、およびトリアマンチルからなる群から選択され、その中の1個以上のH原子が、F、各場合において任意にフッ素化されてもよい12個までのC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシによって置き換えられることができるもの、とりわけ
【化2】
からなるラジカルの群から選択され、
ZT、Z1、Z2およびZ4は、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、単結合、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)S 、-SC(O)-、-(CH2)n1-、-(CF2)n2-、-CF2 CH2-、-CH2CF2-、-CH=CH-,-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH2)n3O-、-O(CH2)n4-、-C≡C-、-O-、-S-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、-N(O)=N-または-N=C-C=N-を表し、式中n1、n2、n3、n4は、同一であるかまたは異なって、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
Z3は、-O-、-S-、-CH2-、-C(O)-、-CF2-、-CHF-、-C(Rx)2-、-S(O)-または-SO2-を表し、
A1、A2およびA4は、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、4~25個の環原子を有し、縮合環もまた含有していてもよく、およびYによって一置換または多置換されていてもよい、芳香環、複素芳香環、脂環式環または複素脂肪族環を表し、
A3は、5~25個の環原子を有し、縮合環もまた含有していてもよく、およびYCによって一置換または多置換されていてもよい、芳香環または複素芳香環を表し、
Yは、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、F、Cl、CN、SCN、SF5、あるいは直鎖または分枝の、各場合において任意にフッ素化されてもよい1~12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、好ましくはFまたはClを表し、
YCは、Yの意味のうちの1つを有するか、あるいは、各々3~12個のC原子を有するシクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、メトキシまたはトリフルオロメトキシを表し、
Bは、
【化3】
を表し、そこで基は、両方の方向に向けられていてよく、
L1~L5は、互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、SF5、CF3またはOCF3、好ましくはClまたはFを表し、そこでL3はまた代替的にHを表してもよく、
Spは、スペーサ基または単結合を表し、
Gは、-OH、-SH、-SO2OH、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-C(OH)(PO(OH)2)2、-COOH、-Si(ORx)3、-SiCl3、-CH=CH2、-POCl2、-CO(NHOH)、-CO(NR0OH)、-Si(NMe2)3; -O-C(O)-ORV、-O-C(O)-Si(ORV)3、-PO(ORV)2または-SO2ORV、あるいは1~12個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキルであってその中の1個、2個または3個のジェミナルでないH原子がOHによって置換されたものを表し;
R0、R00、Rxは、同一であるかまたは異なって、1~6個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキルを表し、
RVは、1~12個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキルを表し、および
r、s、tおよびuは、同一であるかまたは異なって、0、1または2である
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の電子素子(10)。
【請求項6】
式Iにおける基Tが、3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環を表し、その中の少なくとも1個の-CH2-基が、-O-、-S-、-NRx-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられているか、またはその中の少なくとも1個の-CH=基が、-N=に置き換えられている、請求項5に記載の電子素子(10)。
【請求項7】
式IAで表され、
T-(Z1-A1)r-B-(Z2A2)s-(Z3A3)t-(Z4A4)u-Sp-G (IA)
その中の
Tは、3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環を表し、その中の少なくとも1の-CH2-基は、-O-、-S-、-NRx-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられており、またはその中の少なくとも1の-CH=基は、-N=に置き換えられており、ならびに基Z1、A1、B、Z2、A2、Z3、A3 、Z4、A4、Sp、Gおよびパラメータr、s、tおよびuは、請求項5において定義された意味を有する、化合物。
【請求項8】
化合物が式IA-1a~IA-1fからなる群から選択され、
T-ZT-B-Sp-G IA-1a
T-ZT-(A1-Z1)-B-Sp-G IA-1b
T-ZT-(A1-Z1)2-B-Sp-G IA-1c
T-ZT-B-(Z2-A2)-Sp-G IA-1d
T-ZT-B-(Z2-A2)2-Sp-G IA-1e
T-ZT-(A1-Z1)-B-(Z2-A2)-Sp-G IA-1f
その中のT、ZT、A1、A2、B、Z1、Z2、SpおよびGは、請求項7において与えられた意味を有する、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Tが、
【化4】
を表し、
その中のRxは、1~6個のC原子を有するアルキルを表し、
A1およびA2が、同一であるかまたは異なって、
【化5】
を表し、
Bが、
【化6】
を表し、
L1およびL2は、互いに独立して、CF3、ClまたはFを表し、
L3は、HまたはFを表し、
Y1およびY2は、互いに独立して、H、ClまたはFを表し、
Z1、Z2、ZTが、互いに独立して、単結合、-CF2O-、-OCF2-,-CH2O-、-OCH2-または-CH2CH2-を表し、
Spが、1~12個のC原子を有する分枝または非分枝の1,ω-アルキレンを表し、および
Gが、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、または-COH(PO(OH)2)2を表す、
請求項7または8に記載の化合物。
【請求項10】
化合物が、式IA-2で表される化合物
T-ZT-(A1-Z1)r-B-Z3-A3-(Z4-A4)u-G IA-2
について選択され、その中の出現する基およびパラメータは、請求項7において与えられた意味を有する、請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
Tが、
【化7】

を表し、その中のRxは、1~6個のC原子を有するアルキルを表し、
A1およびA4が、同一であるかまたは異なって、
【化8】

を表し、
A3-Z3が、
【化9】

を表し、
Bが、
【化10】

を表し、
ZTが、単結合、-CH2O-、-OCH2-または-CH2CH2-を表し、
L1およびL2は、同一であるかまたは異なって、F、CF3またはClを表し、
Y1およびY2は、同一であるかまたは異なって、Yについて上で与えられた意味のうちの1つを有し、および、好ましくはH、FまたはClを表し、
Y3およびY4は、同一であるかまたは異なって、Y1およびY2について上で与えられた意味のうちの1つを有し、および、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、またはトリフルオロメチルチオを表し、
Z3は、CH2またはOを表し、
Z1、Z2が、互いに独立して、単結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、OCH2-または-CH2CH2-を表し、
Gが、-PO(OH)2、または-COH(PO(OH)2)2を表し、および
rおよびuが、独立して、0、1または2である、
請求項10に記載の式IA-2で表される化合物。
【請求項12】
請求項1~6のいずれか一項に記載の複数のセル(100)を含む電子素子(10)の生産のための方法であって、以下のこと:
A) ベース基板(12)を提供すること、
B) 誘電材料(18)によって分離された電極線(30、31)を含む第1の電極層(14)の形成、
C) 立体配座的にフレキシブルなユニットを用いて双極子ユニットへ接続されたアンカリング基を有する有機分子の単層を含む分子層(20)を形成すること、および
D) 誘電材料(18)によって分離された電極線(30、31)を含むさらなる電極層(22)の堆積
を含み、ここでステップC)およびD)は、セル(100)の所望の数の層が形成されるまで繰り返され、およびここで、2つの隣接する電極層(14、22)の電極線(30、31)は、2つの隣接する電極層(14、22)の電極線(30、31)が互いに交差するように互いに対して回転されることを特徴とする、前記方法。
【請求項13】
ダイオード層構造または閾値スイッチ構造の形態でのセレクタデバイス(108)が、ステップB)に従った第1の電極層(14)の形成またはステップD)に従ったさらなる電極層(22)の形成の後で、かつステップC)に従った分子単層(20)の形成の前に堆積させられることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
誘電材料(18)によって分離された電極線(30、31)の第1の電極層(14)および/またはさらなる電極層(22)の形成が、
- 電極材料(16)の堆積、
- 非電極エリア(32)からの電極材料(16)の除去、
- 誘電材料(18)の堆積、
- 得られた層構造の、電極材料(16)のレベルまでの低さへの平坦化
のステップを含み、または、第1の電極層(14)の形成の場合は、
- 誘電材料(18)の堆積、
- 電極エリア(34)からの誘電材料(18)の除去、
- 電極材料(16)の堆積、
- 得られた層構造の、誘電材料(18) のレベルまでの低さへの平坦化
のステップを含むことを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
非電極(32)エリアにおける電極材料(16)の除去または電極エリア(34)における誘電材料(18)の除去が、除去するエリアを定義するフォトリソグラフィ法、およびエッチングによって行われることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
誘電材料(18)および/またはベース基板(12)の材料が、SiO2、ZrO2、ダイヤモンド、Al2O3またはGaNから選択されることを特徴とする、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
誘電材料(18)および/または電極材料(16)の堆積が、物理蒸着、化学蒸着、化学溶液堆積、原子層堆積、マイクロコンタクト印刷もしくは転写印刷、またはゾルゲル法を用いて行われることを特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
分子単層(20)でのコーティングが、
- 洗浄および活性化のためのコーティングされる基板の前処理、
- 基板を、該分子の自己組織化単分子膜を形成するための有機分子を含む溶液中へとディッピングすること、
- 有機溶媒で濯ぐこと、および
- 形成された分子単層(20)のアニーリング
のステップを含み、ここで、コーティングされる基板は、第1の電極層(14)、さらなる電極層(22)、または、セレクタデバイス(108)の表面である
ことを特徴とする、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前処理が、UV-オゾン処理を用いて行われることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
溶液が、自己組織化単分子膜を形成するための分子のホスホン酸と溶媒との混合物であることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
自己組織化単分子膜を形成するための有機分子が、請求項5において定義されたとおりの式Iで表される1以上の化合物から選択されることを特徴とする、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
アニーリングが、50℃~250℃の範囲にある温度で、1分~60分の時間の間行われることを特徴とする、請求項18~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
メモリデバイスとしての、ここで電子素子(10)のセル(100)がメモリセルとしてとしての役割を果たす、および/または神経ネットワークデバイスとしての、ここで電子素子(10)のセル(100)がシナプスとしての役割を果たす、請求項1~6のいずれか一項に記載の電子素子(10)の使用または請求項6~17のいずれか一項に記載の方法を用いて得られる電子素子(10)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルの三次元アレイに配置された複数のセルを含み、ここでセルが、2本の電極線の間の交差部に位置する、電子素子に関する。本発明のさらなる側面は、かかる電子素子を生産するための方法、およびかかる電子素子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ技術においては、そこに記憶された情報への迅速な書き込みおよび読み取りアクセスを可能にする記憶媒体が要求される。固体メモリまたは半導体メモリは、可動部品がまったく必要ないため、殊更高速でありかつ信頼できる記憶媒体を達成することを可能にする。現在のところは、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)が主に使用されている。DRAMは、記憶された情報への迅速なアクセスを可能にするが、しかしこの情報は定期的に更新されなければならず、それは、記憶された情報が、電源が切られたときに失われることを意味する。
【0003】
先行技術はまた、電源が切られた後でも情報が保持されるフラッシュメモリまたは磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などの不揮発性半導体メモリも開示する。フラッシュメモリの不利な点は、書き込みアクセスが比較的ゆっくり起こること、およびフラッシュメモリのメモリセルを無限に消去することができないことである。フラッシュメモリの寿命は、典型的には最大100万回の読み取り/書き込みサイクルに限定される。MRAMは、DRAMと同様のやり方で使用することができ、かつ長い寿命を有するが、しかしこのタイプのメモリは、難しい生産プロセスのせいで、その地位を確立することができていない。
【0004】
さらなる代替手段は、メモリスタに基づいて働くメモリである。「メモリスタ」という用語は、「メモリ」と「レジスタ」という言葉を縮めたもので、その電気抵抗を高い値と低い値との間で再現可能に変更できるコンポーネントを表す。夫々の状態(高抵抗または低抵抗)は、電圧供給がなくても保持され、これはメモリスタで不揮発性メモリを達成できることを意味する。
【0005】
電気的にスイッチ可能なコンポーネントの重要な代替アプリケーションは、ニューロモーフィックコンピューティングまたはシナプスコンピューティングの分野から生まれる。その中で追求されるコンピュータアーキテクチャにおいては、情報が古典的な様式で順次処理されることは意図されない。その代わり、目指すところは、脳に類似した情報処理を達成することを可能にするために高度に三次元的に相互連携される様式で回路を構築することである。このタイプの人工ニューロンネットワークにおいて、ひいては神経細胞(シナプス)間の生物学的接続がメムリスティブ(memristive)電子スイッチング素子によって表される。ある状況下では、追加の中間状態(デジタル状態「1」と「0」との間)もまた、ここでは殊更の利益になり得る。
【0006】
DE 10 2017 005 884 A1は、第1の電極、基板に結合した分子層および第2の電極をこの順番で含む電子スイッチング素子を開示している。分子層は、硬質な極性環状ラジカルまたはメソゲンラジカルがアンカー基を用いてスペーサ基を介して基板に結合している化合物から本質的になる。分子層の抵抗は、ある正または負のスイッチング電圧を超える電位を印加することによって高抵抗状態と低抵抗状態との間でスイッチされ得る。
【0007】
WO 2020/225270 A1ダイヤモンドイド化合物および該ダイヤモンドイド化合物を含む自己組織化単分子膜(SAM)を含むメムリスティブデバイスのための電子スイッチング素子を開示する。このスイッチ可能な素子は、第1の電極、SAMおよび第2の電極をこの順番で含む。WO 2020/225398 A1は、アリールエーテルに基づいた自己組織化単分子膜を有する同様のスイッチ可能な素子を開示する。
【0008】
US 6,579,760は、ビット線およびワード線のクロスバーアレイを含み、ここで、メモリセルが、ビット線とワード線との交点に配置される、メモリデバイスを記載している。メモリセルは、各々、選択デバイスとしての分離ダイオードおよび相変化層を含む。メモリセルは、選択デバイスの分離ダイオードが導電性になるように、選択されたメモリセルで交わるワード線およびビット線にバイアスをかけることによって選択され、一方で、他のメモリセルに連結されたワード線およびビット線は、選択デバイスの分離ダイオードが非導電性になるように逆バイアスされる。相変化層および分離ダイオードは、自己整合スタックとして形成される。
【0009】
電子デバイスの、とりわけメモリデバイスの密度をさらに増大させるために、相変化材料に基づいた無機材料および導電性ブリッジランダムアクセスメモリ(CB-RAM)、強誘電体トランジスタランダムアクセスメモリ(FeTRAM)、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などの他のメモリ材料を使用した、メモリセルの三次元配置が当該技術分野において知られている。かかる構成は、3Dクロスポイントまたは3D X-pointメモリデバイスとして知られている。
【0010】
US 2019/0043923 A1は、ビット線およびワード線を有し、ここでメモリセルがビット線とワード線との間の交差部に配置される、3Dクロスポイントメモリ構造を開示する。電流スパイクを和らげるために、抵抗性の材料は、導電性のビット線とワード線との接触により近いメモリセルの少なくとも1の領域を包含するアレイの2以上の領域において堆積させられる。
【発明の概要】
【0011】
有機自己組織化単分子膜に基づいたメムリスティブ電子スイッチング素子を含むセルのかかる3Dクロスポイント構造体を生産することが所望される。しかしながら、有機コンポーネントの熱感受性により、マイクロエレクトロニクスの製作における確立されたプロセスを使用して3Dクロスポイント構造体を製造することはできなかった。
【0012】
よって、容易に製造され得るセルの三次元アレイに配置されたハイブリッド有機-無機構造を伴った複数のセルを有するかかる電子素子を提供することが、本発明の目的である。さらに、かかる電子素子を生産するための方法を提供することが、本発明の目的である。
【0013】
複数のセルを含む電子素子が提案される。複数のセルは、セルの三次元アレイに配置され、ここでセルは、2本の交差した電極線の間の交差部に位置する。各セルは、第1の電極、分子層の一部、および第2の電極を、この順番で含み、ここで分子層は、立体配座的(conformationally)にフレキシブルなユニットを用いて双極子ユニットへ接続されたアンカリング基を有する有機分子の自己組織化単分子膜である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、セルの三次元クロスバー配置を有する電子素子の概略断面図を示す。
図2a-2e】図2a図2lは、生産の異なる段階における図1の電子素子の上面図および断面図を各々示す。
図2f-2j】図2a図2lは、生産の異なる段階における図1の電子素子の上面図および断面図を各々示す。
図2k-2l】図2a図2lは、生産の異なる段階における図1の電子素子の上面図および断面図を各々示す。
図3図3は、セルの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
セルの各々は、スイッチ可能なユニットを有し、ここで、セル内の自己組織化単分子膜の状態は、セルが高い電気抵抗を有している第1の状態から、セルが低い電気抵抗を有している第2の状態へとスイッチされることができる。高電気抵抗状態におけるセルの電気抵抗は、好ましくは低電気抵抗状態におけるよりも10~100000倍高い。
【0016】
スイッチ可能なユニットのためのかかる構造は、当該技術分野において知られており、例えば、文献WO 2020/225270 A1、WO 2020/225398 A1およびDE 10 2017 005 884 A1を参照されたい。
【0017】
セルの状態、とりわけセルの分子層の一部の状態は、スイッチング電圧の印可によってスイッチされ得る。さらに、セルの状態は、読み出し電圧を印可しおよび次いでセルを通って流れる電流を測定することにより抵抗を測定することによって読み出すことができ、ここで、読み出し電圧は、スイッチング電圧よりも低いものである。読み出し電圧の絶対値は、好ましくはスイッチング電圧の絶対値よりも少なくとも10倍低い。読み出し電圧が10~300mVであれば、殊更好ましい。
【0018】
セルは、好ましくは、第1の(正の)スイッチング電圧を有し、ここで、第1のスイッチング電圧よりも大きい正の電圧が印可されたときに、分子層の状態は低抵抗状態から高抵抗状態へとスイッチする。さらに、セルは、好ましくは、第1の電圧とは反対の極性を有する第2のスイッチング電圧を有し、ここで、第2のスイッチング電圧よりも大きい負の電圧が印可されたときに、分子層の状態は高抵抗状態から低抵抗状態へとスイッチする。
【0019】
抵抗状態を用いて、単一ビットの情報がエンコードされ得る。従って、セルの各々は、メモリデバイスとして構成された電子素子内の単一ビット記憶セルとして使用され得る。
【0020】
複数のセルは、セルの三次元アレイに配置されている。従って、アレイは、電子素子をその上に形成させている基板によって定義され得る平面の2方向へ拡張され、およびこの平面に垂直な垂直方向へもまた拡張されていてもよい。2方向の各々または平面の次元に配置されるセルの数は、少なくとも2千から数千、百万またはさらには数十億のセルという範囲にわたって、極めて多くなる可能性がある。例えば、x方向に1024セルおよびy方向に1024セルの構成において、セルの単一の二次元層は、1048576セルを含む。セルのかかる二次元配置であって、ここでセルの各々が、2本の直交する電極線の交差部に位置するものは、クロスバーアレイとして知られる。
【0021】
垂直方向または次元に配置されるセルのレベルまたは層の数は、典型的にはより少なく、および、2から少なくとも64、好ましくは少なくとも1024に至るまでまたはさらにはそれより多い範囲にわたる。好ましくは、アレイは、少なくとも16レベルのセル、より好ましくは 少なくとも32レベルのセルおよび最も好ましくは少なくとも64レベルのセルを含む。セルのかかる三次元配置は、3Dクロスバーアレイまたは3Dクロスポイントデバイスとして知られている。
【0022】
セルのアレイにおいて、個々のセルの各々は、夫々のセルの第1の電極および第2の電極としての役割を果たすかまたは夫々のセルの第1および第2の電極に接続される2本の交差した電極線の間の交差部に配置される。従って、セルの各々には、夫々の電極線へ電圧を印可することによってアドレスされ得る。しかしながら、印可された電圧によって生じた電流の一部が、漏れ電流に起因して、隣接するセルを通って流れることがあり得る。かかる漏れ電流の影響は、セルの各々にセレクタデバイスを含めることによって回避または少なくとも低減し得る。
【0023】
2本の交差した電極線は、交差した電極線が90°の角度を囲むように互いに直交して配置されてもよい。しかしながら、厳密な90°の角度は要求されず、交差した電極線の間の角度は、例えば、45°~135°の範囲から選択されてもよい。
【0024】
好ましくは、各セルは、さらに、セレクタデバイスとしての、ダイオード、閾値スイッチ、またはトランジスタを含む。
【0025】
セレクタデバイスは、無機ダイオードとして、とりわけZenerダイオードまたは対称Schottkyダイオードとして構成されてもよい。ダイオードは、とりわけ、ケイ素などの半導体材料の2つの層であって、ここで第1の層は、p型ドープされており、および第2の層は、n型ドープされているものを含んでもよい。バックツーバックSchottkyダイオードは、金属-絶縁体-金属(MIM)層構造、例えばNi/TiO2/Niを含んでもよい。
【0026】
セルの分子層の二極性スイッチング特性のために、両方の極性について非線形状の特性を有するセレクタデバイスの使用が、好ましい。この目的で、ダイオードは、例えば、p型ドープされた層とn型ドープされた層とが両方とも高度にドープされたものであるZenerダイオードの形態で使用されてもよい。
【0027】
好適な閾値スイッチは、オボニック閾値スイッチングまたは金属-絶縁体転移に基づくものであり得る。
【0028】
オボニック閾値スイッチングに基づいた好適なスイッチは、カルコゲニドベースのデバイスなどである。
【0029】
金属-絶縁体転移ベースの閾値スイッチのために好適な構造は、Pt/VO2/Ptを含む。
【0030】
好ましくは、セレクタデバイスは、さらなる有機分子の自己組織化単分子膜として、または、分子層と第1の電極または第2の電極との間に配置されたダイオードとして、構成される。
【0031】
好ましくは、各セルの第1の電極および/または第2の電極は、金属、導電性合金、導電性セラミック、半導体、導電性酸化物材料、導電性もしくは半導電性有機分子、または層状導電性2D材料から作られている。第1および/または第2の電極は、該材料のうちの1つよりも多いものの組み合わせを、例えば多層系の形態で、含んでもよい。第1および第2の電極の材料は、同一であるかまたは異なるように選ばれてもよい。
【0032】
好適な金属は、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、W、Pd、Pt、を包含し、ここでAl、CrおよびTiが好ましい。
【0033】
好適な導電性セラミック材料は、CrN、HfN、MoN、NbN、TiO2、RuO2、VO2、NSTO(ニオブドープチタン酸ストロンチウム)、TaNおよびTiN、WN、WCN、VNおよびZrNを包含し、ここでTiNが好ましい。
【0034】
好適な半導体材料は、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウムガリウム酸化物(IGO)、InGa-α-ZnO(IGZO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(AZO)、スズドープ酸化亜鉛(TZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)およびアンチモンスズ酸化物を包含する。
【0035】
好適な元素半導体は、Si、Ge、C(ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、フラーレン)、α-Sn、B、SeおよびTeを包含する。好適な化合物半導体は、III-V族半導体、とりわけGaAs、GaP、InP、InSb、InAs、GaSb、GaN、TaN、TiN、MoN、WN、AlN、InN、Alx Ga1-x AsおよびInx Ga1-x Ni、II-VI族半導体、とりわけZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x) Cd(x) Te、BeSe、BeTexおよびHgS;およびIII-VI族半導体、とりわけGaS、GaSe、GaTe、InS、InSexおよびInTe、I-III-VI族半導体、とりわけCuInSe2、CuInGaSe2、CuInS2およびCuInGaS2、IV-IV族半導体、とりわけSiCおよびSiGe、IV-VI族半導体、とりわけSeTeを包含する。
【0036】
好適な高度にドープされた半導体材料は、p+Si、n+Siを包含する。
好適な層状導電性2D材料の例は、グラフェンである。
【0037】
好適な半導体有機分子は、ポリチオフェン、テトラセン、ペンタセン、フタロシアニン、PTCDA、MePTCDI、キナクリドン、アクリドン、インダンスロン、フラランスロン、ペリノン、AlQ3、および混合系、とりわけPEDOT:PSSおよびポリビニルカルバゾール/TLNQ複合体を包含する。
【0038】
好ましい態様において、第1および第2の電極は、同一であるかまたは異なって、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、Si、W、CrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、WCN、VNおよびZrNからなる群から選択される材料を含む。
【0039】
より好ましくは、第1および第2の電極は、同一であるかまたは異なって、CrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、タングステン炭化窒化物(WCN)、VNおよびZrNから選択される金属窒化物を含み、好ましくはこれからなる。
【0040】
とりわけ、第1の電極は、CrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、WCN、VNおよびZrNから選択される金属窒化物からなり、および第2の電極は、TiNからなる。
極めて具体的には、第1および第2の電極は、両方ともTiNからなる。
【0041】
自己組織化単分子膜は、第1および第2の電極の間に配置され、および該2つの電極の間の電気的な絶縁体としての役割を果たす。従って、自己組織化単分子膜は、スイッチ可能なセル内に第1および第2の電極の間の直接の電気的な接続を許容する穴のない閉じた層が形成されるように配置される。
【0042】
第1の電極、自己組織化単分子膜および第2の電極を含むスイッチ可能なセルは、トンネルジャンクションを形成し、ここで、該トンネルジャンクションの電気特性は、自己組織化単分子膜の状態のスイッチングによって影響され得るものである。好ましくは、自己組織化単分子膜は、強誘電体トンネルジャンクションが形成されるように強誘電体特性を有する。強誘電体トンネルジャンクションは、スイッチ可能なセルの低抵抗性状態と高抵抗性状態との電気抵抗の間の高い比率を可能にし、および、よって好ましい。
【0043】
有機分子の自己組織化単分子膜は、立体配座的にフレキシブルなユニットを用いて接続されたアンカリング基および双極子ユニットを有する。
【0044】
本発明の意味におけるアンカー基は、有機分子を、とりわけ物理吸着、化学吸着を用いてまたは化学反応によって表面上へと吸着または結合させるのに用いられる、官能基である。表面は、好ましくは第1および第2の電極のうちの1つである。第1および/または第2の電極が、アンカー基での結合に好適でない場合、アンカリング層の形態での中間層が、電極のうちの1つと分子層との間のセル中に包含されてもよい。アンカリング層は、好ましくは、第1および/または第2の電極の表面上に配置される。
【0045】
本発明の意味における立体配座的にフレキシブルなユニットは、双極子ユニットとアンカー基との間のフレキシブルな鎖であって、これらの副次構造間の分離を生じさせ、かつ、そのフレキシビリティのため、同時に基板への結合後の双極子ユニットの可動性を改善させるものである。
【0046】
分子層の状態がスイッチング電圧の印可によって変化したとき、立体配座的にフレキシブルなユニットは、有機分子の形状における変化を可能にする。この形状における変化が、次いで、分子層の電気特性に、とりわけ分子層の電気抵抗に影響する。
【0047】
好ましくは、自己組織化単分子膜の形成のための有機分子は、式I
T-ZT-(A1-Z1)r-B-(Z2A2)s-(Z3A3)t-(Z4A4)u-Sp-G (I)
で表される1以上の化合物から選択され、
その中のTは、以下の群:
a) 3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環であって、その中の少なくとも1個の-CH2-基が、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられているか、またはその中の少なくとも1個の-CH=基が、-N=に置き換えられているもの、
b) 各々1~20個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキルまたはアルコキシであって、そこでこれらのラジカル中の1個以上のCH2基は各々、互いに独立して、-C≡C-、-CH=CH-、
【化1】
-O-、-S-、-CF2O-、-OCF2-、-CO-O-、-O-CO-、-SiR0R00-、-NH-、-NR0-または-SO2-によって、O原子同士が互いに直接連結することがない様式で、置き換えられていてもよく、およびその中の1個以上のH原子が、ハロゲン、CN、SCNまたはSF5によって置き換えられていてもよく、
式中R0、R00は、同一であるかまたは異なって、1~15個のC原子を有するアルキルまたはアルコキシラジカルを表し、加えてその中の1個以上のH原子が、ハロゲンによって置き換えられていてもよいもの、
c) ダイヤモンドイドラジカル、好ましくは低級ダイヤモンドイドに由来するもの、極めて好ましくはアダマンチル、ジアマンチル、およびトリアマンチルからなる群から選択され、その中の1個以上のH原子が、F、各場合において任意にフッ素化されてもよい12個までのC原子を有するアルキル、アルケニルまたはアルコキシによって置き換えられることができるもの、とりわけ
【化2】
からなるラジカルの群から選択され、
ZT、Z1、Z2およびZ4は、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、単結合、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CH2O-、-OCH2-、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)S 、-SC(O)-、-(CH2)n1-、-(CF2)n2-、-CF2 CH2-、-CH2CF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CF=CH-、-CH=CF-、-(CH2)n3O-、-O(CH2)n4-、-C≡C-、-O-、-S-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-N=N(O)-、-N(O)=N-または-N=C-C=N-を表し、式中n1、n2、n3、n4は、同一であるかまたは異なって、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10であり、
Z3は、-O-、-S-、-CH2-、-C(O)-、-CF2-、-CHF-、-C(Rx)2-、-S(O)-または-SO2-を表し、
A1、A2およびA4は、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、4~25個の環原子を有し、縮合環もまた含有していてもよく、およびYによって一置換または多置換されていてもよい、芳香環、複素芳香環、脂環式環または複素脂肪族環を表し、
A3は、5~25個の環原子を有し、縮合環もまた含有していてもよく、およびYCによって一置換または多置換されていてもよい、芳香環または複素芳香環を表し、
Yは、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、F、Cl、CN、SCN、SF5、あるいは直鎖または分枝の、各場合において任意にフッ素化されてもよい1~12個のC原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはアルコキシカルボニルオキシ、好ましくはFまたはClを表し、
YCは、Yの意味のうちの1つを有するか、あるいは、各々3~12個のC原子を有するシクロアルキルまたはアルキルシクロアルキル、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、トリフルオロメチル、メトキシまたはトリフルオロメトキシを表し、
Bは、
【化3】
を表し、そこで基は、両方の方向に向けられていてよく、
L1~L5は、互いに独立して、F、Cl、Br、I、CN、SF5、CF3またはOCF3、好ましくはClまたはFを表し、そこでL3はまた代替的にHを表してもよく、
Spは、スペーサ基または単結合を表し、
Gは、-OH、-SH、-SO2OH、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-C(OH)(PO(OH)2)2、-COOH、-Si(ORx)3、-SiCl3、-CH=CH2、-POCl2、-CO(NHOH)、-CO(NR0OH)、-Si(NMe2)3、-O-C(O)-ORV、-O-C(O)-Si(ORV)3、-PO(ORV)2または-SO2ORV、あるいは1~12個のC原子を有する直鎖または分枝アルキルであってその中の1個、2個または3個のジェミナルでないH原子がOHによって置換されたもの、例えば-CH(CH2OH)2または-C(CH2OH)3、を表し、
R0、R00、Rxは、1~6個のC原子を有する直鎖または分枝アルキルを表し、
RVは、1~12個のC原子を有する直鎖または分枝アルキル、好ましくは二級または三級アルキル、極めて好ましくはイソプロピルまたはtert-ブチル、とりわけtert-ブチル、を表し、および
r、s、t、uは、同一であるかまたは異なって、0、1または2である。
【0048】
好適な式Iで表される化合物は、WO 2016/110301、WO 2018/007337、WO 2019/238649、WO2020/225270、WO2020/225398およびWO2021/078699において開示されている。
【0049】
好ましくは、自己組織化単分子膜の形成のための有機分子は、下記の式IAおよびその副次式で表される1以上の化合物から選択される。
【0050】
本発明の意味におけるスペーサ基は、双極性の部分とアンカー基との間のフレキシブルな鎖であって、これらの副次構造間の分離を生じさせ、かつ、そのフレキシビリティのため、同時に基板への結合後の双極性の部分の可動性を改善させるものである。
【0051】
スペーサ基は、分枝または直鎖であるものとすることができる。キラルのスペーサは、分枝であり、および光学活性であり、および非ラセミ体である。
ハロゲンは、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClである。
【0052】
本明細書中、アルキルは、直鎖または分枝であり、かつ、1~15個のC原子を有し、好ましくは、直鎖であり、かつ、別様に明記されない限り、1、2、3、4、5、6または7個のC原子を有し、および、従って好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはへプチルである。
【0053】
本明細書中、アルコキシラジカルは、直鎖または分枝であり、かつ、1~15個のC原子を含有する。それは、好ましくは直鎖であり、かつ、別様に明記されない限り、1、2、3、4、5、6または7個のC原子を有し、および、従って好ましくはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシまたはヘプトキシである。
【0054】
本明細書中、アルケニルラジカルは、好ましくは、直鎖または分枝であり、かつ、少なくとも1のC-C二重結合を含有する、2~15個のC原子を有するアルケニルラジカルである。それは、好ましくは直鎖であり、かつ、2~7個のC原子を有する。従って、それは、好ましくはビニル、プロパ-1-または-2-エニル、ブタ-1-、-2-または-3-エニル、ペンタ-1-、-2-、-3-または-4-エニル、ヘキサ-1-、-2-、-3-、-4-または-5-エニル、へプタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-または-6-エニルである。C-C二重結合の2個のC原子が置換される場合、アルケニルラジカルは、Eおよび/またはZ異性体(トランス/シス)の形態の可能性がある。一般に、夫々のE異性体が好ましい。アルケニルラジカルのうち、プロパ-2-エニル、ブタ-2-および-3-エニル、およびペンタ-3-および-4-エニルが殊更好ましい。
【0055】
本明細書中、アルキニルは、直鎖または分枝であり、かつ、少なくとも1のC-C三重結合を含有する、2~15個のC原子を有するアルキニルラジカルを意味するものと捉えられる。1-および2-プロピニルならびに1-、2-および3-ブチニルが好ましい。
【0056】
式Iにおいて好ましいアリール基は、例えば、親構造のベンゼン、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、9,10-ジヒドロフェナントレン、フルオレン、インデンおよびインダンから誘導されるものである。
【0057】
式Iにおいて、好ましいヘテロアリール基は、例えば、5員環、例えばフラン、チオフェン、セレノフェン、オキサゾール、イソオキサゾール、1,2-チアゾール、1,3-チアゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,2,5-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,2,5-チアジアゾールおよび1,3,4-チアジアゾールなど、6員環、例えばピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、1,3,5-トリアジン、1,2,4-トリアジンおよび1,2,3-トリアジンなど、または縮合環、例えばインドール、イソインドール、インドリジン、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、プリン、ナフトイミダゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チエノ[2,3b]チオフェン、チエノ[3,2b]チオフェン、ジチエノチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ベンゾチアジアゾチオフェン、2H-クロメン(2H-1-ベンゾピラン)、4H-クロメン(4H-1-ベンゾピラン)およびクマリン(2H-クロメン-2-オン)など、またはこれらの基の組み合わせである。
【0058】
式Iにおいて、好ましいシクロ脂肪族基は、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、デカヒドロナフタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、スピロ[3.3]ヘプタンおよびオクタヒドロ-4,7-メタノインダンである。
【0059】
式Iにおいて、好ましい複素脂肪族基は、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、テトラヒドロチオフラン、ピラン、ジオキサン、ジチアン、シリナン、ピペリジンおよびピロリジンである。
【0060】
A1、A2およびA4は、各出現ごとに、同一であるかまたは異なって、殊更好ましくは以下の基から選択される:
a) 1,4-フェニレン、その中の1個または2個のCH基は、Nによって置き換えられていてもよく、およびその中の1個以上のH原子がYによって置き換えられていてもよい、
b) トランス-1,4-シクロヘキシレンおよび1,4-シクロヘキセニレンからなる群、加えてその中の1以上の隣接していないCH2基が-O-および/または-S-によって置き換えられていてもよく、および加えてその中の1個以上のH原子がYによって置き換えられていてもよい、および
c) 1,3-ジオキソラン-2,4-ジイル、テトラヒドロフラン-2,5-ジイル、シクロブタン-1,3-ジイル、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクタンジイル、ピペリジン-1,5-ジイルおよびチオフェン-2,5-ジイルからなる群、加えてその中の1個以上のH原子がYによって置き換えられていてもよい、
そこでYは、上で式Iの下に示された意味を有し、および好ましくは、F、Cl、CNまたはCF3を表す。
【0061】
A3は、極めて好ましくは1,4-フェニレン、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、アントラセン-9,10-ジイルからなる群から選択され、その中の1個または2個のCH基は、Nによって置き換えられていてもよく、およびその中の1個以上のH原子は、Yによって置き換えられていてもよく、そこでYは、上で式Iの下に示された意味を有し、および式中、好ましくは基Z3に隣接する位置はHではない。
【0062】
式Iにおいて、基Gは、好ましくは、-SO2OH、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、-POCl2、-COH(PO(OH)2)2、-Si(ORx)3、-SiCl3またはPO(ORV)2、極めて好ましくは-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2または-COH(PO(OH)2)2、とりわけ-PO(OH)2を表し、そこでRVは、上で定義された意味を有し、好ましくはMe、Et、n-Pr、i-Prまたはt-Buである。
【0063】
好ましいスペーサ基Spは、式IのラジカルG-Sp-が式G-Sp'-X'-に対応するように、式Sp'-X'から選択され、
そこで
Sp'は、1~20個、好ましくは1~12個のC原子を有する直鎖または分枝のアルキレンを表し、これは任意にF、Cl、Br、IまたはCNによって一置換または多置換されていてもよく、および加えてその中の1以上の隣接していないCH2基は各々、互いに独立して、-O-、-S-、-NH-、-NR0-、-SiR00R000-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-NR0-CO-O-、-O-CO-NR0-、-NR0-CO-NR0-、-CH=CH-または-C≡C-によって、Oおよび/またはS原子同士が互いに直接連結することがない様式で、置き換えられていてもよく、
X'は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR00-,-NR00-CO-、-NR00-CO-NR00-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-,-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-CF2CF2-,-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CR00-、-CYx=CYx‘-、-C≡C-,-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-または単結合を表し、
R0、R00およびR000は各々、互いに独立して、H、または1~12個のC原子を有するアルキルを表し、および
YxおよびYx‘は各々、互いに独立して、H、F、ClまたはCNを表す。
X'は、好ましくは-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR0-、-NR0-CO-、-NR0-CO-NR0-または単結合である。
【0064】
好ましい基Sp'は、-(CH2)p1-、-(CF2)p1-、-(CH2CH2O)q1-CH2CH2-、-(CF2CF2O)q1-CF2CF2-、-CH2CH2-S-CH2CH2-、-CH2CH2-NH-CH2CH2-または-(SiR00R000-O)p1-であり、その中のp1は、1~12の整数であり、q1は、1~3の整数であり、ならびにR00およびR000は、上に表示された意味を有する。
【0065】
殊更好ましい基-X'-Sp'-は、-(CH2)p1-、-O-(CH2)p1-、-(CF2)p1-、-O(CF2)p1-、-OCO-(CH2)p1-および-OC(O)O-(CH2)p1-であり、その中のp1は、上に表示された意味を有する。
【0066】
極めて殊更好ましい基Sp'は、例えば、直鎖の各場合において、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、へプチレン、オクチレン、ノニレン、デシレン、ウンデシレン、ドデシレン、オクタデシレン、ペルフルオロエチレン、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロペンチレン、ペルフルオロヘキシレン、ペルフルオロへプチレン、ペルフルオロオクチレン、ペルフルオロノニレン、ペルフルオロデシレン、ペルフルオロウンデシレン、ペルフルオロドデシレン、ペルフルオロオクタデシレン、エチレンオキシエチレン、メチレンオキシブチレン、エチレンチオエチレン、エチレン-N-メチルイミノエチレン、1-メチルアルキレン、エテニレン、プロペニレンおよびブテニレンである。
【0067】
殊更好ましい基X’は、-O-または単結合である。
好ましい態様において、自己組織化単分子膜の形成のための有機分子は、式Iで表される化合物から選択され、上および下に定義されるとおり、その中のラジカルTが、3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環を表し、その中の少なくとも1個の-CH2-基が-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられているか、またはその中の少なくとも1個の-CH=基が-N=に置き換えられている。
【0068】
式Iで表され、上および下に定義されるとおり、その中の基Tが、3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環を表し、その中の少なくとも1個の-CH2-基が-O-、-S-、-NRx-、-S(O)-、-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられているか、またはその中の少なくとも1個の-CH=基が-N=に置き換えられている化合物から得られた、自己組織化された単層を含む本発明に従う電子素子は、個々のスイッチング層の夫々の上部電極への殊更強い接着によって区別され、これは改善された機械的な安定性および構造上の信頼性に寄与する。
【0069】
本発明は、よって、さらに式IAで表される化合物に関し、
T-ZT-(A1-Z1)r-B-(Z2A2)s-(Z3A3)t-(Z4A4)u-Sp-G (IA)
その中の
Tは、3~10員の飽和または部分的に不飽和の脂肪族環を表し、その中の少なくとも1個の-CH2-基が、-O-、-S-、-NRx-、-S(O)-,-SO2-、-NRx-または-N(O)Rx-に置き換えられているか、またはその中の少なくとも1個の-CH=が、-N=に置き換えられており、ならびに、他の基およびパラメータは、上で定義された意味を有する。
【0070】
これらの化合物から得られた分子層は、典型的なフォトレジスト配合物およびその他のプロセス化学物質による濡れ性の大幅な改善、SAMの上でのALDによる改善された材料の堆積、例として物理蒸着によって堆積させられたフィルムのより高い品質、および上部電極フィルムの改善された接着によって区別される。
【0071】
好ましい態様において、式IAで表される化合物は、副次式IA-1a~IA-1f
T-ZT-B-Sp-G IA-1a
T-ZT-(A1-Z1)-B-Sp-G IA-1b
T-ZT-(A1-Z1)2-B-Sp-G IA-1c
T-ZT-B-(Z2-A2)-Sp-G IA-1d
T-ZT-B-(Z2-A2)2-Sp-G IA-1e
T-ZT-(A1-Z1)-B-(Z2-A2)- Sp-G IA-1f
から選択され、その中のT、ZT、A1、A2、B、Z1、Z2、SpおよびGは、上に表示された意味を有し、および好ましくは、Tは、
【化4】
を表し、その中のRxは、1~6個のC原子を有するアルキル、好ましくはメチルを表す。
【0072】
式Iで表される化合物およびその副次式において、
A1およびA2は、同一であるかまたは異なって、
【化5】
を表し、
Bは、
【化6】

を表し、
L1およびL2は、互いに独立して、CF3、ClまたはFを表し、そこで、好ましくはラジカルL1およびL2のうちの少なくとも1つは、Fを表し、
L3は、HまたはF、好ましくはFを表し、
Y1およびY2は、互いに独立して、H、ClまたはFを表し、
Z1、Z2、ZTは、互いに独立して、単結合、-CF2O-、-OCF2-,-CH2O-、-OCH2-または-CH2CH2-、好ましくは単結合を表し、
Spは、1~12個のC原子を有する分枝または非分枝の、好ましくは非分枝の、1,ω-アルキレンを表し、
Gは、-OP(O)(OH)2、-PO(OH)2、または-COH(PO(OH)2)2を表す。
【0073】
式IA-1の極めて殊更好ましい副次式は、副次式IA-1a-1~IA-1d-18:
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【化7-4】
【化7-5】
【化7-6】
【化7-7】

であり、その中のT、ZT、およびGは、上で与えられた意味を有し、vは、1~12、好ましくは2~7の整数であり、および、好ましくは、
Tは、
【化8】
を表し、
ZTは、-CH2O-、-C≡C-または単結合、極めて好ましくは単結合を表し、
Gは、-PO(OH)2、または-COH(PO(OH)2)2を表し、および
vは、2~7の整数である。
【0074】
好ましい態様において、式Iで表される化合物は、式IA-2
T-ZT-(A1-Z1)r-B-Z3-A3-(Z4-A4)u-G IA-2
で表される化合物から選択され、その中の出現する基およびパラメータは、式Iについて上で与えられた意味を有し、および好ましくは
Tは、
【化9】
を表す。
【0075】
式Iで表される化合物A-2およびその副次式において、好ましくは
A1およびA4は、同一であるかまたは異なって、
【化10】
を表し、
A3-Z3は、
【化11】
を表し、
Bは、
【化12】
を表し、
ZTは、単結合、-CH2O-、-OCH2-または-CH2CH2-を表し、
L1およびL2は、同一であるかまたは異なって、F、CF3またはClを表し、
Y1およびY2は、同一であるかまたは異なって、Yについて上で与えられた意味のうちの1つを有し、および、好ましくはH、FまたはClを表し、
Y3およびY4は、同一であるかまたは異なって、Y1およびY2について上で与えられた意味のうちの1つを有し、および、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、メトキシ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、またはトリフルオロメチルチオ、極めて好ましくはメチルを表し、
Z3は、CH2または-O-、好ましくはOを表し、
Z1、Z2は、互いに独立して、単結合、-C(O)O-、-OC(O)-、-CF2O-、-OCF2-、-CH2O-、OCH2-または-CH2CH2-、とりわけ単結合を表し、および
Gは、-PO(OH)2、または-COH(PO(OH)2)2、好ましくは-PO(OH)2を表し、
rおよびuは、独立して、0、1または2、好ましくは0または1である。
【0076】
式IA-2の極めて好ましい副次式は、副次式IA-2-1~IA-2-7:
【化13-1】
【化13-2】
であり、その中の出現する基は、式IA-2について上で与えられた意味を有する。
【0077】
本発明の別の側面に従うと、分子層は、式Iで表される化合物から選択される1以上のキラルな非ラセミ化合物を含む。
【0078】
式Iで表されるキラル化合物から得られる分子層は、確率論的ノイズの大幅な低減およびより速いスイッチングのメムリスティックデバイスを可能にし、読み取りおよび書き込み誤差率を低減させ、これはエネルギー効率に対してプラスの効果を有する。加えて、より小さなジャンクションサイズへの統合が可能になる増大したトンネル電流が観察される。
【0079】
好ましくは、キラル化合物は、50%超の、好ましくは80%、90%、または95%超の、より好ましくは97%超の、とりわけ98%超の、鏡像体過剰率(ee)を有する。
【0080】
キラリティは、1個以上の、好ましくは1個または2個の、極めて好ましくは1個の、下文にSp*と称される不斉置換された炭素原子(または:不斉炭素原子、C*)を有する上の式Iで表される分枝のキラル基Spによって達成される。
【0081】
Sp*において、不斉炭素原子は、好ましくは、2個の異なるように置換された炭素原子、水素原子、ならびに、ハロゲン(好ましくはF、Cl、またはBr)、各場合において1~5個の炭素原子を持つアルキルまたはアルコキシ、およびCNの群から選択される置換基へ、連結されている。
【0082】
キラルな有機ラジカルSp*は、好ましくは、式
を有し、その中のX’は、式Iについて上で定義された意味を有し、および好ましくは、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-、-CO-、-O-、-S-、-CH=CH-、-CH=CH-COO-または単結合、より好ましくは-CO-O-、-O-CO-、-O-または単結合、極めて好ましくは-O-または単結合を表し、
QおよびQ’は、同一であるかまたは異なって、単結合、または1~10個の炭素原子を有する任意にフッ素化されてもよいアルキレンであって、その中のXと連結していないCH2基がまた、-O-、-CO--O-CO-、-CO-O-または-CH=CH-によって置き換えられることもできるもの、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキレンまたは単結合、殊更好ましくは-(CH2)n5-または単結合を表し、
n5は、1、2、3、4、5、または6であり、
Yは、1~15個の炭素原子を有する任意にフッ素化されてもよいアルキルであって、その中の1個または2個の隣接していないCH2基がまた、-O-、-CO-、-O-CO-、-CO-O-および/または-CH=CH-、によって置き換えられることもできるもの、さらにCNまたはハロゲン、好ましくは1~7個のC原子を有する任意にフッ素化されてもよいアルキルもしくはアルコキシ、-CNまたはCl、殊更好ましくは-CH3、-C2H5、-CF3またはClを表す。
【0083】
本発明に従う一般式IAで表される化合物は、文献(例えばHouben-Weyl、Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準的な著作)において記載されているとおりに、正確に言うと、既知でありかつ該反応に好適である反応条件下で、それ自体既知である方法によって調製される。ここでは、それ自体既知であるが、ここでより詳細に言及はされていない変形例を使用することができる。
【0084】
本発明に従う式IAで表される化合物に向けた好ましい合成経路は、下のスキームにおいて例示され、および、実施例を用いてさらに説明される。好適な合成は、例えばCN 103319444Aにおいて、またはP. Kirsch, M. Bremer, Angew. Chem. Int. Ed. 2000, 39, 4216-4235; M. Bremer, P. Kirsch, M. Klasen-Memmer, K. Tarumi, Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 8880-8896;およびその中に引用される参考文献においてもまた公開されており、および、好適な出発材料の選択によって、一般式IAで表される具体的な所望される化合物へ適応させることができる。
【0085】
合成は、以下のスキーム1によって説明される。
スキーム1:
【化14】
【0086】
S-およびN-複素環類似体の合成は、テトラヒドロピラン-4-オンの代わりに、対応するチアノンおよびN-アルキルピペリドンから出発して、同様に働く(スキーム1)。S-酸化物およびN-酸化物は、オゾンでの処理によってなどの既知の手順を使用して、対応するチオエーテルまたはアミンから得られる(スキーム2)。
スキーム2:
【化15】
【0087】
電子デバイスは、好ましくはベース基板上に配置される。さらに、電子デバイスは、 好ましくは、電極線および/または第1/第2の電極の電気的な絶縁のために配置された誘電材料を含む。
【0088】
ベース基板ならびに誘電体のために好適な材料は、電気的な絶縁体であり、ここで、良好な熱伝導性を有する材料が好ましい。例えば、GaNまたはSiCなどの大きなバンドギャップの半導体が好適である。さらなる殊更好適な材料は、SiO2、ZrO2、ダイヤモンドおよびAl2O3を包含する。誘電材料およびベース基板のための材料は、同じであるかまたは異なる材料を選ぶことがあり得るように互いに独立して選ばれてもよい。
【0089】
ベース基板の場合において、ベース基板は、ベース基板を形成する層でコーティングされたさらなる基板の形態で提供されてもよい。例えば、高度にドープされたp++ Siのウェハが、SiO2の層でコーティングされていてもよく、ここでSiO2層がベース基板を形成する。さらなる基板として好適な材料のための、他の好適な例は、Si、Ge、ダイヤモンド、グラファイト、グラフェン、フラーレン、α-Sn、B、Se、Te;
GaAs、GaP、InP、InSb、InAs、GaSb、CrN、HfN、GaN、TaN、TiN、MoN、NbN、WCN、WN、AlN、InN、VN、ZrN,AlxGa1-xAsおよびInxGa1-xNi、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、Hg(1-x)Cd(x)Te、BeSe、BeTexおよびHgS; GaS、GaSe、GaTe、InS、InSexおよびInTe、
CuInSe2、CuInGaSe2、CuInS2およびCuInGaS2、SiCおよびSiGe、SeTe;
ポリチオフェン、テトラセン、ペンタセン、フタロシアニン、PTCDA、MePTCDI、キナクリドン、インダンスロン、フラランスロン(flaranthrone)、ペリノン、AlQ3、PEDOT:PSSおよびポリビニルカルバゾール/TLNQ 複合体;
Ta、Ti、Co、Cr、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、Au、Ag、Cu、Al、WおよびMg;インジウムスズ酸化物、インジウムガリウム酸化物、InGa-α-ZnO、アルミニウムドープ酸化亜鉛、スズドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化スズおよびアンチモンスズ酸化物を包含する。
【0090】
好ましくは、アンカリング層は、存在する場合、Ag、Al、Au、Co、Cr、Cu、Mo、Nb、Ni、Pt、Ru、Si、W、CrN、HfN、MoN、NbN、TiN、TaN、WN、WCN、VNおよびZrN、Al2O3、HfO2、RuO2、SiO2、TiO2、およびZrO2からなる群から選択される材料を含む。
【0091】
本発明のさらなる側面は、本明細書に記載の電子素子を生産するための方法を提供することである。
【0092】
本明細書に記載のとおりの複数のセルを含む電子素子を生産するための方法は、以下のステップを含む:
A) ベース基板を提供すること、
B) ベース基板上での誘電材料によって分離された電極線を含む第1の電極層の形成、
C) 立体配座的にフレキシブルなユニットを用いて双極子ユニットへ接続されたアンカリング基を有する有機分子の単層を含む分子層を形成すること、および
D) 誘電材料(18)によって分離された電極線(30)を含むさらなる電極層(22)の堆積。
【0093】
ステップC)およびD)は、セルの所望の数の層が形成されるまで繰り返され、ここで、2つの隣接する電極層の電極線は、2つの隣接する電極層の電極線が互いに交差するように互いに対して回転される。例えば、2つの隣接する電極層は、2つの隣接する電極層が互いに直交するように90°回転されてもよい。
【0094】
好ましくは、ベース基板を提供するステップA)は、基板を洗浄するステップを包含する。洗浄ステップには、1以上の溶媒の使用および超音波浴の使用が関与してもよい。
【0095】
好ましくは、ダイオード層構造または閾値スイッチ構造の形態でのセレクタデバイスは、ステップB)に従った第1の電極層の形成またはステップD)に従ったさらなる電極層の形成の後で、かつステップC)に従った分子単層の形成の前に堆積させられる。ダイオード層構造は、好ましくは、少なくともp型ドープされた半電導層およびn型ドープされた半電導層を含む。
【0096】
好ましくは、誘電材料によって分離された電極線の第1の電極層および/またはさらなる電極層の形成は、
- 電極材料の堆積、
- 非電極エリアからの電極材料の除去、
- 誘電材料の堆積、および
- 得られた層構造の、電極材料のレベルまでの低さへの平坦化
のステップを含み、または、第1の電極層の形成の場合は、
- 誘電材料の堆積、
- 電極エリアからの誘電材料の除去、
- 電極材料の堆積、および
- 得られた層構造の、誘電材料のレベルまでの低さへの平坦化
のステップを含む。
【0097】
平坦化は、好ましくは化学機械研磨を用いて行われる。
【0098】
好ましくは、非電極エリアにおける電極材料の除去または電極エリアにおける誘電材料の除去は、除去するエリアを定義するフォトリソグラフィ法、およびエッチングによって行われる。
【0099】
好適なエッチング法は、ドライエッチング法、ウェットエッチング、またはこれらの組み合わせを包含する。好適なドライエッチング法は、例えば、高圧化学エッチング、イオンミリングまたは反応性イオンエッチングを包含する、反応性イオンエッチングおよびドライ(プラズマ)エッチング技法を包含する。
【0100】
好ましくは、誘電材料および/または電極材料の堆積は、物理蒸着、化学蒸着、化学溶液堆積、原子層堆積、マイクロコンタクト印刷もしくは転写印刷、またはゾルゲル法を用いて行われる。
物理蒸着法は、とりわけ、蒸発、スパッタリング、エピタキシーを包含する。
【0101】
好ましくは、分子単層でのコーティングは、
- 洗浄および活性化のためのコーティングされる基板の前処理、
- 基板を、該分子の自己組織化単分子膜を形成するための有機分子を含む溶液中へとディッピングすること、
- 有機溶媒で濯ぐこと、および
- 形成された分子単層のアニーリング
のステップを含み、ここで、コーティングされる基板は、第1の電極層、さらなる電極層、またはセレクタデバイスの表面である。
【0102】
ディップコーティングに対する代替として、自己組織化単分子膜を形成するためにスピンコーティングを使用してもよい。
【0103】
ディッピングのために使用される溶液は、好ましくは、自己組織化単分子膜を形成するための分子のホスホン酸と溶媒との混合物である。分子のホスホン酸の濃度は、好ましくは0.01mM~100mM(ミリモル濃度、10-3mol/L)の範囲であり、好ましくは、0.1mM~10mMの範囲にある。
【0104】
溶液を調製するためならびに濯ぐために好適な溶媒は、アルコール、ケトン、ニトリル、エステル、エーテルおよび二極性非プロトン性溶媒を包含する。
【0105】
好ましいアルコールは、エタノール、イソプロパノールを包含する。好適なケトンは、アセトン、エチルメチルケトン(EMK)およびシクロヘキサノンを包含する。好適なニトリルは、例えば、アセトニトリルである。好適なエステルは、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセタート(PGMEA)、γ-ブチロラクトン(GBL)を包含する。好適なエーテルは、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジグリム、アニソールを包含する。好適な二極性非プロトン性溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、N,N′-ジメチルプロピレン尿素(DMPU)、ジメチルスルホキシド(DMSO)を包含する。
【0106】
ディッピングのための溶液の調製のケースでは、さらに好適な溶媒は、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、クロロホルムおよびジクロロメタンを包含する。
【0107】
好ましくは、アニーリングは、50℃~250℃の範囲にある温度で、1min~60minの時間の間行われる。
【0108】
好ましくは、溶液中への基板のディッピングに先立ち、前処理が、UV-オゾン処理を用いて行われる。前処理は、好ましくは150nm~350nmの範囲にある波長を有するUV光を使用して行われ、ここで基板は50℃~300℃の範囲にある温度を有する。UV光の強度は、好ましくは10μW/cm2~200μW/cm2の範囲にある。前処理において使用されるオゾンは、環境中に存在する酸素をUV光と反応させることから得られる。
【0109】
好ましくは、ディッピングおよび/または濯ぎの後、基板は、例えば窒素の流れを使用することによって、送風乾燥される。
【0110】
本発明のさらなる側面は、メモリデバイスとしての、ここで電子素子のセルがメモリセルとしてとしての役割を果たす、および/または神経ネットワークデバイスとしての、ここで電子素子のセルがシナプスとしての役割を果たす、記載されている電子素子の1つの使用または記載されている方法の1つを用いて得られる電子素子の使用である。
【0111】
電子素子がメモリデバイスとして使用される場合、セルの各々は、メモリセルとしての役割を果たす。ビット線およびワード線としての役割を果たす夫々のセルに関連する2本の直交する電極線へ適切なシグナルを印可することによって、セルは、とりわけ読み取り/書き込みのために、個別にアドレスされ得る。
【0112】
好ましくは、セルは、メムリスティブ特性を有し、ここでセルは、電流の流れが基本的にブロックされた高抵抗状態、および電流の流れを許容する低抵抗状態を有し得る。これらの特性を活用することにより、電子素子のうちのあるセルの状態を選択的に調整することによって電子素子を通る電子シグナルのための経路が構成され得る。これは、神経ネットワークデバイスとして構成された電子素子のために殊更有用である。例えば、シグナル/電流経路が、バイアス電圧、パルス時間/オフパルス時間、コンプライアンス電流等々といった励起履歴、パターンおよびパラメータに応じて、パーコレーションのようなやり方で進化し得る。かかる構成において、電子素子は、好ましくは少数の包括的な外部電気プローブのみによって接触され、これは、ワードおよびビット線を有するメモリデバイスの従来の個別のアドレスとは対照的である。
【0113】
好ましくは、電子デバイスは、入力/重み/出力情報データを処理するための一般的なCMOS回路網にインターフェースされる、提案された電子素子の1つを有して形成される。
【0114】
神経ネットワークデバイスとして構成されたかかる電子デバイスは、画像/ビデオデータを処理するための神経形態感知に殊更有用である。
【0115】
図面は、以下のものを示す:
図1、セルの三次元クロスバー配置を有する電子素子の概略断面図、
図2a図2lは、生産の異なる段階における図1の電子素子の上面図および断面図を各々示し、および
図3、セルの概略図。
【0116】
図1は、複数のセル100を有する電子素子10の一例の態様を概略断面図で示す。図1の概略図は、セル100の三次元的なクロスバー配置全体の一部のみを示している。電子素子10は、三次元の各々に向かってさらに拡張されていてもよく、および、描かれている6つのセル100よりもはるかに多くを包含してもよい。
【0117】
図1の電子素子10は、多段のレベルを有する層構造を含み、ここで第1のレベルは、ベース基板12、第1の電極層14、分子層20、およびさらなる電極層22をこの順番で含む。ベース基板12は、好ましくは、電気的に絶縁性でありつつ、良好な熱伝導率を有する。
【0118】
第1の電極層14は、誘電材料18によって分離された電極線30を含む。電極線30は、導電性である電極材料16から作られている。図1中には、2本の電極線30が見えている。しかしながら、電子コンポーネント10は、多数の電極線30を含んでもよい。
【0119】
分子層20は、図1に示された態様において、第1の電極層14と、およびとりわけ電極線30と、直接接触している。分子層20は、有機分子の自己組織化単分子膜である。有機分子は、立体配座的にフレキシブルなユニットを用いて双極子ユニットへ接続されたアンカリング基を有する。アンカリング基は、第1の電極層14と、とりわけ電極線30を形成している導電材料16と接触しており、およびよって第1の電極層14の表面へ分子をアンカーさせている。さらなる態様において、電子素子10は、第1の電極層14と分子層20との間に位置するアンカリング層を包含してもよい。
【0120】
さらなる電極層20は、第1の電極層14のセットアップと同様のセットアップを有するが、しかし90°回転されている。よって、回転された電極線31が、誘電材料18によって電気的に絶縁されかつ電極線30に直交しているさらなる電極層20において形成される。他の態様において、回転の角度は、交差した電極線31、30を形成するために45°~135°の範囲において選択されてもよい。
【0121】
セル100は、2本の直交する電極線30、31の間の交差部に、とりわけ、電極線30と回転された電極線31との間の交差部に位置する。各セル100は、第1の電極102、分子層20の一部104、および第2の電極106を含む。図1の態様において、電極線30の一部は、第1の電極102としての役割を果たし、および、回転された電極線31の一部は、第2の電極106としての役割を果たす。
【0122】
この構造は、さらなるレベルに拡張されてもよく、ここで図1の構造の第2のレベルはさらに、別の分子層20’および別のさらなる電極層22’をこの順番で含む。構造の第3のレベルは、もう1つの分子層20’’およびもう1つのさらなる電極層22’’を含む。図1において、第2のレベルのセル100’および第3の層のセル100’’は、マークされている。
【0123】
分子層20およびさらなる電極層22の各追加により、構造は、さらなるレベル、およびよってセル100のさらなる層に拡張される。
【0124】
電子素子の生産の一例の態様が、図2a~2lに関してさらに記載される。図2a~2lの各々において、下の部分は、上面図を示し、および上の部分は、横から見た破線Aに沿った断面図を示す。
【0125】
図2aは、提供されたベース基板12を示す。第1のステップi)において、誘電材料18の形態で絶縁層が、基板12上へとコーティングされる。
図2bは、誘電材料18でコーティングされたベース基板12を示す。
【0126】
これに続くステップii)において、トレンチが、誘電材料18の層内に形成される。トレンチは、図2cに示されるとおり、続く第3のステップiii)において電極が形成されることになる電極エリア34を定義する。図2cに描かれたトレンチは、第1の方向に、かつ、互いに平行に配列されている。
【0127】
図2dは、電極線30が、ステップii)において準備されたトレンチによって定義される電極エリア34における電極材料16の堆積およびこれに続く誘電材料18のレベルまでの低さへの平坦化によって形成されているということを示す。形成された電極線30は、第1の方向に、かつ、互いに平行に配列されている。
【0128】
さらなるステップiv)において、有機分子の単層を含む分子層20が、誘電材料18および電極材料16の表面上へとコーティングされる。コーティングに先立ち、表面は、好ましくは洗浄されおよびUVオゾン処理によって活性化される。コーティングは、例えば、形成された構造体を、有機分子を含む溶液中へとディッピングすることによって行われてもよい。図2e)は、これまでに形成された構造体の上に形成された分子層20を示す。
【0129】
これに続くステップv)において、導電材料16のさらなる層が、導電性の電極のさらなる層のためのベースを形成するために構造体の上へと堆積させられる。堆積の後、図2fに描かれた、電極線30の第1の方向に対して直交する第2の方向に配列されている回転された電極線31を形成するために、導電材料16は選択的に除去される。
【0130】
電極線30と回転された電極線31との交差部の間に位置する分子層20の一部、および、第1および第2の電極としての役割を果たす電極線30、31が、セル100を形成する。
【0131】
図2gは、さらなるステップvi)の後の構造を示す。ステップvi)において、誘電材料18のさらなる層が、堆積させられ、および続いて、先のステップにおいて形成された回転された電極線31のレベルまでの低さへ平坦化される。
【0132】
ステップvii)において、さらなる分子層20が、図2hに示されるとおり構造体の上へとコーティングされる。
【0133】
図2iは、これに続く、導電材料16のさらなる層が堆積させられ、および非電極エリア32において選択的に除去されるステップviii)を行った後の構造を示す。非電極エリア32における導電材料16の除去の後、第1の方向に沿って配置されたさらなる電極線30が形成される。
【0134】
これに続くステップix)において、非電極エリア32における導電材料16および分子層20の除去によって形成されたトレンチが、誘電材料18で充填される。誘電材料18の堆積の後、図2jに示されるとおり、導電材料16のレベルまでの低さへと平坦化が行われる。
【0135】
図2kは、ステップx)におけるさらなる分子層20の堆積の後の構造を示す。
図2lは、ステップxi)において導電材料16のさらなる層の堆積および選択的除去によってさらなる回転された電極線31を形成した後の構造を示す。
【0136】
ステップvi)~xi)を繰り返すことによって、電極線30と回転された電極線31との間の交差部に位置するさらなるセル100を持つさらなるレベルを得ることができる。
【0137】
図3は、第2の態様に従うセル100の層構造を示す。図1に示されるとおりの第1の態様のセル100は、3つの層、つまり第1の電極102、分子層20の一部104、および第2の電極106を含むが、一方で、図3に描かれたとおりの第2の態様のセル100は、追加のセレクタデバイス108を含む。
【0138】
従って、第2の態様のセル100は、第1の電極102、セレクタデバイス108、分子層20の一部104、および第2の電極106をこの順番で含む。セレクタデバイス108自体が、1以上の層を含む層構造として構成されてもよい。例えば、セレクタデバイス108は、n型ドープされた半電導層およびp型ドープされた半電導層を含むダイオードとして構成されてもよい。
【0139】
合成例
合成例1
ステップ1: 4-ブロモ-2,3-ジフルオロフェニルベンジルエーテル
【化16】

【0140】
4-ブロモ-2,3-ジフルオロフェノール(78.6g、0.376mol)、アセトン(786ml)、ベンジル塩化物(50g、0.395mol)および炭酸カリウム325メッシュ(207.9g、1.50mol)の混合物を、16hの間加熱還流し、反応を、室温まで冷まし、および次いで濾過した。濾過物を、真空中で蒸発乾固させたところ、オフホワイトの固体が残った(121.6g)。固体を、65℃にてイソプロパノール(500ml)中に溶解させ、次いで冷まし、および終夜攪拌したところ、白色懸濁液がもたらされた。固体を、真空濾過によって収集し、イソプロパノールで洗浄し(2×50ml)および乾燥させたところ、4-ブロモ-2,3-ジフルオロフェニルベンジルエーテルが結晶性の白色固体としてもたらされ、m.p. 70~73℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 5.16 (2H, s), 6.71 (1H, ddd, J=9.2, 7.5, 2.1 Hz), 7.19 (1H, ddd, J=9.2, 7.0, 2.5 Hz), 7.31 - 7.48 (5H, m).
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ ppm 71.68, 101.04 (d, J=18.3 Hz), 111.08 (d, J=2.9 Hz), 126.28 (d, J=4.4 Hz), 127.34, 128.34, 128.64, 135.60, 142.14 (dd, J=254.0, 14.8 Hz), 147.57 (dd, J=8.1, 2.9 Hz), 148.65 (dd, J=249.7, 11.8 Hz).
19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -128.7 (d, J=20.5 Hz), -135.8 (d, J=20.5 Hz).
【0141】
ステップ2: 4-(4-ベンジルオキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン
【化17】
【0142】
4-ブロモ-2,3-ジフルオロフェニルベンジルエーテル(20.0g、66.9mmol)を、窒素下で乾燥THF(200ml)中に溶解させ、および-85℃まで冷却した。n-BuLi(ヘキサン中2.5M、17.0ml、73.6mmol)を、30minにわたって滴加した。-70℃にて1hの後、反応を-85℃まで冷却し、および4-オキソテトラヒドロピラン(8.0g、80.2 mmol)を10minにわたって滴加した。冷却浴を取り除き、および反応を室温まで温め、および終夜攪拌した。反応を、10℃まで冷却し、次いで水(30ml)をゆっくり加えた。30minの間攪拌した後、混合物を、酢酸エチル(200ml)と水(100ml)との間で分配させた。有機層を収集し、および水性層を酢酸エチルで抽出した(2×100ml)。合わせた有機相を、乾燥させ(MgSO4)、および真空中で濃縮乾固させたところ、淡黄色固体が残った。固体を、ジクロロメタン中に溶解させ、および、ジクロロメタン中に詰められたシリカのパッド(40-63μ、70g)へ適用した。
【0143】
パッドを、すべてのより速く流れ落ちる1-(ベンジルオキシ)-2,3-ジフルオロベンゼン還元生成物が除去されるまでジクロロメタンで溶出させた。パッドを、次いで酢酸エチルで溶出させたところ、三級アルコールの主要反応生成物が除去された。酢酸エチル溶出液を真空中で蒸発させたところ、淡黄色固体が残った。固体を、40℃にてトルエン(225ml)中に溶解させ、次いでp-トルエンスルホン酸一水和物(0.93g、4.9mmol)を加えた。溶液を、1hの間70℃まで加熱し、室温まで冷却した。反応混合物を、水で洗浄し(3×30ml)、次いで乾燥させ(MgSO4)、および蒸発させてオフホワイトの固体とし、これをメタノール(195ml)から再結晶させたところ、4-(4-ベンジルオキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピランが無色の結晶としてもたらされ、m.p. 103~107℃であった。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 2.40 - 2.55 (2 H, m), 3.92 (2 H, t, J=5.4 Hz), 4.32 (2 H, m), 5.16 (2 H, s), 5.95 - 6.07 (1 H, m), 6.75 (1 H, ddd, J=9.0, 7.4, 1.9 Hz), 6.90 (1 H, td, J=8.4, 2.3 Hz), 7.30 - 7.53 (5 H, m).
13C NMR (100.6 MHz, CDCl3) δ ppm 28.23 (d, J=2.2 Hz), 64.21, 65.53, 71.50, 109.87 (d, J=3.7 Hz), 121.45 (t, J=4.5 Hz), 123.37 (d, J=10.4 Hz), 126.23 (d, J=5.9 Hz), 127.30, 128.17, 128.58, 129.64 (t, J=2.2 Hz), 136.05, 141.79 (dd, J=249.7, 15.6 Hz), 146.89 (dd, J=8.5, 3.5 Hz), 149.10 (dd, J=250.6, 13.2 Hz).
19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -158.23 (d, J=19 Hz), -139.63 (d, J=19 Hz).
【0144】
ステップ3: 2,3-ジフルオロ-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フェノール
【化18】
【0145】
4-(4-ベンジルオキシ-2,3-ジフルオロ-フェニル)-3,6-ジヒドロ-2H-ピラン(105g、34.7mmol)を、超音波処理によってイソプロパノール(210ml)とTHF(31.5ml)との混合物中に溶解させ、次いで、5%Pd/C(0.53g、50%湿潤)上で、5バールの圧力にて18hの間水素化させ、この時点では、さらなる水素は取り込まれなくなる。過剰な水素の放出、脱気および窒素での再充填の後、溶液を、GF/F 0.7μフィルターを通じて濾過させたことで、触媒を除去し、および、濾過物を真空中で濃縮させたところ、2,3-ジフルオロ-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フェノールがオフホワイトとしてもたらされ、および、さらなる精製をせずに直接使用され、m.p. 143~147℃であった。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ ppm 1.53 - 1.77 (4 H, m), 2.85 - 3.03 (1 H, m), 3.43 (2 H, td, J=11.5, 2.6 Hz), 3.83 - 4.01 (2 H, m), 6.73 (1 H, td, J=8.4, 2.0 Hz), 6.90 (1 H, td, J=8.4, 2.2 Hz), 10.14 (1 H, br. s.).
13C NMR (100.6 MHz, DMSO-d6) δ ppm 32.46, 33.77, 67.37, 112.75 (m), 121.31 (dd, J=5.9, 4.5 Hz), 123.98 (dd, J=11.7, 1.5 Hz), 139.81 (d, J=242, 14.7 Hz), 144.76 (dd, J=8.8, 2.9 Hz), 148.90 (dd, J=243, 10.5 Hz).
19F NMR (376 MHz, DMSO-d6) δ ppm -161.89 (d, J=20.5 Hz), -144.54 (d, J=20.5 Hz).
【0146】
ステップ4: 4-[4-(11-ジエトキシホスホリルウンデカオキシ)-2,3-ジフルオロ-フェニル]テトラヒドロピラン
【化19】
【0147】
2,3-ジフルオロ-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フェノール(5.0g、23.3mmol)を、窒素下で攪拌しながらブタノン(65ml)中に溶解させ、次いでジエチル(11-ブロモウンデシル)-ホスホナート(11.3g、30.3mmol)および無水炭酸カリウム325メッシュ(12.9g、93.4mmol)を加えた。混合物を、還流下で18時間加熱した。反応を、30℃まで冷まし、および濾過した。合わせた濾過物を、真空中で蒸発させ、および得られた橙色油(14.3g)を、ジクロロメタン中に詰められた40-63μシリカゲル(140g)で調製されたシリカカラムへ適用した。カラムを、ジクロロメタン中の0~40%の酢酸エチルの増大する勾配で溶出させ、および、生成物が豊富な画分(10~30% 酢酸エチル)を合わせ、および蒸発させて無色油(9.6g)とし、さらなる精製をせずに直接使用した。
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 1.21 - 1.52 (20 H, m), 1.52 - 1.66 (2 H, m), 1.66 - 1.89 (8 H, m), 2.94 - 3.14 (1 H, m), 3.55 (2 H, td, J=11.7, 2.3 Hz), 3.95 - 4.21 (8 H, m), 6.63 - 6.75 (1 H, m), 6.85 (1 H, td, J=8.2, 2.3 Hz).
13C NMR (101 MHz, CDCl3) δ ppm 16.39, 16.45, 22.34 (d, J=5.1 Hz), 25.62 (d, J=140 Hz), 25.81, 29.02, 29.11, 29.24, 29.27, 29.42, 30.45, 30.62, 32.64, 34.12, 61.31 (d, J=5.9 Hz), 68.20, 69.78, 109.47 (d, J=2.9 Hz), 120.41 (t, J=5.1 Hz), 126.12 (d, J=11.7 Hz), 141.40 (dd, J=247, 14.7 Hz), 146.74 (dd, J=8.1, 2.9 Hz), 149.35 (dd, J=246, 10.3 Hz).
19F NMR (376 MHz, CDCl3) δ ppm -159.28 (d, J=20.5 Hz), -143.542 (d, J=20.5 Hz).
31P NMR (162 MHz, CDCl3) δ ppm 32.64.
【0148】
ステップ5: 11-(2,3-ジフルオロ-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フェノキシ)ウンデシルホスホン酸
【化20】
【0149】
4-[4-(11-ジエトキシホスホリルウンデカオキシ)-2,3-ジフルオロ-フェニル]テトラヒドロピラン(9.2g、93.5% w/w、17.0mmol)を、ジクロロメタン(138ml)中に攪拌しながら溶解させ、およびブロモトリメチルシラン(28.1g、182.3mmol)を、周囲温度で10minにわたって加え、次いで終夜攪拌した。混合物を、真空中で蒸発させ、および結果として生じた油を、ジクロロメタン(125ml)およびメタノール(125ml)中に再溶解させ、次いで真空中で再蒸発させて油とした。油を、ジクロロメタン(75ml)およびメタノール(75ml)中に再溶解させ、および次いで、およそ40mlの最終体積まで真空中でゆっくり濃縮させたことでジクロロメタンを除去した。溶液を、次いで氷/アセトン浴中で1時間-15℃まで冷却して、白色沈殿の形成に至った。固体を濾別し、および真空下で50℃にて終夜乾燥させたところ、オフホワイトの固体がもたらされた。固体をTHF(50ml)中に溶解させ、およびヘプタン(50ml)を加えた。
【0150】
溶液を、45℃にて、400mbarで、固体が沈殿し始めるまで、ゆっくりTHFを除去するように真空中で濃縮させた。蒸留を止め、および混合物を、周囲温度で90minの間攪拌させておいてから、固体を真空濾過によって回収し、およびヘプタンで洗浄した(3×10ml)。真空下で50℃にて終夜乾燥させると、11-(2,3-ジフルオロ-4-テトラヒドロピラン-4-イル-フェノキシ)ウンデシルホスホン酸が無色固体としてもたらされ、m.p. 94~98℃である。
1H NMR (400 MHz, THF-d8) δ ppm 1.27 - 1.43 (12 H, m), 1.43 - 1.52 (2 H, m), 1.53 - 1.69 (6 H, m), 1.69 - 1.83 (4 H, m), 3.02 (1 H, tt, J=11.9, 3.8 Hz), 3.46 (2 H, td, J=11.6, 2.1 Hz), 3.95 (2 H, dd, J=11.0, 3.9 Hz), 4.02 (2 H, t, J=6.5 Hz), 6.77 - 6.87 (1 H, m), 6.94 (1 H, td, J=8.3, 2.2 Hz).
13C NMR (101 MHz, THF-d8) δ ppm 23.76, 23.80, 26.92, 27.90 (d, J=142 Hz), 30.19, 30.28, 30.37, 30.50, 30.60 (br.), 31.60, 31.77, 33.84, 35.41, 68.77, 70.39, 110.46 (d, J=2.2 Hz), 121.71 (t, J=5.1 Hz), 127.23 (d, J=13.2 Hz), 142.21 (dd, J=247, 14.7 Hz), 147.93 (dd, J=8.1, 2.9 Hz), 150.31 (dd, J=244, 10.3 Hz).
19F NMR (376 MHz, THF-d8) δ ppm -162.90 (d, J=20.5 Hz), -147.28 (d, J=20.5 Hz).
31P NMR (162 MHz, THF-d8) δ ppm 30.71.
MS (ESネガティブ): 実測値 m/z [M-H]- 447.2108 (28%); C22H34F2O5P- m/z 447.21を要する
【0151】
応用試験
テストチップを、本発明に従い化合物Aから(合成例1)、および比較のために先行技術からの化合物BおよびCから調製した:
【化21】
【0152】
テストチップの調製:
ケイ素チップ(Siegertウェハ基材 ロット19335; 8×8×0.5mm; p-Si/SiO2(~0.5 mm)/SiAlOx(1~2nm)/Al2O3(2nm);酸素プラズマ処理(<0.2 mbar O2、1min、200W)によって状態を整えたものを、THF中の対応するホスホン酸(A、BまたはC)の1mM溶液中へと24hの間浸漬した。チップを、槽から取り出し、窒素下で送風乾燥させ、次いで窒素下で1hの間、120℃にてホットプレート上で加熱した。その後、チップを、3回エタノールで洗浄し、および窒素下で5minの間120℃にてホットプレート上で乾燥させた。
【0153】
水接触角(WCA)の測定
A、BまたはCを用いた試験チップの水接触角は、既知の方法によって決定される。テトラヒドロピラン誘導体Aは、BまたはCよりもはるかに小さい接触角を誘導するということが見出され、これは強く増大した表面エネルギーを示唆する。実際、WCAは典型的な酸化物材料のそれと似ており、標準的なフォトレジスト配合物とよく適合するようになっている。化合物BおよびCの比較が示すとおり、末端アルキル鎖を省略しただけでは、結果はWCAの極めて穏やかな減少のみにとどまる。
【表1】
【0154】
接着試験
SAM改変されたチップ1および2上へと、最初にクロム(30nm)、次いで金(200nm)をスパッタリングした。
次いで、試料を、https://www.astm.org/Standards/D4541.htmにて利用可能であるDIN EN ISO 2409 (ASTM D 3002、ASTM D 3359)に従いASTM D 3359に準ずる「scotch tape adhesion test」に供した: 金属スパッタリングされた試料を、格子カッター(BYK-Gardner Multi-Cut ツール;切断距離1mm)で引掻く。次いでPermacelテープを貼り付け、および再び除去する。化合物7で処理されたテストチップ1は>90%が無傷なままであり、他方、チップ2は、30%のみが無傷である。
【0155】
合成例1と同様にして、以下の化合物が得られる。
式IA-1aで表される化合物
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】

【表2-6】

【表2-7】

【表2-8】

【表2-9】

【表2-10】

【表2-11】

【表2-12】
【0156】
式IA-1bで表される化合物
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】

【表3-4】

【表3-5】

【表3-6】

【表3-7】

【表3-8】

【表3-9】

【表3-10】

【表3-11】

【表3-12】

【表3-13】

【表3-14】

【表3-15】

【表3-16】
【0157】
式IA-2-1~IA-2-7で表される化合物
【表4】
【0158】
代替のアンカリング基を持つ化合物は、例えば以下のとおり先行技術から既知の手順によって同様に得られる:
【化22】
【0159】
参照番号のリスト
10 電子素子
12 ベース基板
14 第1の電極層
16 電極材料
18 誘電材料
20 分子層
22 さらなる電極層
30 電極線
31 回転された電極線
32 非電極エリア
34 電極エリア
100 セル
102 第1の電極
104 (分子層の)一部
106 第2の電極
108 セレクタデバイス
図1
図2a-2e】
図2f-2j】
図2k-2l】
図3
【国際調査報告】