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  • 特表-ポリ(キノリン)膜 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ポリ(キノリン)膜
(51)【国際特許分類】
   B01D 71/62 20060101AFI20240628BHJP
   B01D 69/00 20060101ALI20240628BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20240628BHJP
   C08G 73/06 20060101ALI20240628BHJP
   C08J 9/28 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
B01D71/62
B01D69/00
B01D61/14 500
C08G73/06
C08J9/28 101
C08J9/28 CEZ
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023576355
(86)(22)【出願日】2022-06-14
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 US2022033483
(87)【国際公開番号】W WO2022266136
(87)【国際公開日】2022-12-22
(31)【優先権主張番号】63/210,667
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リー, チーフェン
(72)【発明者】
【氏名】ボンヤディ,シーナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァラナシ, プシュカラ ラオ
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
4J043
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006HA41
4D006HA71
4D006MA03
4D006MA10
4D006MA22
4D006MA25
4D006MA31
4D006MA40
4D006MC57X
4D006NA46
4D006NA52
4D006NA64
4D006PA01
4D006PB12
4D006PB15
4D006PB27
4F074AA74
4F074CB34
4F074CB37
4F074CB45
4F074DA03
4F074DA23
4F074DA43
4J043QB46
4J043RA33
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA61
4J043SB01
4J043TA01
4J043TB01
4J043UA132
4J043UA152
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB151
4J043XA17
4J043ZB13
(57)【要約】
要約すると、本開示は、液体組成物、特にマイクロ電子機器産業で使用される液体組成物から、金属イオン、金属粒状物、および/または有機夾雑物を除去するのに、フィルター材料として有用な特定の膜を提供する。本開示の膜は、ポリ(キノリン)ポリマーで構成される多孔質膜である。有利なことに、ポリ(キノリン)膜は、熱的に安定かつ加水分解的に安定であるため、希塩酸などの酸性材料を使用して、著しい劣化に苦慮することなく、使用の間に洗浄することができる。このポリ(キノリン)ポリマーは、特定の溶媒に可溶型であるように設計することができるため、浸漬キャスト技術によって、対応する多孔質膜の製造が可能となる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(キノリン)ポリマーを含む多孔質膜であって、約40μm~約300μmの厚さを有する、膜。
【請求項2】
エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約400psiのバブルポイントを示す、請求項1に記載の膜。
【請求項3】
約10~約200nmの平均孔径を有する、請求項1または2に記載の膜。
【請求項4】
ポリ(キノリン)ポリマーが、以下の式:
[式中、各Rは、水素、フェニル、置換フェニル、チエニルまたはC~Cアルキル基から独立して選択される]
の部分で構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項5】
ポリ(キノリン)ポリマーが、以下の式:
[式中、各Rは、水素、フェニル、チエニル、置換フェニル、またはC~Cアルキル基から独立して選択される]
の部分で構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項6】
各Rが水素である、請求項4または5に記載の膜。
【請求項7】
1つのRが水素であり、他のRがフェニルである、請求項4または5に記載の膜。
【請求項8】
ポリ(キノリン)ポリマーが、式(III):
[式中、Yは:
a.酸素
b.式:
の二価のケトン部分、
c.式
の二価のスルホン部分、または
d.式
の二価の基から選択され、
各Rは、水素、フェニル、チエニル、置換フェニル、またはC~Cアルキル基から独立して選択され、Rは、C~Cアルキル、またはフッ素原子で1回もしくは複数回置換されたC~Cアルキルから独立して選択される]
の繰り返し単位で構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の膜。
【請求項9】
Rがフェニルである、請求項8に記載の膜。
【請求項10】
Yが、式
の基であり、
各Rはトリフルオロメチルである、請求項8に記載の膜。
【請求項11】
14.2psiで測定した場合、約200秒/500mlより大きく約50,000秒/500ml未満のイソプロパノール流動時間を示し、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約300psiのバブルポイントを示す、請求項1から10のいずれか一項に記載の膜。
【請求項12】
ポリ(キノリン)ポリマーを含む多孔質膜であって、
約40μm~約300μmの厚さ、および
約10nm~約200nmの平均孔径
を有し、前記ポリマーを水混和性溶媒に溶解して溶液を形成し、続いて少なくとも1つの第1の非溶媒を添加し、続いて平坦な表面上にその溶液をキャストし、それによって被覆面を形成し、続いて少なくとも1つの第2の非溶媒に前記被覆面を浸漬し、それによって多孔質膜の形成を達成することによって調製される、膜。
【請求項13】
14.2psiで測定した場合、約200秒/500mlより大きく約50,000秒/500ml未満のイソプロパノール流動時間を示し、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約400psiのバブルポイントを示す、請求項12に記載の膜。
【請求項14】
平坦な表面上に溶液をキャストする前に、溶液をイオン交換樹脂または膜を通して濾過することによって精製する工程をさらに含み、それによって、微量の金属イオン夾雑物を除去する、請求項12または13に記載の膜。
【請求項15】
第1の非溶媒が、イソプロパノールを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の膜。
【請求項16】
第2の非溶媒が、水を含む、請求項12から15のいずれか一項に記載の膜。
【請求項17】
水混和性溶媒が、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、またはテトラヒドロピランから選択される、請求項12から16のいずれか一項に記載の膜。
【請求項18】
水混和性溶媒が、テトラヒドロフランを含む、請求項12から17のいずれか一項に記載の膜。
【請求項19】
1つまたは複数の粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物を、少なくとも1つの粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物を含む液体組成物から除去する方法であって、
(i)液体組成物を、請求項1から18のいずれか一項に記載の膜に通すことと、
(ii)液体組成物中の1つまたは複数の粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物の量を低減し、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む、方法。
【請求項20】
液体組成物が、酢酸n-ブチル、イソプロピルアルコール、酢酸2-エトキシエチル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン、イソペンチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、メチルイソブチルカルビノール、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、およびこれらの組合せから選択される溶媒を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から18のいずれか一項に記載の膜を含む、フィルター。
【請求項22】
第1のフィルター材料および第2のフィルター材料を備え、第1のフィルター材料の出力側表面が第2のフィルター材料の入力側表面と接触し、
第1のフィルター材料が、請求項1から18のいずれか一項に記載の膜を含み、
第2のフィルター材料が、第1のフィルター材料とは異なる、
複合フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般に、膜技術を使用する液体精製の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター製品は、有用な流体の流れから望まれない物質を除去するために使用される、近代産業の不可欠な道具である。フィルターを使用して処理される有用な流体には、製造または処理(例えば、半導体製作)に使用される、水、液体産業用溶媒および処理流体、ならびに医学的または医薬品使用の液体が含まれる。流体から除去される望まれない物質には、粒子、微生物、および溶解した化学種などの、不純物および夾雑物が含まれる。フィルター用途の特定の例には、半導体およびマイクロ電子機器の製造用の液体材料におけるその使用が含まれる。
【0003】
フィルターは、サイズ排除によるか、または物質との化学的および/もしくは物理的相互作用によるなどの多様な異なる方法によって、望まれない物質を除去することができる。一部のフィルターは、フィルターに多孔質構成を提供する構造材料によって定義され、フィルターは、細孔を通過することができない大きさの粒子を捕捉することができる。一部のフィルターは、フィルターの構造材料、またはフィルター上を通り過ぎる物質と結びつきかつ相互作用する、構造材料と結びつく化学的性質の能力によって定義される。例えば、フィルターの化学的特色により、イオン性、配位性、キレート化、または水素結合の相互作用によるなどで、フィルター上を通り過ぎるかまたは通過する流れから、望まれない物質と結びつくことが可能となり、これらの望まれない物質を捕捉する。一部のフィルターは、サイズ排除および化学的相互作用の両方の特色を利用し、濾過される流れから物質を除去することができる。
【0004】
場合によっては、濾過機能を実施するために、フィルターは、通過する流体から望まれない物質を除去する役割を担うフィルター膜を含む。フィルター膜は、必要に応じて、平板シートの形態であってもよく、それは巻かれ(例えば、らせん状)、平坦、ひだ状、または円板状であってもよい。フィルター膜は、あるいは、中空繊維の形態であってもよい。フィルター膜は、濾過される流体がフィルター入口を通って入り、フィルター出口を通過する前にフィルター膜を通過する必要があるように、ハウジング内に収納されるか、または他の方法で支持され得る。
【0005】
溶解したアニオンまたはカチオンなどのイオン性物質を溶液から除去することは、非常に低い濃度のイオン性の夾雑物および粒子がマイクロプロセッサおよび記憶機器の品質および性能に悪影響を与える恐れがある、マイクロ電子工学産業などの多くの産業において重要である。詳細には、機器製作に使用される液体組成物から、金属イオンを含む金属含有物質を除去することが望ましい場合がある。金属含有物質は、マイクロ電子工学製造に使用されるさまざまな種類の液体中で見出され得る。
【0006】
液体組成物から金属含有物質を除去するための、さまざまな未解決の技術的課題が残っている。広範囲のさまざまな種類の液体材料が、マイクロ電子機器処理における処理溶媒、洗浄剤、および他の処理溶液として使用される。ほとんどではないにしてもこれらの材料の多くは、非常に高いレベルの純度を必要とする。一例として、マイクロ電子機器のフォトリソグラフィー処理に使用される液体材料(例えば、溶媒)は、非常に高い純度でなければならない。マイクロ電子機器処理に使用される特定の例の液体には、スピン-オン-ガラス(SOG)技術、下層反射防止コーティング(BARC)法、フォトリソグラフィー、湿式化学食刻法、ならびに化学的機械的研磨、アッシング、および食刻法後の洗浄操作用の処理溶液が含まれる。
【発明の概要】
【0007】
要約すると、本開示は、液体組成物、詳細にはマイクロ電子機器産業で使用される液体組成物から、粒状物、金属イオン、および有機夾雑物を除去するフィルター材料として有用な特定の膜を提供する。本開示の膜は、ポリ(キノリン)ポリマーで構成される多孔質膜である。ポリ(キノリン)ポリマーは、相対的に高い、すなわち約200℃~約400℃のガラス転移温度(T)を有し、優れた熱安定性(すなわち、約300℃~500℃)を有する。有利なことに、ポリ(キノリン)膜は、加水分解的に安定であるため、希塩酸などの酸性洗浄材料を使用して、望まれない劣化に苦慮することなく、使用の間に洗浄することができる。ポリ(キノリン)ポリマーは、特定の溶媒に可溶型であるように設計することができるため、浸漬キャスト技術によって、対応する多孔質膜の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例4の膜の、800倍の倍率における膜横断面の多孔度を示す走査電子顕微鏡写真(SEM)である。
図2】実施例4の膜の、200倍の倍率における膜の表面の多孔度を示すSEMである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、内容により明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、用語「または」は、内容により明確に別段の指示がない限り、一般に、その意味に「および/または」を含んで利用される。
【0010】
用語「約」は、一般に、言及された値と等価と考えられる(例えば、同じ機能または結果を有する)数の範囲を指す。多くの場合、用語「約」は、最も近い有効数字に概数とされた数を含み得る。
【0011】
終点を使用して表現された数値範囲は、その範囲内に包含される全ての数値を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4および5を含む)。
【0012】
フィルター膜は、フィルターの使用、すなわち、フィルターによって実施される濾過の種類に基づいて選択され得る平均孔径を有する多孔質構造で構成され得る。典型的な孔径は、約0.001μm~約10μmなどのミクロンまたはサブミクロンの範囲にある。約0.001μm~約0.05μmの平均孔径を有する膜は、限外濾過膜として分類されることがある。約0.05μm~10μmの間の孔径を有する膜は、ミクロ多孔質膜と表されることがある。
【0013】
ミクロンまたはサブミクロンの範囲の孔径を有するフィルター膜は、または本明細書で簡単に「膜」と表され、ふるい分け機構もしくは非ふるい分け機構によって、またはその両方によるいずれかで、流体の流れから望まれない物質を除去するのに効果的であり得る。ふるい分け機構は、粒子が、フィルター膜の表面における粒子の機械的保持によって、液体の流れから除去される濾過様式であり、粒子の動きに機械的に干渉し、粒子をフィルター内に保持し、フィルターを通る粒子の流れを機械的に妨げるように作用する。典型的には、粒子は、フィルターの細孔より大きくあり得る。「非ふるい分け」濾過機構は、フィルター膜が、フィルター膜を通る流体の流れに含有される懸濁した粒子または溶解した物質を、限定的に機械的ではなく、例えば、粒状物または溶解した不純物が、フィルター表面に静電気的に引きつけられ、保持され、流体の流れから除去される静電気的機構を含む様式で保持する濾過手法であり;粒子は、溶解していてもよく、またはフィルター媒体の細孔より小さい粒度を有する固体であってもよい。
【0014】
本開示のフィルター膜および方法の特定の実施形態では、フィルターには、特定のポリ(キノリン)類で構成されるポリマーフィルムの形態の多孔質フィルター膜が含まれる。本明細書で使用される場合、「多孔質フィルター膜」は、膜の一表面から膜の反対側の表面へと伸びる多孔質(例えば、ミクロ多孔質)相互連結通路を含有する多孔質ポリマー固体である。通路は、一般に、濾過される液体がそれを通って通過しなければならない曲がりくねったトンネルまたは細い通路を提供する。
【0015】
本開示のフィルター膜および方法はまた、液体組成物内に存在する、細孔より大きい任意の粒子(例えば、金属含有粒子)が、ミクロ多孔質膜に入ることを妨げるように機能し得るか、またはミクロ多孔質膜の細孔内に粒子を捕捉するように機能し得る(すなわち、ここで粒子はふるい分け型濾過機構によって除去される)。
【0016】
精製の必要がある液体組成物は、本開示のフィルター膜を通過し、金属夾雑物および/または有機夾雑物が、所望の用途に好適なレベルまで効果的に除去され得る。本開示のフィルター材料および方法を使用することができる1つの用途は、半導体材料を食刻および洗浄するために使用される溶液からの金属の精製のためなどの半導体製造である。その精製能力の選択性を考慮すると、本開示のフィルター膜および方法は、一般にフォトリソグラフィーにおいて特に有用である。有利なことに、本開示のフィルター膜および方法は、金属粒状物、イオン性および/または有機夾雑物などの望まれない量の粒状物質を、そのような流体から効果的に除去することが期待される。
【0017】
一実施形態では、本開示のフィルター材料および方法を使用して除去される金属夾雑物には、Li、B、Na、K、Mg、Al、Ca、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Mo、Cd、Sn、Ba、およびPbイオンが、個々にまたはその2種以上の組合せのいずれかで含まれる。
【0018】
一実施形態では、除去される金属イオンは、鉄、クロム、マンガン、アルミニウム、およびニッケルのカチオンから選択される。
【0019】
したがって、第1の態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーを含む多孔質膜であって、約40μm~約300μmの厚さを有する、多孔質膜を提供する。特定の実施形態では、膜は、約10nm~約200nm、または約10nm~約100nmの平均孔径を有する。典型的には、ポリ(キノリン)ポリマーは、約20,000~約200,000ダルトンの数平均分子量(M)を有する。特定の実施形態では、本開示のポリ(キノリン)ポリマーは、約250℃~約350℃のガラス転移温度を有する。
【0020】
一実施形態では、ポリ(キノリン)ポリマーは、式(I):
[式中、各Rは、水素、フェニル、置換フェニル、チエニルまたはC~Cアルキル基から独立して選択される]
の部分で構成される。別の実施形態では、ポリ(キノリン)ポリマーは、式(II):
[式中、各Rは、水素、フェニル、チエニル(すなわち、チオフェン基)、置換フェニル、またはC~Cアルキル基から独立して選択される]
の部分で構成される。
【0021】
別の実施形態では、ポリ(キノリン)ポリマーは、式(III)の繰り返し単位:
(III)
[式中、Yは、
a.酸素、
b.式:
の二価のケトン部分、
c.式:
の二価のスルホン部分、または
d.式
の二価の基
であり、
各Rは、水素、フェニル、チエニル(すなわち、チオフェン基)、置換フェニル、またはC~Cアルキル基から独立して選択され、各Rは、C~Cアルキル、またはフッ素原子で1回もしくは複数回置換されたC~Cアルキルから独立して選択される]
で構成される。
【0022】
用語「置換フェニル」は、本明細書で使用される場合、ハロゲン;ヒドロキシ;ニトロ;C~Cアルコキシ;C~Cアルキル;およびハロゲン、ヒドロキシ、またはニトロから選択される基で1回または複数回置換されたC~Cアルキルから選択される1つまたは複数の置換基を有するフェニル基を指す。
【0023】
一実施形態では、Rはフェニルである。別の実施形態では、-Y-は、式
の二価の基であり、
それぞれのRは、トリフルオロメチルである。
【0024】
特定の実施形態では、フィルター膜の材料は、キレート化またはイオン交換の機能性の付与に好適な化学的性質を有し得る。この機能性は、膜に適用され得るコーティングを介して導入され得て、そのようなコーティングは、不純物の除去のためのキレート化および/またはイオン交換の機構に好適な官能基を持つ。あるいは、上記の式(I)、(II)、および(III)における「R」基は、膜に対してコーティングまたは他の表面処理を適用することなく、非ふるい分け精製機構に利用可能であり得る、イオン交換精製法に使用されるスルホン酸基または他の基などのこのような官能基を含有するように変化させることができる。非ふるい分け濾過の目的のために、ポリマー膜表面に、所望の官能基をグラフトまたは他の方法で付与するさまざまな方法論の例は、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第10,792,620号、および本明細書に参照により組み込まれる米国特許公開第2020/0406201号;同第2020/0254398号;同第2020/0206691号;同第2019/0329185号;および同第2018/0185835号に見出すことができる。
【0025】
本開示に有用なポリ(キノリン類)は、公知の合成方法論によって調製することができる。この点に関して、本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,786,071号;同第5,247,050号;同第5,648,448号;および同第6,462,148号、ならびにHong Maら、Chem.Mater.1999年、11、2218~2225頁を参照されたい。
【0026】
一例では、上記式(III)で明示された本開示のポリ(キノリン類)は、式中、各Rはフェニルであり、Yは式
の基であり、各Rはトリフルオロメチルであり、すなわち、式:
の繰り返し単位で構成されるポリマーは、
式(A)のモノマー:
および式(B)のモノマー:
を、昇温状態で、ジフェニルホスフェートの存在下で、m-クレゾールなどの溶媒中で共重合することによって調製することができる。
【0027】
式(A)のモノマーは、水酸化ナトリウムの存在下で、フェニルアセトニトリルと4,4’-ジニトロフェニルエーテルとの反応から2工程で調製され、式(C)の中間体:
を形成することができる。
【0028】
式(C)の化合物は、次に、例えばPd/Cなどの触媒の存在下で、テトラヒドロフラン中で水素化され、上記式(A)の化合物を提供することができる。
【0029】
式(B)の化合物、すなわち、2,2-ジ(4-アセチルフェニル)ヘキサフルオロプロパンは、2,2-ジ(4-カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンとメチルリチウムとをテトラヒドロフラン中で反応させ、続いて塩酸を用いて加水分解することによって調製することができる。
【0030】
上述のように、本明細書に開示される膜は、浸漬キャスト法によって調製され得る。この方法では、ポリ(キノリン)は、水混和性の溶媒に溶解される。この目的のために、特定のポリ(キノリン)に好適な溶媒は、Hansen溶解度パラメータ分析を使用して決定され得るか、または経験的に試行錯誤によって決定され得る。特定の実施形態では、そのような溶媒には、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、またはテトラヒドロピランなどの水混和性溶媒が含まれる。ポリマー非溶媒は、一般的にポリマー溶液に添加され、その相分離挙動を変化させ、所望の膜の形態構造をもたらす、別の種類の材料である。水および特定の水混和性有機材料などの液体は、この膜形成において、単独で、非溶媒の組合せとして、または連続して利用されて、非溶媒として使用することができる。いったん溶液となると、これらのポリマー溶液を、フィルムにキャストし、非溶媒/凝固剤に浸漬し、相分離を誘導して、本開示の多孔質膜を形成することができる。
【0031】
一実施形態では、水混和性非溶媒材料には、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノールなどのC~C10アルカノール類が含まれる。さらに、非溶媒は、グリコール類およびグリコールエーテル類、C~C10ジオール類およびC~C10トリオール類、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチルベンゾエート、アセトニトリル、アセトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ブチリルラクトン、ブチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、プロピレングリコールn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルヘキサエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル二塩基エステル、グリセリンカーボネート、N-ホルミルモルホリン、トリエチルホスフェート、およびこれらの組合せから選択され得る。
【0032】
非溶媒(複数可)の添加では、膜(すなわち、フィルム)形態構造の形成は、多孔度、平均孔径、同様に孔径分布に関して、所望の微細構造の決定において考慮される。したがって、所望の形態構造は、非溶媒(複数可)の選択、濃度、温度などによる両方を介して提供される。一実施形態では、ポリ(キノリン)ポリマーを、テトラヒドロフランに溶解し、イソプロパノールとブレンドし、フィルムにキャストし、次に水に浸漬して、この相分離および多孔質フィルター膜(すなわち、フィルム)の形成を誘導する。
【0033】
したがって、さらなる態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーを含む多孔質膜であって、
約40μm~約300μmの厚さ、
約10nm~約200nmの平均孔径
を有し、ポリ(キノリン)ポリマーを水混和性溶媒に溶解して溶液を形成し、続いて少なくとも1つの第1の非溶媒を添加し、続いて平坦な表面上にその溶液をキャストし、それによって被覆面を形成し、続いて少なくとも1つの第2の非溶媒に被覆面を浸漬し、それによって多孔質膜の形成を達成することによって調製される、膜を提供する。
【0034】
この態様の一実施形態では、膜は、14.2psiで測定した場合、約200秒/500mlより大きく約50,000秒/500ml未満のイソプロパノール流動時間を示し、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約400psiのバブルポイントを示す。
【0035】
別の実施形態では、バブルポイントは、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約180psiである。
【0036】
一実施形態では、第1の非溶媒はイソプロパノールであり、第2の非溶媒は水である。
【0037】
別の実施形態では、上で言及したポリ(キノリン)の溶液は、ポリ(キノリン)出発物質内に取り込まれる場合がある微量の金属イオンを除去するために、イオン交換樹脂または膜を通して濾過が施されてもよい。例えば、ポリ(キノリン)のテトラヒドロフラン溶液は、本開示の膜の形成前に、イオン交換膜またはイオン交換樹脂ビーズ含有のカラムを通過させて、微量の金属イオンを除去してもよい。
【0038】
本明細書で使用される場合、「フィルター」は、フィルター膜を含む構造を有する物品を指す。
【0039】
一部の実施形態では、本開示のフィルターは、複合フィルター配置を含む。例えば、複合配置を有するフィルターは、2種以上のフィルター物品などの2種以上のフィルター材料を備え得る。例えば、フィルターは、本開示の膜(複数可)を含む第1の多孔質ポリマー膜と、本開示の膜(複数可)を含まないか、または何らかの点で本開示の膜(複数可)とは異なる第2のフィルター材料とを含み得る。第2のフィルター材料はまた、多孔質膜の形態であってもよく、または非-多孔質形態を有するか、または織材料もしくは不織材料などの他のフィルター材料を有するなどのように異なってもよい。第2のフィルター材料は、第1の膜と同じかまたは異なるポリマー材料で作製され得る。
【0040】
したがって、別の態様では、本開示は:
第1のフィルター材料および第2のフィルター材料を備え、第1のフィルター材料の出力側表面(output facing surface)は第2のフィルター材料の入力側表面(input facing surface)と接触し、
第1のフィルター材料は、本明細書に明示される本開示の膜を含み;
第2のフィルター材料は、第1のフィルター材料とは異なる、複合フィルターを提供する。
【0041】
上述のように、フィルター膜は、有機溶媒などの液体組成物から、粒状物質(金属粒子など)、および金属イオン、または有機夾雑物を除去するために使用することができる。本明細書に記載のフィルター膜を使用して濾過され得る、フォトリソグラフィーに使用されるある特定の非限定的な溶媒の例には:酢酸n-ブチル(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、酢酸2-エトキシエチル(2EEA)、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン、イソペンチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、およびプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とPGMEAの混合溶液(7:3)(すなわち、OK73溶媒)27.7mN/mの混合比表面張力)が含まれる。
【0042】
例えば、一部の実施様式では、溶媒は、目的とする用途に所望されるより高い量の、金属イオンおよび/または金属含有不純物(すなわち、粒状物)、およびまたは有機夾雑物を有する、洗浄溶媒、またはリソグラフィーにおけるレジスト剥離用途、集積回路の形成のための溶媒などが得られる場合がある。例えば、金属不純物は、溶媒中に総量でppmまたはppbのレベルで存在し得る。次に、溶媒は、本開示のフィルター膜を通過して、金属夾雑物を除去し、出発溶媒中の金属量より低い金属の濃度または量を有する濾過溶媒を提供する。特定の実施様式では、本開示のフィルター膜は、約25%(wt)以上、約30%(wt)以上、約35%(wt)以上、約40%(wt)以上、約45%(wt)以上、約50%(wt)以上、約55%(wt)以上、約60%(wt)以上、約65%(wt)以上、約70%(wt)以上、約75%(wt)以上、約80%(wt)以上、約85%(wt)以上、約90%(wt)以上、または約95%(wt)以上の量の任意の1つまたは複数の金属を、出発溶媒から除去することができる。
【0043】
金属夾雑物を除去するために処理される溶媒は、流体流からの金属夾雑物の除去を高めるなどの所望の条件下でフィルターを通過し得る。一部の実施様式では、溶媒は、約120℃以下、80℃以下、または40℃以下の温度でフィルターを通過する。
【0044】
本開示のフィルター膜を通る溶媒の通過は、特定の流速に限定されない。
【0045】
本明細書に記載の多孔質ポリマーのフィルター膜を参照すると、そのような膜は、孔径、バブルポイント、および多孔度を含む物理的特色によって特徴付けることができる。この点に関して、多孔質ポリマーのフィルター膜は、フィルター膜が、フィルター膜としての性能に効果的であることを可能にする任意の孔径を有し得て、例えば、本明細書に記載のように、ミクロ多孔質フィルター膜または限外濾過膜と考えられる場合もある大きさの細孔(平均孔径)を含む。特定の実施形態では、多孔質膜は、約10nm~約200nm、または約10nm~約100nmの範囲の平均孔径を有し得て、孔径は:除去される不純物の粒度または種類、圧力および圧力降下の要件、ならびにフィルターによって処理される液体の粘度の要件を含む、1つまたは複数の要因に基づいて選択される。孔径は、多孔質材料の平均孔径として報告されることが多く、これは、水銀圧入法(MP)、走査電子顕微鏡(SEM)、液体置換法(LLDP)、または原子間力顕微鏡(AFM)によるなどの公知の技術によって測定することができる。
【0046】
バブルポイントもまた、多孔質膜の公知の特色である。バブルポイント試験法によって、多孔質ポリマーのフィルター膜の試料を公知の表面張力を有する液体に浸漬して濡らし、試料の一片面にガス圧が印可される。ガス圧を徐々に増加させる。ガスが試料を通って流れる最小圧力が、バブルポイントと呼ばれる。多孔質材料のバブルポイントを決定するために、多孔質材料の試料を、エトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)に、20~25℃(例えば、22℃)の温度で浸漬して濡らす。圧搾空気を使用することによって、ガス圧が試料の一片面(より大きい孔径を有する膜試料の片面)に印可され、ガス圧を徐々に増加させる。膜が非対称である場合、ガス圧は、より大きい孔径を有する膜試料の片面に印可される。本明細書で提供される全てのバブルポイント値は、上述の手順を使用して測定され、別段記述されない限り、初期バブルポイントである。上述の手順を使用して測定された、本記載により有用なまたは好ましい多孔質ポリマーのフィルター膜の有用なバブルポイントの例は、約5~約400psi、約5~約350psi、約5~約300psi、約5~約250psi、約5~約225psi、約5~約200psi、約5~約180psi、約5~約150psi、約30~約400psi、約30~約350psi、約30~約300psi、約30~約250psi、約30~約225psi、約30~約200psi、約30~約180psi、約30~約150psi、約50~約400psi、約50~約350psi、約50~約300psi、約50~約250psi、約50~約225psi、約50~約200psi、約50~約180psiの範囲、ならびにその間の全ての範囲および副範囲であり得る。記載された多孔質ポリマーフィルター層は、多孔質ポリマーフィルター層が、本明細書に記載のように効果的であることを可能にする任意の多孔度を有し得る。例示の多孔質ポリマーフィルター層は、相対的に高い多孔度、例えば少なくとも60、70または80パーセントの多孔度を有し得る。本明細書で使用される場合、多孔質体の技術分野において、多孔質体の「多孔度」(空隙率と呼ばれる場合もある)は、本体の総体積のパーセントとしての、本体中の空隙(すなわち「空の」)の場所の尺度であり、本体の総体積に対する本体の空隙体積の比率として算出される。ゼロパーセント多孔度を有する本体は、完全に固体である。
【0047】
有利なことに、バブルポイントおよびIPA流動時間(孔径および相互結合性、すなわち、形態構造によって影響を受ける)のバランスは、所望の全般的性能に対して最適化される。
【0048】
記載された多孔質ポリマーのフィルター膜は、任意の有用な厚さ、例えば、約40μm~約300μm、約80μm~約250μm、または約120μm~約200μm、または約140μm~180μmの範囲の厚さを有するシートまたは中空繊維の形態であり得る。
【0049】
特定の実施形態では、本開示の膜は非対称である。
【0050】
本明細書で報告された膜イソプロパノール(IPA)流動時間は、500mlのイソプロピルアルコール流体が、13.8cmの有効表面積を有する47mmの膜ディスクを有する膜を、14.2psiで、21℃の温度において通過するのにかかる時間を測定することによって決定される。
【0051】
記載されたフィルター膜は、濾過システムで使用される多層フィルターアセンブリまたはフィルターカートリッジなどの、より大きいフィルター構造内に含有され得る。濾過システムは、フィルター膜を、例えば多層フィルターアセンブリの一部としてまたはフィルターカートリッジの一部として、フィルターハウジング中に配置して、少なくとも一部の液体化学物質の流れがフィルター膜を通過するように、フィルター膜を液体化学物質の流動路に露出させ、その結果、フィルター膜は、液体化学物質からある量の不純物または夾雑物を除去する。多層フィルターアセンブリまたはフィルターカートリッジの構造には、フィルターアセンブリまたはフィルターカートリッジ内でフィルター膜を支持し、流体が、フィルター入口から流入し、膜(フィルター層を含む)を通って、フィルター出口を通り、それによってフィルターを通過する場合にフィルター膜を通過するようにする、1つまたは複数のさまざまな付加的な材料および構造が含まれ得る。上述のように、フィルターアセンブリまたはフィルターカートリッジによって支持されたフィルター膜は、任意の有用な形状、例えば、中でも、プリーツ状円筒、円筒型パッド、1つまたは複数の非-プリーツ状(平坦)円筒型シート、プリーツ状シートであってもよい。
【0052】
加えて、記載されたフィルター膜は、ある圧力において、膜の単位面積を通過する液体の体積流量として定義される、膜流束によって特徴付けることができる。膜流束は、特定の膜面積を有する膜フィルター機器が、特定の用途に必要とされる液体の流速を供給できるように十分に高くなければならない。膜の流動特徴はまた、膜流動時間によって測定することもでき、これは液体流に対する膜抵抗と考えることができ、500mlの液体の流れが、13.8cmの有効表面積を有する47mmの膜ディスクを、14.2psiの圧力で、21℃において通過するのに必要とされる時間として定義される。本明細書に記載のフィルター膜は、特定の実施形態では、例えば、相対的に高いバブルポイントと組み合わせて、相対的に低い流動時間を有し得て、良好な濾過性能(例えば、粒子保持によって測定される)を示す。一部の実施形態では、イソプロパノール流動時間は、14.2psiで測定した場合、約200秒/500mLより大きい。他の実施形態では、イソプロパノール流動時間は、他の実施形態では、イソプロパノール流動時間は、14.2psiで測定した場合、約200秒/500mLより大きく約50,000秒/500mL未満、約200秒/500mLより大きく約20,000秒/500mL未満、約200秒/500mLより大きく約15,000秒/500mL未満、約200秒/500mLより大きく約8,000秒/500mL未満、約200秒/500mLより大きく約1,000秒/500mL未満、約500秒/500mLより大きく約50,000秒/500mL未満、約500秒/500mLより大きく約20,000秒/500mL未満、約500秒/500mLより大きく約15,000秒/500mL未満、約200秒/500mLより大きく約8,000秒/500mL未満、約500秒/500mLより大きく約1,000秒/500mL未満、約1,000秒/500mLより大きく約50,000秒/500mL未満、約1,000秒/500mLより大きく約20,000秒/500mL未満、約1,000秒/500mLより大きく約15,000秒/500mL未満、約200秒/500mLより約8,000秒/500mL未満、ならびにその間の任意の範囲および副範囲である。
【0053】
したがって、さらなる態様では、本開示は、1つまたは複数の粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物を、液体組成物から除去する方法であって、前記液体組成物は、少なくとも1つの粒状物質および/または金属イオンを含み:
(i)液体組成物を、本開示の膜を通過させることと、
(ii)液体組成物中の1つまたは複数の粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物の量を低減し、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む、方法を提供する。
【実施例
【0054】
実施例1
5,5’-オキシビス(フェニル-2,1-ベンゾイソオキサゾール)(2a):
氷浴中の、120mLの無水メタノールおよび340mLのテトラヒドロフラン(THF)中の水酸化ナトリウム(21.60g、0.54mol)の激しく撹拌した溶液に、フェニルアセトニトリル(27.4mL、29.70g、0.20mol)を滴下添加した。次に、4,4’-ジニトロジフェニルエーテル(13.00g、0.05mol)を、4回に等分してゆっくり添加し、混合物を氷浴中で5分間撹拌した。得られた暗緑色のスラリーを、還流温度で20時間加熱した。氷浴中で冷却した後、得られた暗色の沈殿物を濾過し、冷メタノールで、メタノール洗浄液が透明になるまで洗浄して、黄色粉末(12.60g、54%)を得た。
【0055】
実施例2
4,4’-ジアミノ-3,3’-ジ(ベンゾイル)ジフェニルエーテル(2)
合計0.56gの粉末炭上の10%パラジウムを、35mLの乾燥THFおよび1.0mLのトリエチルアミン中の上記式(C)の化合物(4.00g、8.60mmol)の懸濁液に添加した。懸濁液を水素ガスでフラッシュし、水素雰囲気下、室温で27時間撹拌した。反応混合物に、10mLのTHF中の0.28gの粉末炭上の10%パラジウムをさらに添加し、水素化をさらに14時間継続した。触媒を濾過によって除去し、溶媒をロータリーエバポレーションによって減圧下で除去した。得られた油状物を、ヘキサン/酢酸エチル(1:1)を溶離液として用いて、シリカゲル充填カラムを通して精製し、黄色結晶(2.80g、70%)を得た。
【0056】
実施例3
代表的なポリ(キノリン)ポリマーの合成
上記式(A)の化合物(2.00mmol)、上記式(B)の化合物(2.00mmol)、ジフェニルホスフェート(DPP)(12.51g、50.0mmol)、および新しく蒸留したm-クレゾール(2.40mL、23.0mmol)の混合物を、三つ口フラスコに入れた。撹拌しながら、反応混合物を、窒素で約20分間フラッシュし、次に、油浴中で、室温から135~140℃まで約30分間加熱した。この温度で48時間、窒素雰囲気下で維持した。
【0057】
冷却した後、得られた粘性溶液を、10%v/vのトリエチルアミンを含有するメタノール400mLの撹拌した溶液に滴下添加した。沈殿したポリマーを、30mLのクロロホルムまたはテトラヒドロフランに再溶解し、10%v/vのトリエチルアミンを含有するメタノール400mLの撹拌した溶液にゆっくり添加することによって再沈殿させた。ポリマーを吸引濾過によって収集し、ソックスレー抽出器で、10%v/vのトリエチルアミンを含有するメタノール溶液を用いて24時間連続抽出し、次に、真空下、100℃で24時間乾燥して、灰色がかった白色のポリマーを96%収率(1.51g)で得た。
【0058】
実施例4
フィルター膜の調製
全般に実施例3の手法で調製した、ポリ(キノリン)(PQ)ポリマーの粉末形態における6.8gの試料を、50gのテトラヒドロフラン(THF)溶媒に、オーバーヘッド撹拌器による撹拌下で添加した。ポリマーが十分に溶解した後、15.5gのイソプロパノール(IPA)を、非溶媒として溶液に添加した。ポリマー溶液の薄いフィルムを、ガラス上におよそ150~200ミクロンの厚さでキャストし、続いてそれを水浴に室温で浸漬することによって、PQ膜を作製した。形成された膜を、室温で24時間乾燥させた。次に、膜のIPA流動時間およびバブルポイントを測定し、IPA流動時間およびバブルポイントの結果を以下の表に示す。
【0059】
態様
第1の態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーを含む多孔質膜であって、約40μm~約300μmの厚さを有する、多孔質膜を提供する。
【0060】
第2の態様では、本開示は、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約400psiのバブルポイントを示す、第1の態様の膜を提供する。
【0061】
第3の態様では、本開示は、約10~約200nmの平均孔径を有する、第1または第2の態様の膜を提供する。
【0062】
第4の態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーは、以下の式:
[式中、各Rは、水素、フェニル、置換フェニル、チエニルまたはC~Cアルキル基から独立して選択される]
の部分で構成される、第1から第3の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0063】
第5の態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーは、以下の式の部分:
[式中、各Rは、水素、フェニル、チエニル、置換フェニル、またはC~Cアルキル基から独立して選択される]
で構成される、第1から第4の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0064】
第6の態様では、本開示は、各Rは水素である、第5または第6の態様の膜を提供する。
【0065】
第7の態様では、本開示は、1つのRは水素であり、他のRはフェニルである、第5または第6の態様の膜を提供する。
【0066】
第8の態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーは、式(III):
(III)
[式中、Yは:
a.酸素、
b.式:
の二価のケトン部分、
c.式
の二価のスルホン部分、または
d.式
の二価の基
から選択され、
各Rは、水素、フェニル、チエニル、置換フェニル、またはC~Cアルキル基から独立して選択され、Rは、C~Cアルキル、またはフッ素原子で1回もしくは複数回置換されたC~Cアルキルから独立して選択される]
の繰り返し単位で構成される、第1から第7の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0067】
第9の態様では、本開示は、Rはフェニルである、第8の態様の膜を提供する。
【0068】
第10の態様では、本開示は、Yは、式
の基であり、各Rはトリフルオロメチルである、第8または第9の態様の膜を提供する。
【0069】
第11の態様では、本開示は、14.2psiで測定した場合、約200秒/500mlより大きく約50,000秒/500ml未満のイソプロパノール流動時間を示し、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約300psiのバブルポイントを示す、第1から第10の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0070】
第12の態様では、本開示は、ポリ(キノリン)ポリマーを含む多孔質膜であって、
約40μm~約300μmの厚さ、および
約10nm~約200nmの平均孔径
を有し、ポリマーを水混和性溶媒に溶解して溶液を形成し、続いて少なくとも1つの第1の非溶媒を添加し、続いて平坦な表面上にその溶液をキャストし、それによって被覆面を形成し、続いて少なくとも1つの第2の非溶媒に被覆面を浸漬し、それによって多孔質膜の形成を達成することによって調製される、膜を提供する。
【0071】
第13の態様では、本開示は、14.2psiで測定した場合、約200秒/500mlより大きく約50,000秒/500ml未満のイソプロパノール流動時間を示し、エトキシノナフルオロブタンHFE7200を使用して約22℃の温度で測定した場合、約5~約400psiのバブルポイントを示す、第12の態様の膜を提供する。
【0072】
第14の態様では、本開示は、平坦な表面上に溶液をキャストする前に、溶液をイオン交換樹脂または膜を通して濾過することによって精製する工程をさらに含み、それによって、微量の金属イオン夾雑物を除去する、第12または第13の態様の膜を提供する。
【0073】
第15の態様では、本開示は、第1の非溶媒はイソプロパノールを含む、第12から第14の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0074】
第16の態様では、本開示は、第2の非溶媒は水を含む、第12から第15の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0075】
第17の態様では、本開示は、水混和性溶媒は、テトラヒドロフラン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、またはテトラヒドロピランから選択される、第12から第16の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0076】
第18の態様では、本開示は、水混和性溶媒はテトラヒドロフランを含む、第12から第17の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0077】
第19の態様では、本開示は、1つまたは複数の粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物を液体組成物から除去する方法であって、前記液体組成物は、少なくとも1つの粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物を含み:
(i)液体組成物を、請求項1から18のいずれか一項に記載の膜を通過させることと、
(ii)液体組成物中の1つまたは複数の粒状物質および/または金属イオンおよび/または有機夾雑物の量を低減し、それによって精製された液体組成物を提供することと
を含む、方法を提供する。
【0078】
第20の態様では、本開示は、液体組成物は、酢酸n-ブチル、イソプロピルアルコール、酢酸2-エトキシエチル、シクロヘキサノン、乳酸エチル、ガンマブチロラクトン、イソペンチルエーテル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、メチルイソブチルカルビノール、メチルイソブチルケトン、酢酸イソアミル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、およびこれらの組合せから選択される溶媒を含む、第19の態様の方法を提供する。
【0079】
第21の態様では、本開示は、第1から第18の態様のいずれか1つの膜を含むフィルターを提供する。
【0080】
第22の態様では、本開示は:
第1のフィルター材料および第2のフィルター材料を備え、第1のフィルター材料の出力側表面は第2のフィルター材料の入力側表面と接触し、
第1のフィルター材料は、請求項1から18のいずれか一項に記載の膜を含み、
第2のフィルター材料は、第1のフィルター材料とは異なる、複合フィルターを提供する。
【0081】
このように、本開示のいくつかの例示的な実施形態を記載してきたが、当業者には、本明細書に添付した特許請求の範囲の内で、さらに他の実施形態が作成され、使用され得ることが容易に理解されるであろう。本文書に包含される本開示の多くの利点は、前述の記載に明示されてきた。しかしながら、本開示は、多くの点で、単に例示的なものであることが理解されよう。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現される原語において定義される。
図1
図2
【国際調査報告】