(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池用のカソード、及び当該カソードの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/131 20100101AFI20240628BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240628BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240628BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240628BHJP
H01M 4/1391 20100101ALI20240628BHJP
H01M 50/437 20210101ALI20240628BHJP
H01M 50/44 20210101ALI20240628BHJP
【FI】
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/1391
H01M50/437
H01M50/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023577882
(86)(22)【出願日】2022-06-07
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022065363
(87)【国際公開番号】W WO2022263226
(87)【国際公開日】2022-12-22
(32)【優先日】2021-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ゾンマー,ハイノ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シヤオハン
(72)【発明者】
【氏名】ガスタイガー,フーベルト
(72)【発明者】
【氏名】ハルトマン,ロウイス
【テーマコード(参考)】
5H021
5H050
【Fターム(参考)】
5H021CC01
5H021EE28
5H050AA07
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA12
5H050EA23
5H050FA17
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)粒子状のSiO2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を含む塊を含有するカソード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)粒子状のSiO
2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を含む塊を含有するカソードであって、
前記塊が集電体上にコーティングされている、カソード。
【請求項2】
前記SiO
2が、5~100nmの範囲の平均粒径(D50)を有する、請求項1に記載のカソード。
【請求項3】
(1)80~95質量%の範囲のカソード活物質、
(2)1~10質量%の範囲の粒子状のSiO
2、
(3)1~10質量%の範囲の導電状態の炭素、
(4)1~5質量%の範囲のバインダーポリマー、
を含み、
パーセンテージが、(1)、(2)、(3)及び(4)の合計に基づくものである、請求項1又は2に記載のカソード。
【請求項4】
前記SiO
2が、噴霧乾燥シリカ及びヒュームドシリカから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項5】
前記カソード活物質が、組成LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項6】
前記カソード活物質が、組成Li
1+xTM
1-xO
2を有し、ここで、xが0.1~0.35の範囲であり、TMが、一般式(I)の元素の組み合わせである、
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
1
d (I)
(式中、aは、0.20~0.40の範囲であり、
bは、ゼロ~0.20の範囲であり、
cは、0.60~0.70の範囲であり、
dは、ゼロ~0.02の範囲であり、
M
1は、Al、Ti、Zr、W、Mo、Mg、及びNbから選択され、
a+b+c=1である)、請求項1から4のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項7】
a>bである、請求項6に記載のカソード。
【請求項8】
(A)請求項1から7のいずれか一項に記載のカソード、
を含有する、電気化学セル。
【請求項9】
(B)ガラス繊維を含むセパレータ、
をさらに含む、請求項8に記載の電気化学セル。
【請求項10】
以下の工程:
(a)有機溶媒又は水の存在下で、
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)粒子状のSiO
2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を組み合わせる工程と、
(b)工程(a)からの混合物を集電体に適用する工程と、
(c)工程(a)からの水又は有機溶媒を除去する工程と
を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のカソードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)粒子状のSiO2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を含む塊(mass)を含有するカソードに関する。
【0002】
さらに、本発明は、特定のカソードを含有する電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム化した遷移金属酸化物は、現在、リチウムイオン電池の電極活物質として使用されている。充電密度、比エネルギーなどの特性だけでなく、リチウムイオン電池の寿命又は適用性に悪影響を及ぼすサイクル寿命の低下及び容量損失などの別の特性も向上させるために、過去数年間にわたって広範な研究開発が行われてきた。製造方法を改善するために、さらなる努力が行われている。
【0004】
現今議論されている多くの電極活物質は、リチウム化ニッケル-コバルト-マンガン酸化物(「NCM材料」)又はリチウム化ニッケル-コバルト-アルミニウム酸化物(「NCA材料」)のタイプのものである。
【0005】
リチウムイオン電池のためのカソード材料の典型的な製造方法において、まず、遷移金属を炭酸塩、酸化物として、又は好ましくは(オキシ)水酸化物として共沈させることにより、いわゆる前駆体を形成する。次に、この前駆体を、リチウム化合物、例えばLiOH、Li2O又はLi2CO3(これらに限定されるものではない)と混合して、高温で焼成(か焼)する。リチウム化合物(単数又は複数)は、水和物(単数又は複数)として、又は脱水形態で使用することができる。一般に前駆体の熱処理又は加熱処理とも称される焼成又はか焼は通常、600~1000℃の範囲の温度で行われる。水酸化物又は炭酸塩が前駆体として使用される場合、水又は二酸化炭素の除去が最初に行われ、次いでリチウム化反応が行われる。熱処理はオーブン又はキルンの加熱ゾーンで行われる。
【0006】
カソード活物質の様々な特性、例えばエネルギー密度、容量低下などの充放電性能などの改善について多くの研究が行われてきた。しかしながら、多くのカソード活物質は、限られたサイクル寿命及び電圧低下という問題を有する。これは、特に、マンガンの溶出が観察される多くのMnリッチな(Mnの量が多い)カソード活物質に当てはまる。マンガンが、その後、アノードを汚染する可能性がある。さらに、サイクル中のガス発生は、マンガンリッチなカソードの限られたサイクル寿命に起因するもう1つの観察結果である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、高いエネルギー密度保持率を有し、かつ、マンガン溶出による容量低下の傾向が低減された電気化学セルを提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、以下で本発明のカソードとも呼ばれる、冒頭で定義されたカソードが見出された。本発明のカソードは、
(1)以下でカソード活物質(1)とも呼ばれるカソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)以下でシリカ(2)とも呼ばれる、粒子状のSiO2、
(3)以下で炭素(3)とも呼ばれる、導電状態の炭素、及び
(4)以下でバインダー(4)とも呼ばれる、バインダーポリマー、
を含む塊を含有する。バインダー(4)は、単一のポリマー又は少なくとも2種のポリマーのブレンドを含むことができる。
【0009】
前記塊は通常、集電体、例えば金属ホイル、好ましくはアルミニウムホイルに取り付けられる。前記塊は、肉眼では均質に見えるかもしれない。しかし、500倍~1000倍に拡大すると、カソード活物質(1)、シリカ(2)、カーボン(3)などの異なる成分が区別できる。バインダー(4)は、塊を集電体に接着するための接着剤の役割を果たす。
【発明を実施するための形態】
【0010】
カソード活物質(1)、シリカ(2)、カーボン(3)及びバインダー(4)については、以下でさらに詳しく説明する。
【0011】
本発明の文脈において、前記カソード活物質中のリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンモル含有量を有するこのようなカソード活物質には、組成LiNi0.5Mn1.5O4を有するいわゆる高電圧スピネル、例えばCo、Fe、Ti、Al、又はCuでドープされた高電圧スピネル、及び特に一般式Li1+xTM1-xO2の層状構造を有するいわゆるリチウムリッチ材料(式中、xは0.1~0.35の範囲であり、TMは2種以上の遷移金属を含み、TMの50~85モル%、好ましくは60~70モル%がMnである)が含まれる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様において、前記カソード活物質は、組成Li1+xTM1-xO2を有し、ここで、xが0.1~0.35、好ましくは0.12~0.2の範囲であり、TMが、一般式(I)の元素の組み合わせである、
(NiaCobMnc)1-dM1
d (I)
(式中、aは、0.20~0.40、好ましくは0.25~0.35の範囲であり、
bは、ゼロ~0.20、好ましくは0.05~0.15の範囲であり、
cは、0.50~0.85、好ましくは0.60~0.70の範囲であり、
dは、ゼロ~0.02の範囲であり、
M1は、Al、Ti、Zr、W、Mo、Mg、Nb、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択され、
a+b+c=1である)。
【0013】
カソード活物質(1)はコーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。
【0014】
本発明の文脈で議論されるコーティングされたカソード活物質とは、粒子状カソード活物質のバッチの粒子の少なくとも50%がコーティングされ、各粒子の表面の0.5~2.5%、例えば0.75~1.25%がコーティングされることを指す。コーティングは、非リチウム化酸化物、リチウム化酸化物、又は非リチウム化酸化物とリチウム化酸化物の組み合わせを含んでもよい。非リチウム化酸化物の例としては、Al2O3、B2O3、TiO2、Sb2O3、ZrO2、WO3、Nb2O5、及び前述の少なくとも2種の組み合わせが挙げられる。リチウム化酸化物の例としては、Li2TiO3、Li4TiO4、Li2ZrO3、LiNbO3、LiSbO3、Li2WO4、LiBO2、Li3BO3、Li2B4O7、及び前述の少なくとも2種の組み合わせが挙げられる。
【0015】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)は、2~20μm、好ましくは5~16μmの範囲の平均粒径D50を有する。平均粒径は、例えば光散乱又はレーザー回折又は電気音響分光法(electroacoustic spectroscopy)によって決定することができる。粒子は通常、一次粒子からの凝集体から構成され、上記の粒径は二次粒子の粒径を指す。
【0016】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)は、DIN-ISO 9277:2003-05に従って決定された、0.7~6.0m2/gの範囲の表面積(BET)を有し、1.7~3.8m2/g又は3.0~5.5m2/gが好ましい。
【0017】
一部の金属は、遍在するもの、例えばナトリウム、カルシウム又は亜鉛であり、微量のそれらは事実上どこにでも存在するが、そのような微量は本発明の明細書において考慮されない。この文脈における微量とは、全金属含有量TMに対して0.05モル%以下の量を意味する。
【0018】
M1は、カソード活物質(1)の粒子中で均一に又は不均一に分散されてもよい。好ましくは、M1は、カソード活物質(1)の粒子中で、不均一に、さらにより好ましくは勾配(外殻のM1濃度が粒子の中心部よりも高い)として分布している。
【0019】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)は、球状粒子、すなわち、球状の形状を有する粒子から構成されている。球状粒子には、正確に球形である粒子だけでなく、代表的なサンプルの少なくとも90%(数平均)の最大直径と最小直径の差が10%以下である粒子も含まれる。
【0020】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)は、一次粒子の凝集体である二次粒子から構成されている。好ましくは、本発明のカソード活物質は、一次粒子の凝集体である球状の二次粒子から構成されている。さらにより好ましくは、本発明のカソード活物質は、プレートレット状の一次粒子の凝集体である球状の二次粒子から構成されている。
【0021】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)の前記一次粒子は、1~2000nm、好ましくは10~1000nm、特に好ましくは50~500nmの範囲の平均直径を有する。平均一次粒径は、例えば、SEM又はTEMによって決定することができる。SEMは走査型電子顕微鏡の略称であり、TEMは透過型電子顕微鏡の略称である。
【0022】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)は単峰性粒径分布を有する。代替の実施態様において、カソード活物質(1)は、例えば3~6μmの範囲における最大値、及び9~12μmの範囲における別の最大値を有する、二峰性の粒径分布を有する。
【0023】
本発明の一実施態様において、カソード活物質(1)の圧縮密度は、250MPaの圧力で決定され、2.75~3.1g/cm3の範囲であり、2.85~3.10g/cm3が好ましい。
【0024】
本発明のカソードは、好ましくは、5~100nm、好ましくは5~20nmの範囲の平均粒径(d50)を有するシリカ(2)をさらに含む。平均粒径(d50)は、一次粒子の平均粒径を指す。前記一次粒子は、凝集して凝集体を形成してもよいが、脱凝集は、例えば、カソードの製造中に、攪拌によって達成されてもよい。前記凝集体は、100nm~100μm、好ましくは100nm~1μmの範囲の平均直径(D50)を有してもよい。粒径の決定は、例えばMalvern Panalyticalを用いて、粒径分析によって行うことができる。
【0025】
本発明の一実施態様において、シリカ(2)は砂として採用される。本発明の好ましい実施態様において、シリカ(2)は、噴霧乾燥シリカ及びヒュームドシリカから選択される。噴霧乾燥シリカは、水ガラス水溶液を酸性化し、次いで噴霧乾燥することにより製造することができる。ヒュームドシリカは、SiCl4の火炎熱分解、又は電気アークで気化した石英シリカから製造することができる。
【0026】
シリカ(2)は粒子状である。好ましくは、粒子は球状又は球形である。
【0027】
シリカ(2)は、シリカを水と混合し、pH値を決定することによって決定される酸性表面を有してもよい。10質量%溶液のpH値は、23℃で測定して、3.5~6.5の範囲であってよい。
【0028】
本発明のカソードは、炭素(3)をさらに含む。炭素(3)は、すす、活性炭素、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、及び前述の少なくとも2種の組み合わせから選択することができる。
【0029】
好適なバインダー(4)は、好ましくは、有機(コ)ポリマーから選択される。好適な(コ)ポリマー、すなわち、ホモポリマー又はコポリマーは、例えば、アニオン(共)重合、触媒(共)重合又はフリーラジカル(共)重合により得ることができる(コ)ポリマーから、特にポリエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、並びに、エチレン、プロピレン、スチレン、(メタ)アクリロニトリル及び1,3-ブタジエンから選択された少なくとも2種のコモノマーのコポリマーから選択することができる。ポリプロピレンも適する。ポリイソプレン及びポリアクリレートはさらに適している。ポリアクリロニトリルが特に好ましい。
【0030】
本発明の文脈において、ポリアクリロニトリルは、ポリアクリロニトリルホモポリマーだけでなく、アクリロニトリルと1,3-ブタジエン又はスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。ポリアクリロニトリルホモポリマーが好ましい。
【0031】
本発明の文脈において、ポリエチレンは、ホモポリエチレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたエチレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばα-オレフィン、例えばプロピレン、ブチレン(1-ブテン)、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-ペンテン、及びまたイソブテン、ビニル芳香族のもの、例えばスチレン、及びまた(メタ)アクリル酸、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、(メタ)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、特にメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、及びまたマレイン酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸を含むエチレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリエチレンはHDPE又はLDPEであり得る。
【0032】
本発明の文脈において、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンだけでなく、少なくとも50モル%の共重合されたプロピレン、及び50モル%以下の少なくとも1つのさらなるコモノマー、例えばエチレン、及びα-オレフィン、例えばブチレン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン及び1-ペンテンを含むプロピレンのコポリマーも意味すると理解される。ポリプロピレンは、好ましくはイソタクチックポリプロピレン又は本質的にイソタクチックポリプロピレンである。
【0033】
本発明の文脈において、ポリスチレンは、スチレンのホモポリマーだけでなく、アクリロニトリル、1,3-ブタジエン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のC1~C10-アルキルエステル、ジビニルベンゼン、特に1,3-ジビニルベンゼン、1,2-ジフェニルエチレン及びα-メチルスチレンとのコポリマーも意味すると理解される。
【0034】
別の好ましいバインダー(4)は、ポリブタジエンである。
【0035】
他の好適なバインダー(4)は、ポリエチレンオキシド(PEO)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリイミド及びポリビニルアルコールから選択される。
【0036】
本発明の一実施態様において、バインダー(4)は、50,000g/molから、1,000,000g/molまで、好ましくは500,000g/molまでの範囲の平均分子量MWを有する(コ)ポリマーから選択される。
【0037】
バインダー(4)は、架橋された又は架橋されていない(コ)ポリマーであり得る。
【0038】
本発明の特に好ましい実施態様において、バインダー(4)は、ハロゲン化(コ)ポリマー、特にフッ素化(コ)ポリマーから選択される。ハロゲン化又はフッ素化(コ)ポリマーは、1個の分子当たり少なくとも1個のハロゲン原子又は少なくとも1個のフッ素原子、より好ましくは1個の分子当たり少なくとも2個のハロゲン原子又は少なくとも2個のフッ素原子を有する少なくとも1つの(共)重合された(コ)モノマーを含む(コ)ポリマーを意味すると理解される。例としては、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオリド(PVdF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVdF-HFP)、ビニリデンフルオリド-テトラフルオロエチレンコポリマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー、エチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー、ビニリデンフルオリド-クロロトリフルオロエチレンコポリマー、及びエチレン-クロロフルオロエチレンコポリマーが挙げられる。
【0039】
好適なバインダー(4)は、特に、ポリビニルアルコール及びハロゲン化(コ)ポリマー、例えばポリビニルクロリド又はポリビニリデンクロリド、特にフッ素化(コ)ポリマー、例えばポリビニルフルオリド及び特にポリビニリデンフルオリド及びポリテトラフルオロエチレンである。
【0040】
本発明の一実施態様において、本発明のカソードは、
(1)80~95質量%、好ましくは90~95質量%の範囲のカソード活物質、
(2)1~10質量%、好ましくは1~5質量%の範囲の粒子状のSiO2、
(3)1~10質量%、好ましくは1~3質量%の範囲の導電状態の炭素、
(4)1~5質量%、好ましくは2~4質量%の範囲のバインダーポリマー、
を含み、
パーセンテージが、(1)、(2)、(3)及び(4)の合計に基づくものである。従って、集電体の質量は無視される。
【0041】
本発明のカソードを含有する電気化学セルは、特にMn溶出に関して優れた電気化学特性を示す。
【0042】
本発明のさらなる態様は、
(A)本発明の電極活物質、炭素及びバインダーを含む本発明のカソード
(B)アノード、
(C)セパレータ、及び
(D)電解質
を含有する電気化学セルである。
【0043】
本発明のカソード(A)の実施態様は、すでに上記で詳細に記載されている。
【0044】
前記アノード(B)は、少なくとも1種のアノード活物質、例えばカーボン(グラファイト)、TiO2、酸化リチウムチタン、シリコン又はスズ又はシリコン合金を含有してもよい。前記アノードは、集電体、例えば銅ホイルなどの金属ホイルをさらに含有してもよい。
【0045】
本発明の一実施態様において、本発明によるセルは、それによって電極が機械的に分離される1つ以上のセパレータ(C)を含む。好適なセパレータ(C)は、金属リチウムに対して反応しないポリマーフィルム、特に多孔性ポリマーフィルムである。セパレータのための特に好適な材料は、ポリオレフィン、特にフィルム形成の多孔性ポリエチレン及びフィルム形成の多孔性ポリプロピレンである。
【0046】
ポリオレフィン、特にポリエチレン又はポリプロピレンから構成されるセパレータ(C)は、35~45%の範囲の多孔率を有することができる。好適な細孔径は、例えば30~500nmの範囲である。
【0047】
本発明の他の実施態様において、セパレータ(C)は、無機粒子で充填したPET不織布から選択される。このようなセパレータは40~55%の範囲の多孔率を有し得る。好適な細孔径は、例えば80~750nmの範囲である。
【0048】
好ましいセパレータ(C)は、ガラス繊維を含むものから選択される。
【0049】
電解質(D)は、少なくとも1種の非水性溶媒、少なくとも1種の電解質塩、及び任意に添加剤を含んでもよい。
【0050】
電解質のための非水性溶媒は、室温で液体又は固体であることができ、好ましくは、ポリマー、環状又は非環状エーテル、環状及び非環状アセタール、及び環状又は非環状有機カーボネートから選択される。
【0051】
好適なポリマーの例は、特に、ポリアルキレングリコール、好ましくはポリ-C1~C4-アルキレングリコール、及び特にポリエチレングリコールである。ここでは、ポリエチレングリコールは、20モル%以下の1種以上のC1~C4-アルキレングリコールを含むことができる。ポリアルキレングリコールは、好ましくは、2個のメチル又はエチル末端キャップを有するポリアルキレングリコールである。
【0052】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量MWは、少なくとも400g/molであり得る。
【0053】
好適なポリアルキレングリコール、特に好適なポリエチレングリコールの分子量MWは、最大5,000,000g/mol、好ましくは最大2,000,000g/molであり得る。
【0054】
好適な非環状エーテルの例は、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタンであり、1,2-ジメトキシエタンが好ましい。
【0055】
好適な環状エーテルの例は、テトラヒドロフラン及び1,4-ジオキサンである。
【0056】
好適な非環状アセタールの例は、例えば、ジメトキシメタン、ジエトキシメタン、1,1-ジメトキシエタン及び1,1-ジエトキシエタンである。
【0057】
好適な環状アセタールの例は、1,3-ジオキサン、及び特に1,3-ジオキソランである。
【0058】
好適な非環状有機カーボネートの例は、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート及びジエチルカーボネートである。
【0059】
好適な環状有機カーボネートの例は、一般式(II)及び(III)による化合物である、
【化1】
【0060】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なることができ、水素、及びC1~C4-アルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル及びtert-ブチルから選択され、好ましくは、R2及びR3の両方ともがtert-ブチルであることはない)。
【0061】
特に好ましい実施態様において、R1はメチルであり、R2及びR3はそれぞれ水素であるか、又はR1、R2及びR3はそれぞれ水素である。別の実施態様において、R1はFであり、R2及びR3はそれぞれ水素である。
【0062】
別の好ましい環状有機カーボネートは、式(IV)のビニレンカーボネートである。
【0063】
【0064】
好ましくは、溶媒又は複数の溶媒は、水を含まない状態で、すなわち、例えば、カールフィッシャー滴定によって決定することができる1ppm~0.1質量%の範囲の含水量で使用される。
【0065】
電解質は、少なくとも1種の電解質塩をさらに含む。好適な電解質塩は、特にリチウム塩である。好適なリチウム塩の例は、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiC(CnF2n+1SO2)3、リチウムイミド、例えばLiN(CnF2n+1SO2)2(式中、nは1~20の範囲の整数である)、LiN(SO2F)2、Li2SiF6、LiSbF6、LiAlCl4、及び一般式(CnF2n+1SO2)tYLiの塩である
(式中、Yが酸素及び硫黄から選択される場合、t=1であり、
Yが窒素及びリンから選択される場合、t=2であり、
Yが炭素及びケイ素から選択される場合、t=3である)。
【0066】
好ましい電解質塩は、LiC(CF3SO2)3、LiN(CF3SO2)2、LiPF6、LiBF4、LiClO4から選択され、LiPF6及びLiN(CF3SO2)2が特に好ましい。
【0067】
本発明による電池は、任意の形状、例えば、立方体、又は円筒形ディスク又は円筒形カンの形状を有することができるハウジングをさらに含む。一変形態様において、ポーチとして構成された金属ホイルをハウジングとして使用する。
【0068】
本発明による電池は、良好な放電挙動、非常に良好な放電及びサイクル挙動、及びマンガンの溶出の大幅に減少した傾向を示す。。
【0069】
本発明による電池は、互いに組み合わされている、例えば直列に接続するか、又は並列に接続することができる2つ以上の電気化学セルを含むことができる。直列接続が好ましい。本発明による電池において、少なくとも1つの電気化学セルは少なくとも1つの本発明によるカソードを含有する。好ましくは、本発明による電気化学セルにおいて、電気化学セルの大部分は本発明によるカソードを含有する。さらにより好ましくは、本発明による電池において、すべての電気化学セルは本発明によるカソードを含有する。
【0070】
本発明はさらに、本発明による電池を機器、特にモバイル機器に使用する方法を提供する。モバイル機器の例は、車両、例えば自動車、自転車、航空機、又は水上乗り物、例えばボート又は船である。モバイル機器の他の例は、手動で動くもの、例えばコンピューター、特にラップトップ、電話、又は例えば建築部門における電動手工具、特にドリル、バッテリー式ドライバー又はバッテリー式ステープラーである。
【0071】
本発明のさらなる態様は、以下で本発明の方法又は本発明の製造方法とも呼ばれる、本発明のカソードの製造方法に関する。本発明の方法は、以下の工程:
(a)有機溶媒又は水の存在下で、
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)粒子状のSiO2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を組み合わせる工程と、
(b)工程(a)からの混合物を集電体に適用する工程と、
(c)工程(a)からの水又は有機溶媒を除去する工程と
を含む。
【0072】
カソード活物質(1)、シリカ(2)、カーボン(3)及びバインダー(4)については、上記で詳しく説明した。
【0073】
工程(a)は、以下で(a)と略記することがある。工程(b)は、以下で(b)と略記することがある。工程(c)は、以下で(c)と略記することがある。
【0074】
工程(a)では、カソード活物質(1)、シリカ(2)、カーボン(3)及びバインダー(4)を1つのステップで、又は2つ以上のサブステップで組み合わせる。1つのステップが好ましい。カソード活物質(1)、シリカ(2)、カーボン(3)及びバインダー(4)を組み合わせることは、混合操作、例えば攪拌によってサポートされてもよい。毎分1000~15000回転(「rpm」)での高速攪拌が好ましい。
【0075】
工程(a)は、水、有機溶媒、水と有機溶媒の組み合わせ、又は少なくとも2種の有機溶媒の組み合わせの存在下で行われる。有機溶媒のうち、非塩素系溶媒が好ましい。有機溶媒のうち、非プロトン性溶媒が好ましい。有機溶媒のより好ましい例としては、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、N-エチルピロリドン(NEP)、N-メチルピロリドン(NMP)及びN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)が挙げられる。
【0076】
工程(a)は、5~60℃の範囲の温度で行うことができ、15~40℃が好ましく、周囲温度がさらにより好ましい。
【0077】
工程(a)から得られる混合物は、スラリー又はペーストの外観を有し、5~80%股は80.5%~95%の範囲の固形分を有することができる。
【0078】
好ましくは、工程(a)から得られる混合物は、小塊がなく、肉眼で小塊が検出されない。
【0079】
本発明の一実施態様において、工程(a)から得られる混合物は、200~5,000mPa・s、好ましくは100~800mPa・sの範囲の、10Hzのせん断速度で決定される23℃での動的粘度を有する。動的粘度は、例えば、回転粘度計、例えばHaake粘度計を用いて決定することができる。
【0080】
続いて、工程(b)では、工程(a)で得られた混合物を集電体に提供する。前記適用は、混合物の粘度に応じて、スリットノズル、スプレー、ドクターブレードを用いて行うことができる。押出成形も可能である。
【0081】
工程(a)で得られた混合物は、溶媒の影響を排除するために、工程(c)の後に決定される30~500μm、好ましくは50~200μmの範囲の厚さを有することができる。
【0082】
工程(a)で得られた混合物は、工程(b)及び(c)を1回以上繰り返して、集電体の片面又は好ましくは両面に適用することができる。
【0083】
工程(c)は、工程(a)からの水又は有機溶媒を除去することを含む。前記除去は、凍結乾燥、真空乾燥、例えば25~150℃、好ましくは100~130℃の温度への加熱、又は加熱と真空乾燥の組み合わせ、又は凍結乾燥と真空乾燥の組み合わせによって行うことができる。
【0084】
真空乾燥を行う場合、10~100ミリバール(abs)の範囲の圧力が好ましい。さらに、溶媒(単数又は複数)から蒸気を置き換え、不活性ガス、例えばN2を、作業条件、例えば100ミリバールで供給することが好ましい。
【0085】
工程(c)の持続時間は、1分~24時間、好ましくは10分~24時間の範囲であることができる。
【0086】
工程(c)は、例えば、乾燥トンネル内で行うことができる。乾燥トンネル中の滞留時間は、5~30分、好ましくは10~20分の範囲であることができる。
【0087】
工程(c)から、直接にカソードとして機能するか、又は例えば所望の形状に切断することによってカスタマイズ(「仕上げ」)することができるブランクが得られる。好ましい実施形態において、ブランクはまず工程(d)で圧縮され、工程(e)で熱処理され、その後仕上げられる。工程(d)をカレンダー又はプレスで行う方法が好ましい。
【0088】
カレンダーで工程(d)を行うための好ましい条件は、100~500N/mm、好ましくは110~150N/mmの範囲の、前記カレンダーのローラーのライン圧である。好適な処理速度は、0.1~1m/分である。
【0089】
プレスで工程(d)を行うための好ましい条件は、100~1000MPa、好ましくは100~500MPaの範囲の圧力である。好適な滞留時間は5~10分である。
【0090】
工程(d)に適した処理温度は15~95℃の範囲であり、25~35℃が好ましい。
【0091】
熱処理工程(e)は、工程(d)からの圧縮されたブランクを、バインダー(4)の融点又は軟化点より35~5℃低い温度まで(例えば、US2015/0280206参照)、又はさらにより高い温度、例えばバインダー(4)の融点又は軟化点より高い温度、例えば50℃高い温度まで加熱することを含む。しかしながら、バインダー(4)の分解は避けるべきである。
【0092】
仕上げ工程の例としては、所望の形状を得るためのスタンピング、切断、又は打ち抜きが挙げられる。
【実施例】
【0093】
以下の実施例によって、本発明をさらに説明する。
【0094】
平均粒径(D50)は動的光散乱法(「DLS」)により決定した。特に明記されていない限り、パーセンテージは質量%である。
【0095】
500mgのシリカ(2.1)を5mlの蒸留水中で15分間撹拌した後、表面酸度を決定した。
【0096】
。特に明記されていない限り、パーセンテージ及びppmは、それぞれ質量パーセント及び質量ppmを意味する。
【0097】
出発材料:
カソード活物質(1.1)(「CAM(1.1)」):Li1.14(Ni0.26Co0.14Mn0.60)0.86O2
以下のように、CAM(1.1)を製造した:
硫酸ニッケル/硫酸コバルト/硫酸マンガンを26:14:60のモル比でがんゆうする溶液からNi-Co-Mn混合炭酸塩を沈殿させ、その後、空気下200℃で乾燥させることにより、前駆体を製造した。沈殿剤は、アンモニア水溶液中の炭酸ナトリウム水溶液であった。平均粒径(D50):10.2μm。
【0098】
ローラーハースキルンでは、リチウムと遷移金属の合計とのモル比が1.42:1になるように、前駆体とLi2CO3の均質混合物を匣鉢に入れた。強制的な空気の流れの中で。前記混合物を800℃まで加熱した。800℃に達したら、800℃で4時間加熱を続けた。式0.33のLi2MnO3・0.67のLi(Ni0.4Co0.2Mn0.4)O2の金属酸化物の形成が観察した。これは、式Li1.14TM0.86O2に対応する。
【0099】
シリカ(2.1):(詳細:ヒュームドシリカ、粒径が5~15nm、酸性度:23℃でのpH値が6.5、Sigma-Aldrich社から購入)
炭素(3.1):カーボンブラック、SuperC65として市販、Imerys社、スイス
バインダー(4.1):ポリビニリデンフルオリド(PVDF,Solef5130,Solvay,ベルギー)
工程(a)のすべての操作はグローブボックス内で行った(0.1ppm未満のO2及びH2O)。
【0100】
I.カソードの製造
I.1 本発明のカソード(A.1)の製造:
CAM(1.1)、シリカ(2.1)、炭素(3.1)、及びバインダー(4.1)を87.5:5.0:4.0:3.5の質量比で混合した。
【0101】
工程(a.1):溶解器(Dispermat LC30、VMA-Getzmann、ドイツ)にカーボン(3.1)及びバインダー(4.1)を入れ、5000rpmで5分間攪拌した。次に、NMP中の固形分50%のシリカ(2.1)を3回に分けて添加し、得られたインク状スラリーを、各NMP添加後に10000rpmで5分間混合した。次に、CAM(1.1)を添加し、得られたスラリーをさらに10,000rpmで5分間混合した。
【0102】
工程(b.1):次に、工程(a.1)からの混合物を、四刃ブレード(RK PrintCoat Instruments、UK)を用いてアルミニウムホイル(厚さ18μm、MTI Corporation、USA)上にコーティングした。コーティングしたアルミニウムホイルを得た。
【0103】
工程(c.1):コーティングしたアルミニウムホイルをグローブボックス内周囲温度で15時間かけて乾燥させて、NMPを蒸発させた。
【0104】
工程(d.1)及び(e.1)はカスタマイズ後に行った。
【0105】
仕上げ:
直径14mmのディスク状の粗カソードを打ち抜いた。
【0106】
工程(d.1)及び(e.1):ディスク状の粗カソードを2.5トン(≒160MPaに相当)の液圧プレスで圧縮し、ガラスオーブン(乾燥オーブン585、Buechi、スイス)中、動的真空下120℃で15時間乾燥させた。CAM担持量は8.5mgのCAM(1.1)/cm2であり、2.1mA/h/cm2に相当する(250mA/h/gのCAM(1.1)の公称比容量に基づく)。本発明のカソード(A.1)が得られた。
【0107】
I.2 比較用カソード(A.2)の製造:
CAM(1.1)、シリカ(2.1)、炭素(3.1)、及びバインダー(4.1)を92.5:0:4.0:3.5の質量比で混合した。
【0108】
工程C-(a.2):溶解器(Dispermat LC30、VMA-Getzmann、ドイツ)にカーボン(3.1)及びバインダー(4.1)を入れ、5000rpmで5分間攪拌した。次に、NMP中の固形分50%のシリカ(2.1)を3回に分けて添加し、得られたインク状スラリーを、各NMP添加後に10000rpmで5分間混合した。次に、CAM(1.1)を添加し、得られたスラリーをさらに10,000rpmで5分間混合した。
【0109】
工程(b.2):次に、工程C-(a.2)からの混合物を、四刃ブレード(RK PrintCoat Instruments、UK)を用いてアルミニウムホイル(厚さ18μm、MTI Corporation、USA)上にコーティングした。コーティングしたアルミニウムホイルを得た。
【0110】
工程(c.2):コーティングしたアルミニウムホイルをグローブボックス内周囲温度で15時間かけて乾燥させて、NMPを蒸発させた。
【0111】
工程(d.2)及び(e.2)はカスタマイズ後に行った。
【0112】
仕上げ:
直径14mmのディスク状の粗カソードを打ち抜いた。
【0113】
工程(d.2)及び(e.2):ディスク状の粗カソードを2.5トン(≒160MPaに相当)の液圧プレスで圧縮し、ガラスオーブン(乾燥オーブン585、Buechi、スイス)中、動的真空下120℃で15時間乾燥させた。CAM担持量は8.5mgのCAM(1.1)/cm2であり、2.1mA/h/cm2に相当する(250mA/h/gのCAM(1.1)の公称比容量に基づく)。比較用カソードC-(A.2)が得られた。
【0114】
II.電気化学セルの製造及び試験
II.1 コインセルの製造
アノード(B.1):銅ホイル上のグラファイト。
【0115】
II.2 試験
2032型コインセル(Hohsen Corp.,日本)を用い、温度制御オーブン(Binder,ドイツ)内、25℃で、バッテリーサイクラー(Series 4000,Maccor,USA)を用いて、定電流サイクリングを行った。フルセル実験では、直径15mmのグラファイトアノード及び直径14 mmのカソードを、2つのCelgard(登録商標)ポリプロピレンセパレータ(CG、C2500、Celgard、USA)(C.1)、又は2つのガラス繊維セパレータ(GF、ガラスマイクロファイバー、GF/A、VWR、ドイツ)(C.2)を用いて組み立て、それぞれの場合には80μlのフルオロエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート(2:8、g:g)電解液中の1MのLiPF6を含有した。組み立て後、すべてのセルは充放電サイクルの前に2時間休ませ(セパレータを完全に濡らすため)、C-レートは250mAh/gの公称容量を基準としていた。LRM-NCMカソードを有するフルセルを、最初のサイクルでは定電流手順(CC)でC/15のC-レートで4.7Vまで活性化し、その後C/15で2.0V(CC)まで放電した。その後の3つのサイクルでは、充放電中、上限カットオフセル電圧を4.6Vに下げ、C-レートをC/10にした。これに続いて、高速サイクルを行い、C/2(CCCV)/3C(CC)で3サイクルずつセルを充放電させたが、すべての定電圧(CV)ステップは1時間後又は電流がC/100未満に低下した時点で終了した。続いて、C/2(CCCV)の充電速度及び1C(CC)の放電速度で33サイクルを行ったが、CVステップは上記のように定義した。3回のC/10放電、3回の3C放電及び33回の1C放電の、このシーケンスを合計120サイクル繰り返した。
【0116】
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)
5~100nmの範囲の平均粒径(D50)を有する、粒子状のSiO
2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を含む塊を含有するカソードであって、
前記塊が集電体上にコーティングされている、カソード
。
【請求項2】
(1)80~95質量%の範囲のカソード活物質、
(2)1~10質量%の範囲の粒子状のSiO
2、
(3)1~10質量%の範囲の導電状態の炭素、
(4)1~5質量%の範囲のバインダーポリマー、
を含み、
パーセンテージが、(1)、(2)、(3)及び(4)の合計に基づくものである、請求項
1に記載のカソード。
【請求項3】
前記SiO
2が、噴霧乾燥シリカ及びヒュームドシリカから選択される、請求項1
又は2に記載のカソード。
【請求項4】
前記カソード活物質が、組成LiNi
0.5Mn
1.5O
4を有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項5】
前記カソード活物質が、組成Li
1+xTM
1-xO
2を有し、ここで、xが0.1~0.35の範囲であり、TMが、一般式(I)の元素の組み合わせである、
(Ni
aCo
bMn
c)
1-dM
1
d (I)
(式中、aは、0.20~0.40の範囲であり、
bは、ゼロ~0.20の範囲であり、
cは、0.60~0.70の範囲であり、
dは、ゼロ~0.02の範囲であり、
M
1は、Al、Ti、Zr、W、Mo、Mg、及びNbから選択され、
a+b+c=1である)、請求項1から
3のいずれか一項に記載のカソード。
【請求項6】
a>bである、請求項
5に記載のカソード。
【請求項7】
(A)請求項1から
6のいずれか一項に記載のカソード、
を含有する、電気化学セル。
【請求項8】
(B)ガラス繊維を含むセパレータ、
をさらに含む、請求項
7に記載の電気化学セル。
【請求項9】
以下の工程:
(a)有機溶媒又は水の存在下で、
(1)カソード活物質に含有されるリチウム以外の金属に対して、50~85モル%の範囲のマンガンのモル含有量を有する、リチウム含有カソード活物質、
(2)
5~100nmの範囲の平均粒径(D50)を有する、粒子状のSiO
2、
(3)導電状態の炭素、及び
(4)バインダーポリマー、
を組み合わせる工程と、
(b)工程(a)からの混合物を集電体に適用する工程と、
(c)工程(a)からの水又は有機溶媒を除去する工程と
を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載のカソードの製造方法。
【国際調査報告】