(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】LCDベースの技術で印刷された部品性能を実現する光開始剤パッケージ(PIP)
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20240628BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240628BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20240628BHJP
【FI】
B29C64/314
B33Y70/00
B29C64/129
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579508
(86)(22)【出願日】2022-06-21
(85)【翻訳文提出日】2024-02-21
(86)【国際出願番号】 US2022034363
(87)【国際公開番号】W WO2022271713
(87)【国際公開日】2022-12-29
(32)【優先日】2021-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】コーリー,エマ,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】ディーチュ,ハーフェ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA21
4F213AA31
4F213AA44
4F213AB04
4F213AR11
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL43
4F213WL96
(57)【要約】
本開示は、少なくとも1つの高架橋性アクリレートモノマー、少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー、及びビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(Irgacure784)、Genomer7302、及びビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)を含む光開始剤パッケージを含む、三次元印刷に好適な光硬化性組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー又は多官能ビニルエーテルモノマー、
少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー、及び
少なくとも1つの光開始剤
を含み、前記光開始剤がビス-アシルホスフィンオキシドを含む、光硬化性組成物。
【請求項2】
前記光開始剤が光開始剤の混合物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記光開始剤の混合物が、ビス(η
5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(Irgacure784)、メルカプタン変性ポリエーテルアクリレート、及びビス-アシルホスフィンオキシドを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記光開始剤の混合物が、ビス(η
5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(Irgacure784)を、組成物全体に対する百分率として0.1質量%~0.6質量%の量で含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記光開始剤の混合物が、メルカプタン変性ポリエーテルアクリレート(Genomer7302)を、組成物全体に対する百分率として0.5質量%~1.0質量%の量で含む、請求項3又は請求項4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記光開始剤の混合物が、ビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)を組成物全体に対する百分率として1質量%~5質量%の量で含む、請求項3から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記多官能アクリレートモノマー又は多官能ビニルエーテルモノマーがジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
三次元物品を調製する方法であって、該方法が、
少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー又は多官能ビニルエーテルモノマー、
少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー、及び
少なくとも1つの光開始剤を含む1つの光硬化性組成物の連続層を適用して三次元物品を作製することを含み、前記光開始剤がビス-アシルホスフィンオキシドを含む、方法。
【請求項9】
前記連続層が液晶ディスプレイ(LCD)プリンタで適用される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記光硬化性組成物の前記連続層がUV照射に露光される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記UV照射が約405nmより大きい波長である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記UV照射の強度が約1mW/cm
2である、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記光硬化性組成物の前記連続層が、20秒以下の時間で、前記UV照射に露光される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
約5分/面までの後硬化時間をさらに含む、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3D印刷の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)印刷は、一般に、バット重合技術に依存している。この技術では、光源によって硬化する感光性樹脂を使用して固体層を生成する。これらの固体層は最終的に部品全体を製造する。3Dプリンタには一般に、デジタル・ライト・プロセッシング(DLP)プリンタと液晶(LCD)プリンタの2種類がある。これらのプリンタは、その光源の強度が異なり、異なる波長に依存し、そして使用される印刷組成物も異なる。
【0003】
LCDプリンタの方が費用は低く、そしてより大きな部品を製造できるが、部品の性能が低くなることがある。一方でDLPプリンタは、より高品質の部品を提供するが、これらのプリンタの方はかなり費用が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、三次元(3D)印刷において使用するための光硬化性組成物を提供する。具体的には、本開示は、液晶ディスプレイ(LCD)プリンタで使用するための光硬化性組成物を提供する。波長及び光強度は、デジタル・ライト・プロセッシング(DLP)プリンタとLCDプリンタとで異なる。具体的には、LCDプリンタは、より低い強度の光を使用し、これは、より遅い印刷及びより低い変換につながることがある。本開示の組成物は変換を可能とし、LCDプリンタ上でDLPプリンタに類似した物理的特性を提供する。これらの組成物は、3つの成分:光開始剤成分、モノマー成分、及びオリゴマー成分を含み、これら各成分について、以下にさらに詳細に説明する。
【0005】
以下は、本明細書に記載する技術の非限定的な態様である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー又は多官能ビニルエーテルモノマー、少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー、及び少なくとも1つの光開始剤を含む光硬化性組成物が記載され、この光開始剤はビス-アシルホスフィンオキシドを含む。
【0007】
第2の態様において、光開始剤が光開始剤の混合物を含む、第1の態様の組成物が記載される。
【0008】
第3の態様において、光開始剤の混合物がビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(Irgacure784)、メルカプタン変性ポリエーテルアクリレート、及びビス-アシルホスフィンオキシドを含む、第2の態様の組成物が記載される。
【0009】
第4の態様において、光開始剤の混合物がビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(Irgacure784)を、組成物全体に対する百分率として0.1質量%~0.6質量%の量で含む、第3の態様の組成物が記載される。
【0010】
第5の態様において、光開始剤の混合物がメルカプタン変性ポリエーテルアクリレート(Genomer7302)を、組成物全体に対する百分率として0.5質量%~1.0質量%の量で含む、第3又は第4の態様の組成物が記載される。
【0011】
第6の態様において、光開始剤の混合物がビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)を、組成物全体に対する百分率として1質量%~5質量%の量で含む、第3から第5の態様のいずれか1つの組成物が記載される。
【0012】
第7の態様において、多官能アクリレートモノマー又は多官能ビニルエーテルモノマーがジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)を含む、第1から第6の態様のいずれか1つの組成物が記載される。
【0013】
第8の態様において、三次元物品を調製するための方法が記載され、該方法は、少なくとも1つの多官能アクリレートモノマー又は多官能ビニルエーテルモノマー、少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマー、及び少なくとも1つの光開始剤を含む少なくとも1つの光硬化性組成物の連続層を適用して三次元物品を作製することを含み、該光開始剤はビス-アシルホスフィンオキシドを含む。
【0014】
第9の態様において、連続層が液晶ディスプレイ(LCD)プリンタで適用される、第8の態様の方法が記載される。
【0015】
第10の態様において、光硬化性組成物の連続層がUV照射に露光される、第8の態様の方法が記載される。
【0016】
第11の態様において、UV照射が約405nmより大きい波長である、第10の態様の方法が記載される。
【0017】
第12の態様において、UV照射の強度が約1mW/cm2である、第10又は第11の態様の方法が記載される。
【0018】
第13の態様において、光硬化性組成物の連続層が、約20秒以下、例えば10~20秒の時間、UV照射に露光される、第10から第12の態様のいずれか1つの方法が記載される。
【0019】
第14の態様において、後硬化工程をさらに含み、例えば、その後硬化工程が約5分/面までの後硬化時間を有する、特に、後硬化工程が約5分/面の後硬化時間を有する、第8から第13の態様のいずれか1つの態様の方法が記載される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例2に記載した組成物Aについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じたE-弾性率の変化を示す。
【
図2】
図2は、実施例2に記載した組成物Aについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた最大荷重時の引張応力の変化を示す。
【
図3】
図3は、実施例2に記載した組成物Aについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた破断伸び率の変化を示す。
【
図4】
図4は、実施例2に記載した組成物Aについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた衝撃強さの変化を示す。
【
図5】
図5は、実施例2に記載した組成物Bについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じたE-弾性率の変化を示す。
【
図6】
図6は、実施例2に記載した組成物Bについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた最大荷重時の引張応力の変化を示す。
【
図7】
図7は、実施例2に記載した組成物Bについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた破断伸び率の変化を示す。
【
図8】
図8は、実施例2に記載した組成物Bについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた衝撃強さの変化を示す。
【
図9】
図9は、実施例2に記載した組成物Cについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じたE-弾性率の変化を示す。
【
図10】
図10は、実施例2に記載した組成物Cについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた最大荷重時の引張応力の変化を示す。
【
図11】
図11は、実施例2に記載した組成物Cについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた破断伸び率の変化を示す。
【
図12】
図12は、実施例2に記載した組成物Cについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた衝撃強さの変化を示す。
【
図13】
図13は、実施例2に記載した組成物Dについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じたE-弾性率の変化を示す。
【
図14】
図14は、実施例2に記載した組成物Dについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた最大荷重時の引張応力の変化を示す。
【
図15】
図15は、実施例2に記載した組成物Dについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた破断伸び率の変化を示す。
【
図16】
図16は、実施例2に記載した組成物Dについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた衝撃強さの変化を示す。
【
図17】
図17は、実施例2に記載した組成物Eについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じたE-弾性率の変化を示す。
【
図18】
図18は、実施例2に記載した組成物Eについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた最大荷重時の引張応力の変化を示す。
【
図19】
図19は、実施例2に記載した組成物Eについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた破断伸び率の変化を示す。
【
図20】
図20は、実施例2に記載した組成物Eについて、プリンタの種類、露光時間(秒)、及び硬化時間(分)に応じた衝撃強さの変化を示す。
【
図21】
図21は、以下の実施例でより詳細に記載する3つの組成物及び樹脂配合物RF1のDLP対LCD性能を示す。
【
図22】
図22は、以下の実施例でより詳細に記載する3つの組成物及び樹脂配合物RF2のDLP対LCD性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
I. 定義
本発明をさらに詳細に記載する前に、本出願で使用される用語は、特に断りのない限り、以下のように定義される。
【0022】
ここで使用される「約」は、当業者であれば理解でき、使用される文脈によってある程度異なる。その用語が使用されている文脈から、当業者にとって明確でない使用がある場合、「約」は特定の用語のプラスマイナス10%までを意味する。
【0023】
要素を説明する文脈における(特に以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」、「an」、「the」及び類似の参照語の使用は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、単数形及び複数形の両方を網羅するものと解釈される。本明細書における値の範囲の詳述は、本明細書において別段の指示がない限り、範囲内に入る各別個の値を個別に参照する略記法としての役割を果たすことが単に意図されており、各別個の値は、ここに個別に詳述するかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるあらゆる方法は、本明細書において別段の指示がない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実行することができる。本明細書で提供されるあらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「など(such as)」)の使用は、実施形態をより良く明確にすることが単に意図されており、他に記載がない限り、特許請求の範囲を限定するものではない。本明細書中の如何なる文言も、非請求要素を必須であると示すものとして解釈されるべきではない。
【0024】
「任意選択の」又は「任意選択的に」とは、後続して記載される状況が発生してもしなくてもよいことを意味し、それ故、記載には、状況が発生する場合と発生しない場合が含まれる。
【0025】
「事前に定義された」とは、使用前にその正体が既知である要素を指す。
【0026】
ここで使用される「液晶ディスプレイ」又は「LCD」という用語は、モデル、プロトタイプ、パターンの作製、及び部品の製造を、光重合(光によって分子の鎖がつながり、ポリマーが形成されるプロセス)を使用して層ごとに行うために使用される、3D印刷技術の一形態を指す。そしてこのポリマーが三次元固体の本体を構成する。
【0027】
ここで使用される「デジタル・ライト・プロセッシング」又は「DLP」という用語は付加製造プロセスを指し、3D印刷としても知られ、ステレオリソグラフィに類似しており、これは3Dモデリング・ソフトウェアで作られた設計を採用してDLP技術を使用し、3D物体を印刷する。DLPは、デジタル・マイクロミラー・デバイスを使用する光学マイクロ電気機械技術に基づくディスプレイ・デバイスである。DLPは、プリンタで光源を使用して樹脂を硬化させ、固体の3D物体にすることができる。
【0028】
本発明をより詳細に記載する前に、本発明は、当然ながら変化し得るため、記載される特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を記載するためだけのものであり、限定を意図するものではないことを理解されたい。
【0029】
値の範囲が提供されている場合、文脈上明らかにそうでないと指示されない限り、その範囲の上限と下限との間に、下限の単位の10分の1までの各介在する値と、その記載された範囲内の他の記載された値又は介在する値が本発明に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲に独立して含まれることがあり、そして、記載された範囲内の特に除外された制限を条件として、本発明に包含される。記載された範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値の一方又は両方を除いた範囲も、本発明に含まれる。
【0030】
或る特定の範囲は、本明細書において、「約」という用語が先行する数値で示される。用語「約」とは、本明細書において、それが先行する正確な数、及び用語が先行する数に近い、又は近似している数に対して、文字通りの裏付けを提供するために使用される。或る数が具体的に記載された数に近いか又は近似しているかを決定する際に、近いか又は近似している記載されていない数は、それが提示される文脈において、具体的に記載された数と実質的に等価なものを提供する数であってもよい。
【0031】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるあらゆる技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載したものと類似又は同等の方法及び材料を本発明の実施又は試験に使用することもできるが、代表的な例示的方法及び材料をこれより記載する。
【0032】
本開示を読めば当業者には明らかであるように、本明細書で記載及び図示した個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離又は組み合わせてよい個別の構成要素及び特徴を有する。任意の記載された方法は、記載された事象の順序又は論理的に可能な他の順序で実施することができる。
【0033】
II. 光開始剤
光開始剤は機能性光吸収剤と呼ばれ、光をラジカルに変換してラジカル重合反応を開始させる。印刷プロセスで使用される光開始剤の種類及び量は、プリンタが使用する光源の波長と強度に関連する。効果的な光開始剤は、光源と重複する波長の紫外線(UV)を吸収する。
【0034】
本開示の光硬化性組成物は、LCDプリンタで部品を印刷するために使用できる。しかし、以下でさらに議論するように、これらのプリンタは、DLPプリンタよりも低い光強度を有する。よってLCDプリンタで使用される組成物用の好適な光開始剤は、高いモル吸光率を示し、組成物中に使用される光開始剤の濃度をより低くし、一方で依然として満足な硬化を可能とする。光開始剤の濃度は、印刷した部品の品質に影響を及ぼし得る。光開始剤の濃度が高いと、硬化中に部品の下層が遮蔽され、硬化勾配が生じることがある。従って、光開始剤の濃度は低い方が好ましい場合がある。
【0035】
本開示の組成物には、1つ以上の光開始剤が含まれてよい。好適な光開始剤には、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタン(Irgacure784、Ciba Specialty Chemicals社から入手可能)が含まれる。光開始剤は、追加の化合物、例えば、Genomer7302(Rahn USA Corp.社から入手可能)として販売されているメルカプタン変性ポリエーテルアクリレートなどと共に用いてよい。追加の好適な光開始剤には、限定するものではないが、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、アルファ-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-l-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-l-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-l-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン、及びそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。任意の実施形態において、1つ以上の光開始剤は、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、及びそれらの2つ以上の組み合わせであってよい。
【0036】
他の好適な光開始剤には、限定するものではないが、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、アルファ-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-l-(4-(4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル)フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-l-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-(1-メチルビニル)フェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-l-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、置換ベンゾフェノン、及びそれらの任意の2つ以上の混合物が含まれる。
【0037】
特定の実施態様において、上記に列挙された光開始剤の任意を、ビス-アシルホスフィンオキシド(BAPO)又はジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(TPO)と組み合わせて使用してよい。特に、上記に列挙された光開始剤をBAPOと組み合わせて使用してよい。以下に示す実施例に見られるように、LCDプリンタで有用な光開始剤の組み合わせにBAPOを含めると、DLPプリンタで利用されるものに匹敵する、より強力な物理的特性を有する印刷製品が得られた。
【0038】
光開始剤(単数又は複数)は、組成物中に、組成物全体の質量百分率として約0.1質量%以上、約1.0質量%以上、約1.5質量%以上、約2.0質量%以上、約2.5質量%以上、約3.0質量%以下、約3.5質量%以下、約4.0質量%以下、約4.5質量%以下、約5.0質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在する。
【0039】
本開示の組成物において、1つ以上の光開始剤の混合物を使用してよい。そのような混合物の1つは、Irgacure784、Genomer7302、及びBAPOを含んでよい。この混合物において、Irgacure784は、組成物全体の質量百分率として約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、約0.3質量%以上、約0.4質量%以下、約0.5質量%以下、約0.6質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在する。この混合物において、Genomer7302は、約0.50質量%以上、約0.55質量%以上、約0.60質量%以上、又は約0.70質量%以上の量で存在する。Genomer7302は、組成物全体の質量百分率として約0.75質量%以下、約0.80質量%以下、約0.85質量%以下、約0.90質量%以下、約0.95質量%以下、約1.0質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在する。この混合物において、BAPOは、約1質量%以上、約2質量%以上、又は約3質量%以上の量で存在する。BAPOはまた、組成物全体の質量百分率として約4質量%以下、約5質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在してもよい。TPOが使用される場合、TPOは約1質量%以上、約2質量%以上、又は約3質量%以上の量で存在する。TPOは、組成物全体の質量百分率として約4質量%以下、約5質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在してもよい。
【0040】
III. モノマー
本明細書において提供されるのは、多官能アクリレートモノマー(1つ以上のアクリレート官能基を有する)及び多官能ビニルエーテルモノマー(1つ以上のビニル官能基を有する)のうちの少なくとも1つを、モノマーとして、組成物の総質量に対して含有するUV硬化性組成物(光硬化性組成物とも呼ぶ)である。別の言い方をすれば、モノマー成分には、1つ以上の多官能アクリレートモノマー及び/又は1つ以上の多官能ビニルエーテルモノマーが含まれていてよい。例えば、モノマー成分には、1つ以上のジアクリレートモノマー及び/又は1つ以上のジビニルエーテルモノマーが含まれていてよい。モノマー成分は、少なくとも部分的に反応性希釈剤として作用してもよい。
【0041】
好適なエチレン性不飽和モノマーには、限定するものではないが、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ビニルモノマー、及びそれらの組み合わせが含まれる。例えば、好適な(メタ)アクリレートモノマー及び(メタ)アクリルアミドモノマーには、限定するものではないが、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸のラクトン変性エステル、メタクリル酸のラクトン変性エステル、メタクリルアミド、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化メチロールメラミン、2-(N,N-ジエチルアミノ)-エチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキシレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2~14モルのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドを含有するアルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチル-アリル-エーテルイソボルニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び4-アクリロイルモルホリンが含まれる。
【0042】
好適なビニルモノマーには、限定するものではないが、N-ビニルホルムアミド(NVF)、ジイソシアネート、例えばトルエンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)などを有するNVFの付加物、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピロリドンの誘導体、ブチルビニルエーテル、1,4-ブチル-ビニルエーテル、ジプロピレングリコール-ジビニルエーテル、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、及び酢酸、ラウリル酸、ドデカン酸、シクロヘキシルカルボン酸、アジピン酸、グルタル酸及び同類のもののビニルエステルが含まれる。
【0043】
一実施形態において、モノマーはジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)である。
【0044】
別の実施形態において、高架橋性モノマーは、例えばArkema SARTOMER CN968として販売されている官能価6のウレタンアクリレートからなる群から選択されるアクリレートモノマー、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート
【化1】
(式中、nは1又は2である)、エトキシ化トリメチルプロパントリアクリレート
【化2】
プロポキシル化グリセロールトリアクリレート
【化3】
トリメチロールプロパントリアクリレート
【化4】
及び
ジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)
【化5】
であり、
これらの各々は、シリカナノ粒子などの機械的及び熱的安定性を強化する添加剤を任意選択的に含有してよい。
【0045】
モノマーは、組成物中に、組成物全体に対する百分率として約40質量%以上、約45質量%以上、約50質量%以上、約55質量%以下、約60質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在してよい。
【0046】
IV. オリゴマー
本明細書に開示される光重合可能な3D印刷組成物(光硬化性組成物とも呼ぶ)において、モノマーは、弾性ウレタンアクリレートオリゴマーと組み合わせて使用される。このようなオリゴマーは、脆弱性を相殺し、そして弾性を付与するために、より高い分子量の可撓性鎖を有する。このようなオリゴマーは、例えば、長鎖ジアクリレートポリウレタンオリゴマーである。
【0047】
一実施形態において、ウレタンアクリレートオリゴマーは、式(III)
【化6】
のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0048】
上記式中、R1は、2~12個の炭素原子を有し、任意選択的に、C1~C4アルキル基、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい、及び/又は1個以上の酸素原子によって中断されていてもよい2価のアルキレンラジカルであり、前記ラジカルは、具体的には2~10個の炭素原子を有し、より具体的には2~8個、及び非常に具体的には3~6個の炭素原子を有し、R2は、各場合において他とは独立してメチル又は水素、具体的には水素であり、R3は、1~12個の炭素原子を有し、任意選択的に、C1~C4アルキル基、ヒドロキシル基によって置換されていてもよい、及び/又は1個以上の酸素原子によって中断されていてもよい2価のアルキレンラジカルであり、前記ラジカルは、具体的には2~10個、より具体的には3~8個、及び非常に具体的には3~4個の炭素原子を有し、そしてn及びmは、互いに独立して、1~5、具体的には2~5、より具体的には2~4、非常に具体的には2~3、及びより具体的には2~2.5の正数であり、ここでのR4は2価の有機ラジカルであり、脂肪族、脂環式又は芳香族ジイソシアネートから両方のイソシアネート基を脱離することによって形成される。このようなウレタンアクリレートオリゴマーの製造方法は、例えばUS2016/0107987に見出され、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
このようなウレタンアクリレートオリゴマーは、例えば、式
【化7】
(式中、R
1及びR
2は上記の定義を有する)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)と、式
【化8】
(式中、R
3は上記の定義を有する)のラクトン(B)の(n+m)/2当量とを反応させることにより製造することができる。この反応により、式
【化9】
の中間体が得られる。
【0050】
例示的なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(A)は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、及び1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、非常に具体的には2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及び1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、及び特に2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートから選択される。特に例示的なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、特にベータ-ヒドロキシエチルアクリレートである。
【0051】
例示的なラクトン(B)は、ベータ-プロピオラクトン、ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-エチル-ガンマ-ブチロラクトン、ガンマ-バレロラクトン、デルタ-バレロラクトン、エプシロン-カプロラクトン、7-メチルオキセパン-2-オン、1,4-ジオキセパン-5-オン、オキサシクロトリデカン-2-オン、及び13-ブチル-オキサシクロトリデカン-2-オンから選択される。特に例示的なラクトンは、エプシロン-カプロラクトンである。
【0052】
第一の段階で形成された中間体を第二の段階において、少なくとも1つの脂肪族、脂環式又は芳香族ジイソシアネートと反応させ、ウレタンアクリレートオリゴマーを形成する。例示的なジイソシアネートには、ジシクロメタンジイソシアネート、特にジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートが含まれる。例示的なウレタンアクリレートオリゴマーは、ベータ-ヒドロキシエチルアクリレートとエプシロン-カプロラクトンとを反応させ、次いでジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートと反応させることによって得られる。
【0053】
別の実施態様において、ウレタンアクリレートオリゴマーは、1000~5000g/モルのモル質量Mwを有し、1分子当たり2つのエチレン性不飽和二重結合を有する、少なくとも1つの高強度及び高可撓性のウレタン(メタ)アクリレートであり、合成成分として、以下、
(a1)少なくとも1つの芳香族又は脂環式ジイソシアネート、
(a2)以下から合成される少なくとも1つのポリエステルジオール
(a21)任意選択的に、250g/モル未満のモル質量を有するジオール、
(a22)以下からなる群から選択される少なくとも1つのオリゴマージオール又はポリマージオール
(a221)モル質量Mnが2900g/モルまでのポリテトラヒドロフランジオール及び
(a222)モル質量Mnが600g/モルまでの少なくとも1つのポリカプロラクトンジオール、
(a23)式(Ia)
【化10】
の化合物
及び/又は式(Ib)
【化11】
の化合物からなる群から選択される少なくとも1つのジカルボン酸
(式中、R
2は、単結合又は1~3個の炭素原子を含む2価のアルキレンラジカルであり、そしてR
3は、水素又は1~10個の炭素原子を含むアルキルラジカルである)、及び(a3)正確に1個のイソシアネート反応性基及び正確に1個の遊離重合性基を含む第3の化合物、を含む。
【0054】
例示的な芳香族ジイソシアネートには、芳香族ジイソシアネート、例えば2,4-又は2,6-トリレンジイソシアネート及びそれらの異性体混合物、m-又はp-キシリレンジイソシアネート、2,4’-又は4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン及びそれらの異性体混合物、1,3-又は1,4-フェニレンジイソシアネート、1-クロロ-2,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルビフェニル、3-メチルジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトベンゼン又はジフェニルエーテル4,4’-ジイソシアネートなどが含まれる。
【0055】
例示的な脂環式ジイソシアネートには、4-、1,3-又は1,2-ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’-又は2,4’-ジ(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、1-イソシアナト-3,3、5-トリメチル-5-(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート)、1,3-又は1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン又は2,4-又は2,6-ジイソシアナト-1-メチルシクロヘキサン、さらに3(又は4),8(又は9)-ビス(イソシアナトメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン異性体混合物が含まれる。
【0056】
さらなる例示的なウレタンアクリレートオリゴマーは、成分として以下を実質的に含むポリウレタンアクリレートである:
(a)少なくとも1つの有機脂肪族、芳香族又は脂環式のジ-又はポリイソシアネート、(b)イソシアネートに対して反応性の少なくとも1つの基と、フリーラジカル重合可能な少なくとも1つの不飽和基とを有する少なくとも1つの化合物、及び(c)任意選択的に、イソシアネートに対して反応性の少なくとも2つの基を有する少なくとも1つの化合物。
【0057】
脂肪族、芳香族、及び脂環式のジ-及びポリイソシアネートは、少なくとも1.8、任意選択的に1.8~5、及び特に任意選択的に2~4のNCO官能価を有し、そのイソシアヌレート、ビウレット、アロファネート、及びウレジオンが、成分(a)として好適である。
【0058】
成分(b)は、例えば、α,β-不飽和カルボン酸のモノエステル、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、アクリルアミドグリコール酸又はメタクリルアミドグリコール酸など、又はジ-又はポリオールとのビニルエーテル(好ましくは、2~20個の炭素原子及び少なくとも2個のヒドロキシル基を有する)、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,1-ジメチル-1,2-エタンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-エチル-1,4-ブタンジオール、1,4-ジメチロールシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、エリスリトール、ソルビトール、162~2900の分子量を有するポリ-THF、134~400の分子量を有するポリ-1,3-プロパンジオール、又は238~458の分子量を有するポリエチレングリコールなどであってよい。さらに、(メタ)アクリル酸とアミノアルコール、例えば2-アミノエタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、3-アミノ-1-プロパノール、1-アミノ-2-プロパノール又は2-(2-アミノエトキシ)エタノールとのエステル又はアミド、2-メルカプトエタノール又はポリアミノアルカン、例えばエチレンジアミン又はジエチレントリアミン、又はビニル酢酸などを使用することも可能である。
【0059】
成分(c)として好適な化合物は、イソシアネートに対して反応性の基を少なくとも2個有するもの、例えば-OH、-SH、-NH2又は-NHR2であり、式中、R2は、互いに独立して、水素、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチルであってよい。
【0060】
これらは、好ましくは、ジオール又はポリオール、例えば、2~20個の炭素原子を有する炭化水素ジオール、例えばエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,1-ジメチルエタン-1,2-ジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、ビス-(4-ヒドロキシシクロヘキサン)イソプロピリデン、テトラメチルシクロブタンジオール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール、シクロオクタンジオール、ノルボルナンジオール、ピナンジオール、デカリンジオール等、短鎖ジカルボン酸、例えばアジピン酸又はシクロヘキサンジカルボン酸などとのそれらのエステル、ジオールとホスゲンとの反応により、又はジアルキル又はジアリールカーボネートとのトランスエステル化により調製されるそれらのカーボネート、又は脂肪族ジアミン、例えばメチレン-及びイソプロピリデンビス(シクロヘキシルアミン)、ピペラジン、1,2-、1,3-又は1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンビス(メチルアミン)等、ジチオール又は多官能アルコール、第二級又は第一級アミノアルコール、例えばエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン等、又はチオアルコール、例えばチオエチレングリコールなどである。
【0061】
少なくとも1つのオリゴマーは、組成物中に約40質量%以上、約45質量%以上、又は約50質量%以上の量で存在してよい。少なくとも1つのオリゴマーは、組成物全体に対する百分率として、約55質量%以下、約60質量%以下、又はこれらの終点に包含される任意の値の量で存在してもよい。
【0062】
本開示の別の態様において、組成物は、1つ以上の高架橋性モノマーと少なくとも1つの弾性ウレタンアクリレートオリゴマーを、約20:80~80:20、例えば30:70~70:30、例えば60:40~40:60の質量比で含有する。
【0063】
V. 添加剤
本開示の別の態様において、上記の高架橋性モノマー及び弾性オリゴマーに加えて、組成物は、1つ以上の染料、顔料、又は着色剤を有してよい。例えば、このような染料、顔料、又は着色剤は、色を提供するため、又は印刷及び/又は印刷された部品のエージングの間の潜在的な変色を回避するために使用してよい。例示的な染料、顔料、又は着色剤には、カーボンブラック顔料、白色顔料、及びシアン、マゼンタ、イエロー等のような種々の染料が含まれる。特に、組成物にはカーボンブラックが含まれ、例えばその量は組成物の総質量に対して0.005~0.1質量%、例えば0.01~0.1質量%、特に0.01~0.05質量%である。顔料を含有する組成物においては、1つ以上の分散剤を使用してよい。このような分散剤は、通常の当業者には既知であろう。例えばEFKA4701を使用することが可能であろう。分散剤は、組成物全体の質量に対して約10~100ppm、例えば20~50ppm、特に20ppmの量で使用してよい。
【0064】
VI. 印刷された部品
印刷された部品、例えば三次元(3D)物品などは、本開示の組成物の1つを連続的に適用することによって製造される。次いで、これらの層をUV照射して印刷された部品を硬化させる。印刷された部品を作製するためにLCDプリンタ及びDLPプリンタの両方が使用され得るが、両者は、使用する光源において異なる。DLPプリンタは紫外線(UV)光源を使用する。これらの光源は、約385nmの領域の波長を有し得る。一般に、光源の強度は4mW/cm2~9mW/cm2の間、例えば5mW/cm2~9mW/cm2の間である。対照的に、LCDプリンタは、波長が約400nm超、例えば約405nm超、特に440nm以上のLED光を使用する。光源の強度はDLPプリンタよりはるかに低く、LCDプリンタでは一般に約1mW/cm2である。そのため、異なるプリンタを使用するには、上述したように、異なる光開始剤を使用する必要がある。
【0065】
印刷された部品の物理的特性は、その作製に使用されるプリンタの種類に依存してかなり異なり得る。LCDプリンタは、より大きな部品を印刷することができるが、LCDプリンタで作製された部品は、機械的特性、例えば衝撃強さ、伸び率、弾性率(E-弾性率)、引張強度などがより望ましくない傾向がある。さらに、LCDプリンタは一般的に変換率が低い。DLPプリンタでは機械的特性が改善された部品が作製されるが、これらのプリンタはより高価であり、従って消費者にとってはより魅力的ではない可能性がある。
【0066】
露光時間及び後硬化時間も印刷部品に影響を与え得る。以下でさらに記載するように、DLPプリンタ用の組成物をLCDプリンタに使用しただけでは、機械的特性が劣った部品が得られる。具体的には、これらの部品は、DLPプリンタで作製された部品よりも低い引張強度と低いE-弾性率を示す。しかし、露光時間及び後硬化時間の両方を長くし、且つ光開始剤パッケージを変更すると、LCDプリンタで印刷された部品は、DLPプリンタで印刷されたものと同様の引張強度とE-弾性率を示す部品が得られる。
【0067】
本開示は、DLPプリンタで通常使用される組成物を、LCDプリンタでの使用に適合させる。上述したように、光開始剤パッケージを変更することにより、名目上はDLPプリンタ用の組成物をLCDプリンタでうまく使用することができる。驚くべきことに、これらの適合した組成物は、以下にさらに詳細に示すように、DLPプリンタからのものと同様の機械的特性を有するLCDプリンタからの部品を提供する。LCDプリンタで使用するために組成物を適合させることは、DLPプリンタで可能であろうよりも大きな部品を作製することも提供する。一例として、LCDプリンタは最大約510×280×350mmの造形体積を有し得るが、DLPプリンタは例えば約192×108×350mmの造形体積を有し得る。
【実施例】
【0068】
以下の実施例では、2つの異なる樹脂配合物を以下に詳述する試験に使用した。最初に、ウレタンアクリレートオリゴマー(Laromer UA9089)をDPGDA(RF1)と60/40の質量比で使用した。次に、異なるウレタンアクリレートオリゴマー(Laromer LR8986)をDPGDA(RF2)と75/25の質量比で使用した。
【0069】
実施例1:芳香族エポキシアクリレートフォトポリマーの物理的特性
組成物A~Eは、樹脂配合物RF2を用いて配合した。組成物Aは、Irgacure784を0.5質量%の量で、そしてGenomer7302を0.75質量%の量で、それぞれ組成物全体に対する百分率として含んでいた。組成物Bは、Irgacure784を1質量%の量で、そしてGenomer7302を0.75質量%の量で、それぞれ組成物全体に対する百分率として含んでいた。組成物Cは、Irgacure784を0.5質量%の量で、Genomer7302を0.75質量%の量で、そしてジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(TPO)を4質量%の量で、それぞれ組成物全体に対する百分率として含んでいた。組成物Dは、BAPOを全組成物に対する百分率として3質量%の量で含んでいた。最後に、組成物Eは、Irgacure784を0.5質量%の量で、Genomer7302を0.75質量%の量で、そしてBAPOを3質量%の量で、それぞれ組成物全体に対する百分率として含んでいた。その後、DLPプリンタで印刷した部品との比較試験を行った。これらの試験結果を以下の表1に示す。
【0070】
【0071】
上記の結果に加えて、組成物Aで印刷した部品は硬化不足のように見えることが指摘された。そこで、この問題を克服する試みとして、組成物BにおいてIrgacure784光開始剤の量を増加させた。しかし、組成物Bで使用した光開始剤の量を増加させて印刷した部品は粘着性がある部品となり、硬化後の改善が必要であることが示唆された。この改善を行うために、TPOを添加して組成物Cを作製し、これは組成物Bと比較してE-弾性率と引張強度の両方で有意な増加を示した。しかし、過剰の未反応TPOが移動した可能性があり、その結果、表面に未反応TPOが蓄積することが懸念された。この問題を克服するため、組成物DではBAPOを唯一の光開始剤として使用した。この組成物を使用して印刷した部品は、機械的には組成物Cを使用して印刷した部品と同様であったが、観察された印刷品質は劣っていた。そこで、組成物EにIrgacure784、Gemoner7302及びBAPOの混合物を含めた。この組成物を使用して印刷した部品は、やはり組成物Cを使用して印刷したものと同様の機械的特性を示したが、印刷品質は組成物Dよりも改善された。
【0072】
実施例2:物理的特性に及ぼす暴露時間と後硬化時間の影響
DLPプリンタ及びLCDプリンタの両方を使用し、上記の組成物と実施例1の樹脂配合物RF2それぞれを使用して部品を印刷した。後硬化は405nmのUVチャンバー内で完了した。露光時間及び後硬化時間の両方を変化させ、部品のE-弾性率、引張強度、破断伸び、及び衝撃強さを試験した。これらの結果を
図1~20にグラフで示す。ここに示すように、上記実施例1で指摘された特性の改善は一貫して維持され、18秒の露光時間と5分/面の後硬化時間を使用した場合に、E-弾性率と引張強度が最も改善された。伸びは、露光時間又は後硬化時間の影響を受けなかった。
【0073】
実施例3:ウレタンフォトポリマーの物理的特性
反応性ウレタンフォトポリマーを3つの異なる光開始剤パッケージで配合し、2つの異なるプリンタで部品を印刷するために使用した。組成物1は、Irgacure TPOを組成物全体の1質量%の量で含んでいた。この組成物は、DLPプリンタで部品を印刷するために使用した。組成物2は、Irgacure784を0.5質量%の量で、Genomer7302を0.75質量%の量で、それぞれ組成物全体に対する百分率として含んでいた。この組成物は、LCDプリンタで部品を印刷するために使用した。組成物3は、Irgacure784を0.5質量%の量で、Genomer7302を0.75質量%の量で、及びBAPOを3質量%の量で、それぞれ組成物全体に対する百分率として含んでいた。次に、衝撃強さ、伸び率、弾性率(E-弾性率)及び引張強度について試験した。伸び率、引張強度、E-弾性率はASTM D638に従って計算した。衝撃強さ(ノッチ付き)はASTM D256に従って計算した。これらの試験結果を以下の
図21及び22に示す。
図21では、樹脂配合物RF1を使用した。
図22では、樹脂配合物RF2を使用した。
【0074】
これらの図に示すように、LCDプリンタで印刷されたにもかかわらず、組成物3は、組成物1を用いてDLPプリンタで印刷された部品と同等の機械的特性を有する部品を提供した。
【0075】
実施例4:物理的特性に対する硬化時間の影響
実施例3に記載したのと同じ反応性ウレタンフォトポリマー及び組成物を使用して、樹脂配合物RF1を使用した印刷された部品の機械的特性に対する様々な露光時間及び後硬化時間の影響を試験した。結果を表2に示す。
【0076】
【0077】
この場合も、組成物3を用いてLCDプリンタで印刷した部品が示した機械的特性は、組成物1を用いてDLPプリンタで印刷した結果と概ね同等であった。
【0078】
実施例5:物理的特性に対する層厚の影響
DLPプリンタ及びLCDプリンタで部品を印刷し、その物理的特性を比較した。結果を表3に示す。LCD印刷に利用した組成物は、0.5質量%のIrgacure784、0.75%のGenomer7302(上記の組成物2)を樹脂配合物RF1と合わせて含んでいた。組成物1をDLP印刷に使用した。
【0079】
【0080】
上記から分かるように、100umの層厚を使用したLCDプリンタで印刷された部品は、機械的特性においてDLPベンチマークに最も近い。この厚さは、印刷時の時間短縮にもなり、層厚の増加に起因して、より安価な製造が可能となる。
【0081】
実施例5:物理的特性に対するBAPO量の影響
0.5質量%の量のIrgacure784及び0.75質量%の量のGenomer7302をそれぞれ配合物全体に対する百分率として含む光開始剤パッケージを有する反応性ウレタンフォトポリマーを用いて、9つの配合物を調製した。各配合物において、BAPOの量を以下の表5に示すように変化させた。9つの各配合物を用いて、露光時間15秒、後硬化時間405nmで5分/面で、LCDプリンタで部品を印刷した。これらの部品を、同じ反応性ウレタンフォトポリマーと、ジフェニル-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド(TPO)を配合物全体に対する百分率として1質量%の量で含む光開始剤パッケージとを用いてDLPプリンタで印刷した部品と比較した。露光時間は2秒、そして後硬化時間は405nmで2分/面であった。
【0082】
次に、各配合物で印刷した部品について、破断伸び、E-弾性率、最大荷重時の引張応力、及び衝撃時の変形に対する抵抗力(REL、衝撃強さ)の試験を行った。樹脂配合物RF1を用いた結果を表4に示す。
【0083】
【0084】
本発明を実施するための本発明者らに既知の最良の態様を含む、本発明の好ましい実施形態を本明細書に記載する。本発明は、好ましい実施形態を参照して上述した詳細に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び変形が可能であることが理解されるであろう。
【国際調査報告】