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特表2024-5242983D印刷用組成物、該組成物から形成された3D印刷物体及び該物体を形成する方法
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  • 特表-3D印刷用組成物、該組成物から形成された3D印刷物体及び該物体を形成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】3D印刷用組成物、該組成物から形成された3D印刷物体及び該物体を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/46 20060101AFI20240628BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20240628BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240628BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20240628BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20240628BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20240628BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240628BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240628BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240628BHJP
【FI】
C08F2/46
C08F20/00 510
C08L33/00
C08F4/00
B29C64/106
B29C64/314
B33Y10/00
B33Y80/00
B33Y70/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579512
(86)(22)【出願日】2022-06-15
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2022066329
(87)【国際公開番号】W WO2022268609
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/102095
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】カイ,チー チョン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ウェイ チョン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヤン ション
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
4J011
4J015
【Fターム(参考)】
4F213AA43
4F213AA44
4F213AB02
4F213AB11
4F213AB12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL32
4F213WL96
4J002BG071
4J002BG131
4J002FD017
4J002FD027
4J002FD097
4J002FD316
4J002GF00
4J002GP00
4J002GQ00
4J011AA05
4J011AC04
4J011QA03
4J011QA06
4J011QA08
4J011QA14
4J011QB24
4J011SA84
4J011TA03
4J011TA06
4J011UA01
4J011VA01
4J011WA01
4J011WA07
4J015EA02
4J015EA03
(57)【要約】
本発明は、(A)少なくとも1つの反応性成分、(B)少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び(C)少なくとも1つの光開始剤、を含む3D印刷のための硬化性組成物、該組成物から3D印刷物体を形成する工程、及び該組成物から調製された3D印刷物体に関する。該組成物から形成された3D印刷物体は、低密度、安定した寸法サイズ、及び均一な多孔質構造を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分、
(A)少なくとも1つの反応性成分、
(B)少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含む、3D印刷のための硬化性組成物。
【請求項2】
反応性成分(A)が、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記放射線硬化性官能基が、エチレン性不飽和官能基、エポキシ基、又はそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、前記放射線硬化性官能基がエチレン性不飽和官能基である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
反応性成分(A)中の前記放射線硬化性官能基の数が、反応性成分(A)の1分子当たり1~12、好ましくは1~10、より好ましくは1~8の範囲である、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
反応性成分(A)が、アリル、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリロキシ、メタクリロキシ、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセチレニル、及びマレイミドからなる群より選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
反応性成分(A)が、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
物理的揮発性剤(B)が、可溶性固体物理的揮発性剤及び/又は周囲圧力で0℃を超える沸点を有する液体物理的揮発性剤であり、好ましくは、物理的揮発性剤(B)が、周囲圧力で0℃を超える沸点を有する液体物理的揮発性剤であり、より好ましくは、物理的揮発性剤(B)が、アルカン、シクロアルカン、非環式又は環式エーテル、ケトン、アルキルカルボキシレート、ハロゲン化アルカン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記液体物理的揮発性剤の沸点が、25℃を超える、好ましくは200℃未満である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
物理的揮発性剤(B)が、C4~10-アルカン、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン、より好ましくはヘプタン、C4~10-シクロ-アルカン、好ましくはシクロペンタン、及びシクロヘキサン、C4~6-環状エーテル、好ましくはフラン、ジ-C1~5-アルキルエーテル、好ましくはジメチルエーテル及びジエチルエーテル、C4~10-シクロ-アルキレンエーテル、C1~5-ケトン、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、C1~8-アルキルカルボキシレート、好ましくはメチルホルメート、及びエチルアセテート、ジメチルオキサラート、ハロゲン化C1~6-アルカン、好ましくはメチレンクロリド、トリクロロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、2,2-ジクロロ-2-フルオロエタン、ジクロロブタン、及び1,5-ジクロロペンタン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
光開始剤(C)が、フリーラジカル光開始剤及び/又はイオン性光開始剤、好ましくはフリーラジカル光開始剤である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
反応性成分(A)の量が、組成物の総質量に対して10~99.8質量%、好ましくは20~98.9質量%、より好ましくは50~95質量%の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
物理的揮発性剤(B)の量が、組成物の総質量に対して0.1~50質量%、好ましくは1~40質量%、より好ましくは1~20質量%の範囲である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
光開始剤(C)の量が、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%の範囲である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
(D)界面活性剤を、好ましくは、組成物の総質量に対して0~15質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは1~8質量%の範囲の量でさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
(E)追加的な添加剤、例えば非反応性希釈剤及び/又は補助剤、例えば顔料、充填剤、染料、及び可塑剤を、好ましくは、組成物の総質量に対して0~60質量%、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~30質量%の範囲の量でさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を使用することを含む、3D印刷物体を形成する方法。
【請求項17】
以下の工程:
(i)前記組成物を層の形態で適用し、そして適用された組成物を放射線により層ごとに硬化させて、中間3D印刷物体を形成する工程、及び
(ii)放射線によって中間3D印刷物体全体を硬化させて、硬化した3D印刷物体を形成する工程
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(iii)前記硬化した3D印刷物体を熱処理又はガス吹き付けによって処理する工程
をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ステレオリソグラフィ、フォトポリマー噴射、デジタル光処理、又はLCD技術を工程(i)で使用して前記中間3D印刷物体を形成する、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項20】
前記放射線がUV放射線である、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物から形成された、又は請求項16から20のいずれか一項に記載の方法によって得られた、3D印刷物体。
【請求項22】
ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋、シール、医療機器、例えば補聴器、歯科部品を含む、請求項21に記載の3D印刷物体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元(以下、「3D」という)印刷用組成物、特に硬化性組成物、より具体的には3D印刷用の放射線硬化性組成物に関するものである。本発明はまた、その組成物を用いて3D印刷物体を形成する方法、及びその組成物から形成された3D印刷物体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3D印刷技術、例えばステレオリソグラフィ(SLA)、デジタル光処理(DLP)及びフォトポリマー噴射(PPJ)は、多くの用途、例えばラピッドプロトタイピング、補聴器の製造、歯科用部品の製造で使用されている。フォトポリマーは、SLA、DLP及びPPJなどの技術により、UV又は可視光によって開始される光開始重合を介して3D印刷することができる。しかし、3D印刷物体の密度を下げることは大きな課題であり、そして3D印刷可能な材料の軽量化は、光硬化性材料にとって、その一般的な成分が有機化学組成物であることから、課題の一つである。他方では、3D印刷プロセスで均一な多孔質構造が制御できず、そして印刷物体から未硬化の樹脂が出ることがあるので、フォトポリマーをベースとした多孔質構造を伴う印刷物体を得ることは困難である。さらに、樹脂中に中空充填剤を導入して達成された材料の軽量化は、樹脂との相溶性及び安定性が悪くなるので光硬化性樹脂には適さない。
【0003】
従って、SLA、DLP又はPPJなどの技術による3D印刷プロセスにおいて、軽量で多孔質の物体を首尾よく形成することができる3D印刷可能な材料の種類の開発が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、3D印刷のための、物理的揮発性剤を含む硬化性組成物を提供することであり、この組成物から形成された3D印刷物体は、低粘度及び均一な多孔質構造を呈する。
【0005】
本発明の別の目的は、本発明の硬化性組成物から形成された3D印刷物体を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる目的は、本発明の硬化性組成物を用いることによって3D印刷物体を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
驚くべきことに、上記目的は、以下の実施形態により達成できることが見出された:
1. 以下の成分、
(A)少なくとも1つの反応性成分、
(B)少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含む、3D印刷のための硬化性組成物。
【0008】
2. 反応性成分(A)が、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有する、項目1に記載の組成物。
【0009】
3. 放射線硬化性官能基が、エチレン性不飽和官能基、エポキシ基、又はそれらの混合物からなる群より選択され、好ましくは、放射線硬化性官能基がエチレン性不飽和官能基である、項目2に記載の組成物。
【0010】
4. 反応性成分(A)中の放射線硬化性官能基の数が、反応性成分(A)の1分子当たり1~12、好ましくは1~10、より好ましくは1~8の範囲である、項目2又は3に記載の組成物。
【0011】
5. 反応性成分(A)が、アリル、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリロキシ、メタクリロキシ、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセチレニル、及びマレイミドからなる群より選択される少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【0012】
6. 反応性成分(A)が、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル、脂肪族グリシジルエーテル、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項目1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【0013】
7. 物理的揮発性剤(B)が、可溶性固体物理的揮発性剤及び/又は周囲圧力で0℃を超える沸点を有する液体物理的揮発性剤であり、好ましくは、物理的揮発性剤(B)が、周囲圧力で0℃を超える沸点を有する液体物理的揮発性剤であり、より好ましくは、物理的揮発性剤(B)が、アルカン、シクロアルカン、非環式又は環式エーテル、ケトン、アルキルカルボキシレート、ハロゲン化アルカン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、項目1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【0014】
8. 液体物理的揮発性剤の沸点が、25℃を超える、好ましくは200℃未満である、項目7に記載の組成物。
【0015】
9. 物理的揮発性剤(B)が、C4~10-アルカン、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン、より好ましくはヘプタン、C4~10-シクロ-アルカン、好ましくはシクロペンタン、及びシクロヘキサン、C4~6-環状エーテル、好ましくはフラン、ジ-C1~5-アルキルエーテル、好ましくはジメチルエーテル及びジエチルエーテル、C4~10-シクロ-アルキレンエーテル、C1~5-ケトン、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、C1~8-アルキルカルボキシレート、好ましくはメチルホルメート、及びエチルアセテート、ジメチルオキサラート、ハロゲン化C1~6-アルカン、好ましくはメチレンクロリド、トリクロロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、2,2-ジクロロ-2-フルオロエタン、ジクロロブタン、及び1,5-ジクロロペンタン、又はそれらの任意の組み合わせを含む、項目1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【0016】
10. 光開始剤(C)が、フリーラジカル光開始剤及び/又はイオン性光開始剤、好ましくはフリーラジカル光開始剤である、項目1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【0017】
11. 反応性成分(A)の量が、組成物の総質量に対して10~99.8質量%、好ましくは20~98.9質量%、より好ましくは50~95質量%の範囲である、項目1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【0018】
12. 物理的揮発性剤(B)の量が、組成物の総質量に対して0.1~50質量%、好ましくは1~40質量%、より好ましくは1~20質量%の範囲である、項目1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【0019】
13. 光開始剤(C)の量が、組成物の総質量に対して0.1~10質量%、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%の範囲である、項目1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【0020】
14. (D)界面活性剤を、好ましくは、組成物の総質量に対して0~15質量%、好ましくは0~10質量%、より好ましくは1~8質量%の範囲の量でさらに含む、項目1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【0021】
15. (E)追加的な添加剤、例えば非反応性希釈剤及び/又は補助剤、例えば顔料、充填剤、染料、及び可塑剤を、好ましくは、組成物の総質量に対して0~60質量%、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~30質量%の範囲の量でさらに含む、項目1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【0022】
16. 項目1から15のいずれか一項に記載の組成物を使用することを含む、3D印刷物体を形成する方法。
【0023】
17. 以下の工程:
(i)組成物を層の形態で適用し、そして適用された組成物を放射線により層ごとに硬化させて、中間3D印刷物体を形成する工程、及び
(ii)放射線によって中間3D印刷物体全体を硬化させて、硬化した3D印刷物体を形成する工程
を含む、項目16に記載の方法。
【0024】
18. (iii)硬化した3D印刷物体を熱処理又はガス吹き付けによって処理する工程
をさらに含む、項目17に記載の方法。
【0025】
19. ステレオリソグラフィ、フォトポリマー噴射、デジタル光処理、又はLCD技術を工程(i)で使用して中間3D印刷物体を形成する、項目17又は18に記載の方法。
【0026】
20. 前記放射線がUV放射線である、項目17から19のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
21. 項目1から15のいずれか一項に記載の組成物から形成された、又は項目16から20のいずれか一項に記載の方法によって得られた、3D印刷物体。
【0028】
22. 3D印刷物体が、ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋、シール、医療機器、例えば補聴器、歯科部品を含む、項目21に記載の3D印刷物体。
【0029】
本発明による硬化性組成物は、物理的揮発性剤を含む。この組成物から、印刷部品の寸法サイズを変えることなく、一方で均一な多孔質構造を呈する、軽量の3D印刷物体を首尾よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施例A2の組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真を示す。
図2図2は、実施例B1の組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真を示す。
図3図3は、実施例C1の組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真を示す。
図4図4は、実施例Dの組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真を示す。
図5図5は、実施例A2の組成物から得られたサンプル(I)及びサンプル(II)の写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるあらゆる技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。本明細書中で使用される以下の用語は、特に明記されない限り、それら用語に帰する意味を有する。
【0032】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、当該冠詞に続く用語で指定される1つ以上の種を意味する。
【0033】
本開示の文脈において、ある特徴について言及された任意の具体的な値(終点としての範囲に言及された具体的な値を含む)を再結合して新しい範囲を形成することができる。
【0034】
本発明のさらなる実施形態は、特許請求の範囲、明細書、実施例及び図面から識別可能である。本発明の主題の前述の特徴及び本明細書においてなお解明される特徴は、示された特定の組み合わせにおいてのみならず、本発明の領域を離れることなく他の組み合わせにおいても利用可能であることが理解されるであろう。
【0035】
硬化性組成物
本発明の一態様は、以下の成分:
(A)少なくとも1つの反応性成分、
(B)少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)少なくとも1つの光開始剤
を含む、3D印刷のための硬化性組成物に関する。
【0036】
反応性成分(A)
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの反応性成分を成分(A)として含む。一般に、3D印刷に使用可能な反応性成分を、本発明において反応性成分(A)として使用することができる。好ましくは、本発明に好適な反応性成分は、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有してよい。
【0037】
本発明の一実施形態において、本発明の反応性成分(A)は、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有するモノマー及び/又はオリゴマーを含む。
【0038】
好ましくは、本発明の反応性成分(A)の放射線硬化性官能基は、エチレン性不飽和官能基、エポキシ基、又はそれらの混合物からなる群から選択される。例えば、反応性成分(A)として好適な少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有するモノマー及び/又はオリゴマーの少なくとも1つの放射線硬化性官能基は、エチレン性不飽和官能基、エポキシ基、又はそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
好ましくは、反応性成分(A)中の放射線硬化性官能基の数は、反応性成分(A)の1分子当たり1~12、好ましくは1~10、例えば1~8の範囲である。
【0040】
少なくとも1つのエポキシ基を含有する反応性成分(A)として、非限定的な例には、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテル又は脂肪族グリシジルエーテル、又はそれらの組み合わせ、好ましくは芳香族又は脂肪族グリシジルエーテルが含まれる。
【0041】
可能なエポキシ化オレフィンの例には、エポキシ化C~C10-オレフィン、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソ-ブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが含まれ、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシド又はエピクロロヒドリンが特に好ましく、そしてエチレンオキシド及びエピクロロヒドリンが非常に特に好ましい。
【0042】
芳香族グリシジルエーテルは、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジシクロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば、2,5-ビス[(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン(CAS番号[13446-85-0])、トリス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]メタン異性体(CAS番号[66072-39-7])、フェノールベースのエポキシノボラック(CAS番号[9003-35-4])、及びクレゾールベースのエポキシノボラック(CAS番号[37382-79-9])である。
【0043】
脂肪族グリシジルエーテルの例には、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エタン(CAS番号[27043-37-4])、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(α,ω-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン)、CAS番号[16096-30-3])、及び水素化ビスフェノールA(2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、CAS番号[13410-58-7])が含まれる。
【0044】
より好ましくは、本発明の反応性成分(A)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有する。
【0045】
本発明の実施形態において、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和結合、例えば以下の官能基:アリル、ビニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、アクリルアミド、メタクリルアミド、アセチレニル、マレイミドなど、に見られるものを含有し、好ましくは、エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合を含有する。
【0046】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の反応性成分(A)は、エチレン性不飽和官能基及び/又はエポキシ基に加えて、ウレタン基、エーテル基、エステル基、カーボネート基、及びそれらの任意の組み合わせを含有する。
【0047】
本発明の反応性成分(A)として、少なくとも1つの放射線硬化性官能基を含有するオリゴマーには、例えば、エチレン性不飽和官能基と任意に連結基を介して連結したコア構造を含有するオリゴマーが含まれる。連結基は、エーテル、エステル、アミド、ウレタン、カーボネート、又はカーボネート基とすることができる。ある例では、連結基はエチレン性不飽和官能基の一部、例えばアクリルオキシ又はアクリルアミド基である。コア基は、アルキル(直鎖及び分岐鎖アルキル基)、アリール(例えばフェニル)、ポリエーテル、ポリエステル、シロキサン、ウレタン、又は他のコア構造及びそれらのオリゴマーとすることができる。好適なエチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素二重結合を含有する基、例えばメタクリレート基、アクリレート基、ビニルエーテル基、アリルエーテル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基、又はそれらの組み合わせを含んでよい。ある実施形態において、好適なオリゴマーは、単官能及び/又は多官能アクリレート、例えばモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート又はより高次の(メタ)アクリレート、又はそれらの組み合わせを含む。任意に、3D印刷のための放射線硬化性組成物の硬化、可撓性及び/又はさらなる特性をさらに改善するために、オリゴマーにシロキサン骨格が含まれていてよい。
【0048】
ある実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、以下の種類:ウレタン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するウレタンベースのオリゴマー)、ポリエーテル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエーテルベースのオリゴマー)、ポリエステル(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルベースのオリゴマー)、ポリカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリカーボネートベースのオリゴマー)、ポリエステルカーボネート(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルカーボネートベースのオリゴマー)、エポキシ(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するエポキシベースのオリゴマー)、シリコーン(すなわち、エチレン性不飽和官能基を含有するシリコーンベースのオリゴマー)又はそれらの任意の組み合わせから選択することができる。好ましくは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、以下の種類:ウレタンベースのオリゴマー、エポキシベースのオリゴマー、ポリエステルベースのオリゴマー、ポリエーテルベースのオリゴマー、ポリエーテルウレタンベースのオリゴマー、ポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はシリコーンベースのオリゴマー、及びそれらの任意の組み合わせから選択することができる。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、ウレタン繰り返し単位と、1個、2個又はそれ以上のエチレン性不飽和官能基、例えば炭素-炭素不飽和二重結合を含有するもの、例えば(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基及びビニル基とを含む、ウレタンベースのオリゴマーを含む。好ましくは、オリゴマーは、オリゴマー分子の骨格内に少なくとも1つのウレタン結合(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のウレタン結合)と、オリゴマー分子にペンダント状に結合した少なくとも1つのアクリレート及び/又はメタクリレート官能基(例えば、1つ、2つ又はそれ以上のアクリレート及び/又はメタクリレート官能基)とを含有する。ある実施形態において、脂肪族、環状脂肪族、又は混合脂肪族及び環状脂肪族ウレタン繰り返し単位が好適である。ウレタンは、典型的には、ジイソシアネートとジオールとの縮合によって調製される。繰り返し単位当たり少なくとも2つのウレタン部分を有する脂肪族ウレタンが有用である。さらに、ウレタンを調製するために用いられるジイソシアネート及びジオールは、同一であっても異なっていてもよい2価の脂肪族基を含む。
【0050】
一実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーは、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するポリエステルウレタンベースのオリゴマー又はポリエーテルウレタンベースのオリゴマーを含む。エチレン性不飽和官能基は、炭素-炭素不飽和二重結合を含有するもの、例えばアクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基など、好ましくはアクリレート基及びメタクリレート基とすることができる。
【0051】
好適なウレタンベースのオリゴマーは当技術分野で既知であり、多くの様々な手順によって容易に合成し得る。例えば、多官能アルコールをポリイソシアネート(好ましくは、化学量論的過剰のポリイソシアネート)と反応させてNCO末端プレオリゴマーを形成し、その後、これをヒドロキシ官能性エチレン性不飽和モノマー、例えばヒドロキシ官能性(メタ)アクリレートと反応させてよい。多官能アルコールは、1分子当たり2個以上のOH基を含有する任意の化合物でよく、モノマーポリオール(例えば、グリコール)、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどであってよい。本発明の一実施形態におけるウレタンベースのオリゴマーは、(メタ)アクリレート官能基を含有する脂肪族ウレタンベースのオリゴマーである。
【0052】
好適なポリエーテル又はポリエステルウレタンベースのオリゴマーには、脂肪族又は芳香族ポリエーテル又はポリエステルポリオールと、(メタ)アクリレート基などのエチレン性不飽和官能基を含有するモノマーで官能化された脂肪族又は芳香族ポリイソシアネートとの反応生成物が含まれる。好ましい実施形態において、ポリエーテル及びポリエステルは、それぞれ脂肪族ポリエーテル及びポリエステルである。好ましい実施形態において、ポリエーテル及びポリエステルウレタンベースのオリゴマーは脂肪族ポリエーテル及びポリエステルウレタンベースのオリゴマーであり、(メタ)アクリレート基を含む。
【0053】
一実施形態において、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマーの60℃での粘度は、2000~100000cPの範囲、例えば3000cP、4000cP、5000cP、6000cP、7000cP、8000cP、10000cP、20000cP、30000cP、40000cP、50000cP、60000cP、70000cP、80000cP、90000cP、95000cP、好ましくは4000~60000cP、例えば4000~15000cP、又は20000cP~60000cPであり、これらはDIN EN ISO3219に従い測定される。
【0054】
モノマーは組成物の粘度を下げることができる。モノマーは単官能又は多官能(例えば二官能、三官能)である。一実施形態において、モノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物、20個以下の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸及びそれらの無水物、及びビニル置換複素環化合物からなる群から選択することができる。
【0055】
本開示の文脈において、用語「(メタ)アクリレートモノマー」とは、(メタ)アクリレート部分を含むモノマーを意味する。(メタ)アクリレート部分の構造は次のとおりであり:
【化1】
式中、RはH又はメチルである。
【0056】
(メタ)アクリレートモノマーは、単官能又は多官能(例えば二官能、三官能)の(メタ)アクリレートモノマーとすることができる。例示的な(メタ)アクリレートモノマーには、C~C20アルキル(メタ)アクリレート、C~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、C~C10シクロアルキル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、2-(2-エトキシ)エチルアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、(5-エチル-1,3-ジオキサン-5-イル)メチルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びジシクロペンテニル(メタ)アクリレートが含まれる。
【0057】
~C20アルキル(メタ)アクリレートの具体例には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ラウリル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-セチル(メタ)アクリレート、n-ステアリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソステアリル(メタ)アクリレート(ISTA)が含まれる。C~C18アルキル(メタ)アクリレート、特にC~C16アルキル(メタ)アクリレート又はC~C12アルキル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0058】
~C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えばC~Cヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの具体例には、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、又は3-ヒドロキシ-2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが含まれる。
【0059】
~C10シクロアルキル(メタ)アクリレートの具体例には、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、又はシクロヘキシルメタクリレートが含まれる。
【0060】
多官能(メタ)アクリレートモノマーの例には、(メタ)アクリル酸エステル、及び特に多官能アルコールのアクリル酸エステル、特にヒドロキシル基以外にはさらなる官能基を含まないもの、又はそれらがいずれかを含む場合にはエーテル基を含むものが含まれる。このようなアルコールの例は、例えば、二官能性アルコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、及び縮合度がより高いそれらの対応物、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなど、1,2-、1,3-又は1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、アルコキシル化フェノール化合物、例えばエトキシル化及び/又はプロポキシル化ビスフェノール、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジメタノール、官能価3以上のアルコール、例えばグリセロール、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、及び対応するアルコキシル化されたアルコール、特にエトキシル化及び/又はプロポキシル化されたアルコールである。
【0061】
本開示の文脈において、用語「(メタ)アクリルアミドモノマー」は、モノマーが(メタ)アクリルアミド部分を含むことを意味する。(メタ)アクリルアミド部分の構造は、CH=CR-CO-Nであり、式中、Rは水素又はメチルである。(メタ)アクリルアミドモノマーの具体例には、アクリロイルモルホリン、メタクリロイルモルホリン、N-(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(ブトキシメチル)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシメチル)メタクリルアミド、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスメタクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)メタクリルアミド、N-(ブトキシメチル)メタクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド及びN,N-ジエチルメタクリルアミドが含まれる。(メタ)アクリルアミドモノマーは単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0062】
20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族化合物の例には、例えばスチレン及びC~C-アルキル置換スチレン、例えばビニルトルエン、p-tert-ブチルスチレン及びα-メチルスチレンが含まれる。
【0063】
20個以下の炭素原子(例えば2~20個又は8~18個の炭素原子)を有するカルボン酸のビニルエステルの例には、ビニルラウレート、ビニルステアレート、ビニルプロピオネート及びビニルアセテートが含まれる。
【0064】
3~8個の炭素原子を有するα,β-不飽和カルボン酸の例には、アクリル酸又はメタクリル酸が含まれる。
【0065】
ビニル置換複素環化合物の例にはモノビニル置換複素環化合物が含まれ、複素環化合物は、2~7個の炭素原子と、N、O及びSから選択される1~4個(好ましくは1又は2個)のヘテロ原子を含有する5~8員環、例えば、ビニルピリジン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルホリン-2-オン、N-ビニルカプロラクタム及び1-ビニルイミダゾール、ビニルアルキルオキサゾリジノン、例えばビニルメチルオキサゾリジノンである。
【0066】
好ましいモノマーは、(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、20個以下の炭素原子を有するビニル芳香族、及びビニル置換複素環化合物である。
【0067】
好ましい実施形態において、本発明の反応性成分(A)は、少なくとも1つのエチレン性不飽和官能基を含有するオリゴマー及びモノマーの両方を含む。オリゴマーのモノマーに対する質量比は、10:1~1:10の範囲、好ましくは8:1~1:8、又は5:1~1:5、又は3:1~1:5、又は1:1~1:4とすることができる。
【0068】
反応性成分(A)の量は、本発明の組成物の総質量に対して10~99.8質量%、例えば15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、55質量%、60質量%、70質量%、80質量%、85質量%、90質量%、92質量%、95質量%、96質量%、98質量%、99.8質量%、好ましくは10~99質量%又は15~95質量%、又は20~98.9質量%、又は20~95質量%、又は25~98.9質量%、30~98.9質量%、40~98.9質量%、50~98.9質量%、55~98.9質量%、40~95質量%、45~95質量%、50~95質量%の範囲とすることができる。一般的に、反応性成分(A)の量は、粘度などの要求が異なる3Dプリンターに依存する。
【0069】
物理的揮発性剤(B)
本発明の硬化性組成物は、成分(B)として少なくとも1つの物理的揮発性剤を含む。本発明において、用語「物理的揮発性剤」は、本発明の組成物中の他の成分と反応しないか、又は実質的に反応しない揮発性剤を意味し、「実質的に」とは、組成物中の他の成分との物理的揮発性剤の反応が、起こったとしても、本発明の目的のために、揮発性剤の物理的性質及び他の成分の性質に影響を及ぼさないことを意味する。
【0070】
本発明の物理的揮発性剤(B)は、可溶性固体物理的揮発性剤及び/又は周囲圧力で0℃を超える沸点を有する液体物理的揮発性剤であってよい。好ましくは、本発明の物理的揮発性剤(B)は、周囲圧力で0℃を超える沸点を有する液体物理的揮発性剤である。より好ましくは、物理的揮発性剤(B)は、アルカン、シクロアルカン、非環式又は環式エーテル、ケトン、アルキルカルボキシレート、ハロゲン化アルカン、又はそれらの任意の組み合わせから選択される。一実施形態において、本発明の物理的揮発性剤(B)の沸点は、周囲圧力で25℃を超え、好ましくは周囲圧力で200℃未満である。
【0071】
本発明において、用語「可溶性固体物理的揮発性剤」とは、固体物理的揮発性剤が本発明の硬化性組成物中に良好に分散又は溶解し得ることを意味する。
【0072】
好ましい実施形態において、物理的揮発性剤(B)は、C4~10-アルカン、好ましくはペンタン、ヘキサン、ヘプタン、及びオクタン、より好ましくはヘプタン、C4~10-シクロアルカン、好ましくはシクロペンタン、及びシクロヘキサン、C4~6-環状エーテル、好ましくはフラン、ジ-C1~5-アルキルエーテル、好ましくはジメチルエーテル及びジエチルエーテル、C4~10-シクロ-アルキレンエーテル、C1~5-ケトン、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、C1~8-アルキルカルボキシレート、好ましくはメチルホルメート、及びエチルアセテート、ジメチルオキサラート、ハロゲン化C1~6-アルカン、好ましくはメチレンクロリド、トリクロロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、2,2-ジクロロ-2-フルオロエタン、ジクロロブタン、及び1,5-ジクロロペンタン、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0073】
物理的揮発性剤の互いとの混合物も使用できる。
【0074】
好ましくは、本発明に好適な物理的揮発性剤は、アルカン、例えばC4~10-アルカン、例えばヘプタンを含む。
【0075】
物理的揮発性剤(B)の量は、本発明の組成物の総量に対して、0.1~50質量%、例えば0.1質量%、0.5質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%、3質量%、3.5質量%、4質量%、4.5質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、45質量%、50質量%、好ましくは0.1~45質量%、又は1~45質量%、又は1~40質量%、又は1~30質量%、又は1~25質量%、又は1~20質量%、又は2~35質量%、又は2~25質量%の範囲である。
【0076】
光開始剤(C)
本発明の硬化性組成物は、少なくとも1つの光開始剤を成分(C)として含む。例えば、光開始剤成分(C)には、少なくとも1つのフリーラジカル光開始剤及び/又は少なくとも1つのイオン性光開始剤、及び好ましくは少なくとも1つ(例えば1つ又は2つ)のフリーラジカル光開始剤が含まれてよい。3D印刷のための組成物に使用するため、当該技術分野で既知のあらゆる光開始剤を使用することが可能であり、例えば、SLA、DLP又はPPJプロセスに好適な当該技術分野で既知の光開始剤を使用することが可能である。
【0077】
例示的な光開始剤には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、塩素化アセトフェノン、ジアルコキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノン、ジアルキルヒドロキシアセトフェノンエステル、ベンゾイン及び誘導体(例えばベンゾインアセテート、ベンゾインアルキルエーテル)、ジメトキシベンジオン、ジベンジルケトン、ベンゾイルシクロヘキサノール及び他の芳香族ケトン、アシルオキシムエステル、アシルホスフィンオキシド、アシルホスホネート、ケトスルフィド、ジベンゾイルジスルフィド、ジフェニルジチオカーボネートが含まれる。
【0078】
例えば、フリーラジカル光開始剤は、ラジカル光重合を開始するために一般的に使用されるものから選択してよい。フリーラジカル光開始剤の例には、Irgacure(登録商標)369、Irgacure(登録商標)TPO-L、ベンゾイン、例えばベンゾイン、ベンゾインエーテル、例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、及びベンゾインアセテート、アセトフェノン、例えばアセトフェノン、2,2-ジメトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン及び1,1-ジクロロアセトフェノン、ベンジルケタール、例えばベンジルジメチルケタール及びベンジルジエチルケタール、アントラキノン、例えば2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tertブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン、トリフェニルホスフィン、ベンゾイルホスフィンオキシド、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(Lucirin TPO)、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビスアシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、例えばベンゾフェノン及び4,4’-ビス(N,N’-ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、チオキサントン及びキサントン、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体、1-フェニル-1,2-プロパンジオン2-O-ベンゾイルオキシム、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-プロピル)ケトン(Irgacure(登録商標)2959)、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、1-アミノフェニルケトン又は1-ヒドロキシフェニルケトン、例えば1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシイソプロピルフェニルケトン、フェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及び4-イソプロピルフェニル1-ヒドロキシイソプロピルケトン、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0079】
光開始剤の具体的な例には、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-N,N-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとベンゾフェノンとの組み合わせ、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル1-(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィネート、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-ホスフィンオキシド、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0080】
光開始剤(C)の量は、本発明の組成物の総質量に対して0.1~10質量%、例えば0.2質量%、0.5質量%、0.8質量%、1質量%、2質量%、3質量%、5質量%、8質量%、又は10質量%、好ましくは0.1~5質量%又は0.1~3質量%の範囲とすることができる。
【0081】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)10~99.8質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0082】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)20~98.9質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0083】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)10~98.9質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)1~40質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0084】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)10~98.9質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)1~40質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0085】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)20~99.8質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0086】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)20~99.8質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0087】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)10~99.8質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0088】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)20~99.8質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~8質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0089】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)50~98質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0090】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)50~98質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0091】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)50~98質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)1~40質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~10質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0092】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)50~98質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)1~40質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~5質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0093】
一実施形態において、本発明の硬化性組成物は、以下の成分:
(A)50~98質量%の少なくとも1つの反応性成分、
(B)0.1~50質量%の少なくとも1つの物理的揮発性剤、及び
(C)0.1~3質量%の少なくとも1つの光開始剤
を含む。
【0094】
界面活性剤(D)
任意に、界面活性剤を成分(D)として本発明の硬化性組成物に使用してよい。
【0095】
界面活性剤は、表面活性化合物、例えばアニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性界面活性剤、及びそれらの混合物である。このような界面活性剤は、例えば分散剤、可溶化剤などとして使用することができる。界面活性剤の例は、McCutcheon’s、第1巻:Emulsifiers&Detergents,McCutcheon’s Directories,Glen Rock、米国、2008年(国際版又は北米版)に記載されている。
【0096】
好適なアニオン性界面活性剤は、スルホネート、スルフェート、ホスフェート、カルボキシレート、及びそれらの混合物のアルカリ塩、アルカリ土類塩、又はアンモニウム塩である。スルホネートの例として、アルキルアリールスルホネート、ジフェニルスルホネート、アルファ-オレフィンスルホネート、リグニンスルホネート、脂肪酸及び油のスルホネート、エトキシル化アルキルフェノールのスルホネート、アルコキシル化アリールフェノールのスルホネート、縮合ナフタレンのスルホネート、ドデシルベンゼン及びトリデシルベンゼンのスルホネート、ナフタレン及びアルキルナフタレンのスルホネート、スルホスクシネート又はスルホスクシナメートが挙げられる。スルフェートの例として、脂肪酸及び油のスルフェート、エトキシ化アルキルフェノールのスルフェート、アルコールのスルフェート、エトキシ化アルコールのスルフェート、又は脂肪酸エステルのスルフェートが挙げられる。ホスフェートの例として、ホスフェートエステルが挙げられる。カルボキシレートの例として、アルキルカルボキシレート、及びカルボキシル化アルコール又はアルキルフェノールエトキシレートが挙げられる。
【0097】
好適な非イオン性界面活性剤として、アルコキシレート、N-置換脂肪酸アミド、アミンオキシド、エステル、糖ベースの界面活性剤、ポリマー界面活性剤、及びこれらの混合物が挙げられる。アルコキシレートの例として、アルコール、アルキルフェノール、アミン、アミド、アリールフェノール、1~50当量でアルコキシル化された脂肪酸又は脂肪酸エステルなどの化合物が挙げられる。アルコキシル化にはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド、好ましくはエチレンオキシドを用いてよい。N-置換脂肪酸アミドの例として、脂肪酸グルカミド又は脂肪酸アルカノールアミドが挙げられる。エステルの例として、脂肪酸エステル、グリセロールエステル又はモノグリセリドが挙げられる。糖ベースの界面活性剤の例として、ソルビタン、エトキシル化ソルビタン、スクロース及びグルコースエステル又はアルキルポリグルコシドが挙げられる。ポリマー界面活性剤の例として、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、又はビニルアセテートのホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。
【0098】
好適なカチオン界面活性剤は、第四級界面活性剤、例えば、1つ又は2つの疎水性基を有する第四級アンモニウム化合物、又は長鎖第一級アミンの塩である。
【0099】
好適な両性界面活性剤はアルキルベタイン及びイミダゾリンである。
【0100】
界面活性剤(D)の量は、本発明の組成物の総質量に対して0~15質量%、例えば0.1質量%、0.5質量%、1質量%、1.5質量%、2質量%、2.5質量%、3質量%、3.5質量%、4質量%、4.5質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、9質量%、10質量%、11質量%、12質量%、13質量%、14質量%、15質量%、好ましくは1~10質量%、又は1~9質量%、又は1~8質量%の範囲とすることができる。
【0101】
追加的な添加剤
実際の用途では、任意に、本発明の硬化性組成物は、成分(E)として追加的な添加剤、例えば非反応性希釈剤及び/又は補助剤などをさらに含んでよい。
【0102】
本発明に好適な非反応性希釈剤は、例えば(ビ)環状脂肪族化合物、例えばシクロヘキサン及びそのアルキル化誘導体、及びデカヒドロナフタレン、環状スルホキシド、例えばスルホラン、窒素複素環、例えばピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、キナルジン及びN-メチルピロリドン、及びカルボキサミド、例えばN,N-ジメチルホルムアミド及びN,N-ジメチルアセトアミドを含む。
【0103】
補助剤として、好ましい例は、難燃剤、核剤、潤滑剤、染料、顔料、触媒、UV吸収剤及び安定剤(例えば酸化、加水分解、光、熱又は変色に対する安定剤)、無機及び/又は有機充填剤、補強材及び可塑剤を挙げることができる。加水分解阻害剤として、オリゴマー及び/又はポリマーの脂肪族又は芳香族カルボジイミドが好ましい。老化及び有害な環境影響に対して本発明の硬化材料を安定化させるために、好ましい実施形態において安定剤が系に添加される。
【0104】
本発明の組成物が使用中に熱酸化損傷に暴露される場合、好ましい実施形態において、酸化防止剤を添加する。フェノール酸化防止剤が好ましい。フェノール酸化防止剤、例えばBASF SE社のIrganox(登録商標)1010が、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed.,Hanser Publishers,Munich、2001年、第98~107頁、第116及び第121頁に示されている。
【0105】
本発明の組成物は、UV光に暴露された場合、好ましくはUV吸収剤で追加的に安定化させる。UV吸収剤は一般に、高エネルギーのUV光を吸収してエネルギーを散逸させる分子として知られている。産業界で用いられている慣用のUV吸収剤は、例えば、桂皮酸エステル、ジフェニルシアンアクリレート、ホルムアミジン、ベンジリデンマロネート、ジアリールブタジエン、トリアジン及びベンゾトリアゾールの群に属する。市販のUV吸収剤の例は、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed,Hanser Publishers,Munich、2001年、第116~122頁に見出される。
【0106】
上記の補助剤に関するさらなる詳細は、専門文献、例えば、Plastics Additive Handbook、第5版、H.Zweifel,ed,Hanser Publishers,Munich、2001年に見出される。
【0107】
可塑剤は、ポリマーのガラス転移温度(Tg)を低下させるために使用できる。可塑剤は、ポリマー鎖の間に埋め込まれて間隔を空ける(「自由体積」を増加させる)ことで、ポリマーのガラス転移温度を低下させてこれをより柔らかくする作用がある。
【0108】
可塑剤は、実際の用途に応じて当業者が本発明のために選択することができる。例示的な可塑剤には、C~C15、好ましくはC~C10ポリカルボン酸及び直鎖又は分岐C~C30、好ましくはC~C20、より好ましくはC~C12脂肪族アルコールとのそれらのエステルが含まれる。これら可塑剤の非限定的な例には、セバシン酸、セバケート(例えばジブチルセバケート(DBS))、アジピン酸、アジペート(例えばビス(2-エチルヘキシル)アジペート(DEHA))、グルタル酸、グルタレート、フタル酸、フタレート(例えばビス(2-エチルヘキシル)フタレート(DEHP))、アゼライン酸、アゼレート、マレイン酸、マレエート(例えばジブチルマレエート(DBM))、クエン酸及びその誘導体が含まれ、例えば、参照として本明細書に組み込まれるWO2010/125009を参照されたい。
【0109】
他の好ましい可塑剤は、ベンゾエート、エポキシ化植物油、スルホンアミド、例えばN-エチルトルエンスルホンアミド(o/p ETSA)、オルト-及びパラ-異性体、N-(2-ヒドロキシプロピル)ベンゼンスルホンアミド(HP BSA)、N-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミド(BBSA-NBBS)、オルガノホスフェート、例えばトリクレシルホスフェート(TCP)、トリブチルホスフェート(TBP)、グリコール/ポリエーテル及びそれらの誘導体、例えばトリエチレングリコールジヘキサノエート(3G6、3GH)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート(4G7)、ポリマー可塑剤、例えば高分子量エポキシ化油、及びポリエステル可塑剤、ポリブテン及びポリイソブチレンからなる群から選択される。
【0110】
代替の実施形態において、可塑剤は生分解性可塑剤、例えば食品添加物として使用されるもの、及び食品包装、医療品、化粧品及び子供用玩具に使用されるものとすることができる。
【0111】
本発明において、可塑剤は組み合わせて又は個別に使用してよい。
【0112】
好ましい実施形態において、可塑剤は、シクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステル、好ましくは1,2-シクロヘキサンジカルボン酸のエステル、より好ましくは1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(例えばBASF SE社のHexamoll(登録商標)DINCH)からなる群から選択できる。
【0113】
存在する場合、本発明の硬化性組成物中の追加的な添加剤(複数可)の量は、本発明の組成物の総質量に対して0~60質量%、例えば5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%、35質量%、40質量%、50質量%、60質量%、好ましくは0~50質量%、又は0~30質量%の範囲であってよい。
【0114】
組成物の調製
本発明の一態様は、組成物の成分を混合することを含む、3D印刷のための本発明の硬化性組成物を調製する方法に関する。
【0115】
本発明の一実施形態によれば、混合は撹拌しながら室温で行うことができる。全ての成分が均一に合わせて混合される限り、混合時間及び撹拌速度に特に制限はない。具体的な実施形態において、混合は1000~3000RPM、好ましくは1500~2500RPMで5~60分、より好ましくは6~30分行うことができる。
【0116】
3D印刷物体及びその調製
本発明の1つの側面は、本発明の硬化性組成物を使用することを含む、3D印刷物体を形成する方法に関する。
【0117】
本発明の一実施形態において、3D印刷物体を形成する工程は、以下の工程:
(i)組成物を層の形態で適用し、そして適用された組成物を放射線により層ごとに硬化させて、中間3D印刷物体を形成する工程、及び
(ii)放射線によって中間3D印刷物体全体を硬化させて、硬化した3D印刷物体を形成する工程
を含む。
【0118】
本発明によれば、工程(i)及び(ii)における硬化時間は、それぞれ実際の用途に応じて当業者が決定してよい。例えば、方法の工程(i)において、各層の硬化時間は0.5~10秒、例えば0.6~6秒であってよい。
【0119】
方法の工程(ii)において、中間3D印刷物体全体の硬化時間は、中間3D印刷物体全体を硬化させるのに十分である限り、特に制限されない。実際の条件(硬化させる中間3D印刷物体のサイズ、及び用いる硬化エネルギーなど)に応じて、当業者が適切な硬化時間を選択する。
【0120】
工程(i)又は工程(ii)の間の温度は、特に制限されない。具体的には、使用する材料及び3Dプリンタに応じて温度を選択してよい。
【0121】
本発明の一実施形態において、3D印刷物体を形成する方法は、(iii)硬化した3D印刷物体を熱処理又はガス吹き付けによって処理する工程をさらに含む。例えば、熱処理は、40~200℃、好ましくは60~180℃、例えば60~160℃、90~150℃、より好ましくは100~140℃の温度で、物理的揮発性剤を除去するのに十分な時間、行ってよい。
【0122】
本発明の一実施形態において、工程(iii)の間に、硬化した3D印刷物体をフード内でガス吹き付け処理する。
【0123】
本発明の硬化性組成物は、放射線、例えば重合又は架橋反応を開始させるのに十分なエネルギーを有する活性線によって硬化させてよい。活性線には、限定するものではないが、α線、γ線、紫外線(UV放射線)、可視光線、及び電子線が含まれ、UV放射線及び電子線、特にUV放射線が好ましい。
【0124】
具体的な実施形態において、放射光の波長は350~420nmの範囲、例えば355nm、365nm、385nm、395nm、405nm、420nmとすることができる。
【0125】
ステレオリソグラフィー(SLA)、デジタル光処理(DLP)、フォトポリマー噴射(PPJ)、LCD技術又は当業者に既知の他の技術を、本発明の3D印刷物体を形成する方法の工程(i)において用いることができる。好ましくは、複雑な形状の硬化した3D物体の製造は、例えば、長年知られているステレオリソグラフィーによって行われる。この技術では、2つの工程(1)及び(2)を交互に繰り返しながら、放射線硬化性組成物から所望の形状の成形品が組み立てられる。工程(1)では、その1つの境界が組成物の表面である放射線硬化性組成物の層を、適切な画像化放射線、好ましくはコンピュータ制御された走査レーザビームからの画像化放射線によって、形成される成形品の所望の断面積に対応する表面領域内で硬化させ、そして工程(2)において、硬化させた層を放射線硬化性組成物の新しい層で覆い、そして工程(1)及び工程(2)の連続を、所望の形状が完成するまでしばしば繰り返す。
【0126】
本発明はさらに、本発明の硬化性組成物から形成された、又は本発明の方法によって得られた、3D印刷物体に関する。
【0127】
3D印刷物体には、ソール、アウターウェア、布、履物、玩具、マット、タイヤ、ホース、手袋、シール、医療機器、例えば補聴器、歯科部品が含まれる。
【0128】
本発明の3D印刷物体は、低密度、安定した寸法サイズ、及び均一な多孔質構造を有する。
【実施例
【0129】
本発明は、以下の非限定的な実施例の観点からより良く理解されるであろう。
【0130】
材料及び略称
成分(A):
Bomar(登録商標)BR-744SD:Dymax社の二官能性脂肪族ポリエステルウレタンアクリレート、その60℃での粘度は7000cPである。
イソ-デシルアクリレート(IDA)、
BASF社のビニルメチルオキサゾリジノン(VMOX)、
BASF社の4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)、
アクリロイルモルホリン(ACMO)、及び
Allnex社のEBECRYL(登録商標)。
【0131】
成分(B)
Aldrich-Sigmas社のヘプタン。
【0132】
成分(C)
光開始剤:IGM社の2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(TPO)。
【0133】
成分(D)
Momentive社のNiax Silicone L6900
Evonik社のTegostab(登録商標)B8498
Evonik社のDabco(登録商標)DC193。
【0134】
実施例A、A1、A2、A3、B、B1、C、C1及びD
【0135】
1. 硬化性組成物の調製
実施例A、A1、A2、A3、B、B1、C、C1及びDの硬化性組成物を、全成分を表1に示す量でプラスチック製バイアルに添加し、そしてスピードミキサーにより2000RPMで10分間25℃で混合することにより調製した。表1の量は質量部で示す。
【0136】
これらの実施例のうち、実施例A1、A2、A3、B1及びC1は本発明の実施例であり、実施例A、B、C及びDは比較例である。
【0137】
2. 3D印刷物体の調製
実施例A、A1、A2、A3、B、B1、C、C1及びDの硬化性組成物をそれぞれUV照射下でキャストし、3D印刷プロセスを刺激し、3D印刷物体を得た。
【0138】
特に、実施例では、3D印刷物体は、以下の工程を含むプロセスによって調製した:
1.硬化性組成物を、UV-LED硬化システム-YW150100(UVPRO Co.,Ltd社製)によって25℃で0.1分間キャストして(LED光源の波長は405nmであり、トラック速度は3m/分であり、各パスのエネルギーは1298mJ/cmであり、パスを4回繰り返した)、ダンベル状の中間3D印刷物体サンプルを形成する工程、
2.工程1からの中間3D印刷物体サンプルを、NextDent商標LC-3DPrint Boxによって60分間硬化させて(18Wの電力を有する12個のランプ(色番号71を有する6個のランプ及び色番号78を有する6個のランプ)をこの工程で使用した)、ダンベル状の硬化した3D印刷物体サンプル(サンプル(I))を形成する工程、及び
3.工程2からの硬化した3D印刷物体を110℃で1時間処理して、後処理した硬化した3D印刷物体サンプル(サンプル(II))を形成する工程。
【0139】
3. 調製した3D印刷物体の試験
密度
各実施例からの後処理した硬化した3D印刷物体サンプル(サンプル(II))の密度を、ASTM-D-792によって測定した。結果を表1に示す。
【0140】
形態
本発明の3D印刷物体の形態を調べるために、組成物A2、B1、C1及びDから得られたサンプル(II)のSEM写真を提供し、ZEISS Super55走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した。
【0141】
図1は、実施例A2の組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真であり、小さな穴及び均一に分布した多孔質構造を3D印刷物体に示している。
【0142】
図2は、実施例B1の組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真であり、小さな穴及び均一に分布した多孔質構造を3D印刷物体に示している。
【0143】
図3は、実施例C1の組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真であり、小さな穴及び均一に分布した多孔質構造を3D印刷物体に示している。
【0144】
図4は、実施例Dの組成物から得られたサンプル(II)のSEM写真である。多孔質構造は形成されなかった。
【0145】
サイズ安定性
本発明の3D印刷物体のサイズ安定性を調べるために、実施例A2の組成物を用いた3D印刷物体の調製と同じ手順で得られたサンプル(I)及びサンプル(II)の写真を図5に示す。
【0146】
図5に示すように、3D印刷物体調製の工程3で得られたサンプル(II)の形状は、3D印刷物体調製の工程2で得られたサンプル(I)の形状とほとんど変わらないままであった。
【0147】
【表1】
【0148】
実施例A、A1、A2及びA3によれば、ヘプタンを増加させると、3D印刷物体の密度は1.176g/cmから1.057g/cmに減少し、密度の減少割合は約10%であった。実施例B、B1、C及びC1によれば、ヘプタンを伴う組成物から得られた3D印刷物体の密度は、ヘプタンを伴わない組成物から得られた密度よりも低く、ヘプタンの導入は軽量な3D印刷物体を調製できることが示された。
【0149】
実施例Dは、界面活性剤を含むが物理的揮発性剤を含まない硬化性組成物であった。図2によれば、実施例Dの組成物から得られたサンプル(II)には多孔質構造は見られなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】