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特表2024-524321ポリウレタンウレア繊維又は膜及びその調製方法
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  • 特表-ポリウレタンウレア繊維又は膜及びその調製方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ポリウレタンウレア繊維又は膜及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20240628BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240628BHJP
   D01F 6/72 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
C08G18/66 014
C08G18/10
D01F6/72
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579676
(86)(22)【出願日】2022-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2022067022
(87)【国際公開番号】W WO2023274810
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/102756
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,シウ ジュアン
(72)【発明者】
【氏名】ローデヴァルド,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】シー,ダー
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,ミン キアン
(72)【発明者】
【氏名】ジアン,ディアン ボー
【テーマコード(参考)】
4J034
4L035
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034CA13
4J034CA15
4J034CB01
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034DA01
4J034DB04
4J034DC05
4J034DH02
4J034DH06
4J034DH10
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA01
4J034JA02
4J034JA42
4J034RA09
4L035AA04
4L035BB11
(57)【要約】
本発明は、高い伸長率及び低い引張応力、低いヒステリシス損失と同時に優れた弾性回復力を有するポリウレタンウレア繊維又は膜に関する。本発明の弾性ポリウレタン弾性繊維又は膜は、コポリマーグリコール、ジイソシアネート、連鎖延長剤及び任意選択的に連鎖停止剤から形成される。ポリウレタン繊維の特徴は、そのハードセグメント含有量が8.0~13.0重量%の範囲内であることが明記される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンウレア繊維又は膜であって、8.0~13.0重量%のハードセグメント含有量を含み、前記ハードセグメント含有量は、以下の式:
【数1】
として定義され、前記ポリウレタンウレア繊維又は膜は、コポリマーグリコールの使用を介して調製される、ポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項2】
前記ポリウレタンウレア繊維又は膜のハードセグメント含有量は、8.0~12.5重量%の範囲内であり、ウレタン部分は、5000~9000g/モルの数平均分子量Mn(ウレタン)を有し、及びウレア部分は、500~900g/モルの数平均分子量Mn(ウレア)を有し、好ましくは、前記ポリウレタンウレア繊維又は膜のハードセグメント含有量は、8.5~12.5重量%の範囲内であり、前記ウレタン部分は、5500~8500g/モルのMn(ウレタン)を有し、及び前記ウレア部分は、550~850g/モルのMn(ウレア)を有する、請求項1に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項3】
前記コポリマーグリコールは、少なくとも1つの芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステルと、少なくとも1つのポリマーグリコールとから調製される、請求項1又は2に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項4】
前記コポリマーグリコールの数平均分子量(Mn)は、500~5000g/モル、好ましくは1800~4000g/モル、より好ましくは2000~3500g/モルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項5】
前記コポリマーグリコール中における芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステル部分の含有量は、6.0~20.0重量%である、請求項3又は4に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項6】
前記芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステルは、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、フタル酸、テレフタル酸及びこれらの無水物から選択され、好ましくはイソフタル酸、イソフタル酸ジメチル及びこれらの混合物、より好ましくはイソフタル酸から選択される、請求項3~5のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項7】
前記ポリマーグリコールは、ポリテトラヒドロフラングリコール、ポリエステロール、ポリエテロール、ポリカプロラクトン及び/又はこれらの混合物の群から選択され、好ましくは、前記ポリマーグリコールは、ポリテトラヒドロフラングリコールを含み、より好ましくは、前記ポリマーグリコールは、ポリテトラヒドロフラングリコールである、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜を作製するプロセスであって、
a)コポリマーグリコールを少なくとも1つのジイソシアネートと反応させて、両方の末端にイソシアネートを含むウレタンプレポリマーを得ることと、
b)連鎖延長剤及び任意選択的に連鎖停止剤を不活性溶媒下で前記ウレタンプレポリマーに添加して、ポリウレタンウレア溶液を得ることと、
c)前記ポリウレタンウレア溶液を乾式紡糸して、前記ポリウレタンウレア繊維を得ることと
を含むプロセス。
【請求項9】
前記ジイソシアネートは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み、好ましくは60%超の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、より好ましくは80%超の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、最も好ましくは95%超の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記連鎖延長剤は、イソシアネート基と反応性である2つの水素原子を有する脂肪族ジアミンを含み、好ましくは、前記脂肪族ジアミンは、1,2-エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、前記脂肪族ジアミンは、1,2-エチレンジアミンである、請求項8又は9に記載のプロセス。
【請求項11】
前記連鎖停止剤は、アルキルアルコール及び/又はジアルキルアミンであり、好ましくは、前記連鎖停止剤は、n-ブタノール、シクロヘキサノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジブチルアミン又はこれらの混合物から選択される、請求項8~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
連鎖延長剤及び連鎖停止剤以外のアミン類は、前記連鎖延長剤と共に添加され、好ましくは、連鎖延長剤及び連鎖停止剤以外の前記アミン類は、ジエチレン-トリアミン及び/又はジエタノールアミンである、請求項8~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
布地を作製するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンウレア繊維又は膜及びその調製方法に関する。本発明は、高い伸長率、低い引張応力、優れた弾性回復力及び低いヒステリシス損失を有するポリウレタンウレア繊維又は膜に更に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性ポリウレタンウレア繊維は、突出した弾力性及び高い収縮力と組み合わせた相当な伸張性を備える。この突出した特性の組み合わせのため、それは、下着、上着、運動着、水着、靴下、ガードル、医療品、衛生製品などで広く使用されている。こうした弾性ポリウレタン繊維及びこれらを製造するプロセスは、米国特許第5541280号明細書、同第6692828号明細書、欧州特許第1401946号明細書、独国特許第19931255号明細書、特開昭63-219620号公報及び米国特許第6503996号明細書に記載されている。
【0003】
これらの弾性ポリウレタンウレア繊維の欠点としては、一部の用途では、不十分な破断伸び(これにより、従って比較的低い予張力下でのみ布地への組み込みが可能となる)、200~400%の慣習的な着衣伸び率における依然として実質的な張力の増加(これは、特に弾性ポリウレタン繊維の含有量が高い場合、例えば運動着、医療包帯、カフス、靴下又は乳児用おむつとして不快な圧迫感をもたらし得る)が挙げられる。
【0004】
低い伸縮応力を伴う極めて高い破断伸び又は伸縮性を示すポリウレタンウレア繊維は、通常、柔らかい伸縮性を付与することができる一方、低い回復率は、レオタード、運動着における場合などで繰り返しの大きい伸縮又は屈曲後にバルジング又はラギングを生じさせ、関連する物品の快適性及び審美性を悪化させる。
【0005】
高い伸長率、低い引張応力、良好な弾性回復力及び低いヒステリシス損失の点でバランスの取れたポリウレタンウレア弾性繊維の性能がソフトフィット衣料に求められている。
【0006】
米国特許第5000899A号明細書は、良好な熱硬化特性を示す、ジアミン混合物と組み合わせたポリウレタンウレア繊維を作製するためにテトラヒドロフランと3-メチルテトラヒドロフランとのコポリマーを用いるプロセスを開示しているが、伸長率、弾性回復力及び引張応力の改善について言及していない。
【0007】
米国特許第5879799A号明細書は、耐熱性、耐摩耗性、伸長率及び低温性能の間でバランスの取れた性能を有するポリウレタンウレア繊維を作製するために、2~10個の炭素原子を含有する異なるアルキレンエーテルからなるポリアルキレンエーテルグリコールのコポリマーを用いるプロセスを開示しているが、その繊維の引張応力は、高い。
【0008】
米国特許出願公開第20090182113A号明細書は、ポリウレタンウレア繊維を作製するためにポリテトラヒドロフラングリコールとイソフタル酸又はイソフタル酸誘導体とのコポリマーを用いるプロセスを開示しているが、これから製造された繊維は、高い伸縮性及び低い引張応力に付随するバルジング又はラギングの問題の改善を示しておらず、更にポリマー組成設計が欠けているため、作製されたポリウレタンウレア溶液は、ポリマー固形分が20重量%であっても、低いポリウレタン粘度安定性及びゲル化に起因する低い可紡性を示し、且つ/又は他の副反応が予期される。
【0009】
このため、高い伸長率、低い引張応力、優れた弾性回復性及び低いヒステリシス損失を有するポリウレタンウレア繊維又は膜の提供が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い伸長率、低い引張応力、優れた弾性回復性及び低いヒステリシス損失の間でバランスの取れた性能を有するポリウレタンウレア繊維又は膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、上記の目的は、以下の実施形態によって達成可能であることが発見された。
【0012】
1.8.0~13.0重量%のハードセグメント含有量(HS)を含むポリウレタンウレア繊維又は膜であって、前記ハードセグメント含有量は、以下の式:
【数1】
として定義され、前記ポリウレタンウレア繊維又は膜は、コポリマーグリコールの使用を介して調製される、ポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0013】
2.ポリウレタンウレア繊維又は膜のハードセグメント含有量は、8.0~12.5重量%の範囲内であり、ウレタン部分は、5000~9000g/モルの数平均分子量Mn(ウレタン)を有し、及びウレア部分は、500~900g/モルの数平均分子量Mn(ウレア)を有し、好ましくは、ポリウレタンウレア繊維又は膜のハードセグメント含有量は、8.5~12.5重量%の範囲内であり、ウレタン部分は、5500~8500g/モルのMn(ウレタン)を有し、及びウレア部分は、550~850g/モルのMn(ウレア)を有する、第1項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0014】
3.前記コポリマーグリコールは、少なくとも1つの芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステルと、少なくとも1つのポリマーグリコールとから調製される、第1項又は第2項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0015】
4.前記コポリマーグリコールの数平均分子量(Mn)は、500~5000g/モル、好ましくは1800~4000g/モル、より好ましくは2000~3500g/モルである、第1~3項のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0016】
5.コポリマーグリコール中における芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステル部分の含有量は、6.0~20.0重量%である、第3項又は第4項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0017】
6.芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステルは、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、フタル酸、テレフタル酸及びこれらの無水物から選択され、好ましくはイソフタル酸、イソフタル酸ジメチル及びこれらの混合物、より好ましくはイソフタル酸から選択される、第3~5項のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0018】
7.ポリマーグリコールは、ポリテトラヒドロフラングリコール、ポリエステロール、ポリエテロール、ポリカプロラクトン及び/又はこれらの混合物の群から選択され、好ましくは、ポリマーグリコールは、ポリテトラヒドロフラングリコールを含み、より好ましくは、ポリマーグリコールは、ポリテトラヒドロフラングリコールである、第1~6項のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維又は膜。
【0019】
8.第1~7項のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維を作製するプロセスであって、
a)コポリマーグリコールを少なくとも1つのジイソシアネートと反応させて、両方の末端にイソシアネートを含むウレタンプレポリマーを得ることと、
b)連鎖延長剤及び任意選択的に連鎖停止剤を不活性溶媒下で上記のウレタンプレポリマーに添加して、ポリウレタン溶液を得ることと、
c)前記ポリウレタン溶液を乾式紡糸して、ポリウレタンウレア繊維を得ることと
を含むプロセス。
【0020】
9.前記ジイソシアネートは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含み、好ましくは60%超の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、より好ましくは80%超の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート、最も好ましくは95%超の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートを含む、第8項に記載のプロセス。
【0021】
10.連鎖延長剤は、イソシアネート基と反応性である2つの水素原子を有する脂肪族ジアミンを含み、好ましくは、前記脂肪族ジアミンは、1,2-エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン及びこれらの混合物から選択され、より好ましくは、前記脂肪族ジアミンは、1,2-エチレンジアミンである、第8項又は第9項に記載のプロセス。
【0022】
11.連鎖停止剤は、アルキルアルコール及び/又はジアルキルアミンであり、好ましくは、前記連鎖停止剤は、n-ブタノール、シクロヘキサノール、エタノールアミン、ジエタノールアミン、N,N-ジエチルアミン、N,N-ジブチルアミン又はこれらの混合物から選択される、第8~10項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0023】
12.連鎖延長剤及び連鎖停止剤以外のアミン類は、連鎖延長剤と共に添加され、好ましくは、連鎖延長剤及び連鎖停止剤以外のこうしたアミン類は、ジエチレン-トリアミン及び/又はジエタノールアミンである、第8~11項のいずれか一項に記載のプロセス。
【0024】
13.布地を作製するための、第1~7項のいずれか一項に記載のポリウレタンウレア繊維の使用。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施例2の4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)部分内のメチレン基の化学シフトのHNMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
別段定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書で使用するとき、以下の用語は、別段の指定がない限り、これらに帰するとされる下記の意味を有する。
【0027】
不定冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その」は、前記冠詞に続く用語によって指定される種類の1つ以上を意味する。
【0028】
本開示に関連して、特徴に関して言及される任意の特定の値(端点としてある範囲内で言及される特定の値を含む)は、新たな範囲を形成するように組み換えられ得る。
【0029】
上記及び下記で依然として説明されていない本発明の主題の特徴は、示される特定の組み合わせのみではなく、他の組み合わせにおいても、本発明の範囲を逸脱することなく利用可能であることが理解されるであろう。
【0030】
一実施形態では、本発明のポリウレタンウレア繊維は、コポリマーグリコール、少なくとも1つのジイソシアネート、少なくとも1つの連鎖延長剤及び任意選択的に連鎖停止剤から調製される。
【0031】
本発明のコポリマーグリコールは、ポリマーグリコールを少なくとも1つの芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/又はそのエステルで縮合させることによって実質的に調製される。好ましい実施形態では、前記少なくとも1つの芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/又はそのエステルは、エステル交換触媒、例えば担体上に固定化されたチタンテトラブチルオルトチタネート、テトライソプロピルオルトチタネート、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズオキシド、スズオクトアート、塩化スズ、酸化スズ、硫酸、パラ-トルエンスルホン酸、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、チタンゼオライト、リパーゼ又はヒドロラーゼ、好ましくはテトラブチルオルトチタネート(相互比較)の存在下での、イソフタル酸(IPA)、フタル酸、イソフタル酸ジメチル、テレフタル酸及びその無水物、より好ましくはイソフタル酸及び/又はイソフタル酸ジメチル、最も好ましくはイソフタル酸であり、少なくとも1つの反応段階が大気圧下であり少なくとも1つの反応段階が減圧下である様々な圧力レベルでの多段階操作において、蒸留液が反応系から除去され、このプロセスは、大気圧反応段階の2つ以上のフェーズで反応混合物を加熱することを含み、加熱フェーズは、温度が一定に維持される少なくとも1つのフェーズによって中断される。本発明のコポリマーグリコールの調製プロセスは、参照として本明細書で以下に組み込まれる米国特許出願公開第2012/0059143号明細書、特にその段落0011~0028及び実施例1に開示されている。
【0032】
実質的にとは、コポリマーグリコールの主成分が、芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステルと、少なくとも1つのポリマーグリコールとであり、他の二酸も共重合中に組み込まれ得るが、但し、こうした追加の構成要素が弾性繊維の性能に深刻な悪影響を及ぼさないことを条件とすることを意味する。
【0033】
本明細書で使用されるポリマーグリコールとしては、1分子あたり2つのヒドロキシ基を有するポリエステロール、及び/又はポリエテロール、及び/又はポリカプロラクトン、例えばポリテトラヒドロフラングリコール及びその誘導体を含むポリエーテル及びコポリエーテル、例えばポリテトラヒドロフラングリコール、ポリ(テトラヒドロフラン-コ-エチレンエーテル)グリコール、ポリカーボネートグリコール、例えばポリ(ペンタン-1,5-カーボネート)グリコール、及びポリ(ヘキサン-1,6-カーボネート)グリコール、及びポリ(エチレン-コ-プロピレンアジパート)グリコール並びにポリエステロール、例えばアジピン酸、1,4-ブタンジオール及びネオペンチルグリコールのポリエステル、アジピン酸、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールのポリエステル、アジピン酸及び1,4-ブタンジオールのポリエステル、アジピン酸及び1,6-ヘキサンジオールのポリエステル、ドデカン二酸及びネオペンチルグリコールのポリエステル又はセバシン酸及びネオペンチルグリコールのポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。ポリカプロラクトン、アジピン酸及び1,4-ブタンジオールのポリエステル、ポリテトラヒドロフラングリコール、アジピン酸のポリエステル、ブタンジオール及びネオペンチルグリコール、アジピン酸、1,4-ブタンジオール及び1,6-ヘキサンジオールのポリエステル、アジピン酸及び1,6-ヘキサンジオールのポリエステル、ドデカン二酸及びネオペンチルグリコールのポリエステル若しくはセバシン酸及びネオペンチルグリコールのポリエステル又はこれらの混合物の使用が好ましい。特に好ましいのは、ポリテトラヒドロフラングリコールの、単独での又は更なるグリコールとの混合物中での使用、特に単独での使用である。
【0034】
ポリテトラヒドロフラングリコールがポリマーグリコールとして単独で使用される場合、その数平均分子量Mnは、好ましくは、200~2500g/モル、より好ましくは200~2100g/モル、最も好ましくは500~1500g/モルである。Mnが200g/モル未満のポリテトラヒドロフラングリコールでは、得られるポリウレタンウレア繊維又は膜のヒステリシス損失が劣り、数分子量が1500g/モルを超えるポリテトラヒドロフラングリコールは、不満足に高い引張応力を示す。
【0035】
一実施形態では、芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステル部分は、ポリマーグリコールの出発分子量及びコポリマーグリコールの標的Mnに応じて、6~20重量%の範囲内である。コポリマーグリコール内の芳香族カルボン酸並びに/又はその無水物及び/若しくはそのエステル部分は、以下で改質剤として定義される。改質剤部分の分画分子量は、二酸の例であるイソフタル酸が用いられてコポリマーが作製される場合、1モルのHOが減算された二酸の残基部分として定義され、ジエステル、例えばフタル酸ジメチルが用いられてコポリマーが作製される場合、1モルのジメチルエーテルが減算され、いずれの場合にも、改質剤部分の分画分子量は、148g/モルである。
【0036】
別の実施形態では、コポリマーグリコールの数平均分子量Mnは、500~5000g/モル、好ましくは1800~4000g/モル、より好ましくは2000~3500g/モルである。
【0037】
本発明に好適なジイソシアネート類としては、芳香族ジイソシアネート類、例えば4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(4,4’-MDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-又は2,6-トルエンジイソシアネート(TDI)、1,4-フェニルジイソシアネート及び脂肪族ジイソシアネート類、例えば4,4’-ジイソシアナト-ジシクロヘキシルメタン(HMDI)、イソホロンジイソシアネートが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、個別に又は組み合わせて使用され得る。芳香族ジイソシアネート類、特に4,4’-MDIが好ましい。2,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート(2,4’-MDI)を4,4’-MDIと組み合わせて、2,4’-MDIのモル百分率を総ジイソシアネートの40%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは5%未満で用い得る。
【0038】
本発明に好適な連鎖延長剤としては、2つのイソシアネート反応性水素原子を有し、分子量が500g/モル未満の化合物が挙げられる。こうした物質は、例えば、“Kunststoffhandbuch,7,Polyurethane”,Carl Hanser Verlag,3rd edition 1993,Chapter 3.4.3.に記載されている(例えば、エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、ヒドラジン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、1,3-ジアミン-4-メチルシクロヘキサン、1-アミノ-3-アミノエチル-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(イソフォロンジアミン)、1,1’-メチレンビス(4,4’-ジアミノ-ヘキサン)トルエンジアミン、ピペラジン、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール又はこれらの混合物)。特に好ましいのは、ジアミン類、例えばエチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ジアミノペンタン、ヒドラジン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,3-シクロヘキサンジアミン、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジアミン及びイソフォロンジアミン、ジアミノヘキサン及びトルエンジアミン並びにこれらの混合物、特に単独で又は上記のジアミン類と組み合わせて80%以上のモル比で用いられるエチレンジアミンである。
【0039】
任意選択的に、連鎖停止剤は、本発明のポリウレタンウレア繊維又は膜の調製にも使用され得る。本発明に好適な連鎖停止剤としては、第二級アミン、例えばジエチルアミン、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン又は第一級アミン、例えばエタノールアミン若しくは第一級アルコール、例えばn-ブタノール(単独で又は混合物として)が挙げられる。好ましくは、連鎖停止剤は、単官能性アミンである。特定のアミンを用いることが可能であり、その例は、ジエチレン-トリアミン又はジエタノールアミンである。
【0040】
本発明におけるポリウレタンウレアポリマーの調製は、下記のプロセスによって行われ得る。
【0041】
最初に、1.2~3.0の範囲、好ましくは1.5~2.3の範囲のジイソシアネート対ポリマーグリコールのモル比でコポリマーグリコールをジイソシアネートでキャッピングする。ハードセグメント含有量を調節するため、ジイソシアネートを反応器に段階的に投入し得、すなわち反応器へのジイソシアネートの分割投入によってソフトセグメント部分及びハードセグメント部分の両方が延伸され得、これは、ポリウレタンポリマーの伸縮性及び回復性にとって有利である。
【0042】
重量基準の残留NCO含有量が理論的NCO%含有量に達することによって示して、全てのポリマーグリコールのOH基がウレタン基に変換される場合、ウレタンプレポリマーが得られ、これは、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などの溶媒中でジアミンによって鎖延長され得る。予備重合が完了したときの重量基準の理論的NCO%含有量は、本発明では、以下の通りに計算される。
【数2】
式中、Rは、コポリマーグリコール又はポリマーグリコールとジイソシアネートとのモル比であり、Mdiは、ジイソシアネートの分子量であり、例えば本発明では、4.4’-MDIが用いられる場合、Mdi=250.26g/モルである。
【0043】
Mn(コポリマー)は、ASTM1899-2016の方法によって試験される本発明のポリウレタンウレアポリマーの調製に使用されるコポリマーグリコール又は他のポリマーグリコールの数平均分子量である。
【0044】
ジエチルアミン又はn-ブタノールなどの連鎖停止剤を用いて、この分野で周知のプロセスによってポリウレタンウレアポリマーの分子量を処理範囲内に調節することができる。
【0045】
コポリマーグリコールとジイソシアネートとの予備重合プロセス中、コポリマーグリコールのOH基がウレタン基に完全に変換した後にアミンと反応するNCO%を監視して、有効なハードセグメント部分の含有量を8.0~13.0重量%、好ましくは8.0~12.5重量%、より好ましくは8.5~12.5重量%の範囲内に調節することが必要である。さもなければ、コポリマーグリコールとジイソシアネートとの予備重合中及び/又はその後にNCO%含有量が更に低下して、望ましくないゲル化及び/又は有効ハードセグメント部分含有量の低下が起こり、可紡性並びに/又は繊維の応力-歪性能及び回復力が悪化する。
【0046】
アミンによってキャッピングされるNCO%は、方法ASTM D2572-19によって試験された、NCOがキャッピングされたプレポリマーがアミンと反応する、ジイソシアネートとコポリマーグリコール又はポリマーグリコールとの予備重合の完了後且つ鎖延長前の滴定NCO%含有量である。ポリマーグリコールとイソシアネートとが予備重合する間の副反応及び/又はプレポリマーからDMAC若しくはDMFなどの溶媒に溶解する間の副反応のいずれも、スパンデックスの紡糸及び弾力性能を悪化させることが周知である。
【0047】
本発明のハードセグメント含有量は、下記の通り定義される。
【数3】
式中、Mn(ウレア)は、ウレア部分の数平均分子量を意味し、Mn(ウレタン)は、ウレタン部分の数平均分子量を意味する。
【0048】
本発明では、ハードセグメント含有量は、HNMR法によって試験される。ハードセグメント含有量が13.0重量%を超える場合、得られるポリウレタンウレアは、不満足に高い、例えば10MPa超の引張応力を示し、更にゲル化によって不安定な加工性がもたらされる。一方で、ハードセグメント含有量が8.0重量%を下回る場合、得られるポリウレタンウレアポリマーは、不快な低い回復力及び低い弾性回復率を示し、これは、衣料物品において繰り返しの伸縮又は屈曲後にバギング又はラギングを更にもたらす。
【0049】
ハードセグメント含有量が8.0~13.0重量%の範囲内であることを前提にすると、Mdo、すなわちコポリマーグリコールのMnは、好ましくは、1800~4000g/モル、より好ましくは2000~3500g/モルの範囲内である。
【0050】
完全に反応した溶液は、続いて、紡糸されて繊維を形成する。本発明の繊維が生成され得る任意の紡糸プロセスを使用することが可能である。こうした紡糸プロセスは、例えば、“Kunststoffhandbuch,7,Polyurethane”,Carl Hanser Verlag,3rd edition 1993,Chapter 13.2に記載されている。これらとしては、乾式紡糸又は湿式紡糸プロセス、好ましくは乾式紡糸プロセスが挙げられる。紡糸プロセスでは、本発明のポリウレタンウレアを含む紡糸溶液は、紡糸口金ダイを通して紡糸されて糸を形成する。本発明のポリウレタンウレア繊維は、例えば、乾燥させることによって紡糸溶媒を除去した後に得られる。
【0051】
本発明のポリウレタンウレア繊維は、添加剤を更に含み得る。本明細書では、ポリウレタンウレア繊維に関して既知の任意の添加剤を用い得る。例えば、艶消剤、充填剤、抗酸化剤、染料、顔料、染料強化剤、例えばMethacrol 2462B及び熱、光、紫外線照射、塩素消毒水に対する且つガス臭気及び大気汚染、例えばNO又はNOの作用に対する安定化剤が含まれ得る。抗酸化剤、熱、光又は紫外線照射に対する安定化剤の例は、立体障害フェノール、例えばIrganox(登録商標)245又はCyanox(登録商標)1790、障害アミン光安定化剤、トリアジン、ベンゾフェノン及びベンゾトリアゾールの群からの安定化剤である。顔料及び艶消剤の例は、二酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、酸化亜鉛及び硫酸バリウムである。塩素又は塩素消毒水による繊維分解に対する安定化剤の例は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム又は被覆若しくは非被覆マグネシウムアルミニウムヒドロキシカーボネート、例えばハイドロタルサイト若しくはハンタイトである。
【0052】
本発明のポリウレタンウレア繊維は、弾性布地、例えば織布、ニットなどの生産に有用である。
【0053】
以下は、ジイソシアネートとしての4,4’-MDIで調製された本発明のポリウレタンウレア膜のウレタン部分のMn、ウレア部分のMn及びハードセグメント含有量の測定方法である。
【0054】
図1は、上記の条件で測定された例示的なHNMRスペクトルを示す。図1では、3.87ppmで高さ4.9cmのピークP1は、両方の末端がウレタン基によってキャッピングされた4,4’-MDI部分内のメチレン基を表し、3.84ppmで高さ9.0cmのピークP2は、一方の末端がウレタン基によってキャッピングされ、もう一方の末端がウレア基によってキャッピングされた4,4’-MDI部分内のメチレン基を表し、3.80ppmで高さ2.6cmのピークP3は、両方の末端がウレア基によってキャッピングされた4,4’-MDI部分内のメチレン基を表す。図1でcm単位の数によって示されるピーク高さは、ポリウレタンポリマー内の部分のモルの指標として用いられる。
【0055】
本発明のソフトセグメントMn(ウレタン)は、
Mn(ウレタン)=2*P1/P2*(Mdi+Mdo)+Mdo(3)
によって計算され、本発明のハードセグメントMn(ウレア)は、
Mn(ウレア)=2*P3/P2*(Mda+Mdi)+Mda+2Mdi(4)
によって計算され、式中、Mdiは、ジイソシアネートの分子量であり、4,4’-MDIの場合、Mdi=250.26であり、Mdaは、連鎖延長剤の分子量であり、混合連鎖延長剤が用いられる場合、Mdaは、混合連鎖延長剤の平均化されたMnである。
【0056】
Mdoは、本発明で使用されるコポリマーグリコール又は他のポリマーグリコールの数平均分子量である。ポリウレタンウレアポリマーのMdoは、HNMRによって以下のように試験される。
【数4】
式中、I(1.40-2.00ppm)は、1.40~2.00ppmの化学シフト間のピーク積分であり、これは、ポリウレタンウレアポリマー内のポリテトラヒドロフラングリコール部分の特徴的な化学シフトであり、I(4.00-4.25ppm)は、ポリウレタンウレアポリマー内で-NHCO-基に結合した-OCH2の積分であり、I(8.20-8.40ppm)は、ポリウレタンウレアポリマー内の8.20ppm~8.40ppmのイソフタル酸部分の特徴的な化学シフトの積分であり、Mn(改質剤)は、二酸の例であるイソフタル酸が用いられてコポリマーが作製される場合、1モルのHOが減算された二酸の残基部分として定義され、ジエステル、例えばフタル酸ジメチルが用いられてコポリマーが作製される場合、1モルのジメチルエーテルが減算され、いずれの場合にも、改質剤部分の分画分子量は、148g/モルであり、Mn(poly_r)は、ポリマーグリコールの反復単位の分子量であり、ポリテトラヒドロフラングリコールが単独で使用される場合、Mn(poly_r)は、72である。
【実施例
【0057】
本発明では、様々な特性の試験方法は、以下の通りである。
【0058】
ウレタン部分、ウレア部分及びハードセグメント含有量のMnを決定する方法。ポリウレタンウレア繊維又は膜の試料を切断して小片にし、重水素化ジメチルホルムアミドに溶解した。設備及び測定条件を以下に要約する。
測定機器:Bruker AVANCE NEO 600MHz(DCH Cryoプローブを装備する)
観察対象の核:IH
累積数:128
測定温度:25℃
測定濃度:2.0重量%
化学シフト標準:テトラメチルシラン(0ppm)
【0059】
応力-歪性能評価
取り扱い及び再現性のために、ポリウレタンウレアの機械的特性を膜上で測定した。この目的のため、調製されたポリウレタンウレアの溶液を、正確に水平方向に整列させたガラスプレート上に溶液をキャスティングし、50℃の緩慢なN流中で48時間乾燥させることにより膜に変換した。厚さが約0.20~0.26mmの膜を生成するように、溶液の量及び濃度並びにプレートの面積を互いに一致させた。膜をa)ISO037:2005(引張試験)及びb)DIN 53835-2:1981(ヒステリシス損失)に従って機械的に試験した。
【0060】
膜で観察された傾向は、繊維のものと本質的に一致しており、繊維中で見られ、紡糸プロセスによって付与されたポリマー鎖の配向の効果は、膜に反映されていない。こうした差異は、本発明の趣旨を妨げるものではない。
【0061】
試験体の弾性特性は、1kNのKAF-TC力センサを備える1KN Zwick/Roell Z2.5によって試験する。
【0062】
破断伸び:ISO37:2005に従い、ポリウレタンウレアの標準形状及び寸法の膜試料を取り、試料が破断したときの元の長さの%として表される、延伸させた試料の長さを変化させる。本発明に従うポリウレタンウレア膜の破断伸びは、500%超、好ましくは600%超、より好ましくは700%超である。
【0063】
引張応力:ISO37:2005に従い、ポリウレタンウレアの標準形状及び寸法の膜試料を取り、ISO37:2005に従い、伸長率300%での試料の応力をMPa単位で取る。材料の引張応力が低いほど、こうして変換される物品は、より柔軟且つ快適になる。本発明では、膜の引張応力は、好ましくは、13MPa以下、より好まれる10MPa以下である。
【0064】
ヒステリシス損失:ISO37:2005に従い、ポリウレタンの標準形状及び寸法の膜試料を取り、DIN53835-2:1981に従い、試料を5回伸縮させる。
【0065】
繰り返し伸長後の相対的応力損失b5=(1回目の300%伸長応力-5回目の300%伸長応力)/1回目の300%伸長応力*100。本発明のポリウレタンウレア膜のb5は、好ましくは、20以下、より好ましくは15以下である。
【0066】
ヒステリシス損失係数H5=F150,5回目のアンロード/F150,5回目のロード、H5は、150%歪での5回目のサイクルの伸縮-回復におけるアンロード力とロード力との力比である。本発明のポリウレタン膜のH5は、好ましくは、0.70以上である。
【0067】
弾性回復率RER%:ISO37:2005に従い、ポリウレタンウレアの標準形状及び寸法の膜試料を取り、試料を5回伸縮させ、その後、続いてDIN53835-2:1981に従い、試料の長さを試験し、弾性回復率を以下の通り計算する。
RER%=(1-(5回目の300%伸長の回復長さ-開始長さ)/(300%伸長長さ-開始長さ))*100%
【0068】
本発明のポリウレタンウレア膜の%RERは、好ましくは、90%以上である。
【0069】
本発明を参考実施例と共に具体的に例示するが、本発明は、これらに限定されない。本発明の更なる実施形態は、特許請求の範囲、発明の詳細な説明及び実施例から認められる。
【0070】
使用した材料:
Lupranate(登録商標)M:BASF製4,4’-MDI
DMAC:BASF製N,N-ジメチルアセトアミド
EDA:BASF製1,2-エチレンジアミン
DEA:BASF製N,N-ジエチルアミン
Irganox(登録商標)245:BASF製CAS36443-68-2
Tinuvin(登録商標)622:BASF製CAS70198-29-7
重水素化DMF:Merk製CAS4472-41-7。
PolyTHF(登録商標):BASF製ポリテトラヒドロフラングリコール
【0071】
コポリマーグリコールの調製:
コポリマー1は、米国特許出願公開第2012/0059143号明細書の実施例1の手順に従って調製されるコポリマーグリコールである。841部のPolyTHF(登録商標)650(Mn650g/モル)を、PolyTHF(登録商標)650に対する20重量ppmのテトラブチルオルトチタネートの触媒下で徐々に温度を220℃まで上げ、圧力を20mbarまで下げることにより、166部のイソフタル酸と反応させた。酸価が1mgKOH/g以下に達したら、温度を200℃に冷却し、20ppmの85重量%のリン酸を投入し、更に冷却すると、得られたコポリマーグリコール1は、34mgKOH/gのOH価を有する。コポリマー2~4は、上記のコポリマー1に記載したものと同じ手順に従って調製し、出発PolyTHF(登録商標)及び最終コポリマーグリコールの数平均分子量を表1に要約するが、両方ともASTM-1899-2016に従って試験した。
【0072】
【表1】
【0073】
実施例1
100.00重量部のコポリマー1、13.50重量部の表2でMDI-1と称される4,4’-MDIを、Nでパージした反応器に投入して、NCO含有量が1.75%のNCOキャッピングプレポリマーを形成し、続いてNCOキャッピングプレポリマーを40℃に冷却し、138.72重量部のDMAC(表2でDMAC-1と称される)に溶解した。この希釈されたプレポリマー溶液に、105.94重量部のDMAC(表2でDMAC-2と称される)中の連鎖延長剤としての1.34重量部のEDAと0.30重量部のDEAとの溶液を高速混合によって投入し、均質なポリウレタン溶液を得た。
【0074】
固形ポリウレタンポリマーの重量基準で0.5重量%のIrganox(登録商標)245と、0.2重量%のTinuvin(登録商標)622と、0.2重量%のステアリン酸マグネシウムと、0.5重量%の二酸化チタンとの添加剤スラリーを上記のポリウレタンウレア溶液に投入した。得られたドープ溶液の粘度は、30℃で2000ポアズである。
【0075】
このドープ溶液を、厚さ0.24mmの膜中にキャスティングし、この膜の15mg(切断して小片にした)を重水素化DMFに溶解し、HNMRで調べた。
【0076】
こうして得られたポリウレタンウレア膜の特性を上記の方法に従って試験し、測定結果を表3に要約する。
【0077】
実施例2~6
ポリウレタンウレア膜を、表2に例示した対応する原材料及びその量を使用することを除いて実施例1と類似する方法で調製した。こうして得られたポリウレタンウレア膜の特性を上記の方法に従って試験し、測定結果を表3に要約する。
【0078】
比較実施例1
100.00重量部のコポリマー2を、14.48重量部の表2でMDI-1と称される4,4’-MDIと混合して、NCO含有量が1.80重量%のNCOキャッピングプレポリマーを得、続いてプレポリマーを冷却してから139.92重量部のDMAC-1に溶解し、この溶解プロセス中、系は、機械的にも、Nなどの不活性ガスによっても封止されず、副反応のためにアミンでキャッピングされたNCOの%は、1.25重量%まで激減し、アミンでキャッピングされたNCOは、鎖延長のためにアミン溶液を投入した時点でプレポリマー中に残されたNCO含有量を指す。続いて、105.86重量部のDMAC-2中の、連鎖延長剤としての0.97重量部のEDA、連鎖停止剤としての0.21重量部のDEAの溶液を迅速に攪拌しながら投入して、ポリウレタンウレア溶液を得た。
【0079】
実施例1と同じ添加剤を投入して、30℃で粘度1400ポアズのポリウレタンウレア溶液を得た。
【0080】
こうして得られたポリウレタンウレア膜は、表3で6.5%のハードセグメントHSを示した。
【0081】
%RERは、87%に低下し、紡糸、更なるニッティング及び反復摩耗試験結果に基づき、変換された布地中でバルジング又はラギングが生じた。
【0082】
比較実施例2
100.00重量部のコポリマー2を、14.95重量部の4,4’-MDI(表2でMDI-1と称される)と反応させて、NCO含有量が1.93重量%のNCOキャッピングプレポリマーを得、続いて更に4.67重量部の4,4’-MDI(表2でMDI-2と称される)を冷却したプレポリマー中に投入し、攪拌して均質な混合物とした。この混合物に146.20重量部のDMAC(表2でDMAC-1と称される)を投入してプレポリマー溶液を得た。
【0083】
続いて、114.34重量部のDMAC(表2でDMAC-2と称される)中の、連鎖延長剤としての2.45重量部のEDAと連鎖停止剤として0.54重量部のDEAとの溶液を投入し、続いて実施例1の通りの添加剤を投入して、30℃で粘度が2300ポアズのポリウレタンウレア溶液を得た。
【0084】
ポリウレタンウレア溶液の粘度は、50℃で72時間静置させた後、可紡性範囲外の8000ポアズに上昇した。本発明では、ドープ粘度は、50℃で72時間のエージング中に2000~6000ポアズに調節する必要があり、さもなければ紡糸試験の結果に基づく糸の切断、結合及び巻き上がりが深刻である。
【0085】
エージング中の高く且つ速い粘度変化の他に、ポリウレタンウレア膜は、表3に示す通り、13.6MPaの引張応力を示した。
【0086】
比較実施例3及び4
ポリウレタンウレアエラストマーを、表2に例示した対応する原材料及びその量を除いて実施例1と類似の方法で調製し、比較実施例3では、コポリマー1の代わりにMnが3000のPolyTHF(登録商標)を用い、比較実施例4では、コポリマー1の代わりにMnが1850のPolyTHF(登録商標)を用いた。
【0087】
比較実施例3及び比較実施例4では、ポリウレタンウレア膜は、それぞれ101%及び98%の高い回復率を示すが、表3のb5の高い引張応力及び高いエネルギー損失は、快適性及びフィットが求められる下流用途の要件を満たすことができない。
【0088】
比較実施例5
100.00重量部のコポリマー2を15.20重量部の4,4’-MDI(表2でMDI-1と称される)と反応させ、NCOの副反応によるか又は重合プロセス中の水などの不純物による過剰なNCO枯渇のために、NCO含有量が2.00重量%ではなく、1.60重量%のNCOキャッピングプレポリマーを得、続いてプレポリマーを140.80重量部のDMAC-1に溶解し、続いて107.23重量部のDMAC-2中の、連鎖延長剤としての1.24重量部のEDA及び連鎖停止剤としての0.28重量部のDEAの溶液を迅速に攪拌しながら投入すると、ポリマー溶液は、激しいゲル化を示してポリウレタンウレアのドープが攪拌ブレードに粘着し、粘度は、2000~6000ポアズの可紡性範囲をはるかに超える10,000ポアズ超であり、更なる測定は行わなかった。
【0089】
本発明に従って調製されたポリウレタンウレア膜は、バランスの取れた高い伸長率、低い引張応力、低いヒステリシス損失及び良好な回復力を示す。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
図1
【国際調査報告】