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特表2024-524343キサンチンオキシダーゼ阻害剤の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】キサンチンオキシダーゼ阻害剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20240628BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240628BHJP
   A61K 31/4155 20060101ALN20240628BHJP
   A61P 19/06 20060101ALN20240628BHJP
【FI】
C07D403/04
A61P43/00 111
A61K31/4155
A61P19/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579845
(86)(22)【出願日】2022-07-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2022009549
(87)【国際公開番号】W WO2023277660
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0087049
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】フイ・ラク・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・オク・ハム
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・ソプ・シン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA02
4C086BC36
4C086GA07
4C086ZC20
4C086ZC31
(57)【要約】
本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤の製造方法に関し、より具体的には、エステル加水分解反応及び再結晶方法を使用して、式(2)の化合物を製造する方法に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)の化合物の製造方法であって、
下記式(1)
【化1】
[式中、R1は、水素、ハロゲン、C1-C7アルキル、C1-C7アルコキシ-C1-C7アルキル又はフェニルであり;R2は、水素;非置換又はハロゲン、C3-C7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6は、C1-C4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC1-C7アルキル;C3-C7シクロアルキル;又は
【化2】
(ここで、WはO又はSであり、R7は、水素又はC1-C4アルキルであり、nは0~3の整数である)であり;R3は、水素、ハロゲン又はC1-C7アルキルであり;R4は、C1-C7アルキル又はC3-C7シクロアルキルである。]で示される化合物をプロトン性溶媒及びテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒に溶解したNaOHを用いて加水分解して、下記式(2)
【化3】
[式中、R1は、水素、ハロゲン、C1-C7アルキル、C1-C7アルコキシ-C1-C7アルキル又はフェニルであり;R2は、水素;非置換又はハロゲン、C3-C7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6は、C1-C4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC1-C7アルキル;C3-C7シクロアルキル;又は
【化4】
(ここで、WはO又はSであり、R7は、水素又はC1-C4アルキルであり、nは0~3の整数である)であり;R3は、水素、ハロゲン又はC1-C7アルキルである。]で示される化合物を生成する第1工程;及び
第1工程で得られた式(2)の化合物をアセトン及び酢酸エチルの混合溶媒を用いて、結晶化する第2工程;
を含む、式(2)の化合物の製造の方法。
【請求項2】
R2が、非置換されたC1-C7アルキルであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
R2が、イソプロピルであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及び酢酸よりなる群から選択される1つ以上のことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記プロトン性溶媒が、メタノールであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記第1工程のNaOHの濃度が、8N~12Nであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第1工程が、HCl及び酢酸エチルを用いて、結晶化する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記HClの濃度が、2N~12Nであることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第2工程が、NaOHを滴加し、ろ過し、ろ液にHClを滴加する工程をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項10】
前記HClを滴加する温度が、48℃~62℃であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記HClを滴加する時間が、3時間~5時間であることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンチンオキシダーゼ阻害剤の製造方法に関し、より具体的には、エステル加水分解反応及び再結晶方法を使用して、下記式(2)
【化1】
[式中、R1は、水素、ハロゲン、C1-C7アルキル、C1-C7アルコキシ-C1-C7アルキル又はフェニルであり;R2は、水素;非置換又はハロゲン、C3-C7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6は、C1-C4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC1-C7アルキル;C3-C7シクロアルキル;又は
【化2】
(ここで、WはO又はSであり、R7は、水素又はC1-C4アルキルであり、nは0~3の整数である)であり;R3は、水素、ハロゲン又はC1-C7アルキルである。]で示される化合物を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キサンチンオキシダーゼ(xanthine oxidase)は、ヒポキサンチンをキサンチンに変換し、さらにこうして形成されたキサンチンを尿酸に変換する酵素として知らされている。ほとんどの哺乳動物はウリカーゼを持っているが、ヒトとチンパンジーは持っていないため、尿酸はプリン代謝の最終産物として知られている(非特許文献1)。血中尿酸濃度の上昇が続くと、痛風を代表とする様々な疾患が引き起こされる。
【0003】
前述するように、痛風は体内の尿酸数値の上昇によって引き起こされ、軟骨、靭帯及びその周辺組織に蓄積した尿酸結晶が激しい炎症と痛みを引き起こす状態をいう。痛風は炎症性関節疾患の一種であり、その発症率は過去40年間発着実に増加している(非特許文献2)。
【0004】
従って、新しいキサンチンオキシダーゼ阻害剤を開発するために様々な研究が行われ、特許文献1にはキサンチンオキシダーゼ阻害剤として有効である、以下の新規化合物が開示されている。
【化3】
【0005】
キサンチンオキシダーゼ阻害活性を有するエステル加水分解物を製造する従来の工程では、反応中に過剰のNaOHが使用されていた。その結果、インドールのC3位のシアノ基が加水分解され、アミド不純物が過剰に生成されるという問題があった。結晶化工程では、生成された不純物の除去が容易ではなく、濃縮HClを使用するため過なヒュームが発生し、発熱が強いため温度管理の許容基準を満たすことが難しいという問題があった。また、精製工程では、不純物の除去効果があまり高くなく、乾燥工程で残留するTHF溶媒をICHガイドラインの許容基準である720ppmまで除去するのが容易ではなく、粒子特性を管理するのに適していなかった。従って、不純物を劇的に低減するエステル加水分解工程及び効果的な精製方法を開発する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国 特開 第10-2011-0037883号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. P. Bruce, Ann. Pharm., 2006, 40, 2187-2194
【非特許文献2】N. L. Edwards, Arthritis & Rheumatism, 2008, 58, 2587-2590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の技術的課題は、留不純物が著しく低減され、THF溶媒がICHガイドラインの許容基準以下に除去され、同時に製剤化しやすい粒子物性を確保することができる、優れたキサンチンオキシダーゼ阻害剤である下記式(2)
【化4】
(式中、R1、R2及びR3は、本明細書で定義したものと同義である。)で示される新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記技術的課題を解決するために、下記式(2)の化合物の製造方法であって、下記式(1)
【化5】
[式中、R1は、水素、ハロゲン、C1-C7アルキル、C1-C7アルコキシ-C1-C7アルキル又はフェニルであり;R2は、水素;非置換又はハロゲン、C3-C7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6は、C1-C4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC1-C7アルキル;C3-C7シクロアルキル;又は
【化6】
(ここで、WはO又はSであり、R7は、水素又はC1-C4アルキルであり、nは0~3の整数である)であり;R3は、水素、ハロゲン又はC1-C7アルキルであり;R4は、C1-C7アルキル又はC3-C7シクロアルキルである。]で示される化合物をプロトン性溶媒及びテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒に溶解したNaOHを用いて加水分解して、下記式(2)
【化7】
[式中、R1は、水素、ハロゲン、C1-C7アルキル、C1-C7アルコキシ-C1-C7アルキル又はフェニルであり;R2は、水素;非置換又はハロゲン、C3-C7シクロアルキル及びO-R6(ここで、R6は、C1-C4アルキルである)から選択された一つ以上の置換基によって置換されたC1-C7アルキル;C3-C7シクロアルキル;又は
【化8】
(ここで、WはO又はSであり、R7は、水素又はC1-C4アルキルであり、nは0~3の整数である)であり;R3は、水素、ハロゲン又はC1-C7アルキルである。]で示される化合物を生成する第1工程;及び
第1工程で得られた式(2)の化合物をアセトン及び酢酸エチルの混合溶媒を用いて、結晶化する第2工程;
を含む、式(2)の化合物を製造する方法が提供される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、R2が、非置換されたC1-C7アルキルであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、R2が、イソプロピルであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本発明の一実施形態によれば、前記プロトン性溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及び酢酸よりなる群から選択される1つ以上であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、前記プロトン性溶媒が、メタノールであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の一実施形態により、前記第1工程のNaOHの濃度が、8N~12N、最も好ましくは約10Nであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、前記第1工程がHCl及び酢酸エチルを用いて、結晶化することをさらに含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施形態によれば、前記HClの濃度が、2N~12Nであってもよく、より好ましくは約6Nであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、前記第2工程が、NaOHを滴加し、ろ過し、ろ液にHClを滴加することをさらに含んでいてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、前記HClを滴加する温度が、48℃~62℃であってもよく、より好ましくは48℃~52℃であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記HClを滴加する時間が、3時間~5時間であってもよく、より好ましくは約4時間であってもよいが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法は、式(2)の化合物の製造において、従来の方法に比べて残留不純物を著しく低減させ、残留溶媒の量を劇的に低減させる効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の保護範囲はこれらの実施例に限定されるものでないことを理解されたい。
【0022】
実施例1:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸反応実験の結果
【0023】
実施例1.1:酸性条件での加水分解実験
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル中でエステルが加水分解される反応の場合には、塩基性条件下だけでなく、酸性条件下でも起こることが知られている。そこで、酸性条件下での反応性及び反応選択性を確認するため、以下の実験を行った(表1)。実験には、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル5gにルイス酸であるAlCl3、ブレンステッド-ローリーの酸であるHClを使用した。
【0024】
【表1】
【0025】
AlCl3を用いた反応の場合、20時間経っても反応が全く進まなかった。HClの場合、2時間反応後、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルが25.5%残留していることがIPC(工程内管理)により確認された。その結果、反応性は従来の反応条件よりも低くなった。また、1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の生成量が23.8%の場合、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の生成量が40.7%であった。従って、反応選択性も低いと判断された。最後に、従来の反応では観測されなかった未知の不純物が生成されるという問題も判明された。従って、酸性条件よりも塩基性条件の方がより好ましいと判断された。
【0026】
実施例1.2:NaOH当量調節実験
従来の工程では、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の反応に5当量を使用していた。NaOHの過剰使用は、1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の生成に寄与すると考えられた。そこで、当量数を減らしても反応が完結するかどうかを確認するために、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(5g)を用いた実験を行った(表2)。
【0027】
【表2】
【0028】
NaOHの当量数だけを少しずつ減らす条件(実施例1-2-1及び1-2-2)を適用し、変換率を確認するために、1時間間隔でIPCを実施した。NaOH当量数が増えると反応は比較的早く進むが、不純物である1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸が増加する傾向があり、不純物1-(3,3’-ダイシアノ-1’-イソプロピル-1’H-[1,5'-バイインドール]-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸は、NaOH当量とは関係がないと判断された。
【0029】
実施例1.3:Co塩基適用実験
NaOHなどの強塩基使用による1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸反応の不純物1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の生成を低減するために、塩基の総当量数を維持したまま、NaOHの使用量は減らし、弱塩基を共に処理して反応選択性の変化を確認するための実験を行った。2種類の無機塩基と4種類の有機塩基(脂肪族アミン2種類/複素環式アミン2種類)を選択し、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル、3gスケールで実験を行った(表3)。
【0030】
【表3】
【0031】
分子量の大きいK3PO4の場合、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル3gに対して、投入量は4.94gであり、反応物よりも多い量であった。この量が多いと、撹拌が困難にあるという問題があった(実施例1-3-2)。また、反応が進行するにつれて、反応混合物の粘度が増加することが観察され、これにより撹拌が不十分になり、メチルエステルの変換率がわずかに遅れた結果が得得られた(実施例1-3-4及び1-3-5)。全体として、不純物1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の生成に大きな変化がなかったので、Co塩基処理の必要性はほとんどないと判断された(実施例1-3-2~1-3-7)。
【0032】
実施例1.4:溶媒スクリーニング実験
【0033】
【表4】
【0034】
前記結果から、極性非プロトン性溶媒のみを用いた場合、反応が全く進行しなかった(実施例1-4-1及び1-4-2)。MEOHの代わりにEtOHを用いた場合、不純物メチル-1-(3-シアノ-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレートと同様の保持時間を有する未知の不純物が生成され、反応初期に生成後、急激に減少する傾向を考慮し、反応中間体であると推定した(実施例1-4-3)。前記表4のRef.結果と比較すると、同時に時生成される1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸は、MEOH溶媒を使用した場合に比べて増加した。また、ろ過工程中、従来の条件と比較してろ過性が悪化したがろ過ケーキの色は改善(淡褐色→オフホワイト)された。乾燥後に測定される収率及びNMR測定値が低下することが確認された。前記結果から、反応の進行にはプロトン性溶媒が必須であり、THF、MEOH共溶媒系の適用が最良の結果を示したことが確認された。
【0035】
実施例2:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸)結晶化実験の結果
【0036】
実施例2.1:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸結晶化共溶媒の選択
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸を結晶化工程から除去するために、結晶化中に一緒に使用する共溶媒を選択する実験を行った(表5)。
【0037】
【表5】
【0038】
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸試料の初期含量値(Initial)は、0.638%であり、酢酸エチルを用いると0.105%に減少することが確認された(表5)。また、不純物メチル-1-(3-シアノ-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレートも0.309%から0.145%に減少していることが確認された。さらに、DCM、ヘプタン、トルエンも1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸を減少させたが、酢酸エチルと比較して減少率(%)が低かった。その結果、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の結晶化工程で使用する共溶媒として酢酸エチルを選択した。
【0039】
実施例2.1.2:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の結晶化のための溶媒スクリーニング
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の反応後、濃HClを使用した。高濃度のHClの使用は、作業の安全性の観点から好ましくないと判断された。また、実験面ではpHの調節が難しく、ヒュームの発生が多く視野の確保が困難であった。これを改善するために、3N HClに置き換え、適切な量の有機溶媒を加えて精製効果を高めた。結晶化方法による違いを確認するために、すべての反応は可能な限り同じ条件及びスケールで行った。結晶化前後の違いを明確に確認するために、結晶化直前に反応溶液のHPLC分析を行い、ろ過ケーキと比較した(表6)。
【0040】
【表6】
【0041】
実施例2-1-1:CAN(1.5倍)、3N HCl投入後、保持(30℃、pH=1.8、30分)→低温保持(5℃、30分)
実施例2-1-2:アセトン(1.5倍)、3N HCl投入後、保持(30℃、pH=1.6、30分)→低温保持(5℃、30分)
実施例2-1-3:H2O(1倍)、EA(1.5倍)、3N HCl投入後、保持(30℃、pH=1.6、30分)→室温保持(25℃、2時間)
実施例2-1-4:EA(1.5倍)、3N HCl投入後、保持(30℃、pH=1.6、30分)→低温保持(0℃、2時間)
実施例2-1-5:MeOH(1.5倍)、3N HCl混合溶液投入後、保持(30℃、pH=1.6、30分)→室温保持(23℃、30分)
実施例2-1-6:CAN(1.5倍)、3N HCl混合溶液投入後、保持(30℃、pH=1.6、30分)→室温保持(23℃、30分)
GD67::1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸
GD65:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル
GD-IMP-1:1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
GD-IMP-2:メチル-1-(3-シアノ-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボキシレート
GD-IMP-3:1-(3,3’-ジシアノ-1’-イソプロピル-1’H-[1,5’-ビインドール]-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
【0042】
以上の結果より、時効(aging)温度及び時効(aging)時間による収率の変化を確認した(実施例2-1-1~2-1-6)。このとき使用した有機溶媒に対する1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の溶解度は、ACN、MEOH、EtOAcが0.0001g/mL以下、アセトンが0.0001-0.001g/mLであった。従って、溶媒の種類によっては収率への影響は小さいと推定して比較実験を行った。同じ反応温度、時効条件で溶媒の種類による精製効果を比較すると、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸のみ精製効果を認められ、精製度は約65%と同様であったが、残留溶媒の点ではEtOAcが最良の結果を示した(実施例2-1-1,2-1-2及び2-1-4)。1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の増加を最小限に抑えるためには、IPCによる反応の終了点を確認した後、できるだけ早くpHを下げる必要があった。そのため、HCl水溶液の投入時点を早めるため、反応終了後に有機溶媒と3N HClの混合液を滴加する実験を行った(実施例2-1-5及び2-1-6)。しかしACNと3N HClを順次添加した場合と、ACNと3N HClの混合液を添加した場合(実施例2-1-1及び2-1-6)とでは大きな差はなかった。
【0043】
実施例3:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の製造方法
THF(554kg)、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル(312kg)及びMEOH(624L)を反応器に加え、10N NaOH(386kg)をゆっくり加えた。発熱反応であるため、内部温度が27℃を超過しないように注意しながら、反応物を約1時間かけて加えた。滴加終了後、21~27℃範囲で反応を行い、IPCを行った。反応終了後に、精製水(624L)及びEtOAc(197kg)を加え、3N HCl(1,048kg)を30~35℃を維持しながらゆっくり滴加した。前記工程において、3N HClは1回目と2回目に分けて滴加し、1回目の滴加は固体の1回目の核生成のためにpH=5~6になるまで行った。固体が生成した反応混合物を30分間撹拌後、pH=2-3になるまで2回目の滴加を行い、固体の粒径成長を行った。滴加終了後、得られた生成物を室温まで冷却し、この温度で30分間保持し、ろ過した。ろ過した固体を精製水(624L)で洗浄し、窒素及び真空下で乾燥して、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸(273.2kg、95.9%総収率)を得た。
【0044】
実施例4:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の再結晶
【0045】
実施例4.1:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の溶媒スクリーニング
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の結晶化工程でEtOAcを使用した場合、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸が効果的に除去されるという結果に鑑み、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の再結晶工程でも同様に使用することを意図した。EtOAcと同様の酢酸系の溶媒を用いて再結晶を行った後、得られたろ過ケーキを分析して、最適な溶媒を決定する実験を行った(表7)。
【0046】
【表7】
【0047】
1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸9gスケールで実験を行った結果、エステル位に置換した炭素原子が多い溶媒を用いると、反応混合物の粘度が上昇し、ろ過性が低下する傾向があり、精製効果が低下することが確認された(実施例4-1-1~4-1-5)。前回の実験で優れた結果を示した酢酸メチル、酢酸エチルを用いて、スケールアップ及び検証のための再実験を行った(実施例4-1-6及び4-1-7)。反応器のタイプとスケールの違いにより、以前の結果とはことなる可能性があるが、2つのスケールアップ実験のみを比較した場合、酢酸メチル及び酢酸エチル溶媒は両方とも良好なろ過傾向を示した。不純物及び純度についても同様の結果を得られ、乾燥後の残留含量の場合、共溶媒として用いたアセトンの含量は、酢酸エチルを用いた実験では4.13%、酢酸メチルを用いた実験では2.81%であった。収率については、酢酸エチルを落ち板実験で8は8.0%であり、酢酸メチルの86.5%よりも1.5%高かった。酢酸エチルは、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステル及び1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の製造に用いられる溶媒であり、汎用されている。そのため、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の結晶化溶媒条件では、アセトンの共溶媒として酢酸エチルを選択した。
【0048】
実施例4.2:残留溶媒の効果的除去のための条件探索(I)-滴加温度及び時間
下記表8に示されるように、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の再結晶時に、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の完全溶解のために1N NaOH溶液を、1-(3-カルバモイル-1-イソプロピル-1H-インドール-5-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸の除去のためにEtOAcを、均一混合物にはアセトンを使用した。再結晶化は、アセトン、水及びEtOAcの共溶媒系中で行った。
その結果、従来の方法では多量に含まれていたTHFは効果的に除去できたが、アセトンが残留してしまう問題があった。そこで、アセトンを効果的に減らすための条件を探索した。すべての実験は、40gの1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸エチルエステルを使用して500mLのガラス型反応器内で行った(表8)。乾燥機は窒素加圧を行った。ろ過ケーキの重量を確認し、それ以上重量の変化がないことを確認した後、乾燥を終了した。
【0049】
【表8】
【0050】
以上の実験結果から、同じ条件において、6N HClの滴加する温度が高くなるにつれて、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸、API(医薬品有効成分)のアセトン除去が効果的であった(実施例4-2-1、4-2-2、4-2-5、4-2-7、4-2-8及び4-2-9)。このとき、温度が高いほど生成する粒子が大きくなり、ろ過性が向上することが確認された。また、滴加温度が同じである場合、滴加時間が長くなるにつれて、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸のアセトン除去効果が高くなり、この過程におけるろ過性に大きな差は見られなかった(実施例4-2-1、4-2-2、4-2-3、4-2-5及び4-2-6)。残留溶媒とろ過性の観点から、HIC水溶液の滴加時間を長くし、高温で結晶化を進めることが好ましいと考えられた。
【0051】
実施例4.4:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸のスケールアップ
最終API製造工程として、従来の方法では結晶粒子径が非常に小さく(50μm以下)、形状も不均一で、粒子径も不均一であった。具体的には、最終工程では、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸を固体状態で加えた後、精製水を加えて還流条件下で撹拌した。しかし、未溶解の状態で撹拌を行うため、結晶の物性を制御することはできないという欠点があった。また、前工程で発生する可能性のある異物の混入やROI(強熱残留物)を考慮し、最終結晶化の前に精密ろ過工程が必要であった。従って、本発明による1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の製造工程では、アセトンと酢酸エチルの混合溶媒に1N NaOHを滴加して1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸を完全に溶解させた後、精密ろ過を行い、設定した結晶化温度とpHで6N HClを用いて最終APIの物性を制御し、異物の混入を最小限に抑える工程を行った。
【0052】
実施例5:1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸の製造方法
アセトン(809kg)、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸(344kg)及びEtOAc(102kg)を加えた後、内部温度は10℃以下、pH13.6以下を維持しながら、1N NaOH(1204L)を1時間ゆっくり滴加した。添加完了後、反応混合物をさらに30分間撹拌して可能な限り溶解し、次いで精密ろ過した6N HCl(2kg)を滴加してpHを7.5~8に下げ、昇温した。反応混合物の温度を48~52℃に維持しながら、精密ろ過した6N HCl(197kg)を4時間かけてゆっくり滴加し、pH=4.5~5に調整した。pH確認後、冷却を開始し、反応混合水の温度が室温まで下げた後、ろ過した。ろ過された固体を精製水(688L×2)で2回洗浄し、窒素雰囲気下、真空乾燥して、1-(3-シアノ-1-イソプロピル-インドール-5-イル)ピラゾール-4-カルボン酸(321.5kg、93.5%総収率)を得た。
【国際調査報告】