(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】鋼表面を含む部材の上に転換層を逐次的に形成する方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/34 20060101AFI20240628BHJP
【FI】
C23C22/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580862
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-28
(86)【国際出願番号】 EP2022068099
(87)【国際公開番号】W WO2023275270
(87)【国際公開日】2023-01-05
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】ブラウウェル,ヤン-ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ピラレク,フランク-オリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】レサノ アルタレホ,フェルナンド ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァプナー,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ジンヴェル,ゼバスティアン
【テーマコード(参考)】
4K026
【Fターム(参考)】
4K026AA02
4K026AA07
4K026AA09
4K026AA22
4K026BA08
4K026BB06
4K026BB08
4K026CA13
4K026CA18
4K026CA28
4K026DA02
4K026DA03
(57)【要約】
本発明は、複数の直列の部材を防食前処理する方法であって、直列の部材は鉄および/または鋼で少なくとも部分的に形成されており、直列の部材を各々、まず第一転換工程、次いで濯ぎ工程、その後第二転換工程に付し、第一および第二転換工程では各々、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物に基づく酸性転換水溶液と部材とを接触させ、第二転換工程の転換水溶液には銅イオンも更に含まれる、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の直列の部材を防食前処理する方法であって、直列の部材は鉄および/または鋼で少なくとも部分的に形成されており、直列の部材を各々、逐次的な下記工程(i)~(iii):
(i)2.5~5.0の範囲のpHを有し、少なくとも0.10mmol/kgの水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物と、遊離フッ化物とを含む転換水溶液(I)を供給する第一転換工程;
(ii)5.0~10.0の範囲のpHを有し、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の濃度が転換水溶液(I)と比べて少なくとも5分の1以下であり、0.25mmol/kg未満の遊離フッ化物を含む濯ぎ水溶液(II)を供給する濯ぎ工程;
(iii)2.5~5.0の範囲のpHを有し、少なくとも0.10mmol/kgの水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物と、少なくとも15μmol/kgの水に溶解した銅イオンとを含む転換水溶液(III)を供給する第二転換工程;
に付し、部材の鉄および/または鋼の少なくとも表面と、各々供給される水溶液(I)~(III)とを逐次的に接触させる、方法。
【請求項2】
工程(i)の第一転換工程における転換水溶液(I)との接触を、元素Zrおよび/またはTiに基づきそれぞれの場合において、鋼および/または鉄の表面に、少なくとも20mg/m
2の被覆が形成される時間は少なくとも行うが、好ましくは150mg/m
2超、特に好ましくは100mg/m
2超、非常に特に好ましくは80mg/m
2超の被覆が得られるほど長時間は行わないことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(iii)の第二転換工程における転換水溶液(III)との接触を、元素Zrおよび/またはTiに基づきそれぞれの場合において、鋼および/または鉄の表面に、15mg/m
2超、特に好ましくは12mg/m
2超、非常に特に好ましくは10mg/m
2超の増加が生じるまでは継続しないが、好ましくは、少なくともこれらの表面上の被覆が少なくとも2mg/m
2増加するような時間は継続することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(i)の第一転換工程の転換水溶液(I)において、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の割合は、少なくとも0.15mmol/kg、好ましくは0.25mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.30mmol/kgであることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
工程(i)の第一転換工程の転換水溶液(I)において、遊離フッ化物の割合は、少なくとも0.5mmol/kg、好ましくは少なくとも1.0mmol/kg、非常に特に好ましくは少なくとも1.5mmol/kgであるが、好ましくは8.0mmol/kg未満、特に好ましくは6.0mmol/kg未満、非常に特に好ましくは5.0mmol/kg未満であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(i)の第一転換工程の転換水溶液(I)において、式(1):
[式中、F/mMおよびMe/mMは、mmol/kgの濃度単位減算された遊離フッ化物(F)または還元ジルコニウムおよび/またはチタン(Me)濃度である]
に従う商λは0.80超、好ましくは1.20超、特に好ましくは1.60超であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(iii)の第二転換工程の転換水溶液(III)において、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の割合は、1.00mmol/kg未満、好ましくは0.80mmol/kg未満、より好ましくは0.70mmol/kg未満、特に好ましくは0.60mmol/kgであることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
工程(iii)の第二転換工程の転換水溶液(III)において、遊離フッ化物の割合は、3.00mmol/kg未満、好ましくは2.50mmol/kg未満、特に好ましくは2.00mmol/kg未満であるが、好ましくは少なくとも0.1mmol/kg、特に好ましくは少なくとも0.2mmol/kgであることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
工程(iii)の第二転換工程の転換水溶液(III)には、40μmol/kg超、好ましくは50μmol/kg超であるが、好ましくは500μmol/kg以下、特に好ましくは300μmol/kg以下、非常に特に好ましくは200μmol/kg以下の、水に溶解した銅イオンが含まれていることを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
工程(i)および(iii)の転換工程において、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物は、元素Zrおよび/またはTiのフルオロ錯体、好ましくは元素Zrのフルオロ錯体から選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)における濯ぎ工程の濯ぎ水溶液(ii)は、少なくとも0.1mmol/kg、好ましくは少なくとも0.5mmol/kg、特に好ましくは少なくとも1mmol/kgであるが、好ましくは10mmol/kg以下、特に好ましくは6mmol/kg以下の、硝酸イオン、亜硝酸イオン、ニトログアニジン、N-メチルモルホリンN-オキシド、遊離形態または結合形態の過酸化水素、遊離形態または結合形態のヒドロキシルアミン、および還元糖から選択される、好ましくは亜硝酸イオン、ニトログアニジン、遊離形態または結合形態のヒドロキシルアミン、および遊離形態または結合形態の過酸化水素から選択される、特に好ましくは亜硝酸イオンから選択される、減極剤を更に含むことを特徴とする、請求項1~10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
工程(i)および(iii)における転換工程の転換水溶液は各々、3.0超、好ましくは3.5超、特に好ましくは4.0超であるが、好ましくは4.5未満のpHを有することを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
工程(ii)の濯ぎ工程において、供給された濯ぎ溶液との接触を、浸漬および/または噴霧により行う、好ましくは、浸漬をまず行い次いで噴霧を行う浸漬および噴霧により行うことを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
中間濯ぎ工程を伴うが好ましくは中間乾燥工程を伴わない工程(iii)の後、部材の被覆を、塗装システム、好ましくは電着塗装、特に好ましくは陰極電着塗装を用いて行うことを特徴とする、請求項1~13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
直列の部材は、鋼および/または鉄の表面に加えて、亜鉛および/またはアルミニウムの表面も有することを特徴とする、請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の直列の部材を防食前処理する方法であって、直列の部材は鉄および/または鋼で少なくとも部分的に形成されており、直列の部材を各々、まず第一転換工程、次いで濯ぎ工程、その後第二転換工程に付し、第一および第二転換工程では各々、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物に基づく酸性転換水溶液と部材とを接触させ、第二転換工程の転換水溶液には銅イオンも更に含まれる、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄、鋼、亜鉛めっき鋼および/またはアルミニウムといった材料で作られた表面を有する部材の防食前処理において、元素Zrおよび/またはTiの酸化物および水酸化物に基づく非晶質転換層に基づく薄膜不動態化は、結晶性被覆が形成されるリン酸塩処理の代替として広く確立されている。このタイプの転換被覆を更に発展させる努力は、本質的に、後続で適用される塗装システムのために優れた接着剤ベースを提供するクロムフリー不動態化および省資源化の確立を目的としており、この目的は、トリカチオンリン酸亜鉛処理に匹敵する防食を達成することである。特に、元素Zrおよび/またはTiの水溶性化合物を含む酸性水溶液の転換処理から得られる非晶質薄膜の場合、制御された膜の形成と、可能な限り欠陥の少ない被覆の形成が、非常に重要である。特に、この場合、元素Zrおよび/またはTiのフルオロ錯体に主に基づく転換処理の転換が可能な限り完全なものになるように、アルカリ性のpHが元素Zrおよび/またはTiの水酸化物および酸化物に基づく被覆をもたらす、金属表面上の薄い拡散膜における膜形成の速度に影響を与えることは困難である。これは、腐食性媒体との接触で局所的な膜欠陥を招き得るフッ化物が薄膜中に残留することを防ぐためである。例えば、EP 1 455 002 A1には、転換被覆中のフッ化物の割合を減らすことで、腐食挙動と後続の電着塗装に対する塗膜密着性とを向上できることが報告されている。転換被覆中のフッ化物含有量を効果的に低減するため、EP 1 455 002 A1では、マグネシウム、カルシウム、Si含有化合物、亜鉛、または銅を転換溶液に添加すること、およびそれに代えてまたはそれと組み合わせて、転換被覆を乾燥するか若しくはアルカリ性水性組成物で後濯ぎすることが提案されている。
【0003】
また、先行技術では、被覆の逐次的な形成を介して転換被覆の品質を向上させる努力がなされている。例えばEP 2 318 566 A1には、転換処理の濯ぎ水を、実際の転換処理の前に予備濯ぎにカスケードすることは、特に鋼表面上での、元素Zrおよび/またはTiに基づく非晶質被覆の形成に有利であり、これは腐食から保護することが示されている。EP 2 318 566 A1によれば、予備濯ぎの間に、表面の最初の僅かな転換が起こり、これは、後続する実際の転換層の形成に有利である。EP 2 971 234 A1の教示によれば、相互に独立して実施される逐次的な湿式化学的各工程での転換による逐次的な層構成もまた、相応に前処理された鋼表面への塗膜の密着性を向上させるために使用される。酸性のフッ化物含有溶液からなり、周期表の第二族IIIb/IVbの元素、特に元素Zrに基づく転換被覆を形成する二段階法が記載されている。これは、特に後続の電着塗装に適しており、様々な金属基材上で実施され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 1 455 002 A1
【特許文献2】EP 2 318 566 A1
【特許文献3】EP 2 971 234 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この先行技術に基づき、本発明の目的は、多種多様な金属に、可能な限り欠陥の少ない転換被覆を提供する代替法を提供することである。該転換被覆は、塗膜形成後の腐食性剥離に対する向上した保護を有する。この方法は、可能な限り少ない資源で実施できるものでなければならず、特に直列の部材の処理に適したものでなければならない。プロセス品質を向上させるため、一連の部材の前処理中に安定した方法で、先行技術と比べて、少なくとも鋼および/または鉄の表面上の防食および塗膜密着性の十分な向上も達成されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、濯ぎ工程によって中断される2つの処理工程で転換被覆を逐次的に形成する方法であって、転換溶液はそれぞれ元素Zrおよび/またはTiの水溶性化合物を含み、第二転換工程における転換溶液には銅イオンが更に含まれる方法により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
具体的には、本発明は、複数の直列の部材を防食前処理する方法であって、直列の部材は鉄および/または鋼で少なくとも部分的に形成されており、直列の部材を各々、逐次的な下記工程(i)~(iii):
(i)2.5~5.0の範囲のpHを有し、少なくとも0.10mmol/kgの水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物と、遊離フッ化物とを含む転換水溶液(I)を供給する第一転換工程;
(ii)5.0~10.0の範囲のpHを有し、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の濃度が転換水溶液(I)と比べて少なくとも5分の1以下であり、0.25mmol/kg未満の遊離フッ化物を含む濯ぎ水溶液(II)を供給する濯ぎ工程;
(iii)2.5~5.0の範囲のpHを有し、少なくとも0.10mmol/kgの水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物と、少なくとも15μmol/kgの水に溶解した銅イオンとを含む転換水溶液(III)を供給する第二転換工程;
に付し、部材の鉄および/または鋼の少なくとも表面と、各々供給される水溶液(I)~(III)とを逐次的に接触させる、方法に関する。
【0008】
直列の部材の防食前処理は、多数の部材と、本発明の方法の各処理工程で提供され、通常はシステムタンクに貯蔵されている処理溶液とを接触させる場合であり、個々の部材を逐次的に、従って、異なる時間に接触させる。この場合、システムタンクは、直列での防食前処理を目的とした処理溶液がその中に導入されている容器である。
【0009】
本発明において、金属材料で構成される部材の前処理、特に本発明の前処理に付される鉄および鋼材料の表面上の前処理に言及するとき、各元素を50at%超含む全ての材料が包含される。防食前処理は常に、部材の表面、従って金属材料の表面に影響を及ぼす。材料は均一な材料または被覆であり得る。本発明によれば、亜鉛めっき鋼種は、材料鋼と材料亜鉛の両方で構成されており、例えば亜鉛めっき鋼で作られた自動車ボディの刃先および円筒研削点で鋼の表面が露出することが起こり得、この場合、本発明では材料鋼の前処理が存在する。
【0010】
本発明において、活性成分または化合物の濃度がキログラムあたりの物質量として言及される限り、これは、それぞれの組成物全体の重量に基づく物質量である。
【0011】
本発明に従って前処理される部材は、特に、ストリップ、シート、ロッド、パイプなどの半製品、および前記半製品から組み立てられた複合構造、特に自動車ボディを包含する、製造工程に由来する任意の形状およびデザインの三次元構造であってよく、半製品は、好ましくは、接着、溶接および/またはフランジングによって相互に連結されて複合構造を形成している。
【0012】
方法の工程に関し、溶液(I)~(III)は、各処理工程(i)~(iii)で定義されるような接触のために調製されるか若しくは接触のために準備される、または定義されるような接触の間に実施される場合、本発明の方法の意味で「供給される」とみなされる。
【0013】
水に溶解したZrおよび/またはTiの化合物および遊離フッ化物を含む酸性水溶液との1回の接触による転換処理(従来の一段階転換層形成)と比べ、本発明の多段階前処理は、フッ化物含有量が低く、後続で形成される塗装系の腐食性剥離の傾向が顕著に低減された、欠陥のない転換層を提供する。このためには、第一転換工程と、水に溶解した銅イオンを含む転換溶液中で濯ぎ工程の後に実施する第二転換工程との組み合わせが不可欠であり、遊離フッ化物イオンを実質的に含まない(即ち、遊離フッ化物が0.25mmol/kg未満、好ましくは0.10mmol/kg未満、非常に特に好ましくは0.05mmol/kg未満の)濯ぎ溶液を用いて行われる濯ぎ工程による第一転換工程後の転換被覆中のフッ化物含有量の単なる減少は、十分ではなく、特に、直列の部材の鋼および/または鉄の表面に対する防食に関する十分な性能にとって十分ではない。
【0014】
本発明の前処理の関連工程における遊離フッ化物の量は、pH緩衝なしのフッ化物含有緩衝液で校正した後、関連する提供溶液中、20℃でフッ化物感受性測定電極を用いて電位差測定的に求めることができる。
【0015】
工程(i)および(iii)における転換層の形成は、元素Zrおよび/またはTiに基づく非晶質酸化物/水酸化物被覆を形成し、それに応じて水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物を含む転換溶液を用いて実施される。用語「水に溶解した」は、水溶液中で解離して水和イオンを形成する分子的に溶解した種および化合物を含む。これらの化合物の典型的な例は、硫酸チタニル(TiO(SO4))、硝酸チタニル(TiO(NO3)2)および/またはヘキサフルオロチタン酸(H2TiF6)およびそれらの塩、または炭酸ジルコニウムアンモニウム((NH4)2ZrO(CO3)2)および/またはヘキサフルオロジルコン酸(H2ZrF6)およびそれらの塩である。水に溶解した化合物は、好ましくは、転換工程において、元素Zrおよび/またはTiのフルオロ酸および/またはフルオロ錯体から選択される。元素Zrのフルオロ酸および/またはフルオロ錯体に基づく転換層は向上した塗膜密着性を提供するので、この種の転換層の形成が特に好ましい。
【0016】
また、特に第一転換工程では、転換層の形成中に酸洗速度を可能な限り低く保つために、転換溶液のpHを酸性になるように設定しないことが、極めて均質で緻密な非晶質転換層の形成に有利である。従って、全体として、各々の場合にpHが3.0超、より好ましくは3.5超、特に好ましくは4.0超であるが好ましくは4.5未満である工程(i)および(iii)の両転換工程が好ましい。というのも、そうでなければ、溶液内での元素Zrおよび/またはTiの難溶性水酸化物の析出が、複数の部材の一連の処理中の狭いプロセスウィンドウ内でしか継続的に制御できないからである。
【0017】
層形成の大部分は、第一転換工程で既に行われており、第二転換工程はもっぱら、第一工程で形成された転換被覆の欠陥を、転換層の点欠陥における銅の局所的なセメンテーションによってサポートされる、元素Zrおよび/またはTi上への比較的小さな追加の被覆の蒸着によって修復する役割を果たす、本発明の方法の一実施形態が特に好ましい。意外なことに、本発明では、第二転換工程でZrおよび/またはTiが必要以上に析出すると、防食特性が著しく悪化することが見出された。これは特に、本発明に従って前処理された部材の鉄および/または鋼の表面に当てはまる。
【0018】
従って、工程(i)の第一転換工程における転換水溶液(I)との接触を、元素Zrおよび/またはTiに基づきそれぞれの場合において、鋼および/または鉄の表面に、少なくとも20mg/m2の被覆が形成される時間は少なくとも行うが、好ましくは150mg/m2超、特に好ましくは100mg/m2超、非常に特に好ましくは80mg/m2超の被覆が得られるほど長時間は行わない、本発明の方法が好ましい。
【0019】
ここで、既に上述した通り、第一転換工程において実施するそのような接触に関連して、これは、特に鋼および/または鉄の表面上での、防食および塗膜密着性に有利であり、従って、工程(iii)の第二転換工程における転換水溶液(III)との接触を、元素Zrおよび/またはTiに基づきそれぞれの場合において、鋼および/または鉄の表面に、15mg/m2超、特に好ましくは12mg/m2超、非常に特に好ましくは10mg/m2超の被覆の増加までは継続しないが、好ましくは、少なくともこれらの表面上の被覆が少なくとも2mg/m2増加するような時間は継続することも好ましい。
【0020】
このようにして、防食前処理のための本発明の方法の転換工程における層形成は、最適に調整される。
【0021】
本発明の方法の好ましい実施形態を、個々の処理工程および方法の実施に関連して以下に示し、説明するが、これらは本発明の基礎となる目的に関し特に有利なものである。
【0022】
第一転換工程:
第一転換工程では、元素Tiおよび/またはZrの酸化/水酸化化合物をベースとする転換被覆を可能な限り均質に製造すると同時に、プロセス経済性の要件を満たすことが必要である。このために必要な処理時間、即ち10~60℃の範囲の温度での転換溶液との接触時間は、10秒~300秒の範囲とすべきである。このことを確実にするためには、工程(i)の第一転換工程の転換水溶液(I)において、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の割合が好ましくは少なくとも0.15mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.25mmol/kg、特に好ましくは少なくとも0.30mmol/kgである、本発明の方法が好ましい。プロセス経済性の理由から、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の含有量は、有意には10.0mmol/kg未満、特に好ましくは5.0mmol/kg未満であるべきである。
【0023】
しかし、金属基材、特に鋼基材の種類と表面特性、および要求される酸洗速度によっては、どのような場合でも一定の割合の遊離フッ化物は必要である。原則的には、工程(i)の第一転換工程の転換水溶液(I)において、遊離フッ化物の割合が少なくとも0.5mmol/kg、特に好ましくは少なくとも1.0mmol/kg、非常に特に好ましくは少なくとも1.5mmol/kgである場合が有利であり、従って好ましい。しかし、プロセス経済性の理由から、また、鋼および/または鉄の表面上での錆発生を防ぐため、特に濯ぎ工程後、遊離フッ化物の割合は、好ましくは8.0mmol/kg未満、特に好ましくは6.0mmol/kg、非常に特に好ましくは5.0mmol/kg未満であるべきである。
【0024】
工程(i)の第一転換工程の転換水溶液(I)において、式(1):
[式中、F/mMおよびMe/mMは、mmol/kgの濃度単位減算された遊離フッ化物(F)または還元ジルコニウムおよび/またはチタン(Me)濃度である]
に従う商λが0.80超、好ましくは1.20超、特に好ましくは1.60超である場合、酸洗速度と層形成の良好なバランスを達成することができ、従って、そのような転換溶液が本発明において好ましい。
【0025】
本発明の方法の工程(i)の第一転換工程における遊離フッ化物の好ましい供給源は、フッ化水素酸およびその水溶性塩、例えば、二フッ化アンモニウムおよびフッ化ナトリウム、並びに元素Zr、Tiおよび/またはSiの複合フッ化物、特に元素Siの複合フッ化物である。従って、本発明の第二の実施形態によるリン酸塩処理において、遊離フッ化物の供給源は、好ましくは、フッ化水素酸およびその水溶性塩、および/または元素Zr、Tiおよび/またはSiの複合フッ化物から選択される。フッ化水素酸の塩は、60℃における脱イオン水(κ<1μScm-1)に対する溶解度が、Fとして計算される少なくとも1g/Lである場合に、本発明の意味において水溶性である。
【0026】
濯ぎ工程:
本発明による逐次的転換被覆法の工程(ii)における濯ぎ工程は、一方では、予備的湿式化学法の工程(i)から部材上に付着している可溶性残留物、粒子および活性成分を完全にまたは部分的に除去または希釈する役割を果たす。他方では、可溶性残留物の除去は、転換被覆に含まれる可溶性フッ化物種を特にもたらすはずであり、従って、酸化/水酸化Zrおよび/またはTi化合物の後続の不動態化析出と、第二転換工程における銅のセメンテーションのために、第一転換被覆をコンディショニングする。濯ぎ溶液は、析出により濯ぎ液と接触させる部材の金属表面によって単に消費される、金属または半金属元素をベースとする活性成分を実質的に含まなくてもよいことが見出された。従って、濯ぎ液は、単に都市用水または脱イオン水であってもよいし、必要に応じて、点欠陥でアクセス可能な金属表面のコンディショニングを最適化するための酸化還元活性化合物(「減極剤」)、または濯ぎ溶液との濡れ性を最適化するための非イオン性界面活性剤若しくはアニオン性界面活性剤などの付加的な界面活性化合物を更に含み得る濯ぎ液であってもよい。
【0027】
従って、濯ぎ工程の目的を果たすためには、濯ぎ工程で供給される濯ぎ水溶液(II)が、転換水溶液(I)と比べて少なくとも5分の1以下、好ましくは少なくとも10分の1以下、特に好ましくは少なくとも20分の1以下、非常に特に好ましくは少なくとも50分の1以下の、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の濃度を有し、それぞれの場合に0.25mmol/kg未満、好ましくは0.10mmol/kg未満、特に好ましくは0.05mmol/kg未満の遊離フッ化物、および好ましくは0.10mmol/kg未満の水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物を含むことが必須である。この場合、転換被覆中の可溶性フッ化物種の継続的な減少は、転換被覆と、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物を5倍、例えば100倍超に希釈した濃度で含む濯ぎ溶液とを接触させることによっても達成できる。この濯ぎ工程は、濃度を5分の1に低減した、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物を少なくとも1つ含む濯ぎ溶液(II)を用いた、複数の直ちに逐次的な濯ぎ工程を、プロセス経済性の理由からは好ましくは3以下の濯ぎ工程を含む。
【0028】
従って、酸化/水酸化Zrおよび/またはTi化合物の後続の不動態化析出と銅のセメンテーションのためのコンディショニングをもたらす濯ぎ工程で追求される目的に鑑みると、本発明では、濯ぎ工程の濯ぎ溶液(II)が、50μmol/kg未満の総量、好ましくは15μmol/kg未満の総量で、水に溶解した元素銅、ニッケルおよびコバルトの金属イオンを含むことが有利であり、従って好ましい。
【0029】
本発明では、濯ぎ溶液のpHは5.0~10.0の範囲である。しかし、アルカリ性濯ぎ溶液は、アルカリ性が第二転換工程に導入されるという点で不利であり得ることが見出されており、これは、酸性物質で再研磨することによって補わなければならず、更に活性成分の沈殿およびスラッジの形成を促進する。従って、本発明では、工程(ii)において、濯ぎ水溶液(II)、好ましくは少なくとも濯ぎ工程の最終濯ぎ工程の濯ぎ溶液が6.0超であるが9.5未満、特に好ましくは8.5未満のpHを有することが好ましい。
【0030】
別の実施形態では、酸化/水酸化Zrおよび/またはTi化合物の後続の不動態化析出と、第二転換工程における銅のセメンテーションのための、第一転換層を備えた鋼および/または鉄の表面のコンディショニングが、金属表面での水素の生成を抑制する(「減極剤」と称される)酸化還元活性化合物を濯ぎ溶液に加えるという事実によって促進されることが示され得た。従って、本発明の方法の好ましい実施形態では、工程(ii)の濯ぎ工程の濯ぎ水溶液(II)は、少なくとも0.1mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.5mmol/kg、特に好ましくは少なくとも1mmol/kgであるが、好ましくは10mmol/kg以下、特に好ましくは6mmol/kg以下の、硝酸イオン、亜硝酸イオン、ニトログアニジン、N-メチルモルホリンN-オキシド、遊離形態または結合形態の過酸化水素、遊離形態または結合形態のヒドロキシルアミン、および還元糖から選択される、好ましくは亜硝酸イオン、ニトログアニジン、遊離形態または結合形態のヒドロキシルアミン、および遊離形態または結合形態の過酸化水素から選択される、特に好ましくは亜硝酸イオンから選択される減極剤を更に含む。
【0031】
既に説明したように、濯ぎ工程は、各濯ぎ溶液(II)が、5.0~10.0の範囲のpHを有し、転換水溶液(I)と比べて少なくとも5分の1以下である、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の濃度を有し、0.25mmol/kg未満、好ましくは0.10mmol/kg未満、特に好ましくは0.05mmol/kg未満の遊離フッ化物を含むことが確実である場合、複数の逐次的な濯ぎ工程において実施され得る。好ましい実施形態では、工程(ii)の濯ぎ工程で供給される各濯ぎ溶液との接触は、浸漬および/または噴霧により行う。好ましくは浸漬をまず行い次いで噴霧を行う、浸漬および噴霧により行うことが好ましい。
【0032】
第二転換工程:
既に説明した通り、第二転換工程でもたらされる部材の金属表面の転換は、主に酸化/水酸化Zrおよび/またはTi化合物の後続の不動態化析出に役立つ。よって、プロセス経済性の理由から、また、プロセスウィンドウに確実に準拠するために、本発明の方法では、第二転換工程の転換溶液におけるZrおよび/またはTiの活性成分が比較的少ないことが、逐次的に形成された転換層の防食特性の最適化に有利であり得る。従って、工程(iii)の第二転換工程の転換溶液(III)において、水に溶解した元素Zrおよび/またはTiの化合物の割合が1.00mmol/kg未満、好ましくは0.80mmol/kg未満、より好ましくは0.70mmol/kg未満、特に好ましくは0.60mmol/kg未満である、本発明の方法が好ましい。
【0033】
第二転換工程において、遊離フッ化物の量は任意であり、注意すべきは、転換被覆に局所的な欠陥が生じるのを防ぐために、下流の転換工程を同時に媒染しすぎないように設定することである。それにもかかわらず、短いプロセス時間ウィンドウのためには、少量の遊離フッ化物は、銅イオンのセメンテーションと、酸化/水酸化Zrおよび/またはTiの促進された後続の不動態化析出に有用であり得る。従って、Zrおよび/またはTi上の被覆の増加をサポートするために、工程(iii)の第二転換工程の転換溶液(III)において、遊離フッ化物の割合が3.00mmol/kg未満、好ましくは2.50mmol/kg未満、特に好ましくは2.00mmol/kg未満であるが、好ましくは少なくとも0.1mmol/kg、より好ましくは少なくとも0.2mmol/kgであることが好ましい。本発明の方法の工程(i)の第二転換工程における遊離フッ化物の適当な供給源は、第一転換工程と関連して記載したものと同じである。
【0034】
第二転換工程までに十分達成されていない防食および塗膜密着性は、転換溶液(III)に含まれる銅イオンの量によって最適化できる。工程(iii)の第二転換工程の転換溶液(III)に、好ましくは40μmol/kg超、特に好ましくは50μmol/kg超が含まれるべきであることが見出された。しかし、特に部材が亜鉛の表面で更に前処理されている場合、プロセス経済性の理由から、また、金属銅の大量セメンテーションを回避するため、500μmol/kg以下、特に好ましくは300μmol/kg以下、非常に特に好ましくは200μmol/kg以下の、水に溶解した銅イオンが転換溶液(II)に含まれていることが好ましい。水に溶解した銅イオンの適当な供給源は、硝酸銅(Cu(NO3)2)、硫酸銅(CuSO4)および酢酸銅(Cu(CH3COO)2)などの水溶性塩である。
【0035】
方法の実施および基材:
本発明の方法の実施に関し、第一に第一転換層からの可溶性残留物の除去にとって、最後に元素Zrおよび/またはTiの酸化/水酸化化合物の不動態化析出と銅のセメンテーションにとって、「ウェット・イン・ウェット」工程からの部材を、濯ぎ工程および第二転換工程の両方の工程に移動することが有利であることが見出された。本発明によれば、プロセス経済性の理由から、工程(i)と(iii)の間に乾燥工程がない方法も好ましい。
【0036】
本発明の方法の防食前処理は、元素Zrおよび/またはTiの酸化/水酸化化合物をベースとする非晶質転換被覆を供給するための方法の実施に関し、これは、後続で適用される塗装システムにとって優れた塗膜密着性プライマーを提供する。従って、本発明では、中間濯ぎ工程を伴うが好ましくは中間乾燥工程を伴わない工程(iii)の後、部材の被覆を、塗装システム、好ましくは電着塗装、特に好ましくは陰極電着塗装を用いて行うことが好ましい。
【0037】
本明細書では、濯ぎ工程は、前の湿式化学工程(iii)から部材に付着して持ち越された可溶性残留物、粒子および活性成分を、塗装される部材から完全に若しくは部分的に除去するためにもっぱら使用され、金属元素ベース若しくは半金属元素ベースの活性成分は、部材の金属表面と濯ぎ液とを接触させるだけで既に消費され、濯ぎ液自体には含まれない。従って、濯ぎ液は、単に都市用水または脱イオン水であってもよいし、必要に応じて、濯ぎ液との濡れ性を改善するための界面活性化合物を含む濯ぎ液であってもよい。界面活性化合物は、好ましくは、被覆を改善するために後続で電着塗装を行う場合は特に、アルコキシル化アルキルアルコールおよび/またはアルコキシル化脂肪アミンから選択される、非イオン性界面活性剤である。これは、エトキシル化および/またはプロポキシル化されたものであり、アルキレンオキシド単位の数は、合計で、好ましくは20以下、より好ましくは16以下であるが、より好ましくは少なくとも4、特に好ましくは少なくとも8であり、アルキル基は好ましくは少なくとも10個の炭素原子、より好ましくは少なくとも12個の炭素原子を有し、下記式:
HLB=20・(1-Ml/M)
[式中、Mlは、非イオン性界面活性剤の親油基のモル質量であり、Mは、非イオン性界面活性剤のモル質量である]
によって計算されるHLD値は12~16の範囲で実現される。
【0038】
本発明における乾燥工程は、制御可能な技術的予備措置により、例えば熱の供給または有向の空気の供給によってもたらされる部材の乾燥である。
【0039】
鋼および/または鉄の部材または表面と工程(i)~(iii)の水溶液(I)~(III)との接触は、本発明の方法の成功のためには選択的ではなく、例えば、浸漬、噴霧および噴射などの従来の方法が好ましい。同じことが、各処理工程における接触時間についても当てはまり、各々の場合、好ましくは10~300秒の範囲内である。接触時の転換溶液(I)~(III)の温度は、好ましくは10~60℃、特に好ましくは25~55℃、非常に特に好ましくは30~50℃の範囲である。
【0040】
部材に関し、本発明の方法が、異なった金属材料で構成された材料の直列の防食前処理に非常に適していることが見出された。直列の部材は、好ましくは鋼および/または鉄の表面に加えて亜鉛および/またはアルミニウムの表面も有する。本発明の方法における防食にその表面を付すことができる適当な金属材料は、鋼および鉄に加えて、亜鉛、電解(ZE)、溶融亜鉛めっき(Z)、合金亜鉛めっき(ZA)、(ZF)および(ZM)および(ZM)、アルミニウム被覆(AZ)、(AS)圧延鋼板、並びに軽金属のアルミニウム、マグネシウムおよびそれらの合金であり得る。
【実施例】
【0041】
実施例
本発明による方法シーケンスの利点を、個々の鋼板(CRS)の防食前処理および陰極電着塗装に基づいて以下で説明する。
【0042】
I.Henkel AG & KGaA社製の下記プロセス薬品からなる組成物(pH10.5)を用いた噴霧適用による、55℃、90秒間のアルカリ脱脂
・20g/LのBonderite(登録商標)C-AK 2011
・1g/LのBonderite(登録商標)C-AD 1270
II.Henkel AG & KGaA社製の下記プロセス薬品からなる組成物(pH11.0)を用いた浸漬適用による、55℃、120秒間のアルカリ浄化
・20g/LのBonderite(登録商標)C-AK 2011
・1g/LのBonderite(登録商標)C-AD 1270
III.浸漬適用による脱イオン水(κ<1μScm-1)での濯ぎ
IV.Henkel AG & KGaA社製の下記プロセス薬品からなる組成物(pH4.0)を用いた浸漬塗布による、35℃、120秒間の第一転換工程:
6g/LのBonderite(登録商標)M-NT 1800を含む変形(A)は以下を与える:
・30mg/kgのZr
・4mg/kgの銅
・34mg/kgの遊離フッ化物
16.6g/LのBonderite(登録商標)M-AD 110、15g/LのBonderite(登録商標)M-NT 12001 MUを含む変形(B)は以下を与える:
・150mg/kgのZr
・4mg/kgの銅
・33mg/kgの遊離フッ化物
V.浸漬適用による脱イオン水(κ<1μScm-1)での濯ぎ
【0043】
VI.Henkel AG & KGaA社製の下記プロセス薬品からなる硝酸組成物(pH4.0)を用いた浸漬塗布による、35℃、30秒間の第二転換工程:
6g/LのBonderite(登録商標)M-NT 1800を含む変形(A)は以下を与える:
・30mg/kgのZr
・4mg/kgの銅
・27mg/kgの遊離フッ化物
30.0g/LのBonderite(登録商標)M-NT 1800を含む変形(B)は以下を与える:
・150mg/kgのZr
・4mg/kgの銅
・29mg/kgの遊離フッ化物
2.5g/LのBonderite(登録商標)M-PT 54 NCを含む変形(C)は以下を与える:
・150mg/kgのZr
・17mg/kgの遊離フッ化物
VII.浸漬適用における脱イオン水(κ<1μScm-1)での濯ぎ
VIII.圧縮空気を用いた乾燥
IX.乾燥フィルム厚??g/m2でのCathoGuard(登録商標)800(BASF Coatings AG)を用いた陰極浸漬被覆
【0044】
遊離フッ化物の割合は、重フッ化アンモニウム水溶液により調整し、pHは重炭酸アンモニウムにより調整した。
【0045】
次いで、前処理し、電着塗装したシートを、VW PV 1210交互気候試験に従った30サイクルにわたり6週間エージングし、エージング後のスクライブ剥離を測定した。
【0046】
その結果、本発明による方法は、中間濯ぎ工程を行わない2段階の転換処理と比べて、防食の顕著な改善をもたらすことが明らかである(表1:V3対E1)。第二転換工程における銅イオンの存在もまた、十分な防食に重要である(表1:V4対E2)。また、第二転換工程におけるZrの10mg/m2未満の層重量の増加、または水に溶解した第二転換工程における元素Zrの化合物の含有量が、電着後の腐食性剥離の防止に有利であることが証明されている(表1:E3対E4およびE1対E2)。
【0047】
【国際調査報告】