(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】ビームフォーマ
(51)【国際特許分類】
H01P 1/18 20060101AFI20240628BHJP
H01P 1/00 20060101ALI20240628BHJP
H01Q 3/36 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
H01P1/18
H01P1/00 Z
H01Q3/36
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024501576
(86)(22)【出願日】2021-07-12
(85)【翻訳文提出日】2024-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2021026170
(87)【国際公開番号】W WO2023286132
(87)【国際公開日】2023-01-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】パンダー アダム
(72)【発明者】
【氏名】濱田 裕史
【テーマコード(参考)】
5J011
5J021
【Fターム(参考)】
5J011FA02
5J021FA07
5J021GA01
(57)【要約】
本発明のビームフォーマ(10)は、電磁波が透過する導波路(11)と、導波路内に配置される位相シフタ(12)と、位相シフタ(12)に電気的に接続するバイアスチップ(13)とを備え、位相シフタ(12)が、誘電体基板(122)上に、容量要素を有するメタマテリアルセル(121)を備え、バイアスチップ(13)がメタマテリアルセル(121)に電圧を印加して、容量要素の容量を変化させ、電磁波の位相を変化させる。
これにより、本発明は、良好な透過特性で、広角でビームを操作できる、簡易な構造のビームフォーマを提供できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波が透過する導波路と、
前記導波路内に配置される位相シフタと、
前記位相シフタに電気的に接続するバイアスチップと
を備え、
前記位相シフタが、容量要素を有するメタマテリアルセルを備え、
前記バイアスチップが、前記メタマテリアルセルに電圧を印加して、前記容量要素の容量を変化させ、前記電磁波の位相を変化させる
ことを特徴とするビームフォーマ。
【請求項2】
前記メタマテリアルセルが、前記容量要素を導入するギャップを備え、
前記ギャップの方向が、前記電磁波の電界成分の方向と平行である
ことを特徴とする請求項1に記載のビームフォーマ。
【請求項3】
前記メタマテリアルセルが、前記電磁波の透過方向に配置される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のビームフォーマ。
【請求項4】
他のメタマテリアルセルの表面と、前記メタマテリアルセルの表面とが対向して配置される
ことを特徴とする請求項3に記載のビームフォーマ。
【請求項5】
前記メタマテリアルセルが、前記電磁波の透過方向の垂直方向に配置され、
前記メタマテリアルセルの前記垂直方向の長さの倍数が、前記導波路の前記垂直方向の内寸と同等である
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のビームフォーマ。
【請求項6】
前記導波路が、中空金属導波路である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のビームフォーマ。
【請求項7】
前記導波路が、複数の導波路に分岐されている
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のビームフォーマ。
【請求項8】
前記複数の導波路それぞれに、増幅回路を備える
ことを特徴とする請求項7に記載のビームフォーマ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタマテリアルを用いた導波路型ビームフォーマに関する。
【背景技術】
【0002】
高周波無線通信において、高い指向性のミリ波アンテナが必要とされ、ビームフォーミングに関心がもたれている。ビームフォーミングは、信号の品質を維持するために、様々な周波数でアレイから放射される個々の信号を結合して、高い指向性の電磁放射ビームを形成し、これらの高い指向性のビームを操作する。
【0003】
ビームフォーミングでは、アレイの異なる部分から入力する信号の位相を正確に合わせることによって、特定方向の放射ビームが得られる。ここで、位相の調整には、放射ビームを操作する要素(例えば、アンテナ)をアレイ化させ位相シフタを接続させる構成(位相アレイ)が用いられる。
【0004】
デジタルビームフォーミングは、各アンテナ要素からサンプリングされた信号を、アナログデジタル変換器の出力をミキシングすることにより、低周波数に変換してベースバンド信号を生成する。ベースバンド信号は、異なるチャンネル間で分割され、ビームフォーマに送信される。ビームフォーマで、信号は補正され、操作され、放射ビームが形成される。このデジタルビームフォーミング技術により、動作バンド幅領域で位相遷移することなく均一なビームを形成することが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Iyemeh Uchendu et al.,“Survey of Beam Steering Techniques Available for Millimeter Wave Applications”, Progress In Electromagnetics Research B, Vol. 68 (2016) p.35-54.
【非特許文献2】Zargham Baghchehsaraei et al.,“Waveguide-integrated MEMS-based phase shifter for phased array antenna”, IET Microwaves Antennas and Propagation, Institution of Engineering and Technology, 2014, 8 (4), pp.235-243.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来のビームフォーミング技術は、コストと消費電力とを要する。
さらに、従来の技術は、低周波数バンドで有効である反面、動作周波数がミリ波バンドまで増加することに伴い、以下の問題が生じる。
【0007】
ミリ波周波数帯でのビームフォーミングでは、第1に、位相シフトでの高い損失が問題となる。入射損失は、伝送路にデバイスを挿入するときに生じ、パワーを浪費し、システムのパフォーマンスを劣化させる。また、動作周波数の増加に伴い、半導体デバイスでの損失が増加し、位相シフタの適用を妨げる。
【0008】
第2に、デバイスの動作周波数を増加させるには、素子(要素)のサイズの低減を必要とする。例えば、典型的な位相アンテナアレイにおいて、高周波域での信号アンテナ要素の指向性と利得は、低周波数域より小さく、式(1)に示すように、アンテナの物理的寸法と動作周波数により制限される。
【0009】
【0010】
ここで、Dmaxは指向性、Aはアンテナの総放射面積、λはアンテナの動作波長である。動作周波数が高いほど小さなアンテナを必要とし、位相アンテナアレイの総利得が減少する。このように、位相アレイの設計において、サイズに依存する指向性と利得とのトレードオフが問題となる。
【0011】
第3に、高周波域でのビームフォーミングは位相変動に敏感なので、より高精度の回路の設計、作製が必要となり、位相シフタがより高価で複雑な構造になる。このように、高周波域では位相アレイアンテナは、複雑なビームフォーミングネットワークを必要とする。この複雑なビームフォーミングネットワークが、システムや信号のロスを増加させ、位相変化により信号強度を低下させることが問題となる。
【0012】
第4に、電気的に操作される位相アレイにおける位相シフタは周波数に依存するので、バンド幅で様々な位相シフトを生じさせる。このことは、広いバンド幅を必要とするミリ波帯での動作を制限するので問題となる。
【0013】
以上のように、従来のビームフォーミング技術をミリ波帯に適用して指向性の高いビームを形成する場合、位相シフタに起因して、損失、素子サイズ、周波数依存性に関係して、複雑性、コストが問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述したような課題を解決するために、本発明に係るビームフォーマは、電磁波が透過する導波路と、前記導波路内に配置される位相シフタと、前記位相シフタに電気的に接続するバイアスチップとを備え、前記位相シフタが、容量要素を有するメタマテリアルセルを備え、前記バイアスチップが、前記メタマテリアルセルに電圧を印加して、前記容量要素の容量を変化させ、前記電磁波の位相を変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、良好な透過特性で、広角でビームを操作できる、簡易な構造のビームフォーマを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】
図1Aは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマの概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける位相シフタ周辺の構成を示す概略断面図である。
【
図2A】
図2Aは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおけるメタマテリアルセルの構成例を示す概略図である。
【
図2B】
図2Bは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおけるメタマテリアルセルの幾何学的パラメータを示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおけるメタマテリアルセルの動作を説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおけるメタマテリアルセルの動作を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおけるメタマテリアルセルの動作を説明するための図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の構成を示す概略鳥瞰図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の構成を示す概略正面断面図である。
【
図6C】
図6Cは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の構成を示す概略側面断面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図7B】
図7Bは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図8B】
図8Bは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図8C】
図8Cは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図9A】
図9Aは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマの構成を示す概略図である。
【
図9B】
図9Bは、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマの構成を示す概略図である。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマの動作を説明するための図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の第2の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の構成を示す概略鳥瞰図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の第2の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の構成を示す概略正面断面図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の第2の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の第2の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図12C】
図12Cは、本発明の第2の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図13A】
図13Aは、本発明の第3の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【
図13B】
図13Bは、本発明の第3の実施の形態に係るビームフォーマにおける導波路の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施の形態>
本発明の第1の実施の形態に係るビームフォーマについて、
図1A~
図10を参照して説明する。
【0018】
<ビームフォーマの構成>
本実施の形態に係るビームフォーマ10は、導波路11と、位相シフタ(位相シフタチップ)12と、集中容量要素の制御用のバイアスチップ13とを備える。
【0019】
導波路11は、矩形断面の矩形中空導波路であり、金属により構成される。金属として、真鍮、銅、銀、アルミニウム等を用いることができ、低いバルク抵抗率の金属であることが望ましい。
【0020】
位相シフタ12は、誘電体基板上に配列されたメタマテリアルセル121からなり、単一チップに接続され、導波路11内に配置される。以下、「メタマテリアル位相シフタ」ともいう。
【0021】
ここで、メタマテリアルセル121は、サブ波長メタマテリアルセルであり、ミリ波周波数で共振するように設計される。メタマテリアル構造には、金、銅、アルミ、白金等の金属製、グラフェン、カーボンナノチューブ等の高い電気伝導度を有する材料またはITO、IGZOなどの電気伝導性酸化物を用いることができる。
【0022】
誘電体基板は、誘電体材料からなり、シリコン系誘電体(酸化シリコン、窒化シリコン)、GaAs、InP、ポリマー、BCB(benzocyclobutene)等を用いることができる。
【0023】
また、位相シフタ12は集中容量要素を有する。集中容量要素は、バラクタダイオード、トランジスタなどの様々な容量要素であり、印加電圧で容量が制御される素子である。
【0024】
バイアスチップ13は、導波路11の外側に配置され、
図1Bに示すように、メタマテリアル位相シフタチップ12と接続される。
【0025】
ここで、メタマテリアル位相シフタチップ12は、その表面を上方にして、導波路11内の中央に配置される。
【0026】
メタマテリアル位相シフタチップ12とバイアスチップ13とは、ワイヤボンディングによって接続される。同様に、バイアスチップ13とバイアスピン14とが接続される。この接続により、バイアス電圧が外部の電源から、バイアスピン14とバイアスチップ13とを介して、メタマテリアル位相シフタチップ12に印加される。同様に、デバイスの接地にも接続される。
【0027】
ビームフォーマ10において、矩形中空導波路11は2回分岐され、その結果、4本の導波路に分岐される。
【0028】
増幅器からの1入力の入力電磁波は任意の周波数と位相を有し、導波路11で4つの出力波に分波される。ここで、出力波は、入力波と同じ周波数を有する。
【0029】
初めに、電磁波(ミリ波)は、メタマテリアル位相シフタチップ12に到達する前に、同じ位相と同じ強度を有する4つの平行波に分波される。
【0030】
次に、位相シフタ12のメタマテリアルセル121内のギャップに搭載された集中容量要素がOFFの場合、またはすべての集中容量要素が同じ電圧でバイアスされる場合には、電磁入力波は、平行導波路11で電磁波の位相が変化することなく透過する。
【0031】
一方、集中容量要素がONであり、それぞれの位相シフタ12に異なるバイアスが印加される場合、電磁波は、それぞれの位相シフタチップ12を透過し、メタマテリアルのギャップの集中容量の値によって、導波路11の各チャネルで位相が変化される。
【0032】
本実施の形態では、メタマテリアルが、位相シフタに用いられる。メタマテリアルは人工媒質であり、通常の材料中の原子と同様の配置にともに配置された埋め込みサブ波長構造からその特性を取得し、測定された周波数範囲で誘電率と透磁率の所望の値を示し、電磁(EM)波を操作する。メタマテリアルの電磁気的性質は、回路の周期的構造の寸法、形状、方向および配置、ならびにそれらの構造からなる材料に起因する。
【0033】
メタマテリアルを位相シフタやビームフォーマに用いる場合、このメタマテリアルの構成や層構造により、透過特性や位相を変化させることができる。
【0034】
図2Aに、メタマテリアルセル121の形状の例121_1~121_8を示す。本実施の形態において、メタマテリアル位相シフタ12は、誘電体基板上に作製された様々な形状の1層の共振メタマテリアルセル121からなる。
【0035】
例えば、メタマテリアルセル121は、その表面上を周回する金属構造(例えば、帯形状の金属体)を有し、その金属構造は不連続部分(ギャップ)を有する。
【0036】
ここで、帯形状等の金属構造のギャップと、ギャップにおいて対向する金属の端面により容量が生じる。
【0037】
このように、メタマテリアル位相シフタセル121は、メタマテリアルセル体に少なくとも1つのギャップを有する。このギャップは、総容量値を制御するセルに集中容量要素を導入するために必要である。
【0038】
ここで、共振セルの形状、寸法、周期は、ミリ波バンドで用いるため、所望の周波数域が達成されるよう調整(整調)する。
図2Bに、メタマテリアルセル121の幾何学的なパラメータを、形状121_5を例として示す。
【0039】
メタマテリアルセル121(121_5)において、セルのサイズ(正方形における一辺の長さ)をl、ギャップの長さをg、帯形状の金属構造の幅をw、セル周期をaとする。
【0040】
ここで、メタマテリアルセル121のサイズは、電磁波の波長より小さいことが望ましく、電磁波の波長の1/2であることが望ましい。
【0041】
メタマテリアルセルの共振周波数は、式(2)で表される。
【0042】
【0043】
ここで、LRはメタマテリアルセルの等価インダクタンス、CRは等価容量である。
【0044】
また、等価インダクタンスLRは、式(3)で表される。
【0045】
【0046】
ここで、μ0は真空の透磁率、lはメタマテリアルセルの長さ(正方形のセルを仮定)、tは金属の厚さである。
【0047】
また、等価容量CRは、ギャップ容量Cと集中容量要素の負荷容量CCとからなり、式(4)、式(5)で表される。
【0048】
【0049】
【0050】
ここで、ε0とεcはそれぞれ、容量のギャップ間の材料の真空誘電率と実効誘電率である。また、wはメタマテリアルセルの帯形状の金属構造の幅、gはメタマテリアルセル内の容量のギャップサイズである。CとLRはメタマテリアルセルのサイズに比例するので、共振周波数はサイズに逆比例する。
【0051】
本実施の形態では、300GHzでEMモードの安定した伝搬をするために、導波路11にWR3.4導波路(内寸は、432×864μm2)が用いられる。この導波路の伝搬開口部(窓開口)に、すべてのメタマテリアルセルが完全に包含され、導波路内で均一な構造を有するメタマテリアル位相シフタを得るために、メタマテリアルセル周期の倍数が、導波路高さと等しくなるように設計されることが望ましい。
【0052】
例えば、メタマテリアルセルのサイズを216×216μm2とする場合、216×2=432μm(導波路高さ)を満たす。同様に、144×144μm2とする場合、144×3=432μmを満たし、108×108μm2とする場合、108×4=432μmを満たす。
【0053】
ここで、メタマテリアルセル周期の倍数が、導波路高さに完全一致しなくてもよく、導波路の伝搬開口部(窓開口)にすべてのメタマテリアルセルが完全に包含され、電磁波がEMモードの安定した伝搬する範囲であればよい。
【0054】
また、ここでは、メタマテリアルセルの形状に正方形を用いたが、矩形の周期セルを用いてもよい。他の形状でもよい。
【0055】
<ビームフォーマの動作>
本実施の形態に係るビームフォーマ10の動作を説明する。
【0056】
<メタマテリアルセルの特性>
初めに、ビームフォーマ10のメタマテリアル位相シフタ12に用いるメタマテリアルセル121の特性に関する計算結果について説明する。
【0057】
計算には、メタマテリアルセル121として、正方形メタマテリアルセルを用いる。メタマテリアルセル121の構成は、いわゆる修正エルサレムクロス型であり、典型的なエルサレムクロスと比べて45°傾斜されている。
【0058】
基板122にはInP基板を用い、比誘電率が12.4、厚さts=50μmとする。これらの値は、典型的なInP系集積回路電子チップの値である。
【0059】
メタマテリアルセル121の特性の計算において、メタマテリアルセル121は、
図3に示すように配置される。
図3において、k方向が電磁波の透過(伝搬)方向、E方向が電界方向、H方向が磁界方向である。
【0060】
メタマテリアルセル121は、入力ポート(port1)15から出力ポート(port2)16に向かって、長手方向を電磁波の伝搬方向にして配置される。換言すれば、メタマテリアルセル121は、その表面(メタマテリアルが形成される面)がk-E面と平行になり、メタマテリアルセル121の長手方向(正方形において一辺の方向)と電磁波の伝搬方向(k方向)が平行になるように配置される。
【0061】
このように、メタマテリアル位相シフタセルを長手方向に配置することにより、電磁波の伝送方向に垂直に配置する場合に比べて、電磁波の伝送損失を低減でき、メタマテリアル位相シフタの設計に高い自由度を与えることができる。
【0062】
また、ギャップの方向は、電磁波の電界E方向に平行になるように配置される。ここで、ギャップの方向は、ギャップを形成する対向する端面に垂直な方向である。また、修正エルサレムクロス型のメタマテリアルセル121は、E方向とH方向と両方向に平行なギャップを有するが、E方向に平行なギャップが電磁波との共振に寄与する。このように、メタマテリアルセルは、電磁波の電界E方向に平行になるように配置されるギャップを含めばよい。
【0063】
この計算は、時間領域の解法を用いて、垂直入射方向に近似的な周期境界条件を設定して、x軸に沿った電磁波の電界成分について実行した。
【0064】
また、300GHz周波数帯でS21<-3dBとなる高い透過係数を達成するように、メタマテリアルセル121の周期を一定と仮定して、初期集中容量を0fFとして、メタマテリアルのギャップサイズ、セルサイズ、幅等の幾何学的パラメータを最適化した。
【0065】
図4に、0~10fFの集中容量におけるメタマテリアルセル121の透過係数スペクトルの計算結果を示す。
【0066】
集中容量を0から10fFに増加させたとき、透過係数S21が-3dB以上で平坦な特性を示す周波数領域(以下、「高透過域」という。)が低周波側にシフトする。このことは、300GHzの周波数における電磁波の高い透過を示す。
【0067】
また、容量値が低いとき(0~3fF)、0.5fFの容量変化に対して位相変化は10度である。一方、容量値が高いとき(5~10fF)、0.5fFの容量変化に対して位相変化は2度である。
【0068】
このように、メタマテリアルセル121における集中容量の初期値が0fFで設計されているので、0~3fFの容量変化に対する位相変化の感度は、5~10fFの容量変化に対する感度より大きい。
【0069】
また、
図5に、0~10fFの集中容量におけるメタマテリアルセル121の位相の周波数依存性の計算結果を示す。
【0070】
例えば、300GHzにおいて、0~3fFで容量が変化するとき、位相が-120度から-180度に変化し、引き続き、5~10fFで容量が変化するとき、位相が180度から150度に変化する。その結果、位相は合計で90度変化する。
【0071】
このように、高透過域の300GHzにおいて、0~10fFで容量が変化するとき、90度(π/2)程度の総位相変化が生じる。
【0072】
<導波路の特性>
次に、メタマテリアル位相シフタ12と結合した導波路の動作(特性)を説明する。
【0073】
この構成では、メタマテリアルセル121が、k方向に沿って導波路開口に包含されるように結合され、メタマテリアル位相シフタチップ12を形成し、金属製の導波路11(WR3.4)に挿入される。
【0074】
この金属製導波路11において、
図6Aに示すように、ミリ波信号は、入力(port1)から出力(port2)間で伝送(透過)し、メタマテリアル位相シフタチップ12を通過する。電界Eの方向は信号の透過方向に垂直であり、集中容量要素の方向(ギャップの方向)は電界Eに平行である。その結果、メタマテリアル位相シフタチップ12(メタマテリアルセル)が、入力電磁波の電界成分と結合して共振が生じる。
【0075】
図6B、Cそれぞれに、導波路11におけるメタマテリアル位相シフタチップの正面断面図と側面断面図を示す。
【0076】
メタマテリアル位相シフタチップ12では、複数のメタマテリアルセル121が2×nで配列される。ここで、2個のメタマテリアルセル121が結合して1層を構成する。すなわち、メタマテリアル位相シフタチップ12はn層から構成される。
【0077】
導波路11において、メタマテリアル位相シフタチップ12は、電界E方向に2個のメタマテリアルセル121が配列され、透過方向(k方向)に第1層~第n層が配列されるように、配置される。
【0078】
ここで、電界E方向に2個のメタマテリアルセルが配列されたが、2個に限らず、1個でも複数でもよい。上述の通り、メタマテリアルセル周期(単一のメタマテリアルセルの電界E方向の長さ)の倍数が、導波路高さ(導波路の電界E方向の長さ)と等しくなるように設計されることが望ましい。
【0079】
このように、メタマテリアル位相シフタチップ12は、その表面がE-k面(導波路側面)と平行となり、長手方向(複数の層構造が結合する方向)が透過方向(k方向)と平行になるように配置される。
【0080】
初期値である0の位置120は、メタマテリアルセル121の表面ではなく、基板表面に設定され、導波路11の垂直の対称軸にある。メタマテリアル位相シフタ12は、導波路11の長手方向に配置されるので、その断面は異なる層で同等であり、透過特性を一定にする。
【0081】
メタマテリアル位相シフタ12の長さは、層数を変化させることで自由に変えられ、伝搬信号の総位相変化を増加させることができる。
【0082】
図7A、Bそれぞれに、メタマテリアル位相シフタの層数(1層~5層)における伝搬ミリ波の透過係数と位相変化の集中容量値依存性の計算結果を示す。
図7Aに示すように、層数の増加により、ミリ波の高い透過が少ない変動で観測される。
【0083】
一方、
図7Bに示すように、1層~5層の位相シフタにおいて0~4fFで容量が変化するとき、相対位相は60度程度から360度程度まで増加する。このように、メタマテリアル位相シフタの層数を増加することにより、ほとんど透過特性に影響を与えず、位相変化の自由度を制御できる。「相対位相」については後述する。
【0084】
<ビームフォーマの特性>
次に、メタマテリアル位相シフタ12が搭載された平行導波路ビームフォーマ10の動作(特性)について説明する。
【0085】
ここで、最適化された5層のメタマテリアル位相シフタチップ12が、導波路ビームフォーマ10を形成するため、平行導波路内に搭載される。
【0086】
計算に用いたデバイスにおけるInPの比誘電率εr1と比透磁率μはεr1=12.4、μ=1であり、基板の厚さtsはts=50μmである。これらのInP基板のパラメータと厚さの値は、300GHzでの実際の高周波InP集積電子回路に基づくものである。また、バラクーダダイオードやトランジスタ等の集中容量要素は、InP基板に直接作製される。
【0087】
メタマテリアルセル121は、InP基板に直接デポされた200nm厚の金薄膜からなる。メタマテリアルセル121のパラメータは、メタマテリアルセル121のサイズ(長さ)lが124μm、ギャップサイズgが42μm、帯形状の金属構造の幅wが8μm、セル周期aが216μmである。これらのパラメータは、異なる集中容量の値に対して、300GHzで高い透過係数S21、-3dBが得られるように調整された。
【0088】
図8A~Cそれぞれに、0~4fFの容量値での透過スペクトル、位相変化スペクトル、相対位相の計算結果を示す。5層のメタマテリアルビームフォーマ10について、0~4fFの容量で高い透過とともに360度(2π)の位相変化が得られる。このことは、このビームフォーマ10が、どの周波数範囲でも正確に位相制御でき、自由度が高く、広角にビームを形成できることを示す。
【0089】
ここで、「相対位相」は、以下の通り求められる。例えば、位相の周波数依存性(
図8B)より、300GHzでのC=0、1、2、3、4fFそれぞれでの位相、-70、130、-60、-150、160度が得られる。これらの位相の値を、位相が360度周期で変化することを考慮してプロットする。C=0fFにおいて、-70度の位相の値に360度を加算して290度が得られる。また、C=4fFにおいて、160度の位相の値に360度を減算して-200度が得られる。次に、これらの値を上記のC=1~3fFの位相の値とともにプロットする。最後に、最低値であるC=4fFにおける-200度が0度となるように、それぞれのプロットを200度シフトして、「相対位相」が
図8Cに示すようにプロットされる。
【0090】
次に、導波路ビームフォーマ10の動作を説明する。
【0091】
図9A、Bは、導波路ビームフォーマ10の構成を示す模式図である。この導波路ビームフォーマ10では、導波路11が2回分岐され、その結果、4本の分岐チャネルを有する。
【0092】
結合出力信号は、それぞれのメタマテリアル位相シフタ12により印加された異なる位相シフトにより、異なる方向に操作される。ビームフォーミング位相アレイで、広角でのビーム操作のために、放射要素間の距離はλ/2に設定される。λは電磁波の波長である300GHzバンドはλ=1mmで用いられる。
【0093】
図9Bに示すように、放射要素の中心間の距離は、導波路開口17の中心間の距離であり、h=0.5mmである。その結果、λ/2=0.5mmでの設定により45度程度のビーム操作を可能にする。
【0094】
ここで、300GHz用のデバイスの限界(45度)について、それぞれの導波路の出力間の距離を低減することにより増加することができる。しかしながら、WR3.4導波路の内寸が432μmなので、極薄層の金属構造のデバイスの作製は困難である。これに対して、導波路のサイズを縮小することにより、導波路間の距離(導波路開口の中心間の距離)を低減させ、操作角を増加させることができる。
【0095】
さらに、WR3.4導波路ビームフォーマ構造において極薄層の金属構造の作製が困難であるならば、導波路開口間の距離を0.6~0.7mmに設定してもよい。
【0096】
この導波路ビームフォーマ10において、式(6)、(7)により、導波路ビームフォーマの隣り合う開口17間での正確な位相シフトφ
x、φ
yを算出して、
図8Cからこの位相シフトに対応する容量値を決定することにより、放射ビームは所望の方向に出力することができる。
【0097】
【0098】
【0099】
ここで、φxとφyは、x、y方向での隣り合う開口17間での位相シフトである。hは開口17の中心間の距離、λは入射波の波長、Az、Elは、所望の出力波の出射方向に対する方位角と仰角である。本実施の形態では、ビームフォーミングは1軸に沿ってのみなので、El=0、Az=θとする。θは操作角である。
【0100】
図10に、計算された導波路ビームフォーマ10での信号伝搬を示す。
【0101】
入力信号は導波路11に沿って進行し、2回分波され、4つの経路に分波される。信号(電磁波)が導波路11の位相シフト領域に入力する前、それぞれの電磁波の位相は同じである。信号(電磁波)が導波路11の位相シフト領域に入力すると、それぞれのメタマテリアル位相シフタ12に異なる容量が設定されているので(C1=0.2fF、C2=1.3fF、C3=0.3fF、C4=1.5fF)、電磁波の位相は変化し、結合出力波は操作角θ18で出力する。ここで、操作角θ18は、開口17の端面に垂直な方向(図中、点線矢印)と結合出力波の伝搬方向とがなす角度である。
【0102】
このように、メタマテリアル位相シフタ導波路ビームフォーマ10により、広角でビームを操作できるので、システムの損失を低減でき、構造を簡易化でき、コストを低減できる。
【0103】
<効果>
本実施の形態に係るビームフォーマによれば、メタマテリアルを位相シフタに用いることにより、簡易な構造で、良好な透過特性で位相変化を増加でき、広角でのビーム操作を実現できる。
【0104】
また、本実施の形態に係るビームフォーマによれば、複雑なビームフォーマの構造を必要としないので、作製工程の負担、コストを低減できる。
【0105】
従来のビームフォーマでは、ミリ波信号は、導波路パッケージ内に搭載された増幅集積回路で増幅され、中空金属導波路にリッジカプラを用いて伝搬される。増幅された信号は、複雑な位相シフトネットワークで処理され、結合され、放射要素(アンテナ)まで伝搬され、結合ビームとして放射される。
【0106】
一方、本実施の形態に係るビームフォーマでは、ミリ波信号は導波路内に伝搬された後、信号の位相がメタマテリアル位相シフタによって変化する。したがって、このビームフォーマでは、複雑な位相シフトのネットワークを必要としない。また、電気的位相シフトの回路の入射損失を低減でき、信号が低損失で導波路を伝搬される。
【0107】
さらに、本実施の形態に係るビームフォーマでは、トータルでの指向性と利得は、放射要素の物理的寸法ではなく、信号増幅やメタマテリアル位相シフタによって決まる。また、アンテナのチップへの接続に関係する損失を低減できる。
【0108】
このように、メタマテリアル位相シフタの構造は、コンパクトで簡略化されている。また、メタマテリアル位相シフタの設計、作製プロセスは、サブ波長のメタマテリアルセルと集中容量要素の作製に集約され、簡略化できる。したがって、従来の複雑な導波路パッケージを含むビームフォーマの設計、作製は大幅に簡略化され、デバイスの総コストは低減される。
【0109】
このメタマテリアル位相シフタの設計における柔軟性、簡略性により、放射ミリ波に対する広帯域での安定した伝送を実現する。
【0110】
本実施の形態では、メタマテリアル位相シフタの表面は、z方向(k方向)に平行な例を示したが、これに限らない。メタマテリアル位相シフタの表面とz方向(k方向)との角度は、±1.5度程度であってもよい。
【0111】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態に係るビームフォーマについて、
図11A~
図12Cを参照して説明する。
【0112】
<ビームフォーマの構成>
本実施の形態では、導波路ビームフォーマ20におけるそれぞれの導波路チャネルに、2つの位相シフタチップ12が搭載される。他の構成は、第1の実施の形態と略同様である。
【0113】
第1の実施の形態に示すように、導波路で伝搬する電磁波の位相変化は、単一のメタマテリアルセルの性能に依存し、高透過域で電磁波の位相を変化させる。
【0114】
本実施の形態では、メタマテリアルセルを追加することにより、位相変化範囲を増加させ、デバイス設計の高い自由度とミリ波信号の広い帯域でのビームフォーミングを可能にする。
【0115】
ビームフォーマ20では、
図11A、Bに示すように、導波路21内に2つの位相シフタチップ12_1、12_2が、それぞれの表面(メタマテリアルが形成される面)を対向して配置され、位相シフタ22が構成される。以下、この構成の位相シフタ22を「鏡像配置型位相シフタ」という。
【0116】
それぞれの位相シフタチップ12_1、12_2は、導波路21の側壁の方向に中心からΔs=0.2mmの位置に配置される。このように、2つの位相シフタチップ12_1、12_2が、導波路21の垂直な対称軸に沿って鏡像位置に配置される。Δsの値は、鏡像配置型位相シフタ22を透過する電磁波が、高い透過を示すように最適化される。
【0117】
鏡像配置型位相シフタ22の特性を計算した結果、
図12Aに示すように、透過係数は300GHzで-3dB程度に減少し、位相シフタの動作において許容範囲である。
【0118】
図12Bに、0~4fFの集中容量要素における位相の周波数変化を示し、
図12Cに、相対位相の容量依存性を示す。
【0119】
相対位相は、0、1、2、3fFの集中容量に対して、それぞれ500度程度、320度程度、130度程度、50度程度であり、単一の位相シフタ(第1の実施形態、
図8C)に比べて大きい。
【0120】
本実施の形態に係るビームフォーマによれば、単一の位相シフタより、小さい容量で360度の位相変化を実現でき、広い周波数域で動作できる。
【0121】
また、相対位相が増加するので、集中容量の可変範囲の選択の自由度も増加し、メタマテリアル位相シフタのセルを容易に設計(形状、サイズ)できる。さらに、高透過域での透過損失を低減でき、ビームフォーミングシステムの動作特性を向上できる。
【0122】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態に係るビームフォーマについて、
図13A、Bを参照して説明する。
【0123】
<ビームフォーマの構成>
本実施の形態に係るビームフォーマ30では、厚さが低減された誘電体基板を用いる。その他の構成は、第1および第2の実施の形態と略同様である。
【0124】
第1および第2の実施の形態では、位相シフタの長さの増加または鏡像配置型位相シフタにより、位相変化範囲を360度(2π)以上に増加できる。
【0125】
しかしながら、メタマテリアル位相シフタの構造の変化により、導波路における相対的な誘電体基板の体積が増加するので、付加的な損失が生じる。
【0126】
そこで、ビームフォーマ30では、誘電体基板の厚さを低減する。
【0127】
図13Aに、異なる基板の厚さにおける位相シフタでの透過係数スペクトルを示す。基板厚さt
sは30、40、50μmである。5層のメタマテリアル位相シフタを用い、容量は一定(C=2fF)とした。
【0128】
基板厚さを低減することにより、誘電体膜での損失が低減するので、透過係数が増加する。とくに、高透過域の低周波数側で増加する。この効果により、長い位相シフタや鏡像構造の位相シフタで生じる損失を補償できる。
【0129】
また、基板厚さの低減に伴い、高透過域が高周波数側にシフトする。これは、メタマテリアルセルと基板との干渉に起因する。メタマテリアルセルでの共振発生は、式(4)に示すように、ギャップの材料の実効誘電率に依存する。ここで、この実効誘電率に、基板材料の厚さが影響を与えるので、基板材料の厚さが高透過域のシフトに関係する。この効果は、メタマテリアル位相シフタの位相を設計する際に考慮される。
【0130】
また、基板厚さの低減に伴い、高透過域の幅が増加する。基板の厚さが50μmのとき、高透過域は225~320GHzである。一方、基板の厚さが40μm、30μmのとき、高透過域はそれぞれ255~330、255~345GHzであり、高透過域の幅は増加する。
【0131】
また、
図13Bに示すように、基板厚さの低減に伴い、0~4fFの容量範囲で相対位相が増加する。基板の厚さが50μmのとき、相対位相が360度である。一方、基板の厚さが40μm、30μmのとき、相対位相はそれぞれ410度、450度である。
【0132】
本実施の形態に係るビームフォーマによれば、透過特性を向上でき、位相変化量を増加できるので、デバイスの設計と動作の自由度を増加し、導波路ビームフォーマの広い帯域での動作特性を向上させる。
【0133】
<第4の実施の形態>
本発明の第4の実施の形態に係るビームフォーマについて説明する。
【0134】
<ビームフォーマの構成>
本実施の形態に係るビームフォーマ40では、アレイ化された複数の増幅回路が搭載される。その他の構成は、第1~第3の実施の形態と略同様である。
【0135】
第1~第3の実施の形態では、増幅器からの信号は、4本の導波路チャネルに分岐され、結合波が異なる方向に操作されるビームに形成される。大きなアレイでは、より多くの出力開口からなり、増幅器から供給される複数の信号の分割(分波)は大きな出力損失を生じる。
【0136】
そこで、本実施の形態に係るビームフォーマ40では、単一の増幅回路から平行チャネルに信号を分波する代わりに、アレイ化された複数の増幅回路が搭載され、入力波を増幅する。
【0137】
ビームフォーマ40において、信号は、それぞれの増幅回路からそれぞれの導波路に同時に透過され、メタマテリアル位相シフタにより位相シフトされる。全ての増幅回路が同じ信号で動作するので、それぞれの増幅回路から出力される出力信号は同位相である。このように、位相シフトが位相の不整合無しで実行される。最後に、導波路出力は結合され、ビームとして操作され放射される。
【0138】
本実施の形態に係るビームフォーマによれば、位相の不整合無しで位相シフトを実行でき、放射ビームを高出力化できる。
【0139】
本発明の実施の形態では、複数のメタマテリアルセルを結合して用いる例を示したが、単一のメタマテリアルセルを用いてもよい。
【0140】
本発明の実施の形態では、1層のメタマテリアルセルを用いる例を示したが、複数の層のメタマテリアルセルを用いてもよい。
【0141】
本発明の実施の形態では、ビームフォーマの構成、製造方法などにおいて、各構成部の構造、寸法、材料等の一例を示したが、これに限らない。ビームフォーマの機能を発揮し効果を奏するものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明は、ビームフォーマに関するものであり、高周波無線通信において、ミリ波アンテナ等に適用することができる。
【符号の説明】
【0143】
10 ビームフォーマ
11 導波路
12 位相シフタ
13 バイアスチップ
121 メタマテリアルセル
122 誘電体基板
【国際調査報告】