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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-05
(54)【発明の名称】回折光学素子の製造装置および方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/18 20060101AFI20240628BHJP
   G02B 5/32 20060101ALI20240628BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20240628BHJP
   G02B 5/04 20060101ALI20240628BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B5/32
G03H1/04
G02B5/04 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024502532
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-01-16
(86)【国際出願番号】 KR2022010328
(87)【国際公開番号】W WO2023287237
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0093488
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】デ・ハン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ブ・ゴン・シン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ユン・リム
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ヨン・チュ
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ジュ・ソン
【テーマコード(参考)】
2H042
2H249
2K008
【Fターム(参考)】
2H042CA17
2H249AA31
2H249AA33
2H249CA15
2H249CA28
2K008BB04
2K008DD13
2K008DD14
2K008DD15
2K008GG01
2K008HH01
2K008HH20
(57)【要約】
本発明は、光反応物質付着面と、該光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含む回折光学素子製造用プリズムと、該プリズムと、光反応物質付着面に付着する光反応物質に対してプリズムの反対側に位置し、光反応物質に向かって光を照射するように構成される光源とを含む回折光学素子の製造装置、および回折光学素子を製造する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回折光学素子製造用のプリズムであって、
光反応物質付着面と、
前記光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面と、を含むプリズム。
【請求項2】
前記所定の角度は、下記数1によって定められ、
【数1】
θは、前記プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、前記プリズムに付着する光反応物質に対して前記プリズムの反対側から前記光反応物質に向かって照射光が照射される場合、前記照射光が空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第1入射角であり、θは、前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率である、請求項1に記載のプリズム。
【請求項3】
前記プリズムに付着する光反応物質に対して前記プリズムの反対側から前記光反応物質に向かって照射光が照射される場合、
前記照射光が空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第1入射角(θ)は、前記光反応物質と空気との間の全反射角度(θ)以下であり、
前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角(θ)は、前記全反射角度(θ)以上である、請求項1に記載のプリズム。
【請求項4】
前記所定の角度は、下記数2によって定められ、
【数2】
θは、前記プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、前記プリズムに付着する光反応物質に対して前記プリズムの反対側から前記光反応物質に向かって照射光が照射される場合、前記照射光が空気と前記光反応物質との界面に入射する照射角であり、θは、前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率であり、nairは、空気の屈折率である、請求項1に記載のプリズム。
【請求項5】
前記光反射面は、ミラーコーティング面またはミラー蒸着面を含む、請求項1に記載のプリズム。
【請求項6】
三角柱形状である請求項1に記載のプリズム。
【請求項7】
回折光学素子の製造装置であって、
光反応物質付着面と、前記光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含むプリズムと、
前記光反応物質付着面に付着する光反応物質に対して前記プリズムの反対側に位置し、前記光反応物質に向かって光を照射するように構成される光源と、を含む製造装置。
【請求項8】
前記光源から照射され空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する照射光と、前記照射光が光反応物質を透過して前記光反射面で反射し前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する反射光と、が干渉して、前記光反応物質に干渉縞を形成する、請求項7に記載の製造装置。
【請求項9】
前記所定の角度は、下記数3によって定められ、
【数3】
θは、前記プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、前記光源から照射される照射光が空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第1入射角であり、θは、前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率である、請求項7に記載の製造装置。
【請求項10】
前記光源から照射される照射光が空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第1入射角(θ)は、前記光反応物質と空気との間の全反射角度(θ)以下であり、
前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角(θ)は、前記全反射角度(θ)以上である、請求項7に記載の製造装置。
【請求項11】
前記所定の角度は、下記数4によって定められ、
【数4】
θは、前記プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、前記光源から照射される照射光が空気と前記光反応物質との界面に入射する照射角であり、θは、前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率であり、nairは、空気の屈折率である、請求項7に記載の製造装置。
【請求項12】
前記光反応物質が前記プリズムの光反応物質付着面に付着するように前記光反応物質または前記プリズムを搬送する搬送機構をさらに含む、請求項7に記載の製造装置。
【請求項13】
前記光反応物質は、所定の幅方向の大きさを有し、長手方向に延びるシート形状からなり、
前記搬送機構は、前記光反応物質のシートを連続的に搬送する搬送ロールを含む、請求項12に記載の製造装置。
【請求項14】
前記プリズムの光反応物質付着面は、前記光反応物質の幅方向の大きさに対応する大きさからなる、請求項7に記載の製造装置。
【請求項15】
前記光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成される、請求項7に記載の製造装置。
【請求項16】
光反応物質付着面と、前記光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含むプリズムと、
前記光反応物質付着面に付着する光反応物質に対して前記プリズムの反対側に位置し、 前記光反応物質に向かって光を照射する光源と、を含み、
前記光源から照射される照射光と、前記照射光が光反応物質を透過し、前記光反射面で反射する反射光とを干渉させて、マスターなしに、ただ1つの光源だけで回折光学素子を製造する装置。
【請求項17】
回折光学素子を製造する方法であって、
光反応物質付着面と、前記光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含むプリズムを準備するステップと、
干渉縞を記録する光反応物質を前記プリズムに付着するステップと、
前記光反応物質に対して前記プリズムの反対側に位置する光源から前記光反応物質に向かって光を照射して干渉縞を記録するステップと、を含む方法。
【請求項18】
前記プリズムを準備するステップにおいて、前記所定の角度は、下記数5によって定められ、
【数5】
θは、前記プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、前記光源から照射される照射光が空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第1入射角であり、θは、前記照射光が前記光反応物質を透過し、前記光反射面で反射する反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プリズムを準備するステップにおいて、前記所定の角度は、下記数6によって定められ、
【数6】
θは、前記プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、前記光源から照射される照射光が空気と前記光反応物質との界面に入射する照射角であり、θは、前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率であり、nairは、空気の屈折率である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記干渉縞を記録するステップでは、前記光源から照射され空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する照射光と、前記照射光が光反応物質を透過して前記光反射面で反射し前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する反射光と、が干渉して、前記光反応物質に干渉縞を形成する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記干渉縞を記録するステップでは、
前記光源から照射される照射光が空気と前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第1入射角(θ)は、前記光反応物質と空気との間の全反射角度(θ)以下であり、
前記照射光が前記光反応物質を透過して前記光反射面で反射した反射光が前記プリズムと前記光反応物質との界面で屈折して前記光反応物質内に入射する第2入射角(θ)は、前記全反射角度(θ)以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記干渉縞を記録するステップでは、前記光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成される、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記光反応物質が前記プリズムの光反応物質付着面に付着するように前記光反応物質または前記プリズムを搬送するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記光反応物質は、所定の幅方向の大きさを有し、長手方向に延びるシート形状からなり、
前記光反応物質を搬送するステップでは、前記光反応物質のシートを連続的に搬送する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記干渉縞が記録された光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って所定の大きさを有する回折光学素子を複数裁断するステップをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記回折光学素子は、ホログラフィック光学素子(である、請求項17に記載の方法。
【請求項27】
請求項7に記載の製造装置により、前記光源から照射される照射光と、前記照射光が光反応物質を透過し、前記光反射面で反射する反射光とを干渉させて、干渉縞が記録された光反応物質において、
前記光反応物質は、シート形状であり、
前記光反応物質は、前記光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成されている光反応物質。
【請求項28】
請求項17に記載の方法により、干渉縞が記録された光反応物質において、
前記光反応物質は、シート形状であり、
前記光反応物質は、前記光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成されている光反応物質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2021年7月16日付で韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2021-0093488号の出願日の利益を主張し、その内容のすべては本発明に含まれる。
【0002】
本発明は、回折光学素子の製造装置および製造方法に関し、より具体的には、光反射面を含むプリズムを用いて回折光学素子を製造する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ホログラフィック光学素子のような回折光学素子は、同一の波長と可干渉長(coherent length)を有する2つのレーザ光を光反応物質で干渉させて作製されていた。
【0004】
2つのレーザ光を用いて回折光学素子を製造する場合、振動や空気流動のような外部環境に大きく影響を受けて、製造された回折光学素子の再現性に問題が発生する場合が頻繁であった。
【0005】
代案として、事前にマスター(Master)を作製した後に、マスターを用いて1つのレーザ光で回折光学素子を複製する技術が開発されて、回折光学素子の大量生産に至るようになった。
【0006】
1つのレーザ光がマスターで回折されて再生光を生成し、元のレーザ光とマスターによる再生光とが光反応物質で干渉して、マスターと同一の回折光学素子を複製する工程を経るが、次のような問題点が持続的に提起されてきている。
【0007】
まず、マスターを作製するための光学システムをセットアップし、外部環境を制御することが容易でなく、レーザ光源と光学システムの限界によってマスター自体を大型化しにくかった。大量生産のためにマスターの大面積化が必須であったが、作製可能なマスターは、一辺の長さが最大100mmにとどまり、複数のマスターをタイル付着方式でマスタープレートに付着して用いていた。
【0008】
この場合、均一なマスターを多量作製しなければならず、消耗品であるマスターの特性上、持続的な生産が必要であり、複製された回折光学素子が一貫した光学的性能を維持するために、マスターは複製回折光学素子より大きく作製されなければならないが、これは実際の大量生産時に面取り効率を低下させて歩留まりに否定的な影響をもたらしていた。
【0009】
さらに、複製された回折光学素子はマスターの性能に依存し、マスターの作製時に欠陥が発生した場合、マスターの欠陥もそのまま回折光学素子に複製される問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする技術的課題は、回折光学素子を製造できるように構成されるプリズムを提供することである。
【0011】
また、本発明は、プリズムを用いて、マスターなしに、1つの光源で回折光学素子を製造する装置および方法を提供しようとする。
【0012】
ただし、本発明が解決しようとする課題は上記の言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズムは、光反応物質付着面と、該光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含む。
【0014】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズムにおいて、光反応物質付着面と光反射面との間の所定の角度は、下記数1によって定められる。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、θは、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第1入射角であり、θは、照射光が反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率に相当する。
【0017】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から前記光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第1入射角(θ)は、光反応物質と空気との間の全反射角度(θ)以下であり、照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角(θ)は、全反射角度(θ)以上であってもよい。
【0018】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズムにおいて、光反応物質付着面と光反射面との間の所定の角度は、下記数2によって定められる。
【0019】
【数2】
【0020】
ここで、θは、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面に入射する照射角であり、θは、照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率であり、nairは、空気の屈折率に相当する。
【0021】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズムの光反射面は、ミラーコーティング面またはミラー蒸着面を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズムは、三角柱形状であってもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置は、光反応物質付着面と、該光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含むプリズムと、光反応物質付着面に付着する光反応物質に対してプリズムの反対側に位置し、光反応物質に向かって光を照射するように構成される光源とを含んで構成される。
【0024】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置は、光源から照射され、空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する照射光と、該照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射し、プリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する反射光とが干渉して、光反応物質に干渉縞を形成することができる。
【0025】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置のプリズムにおいて、光反応物質付着面と光反射面との間の所定の角度は、下記数3によって定められる。
【0026】
【数3】
【0027】
ここで、θは、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第1入射角であり、θは、照射光が反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率に相当する。
【0028】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置において、光源から照射される照射光が空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第1入射角(θ)は、光反応物質と空気との間の全反射角度(θ)以下であり、照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角(θ)は、全反射角度(θ)以上であってもよい。
【0029】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置のプリズムにおいて、光反応物質付着面と光反射面との間の所定の角度は、下記数4によって定められる。
【0030】
【数4】
【0031】
ここで、θは、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面に入射する照射角であり、θは、照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率であり、nairは、空気の屈折率に相当する。
【0032】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置は、光反応物質がプリズムの光反応物質付着面に付着するように光反応物質またはプリズムを搬送する搬送機構をさらに含むことができる。
【0033】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置において、光反応物質は、所定の幅方向の大きさを有し、長手方向に延びるシート形状からなり、搬送機構は、光反応物質のシートを連続的に搬送する搬送ロールを含むことができる。
【0034】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置のプリズムの光反応物質付着面は、光反応物質の幅方向の大きさに対応する大きさからなる。
【0035】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置は、光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成される。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態による回折光学素子の製造装置は、光反応物質付着面と、光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含むプリズムと、光反応物質付着面に付着する光反応物質に対してプリズムの反対側に位置し、光反応物質に向かって光を照射する光源とを含み、光源から照射される照射光と、該照射光が光反応物質を透過し、光反射面で反射する反射光とを干渉させて、マスターなしに、ただ1つの光源だけで回折光学素子を製造することができる。
【0037】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法は、光反応物質付着面と、光反応物質付着面から所定の角度に傾斜した光反射面とを含むプリズムを準備するステップと、干渉縞を記録する光反応物質をプリズムに付着するステップと、光反応物質に対してプリズムの反対側に位置する光源から光反応物質に向かって光を照射して干渉縞を記録するステップとを含む。
【0038】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法のプリズムを準備するステップにおいて、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の所定の角度は、下記数5によって定められる。
【0039】
【数5】
【0040】
ここで、θは、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第1入射角であり、θは、照射光が反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率に相当する。
【0041】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法のプリズムを準備するステップにおいて、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の所定の角度は、下記数6によって定められる。
【0042】
【数6】
【0043】
ここで、θは、プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度であり、θは、プリズムに付着する光反応物質に対してプリズムの反対側から光反応物質に向かって照射光が照射される場合、照射光が空気と光反応物質との界面に入射する照射角であり、θは、照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質の屈折率であり、nは、プリズムの屈折率であり、nairは、空気の屈折率に相当する。
【0044】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法の干渉縞を記録するステップでは、光源から照射され、空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する照射光と、該照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射し、プリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する反射光とが干渉して、光反応物質に干渉縞を形成することができる。
【0045】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法の干渉縞を記録するステップでは、光源から照射される照射光が空気と光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第1入射角(θ)は、光反応物質と空気との間の全反射角度(θ)以下であり、照射光が光反応物質を透過して光反射面で反射した反射光がプリズムと光反応物質との界面で屈折して光反応物質内に入射する第2入射角(θ)は、全反射角度(θ)以上であってもよい。
【0046】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法の干渉縞を記録するステップでは、光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成される。
【0047】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法は、光反応物質がプリズムの光反応物質付着面に付着するように光反応物質またはプリズムを搬送するステップをさらに含むことができる。
【0048】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法において、光反応物質は、所定の幅方向の大きさを有し、長手方向に延びるシート形状からなり、光反応物質を搬送するステップでは、光反応物質のシートを連続的に搬送することができる。
【0049】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法は、干渉縞が記録された光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って所定の大きさを有する回折光学素子を複数裁断するステップをさらに含むことができる。
【0050】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法により製造される回折光学素子は、ホログラフィック光学素子(holographic optical element)であってもよい。
【0051】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置により、光源から照射される照射光と、該照射光が光反応物質を透過し、光反射面で反射する反射光とを干渉させて、干渉縞が記録された光反応物質は、シート形状であり、この光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成される。
【0052】
本発明のさらに他の実施形態による回折光学素子を製造する方法により、干渉縞が記録された光反応物質は、シート形状であり、光反応物質の幅方向、長手方向、幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向のいずれか1つの方向に沿って干渉縞が連続的に形成される。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、光反射面を備えるプリズムを用いて光源から照射される照射光と、プリズムの光反射面で反射する反射光とを干渉させることにより、マスターなしに、1つの光源で回折光学素子を製造可能になる。
【0054】
これによって、消耗品であるマスターを引き続き生産する必要がなく、マスターの欠陥が回折光学素子にそのまま複製されることを防止することができる。
【0055】
また、本発明による回折光学素子の製造装置は、ロールツーロール装置で実現可能で、均一な性能を有する回折光学素子を大量生産することができる。
【0056】
さらに、本発明による回折光学素子の製造装置のプリズムは、大面積で作製可能で、回折光学素子の大量生産時に面取り効率を向上させることができる。
【0057】
一方、従来のタイル付着方式のマスターを用いて回折光学素子を製造する場合、マスターとマスターとの間の隙間には干渉縞が記録されず、光反応物質に断続的な干渉縞が形成されるので、裁断時に-特に、斜線裁断時に-裁断効率が低下する。
【0058】
これに対し、本発明によれば、光反応物質に干渉縞を連続的に形成可能で、裁断効率を大幅に向上させることができる。
【0059】
本発明の効果は上述した効果に限定されるものではなく、言及されていない効果は本願明細書および添付した図面から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本発明の一実施形態により回折光学素子を製造する概念図である。
図2】本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置において照射光の光経路を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置のプリズムを示す斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置を示す概略図である。
図5A】本発明の一実施例により製造された回折光学素子の波長による透過率(transmittance)を示すグラフである。
図5B】本発明の一実施例により製造された回折光学素子の波長による反射率(reflectance)を示すグラフである。
図6A】本発明の比較例により製造された回折光学素子の波長による透過率(transmittance)を示すグラフである。
図6B】本発明の比較例により製造された回折光学素子の波長による反射率(reflectance)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明は、添付した図面とともに、詳細に後述する実施形態を参照すれば明確になる。しかし、本発明は以下に開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現され、単に本実施形態は本発明の開示が完全となるようにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によってのみ定義される。一方、本明細書で使用された用語は実施形態を説明するためのものであり、本発明を制限しようとするものではない。
【0062】
本明細書全体において、単数形は、文言で特に言及しない限り、複数形も含む。
【0063】
本明細書全体において使用される「含む」や「備える」や「含む」は、言及された構成要素、段階、動作および/または素子が1つ以上の他の構成要素、段階、動作および/または素子の存在または追加を排除せず、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに包含できることを意味する。
【0064】
本明細書全体において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用できるが、構成要素は用語によって限定されてはならない。用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。
【0065】
本明細書全体において、用語「回折光学素子」は、所定の方向に沿って高屈折部と低屈折部とが互いに交互に配置される回折格子パターンに備える光学素子を意味し、回折光学素子に到達する光は回折されて光経路が変更できる。
【0066】
本明細書全体において、用語「ホログラフィック回折光学素子」は、所定の方向に沿って高屈折部と低屈折部とが互いに交互に配置されるホログラフィック格子パターンを備える光学素子を意味し、ホログラフィック回折光学素子に到達する光は回折されて光経路が変更できる。このようなホログラフィック格子パターンは、フォトポリマー(photopolymer)のような感光材料に複数のレーザが干渉されて記録される。
【0067】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
【0068】
図1図4は、本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置の構成と作用を示しており、図1は、本発明の一実施形態により回折光学素子を製造する概念図であり、図2は、回折光学素子の製造装置において照射光の光経路を示す断面図であり、図3は、回折光学素子の製造装置のプリズムを示す斜視図であり、図4は、回折光学素子の製造装置を示す概略図である。
【0069】
図1図4を参照して、本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1をみると、本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1は、光反応物質2に光を照射し、干渉させて、干渉柄を記録することにより、回折光学素子を製造することができる。
【0070】
本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1は、光反応物質2に光を照射する光源20と、該光源20から照射される光を干渉させるプリズム10とを含んで構成される。
【0071】
より具体的には、回折光学素子製造用プリズム10は、光反応物質2が付着する光反応物質付着面11と、該光反応物質付着面11から所定の角度(θ)だけ傾斜した光反射面とを含んで構成される。
【0072】
光源20は、光反応物質付着面11に付着する光反応物質2に対してプリズム10の反対側に位置しており、光反応物質2に向かって光を照射するように構成される。
【0073】
図1に示されるように、本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1は、プリズム10に付着する光反応物質2に光を照射し、光源20から照射される照射光Laと、該照射光Laが光反応物質2を透過し、光反射面12で反射する反射光Lbとを干渉させることにより、光反応物質2に干渉縞を記録して、マスターなしに、ただ1つの光源だけで回折光学素子を製造することができる。
【0074】
図2を参照して、本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1を用いて光反応物質2に干渉縞を記録するための光経路をみると、光源20から所定の照射角(θ)で照射される照射光Laは、空気と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射し、この時の入射角を第1入射角(θ)とすることができる。
【0075】
この照射光Laは、光反応物質2を透過して光反射面12で反射した後に、プリズム10と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射し、光反射面12で反射した後の光を反射光Lbと称することとし、この時の入射角を第2入射角(θ)とすることができる。
【0076】
一方、照射光Laと反射光Lbは、1つの光源20で生成された光であり、照射光Laがプリズム10の光反射面12で反射した後に反射光Lbになり、照射光Laと反射光Lbとが干渉して、光反応物質2に干渉縞を形成して回折光学素子を製造可能になる。
【0077】
本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1において、光源20から照射される照射光Laと、該照射光Laがプリズム10の光反射面12で反射した反射光Lbとが光経路に沿って干渉して干渉縞を形成するためには、照射光Laが空気と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する時の第1入射角(θ)と、反射光Lbがプリズム19と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する時の第2入射角(θ)が、それぞれ光反応物質2と空気との間の全反射角度(θ)と所定の関係を満足することが好ましい。
【0078】
具体的には、第1入射角(θ)は全反射角度(θ)以下になり、第2入射角(θ)が全反射角度(θ)以上になれば、照射光Laと反射光Lbとが光反応物質2内で干渉して、干渉縞を形成することができる。
【0079】
他の観点から、回折光学素子を製造するために、光反応物質2に入射されなければならない2つの光の角度を合わせるために、プリズム10の角度、すなわち、プリズム10の光反応物質付着面11と光反射面12との間の角度は、下記数7によって定められる。
【0080】
【数7】
【0081】
ここで、θは、プリズム10の光反応物質付着面11と光反射面12との間の角度であり、θは、光源20から照射される照射光Laが空気と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する第1入射角であり、θは、照射光Laが光反応物質2を透過し、光反射面12で反射する反射光Lbがプリズム10と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質2の屈折率であり、nは、プリズム10の屈折率に相当する。
【0082】
光源20から照射される照射光が空気と光反応物質との界面に入射する時の角度を照射角(θ)と定義すれば、スネルの法則を用いて第1入射角(θ)は照射角(θ)に置き換えられてもよいし、数7は、下記数8のように変更されて、プリズム10の角度(θ)は、照射角(θ)と第2入射角(θ)との間の関係で示すことができる。
【0083】
【数8】
【0084】
ここで、θは、プリズム10の光反応物質付着面11と光反射面12との間の角度であり、θは、光源20から照射される照射光Laが空気と光反応物質2との界面に入射する照射角であり、θは、照射光Laが光反応物質2を透過して光反射面12で反射した反射光Lbがプリズム10と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する第2入射角であり、nppは、光反応物質2の屈折率であり、nは、プリズム10の屈折率であり、nairは、空気の屈折率に相当する。
【0085】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズム10の光反射面12は、光反応物質付着面11を透過してプリズム10内に入射する光をミラー反射できるように構成され、コーティングあるいは蒸着によりミラーコーティング面またはミラー蒸着面を形成することができるが、これに限定されず、反射が可能な光学素子をプリズム10に付着して光反射面12を実現することも可能であり、プリズム10内に入射して光反射面12に到達した光を反射させることができる構成であれば可能である。
【0086】
図3に示されるように、本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズム10は、三角柱形状であってもよいし、三角柱の一側面が光反応物質付着面11になり、これに隣接する他側面が光反射面12になってもよい。しかし、これに限定されず、光反応物質付着面11と所定の角度関係を満足しつつ、これに隣接する光反射面12を備えている構成であれば可能である。
【0087】
本発明の一実施形態による回折光学素子製造用プリズム10は、クオーツ、BK7、PMMA(Poly(methyl methacrylate)、ポリメチルメタクリレート)からなるが、これに限定されない。
【0088】
本発明の一実施形態による回折光学素子の製造装置1において、光源20は、レーザ光源であってもよいし、所定の波長および可干渉長(coherent length)を有する1つの光を照射するように構成される。
【0089】
ここで、「1つ」という意味は、光源が物理的に1つという意味のほか、照射光Laと反射光Lbが「同一」の光源によって生成されることを意味することができる。
【0090】
本発明の一実施形態によれば、光反応物質は、感光材料を含むことができ、所定の幅方向および/または長手方向の大きさを有するシート形状あるいはロール形状などの多様な形状からなる。ホログラフィック光学素子を含む回折光学素子の製造に使用できる多様な種類の感光材料が公知であり、このような材料が制限なく本発明でも使用可能である。
【0091】
本発明の一実施形態によれば、感光材料は、フォトポリマー(photopolymer)、フォトレジスト(photoresist)、シルバーハライドエマルジョン(silver halide emulsion)、重クロム酸ゼラチン(dichromated gelatin)、フォトグラフィックエマルジョン(photographic emulsion)、フォトサーモプラスチック(photothermoplastic)または光回折(photorefractive)材料などが使用可能である。前記感光材料を用いて干渉縞を容易に記録することができる。
【0092】
本発明の一実施形態により製造される回折光学素子は、ホログラフィック光学素子(holographic optical element)であってもよい。
【0093】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置1は、回折光学素子を大量生産できるようにロールツーロール装置で構成される。
【0094】
図4を参照して、これをより具体的に説明する。
【0095】
本発明の他の実施形態による回折光学素子の製造装置1において、光反応物質2は、所定の幅方向の大きさを有し、長手方向に延びるシート形状からなる。この時、光反応物質2の幅方向の大きさは、500mm以上となるように構成することができるが、これに限定されず、生産する回折光学素子の大きさに合わせて多様に設定可能である。
【0096】
シート形状の光反応物質2は、ロール形状に巻かれている供給ロール40によって供給可能であり、干渉縞が記録されて回折光学素子に製造されたシート形状の光反応物質2は、回収ロール50によって巻取られてロール形態で回収することも可能である。
【0097】
シート形状の光反応物質2を回折光学素子の製造装置1に供給する場合、光反応物質2がプリズム10の光反応物質付着面11に付着するように光反応物質2を搬送する搬送機構30を設けることができ、搬送機構30は、光反応物質2のシートを連続的に搬送する搬送ロール形態で構成することができる。
【0098】
光反応物質2を搬送する以外に、プリズム10を搬送するように搬送機構30を構成することも可能である。
【0099】
また、本発明の他の実施形態による回折光学素子製造用プリズム10の光反応物質付着面11は、シート形状の光反応物質2の幅方向の大きさに対応するように構成することができる。
【0100】
このように構成すれば、従来技術のマスターを用いる場合に比べて、光反応物質2から回折光学素子生産時の面取り効率を大幅に改善可能で効果的である。
【0101】
従来技術のマスターは、レーザおよび光学的な限界によって大面積で作製できず、大量生産のためには、タイル式でいくつかのマスターを基板に付着して用いるしかなかったが、このようにいくつかのマスターをタイル式で付着すれば、回折光学素子の生産時に面取り効率が低下する問題があった。
【0102】
これに対し、本発明の他の実施形態による回折光学素子製造用プリズム10は、一辺の長さを500mm以上の大面積で作製可能なため、従来技術のようにタイル式で付着する時の面取り効率の低下を防止することができる。
【0103】
プリズム10によって干渉縞が記録されたシート形状の光反応物質2は、所定の大きさを有する個別回折光学素子に切断して裁断する工程を経ることができる。
【0104】
このような裁断は、シート形状の光反応物質2の幅方向、長手方向、あるいは幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向に沿って行われるようになる。
【0105】
ここで、シート形状の光反応物質2の単位の大きさ、例えば、500mm×500mm内に個別回折光学素子が最大限に多く配置できるように効率的に裁断することが必要である。
【0106】
シート形状の光反応物質2の単位面積に対して配置された個別回折光学素子の面積の合計を裁断効率と定義し、裁断効率を向上させて生産歩留まりを高めることができる。
【0107】
本発明の他の実施形態により製造される回折光学素子の裁断効率は、従来のタイル付着方式のマスターを用いて製造される回折光学素子の裁断効率より高くなり、特に、斜線方向裁断の場合、両者の裁断効率の差ははるかに大きくなる。
【0108】
従来のタイル付着方式のマスターを用いると、マスタープレートにマスターがタイル方式で付着することにより、マスターとマスターとの間に物理的な隙間が発生し、このような物理的な隙間では干渉縞が記録できないので、裁断される前の光反応物質シートに記録される干渉縞が連続的に形成されず、マスター間の隙間で断続的に干渉縞が記録される。
【0109】
このような断続的な干渉縞は、裁断効率を高めるのに悪影響をもたらす。
【0110】
これに対し、本発明の他の実施形態によれば、シート形状の光反応物質2に連続的に干渉縞が記録可能で、従来技術に比べて大幅に改善された裁断効率を得ることができる。
【0111】
本発明の他の実施形態によれば、シート形状の光反応物質2の幅方向、長手方向、あるいは幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向に沿って干渉縞が連続的に形成され、シート形状の光反応物質2の単位の大きさ内の全領域を用いて個別回折光学素子を配置し裁断可能になる。
【0112】
本発明のさらに他の実施形態によれば、回折光学素子を製造する方法は、光反応物質付着面11と、光反応物質付着面11から所定の角度(θ)に傾斜した光反射面12とを含むプリズム10を準備するステップと、干渉縞を記録する光反応物質2をプリズム10に付着するステップと、光反応物質2に対してプリズム10の反対側に位置する光源20から光反応物質2に向かって光を照射して干渉縞を記録するステップとを含む。
【0113】
プリズム10を準備するステップにおいて、プリズム10は、上記の実施形態による回折光学素子の製造装置1の構成と同一に構成することができる。
【0114】
光反応物質2をプリズム10に付着した後に、干渉縞を記録するステップでは、光源20から照射され、空気と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する照射光Laと、該照射光Laが光反応物質2を透過して光反射面12で反射し、プリズム10と光反応物質2との界面で屈折して光反応物質2内に入射する反射光Lbとが干渉して、光反応物質2に干渉縞を形成することができる。
【0115】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法では、光反応物質2がプリズム10の光反応物質付着面11に付着するように光反応物質2またはプリズム10を搬送するステップをさらに含むことにより、光反応物質2を連続的に供給して回折光学素子を製造可能に構成することができる。
【0116】
この場合、光反応物質2を所定の幅方向の大きさを有し、長手方向に延びるシート形状に構成して光反応物質のシートを連続的に搬送することができる。
【0117】
本発明のさらに他の実施形態により回折光学素子を製造する方法では、干渉縞が記録されたシート形状の光反応物質2を複数の回折光学素子に切断して裁断するステップを含むことができる。
【0118】
このような裁断は、シート形状の光反応物質2の幅方向、長手方向、あるいは幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向に沿って行われるようになる。
【0119】
本発明のさらに他の実施形態によれば、干渉縞を記録するステップにおいて、シート形状の光反応物質2に連続的に干渉縞が記録される。
【0120】
より具体的には、シート形状の光反応物質2の幅方向、長手方向、あるいは幅方向または長手方向と所定の角度をなす斜線方向に沿って干渉縞が連続的に形成されるので、シート形状の光反応物質2の単位の大きさ内の全領域を用いて個別回折光学素子を配置し裁断可能で、裁断効率を向上させることができる。
【0121】
実施例
本発明の一実施例による回折光学素子の製造装置1を準備して、光反応物質2をプリズム10の光反応物質付着面11に付着した後、光源20から照射角(θ)を60゜にして照射光Laを入射させた後に、プリズム10の光反射面12で反射した反射光Lbの第2入射角(θ)を66゜に設定して、照射光Laと反射光Lbとを干渉させて、回折光学素子を作製した。
【0122】
ここで、光源20は波長が660nm、可干渉長が2mのレーザ光源が用いられ、光反応物質2はフォトポリマーを使用し、プリズム10のθは15゜に設定した。
【0123】
作製された回折光学素子の光学的特性を、図5Aおよび図5Bに示した。
【0124】
図5Aおよび図5Bは、本発明の一実施例により製造された回折光学素子の効率を測定した図であって、図5Aは、本発明の一実施例により製造された回折光学素子の波長による透過率を示すグラフであり、図5Bは、本発明の一実施例により製造された回折光学素子の波長による反射率を示すグラフである。
【0125】
図5Aおよび図5Bによれば、本発明の一実施例による回折光学素子は、0゜で入射する時、50゜で回折し、ピーク波長は986nmであり、透過率は39.7%であり、反射率は49.9%を示した。
【0126】
比較例
本発明の比較例による回折光学素子の製造装置を準備した。本発明の一実施例による回折光学素子の製造装置とは異なり、プリズムではない従来技術によるマスターを作製し、マスタープレートを作製した。マスタープレート以外の構成は、本発明の一実施例と同一に構成した。
【0127】
より具体的には、マスターにはフォトポリマーを使用し、光源は波長660nm、可干渉長2mのレーザ光源を用いて、光源を2つに分離し、これら2つの光源を干渉させて、マスターを作製した。
【0128】
光反応物質をマスタープレートの光反応物質付着面に付着した後、光源から照射角を60゜にして照射光を入射させた後に、マスターで回折された回折光の入射角を66゜に設定して、照射光と回折光とを干渉させて、光反応物質にマスターと同一の複製回折光学素子を作製した。
【0129】
ここで、光源は波長が660nm、可干渉長が2mのレーザ光源が用いられ、光反応物質2はフォトポリマーを使用した。
【0130】
比較例により作製された回折光学素子の光学的特性を、図6Aおよび図6Bに示した。
【0131】
図6Aおよび図6Bは、本発明の比較例により製造された回折光学素子の効率を測定した図であって、図6Aは、本発明の比較例により製造された回折光学素子の波長による透過率を示すグラフであり、図6Bは、本発明の比較例により製造された回折光学素子の波長による反射率を示すグラフである。
【0132】
図6Aおよび図6Bによれば、本発明の比較例による回折光学素子は、0゜で入射する時、50゜で回折し、ピーク波長は987nmであり、透過率は46.0%であり、反射率は44.8%を示した。
【0133】
したがって、上記の本発明の一実施例による測定データと比較例による測定データとを比較すれば、実施例は、比較例に比べて約5%以上高い効率を有する回折光学素子を製造することができる。
【0134】
以上、本発明を例示的な実施形態により説明したが、本発明はこれによって限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と以下に記載される特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正および変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0135】
1:回折光学素子の製造装置
2:光反応物質
10:回折光学素子製造用プリズム
11:光反応物質付着面
12:光反射面
20:光源
30:搬送機構
40:供給ロール
50:回収ロール
La:照射光
Lb:反射光
θ:プリズムの光反応物質付着面と光反射面との間の角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
【国際調査報告】