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特表2024-524951生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 3/00 20060101AFI20240702BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 5/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/15 20060101ALI20240702BHJP
   C08K 5/1515 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240702BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20240702BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C08L3/00
C08J3/24 Z CEP
C08L1/00 ZBP
C08L5/00
C08K5/15
C08K5/1515
C08L63/00 Z
C08G59/62
C08L101/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023577979
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2022009386
(87)【国際公開番号】W WO2023282534
(87)【国際公開日】2023-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2021-0090425
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0079572
(32)【優先日】2022-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】キュンロク・ハム
(72)【発明者】
【氏名】ボムシン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】スンヒ・カン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンサム・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ヘスン・ユン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
4J036
4J200
【Fターム(参考)】
4F070AA01
4F070AC40
4F070AC87
4F070AE08
4F070GA08
4F070GB10
4F070GC02
4J002AB041
4J002AB051
4J002CD012
4J002CD042
4J002CD102
4J002CD122
4J002EL027
4J002EL136
4J002EL146
4J002FD142
4J002FD146
4J002FD147
4J002GA01
4J002GC00
4J002GL00
4J002GQ01
4J036AB01
4J036AB02
4J036AB03
4J036AB05
4J036AB09
4J036AB10
4J036AC01
4J036AC05
4J036AG04
4J036AG07
4J036FB18
4J036JA15
4J036KA06
4J200AA04
4J200BA07
4J200DA02
4J200DA12
4J200DA21
4J200DA28
4J200EA11
(57)【要約】
本発明では、保水能および加圧吸収能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく、優れた生分解性を示す高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非変性または酸性基含有変性ポリサッカライド(polysaccharide)および第1架橋剤の架橋重合体を含むベース樹脂を含み、
第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された生分解性高吸水性樹脂であって、
前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物を含み、
前記第2架橋剤は、エポキシ系化合物を含む、
生分解性高吸水性樹脂。
【請求項2】
前記ポリサッカライドは、デンプン(starch)、デキストリン(dextrin)およびキトサン(chitosan)から構成される群より選択される1種以上である、
請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項3】
前記環状カルボン酸無水物は、下記の化学式1-1または1-2で表される、
請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【化1】
前記化学式1-1および1-2において、
nは、0または1であり、
Aは、隣り合う五員環と融合された、シクロヘキサン;シクロヘキセン;シクロヘキサジエン;またはベンゼン環であり、
Rは、ハロゲン、C1-4アルキル、OH、または-(C1-4アルキレン)-COOHであり、
aは、0ないし4の整数であり、
bは、0ないし6の整数であり、
aおよびbがそれぞれ2以上の場合、2個以上のRは、互いに同一または異なっている。
【請求項4】
前記環状カルボン酸無水物は、下記から構成される群より選択されるいずれか一つである、
請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【化2】
【請求項5】
前記架橋重合体内に、
前記第1架橋剤は、前記ポリサッカライド1モルに対して0.01ないし50モルで含まれている、
請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項6】
前記エポキシ系化合物は、多価エポキシ系化合物またはエピハロヒドリン系化合物である、
請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
【請求項7】
前記生分解性高吸水性樹脂は、下記の式1で計算される有効吸収能(EFFC)が10g/gないし20g/gである、
請求項1に記載の生分解性高吸水性樹脂。
[式1]
有効吸収能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸収能(AUP)}/2
前記式1において、
前記保水能(CRC)は、EDANA法WSP 241.3の方法によって測定した高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)を意味し、
前記0.7psi加圧吸収能(AUP)は、EDANA法WSP 242.3の方法によって測定した高吸水性樹脂の0.7psiの加圧吸収能(AUP)を意味する。
【請求項8】
第1架橋剤の存在下で、非変性または酸性基含有変性ポリサッカライド(polysaccharide)を架橋させ、架橋重合体を製造するステップ(ステップ1)と、
前記架橋重合体を乾燥および粉砕してベース樹脂を製造するステップ(ステップ2)と、
第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の少なくとも一部を架橋させるステップ(ステップ3)と、を含み、
前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物を含み、
前記第2架橋剤は、エポキシ系化合物を含む、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記第1架橋剤は、前記ポリサッカライド1モルに対して0.01ないし50モルで用いられる、
請求項8に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記ポリサッカライドの架橋は、25℃ないし100℃の温度で行われる、
請求項8に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項11】
前記ステップ1で、前記ポリサッカライドの架橋反応以降、架橋物を水と混和可能な溶媒に沈澱させるステップをさらに含む、
請求項8に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項12】
前記第2架橋剤は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01ないし5重量部で用いられる、
請求項8に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項13】
前記第2架橋剤は、水を含む溶媒に混合された第2架橋溶液の形態で投入される、
請求項8に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項14】
前記水は、前記ベース樹脂100重量部に対して1ないし20重量部で用いられる、
請求項13に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項15】
前記第2架橋溶液は、メタノールをさらに含む、
請求項13に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項16】
前記水およびメタノールは、60:40ないし40:60の重量比で含まれる、
請求項15に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項17】
前記ステップ3での架橋は、80ないし140℃の温度で行われる、
請求項8に記載の生分解性高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項18】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の生分解性高吸水性樹脂を含む、物品。
【請求項19】
前記物品は、吸水性物品、衛生用品、土壌保水剤、土木用止水材、建築用止水材、育苗用シート、新鮮度保持剤、湿布用材料、電気絶縁体、口腔用物品、歯用物品、化粧品用物品および皮膚用物品の中から選択される1種以上である、
請求項18に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願(等)の相互引用
本出願は、2021年7月9日付の韓国特許出願第10-2021-0090425号および2022年6月29日付の韓国特許出願第10-2022-0079572号に基づいた優先権の利益を主張して、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、保水能および加圧吸収能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく、優れた生分解性を示す、生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは自体の重量の5百ないし1千倍程度の水分を吸収可能な機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で命名されている。前記のような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化し始め、現在は子供用紙おむつなど衛生用品以外に園芸用土壌保水剤、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料や電気絶縁分野に至るまで幅広く用いられている。
【0004】
このような高吸水性樹脂は、通常、アクリル酸系単量体を重合開始剤の存在下で、架橋剤とともにバルク重合(bulk polymerization)、または懸濁重合(suspension polymerization)して架橋重合体を得た後、製造される。したがって、従来の高吸水性樹脂は、ほとんど生分解性を備えないため、廃棄物として処理すると環境問題を引き起こすことになる。具体的には、高吸水性樹脂が適用された色々な製品を埋込して廃棄する場合、土の中の細菌や微生物などによってこのような高吸水性樹脂が分解されないので、環境汚染を引き起こすことがある。
【0005】
そこで、バイオマス由来の素材を用いて優れた生分解性を示す高吸水性樹脂への試みがなされているが、従来の高吸水性樹脂と類似した水準の諸物性を示しながら経済的に製造可能な生分解性高吸水性樹脂を製造することはそれほど容易ではなかった。
【0006】
これにより、高吸水性樹脂の基本的物性の低下なく、生分解性を示すことができる高吸水性樹脂関連技術の開発が継続して要請されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、保水能および加圧吸収能などの高吸水性樹脂の物性の低下なく、優れた生分解性を示す高吸水性樹脂およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一具現例によると、
非変性または酸性基含有変性ポリサッカライド(polysaccharide)および第1架橋剤の架橋重合体を含むベース樹脂を含み、
第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された生分解性高吸水性樹脂であって、
前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物を含み、
前記第2架橋剤は、エポキシ系化合物を含む、
生分解性高吸水性樹脂が提供される。
【0009】
本発明のまた他の具現例によると、
第1架橋剤の存在下で、非変性または酸性基含有変性ポリサッカライド(polysaccharide)を架橋させ、架橋重合体を製造するステップ(ステップ1)と、
前記架橋重合体を乾燥および粉砕してベース樹脂を製造するステップ(ステップ2)と、
第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の少なくとも一部を架橋させるステップ(ステップ3)と、を含み、
前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物を含み、
前記第2架橋剤は、エポキシ系化合物を含む、
生分解性高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0010】
さらに、本発明のまた他の一具現例によると、前記生分解性高吸水性樹脂を含む物品を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の生分解性高吸水性樹脂は、ポリサッカライド(polysaccharide)が架橋剤によって架橋された架橋重合体を含むことによって優れた生分解性を示し、かつ前記架橋重合体が第2架橋剤によって少なくとも一部が架橋された架橋層をさらに含むことによって保水能および加圧吸収能などの一般的な高吸水性樹脂の諸物性が低下することがない。
【0012】
これにより、前記生分解性高吸水性樹脂は、多様な衛生用品に適用可能であり、これとともに廃棄時の環境汚染の問題を引き起こすことがない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に他に意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、ステップ、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはその以上の他の特徴やステップ、構成要素、またはこれらを組み合わせたことの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0014】
また、本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」または「の上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味するか、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成可能であることを意味する。
【0015】
本発明は、多様な変更を加えることができ、色々な形態を有することができるので、特定の実施例を例示し、下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲で含まれる全ての変更、均等物または代替物を含むものと理解されるべきである。
【0016】
また、本明細書で使用される専門用語は、単に特定の具現例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。そして、ここで使用される単数形態は文面がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0017】
一方、本明細書で使用する用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートを全て含む。
【0018】
本発明の明細書で使用される用語「架橋重合体」は、複数のポリサッカライドが架橋剤によって架橋されて重合された状態であることを意味し、全ての水分含有量範囲または粒径範囲を包括することができる。
【0019】
また、用語「高吸水性樹脂」は、文脈により複数のポリサッカライドが架橋剤によって架橋されて重合された架橋重合体、または、前記架橋重合体が粉砕された高吸水性樹脂粒子からなる粉末(powder)状のベース樹脂を意味するか、または、前記架橋重合体や前記ベース樹脂に対して追加の工程、例えば、追加架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたことを全て包括するものと使用される。
【0020】
また、用語「高吸水性樹脂粒子」は、高吸水性樹脂が粉砕された粒子状の物質を称する。
【0021】
従来、用いられている高吸水性樹脂は、酸性基を有し、酸性基の少なくとも一部がアクリル酸系単量体を重合開始剤の存在下で、架橋剤とともに重合して製造されるが、このように製造される高吸水性樹脂の場合、生分解性を有しないため、環境問題を引き起こしている。
【0022】
そこで、生分解性を示すことができる高吸水性樹脂を開発するために、アクリル酸系単量体を生分解性素材であるポリサッカライド(polysaccharide)、ポリアスパラギン酸(polyaspartic acid)、ポリグルタミン酸(polyglutamic acid)などと共重合して高吸水性樹脂を製造する方法などが議論されているが、高吸水性樹脂の重要な物性である保水能と加圧吸収能とのバランスが低下するという問題があった。
【0023】
そこで、本発明者等は、ポリサッカライド(polysaccharide)を環状カルボン酸無水物によって架橋させた後、これを、エポキシ系化合物を用いて追加架橋させて高吸水性樹脂を製造する場合、優れた生分解性だけでなく保水能と加圧吸収能とのバランスがこれまで知られた生分解性素材に対して優れていることを確認し、本発明を完成した。
【0024】
以下、発明の具体的な具現例により生分解性高吸水性樹脂およびその製造方法についてより詳しく説明する。
【0025】
生分解性高吸水性樹脂
一具現例に係る生分解性高吸水性樹脂は、非変性または酸性基含有変性ポリサッカライド(polysaccharide)および第1架橋剤の第1架橋重合体を含むベース樹脂を含み、第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された生分解性高吸水性樹脂である。このとき、前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物を含み、前記第2架橋剤は、エポキシ系化合物を含む。
【0026】
まず、前記生分解性高吸水性樹脂は、ポリサッカライド(polysaccharide)および第1架橋剤の架橋重合体を含むベース樹脂を含み、前記ベース樹脂は、一般に樹脂粒子からなる粉末形態である。
【0027】
ここで、ポリサッカライド(polysaccharide)、つまり、多糖類はグリコース繰り返し単位(glucose unit)からなる重合体炭水化物分子だけでなく、グリコース繰り返し単位内の2位の炭素原子C2と結合されたヒドロキシ基にアミノ基が導入されたグルコサミン繰り返し単位(glucosamine unit)および/またはグリコース繰り返し単位内の2位の炭素原子C2と結合されたヒドロキシ基にN-アセチルアミノ基が導入されたN-アセチルグルコサミン繰り返し単位(N-acetylglucosamine unit)からなる重合体炭水化物分子も含めて称する。
【0028】
したがって、本明細書で用いられるポリサッカライドは、通常、多糖類として知られた化合物を全て包括する概念で理解することができる。前記ポリサッカライド(polysaccharide)の一例として、グリコース繰り返し単位からなるデンプン(starch)、このようなデンプンの加水分解物であるデキストリン(dextrin)、グルコサミン繰り返し単位およびN-アセチルグルコサミン繰り返し単位からなるキトサン(chitosan)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
より具体的には、前記ポリサッカライドは、デンプン(starch)、デキストリン(dextrin)およびキトサン(chitosan)から構成される群より選択される1種以上であってもよい。
【0030】
また、前記生分解性高吸水性樹脂の架橋重合体を構成するポリサッカライドは、非変性ポリサッカライドであるか、または酸性基を含有する変性ポリサッカライドであってもよい。
【0031】
具体的には、非変性ポリサッカライドとは、化学的処理および/または熱処理によってポリサッカライドをなすグリコース繰り返し単位内のヒドロキシ基(-OH)が他の官能基で置換されている変性ポリサッカライド(modified polysaccharide、改質多糖類)とは区別される。このような非変性ポリサッカライドで製造された架橋重合体を含む高吸水性樹脂は、カルボキシル基などの他の官能基が置換されたポリサッカライドで製造された変性ポリサッカライドで製造された架橋重合体を含む高吸水性樹脂に比べて、工程段階を減らすとともに、原料の量を節減できるという点において、量産時の原価節減の面でのメリットがある。
【0032】
また、酸性基含有変性ポリサッカライドは、変性ポリサッカライド(modified polysaccharide、改質多糖類)であって、前記非変性ポリサッカライドとは異なり、化学的処理および/または熱処理によってポリサッカライドをなすグリコース繰り返し単位内のヒドロキシ基(-OH)の少なくとも一つが酸性基で置換された構造を有する。
【0033】
前記酸性基含有変性ポリサッカライド内の酸性基の置換度(Degree of substitution;DS)は0.1ないし0.99であってもよい。前記酸性基の置換度が過度に低い場合、架橋重合に参加していない変性ポリサッカライドが多量残っていることがあり、前記酸性基の置換度が過度に高い場合、最終高吸水性樹脂の物性に影響を及ぼすことがある。一例として、前記酸性基含有変性ポリサッカライド内の酸性基の置換度(DS)は、0.4以上、0.5以上、0.6以上、または0.7以上で、かつ0.9以下、0.8以下、または0.75以下であってもよい。
【0034】
ここで、酸性基の置換度とは、グリコース繰り返し単位当り酸性基で置換されたヒドロキシ基(-OH)の平均個数を意味する。つまり、グリコース繰り返し単位当り3個のヒドロキシ基が存在するので、理論的な最大置換度は3であり、置換度が0.1というのは、10個のグリコース繰り返し単位当り1個のヒドロキシ基が置換されたことを意味する。また、このような酸性基の置換度は、最終製造された変性ポリサッカライドのH NMR分析を通じて計算することができる。
【0035】
一方、前記酸性基含有変性ポリサッカライドがカルボキシル基を含有する場合、このようなカルボキシル基含有変性ポリサッカライドは、非変性ポリサッカライドのヒドロキシ基とカルボン酸またはその塩との反応によって製造されてもよい。このときに用いられるカルボン酸またはその塩としては、クロロ酢酸ナトリウム、コハク酸、またはイタコン酸などがある。
【0036】
このとき、前記酸性基含有変性ポリサッカライド内の酸性基は、カルボキシル基であってもよく、前記カルボキシル基の少なくとも一部は中和していてもよい。前記変性ポリサッカライドの酸性基の中和度は、変性ポリサッカライドの種類および具現しようとする最終高吸水性樹脂物性によって調節されてもよい。例えば、分子量が高いため、水不溶性であるポリサッカライドの場合、カルボキシル基(COOH)をカルボキシレート(COO)形態に中和度を高めて水に対する溶解度を高めることができる。具体的には、前記変性ポリサッカライドの中和度は、40ないし95モル%、または40ないし80モル%、または45ないし75モル%であってもよい。
【0037】
一例として、前記酸性基含有変性ポリサッカライドは、非変性ポリサッカライドを水酸化物およびクロロ酢酸ナトリウムと反応させて製造されてもよく、このような反応によって生成された酸性基含有変性ポリサッカライドは、カルボキシメチル化したポリサッカライドである。ここで、カルボキシメチル化は、後述する化学式Aで表される無水グリコース単位(AGU)内の2位の炭素C2、3位の炭素C3、または6位の炭素C6のヒドロキシ基で起きることができる。つまり、前記カルボキシメチル化したポリサッカライドは、無水グリコース単位(AGU)内の一つ以上のヒドロキシ基(OH)がカルボキシメチル基(OCHCOOH/OCHCOO)で置換された構造を有する。
【0038】
また、前記ポリサッカライドは、10,000~4,000,000g/molの重量平均分子量を有することができる。前記ポリサッカライドの重量平均分子量が過度に低い場合、一定の水準以上の強度を示す架橋重合体の形成が難しいこともあり、前記ポリサッカライドの重量平均分子量が過度に高い場合、高分子量のポリサッカライドの高分子鎖の絡み合い(entanglement)現象によって第1架橋剤との反応が難しく、十分に架橋されないこともある。
【0039】
ここで、重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン(PS)をキャリブレーション用標準試料に用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用い、測定することができる。より具体的には、ポリサッカライド200mgを200mlのジメチルホルムアミド(Dimethylformamide、DMF)溶媒に希釈して約1000ppmのサンプルを製造した後、Agilent 1200 series GPC機器を用い、1ml/min FlowでRI detectorを通じて重量平均分子量を測定することができる。このとき、サンプルの分子量は、標準PSスタンダード(Standard)8種を用いて検量線を作成した後、これを基準に算出されてもよい。
【0040】
また、前記ポリサッカライドは、総重量を基準に1:99ないし50:50重量比のアミロースおよびアミロペクチンを含むデンプンであってもよいが、加工性および溶解度の面から、アミロペクチンの含有量がアミロース含有量以上であることが有利であるためである。このような前記変性デンプンは、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、米デンプン、小麦デンプン、タピオカデンプンおよびサツマイモデンプンから構成される1種以上のデンプンが変成されたものであってもよく、アミロペクチンの含有量が多いジャガイモデンプンがより好ましい。
【0041】
また、前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物であってもよい。本明細書で使用する用語「第1架橋剤」は、高吸水性樹脂粒子の表面を架橋させるために通常使用される第2架橋剤と区別するために使用する用語であって、複数個のポリサッカライドのヒドロキシ基を互いに連結する役割を果たす。前記ステップでの架橋は表面または内部を区別せずに行われるが、高吸水性樹脂粒子の追加架橋工程が行われる場合に、最終製造された高吸水性樹脂の粒子表面は、主に第2架橋剤によって架橋された構造からなっており、内部は主に前記第1架橋剤によって架橋された構造になっている。したがって、前記第2架橋剤は、主に高吸水性樹脂の表面を架橋させる役割を果たすので、表面架橋剤の役割を果たすものと考えられ、前記第1架橋剤は、前記第2架橋剤と区別されて内部架橋剤の役割を果たすものと考えられる。
【0042】
ここで、前記環状カルボン酸無水物は、環構造内に-(C=O)-O-(C=O)-連結構造を有する化合物を意味し、2個のカルボン酸の縮合反応によって水分子を除去して製造される。
【0043】
具体的には、前記環状カルボン酸無水物は、下記の化学式1-1または1-2で表されてもよい。
【0044】
【化1】
【0045】
前記化学式1-1および1-2において、
nは、0または1であり、
Aは、隣り合う五員環と融合された、シクロヘキサン;シクロヘキセン;シクロヘキサジエン;またはベンゼン環であり、
Rは、ハロゲン、C1-4アルキル、OH、または-(C1-4アルキレン)-COOHであり、
aは、0ないし4の整数であり、
bは、0ないし6の整数であり、
aおよびbがそれぞれ2以上の場合、2個以上のRは、互いに同一または異なっている。
【0046】
例えば、Rは、フルオロ、クロロ、ブロモ、メチル、OH、または-(メチレン)-COOHであってもよい。
【0047】
また、aは、0、1、または2であってもよく、bは、0、1、2、3、または4であってもよい。
【0048】
一例として、前記環状カルボン酸無水物は、下記で構成される群より選択されるいずれか一つであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【化2】
【0050】
このうち、使用の便宜性、反応の容易性および水を保有するために適している架橋重合体ネットワーク形成の面から、前記第1架橋剤としてコハク酸無水物またはクエン酸が用いられることが好ましい。
【0051】
一方、前記第1架橋剤として環状カルボン酸無水物ではない、N,N’-メチレンビスアクリルアミド(N,N’-Methylenebisacrylamide;MBA)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エピクロロヒドリンなどの一般的な高吸水性樹脂に用いられる架橋剤を用いる場合、架橋反応が行われず、高吸水性樹脂としての役割を果たせないこともある。
【0052】
また、前記第1架橋剤としてジビニルスルホンを用いる場合、第1架橋剤として環状カルボン酸無水物を用いる場合に対して、最終製造された高吸水性樹脂の保水能および加圧吸収能がいずれも低下することがある。その理由は、ジビニルスルホンは縮合反応ではなく、付加重合で架橋を形成することになるが、前記非変性または酸性基含有変性ポリサッカライドは、付加重合の反応の可能性が顕著に低いため、ジビニルスルホンによる架橋が十分に起きないためである。
【0053】
したがって、高吸水性樹脂の諸物性である保水能および加圧吸収能がトレード-オフ(trade-off)関係にあるという点を考慮すると、ポリサッカライドと環状カルボン酸無水物の架橋重合体含有ベース樹脂を含む高吸水性樹脂が、他の架橋剤との架橋重合体含有ベース樹脂を含む高吸水性樹脂に対して、顕著に向上した物性を示すものであることが分かる。
【0054】
そして、このような第1架橋剤は、前記架橋重合体内に前記ポリサッカライド1モルに対して0.01ないし50モルで含まれていてもよい。前記第1架橋剤の含有量が過度に低い場合、架橋が十分に起きないため、適正水準以上の強度具現が難しいこともあり、前記第1架橋剤の含有量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の具現が難しいこともある。具体的には、前記第1架橋剤は、前記架橋重合体内に前記ポリサッカライド1モルに対して0.05モル以上、0.1モル以上、0.5モル以上、1モル以上、5モル以上、10モル、15モル以上、または18モル以上で、かつ40モル以下、30モル以下、25モル以下、または20モル以下で含まれていてもよい。
【0055】
より具体的には、前記第1架橋剤は、ポリサッカライドの変性の有無によって、その含有量が異なることがある。
【0056】
例えば、前記高吸水性樹脂が非変性ポリサッカライドによる架橋重合体を含む場合、架橋重合体内に高吸水性樹脂の吸収性能の確保を可能にするカルボキシル基(COOH)またはカルボキシレート基(COO)の導入のために、前記架橋重合体内に前記第1架橋剤は、前記ポリサッカライド1モルに対して5モルないし30モルで含まれてもよい。具体的には、前記高吸水性樹脂が非変性ポリサッカライドによる架橋重合体を含む場合、前記第1架橋剤は、前記架橋重合体内に前記ポリサッカライド1モルに対して5モル以上、10モル、15モル以上、または18モル以上で、かつ30モル以下、25モル以下、または20モル以下で含まれていてもよい。
【0057】
これに対し、前記高吸水性樹脂がカルボキシル基などの酸性基含有変性ポリサッカライドによる架橋重合体を含む場合には、前記架橋重合体内に前記第1架橋剤が前記ポリサッカライド1モルに対して0.01ないし3モルで含まれてもよい。具体的には、前記高吸水性樹脂が酸性基含有変性ポリサッカライドによる架橋重合体を含む場合、前記第1架橋剤は、前記架橋重合体内に前記ポリサッカライド1モルに対して0.01モル以上、0.05モル以上、0.1モル以上、または0.5モル以上で、かつ3モル以下、2モル以下、1.5モル以下、または1モル以下で含まれていてもよい。
【0058】
また、前記第1架橋剤は、通常、エチレン系不飽和単量体の架橋重合に用いられるポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアクリレート系化合物;ジエポキシブタン、ジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系化合物;ジビニルスルホン;またはエピクロロヒドリンなどを含まなくてもよい。
【0059】
したがって、前記架橋重合体は、ポリサッカライドが、環状カルボン酸無水物が含まれた第1架橋剤によって架橋された構造を有するものであり、複数のポリサッカライドによる主鎖が第1架橋剤である環状カルボン酸無水物の開環反応により架橋された形態の3次元網状構造を有する。このように、前記架橋重合体が3次元網状構造を有する場合、第1架橋剤によって追加架橋されない2次元線状構造を有する場合に比べて、高吸水性樹脂の諸物性である保水能および加圧吸収能を顕著に向上させることができる。
【0060】
より具体的には、前記ポリサッカライドは、下記のように、下記の化学式Aで表されるグリコース繰り返し単位を含む。このとき、前記第1架橋剤は、繰り返し単位内の2位の炭素C2、3位の炭素C3、または6位の炭素C6のヒドロキシ基に結合されてもよい。主に、前記第1架橋剤は、6位の炭素C6と結合するが、これは6位の炭素に結合されたヒドロキシ基が2位および3位の炭素に結合されたヒドロキシ基に比べて反応性が良いためである。前記ポリサッカライドがグルコサミン/N-アセチルグルコサミン繰り返し単位を含む場合、また、第1架橋剤は、主に6位の炭素C6のヒドロキシ基に結合されてもよい。
【0061】
【化3】
【0062】
一例として、前記第1架橋剤としてコハク酸無水物が用いられた場合、前記架橋重合体は、下記の化学式Bのような架橋構造を有することができる。
【0063】
【化4】
【0064】
このとき、前記架橋重合体の製造には、単量体に前記ポリサッカライドのみを用い、通常高吸水性樹脂の製造に用いられるアクリル酸系単量体は用いなくてもよい。これは、前記架橋重合体がポリサッカライド、アクリル酸系単量体および第1架橋剤間の架橋重合体の場合、アクリル酸系単量体によって形成された架橋構造によって高吸水性樹脂の生分解度が顕著に低下することがあるためである。
【0065】
また、前記生分解性高吸水性樹脂は、前記第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された構造を有する。具体的には、前記第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された構造は、前記ベース樹脂上に形成されており、前記架橋重合体が第2架橋剤を媒介として追加架橋された架橋重合体を含む架橋層を意味する。ここで、前記架橋層は、主に前記ベース樹脂の粒子それぞれの表面上の少なくとも一部に形成されており、前記ベース樹脂内の前記架橋重合体が第2架橋剤によって架橋されている構造を有する。これは、高吸水性樹脂の表面での架橋密度を高めるためのものであるので、前記のように高吸水性樹脂が前記第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された構造をさらに含む場合、内部より外部の架橋密度が高い構造を有するようになる。
【0066】
このとき、前記第2架橋剤としては、エポキシ系化合物を用いる。このような場合、通常用いられる1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、または1,2-シクロヘキサンジメタノールなどのアルコール系化合物を第2架橋剤として用いる場合に比べて、低い温度で架橋を行うことができるというメリットがある。具体的には、ポリサッカライド化合物の場合、アルコール系化合物を用いた架橋反応温度では変成される可能性を有している。これにより、低い温度での架橋反応が必要であるので、前記エポキシ系化合物がポリサッカライドの架橋重合体を含むベース樹脂の架橋反応に適していると考えられる。
【0067】
より具体的には、前記エポキシ系化合物は、多価エポキシ系化合物またはエピハロヒドリン系化合物であってもよい。
【0068】
例えば、前記多価エポキシ系化合物は、分子内のエポキシ基が2個以上含まれた化合物であって、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、2,2-ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステルおよびフタル酸ジグリシジルエステルから構成される群より選択される1種以上であってもよい。
【0069】
また、前記エピハロヒドリン系化合物は、エピクロロヒドリン、エピヨードヒドリン、エピブロモヒドリンおよび2-(クロロメチル)-2-メチルオキシランから構成される群より選択される1種以上であってもよい。
【0070】
また、前記高吸水性樹脂は、150ないし850μmの平均粒径を有する粒子形態であってもよい。このとき、このような粒径は、ヨーロッパ不織布産業協会(European Disposablesand Nonwovens Association、EDANA)規格EDANA WSP 220.3方法によって測定されてもよい。より具体的には、前記高吸水性樹脂組成物は、総重量を基準に約90重量%、好ましくは95重量%以上が約150ないし850μmの粒径を有する高吸水性樹脂粒子であってもよく、約10重量%未満、より具体的には、約5重量%未満が約150μm未満の粒径を有する微粉であってもよい。前記高吸水性樹脂が150μm未満の粒径を有する微粉を多量に含む場合、高吸水性樹脂の諸物性を低下させることがあって、好ましくない。
【0071】
また、前記生分解性高吸水性樹脂は、保水能および加圧吸収能のバランスに優れている。
【0072】
具体的には、前記生分解性高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 241.3によって測定した保水能(CRC)が10ないし50g/gであってもよい。一例として、前記生分解性高吸水性樹脂は、保水能(CRC)が11g/g以上、12g/g以上、20g/g以上、21g/g以上、または24g/g以上で、かつ40g/g以下、35g/g以下、30g/g以下、25.5g/g以下、または25g/g以下であってもよい。
【0073】
そして、前記生分解性高吸水性樹脂は、EDANA法WSP 242.3によって測定した0.7psiでの加圧吸収能(AUP)が5ないし30g/gであってもよい。一例として、前記生分解性高吸水性樹脂は、加圧吸収能(AUP)が7g/g以上、8g/g以上、9g/g以上、10g/g以上、11g/g以上、12g/g以上、13g/g以上、14g/g以上、または15g/g以上で、かつ25g/g以下、23g/g以下、20g/g以下、または17g/g以下であってもよい。
【0074】
これにより、前記生分解性高吸水性樹脂は、下記の式1で計算される有効吸収能(EFFC)が10g/g以上、または10g/gないし20g/gであってもよい。
【0075】
[式1]
有効吸収能(EFFC)={保水能(CRC)+0.7psi加圧吸収能(AUP)}/2
【0076】
前記式1において、
前記保水能(CRC)は、EDANA法WSP 241.3の方法によって測定した高吸水性樹脂の遠心分離保水能(CRC)を意味し、
前記0.7psi加圧吸収能(AUP)は、EDANA法WSP 242.3の方法によって測定した高吸水性樹脂の0.7psiの加圧吸収能(AUP)を意味する。
【0077】
一例として、前記生分解性高吸水性樹脂は、前記式1で計算される有効吸収能(EFFC)が10g/g以上、15g/g以上、16g/g以上、17g/g以上、または18g/g以上で、かつ20g/g以下、または19.5g/g以下であってもよい。
【0078】
また、前記生分解性高吸水性樹脂は、ISO 14855-12005規格によって測定した生分解度が30%超、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上で、かつ100%以下であってもよい。
【0079】
生分解性高吸水性樹脂の製造方法
一方、前記生分解性高吸水性樹脂は、下記の製造方法を含んで製造されてもよい。
【0080】
第1架橋剤の存在下で、非変性または酸性基含有変性ポリサッカライド(polysaccharide)を架橋させ、架橋重合体を製造するステップ(ステップ1)と、
前記架橋重合体を乾燥および粉砕してベース樹脂を製造するステップ(ステップ2)と、
第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の少なくとも一部を架橋させるステップ(ステップ3)と、を含み、
前記第1架橋剤は、環状カルボン酸無水物を含み、前記第2架橋剤は、エポキシ系化合物を含み、その他の各用語の説明は、前述したものを参照する。
【0081】
以下、一具現例の高吸水性樹脂の製造方法について、各ステップ別により具体的に説明する。
【0082】
(ステップ1)
一具現例に係る製造方法で、前記ステップ1は、第1架橋剤の存在下で、ポリサッカライド(polysaccharide)を架橋させ、架橋重合体を製造するステップである。このために、前記第1架橋剤および前記ポリサッカライドを含む第1架橋溶液が準備される。
【0083】
前記架橋重合は、前記ポリサッカライドと第1架橋剤間のエステル化反応によって行われる。具体的には、環状カルボン酸無水物が後述する反応触媒などによって開環された後、前記ポリサッカライド内のグリコース繰り返し単位の6位の炭素C6のヒドロキシ基と環状カルボン酸無水物のカルボン酸基とが反応してエステル基を形成し、ポリサッカライドが第1架橋剤によって架橋されることになる。
【0084】
このとき、前記第1架橋剤は、前記ポリサッカライド1モルに対して0.01ないし50モルで用いられてもよい。前記第1架橋剤の使用量が過度に低い場合、架橋が十分に起きないため、適正水準以上の強度具現が難しいこともあり、前記第1架橋剤の使用量が過度に高い場合、内部架橋密度が高くなって所望の保水能の具現が難しいこともある。具体的には、前記第1架橋剤は、前記ポリサッカライド1モルに対して0.05モル以上、0.1モル以上、1モル以上、5モル以上、10モル、15モル以上、または18モル以上で、かつ40モル以下、30モル以下、25モル以下、または20モル以下で用いられてもよい。
【0085】
そして、前記架橋重合時に、このようなエステル化反応を促進するための触媒および/または熱安定剤がさらに用いられてもよい。
【0086】
前記エステル化反応触媒としては、4-ジメチルアミノピリジン(4-dimethylaminopyridine;DMAP)、酢酸マグネシウム、テトラ-n-ブチルチタネート(TBT)、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモン、N-メチルイミダゾール、またはこれらの組み合わせが用いられてもよい。前記触媒は、反応時間短縮および所望の架橋度を得るために前記ポリサッカライド使用量1モルに対して0.1ないし5モルで用いられてもよい。具体的には、前記反応触媒は、前記ポリサッカライド1モルに対して0.1モル以上、0.5モル以上、1モル以上、または2モル以上で、かつ4.5モル以下、4モル以下、または3.5モル以下で用いられてもよい。
【0087】
また、前記熱安定剤としては、有機または無機リン化合物が用いられてもよい。前記有機または無機リン化合物は、例えば、リン酸、リン酸の有機エステル、亜リン酸、または亜リン酸の有機エステルであってもよい。より具体的には、前記熱安定剤として商業的に入手可能な物質として、リン酸、アルキルホスフェートまたはアリールホスフェートなどが用いられてもよい。
【0088】
また、前記第1架橋溶液は必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0089】
そして、前記第1架橋溶液は、ポリサッカライドが高分子量の不溶性である場合、懸濁液状態であってもよく、ポリサッカライドが水溶性である場合、水などの溶媒に溶解した溶液状態であってもよい。このような第1架橋溶液中の固形分含有量、ポリサッカライド、第1架橋剤、触媒、および選択的に熱安定剤の濃度は、反応条件などを考慮して適宜調節されてもよい。例えば、前記第1架橋溶液内の固形分含有量は、10ないし80重量%、または15ないし60重量%、または30ないし50重量%であってもよい。
【0090】
前記第1架橋溶液が前記のような範囲の固形分含有量を有する場合、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を用いて架橋反応に参加していないポリサッカライドを除去する必要がないようにしながら、後述する重合体の粉砕時に粉砕効率を調節するために有利である。
【0091】
このときに用いられる溶媒は、前述の成分を溶解することができればその構成に限定されることなく用いることができ、例えば、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
一方、前記ポリサッカライドの架橋反応、つまり、ポリサッカライドと第1架橋剤間のエステル化反応は、25℃ないし100℃の温度で1時間ないし24時間行われてもよい。より好ましくは、前記ポリサッカライドの架橋反応は、25℃ないし30℃の温度で4時間ないし12時間行われてもよい。
【0093】
また、前記ステップで前記ポリサッカライドの架橋反応以降、架橋物を水と混和可能な溶媒に沈澱させるステップをさらに含んでもよい。このような沈澱工程によって高吸水性樹脂粒子に多孔性が与えられ、高吸水性樹脂の吸収能を向上させることができる。
【0094】
このとき、沈澱工程以前に、前記ポリサッカライドの架橋反応で生成された架橋物を塩基性溶液と混合してpH6ないし8に中和させるステップをさらに行ってもよい。これによって、架橋物内に存在するカルボキシル基がカルボキシレート基に中和して架橋物の吸収性能をより向上させることができ、衛生用品としての使用に適するように架橋物が中性を示すことができる。
【0095】
ここで、水と混和可能な(miscible)溶媒とは、水と溶媒を混合した後、一定の時間が経過した後、例えば、5分程度経過した後にも、二つの流体層の50%以上、あるいは、80ないし100%が別途の層に分離されず、単一層として維持されることを意味する。例えば、水と混和可能な溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級一価アルコール;アセトン;1,4-ジオキサンなどが用いられてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0096】
これによって得られた架橋重合体は、数センチメートルないし数ミリメートル形態であってもよい。具体的には、得られる架橋重合体の大きさは、注入される第1架橋剤の濃度および注入速度などによって多様に現れるが、通常重量平均粒径が2ないし50mmである架橋重合体が得られる。
【0097】
(ステップ2)
次に、前記架橋重合体を乾燥および粉砕してベース樹脂を製造するステップが行われる。
【0098】
一方、前記架橋重合体の製造後、後続の乾燥および粉砕工程を行う前に、製造された架橋重合体を粉砕する粗粉砕工程が選択的に行われてもよい。
【0099】
前記粗粉砕工程は、後続の乾燥工程で乾燥効率を上げ、最終製造される高吸水性樹脂粉末の粒子の大きさを制御するための工程であって、このとき、用いられる粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、ジュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、ミートチョッパ(meat chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含んでもよいが、前述した例に限定されない。
【0100】
前記粗粉砕工程は、一例として、前記架橋重合体の粒径が約2ないし約10mmになるように行われてもよい。架橋重合体の粒径を2mm未満に粉砕することは、前記架橋重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもできる。一方、粒径を10mm超過に粉砕する場合、今後行われる乾燥ステップの効率増大効果が微小である。
【0101】
次に、粗粉砕された架橋重合体を乾燥、粉砕、および選択的に分級してベース樹脂を製造するステップが行われる。
【0102】
前記乾燥方法は、架橋重合体の乾燥工程で通常用いられるものであれば、その構成に限定されることなく選択して用いられてもよい。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥ステップを行ってもよい。
【0103】
具体的には、前記乾燥は、真空条件下で、100℃ないし約180℃の温度で行われてもよい。一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20ないし約90分間行われてもよいが、これに限定されない。
【0104】
このような乾燥ステップを行った後の重合体の含水率は、約5ないし約10重量%であってもよい。
【0105】
前記乾燥工程後には、粉砕工程が行われる。
【0106】
前記粉砕工程は、重合体粉末、つまり、ベース樹脂の粒径が約150ないし約850μmとなるように行われてもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いてもよいが、前述した例に本発明が限定されるものではない。
【0107】
また、このような粉砕ステップ後、最終製品化する高吸水性樹脂の物性を管理するために、粉砕された重合体粉末を粒径によって分級する工程をさらに経てもよい。
【0108】
前記工程の結果として得られるベース樹脂は、アクリル酸系単量体と第1架橋剤を媒介として架橋重合された架橋重合体を含む粉末形態を有することができる。具体的には、前記ベース樹脂は、150ないし850μmの粒径を有する粉末形態を有することができる。
【0109】
(ステップ3)
次に、第2架橋剤の存在下で、前記ベース樹脂の少なくとも一部を架橋させるステップが行われる。前記ステップで、前記ベース樹脂内に含まれた前記架橋重合体が第2架橋剤を媒介として追加架橋された架橋層が形成されてもよい。つまり、前記ベース樹脂粒子表面の少なくとも一部に架橋層が形成された高吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【0110】
このとき、用いられる第2架橋剤は前述したものと同一であり、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01ないし5重量部で用いられるものであってもよい。前記第2架橋剤含有量が、前記ベース樹脂に対して過度に低い場合、表面改質がまともに行われず、最終高吸水性樹脂の加圧吸収能が低下する恐れがあり、逆に過量の第2架橋剤が用いられる場合、過度な架橋反応により樹脂の基本的な保水能がかえって低下することがあって、好ましくない。より具体的には、前記第2架橋剤は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.02重量部以上、0.05重量部以上、0.1重量部以上で、かつ4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1重量部以下、または0.5重量部以下で用いられてもよい。
【0111】
前記第2架橋剤をベース樹脂に混合する方法については、その構成の限定はない。第2架橋剤とベース樹脂粉末とを反応槽に入れて混合するか、ベース樹脂粉末に第2架橋剤を噴射する方法、連続的に運転されるミキサーにベース樹脂と第2架橋剤とを連続的に供給して混合する方法などを用いてもよい。
【0112】
より好ましくは、前記第2架橋剤は、水を含む溶媒に混合された第2架橋溶液の形態で投入されてもよい。水を添加する場合、第2架橋剤が重合体に均等に分散されるというメリットがある。
【0113】
このとき、追加される水は、第2架橋剤の均一な分散を誘導し、重合体粉末の凝集現象を防止するとともに、第2架橋剤の表面浸透深さを最適化するための目的で、前記水は、前記ベース樹脂100重量部に対して1ないし20重量部で用いられることが好ましい。例えば、前記水は、前記ベース樹脂100重量部に対して1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、または4重量部以上で、かつ10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、または5重量部以下で用いられてもよい。
【0114】
また、前記第2架橋溶液は、メタノールをさらに含んでもよい。特に、前記第2架橋溶液内に水およびメタノールは、60:40ないし40:60の重量比で含まれてもよい。好ましくは、前記水およびメタノールは50:50の重量比で用いられてもよい。
【0115】
また、前記ステップ3での架橋は、前記第2架橋溶液が添加されたベース樹脂粉末を80ないし140℃の温度で行われてもよい。より具体的には、前記ステップ3での架橋は、20℃ないし80℃の初期温度で10分ないし30分にかけて80℃ないし140℃の最高温度に昇温し、前記最高温度を5分ないし60分間維持して熱処理することによって行われてもよい。
【0116】
このようなステップ3での架橋工程条件を充足することによって、一具現例の物性を適宜充足する高吸水性樹脂をより効果的に製造することができる。
【0117】
前記ステップ3での架橋のための昇温手段は特に限定されない。熱媒体を供給するか、熱源を直接供給して加熱してもよい。このとき、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱い油などの昇温した流体などを用いてもよいが、これらに限定されるものではなく、また、供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温速度および昇温目標温度を考慮して適宜選択してもよい。一方、直接供給される熱源としては、電気による加熱、ガスによる加熱方法が挙げられるが、前述した例に限定されるものではない。
【0118】
前述の製造方法によって得られた高吸水性樹脂は、保水能と加圧吸収能などの吸収性能に優れるように維持され、より向上した吸収速度などを充足して、一具現例の諸物性を充足することができる。
【0119】
また、さらに前述の生分解性高吸水性樹脂を含む物品が提供される。
【0120】
前記物品は、吸水性物品、衛生用品、土壌保水剤、土木用止水材、建築用止水材、育苗用シート、新鮮度保持剤、湿布用材料、電気絶縁体、口腔用物品、歯用物品、化粧品用物品および皮膚用物品の中から選択される1種以上であってもよい。
【0121】
このとき、前記高吸水性樹脂を含む衛生用品としては、例えば、子供用紙おむつや、成人用おむつまたは生理用ナプキンなどが挙げられる。特に、前記高吸水性樹脂は、増殖に起因した2次的悪臭が特に問題となる成人用おむつに好適に適用することができる。このような衛生用品は、吸収体中に前述の一具現例の高吸水性樹脂が含まれるという点を除いては、通常の衛生用品の構成を有することができる。
【0122】
以下、発明の理解のために好ましい実施例が提示される。しかし、下記の実施例は発明を例示するためのものであるだけで、発明をこれらのみに限定するものではない。
【0123】
<実施例>
実施例1
(ステップ1)単量体としてデンプン(Starch soluble、Sigma-Aldrich社製)100gを水5Lに溶解した後、90℃に昇温しながら10分間撹拌した。以降、常温で冷却した後、反応器に触媒として4-ジメチルアミノピリジン(4-(Dimethylamino)pyridine;DMAP)240g(デンプンのヒドロキシ基に対して1.05当量、デンプン1モルに対して3.15モル)添加して溶解した。以降、コハク酸無水物1000g(単量体デンプンのヒドロキシ基に対して6当量、単量体デンプン1モルに対して18モル)添加して第1架橋溶液を得た後、これを25℃程度の常温で6時間撹拌して架橋反応を行った。以降、10%の水酸化ナトリウム溶液でpH7に中和した後、メタノール5Lに沈殿して架橋重合体を得た。
【0124】
(ステップ2)次に架橋重合体を約5cm×5cmの大きさに切り出した後、ミートチョッパ(meat chopper)に投入して重合体を粉砕し、1mmないし10mmの大きさを有するゲル粒子粉(crumb)を得た。以降、前記粉(crumb)を上下に気流伝達が可能なオーブンで乾燥させた。120℃以上のホットエアー(hot air)を15分間下方から上方に、再び15分間上方から下方に流れるようにして均一に乾燥させ、乾燥後の乾燥体の含水量は2%以下となるようにした。乾燥後、粉砕機で粉砕した後、分級して150ないし850μmの大きさを選別してベース樹脂を準備した。
【0125】
(ステップ3)製造されたベース樹脂粉末に、ベース樹脂100重量部を基準に第2架橋剤エチレングリコールジグリシジルエーテル(Denacol(登録商標) EX-810、Nagase ChemteX社製)0.1重量部、水4重量部およびメタノール4重量部を含む第2架橋溶液を噴射し、常温で撹拌してベース樹脂粉末上に第2架橋溶液を均等に分布するように混合した。次に、第2架橋溶液と混合されたベース樹脂粉末を架橋反応器に入れ、架橋反応を行った。
【0126】
このような架橋反応器内で、ベース樹脂粉末は、80℃近辺の初期温度から漸進的に昇温するものと確認され、30分経過した後に、100℃の反応最高温度に到達するように操作した。このような反応最高温度に到達した以降に、15分間追加反応させた後、最終製造された高吸水性樹脂サンプルを取った。この後、ASTM規格の標準網篩で分級して150μmないし850μmの粒径を有する実施例1の高吸水性樹脂を製造した。
【0127】
実施例2
前記実施例1で単量体としてデンプンの代わりに、キトサン(medium molecular weight、200-800cP、1wt.% in 1% acetic acid(25℃、Brookfield)、Sigma-Aldrich社製)を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0128】
実施例3
(ステップ1-1)デンプン(Starch soluble、Sigma-Aldrich社製)100gを300gのエタノールに分散させた後、11.5M NaOH水溶液70mLを添加して20分間撹拌した。以降、ここにクロロ酢酸ナトリウム(Sodium chloroacetate)37.5gを添加した後、70℃に昇温しながら3時間撹拌した。撹拌が完了すると、溶媒を除去した後、1M HCl溶液で中和した。以降、エタノール/水4:1(重量比)溶液で3回洗浄後、エタノール沈殿して酸性基を含有する変性デンプン前駆体を合成した。合成された酸性基を含有する変性デンプン前駆体は、カルボキシメチル化したデンプンであり、カルボキシメチル基の置換度は、0.71であった。このとき、カルボキシメチル化したデンプンのカルボキシメチル基の置換度は、H NMRスペクトルでデータ分析範囲である4~5.5ppm内のピークのintegral合計が1となるように設定した後、2位、3位および6位の炭素それぞれの置換度を求めた後、これらを合わせて求めた。ここで、カルボキシメチル化したデンプンのH NMRは、H0に溶解したカルボキシメチル化したデンプンをMeOHに投入して撹拌し、これをフィルタにかけた後、乾燥して準備されたサンプルをNMR測定溶媒である0.75mLのD0および0.25mLのDSOに溶解し、90℃で1時間撹拌後に測定された。
【0129】
(ステップ1-2)前記ステップ1-1で製造した前駆体90gを150gの水に全て溶解した後、ここにクエン酸無水物(2-(3-hydroxy-2,5-dioxotetrahydrofuran-3-yl)acetic acid)を9g(酸性基を含有する変性デンプン前駆体1モルに対して0.1モル)添加して第1架橋溶液を得た。これを60℃で2時間撹拌して架橋反応を行い、この後、120℃のオーブンで溶媒が全て除去されるまで熱硬化および乾燥して架橋重合体を得た。
【0130】
以降、ステップ2および3は、実施例1と同様にして実施例3の高吸水性樹脂を製造した。
【0131】
実施例4
前記実施例1で、第2架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルをベース樹脂100重量部に対して0.02重量部で用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0132】
実施例5
前記実施例1で、第2架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルをベース樹脂100重量部に対して0.5重量部で用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0133】
実施例6
前記実施例3で、第1架橋剤としてクエン酸無水物の代わりに、コハク酸無水物を単量体変性デンプン1モルに対して3モルで用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0134】
実施例7
前記実施例3で、第1架橋剤としてクエン酸無水物の代わりに、コハク酸無水物を単量体変性デンプン1モルに対して1モルで用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0135】
実施例8
前記実施例3で、第1架橋剤としてクエン酸無水物の代わりに、コハク酸無水物を用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0136】
実施例9
前記実施例3で、第1架橋剤であるクエン酸無水物を単量体変性デンプン1モルに対して0.5モルで用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0137】
実施例10
前記実施例3で、第1架橋剤であるクエン酸無水物を単量体変性デンプン1モルに対して0.05モルで用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0138】
実施例11
前記実施例1で、第2架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルをベース樹脂100重量部に対して0.05重量部で用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0139】
実施例12
前記実施例1で、第2架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりに、エピクロロヒドリンをベース樹脂100重量部に対して0.05重量部で用いたことを除いては、実施例1と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0140】
実施例13
前記実施例3で、第2架橋剤であるエチレングリコールジグリシジルエーテルをベース樹脂100重量部に対して0.05重量部で用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0141】
実施例14
前記実施例3で、第2架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテルの代わりに、エピクロロヒドリンをベース樹脂100重量部に対して0.05重量部で用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0142】
比較例1
(ステップ1)反応器に単量体としてデンプン(Starch soluble、Sigma-Aldrich社製)100gを水300mLに入れ、90℃に昇温しながら1時間撹拌した後、室温に冷却した。以降、アクリル酸150gを、40%NaOHを用いて95%中和させた溶液を反応器に添加した。次に、反応器に重合開始剤として過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;APS)3.2gおよび第1架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド(N,N’-Methylenebisacrylamide;MBA)0.24gを添加して第1架橋溶液を得た。これを65℃に昇温して4時間撹拌して架橋反応を行い、これによって架橋重合体を得た。
【0143】
以降、ステップ2および3は、実施例1と同様にして比較例1の高吸水性樹脂を製造した。
【0144】
比較例2
前記実施例3で、第1架橋剤としてクエン酸無水物の代わりに、ジビニルスルホンを単量体変性デンプン1モルに対して0.05モルで用いたことを除いては、実施例3と同様の方法を用いて高吸水性樹脂を製造した。
【0145】
実験例:高吸水性樹脂の物性測定
前記実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂に対して、次のような方法で物性を評価し、下記の表1に示した。他に表記しない限り、下記の物性評価は、全ての過程を恒温恒湿室(23±0.5℃、相対湿度45±0.5%)で行い、測定誤差を防止するために3回測定平均値を測定データとした。また、下記の物性評価で用いた生理食塩水または塩水は、0.9重量%塩化ナトリウム(NaCl)水溶液を意味する。
【0146】
(1)遠心分離保水能(CRC:Centrifuge Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸収倍率による保水能をEDANA WSP 241.3によって測定した。
【0147】
具体的には、高吸水性樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過した後、遠心分離機を用いて250Gの条件下で、前記封筒から3分間水気を抜いて、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を用いず、同一な操作を行った後、そのときの質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次の式によりCRC(g/g)を算出した。
【0148】
[数式1]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0149】
(2)加圧吸収能(AUP:Absorbtion Under Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸収能を、EDANA法WSP 242.3によって測定した。
【0150】
具体的には、内径60mmのプラスチックの円筒底にステンレス製の400mesh鉄網を取り付けた。常温および湿度50%の条件下で、鉄網上に高吸水性樹脂W(g)(0.90g)を均一に散布し、さらにその上に0.3psiの荷重を均一に付与できるピストンを載せた。ピストンは、外径60mmより若干小さく円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きを妨げないようにした。このとき、前記装置の重量W(g)を測定した。
【0151】
直径150mmのペトリディッシュの内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルターを置いて、0.9重量%塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一のレベルになるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙の上に前記測定装置を載せて、荷重下で液を1時間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。
【0152】
得られた各質量を用いて、以下の式により加圧吸収能(g/g)を算出した。
【0153】
[数式2]
AUP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0154】
(3)有効吸収能(EFFC)
前記で測定された遠心分離保水能(CRC)および0.7psi加圧吸収能(AUP)に基づいて前記式1によって有効吸収能(EFFC)を計算した。
【0155】
(4)生分解度
堆肥化条件で、プラスチック材料の呼気性生分解度の測定方法であるISO 14855-12005規格によって、生分解度試験器(ECHO INSTRUMENTS社の12Channel Respirometer)を用い、実施例および比較例で製造された高吸水性樹脂の生分解度を、各高吸水性樹脂で微生物が代謝することによって放出する二酸化炭素発生量を定量して計算する方法を用いて測定した。具体的には、試験物質である各高吸水性樹脂の堆肥化は、堆肥化条件下で、6ヶ月間行われ、試験物質の理論的二酸化炭素発生量と実際の試験物質から発生する二酸化炭素量の比率で生分解度を求めた。
【0156】
ここで、理論的二酸化炭素発生量および生分解度は、それぞれ下記の数式3および数式4によって計算される。
【0157】
[数式3]
理論的二酸化炭素発生量(ThCO;g/容器)=MTOT×CTOT×44/12
【0158】
前記数式3において、
TOTは、試験開始時に、堆肥に添加された試験物質のうち、総乾燥固形分の量(g)を意味し、
TOTは、試験物質の総乾燥固形分に含まれた有機炭素の比率(g/g)を意味し、
44は、二酸化炭素の分子量を意味し、
12は、炭素の原子量を意味し、
【0159】
[数式4]
生分解度(%)=[{(CO-(CO}/ThCO]×100
【0160】
前記数式4において、
(COは、試験物質を入れた堆肥化容器から発生した二酸化炭素の累積量(g/容器)であり、
(COは、接種源容器から発生する二酸化炭素累積量の平均(g/容器)であり、
ThCOは、前記数式3を通じて計算された理論的二酸化炭素発生量(g/容器)である。
【0161】
【表1】
【0162】
前記表1で確認できるように、非変性または酸性基含有変性ポリサッカライドを第1架橋剤である環状カルボン酸無水物を用いて架橋させた架橋重合体含有ベース樹脂を含み、かつ第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された実施例の高吸水性樹脂は、比較例の高吸水性樹脂に対して保水能および加圧吸収能などの一般的な高吸水性樹脂の諸物性の低下なく、優れた生分解性を示すことが分かる。
【0163】
具体的には、単量体としてポリサッカライドのみを用いて製造した実施例1の高吸水性樹脂は、単量体としてポリサッカライドとアクリル酸をともに用いて架橋重合体を製造した比較例1の高吸水性樹脂に対して同等水準の加圧保水能および吸収能を示しながらも顕著に向上した生分解度値を有することが確認される。
【0164】
さらに、酸性基含有変性ポリサッカライド単量体を、環状カルボン酸無水物の第1架橋剤を用いて架橋させた架橋重合体含有ベース樹脂を含み、かつエチレングリコールジグリシジルエーテルの第2架橋剤によって前記ベース樹脂の少なくとも一部が架橋された実施例10の高吸水性樹脂は、同一の単量体および第2架橋剤を用い、第1架橋剤としてジビニルスルホンを用いて製造された比較例2の高吸水性樹脂に対して、顕著に向上した保水能、加圧吸収能および有効吸収能を示すことが分かる。
【0165】
これを通じて、非変性または酸性基含有変性ポリサッカライドを用いて生分解性高吸水性樹脂を製造しようとする場合、第1架橋剤の種類によって高吸水性樹脂の諸物性が異なることを確認することができ、さらに、ポリサッカライドが開環された環状カルボン酸無水物によって架橋された3次元網状構造の架橋重合体を含み、かつ前記架橋重合体の表面上の少なくとも一部がエポキシ系化合物で架橋された構造を有する高吸水性樹脂が生分解性高吸水性樹脂に適していることが分かる。
【国際調査報告】