IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハーの特許一覧

特表2024-524956マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法
<>
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図1A
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図1B
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図2
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図3
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図4
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図5
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図6
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図7
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図8
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図9
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図10
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図11
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図12
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図13
  • 特表-マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】マウント装置、リソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240702BHJP
   G02B 7/00 20210101ALI20240702BHJP
【FI】
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G02B7/00 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578118
(86)(22)【出願日】2022-05-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022064618
(87)【国際公開番号】W WO2022268445
(87)【国際公開日】2022-12-29
(31)【優先権主張番号】102021206515.5
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100230514
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】ラオ ラドハクリシュナ
(72)【発明者】
【氏名】ロビン グロリアン
【テーマコード(参考)】
2H043
2H197
【Fターム(参考)】
2H043AE02
2H043AE22
2H197CA06
2H197CA10
2H197CB13
2H197CC13
2H197GA01
2H197GA14
2H197GA23
2H197HA03
(57)【要約】
本発明は、第1及び第2コンポーネント(202、204)と第1及び第2コンポーネント(202、204)を相互に固定する接着剤(212、212’)とを有する、リソグラフィ装置(100A、100B)の第2コンポーネント(204)上で第1コンポーネント(202)を支持するマウント装置(200)であって、第1コンポーネント(202)は、少なくとも2つの相互傾斜面(216)と、2つの面(216)を接続する第1接着面(218)とを有し、第2コンポーネント(204)は、少なくとも2つの相互傾斜面(216)間に収容され且つ球面部(226)及び第2接着面(230)を含む少なくとも1つの球形部(220)を有し、第2接着面(230)は、断面で見ると球面部(226)の2つの副部(232、234)間に配置され、接着剤(212、212’)は、第1及び第2接着面(218、230)間に配置される、マウント装置(200)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置(100A、100B)の第2コンポーネント(204)に第1コンポーネント(202)を取り付けるマウント装置(200)であって、
前記第1コンポーネント(202)及び前記第2コンポーネント(204)と、前記第1コンポーネント(202)及び前記第2コンポーネント(204)を相互に固定する接着剤(212、212’)と
を備え、前記第1コンポーネント(202)は、少なくとも2つの相互傾斜面(216)と、該2つの面(216)を接続する第1接着面(218)とを有し、
前記第2コンポーネント(204)は、前記少なくとも2つの相互傾斜面(216)間に収容され且つ球面部(226)及び第2接着面(230)を含む少なくとも1つの球形部(220)を有し、前記第2接着面(230)は、断面で見ると前記球面部(226)の2つの副部(232、234)間に配置され、
前記接着剤(212、212’)は、前記第1接着面(218)と前記第2接着面(230)との間に配置されるマウント装置。
【請求項2】
請求項1に記載のマウント装置において、前記第1コンポーネント(202)は、少なくとも1つの溝(214、214’)、V溝(214、214’)、円錐溝、円錐セグメントの形状の溝、漏斗状の溝、球根状の溝、球根状カップの形態の溝、及び/又は特に断面で見ると前記2つの相互傾斜面(216)を有する漏斗状の溝を有するマウント装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のマウント装置において、前記第1コンポーネント(202)及び前記第2コンポーネント(204)は、前記2つの相互傾斜面(216)及び前記球形部(220)によりそれぞれ形成される点接触又は面接触(A1、A2)でのみ相互に直接当接し、さらに、前記接着剤(212、212’)により前記第1接着面(218)及び前記第2接着面(230)で相互に接着接合されるマウント装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のマウント装置において、前記第1接着面(218)及び前記第2接着面(230)は、それぞれが複数の離散的な接着面(218、230)を含むマウント装置。
【請求項5】
請求項2~4のいずれか1項に記載のマウント装置において、
前記第1コンポーネント(302)は、前記少なくとも1つのV溝(314)と連通する少なくとも1つの凹部(340)を含み、前記第1接着面(318)を有し、且つ前記接着剤(312、312’)が配置され、
前記第2コンポーネント(304)は、前記少なくとも1つの球形部(320)に、断面で見ると前記球面部(326)の前記2つの副部(332、334)間に突出しており前記第2接着面(330)を有する少なくとも1つの突起(344)を含み、
該突起(344)は、前記第1コンポーネント(302)の前記凹部(340)に挿入されて前記接着剤(312、312’)によりそこに接着接合されるマウント装置。
【請求項6】
請求項5に記載のマウント装置において、前記第2コンポーネント(304)は、少なくとも1つのねじ付きピン(346)を有し、該ねじ付きピン(346)の第1端部(348)は前記少なくとも1つの球形部(320)のねじ孔(352)に螺入され、第2端部(354)は前記第2接着面(330)を有する前記突起(344)を形成するマウント装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のマウント装置において、前記少なくとも1つの突起(344’)は、第1屈曲軸(X)及び該第1屈曲軸(X)に対して垂直な第2屈曲軸(Y)を中心に前記少なくとも1つの球形部(320)に対して屈曲可能であるよう設計され、前記第1屈曲軸(X)及び前記第2屈曲軸(Y)の両方は、前記第1コンポーネント(302)から前記第2コンポーネント(304)へ向かう方向(Z)に対して垂直に配置されるマウント装置。
【請求項8】
請求項7に記載のマウント装置において、前記少なくとも1つの突起(344’)は、前記第1屈曲軸(X)を中心に曲がる少なくとも1つの第1板ばね(360)と、前記第2屈曲軸(Y)を中心に曲がる少なくとも1つの第2板ばね(366)とを有するマウント装置。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載のマウント装置において、前記第2コンポーネント(404)は、前記少なくとも1つの球形部(420)に形成され且つ前記第2接着面(430)を有する少なくとも1つの凹部(440)を含むマウント装置。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか1項又は請求項9に記載のマウント装置において、前記第2コンポーネント(404)は、少なくとも1つのねじ(442)を有し、該ねじ(442)は、第1端部(444)が前記第2コンポーネント(404)のねじ孔(446)に螺入され、第2端部(448)に前記少なくとも1つの球形部(420)の1つを形成する球頭部(450)を有するマウント装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載のマウント装置において、前記第1コンポーネント(202)及び前記第2コンポーネント(204)の一方は、前記リソグラフィ装置(100A、100B)の光学素子(206)のキャリア(202)であり、前記第1コンポーネント(202)及び前記第2コンポーネント(204)の他方は、前記リソグラフィ装置(100A、100B)の前記光学素子(206)の環状カバー(204)であるマウント装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載のマウント装置において、
前記第1コンポーネント(202)は、0以外の角度(α、γ、β)だけ相互にオフセットして配置される3つのV溝(214’)を含み、
前記第2コンポーネント(204)は、前記0以外の角度(α、β、γ)だけ相互にオフセットして配置される3つの球形部(220)を含み、
前記第1コンポーネント(302)は、前記少なくとも1つのV溝(314、314’)と連通し前記0以外の角度(α、β、γ)だけ相互にオフセットして配置される3つの凹部(340)を含み、
前記第2コンポーネント(304)は、前記0以外の角度(α、β、γ)だけ相互にオフセットして配置される3つの突起(344、344’)を含み、且つ/又は
前記第2コンポーネント(404)は、前記少なくとも1つの球形部(420)に形成され前記0以外の角度(α、β、γ)だけ相互にオフセットして配置される3つの凹部(440)を含むマウント装置。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載のマウント装置において、
前記少なくとも1つの球形部(220)は、球欠及び/又は球状楔形であるか、又は
該マウント装置は、正確に1つの球形部(220)及び正確に1つのV溝(214)を含み、前記球形部(220)はトロイダル部であり、前記V溝(214)は環状のV溝(214)であるマウント装置。
【請求項14】
リソグラフィ装置(100A、100B)であって、請求項1~13のいずれか1項に記載のマウント装置(200)を備えたリソグラフィ装置。
【請求項15】
リソグラフィ装置(100A、100B)用のマウント装置(200)を製造する方法であって、
a)少なくとも2つの相互傾斜面(216)及び該2つの面(216)を接続する第1接着面(218)を含む第1コンポーネント(202)を用意するステップ(S1)と、
b)球面部(226)及び断面で見ると該球面部(226)の2つの副部(232、234)間に配置される第2接着面(230)を有する少なくとも1つの球形部(220)を含む第2コンポーネント(204)を用意するステップ(S2)と、
c)前記少なくとも1つの球形部(220)が前記少なくとも2つの相互傾斜面(216)間に収容されて、前記第1接着面(218)が前記第2接着面(230)に隣接して配置されるように、前記第2コンポーネント(204)を前記第1コンポーネント(202)上に配置するステップ(S3)と、
d)前記第1接着面(218)及び/又は前記第2接着面(230)に接着剤(212、212’)を塗布するステップ(S4)と、
e)前記接着剤(212、212’)を硬化させるステップ(S5)と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウント装置、当該マウント装置を有するリソグラフィ装置、及びマウント装置を製造する方法に関する。
【0002】
優先権出願の独国特許出願第10 2021 206 515.5号の内容の全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
マイクロリソグラフィは、微細構造コンポーネント、例えば集積回路の製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明系及び投影系を有するリソグラフィ装置を用いて実行される。この場合、照明系により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影系により、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影系の像平面に配置された基板、例えばシリコンウェハに投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0004】
接着接続によりリソグラフィ装置の光学素子のキャリアに固定される機械コンポーネントの場合、用いられる接着剤の硬化は、コンポーネントの変位又は傾斜につながり得る。大きな面積に接着剤を塗布する場合、硬化により光学素子のキャリアに力が加わるようにもなり得ることで、光学素子の大きな傾斜につながり得る。これは、レンズ素子又はミラー等の光学素子の光学特性に影響を及ぼす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした背景から、本発明の目的は、改良されたマウント装置、当該マウント装置を有するリソグラフィ装置、及び上記マウント装置を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、リソグラフィ装置の第2コンポーネントに第1コンポーネントを取り付けるマウント装置が提案される。マウント装置は、
第1コンポーネント及び第2コンポーネントと、第1コンポーネント及び第2コンポーネントを相互に固定する接着剤と
を備え、第1コンポーネントは、少なくとも2つの相互傾斜面と、2つの面を接続する第1接着面とを有し、
第2コンポーネントは、少なくとも2つの相互傾斜面間に収容され且つ球面部及び第2接着面を含む少なくとも1つの球形部を有し、第2接着面は、断面で見ると球面部の2つの副部間に配置され、
接着剤は、第1接着面と第2接着面との間に配置される。
【0007】
2つの相互傾斜面間に挿入される少なくとも1つの球形部により、第1コンポーネント及び第2コンポーネントを相互に取り付けることで、第1コンポーネント及び第2コンポーネントが取付領域の点接触又は小さな面接触でのみ相互に直接当接する。これにより、この取付けの外側での第1コンポーネントと第2コンポーネントとの間の面接触の形態の強い接触を回避することが可能となる。第1コンポーネント及び第2コンポーネントの接着面に塗布された接着剤が硬化中に収縮する場合、この強い接触の回避により、第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントにかかる力が低減される。特に、接着剤収縮により生じる第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントの傾斜を回避することができる。例えば、第2コンポーネント(例えば、第1コンポーネントよりも軽い)が硬化中の接着剤の収縮により変位又は傾斜した場合でも、提案されるような取付け(及び取付けの外側で強い面接触がないこと)により、第1コンポーネントにかかる力の伝達が回避される。特に、第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントの位置に対する接着剤硬化の影響を低減することができる。
【0008】
例えば、リソグラフィ装置は、DUV又はEUVリソグラフィ装置である。EUVは「極紫外線」(EUV)を意味し、0.1nm~30nm、特に13.5nmの使用光の波長を示す。さらに、DUVは「深紫外線」(DUV)を意味し、30nm~250nmの使用光の波長を示す。
【0009】
DUV又はEUVリソグラフィ装置は、ビーム整形・照明系及び投影系を備える。特に、DUV又はEUVリソグラフィ装置を用いて、照明系により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影系により、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影系の像平面に配置された基板、例えばシリコンウェハに投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。
【0010】
第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントは、特に機械コンポーネントである。例えば、第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントは、キャリア、架台、ホルダ、及び/又はカバーである。第1コンポーネント又は第2コンポーネントは、例えば、DUV又はEUVリソグラフィ装置のレンズ素子又はミラー等の光学素子のキャリア及び/又は架台である。例えば、第1コンポーネント又は第2コンポーネントは、光学素子の保護カバーである。第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントは、例えば、リソグラフィ装置の測定系のホルダ、絞り、又は別の要素でもあり得る。例えば、第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントは金属製である。
【0011】
接着剤は、特に、液体又は粘性状態で第1接着面及び/又は第2接着面に塗布され硬化されて接着接続を与える接着剤である。例えば、接着剤は、物理的に硬化する接着剤又は化学的に硬化する接着剤である。接着剤は、硬化すると固化し、固化状態で第1コンポーネントと第2コンポーネントとの間、特に第1接着面と第2接着面との間に固体の接着剤層を形成する。このようにして形成された接着剤層は、特に、第1接着剤層及び第2接着剤層上に直接位置し、これらを相互に固定する。
【0012】
2つの相互傾斜面及び第1接着面は、特に球形部を収容する溝を画定又は形成する。例えば、第1接着面は、第1コンポーネントから第2コンポーネントへ向かう方向に対して少なくとも部分的に垂直に配置され得る。第1接着面は、例えば、断面で見ると2つの相互傾斜面を一直線に接続することができる。換言すれば、第1接着面は単一の平面内にあり得る。しかしながら、第1接着面は、断面で見ると第1接着面の側で閉じる溝ができるように2つの相互傾斜面を接続する限り、他の形状及び配置を有することもできる。
【0013】
例えば、球形部は、第2コンポーネントと一体的に形成される。代替として、球形部は、第2コンポーネントに取着(例えば、螺着、挟着、接着)される別個の要素でもあり得る。球形部の球面部は、特に球に従って湾曲している。例えば、球形部は、第2接着面を設けるために第1コンポーネントに隣接する端では平坦化される。球面部は、特に第1コンポーネントに隣接して第2接着面により中断される。
【0014】
球形部が2つの相互傾斜面間に挿入される場合、2つの相互傾斜面と球形部、すなわちその球面部との間に小さな面接触、特に点接触又は公差及び変形に関連する接触がある。
【0015】
2つの相互傾斜面は、特に断面で見ると直線的である(例えば、V溝、円錐溝、円錐セグメントの形状の溝、及び/又は漏斗状の溝の場合)。代替として、2つの相互傾斜面は、断面で見ると湾曲していてもよい(例えば、球根状の溝及び/又は球根状カップの形態の溝の場合)。
【0016】
例えば、2つの相互傾斜面は、2つの相互傾斜平面である(例えば、V溝の場合)。代替として、2つの相互傾斜面は、例えばそれ自体が湾曲した任意の表面とすることができる(例えば、円錐溝、円錐セグメントの形状の溝、及び/又は漏斗状の溝の場合)。
【0017】
一実施形態によれば、第1コンポーネントは、少なくとも1つの溝、V溝、円錐溝、円錐セグメントの形状の溝、漏斗状の溝、球根状の溝、球根状カップの形態の溝、及び/又は特に断面で見ると2つの相互傾斜面を有する漏斗状の溝を含む。
【0018】
例えば、これはV溝であり、2つの相互傾斜面は、断面で見るとV字形に傾斜している。例えば、V溝は、第2接着面を形成するために、その先端がV字形とは異なる設計である(例えば、平坦化されるか又はさらなる窪み/凹部を有する)。先端が平坦化されたV溝を、円錐セグメントとも称し得る。
【0019】
さらに別の実施形態によれば、第1コンポーネント及び第2コンポーネントは、2つの相互傾斜面及び球形部によりそれぞれ形成される点接触又は面接触でのみ相互に直接当接する。さらに、第1コンポーネント及び第2コンポーネントは、接着剤により第1接着面及び第2接着面で相互に接着接合される。
【0020】
特に、第1コンポーネント及び第2コンポーネントは、点接触又は面接触(すなわち、2つの相互傾斜面と球形部との間の点接触又は面接触)以外でのみ相互に接着接合される。特に、接着接続は、接着剤による間接的な接触にすぎない。
【0021】
例えば、第1コンポーネント及び第2コンポーネントは、合計6つの点接触又は面接触で相互に直接隣接するだけである。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、第1接着面及び第2接着面はそれぞれが複数の離散的な接着面を含む。
【0023】
これにより、接着剤の量又は接着剤で覆われる面積を減らすことが可能となる。結果として、第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントの位置に対する接着剤硬化の影響をさらに低減することができる。
【0024】
特に、マウント装置は、接着剤の硬化状態で、第1コンポーネントと第2コンポーネントとの間に複数の相互に離間した離散的な接着剤層を含む。特に、第1接着面及び第2接着面は、円周状及び/又は環状の接着面ではない。
【0025】
例えば、マウント装置は、接着剤の硬化状態で、相互に離間した合計3つの離散的な接着剤層を含む。
【0026】
さらに別の実施形態によれば、第1コンポーネントは、少なくとも1つのV溝と連通する少なくとも1つの凹部を含み、第1接着面を有し、且つ接着剤が配置される。さらに、第2コンポーネントは、少なくとも1つの球形部に、断面で見ると球面部の2つの副部間に突出しており第2の接着面を有する少なくとも1つの突起を含む。さらに、突起は、第1コンポーネントの凹部に挿入されて接着剤によりそこに接着接合される。
【0027】
特に、第1接着面は、凹部の内壁に形成される。特に、第2接着面は、突起の外壁に形成される。
【0028】
第1接着面を凹部の内壁の形態で設けることにより、接着剤をさらにより具体的且つより画定的に塗布することができる。特に、所定の第1接着面の外側に接着剤が塗布されるのを回避することができる。液体又は粘性形態の接着剤が第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントの第1接着面及び第2接着面の外側の領域に広がるのをより良好に防止することも可能である。
【0029】
例えば、凹部は、ポットであるか又はポット形状を有する。特に、凹部は環状(円周状)凹部ではない。
【0030】
突起は、例えばピン形状を有する。特に、突起は環状(円周状)突起ではない。例えば、突起は、第2コンポーネントと一体的に形成される。代替として、突起は、第2コンポーネントに取着(例えば、螺着、挟着、接着)される別個の要素でもあり得る。突起は、特に第1コンポーネントの方向に突出する。
【0031】
さらに別の実施形態によれば、第2コンポーネントは、少なくとも1つのねじ付きピンを有し、ねじ付きピンの第1端部は少なくとも1つの球形部のねじ孔に螺入され、第2端部は第2接着面を有する突起を形成する。
【0032】
これにより、第2コンポーネント及び特に突起の製造が容易になる。
【0033】
例えば、ねじ付きピンは、ねじ頭のないグラブねじである。
【0034】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの突起は、第1屈曲軸及び第1屈曲軸に対して垂直な第2屈曲軸を中心に少なくとも1つの球形部に対して屈曲可能であるよう設計される。第1屈曲軸及び第2屈曲軸は、第1コンポーネントから第2コンポーネントへ向かう方向に対して垂直に配置される。
【0035】
突起は球形部に対して曲がることができるので、例えば接着剤収縮の発生による接着剤の硬化中の接着剤による力を補償することが可能である。
【0036】
例えば、突起は、上述のようにねじ付きピンにより形成され、ねじ付きピンは、特にその第2端部で第1屈曲軸及び第2屈曲軸を中心に屈曲可能であるように設計される。
【0037】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの突起は、第1屈曲軸を中心に曲がる少なくとも1つの第1板ばねと、第2屈曲軸を中心に曲がる少なくとも1つの第2板ばねとを有する。
【0038】
これにより、第1屈曲軸及び第2屈曲軸を中心とした屈曲特性の実現が容易になる。
【0039】
特に、第1板ばねの主延在方向は、第2板ばねの主延在方向に対して垂直に配置される。特に、第1板ばね及び第2板ばねの主延在方向は、第1コンポーネントから第2コンポーネントへの方向と水平に配置される。
【0040】
例えば、突起は、内部空洞及びこの空洞を囲む側壁を有するピンを有し、板ばねは、側壁の適当な切込み(すなわち隙間)により形成される。
【0041】
さらに別の実施形態によれば、第2コンポーネントは、少なくとも1つの球形部に形成され且つ第2接着面を有する少なくとも1つの凹部を含む。
【0042】
特に、第2接続面は、少なくとも1つの球形部に形成された凹部の内壁により形成される。
【0043】
第2接着面を凹部の内壁の形態で設けることにより、接着剤が凹部に浸透することができる。したがって、所定の第1接着面及び第2接着面の外側に接着剤が広がるのをより良好に回避することができる。例えば、液体又は粘性形態の接着剤が第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントの第1接着面及び第2接着面の外側の領域に広がるのをより良好に防止することが可能である。
【0044】
少なくとも1つの球形部に形成された凹部は、例えばポットであるか又はポット形状を有する。少なくとも1つの球形部に形成された凹部は、特に環状(円周状)凹部ではない。
【0045】
さらに別の実施形態によれば、第2コンポーネントは、少なくとも1つのねじを有し、ねじは、第1端部が第2コンポーネントのねじ孔に螺入され、第2端部に少なくとも1つの球形部の1つを形成する球頭部を有する。
【0046】
したがって、第2コンポーネントの、特に少なくとも1つの球形部の突起の製造を簡略化することができる。
【0047】
さらに別の実施形態によれば、第1コンポーネント及び第2コンポーネントの一方は、リソグラフィ装置の光学素子のキャリアであり、第1コンポーネント及び第2コンポーネントの他方は、リソグラフィ装置の光学素子の環状カバーである。
【0048】
その結果、マウント装置を用いて、光学素子のキャリアの傾斜、ひいては光学素子の傾斜をより良好に回避することができる。これにより、光学素子の光学特性が接着接続の接着剤の硬化による影響を受けるのを防止することができる。
【0049】
環状カバーは、例えば汚染からの保護に用いられる。
【0050】
別の実施形態によれば、
第1コンポーネントは、0以外の角度だけ相互にオフセットして配置される3つのV溝を含み、
第2コンポーネントは、0以外の角度だけ相互にオフセットして配置される3つの球形部を含み、
第1コンポーネントは、少なくとも1つのV溝と連通し0以外の角度だけ相互にオフセットして配置される3つの凹部を含み、
第2コンポーネントは、0以外の角度だけ相互にオフセットして配置される3つの突起を含み、且つ/又は
第2コンポーネントは、少なくとも1つの球形部に形成され0以外の角度だけ相互にオフセットして配置される3つの凹部を含む。
【0051】
上記要素間の0以外の角度は、例えばそれぞれ120°の角度である。換言すれば、上記要素は、円に沿って均等に分配される。しかしながら、上記要素間の0以外の角度は、120°以外の値も有し得る。
【0052】
さらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの球形部は、球欠及び/又は球状楔形であるか、又は
マウント装置は、正確に1つの球形部及び正確に1つのV溝を含み、球形部はトロイダル部であり、V溝は環状のV溝である。
【0053】
球欠は、特に、(単一の)平面での切断により球体から形成された球体の一部である。例えば、球欠は、円板を底面としたドームの形状を有する。ドームの球面は、例えば球形部の「球面部」を形成する。球欠の開角は、例えば90°以下である。球欠は、例えば半球でもあり得る(開角90°、球欠の底面の半径が球体の半径に対応する)。
【0054】
球扇形は、特に球体を円錐状に切り取ったものである。特に、球扇形は、90°以下の開角を有する。例えば、球扇形は、球体の中心点からその表面まで円錐状に切り取ったものである。例えば、球扇形は半球でもあり得る(開角90°)。
【0055】
トロイダル部は、特に、トーラスの、特に回転トーラスの一部である。特に、トロイダル部は、球欠と同じ断面積を有し得る。
【0056】
さらに別の態様によれば、リソグラフィ装置の光学素子のキャリアに環状カバーを取り付けるマウント装置が提案される。マウント装置は、キャリア及び環状カバーを有する。さらに、キャリア及び環状カバーは、6つの点接触又は面接触でのみ相互に直接当接する。さらに、キャリア及び環状カバーは、相互に接着接合される。
【0057】
特に、キャリアと環状カバーとの間の接着接続は、接着剤による間接的な接触にすぎない。特に、キャリア及び環状カバーは、6つの点接触又は面接触の外側でのみ相互に接着接合される。
【0058】
第1態様によるマウント装置の上記実施形態及び特徴は、第2態様によるマウント装置にも適宜当てはまり、またその逆でもある。
【0059】
さらに別の態様によれば、上述のマウント装置を有するリソグラフィ装置が提案される。
【0060】
別の態様によれば、リソグラフィ装置用のマウント装置を製造する方法が提案される。この方法は、
a)少なくとも2つの相互傾斜面及び2つの面を接続する第1接着面を含む第1コンポーネントを用意するステップと、
b)球面部及び断面で見ると球面部の2つの副部間に配置される第2接着面を有する少なくとも1つの球形部を含む第2コンポーネントを用意するステップと、
c)少なくとも1つの球形部が少なくとも2つの相互傾斜面間に収容されて、第1接着面が第2接着面に隣接して配置されるように、第2コンポーネントを第1コンポーネント上に配置するステップと、
d)第1接着面及び/又は第2接着面に接着剤を塗布するステップと、
e)接着剤を硬化させるステップと
を含む。
【0061】
特に、ステップd)は、ステップc)の前又は後に実行することができる。
【0062】
実施形態では、第1コンポーネントは、少なくとも2つの相互傾斜面と連通し且つ第1接着面を有する少なくとも1つの凹部を含み、接着剤は、ステップd)において凹部に配置される。さらに、第2コンポーネントは、少なくとも1つの球形部に少なくとも1つの突起を有し、これが第2接着面を有する。少なくとも1つの突起は、第1屈曲軸及び第1屈曲軸に対して垂直な第2屈曲軸を中心に少なくとも1つの球形部に対して屈曲可能であるよう設計され、第1屈曲軸及び第2屈曲軸の両方が、第1コンポーネントから第2コンポーネントへ向かう方向に対して垂直に配置される。さらに、ステップc)において、突起は凹部に挿入される。さらに、ステップe)の硬化プロセス中に接着剤により第1コンポーネント及び/又は第2コンポーネントにかかる力が、第1屈曲軸及び/又は第2屈曲軸を中心とした突起の屈曲により補償される。
【0063】
この場合の「a(an)」は、厳密に1つの要素に制限するものと必ずしも理解すべきでない。正確には、2つ、3つ、又はそれ以上等の複数の要素を設けることもできる。ここで用いる他の数字はいずれも、記載の数の要素に厳密に制限されるという趣旨で理解すべきでもない。その代わりに、別途指示のない限り数の増減が可能である。
【0064】
マウント装置に関して記載した実施形態及び特徴は、リソグラフィ装置及び提案された製造方法にも適宜当てはまり、またその逆でもある。
【0065】
本発明のさらに他の可能な実施態様は、例示的な実施形態に関して上述又は後述されている特徴又は実施形態の明記されていない組み合わせも含む。この場合、当業者であれば、個々の態様を改良又は補足として本発明の各基本形態に加えることもあろう。
【0066】
本発明のさらに他の有利な改良及び態様は、従属請求項の主題であり、後述する本発明の例示的な実施形態の主題でもある。さらに、好ましい実施形態に基づいて添付図面を参照して本発明を以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1A】EUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図1B】DUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図2図1A又は図1BからのEUV又はDUVリソグラフィ装置の第1実施形態によるマウント装置の上面図を示す。
図3図2からのマウント装置の環状のV溝を有するキャリアを示す。
図4】キャリアが環状のV溝の代わりに3つの個別のV溝を有する、図3と同様の図を示す。
図5】組立て前の図2からのマウント装置のV溝球形マウントを示す。
図6】組立て後の図5からのV溝球形マウントを示す。
図7】第2実施形態によるマウント装置のV溝球形マウントの斜視図を示す。
図8】組立て前の図7からのV溝球形マウントの断面図を示す。
図9】組立て後の図8からのV溝球形マウントを示す。
図10】組立て後の第2実施形態の変形形態によるマウント装置のV溝球形マウントを示す。
図11図10からのV溝球形マウントのねじ付きピンのシャンクを示す。
図12】組立て前の第3実施形態によるマウント装置のV溝球形マウントを示す。
図13】組立て後の図12からのV溝球形マウントを示す。
図14】実施形態によるマウント装置を製造する方法を示すフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
別途指示のない限り、図中で同一の要素又は同一の機能を有する要素には同じ参照符号を設けてある。図示は必ずしも一定の縮尺ではないことにも留意されたい。
【0069】
図1Aは、ビーム整形・照明系102及び投影系104を備えたEUVリソグラフィ装置100Aの概略図を示す。EUVは「極紫外線」を意味し、0.1nm~30nmの使用光の波長を示す。ビーム整形・照明系102及び投影系104は、それぞれが真空ハウジング(図示せず)内に設けられ、各真空ハウジングは排気装置(図示せず)を用いて真空引きされる。真空ハウジングは、光学素子を機械的に移動させる又は設定する駆動装置が設けられた機械室(図示せず)により囲まれる。さらに、電気コントローラ等を上記機械室内に設けることもできる。
【0070】
EUVリソグラフィ装置100Aは、EUV光源106Aを備える。EUV域(極紫外域)の、すなわち例えば5nm~20nmの波長域の放射線108Aを発するプラズマ源(又はシンクロトロン)を、例えばEUV光源106Aとして設けることができる。ビーム整形・照明系102において、EUV放射線108Aを集束させ、所望の作動波長をEUV放射線108Aからフィルタリングする。EUV光源106Aが発生したEUV放射線108Aは、空気中の透過率が比較的低く、こうした理由でビーム整形・照明系102及び投影系104の導光空間が真空引きされる。
【0071】
図1Aに示すビーム整形・照明系102は、5つのミラー110、112、114、116、118を有する。ビーム整形・照明系102の通過後に、EUV放射線108Aはフォトマスク(レチクルとも称する)120へ導かれる。フォトマスク120は、同様に反射光学素子として形成され、システム102、104の外部に配置され得る。さらに、EUV放射線108Aは、ミラー122によりフォトマスク120へ指向され得る。フォトマスク120は、投影系104により縮小形態でウェハ124等に結像される構造を有する。
【0072】
投影系104(投影レンズとも称する)は、フォトマスク120をウェハ124に結像するために6個のミラーM1~M6を有する。この場合、投影系104の個々のミラーM1~M6は、投影系104の光軸126に関して対称に配置され得る。EUVリソグラフィ装置100AのミラーM1~M6の数は、図示の数に制限されないことに留意されたい。設けられるミラーM1~M6の数をより多くすることもより少なくすることもできる。さらに、ミラーM1~M6は、ビーム整形用に前面が概して湾曲している。
【0073】
図1Bは、ビーム整形・照明系102及び投影系104を備えたDUVリソグラフィ装置100Bの概略図を示す。この場合、DUVは「深紫外線」を意味し、30nm~250nmの使用光の波長を示す。図1Aを参照して既に記載したように、ビーム整形・照明系102及び投影系104は、真空ハウジング内に配置され且つ/又は対応する駆動装置を有する機械室により囲まれ得る。
【0074】
DUVリソグラフィ装置100Bは、DUV光源106Bを有する。例として、例えば193nmのDUV域の放射線108Bを発するArFエキシマレーザをDUV光源106Bとして設けることができる。
【0075】
図1Bに示すビーム整形・照明系102は、DUV放射線108Bをフォトマスク120へ導く。フォトマスク120は、透過光学素子として形成され、システム102、104の外部に配置され得る。フォトマスク120は、投影系104により縮小形態でウェハ124等に結像される構造を含む。
【0076】
投影系104は、フォトマスク120をウェハ124に結像するために複数のレンズ素子128、130及び/又はミラー132を有する。この場合、投影系104の個々のレンズ素子128、130及び/又はミラー132は、投影系104の光軸126に関して対称に配置され得る。DUVリソグラフィ装置100Bのレンズ素子128、130及びミラー132の数は、図示の数に制限されないことに留意されたい。設けられるレンズ素子128、130及び/又はミラー132の数をより多くすることもより少なくすることもできる。さらに、ミラー132は、ビーム整形用に前面が概して湾曲している。
【0077】
最終レンズ素子130とウェハ124との間の空隙は、屈折率が1を超える液体媒体134で置き換えることができる。液体媒体134は、例えば高純度水であり得る。このような構成は、液浸リソグラフィとも称し、高いフォトリソグラフィ解像度を有する。媒体134は、浸液と称することもできる。
【0078】
図2は、EUV又はDUVリソグラフィ装置100A、100Bのマウント装置200の上面図を示す。マウント装置200は、第1機械コンポーネント202及び第2機械コンポーネント204を有し、これら2つのコンポーネント202、204を相互に取り付けるために用いられる。
【0079】
図2に示す例では、マウント装置200は、光学素子206のキャリア202に環状カバー204を取り付けるために用いられる。図2において、環状カバー204は、キャリア202及び光学素子206の両方を、特に各縁領域で上から部分的に覆う。環状カバー204は、例えば汚染からの保護に用いられる。環状カバー204は、例えば、光学素子206とカバー204との間の空気流を許すように設計及び配置される。図2において、環状カバー204は、光学素子206及びキャリア202の視認性を高めるために破線でのみ示されている。環状カバー204及びキャリア202は、例えば金属性である。
【0080】
光学素子206は、例えば、図1BからのDUVリソグラフィ装置100Bのウェハ124の前に配置された最終レンズ素子130である。他の例では、光学素子206は、図1A図1BからのEUV又はDUVリソグラフィ装置100A、100Bの別の光学素子でもあり得る。例えば、光学素子206は、EUVリソグラフィ装置100A(図1A)のミラー110~118、122、M1~M6の1つ、又はDUVリソグラフィ装置100B(図1B)のレンズ素子128又はミラー132の1つでもあり得る。
【0081】
環状カバー204は、以下で詳細に説明するように、点取付けにより、例えばV溝球形マウント208(図5)によりキャリア202に取り付けられ、これにより、第1コンポーネント202と第2コンポーネント204との間には取付領域に点接触又は公差及び変形に関連する小さな面接触のみがある。したがって、キャリア202への環状カバー204の明確な取付けが可能であり、取付けの外側でのいずれも例えば金属製である環状カバー204とキャリア202との間の強い面接触が回避される。さらに、環状カバー204は、V溝球形マウント208の点接触又は面接触の外側に配置された接着接続210(図6)により、キャリア202に強固に接着接合される。
【0082】
図3は、図2と同じ向きのキャリア202を示すが、光学素子206も環状カバー204もない。図3で見られるように、キャリア202は、溝、図示の例では環状のV溝214を有する。図5は、V溝214を径方向断面(図3の線BBに沿った断面)で示す。
【0083】
環状のV溝214(図3)の代わりに、図4に示すように、キャリア202’は3つの個別のV溝214’も有することができる。この場合、3つの個別のV溝214’は、α、β、γの角度で相互に対してオフセットして配置される。図4に示す例では、3つの個別のV溝214’は、それぞれ120°の等角で相互に対してオフセットして配置される(すなわち、α=β=γ=120°)。他の例では、3つの個別のV溝は、ゼロ以外の異なる角度α、β、γで相互に対してオフセットして配置されてもよい。図5及び図6に示すV溝214、214’の断面は、環状のV溝214(図3)の断面及び3つのV溝214’(図4)の1つの断面の両方に対応する。環状のV溝214(図3)又は3つの個別のV溝214’の代わりに、円錐溝、円錐セグメントの形状の溝、漏斗状の溝、球根状の溝、及び/又は球根状カップの形態の溝等の1つ又は複数の異なる形状の溝を用いることができることに留意されたい。
【0084】
図5に示すように、V溝214、214’は、2つの相互傾斜面216を有する。さらに、V溝214、214’は、環状カバー204への接着接続のために2つの面216を接続する第1接着面218を有する。特に、V溝214、214’は、(図5において)底部で切断されたV字形を有し、その切断された変気が第1接着面218を有する。図5に示す例では、第1接着面218は、キャリア202からカバー204へ向かう方向Zに対して垂直に配置される。
【0085】
V溝球形マウント208によりキャリア202にカバー204を取り付けるために、カバー204は、3つの球形部220を有し、そのうちの1つを図5及び図6に断面で示す。図5は、球形部220がV溝214又は214’に導入される前の状態のV溝球形マウント208を示す。図6は、球形部220がV溝214又は214’に位置付けられた状態のV溝球形マウント208を示す。
【0086】
3つの球形部220のそれぞれが、カバー204の下面222(図5)からキャリア202の方向に突出する。図5に示す球形部220は、特に、図5で下端224が平坦化された半球である。3つの球形部220のそれぞれが、球体228に従って球状に湾曲した球面部226を含む。さらに、3つの球形部220のそれぞれが、第2接着面230を有する。第2接着面230は、図5において球面部220の平坦化された端224に配置される。さらに、図5に示す例では、第2接着面230は、方向Zに対して垂直に配置される。第2接着面230は、図5の断面で見ると、特に球面部226の2つの副部232及び234間に配置される。
【0087】
図6に示すように、液体接着剤212が第1接着面218と第2接着面230との間に挿入される。さらに、3つの球形部220のそれぞれが、1つの環状のV溝214(図3及び図6)に又は3つの個別のV溝214’の1つ(図4及び図6)に挿入され、球形部220が2つの支持点又は2つの小さな支持面A1、A2でV溝214、214’の相互傾斜面216に載るように取り付けられる。特に、3つの球形部220とV溝214(又は3つのV溝214’)との間には、点接触又は公差及び変形に関連する小さな面接触のみがある。例えば、3つの球形部220とV溝214(又は3つのV溝214’)との間には、合計6つの点接触又は面接触A1、A2がある。換言すれば、カバー204は、V溝球形マウント208を介してマウント208の領域の点接触又は面接触でのみキャリア202と接触している。
【0088】
他の例では、球形部220の代わりに、図5に示すような径方向断面も有する単一のトロイダル部(図示せず)を用いることもできる。
【0089】
第1接着面218と第2接着面230との間に液体形態で塗布された接着剤212は、硬化され、固化形態で接着剤層212’(図6)を形成する。環状カバー204とキャリア202との間の接着接続210は、固定の接着剤層212’により生じる。
【0090】
硬化中に、接着剤212、212’は、収縮することにより環状カバー204及び/又はキャリア202に力をかける可能性がある。接着剤212、212’は、カバー204とキャリア202との間の3つの離散的な場所で、すなわち平坦な側224(図5)に配置された3つの球形部220の第2接着面230にのみ塗布されるので、環状カバー204等のコンポーネントとキャリア202等の別のコンポーネントとの間で接着剤が平面状且つ環状に塗布される状況に比べて、接着剤212、212’による力が低減される。
【0091】
接着剤212、212’の硬化中に、カバー204の変位及び/又は傾斜が起きた場合、カバー204とキャリア202との間のV溝球形マウント208(図6)は、キャリア202もそれにより傾斜するのを防止する。その結果、特に、レンズ素子又はミラー等のキャリア202により保持された光学素子206(図2)が変位及び/又は傾斜するのを防止することが可能である。
【0092】
図7図9は、V溝球形マウント308及び接着接続310を有するマウント装置300の第2実施形態を示す。第2実施形態によるマウント装置300は、(第1実施形態によるキャリア202と同様に)光学素子206用のキャリア302と、(第1実施形態による環状カバー204と同様に)環状カバー304とを有する。
【0093】
キャリア302は、(V溝214、214’、図5と同様に)V溝314及びV溝314と連通する3つの凹部340(図8)を有する。第1実施形態の場合のように、V溝314は、V溝214(図3)に対応する環状のV溝であり得るか、又はV溝214’(図4)に対応する3つの個別のV溝が存在し得る。V溝314と連通する凹部340(図8)は、特にカップ状であり、キャリア302上の3つの離散的な離間した場所に形成される。特に、凹部340は円周状又は環状である。
【0094】
1つを図8及び図9に断面で示す凹部340のそれぞれが、その内壁342に接着面318(第1接着面)を有し、そこに接着剤312(図9)が配置される。
【0095】
さらに、環状カバー304は、3つの球形部320を有し、そのうちの1つを図8及び図9に断面で示す。球形部320は、第1実施形態(図5)の球形部220のように、2つの副部332、334を有する球面部326を有する。
【0096】
球形部320は、当該球形部に配置された突起344が第1実施形態(図5)の球形部220とは異なる。突起344は、球形部320と一体的に形成され得る(図示せず)。代替として、突起は、図7図9に示すように、球形部320に固定される別個の要素346により設けることができる。図示の例では、突起344は、第1端部348にねじ350を有する雄ねじ346により設けられる。
【0097】
雄ねじ346は、雄ねじ346のシャンク354(第2端部354)により設けられた突起344が断面で見ると球面部326の2つの副部332、334間に突出するように、球形部320(図9)のねじ孔352に螺入される。突起344は、凹部340の第1接着面318に接着固定するための第2接着面330も有する。
【0098】
キャリア302への環状カバー304の取付固定のために、接着剤312(図9)が液体形態でキャリア302の凹部340に充填される。続いて、突起344がキャリア302の凹部340に挿入されて接着剤312、312’によりそこに接着接合されるように、環状カバー304がキャリア320上に配置される。さらに、第1実施形態のように、球形部320は、球形部320が離散的な点接触又は面接触A1、A2でV溝314の相互傾斜面316に当接するように、V溝314(図9)に挿入される。接着剤312の硬化により、固体の接着剤層312’が形成され、これにより環状カバー304とキャリア302との間の接着接続310が生じる。
【0099】
第1接着面318を有する凹部340及び第2接着面330を有する突起344により、接着剤312を目標通りに塗布することができる。特に、液体形態の接着剤312が環状カバー304及び/又はキャリア302の第1接着面318及び第2接着面330の外側の領域に広がるのを回避することができる。
【0100】
図10は、V溝球形マウント308’を有するマウント装置300’の第2実施形態の変形形態を示す。以下では、第2実施形態との相違点のみを説明する。マウント装置300’において、突起344’は、接着剤312、312’の硬化中の力を補償するために球形部320に対して曲がることができるように設計される。特に、突起344’は、第1屈強軸X(図10のX方向と平行)を中心に且つ第1屈曲軸に対して垂直な第2屈曲軸Y(図10のY方向と平行)を中心に球形部320に対して曲がることができる。第1屈曲軸X及び第2屈曲軸Yの両方が、キャリア302からカバー304へ向かう方向Zに対して垂直に配置される。
【0101】
図10に示す例では、突起344’の屈曲性は、雄ねじ346’のシャンク354’の壁の切込み356により実現される。図10は断面を示すが、実際には上面図でしか見えない2つの切込み356を説明のために図10に示す。第1板ばね360を形成するウェブ358が、2つの切込み356間に残る。シャンク354’の後側には、第1板ばね360と対称な板ばね360が2つの切込み356により形成される。2つの第1板ばね360は、それぞれがY-Z方向に主延在平面を有し、シャンク354’(すなわち突起344’)をX方向の屈曲軸を中心に屈曲させることができる。さらに、シャンク354’は、2つのさらなる切込み362、364(図11)を有し、これにより2つの第2板ばね366が形成される(そのうちの一方が図11で見える)。2つの第2板ばね366は、X-Z平面に主延在平面を有し、シャンク354’(すなわち、突起344’)をY方向の屈曲軸を中心に屈曲させることができる。
【0102】
シャンク346’の屈曲性により、接着剤312、312’の硬化中に生じる力の補償が可能である。この補償により、キャリア302の、したがって光学素子206(図2)の傾斜が接着接続310の接着剤312、312’の硬化により起こるのを防止することが可能となる。
【0103】
図12及び図13は、V溝球形マウント408及び接着接続410を有するマウント装置400の第3実施形態を示す。第3実施形態によるマウント装置400は、(第1実施形態によるキャリア202と同様に)光学素子206用のキャリア402と、(第1実施形態による環状カバー204と同様に)環状カバー404とを有する。以下では、第1実施形態との相違点のみを説明する。
【0104】
マウント装置400において、球形部420は、第2接着面430を有する凹部440を有する。さらに、球形部420は、(第1実施形態、図5のように)環状カバー404と一体的に形成されるのではなく、別個の要素442として形成される。特に、マウント装置400は、別個の要素としてねじ442を有し、これは、第1端部444にねじ山を有することで環状カバー404のねじ孔446に螺入することができる。さらに、ねじ442は、その第2端部448に球頭部450を有し、これは、凹部440を有する球形部420を形成する。他の例では、図12及び図13に示すように別個のねじ442の球頭部450により形成された球形部420は、凹部440なしで実現することもできる。図13は、第3実施形態のマウント装置400を、支持点又は離散的な接触面A1、A2及び硬化した接着接続410で取り付けた組立状態で示す。
【0105】
以下では、図5図6、及び図14を参照して、第1実施形態によるリソグラフィ装置100A、100Bのマウント装置200を製造する方法を説明する。
【0106】
本方法の第1ステップS1において、少なくとも1つの相互傾斜面216と2つの面216を接続する第1接着面218とを含む、光学素子206のキャリア202(図2及び図5)等の第1コンポーネントを用意する。
【0107】
本方法の第2ステップS2において、球面部226及び第2接着面230を有する少なくとも1つの球形部220を含む、環状カバー204(図2及び図5)等の第2コンポーネントを用意する。第2接着面230は、断面で見ると球面部226の2つの副部232間に配置される。
【0108】
本方法の第3ステップS3において、少なくとも1つの球形部220が少なくとも2つの相互傾斜面216間に収容されて、第1接着面218が第2接着面230に隣接して配置されるように、第2コンポーネント204を第1コンポーネント202上に配置する。
【0109】
本方法の第4ステップS4において、第1接着面218及び/又は第2接着面230に接着剤212を塗布する。
【0110】
本方法の第5ステップS5において、固体の接着剤層212’を形成するように接着剤212を硬化させる。
【0111】
本発明は、例示的な実施形態に基づいて説明したが、多様な方法で変更可能である。
【符号の説明】
【0112】
100A EUVリソグラフィ装置
100B DUVリソグラフィ装置
102 ビーム整形・照明系
104 投影系
106A EUV光源
106B DUV光源
108A EUV放射線
108B DUV放射線
110 ミラー
112 ミラー
114 ミラー
116 ミラー
118 ミラー
120 フォトマスク
122 ミラー
124 ウェハ
126 光軸
128 レンズ素子
130 ミラー
132 媒体
200 マウント装置
202 第1コンポーネント
204 第2コンポーネント
206 光学素子
208 マウント
210 接着接続
212、212’ 接着剤
214 溝
216 面
218 第1接着面
220 球形部
222 面
224 端
226 球面部
228 球体
230 第2接着面
232 副部
234 副部
300、300’ マウント装置
302 コンポーネント(キャリア)
304 コンポーネント(カバー)
308、308’ マウント
310 接着接続
312、312’ 接着剤
314 溝
316 面
218 第1接着面
320 球形部
326 球面部
330 第2接着面
332 副部
334 副部
340 凹部
342 内壁
344、344’ 突起
346 要素(雄ねじ)
348 端部
350 ねじ
352 ねじ孔
354 シャンク(端部)
356 切込み
358 ウェブ
360 板ばね
362 切込み
364 切込み
366 板ばね
400 マウント装置
402 コンポーネント(キャリア)
404 コンポーネント(カバー)
408 マウント
410 接着接続
420 球形部
430 第2接着面
440 凹部
442 ねじ
444 端部
446 ねじ孔
448 端部
450 球頭部
A1 支持点/支持面
A2 支持点/支持面
M1 ミラー
M2 ミラー
M3 ミラー
M4 ミラー
M5 ミラー
M6 ミラー
S1~S5 方法ステップ
X 方向、軸
Y 方向、軸
Z 方向
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】