IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特表2024-524960新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
<>
  • 特表-新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子 図1
  • 特表-新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】新規な化合物およびこれを利用した有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 19/00 20060101AFI20240702BHJP
   C07F 9/53 20060101ALI20240702BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240702BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240702BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240702BHJP
   C07F 1/02 20060101ALN20240702BHJP
【FI】
C07F19/00 CSP
C07F9/53
C09K11/06 690
H10K85/60
H10K50/16
H10K50/17 171
H10K50/18
H10K59/10
C07F1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023578134
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2022015992
(87)【国際公開番号】W WO2023068824
(87)【国際公開日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】10-2021-0140466
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ホ・ギュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】セジン・ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジ・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジェチョル・イ
(72)【発明者】
【氏名】ス・フン・チョン
【テーマコード(参考)】
3K107
4H048
4H050
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC04
3K107CC12
3K107CC22
3K107CC45
3K107DD74
3K107DD78
4H048AA01
4H048AA03
4H048AB90
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB90
4H050AC40
4H050AC60
4H050BE24
4H050BE53
4H050WA15
4H050WA26
(57)【要約】
本発明は新規な化合物およびこれを含む有機発光素子を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物:
【化1】
前記化学式1中、
Xは、O、またはSであり、
は、それぞれ独立して、炭素数1~60のアルキル、シアノで置換された炭素数1~60のアルキル、ハロゲン、ニトロ、またはシアノであるか、または、隣接した二つのRが結合して置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環を形成し、
n1は、1または2であり、
は、水素、または重水素であり、
は、水素、重水素、またはハロゲンである。
【請求項2】
前記化学式1は、下記化学式1-1~1-4のいずれか一つで表示される、請求項1に記載の化合物:
【化2】
【化3】
前記化学式1-1~1-4中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~60のアルキル、シアノで置換された炭素数1~60のアルキル、ハロゲン、ニトロ、または、シアノであり、
は、水素、または重水素であり、
は、水素、重水素、またはハロゲンであり、
は、水素、重水素、または-CO-(炭素数1~60のアルキル)である。
【請求項3】
は、それぞれ独立して、水素、重水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シアノメチル、シアノエチル、シアノプロピル、シアノイソプロピル、シアノブチル、シアノイソブチル、シアノtert-ブチル、フルオロ、クロロ、ニトロ、または、シアノである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
は、水素、または重水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化学式1で表される化合物は、下記で構成される群から選択されるいずれか一つである、請求項1に記載の化合物:
【化4】
【化5】
【請求項6】
第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうち1層以上は、請求項1~5のいずれか一つに記載の化合物を含むものである、有機発光素子。
【請求項7】
前記化合物を含む有機物層は、電子輸送層または電子注入層である、請求項6に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、有機発光現象とは、有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに転換させる現象をいう。有機発光現象を利用する有機発光素子は、広い視野角、優れたコントラスト、速い応答時間を有し、輝度、駆動電圧および応答速度特性が優秀で多くの研究が進められている。
【0003】
有機発光素子は、一般的に正極と負極、および前記正極と負極との間に有機物層を含む構造を有する。前記有機物層は、有機発光素子の効率と安全性を高めるためにそれぞれ異なる物質から構成された多層の構造からなる場合が多く、例えば正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などからなる。このような有機発光素子の構造において、二つの電極の間に電圧をかけると正極からは正孔が、負極からは電子が有機物層に注入され、注入された正孔と電子が接した時エキシトン(exciton)が形成され、このエキシトンが再び基底状態に落ちる時光が出るようになる。
【0004】
前記のような有機発光素子に使用される有機物に対して新しい材料の開発が要求され続けている。
【0005】
一方、近年工程コスト削減のために従来の蒸着工程の代わりに溶液工程、特にインクジェット工程を利用した有機発光素子が開発されている。初期には全ての有機発光素子層を溶液工程でコーティングして有機発光素子を開発しようとしたが、現在の技術では限界があり、定構造の形態でHIL、HTL、EMLだけを溶液工程で行い、その後の工程は従来の蒸着工程を活用するハイブリッド(hybrid)工程が研究中である。
【0006】
そこで、本発明では、有機発光素子に使用することができると同時に溶液工程に使用可能な新規な有機発光素子の素材を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許公開番号第10-2000-0051826号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な化合物およびこれを含む有機発光素子に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は下記化学式1で表される化合物を提供する:
【化1】
前記化学式1中、
Xは、O、またはSであり、
は、それぞれ独立して、炭素数1~60のアルキル、シアノで置換された炭素数1~60のアルキル、ハロゲン、ニトロ、または、シアノであるか、または、隣接した二つのRが結合して置換または非置換の炭素数6~60の芳香族環を形成し、
n1は1または2であり、
は、水素、または重水素であり、
は、水素、重水素、またはハロゲンである。
【0010】
また、本発明は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうち1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上述した化学式1で表される化合物は、有機発光素子の有機物層の材料として使用することができ、また、溶液工程に使用が可能で、有機発光素子で効率の向上、低い駆動電圧および/または寿命特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】基板1、正極2、発光層3、負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。
図2】基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、電子注入層9、および負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の理解を助けるためにより詳細に説明する。
【0014】
(用語の定義)
本明細書において、
【化2】
は、他の置換基に連結される結合を意味する。
【0015】
本明細書において、「置換または非置換の」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミノ基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルキルアミン基;アラルキルアミン基;ヘテロアリールアミン基;アリールアミン基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうち1個以上を含むヘテロアリールからなる群で選択された1個以上の置換基で置換されているかまたは非置換であり、前記例示された置換基のうち2以上の置換基が連結されて置換されているかまたは非置換であることを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。即ち、ビフェニル基は、アリール基であってもよく、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。
【0016】
本明細書において、カルボニル基の炭素数は、特に限定されないが、炭素数1~40であることが好ましい。具体的に、下記のような構造の基になってもよいが、これに限定されない。
【化3】
【0017】
本明細書において、エステル基は、エステル基の酸素が炭素数1~25の直鎖、分岐鎖または環状アルキル基または炭素数6~25のアリール基で置換されてもよい。具体的に、下記構造式の基になってもよいが、これに限定されない。
【化4】
【0018】
本明細書において、イミド基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~25であることが好ましい。具体的に、下記のような構造の基になってもよいが、これに限定されない。
【化5】
【0019】
本明細書において、シリル基は、具体的にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジフェニルシリル基、フェニルシリル基などがあるがこれに限定されない。
【0020】
本明細書において、ホウ素基は、具体的にトリメチルホウ素基、トリエチルホウ素基、t-ブチルジメチルホウ素基、トリフェニルホウ素基、フェニルホウ素基などがあるが、これに限定されない。
【0021】
本明細書において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0022】
本明細書において、前記アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、1~40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~20である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~10である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルキル基の炭素数は1~6である。アルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書において、前記アルケニル基は直鎖または分岐鎖であってもよく、炭素数は特に限定されないが、2~40であることが好ましい。一実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~20である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~10である。さらに一つの実施状態によれば、前記アルケニル基の炭素数は2~6である。具体的な例としては、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-1-ブテニル、1,3-ブタジエニル、アリル、1-フェニルビニル-1-イル、2-フェニルビニル-1-イル、2,2-ジフェニルビニル-1-イル、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0024】
本明細書において、シクロアルキル基は、特に限定されないが、炭素数3~60であることが好ましく、一実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~30である。さらに一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~20である。さらに一つの実施状態によれば、前記シクロアルキル基の炭素数は3~6である。具体的に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、3-メチルシクロペンチル、2,3-ジメチルシクロペンチル、シクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、2,3-ジメチルシクロヘキシル、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどがあるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において、アリール基は、特に限定されないが、炭素数6~60であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であり得る。一実施状態によれば、前記アリール基の炭素数は6~30である。一実施形態によれば、前記アリール基の炭素数は6~20である。前記アリール基が、単環式アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基などができるが、これに限定されない。前記多環式アリール基としては、ナブチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであってもよいが、これに限定されない。
【0026】
本明細書において、フルオレニル基は、置換されてもよく、置換基二つが互いに結合してスピロ構造を形成することができる。前記フルオレニル基が置換される場合、
【化6】
などになってもよい。但し、これに限定されない。
【0027】
本明細書において、ヘテロアリールは、異種元素としてO、N、SiおよびS中1個以上を含むヘテロアリールであって、炭素数は特に限定されないが、炭素数2~60であることが好ましい。ヘテロアリールの例としては、キサンテン(xanthene)、チオキサンテン(thioxanthen)、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、イソオキサゾリル基、チアジアゾリル基、フェノチアジニル基、およびジベンゾフラニル基などがあるが、これらにだけ限定されるものではない。
【0028】
本明細書において、アラルキル基、アラルケニル基、アルキルアリール基、アリールアミン基、アリールシリル基のうちのアリール基は、前述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルキル基、アルキルアリール基、アルキルアミン基のうちのアルキル基は、前述したアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリールアミンのうちのヘテロアリールは、前述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。本明細書において、アラルケニル基のうちのアルケニル基は、前述したアルケニル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、アリーレンは、2価の基であることを除いては、前述したアリール基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロアリーレンは、2価の基であることを除いては、前述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。本明細書において、炭化水素環は1価の基ではなくて、2個の置換基が結合して形成したことを除いては、前述したアリール基またはシクロアルキル基に関する説明が適用可能である。本明細書において、ヘテロ環は、1価の基ではなく、2個の置換基が結合して形成したことを除いては、前述したヘテロアリールに関する説明が適用可能である。
【0029】
(化合物)
本発明は、前記化学式1で表される化合物を提供する。
【0030】
好ましくは、前記化学式1は下記化学式1-1~1-4のいずれか一つで表される:
【化7】
【化8】
前記化学式1-1~1-4中、
は、それぞれ独立して、炭素数1~60のアルキル、シアノで置換された炭素数1~60のアルキル、ハロゲン、ニトロ、または、シアノであり、
は、水素、または重水素であり、
は、水素、重水素、またはハロゲンであり、
は、水素、重水素、または-CO-(炭素数1~60のアルキル)である。
【0031】
好ましくは、Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シアノメチル、シアノエチル、シアノプロピル、シアノイソプロピル、シアノブチル、シアノイソブチル、シアノtert-ブチル、フルオロ、クロロ、ニトロ、またはシアノである。
【0032】
好ましくは、Rは、水素、または重水素である。
【0033】
好ましくは、Rは、水素、重水素、またはメチルカルボニルである。
【0034】
前記化学式1で表される化合物の代表的な例は下記の通りである:
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
一方、本発明は一例として、下記反応式1のような前記化学式1で表される化合物の製造方法を提供する:
【化11】
【0037】
前記ステップ1は、グリニャール反応(Grignard reaction)であって、Mg(マグネシウム)を使用し、前記製造方法は、後述する製造例でより具体化される。
【0038】
前記ステップ2は、ステップ1の生成物とオルガノリチウム化合物(organolithium agent)を反応させる反応である。前記反応に使用することができるオルガノリチウム化合物は、製造しようとする化合物に応じて適切に選択することができ、例えばリチウムハイドライドを使用することができる。前記製造方法は、後述する製造例でより具体化される。
【0039】
一方、本発明に係る化合物を含む有機物層は、真空蒸着法、溶液工程などのような種々の方法を利用して形成することができ、溶液工程については以下詳細に説明する。
【0040】
(コーティング組成物)
一方、本発明に係る化合物は溶液工程で有機発光素子の有機物層、特に電子輸送層または電子注入層を形成することができる。このために、本発明は、上述した本発明に係る化合物および溶媒を含むコーティング組成物を提供する。
【0041】
前記溶媒は、本発明に係る化合物を溶解または分散させることができる溶媒なら特に制限されず、例えば、クロロホルム、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの塩素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素系溶媒;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカンなどの脂肪族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテートなどのエステル系溶媒;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2-ヘキサンジオールなどの多価アルコールおよびその誘導体;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノールなどのアルコール系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;およびN-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒;ブチルベンゾエート、メチル-2-メトキシベンゾエートなどのベンゾエート系溶媒;テトラリン;3-フェノキシトルエンなどの溶媒が挙げられる。また、上述した溶媒を1種単独で使用するか、2種以上の溶媒を混合して使用することができる。好ましくは、前記溶媒としてトルエンを使用することができる。
【0042】
また、前記コーティング組成物の粘度は1cP以上が好ましい。さらに、前記コーティング組成物のコーティング容易性を考慮して、前記コーティング組成物の粘度は10cP以下が好ましい。また、前記コーティング組成物中の本発明に係る化合物の濃度は、0.1wt/v%以上が好ましい。さらに、前記コーティング組成物が最適にコーティングできるように、前記コーティング組成物中の本発明に係る化合物の濃度は、20wt/v%以下が好ましい。
【0043】
さらに、本発明は上述したコーティング組成物を使用して発光層を形成する方法を提供する。具体的に、正極上に、または、正極上に形成された正孔輸送層上に上述した本発明に係る発光層を溶液工程でコーティングするステップ;および前記コーティングされたコーティング組成物を熱処理するステップを含む。
【0044】
前記溶液工程は、上述した本発明に係るコーティング組成物を使用するもので、スピンコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、インクジェットプリンティング、スクリーンプリンティング、スプレー法、ロールコーティングなどを意味するが、これらだけに限定されるものではない。
【0045】
前記熱処理ステップで熱処理温度は150~230℃が好ましい。また、前記熱処理時間は、1分~3時間で、より好ましくは10分~1時間である。さらに、前記熱処理は、アルゴン、窒素などの不活性気体の雰囲気で行うことが好ましい。
【0046】
(有機発光素子)
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物を含む有機発光素子を提供する。例えば、本発明は、第1電極;前記第1電極と対向して備えられた第2電極;および前記第1電極と前記第2電極との間に備えられた1層以上の有機物層を含む有機発光素子であって、前記有機物層のうち1層以上は、前記化学式1で表される化合物を含む、有機発光素子を提供する。
【0047】
本発明の有機発光素子の有機物層は、単層構造からなるが、2層以上の有機物層が積層された多層構造からなってもよい。例えば、本発明の有機発光素子は、有機物層として、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、有機発光素子の構造はこれに限定されず、より少ない数の有機層を含むことができる。
【0048】
また、前記有機物層は、電子輸送層または電子注入層を含むことができ、前記電子輸送層または電子注入層は、前記化学式1で表される化合物を含む。
【0049】
また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に正極、1層以上の有機物層および負極が順次積層された構造(normal type)の有機発光素子であり得る。また、本発明に係る有機発光素子は、基板上に負極、1層以上の有機物層および正極が順次積層された逆方向構造(inverted type)の有機発光素子であり得る。例えば、本発明の一実施例に係る有機発光素子の構造は、図1および2に示されている。
【0050】
図1は、基板1、正極2、発光層3、負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。このような構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記発光層に含まれることができる。
【0051】
図2は、基板1、正極2、正孔注入層5、正孔輸送層6、発光層7、電子輸送層8、電子注入層9、および負極4からなる有機発光素子の例を示したものである。このような構造において、前記化学式1で表される化合物は、前記電子輸送層または電子注入層に含まれることができる。
【0052】
本発明に係る有機発光素子は、前記有機物層のうち1層以上が前記化学式1で表される化合物を含むことを除いては当技術分野で知られている材料と方法で製造することができる。また、前記有機発光素子が、複数個の有機物層を含む場合、前記有機物層は同じ物質または異なる物質で形成されることができる。
【0053】
例えば、本発明に係る有機発光素子は、基板上に正極、有機物層および負極を順次積層させて製造することができる。この時、スパッタリング法(sputtering)や電子ビーム蒸発法(e-beam evaporation)などのPVD(physical Vapor Deposition)方法を利用して、基板上に金属または導電性を有する金属酸化物またはこられの合金を蒸着させて正極を形成し、その上に正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を含む有機物層を形成した後、さらにその上に負極として使用できる物質を蒸着させて製造することができる。
【0054】
このような方法の他にも、基板上に負極物質から有機物層、正極物質を順に蒸着させて有機発光素子を製造することができる(国際公開第2003/012890号)。但し、製造方法はこれに限定されない。
【0055】
例えば、前記第1電極は正極で、前記第2電極は負極であるか、または、前記第1電極は負極で、前記第2電極は正極である。
【0056】
前記正極物質としては、通常有機物層に正孔注入が円滑にできるように仕事関数が大きい物質が好ましい。前記正極物質の具体的な例としては、バナジウム、クロム、銅、亜鉛、金などの金属またはこられの合金;亜鉛酸化物、インジウム酸化物、インジウムスズ酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)などの金属酸化物;ZnO:AlまたはSnO:Sbなどの金属と酸化物の組み合わせ;ポリ(3-メチルチオフェン)、ポリ[3,4-(エチレン-1,2-ジオキシ)チオフェン](PEDOT)、ポリピロールおよびポリアニリンなどの導電性化合物などがあるが、これらにだけ限定されるものではない。
【0057】
前記負極物質としては、通常有機物層に電子注入が容易になるように仕事関数が小さい物質であることが好ましい。前記負極物質の具体的な例としては、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、チタニウム、インジウム、イットリウム、リチウム、ガドリニウム、アルミニウム、銀、スズおよび鉛などの金属またはこれらの合金;LiF/AlまたはLiO/Alなどの多層構造物質などがあるが、これらだけに限定されるものではない。
【0058】
本発明に係る有機発光素子は、前記電子抑制層と正極との間に正孔輸送層を含むことができる。
【0059】
前記正孔輸送層は、正孔注入層から正孔を受け取って発光層まで正孔を輸送する層で、正孔輸送物質に正極や正孔注入層から正孔の輸送を受けて発光層に移すことができる物質で、正孔に対する移動性が大きい物質が適する。
【0060】
前記正孔輸送物質の具体的な例としては、アリールアミン系の有機物、導電性高分子、および共役部分と非共役部分が共に存在するブロック共重合体などがあるが、これらだけに限定されるものではない。
【0061】
本発明に係る有機発光素子は、必要に応じて前記正極と正孔輸送層との問に正孔注入層を追加で含むことができる。
【0062】
前記正孔注入層は、電極から正孔を注入する層で、正孔注入物質としては、正孔を輸送する能力を有し正極での正孔注入効果、発光層または発光材料に対して優れた正孔注入効果を有し、発光層で生成された励起子の電子注入層または電子注入材料への移動を防止して、さらに、薄膜形成能力に優れた化合物が好ましい。また、正孔注入物質のHOMO(highest occupied molecular orbital)が、正極物質の仕事関数と周辺有機物層のHOMOとの間であることが好ましい。
【0063】
正孔注入物質の具体的な例としては、金属ポルフィリン(porphyrin)、オリゴチオフェン、アリールアミン系の有機物、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン系の有機物、キナクリドン(quinacridone)系の有機物、ペリレン(perylene)系の有機物、アントラキノンおよびポリアニリンとポリチオフェン系の導電性高分子などがあるが、これらだけに限定されるものではない。
【0064】
本発明に係る有機発光素子は、前記発光層と負極との間に電子輸送層を含むことができる。
【0065】
前記電子輸送層は、負極または負極上に形成された電子注入層から電子を受け取って発光層まで電子を輸送し、また、発光層で正孔が伝達されるのを抑制する層で、電子輸送物質としては、負極から電子の注入を良好に受けて発光層に移すことができる物質であって、電子に対する移動性が大きい物質が適する。
【0066】
前記電子輸送物質の具体的な例としては、8-ヒドロキシキノリンのAl錯体;Alq3を含む錯体;有機ラジカル化合物;ヒドロキシフラボン-金属錯体などがあるが、これらだけに限定されるものではない。電子輸送層は、従来技術により使用されている通り任意の所望のカソード物質と共に使用することができる。特に、適切なカソード物質の例は、低い仕事関数を有し、アルミニウム層またはシルバー層が続く通常の物質である。具体的に、セシウム、バリウム、カルシウム、イッテルビウムおよびサマリウムであり、各々の場合、アルミニウム層またはシルバー層が続く。
【0067】
本発明に係る有機発光素子は、必要に応じて前記電子輸送層と負極との間に電子注入層を追加で含むことができる。
【0068】
前記電子注入層は、電極から電子を注入する層で、電子を輸送する能力を有し、負極からの電子注入効果、発光層または発光材料に対して優れた電子注入効果を有し、発光層で生成された励起子の正孔注入層への移動を防止し、さらに、薄膜形成能力に優れた化合物を使用することが好ましい。
【0069】
前記電子注入層で使用できる物質の具体的な例としては、フルオレノン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、チオピランジオキサイド、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、ペリレンテトラカルボン酸、フルオレニリデンメタン、アントロンなどとそれらの誘導体、金属錯体化合物および窒素含有5員環誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0070】
前記金属錯体化合物としては、8-ヒドロキシキノリナトリチウム、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)亜鉛、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)銅、ビス(8-ヒドロキシキノリナト)マンガン、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(2-メチル-8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム、トリス(8-ヒドロキシキノリナト)ガリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)亜鉛、ビス(2-メチル-8-キノリナト)クロロガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(o-クレゾラト)ガリウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(1-ナフトラト)アルミニウム、ビス(2-メチル-8-キノリナト)(2-ナフトラト)ガリウムなどがあるが、これらに限定されない。
【0071】
上述した材料の他にも、前記発光層、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、および電子注入層には量子ドットなどの無機化合物または高分子化合物を追加で含むことができる。
【0072】
前記量子ドットは、例えば、コロイド量子ドット、合金量子ドット、コアシェル量子ドット、または、コア量子ドットであってもよい。第2族および第16族に属する元素、第13族および第15族に属する元素、第13族および第17族に属する元素、第11族および第17族に属する元素、または、第14族および第15族に属する元素を含む量子ドットであり、カドミウム(Cd)、セレニウム(Se)、亜鉛(Zn)、硫黄(S)、リン(P)、インジウム(In)、テルリウム(Te)、鉛(Pb)、ガリウム(Ga)、ヒ素(As)などの元素を含む量子ドットが使用される。
【0073】
本発明に係る有機発光素子は、背面発光(bottom emission)素子、前面発光(top emission)素子、または、両面発光素子であってもよく、特に相対的に高い発光効率が要求される背面発光素子であり得る。
【0074】
また、本発明に係る化合物は、有機発光素子の他にも有機太陽電池または有機トランジスターに含まれることができる。
【0075】
前記化学式1で表される化合物およびこれを含む有機発光素子の製造は、以下実施例で具体的に説明する。しかし、実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がそれらによって限定されるものではない。
【実施例
【0076】
[実施例]
実施例1:化合物1の製造
(ステップ1)
【化12】
【0077】
マグネシウム(1,241mg、51.0520mmol)、および無水テトラヒドロフラン(25mL)をフラスコに投入して常温で攪拌した。1-ブロモ-4-フルオロ-2-メトキシベンゼン(7g、34.1430mmol、4.38mL)をフラスコに投入した後、微量のヨウ素を投入した。80℃にフラスコを昇温して1時間攪拌した。フラスコを再び常温で冷却し、ジフェニルホスフィニルクロリド(7.964g、32.5172mmol、6.42mL)を無水テトラヒドロフラン(25mL)に溶かしてゆっくり投入した。常温で15時間攪拌した。3時間加熱して還流攪拌した。再びフラスコを常温で冷却させ、メタノール(20mL)を投入して反応を終了させた。溶媒をエバポレーター(evaporator)で留去し、過量のクロロホルムを使用してろ過して固体を除去し、下層のクロロホルム溶液を得て溶媒をエバポレーター(evaporator)で除去して乾燥して(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(7.8g)を得た。
【0078】
(ステップ2)
【化13】
【0079】
先のステップ1で製造した(4-フルオロ-2-メトキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(7.8g、25.2984mmol)、およびジクロロメタン(20mL)をフラスコに投入して30分間、-5℃で攪拌した。フラスコを-5℃に維持したままトリブロモボラン(6.972g、27.8282mmol、2.68mL)をフラスコにゆっくり投入して常温に昇温しながら15時間攪拌した。メタノール(15mL)を使用して反応を終了させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して反応溶液を中和させた。反応液をクロロホルムを使用して抽出した。抽出した有機層の溶媒を除去して最小量のクロロホルムを使用し、ヘキサンで沈殿させて(4-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(5.5g)を得た。
【0080】
(ステップ3)
【化14】
【0081】
フラスコに先のステップ2で製造した(4-フルオロ-2-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(5.5g、17.6124mmol)、および無水アセトニトリル(103mL)を投入して5分間攪拌した。フラスコにリチウムハイドライド(140mg、17.6124mmol)を投入して24時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリルを使用して反応溶液をろ過して固体を得た。得られた固体を昇華して化合物1(3g)を得た。
m/z:312.07
【0082】
実施例2:化合物2の製造
(ステップ1)
【化15】
【0083】
マグネシウム(1.266g、52.0574mmol)、および無水テトラヒドロフラン(25mL)をフラスコに投入して常温で攪拌した。1-ブロモ-2-メトキシ-4-メチルベンゼン(7g、34.8155mmol、5.03mL)をフラスコに投入した後、微量のヨウ素を投入した。80℃にフラスコを昇温して1時間攪拌した。フラスコを再び常温で冷却し、ジフェニルホスフィニルクロリド(7.846g、33.1576mmol、6.33mL)を無水テトラヒドロフラン(25mL)に溶かしてゆっくり投入した。常温で15時間攪拌した。3時間加熱して還流攪拌した。再びフラスコを常温で冷却し、メタノール(20mL)を投入して反応を終了させた。溶媒をエバポレーター(evaporator)で留去し、過量のクロロホルムを使用してろ過して固体を除去し、下層のクロロホルム溶液を得て溶媒をエバポレーター(evaporator)で除去して乾燥して、(2-メトキシ-4-メチルフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(10.6g)を得た。
【0084】
(ステップ2)
【化16】
【0085】
先のステップ1で製造した(2-メトキシ-4-メチルフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(10.6g、32.8845mmol)、ジクロロメタン(25mL)をフラスコに投入して30分間、-5℃で攪拌した。フラスコを-5℃に維持したままトリブロモボラン(9.062g、36.1730mmol、3.49mL)をフラスコにゆっくり投入して常温に昇温しながら15時間攪拌した。メタノール(15mL)を使用して反応を終了し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して反応溶液を中和した。反応液をクロロホルムを使用して抽出した。抽出した有機層の溶媒を除去して、最小量のクロロホルムを使用し、ヘキサンで沈殿させて、(2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(6.5g)を得た。
【0086】
(ステップ3)
【化17】
【0087】
フラスコにステップ2で製造した(2-ヒドロキシ-4-メチルフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(6.5g、21.0820mmol)、無水アセトニトリル(125mL)を投入して5分間攪拌した。フラスコにリチウムハイドライド(168mg、21.0820mmol)を投入して24時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリルを使用して反応溶液をろ過して固体を得た。得られた固体を昇華して化合物2(4.3g)を得た。
m/z:308.10
【0088】
実施例3:化合物3の製造
(ステップ1)
【化18】
【0089】
マグネシウム(1.266g、52.0574mmol)、無水テトラヒドロフラン(25mL)をフラスコに投入して常温で攪拌した。(2-ブロモ-5-メチルフェニル)(メチル)スルファン(7g、32.2402mmol)をフラスコに投入した後、微量のヨウ素を投入した。80℃にフラスコを昇温して1時間攪拌した。フラスコを再び常温で冷却し、ジフェニルホスフィニルクロリド(7.629g、32.2402mmol、6.15mL)を無水テトラヒドロフラン(25mL)に溶かしてゆっくり投入した。常温で15時間攪拌した。3時間加熱して還流攪拌した。再びフラスコを常温で冷却し、メタノール(20mL)を投入して反応を終了させた。溶媒をエバポレーター(evaporator)で留去し、過量のクロロホルムを使用してろ過し、固体は除去し、下層のクロロホルム溶液を得て、溶媒をエバポレーター(evaporator)で除去し、乾燥して、(4-メチル-2-(メチルチオ)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(10.9g)を得た。
【0090】
(ステップ2)
【化19】
【0091】
先のステップ1で製造した(4-メチル-2-(メチルチオ)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(10.9g、32.2104mmol)、およびジクロロメタン(25mL)をフラスコに投入して30分間、-5℃で攪拌した。フラスコを-5℃に維持したままトリブロモボラン(8.876g、35.4314mmol、3.41mL)をフラスコにゆっくり投入して常温に昇温しながら15時間攪拌した。メタノール(15mL)を使用して反応を終了させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して反応溶液を中和した。反応液をクロロホルムを使用して抽出した。抽出した有機層の溶媒を除去して最小量のクロロホルムを使用してヘキサンで沈殿させて、(2-メルカプト-4-メチルフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(6.1g)を得た。
【0092】
(ステップ3)
【化20】
【0093】
フラスコに先のステップ2で製造した(2-メルカプト-4-メチルフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(6.1g、18.8051mmol)、および無水アセトニトリル(110mL)を投入して5分間攪拌した。フラスコにリチウムハイドライド(150mg、18.8051mmol)を投入して24時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリルを使用して反応溶液をろ過して固体を得た。得られた固体を昇華して化合物3(3.8g)を得た。
m/z:324.07
【0094】
実施例4:化合物4の製造
(ステップ1)
【化21】
【0095】
マグネシウム(1.091g、44.8571mmol)、および無水テトラヒドロフラン(25mL)をフラスコに投入して常温で攪拌した。1-ブロモ-4-(tert-ブチル)-2-メトキシベンゼン(7.294g、30.00mmol)をフラスコに投入した後、微量のヨウ素を投入した。80℃にフラスコを昇温して1時間攪拌した。フラスコを再び常温で冷却し、ジフェニルホスフィニルクロリド(6.761g、28.5714mmol、5.45mL)を無水テトラヒドロフラン(25mL)に溶かしてゆっくり投入した。常温で15時間攪拌した。3時間加熱して還流攪拌した。再びフラスコを常温で冷却し、メタノール(20mL)を投入して反応を終了させた。溶媒をエバポレーター(evaporator)で留去し、過量のクロロホルムを使用してろ過し、固体は除去して、下層のクロロホルム溶液を得て溶媒をエバポレーター(evaporator)で除去して乾燥して、(4-(tert-ブチル)-2-メトキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(10.4g)を得た。
【0096】
(ステップ2)
【化22】
【0097】
先のステップ1で製造した(4-(tert-ブチル)-2-メトキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(10.4g、28.5385mmol)、およびジクロロメタン(25mL)をフラスコに投入して30分間、-5℃で攪拌した。フラスコを-5℃に維持したままトリブロモボラン(7.864g、31.3923mmol、3.02mL)をフラスコにゆっくり投入して常温に昇温しながら15時間攪拌した。メタノール(15mL)を使用して反応を終了させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して反応溶液を中和した。反応液をクロロホルムを使用して抽出した。抽出した有機層の溶媒を除去し、最小量のクロロホルムを使用してヘキサンで沈殿させて、(4-(tert-ブチル)-2-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(8.4g)を得た。
【0098】
(ステップ3)
【化23】
【0099】
フラスコに先のステップ2で製造した(4-(tert-ブチル)-2-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(8.4g、23.9726mmol)、および無水アセトニトリル(100mL)を投入して5分間攪拌した。フラスコにリチウムハイドライド(191mg、23.9726mmol)を投入して24時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリルを使用して反応溶液をろ過して固体を得た。得られた固体を昇華して化合物4(5.5g)を得た。
m/z:356.15
【0100】
実施例5:化合物5の製造
(ステップ1)
【化24】
【0101】
マグネシウム(1.272g、52.3333mmol)、および無水テトラヒドロフラン(25mL)をフラスコに投入して常温で攪拌した。(2-ブロモ-5-(tert-ブチル)フェニル)(メチル)スルファン(9.072g、35mmol)をフラスコに投入した後、微量のヨウ素を投入した。80℃にフラスコを昇温して1時間攪拌した。フラスコを再び常温で冷却し、ジフェニルホスフィニルクロリド(8.788g、33.3333mmol、7.09mL)を無水テトラヒドロフラン(25mL)に溶かしてゆっくり投入した。常温で15時間攪拌した。3時間加熱して還流攪拌した。再びフラスコを常温で冷却し、メタノール(20mL)を投入して反応を終了させた。溶媒をエバポレーター(evaporator)で吹き飛ばし、過量のクロロホルムを使用してろ過し、固体は除去して、下層のクロロホルム溶液を得て溶媒をエバポレーター(evaporator)で除去し、乾燥して、(4-(tert-ブチル)-2-(メチルチオ)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(12.7g)を得た。
【0102】
(ステップ2)
【化25】
【0103】
先のステップ1で製造した(4-(tert-ブチル)-2-(メチルチオ)フェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(12.7g、33.3780mmol)、およびジクロロメタン(25mL)をフラスコに投入して30分間、-5℃で攪拌した。フラスコを-5℃に維持したままトリブロモボラン(9.198g、36.7158mmol、3.54mL)をフラスコにゆっくり投入して常温に昇温しながら15時間攪拌した。メタノール(15mL)を使用して反応を終了させ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を使用して反応溶液を中和した。反応液をクロロホルムを使用して抽出した。抽出した有機層の溶媒を除去して最小量のクロロホルムを使用してヘキサンで沈殿させて、(4-(tert-ブチル)-2-メルカプトフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(9.6g)を得た。
【0104】
(ステップ3)
【化26】
【0105】
フラスコに先のステップ2で製造した(4-(tert-ブチル)-2-メルカプトフェニル)ジフェニルホスフィンオキシド(9.6g、26.1965mmol)、および無水アセトニトリル(100mL)を投入して5分間攪拌した。フラスコにリチウムハイドライド(208mg、26.1965mmol)を投入して24時間攪拌した。反応終了後、アセトニトリルを使用して反応溶液をろ過して固体を得た。得られた固体を昇華して化合物5(6.2g)を得た。
m/z:372.13
【0106】
[実験例]
実験例1
ITO(indium tin oxide)が500Åの厚さで薄膜コーティングされたガラス基板を、洗剤を溶かした蒸溜水に入れて超音波で洗浄した。この時、洗剤はフィッシャー社(Fischer Co.)製品を使用し、蒸溜水はミリポア社(Millipore Co.)製品のフィルター(Filter)で2次ろ過した蒸留水を使用した。ITOを30分間洗浄した後、蒸溜水で2回繰り返して超音波洗浄を10分間行った。蒸溜水洗浄が終わった後、イソプロピル、アセトンの溶剤で超音波洗浄をして乾燥させた後、前記基板を5分間洗浄した後、グローブボックスに基板を輸送した。
【0107】
前記ITO透明電極の上に、下記化合物p-dopantおよび下記化合物HIL(2:8の重量比)を5wt%でシクロヘキサノンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(2500rpm)し、230℃で30分間熱処理(硬化)して、1000Åの厚さの正孔注入層を形成した。前記正孔注入層の上に、下記高分子HTL(Mn:27,900;Mw:35,600;Agilent 1200 seriesを利用してPCスタンダード(Standard)を利用したGPCで測定)を2wt%でトルエンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(2500rpm)し、230℃で20分間熱処理して1000Åの厚さの正孔輸送層を形成した。前記正孔輸送層の上に、下記化合物Aと下記化合物Dopant(98:2の重量比)を2wt%でシクロヘキサノンに溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(2000rpm)し、145℃で15分間熱処理して400Åの厚さの発光層を形成した。
【0108】
前記発光層の上に、下記化合物ETLと先の実施例1で製造した化合物(3:7の重量比)を2wt%でエチレングリコールと1-プロパノール(8:2の体積比)に溶かしたコーティング組成物をスピンコーティング(2000rpm)し、145℃で10分間熱処理して300Åの厚さで電子注入および輸送層を形成した。前記電子注入および輸送層の上に1000Åの厚さでアルミニウムを蒸着してカソードを形成して有機発光素子を製造した。
【0109】
【化27】
【0110】
前記の過程で、アルミニウムは、2Å/secの蒸着速度を維持し、蒸着時真空度は、2×10-7~5×10-8torrを維持した。
【0111】
実験例2~5
化合物1の代わりに表1に記載された化合物を使用したことを除いて、前記実験例1と同じ方法で有機発光素子を製造した。
【0112】
比較実験例1~3
化合物1の代わりに化合物C1(LiQ;8-Quinolinolato Lithium)、化合物C2、および化合物C3を使用したことを除いて、前記実験例1と同じ方法で有機発光素子を製造した。
【0113】
【化28】
【0114】
前記実験例および比較実験例で製造した有機発光素子に電流を印加した時、10mA/cmの電流密度での駆動電圧、電流効率および寿命を測定した結果を下記表1に示した。この時、寿命(T90)は、輝度が初期輝度(500nit)から90%に減少するのにかかる時間を意味する。
【0115】
【表1】
【0116】
前記表1に示された通り、本発明に係る化合物を使用した場合、一般的に使用されるLiQを含んで比較例化合物を使用した場合に比べて駆動電圧が低くなり、電流効率が高まり、さらに、寿命が改善されることを確認することができた。
【符号の説明】
【0117】
1・・・基板
2・・・正極
3・・・発光層
4・・・負極
5・・・正孔注入層
6・・・正孔輸送層
7・・・発光層
8・・・電子輸送層
9・・・電子注入層
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-12-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
は、それぞれ独立してメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、シアノメチル、シアノエチル、シアノプロピル、シアノイソプロピル、シアノブチル、シアノイソブチル、シアノtert-ブチル、フルオロ、クロロ、ニトロ、または、シアノである、請求項1に記載の化合物。
【国際調査報告】