(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-07-09
(54)【発明の名称】低電気伝導率の新規な冷却剤
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20240702BHJP
【FI】
C09K5/10 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500182
(86)(22)【出願日】2022-06-29
(85)【翻訳文提出日】2024-01-05
(86)【国際出願番号】 EP2022067921
(87)【国際公開番号】W WO2023280659
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣末 雅之
(72)【発明者】
【氏名】マルコウスキー,イタマール ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ニッツシュケ,ウヴェ
(72)【発明者】
【氏名】シントラー,ニーナ
(57)【要約】
本出願は、低電気伝導率の冷却剤と、対応する冷却剤濃縮液と、電気エンジン、燃料電池、又は燃焼機関と電気エンジンの組み合わせ、若しくは燃焼機関と燃料電池の組み合わせを用いたハイブリッドエンジンを搭載した車両の冷却システムにおけるそのような冷却剤の使用について記述する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤であって、
(A)少なくとも1種の1,2-プロピレングリコール又はその誘導体と、
(B)水と、
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体と、
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステルと、
(G)少なくとも1種のシリコホスホネートと、
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤と
を含み、
電気伝導率が、最高50μS/cm、好ましくは最高40μS/cm、より好ましくは最高30μS/cm、最も好ましくは最高20μS/cmである、冷却剤。
【請求項2】
成分(A)は、1,2-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコールのポリマー及びオリゴマー、並びに1,2-プロピレングリコールのモノ-及びジアルキルエーテル、1,2-プロピレングリコールのポリマー及びオリゴマーからなる群から選択される、請求項1に記載の冷却剤。
【請求項3】
成分(A)中の1,2-プロピレングリコールの含有量は、1,2-プロピレングリコールの他の誘導体の中で少なくとも50重量%である、請求項1又は2に記載の冷却剤。
【請求項4】
前記冷却剤は、1,2-プロピレングリコール及びその誘導体以外のアルキレングリコール及びその誘導体を含むことができ、全てのアルキレングリコール及びその誘導体の混合物中の1,2-プロピレングリコール及びその誘導体の含有量は、少なくとも50重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項5】
前記アゾール誘導体(C)は、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、水素化トルトリアゾール、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸、及び(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸からなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項6】
前記オルトケイ酸のエステル(D)が、オルトケイ酸テトラエチルエステル又はオルトケイ酸テトラメチルエステルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項7】
成分(G)は式(V)のものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷却剤
【化1】
(式中、
R
5は二価の有機残基、好ましくは1~6個、好ましくは1~4個の炭素原子を有する1,ω-アルキレン基、より好ましくはメチレン、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、又は1,4-ブチレン、最も好ましくは1,2-エチレン又は1,3-プロピレン、特に1,2-エチレンであり、
R
6及びR
7は、独立して、別のC
1~C
4アルキル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル、好ましくはメチル又はエチルである)。
【請求項8】
少なくとも1種の化合物(D)及び少なくとも1種の化合物(G)を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項9】
少なくとも1種の化合物(G)を含み、化合物(D)は含まない、請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項10】
少なくとも1種の化合物(D)を含み、化合物(G)は含まず、前記冷却剤は、1,2-プロピレングリコール又はその誘導体のみを含み、1,2-プロピレングリコール以外の他のアルキレングリコール又はその誘導体を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項11】
カルボン酸を含まないことを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項12】
(A)1,2-プロピレングリコール又はその誘導体:10~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%
(B)水:10~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体:0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.9重量%、より好ましくは0.03~0.8重量%、更に好ましくは0.04~0.5、特に0.05~0.3重量%
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステル:存在する場合、0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.9重量%、より好ましくは0.03~0.8重量%、更に好ましくは0.04~0.5、特に0.05~0.3重量%
(G)少なくとも1種のシリコホスホネート:0~1重量%、好ましくは0.01~0.8重量%、より好ましくは0.02~0.6重量%
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤:それぞれの更なる冷却剤添加剤について、0~0.5重量%、好ましくは0.01~0.4重量%、より好ましくは0.02~0.3重量%
のように構成され、ただし、全成分の合計は常に100重量%になるようにする、請求項1~8のいずれか一項に記載の冷却剤。
【請求項13】
(A)1,2-プロピレングリコール又はその誘導体:50~99.9重量%、好ましくは60~99.8重量%、より好ましくは75~99.7重量%
(B)水:0~10重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0~5重量%
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体:0.02~1重量%、好ましくは0.04~0.8重量%、より好ましくは0.06~0.6重量%、更により好ましくは0.08~0.5、特に0.1~0.4重量%
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステル:存在する場合、0.02~1重量%、好ましくは0.04~0.8重量%、より好ましくは0.06~0.6重量%、更により好ましくは0.08~0.5、特に0.1~0.4重量%
(G)少なくとも1種のシリコホスホネート:0~1重量%、好ましくは0.02~0.8重量%、より好ましくは0.04~0.6重量%
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤:それぞれの更なる冷却剤添加剤について、0~0.5重量%、好ましくは0.002~0.4重量%、より好ましくは0.004~0.3重量%
のように構成され、ただし、全成分の合計は常に100重量%になるようにする、冷却剤濃縮液。
【請求項14】
電気エンジン、燃料電池、又は燃焼機関と電気エンジンの組み合わせ、若しくは燃焼機関と燃料電池の組み合わせを用いたハイブリッドエンジンを搭載した車両の冷却システム内の冷却剤としての、請求項1~13のいずれか一項に記載の冷却剤の使用。
【請求項15】
冷却剤の使用であって、
(A)少なくとも1種の1,2-プロピレングリコール又はその誘導体と、
(B)水と、
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体と、
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステルと、
(G)任意選択で少なくとも1種のシリコホスホネートと、
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤と
を含み、
前記成分(D)及び前記成分(G)のうちの少なくとも1つが存在し、
電気伝導率が、最高50μS/cm、好ましくは最高40μS/cm、より好ましくは最高30μS/cm、最も好ましくは最高20μS/cmであり、
アルミニウム部品から構成される熱交換器を備えた冷却システム、特にフルオロアルミネートはんだ付けフラックスを含むはんだ付け方法を用いることにより得られたアルミニウム部品から構成される熱交換器を備えた冷却システムにおける冷却剤としての、冷却材の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、低電気伝導率の冷却剤と、対応する冷却剤濃縮液と、電気エンジン、燃料電池、又は燃焼機関と電気エンジンの組み合わせ、若しくは燃焼機関と燃料電池の組み合わせを用いたハイブリッドエンジンを搭載した車両の冷却システムにおけるそのような冷却剤の使用とについて記述する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第02/101848号パンフレットは、燃料電池駆動装置の冷却のためにアゾール誘導体と、任意選択でオルトシリケートとを含む冷却剤を開示している。アルキレングリコール成分として、モノエチレングリコールが特に好ましいが、モノエチレングリコールの他にモノプロピレングリコールを使用してもよい。モノエチレングリコール以外の他のアルキレングリコール成分を含む冷却剤は開示されていない。そのような冷却剤には、電極の短絡を防止し、冷却システムの安全性を向上させるために、低い電気伝導率が重要である。明示的に開示されている冷却剤は、それぞれ60vol%のモノエチレングリコールと40vol%の水とを含む。
【0003】
使用中もその低い電気伝導率を保持する、低電気伝導率の冷却剤が依然として必要とされている。
【0004】
冷却剤の凝固点降下剤として広く使用されているモノエチレングリコール及びその誘導体の代替品が開発されている。
【0005】
国際公開第2004/053015A1号パンフレットは、燃料電池用冷却剤のための1,3-プロパンジオールを含むアゾール誘導体を主成分とする冷却剤を開示している。
【0006】
国際公開第2006/092376A1号パンフレットは、凍結防止剤としてグリセロールを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、それぞれの冷却剤が電気駆動装置を搭載した車両での使用に適するように、十分に低い電気伝導率を示す冷却剤を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、冷却剤であって、
(A)少なくとも1種の1,2-プロピレングリコール又はその誘導体と、
(B)水と、
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体と、
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステルと、
(G)任意選択で少なくとも1種のシリコホスホネートと、
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤と
を含み、
成分(D)及び(G)のうちの少なくとも1つが存在し、
電気伝導率が、最高50μS/cm、好ましくは最高40μS/cm、より好ましくは最高30μS/cm、最も好ましくは最高20μS/cmである、冷却剤によって達成される。
【0009】
特に断りのない限り、本文中の電気伝導率はASTM D 1125に従って25℃で測定したものである。
【0010】
このような冷却剤は、電気駆動装置を備えた車両用の冷却剤として使用できるようにする低い電気伝導率と、特にアルミニウム腐食に対する優れた耐食性との両方を示す。
【0011】
しばらくの間、車両及び自動車の構造だけでなく、定置機関にも通常使用されている冷却システム又は冷却回路は、アルミニウム又はアルミニウム合金で主に、又はそれ単独で製造されてきた。これは電気自動車についても同様である。ここでは、例えば保護ガス雰囲気下でのはんだ付けなど、特定のはんだ付けプロセスが使用される。このようなはんだ付けプロセスでは、フラックスの併用が必要である。ここでは通常、四フッ化アルミン酸カリウムがフラックスとして使用され、例えばKAlF4、K2AlF5、及びK3AlF6の混合物が使用される(例えばNocolok(登録商標)の名称で市販されている)。一般式は、KxAlyFzであり、ただし、(x+(3*y))=zであり、式中、x、y、及びzは自然数、yは1又は2、好ましくは1、xは1~6、好ましくは1、2、又は3、zは4~12、好ましくは4、5、又は6である。
【0012】
前述のフラックスの一部は、はんだ付け作業後に冷却装置の表面に残る。冷却装置内のこれらのフラックス残留物は、多かれ少なかれ速やかに水酸化アルミニウムゲルの沈殿を引き起こし、その結果、水性冷却剤組成物の導入及びエンジンの作動後に、水、及び水性冷却剤組成物の成分と互いに平衡状態にある化学反応の連鎖によって冷却回路内にスラッジが形成される。これは、エンジンからの熱除去の有効性を大幅に制限し、結果として、加熱システムの熱交換、給気の冷却、及びギアボックスオイルの冷却の機能も制限する。更に、水酸化アルミニウムゲルの存在は、水酸化アルミニウムゲルに腐食防止剤が吸着する結果として腐食防止作用が著しく低下するため、冷却剤が提供する腐食防止に悪影響を及ぼす。
【0013】
本発明による冷却剤は、アルミニウム部品から構成される熱交換器を備えた冷却システム、特にフルオロアルミネートはんだ付けフラックスを含むはんだ付け方法を用いることにより得られたアルミニウム部品から構成される熱交換器を備えた冷却システムにおける冷却剤として特に好適であることが見出された。
【0014】
好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、少なくとも1種の化合物(G)を含み、化合物(D)は含まない。
【0015】
別の好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、少なくとも1種の化合物(D)及び少なくとも1種の化合物(G)を含む。冷却剤が高い腐食防止を示し、冷却剤が腐食プロセスの間安定したままであることは、この実施形態の利点の1つであり、したがって、この実施形態が特に好ましい。
【0016】
更に別の好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、少なくとも1種の化合物(D)を含み、化合物(G)は含まない。冷却剤が非常に低い電気伝導率を示すことは、この実施形態の利点の1つである。電気駆動装置を有する車両の冷却のための多くの冷却剤サイクルは、電気伝導率が低いままであるように、冷却剤から分解生成物、又は腐食による微量の金属イオンを除去するために、ループ内に少なくとも1つのイオン交換体を備える。例えば国際公開第00/17951号パンフレットを参照されたい。イオン交換体が冷却剤から帯電化合物を除去するため、成分(G)が存在しない冷却剤がこのような冷却剤サイクルに特に好適であることは、この好ましい実施形態の利点である。成分(G)はこのような帯電化合物であるため、このような化合物は、冷却剤が循環するようにポンピングされる間にイオン交換体によって除去される。したがって、化合物(G)が存在しないこのような冷却剤が、電気エンジン、燃料電池、又はハイブリッドエンジンを搭載した車両の冷却システムで使用されることが、この好ましい実施形態の特別な特徴であり、冷却システムは、アニオン交換体、又はカチオン交換体、又はその両方のいずれかである少なくとも1つのイオン交換体を備える。
【0017】
この好ましい実施形態のある代替案では、冷却剤は、50vol%以下の1,2-プロピレングリコール又はその誘導体と、少なくとも50vol%の水とを含む。
【0018】
この好ましい実施形態の第2の代替案では、冷却剤は、グリコール(A)として、1,2-プロピレングリコール又はその誘導体のみを含み、1,2-プロピレングリコール以外のアルキレングリコール又はその誘導体は含まない。
【0019】
構成成分の詳細は以下の通りである:
グリコール(A)
本発明による凍結防止剤(A)として、1,2-プロピレングリコール及びその誘導体が使用される。1,2-プロピレングリコールの誘導体は、ポリマー及びオリゴマー、並びに1,2-プロピレングリコールのモノ-又はジアルキルエーテル、そのポリマー及びオリゴマーであってもよい。
【0020】
1,2-プロピレングリコールのポリマー及びオリゴマーは、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、及びテトラプロピレングリコール、並びに分子量最大598g/molのその高級同族体である。
【0021】
好ましくは、成分(A)は、ジプロピレングリコール、及び1,2-プロピレングリコール以外のトリプロピレングリコールのみを含み、高級同族体は含まず、より好ましくはジプロピレングリコールのみを含む。
【0022】
上記1,2-プロピレングリコールのモノ-又はジアルキルエーテル、並びにそのポリマー及びオリゴマーは、好ましくはモノ-又はジC1~C4アルキルエーテル、より好ましくはモノC1~C4アルキルエーテル、更に好ましくはメチル-、エチル-又はn-ブチルエーテル、特にモノ-、メチル-、エチル-、又はn-ブチルエーテルである。
【0023】
本明細書との関係で、「C1~C4アルキル」という語句は、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、及びtert-ブチルを表し、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、及びtert-ブチルであり、より好ましくはメチル、エチル、及びn-ブチルである。
【0024】
好ましい実施形態の成分(A)では、1,2-プロピレングリコールの含有量は、1,2-プロピレングリコールの他の誘導体の中で少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、更に好ましくは少なくとも95重量%、特に少なくとも98重量%である。
【0025】
あまり好ましくない実施形態では、本発明による冷却剤は、1,2-プロピレングリコール及びその誘導体以外のアルキレングリコール又はその誘導体を含み得る。
【0026】
そのようなアルキレングリコールとしては、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びそれらの混合物、1,3-プロパンジオール、高級ポリアルキレングリコール、アルキレングリコールエーテル、例えば、モノエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、モノエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、モノエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、及びテトラエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、又はグリセロールであり、これらは、それぞれ単独で、又はこれらの混合物である。
【0027】
しかしながら、全てのアルキレングリコール及びその誘導体の混合物中の1,2-プロピレングリコール及びその誘導体の含有量は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも66重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、更により好ましくは少なくとも85重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%である。
【0028】
好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、1,2-プロピレングリコール及びその誘導体以外のアルキレングリコール又はその誘導体を含まない。
【0029】
水(B)
本発明による冷却剤に使用される水は、pH値が中性であり、それぞれの温度における水の自己プロトリシスから生じる水酸化物イオン及びヒドロニウムイオン以外のイオンを本質的に含まない水を意味する、イオンフリーのものであるべきである。
【0030】
使用するイオンフリー水の25℃における電気伝導率(本文中ではASTM D 1125に従って測定される)は、好ましくは5μS/cm以下、より好ましくは3以下、更により好ましくは2以下、特に好ましくは1μS/cm以下であるべきである。
【0031】
使用するイオンフリー水は、純粋な蒸留水若しくは2回蒸留された水、又は例えばイオン交換により脱イオンされた水であり得る。
【0032】
アゾール誘導体(C)
本発明との関係においてアゾール誘導体とは、窒素及び硫黄からなる群からの2又は3個のヘテロ原子を有し、硫黄原子を含まない、又は最大1個含み、芳香族又は飽和6員縮合環を有し得る5員複素環式化合物を意味する。
【0033】
これらの5員複素環式化合物(アゾール誘導体)は通常、ヘテロ原子として2個のN原子及び0個のS原子、3個のN原子と0個のS原子、又は1個のN原子及び1個のS原子を含有する。
【0034】
指定されたアゾール誘導体の好ましい基は、下記一般式の環状化(annellate)イミダゾール及び環状化1,2,3-トリアゾールである
【化1】
(式中、
変数Rは水素又はC
1~C
10アルキル基、特にメチル又はエチルであり、
変数Xは窒素原子又はC-H基である)。
【0035】
一般式(I)のアゾール誘導体の典型的且つ好ましい例は、ベンズイミダゾール(X=C-H、R=H)、ベンゾトリアゾール(X=N、R=H)及びトルトリアゾール(トリルトリアゾール)(X=N、R=CH3)である。一般式(II)のアゾール誘導体の典型的な例は、水素化1,2,3-トルトリアゾール(トリルトリアゾール)(X=N、R=CH3)である。
【0036】
指定されるアゾール誘導体の更なる好ましい基は、一般式(III)のベンゾチアゾールである
【化2】
(式中、
変数Rは上記で定義される通りであり、
変数R’は、水素、C
1~C
10アルキル基、特にメチル若しくはエチル、又は特にメルカプト基(-SH)である。一般式(III)のアゾール誘導体の典型的な例は、2-メルカプトベンゾチアゾールである)。
【0037】
しかしながら、(2-ベンゾチアジルチオ)酢酸(R’=S-CH2-COOH)又は(2-ベンゾチアジルチオ)プロピオン酸(R’=-S-CH2-CH2-COOH)を使用することも可能であるが、あまり好ましくない。このような遊離酸化合物を使用すると、冷却剤の電気伝導率が高くなるため、この実施形態はあまり好ましくない。
【0038】
更に好適なアゾール誘導体は、一般式(IV)の非環状化アゾール誘導体である
【化3】
(式中、
変数X及びYは、一緒になって2個の窒素原子であるか、又は
1個の窒素原子及びC-H基であり、
例えば1H-1,2,4-トリアゾール(X=Y=N)若しくは好ましくはイミダゾール(X=N、Y=C-H)である)。
【0039】
本発明の目的のためには、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、水素化トルトリアゾール、又はそれらの混合物、特にベンゾトリアゾール又はトルトリアゾールがアゾール誘導体として非常に特に好ましい。
【0040】
前述のアゾール誘導体は市販されているか、又は従来の方法により調製することができる。水素化トルトリアゾールなどの水素化ベンゾトリアゾールも同様に、独国特許出願公開第A 1 948 794号明細書に記載のように入手可能であり、市販もされている。
【0041】
オルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランのエステル(D)(任意選択)
オルトケイ酸のエステルは、式Si(OR1)4の化合物であり、
式中、
R1は、1~6個の炭素原子を含む有機置換基、例えば直鎖状又は分枝状の、好ましくは1~6個の炭素原子を含む直鎖状アルキル置換基、又は6個の炭素原子を含む芳香族置換基、より好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル置換基、更に好ましくは1又は2個の炭素原子を含むアルキル置換基である。
【0042】
アルコキシアルキルシランはあまり好ましくなく、アルコキシ置換基もアルキル基も直鎖状又は分枝状の、好ましくは1~6個の炭素原子を含む直鎖状アルキル置換基、より好ましくは1~4個の炭素原子を含むアルキル置換基、更により好ましくは1又は2個の炭素原子を含むアルキル置換基を含む。
【0043】
化合物(D)の典型的な例は、テトラアルコキシシラン、好ましくはテトラC1~C4アルキルオキシシラン、より好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシラン、並びにアルコキシアルキルシラン、好ましくはトリエトキシメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、及びメトキシトリメチルシランである。好ましいのはテトラアルコキシシランであり、特に好ましくはテトラメトキシシラン及びテトラエトキシシランであり、特に非常に好ましいのはテトラエトキシシランである。
【0044】
化合物(D)は主にアルミニウム腐食抑制剤として使用される。
【0045】
モノカルボン酸(F)
現代における冷却剤は、鉄系材料のための腐食抑制剤として、モノカルボン酸若しくはジカルボン酸、又はより高い官能価を有するカルボン酸などのカルボン酸、好ましくはモノカルボン酸を含むことが多い。
【0046】
好適なモノカルボン酸(F)は、最大20個の炭素原子、好ましくは2~18個、より好ましくは5~16個、更により好ましくは5~14個、最も好ましくは6~12個、特に8~10個の炭素原子を有する、直鎖状又は分枝状の、脂肪族、シクロ脂肪族、又は芳香族モノカルボン酸であってもよい。
【0047】
分岐鎖脂肪族モノカルボン酸は、対応する直鎖モノカルボン酸より好ましい。
【0048】
有用な直鎖又は分岐鎖、脂肪族又は脂環族モノカルボン酸(F)は、例えば、プロピオン酸、ペンタン酸、2,2-ジメチルプロパン酸、ヘキサン酸、2,2-ジメチルブタン酸、シクロヘキシル酢酸、オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、イソノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸又はドデカン酸である。
【0049】
好適な芳香族モノカルボン酸(F)は、特に安息香酸であり、加えて、例えば、C1~C8アルキル安息香酸、例えばo-、m-、p-メチル安息香酸若しくはp-tert-ブチル安息香酸、及びヒドロキシ基含有芳香族モノカルボン酸、例えばo-、m-、若しくはp-ヒドロキシ安息香酸、o-、m-、若しくはp-(ヒドロキシメチル)安息香酸又はハロ安息香酸、例えばo-、m-、若しくはp-フルオロ安息香酸も好適である。
【0050】
2-エチルヘキサン酸及びイソノナン酸が特に好ましい。
【0051】
本明細書で使用する場合、イソノナン酸は、9個の炭素原子を有する1つ又は複数の分岐鎖脂肪族カルボン酸を指す。エンジン冷却水組成物に使用されるイソノナン酸の実施形態としては、7-メチルオクタン酸(例えば、CAS番号693-19-6及び26896-18-4)、6,6-ジメチルヘプタン酸(例えば、CAS番号15898-92-7)、3,5,5-トリメチルヘキサン酸(例えば、CAS番号3302-10-1)、3,4,5-トリメチルヘキサン酸、2,5,5-トリメチルヘキサン酸、2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸(例えば、CAS番号3302-12-3)及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、イソノナン酸は、90%を超える主要成分として、7-メチルオクタン酸、6,6-ジメチルヘプタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、3,4,5-トリメチルヘキサン酸、2,5,5-トリメチルヘキサン酸、及び2,2,4,4-テトラメチルペンタン酸の1種を含む。イソノナン酸の残りは、他の炭素数9のカルボン酸異性体及び少量の1種又は複数種の汚染物質を含み得る。好ましい実施形態では、イソノナン酸は、90%を超える主要成分として、3,5,5-トリメチルヘキサン酸を有し、更に好ましくは、主要成分は95%を超える3,5,5-トリメチルヘキサン酸である。
【0052】
モノカルボン酸に加えて、又はモノカルボン酸の代わりに、より高い官能価を有するカルボン酸、例えばジ又はトリカルボン酸を使用することは可能であるが、不利である。モノカルボン酸の使用は、一般的に使用されるジカルボン酸と比較して優れた結果をもたらすことが示されている。実施例を参照のこと。
【0053】
使用される場合、ジ-又はトリカルボン酸は、脂肪族、脂環族又は芳香族、好ましくは脂肪族又は芳香族、より好ましくは最大20個の炭素原子、好ましくは最大18個、より好ましくは最大16個、更に好ましくは最大14個、特に最大12個の炭素原子を有する脂肪族であることが可能である。
【0054】
使用される場合、ジカルボン酸の例は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、アルキル又はアルケニルコハク酸、2-メチルブタン二酸、2-エチルペンタン二酸、2-n-ドデシルブタン二酸、2-n-ドデセニルブタン二酸、2-フェニルブタン二酸、2-(p-メチルフェニル)ブタンン二酸、2,2-ジメチルブタン二酸、2,3-ジメチルブタン二酸;2,3,4-トリメチルペンタン二酸、2,2,3-トリメチルペンタン二酸;2-エチル-3-メチルブタン二マレイン酸、フマル酸、ペンタ-2-エン二酸、ヘキサ-2-エン二酸;ヘキサ-3-エン二酸;5-メチルヘキサ-2-エン二酸;2,3-ジメチルペンタ-2-エン二酸;2-メチルブタ-2-エン二酸、2-ドデシルブタ-2-エン二酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸及び置換フタル酸、例えば、3-メチルベンゼン-1,2-ジカルボン酸;4-フェニルベンゼン-1,3-ジカルボン酸;2-(1-プロペニル)ベンゼン-1,4-ジカルボン酸、及び3,4-ジメチルベンゼン-1,2-ジカルボン酸である。
【0055】
使用される場合、トリカルボン酸の例は、ベンゼントリカルボン酸(全ての異性体)及び6,6’,6”-(1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリイルトリイミノ)トリヘキサン酸などのトリアジントリイミノカルボン酸である。
【0056】
好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、1より高い官能価を有するカルボン酸は含有しない。
【0057】
しかしながら、カルボン酸は電気伝導率を高めるという欠点を有する。また、成分(D)が存在する場合、そのようなカルボン酸はオルトケイ酸のエステルを劣化させ得る。
【0058】
したがって、好ましくは、カルボン酸、特にモノカルボン酸(F)は、特に成分(D)が存在する場合には、冷却剤中に存在しない。
【0059】
成分(G)のみが存在し、成分(D)が存在しない実施形態では、必要な電気伝導率を超えない限り、冷却剤は少なくとも1種のモノカルボン酸(F)を含んでもよい。
【0060】
好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、成分(D)として言及されたものを除き、カルボン酸を含まない。
【0061】
シリコホスホネート(G)
更に、冷却剤は、任意選択で、少なくとも1種のシリコホスホネート(G)を含んでもよい。
【0062】
シリコホスホネートとは、一般構造(V)のものである
【化4】
(式中、
R
5は二価の有機残基、好ましくは1~6個、好ましくは1~4個の炭素原子を有する1,ω-アルキレン基、より好ましくはメチレン、1,2-エチレン、1,2-プロピレン、1,3-プロピレン、又は1,4-ブチレン、最も好ましくは1,2-エチレン又は1,3-プロピレン、特に1,2-エチレンであり、
R
6及びR
7は、独立して、別のC
1~C
4アルキル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル、好ましくはメチル又はエチルである)。
【0063】
このようなシリコホスホネートは、遊離ホスホネートとして、又はそれらのナトリウム塩若しくはカリウム塩、好ましくはナトリウム塩若しくはカリウム塩、より好ましくはナトリウム塩の形態で存在することができる。
【0064】
更なる冷却剤添加剤(H)
本発明の冷却剤には、電気伝導率を上記で指摘した臨界値を超えて上昇させない限り、更なる典型的な冷却剤添加剤を添加することが可能である。
【0065】
更なる慣習的補助剤として、本発明の冷却剤は、慣習的に少量の、脱泡剤(一般的に0.003~0.008重量%の量で)、並びに嚥下された場合の衛生及び安全性の理由により、苦味物質(例えば安息香酸デナトニウムのタイプ)及び染料も含み得る。
【0066】
非イオン性添加剤を使用して同様の効果が得られる限り、可能な限り、非イオン性添加剤の使用がイオン性の代替的な添加剤よりも好ましい。
【0067】
好ましい実施形態では、本発明による冷却剤は、更なる冷却剤添加剤(H)を含まない。
【0068】
組成
本発明による冷却剤の主な要件は、電気エンジンを備えた車両の冷却システムに好適であるように、冷却剤が25℃で50μS/cm未満、好ましくは45μS/cm未満の電気伝導率(ASTM D 1125に従って測定される)を示さなければならないことである。
【0069】
その目的を達成するためには、イオン種、イオン性副生成物を含有し得る種、又は酸及び塩基のようなイオンを形成し得る種の組み合わせの量は、電気伝導率を臨界値を超えて上昇させないために最小限に抑えなければならない。
【0070】
したがって、冷却剤中の成分(C)~(H)の量は、電気伝導率の臨界値を超えないように選択される。
【0071】
典型的には、本発明による冷却剤は以下のように構成される:
(A)1,2-プロピレングリコール又はその誘導体:10~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%
(B)水:10~90重量%、好ましくは20~80重量%、より好ましくは30~70重量%
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体:0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.9重量%、より好ましくは0.03~0.8重量%、更に好ましくは0.04~0.5、特に0.05~0.3重量%
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステル:存在する場合、0.01~1重量%、好ましくは0.02~0.9重量%、より好ましくは0.03~0.8重量%、更に好ましくは0.04~0.5、特に0.05~0.3重量%
(G)任意選択で少なくとも1種のシリコホスホネート:0~1重量%、好ましくは0.01~0.8重量%、より好ましくは0.02~0.6重量%
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤:それぞれの更なる冷却剤添加剤について、0~0.5重量%、好ましくは0.01~0.4重量%、より好ましくは0.02~0.3重量%、
ただし、全成分の合計は常に100重量%になるようにし、
成分(D)及び(G)のうちの少なくとも1つが存在する。
【0072】
本発明の更なる実施形態は、冷却剤濃縮液である。冷却剤は通常、冷却剤濃縮液から水(B)で希釈することにより得られる。したがって、冷却剤濃縮液は通常、水(B)をほとんど含まないか、全く含まない。
【0073】
典型的には、本発明による冷却剤濃縮液は、以下のように構成される:
(A)1,2-プロピレングリコール又はその誘導体:50~99.9重量%、好ましくは60~99.8重量%、より好ましくは75~99.7重量%
(B)水:0~10重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0~5重量%
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体:0.02~1重量%、好ましくは0.04~0.8重量%、より好ましくは0.06~0.6重量%、更により好ましくは0.08~0.5、特に0.1~0.4重量%
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステル:存在する場合、0.02~1重量%、好ましくは0.04~0.8重量%、より好ましくは0.06~0.6重量%、更により好ましくは0.08~0.5、特に0.1~0.4重量%
(G)任意選択で少なくとも1種のシリコホスホネート:0~1重量%、好ましくは0.02~0.8重量%、より好ましくは0.04~0.6重量%
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤:それぞれの更なる冷却剤添加剤について、0~0.5重量%、好ましくは0.002~0.4重量%、より好ましくは0.004~0.3重量%、
ただし、全成分の合計は常に100重量%になるようにし、
成分(D)及び(G)のうちの少なくとも1つが存在する。
【0074】
本発明の更なる実施形態は、冷却剤超濃縮液である。冷却剤濃縮液は通常、冷却剤超濃縮液からグリコール(A)で希釈することにより得られ、それぞれ冷却剤は、冷却剤超濃縮液からグリコール(A)及び水(B)で希釈することにより得ることができる。したがって、冷却剤濃縮液は通常、水(B)をほとんど含まないか、全く含まず、グリコール(A)をほとんど含まないか、全く含まない。
【0075】
典型的には、本発明による冷却剤超濃縮液は、以下のように構成される:
(A)1,2-プロピレングリコール又はその誘導体:70~99.5重量%、好ましくは80~99重量%、より好ましくは90~98重量%
(B)水:0~10重量%、好ましくは0~8重量%、より好ましくは0~5重量%
(C)少なくとも1種のアゾール誘導体:0.05~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、より好ましくは0.2~3重量%、更に好ましくは0.3~2、特に0.4~1.5重量%
(D)任意選択でオルトケイ酸又はアルコキシアルキルシランの少なくとも1種のエステル:存在する場合、0.05~5重量%、好ましくは0.1~4重量%、より好ましくは0.2~3重量%、更に好ましくは0.3~2、特に0.4~1.5重量%。
(G)任意選択で少なくとも1種のシリコホスホネート:0~5重量%、好ましくは0.02~4重量%、より好ましくは0.04~3重量%
(H)任意選択で少なくとも1種の更なる冷却剤添加剤:それぞれの更なる冷却剤添加剤について、0~1重量%、好ましくは0.005~0.8重量%、より好ましくは0.008~0.6重量%、
ただし、全成分の合計は常に100重量%になるようにし、
成分(D)及び(G)のうちの少なくとも1つが存在する。
【0076】
電気伝導率が低いため、本発明による冷却剤は、電気エンジン、燃料電池、又は燃焼機関と電気エンジンの組み合わせ、若しくは燃焼機関と燃料電池の組み合わせを用いたハイブリッドエンジンを搭載した自動車の冷却システムに使用され得る。
【実施例】
【0077】
本発明を以下の実施例に示すが、これに限定されるものではない。
【0078】
冷却剤組成物は、表1に示す構成成分を混合することによって調製し(全ての量を重量%で示す)、25℃におけるASTM D 1125による電気伝導率[μS/cm]を測定した。
【0079】
【0080】
表1による冷却剤を以下のように試験し、25℃におけるASTM D 1125による電気伝導率[μS/cm]を測定した。
【0081】
冷却剤は、フルオロアルミネートはんだ付けフラックスを含むはんだ付け法を用いることによって、主にアルミニウム製の市販の熱交換器に25℃の温度で21日間保管された。
【0082】
冷却剤の電気伝導率は試験前に測定し、試験開始時及び終了時に保管した冷却剤のサンプルを分析した。
【0083】
充填直後は、系内に残存する微量のフルオロアルミネートはんだ故に、冷却剤の電気伝導率は上昇した。
【0084】
【0085】
【0086】
1,2-プロピレングリコールを主成分とする本発明による冷却剤は、モノエチレングリコールを主成分とする類似の冷却剤よりも低い導電率を示すだけでなく、試験中もこの有利な特性を維持することが容易に見てとれる。
【0087】
実施例3~5
表2aによる配合物を、168時間のASTM D4340によるアルミニウム試験片の腐食試験に供した。試験の前後でpH値を測定し、電気伝導率(ASTM D 1125)を測定した。結果を表2bに示す。
【0088】
【0089】
【0090】
シリコホスホネート及びテトラエトキシシランの両方を含む実施例5による組成物では、pHの変化が最も小さく、腐食条件下での組成物の安定性がより高いことが容易に見てとれる。
【0091】
シリコホスホネートが存在していない実施例3による組成物は、イオン性化合物が存在しないため、最も低い電気伝導率を示す。
【0092】
アルミニウムの腐食は、全組成物で十分に抑制される。比較のために:50重量%のエチレングリコールと50重量%の水との配合物(例えば国際公開第00/17951号パンフレットを参照)は、ASTM D1384(88℃、336時間)による腐食試験において、鋳造アルミニウムの腐食が-0.3mg/cm2、pH値が5.9(試験前)から4.0(試験後)に変化し、本発明による冷却剤の優れた腐食抑制、及び試験条件下での安定性が示された。更に、エチレングリコール/水組成物の電気伝導率は、この試験中に0.5μS/cmから728μS/cmに増加したが、これは電気エンジン、燃料電池、又はハイブリッドエンジンを搭載した自動車の冷却システムに使用するには許容できない。
【国際調査報告】